JP7307544B2 - 皮膚透明感を評価する方法 - Google Patents
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Description
このため、皮膚の透明感を、できるだけ客観的に評価するための技術が種々検討開発されている。
具体的には、特許文献1は、着眼点が皮膚表面の凹凸に限られており、皮膚表面の色に関する要因が含まれていないことから、精度に劣る場合がある。
特許文献2は、透明感の算出に、5つの目視官能評価プロファイルが必要となるが、その項目数5つは、いずれも官能評価が必要である。官能評価は、技術評価者の熟練さが求められることが多い。よって、項目数が5つと多いことは、技術評価者の熟練さが強く求められ、簡便性や再現性に欠ける場合がある。
特許文献3は、重相関係数Rが0.6程度にとどまり、精度に欠ける場合がある。
特許文献4においても、被験者数が3人と少なく、依然として精度が低いものであった。
斯様にして、本発明者は、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の(1)~(7)に示す技術である。
皮膚表面のキメ状態評価値、皮膚色の指標値、及び、皮膚表面の夾雑物量から選択される少なくとも2つの測定値に基づいて、対象者の皮膚透明感を推定することにより、皮膚透明感を評価する方法。
(2)
前記皮膚透明感の評価は、
対象者を測定して得られる、皮膚表面のキメ状態評価値、皮膚色の指標値、及び、皮膚表面の夾雑物量から選択される少なくとも2つの測定値に基づいて、
対象者の皮膚透明感の推定値を算出し、当該推定値を用いて行う、前記(1)記載の皮膚透明感を評価する方法。
(3)
前記対象者の皮膚透明感の推定値は、
皮膚透明感の推定値を目的変数とし、
皮膚表面のキメ状態評価値、皮膚色の指標値、及び、皮膚表面の夾雑物量から選択される少なくとも2成分を説明変数に含む重回帰分析を用いて、得られる値である、前記(2)記載の皮膚透明感を評価する方法。
(4)
前記皮膚表面のキメ状態評価値が、皮膚表面をレプリカ剤に転写し、該レプリカに対し、斜光照明を行うことで、算出された数値である、前記(1)~(3)のいずれか記載の皮膚透明感を評価する方法。
(5)
前記皮膚色の指標値が、分光測色計により、L*a*b*表色系を用いて測定された数値である、前記(1)~(3)のいずれか記載の皮膚透明感を評価する方法。
(6)
前記皮膚表面の夾雑物量が、対象者の皮膚状態のデジタル画像が二値化されることで、算出された数値である、前記(1)~(3)のいずれか記載の皮膚透明感を評価する方法。
(7)
前記重回帰分析が、PLS、MLR、PCR、又はロジスティックより得られた予測式又は予測モデルである、前記(3)~(6)のいずれか記載の皮膚透明感を評価する方法。
本発明は、皮膚透明感を推定することで皮膚透明感を評価する方法に関するものである。詳しくは、本発明は、目視による皮膚透明感の官能評価と、皮膚表面のキメ状態評価値、皮膚色の指標値、及び皮膚表面の夾雑物量とに相関関係があることを見出し、この相関関係に基づいて、対象者の皮膚透明感を推定する方法を提供するものである。
さらに、本発明は、皮膚透明感の評価を望む対象者に対して皮膚透明感を推定することで皮膚透明感を評価する方法である。
本発明の皮膚透明感の評価は、対象者を測定して得られる、各測定値に基づいて、対象者の皮膚透明感の推定値を算出し、当該推定値を用いて行うことが好適である。当該各測定値として、皮膚表面のキメ状態評価値、皮膚色の指標値、及び、皮膚表面の夾雑物量から選択される少なくとも2つの測定値が好適である。
皮膚透明感の推定値を目的変数とし、皮膚表面のキメ状態評価値、皮膚色の指標値、及び、皮膚表面の夾雑物量から選択される少なくとも2成分を説明変数に含む重回帰分析を用いて、得られる値である。この重回帰分析は、被験者の各種の評価値や測定値に基づいて経験則的に得られた重回帰分析であることがより好適である。
また前記重回帰分析は、PLS、MLR、PCR、又はロジスティックより得られた予測式又は予測モデルであることが好適である。
