特許法第30条第2項適用 平成29年10月11日にシビラ株式会社がWebサイト(http://sivira.co/index-ja.html及びhttp://sivira.co/pr/press/20171011-01-ja.html)にて公開
以下、本願に係るデータ流通方法について、実施の形態を示す図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施の形態のデータ流通方法の概要を示す説明図である。データ流通方法は、分散型DBネットワーク101、データ配信システム102、並びに何れのシステム101,102とも情報の送受信が可能な複数のデバイス1を含むデータ流通システム100を用いる。
分散型DBネットワーク101は、各々が記憶媒体及びプロセッサを備える複数の処理装置が相互に通信接続し、1又は複数の処理装置でノードを構成し、ノード間で各々が記憶媒体に記憶している情報の検証を行なって構成される。分散型DBネットワーク101は、所謂分散型台帳であって例えばBlockchainと呼ばれるものであってもよい。
データ配信システム102は、ストレージ200(記録装置)と、該ストレージ200に対するデータの管理装置2とを含む。ストレージ200は、提供されるデータの集合を意味しており、分散された多種多様な記憶装置を含んでよい。管理装置2は、データの記憶箇所及びデータの属性の対応を保持して、要求された情報の読み出し及びデータの要求元への送信を実行する。ストレージ200は、ハードディスク又はSSD(Solid State Drive)等の書き換え可能な記憶媒体及び通信インタフェースを用い、各種データを記憶する。ストレージ200は、複数の記憶装置に分散してデータを記憶し、冗長化されているとよい。ストレージ200自体が分散型DBネットワークで構成されてもよい。
複数のデバイス1は夫々、秘密鍵自体又は該秘密鍵に基づくウォレットアドレスを持つ通信デバイスである。ウォレットアドレスを持ち、ネットワークNを介して分散型DBネットワーク101、及び管理装置2と通信を行なうことができる通信装置であれば、どのような装置であってもデバイス1になり得る。本開示におけるデータ流通方法において複数のデバイス1は夫々、データの提供者か、又は、データの利用者である。データの提供者となるデバイス1は、例えばカメラ、センサ、スイッチ等を備えた装置である。データの利用者となるデバイス1は例えば、人間であるユーザが使用する通信端末装置である。デバイス1はユーザの所有物でなくともよく、一時的に占有される端末装置であってもよい。利用者となるデバイス1は、スイッチ又はアクチュエータ等の制御対象物と接続される装置であってもよい。同一のデバイス1が利用者にも提供者にもなり得る。
データ流通システム100は、ネットワークNを含む。ネットワークNは、所謂インターネットである公衆通信網、キャリア事業者が提供するキャリアネットワーク、無線通信ネットワーク等を含む。分散型DBネットワーク101における各ノード(ノードを構成する処理装置3)は、ネットワークNを介して互いにデータを送受信してもよいし、直接的にデータを送受信しあってもよい。また各デバイス1は、ネットワークNを介してデータ配信システム102との間でデータの送受信を行なう。デバイス1と各装置との間のデータ通信は、暗号化処理等により安全に実行される。
本実施の形態のデータ流通方法では、データの提供者となるデバイス1が、自身の動作により得られたデータをストレージ200に保存する。提供者であるデバイス1は、ストレージ200へ保存したデータの登録をトランザクションとして、トランザクション情報を自身のアドレスと対応付けて分散型DBネットワーク101へ送信する。データ登録のトランザクション情報は、データの所在場所とデータのハッシュ値とを含む。分散型DBネットワーク101では、データ登録のトランザクションを処理して記録し、いずれのノードからもデータの所在と、データが改ざんされていないか否かとを確認することができる。
データの利用者となるデバイス1は、データ配信システム102へデータを要求するが事前に、データのアクセス権をトークンとして購入するトークン購入のトランザクション情報を分散型DBネットワーク101へ送信する。分散型DBネットワーク101では、トークン購入のトランザクションを処理する。この際のトランザクションは、利用者のデバイス1への指定されたデータに対するトークン(アクセス権)の付与と、デバイス1間での報酬となるトークン(例えば仮想通貨)の支払い(移動)とを分割不可に含む。
利用者となるデバイス1は、分散型DBネットワーク101から付与されたトークン(保証されたアクセス権)を根拠に、データ配信システム102の管理装置2へ所望のデータを要求する。データ配信システム102は、デバイス1から提示されたトークンが正当なものであるか否かを分散型DBネットワーク101へ問い合わせ、正当なものである場合に、要求されたデータをストレージ200から取得して利用者であるデバイス1へ送信する。
これにより、デバイス1同士で自律的に、必要なデータの交換を行ない、利用者であるデバイス1のウォレットから、提供者となったデバイス1のウォレットへの報酬の支払いが実現される。この際、分散型DBネットワーク101におけるトランザクション処理に対し、所属するノードにも報酬が発生する。
データのアクセス権におけるアクセスとは、上述の説明においては提供者となるデバイス1にて得られたデータを単純に、利用者であるデバイス1へ送信するための権利として説明しているがこれに限られないことは勿論である。送信にも、データそのものを利用者のデバイス1に記憶させるダウンロードと、一時的に記憶させるのみのストリーミングとの両方が含まれ得る。またデータへのアクセスとは、提供者のデバイス1にて得られたデータを加工せず、利用者へそのまま送信することに限らない。アクセス権は、提供者となるデバイス1にて得られたデータに基づき導出された他のデータ、例えば映像データから、その映像データに撮影されている対象物を認識した結果を示すテキストデータ、数値データへ変換してから利用者となるデバイス1にて取得するための権利であってもよい。更には、提供者となるデバイス1を、利用者であるデバイス1からコントロールする権利としてもよい。
また上述の説明では、データ流通システム100では、データを提供するデバイス1からのデータはストレージ200に一旦記憶され、ストレージ200からのデータの取得は管理装置2への要求が必要とした。この意味でストレージ200のデータは任意のデバイス1から自由に取得できないように秘匿されている。データを提供するデバイス1側でデータを秘匿しつつ十分に記憶できる記憶容量を持っている場合には、デバイス1間で直接的にデータの送受信を行なう構成とすることができる。また、ストレージ200に記憶されているデータを、分散型DBネットワーク101内でいずれのノードからも自由に取得された状態とせずに秘匿できる技術を適用できるのであれば、データ配信システム102自体も分散型DBネットワーク101内で構成されてもよい。
