(発明の詳細な説明)
一態様では、本発明は、結晶性の(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-ヒドロキシイソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタン酸(I’)に関する。
本発明の化合物I’は、2つのキラル中心を含有し、したがって、このような構造の化合物は、様々な立体異性形態で存在し得る。具体的には、炭素原子は、ある特定の(R,R)、(S,S)、(S,R)、もしくは(R,S)配置を有し得るか、またはこのような配置を有する立体異性形態を豊富に含む。化合物I’は、示され名付けられている通り、(2S,4R)配置である。他に指摘されない限り、より少ない量の他の立体異性体が本発明の組成物中に存在し得るが、ただし、全体としての組成物の有用性はこのような他の異性体の存在により排除されないものとすることを当業者であれば理解されよう。個々の立体異性体は、当技術分野で周知の多くの方法により得ることができるが、これらの方法には、適切なキラルな固定相もしくは担体を使用するキラルクロマトグラフィー、またはこれらをジアステレオ異性体へと化学的に変換し、これらのジアステレオ異性体を従来の手段、例えばクロマトグラフィーもしくは再結晶などで分離し、次いで元の立体異性体を再生することが含まれる。
本発明の化合物I’はネプリライシン(NEP)阻害活性を保有する、すなわち、本化合物は酵素触媒活性を阻害することができる。NEP活性を阻害する化合物の能力の1つの尺度が、阻害定数(pKi)である。pKi値は、10を底とする解離定数(Ki)の負の対数であり、通常、モル単位で報告される。本発明の化合物は、NEPにおいて≧9.0のpKiを有する。化合物I’の他の特性および有用性は、特に、米国特許第9,126,956号に記載されているものを含めた、当業者に周知のインビトロおよびインビボのアッセイを使用して実証することができる。
化合物I’、ならびにその合成に使用される化合物は、同位体標識された化合物、すなわち、1つまたは複数の原子が、主に自然界に見られる原子質量とは異なる原子質量を有する原子を豊富に含む化合物もまた含む。本発明に記載されている化合物に組み込むことができるアイソトープの例は、例えば、これらに限定されないが、2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、35S、36Cl、および18Fなどである。特に興味深いのは、トリチウムまたは炭素-14を豊富に含む化合物I’(これらは、例えば、組織分布研究に使用することができる)、特に代謝の部位において重水素を豊富に含む化合物I’(例えば、より高い代謝安定性を有する化合物をもたらす)、および陽電子を放射するアイソトープ、例えば11C、18F、15Oおよび13Nなどを豊富に含む化合物I’(これらは、例えば、陽電子放射断層撮影法(PET)研究において使用することができる)などである。
化学構造は、本明細書では、ChemDrawソフトウェア(Perkin Elmer,Inc.、Cambridge、MA)で実行される通りのIUPAC規則に従って命名する。
定義
本発明の化合物、組成物、方法およびプロセスを記載する場合、他に指摘されない限り以下の用語は、以下の意味を有する。さらに、本明細書で使用する場合、単数の形態「a」、「an」および「the」は、使用されている文脈が明らかに他を指示していない限り、対応する複数の形態を含む。「含む(comprising)」、「含む(including)」および「有する」という用語は、包括的であることが意図され、列挙した要素以外のさらなる要素も存在し得ることを意味する。本明細書中で使用された成分の量、特性、例えば分子量、反応条件などを表現するすべての数は、他に指摘されない限り、すべての場合において、「約」という用語で修飾されているものと理解されたい。したがって、本明細書中に記述された数は、本発明により得ようとされている所望の特性に応じて異なり得る近似値である。少なくとも、しかも特許請求の範囲の同等物の原理の適用を限定しようと試みることなく、各数は、少なくとも、報告された有効数字を考慮して、かつ普通の丸め技法を適用することによって解釈すべきである。
「約(about)」または「およそ(approximately)」という用語は、化合物I’の熱挙動の文脈で使用する場合、±1~3℃と定義される。「およその(approximate)」という用語は、尿中に排泄された化合物I’の用量%の文脈で使用する場合、通常、標準偏差の約2倍または95パーセント信頼区間の半分の幅である誤差限界によって定義される。本開示の他の領域における「およその」という用語は、1組のデータ値の標準偏差または変動もしくは分散の量を示すのに使用され得る。
本明細書で使用する「制御性放出」という用語は、持続性放出および延長性放出と同義であり、対象において、延長された期間にわたって送達される薬物の量に関する。一般的に、制御性放出錠剤およびカプセル剤は、約8、12、16、および24時間の期間にわたって活性物を対象に放出する。他方、「即時性放出」という用語は、短い期間内、通常、約30分未満で、活性物が対象において放出されることを指す。「遅延性放出」という用語は、所定の期間後に薬学的用量を放出する錠剤およびカプセル剤を対象とする。これらの剤形は、胃での放出は防ぐが腸管での放出は可能とするために、通常、腸溶コーティングされている。
本明細書で使用する場合、「式の」または「式を有する」または「構造を有する」という語句は、限定的であることは意図されておらず、「含む」という用語が一般的に使用されるのと同じように使用される。例えば、1つの構造が描写されている場合、別途述べられていない限り、すべての立体異性体および互変異性体の形態が包含されることを理解されたい。
一般的に、薬学的固体を記載する際、「非溶媒和」という用語は、「溶媒なし」を含意する。したがって、本発明の結晶性形態が「非溶媒和」であると記載されている場合、これは、結晶性粒子が本質的に(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-ヒドロキシイソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタン酸分子のみを含有すること;この形態が、格子を含む他の溶媒分子を有意な量含有していない、または言い換えれば、溶媒が結晶格子に有意に組み込まれていないことを意味する。水が溶媒である場合、「非溶媒和」という用語は、「非水和」という用語と同義である。「無水」という用語は、結晶が、水、特に結晶水を、無視できる程度しか、ないし全く含有していないことを意味する。無視できる量の水は、水を測定できる検出の限界を意味する。例えば、本出願においてKarl Fischer(%w/w)により含水率を測定するには、0.20%w/wの定量化限界(LOQ)があり得る。したがって、化合物I’に見出される水の量は、<LOQまたは<0.20%w/wとして報告されることがある。さらに、吸湿性物質は、吸収または吸着のいずれかによって、その周囲から水を容易に引き寄せる物質である。「非吸湿性」という用語は、その表面に水分を吸着させる、またはその結晶格子に水を吸収する傾向がほとんどないし全くない結晶を記載するのに使用される。
本明細書で使用する「融点」という用語は、固体から液体への相変化に対応する熱転移のため、最大の吸熱熱流が示差走査熱量測定によって観察される温度を意味する。
「薬学的に許容される」という用語は、本発明で使用する場合、生物学的に、または別の点で、許容不可能ではない物質を指す。例えば「薬学的に許容される担体」という用語は、組成物に組み込むことができ、許容できない生物学的作用を引き起こすことなく、または組成物の他の構成成分と許容できない形で相互作用することなく、患者に投与される物質を指す。このような薬学的に許容される物質は通常、毒物学的試験および製造試験の必要とされる基準を満たし、米国食品医薬品局によって適切な不活性成分として特定される物質を含む。
「薬学的に許容される塩」という用語は、患者、例えば哺乳動物などへの投与が許容される塩基または酸から調製した塩を意味する(例えば塩は、所与の投与計画に対して許容される哺乳動物の安全性を有する)。しかし、本発明に包含される塩は、薬学的に許容される塩である必要はないこと、例えば患者への投与を目的としない中間体化合物の塩などであることを理解されたい。薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される無機塩基または有機塩基から、および薬学的に許容される無機酸または有機酸から誘導することができる。さらに、化合物が塩基性部分、例えばアミン、ピリジンまたはイミダゾールなどと、酸性部分、例えばカルボン酸またはテトラゾールなどの両方を含有する場合、双性イオンを形成することができ、これは本明細書で使用する「塩」という用語に含まれる。薬学的に許容される無機塩基から誘導される塩として、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、リチウム塩、マグネシウム塩、マンガン塩、第一マンガン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、および亜鉛塩などが挙げられる。薬学的に許容される有機塩基から誘導される塩として、置換アミン、環式アミン、天然由来のアミンなどを含めた第一級、第二級および第三級アミン、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン(piperazine)、ピペラジン(piperadine)、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩が挙げられる。薬学的に許容される無機酸から誘導される塩として、ホウ酸、炭酸、ハロゲン化水素酸(臭化水素酸、塩化水素酸、フッ化水素酸またはヨウ化水素酸)、硝酸、リン酸、スルファミン酸および硫酸の塩が挙げられる。薬学的に許容される有機酸から誘導される塩として、脂肪族ヒドロキシル酸(例えば、クエン酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、ラクトビオン酸、リンゴ酸、および酒石酸)、脂肪族モノカルボン酸(例えば、酢酸、酪酸、ギ酸、プロピオン酸およびトリフルオロ酢酸)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸およびグルタミン酸)、芳香族カルボン酸(例えば安息香酸、p-クロロ安息香酸、ジフェニル酢酸、ゲンチシン酸、馬尿酸、およびトリフェニル酢酸)、芳香族ヒドロキシル酸(例えば、o-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸、1-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸および3-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸)、アスコルビン酸、ジカルボン酸(例えば、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸およびコハク酸)、グルクロン(glucoronic)酸、マンデル酸、ムチン酸、ニコチン酸、オロト酸、パモン酸、パントテン酸、スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、エジシル酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2,6-ジスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸)、キシナホ酸などの塩が挙げられる。
「治療有効量」という用語は、処置を必要とする患者に投与した場合、処置を実行するのに十分な量、すなわち所望の治療効果を得るのに必要とされる薬物の量を意味する。例えば高血圧を処置するための治療有効量は、例えば、高血圧の症状を減少させる、抑制する、排除する、もしくは予防する、または根底にある高血圧の原因を処置するのに必要とされる化合物の量である。一実施形態では、治療有効量は、血圧を減少させるのに必要とされる薬物の量、または正常な血圧を維持するために必要とされる薬物の量である。他方では、「有効量」という用語は、所望の結果を得るのに十分な量を意味するが、この所望の結果とは、必ずしも治療的結果でなくてもよい。例えば、NEP酵素を含む系を研究する場合、「有効量」は、酵素を阻害するために必要とされる量であってよい。
「処置する」または「処置」という用語は、本明細書で使用する場合、哺乳動物(特にヒト)などの患者における疾患または医学的状態(例えば高血圧)を処置すること、または処置を意味し、以下のうちの1つまたは複数を含む:(a)疾患または医学的状態が生じるのを予防する、すなわち、疾患もしくは医学的状態の再発を予防すること、または疾患もしくは医学的状態になる傾向がある患者の予防的処置;(b)疾患または医学的状態を改善する、すなわち、患者における疾患または医学的状態を排除することまたは退化を引き起こすこと;(c)疾患または医学的状態を抑制すること、すなわち患者における疾患または医学的状態の進行を遅延させるまたは止めること;あるいは(d)患者における疾患または医学的状態の症状を軽減すること。例えば、「高血圧を処置する」という用語では、高血圧が生じるのを予防する、高血圧を改善する、高血圧を抑制する、および高血圧の症状を軽減する(例えば、血圧を低下させる)ことを含むことになる。「対象」または「患者」という用語は、処置もしくは疾患予防を必要とする、または特定の疾患もしくは医学的状態の疾患の予防もしくは処置のために現在処置を受けている、ならびにアッセイにおいて結晶性化合物が評価されている、または使用されている試験対象、例えば動物モデルなどである、ヒトなどの哺乳動物を含むことが意図される。
本明細書中で使用される他のすべての用語は、これらが関連する技術分野の当業者であれば理解されるようなこれらの普通の意味を有することが意図される。
一般的合成手順
本発明の化合物Iの結晶性形態は、容易に入手可能な出発物質から、以下および実施例に記載されている通りに合成することができる。通常のまたは好ましいプロセス条件(すなわち、反応温度、結晶化温度、回数、反応物質のモル比、溶媒、圧力など)が与えられている場合、他に述べられていない限り、他のプロセス条件もまた使用することができることを理解されたい。場合によっては、反応または結晶化は室温で行われ、実際の温度測定は行われなかった。室温は、実験室環境内の周辺温度に一般的に伴う範囲内の温度を意味し、通常約15℃~約30℃、例えば約20℃~約25℃などの範囲であることを理解されたい。他の場合には、反応または結晶化は室温で行い、温度を実際に測定し、記録した。
本発明の方法に記載されている任意のモル比は、当業者に入手可能な様々な方法によって容易に決定することができる。例えば、このようなモル比は、1H NMRによって容易に決定することができる。あるいは、元素分析およびHPLC法を使用して、モル比を決定することができる。
一実施形態では、化合物Iは、(a)ベンジル(2S,4R)-4-アミノ-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-2-メチルペンタノエート塩酸塩を、溶媒中で、およそ1:1のモル比で3-((4-メトキシベンジル)オキシ)イソオキサゾール-5-カルボン酸とカップリングして、ベンジル(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-((4-メトキシベンジル)オキシ)イソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタノエートを得るステップ、および(b)ベンジル(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-((4-メトキシベンジル)オキシ)イソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタノエートを脱保護して、(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-ヒドロキシイソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタン酸(I)を形成するステップにより調製することができる。
一実施形態では、ステップ(a)は、ペプチドカップリング剤および塩基を、およそ1:3:1:1のカップリング剤対塩基対ベンジル(2S,4R)-4-アミノ-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-2-メチルペンタノエート塩酸塩対3-((4-メトキシベンジル)オキシ)イソオキサゾール-5-カルボン酸のモル比で加えるステップをさらに含む。ペプチドカップリング剤の代表的な例として、これらに限定されないが、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TATU)、O-(6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、およびO-[(エトキシカルボニル)シアノメチレンアミノ]-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TOTU)が挙げられる。好ましい実施形態では、ペプチドカップリング剤は、HATU、HBTUおよびHCTUであり、HCTUが最も好ましい。反応において使用することができる塩基の例は、DIPEAである。
別の実施形態では、脱保護ステップ(b)を、パラジウム触媒、例えばパラジウム担持炭素(5%または10%w/w)、および水素ガスを用いて実施する。さらなる実施形態では、以下のステップをステップ(b)の後に実施してもよい。パラジウム触媒を除去し、続いて過酸化水素などの酸化剤を加える。次いで、反応物を約20℃~30℃の間の温度で少なくとも1時間、または好ましくは2時間撹拌してもよい。このステップに続いて、1回または複数回蒸留および洗浄をし、必要に応じて冷却およびエージングをしてから、化合物Iを単離してもよい。
一実施形態では、本発明は、(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-ヒドロキシイソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタン酸の結晶性形態(I’)に関する。別の実施形態では、結晶性形態は、無水、非吸湿性またはその両方である。
結晶性形態I’の調製は、一般的に、適切な不活性希釈剤中で行われ、これらの例として、これらに限定されないが、必要に応じて水を含有する、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、ジクロロメタン、メチルt-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ヘキサンなど、およびこれらの混合物が挙げられる。不活性希釈剤の混合物(溶媒系とも呼ばれる)として、水を加えたアセトン、水を加えたアセトニトリル、エタノールおよび酢酸エチル、酢酸エチルおよびヘキサン、ならびに水を加えた低級アルコール(C1~6アルキル-OH)、例えば、メタノールおよび水と、イソプロパノールおよび水が挙げられる。特に適切な溶媒系として、酢酸エチルおよび水が挙げられる。結晶化の完了時には、結晶性化合物は、沈殿、濾過、濃縮、遠心分離、減圧乾燥などの任意の従来の手段によって、反応混合物から単離することができる。
一実施形態では、結晶性形態I’は、(a)必要に応じて金属捕集剤を含有する、溶媒と共に(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-ヒドロキシイソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタン酸(化合物I)を含む溶液を高い温度で形成するステップ、(b)溶液を約-20℃~5℃の間の温度に冷却するステップ、および(c)得られた固体を単離して、結晶性形態I’を得るステップにより調製することができる。別の実施形態では、本プロセスは、溶液を約-20℃~5℃の間の温度で撹拌するステップまたはかき混ぜるステップをさらに含む。
ステップ(a)は一般的に、極性溶媒中で、室温で行われる。極性溶媒は、プロトン性または非プロトン性であり得、例えば、酢酸エチルと水との混合物、酢酸エチル、またはエタノールが挙げられる。ステップ(a)における高い温度は通常、約60℃~95℃の間、好ましくは70℃~85℃、70℃~80℃、または75℃~85℃の間である。単離ステップ(c)は、濾過するステップ、1種もしくは複数の溶媒で洗浄するステップ、空気中もしくは減圧下で乾燥させるステップ、またはこれらのステップの組合せを含む。化合物I’または結晶性形態I’を減圧下で乾燥させる場合、これは、25℃~70℃の間の、好ましくは30℃~60℃、30℃~50℃、40℃~60℃、または40℃~50℃の間の温度で行ってもよい。
別の実施形態では、本プロセスは、混合物を0℃~30℃の間の温度で少なくとも5分間撹拌してから、温度を約60℃~95℃の間に上昇させるステップをさらに含む。あるいは、撹拌を25℃~35℃の間の温度で少なくとも1時間実施してもよい。
さらに別の実施形態では、混合物をさらに沈降させ、上方の非水相を単離してから、温度を上昇させる。あるいは、混合物を濾過し、すすぎ、容量を減少させてから、温度を上昇させる。
さらに別の実施形態では、上記プロセスのステップ(b)における温度は、独立して-15℃~-5℃の間、あるいは独立して-5℃~5℃の間である。
結晶特性
粉末X線回折(PXRD)分析の分野で周知のように、PXRDパターンの相対ピーク高さは、試料調製および装置の形状に関連するいくつかの要素に依存するが、ピーク位置は、実験の詳細に比較的影響を受けにくい。PXRD、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、および動的水分収着(DMS)評価(水分収着-脱着分析としても公知)を、本明細書に記載されている通りに実施した。
一態様では、本発明は、(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-ヒドロキシイソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタン酸の結晶性形態(I’)に関し、ピーク位置が図1に示すものと実質的に一致するPXRDパターンによって特徴付けられる。
面積で1%より大きい相対強度を有するピークを、以下の表に列挙する。このパターンは、2θが5~35°の範囲において鋭い回折ピークを示す。回折パターンにおけるこれらおよび他のピークを使用して、この形態を特定することができる。
したがって、一実施形態では、結晶性形態I’は、6.51±0.20、11.62±0.20、13.05±0.20、15.07±0.20、および23.28±0.20の2θ値に回折ピークを含むPXRDパターンによって特徴付けられる。
別の実施形態では、結晶性形態I’は、6.51±0.20、11.62±0.20、13.05±0.20、15.07±0.20、17.12±0.20、23.28±0.20、および26.19±0.20の2θ値に回折ピークを含むPXRDパターンによって特徴付けられる。
別の実施形態では、結晶性形態I’は、6.51±0.20、11.62±0.20、13.05±0.20、15.07±0.20、15.72±0.20、17.12±0.20、20.79±0.20、21.10±0.20、23.28±0.20、24.48±0.20、25.81±0.20、および26.19±0.20から選択される2θ値に1つまたは複数の追加の回折ピークを有することによってさらに特徴付けられ、さらに別の実施形態では、結晶性化合物は、3つまたはそれを超えるこのような追加の回折ピークを有することによってさらに特徴付けられる。
一実施形態では、結晶性形態I’は、図2に示すものと実質的に一致するDSCサーモグラムまたは示差走査熱量測定トレースによって特徴付けられる。結晶性形態I’は、毎分10℃の加熱速度で記録した示差走査熱量測定トレースが、約214℃~約218℃の間の温度で吸熱熱流の最大値を示すことによって特徴付けられる。DSCサーモグラムまたは示差走査熱量測定トレースには、約216.1℃にピークを有し、214.2℃で始まり、吸熱下面積が107.2J/gと一致する融解吸熱が示される。化合物の分解は融解と同時に起こり、融解エンタルピーに対する107.2J/gの寄与は確定していない。
一実施形態では、結晶性形態I’は、図3のTGAプロファイルによって特徴付けられる。このプロファイルは約240℃まで質量損失を示さず、およそ242℃の開始で生じる有意な重量損失からわかる通り、結晶化合物は融解後に分解する。分解温度までは質量の追加的損失がなく、このことは水などの吸着分子の欠如を示している。
