JP7304053B2 - 肝臓がん発症リスクの判定方法、及び肝臓がん発症リスクの判定キット - Google Patents

肝臓がん発症リスクの判定方法、及び肝臓がん発症リスクの判定キット Download PDF

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Description

本発明は、肝臓がん発症リスクの判定方法、肝臓がん発症リスクの判定キット、及び医薬組成物に関する。
肝細胞がん(hepatocellular carcinoma:HCC)は、世界的に発生率が増加し続けており、がんによる死亡の主な要因の1つとなっている。C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV)感染は、HCC発生の最も一般的な危険因子の1つである。直接作用型抗ウイルス剤(Direct Acting Antivirals:DAA)開発は、HCV関連の慢性肝疾患患者において90%を超える持続的ウイルス学的応答を可能にした。しかしながら、最近の研究では、DAA治療によりウイルスが根絶された患者において、HCCの発症リスクが増加したことが報告されている(非特許文献1、2)。いくつかの報告によると、HCV根絶後のHCC発生率は、1年あたり0.74%から6ヶ月あたり3.17%の範囲である(非特許文献1~3)。したがって、持続的ウイルス学的応答達成の後においても、HCV感染以外の他の原因が、HCC発症に関与していると考えられる。
Ravi, S., et al. Unusually High Rates of Hepatocellular Carcinoma After Treatment With Direct-Acting Antiviral Therapy for Hepatitis C Related Cirrhosis. Gastroenterology 152, 911-912 (2017). Conti, F., et al. Early occurrence and recurrence of hepatocellular carcinoma in HCV-related cirrhosis treated with direct-acting antivirals. J Hepatol 65, 727-733 (2016). Li, D.K., et al. The short-term incidence of hepatocellular carcinoma is not increased after hepatitis C treatment with direct-acting antivirals: An ERCHIVES study. Hepatology 67, 2244-2253 (2018).
近年、ウイルス性肝炎が背景にない肝臓からの肝がん発生が増加傾向にあることから、既存の肝炎ウイルススクリーニングによる肝がん高発がん危険群の同定とは独立して、肝炎ウイルスとは無関係に、肝がん高発がん危険群を同定する必要性が生じている。
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、肝炎ウイルスとは無関係に、肝臓がん発症リスクを検査可能な、肝がん発症リスクの判定方法、及び肝がん発症リスクの判定キットを提供することを目的とする。また、前記肝癌発症リスクの判定方法により肝がん発症リスクが高いと判定された対象に投与される、肝がん発症リスクを低減するための医薬組成物を提供することを目的とする。
本発明は以下の態様を含む。
[1]対象の糞便試料において、gelE遺伝子又はその遺伝子産物の含有量を測定する工程を含む、肝臓がん発症リスクの判定方法。
[2]前記gelE遺伝子又はその遺伝子産物の含有量と肝臓がん発症リスクとを相関させる工程をさらに含む、[1]に記載の肝臓がん発症リスクの判定方法。
[3]前記gelE遺伝子の含有量又はその遺伝子産物の測定を、(a1)前記糞便試料における前記gelE遺伝子をコードする核酸含有量の測定、(b1)前記糞便試料における前記gelE遺伝子の遺伝子産物含有量の測定、及び(c1)前記糞便試料におけるゼラチナーゼ活性の測定、からなる群より選択される少なくとも1種の測定により行う、[1]又は[2]に記載の肝臓がん発症リスクの判定方法。
[4]前記gelE遺伝子が、Enterococcus faecalis由来のgelEである、[1]~[3]のいずれか一つに記載の肝臓がん発症リスクの判定方法。
[5]対象の糞便試料中のgelE遺伝子又はその遺伝子産物の含有量を測定するための試薬を含む、肝臓がん発症リスクの判定キット。
[6]前記gelE遺伝子又はその遺伝子産物の含有量を測定するための試薬が、(a2)前記糞便試料における前記gelE遺伝子をコードする核酸含有量を測定するための試薬、(b2)前記糞便試料における前記gelE遺伝子の遺伝子産物含有量を測定するための試薬、及び(c2)前記糞便試料におけるゼラチナーゼ活性を測定するための試薬、からなる群より選択される少なくとも1種の試薬を含む、[5]に記載の判定キット。
[7][1]~[3]のいずれか一つに記載の肝臓がん発症リスクの判定方法により肝臓がん発症リスクが高いと判定された対象に投与される、肝臓がん発症リスクを低減するための医薬組成物であって、前記対象の腸内のgelE遺伝子を有する細菌の数を減少させる薬剤を含む、医薬組成物。
[8]前記薬剤が、健常対象の腸内細菌を含む、[7]に記載の医薬組成物。
[9]前記健常対象の腸内細菌が、前記健常対象の糞便に存在する細菌である、[8]に記載の医薬組成物。
[10]前記gelE遺伝子を有する細菌が、Enterococcus faecalisである、[7]~[9]のいずれか一つに記載の医薬組成物。
本発明によれば、肝炎ウイルスとは無関係に、肝臓がん発症リスクを判定可能な、肝がん発症リスクの判定方法、及び肝がん発症リスクの判定キットが提供される。また、本発明によれば、前記肝癌発症リスクの判定方法により肝がん発症リスクが高いと判定された対象に投与される、肝がん発症リスクを低減するための医薬組成物が提供される。
図1A~1Eは、健常ドナー(HD)、HCCを有さないHCV感染慢性肝疾患患者(CLD)、原発性HCCを有するHCV感染慢性肝疾患患者(HCC)の腸内微生物叢を示す。図1Aは、HD及びCLDの糞便で、相対的に多い分類群を用いて線形識別分析(linear discriminative analysis:LDA)を行った結果を示す。P値<0.05のLDAスコアを示した。 図1Bは、HD及びHCCの糞便で、相対的に多い分類群を用いてLDAを行った結果を示す。P値<0.05のLDAスコアを示した。 図1Cは、CLD及びHCCの糞便で、相対的に多い分類群を用いてLDAを行った結果を示す。P値<0.05のLDAスコアを示した。 図1Dは、主座標分析により視覚化した、分類データを用いて計算したBray-Curtis距離を示す。 図1Eは、主座標分析により視覚化した、各グループ間の糞便のKEGG経路データを用いて計算したBray-Curtis距離を示す。 図2A~2Dは、各被験者グループの糞便を移植したマウスにおいて、肝臓腫瘍発生率及びmRNA発現解析を行った結果を示す。図中、*,P<0.05;**,P<0.01;***,P<0.001であり、以降の図でも同様である。図2Aは、各被験者グループの糞便移植を行ったマウスにおける肝臓腫瘍陽性マウスの割合を示す。棒グラフの上の数値は、腫瘍陽性マウス数/全マウス数の比を示す。 図2Bは、各被験者グループの糞便移植を行ったマウス1匹あたりの肝臓腫瘍数を示す。 図2Cは、DEN注射を1回、CCl4注射を2回行った後、マウスを安楽死させ、リアルタイムPCRにより肝臓におけるmRNA発現を解析した結果を示す。 図2Dは、特定被験者から糞便移植を受けた無菌マウスに、DEN注射を1回、CCl4注射を2回行った後、マウスを安楽死させ、リアルタイムPCRにより肝臓におけるmRNA発現を解析した結果を示す。 図3A~3Cは、各被験者の糞便を移植したマウスにおける肝臓発癌試験において、マウス微生物叢をメタゲノム解析に基づき解析した結果を示す。図3Aは、肝臓腫瘍陽性マウス及び肝臓腫瘍陰性マウスの糞便中で相対的に多く存在する微生物属を用いてLDAを行った結果を示す。P値<0.05のLDAスコアを示した。 図3Bは、マウス1匹あたり肝臓腫瘍数を、糞便中のEnterococcus属の存在に基づきプロットした結果を示す。 図3Cは、マウス肝臓におけるmRNA発現を、糞便中のEnterococcus属の存在に基づきプロットした結果を示す。 図3D及び図3Eは、特定細菌種を経口又は直腸投与し、DEN及びCCl4の注射により肝がん発生を誘導した、フローラ除菌マウスにおいて、腫瘍発生数及び肝臓におけるmRNA発現を解析した結果を示す。図3Dは、マウス1匹あたりの肝臓腫瘍数を示す。 図3Eは、DEN注射を1回、CCl4注射を2回行った後、マウスを安楽死させ、リアルタイムPCRにより肝臓におけるmRNA発現を解析した結果を示す。 図3Fは、図2に示す試験で用いたマウスにおいて、糞便中のgelEの存在に基づいて、マウス1匹あたりの肝臓腫瘍数をプロットした結果を示す。 図4A~4Gは、糞便中のゼラチナーゼ活性及び消化管透過性を解析した結果を示す。図4Aは、各被験者グループの糞便のゼラチナーゼ活性を測定した寒天プレートの代表的な写真を示す。-,透明層半径<3mm;+,3mm≦透明層半径<6mm;++,透明層半径≧6mm。 図4Bは、各被験者グループにおいて、糞便中のゼラチナーゼ活性が前記範囲内である被験者の割合を示す。 図4Cは、糞便中のgelEの存在に応じて分類した被験者において、糞便中のゼラチナーゼ活性が前記範囲内である被験者の割合を示す。 図4Dは、各被験者グループにおける糞便中のMMP9濃度を示す。 図4Eは、糞便中のゼラチナーゼ活性の程度に応じて分類した被験者における糞便中のMMP9濃度を示す。 図4Fは、各被験者グループの糞便を移植し、DEN注射1回、CCl4注射2回を行った後、FITC-デキストランを経口投与したマウスにおいて、血漿FITC-デキストラン濃度を測定した結果を示す。 図4Gは、各被験者グループの糞便を移植し、DEN注射1回、CCl4注射2回を行った後、血漿LPS濃度を測定した結果を示す。 図5A~5Fは、E.faecalisのgelEが、消化管透過性の上昇と肝臓発癌の促進に必要であることを示す図である。図5Aは、各E.faecalis株を投与したフローラ除菌マウス1匹当たりの肝臓腫瘍数をプロットした結果を示す。 図5Bは、各E.faecalis株を投与したフローラ除菌マウスにおいて、DEN注射を1回、CCl4注射を2回行った後、マウスを安楽死させ、リアルタイムPCRにより肝臓におけるmRNA発現を解析した結果を示す。 図5Cは、各E.faecalis株を投与した無菌マウスにおいて、DEN注射を1回、CCl4注射を2回行った後、マウスを安楽死させ、リアルタイムPCRにより肝臓におけるmRNA発現を解析した結果を示す。 図5Dは、DEN注射1回、CCl4注射2回を行った後、FITC-デキストランを経口投与したV583定着ノトバイオートマウスにおいて、血漿FITC-デキストラン濃度を測定した結果を示す。 図5Eは、V583定着フローラ除菌結果を示す。 図5Fは、CLD及びHCCの被験者グループにおいて、肝臓における新規腫瘍又は再発性腫瘍の発生率を追跡した結果を示す。 図6A~6Eは、慢性肝機能障害は微生物叢の異常及びデオキシコール酸の産生減少をもたらし、腸内でのEnterococcusの定着を可能にすることを示す図である。図6Aは、各被験者グループにおける糞便中胆汁酸濃度を示す。 図6Bは、E.faecalis V583野生株を種々の胆汁酸を含有するBHIブロス中で6時間培養した後、CFUをカウントした結果を示す。 図6Cは、フローラ除菌マウスに、PBS若しくはL.salivarius(左)、又はHD患者26若しくはHD患者55の糞便微生物叢を定着させた後、V583野生株を投与し、E.faecalisのCFUをEF寒天プレート上でカウントした結果を示す。 図6Dは、L.salivariusの定着後、V583を投与したマウスにおいて、DEN注射を1回、CCl4注射を2回行った後、マウスを安楽死させ、リアルタイムPCRにより肝臓におけるmRNA発現を解析した結果を示す。 図6Eは、HD患者26の糞便微生物叢又はHD患者55の糞便微生物叢の定着後、V583を投与したマウスにおいて、DEN注射を1回、CCl4注射を2回行った後、マウスを安楽死させ、リアルタイムPCRにより肝臓におけるmRNA発現を解析した結果を示す。