上述したようなデータ流通システム100を実現する構成について以下に説明する。図2から図4は、データ流通システム100を構成する装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2は、データ流通システム100を構成するデバイス1のハードウェア構成を示すブロック図である。デバイス1は少なくとも、処理部10、記憶部11、及び通信部12を備える。デバイス1は上述したように、カメラ、センサ、スイッチ等を備えた所謂IoT機器であるか、又は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン又はタブレット端末などの通信端末装置であり、処理部10、記憶部11及び通信部12以外に、固有のハードウェアを備える。図2A、図2B、図2C、図2Dはいずれもデバイス1の構成を示している。図2Aのデバイス1は検知部13を備え、図2Bのデバイス1は撮像部14を備える。図2Cのデバイス1は切替部15を備え、図2Dのデバイス1は表示部16及び操作部17を備える。
処理部10は、CPU(Central Processing Unit )、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサと、メモリ等を用いる。なお処理部10は、プロセッサ、メモリ、更には記憶部11及び通信部12を集積した1つのハードウェア(SoC:System On a Chip)として構成されていてもよい。処理部10のメモリには、秘密鍵自体と秘密鍵に基づく公開鍵及びアドレスと、又はいずれか一方のみが記憶される。データを利用するデバイス1として使用される場合には、秘密鍵又は秘密鍵に基づく情報は一時的に記憶されるものであってもよい。データを提供するデバイス1として使用される場合、処理部10のメモリには、デバイス1夫々独自に所有する秘密鍵が書き換え不可に記憶されているとよい(ウォレットのチップ化)。そして処理部10は、記憶部11に記憶されているデバイスプログラム1Pに基づき、データ流通システム100におけるデータ提供者又はデータ利用者としての機能を発揮する。
記憶部11はフラッシュメモリを用い、デバイスプログラム1Pを始めとする処理部10が参照するプログラム、データが記憶される。デバイスプログラム1Pは、デバイス1を夫々、後述するデータ提供者又はデータ利用者として機能させるためのプログラムのいずれか一方、または両者を独立に実行可能に含む。上述の秘密鍵は記憶部11に記憶されてもよい。記憶部11は、秘密鍵に基づく公開鍵及びアドレスを記憶する。
通信部12は、ネットワークNへの通信接続を実現する通信モジュールである。通信部12は、ネットワークカード、無線通信デバイス又はキャリア通信用モジュールを用いる。
検知部13は、センサモジュールを用いる。検知部13の具体的構成は、デバイス1の種類に応じて異なる。検知部13は例えば温度センサ、湿度センサ、受光センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ等の各種センサを適宜選択し、種々の物理量を計測して出力する。検知部13は通信部12又は電波受信デバイスを用いて自位置を検知するものであってもよい(GPS(Global Positioning System )等)。
撮像部14は、カメラモジュールを用いて得られる映像信号を出力する。撮像部14は揮発性メモリを内蔵しており、カメラモジュールから出力された映像信号を映像データとして(符号化等)逐次順に記憶している。撮像部14は、処理部10からの指示により内部メモリから映像データを出力する。
切替部15は、接続されている制御対象(アクチュエータ等)の動作を切り替えるスイッチであり、処理部10からの制御信号によりオン/オフ等、複数の状態の内のいずれかへ遷移させる。切替部15は制御対象の動作状態を検知する検知部でもある。
表示部16は液晶パネル又は有機ELディスプレイ等のディスプレイ装置を用いる。操作部17は、ユーザの操作を受け付けるインタフェースであり、物理ボタン、ディスプレイ内蔵のタッチパネルデバイス、スピーカ及びマイクロフォン等を用いる。操作部17は、物理ボタン又はタッチパネルにて表示部16で表示している画面上で操作を受け付けてもよいし、マイクロフォンにて入力音声から操作内容を認識し、スピーカで出力する音声との対話形式で操作を受け付けてもよい。
図3は、分散DBネットワーク101のノードを構成する処理装置3のハードウェア構成を示すブロック図である。分散型DBネットワーク101のノードを構成する処理装置3は夫々、処理部30、記憶部31、及び通信部32を備える。処理装置3は、サーバコンピュータであってもよいし、デスクトップ型又はラップトップ型パーソナルコンピュータであってもよいし、スマートフォン等の通信端末機器であってもよい。また処理装置3は、少なくとも処理部30及び通信部32を備える装置であれば、処理部30の一部によってノードの一部又は全部を構成することができる。
処理部30は、CPU、GPU等のプロセッサと、メモリ等を用いる。処理部30は、プロセッサ、メモリ、更には記憶部31及び通信部32を集積した1つのハードウェアとして構成されていてもよい。処理部30のメモリには、処理装置3夫々独自に所有する秘密鍵が記憶されているとよい。そして処理部30は、記憶部31に記憶されているノードプログラム3Pに基づいた各処理を実行し、汎用コンピュータを分散型DBネットワーク101におけるノードとして機能させる。
記憶部31は、ハードディスク又はフラッシュメモリを用い、ノードプログラム3Pを始めとする処理部30が参照するプログラム、データを記憶する。ノードプログラム3Pには、後述するスマートコントラクト(トランザクションに対する所定の演算処理を実行する処理部)として機能させるためのプログラムが含まれる。上述の秘密鍵は記憶部31に記憶されてもよい。記憶部31は、秘密鍵に基づく公開鍵及びアドレスを記憶している。
通信部32は、処理装置3の相互通信を実現する通信モジュールである。通信部32は、ネットワークカード、光通信用デバイス、又は無線通信デバイス等を用いる。
図4は、管理装置2のハードウェア構成を示すブロック図である。管理装置2は、サーバコンピュータを用い、処理部20、記憶部21、及び通信部22を備える。なお上述したように管理装置2自身も分散DBネットワーク101に所属するものであってもよい。
処理部20は、CPU、GPU等のプロセッサと、メモリ等を用いる。処理部20は、記憶部21に記憶されている管理プログラム2Pに基づき、デバイス1からの要求の受け付け、データの書き込み・読み出し処理等を行ない、データ配信を実現する。記憶部21は、ハードディスク又はフラッシュメモリを用い、管理プログラム2Pを始めとする処理部20が参照するプログラム、データを記憶する。
通信部22は、ネットワークNへの通信接続を実現する通信モジュールである。通信部22は、ネットワークカード、無線通信デバイス又はキャリア通信用モジュールを用いる。
このようなハードウェア構成を有するデータ流通システム100にて、実行される処理について順に説明する。まず第1に、スマートフォンであるデバイス1(図2D)を利用するユーザがデバイス1の操作部17を操作し、ユーザが管理権限を持つデバイス1(例えば図2AのIoT機器)のデータ流通システム100へのデバイス登録のトランザクション(tx)情報を分散型DBネットワーク101のノードへ送信する。なお、データを提供するデバイス1自身がデバイス登録のトランザクション情報を送信してもよい。
