JP7315286B2 - 組織技術を使用した複合形質 - Google Patents

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Description

本発明は、農業の分野に関する。特に、本発明は、組織技術を使用した複合形質を有する植物の生産に関する。
作物の形質を強化するための標準的な解決策は、遺伝学法及び交配である。しかしながら、交雑(生殖交雑)によって、商業に関連する品種(commercially relevant variety)に、新しい形質を導入し、同時に(複数ゲノム及び/又は複合的な)商業に関連する形質、たとえば、果実サイズ及び作物の収量を維持するには、扱いにくく長期にわたるプロセス又は交雑及び選択(浸透性交雑)が必要である。比較的短い期間で新しい形質を獲得する遺伝子修飾ツールが利用可能となっているが、これらの技法は、(作物)植物の形質を修飾するために広く許容されるものではない。したがって、植物、特に、作物植物に形質を導入するための、革新的であるが商用に許容される手法が必要とされている。
〔発明により提供される解決〕
遺伝子修飾技法を利用することなく、当該技術分野の水準である交雑及び選択と比較して、有意に短縮された期間で、新しい形質を有する商業に関連する作物植物を生産したのは、本発明者らが初めてであった。本発明者らは、組織技術を、古典的な交配技法と組み合わせて利用することによって、この目標を達成した。組織技術を利用することによって、本発明は、必要とされる戻し交雑及び/又は自家受粉の量、並びに系統に引きずられる問題を著しく低減する。実際に、本発明は、他の方法では存在しないであろう表現型の生産を可能にする。
双子葉植物では、細胞の3つの別個の層(L1、L2、及びL3シュート分裂組織層)が、通常、シュート分裂組織に存在している。これらの別個のシュート分裂組織層は、制限され方向付けられた指向的細胞分裂により生じる。シュート分裂組織層は、組織化されたパターンで、すべての地上器官に生じ、最も外側の層が、L1であり、そのすぐ下の細胞が、L2を構成し、内部組織が、L3を定めている。シュート頂分裂組織の3つの細胞層におけるそれぞれの幹細胞に由来する細胞及び組織は、シュート頂分裂組織の3つの細胞層におけるこれらの幹細胞それぞれの遺伝子型を有する。空間的に離間しているが、これらの層は一体となっており、互いにコミュニケートする(たとえば、Curr Opin Plant Biol.2008 Feb;11(1);42-48)。組織技術法では、ある品種の1つ又は2つのシュート分裂組織層を、別のものと置き換え、いわゆる周縁キメラがもたらされており、この方法は、これらの分裂組織層における差次的遺伝子発現及び形質局在化を研究するために、従来から使用されてきた(たとえば、Filippisら、Using a periclinal chimera to unravel layer-specific gene expression in plants,The Plant Journal,2013,75:1039-1049)。さらに、新しい栽培種を提供することにおける、この技術の有用性を調査するために、たとえば、イヌホオズキ(nightshade)及びトマトを使用してキメラを作製することによって、予備的調査が行われたが、結果は残念なものとなった(Lindsayら、Graft chimeras and somatic hybrids for new cultivars,New Zealand journal of Botany,1995,Vol.33:79-92)。
本発明者らが、今回初めて、これらの組織技術法を利用して、比較的短い期間で新しい形質を含む商業に関連する作物植物の生産を成功させた。本発明者らは、L1シュート分裂組織層に局在化する、ある特定の形質を特定した。組織技術法を利用することによって、そのような目的とされるL1局在化形質を含むように最適化されており、好ましくは本明細書に定義される特定の遺伝子型を有する、第1の植物のL1シュート分裂組織層を、該形質が欠如している商業に関連する第2の植物のさらなるシュート分裂組織層と組み合わせて、目的とされる新しい形質を有する商業に関連する周縁キメラ植物を生産することができる。第1の植物は、全体として、商業に関連するように最適化されている必要はないため、目的とされる新しい形質を含む商業に関連する植物を得るために必要とされるステップの数が、有意に低減される。加えて、本発明は、浸透性交雑を行うには複雑すぎる形質を導入するための解決策を提供する。
〔発明の概要〕
付記1.
少なくとも第1及び第2の目的とされるL1局在化形質の組合せを含む周縁キメラ植物を生産するための方法であって、
a)目的とされるL1局在化形質の該組合せを含む、第1の植物を提供するステップと、
b)形質の該組合せを含まない、第2の植物を提供するステップと、
c)第1の植物のL1シュート分裂組織層、並びに第2の植物のL2及びL3シュート分裂組織層を含む周縁キメラ植物を作製するステップと
を含む方法。
付記2.
該第1の形質が、該第2の形質を含まない野生種に由来するL1局在化形質であり、該第2の形質が、該第1の形質を含まない栽培種に由来するL1局在化形質である、付記1に記載の方法。
付記3.
該第1の形質が、生物的又は非生物的ストレス抵抗性形質であり、該第2の形質が、果実色形質及び/又は第2の植物によって生産された花粉を受ける能力である、付記1又は2に記載の方法。
付記4.
該第1の植物が、該第1の形質を含む第1の親植物と該第2の形質を含む第2の親植物とのF1ハイブリッド又は近親交配植物である、付記1~3のいずれか1つに記載の方法。
付記5.
第1の植物が、遺伝子修飾により組合せ内の少なくとも第1及び第2のL1局在化形質のうちの少なくとも1つを導入することによって得られる、付記1~4のいずれか1つに記載の方法。
付記6.
生物的又は非生物的ストレス抵抗性が、乾燥抵抗性、昆虫(コナジラミ)抵抗性、真菌(ウドンコ病)抵抗性、卵菌(フィトフトラ(phytophthora))抵抗性、アシル糖生産のレベル及び/若しくは組成、又はこれらの任意の組合せからなる群のうちのいずれか1つに由来する、付記1~5のいずれか1つに記載の方法。
付記7.
1つ又は複数のさらなるL1局在化形質が、果実色、植物自体によって生産された花粉を受ける能力、及びこれらの組合せからなる群のうちのいずれか1つから選択される、付記1~6のいずれか1つに記載の方法。
付記8.
第1の植物が、商業に関連しない植物であり、第2の植物が、商業に関連する品種又は栽培種のものである、付記1~7のいずれか1つに記載の方法。
付記9.
第1の親植物が、商業に関連しない品種又は野生種のものであり、第2の親植物が、商業に関連する品種又は栽培種である、付記2~8のいずれか1つに記載の方法。
付記10.
第1及び第2の植物が、ソラナム(Solanum)属に属する、付記1~9のいずれか1つに記載の方法。
付記11.
周縁キメラ植物を生産する際にL1シュート分裂組織層を提供するための、付記1~10のいずれか1つに記載の少なくとも第1及び第2の目的とされるL1局在化形質の組合せを含む第1の植物の使用。
付記12.
付記1~10のいずれか1つに記載の方法によって得ることができる周縁キメラ植物、又はそれに栄養繁殖的に由来する(vegetatively derived)植物。
付記13.
植物産物を生産するための、付記12に記載の周縁キメラ植物の使用。
付記14.
付記12に記載の周縁キメラ植物から植物産物を生産するための方法であって、
A)付記12に記載の周縁キメラ植物を提供するステップと、
B)ステップA)の周縁キメラ植物を成長させるステップと、
C)ステップB)において成長させた植物から植物産物を誘導するステップと、
D)任意選択で、ステップC)において得られた植物産物をさらに処理するステップと
を含む方法。
付記15.
付記14に記載の方法によって得ることができる植物産物。
3つの植物遺伝子型における成体タバココナジラミ(Bemisia Tabaci)の平均数を示す。A:ソラナム・ペンネリイ(S.pennellii)×ソラナム・リコペルシクム(S.lycopersicum)のL1シュート分裂組織層が移入されたソラナム・リコペルシクム(試験植物、ソラナム・リコペルシクムのL2及びL3並びにソラナム・ペンネリイ×ソラナム・リコペルシクムの交雑により得られたF1のL1を有する周縁キメラ)、B:ソラナム・リコペルシクム(感受性対照)、C:ソラナム・ペンネリイ×ソラナム・リコペルシクム(F1、抵抗性対照)。 3つの植物遺伝子型におけるタバココナジラミの卵の平均数を示す。A:ソラナム・ペンネリイ×ソラナム・リコペルシクムのL1シュート分裂組織層が移入されたソラナム・リコペルシクム(試験植物、ソラナム・リコペルシクムのL2及びL3並びにソラナム・ペンネリイ×ソラナム・リコペルシクムの交雑により得られたF1のL1を有する周縁キメラ)、B:ソラナム・リコペルシクム(感受性対照)、C:ソラナム・ペンネリイ×ソラナム・リコペルシクム(F1、抵抗性対照)。 3つの植物遺伝子型におけるタバココナジラミの幼虫の平均数を示す。A:ソラナム・ペンネリイ×ソラナム・リコペルシクムのL1シュート分裂組織層が移入されたソラナム・リコペルシクム(試験植物、ソラナム・リコペルシクムのL2及びL3並びにソラナム・ペンネリイ×ソラナム・リコペルシクムの交雑により得られたF1のL1を有する周縁キメラ)、B:ソラナム・リコペルシクム(感受性対照)、C:ソラナム・ペンネリイ×ソラナム・リコペルシクム(F1、抵抗性対照)。 3つの植物遺伝子型におけるタバココナジラミの脱皮の平均数を示す。A:ソラナム・ペンネリイ×ソラナム・リコペルシクムのL1シュート分裂組織層が移入されたソラナム・リコペルシクム(試験植物、ソラナム・リコペルシクムのL2及びL3並びにソラナム・ペンネリイ×ソラナム・リコペルシクムの交雑により得られたF1のL1を有する周縁キメラ)、B:ソラナム・リコペルシクム(感受性対照)、C:ソラナム・ペンネリイ×ソラナム・リコペルシクム(F1、抵抗性対照)。 種子の密度分布を示す。密度クラス「3」において、線は、上から下に:F1_キメラ(キメラとPP株との他家受精の後代)及びF1_TT(非キメラ植物TTとPP株との他家受精の後代)を表す。 種子の発芽率を示す。左のカラムは、F1_TT(非キメラ植物TTとPP株との他家受精の後代)を表し、右のカラムは、F1_キメラ(キメラとPP株との他家受精の後代)を表す。 インビトロ発芽能力を示す。上の線は、F1_キメラ(キメラとPP株との他家受精の後代)を表し、下の線は、F1_TT(非キメラ植物TTとPP株との他家受精の後代)を表す。 THハイブリッド種子の比重を示す。黒色の線は、F1_キメラ(キメラ、キメラとHH株との他家受精の後代)を表し、灰色の線は、F1_TT(対照、TTとHH株との他家受精の後代)を表す。 THハイブリッド種子の発芽率を示す。黒色のカラムは、F1_キメラ(キメラ、キメラとHH株との他家受精の後代)を表し、灰色のカラムは、F1_TT(対照、TTとHH株との他家受精の後代)を表す。 THハイブリッド種子のインビトロ発芽能力を示す。黒色の線は、F1_キメラ(キメラ、キメラとHH株との他家受精の後代)を表し、灰色の線は、F1_TT(対照、TTとHH株との他家受精の後代)を表す。 異なる発芽能力を有する植物株の発芽した種子の割合の経時的な展開を示す。発芽能力は、所与の期間における植えた種子の総数に対する割合として表される、発芽した種子の数である。取得期間は、発芽した種子の数がやがて横ばいになり、プラトー期に達するのを確実にするように十分に長いものである。この期間は、たとえば、ピーク値時間の3倍である。このプラトー期は、すべての種子が発芽している場合には100%であり得るか、又は一部の種子がまったく発芽していない場合には、それよりも低い割合であり得る。この図において、線Bは、80%の発芽能力を有する対照株である。線Aは、改善された発芽能力(100%)を有する株の例であり、線Cは、発芽能力が劣る例である。 ピーク値時間の概念を示す図である。ピーク値時間は、発芽曲線の接線が最も急勾配となる時点である、すなわち、単位時間当たりの発芽する種子の増加が最も高い時点である。発芽の動力学に関連する時点であるピーク値時間は、発芽能力を評価するのに必要な期間、たとえば、種子植え付けからピーク値時間までの時間の2倍、3倍、4倍、又は5倍、好ましくは、3倍に等しい期間を定めるために使用することができる。 4つの植物遺伝子型に対する成体トリアレウロデス・バポラリオルム(Trialeurodes vaporariorum)の数(平均±標準偏差)を示す。A:ソラナム・リコペルシクム(感受性対照)、B:ソラナム・リコペルシクムに由来するL2及びL3並びにソラナム・ペンネリイ×ソラナム・リコペルシクムのF1に由来するL1を有する周縁キメラ(試験植物)、C:ソラナム・リコペルシクムに由来するL2及びL3並びにソラナム・ハブロカイテス(S.habrochaites)×ソラナム・リコペルシクムのF1に由来するL1を有する周縁キメラ(試験植物)、D:ソラナム・リコペルシクムに由来するL2及びL3並びにソラナム・ピンピネリフォリウム(S.pimpinellifolium)×ソラナム・リコペルシクムのF1に由来するL1が移入された周縁キメラ(試験植物)。 3つの植物遺伝子型における5日後のタバココナジラミの死亡率を示す。A:ソラナム・リコペルシクム(感受性対照)、B:ソラナム・リコペルシクムとソラナム・ペンネリイ×ソラナム・リコペルシクムとの交雑により得られたBC1S3が移入されたもの(試験植物)、C:ソラナム・リコペルシクムとソラナム・ペンネリイ×ソラナム・リコペルシクムとの交雑により得られたBC1S4が移入されたもの(試験植物)。 3つの植物遺伝子型における5日後のタバココナジラミの卵の数(平均±標準偏差)を示す。A:ソラナム・リコペルシクム(感受性対照)、B:ソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ペンネリイのBC1S3(ドナー植物)、C:ソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ペンネリイのBC1S4(ドナー植物)。 3つの植物遺伝子型における2日後のアザミウマの死亡率を示す。A:ソラナム・リコペルシクム(感受性対照)、B:ソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ペンネリイのF1(ドナー植物)、C:ソラナム・リコペルシクムに由来するL2及びL3並びにソラナム・ペンネリイ×ソラナム・リコペルシクムのF1に由来するL1を有する周縁キメラ(試験植物)。 3つの植物遺伝子型における産み付けられた卵の数(平均±標準偏差)を示す。A:ソラナム・リコペルシクム(感受性対照)、B:ソラナム・リコペルシクムに由来するL2及びL3並びにソラナム・ペンネリイ×ソラナム・リコペルシクムのF1に由来するL1を有する周縁キメラ(試験植物)、C:ソラナム・リコペルシクムに由来するL2及びL3並びにソラナム・ハブロカイテス×ソラナム・リコペルシクムのF1に由来するL1を有する周縁キメラ(試験植物)。 2つの植物遺伝子型におけるmm単位での病変部直径(平均±標準偏差)を示す。A:ソラナム・リコペルシクム(感受性対照)、B:ソラナム・リコペルシクムに由来するL2及びL3並びにソラナム・ハブロカイテス×ソラナム・リコペルシクムのF1に由来するL1を有する周縁キメラ(試験植物)。 ビーフトマト植物(対照)又はビーフトマトのL2及びL3並びにアイルサ・クレイグ×チェリータイプソラナム・リコペルシクム近親交配株の交雑により得られたF1のL1を含むキメラ(キメラ、黒色の線)を自家受粉させることによって生産したBB種子のインビトロ発芽能力を示す。 MH2種子のインビトロ発芽能力を示す。黒色の線は、F1_キメラ(キメラ、キメラとH2H2株との他家受精の後代)を表し、灰色の線は、F1_MM(対照、MMとH2H2株との他家受精の後代)を表す。 MH2種子のインビトロ発芽能力を示す。黒色の線は、F1_キメラ(キメラ、キメラとH2H2株との他家受精の後代)を表し、灰色の線は、F1_MM(対照、MMとH2H2株との他家受精の後代)を表す。 MP2種子のインビトロ発芽能力を示す。黒色の線は、F1_キメラ(キメラ、キメラとP2P2株との他家受精の後代)を表し、灰色の線は、F1_MM(対照、MMとP2P2株との他家受精の後代)を表す。 MP2種子のインビトロ発芽能力を示す。黒色の線は、F1_キメラ(キメラ、キメラとP2P2株との他家受精の後代)を表し、灰色の線は、F1_MM(対照、MMとP2P2株との他家受精の後代)を表す。 MP3種子のインビトロ発芽能力を示す。黒色の線は、F1_キメラ(キメラ、キメラとP3P3株との他家受精の後代)を表し、灰色の線は、F1_MM(対照、MMとP3P3株との他家受精の後代)を表す。
定義
以下の説明及び実施例において、いくつかの用語が使用される。そのような用語に与えられる範囲を含め、本明細書及び特許請求の範囲の明確で一貫した理解を提供するために、以下の定義が提供される。本明細書において別途定義されない限り、使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって広く理解されているものと同じ意味を有する。
本明細書において使用されるとき、「含む(comprising)」及び「含む(to comprise)」という用語、並びにそれらの活用形は、これらの用語が、この単語に続く品目が含まれるが、具体的に述べられていない品目が除外されるわけではないことを意味して、非限定的に使用される状況を指す。これは、「からなる」というより制限的な動詞をもまた包含する。加えて、「1つの(a)」又は「1つの(an)」という不定冠詞による要素への参照は、文脈によりその要素が1つ及び1つだけ存在することが明確に求められていない限り、その要素が1つを上回って存在する可能性を排除するものではない。「1つの(a)」又は「1つの(an)」という不定冠詞は、したがって、通常、「少なくとも1つ」を意味する。
本明細書において使用されるとき、「及び/又は」という用語は、言及された事例のうちの1つ又はそれ以上が、単独で生じ得る、又は言及された事例のうちの少なくとも1つとの組合せで生じ得、最大で言及された事例のすべてとの組合せで生じ得る、状況を指す。
