JP7302232B2 - 熱間圧延用遠心鋳造複合ロール及びその製造方法 - Google Patents

熱間圧延用遠心鋳造複合ロール及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、鋼板の熱間圧延機の特に第五~第七スタンドに用いるのに好適な鋳造複合ロールに関し、特に初径に近いときには耐摩耗性が高いために最終第七スタンドに用いるのに好適であるが、改削により廃却径に近くなると耐ヒートクラック性が向上し、第六スタンド及び第五スタンドに好適になる熱間圧延用遠心鋳造複合ロール、及びその製造方法に関する。
ホットストリップミルは、連続鋳造等で製造した厚さ数百ミリのスラブを加熱した後、順に複数の粗圧延機及び複数の仕上げ圧延機のロール間に通し、数~数十ミリの厚さに圧延するものである。仕上げ圧延機は、通常5~7つの四重式圧延機スタンドを直列に配置したものであり、特に7つのスタンドからなる仕上げ圧延機が広く用いられている。7スタンドの仕上げ圧延機では、第一~第三スタンドを前段スタンドと呼び、第四~第七スタンドを後段スタンドと呼ぶ。
仕上げ圧延機に用いられるロールは圧延による熱的及び機械的負荷に耐える必要があるため、耐摩耗性に優れた外層と靭性に優れた内層とを溶着一体化した複合構造の遠心鋳造複合ロール(単に「複合ロール」と呼ぶこともある。)が用いられている。しかし、圧延による熱的及び機械的負荷によっては外層表面に摩耗、肌荒れ、ヒートクラック等の損傷が発生するため、一定期間使用した後に複合ロールを圧延機から取り外し、損傷を研削除去(改削)する。改削により複合ロールの胴径は初径から圧延に使用可能な最小径(廃却径)まで徐々に小さくなる。本明細書では、初径から廃却径までのロール径を圧延使用有効径(単に「有効径」という)と呼び、初径から廃却径までの有効径領域を「使用域」と呼ぶ。
仕上げ圧延機の特に後段スタンドには、従来から高合金グレン鋳鉄外層と強靭性に優れた鋳鉄の内層とを冶金的に一体化した遠心鋳造複合ロールが使用されている。高合金グレン鋳鉄外層は黒鉛、炭化物及び基地組織からなり、特に耐焼付き性に優れているため、絞り事故に遭遇した際も、クラックの発生・進展が極めて少ない、つまり耐事故性に優れるという特徴がある。とりわけ後段スタンドでは、薄い鋼板が折り重なって圧延されることよる絞り事故が発生することが多いため、耐事故性の良好な高合金グレン鋳鉄を外層とする複合ロールが多く用いられている。高合金グレン鋳鉄には、M3C系(セメンタイト)のみを含有するタイプと、耐摩耗性を改善するためにM3C系(セメンタイト)及びバナジウム等の元素からなる比較的少量のMC炭化物を含有するタイプとがある。しかし、高合金グレン鋳鉄は高クロム鋳鉄材やハイス材に比較すると耐摩耗性が劣るので、種々の改善が行われている。
特開2004-68142号(特許文献1)は、熱間圧延用複合ロールの外層に用いる外層材として、質量基準でC:2.9~3.8%、Si:0.8~2.0%、Mn:0.2~1.5%、Cr:1.5~3.5%、Mo:0.8~3.5%、Ni:3.0~7.0%、V:1.0~3.5%、Nb:0.1~0.8%、B:0.020~0.2%、REM:0.002~0.030%を含み、かつ式(1):[2.5≦C-(0.236×V+0.129×Nb)≦3.2]、及び式(2):[0.5<Cr/C<1.0]を満足し、残部Fe及び不可避的不純物からなる組成を有する耐焼付き性と耐摩耗性に優れた熱間圧延用ロール外層材を開示している。この外層材を有する複合ロールは、耐焼付き性及び耐摩耗性を兼備しており、鋼板の熱間圧延用の後段スタンド用ロールに好適であると記載されている。
特許文献1に記載の試験材のうち、(1) C:3.76%、Cr:1.67%、V:2.38%、Nb:0.92%、Ni:4.62%、Si:1.64%、Mn:0.54%、Mo:1.30%、B:0.054%、及びREM:0.011%を含有する試験材Lは、C含有量が3.76%と多いために黒鉛や炭化物が過剰となって強度や靱性が低下するという問題があり、(2) C:3.46%、Cr:2.27%、V:2.46%、Nb:0.83%、Ni:4.55%、Si:1.78%、Mn:0.61%、Mo:0.66%、B:0.042%、及びREM:0.019%を含有する試験材Tは、V/Nb比が2.96と大きすぎるためにMC炭化物の分布が外層内周側に偏っているという問題があり、(3) C:3.35%、Cr:1.97%、V:3.27%、Nb:1.57%、Ni:4.61%、Si:1.91%、Mn:0.5%、Mo:1.32%、及びB:0.074%を含有する試験材Wは、B含有量が0.074%と多いために白銑化効果が強くなって黒鉛が晶出しにくくなるという問題がある。
