本実施の形態における電源装置100は、図1に示すように、電池モジュール102及び制御コントローラ104を含んで構成される。電源装置100は、複数の電池モジュール102(102a,102b,・・・102n)を含んで構成される。複数の電池モジュール102は、制御コントローラ104による制御によって互いに直列に接続可能である。電源装置100に含まれる複数の電池モジュール102は、端子T1及びT2に接続される負荷(図示しない)に対して電力を供給(力行)し、又は、端子T1及びT2に接続される電源(図示しない)から電力を充電(回生)することができる。
電池モジュール102は、電池10、チョークコイル12、コンデンサ14、第1スイッチ素子16、第2スイッチ素子18、ゲート駆動信号処理回路20、AND素子22、OR素子24及びNOT素子26を含んで構成される。本実施の形態において、各電池モジュール102は同一の構成を備える。
電池10は、少なくとも1つの二次電池を含む。電池10は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池等を複数直列又は/及び並列接続した構成とすることができる。チョークコイル12及びコンデンサ14は、電池10からの出力を平滑化して出力する平滑回路(ローパスフィルタ回路)を構成する。すなわち、電池10として二次電池を使用しているので、内部抵抗損失の増加による電池10の劣化を抑制するため、電池10、チョークコイル12及びコンデンサ14によってRLCフィルタを形成して電流の平準化を図っている。なお、チョークコイル12及びコンデンサ14は、必須の構成ではなく、これらを設けなくてもよい。
第1スイッチ素子16は、電池10の出力端を短絡するためのスイッチング素子を含む。本実施の形態では、第1スイッチ素子16は、スイッチング素子である電界効果トランジスタに対して並列に環流ダイオードを接続した構成としている。第2スイッチ素子18は、電池10と第1スイッチ16素子との間において電池10に直列接続される。本実施の形態では、第2スイッチ素子18は、スイッチング素子である電界効果トランジスタに対して並列に環流ダイオードを接続した構成としている。第1スイッチ素子16及び第2スイッチ素子18は、制御コントローラ104からのゲート駆動信号によってスイッチング制御される。なお、本実施の形態では、第1スイッチ素子16及び第2スイッチ素子18は、電界効果トランジスタとしたが、IGBT等の他の種類のスイッチング素子を適用してもよい。
ゲート駆動信号処理回路20は、制御コントローラ104の信号生成回路104aから電池モジュール102に入力されるゲート駆動信号に基づいて電池モジュール102を制御する回路である。ゲート駆動信号処理回路20は、ゲート駆動信号を所定の時間だけ遅延させる遅延回路を含む。電源装置100では、各電池モジュール102(102a,102b,・・・102n)にそれぞれゲート駆動信号処理回路20が設けられており、それらが直列接続されている。したがって、制御コントローラ104から入力されたゲート駆動信号は所定の時間ずつ遅延させられながら各電池モジュール102(102a,102b,・・・102n)に順次入力されることになる。ゲート駆動信号に基づく制御については後述する。
AND素子22は、強制切断信号に応じて電池モジュール102aを直列接続状態から強制的に切り離す切断手段を構成する。また、OR素子24は、強制接続信号に応じて電池モジュール102aを直列接続状態に強制的に接続する接続手段を構成する。AND素子22及びOR素子24は、制御コントローラ104から強制切断信号又は強制接続信号を受けて制御される。AND素子22の一方の入力端子には制御コントローラ104からの制御信号が入力され、他方の入力端子にはゲート駆動信号処理回路20からのゲート駆動信号が入力される。また、OR素子24の一方の入力端子には制御コントローラ104からの制御信号が入力され、他方の入力端子にはゲート駆動信号処理回路20からのゲート駆動信号が入力される。AND素子22及びOR素子24からの出力信号は、第2スイッチ素子18のゲート端子に入力される。また、AND素子22及びOR素子24からの出力信号は、NOT素子26を介して第1スイッチ素子16のゲート端子に入力される。
