JP7313727B2 - 薬剤感受性測定方法、及び、薬剤感受性測定装置 - Google Patents
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Description
[2] 上記付着培養する工程が、上記微生物により上記電極上にバイオフィルムを形成させる工程である、[1]に記載の薬剤感受性測定方法。
[3] 上記微生物は、細胞外固体から直接電子を取り込む機能、及び、細胞外固体へと直接電子を与える機能からなる群より選択される少なくとも一方の機能を有する、細胞内外で電子移動が可能な特定微生物である、[1]又は[2]に記載の薬剤感受性測定方法。
[4] 上記電子移動は、発酵代謝により行われる[3]に記載の薬剤感受性測定方法。
[5] 上記応答の変化が、単位時間当たりの電流値の変化である[1]~[4]のいずれかに記載の薬剤感受性測定方法。
[6] 微生物と媒体を含有する試験液収容可能な容器、及び、上記試験液に接触するように上記容器内に配置された少なくとも2つの電極を有する付着培養部と、上記付着培養部において培養された微生物に対して薬剤を投与した際に上記電極から得られた電気化学的な応答を測定する測定部と、を有する薬剤感受性測定装置。
[7] 微生物と媒体とを含有する試験液が収容される容器内に、前記試験液と接触するように配置された、少なくとも2つの電極と電気的に接続される、付着培養部と、
上記付着培養部において培養された微生物に対して薬剤を投与した際に上記電極から得られた電気化学的な応答を測定する測定部と、を有する薬剤感受性測定装置。
[8] 微生物と媒体とを含有する試験液を、上記試験液を収容可能であって、収容された上記試験液と接するよう配置された少なくとも2つの電極を有する容器に収容することと、上記電極上で上記微生物を付着培養することと、上記試験液中に薬剤を投与し、上記電極から得られる電気化学的な応答の変化によって上記微生物の上記薬剤に対する感受性を判断するための情報を得ることと、を有する薬剤感受性測定方法。
[9] 上記付着培養が、上記微生物により上記電極上にバイオフィルムを形成させる工程である、[8]に記載の薬剤感受性測定方法。
[10] 上記微生物は、細胞外固体から直接電子を取り込む機能、及び、細胞外固体へと直接電子を与える機能からなる群より選択される少なくとも一方の機能を有する、細胞内外で電子移動が可能な特定微生物である、[8]又は[9]に記載の薬剤感受性測定方法。
[11] 上記電子移動は、発酵代謝により行われる[10]に記載の薬剤感受性測定方法。
[12] 上記応答の変化が、単位時間当たりの電流値の変化である[8]~[11]のいずれかに記載の薬剤感受性測定方法。
[13] 微生物と媒体とを含有する試験液が収容される二次元アレイ状に配置された複数のウェルごとに、上記試験液と接触するように上記ウェル内に配置された2つ以上の電極のそれぞれと電気的に接続される、付着培養部と、上記付着培養部において培養された微生物に対して薬剤を投与した際に上記電極から得られた電気化学的な応答を測定する測定部と、を有する薬剤感受性測定装置。
[14] 微生物と媒体とを含有する複数の試験液を、上記試験液を収容可能であって、収容された上記試験液と接するよう配置された少なくとも2つの電極を有する複数のウェルにそれぞれ収容することと、上記電極上で上記微生物を付着培養することと、上記試験液中に薬剤を投与し、上記電極から得られる電気化学的な応答の変化によって、上記ウェルごとに上記微生物の上記薬剤に対する感受性を判断するための情報を得ることと、を有する薬剤感受性測定方法。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明の第1の実施形態に係る薬剤感受性測定方法は、媒体と、上記媒体と接触するように配置された2つ以上の電極と、を有する電気化学セルの上記電極上において微生物を付着培養する工程(以下、「培養工程」ともいう。)と、上記媒体、及び、上記微生物からなる群より選択される少なくとも一方に薬剤を投与し、上記電極から得られる電気化学的な応答の変化によって上記微生物の上記薬剤に対する感受性を判断するための情報を得る工程(以下、「薬剤投与工程」ともいう。)と、を有する薬剤感受性測定方法である。
