以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の薬剤揮散器1は、液状薬剤Lを収容する薬剤容器2と、薬剤容器2に挿入される複数の揮散体10とを備えている。複数の揮散体10は、下端側の一部分が薬剤容器2内で液状薬剤Lに浸漬する一方で、上端側の一部分は薬剤容器2上で露出している。薬剤揮散器1は、薬剤容器2内の液状薬剤Lを複数の揮散体10により吸い上げて薬剤容器2外に揮散することで、薬剤揮散器1が設置された周囲の空間に対して液状薬剤の薬効を発揮する。
液状薬剤Lは、揮散性(薬効徐放性)を有し、空気中に徐々に薬剤を揮散することで薬効を奏するものである。液状薬剤Lは、例えば芳香剤、消臭剤、防虫剤などを例示することができるが、特に限定されるものではなく、使用目的に応じて、香料、消臭剤成分、防虫剤成分、着色料などを単独又は組み合わせて含ませることができる。液状薬剤Lに含まれる溶媒は、使用される添加剤の種類に応じて適宜選択され、親水性溶媒又は親油性溶媒、あるいはこれらの混合物とすることができる。液状薬剤Lが香料を含む場合には、その香り強度を高めるために、溶媒として少なくとも親油性溶媒を含むことが好ましい。親水性溶媒としては、例えば、水又はエタノール、あるいはこれらの混合物を使用することができる。親油性溶媒としては、例えば、グリコールエーテル又はイソパラフィン系溶媒、あるいはこれらの混合物を使用することができる。なお、液状薬剤には、香料、消臭成分、防虫成分、着色料などを可溶化させるために、溶解剤が含まれていてもよい。
薬剤容器2は、図1~図3に示すように、複数の揮散体10を挿入するための開口部40を上部に有し、液状薬剤Lを収容する空間を内部に有する有底の容器である。薬剤容器2は、液状薬剤Lを収容する容器本体3と、容器本体3に着脱自在なキャップ4とで構成されている。
容器本体3は、図1及び図3に示すように、透明、半透明及び不透明のいずれであってもよく、また、無色及び有色のいずれであってもよい。なお、半透明とは、透明度が完全に透明ではないが、内部を視認することが可能な透明度を有していることをいう。容器本体3が透明又は半透明であると、外部から容器本体3内を視認可能となり、例えば容器本体3内の液状薬剤Lの残量を確認することができるので好ましい。容器本体3の材質は、特に限定されるものではなく、例えばガラス製やプラスチック製、陶器製とすることができ、美観や液状薬剤Lとの相性を考慮して適宜素材が選択される。
容器本体3は、筒状の口部30と、中空の胴部32と、口部30及び胴部32を接続する肩部31と、胴部32の底をなす底部33とを備えている。
口部30は、キャップ4が容器本体3に装着された時にキャップ4の第2壁部43を挿通可能であり、キャップ4の上面部41の中央開口から差し込まれた複数の揮散体10は、第2壁部43の内側の開口部40を通過して胴部32に挿入される。口部30の外周面には、その上端部に外側に向けて突き出る係合突部34が設けられている。
肩部31は、口部30よりも大きい平面視円形状の平坦な上面部31Aと、上面部31Aの外周縁から垂れ下がる側面部31Bと、側面部31Bに連なる平面視円形状の平坦な下面部31Cとを有している。下面部31Cは、キャップ4が容器本体3に装着された時にキャップ4の第1壁部42が外周縁上に当接することが可能な大きさに形成されている。
胴部32は、液状薬剤Lが収容可能でありかつキャップ4を装着可能であれば、その形状は特に限定されるものではなく、種々の形状にすることができる。ただし、詳細は後述するが、キャップ4を容器本体3に対して回転させた時に、容器本体3に挿入された複数の揮散体10を、容器本体3から大きな抵抗を受けることなくスムーズに動かしてばらけさせるためには、少なくとも底部33に近い部分において、胴部32の内周面が周方向の一周にわたって丸みを有していることが好ましく、本実施形態では、胴部32の高さ方向の全長にわたって内周面が全周にわたって丸みを有している。なお、胴部32の底部33に近い部分とは、容器本体3に挿入された複数の揮散体10の下端が当たる部分を指す。本実施形態では、底部33が断面視で円形状に形成されており、胴部32の内周面は断面視で円形状を呈している。一方、胴部32の外周面は、必ずしも全周にわたって丸みを有している必要はなく、例えば全周にわたって凹凸が交互に繰り返していてもよい。
キャップ4は、図1~図4に示すように、容器本体3に対して装着時に周方向に回転させることが可能である。例えば、一方の手で容器本体3を押さえて他方の手でキャップ4のみを時計回り及び半時計回りのいずれの方向に回すことができる。