一実施形態では、結晶性形態I’は、図4のDMS等温線によって特徴付けられる。この形態は、非吸湿性固体である。5%~90%の相対湿度に曝露した場合、観察される合計水分増加は、0.02重量%未満である。2つの連続する収着-脱着サイクル間に、有意なヒステリシスは見出されない。収着-脱着サイクル後に得た固体は、出発物質と同じPXRDパターンを示し、この実験後に形態の変化がないことを示している。これらのデータは、結晶性形態I’が水の存在下で水和形態に変換しないことを示している。結晶性形態I’は非吸湿性のままであり、したがって、無水、非吸湿性またはその両方であると特徴付けることができる。
結晶性形態I’は、この形態が結晶性、複屈折の板状粒子であることを示す、図5のPLM像によって特徴付けることができる。
有用性
対象における薬物挙動のインビトロからインビボへの外挿は、向上し続けている(例えば、Chibaら、AAPS J.、2009年6月、11巻(2号):262~276頁を参照されたい)。本発明では、化合物Iおよび結晶性形態I’のネプリライシン阻害活性を決定するために、インビトロヒトネプリライシン阻害剤活性を評価した。pKi≧9.0の閾値に達した。しかし、対象における化合物Iおよび結晶性形態I’の挙動をより正確に予測するために、追加のインビボ実験をさらに実施した。
インビボ挙動に関しては、必要な治療的利益を達成するのに十分な量の薬物が血漿に送達されるかどうかの評価を行う際に有用であるいくつかの特性、例えば、試験されるすべての種にわたる低い血漿クリアランス、高い経口生物学的利用能、環状グアノシン一リン酸(cGMP)応答の好ましい増強、および腎機能が損なわれている対象のための低い腎クリアランスがある。
本発明については、ラット、イヌ、およびサルの種において経口および静脈内薬動学研究を行って、化合物I、すなわち、化合物I’の可溶性形態の経口生物学的利用能を決定した(アッセイ1)。このアッセイを使用して、これらの化合物についての血漿クリアランスの速度も決定した;低いクリアランス速度は、化合物が循環に残存すると予期される時間、すなわち、そのインビボ安定性および持続性を、関与する個々の排出プロセスを特定することなく予測させるものであると考えられる。
ヒトにおいて薬動学/薬力学研究を行って、化合物Iで得られるネプリライシン阻害のレベルを決定した(アッセイ3)。このアッセイで、環状グアノシン一リン酸(cGMP)のレベルを測定した。cGMPは、ナトリウム利尿ペプチド受容体結合の下流エフェクター分子であり、したがって、ナトリウム利尿ペプチド活性の有効なインビボバイオマーカーとして機能する。動物にネプリライシン阻害剤を投与した場合、プラセボと比較して、cGMPのレベルは増加する。本発明の一実施形態は、高血圧、心不全、または腎疾患を有する対象において、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)またはcGMPの基底レベルを増加させる方法であって、対象に化合物Iまたは結晶性形態I’の治療有効量を投与するステップを含む方法に関する。ANPおよびcGMPのレベルは、対象における尿中もしくは血漿中のいずれか、またはその両方で測定される。別の実施形態では、化合物1または結晶性形態I’の治療有効量を投与した場合、ANPまたはcGMPのレベルは、対象において24時間の期間にわたり少なくとも≧1.1倍、≧1.2倍、≧1.3倍、≧1.4倍、≧1.5倍、≧2倍、≧3倍、≧4倍、または≧5倍に上昇する。別の態様では、本発明は、ヒトの血漿中の環状グアノシン一リン酸の量を増加させるための方法であって、ヒトに、の結晶性遊離酸形態を投与するステップを含む方法に関する。一態様では、本発明は、ヒトにおいて血圧を減少させるステップであって、ヒトに、血圧を減少させる量の(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-ヒドロキシイソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタン酸の結晶性遊離酸形態を投与するステップを含む方法に関する。
溶解して、その可溶性形態、化合物Iとなる結晶性形態I’は、対象において、NEP酵素を阻害し、したがって、NEP阻害に応答して医学的状態の処置および/または予防に対して有用であることが予期されている。したがって、NEP酵素を阻害することによって、またはそのペプチド基質のレベルを増加させることによって処置される疾患または障害に罹患している患者は、化合物Iまたは結晶性形態I’の治療有効量を投与することによって、処置され得ることが予期されている。例えば、NEPを阻害することによって、化合物Iまたは結晶性形態I’は、NEPによって代謝される内因性ペプチド、例えば、ナトリウム利尿ペプチド、ボンベシン、ブラジキニン、カルシトニン、エンドセリン、エンケファリン、ニューロテンシン、物質Pおよび血管作用性腸ペプチドなどの生物学的作用を増強することが予期される。したがって、この化合物は、例えば、腎臓、中枢神経、生殖および消化器系などに対する他の生理学的作用を有すると予期されている。
薬物は、排泄および生体内変換として一般的に分類される様々な排出プロセスによって、対象身体から除去される。排泄は、主に腎臓による、膀胱、尿への、無傷の不揮発性薬物の除去に関連するが、排泄の他の経路として、胆汁(肝臓)、汗、唾液、乳汁(乳汁分泌による)、または他の体液が挙げられる。アルコールおよび気体麻酔剤などの揮発性薬物は、肺を介して呼気へと排泄される。他方では、生体内変換または薬物代謝は、体内で代謝産物へと化学的に変換される薬物に関連し、通常、酵素的プロセスである。これに対する例外は、薬物が非酵素的に化学変化する場合、例えば、エステル加水分解である。薬物の生体内変換に関与する酵素は、主に肝臓に位置する。腎臓、肺、小腸、皮膚などの他の組織もまた、代謝酵素を含む。
薬動学研究を使用して、対象における排出経路、例えば、腎クリアランスを、経時的な尿中の投与された薬物の排泄を介して調査することもできる。ラット、イヌおよびサルの種ならびにヒトにおける、化合物Iの腎排泄を行って、排出経路としての腎排泄を評価した(アッセイ2および4)。この排出経路は、腎機能が損なわれており、腎排泄では最小限しか取り除かれない治療を必要とする対象にとって重要である。一実施形態では、対象における化合物Iまたは結晶性形態I’の腎排泄は、24時間で、投与された用量のおよそ≦15%、≦10%、≦5%、≦3%、≦2%、≦1%、または≦0.5%である。
以下のアッセイのセクションにおいて記載する通り、複数の動物種における血漿クリアランス、経口生物学的利用能、および腎排泄のインビボ決定を行った。化合物Iまたは結晶性形態I’は、疾患の治療に特定の有用性をもたらすことが予期される、高いヒトネプリライシン阻害活性、高い経口生物学的利用能、低い血漿クリアランス、cGMPの増強増加、および低い腎排泄を示した。
心血管疾患
ナトリウム利尿ペプチドおよびブラジキニンのような血管作用性ペプチドの作用を増強することによって、化合物Iおよび結晶形態I’に、心血管疾患などの医学的状態を処置および/または予防することにおいて有用性が見出されると予期されている。例えば、Roquesら、(1993年)Pharmacol. Rev.45巻:87~146頁およびDempseyら、(2009年)Amer. J. of Pathology、174巻(3号):782~796頁を参照されたい。特に興味深い心血管疾患として、高血圧および心不全が挙げられる。高血圧は、例示として、これらに限定されずに、以下が挙げられる:原発性高血圧(これはまた本態性高血圧または特発性高血圧とも呼ばれる);続発性高血圧;付随的腎疾患を伴う高血圧;付随的腎疾患を伴う、または伴わない重症の高血圧;肺高血圧(肺動脈高血圧を含む);および治療抵抗性高血圧。心不全は、例示として、これらに限定されずに、以下が挙げられる:うっ血性心不全;急性心不全;慢性心不全、例えば左室駆出率の減少を有するもの(収縮期心不全とも呼ばれる)または左室駆出率が保たれているもの(拡張期心不全ともと呼ばれる);ならびに急性および慢性の非代償性心不全。したがって、本発明の一実施形態は、患者に化合物Iまたは結晶形態I’の治療有効量を投与することを含む、高血圧、特に原発性高血圧、肺動脈高血圧、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)、または腎動脈狭窄を伴う高血圧を処置する方法に関する。
原発性高血圧の処置に関して、治療有効量は通常、患者の血圧を低下させるのに十分な量である。一態様では、本発明は、ヒトにおいて血圧を減少させるステップであって、ヒトに、血圧を減少させる量の(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-ヒドロキシイソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタン酸の結晶性遊離酸形態を投与するステップを含む方法に関する。これは、軽度から中等度の高血圧および重症の高血圧の両方の処置を含む。高血圧を処置するために使用する場合、化合物Iまたは結晶形態I’は、他の治療剤、例えばアルドステロンアンタゴニスト、アルドステロンシンターゼ阻害剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤および二重作用性アンジオテンシン変換酵素/ネプリライシン阻害剤、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)アクチベーターおよび刺激物質、アンジオテンシン-IIワクチン、抗糖尿病剤、抗脂質剤、抗血栓剤、AT1受容体アンタゴニストおよび二重作用性AT1受容体アンタゴニスト/ネプリライシン阻害剤、β1-アドレナリン受容体アンタゴニスト、二重作用性β-アドレナリン受容体アンタゴニスト/α1-受容体アンタゴニスト、カルシウムチャネル遮断剤、利尿剤、エンドセリン受容体アンタゴニスト、エンドセリン変換酵素阻害剤、ネプリライシン阻害剤、ナトリウム利尿ペプチドおよびこれらの類似体、ナトリウム利尿ペプチドクリアランス受容体アンタゴニスト、一酸化窒素ドナー、非ステロイド性抗炎症剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤(具体的にはPDE-V阻害剤)、プロスタグランジン受容体アゴニスト、レニン阻害剤、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激物質およびアクチベーターならびにこれらの組合せなどと組み合わせて投与することができる。本発明の1つの特定の実施形態では、本発明の化合物は、AT1受容体アンタゴニスト、カルシウムチャネル遮断剤、利尿剤、またはこれらの組合せと組み合わせて、原発性高血圧を処置するために使用される。本発明の別の特定の実施形態では、本発明の化合物は、AT1受容体アンタゴニストと組み合わせて、付随的腎疾患を伴う高血圧を処置するために使用される。治療抵抗性高血圧を処置するために使用する場合、本化合物は、アルドステロンシンターゼ阻害剤などの他の治療剤と組み合わせて投与することができる。
肺動脈高血圧の処置に関して、治療有効量は通常、肺血管の抵抗性を低下させるのに十分な量である。療法の他の目的は、患者の運動能力を改善することである。例えば、臨床的な状況では、治療有効量は、6分間の間快適に歩行するように(約20~40メートルの距離にわたり)患者の能力を改善する量とすることができる。肺動脈高血圧を処置するために使用する場合、化合物Iまたは結晶形態I’は、他の治療剤、例えばα-アドレナリン受容体アンタゴニスト、β1-アドレナリン受容体アンタゴニスト、β2-アドレナリン受容体アゴニスト、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、抗凝血剤、カルシウムチャネル遮断剤、利尿剤、エンドセリン受容体アンタゴニスト、PDE-V阻害剤、プロスタグランジン類似体、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、およびこれらの組合せと組み合わせて投与することができる。本発明の1つの特定の実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、PDE-V阻害剤または選択的セロトニン再取り込み阻害剤と組み合わせて、肺動脈高血圧を処置するために使用される。
慢性血栓塞栓性肺高血圧の処置に関して、治療有効量は、対象において肺塞栓症が形成されているか否かにかかわらず、通常、肺動脈において血圧を減少させるのに十分な量である。
さらに、腎動脈狭窄を伴う高血圧の処置に関して、治療有効量は、通常、血圧を低下させるのに十分な量である。腎動脈狭窄を有する対象に関して、動脈は、アテローム性動脈硬化症に起因して狭窄している。次に、これにより身体は、腎臓に達する血液が少なくなっていることを検知し、これを低血圧であると解釈し、次に、血圧を上げるためのホルモンの放出をシグナル伝達する。時間の経過と共に、これは腎不全につながる可能性がある。
本発明の別の実施形態は、患者に化合物Iまたは結晶形態I’の治療有効量を投与することを含む、心不全、特にうっ血性心不全(心臓収縮期と心臓拡張期の両方のうっ血性心不全を含む)を処置するための方法に関する。通常、治療有効量は、血圧を低下させ、そして/または腎機能を改善するのに十分な量である。臨床的な状況において、治療有効量は、心臓の血流力学を改善する、例えば楔入圧、右心房圧、充満圧、および血管抵抗性における減少などに十分な量とすることができる。一実施形態では、化合物は静脈内投与形態として投与される。心不全を処置するために使用する場合、化合物Iまたは結晶形態I’は、他の治療剤、例えばアデノシン受容体アンタゴニスト、進行糖化終末産物ブレーカー、アルドステロンアンタゴニスト、AT1受容体アンタゴニスト、β1-アドレナリン受容体アンタゴニスト、二重作用性β-アドレナリン受容体アンタゴニスト/α1-受容体アンタゴニスト、キマーゼ阻害剤、ジゴキシン、利尿剤、エンドセリン変換酵素(ECE)阻害剤、エンドセリン受容体アンタゴニスト、ナトリウム利尿ペプチドおよびこれらの類似体、ナトリウム利尿ペプチドクリアランス受容体アンタゴニスト、一酸化窒素ドナー、プロスタグランジン類似体、PDE-V阻害剤、可溶性グアニル酸シクラーゼアクチベーターおよび刺激物質、ならびにバソプレッシン受容体アンタゴニストなどと組み合わせて投与することができる。本発明の1つの特定の実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、アルドステロンアンタゴニスト、β1-アドレナリン受容体アンタゴニスト、AT1受容体アンタゴニスト、または利尿剤と併用し、うっ血性心不全を処置するために使用される。
下痢
NEP阻害剤として、化合物Iまたは結晶形態I’は、内因性エンケファリンの分解を阻害することが予期され、したがってこのような化合物に、伝染性および分泌性/水様性の下痢を含めた下痢の処置に対しても有用性を見出すことができる。例えば、Baumerら、(1992年)Gut、33巻:753~758頁;Farthing(2006年)Digestive Diseases、24巻:47~58頁;およびMarcais-Collado(1987年)Eur. J. Pharmacol.144巻(2号):125~132頁を参照されたい。下痢を処置するために使用する場合、化合物Iまたは結晶形態I’は、1つまたは複数の追加の止瀉薬と併用することができる。
腎疾患
ナトリウム利尿ペプチドおよびブラジキニンなどの血管作用性ペプチドの作用を増強させることによって、化合物Iまたは結晶性形態I’に、腎機能を向上させ(Chenら、(1999年)Circulation 100巻:2443~2448頁;Lipkinら、(1997年)Kidney Int. 52巻:792~801頁;およびDussauleら、(1993年)Clin. Sci. 84巻:31~39頁を参照されたい)、腎障害のある対象における腎疾患の処置および/または予防における有用性を見出すことが予期されている。特に興味深い腎疾患として、糖尿病性腎症、慢性腎疾患、タンパク質尿、および特に急性腎臓傷害(例えば、心血管手術、化学療法、または医学的画像撮影における造影染料の使用により引き起こされる)または急性腎不全が挙げられる(Sharkovskaら、(2011年)Clin. Lab. 57巻:507~515頁およびNewazら、(2010年)Renal Failure 32巻:384~390頁を参照されたい)。特に興味深い他の腎疾患として、ネフローゼ症候群、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)および多発性嚢胞腎疾患(PKD)が挙げられる。
慢性腎臓病(CKD)を有する、腎障害のある対象は、National Kidney Foundation Kidney Disease Outcomes Quality Initiative(NKF KDOQI)ガイドラインに従って分類することができる。慢性腎臓病、すなわち、3ヶ月間以上の腎臓損傷または糸球体濾過量(GFR)60mL/分/1.73m2未満が確定されたら、疾患の段階を、KDOQI CKD分類に従って割り当てることができる。これらには、ステージ1(GFRが正常または増加している腎臓損傷):GFR≧90;ステージ2(GFRが軽度に低下している腎臓損傷):GFR60~89;ステージ3(GFRの中程度の低下):GFR30~59;ステージ4(GFRの重度の低下):GFR15~29;およびステージ5(腎不全):GFR<15(または透析)が含まれる。GFRは、mL/分/1.73m2の単位で定義される。
一実施形態は、腎障害のある対象を処置する方法であって、化合物Iまたは結晶性形態I’の治療有効量を投与するステップを含む方法を含む。この方法は、高血圧または心不全を有する腎障害のある対象を処置するステップをさらに含む。腎疾患を処置するために使用する場合、化合物Iまたは結晶性形態I’は、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、AT1受容体アンタゴニスト、および利尿剤などの他の治療剤と組み合わせて投与してもよい。
別の実施形態は、推定糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2~15mL/分/1.73m2の間である慢性腎臓病を有する腎障害のある対象を処置する方法であって、患者に化合物Iまたは結晶性形態I’の治療有効量を投与するステップを含む方法を含む。別の実施形態は、推定糸球体濾過量(eGFR)≧90mL/分/1.73m2(ステージ1)またはeGFR<15mL/分/1.73m2(ステージ5)である慢性腎臓病を有する腎障害のある対象を処置する方法であって、患者に化合物Iまたは結晶性形態I’の治療有効量を投与するステップを含む方法を含む。本発明の目的のために、重度の腎臓病は、eGFR<30mL/分/1.73m2として分類することができる。さらに別の実施形態には、ステージ1、ステージ2、ステージ3、ステージ4、ステージ5として、またはこれらのステージの1つもしくは複数を網羅するeGFR範囲として分類される慢性腎臓病を有する腎障害のある対象を、化合物Iまたは結晶性形態I’で処置する方法が含まれる。
予防療法
ナトリウム利尿ペプチドの作用を増強させることによって、化合物1はまた、予防療法において、ナトリウム利尿ペプチドの抗肥大性および抗線維性作用により(Potterら、(2009年)Handbook of Experimental Pharmacology、191巻:341~366頁を参照されたい)、例えば心筋梗塞後の心機能不全の進行を予防すること、血管形成後の動脈再狭窄を予防すること、血管手術後の血管壁の増粘を予防すること、アテローム性動脈硬化症を予防すること、および糖尿病の脈管症を予防することにおいて有用であることも予期されている。
緑内障
ナトリウム利尿ペプチドの作用を増強させることによって、化合物Iまたは結晶形態I’は、緑内障を処置するのに有用であると予期されている。例えば、Diestelhorstら、(1989年)International Ophthalmology、12巻:99~101頁を参照されたい。緑内障を処置するために使用する場合、化合物1は、1つまたは複数の追加の抗緑内障剤と併用することができる。
疼痛緩和
NEP阻害剤として、化合物Iまたは結晶形態I’は、内因性エンケファリンの分解を阻害すると予期されており、したがってこのような化合物に、鎮痛剤としての有用性を見出すこともできる。例えば、Roquesら、(1980年)Nature、288巻:286~288頁およびThanawalaら、(2008年)Current Drug Targets、9巻:887~894頁を参照されたい。疼痛を処置するために使用する場合、化合物Iまたは結晶形態I’は、1つまたは複数の追加の抗侵害受容性薬物、例えばアミノペプチダーゼNまたはジペプチジルペプチダーゼIII阻害剤、非ステロイド性抗炎症剤、モノアミン再取り込み阻害剤、筋弛緩剤、NMDA受容体アンタゴニスト、オピオイド受容体アゴニスト、5-HT1Dセロトニン受容体アゴニストおよび三環式抗うつ剤などと併用することができる。
他の有用性
これらのNEP阻害特性に起因して、化合物Iまたは結晶形態I’はまた、鎮咳剤として有用であることも予期され、ならびに肝硬変に伴う門脈圧亢進症(Sansoeら、(2005年)J. Hepatol.43巻:791~798頁を参照されたい)、がん(Vesely、(2005年)J. Investigative Med.53巻:360~365頁を参照されたい)、うつ病(Nobleら、(2007年)Exp. Opin. Ther. Targets、11巻:145~159頁を参照されたい)、月経障害、早期陣痛、子癇前症、子宮内膜症、繁殖障害(例えば、男性および女性の不妊、多嚢胞性卵巣症候群、着床不全)、ならびに男性の勃起不全および女性の性的興奮障害を含めた男性および女性の性機能不全の処置における有用性が見出されている。さらに具体的には、化合物Iまたは結晶形態I’は、女性の性機能不全を処置するのに有用であると予期されており(Prydeら、(2006年)J. Med. Chem.49巻:4409~4424頁を参照されたい)、この性機能不全とは、多くの場合、女性患者が、性的表現に満足を見出すことが困難であること、またはできないことと定義される。性機能不全は、様々な多様な女性の性的疾患をカバーし、例示として、これらに限定されずに、性的欲求低下障害、性的興奮障害、オルガスム障害および性的疼痛障害が挙げられる。このような疾患、特に女性の性機能不全を処置するために使用する場合、本発明の化合物は、以下の第2の剤のうちの1つまたは複数と併用してもよい:PDE-V阻害剤、ドーパミンアゴニスト、エストロゲン受容体アゴニストおよび/またはアンタゴニスト、アンドロゲン、ならびにエストロゲン。これらのNEP阻害特性に起因して、化合物Iまたは結晶形態I’はまた、抗炎症特性を有することが予期され、よって、特にスタチンと組み合わせて使用する場合、有用性を有することが予期される。
最近の研究は、NEPがインスリン分泌低下型糖尿病および食生活誘発性肥満において神経機能を調整する役割を果たしていることを示唆している。Coppeyら、(2011年)Neuropharmacology、60巻:259~266頁。したがって、これらのNEP阻害特性に起因して、化合物Iまたは結晶形態I’はまた、糖尿病または食生活誘発性肥満により引き起こされる神経機能障害に対する保護を提供するのに有用であると予期されている。
化合物Iまたは結晶形態I’の1回あたり投与される量または一日あたり投与される総量は、既定であってもよいし、または患者の状態の性質および重症度、処置を受けている状態、患者の年齢、体重、および全般的健康状態、活性剤に対する患者の耐性、投与経路、薬理学的考慮、例えば投与される化合物および任意の第2の剤の活性、効力、薬動学および毒性学プロファイルなどを含めた多くの要素を考慮に入れることによって、個々の患者ベースで決定してもよい。疾患または医学的状態(例えば高血圧など)に罹患している患者の処置は、既定の用量または処置する医師によって決定された用量を用いて開始することができ、疾患または医学的状態の症状を予防、改善、抑制、または軽減するのに必要な一時期の間継続することになる。このような処置を受ける患者は通常、日常的にモニターすることによって、療法の有効性を決定する。例えば、高血圧の処置において、血圧測定を使用することによって、処置の有効性を決定することができる。本明細書中に記載されている他の疾患および状態に対する同様の指標は、周知であり、処置する医師にとっては容易に入手可能である。医師による連続的なモニタリングによって、化合物Iまたは結晶形態I’の最適な量が任意の所定の時間に投与されること、ならびに処置期間の決定が促進されることが保証される。第2の剤も投与される場合には、これらの選択、用量、および療法の期間の調整が必要とされることもあるので、これが特に重要となる。こうして、処置レジメンおよび投薬計画は、所望の有効性を示す最低量の活性剤が投与され、さらに、疾患または医学的状態の処置を成功させるのに必要な期間だけ投与が継続するように、療法コースにわたって調整することができる。
化合物Iは、例えば結晶性形態I’を含めた化合物Iの結晶性形態の調製に有用な中間体としても有用性がある。
