以下、図面を参照しながら、本開示に係る燃料供給システムについて説明する。なお、本開示で説明する燃料供給システムの実施例は、本発明の一部の実施例であるに過ぎず、全部の実施例ではないことは明らかである。したがって、本開示の実施例に基づき、当業者が特別な創作を行うことなしに得られる他の実施例は、全て本発明の保護範囲に属することも明らかである。
図1は、本発明に係る燃料供給システムを、鉄道車両用の燃料供給システムに適用した場合の一実施例の全体構成図である。
図1に示すように、本実施例の鉄道車両用の燃料供給システムは、鉄道会社の自家用燃料供給システムとして、車両基地に設けられている。
この場合、燃料供給システムは、車両基地内の所定の線路脇に沿って、互いの間隔を空けて設けられた複数台(図示の例では、2台)の燃料供給機10を有する。各燃料供給機10(10-1,10-2)は、当該線路に入線停車した列車のうちの、作業範囲内に停車している気動車両90の燃料タンク(図示せず)に、独立して燃料供給作業を行えるようになっている。これにより、燃料供給作業のために入線停車した列車の車両編成が気動車両90の多両編成(例えば、2両連結編成)であっても、複数台の燃料供給機10-n(図示の例では、n=2)が備えられていることにより、各編成車両(気動車両90-1,90-2)の燃料タンクへの燃料供給作業を、対応の燃料供給機10-mによって編成車両個別(気動車両90-1,90-2の個別)で並行して進めることができるようになっている。
各燃料供給機10は、燃料供給機筐体11内に、例えばポンプ13、流量計15、制御弁17が設けられた燃料供給路19を備えている。各燃料供給機10は、燃料供給路19の上流側が、管継手31を介して、燃料貯留タンク35から延びる延設配管33と連通接続されている。貯留タンク35内には、気動車両90の燃料、例えば軽油が貯留されている。
ポンプ13は、燃料供給機筐体11内に設けられたポンプモータ14によって駆動される。流量計15には、供給される燃料の単位流量ごとの流れに応じて流量パルスを発信する流量発信器16が付設されている。制御弁17は、燃料供給路19の連通/遮断を行う開閉弁で構成されている。本実施例では、制御弁17は、燃料供給路19のポンプ13の吐出側に配設され、その開弁・閉弁によって当該燃料供給機10を用いた燃料供給作業の許可・禁止を行える安全弁として機能する。また、制御弁17は、供給対象への所望量の燃料供給を自動的に終了させるための定量弁としても機能できるようになっている。
燃料供給路19の下流側は、燃料供給機筐体12から延びる燃料供給ホース21を介して、燃料供給ノズル23と連通接続されている。燃料供給ノズル23には、操作レバー(図示省略)の開・閉操作に応動して開・閉弁し、ノズル筒先からの燃料の吐出・遮断を行うノズル弁(図示省略)が備えられている。また、燃料供給ノズル23には、燃料タンクへの燃料供給中、燃料タンク内の燃料液面が、給油口から挿入されているノズル筒先に到達したならば、操作レバーの開操作状態に関係なく、ノズル弁を閉弁させる自動閉弁機構(図示省略)も備えられている。
燃料供給ノズル23及び燃料供給ホース21は、燃料供給作業に用いられていない非使用時には、燃料供給機筐体11の筐体面に設けられたノズル掛け及びホースフック(いずれも、図示省略)に保持しておけるようになっている。ノズル掛けには、ノズル掛けに対する燃料供給ノズルの取り出し及び収納を検出するノズルスイッチ25が設けられている。加えて、燃料供給機筐体11の筐体面には、必要に応じて燃料供給作業の開始に当たって所望の燃料供給量を予め設定したり、燃料供給作業で気動車両90に供給された実際の燃料供給量を表示するための操作・表示器27が設けられている。