「近親交配」とは、本明細書において、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10世代、好ましくは、少なくとも3世代の制御された自家受精、同胞交配、又は反復親への戻し交雑のための、制御された自家受精、同胞交配、又は反復親への戻し交雑として、理解されるものとする。F1ハイブリッド植物の自家受精、同胞交配、又は戻し交雑の近親交配により得られる植物は、本明細書において近親交配植物として表記される。
本明細書において使用されるとき、「形質」という用語は、表現型形質、すなわち、観察可能及び測定可能である特性を指す。形質は、遺伝子の発現、並びに環境的要因、並びに遺伝子発現及び環境的要因の間の相互作用によって決定される。植物の形質の例としては、果実のサイズ、果実の数、1ha当たりのkg単位での収量、植物の高さ、相対成長速度、開花期、改善された種子発芽、葉面積、疾患及び/又は害虫抵抗性、乾燥抵抗性、収量構成要素、並びに果実色がある(が、これらに限定されない)。形質は、商業に関連する形質であることが好ましい。本明細書において定義されるさらなる形質は、表現型に基づいて互いを区別することができる、異なる形質として理解されるものとする。任意選択で、形質は、該形質を担う(1つ又は複数の)遺伝子及び/又は多型性が当業者に公知であるとすると、遺伝子型に基づいて評価することができる。本明細書において定義される該1つ又は複数のさらなる形質は、複数の遺伝子が、該形質に関与及び寄与しているという意味で、複合形質であり得る。「さらなる形質」は、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10の形質などであると理解されるものとする。形質を増加(改善)又は減少(劣化)させることが所望され得、集団における特徴の平均値のそれぞれのシフトは、その植物世代の経済的価値を、(1つ又は複数の)親世代と比較して改善することができる。ある植物が、ある形質を含む、示す、保有する、又は有すると言われない対照植物(好ましくは、同じか又は類似の植物)と比較して、有意に多いか又は増加した該形質を示す(たとえば、少なくとも1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、又はそれ以上)場合、その植物は、本明細書において、「その形質を含む、示す、保有する、又は有する」と言われる。ある植物の形質の、対照植物と比較した増加は、目的とされる植物及び対照植物の両方で本質的に同一又は類似である制御された環境的状況下において、判定される。当業者であれば、制御された環境的状況又は形質を測定する条件を選択することができる。
「類似の環境条件」とは、とりわけ、類似の温度、湿度、栄養、及び光の条件、並びに類似の灌水、昼/夜リズム、及び受精レジメンの使用を意味する。これらの条件は、たとえば、周縁キメラのL3シュート分裂組織層の幹細胞の遺伝子型を有する非キメラ植物、又は周縁キメラのL1シュート分裂組織層の幹細胞の遺伝子型を有する非キメラ植物を含むがこれらに限定されない、本発明の方法において使用することができる植物が、成長する条件である。類似の環境条件には、同一の環境条件が含まれる。
ある形質が、植物又は植物品種の経済価値に適している場合、そのような形質は、「商業に関連する形質」であり得、これは、市場及び植物又は作物植物の種類によって決定される。当業者であれば、特定の状況下において、商業に関連する形質が何であるかを認識している。たとえば、植物が作物植物である場合、市場は、該作物植物からの特定の収量(1ha当たりのkg単位で)を必要とし、十分な収量は、商業に関連する形質と考えることができる。当業者であれば、所与の状況下において特定の作物植物にとっての「十分な収量」と考えられるであろうものが何かを認識している。さらに、植物が、果実がなる植物であり、市場で特定の色を有する果実が求められている場合、この形質は、商業に関連する形質と考えることができる。果実がなる植物のさらなる商業に関連する形質は、植物に(手作業で)異花受粉させる必要なしに、植物が果実をつけるために、その植物自体によって生産された花粉を受ける能力であり得る。
「害虫抵抗性」又は「増加/強化された害虫抵抗性」は、本明細書において、1つ若しくは複数の植物害虫の攻撃に耐える強化された(抵抗性を有さない対照植物と比較して)植物の能力を指すか、又は換言すると、この用語は、対照植物と比較して、植物における疾患症状の有意な低減を指すために使用される。害虫抵抗性又は強化された害虫抵抗性は、様々な方法を使用して判定することができる。疾患症状は、害虫(たとえば、節足動物害虫、昆虫害虫、真菌害虫、細菌害虫、卵菌、若しくはウイルス害虫)の蔓延又は害虫との接触後の1つ又は複数の時点において、疾患症状を評価することによって、目視的にスコア付けされることが多い(バイオアッセイ又は野外において)。代替的な方法には、害虫を検出し、任意選択で定量する方法が含まれる。したがって、植物が、組織中/上において検出される害虫の量若しくは数が、対照と比較して有意に少ない場合、又は害虫の拡がりが、対照よりも有意に遅い場合、その植物は、強化された害虫抵抗性を示し得る。最終的に、同等の昆虫害虫圧(野外におけるものが好ましい)下において成長させた場合に、対照と比較して、害虫抵抗性の有意な増加(たとえば、少なくとも1%、2%、5%、10%、又はそれ以上)は、強化された害虫抵抗性の間接的な測定を提供する。
「生物的ストレス抵抗性」又は「害虫抵抗性」は、害虫節足動物、害虫真菌、害虫細菌、害虫卵菌、又は害虫ウイルスに対する抵抗性であり得る。害虫節足動物は、ダニ類(Acari)(ハダニ、たとえば、テトラニクス・ウルチカエ(Tetranychus urticae)及びテトラニクス・エバンシ(Tetranychus evansi))、チョウ目(Lepidoptera)(組織をかじるイモムシ(tissue-chewing caterpillar)、たとえば、トマトキバガ(Tuta absoluta))、甲虫目(Coleoptera)(組織をかじる甲虫(tissue-chewing beetle)、たとえば、コロラドハムシ(Leptinotarsa decemlineata))、カメムシ木(Hemiptera)(樹液を吸うアブラムシ、たとえば、マクロシファム・ユーフォリビアエ(Macrosiphum euphorbiae)、又はコナジラミ、たとえば、タバココナジラミなど)、アザミウマ目(Thysanoptera)(細胞内容物を食べるアザミウマ(cell content-feeding thrip)、たとえば、ミカンキイロアザミウマ(Frankliniella occidentalis))、並びにハエ目(Diptera)(ハモグリバエ(leaf-mining fly)、たとえば、リリオミザ・ブリオニアエ(Liriomyza bryoniae))であり得るが、これらに限定されず、害虫真菌は、オイジウム・ネオリコペルシシ(Oidium neolycopersici)(ウドンコ病を引き起こす)、クラドスポリウム・フルバム(Cladosporium fulvum)(葉カビを引き起こす)、及びボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)(灰色カビを引き起こす)であり得るが、これらに限定されず、害虫細菌は、キサントモナス・ベシカトリア(Xanthomonas vesicatoria)(細菌性葉斑点を引き起こす)、及びシュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae)(細菌性斑点を引き起こす)であり得るが、これらに限定されず、害虫卵菌は、フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)(疫病を引き起こす)抵抗性であり得、害虫ウイルスは、ジャガイモウイルスX及びペピーノモザイクウイルスであり得るが、これらに限定されない。
「非生物的ストレス抵抗性」は、本明細書において、特定の環境、たとえば、乾燥、浸透圧ストレス及び/又は塩分、紫外線、冷気、熱、生体異物処置(たとえば、除草剤及び/若しくはホルモン)、並びに機械的ストレスにおいて、生存生物に対する1つ又は複数の非生存的(たとえば、物理的)要因の負の影響に耐える、強化された植物の能力(抵抗性を有さない対照植物と比較して)を指すために使用される。換言すると、この用語は、非生物的ストレスの条件下において、対照植物(好ましくは、抵抗性を有さない植物)と比較して、(1つ若しくは複数の)有害反応の有意な低減又は植物の成長(たとえば、収量)の有意な増加を指す。
「L1局在化形質」は、本明細書において、「L1シュート分裂組織層に局在化される形質」として理解されるものとし、これは、本質的にL1シュート分裂組織層内にある形質であり、少なくとも本質的にはL1シュート分裂組織層の遺伝子型によって、場合によっては1つ又は複数の環境的要因と一緒に、決定される。L1シュート分裂組織層に局在化される形質は、この形質を有するL1シュート分裂組織層を、周縁キメラ植物の生産に使用した場合、該周縁キメラ植物を生産するために使用されるL2及び/又はL3シュート分裂組織層に、該形質が欠如している場合であっても、周縁キメラ植物に受け継がれる。そのような形質の例としては、果実色、害虫抵抗性、乾燥抵抗性、特定の植物、好ましくはその植物自体によって生産された花粉を受ける能力、及び改善された種子発芽が挙げられるが、これらに限定されない。ある形質が、L1シュート分裂組織層に局在化される形質であるかどうかは、組織技法によって、すなわち、ある植物に含まれる形質が、該形質を含む該植物のL1シュート分裂組織層を使用し、該形質を呈さない植物のL2及びL3シュート分裂組織層を使用して調製された周縁キメラ植物に移入されるかどうかを研究することによって、評価することができる。
「品種」とは、本明細書において、世代から世代へ、「種類に忠実に」再生成され得る類似の形質を有する個体又は植物の群として理解されるものとする。
「商業に関連する植物又は植物品種」とは、本明細書において、市場の需要を満たす、すなわち、経済価値のある、十分な商業に関連する形質を有する植物又は植物品種として、理解されるものとする。そのような品種は、したがって、該品種の作物種、及び気候などのさらなる特定の環境状況に応じて、商業に関連するものであるために、少なくともある特定の本質的な形質を含む。当業者であれば、商業に関連する品種のそのような形質要件を認識している。そのような形質は、商業に関連する形質として、本明細書において上記に定義されている。
「商業に関連しない植物又は植物品種又は植物種」とは、本明細書において、植物又は品種又は種を、商業に関連するものにするのに必要とされる、少なくとも1つの本質的な商業に関連する形質が欠如している植物又は品種又は種として、理解されるものとする。たとえば、あるトマト植物に、その植物自体によって生産された花粉を受ける能力が欠如している場合、そのようなトマト植物は、手作業による受粉を必要とするため、そのような植物は、商業に関連するような経済価値がまったくないか、又は不十分である。
「栽培種」とは、本明細書において、ヒトの介入によって、すなわち、望ましい形質の交配及び選択によって生産された、商業に関連する品種として理解されるものとする。
「野生種」とは、自然において、すなわち、交配及び選択というヒトの介入なしに、発生し、また存在する植物種である。
「作物植物」とは、本明細書において、食物、衣類、家畜、飼料、バイオ燃料、医薬、又は他の用途、たとえば、装飾用途のために収穫される植物として、理解されるものとする。
「後代」という用語は、他家受精によって得られる最初の世代又はさらなる世代を指す。F1ハイブリッドとは、本明細書において、遺伝子的に異なる個体の交雑、好ましくは、異なる品種に由来する2つの植物間の交雑又は栽培種と野生種との間の交雑により得られる第1世代の後代として、理解されるものとする。
「表現型」という用語は、形質学上、物理的、生化学上、発生上、又は挙動上の形質などであるがこれらに限定されない、個体の形質の複合物を指し、これは、したがって、遺伝子の発現並びに環境的要因によって決定され、遺伝子発現及び環境的要因の間の相互作用に基づいて、決定される。
本明細書において使用されるとき、「遺伝子型」という用語は、通常、考慮下にある目的とされる特定の特徴又は表現型形質と関連する、細胞、生物、又は個体(すなわち、個体の特定のアレル構成)の遺伝子構成を指す。しかしながら、外観及び挙動は、環境及び発生上の条件によって修飾されるため、同じ遺伝子型を有するすべての生物が、かならずしも、同じように見えるわけでも作用するわけでもない。同様に、よく似ているすべての生物が、かならずしも同じ遺伝子型を有するわけではない。
本明細書において使用されるとき、「遺伝子型判定」又は「遺伝子型を判定すること」という用語は、種における個体間での遺伝子変動を判定するプロセスを指す。単一ヌクレオチド多型(SNP)は、遺伝子型判定に使用される最も一般的な種類の遺伝子変動であり、定義としては、集団の1%よりも多くに見出される特定の遺伝子座における単一の塩基の相違である。SNPは、ゲノムのコーディング領域及び非コーディング領域の両方に見出され、目的とされる表現型形質、たとえば、目的とされる定量的表現型形質と関連付けることができる。したがって、SNPは、目的とされる定量的表現型形質のマーカーとして使用することができる。遺伝子型判定に使用される別の一般的な種類の遺伝子変動は、様々な長さのヌクレオチドの「InDel」、すなわち、挿入及び欠失である。SNP及びInDelの両方の遺伝子型判定について、個体間の遺伝子型を判定するための多数の方法が存在する。選択される方法は、一般的に、必要とされるスループットに依存するが、このスループットは、遺伝子型判定を受ける個体の数及びそれぞれの個体について試験される遺伝子型の数の両方の関数である。選択される方法はまた、それぞれの個体又はサンプルから入手可能なサンプル材料の量にも依存する。たとえば、SNPなどのマーカーの有無を判定するために、シーケンシング、たとえば、サンガーシーケンシング及び高スループットシーケンシング技術(HTS)などを使用することができる。サンガーシーケンシングは、(キャピラリー)電気泳動を通じた検出によるシーケンシングを伴い得、ここで、最大384個のキャピラリーが、1回の泳動で配列分析され得る。高スループットシーケンシングは、数千又は数百万又はそれ以上の配列を一度に並行してシーケンシングすることを伴う。HTSは、次世代シーケンシング、すなわち、固相ピロシーケンシングに基づく技法、又は単一ヌクレオチドリアルタイムシーケンシング(SMRT)に基づく次々世代シーケンシングとして定義することができる。Roche、Illumina、及びApplied Biosystems(Life Technologies)によって提供されるものなどのHTS技術が、利用可能である。さらなる高スループットシーケンシング技術は、Helicos、Pacific Biosciences、Complete Genomics、Ion Torrent Systems、Oxford Nanopore Technologies、Nabsys、ZS Genetics、GnuBioによって説明されており、及び/又はそれらから入手可能である。これらのシーケンシング技術のそれぞれは、実際のシーケンシングステップの前に、サンプルを調製する独自の手法を有する。これらのステップは、高スループットシーケンシング法に含まれ得る。ある特定の事例において、シーケンシングステップに特有のステップが、効率性又は経済性の理由により、実際のシーケンシングステップの前に、サンプル調製プロトコールに組み込まれ得る。たとえば、フラグメントにライゲーションされるアダプターには、後続のシーケンシングステップにおいて使用され得る部分が含まれ得る(いわゆる、シーケンシングアダプター)。シーケンシングの前にフラグメントのサブセットを増幅させるために使用されるプライマーは、たとえば、増幅ステップの間に、後続のシーケンシングステップにおいて使用され得るアンプリコンに、シーケンシングアダプター又は捕捉部分を導入することによって、それらの配列内に、後続のシーケンシングステップにおいて使用することができる部分を導入する部分を含み得る。また、使用されるシーケンシング技術に応じて、増幅ステップは、省略することができる。
本明細書において使用されるとき、「分子マーカー技法」という用語は、個々の(作物)植物における目的とされるマーカーアレルの有無を(直接的又は間接的に)示す(DNAに基づく)アッセイを指す。これにより、たとえば、シーケンシングによって、特定のアレルが、任意の個体の遺伝子座の位置のうちの一方に存在しているか又は存在していないかを判定することが可能となることが、好ましい。
本明細書において使用されるとき、「遺伝子座」又は(複数の)「遺伝子座」という用語は、ゲノムにおける特定の部位(場所)又は複数の部位を指す。たとえば、「遺伝子座」は、遺伝子座の2つのアレルが見出されるか(二倍体生物について)、又は多倍数体の個体若しくは植物の場合には複数のアレルが見出される、ゲノムにおける部位を指す。定量的形質遺伝子座(QTL)は、(遺伝子型/表現型関連性モデルに基づいて)定量的形質に関連するアレルを含むゲノム上の部位である。
「アレル」という用語は、特定の遺伝子座の位置のうちの一方に存在する、ヌクレオチド配列バリアントを指す。二倍体の個体は、1つの遺伝子座につき1つのアレルに2つの位置を有し、2つの相同染色体のうちの一方に1つの位置がある。特定の遺伝子座の位置のそれぞれについて、1つ又は複数の代替的なヌクレオチド配列バリアントが、集団に存在し得る、すなわち、それぞれの位置について、異なる考えられ得るアレルが、集団に存在し得る。しかしながら、それぞれの個体は、1つの遺伝子座のそれぞれの位置に、考えられ得るアレルのうちの1つのみを有し得る。代替的なヌクレオチド配列バリアント、すなわち、異なる考えられ得るアレルは、ヌクレオチド配列が少なくともわずかに異なり、典型的は、少なくとも1つのSNP又はInDelの有無に基づいて、区別することができる。本明細書において、「アレル状態」について言及する場合、特定の遺伝子座内の位置におけるアレルの有無についての参照がなされ、これは、特定の遺伝子座におけるそれぞれのマーカー(たとえば、SNP又はindel)の有無として表現することができる。