分散型DBネットワーク101では、ノードがデバイス登録のトランザクション情報を受信する。分散型DBネットワーク101では、デバイス登録用のスマートコントラクトの処理によってトランザクションが実行される。複数のノードでトランザクションの検証を行ない、結果として分散型DBネットワーク101にそのトランザクションが記録される。デバイス登録のトランザクション情報には、登録対象のデバイス1のアドレスが含まれている。トランザクションには、デバイス1の属性情報(デバイス種類、位置情報)、更には他のデバイス1(ユーザ)との対応関係が含まれていてもよい。トランザクションに含まれるアドレスによってデータを提供するデバイス1を特定し、このデバイス1のウォレットアドレス宛てに報酬を供与することができる。なお、データを利用するデバイス1から、データを提供したデバイス1への報酬の一部が、分散型DBネットワーク101におけるノードへの処理の報酬(手数料)として使用されてもよい。
図5に示すように、デバイス1からのデバイス登録のトランザクション情報により、データを提供するデバイス1夫々のアドレスが分散型DBネットワーク101にて記録される。
以後、データを提供するデバイス1はデータをデータ配信システム102に保存する。図6は、データ流通システム100におけるデータ保存処理の手順の一例を示すシーケンス図であり、図7は、図6の処理の概要を示す模式図である。
データを提供するデバイス1は、処理部10のデバイスプログラム1Pに基づく処理により、定期的に、又はイベントを検知する都度、得られるデータをストレージ200へ送信する(ステップS101)。ストレージ200では、デバイス1から送信されたデータを記録する(ステップS201)。データは、検知部13で検知された物理量、状態値、位置情報等のデータ、撮像部14から得られる映像データ、映像データから得られる認識結果などのデータ等である。
デバイス1は、管理装置2へストレージ200におけるデータの所在を示す所在情報を送信する(ステップS102)。所在情報は、データが記憶されている記憶装置のネットワークアドレス、記憶装置におけるデータの識別情報(名称、ディレクトリ情報)等、ストレージ200にてデータを特定するための情報である。ステップS102では所在情報と共に、データの属性情報が送信される。属性情報は、検知された時刻、撮影時刻、映像の長さ(時間)、データを導出した時刻などの時間情報、データを検知した際の自位置、撮影した時点での自位置を示す位置情報が含まれることが好ましい。属性情報として、データの有効期限、データの種類等が含まれてもよい。
管理装置2では、処理部20がデータの所在情報及び識別情報を通信部22にて受信し(ステップS202)、記憶部21に記憶する(ステップS203)。管理装置2にて記憶されるデータの属性情報は、送信元のデバイス1の識別情報(アドレス)を含む。属性情報は、記録されたデータの種別(何のデータなのか)、記録されたデータが対応する位置情報(どこで得られたデータなのか)、及びデータの時間情報(いつ得られたデータなのか)を含むことが好ましい。この際、管理装置2は、デバイス1の識別情報(アドレス)について、分散型DBネットワーク101へ有効なデバイス1であるかをデバイス登録のトランザクション記録に基づいて確認してもよい。
データを提供するデバイス1は、ストレージ200に保存されたデータについて、ハッシュ値を導出する(ステップS103)。デバイス1の処理部10は、保存したデータの所在情報と、ハッシュ値とを含むデータ登録のトランザクション情報を分散型DBネットワーク101へ送信する(ステップS104)。デバイス1はこの際、データの属性情報を対応付けて送信してもよい。
分散型DBネットワーク101では、いずれかのノードでデータ登録のトランザクション情報を受信すると(ステップS301)、デバイス登録用のスマートコントラクトの処理によってトランザクション処理が実行される(ステップS302)。複数のノードで、データの送信元のデバイス1の公開鍵を用いてトランザクションに付されている署名に基づく検証を行なう(ステップS303)。これにより、分散型DBネットワーク101にてそのトランザクションが記録され、データの保存処理が終了する。データのハッシュ値及び所在情報が分散型DBネットワーク101にて記録されることで、内容が改ざんされていないかが検証されたデータを利用することが可能になる。
データを提供するデバイス1は、データをデータ配信システム102に記録(ストレージ200へ保存し、管理装置2へ属性情報を送信)する都度、図6の処理を実行し、管理装置2及び分散型DBネットワーク101ではデバイス1からのデータに応じた処理を実行する。デバイス1は、データを複数回まとめてストレージ200へ記録し、各データの保存について管理装置2へデータの所在情報及び属性情報をまとめて送信してもよい。デバイス1は、既に得られたデータを記録するのみならず、予約されたデータが利用者のデバイス1へ配信されるようにしてもよい。この場合、データ自体がないのでデータ登録のトランザクションに含まれるハッシュ値は、データの送信スケジュールに基づくもの、又は管理装置2若しくは提供者のデバイス1における配信用のネットワークアドレス及びポート等の通信情報に基づくものであってもよい。所在情報は、ストレージ200におけるデータの保存用に確保される場所であってもよいし、管理装置2における配信アドレス及びポート等の通信情報であってもよいし、デバイス1から直接配信するためのデバイス1のアドレスであってもよい。
データを利用するデバイス1は分散型DBネットワーク101にてデータのアクセス権を取得してからデータの配信を受ける。図8は、データ流通システム100におけるデータ保存処理の手順の一例を示すシーケンス図である。
データを利用するデバイス1は、例えば操作部17を用いたユーザの操作に基づいて、利用するデータへのアクセス権をトークンとして購入するトークン購入のトランザクション情報を分散型DBネットワーク101へ送信する(ステップS111)。トランザクション情報には、利用するデータを特定する情報と、データを利用するデバイス1を特定する情報(署名等)とが含まれる。データを特定する特定情報は、ストレージ200におけるデータの識別情報(所在情報)、ネットワークアドレス、又は、提供するデバイス1のウォレットアドレスである。特定情報は、時間、位置、更にはデータのクオリティを指定する情報などを含んでもよい。トランザクション情報には、データの提供に対する対価の情報が含まれるとよい。対価は仮想通貨等のデジタル資産(ここでは、アクセス権の付与(データ提供)の代償となり得るネットワーク上で流通する仮想通貨等の電子的通貨、その他有価な情報、品質証明、会員証明等の証書、他のアクセス権、所有権、議決権等の権利を含む)によるもの又はこれに代替可能なものとする。