ここで、従来から利用している目視による皮膚透明感の官能評価は、豊富な経験や多くの訓練などを積んだ専任の技術評価者らによって行われている。このような専任の技術評価者らを用いることで、高い再現性及び高い精度で皮膚透明感を評価することができ、その評価結果は、スコア化することが可能である。
目視による皮膚透明感の官能評価は、複数(通常3名以上)の専任の技術評価者が、皮膚の印象に基づき、透明感を目視評価にて0~4点を0.5点刻みでスコア化(スコアが高いほど透明感は低い)し、協議の上で決定している。目視による皮膚透明感の観察部位は、特に限定されず、いずれの部位(例えば、顔、手、腕、脚等)でもよい。
本発明における皮膚透明感とは、肌の濁りがなく、透けるような状態を指す。本発明における皮膚透明感の評価は、目視による皮膚透明感の官能評価と同じようにスコア化し評価することも可能であり、両者は同じスコア基準で評価できる。このことは、後記〔実施例〕に示すように、両者の相関係数が高かったことから裏付けられている。本発明の皮膚透明感の評価は、具体的には、上述の目視による皮膚透明感の官能評価と同じスコアとすることができ、0~4点を0.5点刻みでスコア化できる。
一方で、本発明の皮膚透明感の評価は、上述の目視による皮膚透明感の官能評価よりも優れた利点を有している。例えば、本発明の皮膚透明感の評価は、目視による皮膚透明感の官能評価と比較して、技術評価者たちの評価基準等を高精度に均質化する必要はなく、また技術評価者の協議によるすり合わせを行わなくともよいので、目視による皮膚透明感の官能評価よりも、簡便に、より客観的に行うことができるという利点を有する。
このため、予め被験者を測定して得られた、皮膚表面のキメ状態評価値、皮膚色の指標値及び皮膚表面の夾雑物量の各測定値に基づき、本発明の皮膚透明感の推定式又は推定モデルを得ることができる。さらに、得られた皮膚透明感の推定式又は推定モデルは、目視による皮膚透明感の官能評価値と高い相関を示す。
そして、皮膚透明感の評価を希望する新たな対象者に対して、皮膚表面のキメ状態評価値、皮膚色の指標値及び皮膚表面の夾雑物量の少なくとも2つ又は3つを測定し、この各測定値に基づいて、この対象者の皮膚透明感を推定することができ、推定値としても適宜算出することもできる。この対象者の皮膚透明感を推定する際に、上述したような、予め経験則的に得られた皮膚透明感の推定式又は推定モデルを用いることが、より好適である。
このように、本発明は、予め被験者を用いて皮膚透明感の推定式又は推定モデルを経験則的に求め、この経験則的な推定式又は推定モデルを用いて、新たな対象者の皮膚透明感を推定することが好ましい。これにより、本発明は、目視による皮膚透明感の官能評価方法と同等程度に高い精度を有することができる。
なお、ポルフィリンスコアやシワスコアは、皮膚の撮影による画像解析等によるスコア化が知られている。ポルフィリンはニキビ・吹き出物の原因とされている。また、肌弾力値は、例えば、皮膚粘弾性測定装置等を用いた測定により、スコア化できることが知られている。
本発明の皮膚透明感を求める際の観察部位は、特に限定されず、いずれの部位(例えば、顔、手、腕、脚等)でもよい。このうち、顔が好ましく、顔のうち、評価の再現性、及び、精度向上の点から、顔面がより好ましく、さらに頬がより好ましい。
本発明で用いる皮膚表面のキメ状態評価値又はこの測定方法は、特に限定されないが、種々の方法を用いて、算出することが可能である。皮膚表面のキメ状態評価値は、専任の評価者の目視で評価を行う場合でも、目視による皮膚透明感評価の専任の技術評価者よりも熟練度は低くても可能であり、簡便に、客観的に行うことができる。
本手法における皮膚表面の適応部位としては、評価の再現性、及び、精度向上の点から、特に限定されないが、顔面が好ましく、頬であることがより好ましい。