本明細書において使用されるとき、「ヘテロ接合性」という用語は、2つの異なるアレルが、特定の遺伝子座、たとえば、アレルA/Bを有する遺伝子座に存在する場合に生じる、遺伝子状態を指し、ここで、A及びBは、2つの相同染色体のうちのいずれか一方に、個別に位置する。逆に、本明細書において使用されるとき、「ホモ接合性」という用語は、2つの同一なアレルが、特定の遺伝子座、たとえば、2つの相同染色体のうちのいずれか一方に個別に位置する、アレルA/Aを有する遺伝子座に存在する場合に生じる、遺伝子状態を指す。
「周縁キメラ」は、1つ又は複数の細胞(組織)層(1つ又は複数)L1、L2、及び/又はL3全体が、別の細胞層とは遺伝子的に異なる、キメラである。周縁キメラの事例において、単一の組織層自体は、同種であり、キメラではない。周縁キメラは、最も安定な形態のキメラであり、明確に異なった価値のある植物表現型をもたらす。これらの植物は、それらが生成された末端分裂組織と同じ頂組織を有する腋芽を生産する。したがって、周縁キメラは、栄養繁殖によって倍増し得、それらのキメラ層組織を維持することができる。周縁キメラは、シュート分裂組織の(L1、L2、L3)層のうちの1つにおける幹細胞の体細胞変異生成によって、作製することができる。周縁キメラはまた、たとえば、Szymkowiak,E.J.及びSussex,I.M.(1992),The internal meristem layer(L3)determines floral meristem size and carpel number in tomato periclinal chimeras,Plant Cell 4,1089-1100によって記載されているように、合成方法によって生産することもできる。該周縁キメラは、2つの接木された種の間で生じる種間の細胞層移入の例である。この特定の方法は、栽培室又は温室において、周囲条件下で実施される。これは、一方を台木とし、もう一方を穂木とした、2つの植物の通常の接木からなる。接木接着部は、癒合した後、切断され、不定シュートを再生成することが可能となる。これらの不定シュートの中に、キメラが自発的に出現し得る。周縁キメラを生産するためのインビトロ合成技法もまた、開発されている。これらには、次のものが含まれる:(1)2つの異なる植物に由来する隣接した幹切片を、一緒に培養してキメラカルスにし、不定キメラシュートが、ホルモンを補充したインビトロ成長培地でこれらのカルスから再生成される、細胞の共培養。(2)2つの異なる植物の細胞懸濁液を混合し、混合物を、成長させてキメラカルスにし、不定キメラシュートが、ホルモンを補充したインビトロ成長培地でこれらのカルスから再生成される、混合カルス培養。(3)2つの異なる植物のプロトプラスト懸濁液を、アガロースに埋め込み、非常に高い細胞密度に成長させると、キメラシュートが、ホルモンを補充したインビトロ成長培地でこれらのカルスから再生成される、プロトプラストの共培養。(4)2つの実生を、滅菌条件下において、それらの胚軸に沿って接木し、接木の頂端下の断面を培養して、キメラ不定カルス及びシュートを誘導する、インビトロ接木培養。このような技法は、組織培養の共通点に含まれ、個々の植物株又は種に特異的であり得る多数の異なるプロトコールからなる。当業者であれば、2つの異なる植物の細胞を一緒に組織培養して、周縁キメラである場合もそうでない場合もある植物を再生成する方法を、理解するであろう。植物キメラに関する詳細な考察については、Richard A.E.Tilney-Bassettによる「Plant Chimeras」(Cambridge University Press,1991)を参照されたい。
「ナス科(Solanaceae)」とは、本明細書において、ナス科に属する植物の属、種、及びその品種を指す。これらには、ソラナム属(かつてはリコペルシコン・エスクレンタム(Lycopersicon esculentum)として知られていたソラナム・リコペルシクム)、タバコ属(Nicotiana)、トウガラシ属(Capsicum)、ペチュニア属(Petunia)、及び他の属に属する種が含まれる。
本明細書において引用されているすべての特許及び参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
〔詳細な説明〕
本明細書において記載される任意の方法、使用、植物、又は植物産物が、本明細書において記載される任意の他の方法、使用、植物、又は植物産物と関連して実装され得ることが、企図される。本発明の方法、使用、植物、及び/又は植物産物の文脈において考察される実施形態は、本明細書において記載される任意の他の方法、使用、植物、又は植物産物と関連して用いることができる。したがって、1つの方法、使用、植物、又は植物産物に関する実施形態を、本発明の他の方法、使用、植物、及び植物産物にも同様に適用することができる。
目的とされるL1局在化形質を含む周縁キメラ植物を生産するための方法であって、
a)目的とされる該L1局在化形質を含む、第1の植物を提供するステップと、
b)目的とされる該L1局在化形質を含まない、第2の植物を提供するステップと、
c)第1の植物のL1シュート分裂組織層、並びに第2の植物のL2及びL3シュート分裂組織層を含む周縁キメラ植物を作製するステップと
を含む方法が、提供される。
本発明の方法は、目的とされるL1局在化形質の組合せを含む周縁キメラ植物を生産するためのものであることが好ましく、ここで、該方法は、
a)目的とされるL1局在化形質の該組合せを含む、第1の植物を提供するステップと、
b)目的とされるL1局在化形質の該組合せを含まない、第2の植物を提供するステップと、
c)第1の植物のL1シュート分裂組織層、並びに第2の植物のL2及びL3シュート分裂組織層を含む周縁キメラ植物を作製するステップと
を含む。
本明細書において定義される第1の植物、及び該第1の植物のL1シュート分裂組織層を含む周縁キメラ植物を生産するための該第1の植物の使用もまた、提供される。
目的とされるL1局在化形質の組合せは、少なくとも2つの目的とされるL1局在化形質の組合せとして理解されるものであり、換言すると、該組合せは、少なくとも第1及び第2の目的とされるL1局在化形質を含む。
ある実施形態において、該第1の形質は、該第2の形質を含まない第1の親植物に由来するか又はそれから誘導することができるL1局在化形質であり、該第2の形質は、該第1の形質を含まない第2の親植物に由来するか又はそれから誘導することができるL1局在化形質である。第1の親植物及び第2の親植物は、近親交配株、栽培種、及び/又は野生アクセッション若しくは種であり得る。好ましい実施形態において、該第1の形質は、該第2の形質を含まない野生種に由来するか又はそれから誘導することができるL1局在化形質であり、該第2の形質は、該第1の形質を含まない栽培種に由来するか又はそれから誘導することができるL1局在化形質である。そのような野生種及び栽培種は、本明細書においてさらに定義されている。本発明者らは、野生種には含まれない、さらなるL1、L2、及び/又はL3局在化形質、たとえば、栽培種に存在する形質を含む植物において形質として有することが有益な、いくつかのL1局在化形質を、該野生種において特定している。野生種に存在する特定のL1局在化形質は、生物的及び非生物的ストレス抵抗性形質である。栽培種に存在する特定のL1局在化形質は、果実色、及び特定の植物、好ましくは本明細書において定義される第2の植物によって生産された花粉を受ける能力である。これら及び他のL1局在化形質は、本明細書においてさらに詳述される。好ましい実施形態において、目的とされるL1局在化形質の該組合せは、自然には、すなわち、交雑及び選択、遺伝子修飾、及び/又は組織技術など、ヒトによる介入なしには、単一の植物又は植物種に生じることはない。換言すると、該組合せの発生は、好ましくは、単一の植物又は植物品種に出現させるためには、ヒトによる介入を必要とする。
任意選択で、目的とされるL1局在化形質の組合せは、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、又はそれ以上の目的とされるL1局在化形質の組合せである。
目的とされるL1局在化形質の組合せは、交雑及び選択によって、又は遺伝子修飾によって、第1の植物に導入することができる。
たとえば、第1の植物は、第1の目的とされる形質を含む第1の親植物を、第2の目的とされる形質を含む第2の親植物と交雑させ、任意選択で、続いて、第1及び第2の目的とされるL1局在化形質の組合せを含む植物を得るために、複数回の近親交配を行うことによって、得ることができるか、又はそれによって得られたものであり得る。そのような交雑及び選択の方法は、第1及び/又は第2の形質が、複合形質である場合に、特に好ましい。ある植物が、商業に関連するものとなるためには、複数の形質、しばしば複合形質が、必要とされることが、作物科学の分野において理解されている。新しい形質の導入には、商業に関連する植物に到達するために、多数の交雑及び選択のステップが必要である。本発明者らは、目的とされる新しいL1局在化形質を、周縁キメラの生産を介して植物に導入する場合には、商業に関連する植物に到達するために必要とされる交雑及び選択のステップが有意に少ないという重大な利点があるという見識を得た。本発明の方法を使用する場合、交雑及び選択は、商業に関連するL1シュート分裂組織層、すなわち、目的とされる新しい形質と、1つ又は複数のさらなる商業に関連するL1局在化形質との組合せを含むものが得られるまで行われ得るが、一方で、全体としての植物は、依然として、好ましくない特性を示しても、又はたとえば、作物植物に適した商業的特性が欠如していてもよく、これは、この部分が第2の植物のL2及びL3層で補われるためである。
したがって、本発明の方法のステップa)には、第1の親植物を第2の親植物と交雑させ、任意選択で、目的とされるL1局在化形質の組合せの選択下において、複数回の近親交配を行うことが、先行する場合がある。
換言すると、本発明はまた、目的とされるL1局在化形質の組合せを含む第1の植物を生産するための方法であって、
a1)第1の目的とされるL1局在化形質を含む、第1の親植物を提供するステップと、
a2)第2の目的とされるL1局在化形質を含む、第2の親植物を提供するステップと、
a3)F1ハイブリッドを得るために、第1の親植物を第2の親植物と交雑させ、任意選択で、該F1ハイブリッドを近親交配するステップと、
a4)第1及び第2の目的とされるL1局在化形質の組合せを含む、ステップa3)のF1ハイブリッド又は近親交配植物を選択するステップと
を含む方法も提供する。
したがって、周縁植物を生産するための方法において定義される第1の植物は、F1ハイブリッド又は近親交配植物であり得る。該第1の植物は、該第1の形質を含む第1の親植物及び該第2の形質を含む第2の親植物のF1ハイブリッド又は近親交配植物であることが好ましい。上述の方法によって得られたか又はそれによって得ることができ、第1及び第2の目的とされるL1局在化形質の組合せを含むことを特徴とするF1ハイブリッド又は近親交配植物もまた、提供される。このF1ハイブリッド又は近親交配植物は、該F1ハイブリッド又は近親交配植物のL1シュート分裂組織層を含む周縁キメラ植物を生産するのに使用することができるか、それに使用するためのものであるか、又はそのための使用に好適である。したがって、該ハイブリッド又は近親交配植物のL1シュート分裂組織層を含む周縁キメラ植物を生産するための、該F1ハイブリッド又は近親交配植物の使用もまた、提供される。
本明細書において上記に定義される周縁キメラ植物を生産する方法は、上記に定義される第1の植物を生産する方法を含み得る。より詳細には、本明細書において上記に定義される周縁キメラ植物を生産する方法のステップa)は、本明細書において第1の植物を生産する方法で定義される方法ステップa1)~a4)を含み得る。第1及び第2の植物は、異なる遺伝子型を有することが好ましい。さらに、第1の親植物及び第2の親植物は、異なる遺伝子型を有することが好ましい。任意選択で、第1の親植物は、野生種であり得、第2の親植物は、商業に関連する品種又は栽培種であり得る。第1の親植物は、該第1の形質を天然に含む野生種であり得、該第2の植物は、該第2の形質を含む栽培種であり得る。本発明者らによって野生種のL1シュート分裂組織層に局在化していることが特定された特定の形質は、特定の生物的及び非生物的ストレス抵抗性、並びに改善された種子発品質、特に、該野生種と栽培種との交雑種の遺伝子型を有する種子の改善された種子発芽品質である。栽培種のL1シュート分裂組織層に局在化している特定の形質は、特定の色を有する果実の形質(すなわち、トマトの事例では赤色の果実)、及び/又は特定の植物、好ましくは、本明細書において定義される、栽培種であることが好ましい第2の植物によって生産された花粉を受ける能力である。栽培種には存在するが、野生種には欠如しているそのようなL1局在化形質は、好ましくは、本明細書において定義される商業に関連する形質である。
本明細書において上記に定義される第1の植物を生産するための方法において、野生種を、栽培種と交雑させ、続いて、少なくとも該第1の形質の選択下において、複数回の近親交配が行われ得る。任意選択で、該方法のF1ハイブリッドは、目的とされるL1局在化形質をすでに含んでいる。その場合には、さらなる近親交配は必要ない。任意選択で、上記の方法のF1ハイブリッドは、組合せ内のすべてのL1局在化形質を含んでいない。後者の場合には、目的とされるL1局在化形質の組合せを含む近親交配植物を得るために、F1ハイブリッドの近親交配を行うことが、好ましい。
近親交配は、目的とされるL1局在化形質の組合せを含む近親交配植物が得られるまで、継続することができる。任意選択で、近親交配は、該組合せについて、遺伝子が固定された近親交配植物が得られるまで、継続される。任意選択で、上記に定義される方法における近親交配は、組合せ内のすべてのL1局在化形質の継続的な選択下におけるものである。換言すると、交雑又は近親交配が1回終わるごとに、組合せ内のL1局在化形質のうちのすべての存在に基づいて、さらなる近親交配のための後代が選択される。或いは、複数回の近親交配の後に、選択を行ってもよい。任意選択で、近親交配が1回終わるごとに、組合せ内の少なくとも1つの形質に基づいて、さらなる近親交配のための後代が選択されるが、一方で、さらなる形質に基づいた選択は、複数回の近親交配の後に行われる。少なくとも1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、又は10回、好ましくは少なくとも3回の連続的な近親交配を行うことが、好ましい。10回、9回、8回、7回、6回、5回、4回、又は3回以下の連続的な近親交配を行うことが、好ましい。
任意選択で、第1の植物は、第1の植物の全遺伝子型に対する第2の親植物の遺伝子型の寄与が、少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、又は少なくとも70%である、植物である。任意選択で、第1の植物は、第1の植物の全遺伝子型に対する第1の親植物の遺伝子型の寄与が、少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、又は少なくとも70%である、植物である。
上記に示されるように、任意選択で、本明細書において定義される第1の植物の目的とされるL1局在化形質の組合せは、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、又はそれ以上の目的とされるL1局在化形質の組合せである。任意選択で、これらの形質の一部は、第1の親植物を起源とし、一部は、第2の親植物を起源とする。たとえば、第1の親植物は、生物的及び/又は非生物的両方のストレス抵抗性の組合せを含み得、一方で、第2の親植物は、1つ又は複数のL1局在化形質、たとえば、果実色及び/又は第2の植物によって生産された花粉を受ける能力を含む。任意選択で、第1の植物は、生物的及び/又は非生物的ストレス抵抗性と、1つ又は複数の改善された種子発芽特性(好ましくは、特定の所望される遺伝子型を有する種子のもの)との組合せを含み、一方で、第2の親植物は、1つ又は複数の形質、たとえば、果実色及び/又は第2の植物によって生産された花粉を受ける能力を含む。
本明細書において定義される周縁キメラ植物のL2及びL3シュート分裂組織層を提供する第2の植物は、本明細書において上記に定義される第1の植物又は第1及び第2の親植物のうちのいずれか1つとは異なる植物であり得る。第2の植物は、上記に定義される目的とされるL1局在化形質の組合せを含まない植物であることが好ましい。第2の植物は、少なくとも、その植物が商業に関連するものとして分類されるために十分な形質を含むことが好ましい。任意選択で、第2の植物は、上記に定義される第1の親植物に由来する第1の目的とされる形質を含まないが、上記に定義される第2の親植物に由来する第2の形質及び任意選択でさらなる形質を含み得る。第2の植物は、上記に定義される第2の親植物と同じ品種のものであってもよい。第2の植物は、該第2の親植物と同じ遺伝子型を有してもよい。
さらなる実施形態において、第1の植物は、遺伝子修飾を利用して生産される。目的とされる形質を導入するために遺伝子修飾を利用することは、該形質と関連する(1つ又は複数の)遺伝子が特定されている場合に、特に好ましい。該形質は、単一の遺伝子の発現を改変することによって若しくは遺伝子のヌクレオチド配列を改変することによって、又は好ましくはさらには該遺伝子内の単一のヌクレオチドを改変することによって導入することができる、単純な形質であることが好ましい。遺伝子修飾技法と本明細書において上記に定義される交雑及び選択との組合せもまた、本発明によって包含される。任意選択で、本明細書において定義される組合せ内のL1局在化形質のうちの少なくとも1つは、遺伝子修飾によって植物に導入され、ここで、該植物は、組合せ内の1つ又は複数のさらなるL1局在化形質をすでに含んでいる。そのような方法は、古典的な交配及び/又は選択技法を含まなくてもよい。本明細書において定義される組合せ内のL1局在化形質のうちの少なくとも1つを、遺伝子修飾によって植物に導入することもまた、本発明によって包含される。該少なくとも1つの形質は、本明細書において定義される第1及び第2の親植物の交雑及び/又は近親交配の前又は後に、導入され得る。まとめると、第1の植物を生産するための交雑及び選択と遺伝子修飾との組合せが、本発明において想起され、包含される。周縁キメラのL1シュート分裂組織層を提供するために遺伝子修飾された第1の植物を使用して生産した該キメラの重要な利点は、該キメラによって生産される配偶子が、第2の植物の遺伝子型に由来し、第2の植物は遺伝子修飾を含まないことを踏まえると、この配偶子は、したがって、遺伝子修飾を含まないと考えることができることである。さらなる利点は、アレルが、1つの層(たとえば、L1)には有益な表現型作用を有し得ることであるが、他の層(たとえば、L2及びL3)には多面的な作用をもたらし得る。アレルのそのような多面的作用は、本発明の組織技術を使用し、本発明の方法により周縁キメラ植物を生産することによって、回避することができる。そのような周縁キメラの例は、白カビ遺伝子座O又はDMR6(ベト病抵抗性6)のホモログの表皮特異的(L1)ノックアウトを有するソラナム・リコペルシクム植物に由来するL1層を含み、該ホモログの野生型を発現するソラナム・リコペルシクムに由来するL2及びL3をさらに含むキメラである。そのような植物を、ナス科特異的白カビ病又は生体栄養性の生存スタイルを有する他の病原体、たとえば、それぞれ、オイジウム・ネオリコペルシシ(Nekrasovら、2017)及びフィトフトラ・カプシシ(Phytophthora capsici)(de Teledo Thomazellaら、2016)に対する抵抗性について評価する。