リサーチツール
化合物Iまたは結晶形態I’は、NEP酵素阻害活性を有するので、これらは、NEP酵素を有する生物学的系または試料を調査または研究する、例えば、NEP酵素またはそのペプチド基質がある役割を果たしている疾患を研究するためのリサーチツールとしても有用である。NEP酵素を有する任意の適切な生物学的系または試料を、インビトロまたはインビボのいずれかで行うことができるような研究において利用することができる。このような研究に対して適切な代表的な生物学的系または試料として、これらに限定されないが、細胞、細胞抽出物、原形質膜、組織試料、単離した器官、哺乳動物(例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ブタ、ヒトなど)などが挙げられ、哺乳動物が特に興味深い。本発明の1つの特定の実施形態では、哺乳動物におけるNEP酵素活性は、化合物Iまたは結晶形態I’のNEP阻害量を投与することによって阻害される。
リサーチツールとして使用する場合、通常、NEP酵素を含む生物学的系または試料を、化合物Iまたは結晶形態I’のNEP酵素阻害量と接触させる。生物学的系または試料を化合物に曝露した後、従来の手順および機器を使用して、例えば結合アッセイで受容体結合を測定することにより、または機能アッセイでリガンドが媒介する変化を測定することにより、NEP酵素を阻害する作用を判定する。曝露は、細胞または組織を化合物に接触させること、例えばi.p.、p.o、i.v.、s.c.、または吸入による投与などにより化合物を哺乳動物に投与することを包含する。この判定ステップは、応答(定量分析)を測定するステップを含むことができるか、または観察(定性分析)を行うステップを含むことができる。応答を測定するステップは、例えば、従来の手順および機器、例えば酵素活性アッセイなどを使用して生物学的系または試料に対する化合物の作用を判定すること、ならびに機能アッセイで酵素基質または生成物が媒介する変化を測定することなどを含む。アッセイの結果を使用して、活性レベルならびに所望の結果を達成するのに必要な化合物の量、すなわち、NEP酵素阻害量を判定することができる。通常、この判定ステップは、NEP酵素を阻害する作用を判定することを含むことになる。
さらに、化合物Iまたは結晶性形態I’は、他の化学物質を評価するためのリサーチツールとして使用することができ、したがって、例えば、NEP阻害活性を有する新規化合物を発見するためのスクリーニングアッセイにおいても有用である。このように、化合物Iまたは結晶性形態I’は、アッセイにおいて標準として使用されることによって、試験化合物を用いて、および化合物Iまたは結晶性形態I’を用いて得た結果を比較して、もしある場合には、ほぼ等しいまたは優れた活性を有するような試験化合物を特定することを可能にする。例えば、試験化合物または試験化合物群のpKiデータを、化合物Iまたは結晶性形態I’のpKiデータと比較して、所望の特性を有するような試験化合物、例えば、本発明の化合物と等しいか、またはより優れたpKi値を有する試験化合物を特定する。本発明のこの態様は、興味深い試験化合物を特定するための、比較データの生成(適当なアッセイを使用して)と、試験データの分析との両方を別々の実施形態として含む。したがって、試験化合物は、生物学的アッセイにおいて、(a)試験化合物を用いて生物学的アッセイを行って、第1のアッセイ値を得るステップと、(b)化合物Iまたは結晶性形態I’を用いて生物学的アッセイを行って、第2のアッセイ値を得るステップと、(c)ステップ(a)で得た第1のアッセイ値を、ステップ(b)で得た第2のアッセイ値と比較するステップとを含み、ステップ(a)が、ステップ(b)の前もしくは後、またはそれと同時に行われる方法によって、評価することができる。典型的な生物学的アッセイは、NEP酵素阻害アッセイを含む。
本発明のさらなる別の態様は、NEP酵素を含む生物学的系または試料を研究する方法であって、(a)前記生物学的系または試料を化合物Iまたは結晶形態I’に接触させるステップと、(b)生物学的系または試料に対する、前記化合物により引き起こされた作用を決定するステップとを含む方法に関する。
薬学的組成物および製剤
化合物Iまたは結晶形態I’は通常、薬学的組成物または製剤の形態で患者に投与される。このような薬学的組成物は、これらに限定されないが、経口、直腸、経膣、鼻、吸入、局所用(経皮的を含む)、眼、および非経口モードの投与を含めた、任意の許容される投与経路で患者に投与され得る。さらに、化合物Iまたは結晶形態I’は、例えば経口的に、一日あたり複数回投与(例えば、毎日、2、3、または4回)するか、一日量を単回で投与するか、または週間用量を単回で投与することができる。特定のモードの投与に対して適切な化合物Iまたは結晶形態I’の任意の形態(すなわち、遊離塩基、遊離酸、薬学的に許容される塩、溶媒和物など)が、本明細書中で考察された薬学的組成物で使用することができることを理解されたい。
したがって、一実施形態では、本発明は、薬学的に許容される担体および化合物1を含む薬学的組成物に関する。組成物は、所望する場合、他の治療剤および/または配合剤を含有してもよい。組成物を考察する場合、「化合物Iまたは結晶形態I’」はまた、本明細書中で「活性剤」として言及されてもよく、製剤の他の成分、例えば担体などからこれを区別することもできる。したがって、「活性剤」という用語は、化合物Iまたは結晶形態I’ならびにその薬学的に許容される塩を含むことを理解されたい。
本発明の薬学的組成物は通常、化合物Iまたは結晶形態I’の治療有効量を含有する。しかし、当業者であれば、薬学的組成物は、例えばバルク組成物などは、治療有効量よりも多い量を含有してもよく、または治療有効量よりも少ない量、すなわち、複数の投与により治療有効量を達成するように計画されている個々の単位用量を含有してもよいことを認識されよう。通常、組成物は、約0.01~99重量%の活性剤を含有することになり、実際の量は、製剤それ自体、投与経路、投薬頻度などに依存する。一実施形態では、経口投与剤形に対して適切な組成物は、例えば、約10~99重量%、または約50~99重量%の活性剤を含有してもよい。
任意の従来の担体または賦形剤を、本発明の薬学的組成物に使用することができる。ある特定の担体もしくは賦形剤、または担体もしくは賦形剤の組合せの選択は、ある特定の患者または種類の医学的状態もしくは疾患状態を処置するために使用されている投与の形式に依存することになる。この点について、ある特定の形式の投与に対して適切な組成物の調製は、十分に薬学的技術分野の当業者の範囲内にある。さらに、このような組成物において使用される担体または賦形剤は市販されている。さらなる例示として、従来の製剤技法は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Lippincott Williams & White、Baltimore、Maryland(2000年);およびH. C. Anselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第7版、Lippincott Williams & White、Baltimore、Maryland(1999年)に記載されている。
薬学的に許容される担体として機能できる物質の代表的な例として、これらに限定されないが、以下が挙げられる:糖、例えばラクトース、グルコースおよびスクロースなど;デンプン、例えばコーンスターチおよびジャガイモデンプンなど;セルロース、例えば微結晶性セルロース、およびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなど;脂肪酸塩、例えばステアリン酸マグネシウムなど;粉末トラガント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばココアバターおよび坐剤ワックスなど;油、例えばピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油など;グリコール、例えばプロピレングリコール;ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなど;エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなど;寒天;緩衝剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなど;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張生理食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール;リン酸塩緩衝液;圧縮された噴霧剤気体、例えばクロロフルオロ炭素およびヒドロフルオロカーボンなど;ならびに薬学的組成物に利用される他の無毒性の相容性物質。
本発明の一実施形態では、薬学的に許容される担体は、ステアリン酸マグネシウムである。例えば、薬学的組成物は、化合物Iまたは結晶性形態I’とステアリン酸マグネシウムとを、約3:1~約10:1の化合物Iまたは結晶性形態I’対ステアリン酸マグネシウムの比率で含んでもよい。化合物Iまたは結晶性形態I’対ステアリン酸マグネシウムの他の比率として、これらに限定されないが、1:1、5:1、15:1、20:1、25:1、30:1、および50:1が挙げられる。別の実施形態では、化合物Iまたは結晶性形態I’対ステアリン酸マグネシウムの量は、重量%として表現されてもよい。例えば、薬学的組成物は、99重量%の化合物Iまたは結晶性形態I’と1重量%のステアリン酸マグネシウムとから構成されてもよい。別の実施形態では、化合物Iまたは結晶性形態I’対ステアリン酸マグネシウムの重量比は、それぞれ85:15~99:1の間である。好ましい実施形態では、化合物Iまたは結晶性形態I’対ステアリン酸マグネシウムの重量比は、95:5~99:1の間、好ましくは99:1である。
薬学的組成物は通常、活性剤と、薬学的に許容される担体および1つまたは複数の任意の成分とを、十分におよび密に混合またはブレンドすることによって調製する。次いで、生成された、均一にブレンドされた混合物は、従来の手順および機器を使用して、錠剤、カプセル剤、丸剤、キャニスター、カートリッジ、ディスペンサーなどへと成形または充填することができる。
一実施形態では、薬学的組成物は、経口投与に対して適切である。経口投与に対して適切な組成物は、カプセル剤、錠剤、丸剤、ロゼンジ剤、カシェ剤、糖衣錠、散剤、粒剤;水性または非水性の液体中の溶液または懸濁液;水中油型または油中水型の液体エマルジョン;エリキシル剤またはシロップ剤などの形態であってよく、それぞれが既定の量の活性剤を含有する。
固形剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤など)での経口投与を目的とする場合、組成物は通常、活性剤と、1つまたは複数の薬学的に許容される担体、例えばクエン酸ナトリウム、第二リン酸カルシウムまたはステアリン酸マグネシウムなどを含むことになる。固形剤形はまた、以下を含んでもよい:充填剤または増量剤、例えばデンプン、微結晶性セルロース、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸など;バインダー、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシアなど;保湿剤、例えばグリセロールなど;崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、および/または炭酸ナトリウムなど;溶解遅延剤、例えばパラフィンなど;吸収促進剤、例えば第四級アンモニウム化合物など;湿潤剤、例えばセチルアルコールおよび/またはモノステアリン酸グリセロールなど;吸収剤、例えばカオリンおよび/またはベントナイト粘土など;滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、および/またはこれらの混合物など;着色剤;ならびに緩衝剤。本発明の目的では、「薬学的に許容される担体」という用語には、上記の担体、充填剤または増量剤、バインダー、保湿剤、溶解遅延剤、湿潤剤、吸収剤、滑沢剤、着色剤、緩衝剤などのすべての用語が含まれる。
剥離剤、湿潤剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および芳香剤、保存剤ならびに抗酸化剤もまた薬学的組成物中に存在し得る。錠剤、カプセル剤、丸剤などに対する典型的コーティング剤として、腸溶コーティングに対して使用されるもの、例えば酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸-メタクリル酸エステルコポリマー、トリメリト酸酢酸セルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートなどが挙げられる。薬学的に許容される抗酸化剤の例として、以下が挙げられる:水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;油溶性抗酸化剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、レシチン、没食子酸プロピル、αトコフェロールなど;および金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ソルビトール、酒石酸、リン酸など。
組成物はまた、例として、様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロースまたは他のポリマーマトリクス、リポソームおよび/もしくはミクロスフェアなどを使用して、活性剤の徐放性または制御性放出を提供するように製剤化され得る。さらに、本発明の薬学的組成物は、乳白剤を含有してもよく、また、本発明の薬学的組成物は、活性剤を、消化管の特定の部分のみでまたはそこで優先的に、必要に応じて遅延型の形式で放出するように製剤化されてもよい。使用することができる包埋組成物の例として、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。活性剤はまた、必要に応じて1つまたは複数の上記賦形剤を用いてマイクロカプセル化した形態にすることもできる。
本発明の一実施形態は、カプセル剤、錠剤、液体剤、または懸濁液剤中に化合物Iまたは結晶性形態I’を含む経口投与剤形を含む。本発明の別の実施形態は、対象における化合物Iまたは結晶性形態I’の放出が、即時性放出、制御性放出、または遅延性放出である経口投与剤形に関する。カプセル剤を経口投与剤形として使用する場合、別の実施形態は、ゼラチン、多糖類、または合成ポリマーからなるカプセル剤を含む。ある特定の実施形態では、カプセル剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。
本発明による適切なカプセル材料は、ゼラチン、セルロース誘導体、デンプン、デンプン誘導体、キトサン、および合成プラスチックから選択される。ゼラチンをカプセル材料として使用する場合、これはポリエチレングリコール(PEG)、グリセロール、ソルビトール、ポリプロピレングリコール、PEO-PPOブロックコポリマー、ならびに他のポリアルコールおよびポリエーテルから選択される他の添加剤と混合して使用することができる。セルロース誘導体をカプセル材料として使用する場合、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースが、好ましいポリマーである。合成プラスチックをカプセル材料として使用する場合、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、およびポリエチレンテレフタレートが、好ましい材料である。特に好ましいのは、ポリエチレン、ポリカーボネート、またはポリエチレンテレフタレートである。
経口投与に対して適切な液体剤形は、例示として、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。液体剤形は通常、活性剤と不活性希釈剤、例えば水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(例えば綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物を含む。懸濁液は、懸濁剤、例えばエトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロオキシド、ベントナイト、寒天およびトラガント、ならびにこれらの混合物を含有してもよい。
経口投与を目的とする場合、本発明の薬学的組成物は、単位剤形で包装されていてもよい。「単位剤形」という用語は、患者への投薬に対して適切な物理的に別個の単位を指し、すなわち、各単位が、単独で、または1つもしくは複数の追加の単位と組み合わせて、所望の治療効果が生じるように計算された既定の量の活性剤を含有している。例えば、このような単位剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤などであってよい。
別の実施形態では、本発明の組成物は、吸入による投与に対して適切であり、通常エアゾール剤または散剤の形態である。このような組成物は一般的に、周知のデリバリーデバイス、例えばネブライザー、ドライパウダー、または計量式吸入器などを使用して投与される。ネブライザーデバイスは、高速の空気の流れを生成し、これにより組成物がミストとして噴霧され、このミストが患者の呼吸器内へ運ばれる。典型的なネブライザー製剤は、担体に溶解して溶液を形成する活性剤、または微粉化され、担体と混合されて、呼吸に適したサイズの微粉化粒子の懸濁液を形成する活性剤を含む。ドライパウダー吸入器は、自由流動性粉末として活性剤を投与するが、この自由流動性粉末は吸息の間に患者の空気流の中に分散する。典型的なドライパウダー製剤は、ラクトース、デンプン、マンニトール、デキストロース、ポリ乳酸、ポリ乳酸-co-グリコリド、およびこれらの組合せなどの賦形剤とドライブレンドした活性剤を含む。計量式吸入器は、圧縮された噴霧剤気体を使用して測定した量の活性剤を放出する。典型的な定量製剤は、液化性噴霧剤、例えばクロロフルオロ炭素またはヒドロフルオロアルカンなどの中に活性剤の溶液または懸濁液を含む。このような製剤の任意の構成成分は、共溶媒、例えばエタノールまたはペンタンなど、ならびに界面活性剤、例えばトリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸、レシチン、グリセリン、およびラウリル硫酸ナトリウムなどを含む。このような組成物は通常、冷却または加圧したヒドロフルオロアルカンを、活性剤、エタノール(存在する場合)および界面活性剤(存在する場合)を含有する適切な容器に加えることによって調製する。懸濁液を調製するため、活性剤を、微粉化し、次いで噴霧剤と合わせる。あるいは、懸濁液製剤は、界面活性剤のコーティングを、活性剤の微粉化した粒子上にスプレー乾燥することによって調製することもできる。次いでこの製剤を、吸入器の一部を形成するエアゾールキャニスターに充填する。
化合物Iまたは結晶形態I’およびそれらの組成物はまた、非経口的(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、または腹腔内注射)に投与することができる。このような投与に関して、活性剤は、無菌溶液、懸濁液、またはエマルジョン中で提供される。このような製剤を調製するための典型的な溶媒として、水、生理食塩水、電解液、低分子量アルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、油、アミノ酸、ゼラチン、糖、脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルなどが挙げられる。非経口製剤はまた、1つまたは複数の抗酸化剤、可溶化剤、安定剤、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤を含有してもよい。界面活性剤、追加の安定化剤またはpH調整剤(酸、塩基または緩衝剤)および抗酸化剤は、製剤に安定性を提供する、例えば、化合物中に存在し得るエステルおよびアミド結合の加水分解を最小限に抑えるかまたは回避するのに、特に有用である。これらの製剤は、無菌注射用媒体、滅菌剤、濾過、照射、または熱の使用により無菌にすることができる。
生理学的に許容される代表的な水性担体には、例として、注射用滅菌水、USP;デキストロース注射液、USP(例えば、5%デキストロース注射液(D5/W)を含めた、2.5、5.0、10、20%デキストロース);デキストロースおよび塩化ナトリウム注射液、USP(例えば、2.5から10%まで変動するデキストロースおよび0.12(19ミリ当量のナトリウム)から0.9%(154ミリ当量のナトリウム)まで変動する塩化ナトリウム);マンニトール注射液、USP(例えば、5、10、15、20、および25%マンニトール);リンゲル注射液、USP(例えば、1リットルあたり147ミリ当量のナトリウム、4ミリ当量のカリウム、4.5ミリ当量のカルシウム、および156ミリ当量の塩化物);乳酸化リンゲル注射液、USP(例えば、1リットルあたり2.7ミリ当量のカルシウム、4ミリ当量のカリウム、130ミリ当量のナトリウム、および28ミリ当量の乳酸塩);塩化ナトリウム注射液、USP(例えば、0.9%塩化ナトリウム)などが含まれる。
患者に投与される場合、化合物Iまたは結晶性形態I’は、通常、化合物Iまたは結晶性形態I’の1mgあたり約0.5mL~約10mL、例えば、1mgあたり約0.6~約8mLの水性担体中に希釈される。
1つの特定の実施形態では、非経口製剤は、薬学的に許容される担体としてシクロデキストリン水溶液を含む。適切なシクロデキストリンとして、アミラーゼ、β-シクロデキストリンまたはシクロヘプタアミロースなどの場合のように、連結により1,4位で連結されている6つ以上のα-D-グルコピラノース単位を含有する環状分子が挙げられる。典型的なシクロデキストリンとして、シクロデキストリン誘導体、例えばヒドロキシプロピルシクロデキストリンおよびスルホブチルエーテルシクロデキストリン、例えばヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンおよびスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンなどが挙げられる。このような製剤に対する典型的な緩衝剤として、カルボン酸ベースの緩衝剤、例えばクエン酸緩衝液、乳酸緩衝液およびマレイン酸緩衝液などが挙げられる。本発明の一実施形態では、静脈内投与形態は、緩衝溶液中に化合物Iまたは結晶性形態I’を含む。
一実施形態では、化合物Iもしくは結晶性形態I’またはそれらの薬学的組成物は、凍結乾燥粉末である。通常、凍結乾燥粉末は、滅菌されており、密封されたバイアルもしくはアンプルまたは同様の容器に包装される。
化合物Iまたは結晶形態I’はまた、公知の経皮的デリバリーシステムおよび賦形剤を使用して経皮的に投与され得る。例えば、化合物Iまたは結晶形態I’は、透過促進剤、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノラウレート、アザシクロアルカン-2-オンなどと混和することができ、パッチまたは同様のデリバリーシステムに組み込むことができる。所望する場合、ゲル化剤、乳化剤および緩衝剤を含めた追加の賦形剤をこのような経皮的組成物に使用することができる。
第2の剤
化合物Iまたは結晶形態I’は、疾患の単独処置として有用であってもよいし、または所望の治療効果を得るための1つもしくは複数の追加の治療剤と併用してもよい。したがって、一実施形態では、本発明の薬学的組成物は、化合物Iまたは結晶形態I’と共投与される他の薬物を含有する。例えば、組成物は、1つまたは複数の薬物(また「第2の剤(複数可)」とも呼ばれる)をさらに含んでもよい。このような治療剤は、当技術分野で周知であり、アデノシン受容体アンタゴニスト、α-アドレナリン受容体アンタゴニスト、β1-アドレナリン受容体アンタゴニスト、β2-アドレナリン受容体アゴニスト、二重作用性β-アドレナリン受容体アンタゴニスト/α1-受容体アンタゴニスト、進行糖化終末産物ブレーカー、アルドステロンアンタゴニスト、アルドステロンシンターゼ阻害剤、アミノペプチダーゼN阻害剤、アンドロゲン、アンジオテンシン変換酵素阻害剤および二重作用性アンジオテンシン変換酵素/ネプリライシン阻害剤、アンジオテンシン変換酵素2アクチベーターおよび刺激物質、アンジオテンシン-IIワクチン、抗凝血剤、抗糖尿病剤、下痢止剤、抗緑内障剤、抗脂質剤、抗侵害受容性剤、抗血栓剤、AT1受容体アンタゴニストおよび二重作用性AT1受容体アンタゴニスト/ネプリライシン阻害剤および多官能性アンジオテンシン受容体遮断剤、ブラジキニン受容体アンタゴニスト、カルシウムチャネル遮断剤、キマーゼ阻害剤、ジゴキシン、利尿剤、ドーパミンアゴニスト、エンドセリン変換酵素阻害剤、エンドセリン受容体アンタゴニスト、HMG-CoA還元酵素阻害剤、エストロゲン、エストロゲン受容体アゴニストおよび/またはアンタゴニスト、鉱質コルチコイド受容体アンタゴニスト、モノアミン再取り込み阻害剤、筋弛緩剤、ナトリウム利尿ペプチドおよびこれらの類似体、ナトリウム利尿ペプチドクリアランス受容体アンタゴニスト、ネプリライシン阻害剤、一酸化窒素ドナー、非ステロイド性抗炎症剤、N-メチルd-アスパラギン酸受容体アンタゴニスト、オピオイド受容体アゴニスト、ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、PDE5およびPDE9)、プロスタグランジン類似体、プロスタグランジン受容体アゴニスト、レニン阻害剤、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、ナトリウムチャネル遮断剤、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激物質およびアクチベーター、三環式抗うつ剤、バソプレッシン受容体アンタゴニスト、ならびにこれらの組合せが挙げられる。これら剤の具体例は、本明細書中で詳述されている。