通常制御時において、制御コントローラ104からAND素子22に対してハイ(H)レベルの制御信号が入力され、OR素子24に対してロー(L)レベルの制御信号が入力される。したがって、ゲート駆動信号がそのまま第2スイッチ素子18のゲート端子に入力され、ゲート駆動信号を反転した信号が第1スイッチ素子16のゲート端子に入力される。これによって、ゲート駆動信号がハイ(H)レベルのときに第1スイッチ素子16がオフ状態及び第2スイッチ素子18がオン状態となり、ゲート駆動信号がロー(L)レベルのときに第1スイッチ素子16がオン状態及び第2スイッチ素子18がオフ状態となる。すなわち、ゲート駆動信号がハイ(H)レベルのときに電池モジュール102は他の電池モジュール102と直列に接続された状態となり、ゲート駆動信号がロー(L)レベルのときに電池モジュール102は他の電池モジュール102と切り離されたスルー状態となる。
強制切断時においては、制御コントローラ104は強制的に切り離す対象となる電池モジュール102のAND素子22及びOR素子24に対して強制切断信号を送信する。制御コントローラ104からAND素子22に対してロー(L)レベルの制御信号(強制切断信号)が入力され、OR素子24に対してロー(L)レベルの制御信号(強制切断信号)が入力される。これによって、AND素子22からはロー(L)レベルが出力され、OR素子24を介して、第1スイッチ素子16のゲート端子にはNOT素子26によってハイ(H)レベルが入力され、第2スイッチ素子18のゲート端子にはロー(L)レベルが入力される。したがって、第1スイッチ素子16は常時オン状態となり、第2スイッチ素子18は常時オフ状態とされ、電池モジュール102はゲート駆動信号の状態によらず直列接続から強制的に切り離された状態(パススルー状態)となる。
このような強制切断制御は、電源装置100における電池モジュール102のSOCのアンバランスを抑制する制御に利用することができる。すなわち、電源装置100が放電状態にある場合、電源装置100の出力に関与している電池モジュール102のSOCが低下するのに対して、電池モジュール102を強制切断状態とすることによって当該電池モジュール102のSOCを維持することができる。また、電源装置100が充電状態にある場合、電源装置100の充電に関与している電池モジュール102のSOCが増加するのに対して、電池モジュール102を強制切断状態とすることによって当該電池モジュール102のSOCを維持することができる。
強制接続時には、制御コントローラ104は強制的に接続する対象となる電池モジュール102のAND素子22及びOR素子24に対して強制接続信号を送信する。制御コントローラ104から電池モジュール102のOR素子24にハイ(H)レベルの制御信号(強制接続信号)を入力する。これによって、OR素子24からはハイ(H)レベルが出力され、第1スイッチ素子16のゲート端子にはNOT素子26によってロー(L)レベルが入力され、第2スイッチ素子18のゲート端子にはハイ(H)レベルが入力される。したがって、第1スイッチ素子16は常時オフ状態となり、第2スイッチ素子18は常時オン状態とされ、電池モジュール102はゲート駆動信号の状態によらず強制的に直列接続に繋がれた状態となる。
このような強制接続制御は、電源装置100における電池モジュール102のSOCのアンバランスを抑制する制御に利用することができる。すなわち、電源装置100が放電状態にある場合、ゲート駆動信号に応じて断続的に直列接続される電池モジュール102のSOCの低下に対して、強制接続状態にされた電池モジュール102のSOCをより早く低下させることができる。また、電源装置100が充電状態にある場合、ゲート駆動信号に応じて断続的に直列接続される電池モジュール102のSOCの増加に対して、強制接続状態にされた電池モジュール102のSOCをより早く増加させることができる。
なお、本実施の形態における電源装置100では、制御コントローラ104からAND素子22及びOR素子24のいずれか又は両方を直接制御する構成としたが、制御コントローラ104からゲート駆動信号処理回路20を介してAND素子22及びOR素子24を制御する構成としてもよい。
[通常制御]
