JP7316197B2 - 偏光フィルムの製造方法、偏光フィルムの製造装置及び制御システム - Google Patents
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Description
偏光フィルムは、例えば、特許文献1に記載のように、長尺帯状の偏光子の製造から、長尺帯状の保護フィルムを接着して長尺帯状の偏光フィルムを得るまでの一連の工程を1つの製造ライン上で行うロールツーロール方式で製造される。
図3に示すように、従来の偏光フィルムの製造方法では、まず、繰出ロール1に巻回された原反フィルムF0を繰り出し、処理槽2(例えば、原反フィルムF0の搬送方向上流側から順に、膨潤処理槽、染色処理槽、架橋処理槽、延伸処理槽、洗浄処理槽から構成される)内の処理浴に浸漬して、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質で染色すると共に一軸延伸する。次いで、オーブン3で乾燥させることで、偏光子F1を得る。次いで、例えば、偏光子F1の両面に塗工機6で活性エネルギー線硬化型接着剤を塗工する。また、例えば、繰出ロール(図示省略)から繰り出された保護フィルムF2の片面に塗工機(図示省略)で活性エネルギー線硬化型接着剤を塗工する。そして、貼り合わせロール7によって、接着剤が塗工された保護フィルムF2を、接着剤が塗工された偏光子F1の両面に貼り合わせる。その後、図示を全て省略するが、活性エネルギー線照射装置から偏光子F1及び保護フィルムF2間の接着剤に活性エネルギー線を照射して硬化させた後、オーブンで乾燥させ、必要に応じて他のフィルム(表面保護フィルム等)を貼り合わせることで偏光フィルムを製造する。
エンコーダ50は、貼り合わせロール7の回転数を測定し、制御装置40に出力する。制御装置40は、入力された貼り合わせロール7の回転数と、予め記憶された貼り合わせロール7の外径とに基づき、貼り合わせロール7の周速P0’を演算する。そして、制御装置40は、貼り合わせロール7の周速P0’と第1テンションカットロール20の周速との比率が予め定められた値になるように、第1テンションカットロール20の周速を制御(比率一定制御)する。具体的には、第1テンションカットロール20aの周速をP1a、第1テンションカットロール20bの周速をP1b、第1テンションカットロール20cの周速をP1cとすると、制御装置40は、P1a/P0’=α1、P1b/P0’=α2、P1c/P0’=α3(α1、α2、α3は所定の定数)となるように、周速P1a、P1b及びP1cを決定し、各周速P1a~P1cで第1テンションカットロール20a~20cがそれぞれ回転するように、第1テンションカットロール20a~20cの駆動部(図示省略のモータ等)に制御信号を送信する。一般に、貼り合わせロール7は予め決められた一定の周速で回転させるため、第1テンションカットロール20も一定の周速で回転することになる。
なお、図3に示す例では、貼り合わせロール7の回転数を測定した結果に基づき、貼り合わせロール7の周速P0’を演算し、演算した周速P0’に基づき、第1テンションカットロール20の周速を制御しているが、貼り合わせロール7の周速を実際に測定・演算することなく、貼り合わせロール7の周速の設定値又は回転数の設定値に基づき、第1テンションカットロール20の周速を制御する場合もある。
第2テンションカットロール60の周速の比率一定制御は、予め決められた所定の延伸倍率で原反フィルムF0を延伸するために必要である。
従来の偏光フィルムの製造方法における偏光子F1の搬送(処理槽2と貼り合わせロール7との間での搬送)方法は、偏光子F1が比較的大きく伸縮可能な場合には支障が生じ難い。すなわち、偏光子F1が大きく伸縮可能であれば、実際の張力が大きく変動しても、偏光子F1が伸縮することで、張力変動の影響が緩和される。
水分率の低い偏光子F1は殆ど伸縮しないため、従来の偏光フィルムの製造方法では、張力変動の影響が緩和され難く、偏光子F1の搬送に支障が生じたり、偏光子F1が破断するおそれが高まるという問題がある。
また、本発明における「下流側」とは、偏光子又は原反フィルムの搬送方向下流側を意味する。
本発明によれば、第1制御工程において、第1テンションカットロールの下流側に配置された張力計で測定した張力が予め定められた値になるように、第1テンションカットロールの周速を制御する(以下、これを適宜「張力一定制御」という)。すなわち、実際に測定した張力が予め定められた値になるように第1テンションカットロールの周速を制御するため、オーブン出側での偏光子の水分率が低くても、偏光子に実際に生じる張力の変動が小さくなり、偏光子の搬送を安定化させることが可能である。