燃料供給機筐体11内には、CPU、メモリ、入出力インタフェースなどを備えて構成された機器制御装置29が備えられている。機器制御装置29は、ノズルスイッチ25、流量発信器16、ポンプモータ14、制御弁17、操作・表示器27といった燃料供給機各部と信号接続され、ノズルスイッチ25からの検知信号、流量発信器16からの流量信号に基づいて、ポンプ13(ポンプモータ14)、制御弁17、操作・表示器27といった燃料供給機10における各部の駆動制御を行って、燃料供給機10の作動制御を行う。
そして、複数台の燃料供給機10-n(ただし、図示の例ではn=2)が備えられている図示の燃料供給システムの場合では、各燃料供給機10の機器制御装置29は、燃料供給管理機40と通信接続されている。これにより、各燃料供給機10は、燃料供給管理機40との間で、燃料供給作業に係る制御情報や、燃料供給量Qを含む作業結果情報を交信できるようになっている。
燃料供給管理機40は、CPU、メモリ、入出力インタフェースを備えたコンピュータ装置によって構成されている。燃料供給管理機40は、燃料供給機10-nそれぞれとの上述した制御情報や作業結果情報の交信によって、各燃料供給機10による燃料供給作業を管理する。
例えば、燃料供給管理機40は、車両基地内の燃料供給機10が設けられている所定の線路80に、燃料供給作業を受ける列車が入線して停車すると、供給対象である列車の車両編成に応じて、複数台の燃料供給機10-nの中から列車への燃料供給作業に用いる燃料供給機10を選択する。そして、燃料供給管理機40は、選択された燃料供給機10に対しては燃料供給作業の作業許可を送信し、選択されない不要の燃料供給機10に対しては燃料供給作業の作業許可を送信せず、燃料供給作業の禁止状態に保持する。
これにより、燃料供給管理機40による燃料供給作業の作業許可を受けた燃料供給機10では、機器制御装置20によって、燃料供給ノズル23がノズル掛けから作業者によって取り出されると、ノズルスイッチ25からの検出信号(ノズル取り出し検出信号)によってポンプモータ14が駆動され、制御弁17が開弁される。これにより、燃料供給ノズル23の操作に応動して、その作業範囲内に停車している列車の編成車両の燃料タンクへの燃料供給が行えるようになる。これに対し、燃料供給管理機40による燃料供給作業の作業許可を受けなかった燃料供給機10では、機器制御装置20によって、燃料供給ノズル23がノズル掛けから作業者によって取り出されても、ポンプモータ14の停止状態及び制御弁17の閉弁状態が保持されるので、燃料供給作業は行えない。そして、燃料供給管理機40による燃料供給作業の作業許可を受けた燃料供給機10では、燃料供給の終了後、作業者によって燃料供給ノズル23がノズル掛けに収納されると、機器制御装置20によって、ポンプモータ14は停止し、制御弁17は閉弁される。
また、燃料供給管理機40は、作業許可した燃料供給機10による、作業範囲内の列車の編成車両に対する燃料供給作業が、燃料供給ノズル23のノズル掛けへの収納によって終了すると、作業許可した燃料供給機10の機器制御装置20から編成車両の燃料タンクに実際に供給された燃料供給量Qを取得して、当該編成車両や当該編成車両を用いた列車全体に対する燃料供給作業の実施管理や、貯留タンク35内に貯留されている燃料残量管理などを行う。この場合、作業許可した燃料供給機10からその作業範囲内の列車の編成車両の燃料タンクに実際に供給された燃料供給量Qは、後述の運行計画に従った当該編成車両を用いた列車の運行で、当該編成車両の前回の燃料供給作業時から今回の燃料供給作業時までの間の実際の走行で消費した実燃料消費量Qrに該当する。
さらに、図示の例では、燃料供給管理機40は、同じく車両基地に設けられたコンピュータ装置からなる車両基地管理装置50、及び運行管理所に設けられたコンピュータ装置からなる運行管理装置60と、通信接続されている。
運行管理装置60は、列車の運行計画と、運行計画に対する列車の運行を計画管理する。この列車の運行計画には、列車計画情報(列車ダイヤ)、車両運用計画情報が含まれている。