本発明によって包含される遺伝子修飾のための方法は、目的とされる形質と関連する1つ又は複数の遺伝子の修飾をもたらす方法である。そのような修飾は、日常的なランダム変異生成法又は標的化変異生成法を使用した修飾しようとする該(1つ又は複数の)遺伝子のヌクレオチド配列のうちのいずれか1つの組込み、欠失、又は改変であり得るが、これらに限定されない。後者には、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ、Cas9様、Cas9/crRNA/tracrRNA、若しくはCas9/gRNA CRISPR系を用いるもの、又は変異原性オリゴヌクレオチドを用いた標的化変異生成法(たとえば、KeyBase(登録商標)若しくはTALEN)が含まれるが、これらに限定されない。改変は、少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、欠失、及び/又は置換えであり得る。そのような修飾はまた、植物、植物細胞、又は植物プロトプラストへのベクター、たとえば、発現ベクター、たとえば、サイレンシングベクター、又は他の構築物の一過的又は安定な組込みであってもよい。そのような発現ベクターは、目的とされる形質と関連する(1つ又は複数の)遺伝子の過剰発現又はデノボ発現のためのベクターであり得る。そのようなベクターはまた、目的とされる形質と関連する(1つ又は複数の)遺伝子をサイレンシング(たとえば、RNAi発現構築物)、ノックダウン、又はノックアウト(たとえば、T-DNA挿入により)するためのベクターであってもよい。任意選択で、そのようなベクターは、組織特異的プロモーターを含み、これは、好ましくは、表皮特異的プロモーター、たとえば、トリコーム特異的又はストーマ特異的プロモーターである。該プロモーターは、遺伝子修飾に必要とされる配列、たとえば、(過剰又はデノボ)発現させようとする遺伝子をコードする配列、標的化変異生成のための酵素をコードする配列、又はRNAiをコードする配列に作動可能に連結されている。
該第1の植物において(過剰又はデノボ)発現させようとする目的とされる遺伝子は、害虫の毒素若しくは忌避物質(たとえば、ある特定の昆虫若しくは真菌害虫に対する毒素若しくは忌避物質)であるタンパク質をコードする遺伝子、害虫に対する毒素若しくは忌避物質(たとえば、テルペノイド、テルペノイド誘導体、メチルケトン、及びアシル糖)の生産(たとえば、Kuaiら、Plant Physiol 1997,115:1581-1587;Yu及びPichersky、Plant Physiol.2014,164(2):612-622;Yu及びPichersky、Plant Physiol.2014,164(2):612-622;Palmaら、Toxins(Basel).2014,6(12):3296-3325;Schilmillerら、Plant Physiol.2016,170(3):1331-1344を参照されたい)、ワックス生産(Lee及びSuh、Plant Cell Rep.2015;34(4):557-572;Changら、Theor Appl Genet.2016;129(8):1531-1539;Yangら、Proc Natl Acad Sci U S A.2011 Jul 19;108(29):11836-11841;Tianら、Planta.2012;236(4):1053-1066)、遺伝子トリコーム形成(Kangら、J Exp Bot.2016;67(18):5313-5324)、及び/若しくはストーマ形成に関与するタンパク質若しくは酵素をコードする遺伝子であり得る。目的とされるさらなるものは、その発生に重要なRNAi標的化昆虫特異的遺伝子をもたらすか又はコードする、構築物である(Gordon及びWaterhouse、Nat Biotechnol.2007;25(11):1231-1232)。
本明細書において定義される周縁キメラ植物のL2及びL3シュート分裂組織層を提供する第2の植物は、遺伝子修飾された第1の植物を生産するために使用される第1の植物と同じ種又は品種の植物であってもよい。第2の植物は、遺伝子修飾による目的とされるL1局在化形質又は目的とされるL1局在化形質の組合せの導入の前の第1の植物、すなわち、遺伝子修飾の出発材料として使用される植物、又は植物細胞、又はプロトプラストと、同じ遺伝子型を有し得る。
上記に定義される第1の植物、第2の植物、第1の親植物、及び第2の親植物は、ナス科に属し、好ましくは、ソラナム属に属する。商業に関連する植物又は栽培種は、栽培トマト植物、好ましくは、ソラナム・リコペルシクム(たとえば、アイルサ・クレイグ)品種のものであり得る。商業に関連しない植物は、野生トマト、好ましくは、ソラナム・ペンネリイ種(たとえば、株LA716)、ソラナム・ハブロカイテス種(たとえば、アクセッションPI127826)、ソラナム・ガラパゲンス種(Solanum galapagense)、又はソラナム・ピンピネリフォリウム種であり得る。第1の親植物は、野生トマト種、好ましくは、ソラナム・ペンネリイの植物であり、第2の親植物、及び任意選択で第2の植物は、栽培種、好ましくは、ソラナム・リコペルシクム品種の植物であることが、好ましい。第1の植物、第2の植物、第1の親植物、及び/又は第2の親植物は、ソラナム・ニグラム(Solanum nigrum)種のものではないことが好ましい。
本明細書において定義される目的とされるL1局在化形質は、生物的又は非生物的ストレス抵抗性、改善された種子発芽、果実色、並びに植物自体によって生産された花粉を受ける能力であり得るが、これらに限定されない。生物的ストレス抵抗性形質は、本明細書において定義される節足動物、害虫真菌、害虫細菌、害虫卵菌、及び/又は害虫ウイルスに対する抵抗性であり得るが、これらに限定されない。生物的ストレス抵抗性形質はまた、害虫の毒素又は忌避物質、たとえば、テルペノイド、テルペノイド誘導体、メチルケトン、及びアシル糖(多様な長さの短鎖長及び/若しくは中鎖長の脂肪酸でアシル化されたグルコースを含む糖の群のうちの任意のもの)の生産の増加、並びにワックス生産の増加を包含し得る。
本明細書において定義される目的とされるL1局在化形質の組合せは、以下のL1局在化形質の任意の組合せであり得るが、これらに限定されない:生物的ストレス抵抗性、非生物的ストレス抵抗性、本明細書において定義される改善された種子発芽、果実色、及び本明細書において定義される第2の植物によって生産された花粉を受ける能力。
好ましい実施形態において、第1の目的とされるL1局在化形質は、野生植物種に含まれる形質であるが、本明細書において定義される目的とされるL1局在化形質の組合せ内の第2のL1局在化形質は、栽培種に含まれるものである。該第1の形質は、生物的又は非生物的ストレス抵抗性であることが、好ましい。第1の形質はまた、1つ又は複数の改善された種子発芽特性、好ましくは、種子の改善された発芽特性であり得、ここで、種子胚は、特定の所望される遺伝子型、たとえば、該野生植物種と本明細書において定義される第2の植物との交雑により得られた種子の遺伝子型を有する。栽培種に由来する該第2の形質は、商業に関連するL1局在化形質、たとえば、果実色、並びに/又は周縁キメラ植物自体及び/若しくは本明細書において定義される第2の植物に由来する花粉を受ける能力であることが、好ましい。
好ましい実施形態において、第1の目的とされる形質は、生物的ストレス抵抗性である。目的とされるL1局在化形質の組合せは、特定の果実色(植物によって生産される果実がトマトである場合には赤色であることが好ましい)、並びに周縁キメラ植物自体及び/若しくは本明細書において定義される第2の植物に由来する花粉を受ける能力と組み合わせた、生物的ストレス抵抗性、好ましくは、コナジラミ抵抗性であることが、好ましい。任意選択で、生物的ストレス抵抗性は、本明細書において定義される第1の親植物(ソラナム・ペンネリイのアクセッションであり得る)に含まれるが、一方で、果実色並びに周縁キメラ植物自体及び/若しくは本明細書において定義される第2の植物に由来する花粉を受ける能力は、第2の親植物(ソラナム・リコペルシクムの栽培種であり得る)に含まれる。これらの3つのL1局在化形質の組合せを含む第1の植物は、該第1及び第2の親植物を交雑させ、続いて、得られたF1ハイブリッドを少なくとも3回近親交配することによって得られるか又は得ることができることが、好ましい。本明細書において定義される周縁キメラ植物を生産するために使用することができる第1の植物を得るために、F1ハイブリッドを、第2の親植物を用いた戻し交雑を3回行い、自家受粉を1回行うことが、好ましい。
上述のように、周縁キメラを生産するため及び/又は本明細書において定義される第1の植物を生産するために、本発明の方法において、後代又は遺伝子修飾された植物を選択することが、必要である。優性形質がその後代に継代されていることの評価は、表現型により行うことができる。しかしながら、劣性形質の場合、そのような形質がその後代に継代されたかどうかは、遺伝子型により(任意選択で、分子マーカー技法により)、並びに/又は後期、すなわち、1回若しくは複数回のさらなる交雑ステップ(近親交配)により、その劣性形質のホモ接合性遺伝子型が得られた後においては表現型により、評価する必要があり得る。
遺伝子型に基づく選択には、好ましくは、目的とされる表現型形質と特定の遺伝子型との直接的な公知の連鎖が必要とされる。目的とされる形質が、公知の遺伝子型に直接的に連鎖していない場合、又は連鎖が複雑である場合には、選択は、表現型アッセイ、たとえば、バイオアッセイに基づくものであってもよい。
生物的ストレス抵抗性形質又は害虫抵抗性形質は、コナジラミ抵抗性、フィトフトラ抵抗性、潜葉虫抵抗性(トマトキバガ)、ハダニ抵抗性、温室コナジラミ抵抗性、ジャガイモ/トマトアブラムシ抵抗性、アザミウマ抵抗性、ウドンコ病抵抗性、クラドスポリウム抵抗性、ボトリティス・シネレア抵抗性、細菌抵抗性、又はこれらの任意の組合せであり得るが、これらに限定されない。任意選択で、コナジラミ抵抗性、トマトキバガ、アザミウマ、及びアブラムシ抵抗性は、ソラナム・ペンネリイ種に由来する形質である。任意選択で、フィトフトラ抵抗性、クラドスポリウム抵抗性、及び/又は細菌抵抗性は、ソラナム・ピンピネリフォリウム種に由来する形質である。任意選択で、ウドンコ病抵抗性、ボトリティス・シネレア抵抗性、及びフィトフトラ抵抗性は、ソラナム・ハブロカイテス種に由来する形質である。「由来する」とは、本明細書において、示される野生種を第1の親植物として使用することによって、任意選択で、該第1の親植物を、ソラナム・リコペルシクム品種又は栽培種である第2の親植物と交雑させ、任意選択で、それらをさらに近親交配させることによって、形質が、本明細書において定義される第1の植物に導入され得ることを意味するとして、理解されるものとする。
そのような抵抗性を検出及び選択するための好適なバイオアッセイは、温室/野外試験に基づくものであり、その場合、植物に、害虫、たとえば、上述の節足動物、真菌、細菌、卵菌、及び/又はウイルス害虫でチャレンジが行われ得、該植物を、続いて、抵抗性について高い信頼性でスコア付けする。コナジラミ抵抗性の場合、抵抗性の基準には、植物に存在する成体の数、又は産み付けられた卵の数、又は成体に成長した卵の数、又はこれらの基準の組合せが含まれ得る。潜葉虫(トマトキバガ)の場合、抵抗性の基準には、植物に存在する潜葉虫の数、産み付けられた卵の数、食べられた及び/又は損傷した葉表面が含まれ得る。ウドンコ病の場合、抵抗性の基準には、植物に存在する感染斑の数及び/若しくはサイズ、又は分生子(胞子)の数が含まれ得る。
タバココナジラミ(コナジラミ)抵抗性を検出するのに好適なバイオアッセイは、国際公開第2012/165961号に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。簡単に述べると、タバココナジラミ抵抗性について試験しようとする植物及び対照植物に、4つのクリップケージを付け、そのそれぞれが、20匹の成体タバココナジラミ(好ましくは、バイオタイプQ)を含み、これは、研究室条件下において、キュウリにおいて継続的に飼育したものである(Bleekerら、2009 -Plant Physiol.を参照されたい)。5日後に、死亡した成体の総数及び割合、並びに卵の総数(葉の背軸側及び向軸側の組合せ)を判定する。
トリアレウロデス・バポラリオルム(温室コナジラミ)抵抗性を検出するのに好適な(表現型)バイオアッセイもまた、国際公開第2012/165961号に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。簡単に述べると、トリアレウロデス・バポラリオルム(目:カメムシ)を、トマト(ソラナム・リコペルシクム)において飼育する。選択アッセイを、24時間行う。成体を、試験しようとする植物及び対照植物を有するケージに放った。続いて、成体が定着する優先度を、植物の葉において判定した。
マクロシファム・ユーフォリビアエ(ジャガイモ/トマトアブラムシ)抵抗性を検出するのに好適なバイオアッセイもまた、国際公開第2012/165961号に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。簡単に述べると、マクロシファム・ユーフォリビアエ(目:カメムシ)を、トマト(ソラナム・リコペルシクム)において飼育する。選択肢なしアッセイを、48時間行う。1匹の成体アブラムシを、試験しようとする植物及び対照植物のクリップケージに入れる。続いて、アブラムシの性能(生存及び後代の数)を判定する。
トマトキバガ抵抗性を検出するのに好適なバイオアッセイもまた、国際公開第2012/165961号に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。簡単に述べると、トマトキバガ(目:チョウ)を、トマト(ソラナム・リコペルシクム)において飼育する。選択肢なしアッセイを、7日間行う。5匹の成体に、試験しようとする植物及び対照植物に卵を産卵させた。7日後に、トマトキバガの産卵(産み付けられた卵の数)を、それぞれの植物遺伝子型の背軸側及び向軸側において判定する。
ハダニ(テトラニクス・ウルチカエ及び/又はテトラニクス・エバンシ)を検出するのに好適なバイオアッセイもまた、国際公開第2012/165961号に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。ハダニは、昆虫と同様に節足動物に属するが、異なる綱の生物である。簡単に述べると、節足動物種を、一般的なソラマメにおいて飼育する。4日間の選択肢なしアッセイを、テトラニクス・ウルチカエ及び/又はテトラニクス・エバンシの同期集団を用いて行う。ダニを、試験しようとする植物及び対照植物の葉ディスクに置いた。続いて、ダニの生存及び繁殖力(卵/ダニの数)を評価する。
害虫抵抗性は、さらに、又は前述のものと組み合わせて、表皮細胞に存在する毒性及び/若しくは忌避性分子(たとえば、テルペノイド、テルペノイド誘導体、メチルケトン、及びアシル糖)の生産の増加、トリコームの数の増加、並びに/又はワックスの量の増加によって、評価してもよい。
非生物的ストレス抵抗性は、乾燥抵抗性であり得、これは、乾燥抵抗性を有さない対照植物と比較して、改善された乾燥抵抗性を有するとして理解されるものとする。改善された乾燥抵抗性を有する植物は、改善された乾燥抵抗性が提供されている場合、乾燥又は乾燥ストレスに供されたときに、改善された乾燥抵抗性が提供されていない植物において観察される作用を示さないか、又はそれよりも軽減された作用を示す、植物を指す。正常な植物は、ある程度の乾燥抵抗性を有する。植物が、改善された乾燥抵抗性を有するかどうかは、対照植物において、ある特定の期間の後に、すなわち、植物を乾燥又は乾燥ストレスに供した場合に、乾燥の兆候が観察され得るように選択した制御条件下において、対照植物を、改善された乾燥抵抗性が提供されている植物と比較することによって、容易に判定することができる。改善された乾燥抵抗性を有する植物は、対照植物と比較して、示される乾燥に供されたという兆候、たとえば、萎れが、少ない及び/又は低減される。当業者であれば、好適な条件、たとえば、実施例における制御条件などを選択する方法を認識している。植物が、「改善された乾燥抵抗性」を有する場合、通常であれば正常な(対照)植物の成長の低減及び/又は発生の低減をもたらすであろう乾燥又は乾燥ストレスに供した場合に、正常な成長及び/又は正常な発生を持続することができる。したがって、「改善された乾燥抵抗性」は、植物を比較することによって判定することができ、それにより、乾燥ストレス下において(正常な)成長を維持する能力が最も高い植物が、「改善された乾燥抵抗性」を有する植物である。当業者であれば、植物の乾燥抵抗性を判定するのに適切な条件を選択する方法、及び乾燥の兆候を測定する方法、たとえば、IRRI,Breeding rice for drought prone environments,Fischerら、2003及びCIMMYT,Breeding for drought and nitrogen stress tolerance in maize:from theory to practice,Banzingerら、2000によって提供されているマニュアルに記載されているものなどを、十分に認識している。植物における改善された乾燥抵抗性を判定する方法の例は、Snow及びTingey、1985,Plant Physiol.,77,602-7並びにHarbら、Analysis of drought stress in Arabidopsis,AOP 2010,Plant Physiology Reviewに提供されており、以下の実施例の節に記載されている通りである。乾燥抵抗性の増加は、さらに、又は前述のものと組み合わせて、対照植物と比較した、トリコームの量の増加及び/又はストーマの量の減少によって、評価してもよい。
