以下に、本発明の実施の形態に係る赤外線測定装置について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一符号は同一または相当部分を示す。
(実施の形態1)
本実施の形態1に係る赤外線測定装置は、近接物に照射した赤外線を測定することで対象物が機器に接近したことを検出する光学式の近接センサを一例として以下に説明する。しかし、これに限られず近接センサと同じような構成で赤外線を測定する赤外線測定装置であれば、いずれの赤外線測定装置であってもよい。
図1は、実施の形態1に係る赤外線測定装置100の全体構成を示す図である。赤外線測定装置100は、近接測定部50、レジスタ回路14、PSインタフェース15、POR(パワーオンリセット)16、I2Cインタフェース17等を有している。ここで、POR16は、電源投入時にICを初期化する。
また、赤外線測定装置100は、演算処理部であるMCU(マイクロコントロールユニット)44、赤外発光ダイオード(赤外発光素子)420等を備えている。MCU44は、外部の制御部であり、近接測定部50のオン-オフ切り替え等を行う。赤外線測定装置100には、LED用のGND端子や回路素子のGND端子等も設けられている。電源電圧VDDの端子には、キャパシタ430がGNDとの間に挿入されており、これにより高周波ノイズをカットする。
近接測定部50は、LEDパルス発生器1、赤外線LEDドライバ2、フリッカ測定用の受光素子3a、近接測定用の受光素子3b、積分回路4、AD変換器5、対数変換器6、PSコントロールロジック18で構成される。PSコントロールロジック18は、近接測定部50を制御するためのロジック回路である。また、PSコントロールロジック18は、AD変換器5やレジスタ回路14からのデジタルデータに基づき演算、判定等の処理を行う。ILEDの端子に、電源電圧VDDが供給された赤外発光ダイオード420のカソードが接続されている。赤外発光ダイオード420は、赤外線領域の光を発光させるダイオードである。
フリッカ測定用の受光素子3aは、可視光線を感度良く検出するために、可視光や紫外線を透過させる赤外カットフィルタF1を受光面に有するフォトダイオードで構成される。また、受光素子3aは、可視光線領域に感度ピークを有するフォトダイオードで構成されてもよい。近接測定用の受光素子3bは、赤外線を感度良く検出するために、可視光や紫外線をカットし、赤外線を透過させる可視光カットフィルタF2を受光面に有するフォトダイオードで構成される。また、受光素子3bは、赤外線領域に感度ピークを有するフォトダイオードで構成されてもよい。受光素子3aと受光素子3bとは、積分回路4に対して直列に接続されている。受光素子3aは、スイッチSW1を介して積分回路4に、受光素子3bは、スイッチSW2を介して積分回路4にそれぞれ接続されている。そのため、スイッチSW1およびスイッチSW2を切換えることで、積分回路4に入力される信号をフリッカ測定用の受光素子3aからの信号とするのか、近接測定用の受光素子3bからの信号とするのかを切換えることができる。
近接測定による赤外反射光の測定については以下のように行われる。まず、LEDパルス発生器1で赤外発光ダイオード420を発光させるための基礎となるパルスを発生させ、これを赤外線LEDドライバ2に供給する。赤外線LEDドライバ2は、LEDパルス発生器1からのパルス信号に基づき、赤外発光ダイオード420を駆動させるためのパルス信号に変える。赤外発光ダイオード420が電流駆動であるため、赤外線LEDドライバ2から出力されるパルス信号は、電流パルス信号である。赤外線LEDドライバ2では、5mA~200mAまでの電流パルス信号を作成することができ、例えば5mA~10mAの範囲の電流パルス信号を使用する。また、電流パルス信号のデューティ比は、様々に変化させることができるが、発光期間は、例えば250μSとすることができる。
このように、赤外線LEDドライバ2から発光ダイオードの駆動用電流パルス信号が赤外発光ダイオード420に供給されると、赤外発光ダイオード420は、駆動用電流パルス信号のオン期間に発光動作を行い、これを繰り返す。なお、近接測定部50が周囲光を測定している時には、赤外発光ダイオード420を発光させない。赤外発光ダイオード420からの受光が周囲光の測定に対して誤差信号とならないようにするためである。