ステップS111においてデバイス1は上述したように、トークン購入対象のデータを特定する特定情報をトランザクション情報に含めて送信している。特定情報は予め、検索処理によって取得される。検索処理は例えばデータ配信システム102にて各データの属性情報を記憶している管理装置2にて行なってもよいし、分散型DBネットワーク101内で行なうようにしてもよい。分散型DBネットワーク101に登録されたデータを、外部サービスから特定することができるように検索用データ(タグ型情報、又は、類似、関連若しくは重要度等の分析情報)が作成されるとよい。作成は分散型DBネットワーク101の内部で又は管理装置2で行ってもよいし、更にはデータ登録トランザクションの送信者が行なってもよい。例えばデータ検索システムが外部サービスとして設けられ、分散型DBネットワーク101内のデータを、デバイス1からの検索要求を受け付け、検索用データを用いて検索し、データを特定する特定情報を返す構成としてもよい。
分散型DBネットワーク101では、いずれかのノードでのトークン購入のトランザクション情報を受信する(ステップS311)。トークン購入用のスマートコントラクトの処理により、受信したトランザクションが実行される(ステップS312)。ステップS312では、データを利用するデバイス1へトークン(アクセス権)の付与と、利用されるデータを提供したデバイス1への報酬の供与とが不可分一体に実行される。デバイス1への報酬の供与は、データを特定する情報に基づきデータを提供するデバイス1のアドレスを特定し、利用者のデバイス1のアドレスから特定されたアドレスへ、所定の仮想通貨を移動させることで実現される。仮想通貨の量は購入者が指定できてもよいし、データのサイズ、時間、重要度、人気度によって変動するものとし、スマートコントラクトにて条件に応じて決定されてもよい。複数のノードで、トランザクションの送信元のデバイス1の公開鍵を用いてトランザクションの検証を行なう(ステップS313)。これにより分散型DBネットワーク101にて、利用するデバイス1が、どのデータ(いずれのデバイス1からのデータ)を利用するかが保証可能に記録され、いずれのデバイス1からいずれのデバイス1へ報酬が支払われたか記録される。分散型DBネットワーク101ではいずれかのノードにより、トークン購入が成功したことがデバイス1へ通知される(ステップS314)。トランザクション情報に含まれていた対価はその大半が、データを提供するデバイス1に報酬として供与されるが、一部は分散型DBネットワーク101への手数料として、各ノードにおけるトランザクションに対する処理への報酬として使用される。
なおステップS312では、スマートコントラクトの処理によって、トランザクションにて利用が要求されているデータの正当性をチェックする処理が行なわれるとよい。例えばスマートコントラクトを実行するノードは、トランザクションにて指定されているデータを特定する情報に基づき、データの送信をデータ配信システム102へ依頼し、送信されたデータと、該データのデータ登録のトランザクションに含まれるハッシュ値とを用いてデータの正当性をチェックする。
デバイス1は、トークン購入の結果を確認すると(ステップS112)、自身のアドレスと、利用するデータを特定する情報とを含むデータ要求をデータ配信システム102へ送信する(ステップS113)。ステップS112ではデバイス1の処理部10は、トークン購入に対する成否を判断し、成功でない場合は処理を終了し、成功の場合は処理を続行する。ステップS113でデバイス1は、自身のアドレスと共に署名等の認証情報を共に送信することが望ましい。
管理装置2は、利用者であるデバイス1からのデータ要求を受信すると(ステップS211)、デバイス1のアドレス及び利用するデータを特定する情報に基づき、要求元のトークンが正当であるか、分散型DBネットワーク101へ問い合わせを行なう(ステップS212)。なおステップS212において管理装置2の処理部20は、要求元のデータ要求に含まれる認証情報に基づき、要求元自体が正当であるか否かの認証を行ない、認証に成功した場合のみ、問い合わせを行なうなどの対策により、アクセス権を有するデバイス1のなりすましを防止することが望ましい。
分散型DBネットワーク101では上述したように、利用者であるデバイス1が、どのデータを利用するか、それによってデータの提供者であるデバイス1へどれほどの報酬が供与されたのかが記録されている。いずれのノードでもその内容を確認可能である。したがって、任意のノードにて管理装置2からのトークン(アクセス権)の問い合わせを受け付ける(ステップS315)。問い合わせを受け付けたノードは、分散型DBネットワーク101における記録に基づき、アクセスを希望するデバイス1のトークンが正当であるか否かを確認する(ステップS316)。ステップS316にて分散型DBネットワーク101のノードは、問い合わせられたデータをストレージ200から管理装置2を経由して取得し、前記データのデータ登録のトランザクションに含まれるハッシュ値に基づいてデータ自体が改ざんされていないか否かを判定することが好ましい。ノードは、確認の結果を管理装置2へ返答する(ステップS317)。
管理装置2の処理部20は、分散型DBネットワーク101からの返答に基づき、利用者であるデバイス1のトークンが正当であるか否かを判断する(ステップS213)。正当であると判断された場合(S213:YES)、処理部20は、特定する情報に基づいてデータをデバイス1へ送信する(ステップS214)。なおステップS214では、上述の認証情報に基づき、データの要求元としてデバイス1が正当であるとの認証に成功した場合のみデータを送信することが望ましい。
デバイス1では送信されたデータを受信し(ステップS114)、これにより、データ配信の処理が終了する。
なおステップS213にて正当でないと判断された場合(S213:NO)、そのままデータ要求は棄却されて処理が終了する。
ステップS214において管理装置2の処理部20は、既にストレージ200に記録されているデータについてはデバイス1からの要求の都度、読み出して送信する。なおトークンは、送信の回数、送信可能な期間を規定して購入されるとよく、基本的には送信一回毎に購入されることが望ましい。ただし処理部20は、一度正当と確認されたトークンに基づき、例えば一定期間、デバイス1から送信されるデータをその都度、利用者であるデバイス1へ送信してもよい。
ステップS316にて、分散型DBネットワーク101のノードがデータ自体の改ざんをチェックすることが好ましいとしたがこれに限定されるべきでない。管理装置2にて、改ざんチェックを行なってもよいし、データ利用者であるデバイス1がデータを受信してから改ざんチェックを行なってもよい。データ提供者であるデバイス1にて、任意のタイミングで改ざんチェックを行なってもよい。
このようにしてデータへのアクセス権が分散型DBネットワーク101にて自動的に保証されるので、データ利用者のデバイス1は、データを正当に入手して利用することができる。属性情報(時間、データサイズ、クオリティ)等を用いた利用条件に応じた自動取引も可能である。また、仮想通貨等のデジタル資産での報酬の支払いが行なわれるため、マイクロペイメント(法定通貨の最小単位以下での支払い)が可能である。したがって、あるデバイス1から1つのデータを1回限り取得するといったことに対し、デバイス1への報酬の支払いが可能である。法定通貨の場合では売買対象となり得る単位、例えば何時間分、何日間分、何か月分、又は数十回以上の回数分などの単位でしかデータの売買が困難であったことを鑑みれば、これまで売買が発生していなかったデータ、管理者以外のユーザによって価値が見出されるようなデータの売買が可能となる。これにより、事業者が蓄積している又は蓄積する膨大なデータを資源化することが可能である。