発芽特性は、発芽能力、ピーク値時間、発芽の均質性、発芽率、種子密度、及び/又は種子活力であり得るが、これらに限定されない。発芽特性を、目的とされる植物によって生産された種子において評価する。より詳細には、種子発芽の特性を、本発明のキメラ植物について評価する場合、該特性は、該植物の受粉後に、該キメラ植物によって生産された種子について評価するものとする。改善された発芽は、本明細書において、類似の花粉(すなわち、同じ植物に由来し、同じ遺伝子型を有する花粉)で受粉させた場合に、非キメラ対照植物から得られた種子と比較して、キメラ植物から得られた該種子の、少なくとも1つの改善された発芽特性として理解されるものとし、ここで、該キメラ植物の種子の種子胚は、該対照植物から得られた種子のものと同じ遺伝子型を有する。好ましい実施形態において、本明細書において定義される第1の親植物に由来する花粉で受粉させた後に本発明のキメラ植物から得られた種子の発芽特性を、該第1の親植物に由来する花粉で受粉させた後に本明細書において定義される第2の植物から得られた種子と比較する。
発芽能力は、所与の植物種に適切な固定期間以内に発芽する、すなわち、幼根の出現を示す、蒔かれたか、又は植えられたか、又はそうでなければ分配された種子の割合として、理解されるものとする。したがって、発芽能力は、所与の期間以内に、発芽した種子の数を、蒔かれたか、又は植えられたか、又はそうでなければ分配された種子の総数で除し、割合として再計算したものとして計算することができる。種子発芽特性は、たとえば、分類及び選択の手順、たとえば、農業及び園芸における通常のものを行った後に、判定することができ、特定の植物種を目的とするものであり得る。種子は、たとえば、液体密度分離によって、又はX線分類(たとえば、トマト種子に使用することができるようなもの)によって、分離することができる。種子はまた、まず、プライミングしてもよい。当業者であれば、所与の植物種に適切な固定期間がどれほどの長さであるかを認識している。この期間は、たとえば、ピーク値時間の2倍、3倍、4倍、又は5倍であり得る。これは、ピーク値時間の3倍であることが、好ましい。この期間が、環境条件に応じて変動し得ることもまた、当業者には公知である。これらの条件は種子発芽に最適な条件であることが、好ましい。したがって、発芽率又は発芽均質性における変動性が、発芽能力の計算に影響を及ぼさない長さの期間が、選択される。この期間は、当業者が、発芽能力のある種子の大半が実際にこの期間内に発芽すると妥当に予測することができる場合、適切である。図11は、異なる発芽能力を有する植物株の発芽した種子の割合の経時的な展開を示す。取得期間は、発芽した種子の数がやがて横ばいになり、プラトー期に達するのを確実にするように十分に長いものである。このプラトー期は、すべての種子が発芽している場合には100%であり得るか、又は一部の種子がまったく発芽していない場合には、それよりも低い割合であり得る。発芽能力とは、植物種に応じて、たとえば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%を意味する。したがって、85%の発芽能力は、たとえば、ピーク値時間の3倍であるがこれに限定されない、所与の植物種に適切な期間以内に、蒔かれたか、又は植えられたか、又はそうでなければ分配された種子のうちの85%が発芽する、すなわち、幼根の出現を示すことを、示唆する。高い発芽能力は、より多くの種子が幼根の出現を示すことを意味する。最適な環境条件下において発芽能力を構築するための、所与の植物種に適切な固定期間の例は、たとえば、シロイヌナズナ(Arabidopsis)については5日間、オオムギについては約7日間、オトギリソウ(Hypericum)については約7日間、タバコについては約7日間、トマトについては約7日間、キンポウゲについては約28日間、及びインパチェンスについては約30日間であるが、これらに限定されない。
ピーク値時間は、本明細書において、種子が発芽するように種子を蒔いたか、植えたか、又はそうでなければ分配してからの、場合によっては種子の分類及び選択からの、又はたとえば種子のプライミング及び/若しくは湿層処理からの期間であって、発芽した種子の割合をy軸にプロットし、時間をx軸にプロットした曲線において、最も大きい正接に到達する期間として理解されるものとする。図12は、ピーク値時間の概念を図示する。したがって、ピーク値時間は、時間単位当たりの発芽する種子の数の増加が最も高くなる瞬間に到達するのに必要な期間として決定される。ピーク値時間は、たとえば、ピーク値時間の2倍、3倍、4倍、又は5倍、好ましくはピーク値時間の3倍の期間で固定することによって、発芽能力又は発芽率の計算に役立てるために使用することができる。
種子発芽の均質性又は発芽均質性は、固定割合の発芽した種子(X)に到達するのに必要な時間(T)として理解されるものとする。この固定割合は、50%(T50)、75%(T75)、80%(T80)、90%(T90)、95%(T95)、99%(T99)、又は特定の播種バッチに適切な任意の割合であり得る。時間が短いほど、均質性が高い。種子発芽の均質性が、環境条件に応じて変動し得ることが、当業者には公知である。これらの条件が、種子発芽の最適な条件であることが、好ましい。種子発芽の均質性は、原則として、発芽能力又は発芽率とは独立しているが、かならずしもそうとは限らない様式で、測定される。
発芽率は、1日当たりの総発芽種子の加重合計として定義される。式形式では、発芽率=(1日目に発芽した種子の数を1で除したもの)+(2日目に発芽した種子の数を2で除したもの)+…+(Z日目に発芽した種子の数をZで除したもの)であり、式中、Zは、測定の最終日である。この測定は、American Association of Seed Analysts(AOSA)(AOSA.,1983.Seed vigor testing handbook.Contribution No.32 to handbook on seed testing.Association of Official Seed Analysts)によって定義される発芽指数(GI)と同じである。発芽率は、所与の植物種に適切な期間にわたって判定され、この期間は、当業者が、発芽する能力のある種子の大半が実際に発芽すると妥当に予測することができる期間である。当業者であれば、この期間を判定する方法を認知している。この期間は、たとえば、ピーク値時間の2倍、3倍、4倍、又は5倍であり得る。これは、ピーク値時間の3倍であることが、好ましい。発芽率が、環境条件に応じて変動し得ることが、当業者には公知である。これらの条件は種子発芽に最適な条件であることが、好ましい。しかしながら、準最適条件下においては、改善された播種バッチ品質もまた、強化された発芽率として評価することができ、これは、農業又は園芸の実施において一般的であり得る。
種子密度は、種子の比重に関連し、たとえば、種子の、たとえばスクロース勾配における、液体密度分離によって、判定することができる。
種子活力は、種子から生じる実生が、植えたときに、生存し、成長する能力を意味する。したがって、高い活力を有する種子は、類似の条件下であれば、生存し、まず子葉が展開され、次に、シュートが大きくなり、最後に、第1の本葉が生じることによって、第1の本葉が生じた実生又は小植物体に成長する割合が高い。同じ条件下であれば、植物種に応じたある特定の期間内に観察され得る第1の本葉が生じた実生又は小植物体の割合が高いほど、種子活力が、より高いと考えられる。また、播種後の固定期間後の実生の総生物量(生重量及び/又は乾燥重量)が大きいほど、種子活力が、より高いと考えられる。したがって、実生の生重量は、とりわけ、種子活力の尺度である。
特定の植物、好ましくはその植物自体によって生産された花粉、すなわち、生産しようとする周縁キメラ植物に由来する花粉を受ける能力は、試験しようとするF1ハイブリッド又は近親交配した第1の(親)植物を、周縁キメラ植物のL2シュート分裂組織層を提供する第2の植物に由来する花粉で受粉させることによって、評価することができる。花粉の受容は、そのような受粉が果実及び種子の形成をもたらした場合に、陽性としてスコア付けする。
特定の実施形態において、目的とされるL1局在化形質は、本明細書において定義される第1の親植物によって生産された花粉を受ける能力である。この形質は、該第1の親植物の花粉を用いた受粉後に生産された種子の改善された発芽特性の形質と組み合わせる場合に、特に興味深い。特に、該第1の親植物が、野生種であり、本発明のキメラ植物のL2及びL3層を提供する第2の植物が、栽培種である場合、ハイブリッド種子が、キメラ植物によって生産され得、これは、該第1の親植物の花粉を用いた受粉後に、非キメラ対照植物(すなわち、第2の植物)を用いて生産されたハイブリッド種子と比較して、改善された発芽特性を示す。なおもさらに好ましい実施形態において、目的とされるL1局在化形質の該組合せは、生物的又は非生物的ストレス抵抗性の形質をさらに含む。
本発明はまた、本明細書において定義される方法のうちのいずれかによって得ることができる周縁キメラを提供する。結果として得られる周縁キメラ植物は、L1シュート分裂組織層に(第1、第2、及び任意選択でさらなる)目的とされる形質を含むとことを特徴とする、商業に関連する植物であることが、好ましい。本発明は、本明細書において定義される方法のうちのいずれかによって得られたか又は得ることができる周縁キメラに栄養繁殖的に由来する、周縁キメラをさらに提供する。
第1の植物は、第1及び第2の目的とされるL1局在化形質を含むことが、好ましい。したがって、本明細書において定義される第1の植物が、全体として、商業に関連する植物であるという要件は存在しない。該第1の植物のL1シュート分裂組織層は、商業に関連することが好ましく、すなわち、該植物のL1シュート分裂組織層が、周縁キメラ植物を生産するために、第2の商業に関連する植物のL2及びL3シュート分裂組織層と組み合わされている場合、そのような周縁キメラ植物は、商業に関連する。
本明細書において使用される「第1の植物」、「第2の植物」、「第1の親植物」、「第2の親植物」、「F1ハイブリッド」、及び「近親交配植物」は、本明細書において、それぞれ、「第1の植物のゲノムを有する植物」、「第2の植物のゲノムを有する植物」、「第1の親植物のゲノムを有する植物」、「第2の親植物のゲノムを有する植物」、「F1ハイブリッドのゲノムを有する植物」、及び「近親交配植物のゲノムを有する植物」と置き換えることができる。
周縁キメラ植物は、当該技術分野における好適な方法によって作製することができる。たとえば、周縁キメラは、L1シュート分裂組織層を提供する植物又は植物品種(本明細書において上記に定義される第1の植物)の実生、並びにL2及びL3シュート分裂組織層を提供する植物又は植物品種(本明細書において上記に定義される第2の植物)の実生を接木することによって作製することができ、これは、(1)胚軸を横方向に切断した後に隣接させて再接着させるステップ、(2)接木接合部を横方向に切断するステップ、並びに(3)カルスを成長させ、不定シュートが、接木接着の部位から再生成するステップ、並びに(4)再生成された植物の中からキメラを選択するステップからなる。ステップ1~4の技法は、当業者に公知である。一般に、接木及び再生成を使用する場合、周縁キメラが、不定シュートに生じる頻度は、約0.2%~10%であろう。したがって、多数の第1の植物及び第2の植物の実生、並びに多数の独立した不定シュートを生成することが、好ましい。これらの不定シュートのそれぞれを、長さおよそ5cmで、いくつかの葉を有する小植物体に成長させていてもよい。これらの小植物体から、シュート頂端を除去して、葉腋から葉腋シュートを生じさせてもよい。これらの葉腋シュートの中から、構成物質である第1の植物及び第2の植物を区別する遺伝子マーカーを使用して、周縁キメラを特定することができる。これらのマーカーは、表現型、たとえば、異なる葉の色であってもよく、又は任意の形態学的若しくは生化学的な違い、たとえば、果実の形状であってもよい。これらのマーカーはまた、遺伝子型、たとえば、L1シュート分裂組織層を提供する植物とL2及びL3シュート分裂組織層を提供する植物との間のDNA又はRNA配列多型性であってもよい。表現型及び/又は遺伝子型マーカーは、適切な検出方法によって検出することができ、すべての個々の接木された植物対から再生成されたすべての不定シュートに由来するすべての葉腋シュートに適用することができる。周縁キメラは、生殖交雑の結果ではなく、接木接合部からの不定シュートの再生成の結果として、第1の植物及び第2の植物の両方のマーカーの組合せを単一の植物に有するとして認識することができる。そのようなキメラは、その葉腋シュート、花序、開花、並びに周縁キメラのシュート頂分裂組織からの自然の成長及び発生から生じる植物のすべての他の成長部分を含め、植物のさらなる成長の間、これらのマーカーを安定に保持する。その幹細胞層L(1、2、3)の構成という点で、所望される種類の周縁キメラは、特定の組織、たとえば、表皮(L1)、脈管(L3)、花粉粒(L2)、又は主としてこれらの層に由来することが公知の任意の他の組織における、マーカーの存在を観察することによって、特定される。
たとえば、第1及び第2の目的とされる形質の両方を含む周縁キメラ植物を生産するための第1の植物を、台木又は穂木として、上記に定義される第2の植物に接木し、続いて、10日間、接木を癒合させることができる。接木接合部を、次いで、横方向に切断してもよく、そうすると、カルスの成長及びシュートの再生成が、自発的に生じる。再生成されたシュートの中から、周縁キメラを、目視によって、たとえば、表現型マーカーxa(Szymkowiak,E.J.,and Sussex,I.M.(1992)(1992),The internal meristem layer(L3)determines floral meristem size and carpel number in tomato periclinal chimeras,Plant Cell 4,pp.1089-1100)及びトリコーム密度を使用して、選択することができる。半優性マーカーxaは、ヘテロ接合性条件下において、L2及び/又はL3に存在する場合、黄色い葉をもたらす。たとえば、第1の植物(すなわち、L1シュート分裂組織層を提供する植物)が、xaマーカーを含むが、このマーカーが、本明細書において定義される第2の植物(すなわち、L2及びL3シュート分裂組織層を提供する植物)には存在せず、第1の植物が、トリコーム密度の表現型を有し、これが、第2の植物には存在しない場合、所望される種類のキメラは、緑色の葉(第2の植物のL2及びL3)に加えて、高いトリコーム密度(近親交配株のL1)を有することによって、認識することができる。さらに、L1層の同一性は、第1の植物の遺伝子型を、第2の植物の遺伝子型と区別するSNPマーカーの、表皮細胞における有無をスコア付けすることによって、判定することができる。
本発明はまた、上記に定義される方法によって得られたか若しくは得ることができる周縁キメラ植物、並びに/又は該周縁キメラ植物に栄養繁殖的に由来する任意の植物も提供する。そのような周縁植物は、L1シュート分裂組織層の遺伝子型が、L2及びL3シュート分裂組織層の遺伝子型とは異なるという点で、並びに/又はその植物が、本明細書において上記に定義される目的とされる(第1、第2、及び任意選択でさらなる)形質を含むという点で、認識することができる。本発明はさらに、受精している、すなわち、種子胚を含む周縁キメラ植物を提供する。周縁キメラ植物は、第1の植物又は第2の植物の遺伝子型を有する植物の花粉で受精していることが、好ましい。植物は、台木品種であってもよい。
周縁植物は、商業に関連する植物であることが好ましいという点において、さらに認識され得る。周縁キメラ植物(又はそれに栄養繁殖的に由来する植物)は、植物産物を生産するために使用することができる。したがって、植物産物を生産するための該周縁キメラ植物(又はそれに栄養繁殖的に由来する植物)の使用また、提供される。より詳細には、第1及び第2の目的とされる形質を含む周縁キメラ植物から、植物産物を生産するための方法であって、
A)上記に定義される第1及び第2の形質を含む、及び/又は上記に定義される周縁キメラ植物を生産するための方法によって得ることができる、周縁キメラ植物を提供するステップと、
B)ステップA)の周縁キメラ植物を成長させるステップと、
C)ステップB)において成長させた植物から植物産物を誘導するステップと、
D)任意選択で、ステップC)において得られた植物産物をさらに処理するステップと
を含む方法が、提供される。
そのようにして得られた植物産物もまた、提供される。該植物産物は、果実、植物器官、植物の一部(たとえば、葉、根、根端、茎、花、蕾、葯、種子、子実、花粉、胚珠)から選択され得るが、これらに限定されず、植物自体を生じ得ない産物(すなわち、繁殖しないもの)、たとえば、植物油脂、植物油、植物デンプン、及び植物タンパク質画分であってもよい。植物産物は、かならずしも光合成の特性を有するとは限らない。ステップD)における該処理は、粉砕、磨砕、又はインタクトなまま、他の材料との混合、乾燥、凍結、及びこれらの任意の組合せから選択され得るが、これらに限定されない。植物産物は、L1シュート分裂組織層の遺伝子型、並びにL2及びL3シュート分裂組織層の遺伝子型の存在によって認識することができる。