特定の実施形態は、化合物Iもしくは結晶性形態I’またはその結晶性形態と、AT1受容体アンタゴニスト、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤、レニン阻害剤、利尿剤、またはこれらの組合せと、必要に応じて1つまたは複数の薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を含む。
したがって、本発明のさらに別の態様では、薬学的組成物は、化合物Iまたは結晶形態I’と、第2の活性剤と、薬学的に許容される担体とを含む。第3、第4などの活性剤も組成物中に含まれていてもよい。併用療法では、投与される化合物Iまたは結晶形態I’の量、ならびに第2の剤の量は、単剤療法(monotherapy)で通常投与される量より少なくてもよい。
化合物Iまたは結晶形態I’は、第2の活性剤と物理的に混合することによって、両方の剤を含有する組成物を形成することもでき、または各剤が、患者に同時にもしくは別々の時間に投与される、別々の異なる組成物の中に存在してもよい。例えば、化合物Iまたは結晶形態I’は、従来の手順および機器を使用して、第2の活性剤と併用することによって、化合物Iまたは結晶形態I’と第2の活性剤とを含む、活性剤を組合せたものを形成することができる。さらに、活性剤を、薬学的に許容される担体と併用することによって、化合物Iまたは結晶形態I’と、第2の活性剤と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を形成することができる。本実施形態では、組成物の構成成分は通常、混合またはブレンドして、物理的混合物を作り出す。次いで物理的混合物は、本明細書中に記載されている経路のいずれかを使用して治療有効量で投与する。
あるいは、活性剤は、患者への投与前、別々に、およびはっきりと区別されたままであってもよい。本実施形態では、剤は、投与前に一つに物理的に混合されることはなく、同時にまたは別々の時間に別々の組成物として投与される。このような組成物は、別々に包装することもできるし、またはキット内で一緒に包装することもできる。別々の時間に投与する場合、第2の剤は、化合物Iまたは結晶形態I’の投与後24時間より短い時間で、つまり本発明の化合物の投与と同時刻から、投与後約24時間までの範囲のどこかの時点で、通常投与されることになる。これは連続投与とも呼ばれる。したがって、各活性剤を1つの錠剤にして、2つの錠剤を使用し、化合物Iまたは結晶形態I’を別の活性剤と共に、同時または逐次的に経口投与することができ、この場合逐次とは、本化合物Iまたは結晶形態I’の投与の直後、またはいくらかの既定の時間後に(例えば、1時間後または3時間後)投与することを意味し得る。第2の剤が、化合物Iまたは結晶形態I’の投与から24時間超後に投与し得ることも想定される。あるいは、この組合せは、異なる投与経路により投与してもよい、すなわち、一方は経口的に、他方は吸入により投与してもよい。
一実施形態では、キットは、化合物Iまたは結晶形態I’を含む第1の剤形と、本明細書中に記述された1つまたは複数の第2の剤を含む少なくとも1つの追加の剤形とを、本発明の方法を実行するのに十分な量で含む。第1の剤形および第2(または第3など)の剤形は一緒になって、患者における疾患または医学的状態の処置または予防のための治療有効量の活性剤を含む。
第2の剤(複数可)は、含まれるとすれば、本発明の化合物Iまたは結晶形態I’と共投与された場合、治療上有利な作用を生じる量でこれらが通常投与されるように、治療有効量で存在する。第2の剤は、薬学的に許容される塩、溶媒和物、光学的に純粋な立体異性体などの形態とすることができる。第2の剤はまた、プロドラッグ、例えばエステル化したカルボン酸基を有する化合物の形態であってもよい。したがって、本明細書中に列挙した第2の剤は、すべてのこのような形態を含むことが意図され、市販されているか、または従来の手順および試薬を使用して調製することができる。
一実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、アデノシン受容体アンタゴニストと組み合わせて投与される。これらの例として、ナキシフィリン、ロロフィリン、SLV-320、テオフィリン、およびトナポフィリンが挙げられる。
一実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、α-アドレナリン受容体アンタゴニストと組み合わせて投与される。これらの例として、ドキサゾシン、プラゾシン、タムスロシン、およびテラゾシンが挙げられる。
化合物Iまたは結晶形態I’はまたβ1-アドレナリン受容体アンタゴニスト(「β1遮断剤」)と組み合わせて投与することができる。これらの例として、アセブトロール、アルプレノロール、アモスラロール、アロチノロール、アテノロール、ベフノロール、ベタキソロール、ベバントロール、ビソプロロール、ボピンドロール、ブシンドロール、ブクモロール、ブフェトロール、ブフラロール、ブニトロロール、ブプラノロール、ブブリジン、ブトフィロロール、カラゾロール、カルテオロール、カルベジロール、セリプロロール、セタモロール、クロラノロール、ジレバロール、エパノロール、エスモロール、インデノロール、ラベトロール、レボブノロール、メピンドロール、メチプラノロール、メトプロロール、例えばコハク酸メトプロロールおよび酒石酸メトプロロール、モプロロール、ナドロール、ナドキソロール、ネビバロール、ニプラジロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ペルブトロール、ピンドロール、プラクトロール、プロネタロール、プロプラノロール、ソタロール、スフィナロール、タルインドール、テルタトロール、チリソロール、チモロール、トリプロロール、キシベノロール、ならびにこれらの組合せが挙げられる。1つの特定の実施形態では、β1-アンタゴニストは、アテノロール、ビソプロロール、メトプロロール、プロプラノロール、ソタロール、およびこれらの組合せから選択される。通常、β1遮断剤は、投与1回あたり約2~900mgを提供するのに十分な量で投与される。
一実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、β2-アドレナリン受容体アゴニストと組み合わせて投与される。これらの例として、アルブテロール、ビトルテロール、フェノテロール、ホルモテロール、インダカテロール、イソエタリン、レバルブテロール、メタプロテレノール、ピルブテロール、サルブタモール、サルメファモール、サルメテロール、テルブタリン、ビランテロールなどが挙げられる。通常、β2-アドレナリン受容体アゴニストは、投与1回あたり約0.05~500μgを提供するのに十分な量で投与される。
一実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、進行糖化終末産物(AGE)ブレーカーと組み合わせて投与され、これらの例として、アラゲブリウム(またはALT-711)およびTRC4149が挙げられる。
別の実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、アルドステロンアンタゴニストと組み合わせて投与される。これらの例として、エプレレノン、スピロノラクトン、およびこれらの組合せが挙げられる。通常、アルドステロンアンタゴニストは、一日あたり約5~300mgを提供するのに十分な量で投与される。
一実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、アミノペプチダーゼNまたはジペプチジルペプチダーゼIII阻害剤と組み合わせて投与され、これらの例として、ベスタチンおよびPC18(2-アミノ-4-メチルスルホニルブタンチオール、メチオニンチオール)が挙げられる。
化合物Iまたは結晶形態I’はまた、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤と組み合わせて投与することができる。これらの例として、アキュプリル、アラセプリル、ベナゼプリル、ベナゼプリラト、カプトプリル、セラナプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、エナラプリラート、ホシノプリル、ホシノプリラト、イミダプリル、リシノプリル、モエキシプリル、モノプリル、モベルトプリル、ペントプリル、ペリンドプリル、キナプリル、キナプリラト、ラミプリル、ラミプリラト、酢酸サララシン、スピラプリル、テモカプリル、トランドラプリル、ゾフェノプリル、およびこれらの組合せが挙げられる。ある特定の実施形態では、ACE阻害剤は、ベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、ラミプリル、およびこれらの組合せから選択される。通常、ACE阻害剤は、一日あたり約1~150mgを提供するのに十分な量で投与される。
別の実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、二重作用性アンジオテンシン変換酵素/ネプリライシン(ACE/NEP)阻害剤と組み合わせて投与される。これらの例として、以下が挙げられる:AVE-0848((4S,7S,12bR)-7-[3-メチル-2(S)-スルファニルブチルアミド]-6-オキソ-1,2,3,4,6,7,8,12b-オクタヒドロピリド[2,1-a][2]-ベンゾアゼピン-4-カルボン酸);AVE-7688(イレパトリル)およびその親化合物;BMS-182657(2-[2-オキソ-3(S)-[3-フェニル-2(S)-スルファニルプロピオンアミド]-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-1-ベンゾアゼピン-1-イル]酢酸);CGS-35601(N-[1-[4-メチル-2(S)-スルファニルペンタンアミド]シクロペンチル-カルボニル]-L-トリプトファン);ファシドトリル;ファシドトリレート;エナラプリラート;ER-32935((3R,6S,9aR)-6-[3(S)-メチル-2(S)-スルファニルペンタンアミド]-5-オキソパーヒドロチアゾロ[3,2-a]アゼピン-3-カルボン酸);ジェムパトリラト;MDL-101264((4S,7S,12bR)-7-[2(S)-(2-モルホリノアセチルチオ)-3-フェニルプロピオンアミド]-6-オキソ-1,2,3,4,6,7,8,12b-オクタヒドロピリド[2,1-a][2]ベンゾアゼピン-4-カルボン酸);MDL-101287([4S-[4α,7α(R*),12bβ]]-7-[2-(カルボキシメチル)-3-フェニルプロピオンアミド]-6-オキソ-1,2,3,4,6,7,8,12b-オクタヒドロピリド[2,1-a][2]ベンゾアゼピン-4-カルボン酸);オマパトリラト;RB-105(N-[2(S)-(メルカプトメチル)-3(R)-フェニルブチル]-L-アラニン);サムパトリラト;SA-898((2R,4R)-N-[2-(2-ヒドロキシフェニル)-3-(3-メルカプトプロピオニル)チアゾリジン-4-イルカルボニル]-L-フェニルアラニン);Sch-50690(N-[1(S)-カルボキシ-2-[N2-(メタンスルホニル)-L-リシルアミノ]エチル]-L-バリル-L-チロシン);およびこれらの組合せもまた含まれていてもよい。1つの特定の実施形態では、ACE/NEP阻害剤は、AVE-7688、エナラプリラート、ファシドトリル、ファシドトリレート、オマパトリラト、サムパトリラト、およびこれらの組合せから選択される。
一実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)アクチベーターまたは刺激物質と組み合わせて投与される。
一実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、アンジオテンシン-IIワクチンと組み合わせて投与される。これらの例として、ATR12181およびCYT006-AngQbが挙げられる。
一実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、抗凝血剤と組み合わせて投与される。これらの例として、クマリン、例えばワルファリンなど;ヘパリン;ならびにダイレクトトロンビン阻害剤、例えばアルガトロバン、ビバリルジン、ダビガトラン、およびレピルジンなどが挙げられる。
さらに別の実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、抗糖尿病剤と組み合わせて投与される。これらの例として、注射用薬物ならびに経口的に効果的な薬物、およびこれらの組合せが挙げられる。注射用薬物の例として、インスリンおよびインスリン誘導体が挙げられる。経口的に効果的な薬物の例として:ビグアナイド、例えばメトホルミンなど;グルカゴンアンタゴニスト;α-グルコシダーゼ阻害剤、例えばアカルボースおよびミグリトールなど;ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤(DPP-IV阻害剤)例えばアログリプチン、デナグリプチン、リナグリプチン、サキサグリプチン、シタグリプチン、およびビルダグリプチンなど;メグリチニド、例えばレパグリニドなど;オキサジアゾリジンジオン;スルホニル尿素、例えばクロルプロパミド、グリメピリド、グリピジド、グリブリド、およびトラザミドなど;チアゾリジンジオン、例えばピオグリタゾンおよびロシグリタゾンなど;ならびにこれらの組合せが挙げられる。
別の実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、抗下痢処置と組み合わせて投与される。代表的な処置の選択肢として、経口の水分補給用飲料(ORS)、ロペラミド、ジフェノキシラート、および次サリチル酸ビスマスが挙げられる。
さらに別の実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、抗緑内障剤と組み合わせて投与される。これらの例として:α-アドレナリンアゴニスト、例えばブリモニジンなど;β1-アドレナリン受容体アンタゴニスト;局所用β1遮断剤、例えばベタキソロール、レボブノロール、およびチモロールなど;カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤、例えばアセタゾラミド、ブリンゾラミド、またはドルゾラミドなど;コリン作用性アゴニスト、例えばセビメリンおよびDMXB-アナバシンなど;エピネフリィン化合物;縮瞳剤、例えばピロカルピンなど;ならびにプロスタグランジン類似体などが挙げられる。
さらに別の実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、抗脂質剤と組み合わせて投与される。これらの例として、コレステリルエステル移動タンパク質阻害剤(CETP)、例えばアナセトラピブ、ダルセトラピブ、およびトルセトラピブ;スタチン、例えばアトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチン;ならびにこれらの組合せが挙げられる。
一実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、抗血栓剤と組み合わせて投与される。これらの例として、アスピリン;抗血小板剤、例えばクロピドグレル、プラスグレル、およびチクロピジン;ヘパリン、ならびにこれらの組合せが挙げられる。
一実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、アンジオテンシンII型受容体遮断剤(ARB)としても公知のAT1受容体アンタゴニストと組み合わせて投与される。代表的なARBとして、アビテサルタン、アジルサルタン(例えば、アジルサルタンメドキソミル)、ベンジルロサルタン、カンデサルタン、カンデサルタンシレキセチル、エリサルタン、エムブサルタン、エノールタソサルタン、エプロサルタン、EXP3174、フォンサルタン、フォラサルタン、グリシルロサルタン、イルベサルタン、イソテオリン、ロサルタン、メドキソミル、ミファサルタン、オルメサルタン(例えば、オルメサルタンメドキソミル)、オポミサルタン、プラトサルタン、リピサルタン、サプリサルタン、サララシン、サルメシン、TAK-591、タソサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、ゾラサルタン、およびこれらの組合せが挙げられる。ある特定の実施形態では、ARBは、アジルサルタンメドキソミル、カンデサルタンシレキセチル、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタンメドキソミル、イルベサルタン、サプリサルタン、タソサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、およびこれらの組合せから選択される。典型的な塩および/またはプロドラッグとして、カンデサルタンシレキセチル、メシル酸エプロサルタン、ロサルタンカリウム塩、およびオルメサルタンメドキソミルが挙げられる。通常、ARBは、投与1回あたり約4~600mgを提供するのに十分な量で投与され、典型的な毎日の用量は、一日あたり20~320mgの範囲である。
化合物Iまたは結晶形態I’はまた、二重作用性剤、例えばAT1受容体アンタゴニスト/ネプリライシン阻害剤(ARB/NEP)阻害剤などと組み合わせて投与することもでき、これらの例として、米国特許第7,879,896号および第8,013,005号(両方ともAllegrettiらによる)に記載されている化合物、例えば化合物、4’-{2-エトキシ-4-エチル-5-[((S)-2-メルカプト-4-メチルペンタノイルアミノ)-メチル]イミダゾール-1-イルメチル}-3’-フルオロビフェニル-2-カルボン酸などが挙げられる。
化合物Iまたは結晶形態I’はまた、Kurtz & Klein(2009年)、Hypertension Research、32巻:826~834頁に記載されているような多官能性アンジオテンシン受容体遮断剤と組み合わせて投与してもよい。
一実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、ブラジキニン受容体アンタゴニスト、例えば、イカチバント(HOE-140)などと組み合わせて投与する。本併用療法は、血管性浮腫またはブラジキニンレベルの上昇の他の望ましくない結果を予防するという利点を提示することができると予期されている。
一実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、カルシウムチャネル遮断剤と組み合わせて投与される。これらの例として、アムロジピン、アニパミル、アラニピン、バルニジピン、ベンシクラン、ベニジピン、ベプリジル、クレンチアゼム、シルニジピン、シンナリジン、ジルチアゼム、エホニジピン、エルゴジピン、エタフェノン、フェロジピン、フェンジリン、フルナリジン、ガロパミル、イスラジピン、ラシジピン、レルカニジピン、リドフラジン、ロメリジン、マニジピン、ミベフラジル、ニカルジピン、ニフェジピン、ニグルジピン、ニルジピン、ニルバジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ニバルジピン、ペルヘキシリン、プレニラミン、リオシジン、セモチアジル、テロジリン、チアパミル、ベラパミル、およびこれらの組合せが挙げられる。ある特定の実施形態では、カルシウムチャネル遮断剤は、アムロジピン、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、イスラジピン、ラシジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニグルジピン、ニルジピン、ニモジピン、ニソルジピン、リオシジン、ベラパミル、およびこれらの組合せから選択される。通常、カルシウムチャネル遮断剤は、投与1回あたり約2~500mgを提供するのに十分な量で投与される。
一実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、キマーゼ阻害剤、例えばTPC-806および2-(5-ホルミルアミノ-6-オキソ-2-フェニル-1,6-ジヒドロピリミジン-1-イル)-N-[{3,4-ジオキソ-1-フェニル-7-(2-ピリジルオキシ)}-2-ヘプチル]アセトアミド(NK3201)などと組み合わせて投与される。
一実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、利尿剤と組み合わせて投与される。これらの例として:カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤、例えばアセタゾラミドおよびジクロルフェナミドなど;ループ利尿剤、これには、スルホンアミド誘導体、例えばアセタゾラミド、アンブシド、アゾセミド、ブメタニド、ブタゾラミド、クロラミノフェナミド、クロフェナミド、クロパミド、クロレキソロン、ジスルファミド、エトキスゾラミド、フロセミド、メフルシド、メタゾラミド、ピレタニド、トルセミド、トリパミド、およびキシパミドなどが挙げられる;ならびに非スルホンアミド利尿剤、例えばエタクリン酸および他のフェノキシ酢酸化合物、例えばチエニル酸、インダクリノンおよびキンカルバート;浸透圧利尿剤、例えばマンニトール;カリウム保持性利尿剤、これにはアルドステロンアンタゴニスト、例えばスピロノラクトン、およびNa+チャネル阻害剤、例えばアミロリドおよびトリアムテレンなどが挙げられる;チアジドおよびチアジド様利尿剤、例えばアルチアジド、ベンドロフルメチアジド、ベンジルヒドロクロロチアジド、ベンゾチアジド、ブチアジド、クロルタリドン、クロロチアジド、シクロペンチアジド、シクロチアジド、エピチアジド、エチアジド、フェンキゾン、フルメチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、インダパミド、メチルクロチアジド、メチクラン、メトラゾン、パラフルチジド、ポリチアジド、キネサゾン、テクロチアジド、およびトリクロロメチアジド;ならびにこれらの組合せが挙げられる。ある特定の実施形態では、利尿剤は、アミロリド、ブメタニド、クロロチアジド、クロルタリドン、ジクロルフェナミド、エタクリン酸、フロセミド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、インダパミド、メチルクロチアジド、メトラゾン、トルセミド、トリアムテレン、およびこれらの組合せから選択される。利尿剤は、一日あたり約5~50mg、さらに通常一日あたり6~25mgを提供するのに十分な量で投与され、一般的な用量は、一日あたり6.25mg、12.5mgまたは25mgである。
化合物Iまたは結晶形態I’はまた、エンドセリン変換酵素(ECE)阻害剤と組み合わせて投与することができ、これらの例として、ホスホラミドン、CGS26303、およびこれらの組合せが挙げられる。
ある特定の実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、エンドセリン受容体アンタゴニストと組み合わせて投与される。これらの例として:エンドセリンA受容体に影響を及ぼす選択的エンドセリン受容体アンタゴニスト、例えばアボセンタン、アンブリセンタン、アトラセンタン、BQ-123、クラゾセンタン、ダルセンタン、シタキセンタン、およびジボテンタン;ならびにエンドセリンA受容体とB受容体の両方に影響を及ぼす二重エンドセリン受容体アンタゴニスト、例えばボセンタン、マシテンタン、およびテゾセンタンなどが挙げられる。
さらに別の実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、スタチンとしても公知の、1つまたは複数のHMG-CoA還元酵素阻害剤と組み合わせて投与される。代表的なスタチンとして、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンおよびシンバスタチンが挙げられる。