特開2001-279367号(特許文献2)は、質量基準でC:2.7~4.0%、Si:0.5~2%、Mn:0.2~2%、Mo:0.2~0.8%、Ni:2.5~6.0%、Cr:1.0~2.0%、B:0.01~0.1%、を含有し、さらにNb:0.2~1.0%及びV:0.2~2.0%の1種又は2種を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる外層と、高級鋳鉄又は球状黒鉛鋳鉄からなる内層とからなる熱間圧延用遠心鋳造ロールを開示している。この遠心鋳造ロールの外層では、従来の高合金グレン鋳鉄材の基本組成に適量のNb及びVを添加するとともに、適量のB等を添加しているため、形成される炭化物はM3C型(セメンタイト)が主体であり、MC炭化物は慨ね3%以下と少なく、鋳造組織に微細な黒鉛粒子が均一に分布している。特許文献2は、高価な合金を多量に含有させずに耐摩耗性及び耐クラック性に優れた熱間圧延用のロールを遠心鋳造法により安価に提供している。
特許文献2は、外層用試験材として、C:3.2%、Si:2.4%、Mn:0.8%、Mo:0.6%、Ni:4.2%、Cr:2.2%、Nb:1.5%、V:3.5%、及びB:0.04%を含有する試験材11を記載している。しかし、試験材11はV含有量が3.5%と多すぎるため、MC炭化物が外層内周側に偏る傾向がある。
特開2008-50681号(特許文献3)は、質量基準でC:2.5~3.4%、Si:0.5~2.0%、Mn:0.5~1.0%、Ni:3.0~6.0%、Cr:1.0~2.0%、Mo:0.2~0.8%、V:1.0~4.0%、Nb:0.2~1.0%を含有するとともに、VとNbの質量%が式(1):1≦(V-1)/Nb≦4、及び式(2):0.7≦1.8(V-1)+Nb≦5.0を満たし、残部Fe及び不可避不純物からなる遠心鋳造製圧延用複合ロ-ルの外層材を開示している。特許文献3は、この外層材は耐摩耗性に優れ、重力偏析及び粗大なMC炭化物の晶出による肌荒れがないと記載している。
特許文献3は、C:3.1%、Si:1.8%、Mn:0.8%、Ni:4.5%、Cr:1.1%、Mo:0.3%、V:3.0%、Nb:1.0%、B:0.03%を含有する外層用試験片を記載している。しかし、この試験片には、V/Nb比が3と大きすぎるためにMC炭化物の分布が外層内周側に偏っているという問題がある。
特開2017-185548号(特許文献4)は、質量基準でC:2.6~3.8%、Si:0.1~3.0%、Mn:0.3~2.0%、Ni:2.3~5.5%、Cr:0.5~2.5%、Mo:0.2~3.0%、V:0.2~3.8%、Nb:0.4~6.8%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、面積基準で0.3~10%の黒鉛粒子を含む組織を有する外層と、ダクタイル鋳鉄からなる軸芯部とを有し、前記外層の両端面から軸方向にそれぞれ100 mm離れた位置のC含有量が、前記外層の軸方向長さの中央のC含有量に対し、0.05~0.3質量%多く、前記外層の両端面から軸方向にそれぞれ100 mm離れた位置のNb含有量が、前記外層の軸方向長さの中央のNb含有量に対し、0.5~3.0質量%多い熱間圧延用遠心鋳造複合ロールを開示している。このロールは、圧延される鋼板の幅中央部に相対する外層中央部と、鋼板の両側の幅端部近傍に相対する外層端部とが平均的に摩耗が進行するように外層の局部摩耗を軽減できるとともに、耐摩耗性に優れた外層を有する。外層がロール軸方向で平均的に摩耗が進行することにより、ロールを再び圧延に供する場合、ロール研磨の際に局部摩耗した部分が消滅するまでの研磨が少ないロスで抑えられ、外層材の損失を小さくできる。
しかし、特許文献4の実施例2の外層は、C:3.51%、Si:1.45%、Mn:0.65%、Ni:4.51%、Cr:1.58%、Mo:0.64%、V:2.55%、Nb:0.92%を含有するが、V/Nb比が2.77と大きすぎるために、MC炭化物の分布が外層内周側に偏る傾向がある。