すなわち、特許文献1に記載された方法等の従来の方法では、溶液中に浮遊、又は、可逆的に付着した状態の微生物に対して薬剤を投与し、その影響を評価しているため、上記の様な問題があると考えられた。
これに対し、本発明者らは、バイオフィルムの内部に存在する微生物のエネルギー産生メカニズム(代謝反応)、特に嫌気条件下での発酵メカニズムに着目した。そこで、口腔内でバイオフィルムを形成する病原性微生物として知られるS.mutansを例に、バイオフィルム内部における微生物の代謝反応の変化を検出する方法を検討してきた。
このような還元条件下では、NADHの酸化によるNAD+の再生が起こりにくくなるため、発酵によるエネルギー産生の最大化が妨げられる。
このとき、S.mutansは、細胞表面に存在するタンパク質を介して、細胞外へと電子を排出して、NADH/NAD+の比を制御しているものと推測される。更に、細胞内外、及び、バイオフィルム内外の電子移動にリボフラビンが寄与していることも本発明者らは実験的に確かめている。
培養工程は、微生物と媒体とを含有する試験液と、上記試験液と接触するように配置された2つ以上の電極と、を有する電気化学セルの上記電極上において微生物を付着培養する工程である。本工程によれば、薬剤感受性を測定する対象となる微生物を培養し、測定の準備を行うことができる。
図2は、上記工程において使用可能な測定装置の一実施形態を表す模式図である。図2において電気化学セル11は、作用電極12、対電極13、及び、参照電極14と、容器15に収容された試験液16と、を有している。各電極は試験液16と接するように配置されている。各電極は、制御装置17と電気的に接続されている。制御装置17は、各電極の間の電流値、及び、電位差のそれぞれの測定、及び、調整が可能なよう構成されており、これによって媒体の電位を制御することができる。制御装置17は典型的には、ポテンシオ/ガルバノスタット(P/Gスタット)が使用できる。
電気化学セル11が3つの電極を有している場合、1つ以上を参照電極とし、制御装置17により上記参照電極には電流が流れないように制御することによって、電極電位をより正確に測定、及び/又は、制御することができるため、好ましい。なお、電位を設定するために必要な電極の間の電流量が予め分かっている場合には、電気化学セルが参照電極を有さなくても、電位の制御が可能である。
上記測定装置は、作用電極12、対電極13、及び、参照電極14を有しているが、測定装置としては上記に制限されない。例えば、対電極に代えて、別の参照電極を有していてもよい。
また、形状等についても特に制限されず、電気化学測定セル用として公知の電極が使用できる。なかでも、より少ない量の試験液(具体的には、0.001~5ml)でも好感度に検出できる点で、試験液に接する電極の面積として1cm2以下であることが好ましい。
容器15としては特に制限されず、公知の容器が使用できる。容器は絶縁性材料で構成されることが好ましく、例えば、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及び、ポリエチレン(PE)等の熱可塑性樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、ガラス、セラミック、紙のような絶縁性材料で形成される。容器の大きさとしては特に制限されないが、使用する試料溶液の量に応じて適宜選択可能であり、0.001~100ml程度の容量であることが好ましい。
試験液は、微生物と媒体とを含有する。媒体としては特に制限されず、微生物の培養用として公知の媒体を用いることができる。媒体は液体であってもよいし、固体であってもよいが、取り扱い性により優れ、より優れた本発明の効果が得られる点で、液体が好ましく、液体としては特に制限されないが、水を含有することが好ましい。
媒体が含有してもよい他の成分としては、例えば、酸化還元物質、電解質、及び、栄養源化合物等が挙げられる。