本発明の方法又は使用の実施形態において、第1の植物、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親勾配株と、ソラナム・ペンネリイとの第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有し、第2の植物、並びに周縁キメラ植物のL2シュート及びL3シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクムの近親交配株の遺伝子型を有する。すべての他の変数は、本明細書において上記に定義されている。この実施形態において、第1の植物、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株アイルサ・クレイグと、ソラナム・ペンネリイ株LA716との第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有することが、好ましい。第2の植物、並びに周縁キメラ植物のL2シュート及びL3シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム栽培種マネーメーカーの近親交配株の遺伝子型を有することが、好ましい。
本発明の方法又は使用の実施形態において、第1の植物、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株と、チェリータイプソラナム・リコペルシクム近親交配株との第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有し、第2の植物、並びに周縁キメラのL2シュート及びL3シュート分裂組織層は、ビーフ品種のソラナム・リコペルシクムの近親交配株の遺伝子型を有する。すべての他の変数は、本明細書において上記に定義されている。この実施形態において、第1の植物、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株アイルサ・クレイグと、チェリータイプソラナム・リコペルシクム近親交配株との第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有することが、好ましい。
本発明の方法又は使用の実施形態において、第1の植物、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親勾配株と、ソラナム・ハブロカイテスとの第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有し、第2の植物、並びに周縁キメラのL2シュート及びL3シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクムの近親交配株の遺伝子型を有する。すべての他の変数は、本明細書において上記に定義されている。この実施形態において、第2の植物、並びに周縁キメラのL2シュート及びL3シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム栽培種マネーメーカーの近親交配株の遺伝子型を有し、第1の植物、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株アイルサ・クレイグと、ソラナム・ハブロカイテスアクセッションPI127826との第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有することが、好ましい。
本発明の方法又は使用の実施形態において、第1の植物、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親勾配株と、ソラナム・ペンネリイとの第1世代のF1ハイブリッドを、雄性として続いてソラナム・リコペルシクムの雌性に戻し交雑させて、BC1集団を生産させたものの遺伝子型を有し、第2の植物、並びに周縁キメラのL2シュート及びL3シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクムの近親交配株の遺伝子型を有する。すべての他の変数は、本明細書において上記に定義されている。第1の植物、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株LA3579と、ソラナム・ペンネリイとの第1世代のF1ハイブリッドを、雄性として続いてソラナム・リコペルシクムLA3579の雌性に戻し交雑させて、BC1集団を生産させたものの遺伝子型を有することが、好ましい。このBC1集団は、コナジラミ抵抗性、任意の父アクセッションに由来する花粉との雌性としての交雑適合性、及びLA3579のxaマーカーの同時表現型発現について選択することが、好ましかった。
本発明の方法又は使用の実施形態において、第1の植物、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親勾配株と、ソラナム・ピンピネリフォリウムとの第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有し、第2の植物、並びに周縁キメラのL2シュート及びL3シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクムの近親交配株の遺伝子型を有する。すべての他の変数は、本明細書において上記に定義されている。この実施形態において、第1の植物、及び周縁キメラ植物のL1シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム近親勾配株アイルサ・クレイグと、ソラナム・ピンピネリフォリウムアクセッションCGN1552937との第1世代のF1ハイブリッドの遺伝子型を有し、第2の植物、並びに周縁キメラのL2シュート及びL3シュート分裂組織層は、ソラナム・リコペルシクム栽培種マネーメーカーの遺伝子型を有することが、好ましい。
本開示において、ソラナム・リコペルシクム植物品種アイルサ・クレイグは、アクセッション番号LA3579を有し得、ソラナム・リコペルシクム植物品種マネーメーカーは、たとえば、アクセッションLA2706を有し得る。
本発明を、以下の実施例においてさらに説明する。これらの実施形態は、本発明の範囲を制限するものではなく、単に、本発明を明らかにするよう機能するものである。
実施例1
コナジラミ(タバココナジラミ、バイオタイプQ)に抵抗性のトマト植物を、以下のように作製した。F1ハイブリッドを、コナジラミ抵抗性のアクセッション(ソラナム・ペンネリイLA716)及びコナジラミ感受性のアクセッション(ソラナム・リコペルシクムLA3579)との間で作製したが、後者は、半優性xa表現型マーカー、市場性のある赤色の果実色、並びにソラナム・リコペルシクムの任意の父アクセッション、株、又はハイブリッドに由来する花粉との雌性としての交雑適合性を含む。F1ハイブリッドを、コナジラミ抵抗性及びLA3579のxaマーカーの表現型同時発現について選択した。
結果として得られたF1ハイブリッドを穂木として、本明細書においてさらに「感受性対照」と表記される、商業に関連するソラナム・リコペルシクムの感受性近親交配品種に接木し、7日間、接木を癒合させた。接木接合部を、次いで、横方向に切断し、そうすると、カルスの成長及びシュートの再生成が、自発的に生じた。再生成されたシュートの中から、周縁キメラを、表現型マーカーxaに加えてハイブリッド穂木によってもたらされる高いトリコーム密度を使用して、目視により選択した。半優性マーカーxaは、ヘテロ接合性条件下において、L2及び/又はL3に存在する場合、黄色の葉をもたらす。所望される種類のキメラは、緑色の葉(栽培種のL2及びL3)に加えて、高いトリコーム密度(ハイブリッドのL1)を有することによって、認識した。このキメラは、葉及び茎において黄色の区域として現れたであろうL1細胞のL2への自発的な侵入が完全に存在しないことから判断すると、発生の間及び葉腋シュートの挿木苗からの繁殖の間、非常に安定していた。
このようにして生産した(1つ又は複数の)キメラを、高いタバココナジラミ及びTYLCV(トマト黄化葉巻ウイルス)圧を伴う商用の地中海生育条件(El Ejido、Spain)下で、温室試験において、コナジラミ抵抗性について試験した。植物を、2.5ヶ月の期間にわたって、植物に存在する成体、卵、幼虫、及び脱皮の数を計数し、これを、抵抗性対照(F1ハイブリッド)及び感受性対照で比較することによって、抵抗性について高い信頼性でスコア付けした。
抵抗性対照(F1ハイブリッド)は、実験の全期間(2.5ヶ月間)にわたって、十分な性能であったことが見出された。これらの植物には、限られた数のコナジラミ(成体及び幼虫の段階)しか検出されず、実験の終わり頃に、植物の頂端部に軽度のTYLCVの症状が観察されただけであった。対照的に、感受性植物は、コナジラミ(すべての生存段階)で覆われており、2015年11月4日ほどの早期に、TYLCVの症状を示した。TYLCVの症状は、急速に悪化し、植物は、実験の残りの期間の間、発育が阻止されたままであった(約50cm)。
試験用植物である、ソラナム・ペンネリイ×ソラナム・リコペルシクムのL1シュート分裂組織層が移入されたソラナム・リコペルシクムには、コナジラミがほとんどおらず(すべての生存段階、抵抗性対照植物と類似)、成長が強力であり、実験の終わり頃に軽度のTYLCV症状を生じただけであったことは、興味深い。
図1~4は、重度に蔓延させた温室において、これらの植物(A、B、及びC)で経時的に観察されたコナジラミの成体、卵、幼虫、及び脱皮の平均数を表す。すべてのデータは、A又はCの植物を、感受性対照(B)と比較した場合、有意な差を示す。
この実験の独立した反復において、少なくとも4つの本葉を含み、上述のように生産させた20個のキメラ植物を、本明細書において定義されるクリップケージアッセイを使用して、タバココナジラミ抵抗性について試験したが、48時間後に、タバココナジラミ死亡率には、表1に示されるように、感受性対照植物(ソラナム・リコペルシクム)、F1ドナー植物、及びキメラ植物の間で明らかな差が見出された。このクリップケージ実験において使用したコナジラミは、4週齢であり(卵-成体の段階)、ワタ植物での同期飼育により得られ、排気装置を用いて収集したものであった。コナジラミを、COで5秒間麻痺させている間に、チューブからクリップケージに移した(クリップケージ1つ当たり6匹の雌性コナジラミ)。48時間後に、クリップケージを再度開け、コナジラミを再捕捉し、死亡率をスコア付けした。
Figure 0007315286000001

成体の死亡率に加えて、サナギ及び脱皮の数を、3週間後に、これらの植物において判定した。表2に示されるように、卵から脱皮までのコナジラミの発生は、ソラナム・リコペルシクムと比較して、ドナー及びキメラ植物では有意に低く、コナジラミに対する抵抗性のレベルがより高いことを示している。
Figure 0007315286000002

実施例2
コナジラミ(タバココナジラミ、バイオタイプQ)に抵抗性のトマト植物を、以下のように作製する。F1ハイブリッドを、コナジラミ抵抗性のアクセッション(ソラナム・ペンネリイLA716)及び感受性のアクセッション(ソラナム・リコペルシクムLA3579)との間で作製したが、後者は、半優性xa表現型マーカー、市場性のある赤色の果実色、並びにソラナム・リコペルシクムの任意の父アクセッション、株、又はハイブリッドに由来する花粉との雌性としての交雑適合性を含む。結果として得られたF1ハイブリッドを雄性として、雌性ソラナム・リコペルシクムLA3579に戻し交雑させて、BC1集団を生産した。このBC1集団を、コナジラミ抵抗性、任意の父アクセッションに由来する花粉との雌性としての交雑適合性、及びLA3579のxaマーカーの同時表現型発現について選択した。
コナジラミ抵抗性の選択は、実施例1に示されるように行った。加えて、選択には、植物がソラナム・リコペルシクムの花粉を受ける能力が含まれた。後者は、選択した植物に、ソラナム・リコペルシクムの株又はハイブリッドに由来する花粉で受粉させることによって行った。花粉の受容は、そのような受粉が果実及び種子の形成をもたらした場合に、陽性としてスコア付けした。選択した植物を、続いて、3世代及び4世代近親交配させて、それぞれ、BC1S3及びBC1S4集団を生産した。これらの3世代及び4世代のそれぞれにおいて、それぞれ、選択を、上記と同じ様式で、市場性のある赤色の果実色の形質を含めて行い、コナジラミ抵抗性であり、ソラナム・リコペルシクムの花粉と適合性があり、成熟果実に赤色色素を有する植物を得た。コナジラミ(タバココナジラミ)の死亡率を、本明細書において定義されるクリップケージアッセイを使用して試験し、タバココナジラミの死亡率を、5日後に判定した。さらに、産み付けられた卵の数を計数した。コナジラミ(タバココナジラミ)の死亡率は、BC1S3植物及びBC1S4植物では有意に増加していた(図14)。これらの植物では、観察された卵がほとんどなかったことが、より顕著な点であった(図15)。
上述のように選択し、繁殖させた(株の後代又はクローン)コナジラミに抵抗性のこれらのBC1S3及びBC1S4植物を、本明細書において以降「BC1S3」及び「BC1S4」と称し、これらを台木又は穂木として、本明細書において以降「栽培種」と称されるソラナム・リコペルシクムの商業に関連する近親交配品種又はF1ハイブリッドに接木した。
まず、BC1S3又はBC1S4の穂木を栽培種の台木に接木した後、7日間、接木を癒合させることによって、周縁を生産させる。接木接合部を、次いで、横方向に切断し、そうすると、カルスの成長及びシュートの再生成が、自発的に生じる。再生成されたシュートの中から、周縁キメラを、表現型マーカーxaに加えてBC1S3及びBC1S4穂木によってもたらされる高いトリコーム密度を使用して、目視により選択する。半優性マーカーxaは、ヘテロ接合性条件下において、L2及び/又はL3に存在する場合、黄色の葉をもたらす。所望される種類のキメラは、緑色の葉(栽培種のL2及びL3)に加えて、高いトリコーム密度(BC1S3及びBC1S4のL1)を有することによって、認識する。
このようにして生産した1つ又は複数のキメラを、上述の方法によって、コナジラミ抵抗性について試験し、周縁キメラ植物の自家受精によって花粉適合性について試験し、赤色果実の形成について試験する。続いて、キメラを、葉腋シュートを挿木苗とすることによって、クローンとして繁殖させる。そのようなクローンの集団は、当該技術分野において一般的な様式で、商用トマト果実生産に使用することができる。
実施例3
種間F1ハイブリッドTPに由来するトマト種子の発芽特性が、改善された。このF1ハイブリッドは、ソラナム・リコペルシクムの母系近親交配株TTを、ソラナム・ペンネリイの父系株PPに交雑させることによって、生産する。
{L3(TT)、L2(TT)、L1(EP)}型の周縁キメラを作製し、ここで、TT及びEPは、二倍体を示す(T及びE及びPが、半数体である)。TTは、標準的な近親交配トマト(ソラナム・リコペルシクム)品種である。EPは、ソラナム・リコペルシクム近親交配株EE(栽培種アイルサ・クレイグアクセッションLA3579)とソラナム・ペンネリイ株PP(アクセッションLA716)との第1世代のF1ハイブリッドである。まず、EP穂木をTT台木に接木した後、10日間、接木を癒合させることによって、周縁を生産させた。接木接合部を、次いで、横方向に切断し、そうすると、カルスの成長及びシュートの再生成が、自発的に生じた。再生成されたシュートの中から、周縁キメラを、表現型マーカーxaに加えてEP穂木によってもたらされる高いトリコーム密度を使用して、目視により選択した。半優性マーカーxaは、ヘテロ接合性条件下において、L2及び/又はL3に存在する場合、黄色の葉をもたらす。所望される種類のキメラは、緑色の葉(TTのL2及びL3)に加えて、高いトリコーム密度(EPのL1)を有することによって、認識した。このキメラは、葉及び茎において黄色の区域として現れたであろうL1細胞のL2への自発的な侵入が完全に存在しないことから判断すると、発生の間及び葉腋シュートの挿木苗からの繁殖の間、非常に安定していた。このキメラの交配挙動を、xaマーカーの分離比分析を使用して、分析した。500個のキメラの実生において、PPとの戻し交雑により、黄色の実生は1つも観察されなかった。これらのデータは、このキメラが、遺伝子型T由来の配偶体を排他的に保持していたこと、及びEP組織が、胞子体の役割しか果たさなかったことを示した。L1層は、胚珠の外皮を生じ、後に成熟種子の種皮を生じることが周知であるため、キメラの種子発生におけるEPの胞子体の役割は、外皮及び種皮のものである。
種間のTP F1ハイブリッド種子を、キメラ並びに非キメラTT植物から生産させた。この目的で、それぞれの6つの植物を、遺伝子型TTの台木に接木して、それらの根系を等しくした。それらを、PP株由来の花粉で他家受精させて、TPハイブリッド種子(F1)を生産させた。すべての植物を、4月~8月の期間、通常の温室で成長させた。交雑は、開花期の直前に花の除雄を行い、1~2日後に受粉させることによって行った。成熟果実から種子を採取し、0.5% HCl中に1時間浸漬した後、水道水で十分にすすぎ、ろ紙の上で乾燥させ、使用するまで摂氏10度/相対湿度10%で保管した。
種子の3つの発芽特性を定め、測定した。
(a)密度
(b)発芽率
(c)発芽能力
すべての測定は、以下の逐次的な方法で行った。
(a)密度
成熟種子の密度は、その生理学的組成の一次関数である。これは、主として、種皮内の空間を占める胚乳及び胚における代謝化合物の量及び生化学的性質によって決定される。密度(比重)は、スクロース水溶液における液体密度分離によって判定した。約500個の種子を、メスシリンダーにおいて、水1リットル当たり0、200、及び400グラムのスクロースに順番に通過させた。軽い溶液中に沈む種子を収集し、次へ進めた。これにより、低いものから高いものへ、次の4つの密度画分が得られた:0、200、400、及び400+。これらの画分を、水道水で十分にすすぎ、室温において、ろ紙の上で少なくとも72時間乾燥させた。1画分当たりの種子の数を計数し、密度クラスにわたる分布を判定した。
図5に示されるように、非キメラTTをPPに交雑させることにより作製した種間F1種子は、キメラをPPと交雑させたものとは大きく異なる密度分布を有していた。キメラ交雑とは対照的に、非キメラ交雑は、充填度の低い軽い種子を高比率で有していた。これらの2つの交雑種における胚及び胚乳の遺伝子型は、同一であるため、密度分布における差は、EP胞子体によって種子に生理学的に付与されたものであると結論付けなければならない。充填度の低い種子の比率が高いことは、ソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ペンネリイの交雑種の特徴であり、これらの種間における軽度の種間交雑障壁の現れである。キメラでは、この障壁が有意に緩和されていた。