キメ状態の規則性の判断基準として、〈キメが非常に規則的に並んでいる〉から〈キメが全く規則的に並んでいない〉までの5段階(例えば、スコア配点、0:ある、0.5:ややある、1:ふつう、1.5:ややない、2:ない)に分け、それら5段階を画像等により明確にすることにより、客観的な目視評価が可能となる。専任の技術評価者の人数は、3人以上が好ましく、5人以上がより好ましい。専任の技術評価者が目視により評点を付け、それらの平均点を算出することで、皮膚表面のキメ状態評価値を求めることが可能である。
本発明で用いる皮膚色の指標値又はこの測定方法としては、特に限定されないが、分光測色計等を用いて測定することができる。皮膚色の指標値は、分光測色計やJIS規格で得ることができるので、目視による皮膚透明感評価よりも、より簡便に、より客観的に行うことができ、また再現よく、精度よく、行うことができる。
皮膚色の指標値として、例えば、分光測色計を用いることにより、皮膚色の指標値として、知覚的に等色差性を持ったL*a*b*表色系を使用することができる。
本発明で用いる皮膚表面の夾雑物量又はこの測定方法は、特に限定されないが、例えば、皮膚表面のデジタル画像を取得し、その画像を二値化することにより、算出することができる。皮膚表面の夾雑物量は、デジタル画像処理にて得ることができるので、目視による皮膚透明感評価よりも、より簡便に、より客観的に行うことができ、また再現よく、精度よく、行うことができる。
皮膚表面の夾雑物量の算出の適応部位としては、評価の再現性、及び、精度向上の点から、特に限定されないが、顔面が好ましく、頬であることがより好ましい。
本発明における皮膚透明感を推定する際に、皮膚の水分量という因子は含まれないことが好ましい。前例研究による報告等から、当初、皮膚の水分量という因子は、皮膚透明感の推定に必要と想定された。しかしながら、予想外なことに、皮膚透明感の推定に際し、皮膚の水分量という因子を含めると、精度が落ちた。皮膚の水分量の因子は皮膚透明感と独立した相関関係を持たないといえるためである。
各被験者における、目視による皮膚透明感の官能評価値を求めると共に、皮膚表面のキメ状態評価値、皮膚色の指標値及び皮膚表面の夾雑物量のうち、必要とするものを少なくとも2つ以上求め、これら各評価値又は測定値を得る。本発明において「評価値又は測定値」を、「測定値」ともいう。
被験者人数は、特に限定されないが、統計学的に、多いほど好ましく、好ましくは30人以上、より好ましくは50人以上である。被験者に対する目視による皮膚透明感の官能評価、皮膚表面のキメ状態評価値、皮膚色の指標値、皮膚表面の夾雑物量の測定方法は、上述した<目視による皮膚透明感の官能評価>、<膚表面のキメ状態評価値>、<皮膚色の指標値>及び<皮膚表面の夾雑物量>のとおり、後記実施例(例えば、実施例1や表1等)を参照にして行うことができる。
また、本発明で用いる推定式は、ステップワイズ法による重回帰分析にて求めることが、好適である。
Y(皮膚透明感の推定値)=α+β1*(標準化 皮膚表面のキメ状態評価値)+β2*(標準化 皮膚色の指標値)+β3*(標準化 皮膚表面の夾雑物量)・・・(式1)
また、β1は、好ましくは0.20~0.45、より好ましくは0.21~0.45であることが好ましく、β2は好ましくは0.1~0.36、より好ましくは0.14~0.36であることが好ましく、β3は好ましくは0.1~0.45、より好ましくは0.20~0.45であることが好ましい。
また、本発明の各ステップを実行することによって、対象者の皮膚透明感を推定することができ、この推定値は、目視による皮膚透明感の官能評価と高い相関関係を有するので、皮膚透明感の評価値として、使用することができる。
このため、ある対象者が、皮膚表面のキメ状態評価値、皮膚色の指標値、皮膚表面の夾雑物量から選択される2つ以上を測定し、測定して得られたこのなかの測定値から2つ以上を選択し、本発明の予測モデル又は推定式に適用することにより、対象者の皮膚透明感を評価することができる。この方法であれば、皮膚透明感を、より簡便に、より精度高く、より客観的に評価することができる。
また、本発明における評価する工程において、判断をプログラムや機器の制御部等で容易に行うことができるし、判断を専任の技術評価者が行ってもよい。これは、本発明が、推定モデル又は推定式から得る推定値の基準を、目視による皮膚透明感の評価値の基準と同じにすることができるためである。