[肝がん発症リスクの判定方法]
一実施形態において、本発明は、対象の糞便試料において、gelE遺伝子又はその遺伝子産物の含有量を測定する工程(以下、「工程(i)」ともいう)を含む、肝臓がん発症リスクの判定方法を提供する。
<工程(i)>
本実施形態の判定方法は、対象の糞便試料において、gelE遺伝子又はその遺伝子産物の含有量を測定する工程を含む。
≪gelE遺伝子≫
gelE遺伝子は、細菌のゼラチナーゼをコードする遺伝子である。「ゼラチナーゼ」とは、ゼラチンを加水分解する活性(ゼラチナーゼ活性)を有する酵素である。gelE遺伝子が由来する細菌は、特に限定されないが、Enterococcus属に属する細菌が挙げられ、Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Enterococcus cecorum、Enterococcus hirae等が例示される。中でも、gelE遺伝子は、Enterococcus faecalisに由来するものであることが好ましい
gelE遺伝子及び当該遺伝子がコードするタンパク質の配列は公知であり、その遺伝子配列及びアミノ酸配列は、公知のデータベースから取得することができる。例えば、Enterococcus faecalisのgelE遺伝子配列の一例として、GenBankにアクセッションNo.M37185.1で登録された配列等が挙げられる。前記アクセッションNo.で登録された塩基配列を配列番号1に、アミノ酸配列を配列番号2に示す。Enterococcus faeciumのgelE遺伝子の一例としてはGenBankアクセッションNo.FJ858146.1、Enterococcus cecorumのgelE遺伝子の一例としてはGenBankアクセッションNo.KY613931.1(partial CDS)、Enterococcus hiraeのgelE遺伝子の一例としてはGenBankアクセッションNo.EU423274.1(partial CDS)で登録された配列等が挙げられる。gelE遺伝子は、前記配列を有するものに限定されず、それらのホモログ(オーソログ、パラログ)、及びそれらの変異体を包含する。
gelE遺伝子には、例えば、以下のものも包含される。
(1)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、付加、又は挿入されたアミノ酸配列からなり、且つゼラチナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
(2)配列番号2に記載のアミノ酸配列と80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つゼラチナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
(3)配列番号1に記載の塩基配列において1又は複数個の塩基が欠失、置換、付加、又は挿入された塩基配列からなり、且つゼラチナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
(4)配列番号1に記載の塩基配列と80%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、且つゼラチナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
(5)配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つゼラチナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
上記(1)において、欠失、置換、付加、又は挿入されるアミノ酸の数は、結果として生じるポリペプチドがゼラチナーゼ活性を有する限り、特に限定されない。記(3)において、欠失、置換、付加、又は挿入される塩基の数は、結果として生じるポリヌクレオチドが、ゼラチナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする限り、特に限定されない。欠失、置換、付加、又は挿入されるアミノ酸又は塩基の数は、例えば1~80個であることができ、1~60個が好ましく、1~50個がより好ましく、1~30個がさらに好ましい。欠失、置換、付加、又は挿入されるアミノ酸又は塩基の数としては、さらに、1~20個、1~10個、1~5個、1~3個、1個又は2個等が例示される。
上記(2)又は(4)において、配列同一性は、80%以上である限り、特に限定されない。配列同一性は、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。なお、アミノ酸配列又は塩基配列どうしの配列同一性(又は相同性)は、2つのアミノ酸配列又は塩基配列を、対応するアミノ酸又は塩基が最も多く一致するように、挿入及び欠失に当たる部分にギャップを入れながら並置し、得られたアラインメント中のギャップを除くアミノ酸配列全体又は塩基配列全体に対する一致したアミノ酸又は塩基の割合として求められる。アミノ酸配列同士又は塩基配列同士の配列同一性は、当該技術分野で公知の各種相同性検索ソフトウェアを用いて求めることができる。例えば、アミノ酸配列の配列同一性の値は、公知の相同性検索ソフトウェアBLASTPにより得られたアライメントを元にした計算によって得ることができ、塩基配列の配列同一性の値は、公知の相同性検索ソフトウェアBLASTNにより得られたアライメントを元にした計算によって得ることができる。
上記(5)において、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、Molecular Cloning-A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION(Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press)に記載の方法が挙げられる。ストリンジェントな条件としては、例えば、6×SSC(20×SSCの組成:3M塩化ナトリウム、0.3Mクエン酸溶液、pH7.0)、5×デンハルト溶液(100×デンハルト溶液の組成:2質量%ウシ血清アルブミン、2質量%フィコール、2質量%ポリビニルピロリドン)、0.5質量%のSDS、0.1mg/mLサケ精子DNA、及び50%フォルムアミドからなるハイブリダイゼーションバッファー中で、42~70℃で数時間から一晩インキュベーションを行うことによりハイブリダイズさせる条件が挙げられる。インキュベーション後の洗浄の際に用いる洗浄バッファーとしては、好ましくは0.1質量%SDS含有1×SSC溶液、より好ましくは0.1質量%SDS含有0.1×SSC溶液が挙げられる。
≪対象の糞便試料≫
本実施形態の判定方法において用いる糞便試料の対象は、好ましくは哺乳類である。哺乳類としては、特に限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類(サル、チンパンジー、ゴリラなど)、げっ歯類(マウス、ラット、モルモットなど)、ペット動物(イヌ、ネコ、ウサギなど)、家畜動物(ウシ、ブタ、ウマ、ヤギなど)等が挙げられる。対象は、好ましくはヒトである
また、本実施形態で用いる糞便試料が由来する対象は、肝臓がん以外の肝臓疾患(たとえあ、慢性肝疾患)に罹患した対象であってもよい。あるいは、肝臓がんの既往歴があり、肝臓がんが寛解に至った対象であってもよい。あるいは、多量飲酒、喫煙などの生活習慣を有していたり、肥満、糖尿病などの肝臓がんのリスク因子を有していたりする対象であってもよい。
糞便試料は、糞便をそのまま用いてもよいし、後述するgelE遺伝子の含有量の測定方法に応じて、適宜処理を行ってもよい。例えば、gelE遺伝子をコードする核酸の含有量を測定する場合、糞便をPBS等の適当なバッファーに懸濁してホモジナイズし、市販のDNA抽出キット等を用いて、DNAを抽出してもよい。また、例えば、gelE遺伝子の遺伝子産物の含有量を測定する場合、遺伝子産物がmRNAである場合には、糞便を適当なバッファーに懸濁してホモジナイズし、市販のRNA抽出キット等を用いて、RNAを抽出してもよい。遺伝子産物がタンパク質である場合には、糞便をPBS等の適当なバッファーに懸濁し、フィルター濾過や遠心分離等を行って、固形物を除去してもよい。ゼラチナーゼ活性を測定する場合も同様に、糞便をPBS等の適当なバッファーに懸濁し、フィルター濾過や遠心分離等を行って、固形物を除去してもよい。
糞便試料には、糞便そのものに加えて、糞便に上記のような各種処理を行ったものも包含される。
≪gelE遺伝子又はその遺伝子産物の含有量の測定≫
gelE遺伝子又はその遺伝子産物の含有量(以下、単に「gelE遺伝子含有量」という場合がある。)の測定方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。gelE遺伝子含有量の測定は、例えば、下記(a1)~(c1)からなる群より選択される少なくとも1種の測定方法により行うことができる。
(a1)糞便試料におけるgelE遺伝子をコードする核酸含有量の測定
(b1)糞便試料におけるgelE遺伝子の遺伝子産物含有量の測定
(c1)糞便試料におけるゼラチナーゼ活性の測定
(測定方法(a1))
糞便試料におけるgelE遺伝子をコードする核酸は、より具体的にはgelE遺伝子をコードするDNA(以下、「gelE遺伝子DNA」という。)である。gelE遺伝子DNA含有量の測定は、糞便をそのまま用いて行ってもよいし、上記のように糞便からDNAを抽出し、当該DNA抽出試料を用いて行ってもよい。
gelE遺伝子DNA含有量の測定方法は、特に限定されず、公知の方法を用いて行うことができる。そのような方法としては、例えば、gelE遺伝子DNAを特異的に増幅可能なプライマーを用いる方法、gelE遺伝子DNAに特異的にハイブリダイズするプローブを用いる方法等が挙げられる。
〔プライマーを用いる方法〕