以下、電源装置100の制御について図2を参照して説明する。通常制御時において、各電池モジュール102(102a,102b,・・・102n)のAND素子22に対して制御コントローラ104からハイ(H)レベルの制御信号が入力される。また、各電池モジュール102(102a,102b,・・・102n)のOR素子24に対して制御コントローラ104からロー(L)レベルの制御信号が入力される。したがって、第1スイッチ素子16のゲート端子にはゲート駆動信号処理回路20からのゲート駆動信号がNOT素子26を介して反転信号として入力され、第2スイッチ素子18のゲート端子にはゲート駆動信号処理回路20からのゲート駆動信号がそのまま入力される。
図2は、電池モジュール102aの動作に関するタイムチャートを示す。また、図2では、電池モジュール102aを駆動するゲート駆動信号D1のパルス波形、第1スイッチ素子16のスイッチング状態を示す矩形波D2、第2スイッチ素子18のスイッチング状態を示す矩形波D3、及び、電池モジュール102aにより出力される電圧Vmodの波形D4を示している。
電池モジュール102aの初期状態、すなわち、ゲート駆動信号が出力されていない状態では、第1スイッチ素子16はオン状態、第2スイッチ素子18はオフ状態である。そして、制御コントローラ104からゲート駆動信号が電池モジュール102aに入力されると、電池モジュール102aはPWM制御によってスイッチング制御される。このスイッチング制御では、第1スイッチ素子16と第2スイッチ素子18とが交互にオン状態/オフ状態にスイッチングされる。
図2に示すように、制御コントローラ104からゲート駆動信号D1が出力されると、このゲート駆動信号D1に応じて、電池モジュール102aの第1スイッチ素子16及び第2スイッチ素子18が駆動される。第1スイッチ素子16は、ゲート駆動信号D1の立ち上がりに応じたNOT素子26からの信号の立ち下がりによって、オン状態からオフ状態に切り替わる。また、第1スイッチ素子16は、ゲート駆動信号D1の立ち下がりから僅かな時間(デッドタイムdt)遅れて、オフ状態からオン状態に切り替わる。
一方、第2スイッチ素子18は、ゲート駆動信号D1の立ち上がりから僅かな時間(デッドタイムdt)遅れて、オフ状態からオン状態に切り替わる。また、第2スイッチ素子18は、ゲート駆動信号D1の立ち下がりと同時に、オン状態からオフ状態に切り替わる。このように、第1スイッチ素子16と第2スイッチ素子18とは交互にオン状態/オフ状態が切り替わるようにスイッチング制御される。
なお、第1スイッチ素子16がゲート駆動信号D1の立ち下がり時に僅かな時間(デッドタイムdt)遅れて動作することと、第2スイッチ素子18がゲート駆動信号D1の立ち上がり時に僅かな時間(デッドタイムdt)遅れて動作することは、第1スイッチ素子16と第2スイッチ素子18とが同時に動作することを防止するためである。すなわち、第1スイッチ素子16と第2スイッチ素子18とが同時にオンして短絡することを防止している。この動作を遅らせているデッドタイムdtは、例えば、100nsに設定しているが、適宜設定することができる。なお、デッドタイムdt中はダイオードを還流し、その還流したダイオードと並列にあるスイッチング素子がオンしたときと同じ状態になる。
このような制御によって、電池モジュール102aは、ゲート駆動信号D1がオフ時(すなわち、第1スイッチ素子16がオン、第2スイッチ素子18がオフ)では、コンデンサ14が電池モジュール102aの出力端子から切り離される。したがって、出力端子には電池モジュール102aから電圧が出力されない。この状態では、図3(a)に示すように、電池モジュール102aの電池10(コンデンサ14)がバイパスされたスルー状態となっている。
また、ゲート駆動信号D1がオン時(すなわち、第1スイッチ素子16がオフ、第2スイッチ素子18がオン)では、コンデンサ14が電池モジュール102aの出力端子に接続される。したがって、出力端子には電池モジュール102aから電圧が出力される。この状態では、図3(b)に示すように、電池モジュール102aにおけるコンデンサ14を介して電圧Vmodが出力端子に出力されている。
図1に戻り、制御コントローラ104による電源装置100の制御について説明する。制御コントローラ104は、電池モジュール102の全体を制御する。すなわち、複数の電池モジュール102a,102b,・・・102nを制御して電源装置100としての出力電圧を制御する。