列車計画情報は、列車が何時にどの駅からどの駅へ走行するのかを定めた計画情報である。列車計画情報には、列車ごとの、車両編成(両数、各両の車両形式・識別番号(識別符号))、運転区間および経路、停車駅および各停車駅の着発時刻(または通過時刻)、などといった各種列車運行情報が含まれている。
これに対し、車両運用計画情報は、列車計画情報で定められた列車に対して、具体的な個別の車両編成(図1では、個別の気動車両90)の割り当てを定めた計画である。車両運用計画情報は、どの列車にどのような車両のどのような編成が割り当てられているかを示した情報である。この場合、列車の車両編成には、個別の車両1両だけで割り当てられている1両編成のものもあれば、個別の車両を所定の順番で複数連結して割り当てられているものもある。ここでは、一の列車の車両編成を構成する個別の車両のことを、当該列車の編成車両と称することにする。
また、車両運用計画情報において、同一の車両編成が割り当てられて走行する列車の組み合わせを、行路と称することにする。そのため、車両運用計画では、まず行路が定められ、各行路に実際の車両編成が割り当てられていく。なお、割り当てられる車両編成は、車両基地で定期的に検査や燃料供給を受ける必要があるため、車両編成の行路への割り当ては、日によって変化することもある。車両運用計画では、行路ごとに、運用番号(行路識別番号)、その運用番号の行路の運行を担当する車両編成の識別番号、車両基地での検査・清掃計画や燃料供給作業計画、などの情報が定められ、さらに車両編成の識別番号に対してその編成車両の車両型式・識別番号が割り当てられている。
図2は、運行管理装置によって計画管理される列車の運行計画の一実施例を模式的に表した図である。なお、図示の例では、説明簡便のため、運行路線を、駅A ⇔ 駅B ⇔ 駅Cの3駅からなる1路線区間だけとし、車両基地は、駅A ⇔ 駅B間に所在することになっている。
図示の運行計画は、或る1日の列車の運行計画を運用番号01~03で示す行路ごとに表したもので、例えば、そのうちの運用番号01の行路には、車両基地から駅Bまで運行する列車と、駅Bから駅Aまで運行する列車と、駅Aから駅B経由で駅Cまで運行する列車と、駅Cから駅B経由で駅Aまで運行する列車と、・・・、駅Cから駅B経由で駅Aまで運行する列車と、駅Aから駅Bまで運行する列車と、駅Bから車両基地まで運行する列車とからなる複数の列車が定められ、各列車が、車両編成識別番号が1の、車両型式がxで車両識別番号が001である気動車両90の1両の車両編成で割り当てられている。同様に、運用番号02の行路には、車両基地から駅Bまで運行する列車と、駅Bから駅Cまで運行する列車と、駅Cから駅B経由で駅Aまで運行する列車と、駅Aから駅B経由で駅Cまで運行する列車と、・・・、駅Aから駅B経由で駅Cまで運行する列車と、駅Cから駅Bまで運行する列車と、駅Bから車両基地まで運行する列車とからなる複数の列車が定められ、各列車が、車両編成識別番号が2の、車両型式がyで車両識別番号が004である気動車両90の1両の車両編成で割り当てられている。同様に、運用番号03の行路には、車両基地から駅Bまで運行する列車と、駅Bから駅Aまで運行する列車と、駅Aから駅Bまで運行する列車と、駅Bから駅Aまで運行する列車と、・・・、駅Bから駅Aまで運行する列車と、駅Aから駅Bまで運行する列車と、駅Bから車両基地まで運行する列車とからなる複数の列車が定められ、各列車が、車両編成識別番号が3の、車両型式がともにxで車両識別番号が002,003である気動車両90(90-1、90-2)を2両連結した車両編成で割り当てられている。
また、運行管理装置60には、運用番号01~03の異なる行路ごとに、車両編成識別番号が1~3の車両編成それぞれが各行路の運行に割り当てられた場合の、当該行路01~03を運行するために必要な編成車両ごとの燃料量が、行路別及び車両編成識別番号別の燃料推定消費量QQとして、設定記憶されている。
図3は、運行管理装置に記憶されている、行路別及び車両編成識別番号別の燃料推定消費量のテーブルの一実施例を模式的に表した図である。