〔ステップS11〕:対象者を測定して得られた、皮膚表面のキメ状態評価値、皮膚色の指標値、及び、皮膚表面の夾雑物量から選択される少なくとも1つの測定値を、推定モデル又は推定式に当てはめるために、入力する。当該入力の数として、好ましくは2つの測定値であり、より好ましくは3つの測定値である。
〔ステップS12〕:推定モデル又は推定式から、対象者の皮膚透明感の推定値が得られ、この推定値を、皮膚透明感の評価スコアとして、対象者に通知(例えば画像表示、音声表示等)する。この皮膚透明感の評価の基準は、目視による皮膚透明感の官能評価の基準と同じにする。具体的には、0~4点を0.5点刻みでスコア化(スコアが高いほど透明感は低い)する。これにより、対象者の皮膚透明感の評価スコアを知ることができる。
なお、第一の実施形態の変形例として、対象者が継続的に又は長期間に測定を行い、得られた各測定値が時系列にデータストックされることで、このデータストックに基づき、ステップS11~S12を行い、この結果の一部又は全部を通知する。これにより、対象者は、時系列における皮膚透明感の変化を知ることができる。
〔ステップS21〕:被験物質を塗布する前に、上記第一の実施形態のステップS11及びS12と同じステップを行い、塗布前の皮膚透明感の推定値を得る。評価スコアを記憶部に、塗布前の皮膚透明感の推定値として記憶する。この結果の一部又は全部を、対象者に通知してもよい。
〔ステップS22〕:被験物質を一定期間塗布した以外は、上記第一の実施形態のステップS11及びS12と同じステップを行い、塗布後の皮膚透明感の推定値を得る。評価スコアを記憶部に、塗布後の皮膚透明感の推定値として記憶する。この結果の一部又は全部を、対象者に通知してもよい。
塗布前の皮膚透明感の推定値、及び塗布後の皮膚透明感の推定値の結果の一部又は全部を、対象者に通知して終了してもよい。さらに、以下の〔ステップS23〕以降を実施してもよい。
対比結果(ステップS231)として、推定値が、(塗布前の推定値)>(塗布後の推定値)となった場合には、皮膚透明感が向上した又は改善したと判断する。なお、スコア差が大きいほど、より向上又はより改善と判断してもよい。
対比結果(ステップS232)として、推定値が、塗布前=塗布後となった場合には、皮膚透明感の変化なしと判断する。なお、±0.5は許容範囲として同じと判断することも可能である。
対比結果(ステップS233)として、(塗布前の推定値)<(塗布後の推定値)となった場合には、皮膚透明感が低下した又は悪化したと判断する。なお、スコア差が大きいほど、より低下又はより悪化と判断してもよい。
〔ステップS24〕:ステップS21~S23の各推定値及び判定結果を、対象者に通知(例えば画像表示、音声表示等)する。これにより、対象者の皮膚透明感の評価スコア及び対象者における被験物質の効能の程度を知ることができる。
予め用意した皮膚表面のキメ状態評価値、皮膚色の指標値、皮膚表面の夾雑物量と、官能評価による皮膚透明感評価値との相関関係を示す推定式又は推定モデルに、
対象者を測定して得られる、皮膚表面のキメ状態評価値、皮膚色指標値、及び皮膚表面の夾雑物量を、適用することで、前記対象者の皮膚透明感を推定する工程を含むものである。
前記対象者を測定して得られる皮膚表面のキメ状態評価値は、対象者の皮膚表面のキメ状態評価値を算出する工程により得られることが好適である。
前記対象者を測定して得られる皮膚色指標値は、対象者の皮膚色指標値を算出する工程により得られることが好適である。
前記対象者を測定して得られる皮膚表面の夾雑物量は、対象者の皮膚表面デジタル画像から皮膚表面の夾雑物量を算出する工程により得られることが好適である。
〔1〕
皮膚表面のキメ状態評価値、皮膚色の指標値、及び、皮膚表面の夾雑物量との相関関係に基づいて、皮膚透明感を推定する方法。
〔2〕
皮膚透明感の程度を、皮膚表面のキメ状態評価値、皮膚色の指標値、及び、皮膚表面の夾雑物量との相関関係に基づいて、スコア化し、