酸化還元物質は、作用電極、及び、対電極との間で可逆的に酸化還元反応を生じる物質であり、かつ、微生物の生育を阻害しない物質が好ましい。このような成分としては、例えば、鉄イオンが挙げられる。酸化還元物質は、電子伝達機能を有し、典型的には電子伝達物質である。
なお、媒体は、酸化還元物質の1種を単独で含有してもよく、2種以上を含有していてもよい。媒体が、2種以上の酸化還元物質を含有する場合には、その合計含有量が上記数値範囲内であることが好ましい。
電解質としては特に制限されず、公知の電解質が使用可能である。電解質としては、例えば、塩化ナトリウム、及び、塩化カリウム等が挙げられる。
媒体は、微生物の生育に必要な栄養源を含有することが好ましい、このような成分としては例えば、乳酸ナトリウム、KH2PO4、NH4Cl、MgCl2、及び、カザミノ酸等が挙げられる。
試験液が含有する微生物は薬剤感受性の測定を行う対象となる微生物であり、その種類としては特に制限されない。また、試験液が含有する微生物は1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
試験液としては、例えば、Streptococcus mutans、及び、Streptococcus sanguinis等の連鎖球菌属(Streptococcus);Porphyromonas gingivalis等のポルフィロモナス属(Porphyromonas);Aggregatibacter actinomycetemcomitans等のアグリゲイティバクター属(Aggregatibacter);Geobacter metallireducens、Geobacter sulfurreducens、Geobacter lovleyi等のゲオ(ジオ)バクタ―属菌;Shewanella oneidensis MR-1等のShewanella属菌;デスルフォビブリオ(Desulfovibrio )属菌;Acidithiobacillus ferrooxidans等のAcidithiobacillus(アシドチオバシラス)属菌;Clostridium pasteurianum菌等のClostridium属菌;等の細菌が挙げられる。
なお、培養液は、特定微生物の1種を単独で含有してもよく、2種以上を含有していてもよい。
図3は、上記測定装置の機能ブロック図である。測定装置20において、試験液を収容可能な容器、作用電極、対電極、及び、参照電極から構成される付着培養部21は、制御装置17内に配置された基板を介して、基板上に配置された制御部22と電気的に接続されている。
また、制御部22は、プログラムに従った演算結果を、記憶部25に適宜書き込んだり読み出したりすることができる。
なお、図3においてはバイオフィルム33内に、微生物31の細胞が1つ記載されているが、上記は模式図であり、バイオフィルム33内では、一般的には、微生物31を含むコロニーが形成されている。
このような特定微生物としては特に制限されないが、例えば、鉄還元細菌、及び、鉄酸化細菌等が挙げられる。より具体的には、Geobacter metallireducens、Geobacter sulfurreducens、Geobacter lovleyi等のゲオ(ジオ)バクタ―属菌;Shewanella oneidensis MR-1等のShewanella属菌;デスルフォビブリオ(Desulfovibrio )属菌;Acidithiobacillus ferrooxidans等のAcidithiobacillus(アシドチオバシラス)属菌;Clostridium pasteurianum菌等のClostridium属菌;等が挙げられる。
電極上にバイオフィルムが形成させる方法としては特に制限されず、公知の培養方法を使用可能であり、バイオフィルムの形成状況は、得られる電気化学的な応答(例えば、得られる電流値が定常状態となること)により検知できる。
薬剤投与工程は、試験液中に薬剤を投与し、上記電極から得られる電気化学的な応答の変化によって上記微生物の上記薬剤に対する感受性を判断するための情報を得る工程である。
図6において、横軸は、時間、縦軸は作用電極の電流値を示している。