キャップ4は、平面視円環状(ドーナツ状)の上面部41と、上面部41の外周縁から垂れ下がる筒状の第1壁部42と、上面部41の中央開口の周囲より垂れ下がる筒状の第2壁部43と、第1壁部42及び第2壁部43の間において上面部41から下方に突き出る筒状の第3壁部44とを備えている。キャップ4の材質は、特に限定されるものではなく、例えば金属製やプラスチック製とすることができ、美観を考慮して適宜素材が選択される。
上面部41は、その天面410が第2壁部43の内壁面430と連なっている。上面部41は、外周縁から中央開口に向かうに連れて下降するように傾斜しており、その天面410も同様に傾斜した状態で第2壁部43の内壁面430と連なっている。上面部41の天面410は、本実施形態では、その外周縁から中央開口に向かう方向に沿って平坦状をなす、つまりは断面視で直線的に延びる平坦面とされているが、凹状に湾曲する凹面としてもよい。
上面部41の天面410が開口部40に向かうに連れて下降するように傾斜していることにより、揮散体10が吸い上げた液状薬剤Lがキャップ4の上面部41に滴下した場合でも、上面部41の天面410に沿って液状薬剤Lを開口部40の方に誘導することができる。よって、薬剤容器2の外周面に液状薬剤Lが付着することを防止できるので、薬剤容器2の外周面を液状薬剤Lが垂れることで家財を侵すことを防止することができ、また、薬剤容器2に手や服、カーテンなどが触れても、手などが液状薬剤Lにより汚れることを防止することができる。
なお、キャップ4の上面部41は天面410が必ずしも傾斜している必要はなく、水平であってもよい。
第1壁部42は、上面部41から下方に突き出ており、下方にいくにしたがって外径が大きくなる逆テーパ状を呈している。第1壁部42は、キャップ4が容器本体3に装着された時にその下端が容器本体3の肩部31の下面部31Cの外周縁上に当接する。これにより、容器本体3の口部30や肩部31を覆って隠すことができる。
第3壁部44は、第1壁部42及び第2壁部43と同心円状に上面部41に設けられており、第1壁部42及び第2壁部43よりも高さが低い。第3壁部44は、キャップ4が容器本体3に装着された時にその内周面が容器本体3の口部30の外周面の外側に位置し、第3壁部44は口部30の周りを回転可能である。第3壁部44の下面には、下方に向けて突き出る複数の係合爪部45が周方向に間隔をあけて設けられている。各係合爪部45は、先端が内側に向けて突き出ており、キャップ4が容器本体3に装着された時に口部30の外周面に設けられた係合突部34に引っ掛ってキャップ4が容器本体3に定着する。これにより、キャップ4は容器本体3に装着された後、容器本体3から取り外し難くなっており、キャップ4を容器本体3に対して安定して回転させることができる。
第2壁部43は、上面部41から下方に突き出ている。複数の揮散体10を容器本体3に挿入するための開口部40は、第2壁部43の内壁面430により形作られている。第2壁部43は、本実施形態では、上部43Aと下部43Bとで構成されている。上部43Aは、上面部41と連続し、下部43Bは、上面部41よりも下方に位置する水平面部43Cを間に挟んで上部43Aに接続されている。上部43Aは、キャップ4が容器本体3に装着された時に口部30の内側を通ることが可能な大きさに形成されており、上部43Aは口部30内で回転可能である。下部43Bは、上部43Aよりも小径に形成されている。
第2壁部43の内壁面430には、嵌入部5が周方向に沿って間隔をあけて複数設けられている。本実施形態では、嵌入部5は、第2壁部43の下部43Bの上端部(下部43Bと水平面部43Cとの角部)に設けられている。なお、嵌入部5は、第2壁部43の上部43Aの上端部(上部43Aと上面部41との角部)に設けられていてもよい。
嵌入部5は、図5に示すように、例えば第2壁部43の内壁面430の一部分を凹ませて形成した凹部6で構成することができる。また、凹部6は、図6に示すように、第2壁部43の内壁面430から突き出る一対の突起7の間に形成することもできる。突起7の形状は、特に限定されるものではなく、例えば断面視で矩形状、台形状、三角形状、半円形状、円形状など、種々の形状とすることができる。
凹部6の形状は、特に限定されるものではなく、本実施形態では図7(A)に示すように断面視矩形状を呈しているが、例えば断面視でC字状(図7(B))、台形状(図7(C))、半円などの円弧状(図7(D))、三角形状(図7(E))など、種々の形状とすることができる。