本開示のデータ流通システム100により実現されるデータの流通を複数の実施例を挙げて具体的に説明する。
(実施例1)
図9は、実施例1におけるデータ流通システム100を示す図である。実施例1では、データを提供するデバイス1はカメラであり(図2B)、監視用途で設置されている。
データを提供するデバイス1の所有者は、自身が使用する情報端末装置であるデバイス1によって、カメラであるデバイス1のデバイス登録を分散型DBネットワーク101に対して行なう。以後、カメラであるデバイス1は、撮影された映像データを監視カメラの役割上使用しなかった場合に消去(上書き対象とする)せず、自身を識別するアドレス(ウォレットアドレス、公開鍵)と対応付けてストレージ200に保存する。デバイス1は、ストレージ200に保存したデータのハッシュ値と、データの所在を示す所在情報とを含むデータ登録のトランザクション情報を分散型DBネットワーク101へ送信する。これにより分散型DBネットワーク101には、所在情報が示す場所に、ハッシュ値の元となるデータが保存されたことが記録される。
そしてデバイス1は、ストレージ200における映像データの所在情報を管理装置2へ送信する。デバイス1は、所在情報と共に属性情報として、カメラの設置場所を示す位置情報(緯度経度、地域名、住所等)、保存された映像データが撮影された時刻、時間帯を示す時間情報、映像データの長さ又は容量を示すサイズの情報を管理装置2へ送信する。管理装置2では、処理部20が映像データの識別情報に対応付けて、送信元のデバイス1のアドレス及び所在情報と共にこれらの属性情報を記憶部21に記憶する。
データの購入者は、都市開発団体、警備会社、メディア等であって、ある場所の、ある時間帯にて撮像された映像データ、又はその後撮像される映像データを取得したいという要望を持っている。購入者は例えばパーソナルコンピュータであるデバイス1(図2D)を用いて、管理装置2にて映像データの属性情報に基づく検索を行なうことができる。勿論、データの購入者は、データを提供するデバイス1を特定できていればそのアドレスで検索を行なうことなく指定してもよい。管理装置2では、管理プログラム2Pに基づいて、検索要求に対して属性情報に基づき検索結果を抽出する。
データの購入者は、検索結果に基づいて所望の映像データのトークンを購入する。購入者は、使用するデバイス1を操作し、デバイス1からトークン購入のトランザクション情報を分散型DBネットワーク101へ送信させる。図9に示したように、分散型DBネットワーク101に、購入者が使用するデバイス1(0x03d...)が識別情報「123」のデータへのアクセス権(トークン)を購入したので、識別情報「123」のデータを提供したデバイス1(0x08e...)へ報酬が支払われた、というトランザクションの内容が記録される。
トークン購入に成功した購入者は、トークン購入のトランザクション情報を送信したデバイス1を用い、管理装置2へデータを要求する。管理装置2の処理部20は、データの要求元のデバイス1のアドレスに基づき、対象のデータに対するトークンを分散型DBネットワーク101へ確認する。分散型DBネットワーク101では上述のようにトランザクションの内容が記録されているので、管理装置2は対象データについてのデバイス1のトークンを確認できる。管理装置2は、対象データをストレージ200から取得し(又は、対象データの所在を取得)、データの要求元のデバイス1へ送信する。このようにして分散型DBネットワーク101を介したデータ配信が実現される。
実施例1では、多数の監視カメラ(デバイス1)によって撮影された映像データがストレージ200に保存される。映像データがその監視カメラの役割上、デバイス1の所有者から使用されなかったとしても、他者である購入者が価値を見出した場合に、デバイス1が撮影した映像データに対して報酬が支払われる。これにより、映像データが利活用されると共に、データの資産化が実現できる。
なお実施例1では、カメラを設置した所有者が、データを提供したデバイス1のウォレットに支払われた報酬の仮想通貨を、その秘密鍵を用いて自身が使用する情報端末装置であるデバイス1へ移動させることで、カメラの所有者はそのカメラの報酬に基づく資産を得ることができる。
実施例1では、管理装置2を経由してストレージ200に一旦記憶されたデータを配信する構成としたが上述したように、監視カメラであるデバイス1における記憶容量及び処理部10の処理能力が十分であれば、デバイス1から直接的に購入者のデバイス1へデータを送信してもよい。図10は、デバイス1間で直接的にデータを送信する場合の処理の例を示す。この場合、図8における管理装置2の処理(ステップS211からステップS214)はデータを提供するデバイス1にて実行する。直接的にデータを送信する場合の所在情報は、提供者のデバイス1における配信用のネットワークアドレス及びポート等の通信情報に基づくものである。また提供者のデバイス1へデータ送信を依頼するためのアドレス情報であってもよく、デバイス1は依頼のメッセージを受信し、トークンが確認できた場合にはメッセージにデータを付加して送信する構成も実現可能である。
図9及び図10の概要図では、分散型DBネットワーク101内に1つのスマートコントラクトを図示し、このスマートコントラクトによって各トランザクションを処理するように説明している。しかしながらこれは分散型DBネットワーク101の集合としての機能を示しているに過ぎない。デバイス登録、データ登録、トークン購入夫々のトランザクションに対する処理は、夫々、役割を分担された異なるノードで実行されてもよいし、いずれのノードもスマートコントラクトとしての役割を同様に担えるように構成され、トランザクションを受信したノードで実行されてもよい。
(実施例2)
図11は、実施例2におけるデータ流通システム100を示す図である。実施例2では、データを提供するデバイス1は、HEMS(Home Energy Management System )が導入されている住居に配設されているセンサ又はスイッチを含む機器である(図2A)。機器は例えば照明機器である。照明機器はスイッチを切替部15として含み、スイッチの状態を認識できる。機器は例えば空調機器、調理機器である。機器は屋外の充電器であってもよい。これらの機器は温度センサ、湿度センサ、受光センサ、電流計、又は電圧計等を検知部13として含む。またデバイス1は、機器群と信号を授受するIoTゲートウェイであってもよい。
データを提供するデバイス1の所有者は、HEMSが導入されている住居の所有者(住人)である。所有者は自身が使用する情報端末装置であるデバイス1によって、住居に配設されたセンサ又はスイッチであるデバイス1群のデバイス登録を分散型DBネットワーク101に対して行なう。デバイス1群は夫々、測定値又はスイッチ状態を示すデータを住人のライフログとして定期的に、又は状態が変化する都度にストレージ200に、データの種別(温度データなのか、スイッチ状態を示すのか等)と、それらのデータが取得された時刻、又は時間帯を示す時間情報と共に保存する。デバイス1群はまた、データを保存する際に自身を識別するアドレスを対応付ける。デバイス1群は、ストレージ200に、自身の住居を識別する識別情報を対応付けて保存してもよい。デバイス群は、データのハッシュ値とストレージ200におけるライフログデータの所在を示す所在情報とを含むデータ登録のトランザクション情報を分散型DBネットワーク101へ送信する。これにより分散型DBネットワーク101には、所在情報が示す場所に、ハッシュ値の元となるデータが保存された、ということが記録される。