gelE遺伝子DNAを特異的に増幅可能なプライマーは、gelE遺伝子配列に基づいて、設計することができる。「特異的に増幅可能」とは、gelE遺伝子DNAの少なくとも一部を増幅可能であるが、他のDNAは増幅しないことを意味する。プライマーは、gelE遺伝子DNAにアニーリングし、gelE遺伝子の少なくとも一部を増幅可能なものであれば特に限定されない。プライマーの例としては、例えば、下記のものを挙げることができる(Vankerckhoven, V., et al. J Clin Microbiol 42, 4473-4479 (2004).)が、これに限定されない。
フォワードプライマー:5'-TATGACAATGCTTTTTGGGAT-3' (配列番号3)
リバースプライマー:5'-AGATGCACCCGAAATAATATA-3' (配列番号4)
例えば、gelE遺伝子DNAを増幅可能なプライマーセット(例えば、フォワードプライマー及びリバースプライマーのセット)を用いて、糞便試料においてPCR法や等温増幅法(LAMP法)等による核酸増幅反応を行い、増幅断片の有無又は増幅断片の量を確認することにより、糞便試料中のgelE遺伝子DNAの含有量を測定することができる。gelE遺伝子DNAを定量可能な核酸増幅方法としては、特に限定されないが、リアルタイムPCR等の定量PCR法等が挙げられる。
〔プローブを用いる方法〕
gelE遺伝子DNAに特異的にハイブリダイズするプローブは、gelE遺伝子配列に基づいて、設計することができる。「特異的にハイブリダイズする」とは、gelE遺伝子DNAにハイブリダイズするが、他のDNAにはハイブリダイズしないことを意味する。
例えば、gelE遺伝子DNAに特異的にハイブリダイズするプローブを用いて、糞便試料においてハイブリダイゼーション反応を行い、ハイブリダイズしたプローブの有無及び量を確認することにより、糞便試料中のgelE遺伝子DNAの含有量を測定することができる。プローブを用いたgelE遺伝子DNAの定量方法としては、例えば、サザンハイブリダイゼーション法、DNAマイクロアレイ法等が挙げられる。
(測定方法(b1))
糞便試料におけるgelE遺伝子の遺伝子産物は、より具体的にはgelE遺伝子の転写産物であるmRNA(以下、「gelE-mRNA」という。)、及びgelE遺伝子の翻訳産物であるタンパク質(以下、「gelEタンパク質」という。)である。gelE-mRNA含量の測定は、糞便をそのまま用いて行ってもよいし、上記のように糞便からRNAを抽出し、当該RNA抽出試料を用いて行ってもよい。gelEタンパク質含量の測定は、糞便をそのまま用いて行ってもよいし、上記のようにフィルター濾過や遠心分離により固形分を除去し、当該液体試料を用いて行ってもよい。
gelE-mRNA量の測定方法は、特に限定されず、公知の方法を用いて行うことができる。そのような方法としては、例えば、gelE遺伝子-mRNAを特異的に増幅可能なプライマーを用いる方法、gelE-mRNAに特異的にハイブリダイズするプローブを用いる方法等が挙げられる。これらのプライマー及びプローブは、上記測定方法(a1)の場合と同様に、gelE遺伝子配列に基づき設計することができる。gelE-mRNAの定量方法としては、例えば、定量RT-PCR法、ノーザンハイブリダイゼーション法、cDNAマイクロアレイ法等が挙げられる。
gelEタンパク質含量の測定方法は、特に限定されず、公知の方法を用いて行うことができる。そのような方法としては、例えば、gelEタンパク質に対する特異的結合物質を用いる方法が挙げられる。「特異的結合物質」とは、gelEタンパク質に対する特異的結合性を有する物質である。「gelEタンパク質に特異的結合性を有する」とは、gelEタンパク質に対して高い結合親和性を有し、他の物質に対しては結合親和性が低いことを意味する。特異的結合物質の具体例としては、gelEタンパク質に特異的結合性を有する抗体(抗gelEタンパク質抗体)、又はgelEタンパク質に特異的結合性を有するアプタマー(抗gelEタンパク質アプタマー)が挙げられる。
抗gelEタンパク質抗体は、gelEタンパク質又はその断片を抗原として、公知の方法(ハイブリドーマ法、ファージディスプレイ法など)により作製することができる。抗gelEタンパク質抗体は、必ずしもインタクトな抗体である必要はなく、抗体断片であってもよい。抗gelEタンパク質抗体は、改変抗体(キメラ抗体等)であってもよく、抗体断片(scFv、Fab、F(ab')2、Fv等)であってもよい。抗gelEタンパク質抗体は、ポリクローナルであってもよく、モノクローナルであってもよい。
アプタマーとは、標的物質に対する特異的結合性を有する物質であり、核酸アプタマー、ペプチドアプタマー等が挙げられる。抗gelEタンパク質アプタマーは、核酸アプタマーであってもよく、ペプチドアプタマーであってもよい。抗gelEタンパク質核酸アプタマーは、例えば、systematic evolution of ligand by exponentialenrichment(SELEX)法等により選別することができる。また、抗gelEタンパク質ペプチドアプタマーは、例えば酵母を用いたTwo-hybrid法等により選別することができる。
例えば、gelEタンパク質に対する特異的結合物質を用いて、糞便試料において結合反応を行い、結合した特異的結合物質の有無及び量を確認することにより、糞便試料中のgelEタンパク質の含有量を測定することができる。抗gelEタンパク質抗体を用いたgelEタンパク質の定量方法としては、例えば、酵素免疫測定法(EIA、ELISA)、放射免測定法(RIA)、蛍光酵素免疫測定法(FLEIA)、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)、化学発光免疫測定法(CLIA)、電気化学発光免疫測定法(ECLIA)、蛍光抗体法(FA)等が挙げられる。
(測定方法(c1))
gelEタンパク質は、ゼラチナーゼ活性を有する。また、gelEタンパク質は、マトリックスメタロプロテアーゼ(Matrix metalloproteinase:MMP)の前駆体(pro-MMP)を切断し、ゼラチナーゼ活性を有する活性型にすることが知られている。そのため、糞便試料のゼラチナーゼ活性を測定することにより、糞便試料中のgelE遺伝子の含有量を測定することができる。
ゼラチナーゼ活性の測定方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体例としては、例えば、実施例に記載の方法等が例示される。例えば、糞便を適当なバッファーに懸濁してフィルター濾過を行うことにより糞便試料を調製し、当該糞便試料をゼラチン含有寒天プレートにスポットしてインキュベートする。数時間~数日間インキュベートした後、プレートを塩化第二水銀試薬、塩酸等で処理し、ゼラチンの分解による透明な帯状の変化の範囲を測定することにより、ゼラチナーゼ活性を測定することができる。
gelE遺伝子含有量の測定は、上記測定方法(a1)~(c1)のいずれか1種の方法で行ってもよく、上記測定方法(a1)~(c1)のいずれか2種以上の方法を組み合わせておこなってもよい。2種以上の測定方法で同様の結果が得られた場合、当該結果に基づく肝がん発症リスクの判定は信頼性がより高いといえる。
<他の工程>
本実施形態の判定方法は、上記工程(i)に加えて他の工程を含んでいてもよい。他の工程としては、例えば、前記工程(i)で測定された、gelE遺伝子又はその遺伝子産物の含有量と肝臓がん発症リスクとを相関させる工程(以下、「工程(ii)」という。)等が挙げられる。
≪工程(ii)≫
後述する実施例で示すように、糞便試料中のgelE遺伝子含有量は、肝がん発症リスクと相関する。そのため、本実施形態の判定方法では、糞便試料中のgelE遺伝子含有量と肝がん発症リスクとを相関させて、糞便試料が由来する対象における肝がん発症リスクを判定することができる。
具体的には、上記工程(i)において測定されたgelE遺伝子含有量を、健常対象の糞便試料におけるgelE遺伝子含有量と比較して、前記工程(i)で測定されたgelE遺伝子含有量の方が高い場合に、前記工程(i)で用いた糞便試料が由来する対象(以下、「判定対象」という場合がある。)を、肝がん発症リスクが高いと判定する。
本明細書において、「健常対象」とは、一般的に健常とみなされる対象を意味し、例えば、後述する実施例に記載する「健常人ドナー」としての試験対象患者基準に合格した対象(ボディ・マス・インデックス<25kg/m、正常血圧、正常血清コレステロール、正常血糖及びHbA1c、正常血清AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)及びALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、貧血なし、超音波検査で脂肪肝なし、及びがんの既往歴なし)等が挙げられる。健常対象は、肝疾患に罹患しておらず、肝機能に異常がなく、肝炎ウイルスに感染しておらず、肝臓がんを含む肝疾患の既往歴がない対象であることが好ましい。健常対象の糞便試料(以下、「陰性対照糞便試料」という場合がある。)は、判定対象の糞便試料と同様に処理された試料を用い、判定対象の糞便試料と同様の方法でgelE遺伝子含有量を測定する。健常対象は、判定対象と同じ種に属する生物であり、判定対象がヒトであれば、健常対象もヒトである。
陰性対照糞便試料中のgelE遺伝子含有量は、1個体のものであってもよく、複数個体の平均値であってもよい。あるいは、陰性対照糞便試料中のgelE遺伝子含有量は、複数個体のgelE遺伝子含有量を統計処理して算出された基準値であってもよい。そのような基準値は、gelE遺伝子陰性基準値ということもできる。好ましくは、陰性対照糞便試料中のgelE遺伝子含有量は、複数個体のgelE遺伝子含有量の平均値又は複数個体のgelE遺伝子含有量を統計処理して算出された基準値である。
判定対象の肝臓がん発症リスクを判定するためには、上記工程(i)で測定された判定対象の糞便試料中のgelE遺伝子含有量を、陰性対照糞便試料中のgelE遺伝子含有量と比較する。その結果、判定対象の糞便試料中のgelE遺伝子含有量が、陰性対照糞便試料中のgelE遺伝子含有量よりも高い場合には、判定対象の肝臓がん発症リスクが高いと判定される。例えば、判定対象の糞便試料中のgelE遺伝子含有量が、陰性対照糞便試料中のgelE遺伝子含有量の1.2倍以上、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2倍以上である場合、判定対象の肝臓がん発症リスクが高いと判定される。一方、判定対象の糞便試料中のgelE遺伝子含有量が、陰性対照糞便試料中のgelE遺伝子含有量と同程度かより低い場合には、判定対象の肝臓がん発症リスクが低いと判定される。例えば、判定対象の糞便試料中のgelE遺伝子含有量が、陰性対照糞便試料中のgelE遺伝子含有量の1.2倍未満、好ましくは1.1倍以下、より好ましくは1倍以下である場合、判定対象の肝臓がん発症リスクが低いと判定される。
通常、健常対象では、糞便試料中にgelE遺伝子はほとんど存在しないため、前記工程(i)においてgelE遺伝子又はその遺伝子産物が検出された場合には、当該糞便試料が由来する対象は、肝臓がん発症リスクが高いと判定してもよい。また、前記工程(i)で測定されたgelE遺伝子含有量に基づいて、肝がん発症リスクのクラス分けを行ってもよい。