開口部40から薬剤容器2に挿入された複数の揮散体10は、傾斜した状態で第2壁部43の内壁面430に立て掛けられる。嵌入部5は、第2壁部43の内壁面430において揮散体10が嵌まる部分である。なお、揮散体10が嵌まるとは、揮散体10の全部又は一部分が嵌入部5の内側に入ることを意味する。例えば図8(A)~(E)に示すように揮散体10の全部又は一部分が凹部6の内側に入って揮散体10が凹部6に落ち込む、例えば図8(F)に示すように揮散体10の一部分が凹部6の内側にぴったりと嵌まって揮散体10が凹部6に密着する、又は、例えば図8(G)~(J)に示すように揮散体10の一部分が凹部6の内側において挟まれて揮散体10の両側が凹部6により押えられるなどすることにより、揮散体10が凹部6に拘束されて第2壁部43の内壁面430に沿って移動し難くなる状態を指す。複数の揮散体10が複数の凹部6に散らばって嵌まることで、複数の揮散体10は第2壁部43の内壁面430に沿って移動することが規制される。よって、複数の揮散体10が互いにくっついて密集することを抑制することができる。
凹部6の幅wは、特に限定されるものではなく、揮散体10の太さに応じて適宜設定されるが、揮散体10の太さ以上の幅であると、揮散体10が凹部6に落ち込んだり、嵌合して揮散体10が凹部6に保持されるので、揮散体10を効果的に拘束して移動し難くすることができる。例えば揮散体10の太さが1.0mmである場合は、凹部6の幅wは1.0mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましく、2.0mm以上がさらに好ましい。一方で、凹部6の幅wは、大きすぎると、1つの凹部6の内側に複数の揮散体10が入りやすくなるので、揮散体10の太さが1.0mmである場合は、凹部6の幅wは4.0mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましい。なお、凹部6の幅wは、凹部6の底部とは反対側の頂部位置における開口広さを指す。
凹部6の深さhは、特に限定されるものではなく、揮散体10の太さに応じて適宜設定されるが、揮散体10の太さの半分以上が凹部6の内側に入り込む深さであると、揮散体10が凹部6に保持されやすくなるので、揮散体10を効果的に拘束して移動し難くすることができる。例えば揮散体10の太さが1.0mmである場合は、凹部6の深さhは0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、2.0mm以上がさらに好ましい。一方で、凹部6の深さhは、大きすぎると、第2壁部43の開口部40を大きくする必要があるため、揮散体10の太さが1.0mmである場合は、凹部6の深さhは5.0mm以下が好ましく、4.0mm以下がより好ましい。
凹部6の長さlは、特に限定されるものではないが、長さが大きいと、揮散体10のより多くの部分が凹部6の内側に入り、凹部6により揮散体10を効果的に拘束して移動し難くすることができるために好ましく、例えば2.0mm以上が好ましく、4.0mm以上がより好ましく、6.0mm以上がさらに好ましい。
凹部6の断面視形状は、特に限定されるものではないものの、図7(A)~(C)に示すような、凹部6の幅が底部から頂部まで一定である又は頂部のほうが底部よりも小さい形状であると、揮散体10が凹部6から抜け出し難くなるため、揮散体10を効果的に拘束して移動し難くすることができる。
凹部6は、第2壁部43の内壁面430において、周方向に隣り合う凹部6との間に間隔s(図5や図6に示す)をおいて設けられていることが好ましい。隣り合う凹部6の間に間隔sを設けることで、揮散体10が隣り合う凹部6に移動し難くなるため、揮散体10が互いにくっついて密集することをより効果的に抑制することができる。凹部6同士の間隔(周方向の長さ)sは1.0mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましく、3.0mm以上がさらに好ましい。一方で、凹部6同士の間隔sは、大きすぎると、第2壁部43の開口部40を大きくする必要があるため、凹部6同士の間隔sは6.0mm以下が好ましく、5.0mm以下がより好ましい。なお、隣り合う凹部6の間に必ずしも間隔sをあける必要はなく、凹部6を周方向に間隔sをあけることなく連続して設けてもよい。