デバイス1は、ストレージ200におけるライフログデータの所在を示す所在情報と属性情報とを管理装置2へ送信する。実施例2における属性情報は、デバイス1自身の種別(照明機器か、空調機器かなど)、住居を識別する識別情報、住居の住所又は地域を示す位置情報、又は、住居の仕様若しくは住人の構成(同居人数、年代、家族構成等)を示す条件情報であってもよい。管理装置2では、処理部20がデータの識別情報に対応付けて、属性情報を記憶部21に記憶する。
データの購入者は、家電・日用品メーカ、ヘルスケアサービス、電力又はガス等のエネルギー、上下水道等のインフラ提供事業者、HEMS提供事業者等であって、ある住居におけるライフログを入手して、商品開発、新サービス設計へ向けて分析したいという要望を持っている。購入者は、自身が使用するデバイス1を用いて、管理装置2にてライフログの提供者を特定する情報を検索することができる。例えば、家族構成、住所、又は地域等の属性情報に基づきデータを検索したり、室温のデータのみ、消費電力のデータのみなど種別でデータを検索したりできる。
データの購入者は、検索結果に基づいて所望のライフログに関するデータのトークンを購入する。購入者は使用するデバイス1からトークン購入のトランザクション情報を分散型DBネットワーク101へ送信する。以後の処理は上述の説明通りである。分散型DBネットワーク101には、トークンがデータ購入者により購入され、これに応じてデータを提供したデバイス1に報酬が支払われたことが記録されている。分散型DBネットワーク101に記録されたトランザクションは改ざんされないので、管理装置2はこの記録を参照してアクセス権を持つデバイス1のみにデータを配信する。なおトークン購入の際には、アクセス権の条件として過去又は未来の期間を設定し、管理装置2にて配信するデータについて、改ざんされていないか否かを、ハッシュ値を用いて確認すると共に、データの期間はアクセス権の条件と合致する場合のみ配信することも可能である。データの提供者であるデバイス1は夫々、測定したデータが購入されたか否かに応じて自身のアドレスに対し、報酬を受け取ることができる。
(実施例3)
図12は、実施例3におけるデータ流通システム100を示す図である。実施例3では、データを提供するデバイス1は、ウェアラブルデバイスであり、受光センサ等を用いた心拍計、また位置を検出するGPS受信部である検知部13と通信部12とを備え、装着したユーザのヘルスデータ(心拍、体温、運動量、位置情報等)を取得する(図2A)。
データを提供するデバイス1の所有者は、デバイス1を装着して使用するユーザである。所有者は自身が使用する他の情報端末装置であるデバイス1によって、ウェアラブルデバイスであるデバイス1のデバイス登録を分散型DBネットワーク101に対して行なう。このとき所有者が使用するデバイス1とデータを提供するデバイス1との間のアドレスの対応関係が共に記録されてもよい。
ウェアラブルデバイスであるデバイス1は定期的に又はイベントを検知する都度に、個人的なヘルスデータとして測定値をストレージ200に保存する。デバイス1は、保存したヘルスデータに対し、データ夫々の種別(心拍数、体温、運動量、又は位置情報等)、それらのデータが取得された時刻又は時間帯等の時間情報を含む属性情報を、自身を識別するアドレスと対応付けて保存する。デバイス1は、ストレージ200に保存したヘルスデータのハッシュ値と、データの所在を示す所在情報とを含むデータ登録のトランザクション情報を分散型DBネットワーク101へ送信する。これにより分散型DBネットワーク101には、所在情報が示す場所に、ハッシュ値の元となるデータが保存されたことが記録される。
デバイス1は、ストレージ200におけるヘルスデータの所在を示す所在情報と属性情報とを管理装置2へ送信する。実施例3における属性情報は少なくとも、デバイス1自身のアドレスを含む。属性情報は、装着者の識別情報(ウェアラブルデバイスに関するヘルスケアサービスのアカウント等)を含んでもよい。管理装置2は処理部がデータの識別情報に対応付けて、属性情報を記憶部21に記憶する。
データの購入者は、ウェアラブルデバイスに関するヘルスケアサービスの提供事業者、又は保険会社であって、ヘルスデータを入手して装着者に対するサービス提供、またヘルスデータに基づく保険料の設定などを行なう。購入者は、自身が使用するデバイス1(図2D)を用いて、管理装置2にて装着者の識別情報からデータを検索することができる。
データの購入者は、所望の装着者のヘルスデータのトークンを購入する。購入者は使用するデバイス1からトークン購入のトランザクション情報を分散型DBネットワーク101へ送信する。分散型DBネットワーク101では、いずれかのノードでスマートコントラクトの処理により、トークン購入のトランザクションの内容が改ざん困難な状態で記録される。これによりデータの購入者は、トークンを根拠に管理装置2からストレージ200に保存されている所望の装着者のヘルスデータを取得することができる。
実施例3においても、個人情報であるヘルスデータの他者からの秘匿が可能な範囲で、管理装置2及びストレージ200を経由することなく、デバイス1同士でデータを送信することも可能である。
(実施例4)
図13は、実施例4におけるデータ流通システム100を示す図である。実施例4では、データを提供するデバイス1はカメラを有し、自由に移動する移動体である(例えば撮影用ドローンである)。この移動体は、指示にしたがって映像を取ることを目的として管理者によって管理されている。
移動体であるデバイス1の管理者は、自身が使用する情報端末装置であるデバイス1によって移動体であるデバイス1のデバイス登録を行なう。デバイス1は、撮影した映像データを、自身を識別するアドレスと対応付けてストレージ200に保存する。デバイス1は、保存した映像データのハッシュ値と、ストレージ200における映像データの所在を示す所在情報とを含むデータ登録のトランザクション情報を分散型DBネットワーク101へ送信する。これにより分散型DBネットワーク101には、所在情報が示す場所に、ハッシュ値の元となる映像データが保存されたことが記録される。
映像データを保存したデバイス1は、映像データの所在情報及び属性情報を管理装置2へ送信する。属性情報は、映像データが撮影された場所及び範囲を示す位置情報、時刻又は時間帯を示す時間情報、映像データの長さ又は容量を示すサイズの情報である。管理装置2では、処理部20が映像データの識別情報に対応付けて、送信元のデバイス1のアドレス及び所在情報と共にこれらの属性情報を記憶部21に記憶する。属性情報はストレージ200でも映像データと対応付けて記録されるとよい。
データの購入者は、都市開発団体、警備会社、メディア等である。データ購入者は実施例1同様にして映像データを管理装置2にて検索し、検索結果に基づいて映像データのトークンを購入する。分散型DBネットワーク101には、購入者が使用するデバイス1が、希望するデータへのアクセス権(トークン)を購入したので、希望するデータを提供したデバイス1へ報酬が支払われたというトランザクションの内容が記録される。