得られたスコアに対し、官能評価による皮膚透明感評価値との関係を表す回帰式を用いることを特徴とする、前記〔1〕に記載の皮膚透明感を推定する方法。
〔3〕
以下の工程を含む、前記〔1〕又は〔2〕に記載の皮膚透明感を推定する方法。
予め用意した皮膚表面のキメ状態評価値、皮膚色の指標値、皮膚表面の夾雑物量と、官能評価による皮膚透明感評価値との相関関係を示す式又はモデルに、
対象者の皮膚表面のキメ状態評価値を算出する工程、
対象者の皮膚色指標値を算出する工程、
対象者の皮膚表面デジタル画像から皮膚表面の夾雑物量を算出する工程により、
算出した皮膚表面のキメ状態評価値、皮膚色指標値、及び皮膚表面の夾雑物量を前記式又はモデルに適用することで、前記対象者の皮膚透明感を推定する工程。
〔4〕
前記皮膚表面のキメ状態評価値が、皮膚表面をレプリカ剤に転写し、該レプリカに対し、斜光照明を行うことで、算出した数値であることを特徴とする、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の皮膚透明感を推定する方法。
〔5〕
前記皮膚色の指標値が、分光測色計により、L*a*b*表色系を用いて測定された数値であることを特徴とする、前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の皮膚透明感を推定する方法。
〔6〕
前記皮膚表面の夾雑物量が、皮膚状態のデジタル画像が二値化されることで、算出された数値であることを特徴とする、前記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の皮膚透明感を推定する方法。
〔7〕
前記回帰式が、PLS、MLR、PCR、又はロジスティックより得られた予測式又は予測モデルであることを特徴とする、前記〔2〕~〔6〕のいずれかに記載の皮膚透明感を推定する方法。
健常な日本人女性60名(22~59歳)を被験者として、この被験者を対象に、洗顔後30分後に、表1に示す項目について皮膚状態の機器計測と専任の技術評価者による目視観察を行った。
皮膚透明感評価値を目的変数、皮膚表面のキメ状態評価値、皮膚色の指標値のうちb*値、及び、皮膚表面の夾雑物量として色ムラ値を、説明変数とした。
この重回帰式を、皮膚透明感の推定式とし、この重回帰式のスコアを皮膚透明感の推定値とした。また、上記重回帰分析結果を用いて算出した皮膚透明感推定値と、皮膚透明感評価値の相関関係を示す散布図及び回帰直線を図1に示す。
すなわち、重回帰係数及び図1から、精度高く且つ簡便に皮膚透明感を推定できることが示された。
さらに、この3因子から導き出された推定モデル又は推定式に、新たな対象者が測定して得られた、皮膚表面のキメ状態評価値、皮膚色の指標値のうちb*値、及び、皮膚表面の夾雑物量として色ムラ値から選択される測定値を、適用することで、この対象者の皮膚透明感の推定値を得ることができる。この推定値を、皮膚透明感の評価値とすることができ、この推定値による皮膚透明感の評価は、目視による皮膚透明感の官能評価と高い相関があるため、この官能評価と同等程度に精度高く、この官能評価よりも簡便に、また客観的に、皮膚透明感を評価することができるものである。
Y(皮膚透明感)=2.13+0.22*(標準化 b*値)+0.30*(標準化 皮膚表面のキメ状態評価値)+0.25*(標準化 色ムラ値)・・・(式2)
皮膚透明感に対するさらなる関係性を探索するため、目視による皮膚透明感の官能評価スコアをカテゴリ変数と定義し、判別分析の適用を試みた。判別分析に用いる変数は、重回帰分析により得られた3因子の変数に加え,関係性を仮定した皮膚生理特性値を採用し、線形判別分析を行った(図2)。その結果、得られた判別結果は、重回帰分析と同様に「b*値」「皮膚表面のキメ状態評価値」「色ムラ値」に加えて「ポルフィリンスコア」及び「シワスコア」が主に寄与(正準1)することが確認できた。一方で、スコア2(ふつう)と定義した被験者は、スコア1(ややある)、スコア3(ややない)と比較して、縦軸方向(正準2)へのばらつきが認められ、正準2に寄与する因子は、「肌弾力値」、「b*値」及び「表面均一性スコア」などが選択された。