揮散体10は、図1、図2及び図9に示すように、長手形状を呈する芯部12を備えている。長手形状とは、一方向における長さが、前記一方向と直交する方向における長さよりも十分に長い形状をいう。芯部12は、長手方向に垂直な断面視(横断面視)で外形の少なくとも一部が円形状又は楕円形状を呈している。例えば芯部12は横断面視で円形状、楕円形状、半円形状、半楕円形状、半円と半楕円とを組み合わせた形状など、円弧又は楕円弧を外形の少なくとも一部に含んでいればよい。芯部12は、本実施形態では横断面視で楕円形状の細い棒状を呈している。
揮散体10の長さ(長手方向の大きさ)は、下端部が容器本体3の底部33近傍に達した際に上端側の一部分がキャップ4の開口部40から上方に突き出る長さであれば、特に限定されるものではなく、薬剤容器2の大きさにもよるが、例えば110mm以上190mm以下とすることができる。
揮散体10の太さは、特に限定されるものではないが、細い方が揮散体10を数多く薬剤容器2に挿入することができるうえ、外部から視認した際に揮散体10が外観上目立たないため、美観を高める点で好ましい。一方で、揮散体10が細すぎると折れやすくなるため、揮散体10の太さは、1.0mm以上4.0mm以下とすることが好ましい。また、揮散体10が細くて軽い場合には、揮散体10が移動しやすいので、後述するようにキャップ4を容器本体3に対して回転させた時に複数の揮散体10を効果的にばらけさせることができる。なお、揮散体10の太さは、横断面視で揮散体10が内接する円の直径で定義することができる。
揮散体10は、その外周に揮散体10の長手方向に延びるように形成された微細な筋状の溝11を少なくとも1つ備えていることが好ましい。本実施形態では、揮散体10の外周に、複数の溝11が周方向に間隔をあけて設けられている。溝11は、毛細管現象により液状薬剤Lを吸い上げることが可能であり、揮散体10において液状薬剤Lを長手方向に吸い上げ可能な流路とすることができる。溝11の形状は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、溝11の幅が溝の底11Aから外部空間側に向かうに連れて徐々に広がる形状を呈している。
本実施形態では、揮散体10は、芯部12の外周面を長手方向に延びる複数の突条13が、芯部12の外周面から突き出た構成とされており、周方向に隣り合う突条13の間に溝11が存在している。突条13の形状は特に限定されないが、本実施形態では、複数の突条13が芯部12の中心から放射状に広がっている。また、突条13の高さは全てが同じ高さであってもよいし、一部が異なる高さであってもよい。なお、溝11は、芯部12の外周面の一部分を凹ませて形成してもよい。
揮散体10の溝11の幅(溝底11Aにおける幅)Wは、特に限定されるものではないが、常温で液状薬剤Lを迅速に吸い上げることができるように、0.01mm以上0.15mm以下とすることが好ましい。また、揮散体10の溝11の深さ(芯部12の外周面からの突条13の高さ)Hは、特に限定されるものではないが、溝11が深すぎると突条13が折れやすくなる一方で、溝11が浅すぎると吸い上げることができる液状薬剤Lが少なくなるため、0.1mm以上1.0mm以下とすることが好ましい。
揮散体10は、溝11に代えて又は溝11に加えて、毛細管現象によって液状薬剤Lを吸い上げることが可能な他の流路を備えていてもよい。例えば、揮散体10を中空構造とすることで、揮散体10の内部の長手方向に延びる空洞14を液状薬剤Lの流路とすることができる。この場合には、揮散体10の内周面に微細な溝をさらに設けてもよい。
上述した構成の揮散体10は、外周に周方向への回転を抑制する回転抑制部を含む。回転抑制部は、揮散体10が薬剤容器2に挿入されてキャップ4の内壁面430に立て掛けられた時に、揮散体10が内壁面430を周方向に転がって移動するのを抑制する役割を果たす部分である。揮散体10がキャップ4の内壁面430を周方向に容易に転がって内壁面430に沿って移動すると、揮散体10同士がくっついて複数の揮散体10が密集する。複数の揮散体10が密集すると、各揮散体10から揮散する液状薬剤の量が低下するうえ、薬剤揮散器1の美観が損なわれる。そのため、本実施形態では、揮散体10が外周に回転抑制部を含むことで、キャップ4の内壁面430を周方向に転がって移動し難くして、揮散体10同士がくっついて複数の揮散体10が密集するのを抑制している。
揮散体10の回転を抑制するために、揮散体10は横断面視で外形の少なくも一部が略楕円形状を呈している。略楕円形状とは、楕円形状に加えて、完全な楕円形状ではないものの楕円に内接する形状など、外周の輪郭に例えば凹凸があったとしても外形が楕円形状に見える近い形状も略楕円形状に含まれる。