本実施形態の判定方法によれば、肝炎ウイルスとは無関係な肝がん発症リスクも評価することができるため、従来の肝炎ウイルスのスクリーニングによる方法では検出できなかった肝臓がん高リスク群を検出することができる。さらに、本実施形態の判定方法は、糞便試料のgelE遺伝子含有量を測定するという侵襲性の低い、簡易な方法により実施することができるため、多くの被験者に対して幅広く検査を実施することができる。
本実施形態の判定方法は、さらに、肝臓がん発症リスクが高いと判定された対象に対しては、肝臓がんの検査を定期的(例えば、1~6カ月に1回)に実施する工程等を含んでいてもよい。前記肝臓がんの検査方法としては、例えば、コンピュータ断層撮影(Computed Tomography:CT)や超音波検査による画像スクリーニング等が挙げられるが、これらに限定されない。より具体的には、肝臓がん発症リスクが高いと判定された対象に対して、前記のような画像スクリーニングによる肝臓がんの検査を1~6カ月に1回、好ましくは約3か月に1回程度実施することが例示される。
[肝臓がん発症リスクの判定キット]
一実施形態において、本発明は、被験者の糞便試料中のgelE遺伝子又はその遺伝子産物の含有量を測定するための試薬を含む、肝臓がん発症リスクの判定キットを提供する。
<gelE遺伝子の含有量又はその遺伝子産物を測定するための試薬>
gelE遺伝子含有量の測定するための試薬は、特に限定されない。gelE遺伝子含有量を測定するための試薬は、例えば、下記(a2)~(c2)からなる群より選択される少なくとも1種の試薬を含むことができる。
(a2)糞便試料におけるgelE遺伝子をコードする核酸含有量を測定するための試薬
(b2)糞便試料におけるgelE遺伝子の遺伝子産物含有量を測定するための試薬
(c2)糞便試料におけるゼラチナーゼ活性を測定するための試薬
(試薬(a2))
gelE遺伝子をコードする核酸(gelE遺伝子DNA)含有量を測定するための試薬としては、前記「(測定方法(a1))」で挙げたgelE遺伝子DNAを特異的に増幅可能なプライマー、gelE遺伝子遺伝子DNAに特異的にハイブリダイズするプローブ等が挙げられる。
試薬がプライマーである場合、gelE遺伝子DNAを増幅可能なフォワードプライマーとリバースプライマーを少なくとも1セット含むことが好ましい。プライマーの長さは、増幅反応を妨げない限り特に限定されないが、例えば、10~50塩基程度が例示され、15~40塩基程度が好ましく、18~30塩基程度がより好ましい。
また、gelE遺伝子DNAの含有量を測定するための試薬として、プライマーに加えて、核酸増幅反応に必要な他の試薬等を含んでいてもよい。核酸増幅反応に必要な試薬としては、例えば、DNAポリメラーゼ、反応バッファー、dNTP等が例示される。さらに、定量PCR等に用いるDNA結合色素、蛍光プローブ等を含んでいてもよい。
試薬がプローブである場合、プローブは、標識化されたものであってもよい。標識化のための標識物質は、特に限定されず、公知のものを用いればよい。標識物質としては、例えば、ペルオキシダーゼ(例、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、アルカリホスファターゼなどの酵素標識;カルボキシフルオレセイン(FAM)、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ2’ ,7’-ジメトキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テトラクロロフルオレセイン(TET)、5'-ヘキサクロロ-フルオレセイン-CEホスホロアミダイト(HEX)、Cy3、Cy5、Alexa568、Alexa647などの蛍光標識;ヨウ素125などの放射性同位体標識;ルテニウム錯体などの電気化学発光標識;ビオチン;金属ナノ粒子等が挙げられる。プローブの標識化は、標識物質の種類に応じて、適宜、公知の方法を選択して行うことができる。なお、標識物質としてビオチンを用いる場合には、本実施形態のキットは、さらに、標識化されたアビジンを含んでいてもよい。アビジンの標識物質としては、上記例示した標識物質のうちビオチン以外の標識物質が例示される。
プローブは、2本鎖ポリヌクレオチドであってもよく、1本鎖ポリヌクレオチドであってもよい。また、プローブは、DNAであってもよく、RNAであってもよく、DNAとRNAとの混合物であってもよい。また、プローブは、BNA(bridged nucleic acids)、PNA(peptide nucleic acid)、ENA(2’-O,4’-C-ethylene-bridged nucleic acids)等の人工核酸を含むものであってもよい。
プローブの長さは、ハイブリダイゼーション反応を妨げない限り特に限定されないが、例えば、50~500塩基程度、50~300塩基程度、50~200塩基程度、50~100塩基程度等が挙げられる。
また、gelE遺伝子DNAの含有量を測定するための試薬として、プローブに加えて、ハイブリダイゼーション反応に必要な試薬を含んでいてもよい。そのような試薬としては、例えば、バッファー類(ブロッキングバッファー、洗浄バッファー、ハイブリダイゼーションバッファー等)、プローブ標識の検出試薬等が例示される。
また、試薬は、gelE遺伝子DNAのプローブを含むDNAマイクロアレイであってもよい。
(試薬(b2))
gelE遺伝子の遺伝子産物(gelE-mRNA又はgelEタンパク質)含有量を測定するための試薬としては、前記「(測定方法(b1))」で挙げたgelE遺伝子-mRNAを特異的に増幅可能なプライマー、gelE遺伝子-mRNAに特異的にハイブリダイズするプローブ、gelEタンパク質に対する特異的結合物質等が挙げられる。
gelE遺伝子-mRNAを特異的に増幅可能なプライマー、及びgelE遺伝子-mRNAに特異的にハイブリダイズするプローブは、上記試薬(a2)と同様のものを用いることができる。
また、gelE-mRNAの含有量を測定するための試薬として、前記プライマー又はプローブに加えて、前記試薬(a2)で挙げたものと同様の試薬等を含んでいてもよい。gelE-mRNAを核酸増幅反応により測定する場合には、さらに逆転写酵素等を含んでいてもよい。
試薬がgelEタンパク質に対する特異的結合物質である場合、抗gelEタンパク質抗体であってもよく、抗gelEタンパク質アプタマーであってもよい。これらは、標識化されたものであってもよく、標識化のための標識物質としては、前記試薬(a2)で挙げたものと同様のものが挙げられる。
また、gelEタンパク質の含有量を測定するための試薬として、gelEタンパク質に対する特異的結合物質に加えて、gelEタンパク質と特異的結合物質との結合反応に必要な他の試薬等を含んでいてもよい。結合反応に必要な試薬としては、例えば、バッファー類(ブロッキングバッファー、洗浄バッファー、反応バッファー等)、二次抗体、標識物質の検出試薬等が例示される。
(試薬(c2))
ゼラチナーゼ活性を測定するための試薬としては、例えば、ゼラチンが挙げられる。その他、アガロース、L-システイン等のゼラチンプレートの作製に必要な試薬を含んでいてもよい。あるいは、作製済みのゼラチンプレートを含んでいてもよい。
さらに、塩化第二水銀試薬、塩酸等のゼラチン分解の検出試薬等を含んでいてもよい。
(その他)
本実施形態のキットは、さらに、DNA抽出試薬、RNA抽出試薬、濾過フィルター、糞便を懸濁するためのバッファー類、標準試薬、陰性対照糞便試料、使用説明書等を含んでいてもよい。
本実施形態のキットは、上記態様の肝臓がん発症リスクの判定方法の実施に使用することができる。
[肝がん発症リスクを低減するための医薬組成物]
一実施形態において、本発明は、上記実施形態の肝臓がん発症リスクの判定方法により肝臓がん発症リスクが高いと判定された対象に投与される、肝臓がん発症リスクを低減するための医薬組成物であって、前記対象の大腸内のgelE遺伝子を有する細菌の数を減少させる薬剤を含む、医薬組成物を提供する。
<肝臓がん発症リスクが高いと判定された対象>
本実施形態の医薬組成物は、上記実施形態の肝臓がん発症リスクの判定方法により肝がん発症リスクが高いと判定された対象(以下、「肝臓がん高リスク対象」という場合がある)に投与されるものである。肝臓がん発症リスクの判定は、上記「[肝臓がん発症リスクの判定方法]」の項で説明したように行うことができる。例えば、陰性対照糞便試料中のgelE遺伝子含有量と比較して、糞便試料中のgelE遺伝子含有量が高い場合、当該糞便試料が由来する対象は、肝がん発症リスクが高いと判定され、本実施形態の医薬組成物の投与対象となる。あるいは、通常、健常対象では、糞便試料中にgelE遺伝子はほとんど存在しないため、糞便試料中でgelE遺伝子又はその遺伝子産物が検出された場合には、当該糞便試料が由来する対象を肝癌発症リスクが高いと判定し、本実施形態の医薬組成物の投与対象としてもよい。
<対象の大腸内のgelE遺伝子を有する細菌の数を減少させる薬剤>
本実施形態の医薬組成物は、対象の大腸内のgelE遺伝子を有する細菌の数を減少させる薬剤を含む。
糞便試料中のgelE遺伝子含有量は、腸内のgelE陽性の細菌(例えば、E.faecalis V583)の密度と相関しており、糞便試料中のgelE遺伝子含有量が高いことは、腸内にgelEを有する細菌(以下、「gelE陽性細菌」ともいう。)の密度が高いことを意味している。後述する実施例で示すように、腸内におけるgelE陽性細菌の存在は、腸透過性を高め、肝臓がんの発症を促進すると考えられる(例えば、図5A~5F)。そのため、腸内のgelE陽性細菌の数を減少させる薬剤を肝臓がん高リスク対象に投与して、当該対象の腸内におけるgelE陽性細菌の数を減少させることにより、当該対象の肝臓がん発症リスクを低減することができる。
gelE陽性細菌は、gelE遺伝子を有する細菌であれば特に限定されないが、例えば、Enterococcus属に属する細菌が挙げられ、Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Enterococcus cecorum、Enterococcus hirae等が例示される。
腸内のgelE陽性細菌の数を減少させる薬剤は、そのような作用を有する薬剤であれば、特に限定されない。例えば、後述する実施例で示すように、健常対象の腸内細菌叢を腸内に移植すると、糞便試料中のgelE陽性細菌の数が減少し、肝臓における増殖遺伝子の発現が抑制される(例えば、図6C,図6E)。したがって、前記薬剤の好ましい例としては、健常対象の腸内細菌を含む薬剤が挙げられる。「腸内細菌」とは、腸に生息する細菌であり、1種であってもよく、2種以上であってもよく、腸内に生息する細菌群集(腸内フローラ又は腸内細菌叢)であってもよい。本実施形態の医薬組成物が、健常対象の腸内細菌を含む薬剤を含む場合、当該薬剤が含む健常対象の腸内細菌は、2種以上の細菌群集であることが好ましく、健常対象の腸内細菌叢であることがより好ましい。
健常対象の腸内細菌は、健常対象の腸内から採取してもよいが、腸内からの採取は侵襲性が高いため、健常対象の糞便試料から採取されることが好ましい。すなわち、健常対象の腸内細菌は、健常対象の糞便中に存在する細菌であることが好ましい。
例えば、健常者の糞便を、10倍容量(w/v)程度の適切な緩衝液(例えば、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)など)に懸濁し、滅菌フィルター又は滅菌したこし器等で濾過することにより、健常対象の腸内細菌を含む薬剤を調製することができる。