燃料推定消費量テーブルには、図示の例では、車両型式・識別番号がx001だけの1両編成で構成される、車両編成識別番号が1の車両編成を、運用番号01の行路に運用した場合の燃料推定消費量QQがQQX001・01であり、運用番号02の行路に運用した場合の燃料推定消費量QQがQQX001・02であり、運用番号03の行路に運用した場合の燃料推定消費量QQがQQX001・03であることが記憶されている。同様にして、車両型式・識別番号がy004だけの1両編成で構成された、車両編成識別番号が2の車両編成や、車両型式・識別番号がx002とx003とからなる2両編成で構成された、車両編成識別番号が3の車両編成についても、運用番号01,02,03の行路にそれぞれ運用した場合の燃料推定消費量QQも記憶されている。
この場合、各燃料推定消費量QQは、例えば、各車両編成識別番号の車両編成を、異常がない状態で、各運用番号の行路の運行に実際に運用した場合に得られた実燃料消費量Qrを基に設定するようにしてもよい。また、車両の運行計画に基づき、消費される燃料量を算出する際、車両の固有情報(燃費等)を用いてもよく、各燃料推定消費量QQは、車両型式・識別番号別に紐付けされた車両寸法,車両重量,機関形式・出力,燃料タンク容量,燃費などの車両諸元情報、運行路線の各隣接駅間の距離、などに基づき、各運用番号の行路それぞれの運行に運用した場合について演算設定するようにしてもよい。
例えば、車両編成識別番号が1の車両編成を運用番号01の行路に運用した場合の燃料推定消費量QQX001・01は、車両型式がxで車両識別番号が001である気動車両90が、車両基地から駅Bまで運行するときの燃料推定消費量と、駅Bで停車している間の燃料推定消費量と、駅Bから駅Aまで運行するときの燃料推定消費量と、駅Aで停車している間の燃料推定消費量と、駅Aから駅B経由で駅Cまで運行するときの燃料推定消費量と、・・・、駅Cから駅B経由で駅Aまで運行するときの燃料推定消費量と、駅Aで停車している間の燃料推定消費量と、駅Aから駅Bまで運行するときの燃料推定消費量と、駅Bで停車している間の燃料推定消費量と、駅Bから車両基地まで運行するときの燃料推定消費量との合計である。また、そのうちの個々の燃料推定消費量については、駅Bから駅Aまで運行するときの燃料推定消費量を例に説明すれば、その燃料推定消費量は、駅Bから駅Aまでの距離、駅Bの出発時刻と駅Aの到着時刻とに基づく所要時間、車両型式がxで車両識別番号が001である気動車両90の燃費、などの行路の運行における固有情報を固定要素にして、駅Bから駅Aまでと駅Aから駅Bまでとの路線状態の相違(上りと下りとでの路線状態の相違)、所要時間に基づく運行速度,燃費速度,加減速度の相違、曜日や時間帯による混雑度合の相違(車両重量変化の違い)、冷・暖房の使用有無の相違、などの同一行路における変動情報を運行変動要素として加味して算出できる。
車両基地管理装置50は、運行管理装置60から取得した列車の運行計画(列車計画情報や車両運用計画情報)を基に、例えば、本線と車両基地との間での列車の入・出庫や、車両基地内での列車の移動・留め置きについて、その実行管理を行う。また、車両基地管理装置50は、車両基地内の移動・留め置き先で行う検査・清掃作業や燃料供給作業などの各種作業計画についても、取得した列車の運行計画を基に、その実行管理を行う。この各種作業計画のうちには、燃料供給作業計画も含まれている。
燃料供給作業計画には、燃料供給作業を行うために所定の線路80に入線してくる供給対象の車両編成の識別番号別に、後述の予測燃料供給量Qpを含む編成車両ごとの燃料供給情報、燃料供給機10が設けられた所定の線路80に対する入線・発車時刻(停車中時刻)に対応した作業時刻情報などが含まれている。
そして、車両基地での燃料供給作業は、運行管理装置60によって計画管理された車両運用計画の燃料供給作業計画を基に、各車両編成識別番号の車両編成ごと、例えば、図4に示すようにして、車両基地管理装置50により、車両基地内の所定の線路80に設けられた燃料供給機10を用いて実行される。