データの購入者は、購入したトークンによって所望の映像データを取得することができ、この映像データを提供したデバイス1は、報酬を得ることが可能である。デバイス1は、移動のためのエネルギー(電力)をこの報酬に基づき購入することも可能である。充電スタンドの制御装置にも秘密鍵に基づくウォレットアドレスを持たせておく。充電スタンドの制御装置は、デバイス1とP2P通信を実現する通信部と、仮想通貨の額面(対価)に応じた電力の供給を許可するスマートコントラクト(電力購入)を実行する処理部とを備える。デバイス1は自力で充電スタンドまで移動し、自身のアドレスに対応付けられている仮想通貨からP2P通信により電力購入を実行する。このようにして、デバイス1が夫々、相互に通信してデータと報酬、又はエネルギーと対価等の交換を行なう。なお充電スタンドと移動体であるデバイス1との間のエネルギー(電力)購入の処理も、分散型DBネットワーク101にて実行されてもよい。
実施例4においては、移動体であるデバイス1への制御データ(位置情報、時間情報)へのアクセス権をトークンとして購入可能としてもよい。データの購入者は、デバイス1に、ある時間にある場所を撮影させたいと考えた場合、制御スケジュールのアクセス権をトークンとして購入する。分散型DBネットワーク101に、制御スケジュールが購入者によって正当に購入されたことが記録されるので、管理装置2はこのトランザクションの記録を確認し、制御要求に応じて制御指示を送信するといったことが可能になる。
(実施例5)
図14は、実施例5におけるデータ流通システム100を示す図である。実施例1では、データを提供するデバイス1はセンサ技術が集約されている車輌(以下、通信を行なう車載機として説明する)である。
データを提供するデバイス1、即ち車輌の所有者は、自身が使用する情報端末装置であるデバイス1によって、車載機であるデバイス1のデバイス登録を分散型DBネットワーク101に対して行なう。車載機であるデバイス1は、車輌に配設されているセンサ群である検知部13で得られる情報から作成される走行データを、自身を識別するアドレスと対応付けてストレージ200へ保存する。走行データは例えば、各時点における走行距離メータから得られる数値データ、及び走行位置の履歴を含む。走行データは、燃費、急ブレーキ回数、急ハンドル回数を含んでもよい。その他、車輌に配設されているセンサ群から得られるデータが含まれる。車載カメラで撮影された映像データが含まれてもよい。デバイス1は、保存した走行データのハッシュ値と、データの所在を示す所在情報とを含むデータ登録のトランザクション情報を分散型DBネットワーク101へ送信する。これにより分散型DBネットワーク101には、所在情報が示す場所に、ハッシュ値の元となるデータが保存されたことが記録される。
車載機であるデバイス1は、ストレージ200における走行データの所在情報及び属性情報を管理装置2へ送信する。属性情報は、送信元のデバイス1のアドレスを含む。属性情報は、車輌の車体識別番号、車種又は各走行データが送信された時刻を含んでもよい。管理装置2では、走行データの識別情報に対応付けて、これらの属性情報を記憶部21に記憶する。
実施例5では、データの購入者は、都市開発団体、自動運転技術開発企業等であり、多様な車輌の走行データを入手したいという要望を持っている。購入者は、使用するデバイス1を用いて、管理装置2にて所望の走行データを検索することができる。例えば車種、時間、地域等で検索することができる。
データの購入者は、検索結果に基づいて所望の走行データに関するデータのトークンを購入する。分散型DBネットワーク101には、購入者が使用するデバイス1が、希望する走行データへのアクセス権(トークン)を購入したので、希望する走行データを提供したデバイス1(車輌)へ報酬が支払われたというトランザクションの内容が記録される。
データの購入者は、購入したトークンによって所望の走行データを取得することができ、この走行データを提供したデバイス1は、報酬を得ることができる。デバイス1は、事故時の種々の補償に対して支払うべき保険料をこの報酬に基づき支払うことも可能である。保険会社における情報処理装置にも秘密鍵に基づくウォレットアドレスを持たせておく。情報処理装置は、車載機1とP2P通信を実現する通信部と、管理装置2と通信する通信部とを夫々有している。管理装置2は、情報処理装置から車体識別番号に基づいてストレージ200に保存されている走行データの参照を受け付けることを可能とする。実施例5では、保険会社からの参照の場合にはデータ提供の報酬はなしとする。保険会社の情報処理装置は、走行距離、運転状況(運転の荒さ等)に基づき保険料を算定し、車輌であるデバイス1へ請求する。車輌であるデバイス1は、自身のアドレスに対応付けられている仮想通貨により保険料の支払いを実行する。情報処理装置では、分散型DBネットワーク101にて、保険料の支払いと、この支払いに応じた補償がされていることを記録するトランザクション情報を送信してもよい。このようにして、デバイス1が夫々相互に通信して、データと報酬、又はサービスの享受と保険料等の直接的な交換を行なうことができる。
(実施例6)
図15は、実施例6におけるデータ流通システム100を示す図である。実施例6では、データを提供するデバイス1は、カメラを有して自由に移動する移動体であり、データを利用するデバイス1は、車輌(車載機)である。
移動体であるデバイス1については、実施例4にて説明したように管理者によってデバイス登録が行なわれ、デバイス1によって各地の道路状況を撮影した映像データがストレージ200に保存される。各デバイス1(デバイス1から情報を収集する別途装置でもよい)から分散型DBネットワーク101へ、保存された映像データのハッシュ値と、映像データの所在を示す所在情報のデータ登録のトランザクション情報が送信される。分散型DBネットワーク101には、所在情報が示す場所に、ハッシュ値の元となる映像データが保存されたことが記録される。
移動体であるデバイス1は、映像データの所在情報及び属性情報を管理装置2へ送信する。属性情報は実施例4と同様に位置情報、時間情報を含む。管理装置2では、処理部20が映像データの識別情報に対応付けて、送信元のデバイス1のアドレス及び所在情報と共にこれらの属性情報を記憶部21に記憶する。属性情報はストレージ200でも映像データと対応付けて記録されるとよい。
実施例6ではデータの購入者は、車輌であり、データを利用するデバイス1は、車輌の例えばナビゲーションシステムの機能を発揮する車載機である。データを利用するデバイス1についても車輌の所有者が、自身が使用する情報端末装置であるデバイス1によってデバイス登録を分散型DBネットワーク101に対して行なっておく。データを利用するデバイス1は、例えば設定された行き先までの経路、又は現在地近辺の道路状況のデータを必要とする。データを利用するデバイス1は、経路又は現在地近辺を特定するための位置情報と共に、管理装置2へデータを要求する。