制御コントローラ104は、各電池モジュール102に対して矩形波のゲート駆動信号を出力する。ゲート駆動信号は、電池モジュール102aに含まれるゲート駆動信号処理回路20、電池モジュール102bに含まれるゲート駆動信号処理回路20・・・と順次後段の電池モジュール102へと伝達される。すなわち、電源装置100において直列に接続されている電池モジュール102の最上流側から順に所定の遅延時間ずつゲート駆動信号が遅延されて下流側へと伝達される。
通常制御時においては、AND素子22に対してハイ(H)レベルの制御信号が入力され、OR素子24に対してロー(L)レベルの制御信号が入力されているので、各電池モジュール102のゲート駆動信号処理回路20から出力されたゲート駆動信号がそのまま第2スイッチ素子18のゲート端子に入力され、ゲート駆動信号を反転した信号が第1スイッチ素子16のゲート端子に入力される。したがって、ゲート駆動信号がハイ(H)レベルのときに第1スイッチ素子16がオフ状態及び第2スイッチ素子18がオン状態となり、ゲート駆動信号がロー(L)レベルのときに第1スイッチ素子16がオン状態及び第2スイッチ素子18がオフ状態となる。
すなわち、ゲート駆動信号がハイ(H)レベルのときに電池モジュール102は他の電池モジュール102と直列に接続された状態となり、ゲート駆動信号がロー(L)レベルのときに電池モジュール102は他の電池モジュール102と切り離されたスルー状態となる。
図4は、電池モジュール102a,102b,・・・102nのうち所定の個数を順次直列に接続して電力を出力する制御シーケンスを示す。図4に示すように、ゲート駆動信号に応じて、電池モジュール102a,102b,・・・102nが、一定の遅延時間を持って上流側から下流側に次々と駆動される。図4において、期間E1は、電池モジュール102a,102b,・・・102nの第1スイッチ素子16がオフ、第2スイッチ素子18がオンして、電池モジュール102a,102b,・・・102nが出力端子から電圧を出力している状態(接続状態)を示している。また、期間E2は、電池モジュール102a,102b,・・・102nの第1スイッチ素子16がオン、第2スイッチ素子18がオフして、電池モジュール102a,102b,・・・102nが出力端子から電圧を出力していない状態(スルー状態)を示す。このように、電池モジュール102a,102b,・・・102nは、一定の遅延時間を持って順次駆動される。
図4を参照して、ゲート駆動信号や遅延時間の設定について説明する。ゲート駆動信号の周期Tは、電池モジュール102a,102b,・・・102nの遅延時間を合計することによって設定される。このため、遅延時間を長くするほどゲート駆動信号の周波数は低周波となる。逆に、遅延時間を短くするほどゲート駆動信号の周波数は高周波となる。どのように当該周波数(スイッチング周波数)を設定するかについて後述する。
ゲート駆動信号の周期Tにおけるオン時比率D(オンデューティ)、すなわち、周期Tに対するゲート駆動信号がハイ(H)レベルにある時間TONの比率は、電源装置100の出力電圧/電池モジュール102a,102b,・・・102nの合計電圧(電池モジュール102の電池電圧×電池モジュール数)により算出される。すなわち、オン時比率D=(電源装置100の出力電圧)/(電池モジュール102の電池電圧×電池モジュール102の総数)となる。なお、厳密には、デッドタイムdtだけオン時比率がずれてしまうので、チョッパ回路で一般的に行われているようにフィードバックまたはフィードフォワードでオン時比率の補正を行うことが好適である。
電源装置100の出力電圧は、上述したように、電池モジュール102の電池電圧に接続状態にある電池モジュール102の数を乗算した値によって表される。電源装置100の出力電圧が、一つの電池モジュール102の電池電圧で割り切れる値であれば、電池モジュール102がスルー状態から接続状態に切り替わる瞬間に、他の電池モジュール102が接続状態からスルー状態に切り替わるので、電池モジュール102の全体の出力電圧に変動はない。
しかし、電源装置100の出力電圧が各電池モジュール102の電池電圧で割り切れない値であれば、電源装置100の出力電圧(全体の出力電圧)が変動する。ただし、このときの変動振幅は1つの電池モジュール分の電圧であり、また、この変動周期は、ゲート駆動信号の周期T/電池モジュール102の総数となる。電池モジュール102の総数を多くすることによって、電源装置100全体の寄生インダクタンスを大きな値とすることができ、この電圧変動はフィルタされて電源装置100の出力電圧を安定化させることができる。
