JP7302994B2 - ワークピース/ツール間境界における振動現象を制限するための方法 - Google Patents

ワークピース/ツール間境界における振動現象を制限するための方法 Download PDF

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Description

本発明は、機械加工の分野に関する。本発明は、より正確には、ワークピース-ツール間境界における望ましくない振動現象を低減させることを目指して、工作機械軸の制御のレベルにおいて適用される方法に関する。
工作機械における振動現象は、機械加工品質と、その結果として工作機械の生産性と、に大いに不利益をもたらす、欠陥の原因である。これらの振動の振幅は、機械の固有周波数が励起された場合、相対的に高くなるおそれがある。例えば、図1は、平面XYにおける直線運動によって方向Zの振動が発生するこの現象を示す。左側の網掛けエリアによって表される平面XYにおける軸のうちの一方の加速中に、ピークが観測され、その後に、その軸の一定速度での運動段階中(非網掛けエリア)の残留振動が続く。
この問題を改善すべく、一部の数値コントローラには、問題となる周波数を減衰させるフィルタが設けられている。この最適化は、モータと測定定規(measuring rule)との間の運動を考慮に入れた調整ループのレベルにおいて達成される。工作機械の振動モードによっては、このモータ-定規間運動には影響が及ばないが、ワークピース-ツール間運動に影響が及ぶ可能性がある。コントローラはその場合、これらの運動に関して「盲目的」なままであり、したがって、それらを補償することができない。
臨界固有周波数が工作機械の挙動に及ぼす影響を低減させるための他の解決策が存在し、それは、ワークピースとツールとの間で所与の方向に大きな相対運動を発生させる、コンプライアントモードと称する振動モードの励起を回避するように、軸の加速プロファイルを適合させることにある。
有望ではあるものの、この後者の解決策には、所与のハードウェア構成について、すなわち一部のタイプの数値制御について、加速プロファイルの最適化の実施が不可能であると判明する場合がある、という欠点がある。その場合、工作機械上の振動現象を制限するための別の解決策を見出すことが必要になる。
したがって、本発明の主目的は、ワークピース-ツール間レベルにおける外乱振動モードの作用を大幅に低減させることを可能にする方法を提案することである。
このために、本発明による方法の目的は、励起軸と称する1つまたは複数の他の工作機械軸の加速後に振動を受ける、コンプライアント軸と称する少なくとも1つの工作機械軸に、補償を適用することである。
本発明によれば、補償は動的であり、すなわち、励起軸の加速段階中ならびに加速段階に続く一定速度段階中に適用される。この補償は、コンプライアント軸の方向のワークピース-ツール間相対運動の低減を可能にし、またはその排除さえも可能にする。
他の利点が、特許請求の範囲に表した特徴から、また非限定的な例として提供される添付の図面を用いて以後説明する本発明の詳細な説明から、明らかとなろう。
軸Yの運動によって引き起こされたZ方向の既知の振動を表す図である。左側の網掛けエリアは、ベル形プロファイルを用いた軸Yの加速段階中のZ方向の振動の振幅を表し、その後に、その軸の一定速度段階中の振動の振幅が続く。振動は、Heidenhain数値コントローラ上でツールの送りレートが444mm/分(F444)である場合について、R-Testを使用して測定した。 軸Xの運動によって起こったZ方向およびY方向の振動、ならびに軸Yの運動によって起こったZ方向およびX方向の振動の、フーリエ変換後の結果を表す図である。 補償のための伝達関数がそこから生成される調整ループを含む機械的モデルの論理図を示す図である。 補償伝達関数の計算に関する論理図を示す図である。 軸XおよびYのベル形加速プロファイル(BellStd)について、動的補償(CDZ)がZ方向の運動に及ぼす作用を示す図である。
本発明の概略的な説明
本発明による方法は、3つの直線軸X、YおよびZと、場合によっては1つまたは2つの回転軸とを備える工作機械上の振動現象を低減させることが意図される。本発明による方法は、直線軸および/または回転軸を備えた構成がワークピースの運動を調整することに関して、ツール上の直線軸および/または回転軸を備えた構成に等しく十分に適用される。