図4は、車両基地管理装置によって車両編成ごとに実行管理される燃料供給作業の一実施例を模式的に表した図である。
燃料供給作業は、車両基地で、運行管理装置60によって計画管理された運行計画の車両運用計画を基に、車両基地管理装置50によって、例えば、入庫中の車両編成それぞれに対して、図4に示すように行われる。図示の例では、車両編成識別番号が1の、車両型式がxで車両識別番号が001の気動車両の1両車両編成に対しては、毎日、時刻t11からt12で燃料供給作業が行われ、車両編成識別番号が2の、車両型式がyで車両識別番号が004の気動車両の1両車両編成に対しては、毎日、時刻t21からt22で燃料供給作業が行われ、車両編成識別番号が3の、車両型式がxで車両識別番号が002,003の2両の気動車両90(90-1、90-2)の連結車両編成に対しては、1日置きに、時刻t31からt32で燃料供給作業が行われることが表されている。
この場合、毎日、1日置きなどの、各車両編成それぞれに対する燃料供給作業の作業間隔は、車両編成識別番号の編成車両それぞれの車両型式別の、例えば、車両諸元情報のうちの燃料タンク容量や、運行計画で割り当てられる運用番号の行路の、図3に示した、対応する燃料推定消費量QQを基にして、運行管理装置60によって設定される。
そして、この運行管理装置60による、車両編成それぞれに対する燃料供給作業の作業間隔の設定に当たっては、車両編成識別番号の編成車両それぞれの燃料タンクへの、燃料供給機10による予測燃料供給量Qpが、次の述べるようにして算出される。
具体的に、図2に示した、運用番号01の行路の運行に適用される車両編成識別番号が1の車両編成の場合、編成車両の車両型式・識別番号がx001の気動車両90の推定燃料消費量QQは、図3に示すように、QQX001・01である。ここで、説明を簡便にするため、車両型式・識別番号がx001の編成車両(気動車両90)の燃料タンク容量はこの推定燃料消費量QQX001・01よりも大きいと仮定すると、次に推定燃料消費量QQX001・01を2倍した燃料量と燃料タンク容量と比較し、このような推定燃料消費量QQX001・01をm倍した燃料量と燃料タンク容量との比較作業を、燃料タンク容量よりも、燃料推定消費量QQX001・01をm倍した燃料量が大きくなるまで繰り返す。そして、燃料タンク容量よりも、燃料推定消費量QQX001・01をm倍した燃料量が大きくなったならば、[m-1]回分以下の行路の運行にかかる時間・日数が、燃料供給作業の作業間隔として設定可能であることが理解できる。このようにして、図4に示した燃料供給作業では、運用番号01の行路の運行に適用される車両編成識別番号が1の車両編成は、燃料供給作業の作業間隔は各日と設定されている。そして、予測燃料供給量Qpは、QQX001・01になる。
同様に、図2に示した、運用番号03の行路の運行に適用される車両編成識別番号が3の車両編成の場合、編成車両の車両型式・識別番号がx002、x003の気動車両90-1、90-2それぞれの燃料推定消費量QQは、図3に示すように、QQX002・03、QQX003・03である。ここで、説明を簡便にするため、車両型式・識別番号がx002、x003の編成車両(気動車90-1、90-2)それぞれの燃料タンク容量は、燃料推定消費量QQX002・03、QQX003・03よりも大きいと仮定すると、燃料推定消費量QQX002・03、QQX003・03それぞれをj、k倍した燃料量と燃料タンク容量との比較作業の繰り返しを、それぞれの燃料タンク容量に対して行う。その結果、車両型式・識別番号がx002の編成車両(気動車両90-1)については、[j-1]回分以下の行路の運行に係る時間間隔すなわち日数が、燃料供給作業の作業間隔として設定可能であり、車両型式・識別番号がx003の編成車両(気動車両90-2)については、[k-1]回分以下の行路の運行にかかる時間・日数が、燃料供給作業の作業間隔として設定可能であることが理解できる。