一実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、モノアミン再取り込み阻害剤と組み合わせて投与され、これらの例として、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、例えばアトモキセチン、ブプロプリオンおよびブプロプリオンメタボライトヒドロキシブプロプリオン、マプロチリン、レボキセチン、ならびにビロキサジン;選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、例えばシタロプラムおよびシタロプラムメタボライトデスメチルシタロプラム、ダポキセチン、エスシタロプラム(例えば、シュウ酸エスシタロプラム)、フルオキセチンおよびフルオキセチンデスメチルメタボライトノルフルオキセチン、フルボキサミン(例えば、マレイン酸フルボキサミン)、パロキセチン、セルトラリンならびにセルトラリンメタボライトデメチルセルトラリン;二重セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、例えばビシファジン、デュロキセチン、ミルナシプラン、ネファゾドン、およびベンラファキシン;ならびにこれらの組合せが挙げられる。
別の実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、筋弛緩剤と組み合わせて投与される。これらの例として:カリソプロドール、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン、ジフルニサル、メタキサロン、メトカルバモール、およびこれらの組合せが挙げられる。
一実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、ナトリウム利尿ペプチドまたは類似体と組み合わせて投与される。これらの例として:カルペリチド、CD-NP(Nile療法)、CU-NP、ネシリチド、PL-3994(Palatin Technologies,Inc.)、ウラリチド、センデリチド、およびOgawaら、(2004年)J. Biol. Chem.279巻:28625~31頁に記載されている化合物が挙げられる。これらの化合物はまた、ナトリウム利尿ペプチド受容体-A(NPR-A)アゴニストとも呼ばれる。別の実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、ナトリウム利尿ペプチドクリアランス受容体(NPR-C)アンタゴニスト、例えばSC-46542、cANF(4-23)、およびAP-811(Veale(2000年)Bioorg Med Chem Lett、10巻:1949~52頁)と組み合わせて投与される。例えば、AP-811は、NEP阻害剤、チオルファン(Wegner(1995年)Clin. Exper. Hypert.17巻:861~876頁)と併用した場合、相乗効果を示す。
別の実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、ネプリライシン(NEP)阻害剤と組み合わせて投与される。これらの例として:AHU-377;カンドキサトリル;カンドキサトリラト;デキセカドトリル((+)-N-[2(R)-(アセチルチオメチル)-3-フェニルプロピオニル]グリシンベンジルエステル);CGS-24128(3-[3-(ビフェニル-4-イル)-2-(ホスホノメチルアミノ)プロピオンアミド]プロピオン酸);CGS-24592((S)-3-[3-(ビフェニル-4-イル)-2-(ホスホノメチルアミノ)プロピオンアミド]プロピオン酸);CGS-25155(N-[9(R)-(アセチルチオメチル)-10-オキソ-1-アザシクロデカン-2(S)-イルカルボニル]-4(R)-ヒドロキシ-L-プロリンベンジルエステル);3-(1-カルバモイルシクロヘキシル)プロピオン酸誘導体(Pfizer Inc.)(HepworthらのWO2006/027680に記載);JMV-390-1(2(R)-ベンジル-3-(N-ヒドロキシカルバモイル)プロピオニル-L-イソロイシル-L-ロイシン);エカドトリル;ホスホラミドン;レトロチオルファン;RU-42827(2-(メルカプトメチル)-N-(4-ピリジニル)ベンゼンプロピオンアミド);RU-44004(N-(4-モルホリニル)-3-フェニル-2-(スルファニルメチル)プロピオンアミド);SCH-32615((S)-N-[N-(1-カルボキシ-2-フェニルエチル)-L-フェニルアラニル]-β-アラニン)およびそのプロドラッグSCH-34826((S)-N-[N-[1-[[(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メトキシ]カルボニル]-2-フェニルエチル]-L-フェニルアラニル]-β-アラニン);シアロルフィン;SCH-42495(N-[2(S)-(アセチルスルファニルメチル)-3-(2-メチルフェニル)プロピオニル]-L-メチオニンエチルエステル);スピノルフィン;SQ-28132(N-[2-(メルカプトメチル)-1-オキソ-3-フェニルプロピル]ロイシン);SQ-28603(N-[2-(メルカプトメチル)-1-オキソ-3-フェニルプロピル]-β-アラニン);SQ-29072(7-[[2-(メルカプトメチル)-1-オキソ-3-フェニルプロピル]アミノ]ヘプタン酸);チオルファンおよびそのプロドラッグ、ラセカドトリル;UK-69578(cis-4-[[[1-[2-カルボキシ-3-(2-メトキシエトキシ)プロピル]シクロペンチル]カルボニル]アミノ]シクロヘキサンカルボン酸);UK-447,841(2-{1-[3-(4-クロロフェニル)プロピルカルバモイル]-シクロペンチルメチル}-4-メトキシ酪酸);UK-505,749((R)-2-メチル-3-{1-[3-(2-メチルベンゾチアゾール-6-イル)プロピルカルバモイル]シクロペンチル}プロピオン酸);5-ビフェニル-4-イル-4-(3-カルボキシプロピオニルアミノ)-2-メチルペンタン酸および5-ビフェニル-4-イル-4-(3-カルボキシプロピオニルアミノ)-2-メチルペンタン酸エチルエステル(WO2007/056546);ダグルトリル[(3S,2’R)-3-{1-[2’-(エトキシカルボニル)-4’-フェニルブチル]-シクロペンタン-1-カルボニルアミノ}-2,3,4,5-テトラヒドロ-2-オキソ-1H-1-ベンゾアゼピン-1-酢酸](Novartis AG)(KhderらのWO2007/106708に記載);ならびにこれらの組合せが挙げられる。ある特定の実施形態では、NEP阻害剤は、AHU-377、カンドキサトリル、カンドキサトリラト、CGS-24128、ホスホラミドン、SCH-32615、SCH-34826、SQ-28603、チオルファン、およびこれらの組合せから選択される。ある特定の実施形態では、NEP阻害剤は、ダグルトリルまたはCGS-26303([N-[2-(ビフェニル-4-イル)-1(S)-(1H-テトラゾール-5-イル)エチル]アミノ]メチルホスホン酸)などの化合物であり、これらは、エンドセリン変換酵素(ECE)とNEPの両方の阻害剤としての活性を有する。他の二重作用性ECE/NEP化合物もまた使用することができる。NEP阻害剤は、一日あたり約20~800mgを提供するのに十分な量で投与され、通常の毎日の用量は一日あたり50~700mgの範囲であり、さらに一般的には一日あたり100~600または100~300mgの範囲である。
一実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、一酸化窒素ドナーと組み合わせて投与される。これらの例として、これらに限定されないが、ニコランジル;有機ナイトレート(nitrate)、例えば四硝酸ペンタエリスリトールなど;ならびにシドノンイミン、例えばリンシドミンおよびモルシドミンなどが挙げられる。
さらに別の実施形態では、本発明の化合物は、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)と組み合わせて投与される。これらの例として:アセメタシン、アセチルサリチル酸、アルクロフェナク、アルミノプロフェン、アンフェナク、アミプリロース、アロキシプリン、アニロラク、アパゾン、アザプロパゾン、ベノリレート、ベノキサプロフェン、ベズピペリロン、ブロペラモール、ブクロキシン酸、カルプロフェン、クリダナク、ジクロフェナク、ジフルニサル、ジフタロン、エノリカム、エトドラク、エトリコキシブ、フェンブフェン、フェンクロフェナク、フェンクロズ酸、フェノプロフェン、フェンチアザク、フェプラゾン、フルフェナム酸、フルフェニサル、フルプロフェン、フルルビプロフェン、フロフェナク、イブフェナク、イブプロフェン、インドメタシン、インドプロフェン、イソキセパク、イソキシカム、ケトプロフェン、ケトロラック、ロフェミゾール、ロルノキシカム、メクロフェナメート、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メロキシカム、メサラミン、ミロプロフェン、モフェブタゾン、ナブメトン、ナプロキセン、ニフルム酸、オキサプロジン、オキシピナク、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、ピルプロフェン、プラノプロフェン、サルサレート、スドキシカム、スルファサラジン、スリンダク、スプロフェン、テノキシカム、チオピナク、チアプロフェン酸、チオキサプロフェン、トルフェナム酸、トルメチン、トリフルミデート、ジドメタシン、ゾメピラック、およびこれらの組合せが挙げられる。ある特定の実施形態では、NSAIDは、エトドラク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラック、メロキシカム、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、およびこれらの組合せから選択される。
一実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、N-メチルd-アスパラギン酸塩(NMDA)受容体アンタゴニストと組み合わせて投与され、これらの例として、アマンタジン、デキストロメトルファン、デキストロプロポキシフェン、ケタミン、ケトベミドン、メマンチン、メタドンなどを含めたものが挙げられる。
さらなる別の実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、オピオイド受容体アゴニスト(オピオイド鎮痛剤とも呼ばれる)と組み合わせて投与される。代表的なオピオイド受容体アゴニストとして:ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、ジヒドロコデイン、フェンタニル、ハイドロコドン、ヒドロモルホン、レバロルファン、レボルファノール、メペリジン、メタドン、モルヒネ、ナルブフィン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、ナロルフィン、オキシコドン、オキシモルホン、ペンタゾシン、プロポキシフェン、トラマドール、およびこれらの組合せが挙げられる。特定の実施形態では、オピオイド受容体アゴニストは、コデイン、ジヒドロコデイン、ハイドロコドン、ヒドロモルホン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、トラマドール、およびこれらの組合せから選択される。
ある特定の実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤、特にPDE-V阻害剤と組み合わせて投与される。代表的なPDE-V阻害剤として、アバナフィル、ロデナフィル、ミロデナフィル、シルデナフィル(Revatio(登録商標))、タダラフィル(Adcirca(登録商標))、バルデナフィル(Levitra(登録商標))、およびウデナフィルが挙げられる。
別の実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、プロスタグランジン類似体(プロスタノイドまたはプロスタサイクリン類似体とも呼ばれる)と組み合わせて投与される。代表的なプロスタグランジン類似体として、ベラプロストナトリウム、ビマトプロスト、エポプロステノール、イロプロスト、ラタノプロスト、タフルプロスト、トラボプロスト、およびトレプロスチニルが挙げられ、特に興味深いのはビマトプロスト、ラタノプロスト、およびタフルプロストである。
さらに別の実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、プロスタグランジン受容体アゴニストと組み合わせて投与される。これらの例として、ビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプロストなどが挙げられる。
化合物Iまたは結晶形態I’はまた、レニン阻害剤と組み合わせて投与されてもよい。これらの例として、アリスキレン、エナルキレン、レミキレン、およびこれらの組合せが挙げられる。
別の実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)と組み合わせて投与される。これらの例として:シタロプラムおよびシタロプラムメタボライトデスメチルシタロプラム、ダポキセチン、エスシタロプラム(例えば、シュウ酸エスシタロプラム)、フルオキセチンおよびフルオキセチンデスメチルメタボライトノルフルオキセチン、フルボキサミン(例えば、マレイン酸フルボキサミン)、パロキセチン、セルトラリンおよびセルトラリンメタボライトデメチルセルトラリン、ならびにこれらの組合せが挙げられる。
一実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、5-HT1Dセロトニン受容体アゴニストと組み合わせて投与され、これらの例として、トリプタン、例えばアルモトリプタン、アビトリプタン、エレトリプタン、フロバトリプタン、ナラトリプタンリザトリプタン、スマトリプタン、およびゾルミトリプタンが挙げられる。
一実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、ナトリウムチャネル遮断剤と組み合わせて投与され、これらの例として、カルバマゼピン、ホスフェニトイン、ラモトリジン、リドカイン、メキシレチン、オキシカルバゼピン、フェニトイン、およびこれらの組合せが挙げられる。
一実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激物質またはアクチベーターと組み合わせて投与される。これらの例として、アタシグアト、リオシグアト、およびこれらの組合せが挙げられる。
一実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、三環式抗うつ剤(TCA)と組み合わせて投与され、これらの例にとして、アミトリプチリン、アミトリプチリノキシド、ブトリプチリン、クロミプラミン、デメキシプチリン、デシプラミン、ジベンゼピン、ジメタクリン、ドスレピン、ドキセピン、イミプラミン、イミプラミノキシド、ロフェプラミン、メリトラセン、メタプラミン、ニトロザゼピン、ノルトリプチリン、ノキシプチリン、ピポフェジン、プロピゼピン、プロトリプチリン、キヌプラミン、およびこれらの組合せが挙げられる。
一実施形態では、化合物Iまたは結晶形態I’は、バソプレッシン受容体アンタゴニストと組み合わせて投与され、これらの例として、コニバプタンおよびトルバプタンが挙げられる。
併用される第2の治療剤は、本発明の化合物とのさらなる併用療法においても役立つことができる。例えば、本発明の化合物は、利尿剤とARB、またはカルシウムチャネル遮断剤とARB、または利尿剤とACE阻害剤、またはカルシウムチャネル遮断剤とスタチンを併用することができる。具体例として、ACE阻害剤エナラプリル(マレイン酸塩形態)と利尿剤ヒドロクロロチアジド(Vaseretic(登録商標)というマークの下で販売されている)の組合せ、またはカルシウムチャネル遮断剤アムロジピン(ベシル酸塩形態)とARBオルメサルタン(メドキソミルプロドラッグ形態)の組合せ、またはカルシウムチャネル遮断剤とスタチンの組合せが挙げられ、これらはすべて化合物Iと共に使用することができる。他の治療剤、例えばα2-アドレナリン受容体アゴニストおよびバソプレッシン受容体アンタゴニストなどもまた、併用療法に役立ち得る。典型的なα2-アドレナリン受容体アゴニストとして、クロニジン、デクスメデトミジン、およびグアンファシンが挙げられる。
以下の製剤は、本発明の代表的な薬学的組成物を例示している。
典型的な経口投与用硬質ゼラチンカプセル
本発明の化合物(50g)、スプレー乾燥したラクトース440gおよびステアリン酸マグネシウム10gを十分にブレンドする。次いで得られた組成物を硬質ゼラチンカプセルに充填する(カプセル剤1個あたり組成物500mg)。あるいは、化合物Iまたは結晶形態I’(20mg)をデンプン(89mg)、微結晶性セルロース(89mg)およびステアリン酸マグネシウム(2mg)と十分にブレンドする。次いでこの混合物を米国製の45番メッシュの篩に通し、硬質ゼラチンカプセルに充填する(カプセル剤1個あたり組成物200mg)。
あるいは、化合物Iまたは結晶形態I’(30g)、第2の剤(20g)、スプレー乾燥したラクトース440gおよびステアリン酸マグネシウム10gを十分にブレンドし、上記のように処理する。
典型的な経口投与用ゼラチンカプセル製剤
化合物Iまたは結晶形態I’(100mg)を、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(50mg)およびデンプン粉末(250mg)と十分にブレンドする。次いでこの混合物をゼラチンカプセル剤に充填する(カプセル剤1個あたり組成物400mg)。あるいは、化合物I(70mg)および第2の剤(30mg)をポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(50mg)およびデンプン粉末(250mg)と十分にブレンドし、得られた混合物をゼラチンカプセル剤に充填する(カプセル剤1個あたり組成物400mg)。
あるいは、化合物Iまたは結晶形態I’(40mg)を、微結晶性セルロース(アビセルPH103;259.2mg)およびステアリン酸マグネシウム(0.8mg)と十分にブレンドする。次いでこの混合物をゼラチンカプセル剤(サイズ#1、白色、不透明)に充填する(カプセル剤1個あたり組成物300mg)。
典型的な経口投与用ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセル剤
化合物Iまたは結晶性形態I’(50mgまたは100mg)を、HPMCカプセルに直接充填する。
典型的な経口投与用錠剤製剤
化合物Iまたは結晶形態I’(10mg)、デンプン(45mg)および微結晶性セルロース(35mg)を米国製20番メッシュの篩に通し、十分混合する。こうして生成された粒剤を50~60℃で乾燥させ、米国製16番メッシュの篩に通す。ポリビニルピロリドン溶液(4mgを滅菌水中の10%溶液として)を、カルボキシメチルデンプンナトリウム(4.5mg)、ステアリン酸マグネシウム(0.5mg)、およびタルク(1mg)と混合し、次いでこの混合物を、米国製16番メッシュの篩に通す。次いでカルボキシメチルデンプンナトリウム、ステアリン酸マグネシウムおよびタルクをこの粒剤に加える。混合後、この混合物を錠剤機上で圧縮して、重さ100mgの錠剤を生成する。
あるいは、化合物Iまたは結晶形態I’(250mg)を、微結晶性セルロース(400mg)、ヒュームド二酸化ケイ素(10mg)、およびステアリン酸(5mg)と十分にブレンドする。次いでこの混合物を圧縮して、錠剤を形成する(錠剤一錠あたり組成物665mg)。
あるいは、化合物Iまたは結晶形態I’(400mg)を、コーンスターチ(50mg)、クロスカルメロースナトリウム(25mg)、ラクトース(120mg)、およびステアリン酸マグネシウム(5mg)と十分にブレンドする。次いでこの混合物を圧縮して、単一の分割錠を形成する(錠剤一錠あたり組成物600mg)。
あるいは、化合物Iまたは結晶形態I’(100mg)を、コーンスターチ(100mg)と、ゼラチン(20mg)水溶液と共に十分にブレンドする。この混合物を乾燥させ、粉砕して微細な粉末にする。次いで微結晶性セルロース(50mg)およびステアリン酸マグネシウム(5mg)をゼラチン製剤と混和し、顆粒化し、得られた混合物を圧縮して、錠剤を形成する(錠剤一錠あたり本発明の化合物100mg)。
典型的な経口投与用懸濁製剤
以下の成分を混合して、懸濁液10mLあたり、100mgの化合物Iまたは結晶性形態I’を含有する懸濁液を形成する。
典型的な経口投与用液体製剤
適切な液体製剤は、カルボン酸ベースの緩衝剤、例えばクエン酸緩衝液、乳酸緩衝液およびマレイン酸緩衝液などを用いたものである。例えば、化合物Iまたは結晶形態I’(DMSOと予備混合しておいてもよい)を、100mMクエン酸アンモニウム緩衝剤とブレンドし、pHをpH5に調整するか、または100mMクエン酸溶液とブレンドし、pHをpH2に調整する。このような溶液はまた、シクロデキストリンなどの可溶化賦形剤を含んでもよく、例えば溶液は、10重量%のヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含んでもよい。
他の適切な製剤としては、シクロデキストリンを伴うかまたは伴わない5%NaHCO3溶液が挙げられる。
注射による投与のための典型的な非経口IV製剤
化合物Iまたは結晶形態I’(0.2g)を、0.4M酢酸ナトリウム緩衝液(2.0mL)とブレンドする。必要に応じて、0.5N水性の塩酸または0.5N水性の水酸化ナトリウムを使用して、得られた溶液のpHをpH4に調整し、次いで注射のための十分な水を加えて、総容量を20mLとする。次いでこの混合物を、無菌フィルター(0.22ミクロン)を通す濾過をして、注射による投与に対して適切な無菌溶液を得る。
以下の製剤は、本発明の代表的な薬学的組成物を例示している。
製剤例A
注射用溶液を調製するのに適切な凍結した溶液を、以下の通りに調製する。
代表的手順:もしある場合には、賦形剤を約80%の注射用水中に溶解させ、活性化合物IまたはI’を加え、溶解させる。pHを1M水酸化ナトリウムで3~4.5に調整し、次いで容量を、注射用水で最終容量の95%に調整する。pHをチェックし、必要に応じて調整し、容量を、注射用水で最終容量に調整する。次いで、製剤を、0.22ミクロンのフィルターを通す滅菌濾過をし、無菌条件下で滅菌バイアルに入れる。バイアルに蓋をし、ラベルを付け、凍結保存する。
製剤例B
注射用溶液を調製するのに適切な凍結乾燥粉末または結晶性固体を、以下の通りに調製する。
代表的手順:もしある場合には、賦形剤および/または緩衝剤を、約60%の注射用水中に溶解させる。活性化合物IまたはI’を加え、溶解させ、pHを1M水酸化ナトリウムで3~4.5に調整し、容量を、注射用水で最終容量の95%に調整する。pHをチェックし、必要に応じて調整し、容量を、注射用水で最終容量に調整する。次いで、製剤を、0.22ミクロンのフィルターを通す滅菌濾過をし、無菌条件下で滅菌バイアルに入れる。次いで、製剤を、適切な凍結乾燥サイクルを使用して凍結乾燥する。バイアルに蓋をし(必要に応じて部分減圧または乾燥窒素下で)、ラベルを付け、冷蔵下で保存した。
製剤例C
患者への静脈内投与のための注射用溶液を、上記製剤例Bから以下の通りに調製する。
代表的手順:製剤例Bの凍結乾燥粉末(例えば、10~1000mgの活性化合物IまたはI’を含有する)を、20mLの滅菌水で再構成し、得られた溶液を、100mLの注入バッグ中の80mLの滅菌生理食塩水でさらに希釈する。次いで、希釈した溶液を、患者に30~120分間にわたり静脈内投与する。
吸入による投与のための典型的な組成物
化合物IまたはI’(0.2mg)を微粉化し、次いでラクトース(25mg)とブレンドする。次いでこのブレンドした混合物をゼラチン吸入カートリッジに充填する。カートリッジの内容物を、例えばドライパウダー吸入器を使用して投与する。
あるいは、脱塩水(200mL)中にレシチン(0.2g)を溶解することによって調製した溶液中に、微粉化した化合物IまたはI’(10g)を分散させる。得られた懸濁液をスプレー乾燥し、次いで微粉化して、平均直径が約1.5μm未満の粒子を含む微粉化組成物を形成する。次いで微粉化組成物を、吸入器で投与した場合に投与1回あたり本発明の化合物約10μg~約500μgを提供するのに十分な量で、加圧した1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含有する計量式吸入器カートリッジに充填する。
あるいは、化合物IまたはI’(25mg)を、クエン酸緩衝化(pH5)等張生理食塩水(125mL)に溶解させる。この混合物を撹拌し、化合物が溶解するまで超音波処理する。溶液のpHをチェックし、必要に応じて、水性の1N NaOHをゆっくりと加えることによってpH5に調整する。溶液はネブライザーデバイスを使用して投与し、このネブライザーデバイスは、投与1回あたり、化合物IまたはI’約10μg~約500μgを提供する。