本実施形態の医薬組成物の投与方法は、特に限定されず、医薬品の投与方法として一般的に用いられる方法で投与することができる。本実施形態の医薬組成物が、健常対象の腸内細菌を含む場合、投与方法には、便移植に一般的に用いられる方法を利用することができる。そのような方法としては、例えば、全結腸内視鏡ファイバー等を用いた腸管内投与が挙げられる。例えば、肝臓がん高リスク対象に対して、腸管洗浄液による腸管洗浄を行った後、全結腸内視鏡ファイバーを盲腸まで挿入し、盲腸から全結腸内視鏡ファイバーを用いて本実施形態の医薬組成物を散布することにより、本実施形態の医薬組成物の投与を行ってもよい。
本実施形態の医薬組成物の投与量は、治療的有効量とすることができる。本明細書において、「治療的有効量」とは、肝臓がん高リスク対象の腸内のgelE陽性細菌の数を減少させることが可能な量を意味する。治療的有効量は、例えば、糞便試料中のgelE陽性細菌の密度を10%以上減少させる量であることができ、20%以上減少させる量であることが好ましい。治療的有効量は、より好ましくは、糞便試料中にgelE陽性細菌が検出されなくなるような量である。
本実施形態の医薬組成物が健常対象の腸内細菌を含む場合、治療的有効量は、当該腸内細菌が、肝臓がん高リスク対象の腸内で定着可能な量であってもよい。健常対象の腸内細菌が肝臓がん高リスク対象の腸内で定着したか否かは、例えば、当該肝臓がん高リスク対象の糞便試料中の細菌群集を調査することにより確認することができる。例えば、健常対象の糞便約50gを生理食塩水約500mLに浮遊させ、滅菌したこし器等によりろ過して薬剤を調製した場合、当該薬剤の約250mLを治療的有効量として肝臓がん高リスク対象への腸管内投与に用いることができる。
本実施形態の医薬組成物の投与間隔は特に限定されず、腸内のgelE陽性細菌の数を減少させる薬剤の種類、投与方法等によって適宜選択すればよい。本実施形態の医薬組成物が健常対象の腸内細菌を含む場合、投与は通常1回でよい。また、1回の投与で肝臓がん高リスク対象の腸内に健常対象の腸内細菌が定着しなかった場合には、再度、本実施形態の医薬組成物の投与を行ってもよい。その場合、2回目の投与に用いる健常対象の腸内細菌は、1回目の投与と同じ健常対象から得られた腸内細菌であってもよいし、1回目の投与とは異なる健常対象から得られた腸内細菌であってもよい。例えば、図6Cに示すように、健常対象の個体によって、腸内細菌の効果が異なる場合がある。そのため、1回目の投与で効果が見られなかった場合には、1回目の投与とは異なる健常対象から得られた腸内細菌を用いることも可能である。
本実施形態の医薬組成物によれば、上記実施形態の肝臓がん発症リスクの判定方法により肝臓がん発症リスクが高いと判定された対象に対して、肝臓がん発症リスクを低減するため処置を提供することができる。そのため、本実施形態の医薬組成物を、上記実施形態の肝臓がん発症リスクの判定方法と組み合わせて用いることにより、肝臓がん発症のリスク管理を適切に行うことが可能となる。
[肝臓がん発症リスクを低減する方法]
一実施形態において、本発明は、上記実施形態の肝臓がん発症リスクの判定方法により肝臓がん発症リスクが高いと判定された対象に対して、腸内のgelE遺伝子を有する細菌の数を減少させる処置を行う工程を含む、肝臓がん発症リスクを低減する方法を提供する。
<腸内のgelE遺伝子を有する細菌の数を減少させる処置>
本実施形態の肝臓がん発症リスクを低減する方法では、肝臓がん高リスク対象に対して、腸内のgelE陽性細菌の数を減少させる処置を行う。当該処置は、肝臓がん高リスク対象の腸内のgelE陽性細菌の数を減少させる処置であれば、特に限定されない。そのような処置としては、例えば、上記実施形態の医薬組成物の投与、腸管洗浄液による腸管洗浄、抗生物質の投与等が挙げられる。
本実施形態の方法で行う処置が、健常対象の糞便に存在する細菌を含む医薬組成物の投与である場合、当該処置は、健常対象の便移植であるということもできる。上記実施形態の医薬組成物の投与、又は健常対象の便移植は、上記「[肝がん発症リスクを低減するための医薬組成物]」で記載したように、全結腸内視鏡ファイバー等を用いて行うことができる。
本実施形態の方法は、下記工程(i)~(iv)を含んでいてもよい:
対象の糞便試料において、gelE遺伝子又はその遺伝子産物の含有量を測定する工程(i);
前記工程(i)で測定された、前記gelE遺伝子又はその遺伝子産物の含有量と、肝臓がん発症リスクと、を相関させる工程(ii);
前記工程(ii)の結果に基づいて、前記対象の肝臓がん発症リスクを判定する工程(iii);及び
前記工程(iii)で肝臓がん発症リスクが高いと判定された対象に対して、腸内のgelE遺伝子を有する細菌の数を減少させる処置を行う工程(iv)。
<他の態様>
他の態様において、本発明は、対象の糞便試料において、gelE遺伝子又はその遺伝子産物の含有量を測定する工程を含む、肝臓がん発症リスクの検査方法を提供する。
他の態様において、本発明は、対象の糞便試料において、gelE遺伝子又はその遺伝子産物の含有量を測定する工程を含む、肝臓がん発症リスクの予測方法を提供する。
他の態様において、本発明は、対象の糞便試料において、gelE遺伝子又はその遺伝子産物の含有量を測定する工程を含む、肝臓がん発症リスクの高い糞便試料を特定する方法を提供する。
他の態様において、本発明は、対象の糞便試料において、gelE遺伝子又はその遺伝子産物の含有量を測定する工程を含む、肝臓がん発症リスクを診断するためのデータの収集方法を提供する。
他の態様において、本発明は、肝臓がん発症リスクマーカーとしてのgelE遺伝子又はその遺伝子産物を提供する。
他の態様において、本発明は、肝臓がん発症リスクマーカーとしての、gelE遺伝子又はその遺伝子産物の使用を提供する。
他の態様において、本発明は、gelE遺伝子又はその遺伝子産物からなる肝がん発症リスクマーカーを提供する。
他の態様において、本発明は、対象の糞便試料の検査方法であって、前記糞便試料のgelE遺伝子又はその遺伝子産物の含有量を測定する工程と、前記gelE遺伝子又はその遺伝子産物の含有量と肝臓がん発症リスクとを相関させる工程とを含む方法を提供する。
他の態様において、本発明は、上記実施形態の肝臓がん発症リスクの判定方法により肝臓がん発症リスクが高いと判定された対象において、肝臓がん発症リスクを低減するための医薬組成物を製造するための、健常対象の腸内細菌の使用を提供する。
他の態様において、本発明は、上記実施形態の肝臓がん発症リスクの判定方法により肝臓がん発症リスクが高いと判定された対象において、肝臓がん発症リスクを低減するための、健常対象の腸内細菌を含む医薬組成物を提供する。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[材料及び方法]
(臨床研究の母集団)
調査対象母集団は、2013年6月から2014年11月までの間に金沢大学病院に入院し、臨床研究への参加の同意前に書面及び口頭で情報を受け取った28人のHCV感染慢性肝疾患患者を含む。入院の直前又は直後に、コンピュータ断層撮影(CT)又は磁気共鳴画像(MRI)画像による肝細胞癌(Hepatocellular carcinoma:HCC)のスクリーニングを行い、対象を慢性肝疾患(chronic liver disease:CLD)グループ又はHCCグループに割り当てた。13人の患者はHCCを有さず(CLDグループ)、15人の患者は原発性HCCの精密検査のために入院した(HCCグループ)。HCCグループの15人の患者全員が原発性HCCを患っており、臨床研究への登録後に抗癌治療を受けた。15人の患者のうち12人は、肝カテーテル摘出術又は高周波アブレーションのような根治的治療を経カテーテル動脈化学塞栓療法の有無にかかわらず受けたが、3人の患者はレンバチニブ又は肝動脈注入化学療法による化学療法を受けた。根治治療を受けた12人のHCC及びすべてのCLD患者は、1年に2回以上のCT、MRI又は超音波検査などの肝臓造影により、新規又は再発HCCの発生率について2017年11月まで追跡調査された。腸内微生物叢、糞便タンパク質及び代謝産物の存在を調べるために、登録の直後に、糞便のサンプルを採取し、-80℃で保存した。健常人は、最初に試験対象患者基準に合格するか否かを確かめるために試験された;ボディ・マス・インデックス<25kg/m、正常血圧、正常血清コレステロール、正常血糖及びHbA1c、正常血清AST及びALT、貧血なし、超音波検査で脂肪肝なし、及びがんの既往歴なし。16人が基準に合格し、健常ドナーとして登録された(HD)。同意の直後に、糞便が集められて貯蔵された。
(糞便RNAの全ゲノムショットガン及び16SリボゾマルRNAアンプリコンの配列解析)
PowerFecal DNA単離キットを製造元の指示に従って使用し、-80℃で保存した糞便から糞便DNAを抽出した(MO BIO,Carlsbad,CA,USA)。糞便をホモジナイズするためのビーズを、0.7mmガーネットビーズから0.1mmガラスビーズ(MO BIO)に変更した。
全ゲノムショットガンシークエンシングのために、55℃で5分間の反応で、Nextera DNA Library Prepキット(Illumina,San Diego,CA,USA)を用いてDNAのタグ付けを行った。DNA clean&Concentrator-5キット(ZYMO,Irvine,CA,USA)を用いて生成物をクリーンアップした後、Nexteraインデックスキット(Illumina)を用いて、72℃で3分間及び98℃で30秒間、その後、98℃で10秒間、63℃で30秒間及び72℃で3分間のサイクルを5回繰り返して、インデックス付けPCRを行った。PCR産物を、AMPure XPビーズ(Beckman Coulter,Fullerton,CA,USA)を使用して、オリゴDNA混入物から精製し、2100 Bioanalyzer and High Sensitivity DNAキット(Agilent Technologies,Santa Clara,CA,USA)を使用して定量した。ライブラリーをプールし、Miseq Reagent Kit V3(600サイクル;Illumina)を用いてMiseqで配列決定を行った。
得られた配列の前処理は以下のようにして行った。得られた配列の末端から低品質スコアを有する塩基をトリミングした後、配列をFASTX ToolkitによりQスコアカットオフ20でフィルタリングした。ペアエンド結合は、MacQIIME v1.9.1を使用して行った。得られた配列を、bowtie2 バージョン2.2.4により、UCSCヒトゲノムリファレンスhg19にマッピングした後、ヒトゲノム配列をSAMtools-1.2により除去した。最後に、PCR複製物を、PRINSEQバージョン0.20.4を用いて除去した。
最終出力fastaファイルを、MetaPhlAn2 バージョン2.0.0を使用して糞便サンプルの分類を同定するために使用した。配列中に存在する代謝経路も、HUMAnN2 バージョン0.1.9を使用して、fastaファイルで分析した。KEGGバージョン56データベースを、DIAMOND バージョン0.7.5を使用して生成し、HUMAnN2分析に使用した。100万回のリードによる存在量の正規化の後、グループ間の比較を、LEfSeを用いた線形判別分析により行った。分類又は代謝経路データに基づいて、腸内細菌叢群集のBray-Curtis距離を計算し、得られた距離を主座標分析によって視覚化した。