(b)発芽率
100個の種子を、密封したペトリ皿において、湿潤させた(水道水)ろ紙の上の格子状のアレイに蒔き、続いて、人工気候チャンバにおいて、摂氏23度で16/24時間の白色光下においてインキュベートすることによって、発芽率をインビトロで判定した。発芽は、7日間の期間にわたって、目に見える幼根の出現として、24時間間隔でスコア付けした。次いで、発芽率を、以下の式に従って計算した:発芽率=(#1/1)+(#2/2)+……+(#7/7)、式中、#1は、24時間後に発芽していた種子の数であり、#2は、48時間後に発芽していた種子の数である。発芽率の数字が大きいほど、幼根の出現が速い。試験は、種子100個のサンプルで行った。
図6は、キメラ植物及びTT対照植物に由来するF1種子のインビトロ発芽率試験の結果を示す。未処理の播種バッチのみを播種した、すなわち、播種前に、密度分画は行わなかった。図6から、キメラが、より発芽率の高い播種バッチを生産したことは明らかである。キメラ及びTT対照に由来する胚及び胚乳は、遺伝子的に同一であるため、発芽率の差は、胞子体EPによって生理学的に付与されていると結論付けなければならない。遅い種子発芽は、ソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ペンネリイの交雑種の特徴であり、これらの種間における軽度の種間交雑障壁の現れである。キメラでは、この障壁が有意に克服される。
(c)発芽能力
発芽能力を、上述の(b)部に記載されるものと同じアレイにおいて、10日後に発芽した種子の総数(%)をスコア付けすることによって、インビトロで測定した。結果を、図7に示す。インビトロでの発芽能力は、キメラの種子では、TT対照植物と比較して高かった。
実施例4
種間F1ハイブリッドTHに由来するトマト種子の発芽特性が、改善された。このF1ハイブリッドは、ソラナム・リコペルシクムの母系近親交配株TTを、ソラナム・ハブロカイテスに由来する父系株HHに交雑させることによって、生産される。
{L3(TT)、L2(TT)、L1(EP)}型の周縁キメラを作製し、ここで、TT及びEPは、二倍体を示す(T及びE及びPが、半数体である)。TTは、標準的な近親交配トマト(ソラナム・リコペルシクム)品種である。EPは、標準的なソラナム・リコペルシクム近親交配株EE(栽培種アイルサ・クレイグアクセッションLA3579)とソラナム・ペンネリイ株PP(アクセッションLA716)との第1世代のF1ハイブリッドである。まず、EP穂木をTT台木に接木した後、10日間、接木を癒合させることによって、周縁を生産させた。接木接合部を、次いで、横方向に切断し、そうすると、カルスの成長及びシュートの再生成が、自発的に生じた。再生成されたシュートの中から、周縁キメラを、表現型マーカーxaに加えてEP穂木によってもたらされる高いトリコーム密度を使用して、目視により選択した。ヘテロ接合性条件下において存在する半優性マーカーxaは、L2及び/又はL3に存在する場合、黄色い葉をもたらす。所望される種類のキメラは、緑色の葉(TTのL2及びL3)に加えて、高いトリコーム密度(EPのL1)を有することによって、認識した。このキメラは、葉及び茎において黄色の区域として現れたであろうL1細胞のL2への自発的な侵入が完全に存在しないことから判断すると、発生の間及び葉腋シュートの挿木苗からの繁殖の間、非常に安定していた。このキメラの交配挙動を、xaマーカーの分離比分析を使用して、分析した。500個のキメラの実生において、PPとの戻し交雑により、黄色の実生は1つも観察されなかった。これらのデータは、このキメラが、遺伝子型T由来の配偶体を排他的に保持していたこと、及びEP組織が、胞子体の役割しか果たさなかったことを示した。L1層は、胚珠の外皮を生じ、後に成熟種子の種皮を生じることが周知であるため、キメラの種子発生におけるEPの胞子体の役割は、外皮及び種皮のものである。
キメラ、並びに非キメラTT対照植物を、HHと表記されるソラナム・ハブロカイテスアクセッションPI127826に由来する花粉で他家受精させて、THハイブリッド種子(F1)を生産させた。すべての植物を、4月~8月の期間、通常の温室で成長させた。交雑は、開花期の直前に花の除雄を行い、1~2日後に受粉させることによって行った。成熟果実から種子を採取し、0.5% HCl中に1時間浸漬した後、水道水で十分にすすぎ、ろ紙の上で乾燥させ、使用するまで1週間~数週間、周囲条件で保管した。
種子の4つの発芽特性を定め、測定した。
(a)比重
(b)発芽率
(c)発芽能力
すべての測定は、以下の逐次的な方法で行った。
(a)比重
成熟種子の密度は、その生理学的組成の一次関数である。これは、主として、種皮内の空間を占める胚乳及び胚における代謝化合物の量及び生化学的性質によって決定される。比重は、スクロース水溶液における液体密度分離によって判定した。約500個の種子を、メスシリンダーにおいて、水1リットル当たり0、200、及び400グラムのスクロースに順番に通過させた。軽い溶液中に沈む種子を収集し、次へ進めた。これにより、低いものから高いものへ、次の4つの密度画分が得られた:0、200、400、及び400+。これらの画分を、水道水で十分にすすぎ、室温において、ろ紙の上で少なくとも72時間乾燥させた。1画分当たりの種子の数を計数し、密度画分にわたる分布を判定した。
図8に示されるように、非キメラTTをHHに対照交雑させることにより作製した種間F1種子は、キメラをHHと交雑させたものとは異なる密度分布を有していた。対照交雑は、充填度の低い軽い種子を高比率で有していた。これらの2つの交雑種における胚及び胚乳の遺伝子型は、同一であるため、密度分布における差は、EP胞子体によって種子に生理学的に付与されたものであると結論付けなければならない。充填度の低い種子の比率が高いことは、ソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ハブロカイテスの交雑種の特徴であり、これらの種間における種間交雑障壁の現れである。キメラ交雑におけるEP胞子体組織により、これが補正された。
(b)発芽率
100個の種子のバッチを、密封したペトリ皿において、湿潤させた(水道水)ろ紙の上の格子状のアレイに蒔き、続いて、人工気候チャンバにおいて、摂氏23度で16/24時間の白色光下においてインキュベートすることによって、発芽率をインビトロで判定した。発芽は、7日間の期間にわたって、目に見える幼根の出現として、24時間間隔でスコア付けした。次いで、発芽率を、以下の式に従って計算した:発芽率=(#1/1)+(#2/2)+……+(#7/7)、式中、#1は、24時間後に発芽していた種子の数であり、#2は、48時間後に発芽していた種子の数である。発芽率の数字が大きいほど、幼根の出現が速い。試験は、種子100個のサンプル3つで行った。
図9は、キメラ植物及びTT対照植物で生産されたF1種子の発芽率試験の結果を示す。未処理の播種バッチのみを播種した、すなわち、播種前に、密度分画は行わなかった。図9から、キメラが、より発芽率の高い播種バッチを生産したことは明らかである。キメラ及びTT対照に由来する胚及び胚乳は、遺伝子的に同一であるため、発芽率の差は、胞子体EPによって生理学的に付与されていると結論付けなければならない。非常に低い種子発芽は、ソラナム・リコペルシクム×ソラナム・ハブロカイテスの交雑種の特徴であり、これらの種間における種間交雑障壁の現れである。キメラ交雑種におけるEP胞子体組織により、この障壁が緩和された。
(c)発芽能力
発芽能力を、上述の(b)部に記載されるものと同じアレイにおいて、7日後に発芽した種子の総数(%)をスコア付けすることによって、インビトロで測定した。結果を、図10に示す。インビトロでの発芽能力は、キメラで作製した種子では、TT対照植物で作製した種子と比較してさらに高かった。
実施例5
ビーフ品種BBに由来する近親交配種子の発芽特性が、改善された。ビーフトマト品種は、2つを上回る、好ましくは3つを上回る子房を有する品種として、当該技術分野において公知である。この品種は、ソラナム・リコペルシクムの近親交配株BBの自家受精によって生産される。
{L3(BB)、L2(BB)、L1(ER)}型の周縁キメラを作製し、ここで、BB及びERは、二倍体を示す(B及びE及びRが、半数体である)。ERは、ソラナム・リコペルシクム近親交配株EE(栽培種アイルサ・クレイグアクセッションLA3579)とチェリータイプソラナム・リコペルシクム近親交配株RRとの第1世代のF1ハイブリッドである。まず、ER穂木をBB台木に接木した後、10日間、接木を癒合させることによって、周縁を生産させた。接木接合部を、次いで、横方向に切断し、そうすると、カルスの成長及びシュートの再生成が、自発的に生じた。再生成されたシュートの中から、まず、半優性表現型マーカーxa(ERハイブリッドに存在する)を使用して、黄緑色の葉の不完全周縁キメラを目視により特定することによって選択した後、完全に緑色の葉腋枝を選択することによって、周縁キメラを選択した。緑色の枝は、BBをEEと区別するSNPマーカーを用いて遺伝子型判定した。EE SNPの存在は、シュートが、BBのL2及びL3層の上に、遺伝子型ERのL1層を保持する周縁キメラであることを示した。このキメラは、本来であれば緑色の組織において黄色の区画として現れたであろうL1細胞のL2への自発的な侵入が存在しないことから判断すると、発生の間及び葉腋シュートの挿木苗からの繁殖の間、非常に安定していた。
キメラ、並びに非キメラBB対照植物を、自家受精させた。成熟果実から種子を採取し、0.5% HCl中に1時間浸漬した後、水道水で十分にすすぎ、ろ紙の上で乾燥させ、使用するまで1週間~数週間、周囲条件で保管した。
100個の種子のバッチを、密封したペトリ皿において、湿潤させた(水道水)ろ紙の上の格子状のアレイに蒔き、続いて、人工気候チャンバにおいて、摂氏23度で16/24時間の白色光下においてインキュベートすることによって、発芽率をインビトロで判定した。発芽は、8日間の期間にわたって、目に見える幼根の出現として、24時間間隔でスコア付けした。図19で見ることができるように、キメラは、強力に改善された発芽速度及び能力を有する種子を生産した。
実施例6
F1ハイブリッドMH2に由来するトマト種子の発芽特性が、改善された。このF1ハイブリッドは、ソラナム・リコペルシクムの母系近親交配株MM(マネーメーカー)を、ソラナム・ハブロカイテスに由来する父系株H2H2に交雑させることによって、生産させる。
{L3(MM)、L2(MM)、L1(EH1)}型の周縁キメラを作製し、ここで、MM及びEH1は、二倍体を示す(M及びE及びH1が、半数体である)。EH1は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株EE(栽培種アイルサ・クレイグアクセッションLA3579)とソラナム・ハブロカイテスアクセッションPI127826との第1世代のF1ハイブリッドである。まず、EH1穂木をMM台木に接木した後、10日間、接木を癒合させることによって、周縁を生産させた。接木接合部を、次いで、横方向に切断し、そうすると、カルスの成長及びシュートの再生成が、自発的に生じた。再生成されたシュートの中から、まず、半優性表現型マーカーxa(EH1ハイブリッドに存在する)を使用して、黄緑色の葉の不完全周縁キメラを目視により特定することによって選択した後、完全に緑色の葉腋枝を選択することによって、周縁キメラを選択した。緑色の枝は、MMをEEと区別するSNPマーカーを用いて遺伝子型判定した。EE SNPの存在は、シュートが、MMのL2及びL3層の上に、遺伝子型EH1のL1層を保持する周縁キメラであることを示した。そのようなキメラは、さらに、EH1ハイブリッドの異なるトリコーム構造によって、容易に認識することができる。
このキメラは、本来であれば緑色の組織において黄色の区画として現れたであろうL1細胞のL2への自発的な侵入が存在しないことから判断すると、発生の間及び葉腋シュートの挿木苗からの繁殖の間、非常に安定していた。
キメラ、並びに非キメラMM対照植物を、ソラナム・ハブロカイテス遺伝子型H2(アクセッションLA1625)に由来する花粉で他家受精させて、MH2ハイブリッド種子を生産させた。交雑は、開花期の直前に花の除雄を行い、1~2日後に受粉させることによって行った。成熟果実から種子を採取し、0.5% HCl中に1時間浸漬した後、水道水で十分にすすぎ、ろ紙の上で乾燥させ、使用するまで1週間~数週間、周囲条件で保管した。
100個の種子のバッチを、密封したペトリ皿において、湿潤させた(水道水)ろ紙の上の格子状のアレイに蒔き、続いて、人工気候チャンバにおいて、摂氏23度で16/24時間の白色光下においてインキュベートすることによって、発芽率をインビトロで判定した。発芽は、7日間の期間にわたって、目に見える幼根の出現として、24時間間隔でスコア付けした。図20で見ることができるように、キメラは、強力に改善された発芽速度及び能力を有する種子を生産した。
実施例7
F1ハイブリッドMH2に由来するトマト種子の発芽特性が、改善された。このF1ハイブリッドは、ソラナム・リコペルシクムの母系近親交配株MM(マネーメーカー)を、ソラナム・ハブロカイテスに由来する父系株H2H2に交雑させることによって、生産させる。
{L3(MM)、L2(MM)、L1(EP1)}型の周縁キメラを作製し、ここで、MM及びEP1は、二倍体を示す(M及びE及びP1が、半数体である)。EP1は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株EE(栽培種アイルサ・クレイグアクセッションLA3579)とソラナム・ペンネリイアクセッションLA716との第1世代のF1ハイブリッドである。まず、EP1穂木をMM台木に接木した後、10日間、接木を癒合させることによって、周縁を生産させた。接木接合部を、次いで、横方向に切断し、そうすると、カルスの成長及びシュートの再生成が、自発的に生じた。再生成されたシュートの中から、まず、半優性表現型マーカーxa(EP1ハイブリッドに存在する)を使用して、黄緑色の葉の不完全周縁キメラを目視により特定することによって選択した後、完全に緑色の葉腋枝を選択することによって、周縁キメラを選択した。緑色の枝は、MMをEEと区別するSNPマーカーを用いて遺伝子型判定した。EE SNPの存在は、シュートが、MMのL2及びL3層の上に、遺伝子型EP1のL1層を保持する周縁キメラであることを示した。そのようなキメラは、さらに、EP1ハイブリッドの異なるトリコーム構造によって、容易に認識することができる。
このキメラは、本来であれば緑色の組織において黄色の区画として現れたであろうL1細胞のL2への自発的な侵入が存在しないことから判断すると、発生の間及び葉腋シュートの挿木苗からの繁殖の間、非常に安定していた。
キメラ、並びに非キメラMM対照植物を、ソラナム・ハブロカイテス遺伝子型H2(アクセッションLA1625)に由来する花粉で他家受精させて、MH2ハイブリッド種子を生産させた。交雑は、開花期の直前に花の除雄を行い、1~2日後に受粉させることによって行った。成熟果実から種子を採取し、0.5% HCl中に1時間浸漬した後、水道水で十分にすすぎ、ろ紙の上で乾燥させ、使用するまで1週間~数週間、周囲条件で保管した。
100個の種子のバッチを、密封したペトリ皿において、湿潤させた(水道水)ろ紙の上の格子状のアレイに蒔き、続いて、人工気候チャンバにおいて、摂氏23度で16/24時間の白色光下においてインキュベートすることによって、発芽率をインビトロで判定した。発芽は、7日間の期間にわたって、目に見える幼根の出現として、24時間間隔でスコア付けした。図21で見ることができるように、キメラは、強力に改善された発芽速度能力を有する種子を生産した。
実施例8
F1ハイブリッドMP2に由来するトマト種子の発芽特性が、改善された。このF1ハイブリッドは、ソラナム・リコペルシクムの母系近親交配株MM(マネーメーカー)を、ソラナム・ペンネリイに由来する父系株P2P2に交雑させることによって、生産させる。
{L3(MM)、L2(MM)、L1(EH1)}型の周縁キメラを作製し、ここで、MM及びEH1は、二倍体を示す(M及びE及びH1が、半数体である)。EH1は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株EE(栽培種アイルサ・クレイグアクセッションLA3579)とソラナム・ハブロカイテスアクセッションPI127826との第1世代のF1ハイブリッドである。まず、EH1穂木をMM台木に接木した後、10日間、接木を癒合させることによって、周縁を生産させた。接木接合部を、次いで、横方向に切断し、そうすると、カルスの成長及びシュートの再生成が、自発的に生じた。再生成されたシュートの中から、まず、半優性表現型マーカーxa(EH1ハイブリッドに存在する)を使用して、黄緑色の葉の不完全周縁キメラを目視により特定することによって選択した後、完全に緑色の葉腋枝を選択することによって、周縁キメラを選択した。緑色の枝は、MMをEEと区別するSNPマーカーを用いて遺伝子型判定した。EE SNPの存在は、シュートが、MMのL2及びL3層の上に、遺伝子型EH1のL1層を保持する周縁キメラであることを示した。そのようなキメラは、さらに、EH1ハイブリッドの異なるトリコーム構造によって、容易に認識することができる。
このキメラは、本来であれば緑色の組織において黄色の区画として現れたであろうL1細胞のL2への自発的な侵入が存在しないことから判断すると、発生の間及び葉腋シュートの挿木苗からの繁殖の間、非常に安定していた。
キメラ、並びに非キメラMM対照植物を、ソラナム・ペンネリイ遺伝子型P2(アクセッションLA1809)に由来する花粉で他家受精させて、MP2ハイブリッド種子を生産させた。交雑は、開花期の直前に花の除雄を行い、1~2日後に受粉させることによって行った。成熟果実から種子を採取し、0.5% HCl中に1時間浸漬した後、水道水で十分にすすぎ、ろ紙の上で乾燥させ、使用するまで1週間~数週間、周囲条件で保管した。