次に、具体例について説明する。図4において、例えば、電源装置100としての所望の出力電圧が400V、各電池モジュール102の電池電圧が15V、電池モジュール102a,102b,・・・102n数が40個、遅延時間が200nsであるとする。なお、この場合は、電源装置100の出力電圧(400V)が、電池モジュール102の電池電圧(15V)で割り切れない場合に相当する。
これらの数値に基づくと、ゲート駆動信号の周期Tは、遅延時間×電池モジュール総数により算出されるので200ns×40個=8μsとなる。したがって、ゲート駆動信号は125kHz相当の周波数の矩形波とされる。また、ゲート駆動信号のオン時比率Dは、電源装置100の出力電圧/(電池モジュール102の電池電圧×電池モジュール102の総数)により算出されるので、オン時比率Dは、400V/(15V×40個)≒0.67となる。
これらの数値に基づいて、電池モジュール102a,102b,・・・102nを順次駆動すると、電源装置100として、図4中、矩形波状の出力電圧H1が得られる。この出力電圧H1は、390Vと405Vとの間で変動する。すなわち、出力電圧H1は、ゲート駆動信号の周期T/電池モジュール総数により算出される周期、すなわち8μs/40個=200ns(5MHz相当)で変動する。この変動は、電池モジュール102a,102b,・・・102nの配線による寄生インダクタンスでフィルタリングされ、電源装置100全体としては約400Vの出力電圧H2として出力される。
なお、各電池モジュール102のコンデンサ14には、接続状態の場合に電流が流れ、図4に示すように、コンデンサ電流波形J1は矩形波になる。また、電池10とコンデンサ14はRLCフィルタを形成しているので、電源装置100にはフィルタリングされて平準化された電流J2が流れる。このように、全ての電池モジュール102a,102b,・・・102nにおいて電流波形は一様であり、また、全ての電池モジュール102a,102b,・・・102nから均等に電流を出力することができる。
以上説明したように、電源装置100を制御する際、最上流側の電池モジュール102aに出力したゲート駆動信号を、下流側の電池モジュール102bに一定時間遅延して出力して、さらに、このゲート駆動信号を一定時間遅延して下流側の電池モジュール102に順次伝達するので、電池モジュール102a,102b,・・・102nは、一定時間遅延しながら順次電圧をそれぞれ出力する。そして、これらの電圧が合計されることによって、電源装置100としての電圧が出力される。これにより、電源装置100から所望の電圧を出力させることができる。
電源装置100によれば、昇圧回路が不要になり、電源回路の構成を簡素化することができる。また、電源装置100を、小型化、低コスト化することができる。また、電力損失を生ずるバランス回路等も不要であり、電源装置100の効率を向上させることができる。さらに、複数の電池モジュール102a,102b,・・・102nから略均等に電圧を出力しているので、特定の電池モジュール102に駆動が集中することもなく、電源装置100の内部抵抗損失を低減することができる。
また、オン時比率Dを調整することによって、所望の電圧に容易に対応することができ、電源装置100としての汎用性を向上することができる。特に、電池モジュール102a,102b,・・・102nに故障が発生して、使用困難な電池モジュール102が発生した場合でも、その故障した電池モジュール102を除外して、正常な電池モジュール102を使用して、ゲート駆動信号の周期T、オン時比率D、遅延時間を再設定することによって、所望の電圧を得ることができる。すなわち、電池モジュール102a,102b,・・・102nに故障が発生しても所望の電圧の出力を継続することができる。
[強制切り離し制御]