16S配列解析のために、16S rRNAのV3及びV4領域を標的とする配列及びイルミナアダプターオーバーハングヌクレオチド配列からなるプライマーを使用してPCRアンプリコンを調製した。プライマー配列を以下に示す。
フォワードプライマー
5'-TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAGCCTACGGGNGGCWGCAG-3'(配列番号5)
リバースプライマー
5'-GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAGGACTACHVGGGTATCTAATCC-3'(配列番号6)
KAPA HiFi HotStart Ready Mix(KAPA Biosystems,Wilmington,MA,USA)を用いて、95℃で3分間のイニシャルステップ、続いて95℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で30秒間の25サイクル、及び72℃で5分間のファイナルステップにより、PCR反応を行った。精製後、Nextera XTインデックスキット(Illumina)を使用して、95℃で3分間のイニシャルステップ、続いて95℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で30秒間の8サイクル、及び72℃で5分間のファイナルステップによりインデックスPCRを行った。ライブラリーをプールし、PhiX Control Library(Illumina)と混合し、Miseq Reagent Kit V3(600サイクル; Illumina)を用いてMiseqで配列決定を行った。配列の下流処理は、MacQIIME v1.9.1を用いて行った。配列のペアエンド結合及び低品質配列のトリミング後、得られた配列は442~464bpの範囲の長さを有していた。オペレーショナル分類単位(OTU)を、UCLUSTを使用して選択した。OTU解析のために、配列をクラスター化し、97%を超える類似性を有する配列を同じOTUにまとめた。OTUにおける代表的な配列の分類を、97%の同一性でクラスター化されたGreengenesリファレンスデータベースを使用して、RDP classifierにより割り当てた。属レベルの分類法を要約し、その後の分析に使用した。系統樹を計算した後、腸内細菌叢群集の重み付けされていないUnifrac距離を計算し、得られた距離を主座標分析によって視覚化した。
(マウス肝臓発癌試験)
従来の又は無菌のC57BL6Nマウスを、日本CLEA(東京、日本)から購入した。4週齢の0日目及び3日目にDEN(25mg/kg体重;Sigma-Aldrich,St.Louis,MO,USA)を2回腹腔内注射し、続いて四塩化炭素(CCl4;0.5ml/kg i.p.、コーン油に溶解)を20回にわたって週1回注射することによって肝腫瘍を誘発した。目に見える肝腫瘍の数を数えるために、マウスを最初のDEN注射の8ヶ月後に安楽死させた。遺伝子発現実験のために、マウスをDEN注射後1回、続いてCCl4の2回の注射後に安楽死させ、肝臓をRNAlaterで採取した。
(リアルタイムPCR)
全RNA抽出、cDNA合成は以前に記載されたように実施した(Iida, N., et al. Cancer Res 70, 6556-6565 (2010).)。リアルタイムPCRに使用したTaqManプローブは以下の通である;ki67 Mm01278617、ccnb1 Mm03053893、ereg Mm00514794、col1a1 Mm00801666、tnf Mm00443258、il1b Mm00434228、il6 Mm00446190、ccl2 Mm03053893(Applied Biosystems,Foster City,CA,USA)。PCRに利用可能なDNA量の変動を制御するために、各サンプル中の標的遺伝子発現を、内在性対照18SリボソームRNA遺伝子(Applied Biosystems)の発現に対して正規化した。糞便DNA中のgelE遺伝子の相対量を、gelEプライマー(Vankerckhoven, V., et al. J Clin Microbiol 42, 4473-4479 (2004).)及びSYBRグリーン(QIAGEN、Limburg,ドイツ)を用いたリアルタイムPCRによって分析した。PCR反応は、95℃で15分間のイニシャルステップ、続いて94℃で15秒間、56℃で1分間、72℃で30秒間の40サイクル、及び53℃で15秒間のファイナルステップにより行った。gelE遺伝子の存在量は、ユニバーサル16Sリボソーム遺伝子のプライマーを用いて取得した値で標準化した(Iida, N., et al. Science 342, 967-970 (2013).)。
(糞便移植及び細菌接種)
凍結した糞便ストックを、嫌気性チャンバー(RUSKINN,Bridgend,UK)内での嫌気条件(80%N、10%H、10%CO、又はN充填)下で解凍し、0.1%レサズリン(w/v)及び0.05%L-システイン-HCl(Sigma-Aldrich)を含有する10倍容量(w/v)の還元PBSに懸濁し、100μm孔径ナイロンメンブレンフィルターで濾過した。C57BL6マウスに、腸内細菌叢の除菌のために、ドリペネム水和物(0.25g/L;シオノギ,日本)及びバンコマイシン塩酸塩(0.5g/L;シオノギ)を含む抗生物質水を4週間与えた。抗生物質中止後1日目及び2日目に、チューブによる経口投与及び直腸投与により、糞便懸濁液をフローラ除菌マウスまたは無菌マウスに接種した。細菌接種試験のために、E.faecalis(V583、ATCC700802としても入手可能;ATCC,Manassas,VA,USA)、E.faecalis(HCC対象の糞便から単離したクローンHC5a)、S.anginosus(ATCC33397)、Lサリバリウス(ATCC11741)又はE.casseliflavus(ATCC12755)を100μlのPBS中2.5×10細胞で調製し、糞便懸濁液の接種と同様に、フローラ除菌マウス又は無菌マウスに接種した。フローラ除菌マウスは、糞便又は特定の細菌株を接種した後、個々に分離された分離装置に収容された。発癌のためのDEN注射を、糞便又は細菌懸濁液の最初の接種の少なくとも4日後に開始した。GelE欠失のE.フェカリスV583株は、以前に記載されたように作製した(Steck, N., et al. Gastroenterology 141, 959-971 (2011)。無菌又はノトバイオートマウスを、金沢大学の動物施設の無菌アイソレーター(ICM、つくば、日本)に収容した。
(ゼラチナーゼ活性アッセイ)
糞便を1容量(w/v)のPBSに懸濁し、100μm孔径ナイロンメンブランで濾過し、ゼラチン寒天プレート[Tryotic Soy Broth(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ,USA)3g;アガロース(Wako、大阪、日本)1.5g;ゼラチン(Becton Dickinson)4g;L-システイン(Sigma-Aldrich)0.05g;蒸留水100mL]にスポットした。1日間のインキュベーション後、プレートを塩化第二水銀試薬[塩化第二水銀12.5g(Sigma-Aldrich)、塩酸16.8ml、及び脱イオン水83.2mlから製造]で満たした。ゼラチナーゼ活性が陽性である場合、透明な帯状の変化がコロニー周囲に観察される。ゼラチナーゼ活性は透明層の半径に従って、-から++に分類した;-,層半径<3mm;+,3mm≦半径<6mm;++,半径≧6mm。
(糞便のMMPの測定)
対象の糞便を3容量(w/v)のPBSに懸濁した。MMP9の濃度を、製造者の指示に従って、ヒトMMP-9活性アッセイ(QuickZyme Biosciences,Leiden,オランダ)を使用して測定した。希釈したサンプルをMMP-9抗体でコーティングした96ウェルプレートに添加し、4℃で一晩インキュベートした。洗浄後、検出酵素及び基質の混合物を添加し、37℃で4時間インキュベートした。0時間及び4時間での波長405nmの吸光度をプレートリーダー(SunriseTM,Tecan,スイス)で測定した。最後に、MMP-9の濃度を、線形回帰モデルを用いた標準曲線分析により決定した。
(プラズマLPSの測定)
LPSフリーの針、シリンジ及び1.5mlチューブ(eppendorf,Hamburg,ドイツ)を用いて、心臓穿刺によりマウスから採血し、1300gで2分間遠心分離して血漿を採取した。次いで、製造業者の指示にわずかに変更を加えて、EndoLISA、ELISAベースの内毒素定量アッセイキット(Hyglos,Bernried am Starnberger See,ドイツ)を使用して、血漿中のLPSを測定した。血漿を9容量のLPSフリー水で希釈し、LPS特異的バクテリオファージでコートした96ウェルプレート中で振とうしながら、37℃で90分間インキュベートした。バクテリオファージは、LPSの保存された炭水化物構造と特異的に結合する受容体タンパク質を有する。インキュベーション後、アッセイを阻害する物質を洗浄により除去した。合成組換えC因子をウェルに添加し、LPSにより活性化した。C因子のプロテアーゼ活性は、ウェルに添加された基質を修飾し、蛍光を発生する。蛍光を、蛍光分光計(Tristar LB941、Berthold Tecnologies,Bad Wildbad,ドイツ)により、励起波長380nm及び発光波長440nmで検出した。最後に、LPSの濃度を、線形回帰モデルを用いた標準曲線分析により決定した。
(in vivo消化管透過性アッセイ)
6時間絶食したマウスに、強制経口投与(500mg/kg体重)により4000Daの蛍光デキストラン-FITC(Sigma Aldrich)を与えた。3時間後、血液を採取し、4℃、1500gで15分間遠心して血漿を採取した。血漿を4容量の蒸留水で希釈し、励起波長485nm及び発光波長535nmで、蛍光分光計(Tristar LB941)を用いてデキストラン-FITCの濃度について分析した。
(細菌培養)
E.faecalis、E.casseliflavus、L.salivarius及びS.anginosusを、Brain Heart Infusion(BHI)培地(栄研化学、日本)中で増殖させた。胆汁酸による増殖阻害試験では、CA、CDCA、DCAまたはLCAをDMSOに溶解し、CA及びCDCAについては0.2mM、DCA及びLCAについては2mMの最終濃度で、BHIブロスに添加した。次に、1×10個のE.faecalis V583を、20mlのBHIブロス中で、37℃で一晩培養し、1mlの前培養したV583懸濁液を胆汁酸含有BHIブロスに添加した。37℃で6時間インキュベートした後、懸濁液をEF寒天プレート(ニッスイ、日本)上で培養して、Enterococcusのみが増殖し、E.feacalisが紫色のコロニーを示すCFUを計数した。