赤外発光ダイオード420から放射された赤外線は、近接物(対象物)40に到達して反射する。近接物400から反射して戻ってきた赤外反射光は、近接測定用の受光素子3bで受光される。つまり、スイッチSW1をOFFにし、スイッチSW2をONにすることで受光素子3bを積分回路4に接続する。また、赤外反射光の測定の前後で測定される周囲光は、フリッカ測定用の受光素子3aで受光することにより、近接測定部50で測定される。つまり、近接測定部50は、フリッカ測定部として機能し、スイッチSW1をONにし、スイッチSW2をOFFにすることで受光素子3aを積分回路4に接続する。赤外反射光は、受光素子3bで光電流に変換されて積分回路4に出力される。積分回路4では、光電流を増幅器とキャパシタとによる積分回路で積分し、その値がAD変換器5に出力する。
AD変換器5は、積分回路4で積分された値をAD変換してデジタル値として出力する。ここで、積分回路4およびAD変換器5とで積分型AD変換回路を構成している。積分型AD変換回路では、光電流によるキャパシタへの電荷の充電と、キャパシタからの電荷の一括放電または段階放電とを繰り返すことで、光電流の値を積分して増幅し、増幅した値をデジタル値に変換している。
AD変換器5の出力は、対数変換器6に入力され、対数に変換される。対数変換器6では、例えば21ビットの入力データを8ビットの対数データに変換して出力する。対数変換器6からの対数データはレジスタ回路14に入力され保持される。レジスタ回路14に保持されているデジタルデータは、I2Cインタフェース17を介してMCU44に出力される。一方、近接測定が行われ、近接検出されると、PSインタフェース15を介して割り込み信号がMCU44に伝達される。
周囲光の照度測定についても、近接測定部50で行われる。周囲光の光源41からの光が受光素子3aで受光されると、受光素子3aでは光電変換作用により光電流が発生する。この光電流を増幅器とキャパシタとによる積分回路4で積分し、その値がAD変換器5に入力される。AD変換器5によりAD変換されたデジタル値は、対数変換器6に送信される。対数変換器6では、デジタル値を対数データに変換してレジスタ回路14に送信し、送信された対数データはレジスタ回路14で保持される。レジスタ回路14に保持された周囲光測定データはI2Cインタフェース17を介してMCU44に出力される。
赤外線測定装置100では、上述したように単にフリッカセンサをそのまま追加した構成ではなく、近接測定部50の回路を使って周囲光測定(発光なし測定)を繰り返し行うことでフリッカ測定を行っている。赤外線測定装置100では、フリッカ測定用の回路と、近接測定用の回路とを別々に設けるのではなく、回路を一つ設けるだけでよく、回路を共有化できる。つまり、赤外線測定装置100では、フリッカセンサと近接センサとを単に組み合わせたと考えるより、近接センサで周囲光測定を測定することができるようにシーケンスを変更したと考えることもできる。
次に、赤外線測定装置100の近接測定における基本的な測定タイミングについて説明する。図2は、本実施の形態1に係る赤外線測定装置100の測定タイミングを説明するための図である。図2(a)では、横軸が時間を示している。周囲光には、商用電源周波数(50Hz、60Hz)に基づく所定の周期で発光強度が変動している白熱やハロゲン光等の光源から光が含まれているため、周囲光の放射照度も変動する。
このため、赤外線測定装置100では、赤外発光ダイオード420を発光させて対象物からの反射光を測定する前後に、周囲光の赤外線成分を測定し、これらの値の平均を対象物からの赤外反射光測定値から引き算することにより周囲光の赤外線成分を除去することができる。
図2(a)に示すように、赤外線測定装置100は、赤外発光ダイオード420を発光させて赤外反射光を測定(反射光測定)する場合、この前後で赤外発光ダイオード420を発光させないで周囲光を測定(周囲光測定)する。反射光測定での測定値をB、この前後での周囲光の測定値をそれぞれA1、A3とする。測定値Bには、図2(b)に示すように赤外反射光の成分だけでなく、この時の周囲光の成分も重畳している。そのため、赤外反射光の成分を求めるには、測定値Bから周囲光の成分を減算する必要がある。周囲光の成分が、反射光測定時の前後での周囲光の測定値A1と測定値A2との平均値と等しいとすると、赤外反射光の成分は、B-(A1+A2)/2で算出できる。この赤外反射光の成分が赤外線測定装置100からの出力値となる。
ここで、周囲光の測定値A1、A2は、近接測定部50において、受光素子3aからの光電流に基づく放射照度として算出され、赤外反射光の測定値Bは、近接測定部50において、受光素子3bからの光電流に基づく放射照度として算出される。つまり、図2(b)で示すように、光源41からの光が受光素子3aで受光され、受光素子3aからの光電流に基づく放射照度が周囲光の測定値A1、A2である。赤外発光ダイオード420を発光させて近接物400からの反射光と、光源41からの光とが受光素子3bで受光され、受光素子3bからの光電流に基づく放射照度が赤外反射光の測定値Bである。なお、受光素子3a、受光素子3bおよび赤外発光ダイオード420の制御は、同じ近接測定部50で行われる。