本発明については、平面XYの外に軸Zに沿って振動を発生させる軸Xおよび/または軸Yに沿った直線的運動に関する以下の例において説明する。工作機械のアーキテクチャに応じて、振動を受ける軸は、軸Zのみではなく5つの軸のうちのいずれかであり得ることは、言うまでもない。
本発明による方法については、
1.工作機械の1つまたは複数のコンプライアント軸を特定するステップであって、この軸が、1つまたは複数のコンプライアント軸とは異なる1つまたは複数の工作機械軸の加速後に、ワークピースとツールとの間の相対運動を発生させる振動を受けるものである、ステップと、
2.1つまたは複数のコンプライアント軸とは異なる工作機械軸の加速段階および加速段階に続く一定速度段階中に、振動現象による影響が及ぶ1つまたは複数のコンプライアント軸の方向に補償を適用するステップと、
に関して明確に述べる。
1つまたは複数のコンプライアント軸の特定
コンプライアント振動モードは、主として、その固有周波数およびその固有形状(natural shape)によって特徴付けられる。そのコンプライアントな特徴は、所与の方向にワークピースとツールとの間の大きな相対運動を発生させ、この当然の帰結として、機械加工された部品の仕上がり品質を劣化させる、その傾向に関連がある。大きな相対運動とは、1μm以上の値、またはモータと定規との間で一般に許容されている追従誤差範囲から逸脱する値を伴う運動を意味する。工作機械のアーキテクチャに応じて、負荷がかけられる軸はさまざまでよい。したがって、3つ、4つ、または5つの軸を備えた機械では、任意の軸に負荷をかけると、負荷がかかっている軸とは別個の1つまたは複数の軸と同一直線上の方向に、コンプライアント振動が発生する場合がある。
1つまたは複数のコンプライアント軸は、実験的に特定されてよい。したがって、コンプライアントモードは、工作機械のある特定の位置に配置された1つまたは複数のセンサ(加速度計、光センサなど)を通じて特定され得る。測定システムは、有利には、実験モード解析またはデジタルモード解析(前者の場合には、機械上の多数の位置に配置されたセンサを用いて測定することからなる)によって前もって定められた工作機械の好ましいゾーン内に、恒久的に埋め込まれる。ゾーンには、上で定義したコンプライアントモードに非常に敏感であるという特定の特徴がある。工作機械上に測定システムを恒久的に設置する結果、必要に応じて、各ワークピースを機械加工する前にコンプライアントモードを特定することが可能になる。これにより、2つのバッチ間であろうと生産途中であろうと、ワークピース-ツール間挙動の任意の悪化が観測されるとすぐにコンプライアント軸の特定手順を開始することが可能になる。
測定結果は、FFT(高速フーリエ変換)解析によって、周波数領域において解析される。例えば、ある工作機械の固有周波数を、R-Testを用いて行った振動の測定に基づいて決定した。そのテストは、スピンドル上に取り付けられかつ3つの固定運動センサ間に配置されたボールの、望ましくない3D運動を測定することにある。これらの望ましくない運動は、プログラムされ理想的であると見なされる任意の公称軌道(nominal trajectory)上に重ね合わされる。この工作機械上で、それぞれX方向およびY方向の2つの単軸方向運動を、三角形加速プロファイルを用いて、200m/sのジャークおよび444mm/分の送りレートで行った。測定された振動のフーリエ変換を行うことによって得られた固有モードの周波数が、図2に示されている。図示の例では、最大モードが、軸Yによって励起され、37.5Hzの周波数のところにZ方向のワークピース-ツール間運動を生じさせている。本発明に従って適用される動的補償は、この運動を消滅させることを目指すものである。
あるいは、1つまたは複数のコンプライアントモードは、所与の工作機械構成についての有限要素構造モデルを使用して特定されてもよい。
動的補償
補償は、軸の加速により発生した振動を全部または一部補償すべく、振動を受ける1つまたは複数の軸に対して位置目標値を追加することにある。この補償は動的であり、すなわち、加速段階および後続の一定速度段階中に適用される。