例えば、第1テンションカットロール及び張力計がそれぞれ3つずつ配置されている場合(下流側から順に、張力計30a、第1テンションカットロール20a、張力計30b、第1テンションカットロール20b、張力計30c、第1テンションカットロール20cが配置されている場合)には、張力計30aで測定した張力が予め定められた値になるように第1テンションカットロール20aの周速を制御した後、張力計30bで測定した張力が予め定められた値になるように第1テンションカットロール20bの周速を制御し、その後、張力計30cで測定した張力が予め定められた値になるように第1テンションカットロール20cの周速を制御することを意味する。
本発明によれば、張力計及び第1テンションカットロールを交互に複数配置する場合に、最も下流側に配置された張力計及び第1テンションカットロールの組み合わせによる周速の制御を実行した後、順次上流側に配置された組み合わせに向けて周速の制御を実行するため、制御が発散することなく、安定した周速の制御が可能である。これにより、張力計及び第1テンションカットロールを交互に複数配置する場合において、偏光子に実際に生じる張力の変動が小さくなり、偏光子の搬送を安定化させることが可能である。
上記の好ましい方法によれば、第2制御工程において、基本的には、処理槽の出側に配置された第1テンションカットロールの周速と第2テンションカットロールの周速との比率が予め定められた値になるように、第2テンションカットロールの周速を制御する、すなわち、比率一定制御を実行することになる。しかしながら、比率の基準となる処理槽の出側に配置された第1テンションカットロールの周速として、実際に測定した周速を用いるため、上記のように、処理槽の出側に配置された第1テンションカットロールの周速が変動したとしても、比率一定制御を適切に実行することができ、予め決められた所定の延伸倍率で原反フィルムを延伸することが可能である。
なお、「偏光子の水分率」は、オーブンで乾燥した後の偏光子中に含まれる水分の割合を意味する。具体的には、オーブンで乾燥した後の偏光子の重量(乾燥後の偏光子の重量)と、その乾燥後の偏光子から実質的に水分を除去した後の偏光子の重量(完全乾燥後の偏光子の重量)とをそれぞれ測定し、以下の式に各重量を代入して求められる。
偏光子の水分率=(乾燥後の偏光子の重量-完全乾燥後の偏光子の重量)/乾燥後の偏光子の重量×100
なお、本明細書において、「下限値X~上限値Y」で表される数値範囲は、下限値X以上上限値Y以下を意味する。前記数値範囲が別個に複数記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値とを選択して、「任意の下限値~任意の上限値」を設定できるものとする。
また、各図は、参考的に表したものであり、各図に表された部材などの寸法、縮尺及び形状は、実際のものとは異なっている場合があることに留意されたい。
さらに、以下の説明では、「偏光フィルムの製造方法」及び「偏光フィルムの製造装置」を、それぞれ単に「製造方法」及び「製造装置」という場合がある。
図1又は図2に示すように、本実施形態に係る製造装置は、偏光子F1の製造から少なくとも保護フィルムF2を接着して偏光フィルムFを得るまでの一連の工程を1つの製造ライン上で行うロールツーロール方式の製造装置である。本実施形態に係る製造装置は、原反フィルムF0を二色性物質で染色すると共に一軸延伸する処理槽2と、処理槽2で処理された原反フィルムF0を乾燥させて偏光子F1を作製するオーブン3と、偏光子F1と保護フィルムF2とを貼り合わせる貼り合わせロール7と、処理槽2と貼り合わせロール7との間に配置され、偏光子F1を搬送する第1テンションカットロール20と、を備えている。本実施形態の第1テンションカットロール20は、複数配置されている。具体的には、図2に示すように、第1テンションカットロール20として、下流側(偏光子F1の搬送方向下流側)から順に、3つの第1テンションカットロール20a~20cが配置されている。本実施形態の第1テンションカットロール20は、何れもニップロールである。