すでに説明した培養工程において、電気化学セルに微生物が加えられる(T1)。電気化学セルに微生物を加える方法としては特に制限されないが、液体培地を用いて微生物を予備的に培養し、上記により得られた培養液を電気化学セルの媒体に添加する方法等が挙げられる。
次に、一定時間が経過すると、作用電極の電流値が略一定となり変化が小さくなる(図6中、「P1」で示した領域)。これは、微生物が作用電極に付着して固定し、コロニーを形成し、その後、多糖類、及び、タンパク質等から構成されるバイオフィルム形成して恒常性を保った形態となったことを示すと考えられる。
投与された薬剤が微生物の活性に与える影響が小さい場合、電流値はほとんど変化せず、(B)となる。一方で、投与された薬剤が微生物の活性に何らかの影響を与える場合、応答は電流値が増加する(A)、又は、電流値が低下する(C)となる。
また、微生物の薬剤に対する感受性を判断するための情報は上記測定結果と他の方法による測定結果とを組み合わせたものであってもよい。他の方法による測定結果としては、例えば、媒体中の生菌を蛍光標識して顕微鏡で観察した結果等が挙げられる。
本発明の第2の実施形態に係る薬剤感受性測定装置は、微生物と媒体とを含有する試験液が収容される容器に、前記試験液と接触するように配置された、少なくとも2つの電極と電気的に接続される、付着培養部と、上記付着培養部において培養された微生物に対して薬剤を投与した際に上記電極から得られた電気化学的な応答を測定する測定部と、を有する薬剤感受性測定装置である。
図7に示す測定装置70は、付着培養部71と、制御部72と、調整部73と、測定部74と、記憶部75と、表示装置76aと、入力装置76bと、で構成されている。ユーザーは、表示装置76aに表示される内容に従って入力装置76bを操作することによって、薬剤感受性測定の開始、終了、及び、結果の閲覧等ができる。
なお、電極付き容器81は、作用電極77と、参照電極78と、対電極79とを有しているが、本実施形態に係る測定装置に用いる電極付き容器81としては上記に制限されず、2つ以上の電極を有していればよい。
また、調整部73は、制御部72により制御され、付着培養部71の各電極間の電位、及び、電流を調整する。
また、プロセッサ72aは、プログラムに従った演算結果を、記憶装置72bに適宜書き込んだり読み出したりすることができる。
なお、表示装置76a、入力装置76b、及び、制御部72は、タブレット端末であってもよい。タブレット端末は測定部74、付着培養部71と有線接続されていてもよいし、近距離無線通信によって相互に通信可能に構成されていてもよい。
本発明の第2の実施形態に係る薬剤感受性測定方法は、微生物と媒体とを含有する試験液を、上記試験液を収容可能であって、収容された上記試験液と接するよう配置された少なくとも2つの電極を有する容器に収容することと(収容工程)、上記電極上で上記微生物を付着培養することと(付着培養工程)、上記試験液中に薬剤を投与し、上記電極から得られる電気化学的な応答の変化によって上記微生物の上記薬剤に対する感受性を判断するための情報を得ること(薬剤投与工程)と、を有する薬剤感受性測定方法である。
なお、媒体の成分、及び、対象となる微生物等についてはすでに説明したとおりである。
本発明の第3のの実施形態に係る測定装置は、微生物と媒体とを含有する試験液が収容される二次元アレイ状に配置された複数のウェルごとに、上記試験液と接触するように上記ウェル内に配置された2つ以上の電極のそれぞれと電気的に接続される付着培養部と、上記付着培養部において培養された微生物に対して薬剤を投与した際に上記電極から得られた電気化学的な応答を測定する測定部と、を有する薬剤感受性測定装置である。
図10に示す測定装置90は、付着培養部91と、制御部92と、調整部93と、測定部94と、記憶部95と、表示装置96aと、入力装置96bと、で構成されている。ユーザーは、表示装置96aに表示される内容に従って入力装置96bを操作することによって、薬剤感受性測定の開始、終了、及び、結果の閲覧等ができる。