次に、複数の電池モジュール102(102a,102b,・・・102n)のうち選択されたものを強制的に切り離す制御について説明する。制御コントローラ104は、強制的に切り離す対象とする電池モジュール102のAND素子22及びOR素子24に対して強制切断信号を出力する。すなわち、強制切断の対象となる電池モジュール102に属するAND素子22に対してロー(L)レベルの制御信号を出力し、OR素子24に対してロー(L)レベルの制御信号を出力する。これによって、AND素子22からはロー(L)レベルが出力され、OR素子24を介して、第1スイッチ素子16のゲート端子にはNOT素子26によってハイ(H)レベルが入力され、第2スイッチ素子18のゲート端子にはロー(L)レベルが入力される。したがって、第1スイッチ素子16は常時オン状態となり、第2スイッチ素子18は常時オフ状態とされ、該当する電池モジュール102はゲート駆動信号の状態によらず強制的に切り離された状態(パススルー状態)となる。このような強制切り離し制御は、電源装置100における電池モジュール102のSOCのアンバランスを抑制する制御に利用することができる。
例えば、電源装置100が力行状態の場合、電源装置100に含まれる電池モジュール102の中からSOCが相対的に低い電池モジュール102は電力消費量(単位時間当たりの放電電流積算量)が少なくなり、SOCのアンバランスを解消することができる。その結果、電源装置100に含まれる電池モジュール102のSOCをSOC制御目標値に近づけることができる。また、各電池モジュール102の充電エネルギーを効率良く使い切ることが可能となる。
また、力行状態でなく、回生状態のときにSOCのアンバランスを解消する制御を行うこともできる。この場合、SOCが相対的に高い電池モジュール102を強制的に切り離す制御を行い、SOCが相対的に低い電池モジュール102へ優先的に電力を回生させることでSOCのアンバランスを解消させる。すなわち、電源装置100に含まれる電池モジュール102の中からSOCが相対的に高い電池モジュール102への電力供給(単位時間当たりの充電電流積算量)が少なくなり、SOCのアンバランスを解消することができる。その結果、電源装置100に含まれる電池モジュール102のSOCをSOC制御目標値に近づけることができる。また、電源装置100に含まれるすべての電池モジュール102に対してバランスよく充電することができる。さらに、充電容量の小さい電池モジュール102の過充電を防止することができる。
[強制接続制御]
次に、複数の電池モジュール102(102a,102b,・・・102n)のうち選択されたものを強制的に接続する制御について説明する。制御コントローラ104は、強制的に接続する対象とする電池モジュール102のOR素子24に強制接続信号を出力する。すなわち、強制接続の対象となる電池モジュール102に属するOR素子24にハイ(H)レベルの制御信号を出力する。
これによって、OR素子24からはハイ(H)レベルが出力され、第1スイッチ素子16のゲート端子にはNOT素子26によってロー(L)レベルが入力され、第2スイッチ素子18のゲート端子にはハイ(H)レベルが入力される。したがって、第1スイッチ素子16は常時オフ状態となり、第2スイッチ素子18は常時オン状態とされ、電池モジュール102はゲート駆動信号の状態によらず強制的に直列接続に繋がれた状態となる。このような強制接続制御は、電源装置100における電池モジュール102のSOCのアンバランスを抑制する制御に利用することができる。
例えば、電源装置100が回生状態の場合、電源装置100に含まれる電池モジュール102の中からSOCが相対的に低い電池モジュール102への回生電力による充電が優先的に行われ、単位時間当たりの放電電流積算量が多くなり、SOCのアンバランスを解消することができる。その結果、電源装置100に含まれる電池モジュール102のSOCをSOC制御目標値に近づけることができる。また、電源装置100に含まれるすべての電池モジュール102に対してバランスよく充電することができる。
また、回生状態でなく、力行状態のときにSOCのアンバランスを解消する制御を行うこともできる。この場合、SOCが相対的に高い電池モジュール102を強制的に接続する制御を行い、SOCが相対的に高い電池モジュール102の消費電力量を大きくすることでSOCのアンバランスを解消させる。すなわち、電源装置100に含まれる電池モジュール102の中からSOCが相対的に高い電池モジュール102からの電力供給(単位時間当たりの放電電流積算量)が大きくなり、SOCのアンバランスを解消することができる。その結果、電源装置100に含まれる電池モジュール102のSOCをSOC制御目標値に近づけることができる。また、電源装置100に含まれるすべての電池モジュール102の充電エネルギーを効率良く使い切ることが可能となる。