以下の反応スキーム/調製および実施例は、本発明の特定の実施形態を例示するために提供されている。しかしこれらの特定の実施形態は、具体的に指摘されていない限り、本発明の範囲を限定することを決して意図するものではない。
以下の略語は、他に指摘されない限り、以下の意味を有し、本明細書中で使用され、定義されていない任意の他の略語は、これらの標準的で、一般的に受け入れられた意味を有する。
ACN=アセトニトリル
CPME=シクロペンチルメチルエーテル
d=日
DCC=N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド
DCM=ジクロロメタンまたは塩化メチレン
DIPE=ジイソプロピルエーテル
DIPEA=N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMF=N,N-ジメチルホルムアミド
EDTA=エチレンジアミン四酢酸
EtOH=エタノール
EtOAc=酢酸エチル
g=グラム
h=時間
H2=水素ガス
H2O2=過酸化水素
HCTU=2-(6-クロロ-1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(V)
HATU=N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HCl=塩化水素
NaBH4=水素化ホウ素ナトリウム
NaCl=塩化ナトリウム
NaHCO3=重炭酸ナトリウム
Na2CO3=炭酸ナトリウム
NaHMDS=ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドまたはナトリウムヘキサメチルジシラジド
NaOH=水酸化ナトリウム
Na2SO4=硫酸ナトリウム
NH4Cl=塩化アンモニウム
NMM=n-メチルモルホリン
MeI=ヨウ化メチル
MeOH=メタノール
min=分
MgSO4=硫酸マグネシウム
Pd(PPh3)4=テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)
Pd/C=パラジウム担持活性炭、担持率10%
PE=石油エーテル
SiO2=二酸化ケイ素またはシリカ
TFA=トリフルオロ酢酸
THF=テトラヒドロフラン
特に示されていない限り、すべての材料、例えば試薬、出発物質および溶媒などは、民間の供給者(例えばSigma-Aldrich、Fluka Riedel-de Haenなど)から購入し、さらなる精製なしで使用した。
特に示されていない限り、反応は、窒素雰囲気下で行った。反応の進行は、薄層クロマトグラフィー(TLC)、分析用高速液体クロマトグラフィー(分析HPLC)、および質量分析法でモニターし、これらの詳細は具体例において示されている。代表的な分析用HPLC条件は、以下の通りであった。
A.分析用HPLC条件-方法A
B.分析用HPLC条件-方法B
各調製において具体的に記載されているように反応の後処理を行った。例えば、一般的には、抽出および他の精製方法、例えば温度依存性、および溶媒依存性の結晶化、および沈殿などによって、反応混合物を精製した。さらに、反応混合物は、通常Microsorb C18およびMicrosorb BDSカラム充填材料ならびに従来の溶離液を使用して、分取HPLCにより規定通りに精製した。反応の進行は、通常液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)で測定した。異性体の特徴付けは、核オーバーハウザー効果スペクトロスコピー(NOE)で行った。反応生成物の特徴付けを質量分析法および1H-NMR分光分析で規定通りに行った。NMR測定のため、試料を重水素化溶媒(CD3OD、CDCl3、またはDMSO-d6)に溶解させ、標準的な観察条件下、Varian Gemini2000装置(400MHz)を用いて、1H-NMRスペクトルを取得した。質量分析による化合物の同定は通常、エレクトロスプレーイオン化方法(ESMS)を使用して、Applied Biosystems(Foster City、CA)モデルAPI150EX装置またはAgilent(Palo Alto、CA)モデル1200LC/MSD装置を用いて行った。
測定技法
粉末X線回折
粉末X線回折分析は、Bruker D8-Advance X線回折計を使用して実施した。X線源は、40kVの出力電圧および40mAの電流でのCu-Kα放射とした。装置をBragg-Brentanoの幾何学的配置で操作し、Goebel Mirrorを使用して、平行X線ビームを得た。ビームにおけるいかなる発散も、線源における0.2°の縦の発散スリットと、線源および検出器におけるソーラースリット(2.5°)とによって制限した。測定のために、少量の粉末(5~25mg)を、ゼロバックグラウンドのケイ素試料ホルダー上に穏やかにプレスして、滑らかな表面を形成し、X線に曝露させた。試料は、2θの2°から35°までを、0.02°のステップサイズ、および1ステップあたり0.3秒の走査速度で、連結θ-2θモードで走査した。データ取得をBruker DiffracSuiteソフトウェアによって制御し、Jadeソフトウェア(バージョン7.5.1)によって分析した。装置は、コランダム標準を用いて±0.02°2θ角内で較正した。
データ収集で使用したBragg-Brentanoの幾何学的配置は、優先配向の傾向があることに留意すべきである。これらの条件下では、回折ピークの相対強度は、球状粒子の理想的な分布から、または単結晶データからシミュレートされる回折パターンから得られるであろう、真の相対強度を表さない可能性がある。また、広範な優先配向に起因して、一部の回折パターンでは一部のピークが見られない可能性もある。
示差走査熱量測定
DSC測定は、TA Instruments Model Q-100モジュールをThermal Analystコントローラーと共に使用して実施した。データを、TA Instruments Universal Analysisソフトウェアを使用して、収集および分析した。試料を、正確に秤量して、覆いをしたアルミニウムパンに入れた。5℃で5分間の等温平衡期間の後、試料を、0℃から250℃まで10℃/分の線形加熱傾斜を使用して加熱した。
熱重量分析
熱重量測定は、高分解能を備えたTA Instruments Model Q-500モジュールを使用して実施した。データは、TA Instruments Thermal Analystコントローラーを使用して収集し、TA Instruments Universal Analysisソフトウェアを使用して分析した。秤量した試料を白金パンに載せ、周囲温度から300℃まで10℃/分の加熱速度で走査した。天秤室および炉室は、使用中に窒素流でパージした。
偏光顕微鏡法
偏光顕微鏡(PLM)研究については、試料を、交差偏光フィルターを用いて光学顕微鏡(Olympus BX51)下で検査した。PaxIt Imagingソフトウェア(バージョン6.4)により制御されるPaxCamカメラで、像を収集した。試料を、浸漬媒体として軽鉱油を用いてガラススライド上に調製した。粒子のサイズに応じて、4×、10×、または20×の対物レンズを拡大に使用した。
動的水分収着評価
DMS測定は、VTI大気微量天秤、SGA-100システム(VTI Corp.、Hialeah、FL 33016)を使用して実施した。秤量した試料を使用し、分析の開始時に、湿度を、可能な限り最も低い値(相対湿度0%近く)とした。DMS分析は、5~90%の全湿度範囲にわたり、相対湿度5%/ステップの走査速度からなるものとした。DMSの実行は、25℃で等温的に実施した。
合成反応スキーム
本発明において利用される(3S,5R)-5-[[4-(5-クロロ-2-フルオロフェニル)フェニル]メチル]-3-(ヒドロキシメチル)-3-メチルピロリジン-2-オン(A)は、出発物質および試薬から、実施例1に記載されている手順を使用して、スキームAにおいて示されているように調製することができる。
スキームAにおける一般的反応ステップは、以下の通りである。1を、不活性雰囲気下、低温で、水性塩基を加えた溶媒中に溶解し、続いて溶媒中のアミン保護剤を室温で加えてから、単離することによって、化合物1のアミン基を最初に保護する。およそ1:2:1のモル当量の1対塩基対アミン保護剤を使用することができる。1とアミン保護剤との反応に使用することができる溶媒として、これらに限定されないが、アセトニトリルなどの極性非プロトン性溶媒が挙げられる。塩基として、これらに限定されないが、LiOH、NaOH、およびKOHを含めた強塩基が挙げられる。低温は通常、-10℃またはそれより下である。
次に、不活性雰囲気下、両性化合物、例えば、水中NaHCO3と、Pd(PPh3)4などの触媒とを加えて、化合物2を溶媒中で3とカップリングする。これは誘導体4をもたらし、次いでこれを不活性雰囲気下、求核触媒を加えた非プロトン性溶媒中で5と反応させる。ペプチドカップリング剤をさらに使用することによって、化合物6を形成する。次いで、化合物6を不活性雰囲気下、弱酸を加えた溶媒に入れ、還元剤を低温で(-5℃またはそれより下で)加える。この混合物を数時間撹拌した後、ブラインでクエンチする。次いで、化合物7を弱塩基の溶液による抽出によって単離し、乾燥剤で乾燥させてから、減圧下で濃縮する。
次に、化合物7を、MeIなどのメチル化剤を使用して、弱塩基を加えた非プロトン性溶媒中でメチル化する。形成される固体を単離し、溶媒中にさらに溶解してから、乾燥剤で乾燥させ、減圧下で濃縮することによって、化合物8を得る。化合物8をエーテル溶媒中で酸とさらに反応させることによって、化合物9を得、次いでこれを濃縮し、追加の溶媒で洗浄することによって、化合物9’を得る。次いで、化合物9’を不活性雰囲気下で極性非プロトン性溶媒に入れ、低温(<-5℃)で10と反応させることによって、中間体11を得る。11を有機塩基と反応させ、続いて低温で10と反応させ、還元剤で還元することによって、化合物Aを形成する。
本発明において利用される(2S,4R)-ベンジル4-アミノ-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-2-メチルペンタノエート(B)は、以前に作製した出発物質(A)および試薬から、実施例2に記載されている手順を使用して、スキームBにおいて示されているように調製することができる。
スキームBにおける一般的反応ステップは、以下の通りである。最初に、化合物Aを、酸を含有する溶媒中で3,4-ジヒドロ-2H-ピランと反応させてから、中和および単離を行う。得られる粗混合物をエーテル溶媒に入れ、低温で撹拌することによって、スラリーを形成する。スラリーをさらにすすぎ、乾燥させ、濃縮することによって、粘性の油12を得てから、環窒素を二炭酸ジ-tert-ブチルで保護することによって、標準的な条件下で13を形成する。13中のエーテル基を強酸でさらに切断することによって、14において示されている通りのアルコール基を形成する。次いで、複素環式有機リガンド、例えば、1,10-フェナントロリンを不活性雰囲気中で加え、続いて金属触媒、例えば、パラジウム触媒を加えることにより、化合物14をエチルビニルエーテルと反応させる。精製した生成物15中のアルケン基を、例えば、H2および10%Pd/Cを使用して還元することによって、16を得る。16中のピロリドンの開環(鹸化)を水性塩基により達成してから、精製および単離を行うことによって、化合物17を得る。17中のカルボキシレート基を、標準的な条件下、例えば、臭化ベンジルでさらに保護することによって、18を形成する。これを行ってから、18のアミン基を脱保護することによって、化合物Bを形成する。
上述の通り、スキームAおよびBのための典型的な反応条件を、以下の実施例1および2にそれぞれ記載する。
(実施例1)
(3S,5R)-5-[[4-(5-クロロ-2-フルオロフェニル)フェニル]メチル]-3-(ヒドロキシメチル)-3-メチルピロリジン-2-オン(A)の合成
ステップA-1:
(2R)-2-アミノ-3-(4-ブロモフェニル)プロパン酸(1)(3300g、13.52mol)のアセトニトリル(46.2L)中溶液を、窒素の不活性雰囲気でパージおよび維持した250Lの反応器に入れた。NaOH(1081g、27.02mol)の水(46.2L)中溶液を、いくつかのバッチに分けて-10℃で加えた。これに続いて、二炭酸ジ-tert-ブチル(2948g、13.51mol)のACN(6.6L)中溶液を加えた。得られた溶液を室温で一晩撹拌し、減圧下でさらに濃縮した。この得られた溶液を45Lの水/氷で希釈し、溶液のpH値を1N HClでpH2に調整した。次いで、得られた溶液を3×50LのDCMで抽出し、有機層を合わせた。得られた混合物を1×50Lのブラインで洗浄し、無水MgSO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。これは、白色の固体として、3720g(80%)の(2R)-3-(4-ブロモフェニル)-2-[[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ]プロパン酸(2)をもたらした。
ステップA-2:
(2R)-3-(4-ブロモフェニル)-2-[[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ]プロパン酸(2)(530g、1.54mol)のジオキサン(9.54L)中溶液、(5-クロロ-2-フルオロフェニル)ボロン酸(3)(348g、2.00mol)、Na2CO3(228g、2.15mol)の水(1.06L)中溶液、およびPd(PPh3)4(8.89g、7.69mmol)を、窒素の不活性雰囲気でパージおよび維持した20Lの四口丸底フラスコに入れた。得られた溶液を油浴中で2.5時間加熱還流し、次いで水/氷浴で室温に冷却した。得られた溶液を15LのEtOAcで希釈し、1×5Lの1N HClおよび4×5Lのブラインで洗浄した。合わせた有機抽出物を無水MgSO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣を2×1LのPEで洗浄した。これは、褐色の油として、510g(84%)の(2R)-2-[[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ]-3-[4-(5-クロロ-2-フルオロフェニル)フェニル]プロパン酸(4)をもたらした。
ステップA-3:
(2R)-2-[[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ]-3-[4-(5-クロロ-2-フルオロフェニル)フェニル]プロパン酸(4)(510g、1.29mol)のDCM(5000mL)中溶液、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサン-4,6-ジオン(5)(205g、1.42mol)、および4-ジメチルアミノピリジン(237g、1.94mol)を、窒素の不活性雰囲気でパージおよび維持した10Lの四口丸底フラスコに入れた。これに続いて、-10℃で撹拌しながら、DCC(294g、1.43mol)のDCM(600mL)中溶液を滴加した。得られた溶液を室温で一晩撹拌し、固体を濾過により除去した。濾液を1N HCl(2L)およびブライン(3L)で洗浄した。合わせた有機抽出物を無水MgSO4上で乾燥させ、固体を濾過により除去した。濾液であるtert-ブチルN-[(2R)-3-[4-(5-クロロ-2-フルオロフェニル)フェニル]-1-(2,2-ジメチル-4,6-ジオキソ-1,3-ジオキサン-5-イル)-1-オキソプロパン-2-イル]カルバメート(6)を、さらなる精製なしで次のステップでそのまま使用した。
ステップA-4:
tert-ブチルN-[(2R)-3-[4-(5-クロロ-2-フルオロフェニル)フェニル]-1-(2,2-ジメチル-4,6-ジオキソ-1,3-ジオキサン-5-イル)-1-オキソプロパン-2-イル]カルバメート(6)のDCM(7L)およびAcOH(600mL)中溶液を、窒素の不活性雰囲気でパージおよび維持した20Lの四口丸底フラスコに入れた。これに続いて、NaBH4(88.8g、2.35mol)をいくつかのバッチに分けて-5℃で加えた。得られた溶液を、氷/塩浴中で、-5℃で3時間撹拌し、次いで滴下の形式で1Lのブラインを加えることによってクエンチした。得られた溶液を2Lのブラインで希釈し、2×2Lの水および1×1LのNa2CO3および1×2Lのブラインで洗浄した。合わせた有機抽出物を無水MgSO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。これは、黄色の油として、520g(79%)のtert-ブチルN-[(2S)-1-[4-(5-クロロ-2-フルオロフェニル)フェニル]-3-(2,2-ジメチル-4,6-ジオキソ-1,3-ジオキサン-5-イル)プロパン-2-イル]カルバメート(7)をもたらした。
ステップA-5:
tert-ブチルN-[(2S)-1-[4-(5-クロロ-2-フルオロフェニル)フェニル]-3-(2,2-ジメチル-4,6-ジオキソ-1,3-ジオキサン-5-イル)プロパン-2-イル]カルバメート(7)(520g、1.03mol)のアセトン/DMF(1:1)(5.2L)中溶液、Na2CO3(163g、1.54mol)、およびMeI(219g、1.54mol)を、窒素の不活性雰囲気でパージおよび維持した10Lの四口丸底フラスコに入れた。得られた溶液を室温で一晩撹拌し、次いで15Lの水で希釈した。1時間撹拌後、固体を濾過により収集した。残渣を5LのDCM中に溶解した。合わせた有機抽出物を無水MgSO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。これは、黄色の固体として、520g(97%)のtert-ブチルN-[(2R)-1-[4-(5-クロロ-2-フルオロフェニル)フェニル]-3-(2,2,5-トリメチル-4,6-ジオキソ-1,3-ジオキサン-5-イル)プロパン-2-イル]カルバメート(8)をもたらした。
ステップA-6およびA-7:
tert-ブチルN-[(2R)-1-[4-(5-クロロ-2-フルオロフェニル)フェニル]-3-(2,2,5-トリメチル-4,6-ジオキソ-1,3-ジオキサン-5-イル)プロパン-2-イル]カルバメート(8)(520g、1.00mol、1.00当量)のCPME(2.6L)中溶液を、窒素の不活性雰囲気でパージおよび維持した10Lの四口丸底フラスコに入れた。これに続いて、HCl/CPME(4N)(2.6L)を-5℃で加えた。得られた溶液を室温で一晩撹拌した。得られた混合物を減圧下で半分の容量まで濃縮した。固体を濾過により収集し、EtOAc/DIPE(1:2)でさらに洗浄した。これは、オフホワイト色の固体として、220g(61%)の(3R,5R)-5-[[4-(5-クロロ-2-フルオロフェニル)フェニル]メチル]-3-メチル-2-オキソピロリジン-3-カルボン酸(9’)をもたらした。
ステップA-8およびA-9:
(3R,5R)-5-[[4-(5-クロロ-2-フルオロフェニル)フェニル]メチル]-3-メチル-2-オキソピロリジン-3-カルボン酸(9’)(218g、602.55mmol)のTHF(4L)中溶液、NMM(170g、1.68mol)を、窒素の不活性雰囲気でパージおよび維持した10Lの四口丸底フラスコに入れた。これに続いて、-5℃で撹拌しながら2-メチルプロピルクロロホルメート(164.4g、1.20mol)を滴加した。得られた溶液を氷/塩浴中で、-5℃でさらに20分間撹拌した。-5℃で撹拌しながらNaBH4(91.5g、2.42mol)の水(400mL)中溶液をさらに滴加し、室温でさらに1時間撹拌した。次いで、反応を2.6Lの1N HClの滴加によってクエンチした。得られた混合物をさらに1時間撹拌し、次いで減圧下で濃縮することによって、THFを除去した。次いで、残渣混合物をさらに1時間撹拌し、次いで固体を濾過により収集した。固体を水で洗浄し、THF中に溶解し、無水Na2SO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。これは、白色の固体として、170g(81%)の(3S,5R)-5-[[4-(5-クロロ-2-フルオロフェニル)フェニル]メチル]-3-(ヒドロキシメチル)-3-メチルピロリジン-2-オン(A)をもたらした。
(実施例2)
(2S,4R)-ベンジル4-アミノ-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-2-メチルペンタノエート(B)の合成
ステップB-1:
5000mLのジャケット付き丸底フラスコ中に、(3S,5R)-5-((5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)メチル)-3-(ヒドロキシメチル)-3-メチルピロリジン-2-オン(A)(121.0g、348mmol)およびDCM(2420mL)を加えることによって、均質で透明な溶液を得、次いでこれを撹拌しながら0℃に冷却した。3,4-ジヒドロ-2H-ピラン(71.0mL、783mmol)および4-メチルベンゼンスルホン酸(20.97g、122mmol)を加え、反応混合物を18.5℃で一晩撹拌することによって、>98%変換を達成した。次いで、反応混合物を2420mLの飽和NaHCO3でクエンチし、相をゆっくりと分離し、有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒を除去した。次いで、粗混合物を、21℃で1時間にわたり撹拌しながらDIPE(1815mL)に入れ、次いで0~5℃で5時間にわたり冷却および撹拌することによって、白色のスラリーを得た。スラリーを濾過し、1×容量の冷たい(0℃)DIPEですすぎ、濾過した。得られた固体を一晩乾燥させることによって、113.8g;HPLC純度99.1%を得た。濾液をさらに乾燥させることによって、重さ24gの高粘度の油を得た。DIPE(96mL)を加え、混合物を0~5℃で一晩撹拌することによって、(3S,5R)-5-((5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)メチル)-3-メチル-3-(((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)メチル)ピロリジン-2-オン(12)を得た。
ステップB-2:
5000mLのジャケット付き丸底フラスコ中に、撹拌しながら(3S,5R)-5-((5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)メチル)-3-メチル-3-(((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)メチル)ピロリジン-2-オン(12)(113.8g、263mmol)およびTHF(1707mL)を加えることによって、透明均質な溶液を得、これを窒素でパージし、-10℃に冷却した。THF(290mL、290mmol)中1M NaHMDSを0℃より下の温度で滴加し、反応混合物を30分間撹拌した。二炭酸ジ-tert-ブチル(69.0g、316mmol)を、その3倍容量で、THF(207mL)中、10℃より下の温度で滴加することによって溶解した。反応混合物を20℃で一晩撹拌し、20%塩化アンモニウム溶液(2731mL)でクエンチした。EtOAc(1821mL)を加え、相を水層(pH9)と有機層とに分離した。有機層をブライン(2731mL)で洗浄し、相を水相(pH7)と有機層とに再度分離し、ここで、有機層をNa2SO4上で乾燥させてから、濾過した。溶媒を除去し、高粘度の油を得た。一晩さらに乾燥させると、(3S,5R)-tert-ブチル5-((5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)メチル)-3-メチル-2-オキソ-3-(((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)メチル)ピロリジン-1-カルボキシレート(13)の泡含有固体が生成された(146.5g、275mmol、収率105%、純度98.76%)。
ステップB-3:
(3S,5R)-tert-ブチル5-((5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)メチル)-3-メチル-2-オキソ-3-(((テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)オキシ)メチル)ピロリジン-1-カルボキシレート(13)(146.5g、275mmol)およびMeOH(1465mL)を、3000mLの丸底フラスコに加えた。4-メチルベンゼンスルホン酸、H2O(3.93g、20.65mmol)をさらに加え、反応混合物を0℃で16時間撹拌することによって、>97%変換を達成した。完了した反応物に、EtOAc(2930mL)を加え、続いて30℃より下の浴温度で蒸留することによって、およそ293mLへの総容量の低減を達成した。濃縮した溶液に、EtOAc(2930mL)を再度加え、およそ293mLまで蒸留した。最終洗浄を、EtOAc(2930mL)を加えることによって完了させ、1465mLの最終容量まで蒸留することによって、あらゆる残渣メタノールを完全に除去した。30分間にわたり≦21℃の温度で撹拌しながら、上記最終容量(1465mL)を、10%NaHCO3を含有するEtOAc(1465mL)で洗浄することによって、残存する酸をクエンチした。撹拌を止めることによって、層を分離させた(水層、pH約7)。有機層を1465mLのブラインで洗浄し、分離させた(水層、pH=7)。次いで、酢酸エチル層を約146.5mLまで減圧乾燥させた後、1465mLのヘキサンを曇り点までゆっくりと加えた。溶液を1時間静置させ、続いて1465mLのヘキサンを加えた。混合物を0℃で一晩撹拌し、固体を濾過し、293mLのヘキサンで洗浄した。残存する固体を高減圧下で一晩乾燥させることによって、98.4gの(3S,5R)-tert-ブチル5-((5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)メチル)-3-(ヒドロキシメチル)-3-メチル-2-オキソピロリジン-1-カルボキシレート(14);収率80%;HPLC純度99.3%を得た。
ステップB-4:
(3S,5R)-tert-ブチル5-((5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)メチル)-3-(ヒドロキシメチル)-3-メチル-2-オキソピロリジン-1-カルボキシレート(14)(118.2g、264mmol)およびDCM(591mL)を100mLの丸底フラスコに加えることによって、無色の溶液を形成した。エチルビニルエーテル(761mL、7916mmol)および1,10-フェナントロリン(4.76g、26.4mmol)を容器に加え、N2でパージし、続いて酢酸Pd(II)(8.89g、39.6mmol)を加えた。反応混合物を室温で20時間撹拌することによって、約81%変換を達成した。溶媒を回転蒸発により除去することによって、粗生成物を得、これをカラムクロマトグラフィーで精製した。カラムを100%ヘキサンで予め調整し、粗生成物(30g/1回の実行)をDCM中に溶解し、300gのシリカゲル充填カラム上に充填した。40%酢酸エチル/ヘキサンでの定組成勾配を使用することによって、化合物を溶出し、91.25gの精製された(3S,5R)-tert-ブチル5-((5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)メチル)-3-メチル-2-オキソ-3-((ビニルオキシ)メチル)ピロリジン-1-カルボキシレート(15)を得た。
ステップB-5:
(3S,5R)-tert-ブチル5-((5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)メチル)-3-メチル-2-オキソ-3-((ビニルオキシ)メチル)ピロリジン-1-カルボキシレート(15)(185g、390mmol)をTHF(1900mL)中に溶解し、酢酸(11.17mL)を加え、続いて10分間にわたりN2でパージした。次いで、混合物をH2でバブリングし、10%Pd/C(または18.5g)を加えた。HPLCによる測定で反応が完了に達するまで、ゆっくりとしたH2(ガス)パージを22℃で一晩継続した。反応混合物を、セライトを通す濾過をすることによって、均質な溶液を得た。次いで、濾液を、高減圧下、ポンプで乾燥させることによって、185グラムの(3S,5R)-tert-ブチル5-((5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)メチル)-3-(エトキシメチル)-3-メチル-2-オキソピロリジン-1-カルボキシレート(16);89%HPLC;収率99%を得た。
ステップB-6:
(3S,5R)-tert-ブチル5-((5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)メチル)-3-(エトキシメチル)-3-メチル-2-オキソピロリジン-1-カルボキシレート(16)(185g、389mmol)および約1205mLのTHFを3000mLの丸底フラスコ中に加えることによって、無色の溶液を得た。およそ1205mLのH2O中1M LiOHを加え、反応混合物を室温で一晩撹拌することによって、鹸化を完了させた。およそ1205mLのEtOAcを一晩の反応混合物(pH=13)に加え、次いでおよそ1205mLの飽和水性NH4Clで洗浄した。相を水相(pH=8)と有機相とに分離し、生成物は有機層中に残存した。次いで、有機層をブラインで洗浄し、層を再度分離し、有機層をNa2SO4上で乾燥させた後、濾過し、減圧乾燥させることによって、リチウム(2S,4R)-4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-2-メチルペンタノエート(17)(213g、426mmol、収率94.6%)を得た。
ステップB-7:
リチウム(2S,4R)-4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-2-メチルペンタノエート(17)(194.0g、393mmol)および約650mLのDMFを2Lの丸底フラスコに入れることによって、無色の溶液を得た。K2CO3(81g、589mmol)を加え、反応混合物を室温で15分間撹拌した。次いで、臭化ベンジル(56.1mL、471mmol)を一度に加え、反応混合物をおよそ22℃で一晩撹拌した。完全な変換を、LCMSまたはTLCによる測定で20時間後に達成した。およそ3900mLのNH4Clおよびおよそ650mLのEtOAcを加え、15分間にわたり撹拌し、相を分離した。有機層を約3900mLのブラインで洗浄し、層を再度分離し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、続いて溶媒を除去した。粗生成物をSiO2 0~25%EtOAc/ヘキサン上で精製し、合わせた精製された画分により、(2S,4R)-ベンジル4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-2-メチルペンタノエート(18)(190g、322mmol、収率82%)を得た。MS m/z{M+H]+:C33H39ClFNO5の計算値、584.118;実測値 584.12。
ステップB-8:
(2S,4R)-ベンジル4-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-2-メチルペンタノエート(18)を3Lの丸底フラスコに入れ、加えた(190.0g、325mmol)。CPME(1084mL、3253mmol)中3M HClを加え、反応混合物を室温で50時間にわたり撹拌することによって、スラリーを>99%変換で得た。およそ1084mLの新たなCPMEを加え、得られたスラリーを3時間にわたり撹拌してから、濾過した。固体を約250mLの冷たい(0℃)CPMEですすいだ。次いで、固体をN
2ガス下で乾燥させることによって、(2S,4R)-ベンジル4-アミノ-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-2-メチルペンタノエート(B)、HCl(150g、288mmol、収率89%、純度99.5%)として、白色の固体を得た。MS m/z{M+H]
+:C
28H
31ClFNO
3の計算値、484.00;実測値 520.46(HCl塩)。
(実施例3)
(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-ヒドロキシイソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタン酸(化合物I)
ステップ1:
ベンジル(2S,4R)-4-アミノ-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-2-メチルペンタノエート塩酸塩(B)(2.95kg、5668mmol)を、THF(26.64kg)中でHCTU(2.71kg、6551mmol)およびDIPEA(0.28kg、2180mmol)を使用して、3-((4-メトキシベンジル)オキシ)イソオキサゾール-5-カルボン酸(19)(1.48kg、5939mmol)とカップリングした。混合物を<10℃に冷却した。次いで、DIPEA(2.24kg、17.332mmol)を混合物に10℃より下の温度で加え、混合物を20℃±10℃の温度に調整し、少なくとも1時間完了まで撹拌した。次に、EtOAc(26.55kg)を混合物に加え、続いてUSP水(29.5kg)を30℃より下の温度で加えた。次いで、混合物を少なくとも30分間20℃±10℃の温度で撹拌し、少なくとも30分間沈降させた。下方の水層を容器に分けた。5w/w%NaHCO3溶液(30.4kg)を混合物に30℃より下の温度で加え、20℃±10℃の温度で少なくとも30分間さらに撹拌し、少なくとも30分間沈降させた。下方の水層を容器に分けた。NaHCO3ステップをさらに2回繰り返し、次いで混合物を6-クロロ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール内容物について試料採取した。10w/v%NaCl(31.6kg)溶液を混合物に30℃より下の温度で加え、20℃±10℃の温度で少なくとも30分間撹拌し、次いで少なくとも30分間沈降させた。下方の水層を容器に分けた。バッチ温度を30℃より下に維持しながら、残存する層を約9Lまで蒸留した。次いで、EtOAc(39.8kg)を混合物に加え、バッチ温度を30℃より下に維持しながら、減圧蒸留を使用することによって、混合物の容量を約9Lに減少させた。EtOAc(10.3kg)を混合物に再度加え、混合物を少なくとも10分間撹拌した。次いで、第1の反応容器中の混合物をインラインフィルターに通して第2の反応容器に移した。EtOAc(5.6kg)を使用することによって、第1の反応容器をすすぎ、インラインフィルターに通して第2の反応容器に移した。反応容器2中の生成物、ベンジル(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-((4-メトキシベンジル)オキシ)イソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタノエート(20)(4.05kg;5663mmol)を少なくとも10分間混合し、滅菌Nalgene容器中に排出し、さらなる処理まで0~10℃の間で保存した。
ステップ2:
Pd/C、10%w/w(0.42kg)を、ベンジル(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-((4-メトキシベンジル)オキシ)イソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタノエート(20)(4.05kg;5663mmol)と共に反応容器1に入れた。次いで、変性エタノール(27.5kg)を反応容器1に加え、構成成分を20~30℃で少なくとも5分間混合した。NaOHを含有するスクラバーを使用することによって、このステップの間に発生したHClガスを処理した。<30℃の温度を維持しながら6M HCl(3.1kg)を反応物に加え、少なくとも5分間混合した。減圧を適用し、同時に窒素を供給することによって、混合物を脱気した。次いで、混合物の温度を20~30℃に調整し、反応容器を排気した。反応が完了するまでH
2(5.0超高純度)を混合物にバブリングした。水素供給を停止し、混合物を窒素でパージし、インラインフィルターに通して第2の反応容器に移した。変性エタノール(6.5kg)をすすぎ液として第1の反応容器に入れ、インラインフィルターに通して第2の反応容器に移した。次いで、温度を30℃より下に維持しながら、第2の反応容器中の混合物を、減圧を使用して約41Lまで蒸留した。温度を20~30℃に調整し、30%w/wのH
2O
2溶液(0.36kg)を、温度を<25℃に維持しながら第2の反応容器中の混合物に加えた。混合物を、反応完了まで20~30℃で少なくとも16時間撹拌した。温度を30℃より下に維持しながら、第2の反応容器中の混合物を、減圧を使用して約12Lまで蒸留した。次いで、ACN(40.1kg)をこの混合物に加え、温度を30℃より下に維持しながら、混合物を、減圧を使用して約12Lまで蒸留した(このステップを繰り返した)。次に、ACN(3.2kg)を第2の反応容器中の混合物に再度加え、40~50℃に少なくとも1時間加熱した。混合物を少なくとも1.5時間にわたり15~25℃に冷却し、その温度で少なくともさらに2時間維持した後、遠心分離機により濾過した。次いで、ACN(13.0kg)を第1の反応容器に加え、使用することによって、遠心分離した固体を洗浄した。次いで、遠心分離した固体を減圧下、20~30℃で少なくとも16時間乾燥させることによって、(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-ヒドロキシイソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタン酸(4,218mmol;2.13kg;収率74.5%;純度97.5%)を得た。
(実施例4)
結晶性の(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-ヒドロキシイソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタン酸(化合物I’)の調製
ステップ3:
化合物I(2.0kg;3961mmol)、EtOAc(36.0kg)およびUSP水(20kg)を反応容器Aに加え、得られた混合物を20±10℃で少なくとも30分間撹拌した。次いで、バッチを少なくともさらに30分間沈降させた。下方の水層は分離し、容器中に保存しつつ、残存する非水相はインラインフィルターに通して反応容器Bに移した。EtOAc(3.6kg)を反応容器Aに加えることによって、すすぎ、インラインフィルターに通して反応容器B中の混合物に移した。次いで、反応容器B中の混合物を減圧蒸留して容量を減少させた(6L)。追加量のEtOAc(25.2kg)を反応容器Aに加え、インラインフィルターに通して反応容器B中の混合物に移した。次いで、反応容器B中の混合物を75±5℃の温度に加熱し、固体が溶解するまで少なくとも5分間撹拌した。次いで、この混合物を少なくとも6時間にわたり-10±5℃に冷却し、-10±5℃で少なくとも12時間さらに撹拌してから、フィルターC上に濾過した。追加量のEtOAc(5.4kg)を反応容器Aに入れ、インラインフィルターに通して反応容器Bにさらに移し、-10±10℃に冷却した。次いで、この溶媒を使用することによって、フィルターC上の濾液を洗浄した。次いで、濾液および洗液を容器中に収集した。濾液または湿潤ケーキを減圧下、40℃±10℃で少なくとも16時間乾燥させ、次いで純度について試料採取した。化合物I’はHPLCによる測定で純度が≧98.0%であり、EtOAcはガスクロマトグラフィーによる測定で≦2.5%w/w存在した。結晶化後の化合物I’の収量は(1.05kg;2079mmol;収率52.5%;純度98.5%)であった。
(実施例5)
結晶性の(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-ヒドロキシイソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタン酸(化合物I’)の代替的調製
化合物I(4.9kg;9705mmol)、SiliaMetS(登録商標)チオール(1.62kg)およびEtOH(200プルーフ、54.9kg)を反応容器Aに加え、得られた混合物を約25℃~35℃の間の温度で少なくとも1時間撹拌した。次いで、混合物を、セライトを通す濾過をし、EtOH(200プルーフ、7.8kg)で洗浄し、インライン0.22μmフィルターを使用して反応容器Bに移し、EtOH(200プルーフ、7.8kg)ですすいだ。容器B中の混合物をその元の容量の約10%まで約40℃~60℃の間の温度でさらに減圧蒸留した。残存する混合物を含有する容器を>50℃に調整してから、濾過した(0.22μm)USP精製水(49kg)を加えた。次に、混合物を、生成物が完全に溶解するまで撹拌しながら約75℃~85℃の間の温度に加熱した。混合物を少なくとも4時間にわたり約-5℃~5℃の間の温度に冷却し、同じ温度で少なくともさらに16時間撹拌した。次いで、得られた混合物を濾過し、EtOH(200プルーフ、9.8kg)とUSP水(12.3kg)との予め冷却した混合物で洗浄した。予め冷却した溶媒混合物の温度を約0℃~10℃の間に調整した。残存する濾液を減圧下、約40℃~60℃の間の温度で少なくとも16時間乾燥させ、次いで溶媒、およびHPLCによる純度について試料採取した。結晶化後の化合物I’の収率は90%(4.6kg;9110mmol;純度≧97.0%)であった。
(実施例6)
結晶性の(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-ヒドロキシイソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタン酸(I’)の安定性研究
医薬品開発における1つの課題は、適度に高い融点を有する安定した結晶性形態の薬物を発見することに関する。本発明の1つの課題は、上述の好ましい物理的特性を有する、化合物Iの遊離酸の小さな結晶を得ることが困難であることであった。これを達成すると、小さな結晶は216℃付近で融解し、化合物I’の加速安定性研究を、以下で報告する温度および相対湿度(RH)%で行った。
これらのデータは、化合物I’が、25℃、60%RHで少なくとも18ヶ月間、および40℃、75%RHの加速条件による測定で少なくとも2年間は安定したままであることを実証している。これらのデータはまた、定量化可能量の水が12ヶ月目で検出されていないことも示し、したがって、結晶がその期間にわたり非吸湿性のままであることを示している。さらに、これらのデータは、1%を超える合計不純物/分解物が、18ヶ月(25℃、60%RH)または2年間(40℃、75%RHの加速条件)にわたり検出されていないことを示している。
アッセイ
アッセイ1:ラット、イヌおよびサルにおけるIV/PO薬動学研究
ラット、イヌまたはサルの各PK研究を、試験化合物の製剤化から始めた。適切な質量の各試験化合物を、各化合物の最終濃度が投薬に適当となるような容量のビヒクル(例えば、H2O中5%重炭酸ナトリウム、5%デキストロース)中に加えた。経口投薬には均質な懸濁物が許容されるが、静脈内投薬溶液を投薬前に滅菌濾過(0.2μm)して、微粒子が投与されないことを確実にした。
ラットの研究では、予めカニューレ挿入された雄性Sprague-Dawleyラット(1経路あたり3匹)をHarlan LaboratoriesまたはCharles Rivers Laboratoriesから入手した。ラットに、シリンジおよび栄養補給チューブを使用して胃の中に送達される経口用量、または静脈内(外側尾静脈からの)用量のいずれかの投薬溶液を与えた。最終用量は、0.5mg/kgとした。投与後3分、15分、30分、1時間、2時間、4時間、6時間、および24時間の時点で、逐次的な血液試料を、頚静脈に植え込まれたカニューレから採取した。試料採取は、手作業で、または自動採血器を使用して実施した。試料は、EDTAを抗凝血剤として含有するmicrotainerチューブ内に収集し、低温遠心分離によって血漿に加工した。
イヌの研究では、Agilux Laboratories(Worcester、MA)で飼育され、体重が9~14kgの間である雄性非ナイーブビーグル犬(1経路あたり3匹)に、経口または静脈内用量のいずれかを与えた。経口用量は、シリンジおよび栄養補給チューブを使用して胃の中に送達し、続いておよそ10mLの水フラッシュを行った。経口用量は2mL/kgの容量で投与した。静脈内用量は、伏在静脈(sphenous vein)に入れた経皮カテーテルを介して投与し、続いておよそ3mLの生理食塩水フラッシュを行った。静脈内用量は0.5mL/kgの容量で投与した。IVまたはPOのための最終用量は、0.1mg/kgとした。投与後3分、15分、30分、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、および24時間の時点で、逐次的な血液試料を直接静脈穿刺によって採取した。試料はすべて、EDTAを抗凝血剤として含有するmicrotainerチューブ内に手作業で収集し、低温遠心分離によって血漿に加工した。
IVおよびPOの両方について最終濃度が1.0mg/mLで投薬されるような容量のビヒクル(例えば、経口およびIVには、H2O中5%重炭酸ナトリウム、5%デキストロース、pH7.4、IVには、0.22μM PDVFシリンジを通す濾過)中の適切な質量の化合物Iを用いて、サルのPK研究を実施した。
Xenometrics(Stilwell、KS)で飼育された雄性カニクイザル(1経路あたり3匹)に、1または2mg/kgのIV用量またはPO用量の化合物Iを与えた。静脈内用量の化合物Iは、橈側皮静脈内の留置カテーテルを介して投与し、続いておよそ3mLの生理食塩水フラッシュを行った。静脈内用量は1mL/kgの容量で投与した。経口用量は、シリンジおよび栄養補給チューブを使用して胃の中に送達し、続いておよそ10mLの水フラッシュを行った。経口用量は2mL/kgの容量で投与した。48時間を通じて各時点(投与前、0.083時間、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、および24時間)で、各動物から橈側皮静脈、大腿静脈、または伏在静脈を介して、血液試料を収集した。試料はすべて、K2EDTAチューブ内に収集し、氷上に置いた。試料を遠心分離(3200rpm、10分間、5℃)によって血漿に加工し、最終濃度2%の酢酸で酸性化した。生体分析の前に、血漿のアリコートを96ウェルプレートチューブに移し、凍結保存した(-70℃)。
化合物Iの血漿濃度は、LC/MS/MSによって決定した。血漿研究試料にボルテックスをかけ、それを96ウェルプレートに入れた。試料を、内部標準と共に200μLのアセトニトリルで抽出した。抽出物を2809RPMで10分間遠心分離し、50μLの上清を200μLの水中0.2%ギ酸と混合した。試料(10~15μL)をThermoFisher HyPURITY(商標)(C18 50×2.1mm)カラムに0.35mL/分の流速で注入した。移動相Aは、水:アセトニトリル:ギ酸(95:5:0.1、v:v:v)からなるものとし、移動相Bは、メタノール:アセトニトリル:ギ酸(50:50:0.1、v:v:v)からなるものとした(イヌ)。移動相Aは、水中0.2%ギ酸からなるものとし、移動相Bは、アセトニトリル中0.2%ギ酸からなるものとした(ラットおよびサル)。化合物Iの薬動学パラメーターは、Phoenix WinNonlinバージョン6.3(Certara、Sunnyvale、CA)を使用し、1処置群あたり3匹の動物からの個々の血漿濃度時間プロファイルを使用して、非コンパートメント分析(IVおよびPO投与について、それぞれモデル201およびモデル200)によって決定した。
血漿クリアランスは、静脈内研究アームから決定され、血漿から薬物が取り除かれる速度を表す。これは、用量を血漿濃度-時間曲線下面積で割ったものに等しい。血漿クリアランスに加えて、経口投与された薬物が、経口送達後に有効な全身レベルに到達することも不可欠である。経口生物学的利用能は、静脈内投与の結果としての曝露と比較した、経口投与の結果としての血漿曝露の測定値である。
このラットのデータは、化合物Iが、0.5mg/kgの用量でおよそ33%の経口生物学的利用能を有することを示している。より高い用量(30~1000mg/kg)では、平均生物学的利用能は、ラットにおいて49~79%の範囲であった(データは示さず)。化合物Iはまた、ラット種においてアジルサルタンと共に投与された(データは示さず)。このイヌのデータは、化合物Iがおよそ17%の限定的な経口生物学的利用能を有することを示している。より高い用量(100~300mg/kg)では、平均生物学的利用能は、7~13%の範囲であった(データは示さず)。サルのデータは、化合物Iがおよそ42%の経口生物学的利用能を有することを示している。より高い用量(30および100mg/kg)では、3つの異なる製剤についての平均生物学的利用能は、55~83%の範囲であった(データは示さず)。
アッセイ2:ラット、イヌおよびサルの種における化合物Iの腎排泄
患者において適切な長期の薬物投薬および適正な定常状態薬物濃度を保証するための重要な要素が、薬物クリアランスである。一般に、薬物クリアランスが低下すると、薬物濃度はより高くなり、薬物の効果はより強まる。化合物Iの腎クリアランスを理解するために、1回のIV用量の結果として尿中に回収される投与用量のパーセントを、3つの動物種において評価した。雄性Sprague Dawleyラット、雄性ビーグル犬および雄性カニクイザルにおける3つの別個の研究をそれぞれ行い、手順および実験結果を以下に記載する。