しかし、上述のように赤外反射光の成分を算出する方法では、測定するタイミングによって、周囲光変動の影響が大きくなる場合がある。図3は、本実施の形態1に係る赤外線測定装置100での周囲光と反射光との測定タイミングを説明するための図である。なお、図3では、黒丸(図では、ハッチングした丸、以下同じ)が赤外反射光の測定タイミング、白丸が周囲光の測定タイミングをそれぞれ示している。図3(a)のように、赤外反射光の測定が周囲光の放射照度がピークとなる測定タイミングAの場合、周囲光の成分は、赤外反射光の測定時の前後での周囲光の測定値よりも大きくなる。つまり、測定タイミングAでは、周囲光変動の影響が大きくなる。そのため、赤外反射光の測定値Bから周囲光の測定値A1と測定値A2との平均値を減算しても、測定値Bから周囲光変動の影響を完全に除くことができない。
一方、図3(a)のように、赤外反射光の測定が周囲光の放射照度のピークを外した測定タイミングBの場合、周囲光の成分は、赤外反射光の測定時の前後での周囲光の測定値のほぼ中間の値となる。つまり、測定タイミングBでは、周囲光変動の影響が小さくなる。そのため、赤外反射光の測定値Bから周囲光の測定値A1と測定値A2との平均値を減算すると、測定値Bから周囲光変動の影響をほぼ除くことができる。
このように赤外反射光の成分を算出する方法では、測定タイミングによって周囲光の成分を除去することができず当該成分が残る場合があり、ノイズとして周囲光の成分が加算された赤外反射光の放射照度が算出される。算出した赤外反射光の放射照度にノイズとして周囲光の成分が加わると、近接物がなくても近接物が存在するという判定など、赤外線測定装置の誤動作の原因となる。
上述のような問題を解消するには、図3(b)のように受光素子3aで周囲光を測定して周囲光変動を把握した上で、周囲光の変動周期のピークを外したタイミングで近接測定部50が赤外反射光を測定するように制御する必要がある。図3(b)では、周囲光の変動周期のうち測定値の大きいピークを+Pとし、測定値の小さいボトムを-Pとしている。そして、例えば、MCU44は、+Pのピークから-Pのボトムまでの期間T1と、-Pのボトムから+Pのピークまでの期間T2とから周囲光の変動周期(T1+T2)の1/4の期間(1/4周期)を求める。PSコントロールロジック18は、周囲光の変動周期のピークから1/4の期間外れたタイミングを測定タイミングとして近接測定部50を制御する。
次に、本実施の形態1に係る赤外線測定装置100での測定をフローチャートに基づいて説明する。図4は、本実施の形態1に係る赤外線測定装置100での測定を説明するためのフローチャートである。まず、赤外線測定装置100は、受光素子3aで周囲光を連続測定する(ステップS10)。
赤外線測定装置100は、ステップS10で連続測定して得られた結果から、周囲光の変動周期を検出し、変動周期の位相を把握することができたか否かを判断する(ステップS11)。具体的に、赤外線測定装置100は、図3(b)で示したように周囲光の変動周期(T1+T2)を検出し、周囲光の変動周期のどのタイミングで測定するのかが分かるように変動周期の位相を把握する。変動周期の位相を把握することができない場合(ステップS11でNO)、赤外線測定装置100は、処理をステップS10に戻し、周囲光の連続測定を継続する。
変動周期の位相を把握することができた場合(ステップS11でYES)、赤外線測定装置100は、把握した位相に基づき赤外反射光の測定タイミングを算出する(ステップS12)。具体的に、赤外線測定装置100は、図3(b)で示したように周囲光の変動周期のピークから1/4の期間外れたタイミングを測定タイミングとして算出する。なお、測定タイミングは、周囲光の変動周期のピークから1/4の期間外れたタイミングには限定されず、周囲光変動の影響が少ないタイミング(例えば、周囲光の変動周期のピークから外れたタイミング)であればよい。なお、周囲光の変動周期や位相が把握でききない場合、赤外線測定装置100は、周囲光にフリッカ成分なしと判断して、通常の測定タイミング(デフォルトタイミング)で赤外反射光を測定してもよい。
赤外線測定装置100は、ステップS12で算出した測定タイミングで赤外反射光を測定する(ステップS13)。赤外線測定装置100は、図3(b)に示す黒丸のタイミングで赤外反射光を測定する。