管理装置2では、処理部20が要求された道路状況のデータを提供し得る映像データをストレージ200から抽出する。その時点でストレージ200に保存されている映像データのみを対象とせずともよい。処理部20は、移動体である各デバイス1の位置情報の提供を受けて、要求と共に送信される位置情報に基づいて、映像データを提供し得るデバイス1を特定してもよい。処理部20は、特定された移動体であるデバイス1のアドレスをデータの要求元のデバイス1へ検索結果として返す。
データ購入者のデバイス1は、検索されたデータ提供者のデバイス1のアドレスを元に、このデバイス1から提供される映像データへのアクセス権をトークンとして購入し、報酬を支払うトークン購入のトランザクション情報を分散型DBネットワーク101へ送信する。分散型DBネットワーク101には、購入者が使用するデバイス1が、希望するデータへのアクセス権(トークン)を購入したので、希望するデータを提供したデバイス1へ報酬が支払われたというトランザクションの内容が記録される。
管理装置2では処理部20が、要求されたデータの元となる映像データのトークンが正当であるか否かを確認し、ストレージ200から対象の映像データを取得する。映像データの正当性について分散型DBネットワーク101へ確認をとるなどしてから処理部20は、そのまま映像データをデータ購入者のデバイス1へ送信してもよい。ただし出来る限り、処理部20は、処理部20自身又は外部装置にて映像データの分析を行ない、映像データに基づいて各地の道路状況を示す情報を作成してから要求元へ送信するとよい。
これにより、車輌であるデバイス1と撮影ドローンであるデバイス1との間で、道路状況を示す情報の交換を行ない、データ提供者のデバイス1では提供に対する報酬を得ることができる。このようにしてデバイス1同士で自律的にデータを交換し、デバイス1間で自律的にデータを売買することが実現される。
車輌をデータ利用者とし、車輌が効率的に走行するためにデータを利用する場合、実施例6に示したような撮影ドローンのみならず、ビーコン、信号制御機等もデータ提供者になり得る。道路を走行中の車輌と、ビーコン、信号制御機とのデバイス1同士で情報を交換し、車輌の走行状況に応じて信号制御機が信号制御を適切に変更し、これに対して車輌から報酬が支払われるなども実現し得る。
(実施例7)
図16は、実施例7におけるデータ流通システム100を示す図である。実施例1では、データを提供するデバイス1は、カメラ(14)と接続した情報処理装置であり、例えば表示部16を備えてデジタルサイネージ用途で設置されている。
実施例7におけるデータ提供者である情報処理装置は、管理装置2及びストレージ200の機能も有する。情報処理装置はカメラ14にて撮影した映像データに基づき、カメラ14の撮影範囲に写っている人物の人数、各々の性別、推定年齢、行き先を特定する。情報処理装置は、特定された人数、性別、推定年齢、行き先等の交通量データを、提供するデータとしてストレージ200に保存する。データ提供者であるデバイス1として情報処理装置は、保存した交通量データのハッシュ値と、ストレージ200における所在を示す所在情報のデータ登録のトランザクション情報を送信する。分散型DBネットワーク101には、所在情報が示す場所に、ハッシュ値の元となる交通量データが保存されたことが記録される。提供される交通量データは、所定時間先に得られる交通量データであってもよい。なおこの場合、ストレージ200に保存されるデータ(ハッシュ値の元)は送信スケジュール等となる。
情報処理装置は管理装置2として、保存された交通量データの所在情報と対応付けて、特定された時間等の属性情報、自身のアドレスを記憶しておく。
実施例7ではデータの購入者は、情報処理装置が設置されている場所を含む地区の店舗、商業施設の事業者である。事業者は自身が使用する情報端末装置であるデバイス1によって、デジタルサイネージとして設置されている情報処理装置のアドレス(ウォレットアドレス)を元に、交通量データへのトークンを購入する。分散型DBネットワーク101には、購入者が使用するデバイス1が、希望する交通量データへのアクセス権(トークン)を購入したので、希望するデータを提供したデバイス1へ報酬が支払われたというトランザクションの内容が記録される。
トークンを購入したデータ購入者は、デバイス1により情報処理装置へ交通量データを要求する。情報処理装置は管理装置2としてトークンを分散型DBネットワーク101に確認し、要求された交通量データを要求元のデバイス1へ送信する。例えば交通量データは、図16に示すように「female, 2」(=女性2人)といった情報である。交通量データを購入したデバイス1では、女性2人向けの案内を店舗で出力したり(デジタルサイネージ)と、クーポンの発行を行なったり、デバイス1同士でデータを交換し、データを利用した有効な広告宣伝を実現できる。
実施例1から7に示したように、分散型DBネットワーク101を利用して、夫々がウォレットに基づくアドレスを持ったデバイス1同士でデータのアクセス権をトークンとして購入し、トークンに基づき正当にデータを交換することが可能である。これにより、データの管理者の事業分野内での利用にとどまらず、データに価値を見出す他者からの利用を促し、データの資源化を活発化させることが可能になる。
本実施の形態におけるデータ流通システム100にて流通するデータは、実施例1から7に示した画像・映像データ、ライフログデータ、ヘルスデータ、自動車の走行データ、交通量データに限らないことは勿論であり、ありとあらゆるデジタル資源が対象となり得る。例えば、農業分野に関し、生育環境におけるセンサであるIoT機器で得られる測定データ、肥料等の情報を示す生産データ、農作物の生育状況を示す検査結果の生育データ、農作物の出荷記録等の物流データであってもよい。また上述のデータ登録トランザクションにより、元のデータへの改ざんを防止することができるので、記事、写真、投稿文等の著作物データを対象としてもよい。この場合、著作物データにはデータ提供者が利用するデバイス1に対応する秘密鍵に基づく署名、著作者を特定する情報を併せてハッシュ値を導出して共に登録し、不正な引用、改ざん、著作者のなりすましがあった場合にこれを検知することが可能となる。また著作物データを利用した二次利用に対する対価が元のデータ提供者のデバイス1に支払われるなどの運用も可能である。更には、資産の貸借に係る信用度を導出するにあたって使用される信用情報のデータを対象としてもよい。信用情報として所有資産のみならず家賃、公共料金、クレジットに対する支払い履歴をデータとして用いる場合に、これらの履歴へのアクセス権によって、管理者が管理している支払い履歴等のデータベースをデジタル資産として使用することも可能である。流通データは法定通貨、株式等の資産に関する取引状況を示す金融データであってもよい。エネルギーの生産又は消費の際に使用されるデバイス1で得られるデータ(測定データ等)を対象としてもよい。このように他者が利用を望む可能性がありデジタル資源となり得るデータに対し、各々のデータを管理下におく人間が取引を行なって提供し合うのではなく、データを生み出すデバイス1同士でのアクセス権に基づくデータの流通を実現することでデジタル資源の活発化を図ることが現実的となる。
なお、上述のように開示された本実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。