揮散体10が回転抑制部として、横断面視で外形に略楕円形状をなす部分を含むことで、この楕円形状部分は横に長い円弧を備えるので、揮散体10が転がろうとしても元に戻ろうとして揮散体10の回転が止まる。そのため、揮散体10が転がり難くなり、各揮散体10が動いて他の揮散体10と互いにくっつくことが抑制される。
本実施形態では、揮散体10は、横断面視で楕円形状をなす芯部12の外周面から複数の同じ高さの突条13が周方向に間隔をあけて突き出ているが、図9に示すように、各突条13の頂部13Aが一つの楕円Eに内側から接することで揮散体10が楕円Eに内接しており、これにより、揮散体10が外周に回転抑制部として楕円形状部分を含むように構成されている。なお、内接には、本実施形態のように、揮散体10の複数の突条13が全て同じ高さである場合に、全ての突条13の頂部13Aが一つの楕円Eに内側から接することを含むほか、複数の突条13の一部について高さが異なる場合に、最も高さの大きい複数の突条13の頂部13Aが一つの楕円Eに内側から接することも内接に含まれる。
また、図10に示すように、揮散体10の芯部12が横断面視で円形状をなすものの、芯部12の外周面から突き出る複数の突条13の高さが次第に大きくなったり小さくなったりすることで各突条13の頂部13Aが一つの楕円Eに内側から接し、これにより、揮散体10が楕円Eに内接することで、揮散体10が外周に回転抑制部として楕円形状部分を含むように構成してもよい。
また、図9や図10の実施形態では、揮散体10は横断面視で楕円Eの全周にわたって内接しているが、図11に示すように、揮散体10は横断面視で楕円Eの少なくとも一部に内接するように構成してもよい。例えば、揮散体10の芯部12が横断面視で楕円形状をなす部分と円形状とをなす部分とで構成されていて、芯部12の楕円形状をなす部分の外周面から突き出る複数の突条13の頂部13Aが一つの楕円Eの一部に内側から接することで、揮散体10が楕円Eの一部に内接し、これにより、揮散体10が外周に回転抑制部として楕円形状部分を含むように構成してもよい。
また、図示は省略するが、揮散体10は芯部12のみで構成されていてもよく、芯部12が横断面視で外形に楕円形状を呈する部分を含むことで、揮散体10が外周に回転抑制部を含むように構成してもよい。例えば、芯部12の外形を、横断面視で楕円形状、半楕円形状、半円と半楕円とを組み合わせた形状などにすることで、揮散体10の外周に回転抑制部を含めることができる。
上述した構成の揮散体10は、透明な材料で形成されることが好ましい。透明な材料は、無色及び有色のいずれであってもよい。揮散体10が透明な材料で形成されていることにより、揮散体10は、光の透過性を有することから、液状薬剤Lの中において液状薬剤Lとの境界で光が反射・屈折し難くなる。よって、薬剤容器2の外側から揮散体10を見たときに、揮散体10の液状薬剤Lに浸漬している部分は大きく屈折して見えないため、揮散体10の液状薬剤Lに浸漬している部分が液状薬剤Lの液面で折れて見えたり、実際よりも大きく見えたりすることを抑制することができる。
そのうえ、揮散体10は、複数の溝11によりその外周に光を反射する面を多く含むため、光が乱反射することで全体としてキラキラと輝くように見える。これにより、薬剤容器2の外側から揮散体10を見たときに、揮散体10の液状薬剤Lに浸漬している部分が多少は屈折して見えたとしても、薬剤容器2内で多数の揮散体10が雑然としているとの印象を与えるというより、多数の揮散体10により薬剤容器2がキラキラと輝いた印象を与える。そのため、多数の揮散体10が薬剤容器2内に挿入されていても薬剤揮散器1の美観を向上でき、薬剤揮散器1のインテリア性を高めることができる。さらに、液状薬剤Lに色が付いていても、揮散体10がキラキラと輝くことにより、各溝11内で吸い上げられる有色の液状薬剤Lが視認し難くなる。よって、揮散体10が液状薬剤Lの吸い上げ前と見た目がさほど変わらずに見え、揮散体10が液状薬剤Lで濡れているようには見えなくすることができる。なお、揮散体10を無色透明な材料で形成すると、液状薬剤Lの色を問わずに当該効果を好適に発揮させることができる。