また、図4に示した燃料供給作業では、運用番号03の行路の運行に適用される車両編成識別番号が3の連結車両編成の場合、車両型式・識別番号がx002、x003の編成車両(気動車両90-1、90-2)それぞれの燃料供給作業は一緒に済ませる方が効率がよいので、運用番号03の行路の運行に適用される車両編成識別番号が3の車両編成では、燃料供給作業の作業間隔が、燃料供給作業の作業間隔が [k-1]回分以下で短い([k-1]<[j-1])、車両型式・識別番号がx003の編成車両(気動車両90-2)に合わせて、1日置きと設定されている。そのため、予測燃料供給量Qpは、車両型式・識別番号がx002の編成車両(気動車両90-1)の予測燃料供給量QpX002・03は、[(QQX002・03)×2]、車両型式・識別番号がx003の編成車両(気動車両90-2)の予測燃料供給量QpX003・03は、[(QQX003・03)×2]になる。
なお、本実施例では、燃料供給作業計画の各編成車両の車両情報に各編成車両の予測燃料供給量Qpが含まれているため、各編成車両の予測燃料供給量Qpの算出は、運行管理装置60で行われることとして説明したが、運行管理装置60と協働して車両基地管理装置50に行わせることや、運行管理装置60及び車両基地管理装置50と協働して各燃料供給機10の機器制御装置20に行わせることも可能である。なお、その算出タイミングは、運行計画に基づいて燃料供給作業の作業タイミングが決定された後は、任意のタイミングで算出可能である。
その上で、本実施例の鉄道車両用の燃料供給システムでは、図4に示した燃料供給作業のように、各車両編成識別番号の車両編成に対する燃料供給作業が、車両基地内の所定の線路80に設けられた燃料供給機10を用いて、車両基地管理装置50による実行管理下で行われると、車両基地管理装置50は、燃料供給作業が行われた車両編成の各編成車両(気動車両90)、その燃料供給作業に用いられた各燃料供給機10の異常有無判定処理を行う構成になっている。
図5は、車両基地管理装置が行う異常有無判定処理の一実施例のフローチャートである。図5の異常有無判定処理では、車両基地管理装置50は、以下のステップで示す処理を実行することによって、車両の燃料タンクへの満タン燃料供給作業の実行を通じて、燃料の供給対象である編成車両(気動車両90)及び/またはその燃料供給作業に用いられた燃料供給機のいずれかに異常が発生した場合は、その生じた異常を判定検出できる。
ステップS10:車両基地管理装置50は、運行管理装置60より受信した車両運用計画情報の燃料供給作業計画から、燃料供給作業を実行した車両編成識別番号の車両編成における、各編成車両の予測燃料供給量Qpを取得する。例えば、図4に示した○○月○○日の車両編成識別番号1の車両編成に対する燃料供給作業計画をこれから実行する場合は、車両型式・識別番号がx001の編成車両(気動車両90)に対する予測燃料供給量Qpx001を取得する。
ステップS20:燃料供給作業計画の車両編成識別番号の車両編成における各編成車両(気動車両90)への、対応する燃料供給機10を用いた満タン燃料供給作業が全て終了したならば、燃料供給管理機40から、燃料供給作業に用いた各燃料供給機10の作業結果情報(気動車90の燃料タンクへの満タン燃料供給作業の作業結果情報)の供給を受け、燃料供給作業に用いた各燃料供給機10による燃料供給量Qrを、対応する車両編成の対応編成車両の実燃料消費量Qrとして取得する。例えば、図4に示した○○月○○日の車両編成識別番号1の車両編成の編成車両(車両型式・識別番号がx001の気動車両90)に対する燃料供給作業計画の場合は、車両型式・識別番号がx001の気動車両90の実燃料消費量Qrとして、対応する燃料供給機10(例えば、燃料供給機10-1)による燃料供給量Qrx001を取得することになる。