赤外線測定装置100は、測定した赤外反射光の前後の周囲光の平均値との差から赤外反射光照度を算出する(ステップS14)。赤外線測定装置100は、図3(b)に示す黒丸の前後にある白丸の周囲光の測定値から平均値を求め、黒丸の赤外反射光の測定値から当該平均値を減算する。これにより、赤外線測定装置100は、周囲光変動の影響をほぼ除いた赤外反射光照度を得ることができる。
以上のように、本実施の形態1に係る赤外線測定装置100は、赤外発光ダイオード420と、測定部である近接測定部50と、制御部であるPSコントロールロジック18と、演算処理部であるMCU44とを備えている。赤外発光ダイオード420は、近接物に赤外線を照射する。近接測定部50は、赤外発光ダイオード420が発光している状態において近接物で反射した赤外反射光、あるいは赤外発光ダイオード420が非発光の状態での周囲の光を測定する。PSコントロールロジック18は、近接測定部50で測定した周囲の光の変動周期に基づく所定のタイミングで赤外発光ダイオード420、および近接測定部50の駆動を制御する。MCU44は、近接測定部50からの測定データを演算処理し、赤外反射光照度を算出する手段を有する。近接測定部50は、所定のタイミングで赤外線が近接物で反射した赤外反射光を測定した第1の測定値と、赤外発光ダイオード420が非発光の状態で第1の測定値の測定時刻の前後の時刻で測定された第2の測定値及び第3の測定値を出力する。MCU44は、第1の測定値から第2の測定値及び第3の測定値の平均を引き算して赤外反射光照度を算出する。
本実施の形態1に係る赤外線測定装置100は、変動周期に基づく所定のタイミングで測定することで周囲光変動の影響を緩和して、周囲光がノイズとして含まれることを防止し、誤動作を抑制することができる。
近接測定部50の赤外光を測定する測定回路は、変動周期を測定する測定回路と回路を共有化してもよい。これにより、変動周期を測定する測定回路を別途も受ける必要がなく、赤外線測定装置100のコストを低減することができる。また、赤外光を測定する測定回路と、変動周期を測定する測定回路とを共有化することで、周囲光の変動周期の位相を把握でき、赤外線測定装置100は、適切なタイミングで赤外反射光を測定することができる。なお、図1に示す赤外線測定装置100では、赤外光を測定する測定回路と、変動周期を測定する測定回路とを共有化した例を示したが、別々に測定回路を設け、変動周期の位相を把握できるように同期させてもよい。
PSコントロールロジック18は、所定のタイミングを変動周期のピークを外したタイミングとして、近接測定部50が赤外反射光を測定するように制御してもよい。特に、変動周期のピークを外したタイミングを、変動周期のピークから1/4周期外れたタイミングとすることが好ましい。これにより、赤外線測定装置100は、周囲光変動の影響を緩和することができ、周囲光がノイズとして含まれることを防止し、誤動作を抑制することができる。
(実施の形態2)
実施の形態1では、1回の測定で周囲光変動の影響を緩和する構成について説明した。本実施の形態2では、2回の測定で周囲光変動の影響を相殺する構成について説明する。
本実施の形態2に係る赤外線測定装置の全体構成は、図1に示す実施の形態1に係る赤外線測定装置の全体構成と同じであるため、同じ構成に同じ符号を付して詳細な説明を繰返さない。
図5は、本実施の形態2に係る赤外線測定装置100での周囲光と反射光との測定タイミングを説明するための図である。なお、図5では、黒丸が赤外反射光の測定タイミング、白丸が周囲光の測定タイミングをそれぞれ示している。図5(a)のように、赤外反射光の測定が周囲光の放射照度がピークとなる測定タイミングAの場合、周囲光の成分は、赤外反射光の測定時の前後での周囲光の測定値よりも大きくなる。そこで、測定タイミングAと逆位相の位置にある測定タイミングCとの測定値の平均値を求めることで、測定タイミングAでの周囲光変動の影響と、測定タイミングCでの周囲光変動の影響とを相殺している。
上述のように2回の測定で周囲光変動の影響を相殺するには、図5(b)のように受光素子3aで周囲光を測定して周囲光変動を把握した上で、所定のタイミングと、所定のタイミングから変動周期の1/2ずれたタイミングとで近接測定部50が赤外反射光を測定するように制御する必要がある。図5(b)では、周囲光の変動周期のうち測定値の大きいピークを+Pとし、測定値の小さいボトムを-Pとしている。そして、例えば、MCU44は、+Pのピークから-Pのボトムまでの期間T1と、-Pのボトムから+Pのピークまでの期間T2とから周囲光の変動周期(T1+T2)の1/2の期間(1/2周期)を求める。PSコントロールロジック18は、1回目の測定タイミングから変動周期の1/2の期間ずれたタイミングを2回目の測定タイミングとして近接測定部50を制御する。