ヒト糞便からのE.faecalis株の単離のために、まず糞便をEnterococcus選択寒天培地、ECS寒天プレート(Eiken Chemical)上に画線した。次に、コロニーを選択し、EF寒天プレート上で培養した。EF寒天プレート上では、E.faecalisは紫色のコロニーを示し、E.faeciumはオレンジ色のコロニーを示す。紫色のコロニーを選択した後、クローンをBHIブロス中で増殖させた。コロニーの種は、以前に記載されたようにDNA PCR法によって決定された(Ryu, H., et al. Appl Environ Microbiol 79, 196-204 (2013))。最後に、全ゲノムショットガン配列解析により、Enterococcusの種であることを確認した。
(糞便中胆汁酸の測定)
糞便中胆汁酸の測定は、以前に記載されているように実施した(Kakiyama, G., et al. J Lipid Res 55, 978-990 (2014))。胆汁酸を、前述の方法を若干修正した方法用いて、糞便試料及び腸内容物から抽出した。糞便試料(100mg)をジルコニアビーズと共に2mlチューブに入れ、900μlの50mM冷酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.6)/エタノール混合物(1:3、v/v)に懸濁し、ボルテックスし、80℃で30分間加熱した。試料を、FastPrep24(MP Biomedicals)を用いて5m/sで45秒間ボルテックスし、1,300gで10分間遠心分離した。上清(200μl)を2mlチューブ中で800μlのMilliQと混合した。試料をBond Elut C18カートリッジ(500mg/6ml、Agilent Technologies;Santa Clara、CA)に適用した。カートリッジを10%エタノール(5ml)で洗浄し、次いで胆汁酸をエタノール(5ml)で溶出した。溶媒を蒸発させ、残渣を1mlのエタノールに溶解した。溶液を50%エタノールで希釈し、0.2μmフィルター(Millex-LG;Millipore,Billerica,MA)を用いて濾過した後、バイアルに移した。エレクトロスプレーイオン化プローブを備えたWaters Xevo G2-S QTOF質量分析計と連結したAcquity UPLC BEH C18カラム(2.1×150mm、孔径1.7μm;Waters,Milford,MA)を備えたWaters Acquity UPLCシステムで、胆汁酸の定量を行った。注入量は5μlとした。移動相Aは水であり、移動相Bはアセトニトリルであり、両方とも0.1%ギ酸を含有させた。流速は0.4ml/分とした。オートサンプラーの温度は、それぞれ60℃と10℃に保った。Waters Xevo G2-S QTOFをネガティブモードで実行した(毎秒0.3スキャンの速度で50~850amuをスキャンする)。以下の機器条件を使用した:キャピラリー、0.5kV;供給源温度、150℃;サンプリングコーン、20V;コーンガス、100l/h;脱溶媒和ガス流量、450lで1,000l/h。質量精度と再現性を保証するために、ロイシンエンケファリンを参照ロック質量(m/z554.2615)としてマススプレーで使用した。
(統計解析)
微生物叢間の分類及びKEGG経路の比較に関する統計分析は、LEfSeを用いた線形判別分析によって行った。2つの値の間の統計学的差異は、Graph pad Prism 7を用いたMann-Whitney U検定によって分析した。腫瘍陽性マウス又はゼラチナーゼ陽性対象の百分率の統計学的差異は、Excelのχ2検定によって分析した。グループ間の累積腫瘍発生率を比較するために、Kaplan-Meier法を使用し、Graph pad Prism 7を用いたログランク検定によってグループ間の差を評価した。P値<0.05は統計的有意性を示すとみなした。糞便中のEnterococcus又はgelE遺伝子の存在量間のSpearmanの順位相関係数、及び対象における様々なファクターを、Graph pad Prism 7を使用して計算した。
[結果]
(慢性肝機能障害患者の腸内細菌叢は、口腔内及び小腸に存在する細菌による腸内毒素症を示す)
HCCの有無にかかわらず慢性肝機能障害のある患者と健常人との間の腸内細菌叢の分類学的及び機能的な差異を調べるために、16人の健康ドナーの糞便(HDグループ)、13人のHCCを有さないHCV感染慢性肝疾患患者(CLDグループ)、及び15人の原発性HCCを有するHCV感染慢性肝疾患患者(HCCグループ)の糞便を採取した。CLD患者及びHCC患者の両方とも、血清アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルが高く、プロトンポンプ阻害剤(PPI)及びH2受容体アンタゴニスト(H2RA)を含む胃酸減少剤の投与率が高い肝炎を患っていた。全ゲノムショットガン配列決定により、糞便DNAの15又は41の分類群が、HDとCLD、又はHDとHCCとの間で、それぞれ有意に異なることが明らかになった(図1Aおよび図1B)。これらの分類群のうち、6種の連鎖球菌種、4種の乳酸桿菌種、及び2種のVeillonella種、並びにEnterococcus属、Rothia属及びActinomyces属は、HDと比較してHCC微生物叢において有意に豊富であった(図1B)。CLDでは、2種類の連鎖球菌種、1種類の乳酸桿菌種、1種類のVeillonella種、及びEnterococcus属も、HDと比較して豊富でした(図1A)。これらの種は、通常口腔や小腸に豊富に存在する細菌であり、この結果は、肝硬変患者の腸内細菌叢に関する報告とよく類似していた(Qin, N., et al. Nature 513, 59-64 (2014))。CLDとHCCとの間の差異は、HDと比較した差異よりも小さかったが、Lactobacillus salivarius及びActinomyces属の1種が、HCC中に多く存在していた(図1C)。腸内微生物叢の代謝経路の分析において、22、69または15のKEGG経路は、それぞれHDとCLD、HDとHCC、又はCLDとHCCとの間で、有意に異なっていた。酸化的リン酸化の経路は、CLD及びHCCの両方と比較して、HDにおいて豊富であったが、解糖の経路は、HDと比較して、CLD及びHCCにおいて豊富であった。Bray-Curtis距離計量及び主座標分析(PCoA)は、HCC微生物叢がHDと比較して、分類学的に(図1D)及び機能的に(図1E)、異なるプロットを構築したことを表した。CLD微生物叢は、HDとHCCとの間の比較的中間の位置にプロットされた(図1D及び図1E)。胃酸減少剤は、腸内細菌叢の組成に影響を与えるため、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2受容体拮抗薬(H2RA)の投与を受けていないHD患者とCLD/HCC患者との比較も行った。PPI/H2RA薬を投与されていない15人の慢性肝疾患患者(8人のCLD患者及び7人のHCC患者)の微生物叢は、HDと比較してStreptococcus属の3種、Lactobacillus属の1種及びEnterococcus属が豊富であった。この結果は、全被験者による分析と部分的に類似していた(図1A及び図1B)。PPIを服用しているCLD/HCC患者の実際のフローラの組成は、Streptococcus parasanguinus、Streptococcus anginosus、Veillonellaceaeファミリー、及びRothia属の存在によって特徴付けられ、Lactobacillus属及びEnterococus属とは関係がなかった(データは示さず)。総合すると、フローラの腸内異常は、胃酸減少剤の部分的な影響を伴う慢性肝機能障害によって引き起こされていた。したがって、CLD及びHCC微生物叢は、口腔又は小腸型細菌及びHD微生物叢とは異なるエネルギー代謝による肝機能障害に関連する腸内微生物叢異常を有していた。
(慢性肝機能障害患者の糞便微生物叢はマウスにおける肝発癌を促進する)
各被験者の糞便微生物叢を1~3匹のフローラ除菌C57BL6マウスに移植し、ジエチルニトロソアミン(DEN)と四塩化炭素(CCl4)の組み合わせによって誘発される肝腫瘍の発生率を観察した。糞便移植後の糞便微生物叢の縦断的分析によれば、被験者の微生物叢の組成は移植されたマウスでは完全には回復しなかったが、マウス微生物叢の組成は被験者のフローラに応じて変化し、移植8ヶ月後も安定であった(データは示さず)。そこで、マウスモデルにおける各患者のフローラ由来の独自の細菌叢が肝発癌に及ぼす影響を評価した。HD微生物叢の移植は、27匹のマウスのうち3匹において肝臓腫瘍を発症させたが、腫瘍担持マウスの数は、糞便移植を受けなかった対照マウスと同数であった(図2A)。CLD又はHCC微生物叢は、HDよりも多くのマウスにおいて肝腫瘍を引き起こし(CLD、16匹のマウスのうち11匹;HCC、24匹のマウスのうち22匹;図2A)、肝臓腫瘍の数は、HDよりもCLD又はHCCの微生物叢を移植したマウスで、有意に多かった(図2B)。このマウスモデルでの腫瘍促進効果は、観察の終期段階ではなく、DEN及びCCl4を注射したときの初期段階から中期段階で観察されたため、DEN及びCCl4の注射コースの間の肝臓の遺伝子発現を評価した。増殖遺伝子ki67及びeregの発現は、HDと比較して、HCC微生物叢移植マウスの肝臓において上方制御された(図2C)。炎症性ケモカインccl2の発現は、HDよりCLD-微生物叢移植マウスにおいて高かった。患者の微生物叢組成は、フローラ除菌マウスでは完全に再現されなかったので、選択した微生物叢を無菌マウスに移植した。CLD患者13又はHCC患者12の糞便を移植したマウスは、HD患者55の微生物叢を移植したマウスと比較して、肝臓において増殖性遺伝子ki67及びccnb1の発現上昇を示した(図2D)。炎症遺伝子tnf及びccl2の発現は、HD患者55のフローラを有するマウスと比較して、CLD患者13のフローラを有するマウスにおいて上昇した。したがって、特定のCLD患者またはHCC患者の糞便微生物叢を無菌および除菌マウスに移植すると、肝臓における増殖性または炎症性遺伝子の発現が上昇した。しかし、フローラの組成が患者によって異なるため、全てのCLD患者およびHCC患者の微生物叢がこれらの遺伝子の発現を上昇させることはなかった。末期の肝線維症の程度もまた患者に依存していた。CLDまたはHCCの微生物叢を移植した特定のマウスは、肝臓で架橋線維症を示したが、HD微生物叢を移植したマウスの大部分は重度の線維症を示さなかった(データは示さず)。
(腸内のEnterococcus faecalisは肝発癌を促進する)