ステップS30:各編成車両の予測燃料供給量Qpと実燃料消費量(燃料供給量Qr)との比較を行う。例えば、図4に示した○○月○○日の車両編成識別番号1の車両編成の編成車両(車両型式・識別番号がx001の気動車両90)に対する燃料供給作業計画の場合は、車両型式・識別番号がx001の気動車両90についてだけ、予測燃料供給量Qpx001と実燃料消費量Qrx001との比較を行う。また、図4に示した○○月○○日の車両編成識別番号3の車両編成の編成車両(車両型式・識別番号がx002の気動車両90-1と車両型式・識別番号がx003の気動車両90-2)に対する燃料供給作業計画の場合は、車両型式・識別番号がx002の気動車90-1について予測燃料供給量Qpx002と実燃料消費量Qrx002との比較を行うとともに、車両型式・識別番号がx003の気動車90-2についても予測燃料供給量Qpx003と実燃料消費量Qrx003との比較を行う。
ステップS40:予測燃料供給量Qpと実燃料消費量(燃料供給量Qr)との比較を行った編成車両それぞれについて、「実燃料消費量Qr-予測燃料供給量Qp」の値が予め設定されている第1の許容誤差δ1よりも大きいか否か、を判定する。
ステップS50:「実燃料消費量Qr-予測燃料供給量Qp」が予め設定されている第1の許容誤差δ1よりも大きくなった編成車両については、対応する編成車両の異常(例えば、燃料タンクの燃料漏れ、機関異常など)を判定する。また、「実燃料消費量Qr-予測燃料供給量Qp」の値が予め設定されている第1の許容誤差δ1以下になった編成車両については、編成車両に異常が無いことを判定する。
ステップS60:同じく、予測燃料供給量Qpと実燃料消費量(燃料供給量Qr)との比較を行った編成車両それぞれについて、「予測燃料供給量Qp-実燃料消費量Qr」の値が予め設定されている第2の許容誤差δ2よりも大きいか否か、を判定する。
ステップS70:「予測燃料供給量Qp-実燃料消費量Qr」が予め設定されている第2の許容誤差δ2よりも大きくなった編成車両については、編成車両の燃料供給作業に用いられた、対応する燃料供給機10(例えば、燃料供給機10-1)の異常(例えば、流量発信器故障など)を判定する。また、「予測燃料供給量Qp-実燃料消費量Qr」の値が予め設定されている第2の許容誤差δ2以下になった編成車両については、対応する燃料供給機10は異常が無いことを判定する。
ステップS80:ステップS50及びステップS70の判定結果から、燃料供給作業を実行した車両編成識別番号の各編成車両の判定結果において、編成車両または燃料供給機10のうちの少なくとも1両または1台について、異常が生じていると判定したか否か、を確認する。
ステップS90:ステップS80で、編成車両または燃料供給機10のうちの少なくとも1両または1台について、異常を判定が生じている場合には、それぞれ異常を判定された編成車両及び燃料供給機10の識別番号を、車両基地管理装置50及び/または運行管理装置60から報知出力する。
これにより、車両基地では、燃料供給作業を受けた車両編成識別番号の車両編成のうちの編成車両(気動車両90)に異常が判定された場合は、例えば、その編成車両を緊急点検したり、代替車両に置き換えたりするといった、運行計画の車両運用計画に対する迅速な対応がはかれる。同様に、燃料供給作業に用いられた燃料供給機10の異常が判定された場合は、例えば、この異常が判定された燃料供給機10を緊急点検したり、これから燃料供給作業を受ける予定の車両編成識別番号の車両編成のうち、この燃料供給機10を用いる予定だった編成車両への燃料供給作業を、別の燃料供給機10を用いた燃料供給作業に変更するといった、運行計画の車両運用計画に対する迅速な対応がはかれる。
なお、上述した図5に示す異常有無判定処理において、ステップS40で言及した第1の許容誤差δ1は、例えば、上り列車と下り列車との間での実燃料消費量Qrの変動、列車の運行時間帯の違いによる混雑具合での実燃料消費量Qrの変動、冷暖房の使用の有無での実燃料消費量Qrの変動などの変動要因に基づいた、実燃料消費量Qrの上方変動量を加味して設定されている。同様に、ステップS60で言及した第2の許容誤差δ2は、前述の変動要因に基づいた実燃料消費量Qrの下方変動量に加えて、燃料供給機10の異常装置器差などを加味して設定されている。