次に、本実施の形態2に係る赤外線測定装置100での測定をフローチャートに基づいて説明する。図6は、本実施の形態2に係る赤外線測定装置100での測定を説明するためのフローチャートである。まず、赤外線測定装置100は、受光素子3aで周囲光を連続測定する(ステップS20)。
赤外線測定装置100は、ステップS20で連続測定して得られた結果から、周囲光の変動周期を検出し、変動周期の位相を把握することができたか否かを判断する(ステップS21)。具体的に、赤外線測定装置100は、図5(b)で示したように周囲光の変動周期(T1+T2)を検出し、周囲光の変動周期のどのタイミングで測定するのかが分かるように変動周期の位相を把握する。変動周期の位相を把握することができない場合(ステップS21でNO)、赤外線測定装置100は、処理をステップS20に戻し、周囲光の連続測定を継続する。なお、周囲光の変動周期や位相が把握でききない場合、赤外線測定装置100は、周囲光にフリッカ成分なしと判断して、通常の測定タイミング(デフォルトタイミング)で赤外反射光を測定してもよい。
変動周期の位相を把握することができた場合(ステップS21でYES)、赤外線測定装置100は、把握した位相に基づき赤外反射光の測定タイミングを算出する(ステップS22)。具体的に、赤外線測定装置100は、図5(b)で示したように1回目の測定タイミングから変動周期の1/2の期間ずれタイミングを2回目の測定タイミングとして算出する。なお、2回目の測定タイミングは、1回目の測定タイミングから変動周期の1/2の期間ずれたタイミングには限定されず、周囲光変動の影響を相殺できる期間ずれたタイミングであればよい。
赤外線測定装置100は、測定タイミングで1回目の赤外反射光を測定する(ステップS23)。赤外線測定装置100は、図5(b)に示す1つ目の黒丸のタイミングで赤外反射光を測定する。1回目の測定タイミングは、ステップS22で2回目の測定タイミングを算出後すぐのタイミングとしても、所定の期間(例えば、次の周囲光の変動周期のピークまでの期間)を待って後のタイミングとしてもよい。
赤外線測定装置100は、ステップS23で測定した赤外反射光の前後の周囲光の平均値との差から1回目の赤外反射光照度を算出する(ステップS24)。赤外線測定装置100は、図5(b)に示す1つ目の黒丸の前後にある白丸の周囲光の測定値から平均値を求め、1つ目の黒丸の赤外反射光の測定値から当該平均値を減算する。
赤外線測定装置100は、1回目の測定タイミングから変動周期の1/2の期間ずれた測定タイミングで2回目の赤外反射光を測定する(ステップS25)。赤外線測定装置100は、図5(b)に示す2つ目の黒丸のタイミングで赤外反射光を測定する。
赤外線測定装置100は、ステップS25で測定した赤外反射光の前後の周囲光の平均値との差から2回目の赤外反射光照度を算出する(ステップS26)。赤外線測定装置100は、図5(b)に示す2つ目の黒丸の前後にある白丸の周囲光の測定値から平均値を求め、2つ目の黒丸の赤外反射光の測定値から当該平均値を減算する。
赤外線測定装置100は、1回目の赤外反射光照度と2回目の赤外反射光照度との平均値を算出する(ステップS27)。赤外線測定装置100は、算出した平均値を赤外反射光照度として出力する。これにより、赤外線測定装置100は、周囲光変動の影響をほぼ除いた赤外反射光照度を得ることができる。
以上のように、本実施の形態2に係る赤外線測定装置100は、近接測定部50が、所定のタイミングと、所定のタイミングから変動周期の1/2ずれたタイミングとで、第1の測定値、第2の測定値および第3の測定値を2回出力し、MCU44は、2回出力された測定値から各々の赤外反射光照度を求め、2回求めた赤外反射光照度の平均を算出する。
本実施の形態2に係る赤外線測定装置100は、変動周期の1/2ずらせて2回測定することで周囲光変動の影響を相殺して、周囲光がノイズとして含まれることを防止し、誤動作を抑制することができる。
なお、本実施の形態2に係る赤外線測定装置100は、実施の形態1で説明した構成と組み合わせてもよい。具体的に、本実施の形態2に係る赤外線測定装置100は、1回目の赤外反射光照度を変動周期のピークから1/4周期外れたタイミングとし、2回目の測定タイミングを1回目の赤外反射光照度から変動周期の1/2ずれたタイミングとする。
(実施の形態3)
実施の形態1および2では、周囲光変動が正弦波あるいは正弦波に近い波形として、周囲光変動の影響を緩和する構成について説明した。しかし、光源41からの光が調光されている場合、周囲光変動は正弦波ではなく、整流された波形になる。本実施の形態3では、周囲光変動が正弦波とならない場合に周囲光変動の影響を緩和する構成について説明する。