体重が297~316gおよび294~311gである雄性Sprague Dawleyラット(N=6、1群3匹で2群)に、0.5mg/kg(群I)および3.0mg/kg(群II)のIV用量の化合物Iを投薬カセットの一部として与えた。化合物Iを、D5W中5%NaHCO3(水中5%デキストロース、pH7.8)中に0.25mg/mLの濃度で溶解し、1.0mg/mLの最終合計濃度を得て、0.5mg/kgの静脈内用量を送達した。さらに、化合物Iを、D5W中5%NaHCO3(水中5%デキストロース、pH7.4)中に1.5mg/mLの濃度で溶解して、3mg/kgの静脈内用量を送達した。両方の製剤を、静脈内投与前に滅菌濾過した。化合物Iの投与の前後に、ラットの通常の給餌スケジュールに従ってラットを食餌にアクセスさせた。0.5mg/kgの化合物Iを与えられたコホートについては、尿をドライアイス上に収集した。24時間の尿収集期間の後、尿試料を解凍し、容量を記録し、試料を混合した後、生体分析のためにアリコート(約700μL)を取り出した。3.0mg/kgの化合物Iを与えられたコホートについては、尿を上記の通り収集したが、氷酢酸を、収集した尿アリコートに加えることによって、最終濃度2%の酢酸を得た。生体分析の前に、試料をすべて、凍結保存した(-70℃)。
化合物Iのラット尿中濃度は、LC/MS/MSによって決定した。尿試料を解凍し、K2EDTAラット血漿中に5倍希釈した。希釈した尿の50μLのアリコートを96ウェルプレートに移し、内部標準を含有する200μLのアセトニトリルで抽出した。96ウェルプレートを2809RPMで10分間遠心分離し、上清を水中0.2%ギ酸で5倍希釈し、新たな96ウェルプレートに移した。上清を水中0.2%ギ酸中に希釈した。試料(10~15μL)をThermo Hypurity(C18 50×2.1mm)カラムに0.30または0.35mL/分の流速で注入した。移動相Aは、水中0.2%ギ酸からなるものとし、移動相Bは、アセトニトリル中0.2%ギ酸からなるものとした。化合物Iのアッセイ範囲は、0.0125~25μg/mL(0.5mg/kgコホート)および0.0058~25μg/mL(3.0mg/kgコホート)とした。
体重が9.00~11.1kgおよび10.6~13.4kgである雄性非ナイーブビーグル犬(N=6、1群3匹で2群)に、0.1mg/kg(群I)および1.0mg/kg(群II)のIV用量の化合物Iを投薬カセットの一部として与えた。化合物Iを、0.1mg/kgでの投薬用に0.2mg/mLの濃度で、または1mg/kgでの静脈内投薬用に2mg/mLの濃度でPEG-200:エタノール:水(40:10:50)中に溶解し、投与前に滅菌濾過した。化合物Iの投与の前後に、イヌの通常の給餌スケジュールでイヌを食餌にアクセスさせた。尿試料は、湿潤氷または冷たいパック上で、氷酢酸を予め充填した予め秤量した容器内に収集した。試料を再度秤量し、追加の氷酢酸を必要に応じて最終濃度2%まで加えた。生体分析の前に、試料を凍結させ、保存した(-80℃)。
化合物Iのイヌ尿中濃度は、LC/MS/MSによって決定した。尿研究試料(K2EDTAビーグル犬血漿(Biochemed、Winchester、VA)中に希釈した)を解凍し、ボルテックスをかけ、10または20μLのいずれかを96ウェルプレートに入れた。試料を、内部標準のクリシンまたはグリブリドと共に、6倍大きな容量のアセトニトリル(60または120μL)で抽出した。抽出物を3000RPMで5分間遠心分離し、約70%の上清(50または100μL)を新たな96ウェルプレートに移し、等容量の水と合わせた。試料をMac Mod Ace C18(2.1×50mm、3μm)またはWaters Acquity UPLC BEH C18(50×2.1mm、1.7μm)カラムのいずれかに0.8または0.9mL/分いずれかの流速で注入した。移動相Aは、95:5:0.1(v:v:v)の水:アセトニトリル:ギ酸からなるものとし、移動相Bは、50:50:0.1(v:v:v)のメタノール:アセトニトリル:ギ酸からなるものとした。尿における化合物Iのアッセイ範囲は、0.0002~1.00μg/mLとした。
体重が2.87~3.61kgである雄性非ナイーブカニクイザル(N=3)に、1mg/kgのIV用量の化合物Iを与えた。投与前に、化合物IをD5W中5%NaHCO3(pH7.4)中に溶解し、0.22μMポリビニルジフルオリド(PVDF)シリンジフィルター(Millipore Millex-GV、SLGV033RB)を通す濾過をした。製剤は投薬の前の日に調製し、-70℃で一晩保存し、投薬の前に解凍した。静脈内用量の化合物Iは、橈側皮静脈内の留置カテーテルを介して投与し、続いておよそ3mLの生理食塩水フラッシュを行った。静脈内用量は1mL/kgの容量で投与した。尿試料を、湿潤氷または冷たいパック上で、氷酢酸を含有するチューブ内に収集することによって、任意の潜在的なグルクロニド抱合体を安定化させた。合計尿試料容量を重量測定法で推定し、アリコートを得、生体分析の前に凍結させた(-70℃)。
化合物Iのサル尿中濃度は、LC/MS/MSによって決定した。尿試料を解凍し、K2EDTAサル血漿(Bioreclamation、Westbury、NY)中に5倍希釈した。試料にボルテックスをかけ、50μLを96ウェルプレートに移した。次いで、試料を内部標準と共に200μLのアセトニトリルで抽出した。抽出物を2809RPMで10分間遠心分離し、50μLの上清を200μLの水中0.2%ギ酸に加えた。試料(10~15μL)をThermoFisher HyPURITY(商標)(C18 50×2.1mm)カラムに0.35mL/分の流速で注入した。移動相Aは、水中0.2%ギ酸からなるものとし、移動相Bは、アセトニトリル中0.2%ギ酸からなるものとした。化合物Iのアッセイ範囲は、0.00125~5μg/mLとした。
24時間の収集期間にわたり排泄された尿の平均量および尿中に排泄された投与用量の概算%を以下の表に示す。
化合物Iの腎排泄率は、ラットにおいて、投与された用量の0.02%未満または0.03%未満、イヌにおいて、投与された用量の0.02%未満または0.001%未満、サルにおいて、投与された用量のおよそ0.670%±0.593%であった。これらのデータは、化合物Iは、試験した3つの種において腎排泄率が低いことを示している。
アッセイ3:第1相単回漸増用量研究
化合物I’(形態I)(これは体内でその可溶性形態である化合物Iに変換するか、または溶解して化合物Iをもたらす)の第1相単回漸増用量(SAD)臨床試験を、例えば、慢性腎疾患、糖尿病性腎症、急性および慢性心不全、駆出率の減少を有する心不全、駆出率が保たれている心不全、心筋梗塞後無症候性左心室機能不全(MI後無症候性LVD)、亜急性心不全ならびに抵抗性および孤立性収縮期高血圧を含めた、様々な心血管および腎疾患の処置に対するネプリライシン阻害を評価するために行った。安全性および耐容性、薬動学(QD/BID投薬および非腎排泄に対する支援)、薬力学(ターゲットエンゲージメントバイオマーカーcGMPおよびANPに関する試験)、食物の影響、および絶対経口生物学的利用能、ならびに14C静脈内マイクロトレーサーを使用する腎排出を、特に試験した。
第1相研究は、4:1の比率で無作為化した健康な男女のボランティアにおける二重盲験、無作為化プラセボ対照単回漸増用量研究とした。研究では、50mg、100mg、200mg、400mgおよび600mgの単回漸増用量を投与されたコホート(n=10/活性8人およびプラセボ2人のコホート)を含んだ、漸増用量部分に関する複数週にわたる56人の健康なボランティアを登録した。第6のコホート(n=6)には、i.v.マイクロトレーサーならびにそれぞれ10μgおよび100mgの経口用量を投与した。SAD臨床試験データは、化合物Iが600mgまでの単回投与後、耐容性良好であることを部分的に実証した。
アッセイ3.1:ヒトにおけるNEP活性(cGMP)
本研究の1つの目的は、ヒトに投薬した後の化合物Iの作用の機序/継続時間を決定することであった。これを行うために、ネプリライシンターゲットエンゲージメントのバイオマーカーであるcGMPのレベルを、化合物I’を用いた投薬の後に測定することによって、化合物Iの生物学的効果の証拠を得た。例えば、血漿クリアランス値が薬動学的持続性を実証していることと類似して、投薬24時間後の血漿cGMPレベルの上昇は、薬理効果の持続時間を示している。
図6は、試験した用量におけるベースラインからの平均血漿cGMPの変化(nM)対時間を例示する。このデータは、化合物Iが単回投与後24時間にわたり平均血漿cGMPの持続的な増加をもたらし、cGMPの最大レベルが8時間~24時間の範囲で発生し、8~12時間のウィンドウで最高のcGMPレベルになることを実証している。さらに、血漿cGMP用量応答は、用量範囲の下端における、すなわち、≧100mgの用量レベルにおける最大に近い効果を実証している(図7を参照されたい)。
アッセイ3.2 ヒトにおける化合物I’のPKプロファイル、経口生物学的利用能および腎排泄
化合物Iの薬動学プロファイルは用量に比例し(図8を参照されたい)、化合物Iは高い経口生物学的利用能(80%付近)を有することが示された。SAD臨床試験からのデータはまた、低レベルの腎排出、すなわち、合計化合物I’投与用量の1%未満が、静脈内マイクロトレーサー試験技術により確認された通り、腎臓を介して排出されたことも示唆した。
興味深いことに、PKプロファイル(例えば、化合物IのCmax)およびPDプロファイル(例えば、cGMPmax)は異なる時間ウィンドウ内でピーク値を実証した。SAD臨床試験からのデータは、血漿cGMPのレベルの用量関連増加、ならびに血漿および尿の両方における24時間にわたるcGMPの持続的上昇を示唆し、化合物Iまたは化合物I’の使用を1日1回の投薬について支持するものであった。
アッセイ3.3:標準的処置との区別
現在のところ、サクビトリルをバルサルタンと組み合わせて使用することにより、慢性心不全および駆出率減少を有する患者における、心不全に関する心血管死および入院のリスクが減少することが示されている。サクビトリル(ネプリライシン阻害剤)と化合物Iとの比較は、腎排出および24時間ターゲットエンゲージメントにおける重要な区別を実証している。例えば、サクビトリルは、大部分が腎臓を介して排出される(60%腎排出)のに対して、化合物Iはそうではない(<1%腎排出)(図9を参照されたい)。これは、心疾患を有するかまたは有しない腎臓が損なわれている患者の処置にとって重要となる可能性がある。さらに、サクビトリルの投与後24時間の時点でcGMPのレベル(すなわち、ターゲットエンゲージメント)は上昇しないのに対して、化合物I’を用いた投薬の後にはcGMPのレベルが上昇する。これにより、潜在的に化合物Iまたは化合物I’を1日1回投薬することが可能となり、これは、1日2回の投薬レジメンである、バルサルタンと組み合わせたサクビトリルには当てはまらない。
アッセイ4:第1相複数回漸増用量研究
化合物I’(形態I)の第1相複数回漸増用量(MAD)臨床試験は、健康な成人および高齢の対象における、化合物Iおよびその代謝産物の安全性、耐容性、薬動学、化合物Iの薬力学、化合物I’の複数回漸増経口用量の食物の影響、絶対経口生物学的利用能および腎排出をさらに評価するために行った。後述の通り、報告されたデータは、SAD臨床試験から得られる結果を確証している。
第1相研究は、4:1の比率で無作為化した健康な男女のボランティアにおける二重盲験、無作為化プラセボ対照複数回漸増用量研究とした。研究では、(1)50mg、100mg、および200mgの漸増用量、(2)PK/PKのために200mgと並行して研究した10mgの用量、ならびに(3)1つの高齢者コホート用の100mgの用量を投与されたコホート(n=10/活性8人およびプラセボ2人のコホート)を含んだ、漸増用量部分に関する複数週にわたる50人の健康な成人(19~55歳)および高齢者(65~80歳)のボランティアを登録した。MAD臨床試験データは、化合物Iが、14日間までの複数回経口投与後、一般的に耐容性良好であることを部分的に実証した。さらに、複数回投薬後、化合物Iの腎排出は無視できるものであり、例えば、<1%が1日目および14日目にすべての対象について観察された。
アッセイ4.1:ヒトにおけるNEP活性(cGMP)、および標準的処置との区別
MAD臨床研究の一部は、ヒトに投薬した後の化合物Iの作用の機序/継続時間を決定することであった。これを行うために、ネプリライシンターゲットエンゲージメントのバイオマーカーであるcGMPのレベルを、化合物I’を用いた投薬の後に測定することによって、化合物Iの生物学的効果の証拠を得た。例えば、血漿クリアランス値が薬動学的持続性を実証していることと類似して、投薬24時間後の血漿cGMPレベルの上昇は、薬理効果の持続時間を示している。
図10は、試験した用量におけるベースラインからの平均血漿cGMPの変化(nM)対時間を例示する。このデータは、化合物Iが24時間にわたり平均血漿cGMPの持続的な増加をもたらすことを実証する。重要な結果が図10に示されている。このデータは、臨床研究の14日目に、化合物I’の1日1回用量について、トラフ期(0時間)におけるすべての用量、ならびに24時間までに測定されたすべての用量のターゲットエンゲージメントが存在したことを例示する。これは、1日2回の投薬レジメンでトラフ期および24時間においてターゲットエンゲージメントがほとんどないし全くない標準的処置とは対照的である(Guら、J. Clin. Pharmacol.、2010年、50巻、4号、401~414頁の411頁を参照されたい)。
本発明は、その特定の態様または実施形態を参照して記載してきたが、当業者であれば、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、または等価物に置き換えることができることを理解されよう。さらに、適用可能な特許法および規則で許される程度まで、本明細書中に引用されたすべての刊行物、特許および特許出願は、まるで各文書が個々に参考として本明細書中に援用されているのと同程度まで、これら全体が参考として本明細書に援用されている。
本発明の実施形態の一部の例として、以下の項目が挙げられる。
(項目1)
(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-ヒドロキシイソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタン酸(I’)の結晶性遊離酸形態。
(項目2)
6.51±0.20、11.62±0.20、13.05±0.20、15.07±0.20、および23.28±0.20の2θ値に回折ピークを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けられる、項目1に記載の結晶性形態。
(項目3)
6.51±0.20、11.62±0.20、13.05±0.20、15.07±0.20、17.12±0.20、23.28±0.20、および26.19±0.20の2θ値に回折ピークを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けられる、項目1に記載の結晶性形態。
(項目4)
6.51±0.20、11.62±0.20、13.05±0.20、15.07±0.20、15.72±0.20、17.12±0.20、20.79±0.20、21.10±0.20、23.28±0.20、24.48±0.20、25.81±0.20、および26.19±0.20から選択される2θ値に1つまたは複数の追加の回折ピークを有することによって特徴付けられる、項目1に記載の結晶性形態。
(項目5)
ピーク位置が図1に示すパターンのピーク位置と実質的に一致する粉末X線回折パターンによって特徴付けられる、項目1に記載の結晶性形態。
(項目6)
毎分10℃の加熱速度で記録した示差走査熱量測定トレースが、約214℃~約218℃の間の温度で吸熱熱流の最大値を示すことによって特徴付けられる、項目1に記載の結晶性形態。
(項目7)
図2に示すものと実質的に一致する示差走査熱量測定トレースによって特徴付けられる、項目1に記載の結晶性形態。
(項目8)
項目1から7のいずれか一項に記載の結晶性形態と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物。
(項目9)
前記薬学的に許容される担体が、ステアリン酸マグネシウムである、項目8に記載の薬学的組成物。
(項目10)
項目1から7のいずれか一項に記載の結晶性形態と、AT
1
受容体アンタゴニスト、ホスホジエステラーゼ阻害剤、レニン阻害剤、可溶性グアニル酸シクラーゼ阻害剤、ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニスト、利尿剤、またはこれらの組合せとを含む薬学的組成物。
(項目11)
薬学的に許容される担体をさらに含む、項目10に記載の薬学的組成物。
(項目12)
カプセル剤、錠剤、または懸濁液剤中に、項目1から7のいずれか一項に記載の結晶性形態を含む経口投与剤形。
(項目13)
対象における前記結晶性形態の放出が、即時性放出、制御性放出、または遅延性放出である、項目12に記載の経口投与剤形。
(項目14)
前記カプセル剤の材料が、ゼラチン、多糖、キトサン、または合成ポリマーである、項目12に記載の経口投与剤形。
(項目15)
硬質カプセル剤が、ゼラチン、多糖、または合成ポリマーを含む、項目12に記載の経口投与剤形。
(項目16)
前記カプセル剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、項目12に記載の経口投与剤形。
(項目17)
療法での使用のための、項目1から7のいずれか一項に記載の結晶性形態。
(項目18)
高血圧、心不全、または腎疾患の処置における使用のための、項目17に記載の結晶性形態。
(項目19)
高血圧、心不全、または腎疾患を処置するための医薬の製造のための、項目1から7のいずれか一項に記載の化合物の使用。
(項目20)
高血圧、心不全、または腎疾患を処置するための方法であって、(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-ヒドロキシイソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタン酸(I)、例えば、項目1から7のいずれか一項に記載の化合物を、患者に1日1回投与するステップを含む方法。
(項目21)
高血圧が、原発性高血圧、肺動脈高血圧、慢性血栓塞栓性肺高血圧、または腎動脈狭窄を伴う高血圧である、項目20に記載の方法。
(項目22)
腎疾患が、糖尿病性腎症、慢性腎疾患、タンパク質尿、急性腎臓傷害、ネフローゼ症候群、巣状分節性糸球体硬化症、または多発性嚢胞腎疾患である、項目20に記載の方法。
(項目23)
腎障害のある患者における高血圧、心不全、または腎疾患を処置する方法であって、前記(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-ヒドロキシイソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタン酸(I)、例えば、項目1から7のいずれか一項に記載の化合物の治療有効量を、前記患者に1日1回投与するステップを含む方法。
(項目24)
前記腎障害のある患者が、推定糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m
2
~15mL/分/1.73m
2
の間である慢性腎臓病を有する、項目23に記載の方法。
(項目25)
ヒトにおいて少なくとも24時間、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)または環状グアノシン一リン酸(cGMP)のレベルを増加させる方法であって、前記ヒトに、ANPまたはcGMPを増加させる量の(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-ヒドロキシイソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタン酸(I)、例えば、項目1から7のいずれか一項に記載の化合物を1日1回投与するステップを含む方法。
(項目26)
ANPおよびcGMPのレベルが、前記ヒトにおける尿中もしくは血漿中のいずれか、またはその両方で測定される、項目25に記載の方法。
(項目27)
(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-ヒドロキシイソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタン酸(I)、例えば、項目1から7のいずれか一項に記載の化合物が、非経口的に投与される、項目20、23または25のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-ヒドロキシイソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタン酸(I)を調製するためのプロセスであって、
(a)ベンジル(2S,4R)-4-アミノ-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-2-メチルペンタノエート塩酸塩を、溶媒中で、およそ1:1のモル比で3-((4-メトキシベンジル)オキシ)イソオキサゾール-5-カルボン酸とカップリングして、ベンジル(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-((4-メトキシベンジル)オキシ)イソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタノエートを得るステップと、
(b)ベンジル(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-((4-メトキシベンジル)オキシ)イソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタノエートを脱保護して、(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-ヒドロキシイソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタン酸(I)を形成するステップと
を含むプロセス。
(項目29)
ステップ(a)が、ペプチドカップリング剤および塩基を、およそ1:3:1:1のカップリング剤対塩基対ベンジル(2S,4R)-4-アミノ-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-2-メチルペンタノエート塩酸塩対3-((4-メトキシベンジル)オキシ)イソオキサゾール-5-カルボン酸のモル比でさらに含む、項目28に記載のプロセス。
(項目30)
前記カップリング剤が、2-(6-クロロ-1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(V)であり、前記塩基が、N,N-ジイソプロピルエチルアミンである、項目29に記載のプロセス。
(項目31)
前記脱保護ステップ(b)が、パラジウム触媒および水素ガスを用いて実施される、項目28に記載のプロセス。
(項目32)
項目1に記載の結晶性形態を調製するためのプロセスであって、
(a)必要に応じて金属捕集剤と共に、(2S,4R)-5-(5’-クロロ-2’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-(エトキシメチル)-4-(3-ヒドロキシイソオキサゾール-5-カルボキサミド)-2-メチルペンタン酸および溶媒を含む溶液を高温で形成するステップと、
(b)前記溶液を約-20℃~5℃の間の温度に冷却するステップと、
(c)前記結晶性形態を得るために、得られた固体を単離するステップと
を含むプロセス。
(項目33)
ステップ(a)における前記溶媒が、極性溶媒である、項目32に記載のプロセス。
(項目34)
前記溶媒が、酢酸エチルと水との混合物、酢酸エチル、またはエタノールである、項目33に記載のプロセス。
(項目35)
ステップ(a)における前記温度が、約60℃~95℃の間である、項目32に記載のプロセス。
(項目36)
前記温度が、約70℃~85℃の間である、項目35に記載のプロセス。
(項目37)
ステップ(c)において前記固体を単離するステップが、濾過すること、1種もしくは複数の溶媒で洗浄すること、空気中もしくは減圧下で乾燥させること、またはこれらの組合せを含む、項目29に記載のプロセス。
(項目38)
前記溶媒が、酢酸エチルおよび水、酢酸エチル、またはエタノールである、項目37に記載のプロセス。
(項目39)
減圧下で乾燥させることが、25℃~70℃の間の温度で実施される、項目37に記載のプロセス。