ただし、本発明は、これに限るものではなく、2つ又は4つ以上の第1テンションカットロール20が配置されていてもよいし、1つの第1テンションカットロール20が配置されているだけでもよい。また、第1テンションカットロール20がサクションロールなどの他の形式のロールであってもよい。
張力計30としては、例えば、微小変位方式を測定原理とする三菱電機社製の微偏位張力検出器「LX-100TD」を用いることができる。
また、本実施形態に係る製造装置は、処理槽2の出側に配置された第1テンションカットロール20cの回転数を測定するエンコーダ70を備えている。
本実施形態に係る制御システム100は、以上に述べた張力計30、制御装置40及びエンコーダ70を備える構成である。
ただし、本発明は、これに限るものではなく、2つ、3つ、4つ又は6つ以上の第2テンションカットロール60が配置されていてもよいし、1つの第2テンションカットロール60が配置されているだけでもよい。また、第2テンションカットロール60がサクションロールなどの他の形式のロールであってもよい。
原反フィルムF0としては、特に限定されないが、二色性物質による染色性に優れていることから、好ましくは、親水性ポリマーフィルム(例えば、ポリビニルアルコール系フィルムなど)を含むフィルムが用いられ、より好ましくは、親水性ポリマーフィルムが用いられる。親水性ポリマーフィルムを含むフィルムとしては、親水性ポリマーフィルムと非親水性ポリマーフィルムとが積層されたフィルムが挙げられる。この場合、非親水性ポリマーフィルムの表面及び/又は裏面に親水性ポリマーフィルムが積層されていることが好ましい。この場合、非親水性ポリマーフィルムの表面及び/又は裏面に積層される親水性ポリマーフィルムは、厚み数μm程度の薄い膜状であってもよい。
PVA系ポリマーフィルムの原料ポリマーとしては、例えば、酢酸ビニルを重合した後にケン化したポリマー、酢酸ビニルに対して少量の不飽和カルボン酸や不飽和スルホン酸等の共重合可能なモノマーを共重合したポリマー、などが挙げられる。PVA系ポリマーの重合度は、特に限定されないが、水に対する溶解度の点等から、500~10000が好ましく、より好ましくは、1000~6000である。また、PVA系ポリマーのケン化度は、75モル%以上が好ましく、より好ましくは、98モル%~100モル%である。
未処理の原反フィルムF0の厚みは、特に限定されないが、例えば、15μm~110μmである。
膨潤処理槽は、膨潤処理液が収容された処理槽である。膨潤処理液は、原反フィルムF0を膨潤させる。膨潤処理液としては、例えば、水を使用することができる。さらに、水に、グリセリンやヨウ化カリウムなどのヨウ素化合物を適量加えた水を膨潤処理液としてもよい。グリセリンを添加する場合、その濃度は5重量%以下が好ましく、ヨウ化カリウムなどのヨウ素化合物を添加する場合、その濃度は10重量%以下が好ましい。
染色処理槽は、染色処理液が収容された処理槽である。染色処理液は、原反フィルムF0を染色する。染色処理液としては、有効成分として二色性物質を含む溶液が挙げられる。二色性物質としては、ヨウ素、有機染料などが挙げられる。好ましくは、染色処理液として、ヨウ素を溶媒に溶解させた溶液を使用できる。溶媒としては、水が一般的に使用されるが、水と相溶性のある有機溶媒が更に添加されてもよい。染色処理液中のヨウ素の濃度としては、特に限定されないが、0.01重量%~10重量%であることが好ましく、0.02重量%~7重量%の範囲がより好ましく、0.025重量%~5重量%であることがさらに好ましい。染色効率をより一層向上させるために、必要に応じて、染色処理液にヨウ素化合物を添加してもよい。ヨウ素化合物は、分子内にヨウ素とヨウ素以外の元素とを含む化合物であり、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンなどが挙げられる。
架橋処理槽は、架橋処理液が収容された処理槽である。架橋処理液は、染色された原反フィルムF0を架橋する。架橋処理液としては、有効成分としてホウ素化合物を含む溶液を使用できる。例えば、架橋処理液としては、ホウ素化合物を溶媒に溶解させた溶液が使用できる。溶媒としては、水が一般的に使用されるが、水と相溶性のある有機溶媒が更に添加されてもよい。ホウ素化合物としては、ホウ酸、ホウ砂などが挙げられる。架橋処理液中のホウ素化合物の濃度としては、特に限定されないが、1重量%~10重量%であることが好ましく、2重量%~7重量%がより好ましく、2重量%~6重量%であることがさらに好ましい。さらに、均一な光学特性を有する偏光子が得られることから、必要に応じて、架橋処理液にヨウ素化合物を添加してもよい。