本実施の形態3に係る赤外線測定装置の全体構成は、図1に示す実施の形態1に係る赤外線測定装置の全体構成と同じであるため、同じ構成に同じ符号を付して詳細な説明を繰返さない。
図7は、本実施の形態3に係る赤外線測定装置100での2回の測定タイミングを説明するための図である。なお、図7では、黒丸が赤外反射光の測定タイミング、白丸が周囲光の測定タイミングをそれぞれ示している。図7のように、周囲光変動の波形は正弦波ではなく整流された波形となっている。そのため、赤外反射光の測定が周囲光の放射照度がピークとなる1回目の測定タイミングDから変動周期の1/2ずれたタイミングを2回目の測定タイミングEとしても、測定タイミングDと測定タイミングEとが逆位相の位置とならない。そのため、測定タイミングDと測定タイミングEとの測定値の平均値を求めても、測定タイミングDでの周囲光変動の影響と、測定タイミングEでの周囲光変動の影響とを相殺することができない。
本実施の形態3に係る赤外線測定装置100では、光源41からの光が調光されている場合にも対応するため、周囲光を連続測定してフリッカ情報(例えば、変動周期、変動のタイミングなどの情報を含む)を検出して、測定タイミングを算出している。図8は、本実施の形態3に係る赤外線測定装置での周囲光と反射光との測定タイミングを説明するための図である。
図8(a)に示すように、赤外線測定装置100では、スマートフォンの通話中に近接測定を行う前に、非通話時などの期間に周囲光のみを連続測定してフリッカ情報を検出しておく。赤外線測定装置100は、検出したフリッカ情報に基づいて測定タイミングを算出する。
図8(b)では、MCU44が、測定タイミングとして、近接測定部50の測定を開始するまでのWait時間B(第1の待ち時間)、およびWait時間Bから次の測定までのWait時間C(第2の待ち時間)を算出する。つまり、図8(b)のように正弦波でない波形において、MCU44は、周囲光の波形のピーク(データA)を外したタイミングをWait時間Bとして算出し、その後、波形の繰り返し周期にあわせてWait時間Cを算出する。赤外線測定装置100では、図1で示したように近接測定部50が周囲光を測定する機能を有しているので、周囲光(フリッカ)の周期と近接測定の周期とを同期させることができる。これにより、赤外線測定装置100は、周囲光の周期情報だけでなく位相情報も用いることができ、Wait時間BおよびWait時間Cの情報を含む測定タイミングを生成することができる。
次に、本実施の形態3に係る赤外線測定装置100での測定をフローチャートに基づいて説明する。図9は、本実施の形態3に係る赤外線測定装置100での測定を説明するためのフローチャートである。まず、赤外線測定装置100は、受光素子3aで周囲光を連続測定する(ステップS30)。
赤外線測定装置100は、ステップS30で連続測定して得られた結果から、周囲光の変動周期を検出し、変動周期の位相を把握することができたか否かを判断する(ステップS31)。具体的に、赤外線測定装置100は、図8(a)で示したように周囲光測定のみの期間からフリッカ情報を検出し、周囲光の波形のどのタイミングで測定するのかが分かるように変動周期の位相を把握する。変動周期の位相を把握することができない場合(ステップS31でNO)、赤外線測定装置100は、処理をステップS30に戻し、周囲光の連続測定を継続する。なお、周囲光の変動周期や位相が把握でききない場合、赤外線測定装置100は、周囲光にフリッカ成分なしと判断して、通常の測定タイミング(デフォルトタイミング)で赤外反射光を測定してもよい。
変動周期の位相を把握することができた場合(ステップS31でYES)、赤外線測定装置100は、把握した位相に基づき赤外反射光の測定タイミングを算出する(ステップS22)。具体的に、赤外線測定装置100は、図8(b)で示したようにWait時間B(第1の待ち時間)およびWait時間C(第2の待ち時間)を算出する。
赤外線測定装置100は、波形のピーク(データA)からWait時間B後に1回目の赤外反射光を測定する(ステップS33)。赤外線測定装置100は、図8(b)に示す1つ目の黒丸のタイミングで赤外反射光を測定する。
赤外線測定装置100は、ステップS33で測定した赤外反射光の前後の周囲光の平均値との差から1回目の赤外反射光照度を算出する(ステップS34)。赤外線測定装置100は、図8(b)に示す1つ目の黒丸の前後にある白丸の周囲光の測定値から平均値を求め、1つ目の黒丸の赤外反射光の測定値から当該平均値を減算する。