リアルタイムで適用されるこの補償では、機械的モデルおよび調整を含む完全閉ループモデルを利用する。この完全モデルは、それ自体が当業者に知られており、3つの軸X、Y、およびZに関して図3に図式的に示されている。情報提供のみを目的として、このモデルについて、以下のように説明することができる。
- 機械系のモデリングは、工作機械の主要ボディ(シャーシ、フレーム、クロス支持体(cross-support)、柱(column)、タップ支持体(tup support))のうちの1つをそれぞれが表す剛体からなる系に基づく。
- ボディ間の接続(connection)は、剛性(直線運動、角運動)、および粘性タイプの減衰によって表される。
- 剛体のパラメータ(質量、慣性)の値、ならびに接続剛性(connection stiffness)の値は、構成要素に関するCADモデルおよび技術的データに基づいて事前に確立される。これらの値は、実験的測定、または有限要素タイプのデジタルモデルによって調整されてよく、デジタルモデルのほうがより正確である。
- リンク(link)の減衰特性は、測定または推定されたモード減衰値による逆座標の変換(モード-材料間)によって、事後に得られる。
- 系の完全なモデリングが、機械系のモデルに調整を加える。調整を伴う実施の場合、機械的モデル内に含まれる調整剛性(regulation stiffness)は排除される(ゼロ値である)。
図4は、振動を補償すべく軸の位置目標値の修正を可能にする本発明による補償伝達関数(Gcomp)が統合された、閉ループの論理図をより詳細に表す。より正確に言うと、コンプライアント軸に適用される動的補償の目的は、残りの機械軸の加速によって生じるコンプライアント軸に沿ったワークピース-ツール間相対運動を打ち消すために、前記軸の位置目標値としての理想的な補償信号を生成することである。以下の式は、軸XおよびYに負荷をかけることによって必要となる、Z方向の補償のための補償伝達関数を計算する手法について説明している。
Figure 0007302994000001
上式で、sはラプラス変換の変数であり、QZRは、Z方向のワークピース-ツール間運動であり、WaxおよびWayは、X方向およびY方向の加速度目標値であり、WqxおよびWqyは、X方向およびY方向の位置目標値であり、Gclx、Gcly、およびGclzはそれぞれ、軸X、Y、およびZに関する閉ループ伝達関数である。
上記の定式化は、追加の軸に関する伝達関数を分子に追加して、4つまたは5つの軸に拡張することができる。
補償すべき複数の軸の存在下では、前述のアルゴリズムを用いて各軸が別々に処理される。
実際のところ、このモデルは、入力として、運動している軸の位置目標値および加速度目標値をとり、補償すべき軸の位置目標値、速度目標値、および加速度目標値を出力することができる。
上で示したように、完全モデルのパラメータは、完全モデルが工作機械の実際の挙動に最良に対応するように、シミュレーションに基づいて、または実験データに基づいて調整されてよい。モデル再較正の解決策として、
- 工作機械の有限要素構造モデルを用いて得られた固有周波数に対する再較正、
- 工作機械上で実験的に測定された固有周波数に対する再較正、
- 機械の軸のうちの1つが一時的に励起した後の工作機械の応答に対する再較正、
を挙げることができる。
実験的測定に基づくモデルの調整は1回、または繰り返して行われてよいことが規定される。
図5は、ツールの送りレートが444mm/分である場合について、ベル形プロファイル(BellStd)によるXおよびY方向の加速中に動的補償がZ方向の運動に及ぼす作用を示す。Z方向の運動は、R-Testによって測定した。動的補償(BellStd+CDZ)が加速段階中のZ方向の運動を大いに低減させる、ということが見てとれる。
動的補償が機械加工品質に及ぼす作用を確認するために、さまざまなサンプルを、ベル形加速プロファイルを用いて、ツール軌道から開始して機械加工した。サンプルの、顕微鏡測定によって補完される視覚的解析を行った。ツールの送りレートが129mm/分から645mm/分の間(129mm/分と645mm/分を含む)(F129からF645)の4つの比較サンプルを、動的補償を加えていないベル形加速プロファイル(BellStd)を用いて機械加工し、それらの外観を、動的補償と結び付けたベル形加速プロファイル(BellStd+CDZ)を用いて同じ速度で機械加工したサンプルの外観と比較した。サンプルの各々について、それらの視覚的外観に応じて1から10までのスコアを与え、スコア10は鏡面仕上げに対応する(表1)。これらの比較テストにより、動的補償の適用がフライス痕の排除を可能にするとともに、この当然の帰結として、表面状態を劣化させずに送りレートを上げることができる、と結論付けることが可能になった。