延伸処理槽は、延伸処理液が収容された処理槽である。
延伸処理液は、特に限定されないが、例えば、有効成分としてホウ素化合物を含む溶液を使用できる。延伸処理液としては、例えば、ホウ素化合物、及び必要に応じて、各種金属塩、亜鉛化合物などを溶媒に溶解させた溶液が使用できる。溶媒としては、水が一般的に使用されるが、水と相溶性のある有機溶媒が更に添加されてもよい。延伸処理液中のホウ素化合物の濃度としては、特に限定されないが、1重量%~10重量%であることが好ましく、2重量%~7重量%がより好ましい。フィルムに吸着させたヨウ素の溶出を抑制する観点から、必要に応じて、延伸処理液に、ヨウ素化合物を添加してもよい。
洗浄処理槽は、洗浄処理液が収容された処理槽である。洗浄処理液は、延伸後の原反フィルムF0を洗浄する。洗浄処理液は、原反フィルムF0に付着した染色処理液や架橋処理液などの処理液を洗浄するための処理液である。洗浄処理液としては、代表的には、イオン交換水、蒸留水、純水などの水が用いられる。
なお、本実施形態の処理槽2は、膨潤処理槽、染色処理槽、架橋処理槽、延伸処理槽及び洗浄処理槽を有するが、これらのうちの1つ又は2つの処理槽を省略してもよい。他方、処理槽2は、調整処理槽(図示せず)を更に有していてもよい。調整処理槽は、調整処理液が収容された処理槽である。この調整処理槽は、架橋処理槽と延伸処理槽との間、又は、延伸処理槽と洗浄処理槽との間に設けられる。調整処理液は、フィルムの色相調整などのための溶液であり、有効成分としてヨウ素化合物を含む溶液を使用できる。
洗浄後の原反フィルムF0をオーブン3で乾燥させて得られるフィルムが、偏光子F1である。
オーブン3出側での偏光子F1の厚みは、特に限定されないが、例えば、20μm以下である場合に、本実施形態に係る製造方法が好適に用いられる。
また、オーブン3出側での偏光子F1の水分率は、特に限定されないが、15%以下である場合に、本実施形態に係る製造方法が好適に用いられる。例えば、オーブン3での乾燥温度が60℃以上で、乾燥時間が30秒以上である場合に、オーブン3出側での偏光子F1の水分率が15%以下になり易い。
上記の偏光子としては、代表的には、特開昭51-069644号公報、特開2000-338329号公報、国際公開第2010/100917号、特開2014-059328号公報、特開2012-73563号公報に記載されている薄型偏光膜を挙げることができる。これら薄型偏光膜は、PVA系樹脂層と延伸用樹脂基材とを積層体の状態で延伸する工程と染色する工程とを含む製法によって得ることができる。この製法であれば、PVA系樹脂層が薄くても、延伸用樹脂基材に支持されていることにより、延伸による破断などの不具合なく延伸することが可能となる。
活性エネルギー線硬化型接着剤としては、従来公知のものを使用できる。活性エネルギー線硬化型接着剤は、一般に、活性エネルギー線硬化性成分及び重合開始剤を含み、必要に応じて、各種の添加剤を含む。
活性エネルギー線硬化性成分は、電子線硬化性、紫外線硬化性、可視光線硬化性に大別できる。また、活性エネルギー線硬化性成分は、硬化のメカニズムの観点では、ラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物とに大別できる。
活性エネルギー線硬化型接着剤としてラジカル重合性化合物を用いる場合の重合開始剤は、活性エネルギー線に応じて適宜に選択される。紫外線又は可視光線により接着剤を硬化させる場合には、紫外線開裂又は可視光線開裂の重合開始剤が用いられる。このような重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、芳香族ケトン化合物、アセトフェノン系化合物、芳香族ケタール系化合物、芳香族スルホニルクロリド系化合物、チオキサントン系化合物などが挙げられる。
活性エネルギー線硬化型接着剤としてカチオン重合性化合物を用いる場合、カチオン重合開始剤が配合される。このカチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、電子線などの活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、カチオン重合性化合物のエポキシ基などと重合反応を開始する。カチオン重合開始剤としては、光酸発生剤と光塩基発生剤とを使用することができる。