加えて、揮散体10は、外周の溝11及び/又は内部の空洞14を液状薬剤Lが吸い上げにより通過することで、液状薬剤Lの中でより光が透過して液状薬剤Lとの境界で光が反射・屈折し難くなるので、液状薬剤Lの中で揮散体10を見え難くすることができる。よって、多数の揮散体10が薬剤容器2内に挿入されていても、揮散体10を液状薬剤Lとほぼ同化させることができるので、薬剤容器2内が多数の揮散体10により雑然とならず、薬剤揮散器1の美観をさらに向上でき、薬剤揮散器1のインテリア性をさらに高めることができる。なお、液状薬剤Lに色が付いていても、揮散体10は、外周の溝11及び/又は内部の空洞14を通過する液状薬剤Lにより、その大部分が外部の液状薬剤Lと同色になるため、揮散体10は液状薬剤Lの中で見え難くなる。また、揮散体10を液状薬剤Lの色と同一色又は同系色とすると、揮散体10を液状薬剤Lの中でさらに見え難くすることができる。なお、同系色とは、似通った色のことをいい、色相環で隣り合う色や近い位置にある色のことをいい、青色と水色、オレンジ色と黄色、緑と黄緑色などを例示することができる。
上述した構成の揮散体10は、液状薬剤Lとの親和性が高い材料で形成されることが好ましい。揮散体10が液状薬剤Lとの親和性が高い材料で形成されていることで、液状薬剤Lが揮散体10の各溝11で吸い上げられる際に、液状薬剤Lが溝11の表面にべったりと付くように広がり、液状薬剤Lは溝11の表面に対して接触する面積が大きくなる。そのため、図12に示すように、液状薬剤Lが揮散体10の各溝11で吸い上げられる際に、液状薬剤Lの液面の高さが溝11の深さ(突条13の高さ)Hよりも低くなり、液状薬剤Lの液面は溝11の外縁(突条13の頂部13A)よりも外部空間側へ盛り上がらない。よって、揮散体10が液状薬剤Lで濡れていても、濡れた揮散体10の表面張力によって複数の揮散体10が互いにくっついて密集することを抑制することができる。加えて、揮散体10の薬剤容器2から露出した上端側の部分に手や服、カーテンなどが触れた場合でも、突条13の頂部13Aが最初に手などに触れて、溝11内の液状薬剤Lが手などに付着し難くなるため、手などが液状薬剤Lにより汚れることを抑制することができる。
なお、揮散体10が液状薬剤Lとの親和性が低い材料で形成されていると、液状薬剤Lが揮散体10の各溝11で吸い上げられる際に、溝11の表面で液状薬剤Lを弾いた状態となり、液状薬剤Lは溝11の表面に対して接触する面積が小さくなる。そのため、図13に示すように、液状薬剤Lが揮散体10の各溝11で吸い上げられる際に、液状薬剤Lの液面の高さが突条13の高さHよりも高くなり、液状薬剤Lの液面は突条13の頂部13Aよりも外部空間側へ盛り上がる。よって、濡れた揮散体10の表面張力によって複数の揮散体10が互いにくっついて密集しやすくなる。加えて、揮散体10の薬剤容器2から露出した上端側の部分に手や服、カーテンなどが触れた場合に、溝11内の液状薬剤Lが手などに付着しやすくなる。
液状薬剤Lとの親和性が高い材料としては、図14に示すような液状薬剤Lの接触角αが90°以下の材料、好ましくは70°以下の材料、より好ましくは50°以下の材料、より好ましくは30°以下の材料、さらに好ましくは10°以下の材料を挙げることができる。この接触角αは、揮散体10に用いられる材料からなり、表面が平坦な薄板B(大きさ:60mm×20mm、厚み:5mm程度)の表面の汚れを除去した後、例えばマイクロピペットを用いて6μL程度の液状薬剤Lの液滴を薄板Bの表面に着滴し、1000ms後の液滴の接触角αを接触角計(協和界面化学社製:DropMaster500、測定解析統合ソフト:FAMAS)により計測することができる。
揮散体10を形成する材料としては、例えばガラスや、透明な樹脂などを用いることができ、透明な樹脂としては、例えばポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、フッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリスチレン、塩化ビニルなどを好ましく用いることができる。
揮散体10は、上述した材料を用いて一般的な公知の成形方法(例えば樹脂では押出し成形など、例えばガラスではドロー成形など)により形作ることができる。なお、揮散体10は、押し出し成形などで形成することで、一本物(1つの棒状体や板状体など)で構成することが好ましく、隙間や孔が全くあるいはほとんどない緻密体とすることが好ましい。これにより、揮散体10は内部に実質的に液状薬剤Lが含浸しないので、揮散体10が過剰に液状薬剤Lを保持した状態になることがなく、薬剤容器2内から液状薬剤Lがなくなると、揮散体10も直ちに保持している液状薬剤Lを失うため、使用終期を容易に把握することができる。また、揮散体10において、外周の溝11や内部の空洞14以外に液状薬剤Lが通る流路をなくすことができるので、揮散体10による液状薬剤Lの吸い上げ速度を所望の設定速度に保持することができる。