Figure 0007302994000002

Claims (8)

  1. 3つ、4つ、または5つの機械軸を備える工作機械上のワークピース-ツール間境界における振動現象を制限するための方法であって、
    - コンプライアント軸と称する、少なくとも1つの工作機械軸を特定するステップであって、前記工作機械軸が、励起軸と称する、少なくとも1つの前記コンプライアント軸とは異なる少なくとも1つの工作機械軸の加速段階中に励起され、この励起後に、少なくとも1つの前記コンプライアント軸と同一直線上の方向に前記ワークピースと前記ツールとの間の相対運動を引き起こす傾向があるものである、ステップと、
    なくとも1つの前記励起軸の前記加速段階および前記加速段階に続く一定速度段階中に、各コンプライアント軸に対して、前記ワークピースと前記ツールとの間のどんな相対運動も低減させるように補償を適用するステップと、
    を含み、
    各コンプライアント軸に対して適用すべき前記補償が、第1の関係式、
    CR (s)=G CLE (s)・W QE (s)+G CLC (s)・W QC (s)=0
    に基づいて決定され、上式で、sはラプラス変換の変数であり、
    CR (s)は、各コンプライアント軸に沿ったワークピース-ツール間運動であり、0に等しくなければならず、
    CLE (s)は、各励起軸の閉ループ伝達関数であり、
    CLC (s)は、各コンプライアント軸の閉ループ伝達関数であり、
    QE (s)およびW QC (s)はそれぞれ、各励起軸および各コンプライアント軸の位置目標値であり、
    各励起軸についての項G CLE (s)・W QE (s)に関して、
    前記第1の関係式に基づいて、第2の関係式、
    Figure 0007302994000003
    による補償伝達関数G COMP (s)が計算され、
    各励起軸についての項G CLE (s)に関して、各項が前記第2の関係式の分子に追加される方法。
  2. なくとも1つの前記コンプライアント軸が、実験的に、またはデジタルシミュレーションに基づいて特定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. なくとも1つの前記コンプライアント軸が、前記工作機械の固有周波数の測定結果に基づいて実験的に特定されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
  4. なくとも1つの前記コンプライアント軸が、少なくとも1つの前記励起軸の前記加速段階によって引き起こされる振動の測定を可能にする1つまたは複数のセンサが設けられた前記工作機械上で特定され、その特定が、前記ワークピースを機械加工する前に行われ得ることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
  5. なくとも1つの前記コンプライアント軸が、繰り返してまたは1回だけ特定されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 各コンプライアント軸に対して適用すべき前記補償が、少なくとも1つの前記励起軸の位置目標値および加速度目標値に基づいて決定されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 請求項1からのいずれか一項に記載の方法を実行するように適合され、特に、各コンプライアント軸に対して適用すべき前記補償を決定するように適合された、コンピュータプログラム。
  8. 請求項に記載のコンピュータプログラムが実行される数値コントローラ。
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