なお、電極付き容器80は、作用電極77と、参照電極78と、対電極79とを有しているが、本実施形態に係る測定装置に用いる電極付き容器80としては上記に制限されず、各ウェルに2つ以上の電極を有していればよい。
また、調整部93は、制御部92により制御され、付着培養部91の各電極間の電位、及び、電流を調整する。
プレート上部121は、上部基材122、外壁123、上部表面124(図13参照)、内面125を有する壁126によって構成されている。マルチウェルプレート120のプレート上部121は円筒状の貫通孔Hを有し、貫通孔Hの側面は壁126の内面125で画定される。プレート上部121は、プレート上部121とともにウェル127を画定するプレート底部128と組み合わされている。
付着培養部91は、ウェルごとに配置された電極のそれぞれの接続端子と一対一で対応する端子を有しており、上記端子により付着培養部91と接続され、ウェル毎の電気化学測定を実施できる。
電極、配線、及び、接続端子の材料としては特に制限されないが、白金、金、ITO(酸化インジウムスズ)、炭素、及び、導電性高分子等を用いることができる。
本発明の第3の実施形態に係る薬剤感受性測定方法は、微生物と媒体とを含有する複数の試験液を、上記試験液を収容可能であって、収容された上記試験液と接するよう配置された少なくとも2つの電極を有する複数のウェルにそれぞれ収容することと、上記電極上で上記微生物を付着培養することと、上記試験液中に薬剤を投与し、上記電極から得られる電気化学的な応答の変化によって、上記ウェルごとに上記微生物の上記薬剤に対する感受性を判断するための情報を得ることと、を有する薬剤感受性測定方法である。
なお、媒体の成分、及び、対象となる微生物等についてはすでに説明したとおりである。
NaHCO3: 2.5g
CaCl2 +2H2O: 0.08g
NH4Cl: 1g
MgCl2 6H2O: 0.2g
NaCl: 10g
HEPES(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid): 1.2g
Yeast extract: 0.5g
Streptococcus mutans UA159を上記培地中、37℃で24時間嫌気的に増殖させた。次に、増殖させた細菌を回収し、2000gで10分間、遠心分離し2回洗浄した。
次に、4.5mLの上記培地をバイオリアクターに満たし、200μL、又は、100μLのグルコース250mMを上記培地と混合し、15分間N2バブリングすることによって空気を除去した。
次に、記録された電流を安定化させた後、上記培地中で洗浄したS.mutansを0.1 ODunit(ODはOptical Densityの略語である。λ=600nm)の終濃度で上記バイオリアクターに添加した。
実施例1と同様の方法により調整したバイオリアクターを用いて、S.mutansのアンピシリンに対する感受性を調べた。アンピシリンは、細胞壁形成を阻害することによって細菌の増殖を抑制することが知られている。
アンピシリンは、アンピシリンナトリウム粉末(Wako 016-23301)からアンピシリンナトリウム0.1g/Lの母液を調製し、上記母液の80μLをバイオリアクターに約1.6μg/mLの終濃度で加えた。結果は図17に示した。
本発明者らは顕微鏡(共焦点顕微鏡)観察によって、アンピシリン添加後の培養液中にStreptococcus mutans UA159の生菌が存在していることを確認しており、本方法によれば、薬剤感受性の定量評価も可能であることがわかった。
実施例2と同様の方法により調整したバイオリアクターを用いて、S.mutansのトリクロサンに対する感受性を調べた。トリクロサンは0.03mmol/L、すなわち8.67μg/mLで使用された。まず、10%メタノール水溶液10mLにトリクロサン8.67mgを溶解させ母液を調製した。次に、0.003mmol/Lの終濃度となるよう、上記母液の5μLをバイオリアクターに添加(図18中、左側の矢印の時点)し、3時間の反応を観察した。次に、0.03mmol/Lの終濃度となるよう、上記母液の45μLをバイオリアクターに添加(図18中、右側の矢印)した。結果は図18に示した。