腸内細菌叢の組成とその遺伝子発現および発がん性への影響は、CLDグループまたはHCCグループにおいても多様であった。したがって、HD、CLDまたはHCCからの糞便の移植後に、肝腫瘍が発生したマウスの腸内微生物叢の特徴を調べた。肝臓腫瘍担持マウスと腫瘍非担持マウスとの間の比較において、16属が有意に異なっていた(図3A)。Enterococcus属、Chritensenella属、およびEpulopiscium属は、腫瘍が存在しないマウスと比較して、腫瘍が存在するマウスのフローラに多く存在した。これらの属のうち、Enterococcus属は、被験者HD微生物叢と比較して、CLDおよびHCCの微生物叢においても多い唯一の属であった(図1Aおよび図1B)。腸球菌が存在するマウスは、腸球菌を含まないマウスよりも多くの肝腫瘍を有していた(図3B)。Enterococcus属が存在するマウスは、Enterococcus属が存在しないマウスと比較して、肝臓においてki67、ccnb、tnfおよびccl2の発現上昇を示した(図3C)。特定のEnterococcus種の発癌性を調べるために、Enterococcus faecalis V583株またはEnterococcus casseliflavusを口腔内および直腸内に強制投与し、フローラ除菌マウスの腸内に定着させた。CLDおよびHCCの微生物叢に多く存在するため(図1AおよびB)、Streptococcus anginosusまたはLactobacillus salivariusも他のマウスに強制投与した。E.faecalis定着マウスは、E.cassliflavus、S.anginosus、またはL.salivarius定着マウスよりも有意に多くの肝腫瘍を有していた(図3D)。E.faecalis定着マウスにおける肝腫瘍の数は、HCC患者11の微生物叢を移植したマウスと同様であった。増殖遺伝子ki67、ccnb1およびereg、ならびに線維症遺伝子col1a1の発現は、他の細菌種が定着したマウスと比較して、E.faecalis定着マウスの肝臓において有意に上昇した(図3E)。E.faecalis V583とE.casseliflavusとの間の消化管臓器における病原性の相違の1つが、ゼラチナーゼ活性であるため、HD、CLDまたはHCC微生物叢の移植を受けたマウスの糞便におけるE.faecalisのgelE遺伝子の存在を、糞便DNAのPCRにより確認した。糞便gelE陽性マウスは、糞便gelE陰性マウスよりも、肝臓腫瘍が多かった(図3F)。このように、Enterococcus属の多さおよび糞便中のgelE遺伝子の存在は、肝腫瘍の高い発生率と関連しており、gelE陽性E.faecalis V583の腸内での定着は、実際に肝臓発癌を促進した。
(慢性肝機能障害患者の糞便は高いゼラチナーゼ活性を有し、腸透過性を上昇させる)
糞便中のgelE遺伝子の存在が実際にゼラチナーゼ活性を誘導するかどうかを調べるために、患者の糞便をゼラチン含有寒天プレート上でインキュベートした(図4A)。糞便ゼラチナーゼ活性の陽性率は、CLDまたはHDよりもHCCにおいて有意に高かった(+または++の割合;HD 50.0%、CLD 69.1%、HCC 93.3%;図4AおよびB)。糞便にgelEが存在する患者は、gelEが存在しない患者と比較して、ゼラチナーゼ陽性率が高かった(+または++の割合;糞便gelE陽性患者87.5%、糞便gelE陰性患者、60.7%;図4C)。ゼラチナーゼ活性は、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)を含む種々のプロテアーゼにより発現され、gelEが、pro-MMPを切断し、活性化することが報告されている(Shogan, B.D., et al. Sci Transl Med 7, 286ra268 (2015))。糞便中の活性MMP9の濃度は、HDよりもHCCの糞中で高く(図4D)、ゼラチナーゼ陰性の糞便よりもゼラチナーゼ陽性の糞便で高かった(図4E)。フルオレセイン-イソチオシアネート(FITC)-デキストラン転移試験によれば、高いゼラチナーゼ活性を有するCLD患者13およびHCC患者12の糞便を、フローラ除菌マウスに移植すると、腸透過性が増加した(図4F)。HCC微生物叢を移植したマウスの血漿中には、HDよりも高濃度のリポ多糖(LPS)が検出された(図4G)。まとめると、慢性肝機能障害患者の糞便は、高濃度の活性型MMP9を伴う高いゼラチナーゼ活性を示し、消化管透過性が高まり、その結果、血漿中に高レベルのLPSが存在した。
(E.faecalisのGelEは腸の透過性を高め、肝臓の発癌を促進するのに必要である)
gelE遺伝子が肝臓発癌の原因であるかどうかを調べるために、gelE陽性E.faecalis V583株およびgelE欠失V583株を、フローラ除菌マウスに強制投与した。V583からのgelE遺伝子の欠失は、この株の腫瘍形成能の喪失をもたらし、V583野生株と比較して肝臓腫瘍の数を減少させた(図5A)。増殖遺伝子ki67およびccnb1、ならびに線維症遺伝子col1a1の肝臓での発現は、V583からのgelEの欠失によって下方制御された(図5B)。さらに、gelE陽性E.faecalis株HC5aをHCC患者の糞便から単離し、マウスに強制投与した。HC5a株は、肝臓において、V583野生株と同程度に、多数の腫瘍を誘導し、ki67およびccnb1の高発現を誘導した(図5Aおよび図5B)。ノトバイオートマウスを、V583野生株またはgelE欠失V583株の無菌マウスへの強制投与によって作製した場合、肝臓におけるki67、ccnb1およびcol1a1の発現の差異はなかった(図5C)。ノトバイオートV583野生株定着マウスは、gelE欠失株定着マウスと比較して、腸透過性を増加させたため(図5D)、他の細菌種とE.faecalisとの協働が肝臓におけるgelE介在性増殖遺伝子発現を誘導するために必要かもしれない。実際に、V583野生株をフローラ欠失マウスにおいて定着させた場合、gelE欠失V583株を定着させたマウスと比較して、血漿中でLPSが高濃度で検出された(図5E)。さらに、結腸タイトジャンクションタンパク質Zo-1の局在化は、V583野生株定着マウスにおけるZo-1の存在および内在化の減少で特徴付けられるように調節不全であった(データは示さず)。CLDまたはHCCにおける新規肝細胞癌の発生率を、この研究における糞便採取後に追跡した。HCC患者に関して、HCCの根治治療を受けた患者は、新規または再発性HCCの出現について追跡された。HCC発生率は、糞中gelE陰性患者と比較して、糞便gelE陽性CLD患者またはHCC患者で有意に高かった(図5F;P=0.0427)。E.faecalisのgelEは、他の細菌種と協働して腸の透過性と肝発癌を増加させるために必要とされる。
(慢性肝機能不全は微生物叢の嚥下障害およびデオキシコール酸の産生減少をもたらし、腸内でのEnterococcusの定着を可能にする)
E.faecalisとgelE遺伝子は、マウス及びヒトの肝臓発癌において重要な役割を果たしたが、Enterococcus属が、CLD及びHCCの微生物叢中に多く存在した理由は依然として不明である。二次胆汁酸生合成の代謝経路は、HD患者よりもCLDおよびHCC患者の微生物叢において少なかったため(データは示さず)、次に糞便中の胆汁酸濃度を測定した。デオキシコール酸(DCA)のみがHDと比較してCLDおよびHCCの糞便中で有意に減少したが、コール酸(CA)、ケノデオキシコール酸(CDCA)およびリトコール酸(LCA)などの他の胆汁酸の糞便濃度は、CLD/HCCとHDとの間で異ならなかった。(図6A)。糞便中の一次胆汁酸、CAおよびCDCAの中央濃度は、二次胆汁酸、DCAおよびLCAより低かった(中央値;CA、0.162μmol/g;CDCA、0.094μmol/g;DCA1.07μmol/g;LCA、1.46μmol)。E.feacalis V583を中央値の糞便濃度と同程度の濃度のこれらの胆汁酸とともに培養した場合、DCAのみがV583の増殖を阻害した(図6B)。次に、糞便性Enterococus属の存在量と、糞便中の胆汁酸濃度、抗生物質の使用、入院頻度、胃酸低減薬の投薬および毎日のアルコール摂取量などの様々な微生物叢を制御する要因との相関関係を分析した。その結果、入院頻度は糞便中のEnterococcus属の相対存在量と正の相関があった(データは示さず)。糞便中のgelE遺伝子の存在量は、DCAおよびLCAの糞便濃度と負の相関を示したが、CAおよびCDCAの濃度と正の相関を示した(データは示さず)。高濃度の二次胆汁酸、特にDCAは、腸内でのE.faecalisの定着および増殖を阻害し、CLDおよびHCC患者における糞便DCA濃度の減少ならびに頻繁な入院は、Enterococus属の定着を促進するようであった。
腸内微生物叢は100を超える種を含むため、特定の腸内環境におけるEnterococus属の存在量の原因を調べるためには、細菌間相互作用を考慮する必要がある。CLDおよびHCC微生物叢では、L.salivariusも多かった(図1Aおよび図1B)。まず、L.salivariusをフローラ除菌マウスに最初に定着させ、次にE.faecalis V583をマウスに強制投与した。しかしながら、あらかじめ定着させたL.salivariusは、DENおよびCCl4注射後のEnterococus属の定着にも肝臓の遺伝子発現にも影響を及ぼさなかった(図6Cおよび図6D)。次に、HD患者26またはHD患者55の微生物叢をフローラ除菌マウスに定着させ、次いで、V583をマウスに強制投与した。興味深いことに、HD患者26の微生物叢はマウス糞便中のV583の増殖を阻害し、HD患者55はHD患者26よりもV583の増殖を阻害した(図6C)。HD患者26ではなくHD患者55の微生物叢は、肝臓における増殖遺伝子ki67およびccnb1、ならびに線維症遺伝子col1a1の発現を有意に減少させた(図6E)。したがって、健常人の微生物叢は、腸内でのE.faecalisの定着および増殖を阻害する。まとめると、糞便中のデオキシコール酸濃度の低下および健常人に特異的な微生物叢の喪失、ならびに頻繁な入院は、おそらく腸内でのE.faecalisの定着を可能にする。
本発明によれば、肝炎ウイルスとは無関係に、肝臓がん発症リスクを判定可能な、肝がん発症リスクの判定方法、及び肝がん発症リスクの判定キットが提供される。

Claims (6)

  1. 対象の糞便試料において、Enterococcus faecalis由来のgelE遺伝子又はその遺伝子産物の含有量を測定する工程(i)を含
    健常対象の糞便試料における前記gelE遺伝子又はその遺伝子産物の含有量と比較して、前記工程(i)で測定された含有量の方が高い場合に、前記工程(i)で用いた糞便試料が、肝がん発症リスクが高い対象に由来すると判定する、
    肝臓がん発症リスクの高い対象の糞便試料を特定する方法。
  2. 前記gelE遺伝子又はその遺伝子産物の含有量の測定を、
    (a1)前記糞便試料における前記gelE遺伝子をコードする核酸含有量の測定、及び
    (b1)前記糞便試料における前記gelE遺伝子の遺伝子産物含有量の測定、
    からなる群より選択される少なくとも1種の測定により行う、請求項に記載の肝臓がん発症リスクの高い対象の糞便試料を特定する方法。
  3. 前記糞便試料におけるゼラチナーゼ活性を測定することさらに含む、請求項2に記載の肝臓がん発症リスクの高い対象の糞便試料を特定する方法。
  4. 対象の糞便試料中のEnterococcus faecalis由来のgelE遺伝子又はその遺伝子産物の含有量を測定するための試薬を含む、肝臓がん発症リスクの判定キット。
  5. 前記gelE遺伝子又はその遺伝子産物の含有量を測定するための試薬が、
    (a2)前記糞便試料における前記gelE遺伝子をコードする核酸含有量を測定するための試薬、及び
    (b2)前記糞便試料における前記gelE遺伝子の遺伝子産物含有量を測定するための試薬、
    からなる群より選択される少なくとも1種の試薬を含む、請求項に記載の判定キット。
  6. 対象の糞便試料中のゼラチナーゼ活性を測定するための試薬をさらに含む、請求項5に記載の判定キット。
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