[スイッチング周波数の設定方法]
以下、電源装置100におけるスイッチング周波数の設定方法について説明する。本実施の形態における電源装置100では出力状態に応じてスイッチング周波数を設定する。
電源装置100の出力電流Ioの許容値及びコンデンサ電流Icの許容値は、電源装置100を構成する要素のパラメータと出力電流Ioの指令値(出力電流指令値Iave)、スイッチング周波数fsw等に対して以下の数式(1)及び数式(2)(図5)を満たす。
ここで、Tsw:スイッチング周期、fsw:スイッチング周波数、Nm:接続モジュール数、Vbus:回路出力電圧、Lch:リアクトル、Vbat:車載電池電圧、Rbat:車載電池内部抵抗、Vbat_max:車載電池満充電電圧、duty:デューティー比(スイッチング周期に対してON期間の割合)、Io:出力電流、Iave:出力電流指令値、Ic:コンデンサ電流、c:コンデンサ静電容量、lm:インダクタンス、rm:電池内部抵抗、vm:電池電圧を示す。
出力電流Ioは、図1に示した電流センサ32によって測定される電源装置100の出力状態を示す状態値である。出力電流Ioは、出力電流指令値Iaveに基づいて制御される。回路出力電圧Vbusは、図1に示した電圧センサ34によって測定される電源装置100の出力状態を示す状態値である。リアクトルLchは、電源装置100の外部回路のリアクトル(寄生リアクトル等を含む)である。車載電池電圧Vbatは、電源装置100に接続される外部電池の電圧である。車載電池満充電電圧Vbat_maxは、電源装置100に接続される外部電池の満充電時の電圧であり、車載電池電圧Vbatの最大値である。車載電池内部抵抗Rbatは、電源装置100に接続される外部電池の内部抵抗値である。これらの値は、予め取得可能であるか、電流センサ32及び電圧センサ34によって測定可能である。
コンデンサ電流Icは、接続状態にある電池モジュール102のコンデンサ14を流れる電流値である。コンデンサ静電容量cは、接続状態にある電池モジュール102のコンデンサ14の容量値である。インダクタンスlmは、接続状態にある電池モジュール102の内部インダクタンス値(寄生インダクタを含む)である。電池電圧vmは、接続状態にある電池モジュール102の電池10の電圧値である。電池電圧vmは、図1に示す電圧センサ30によって測定することができる。電池内部抵抗rmは、接続状態にある電池モジュール102の電池10の内部抵抗値である。これらの値は、予め取得可能であるか、電圧センサ30によって測定可能である。
数式(1)及び数式(2)を使用し、出力電流指令値Iaveに応じて許容できるスイッチング周波数fswを算出して決定する。すなわち、数式(1)において出力電流Ioをある第1基準値(許容値)以下に維持する条件を満たし、数式(2)において電池10に並列に接続されたコンデンサ14に流れるコンデンサ電流Icを別の第2基準値(許容値)以下に維持する条件を満たすスイッチング周波数fswを算出する。これにより、電源装置100の過充電を防ぎつつ、コンデンサ電流Icの許容範囲内で動作させることができる。
電源装置100を搭載した車両等が低SOC状態で使用されている場合、大電流で電源装置100を充電する。このとき、図6に示すように、電源装置100の出力電流のリプル許容領域は広く、かつ、コンデンサ電流Icを小さくする必要があるのでスイッチング周波数fswは高SOC状態に比べて低周波帯とする。例えば、出力電流Ioが150Aの場合にスイッチング周波数fswを2kHz程度とする。
一方、高SOC状態で使用されている場合、小電流で電源装置100を充電する。このとき、図7に示すように、電源装置100の出力電流のリプル許容領域は狭く、かつ、コンデンサ電流Icを小さくする必要があるのでスイッチング周波数fswは低SOC状態に比べて高周波帯とする。例えば、出力電流Ioが10Aの場合にスイッチング周波数fswを20kHz程度とする。
電源装置100によれば、コンデンサに要する製造コストを低減しつつ、過充電を避けて大電流での充電を可能にすることができる。