100個の種子のバッチを、密封したペトリ皿において、湿潤させた(水道水)ろ紙の上の格子状のアレイに蒔き、続いて、人工気候チャンバにおいて、摂氏23度で16/24時間の白色光下においてインキュベートすることによって、発芽率をインビトロで判定した。発芽は、7日間の期間にわたって、目に見える幼根の出現として、24時間間隔でスコア付けした。図22で見ることができるように、キメラは、強力に改善された発芽速度及び能力を有する種子を生産した。
実施例9
F1ハイブリッドMP2に由来するトマト種子の発芽特性が、改善された。このF1ハイブリッドは、ソラナム・リコペルシクムの母系近親交配株MM(マネーメーカー)を、ソラナム・ペンネリイに由来する父系株P2P2に交雑させることによって、生産させる。
{L3(MM)、L2(MM)、L1(EP1)}型の周縁キメラを作製し、ここで、MM及びEP1は、二倍体を示す(M及びE及びP1が、半数体である)。EP1は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株EE(栽培種アイルサ・クレイグアクセッションLA3579)とソラナム・ペンネリイアクセッションLA716との第1世代のF1ハイブリッドである。まず、EP1穂木をMM台木に接木した後、10日間、接木を癒合させることによって、周縁を生産させた。接木接合部を、次いで、横方向に切断し、そうすると、カルスの成長及びシュートの再生成が、自発的に生じた。再生成されたシュートの中から、まず、半優性表現型マーカーxa(EP1ハイブリッドに存在する)を使用して、黄緑色の葉の不完全周縁キメラを目視により特定することによって選択した後、完全に緑色の葉腋枝を選択することによって、周縁キメラを選択した。緑色の枝は、MMをEEと区別するSNPマーカーを用いて遺伝子型判定した。EE SNPの存在は、シュートが、MMのL2及びL3層の上に、遺伝子型EP1のL1層を保持する周縁キメラであることを示した。そのようなキメラは、さらに、EP1ハイブリッドの異なるトリコーム構造によって、容易に認識することができる。
このキメラは、本来であれば緑色の組織において黄色の区画として現れたであろうL1細胞のL2への自発的な侵入が存在しないことから判断すると、発生の間及び葉腋シュートの挿木苗からの繁殖の間、非常に安定していた。
キメラ、並びに非キメラMM対照植物を、ソラナム・ペンネリイ遺伝子型P2(アクセッションLA1809)に由来する花粉で他家受精させて、MH2ハイブリッド種子を生産させた。交雑は、開花期の直前に花の除雄を行い、1~2日後に受粉させることによって行った。成熟果実から種子を採取し、0.5% HCl中に1時間浸漬した後、水道水で十分にすすぎ、ろ紙の上で乾燥させ、使用するまで1週間~数週間、周囲条件で保管した。
100個の種子のバッチを、密封したペトリ皿において、湿潤させた(水道水)ろ紙の上の格子状のアレイに蒔き、続いて、人工気候チャンバにおいて、摂氏23度で16/24時間の白色光下においてインキュベートすることによって、発芽率をインビトロで判定した。発芽は、7日間の期間にわたって、目に見える幼根の出現として、24時間間隔でスコア付けした。図23で見ることができるように、キメラは、強力に改善された発芽速度能力を有する種子を生産した。
実施例10
F1ハイブリッドMP3に由来するトマト種子の発芽特性が、改善された。このF1ハイブリッドは、ソラナム・リコペルシクムの母系近親交配株MM(マネーメーカー)を、ソラナム・ペンネリイに由来する父系株P3P3に交雑させることによって、生産させる。
{L3(MM)、L2(MM)、L1(EH1)}型の周縁キメラを作製し、ここで、MM及びEH1は、二倍体を示す(M及びE及びH1が、半数体である)。EH1は、ソラナム・リコペルシクム近親交配株EE(栽培種アイルサ・クレイグアクセッションLA3579)とソラナム・ハブロカイテスアクセッションPI127826との第1世代のF1ハイブリッドである。まず、EH1穂木をMM台木に接木した後、10日間、接木を癒合させることによって、周縁を生産させた。接木接合部を、次いで、横方向に切断し、そうすると、カルスの成長及びシュートの再生成が、自発的に生じた。再生成されたシュートの中から、まず、半優性表現型マーカーxa(EH1ハイブリッドに存在する)を使用して、黄緑色の葉の不完全周縁キメラを目視により特定することによって選択した後、完全に緑色の葉腋枝を選択することによって、周縁キメラを選択した。緑色の枝は、MMをEEと区別するSNPマーカーを用いて遺伝子型判定した。EE SNPの存在は、シュートが、MMのL2及びL3層の上に、遺伝子型EH1のL1層を保持する周縁キメラであることを示した。そのようなキメラは、さらに、EH1ハイブリッドの異なるトリコーム構造によって、容易に認識することができる。
このキメラは、本来であれば緑色の組織において黄色の区画として現れたであろうL1細胞のL2への自発的な侵入が存在しないことから判断すると、発生の間及び葉腋シュートの挿木苗からの繁殖の間、非常に安定していた。
キメラ、並びに非キメラMM対照植物を、ソラナム・ペンネリイ遺伝子型P3(アクセッションLA2657)に由来する花粉で他家受精させて、MP3ハイブリッド種子を生産させた。交雑は、開花期の直前に花の除雄を行い、1~2日後に受粉させることによって行った。成熟果実から種子を採取し、0.5% HCl中に1時間浸漬した後、水道水で十分にすすぎ、ろ紙の上で乾燥させ、使用するまで1週間~数週間、周囲条件で保管した。
100個の種子のバッチを、密封したペトリ皿において、湿潤させた(水道水)ろ紙の上の格子状のアレイに蒔き、続いて、人工気候チャンバにおいて、摂氏23度で16/24時間の白色光下においてインキュベートすることによって、発芽率をインビトロで判定した。発芽は、7日間の期間にわたって、目に見える幼根の出現として、24時間間隔でスコア付けした。図24で見ることができるように、キメラは、強力に改善された発芽速度及び能力を有する種子を生産した。
実施例11
温室コナジラミ(トリアレウロデス・バポラリオルム)、Tv)は、トマト栽培における重大な害虫である。F1ハイブリッドを、ソラナム・ペンネリイアクセッションLA716及びソラナム・リコペルシクムアクセッションLA3579の間(ソラナム・ペンネリイ×ソラナム・リコペルシクムのF1)、ソラナム・ハブロカイテスアクセッションPI127826及びソラナム・リコペルシクムアクセッションLA3579の間(ソラナム・ハブロカイテス×ソラナム・リコペルシクムのF1)、並びにソラナム・ピンピネリフォリウムアクセッションCGN1552937及びソラナム・リコペルシクムアクセッションLA3579の間(ソラナム・ピンピネリフォリウム×ソラナム・リコペルシクムのF1)で、それぞれ、作製した。これらの3つのF1ハイブリッドのそれぞれに由来する表皮(L1)、並びにソラナム・リコペルシクムマネーメーカーに由来するL2及びL3を有する周縁キメラを、実施例1に詳述されている方法を使用して、作製した。続いて、周縁キメラが、タバココナジラミに対する抵抗性の増加を示すかどうかを判定した。ソラナム・リコペルシクムマネーメーカー及び周縁キメラ(遺伝子型1つ当たり2つの植物)の30日齢での切穂を、タバココナジラミを蔓延させた温室(夜間の最低温度18~20℃及び日中の最高温度25~26℃)に移した。植物を移してから3週間後に、生存している成体コナジラミの数を判定した(図13を参照されたい)。この実験により、感受性の栽培トマト(ソラナム・リコペルシクム)とは対照的に、ソラナム・ペンネリイ×ソラナム・リコペルシクムのF1に由来するL1を有する周縁キメラ、並びにソラナム・ハブロカイテス×ソラナム・リコペルシクムのF1に由来するL1を有する周縁キメラが、タバココナジラミに対する抵抗性の改善を示したが、ソラナム・ピンピネリフォリウム×ソラナム・リコペルシクムのF1のF1に由来するL1を有する周縁キメラは、その改善を示さなかったことが、示される。図13には示されていないが、F1植物におけるタバココナジラミ抵抗性は、ソラナム・ハブロカイテス×ソラナム・リコペルシクム(平均±標準偏差:16.3±11.2)、及びソラナム・ピンピネリフォリウム×ソラナム・リコペルシクム(平均±標準偏差:26.8±6.2)についても試験した。
実施例12
アザミウマ(ミカンキイロアザミウマ、Fo)は、トマト栽培における重大な害虫である。周縁キメラを、L1としてソラナム・ペンネリイアクセッションLA716とソラナム・リコペルシクムアクセッションLA3579との交雑によるF1に由来するL1、並びにソラナム・リコペルシクムマネーメーカーに由来するL2及びL3を用いて、実施例1に詳述されるように、生産した。続いて、これらの周縁キメラが、ミカンキイロアザミウマに対する抵抗性の増加を示すかどうかを判定した。葉ディスクバイオアッセイを行った。簡単に述べると、ソラナム・リコペルシクムアクセッションマネーメーカー(感受性対照)の葉ディスク、周縁キメラ(対照植物)、及びソラナム・ペンネリイアクセッションLA716とソラナム・リコペルシクムアクセッションLA3579の交雑により得られたもの(ドナー植物)を、それぞれの遺伝子型に由来する24個の葉ディスク(直径30mm)を使用して、6ウェルプレートに入れた。葉ディスクを、背軸側を上にして、寒天の上に置いた。成体アザミウマを、COで麻酔し、それぞれの葉ディスクの上に、1匹の成体を置いた。それぞれのウェルを、発泡スチロール及びメッシュケージで封止した。プレートを、25℃、相対湿度60%で、16時間の明/8時間の暗の光レジメンで、人工気候制御チャンバに入れた。48時間後に、成体を取り出し、生存を記録した。接種から6日後、幼虫の数を記録した。
感受性対照植物とは対照的に、ドナーF1植物及び周縁キメラは、ミカンキイロアザミウマに対する抵抗性の改善を示した(図16)。周縁キメラでは、生存したミカンキイロアザミウマはいなかったことが、最も顕著であった。さらに、感受性対照植物とは対照的に、ドナー植物にも周縁キメラにも、後代は観察されず、これにより、雌性アザミウマによって産み付けられた卵がなかったことが示された(表3)。
Figure 0007315286000003

実施例13
ナミハダニ(テトラニクス・ウルチカエ、Tu)は、トマト栽培における重大な害虫である。この植物害虫が、昆虫網ではなく、蛛形網に属することに留意することが重要である。
F1ハイブリッドを、ソラナム・ペンネリイアクセッションLA716とソラナム・リコペルシクムアクセッションLA3579との間(ソラナム・ペンネリイ×ソラナム・リコペルシクムのF1)、並びにソラナム・ハブロカイテスアクセッションPI127826とソラナム・リコペルシクムアクセッションLA3579との間(ソラナム・ハブロカイテス×ソラナム・リコペルシクムのF1)で、それぞれ、作製した。これらの2つのF1ハイブリッドのそれぞれに由来する表皮(L1)、並びにソラナム・リコペルシクムマネーメーカーに由来するL2及びL3を有する周縁キメラを、実施例1に詳述されている方法を使用して、作製した。
続いて、周縁キメラが、テトラニクス・ウルチカエに対する抵抗性の増加を示すかどうかを判定した。葉ディスクバイオアッセイを行った。簡単に述べると、ソラナム・リコペルシクムマネーメーカー(感受性対照)及び周縁キメラの葉ディスクを、6ウェルプレートに入れた。それぞれのウェルに、6mlの1%技術用寒天を満たした。遺伝子型1つ当たり4つのプレートを使用した。遺伝子型1つ当たり24個の葉ディスク(直径30mm)を、使用した。葉ディスクを、背軸側を上にして、寒天の上に置いた。1匹の成体ハダニを、それぞれの葉ディスクの上に置いた。それぞれのウェルを、発泡スチロール及びメッシュケージで封止した。プレートを、25℃、相対湿度60%で、16時間の明/8時間の暗の光レジメンで、人工気候制御チャンバに入れた。48時間後に、成体を取り出し、生存を記録した。同じ時点で、卵の産み付けも記録した。感受性対照植物とは対称的に、周縁キメラは、テトラニクス・ウルチカエに対する抵抗性の改善を示した(表4及び図17)。
Figure 0007315286000004

実施例14
灰色カビ病(ボトリティス・シネレア、Bc)は、トマト栽培における重大な疾患である。この病原真菌は、地上の組織に灰色カビ病を引き起こし、トマト果実を販売できなくする。周縁キメラを、L1としてソラナム・ハブロカイテスアクセッションPI127826とソラナム・リコペルシクムアクセッションLA3579との交雑によるF1に由来するL1、並びにソラナム・リコペルシクムマネーメーカーに由来するL2及びL3を用いて、実施例1に詳述されるように、生産した。続いて、キメラ植物が、ボトリティス・シネレアに対する抵抗性の増加を示すかどうかを判定した。切断葉アッセイを行った。簡単に述べると、ソラナム・リコペルシクムマネーメーカー(感受性対照)及び周縁キメラの複葉を、10E+6胞子/mLの液滴3uLで感染させた。平均病変直径(mm)を、感染の3日後に判定した。感受性対照における疾患の進行と比較した場合、周縁キメラには、ボトリティス・シネレア病変直径に、有意な低減が観察された(図18)。
実施例15
疫病(フィトフトラ・インフェスタンス、Pi)は、トマト栽培における重大な疾患である。この病原卵菌は、地上の組織に疾患を引き起こし、緑色の組織並びにトマト果実に重大な損傷を引き起こす。実施例11において詳述されるように生産した周縁キメラ植物を、フィトフトラ・インフェスタンスに対する抵抗性の増加について試験した。切断葉アッセイを行った。簡単に述べると、ソラナム・リコペルシクムマネーメーカー(感受性対照)及び周縁キメラの小葉を、3000個のフィトフトラ・インフェスタンス胞子で感染させた。小葉1つ当り15μlを2滴。平均疾患重症度スコア及び平均病変直径(mm)を、接種の4日後及び7日後に判定した。7日目に、フィトフトラ・インフェスタンスの胞子形成を示す葉の割合を判定した。表5を参照されたい。
Figure 0007315286000005

Figure 0007315286000006

Claims (12)

  1. 少なくとも第1及び第2の目的とされるL1局在化形質の組合せを含む周縁キメラ植物を生産するための方法であって、
    a)目的とされるL1局在化形質の前記組合せを含む、第1の植物を提供するステップと、
    b)形質の前記組合せを含まない、第2の植物を提供するステップと、
    c)前記第1の植物のL1シュート分裂組織層、並びに前記第2の植物のL2及びL3シュート分裂組織層を含む周縁キメラ植物を作製するステップと
    を含み、
    前記第1の植物が、前記第1の目的とされるL1局在化形質を含む第1の親植物と前記第2の目的とされるL1局在化形質を含む第2の親植物とのF1ハイブリッド又は近親交配植物であり、
    前記第1の親植物が野生種であり、前記第2の親植物が栽培種であり、
    前記第1の親植物が、前記第2の目的とされるL1局在化形質を含まず、前記第2の親植物が、前記第1の目的とされるL1局在化形質を含まず、
    前記目的とされるL1局在化形質が、生物的ストレス抵抗性、非生物的ストレス抵抗性、改善された種子発芽、果実色、及び前記第2の植物又は前記周縁キメラ植物によって生産された花粉を受ける能力からなる群から選択される、方法。
  2. 前記第1の目的とされるL1局在化形質が、生物的又は非生物的ストレス抵抗性形質であり、前記第2の目的とされるL1局在化形質が、果実色形質及び/又は前記第2の植物によって生産された花粉を受ける能力である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記生物的又は非生物的ストレス抵抗性が、乾燥抵抗性、昆虫抵抗性、真菌抵抗性、卵菌抵抗性、アシル糖生産のレベル及び/若しくは組成、又はこれらの任意の組合せからなる群のうちのいずれか1つに由来する、請求項2に記載の方法。
  4. 前記第1の植物が、遺伝子修飾により前記組合せ内の前記L1局在化形質のうちの少なくとも1つを導入することによって得られる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 1つ又は複数のさらなるL1局在化形質が、果実色、前記周縁キメラ植物及び/又は第2の植物によって生産された花粉を受ける能力、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記第1の植物が、商業に関連しない植物であり、前記第2の植物が、商業に関連する品種又は栽培種のものである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記第1及び第2の植物が、ソラナム属に属する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 周縁キメラ植物を生産する際にL1シュート分裂組織層を提供するための、少なくとも第1及び第2の目的とされるL1局在化形質の組合せを含む第1の植物の使用であって、
    前記第1の植物が、前記第1の目的とされるL1局在化形質を含む第1の親植物と前記第2の目的とされるL1局在化形質を含む第2の親植物とのF1ハイブリッド又は近親交配植物であり、
    前記第1の親植物が野生種であり、前記第2の親植物が栽培種であり、
    前記第1の親植物が、前記第2の目的とされるL1局在化形質を含まず、前記第2の親植物が、前記第1の目的とされるL1局在化形質を含まず、
    前記目的とされるL1局在化形質が、生物的ストレス抵抗性、非生物的ストレス抵抗性、改善された種子発芽、果実色、及び第2の植物又は前記周縁キメラ植物によって生産された花粉を受ける能力からなる群から選択される、使用。
  9. 請求項1~7のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる周縁キメラ植物、又はそれに栄養繁殖的に由来する植物。
  10. 植物産物を生産するための、請求項9に記載の周縁キメラ植物の使用。
  11. 請求項9に記載の周縁キメラ植物から植物産物を生産するための方法であって、
    A)請求項9に記載の周縁キメラ植物を提供するステップと、
    B)ステップA)の前記周縁キメラ植物を成長させるステップと、
    C)ステップB)において成長させた前記植物から植物産物を誘導するステップと
    を含む方法。
  12. ステップC)において得られた前記植物産物を処理するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
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