なお、揮散体10の材質は特に限定されるものではなく、揮散体10は、上述した材料以外で形成されてもよい。例えば、従来から揮散体10に用いられている公知の材料、例えばラタン、木、ドライ加工された植物、ポリマー繊維などで揮散体10を形成してもよい。ポリマー繊維の素材としては、液状薬剤Lを揮散できる素材であれば特に限定されるものではないが、例えば、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレンなど)、ポリウレタンなどの合成繊維を好ましく用いることができる。なお、耐熱性、耐薬性の観点から、ポリエステル又はポリウレタンの繊維を使用することが好ましい。
以上、本実施形態では、図15に示すように、薬剤容器2に複数の揮散体10を密集した状態で挿入しても、キャップ4を容器本体3に対して回転させることで、図16に示すように、キャップ4の開口部40を形作る内壁面430に立て掛けられた複数の揮散体10が個別に動くため、自然に散らばってばらばらになる。よって、キャップ4を回転させるだけの簡易な作業で、揮散体10に手を触れることなく、図1に示すように複数の揮散体10を密集した状態からばらけさせることができる。なお、本実施形態では、キャップ4の内壁面430に複数の嵌入部5が周方向に沿って設けられているため、キャップ4を容器本体3に対して回転させた時に、複数の揮散体10が複数の嵌入部5のうちのいずれかの嵌入部5に嵌まりながら動き、複数の揮散体10が散らばりやすくなっている。
そして、複数の揮散体10がばらけた後は、複数の揮散体10は回転抑制部によりキャップ4の内壁面430を周方向に回転し難く、各揮散体10がキャップ4の内壁面430に沿って移動することが抑制されている。よって、揮散体10の移動により複数の揮散体10が互いにくっついて密集することを抑制することができるので、各揮散体10から揮散される液状薬剤Lの量の低下を防止することができ薬効を高められるうえ、薬剤揮散器1の美観も高めることができる。
また、本実施形態によれば、揮散体10が液状薬剤Lとの親和性が高い材料で形成されている。これにより、揮散体10が各溝11で液状薬剤Lを吸い上げた際に、図12に示すように、液状薬剤Lの液面は突起13の頂部13Aよりも外部空間側へ盛り上がらずに、液状薬剤Lは溝11内の奥まった空間を通過する。よって、揮散体10が液状薬剤Lで濡れていても、濡れた揮散体10の表面張力によって複数の揮散体10が互いにくっつくことを抑制することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば上記実施形態では、揮散体10が回転抑制部として横断面視で外形に楕円形状を呈する部分を含んでいる。しかし、回転抑制部はこれに限られるものではなく、揮散体10の周方向への回転を抑制できる構造であれば、特に限定されない。例えば、揮散体10の芯部12の外形を横断面視で半円形状又は半楕円形状などとし、芯部12が横断面視で外形に直線状を呈する部分を含むことで、揮散体10が外周に回転抑制部を含むように構成してもよい。この直線状を呈する部分は、揮散体10が転がろうとしても踏みとどまろうとして揮散体10の回転が止まる。そのため、揮散体10が転がり難くなり、各揮散体10が動いて他の揮散体10と互いにくっつくことを抑制することができる。なお、芯部12は、横断面視で三角形状や四角形状などの多角形状を呈していてもよい。また、揮散体10は、上記実施形態と同様に、芯部12のみで構成されていてもよいし、芯部12に加えて複数の突状13を含んでいてもよい。揮散体10が複数の突状13を含む場合には、揮散体10の全体が横断面視で半円や半楕円、多角形などに内接していればよい。
また、上記実施形態では、キャップ4は容器本体3に対して取り外し可能であるが、取り外しできなくてもよい。
また、上記実施形態では、キャップ4の第2壁部43が上部43A及び下部43Bの2部材で構成されているが、図17及び図18に示すように、単一の部材で構成されていてもよい。
図17及び図18に示す実施形態では、第2壁部43の内壁面430は、上下方向に延びる下側の鉛直面430Aと、鉛直面430Aに連なる上側の傾斜面430Bとで構成されている。傾斜面430Bは、上面部41の天面410と連なっており、傾斜面430Bは、上面部41の天面410よりも急な傾斜角度で鉛直面430Aに向かうに連れて下降するように傾斜している。そして、嵌入部5(凹部6)が第2壁部43の内壁面430の傾斜面430B及び鉛直面430Aに跨がって設けられている。