このような活性エネルギー線硬化型接着剤は、例えば、特開2018-092186号公報に開示されており、本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤として、上記公報に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤を用いることができる。本明細書においては、紙面の都合上、上記公報の記載を転記することを省略するが、上記公報の接着剤に関する記載を本明細書にそのまま取り込めるものとする。
また、塗工開始時の接着剤の粘度は、特に限定されないが、あまりに小さい又は大きいと、塗工開始時から接着剤の接着性の低下を生じる。かかる観点から、接着剤は、塗工開始時の25℃での粘度が1mPa・s~100mPa・sに調整されていることが好ましく、塗工開始時の25℃での粘度が10mPa・s~50mPa・sに調整されていることがより好ましく、15mPa・s~45mPa・sに調整されていることが特に好ましい。
制御システム100が備える制御装置40は、張力計30で測定した張力が予め定められた値になるように、第1テンションカットロール20の周速を制御する(本発明の第1制御工程に相当)。具体的には、偏光フィルムFを製造している間、張力計30は、常に偏光子F1の張力を測定し、制御装置40に出力する。そして、図2に示すように、制御装置40は、最も下流側に配置された張力計30aから入力された張力Taが予め定められた値になるように、第1テンションカットロール20aの周速を制御(張力一定制御)する。具体的には、制御装置40は、入力された張力Taが予め定められ制御装置40に記憶された値よりも小さい場合には、第1テンションカットロール20aの周速が現時点よりも大きい周速P1aとなるように、第1テンションカットロール20aの駆動部(図示省略のモータ等)に制御信号を送信する。逆に、入力された張力Taが予め定められ制御装置40に記憶された値よりも大きい場合には、第1テンションカットロール20aの周速が小さい周速P1aとなるように、第1テンションカットロール20aの駆動部に制御信号を送信する。
また、本実施形態に係る制御システム100は、第1制御工程において、最も下流側に配置された張力計30a及び第1テンションカットロール20aの組み合わせによる周速P1aの制御を実行した後、最も上流側に配置された張力計30c及び第1テンションカットロール20cの組み合わせによる周速P1cの制御まで、順次上流側に配置された組み合わせに向けて周速の制御を実行する。このため、制御が発散することなく、安定した周速の制御が可能である。
そして、本実施形態に係る制御システム100は、第2制御工程において、基本的には、処理槽2の出側に配置された第1テンションカットロール20cの測定した周速P1c’と第2テンションカットロール60の周速との比率が予め定められた値になるように、第2テンションカットロール60の周速を制御する、すなわち、比率一定制御を実行することになる。しかしながら、比率の基準となる処理槽2の出側に配置された第1テンションカットロール20cの周速として、実際に測定した周速P1c’を用いるため、上記のように、処理槽2の出側に配置された第1テンションカットロール20cの周速P1c’が変動したとしても、比率一定制御を適切に実行することができ、予め決められた所定の延伸倍率で原反フィルムF0を延伸することが可能である。
原反フィルムF0として、平均重合度2400、ケン化度99.9モル%の厚み45μmのポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製VF-PS-4500)を用い、処理槽2で処理を施した。具体的には、処理槽2において、30℃の温水中に60秒間浸漬し膨潤させた。次いで、ヨウ素/ヨウ化カリウム(重量比=0.5/8)の濃度0.3%の水溶液に浸漬し、3.5倍まで延伸させながらフィルムを染色した。その後、65℃のホウ酸エステル水溶液中で、トータルの延伸倍率が6倍となるように延伸を行った。以上の処理を処理槽2で行った後に、オーブン3で、乾燥温度40℃で3分間乾燥を行い、厚み18μmのPVA系偏光子F1を得た。
偏光子F1の水分率は、次のようにして測定した。
装置稼働から約60分後に、オーブン3から出た直後の偏光子F1の任意の箇所を正方形状に切り取ってサンプル片を得た。切り取ったサンプル片の重量を標準状態下で速やかに測定した。その後、そのサンプル片を加熱オーブンを用いて120℃で2時間、強制乾燥させた後、そのサンプル片の重量を標準状態下で速やかに測定した。なお、この強制乾燥によって、サンプル片に含まれる水分はほぼ無くなっていると考えられる。