さらに、図5に示す異常有無判定処理については、1つの実燃料消費量Qrと、編成車両の異常判定に用いる第1の許容誤差δ1及び燃料供給機10の異常判定に用いる第2の許容誤差δ2とを利用して、編成車両、燃料供給機10それぞれの、異常の発生の有無を判定する構成としたが、編成車両、燃料供給機10それぞれの、異常の発生の有無を判定する構成は、この構成だけに限定されるものではない。例えば、第1の許容誤差δ1と第2の許容誤差δ2を予測燃料供給量Qpに反映させて、予測燃料供給量Qp自体を、編成車両の異常判定に用いる予測燃料供給量Qp1と、燃料供給機10の異常判定に用いる予測燃料供給量Qp2とで区別し、編成車両、燃料供給機10それぞれの異常判定で使い分けるようにすることも可能である。
以上、説明したことから理解できるように、本実施例の燃料供給システムによれば、燃料供給作業を行う都度、供給対象の車両編成の編成車両それぞれ又は燃料供給作業に用いられる燃料供給機それぞれのいずれかに異常が生じている場合は検出できるので、車両及び燃料供給機それぞれのメンテナス性能の向上をはかることができる。
図6は、本発明に係る燃料供給システムを、路線運行バス用の燃料供給システムに適用した場合の一実施例の全体構成図である。なお、図6に示した路線運行バスの燃料供給システムにおいて、鉄道車両用の燃料供給システムと同様な構成・作用については、その説明が重複したものになるので、図面中において、同一符号を付し、以下では、その説明は省略する。
まず、図6に示した路線運行バス用の燃料供給システムと、図1に示した鉄道車両用の燃料供給システムとの間における最大の相違は、鉄道車両用の燃料供給システムでは、車両基地内の燃料供給機10が設けられている所定の線路80に燃料供給作業を受けるために入線する車両編成は、運行計画の車両運用計画情報を参照すれば、燃料供給作業計画における車両編成ごとの所定の線路80への入線停車順に対応して、その燃料供給作業順は固定的であるのに対し、路線運行バス用の燃料供給システムの場合は、燃料供給機10の燃料供給作業位置へのバス車両の停車順、すなわちバス車両に対する燃料供給作業順が、運行計画の車両運用計画情報を参照しても不明確であり、その停車順は、流動的に変化することである。
そこで、図6に示した路線運行バス用の燃料供給システムでは、燃料供給機10それぞれの燃料供給作業位置に燃料供給作業を受けるため停車した路線運行バス91の車両識別情報を取得するための、バス識別装置110がさらに設けられている。バス識別装置110には、例えば、車両ナンバーや営業所ごとの車両管理番号といったバス車体に表示された識別情報を画像認識するための識別情報認識装置や、バス91に設けられた車両側識別情報発信器と燃料供給機10それぞれの燃料供給作業位置に設けられた燃料供給機側識別情報受信器との組み合わせからなる識別情報交信装置などが利用可能である。
以上から理解できるように、本実施例の燃料供給システムによれば、路線運行バス91のように、個別の燃料供給機10に対する燃料供給作業順が不明確になる場合であっても、路線運行バス車両への燃料供給作業時に、運行計画を基にした車両の燃料供給作業時までの予測燃料消費量Qpと、車両への燃料供給機10による実際の燃料供給量Qが対応する、運行計画に従った燃料供給作業時までの運行で車両が実際に消費した実燃料消費量Qrとの比較結果に基づいて、正確に車両又は燃料供給機10のいずれかに生じた異常を検出できる。
なお、当業者によれば、上記した実施形態に記載された技術的な解決手段の一部の技術要素を単に変更したり或いは置換することもできる。そのような、単なる変更や置換は、本開示の実施例から逸脱するとは見なされない。そのような単なる変更や置換は、すべて本発明の請求の範囲に属する。