なお、図17及び図18に示す実施形態においては、嵌入部5(凹部6)は、第2壁部43の内壁面430の鉛直面430Aに上下方向に延びるように設けられていてもよい。さらに、第2壁部43の内壁面430は、鉛直面430Aのみで構成されていてもよい。
また、上記実施形態では、容器本体3、キャップ4にそれぞれ係合突部34、係合爪部45が設けられているが、図17及び図18に示す実施形態のように、容器本体3、キャップ4にそれぞれ係合突部34、係合爪部45を設けなくてもよい。
また、上記実施形態では、嵌入部5が凹部6により構成されているが、揮散体10が嵌まる構造であれば、特に限定されるものではなく、他の種々の構造を採用することができる。例えば図19に示すように、キャップ4の開口部40をなす第2壁部43の内壁面430を断面視多角形状に形成することで、多角形の内壁面430の角部8で嵌入部5を構成してもよい。この場合においても、揮散体10の一部分が嵌入部5(角部8)の内側において挟まれて揮散体10の両側が嵌入部5(角部8)により押えられることにより、揮散体10が嵌入部5(角部8)に拘束されてキャップ4の内壁面430に沿って移動し難くなる。よって、例えば薬剤揮散器1を移動させるなどしても、揮散体10の移動により複数の揮散体10が互いにくっついて密集することを抑制することができる。
キャップ4の内壁面430の多角形状は、特に限定されるものではないが、角部8の内角が小さいほど、角部8により揮散体10を効果的に拘束して移動し難くすることができるために好ましく、例えば150°以下が好ましく、140°以下がより好ましい。一方で、角部8の内角が小さすぎると、キャップ4の内壁面430に設けることができる角部8の数が少なくなるため、例えば120°以上が好ましく、130°以上がより好ましい。そのため、キャップ4の内壁面430は、断面視で正六角形状(図19(A))、正八角形状(図19(B))、又は正十二角形状(図19(C))を呈することが好ましい。
キャップ4の内壁面430の多角形状は、辺の長さが大きいほど、揮散体10が隣り合う角部8に移動し難くなるため、揮散体10同士がくっついて密集することをより効果的に抑制することができる。辺の長さは1.0cm以上が好ましく、1.5cm以上がより好ましく、2.0cm以上がさらに好ましい。一方で、辺の長さは、大きすぎると、キャップ4の開口部40を大きくする必要があるため、辺の長さは4.0cm以下が好ましく、3.0cm以下がより好ましい。
また、上記実施形態において、図20に示すように、液状薬剤Lを流通可能な貫通孔9をキャップ4に1つ又は複数形成してもよい。本実施形態では、貫通孔9がキャップ4に複数形成されており、周方向に間隔をあけて配されている。貫通孔9は、キャップ4において、容器本体3の口部30の内側に位置するように配される。本実施形態では、貫通孔9は、キャップ4の水平面部43Cに形成されているが、口部30の内側に位置していれば、キャップ4の上面部41に形成してもよい。液状薬剤Lが揮散体10からキャップ4の上面部41に滴下した場合でも、天面410に沿って流下する液状薬剤Lを貫通孔9から容器本体3内に戻すことで、キャップ4の天面410に液状薬剤Lが付着したまま長時間残ることを防止できる。また、液状薬剤Lがたまって、第一壁部42側に液状薬剤Lが垂れることを防ぐことができる。なお、図17及び図18に示す実施形態においても、図21に示すように、貫通孔9を同様にしてキャップ4の上面部41に形成することができる。
また、上記実施形態において、図22に示すように、液状薬剤Lを貯留可能な凹状の溝90をキャップ4に1つ又は複数形成してもよい。本実施形態では、溝90がキャップ4に1つ形成されており、溝90が所定の幅を有する環状を呈している。溝90は、キャップ4の上面部41又は水平面部43Cに形成され、本実施形態では上面部41に形成されている。液状薬剤Lが揮散体10からキャップ4の上面部41に滴下した場合でも、天面410に沿って流下する液状薬剤Lを溝90に貯めることで、キャップ4の天面410に液状薬剤Lが付着したまま長時間残ることを防止できる。溝90に貯められた液状薬剤Lは一定時間経過すれば揮散するので、液状薬剤Lが溝90から溢れる可能性は低い。なお、図17及び図18に示す実施形態においても、図23に示すように、溝9を同様にしてキャップ4の上面部41に形成することができる。
また、上記実施形態では、薬剤容器2が容器本体3及びキャップ4で構成され、キャップ4の開口部40から複数の揮散体10を挿入しているが、薬剤容器2を容器本体3のみで構成してもよく、その場合は、容器本体3の口部30から複数の揮散体10を挿入することができる。