そこで、解析に用いた被験者の実際の画像で見られる特徴と、判別分析で示された対応する皮膚生理特性値を照合したところ、肌状態が以下のように説明できることが示唆された。
シワスコア及びポルフィリンスコアは、VISIA-CRTM(Canfield社製)を用いて撮影したデジタル画像に対し、内臓ソフトウェアでテンプレートの解析値として得ることができる。
スコア2:ふつう(色ムラや凹凸を反映した僅かな表面形状のなめらかさの喪失による不均一性や,弾力の低下がみられる);
スコア3:ややない(シワやたるみによる影や,ポルフィリンや赤みによる顕著な色ムラが表れる)。
前記〔実施例1〕を行う際に、水分量(舛田勇二,國澤直美,高橋元次,粧技誌,39,201-208 (2005))、シワ目視、皮脂、毛穴、弾力値についても公知の評価方法に基づき、これらの評価を行った。
比較例1として、水分量、シワ目視及び皮脂の3つの因子で解析した結果を図3及び表4に示す。
比較例2として、水分量、毛穴及び弾力値の3つの因子で解析した結果を図4及び表5に示す。
比較例1及び比較例2ともに、3つの因子を使用しても、良好な相関係数には至らなかった。透明感、赤み、キメ、目尻シワ等の視診データ;水分量、TEWL、皮脂、弾力値、明度、赤み、黄み、色素沈着、毛穴、ポリフィリン、夾雑物、キメ、シワ等の機器測定等といった評価項目があることからすると、組み合わせ項目及び組み合わせ数を設定変更することで、高い相関関係を導き出すことは、多大の試行錯誤を要するものであり、技術的困難性を伴うものである。
スコア 1(ややある) ⇒さらなる肌表面滑らかさを向上させるケア。
スコア 2(ふつう) ⇒肌弾力,美白,キメ流れや,毛穴目立ち等に対応した肌表面の均一性を高めるケア。
スコア 3(ややない) ⇒シワ,たるみを伴う表面形状変化,シミやくすみによる中~広域の色むらを改善するケア。
このように、〔実施例〕において皮膚透明感を構成している因子が明らかとなった。本発明を発展又は応用することで、個々人の肌状態に適した透明感向上のケア方法をさらに提案できるであろう。
Claims (7)
- 皮膚表面のキメ状態評価値、L*a*b*表色系を用いる皮膚色の指標値のうちのb*値、及び、皮膚表面のデジタル画像から皮膚表面の夾雑物量として得られる色ムラ値の3つの測定値に基づいて、対象者の皮膚透明感を推定することにより、皮膚透明感を評価する方法。
- 前記皮膚透明感の評価は、
対象者を測定して得られる、皮膚表面のキメ状態評価値、L*a*b*表色系を用いる皮膚色の指標値のうちのb*値、及び、皮膚表面のデジタル画像から皮膚表面の夾雑物量として得られる色ムラ値の3つの測定値に基づいて、
対象者の皮膚透明感の推定値を算出し、当該推定値を用いて行う、請求項1記載の皮膚透明感を評価する方法。 - 前記対象者の皮膚透明感の推定値は、
皮膚透明感の推定値を目的変数とし、
皮膚表面のキメ状態評価値、L*a*b*表色系を用いる皮膚色の指標値のうちのb*値、及び、皮膚表面のデジタル画像から皮膚表面の夾雑物量として得られる色ムラ値の3成分を説明変数に含む重回帰分析を用いて、得られる値である、請求項2記載の皮膚透明感を評価する方法。 - 前記皮膚表面のキメ状態評価値が、皮膚表面をレプリカ剤に転写し、該レプリカに対し、斜光照明を行うことで、算出された数値である、請求項1~3のいずれか一項に記載の皮膚透明感を評価する方法。
- 前記皮膚色の指標値が、分光測色計により、L*a*b*表色系を用いて測定された数値である、請求項1~3のいずれか一項に記載の皮膚透明感を評価する方法。
- 前記色ムラ値が、対象者の皮膚状態のデジタル画像が二値化されることで、皮膚表面の夾雑物量として、算出された数値である、請求項1~3のいずれか一項に記載の皮膚透明感を評価する方法。
- 前記重回帰分析が、PLS、MLR、PCR、又はロジスティックより得られた予測式又は予測モデルである、請求項3に記載の皮膚透明感を評価する方法。
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