赤外線測定装置100は、1回目の測定タイミングからWait時間C後に2回目の赤外反射光を測定する(ステップS35)。赤外線測定装置100は、図8(b)に示す2つ目の黒丸のタイミングで赤外反射光を測定する。
赤外線測定装置100は、ステップS35で測定した赤外反射光の前後の周囲光の平均値との差から2回目の赤外反射光照度を算出する(ステップS36)。赤外線測定装置100は、図8(b)に示す2つ目の黒丸の前後にある白丸の周囲光の測定値から平均値を求め、2つ目の黒丸の赤外反射光の測定値から当該平均値を減算する。
赤外線測定装置100は、以降、Wait時間Cごとに赤外反射光を測定する(ステップS37)。その後、赤外線測定装置100は、近接測定を終了するまで、Wait時間Cごとに測定した赤外反射光の前後の周囲光の平均値との差から2回目以降の赤外反射光照度を算出する。
以上のように、本実施の形態3に係る赤外線測定装置100は、PSコントロールロジック18が、所定のタイミングとして、近接測定部50の測定を開始するまでの第1の待ち時間(Wait時間B)、および第1の待ち時間から次の測定までの第2の待ち時間(Wait時間C)となるように、近接測定部50が赤外反射光を測定するように制御する。
本実施の形態3に係る赤外線測定装置100は、第1の待ち時間(Wait時間B)、および第2の待ち時間(Wait時間C)を算出することで、周囲光変動が正弦波とならない場合でも周囲光変動の影響が少ないタイミングで測定し周囲光変動の影響を緩和することで、周囲光がノイズとして含まれることを防止し、誤動作を抑制することができる。
(実施の形態4)
実施の形態3では、赤外線測定装置100では、スマートフォンの通話中に近接測定を行う前に、非通話時などの期間に周囲光のみを連続測定してフリッカ情報を検出しておくと説明した。しかし、光源41からの光が常に安定していると限らない。本実施の形態4では、周囲光変動が安定しているか否かを確認して、周囲光変動の影響を緩和する構成について説明する。
本実施の形態4に係る赤外線測定装置の全体構成は、図1に示す実施の形態1に係る赤外線測定装置の全体構成と同じであるため、同じ構成に同じ符号を付して詳細な説明を繰返さない。
例えば、スマートフォンを持った人が部屋の中を移動するなどにより、フリッカ以外の要因で赤外線測定装置100に入射する周囲光が変動する可能性がある。そのため、赤外線測定装置100は、周囲光変動が安定しているか、所定の周期前に周囲光変動を取得した状態のままかを確認して周囲光変動を新たに取得する必要がある。
本実施の形態4に係る赤外線測定装置100では、光源41からの光が安定しているか否かを確認後に、周囲光を連続測定しフリッカ情報(例えば、変動周期、変動のタイミングなどの情報を含む)を検出して、測定タイミングを算出している。図10は、本実施の形態4に係る赤外線測定装置での周囲光と反射光との測定タイミングを説明するための図である。
図10に示すように、赤外線測定装置100では、スマートフォンの通話中に近接測定を行う前に、非通話時などの期間に周囲光のみを連続測定してフリッカ情報を検出しておく。しかし、周囲光変動が安定していなければ正確なフリッカ情報を得ることはできない。そこで、赤外線測定装置100は、周囲光のみを連続測定して周囲光変動が安定しているか否かを判断し、安定している場合にフリッカ情報を取得する。赤外線測定装置100は、例えば、図10に示すように3周期の間、ピークレベルが大きく変化していない場合、安定周期であると判断し、それ以降の周囲光のみを連続測定でフリッカ情報を取得する。
次に、本実施の形態4に係る赤外線測定装置100での測定をフローチャートに基づいて説明する。図11は、本実施の形態4に係る赤外線測定装置100での測定を説明するためのフローチャートである。まず、赤外線測定装置100は、受光素子3aで周囲光を連続測定する(ステップS40)。
赤外線測定装置100は、所定の周期、周囲光の変動周期を検出していないか否かを判断する(ステップS41)。例えば、100周期(所定の周期)前の周囲光の変動周期で赤外反射光を測定したのでは、人の移動なので周囲光の変動周期が変わり、十分に周囲光変動の影響を緩和することができない。そこで、100周期(所定の周期)、周囲光の変動周期を検出していないのであれば、変動周期を更新するために再度検出を行う。
所定の周期、周囲光の変動周期を検出していない場合(ステップS41でYES)、赤外線測定装置100は、検出した周囲光の変動周期が安定しているか否かを判断する(ステップS42)。検出した周囲光の変動周期が安定していない場合(ステップS42でNO)、赤外線測定装置100は、処理をステップS40に戻し、周囲光の連続測定を継続する。