強制乾燥前のサンプル片の重量(乾燥後の偏光子F1の重量)と強制乾燥後のサンプル片の重量(完全乾燥後の偏光子F1の重量)とを、以下の式に代入することによって、偏光子F1の水分率を求めた。
偏光子F1の水分率=(乾燥後の偏光子F1の重量-完全乾燥後の偏光子F1の重量)/乾燥後の偏光子F1の重量×100
比較例では、偏光子F1を搬送する際に、貼り合わせロール7の周速と、処理槽2と貼り合わせロール7との間に配置された第1テンションカットロール20の周速との比率が予め定められた値になるように、第1テンションカットロール20の周速を制御する比率一定制御を行った点を除き、実施例と同じ条件で、偏光子F1の破断の有無と、張力計30aで測定した張力の変動とを調査した。
F1・・・偏光子
F2・・・保護フィルム
F・・・偏光フィルム
2・・・処理槽
3・・・オーブン
7・・・貼り合わせロール
20,20a,20b,20c・・・第1テンションカットロール
30,30a,30b,30c・・・張力計
40・・・制御装置
60,60a,60b,60c,60d,60e・・・第2テンションカットロール
70・・・エンコーダ
100・・・制御システム
Claims (6)
- 原反フィルムを処理槽において二色性物質で染色すると共に一軸延伸した後、オーブンで乾燥させて偏光子を作製し、貼り合わせロールで前記偏光子と保護フィルムとを貼り合わせて偏光フィルムを製造する方法であって、
前記処理槽と前記貼り合わせロールとの間に前記偏光子を搬送する第1テンションカットロールと、前記処理槽と前記貼り合わせロールとの間に且つ前記第1テンションカットロールの下流側に張力計と、を交互に複数配置し、
前記張力計で測定した張力が予め定められた値になるように、前記第1テンションカットロールの周速を制御する第1制御工程を含み、
前記第1制御工程において、最も下流側に配置された前記張力計及び前記第1テンションカットロールの組み合わせによる周速の制御を実行した後、前記最も下流側に配置された組み合わせよりも上流側に配置された前記張力計及び前記第1テンションカットロールの組み合わせによる周速の制御を上流側に向けて順次実行する、
偏光フィルムの製造方法。 - 前記処理槽の出側に前記第1テンションカットロールを配置すると共に、前記処理槽において前記原反フィルムを搬送する第2テンションカットロールを配置し、
前記第1制御工程を実行した後、前記処理槽の出側に配置された前記第1テンションカットロールの周速を測定し、前記測定した前記第1テンションカットロールの周速と前記第2テンションカットロールの周速との比率が予め定められた値になるように、前記第2テンションカットロールの周速を制御する第2制御工程を含む、
請求項1に記載の偏光フィルムの製造方法。 - 前記オーブン出側での前記偏光子の水分率が15%以下である、
請求項1又は2に記載の偏光フィルムの製造方法。 - 前記オーブン出側での前記偏光子の厚みが20μm以下である、
請求項1から3の何れかに記載の偏光フィルムの製造方法。 - 原反フィルムを二色性物質で染色すると共に一軸延伸する処理槽と、前記処理槽で処理された原反フィルムを乾燥させて偏光子を作製するオーブンと、前記偏光子と保護フィルムとを貼り合わせる貼り合わせロールと、前記処理槽と前記貼り合わせロールとの間に配置され、前記偏光子を搬送する第1テンションカットロールと、を備える偏光フィルムの製造装置であって、
前記処理槽と前記貼り合わせロールとの間に且つ前記第1テンションカットロールの下流側に配置された張力計と、
制御装置と、を備え、
前記第1テンションカットロール及び前記張力計は、交互に複数配置され、
前記制御装置は、前記張力計で測定した張力が予め定められた値になるように、前記第1テンションカットロールの周速を制御し、
前記制御装置は、最も下流側に配置された前記張力計及び前記第1テンションカットロールの組み合わせによる周速の制御を実行した後、前記最も下流側に配置された組み合わせよりも上流側に配置された前記張力計及び前記第1テンションカットロールの組み合わせによる周速の制御を上流側に向けて順次実行する、
偏光フィルムの製造装置。 - 前記張力計と、
前記制御装置と、を備える、
請求項5に記載の偏光フィルムの製造装置に用いられる制御システム。
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