具体的には図16~18で示した応答の違いによって、薬剤の作用機序等に由来する感受性の差を評価するための情報が得られることがわかった。
12、77、130:作用電極
13、79、131:対電極
14、78、132:参照電極
15、76:容器
16:試験液
17:制御装置
20、70、90:測定装置
21、71、91:付着培養部
22、72、92:制御部
23、73、93:調整部
24、74、94:測定部
25、75、95:記憶部
80:容器
81:電極付き容器
120:電極付きマルチウェルプレート
121:プレート上部
122:上部基材
123:外壁
124:上部表面
125:内面
126:壁
127:ウェル
128:プレート底部
129:下部基板
141、142、143:配線
144、145、146:接続端子
Claims (7)
- 微生物の薬剤感受性測定方法であって、
前記微生物、媒体、及び、前記微生物の発酵代謝によって分解される有機物を含有する試験液と、前記試験液に接触するように配置された2つ以上の電極と、を有する電気化学セルの前記電極上において前記微生物を付着培養する工程と、
前記電極に連続的に電位を印加して、前記微生物内部における前記有機物の発酵代謝による細胞内外での電子移動を、前記電極から単位時間当たりの電流値として検出し、前記試験液中に、前記微生物を死滅させる、及び/又は、微生物の増殖を抑制する薬剤を投与して、前記電流値の低下量によって前記微生物の前記薬剤に対する感受性を判断するための情報を得る工程と、を有する薬剤感受性測定方法。 - 前記付着培養する工程が、前記微生物により前記電極上にバイオフィルムを形成させる工程である、請求項1に記載の薬剤感受性測定方法。
- 前記微生物は、細胞外固体から直接電子を取り込む機能、及び、細胞外固体へと直接電子を与える機能からなる群より選択される少なくとも一方の機能を有する、細胞内外で電子移動が可能な特定微生物である、請求項1又は2に記載の薬剤感受性測定方法。
- 微生物の薬剤感受性測定方法であって、
前記微生物、媒体、及び前記微生物の発酵代謝によって分解される有機物を含有する試験液を、
前記試験液を収容可能であって、収容された前記試験液と接するよう配置された少なくとも2つの電極を有する容器に収容することと、
前記電極上で前記微生物を付着培養することと、
前記電極に連続的に電位を印加して、前記微生物内部における前記有機物の発酵代謝による細胞内外での電子移動を、前記電極から単位時間当たりの電流値として検出し、前記試験液中に、前記微生物を死滅させる、及び/又は、微生物の増殖を抑制する薬剤を投与して、前記電流値の低下量によって前記微生物の前記薬剤に対する感受性を判断するための情報を得ることと、を有する薬剤感受性測定方法。 - 前記付着培養が、前記微生物により前記電極上にバイオフィルムを形成させる工程である、請求項4に記載の薬剤感受性測定方法。
- 前記微生物は、細胞外固体から直接電子を取り込む機能、及び、細胞外固体へと直接電子を与える機能からなる群より選択される少なくとも一方の機能を有する、細胞内外で電子移動が可能な特定微生物である、請求項4又は5に記載の薬剤感受性測定方法。
- 微生物の薬剤感受性測定方法であって、
前記微生物、媒体、及び前記微生物の発酵代謝によって分解される有機物を含有する複数の試験液を、
前記複数の試験液をそれぞれ収容可能であって、収容された前記複数の試験液と接するよう配置された少なくとも2つの電極を有する複数のウェルにそれぞれ収容することと、
前記電極上で前記微生物を付着培養することと、
前記電極に連続的に電位を印加して、前記微生物内部における前記有機物の発酵代謝による細胞内外での電子移動を、前記電極から単位時間当たりの電流値として検出し、前記試験液中に、前記微生物を死滅させる、及び/又は、微生物の増殖を抑制する薬剤を投与して、前記電流値の低下量によって、前記複数のウェルのそれぞれについて前記微生物の前記薬剤に対する感受性を判断するための情報を得ることと、を有する薬剤感受性測定方法。
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