検出した周囲光の変動周期が安定している場合(ステップS42でYES)、赤外線測定装置100は、ステップS40で連続測定して得られた結果から、周囲光の変動周期を検出し、変動周期の位相を把握する(ステップS43)。具体的に、赤外線測定装置100は、図10で示したように安定周期であると判断した場合、周囲光測定のみの期間からフリッカ情報を検出し、周囲光の波形のどのタイミングで測定するのかが分かるように変動周期の位相を把握する。なお、周囲光の変動周期や位相が把握でききない場合、赤外線測定装置100は、周囲光にフリッカ成分なしと判断して、通常の測定タイミング(デフォルトタイミング)で赤外反射光を測定してもよい。
所定の周期、周囲光の変動周期を検出している場合(ステップS41でNO)、またはステップS43で変動周期の位相を把握した場合、赤外線測定装置100は、把握した位相に基づき赤外反射光の測定タイミングを算出する(ステップS44)。具体的に、赤外線測定装置100は、図8(b)で示したようにWait時間B(第1の待ち時間)およびWait時間C(第2の待ち時間)を算出する。
赤外線測定装置100は、波形のピーク(データA)からWait時間B後に1回目の赤外反射光を測定する(ステップS45)。赤外線測定装置100は、図8(b)に示す1つ目の黒丸のタイミングで赤外反射光を測定する。
赤外線測定装置100は、ステップS45で測定した赤外反射光の前後の周囲光の平均値との差から1回目の赤外反射光照度を算出する(ステップS46)。赤外線測定装置100は、図8(b)に示す1つ目の黒丸の前後にある白丸の周囲光の測定値から平均値を求め、1つ目の黒丸の赤外反射光の測定値から当該平均値を減算する。
赤外線測定装置100は、1回目の測定タイミングからWait時間C後に2回目の赤外反射光を測定する(ステップS47)。赤外線測定装置100は、図8(b)に示す2つ目の黒丸のタイミングで赤外反射光を測定する。
赤外線測定装置100は、ステップS35で測定した赤外反射光の前後の周囲光の平均値との差から2回目の赤外反射光照度を算出する(ステップS48)。赤外線測定装置100は、図8(b)に示す2つ目の黒丸の前後にある白丸の周囲光の測定値から平均値を求め、2つ目の黒丸の赤外反射光の測定値から当該平均値を減算する。
赤外線測定装置100は、以降、Wait時間Cごとに赤外反射光を測定する(ステップS49)。その後、赤外線測定装置100は、近接測定を終了するまで、Wait時間Cごとに測定した赤外反射光の前後の周囲光の平均値との差から2回目以降の赤外反射光照度を算出する。
以上のように、本実施の形態3に係る赤外線測定装置100は、PSコントロールロジック18が、所定の周期ごとに、近接測定部50で周囲の光を測定して変動周期を更新する。
本実施の形態4に係る赤外線測定装置100は、周囲光変動が安定しているか否かを確認して周囲光変動の影響を緩和するので、周囲光がノイズとして含まれることを防止し、誤動作を抑制することができる。
(変形例)
上述の実施の形態では、フリッカ測定と近接測定とで検出したい光の波長が異なるため、赤外線測定装置100が、フリッカ測定用の受光素子3aと、近接測定用の受光素子3bとを設けてる。フリッカ測定の検出波長を赤外のみに変更して近接測定用の受光素子でフリッカ測定を行ってもよい。
図12は、変形例に係る赤外線測定装置100aの構成を示すブロック図である。図13は、変形例に係る赤外線測定装置100aの受光素子の構成を示す図である。なお、変形例に係る赤外線測定装置100の全体構成のうち、図1に示す実施の形態1に係る赤外線測定装置の全体構成と同じ構成については、同じ符号を付して詳細な説明を繰返さない。
赤外線測定装置100aでは、図13に示すように、フリッカ測定用の受光素子3aと近接測定用の受光素子3bとを設ける代わりに受光素子3のみ設けている。受光素子3は、赤外線を感度良く検出するために、可視光や紫外線をカットし、赤外線を透過させる可視光カットフィルタFを受光面に有するフォトダイオードで構成される。また、受光素子3は、赤外線領域に感度ピークを有するフォトダイオードで構成されてもよい。積分回路4には、受光素子3のみが接続されているので、受光素子3aと受光素子3bとを接続する場合のようにスイッチSW1、SW2は不要である。
赤外線測定装置100aは、図12に示すように、近接測定部50に周囲光の周期を検出し、変動周期の位相を把握するフリッカ解析部50a、当該フリッカ解析部50aで解析したフリッカ情報に基づいて赤外反射光の測定タイミングを算出するタイミング生成部50bを有してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。