7スタンドの仕上げ圧延機における複数のスタンドでは、通常同一材質の複合ロールが用いられている。例えば後段スタンドでは、第五~第七スタンドで同一材質の複合ロールが用いられる。この場合、最も薄い圧延材を圧延する最終の第七スタンドでは圧延材の速度が最も早くなるが、ロール径が大きいほど低回転ですむので、第七スタンドでは初径の複合ロールが使用される。また、ロール径が大きいほど1回転あたりの圧延材を長くでき、圧延量当たりのロール回転数を小さくできるので、大径ロールの方がロール外層表面に発生する摩耗、肌荒れ、ヒートクラック等の損傷に対して有利となる。一方、圧延材の表面品質に対する影響は下流スタンドの方が大きく、第五~第七スタンドでは第七スタンドが最も大きい。従って、第七スタンドでは大径の初径ロールが使用され、第六スタンドでは改削後のロールが使用され、第五スタンドではさらに改削されて小径化したロール(廃却径に近いロール)が使用されることが多い。このように、改削により有効径が小さくなった複合ロールは第七スタンドから第六スタンドに、また第六スタンドから第五スタンドにそれぞれ移しかえられる。
最終第七スタンドの複合ロールは、温度が最も低下したために硬くなり、かつ最も長くなった圧延材と接触するので、摩耗を受けやすい。ロール摩耗が進むと、圧延材の形状が劣化するだけでなく、ロールの肌荒れが圧延材表面に転写されて圧延材の表面品質を劣化させる。従って、圧延材の形状や表面品質が熱間圧延材の最終品質となる最終第七スタンドでは、ロールの耐摩耗性や耐肌荒れに対する要求が大きい。
これに対して、第六スタンドや第五スタンドに使用する複合ロールでは、圧延材の温度が高いために外層表面にヒートクラックが発生しやすくないが、第七スタンドより圧延材の温度が高く圧延長さが短いので第七スタンドほど摩耗を受けず、圧延材の表面品質への影響は小さい。
このように第五~第七スタンドでのロール外層表面損傷に対する要因は異なるが、一本でこれらの異なる要因に全て対応できる複合ロールは今までなかった。第七スタンド及び第六スタンドに同じ外層材質の複合ロールを用い、第五スタンドに第七スタンド及び第六スタンドと異なる外層材質の複合ロールを用いることがあるが、やはり第七スタンド及び第六スタンドでは要求される特性が異なるので、同じ外層材質の複合ロールで耐摩耗性及び耐ヒートクラック性をともに満たすことはできない。
従って、有効径が大きな(初径に近い)ときには耐摩耗性が高いために最終第七スタンドに用いるのに好適であるが、改削により有効径が小さくなる(廃却径に近くなる)と耐ヒートクラック性が向上し、第六スタンド及び第五スタンドに好適になるという特性を発揮できる熱間圧延用遠心鋳造複合ロールが望まれている。
特開2004-68142号公報 特開2001-279367号公報 特開2008-50681号公報 特開2017-185548号公報
従って本発明の目的は、有効径が大きな(初径に近い)ときに耐摩耗性が高く、改削により有効径が小さくなる(廃却径に近くなる)と耐ヒートクラック性が向上する熱間圧延用遠心鋳造複合ロール、及びその製造方法を提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、ホットストリップミルに用いる熱間圧延用複合ロールの外層において、(a) 耐摩耗性に寄与するMC炭化物が主に初径から廃却径までの使用域に分布するとともに、(b) 初径から半径方向30 mmの深さまでの領域(表層部)のV当量Veq1と廃却径でのV当量Veq2とがVeq1/Veq2=1.1~5の条件を満たすように、V及びNbを含む構成元素の組成を最適化するとともに、V/Nb比を所定の範囲に限定することにより、有効径が大きな(初径に近い)ときには耐摩耗性が大きいが、改削により有効径が小さくなる(廃却径に近づく)につれて耐ヒートクラック性が向上することを発見し、本発明に想到した。
すなわち、本発明の熱間圧延用遠心鋳造複合ロールは、質量基準でC:2.6~3.6%、Si:0.1~3%、Mn:0.3~2%、Ni:2.3~5.5%、Cr:0.5~3.2%、Mo:0.3~1.6%、V:0.2~3.4%、Nb:0.4~3%、及びB:0.06%以下を含有し、0.07≦V/Nb≦2.7であり、V当量(Veq=V+0.55Nb)が2.50質量%以上であり、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有するFe基合金からなる外層に、鉄系合金からなる内層が溶着一体化しており、前記外層のV当量が、下記式:
Veq1/Veq2=1.1~5
(ただし、Veq1は初径から半径方向30 mmの深さまでの領域のV当量であり、Veq2は廃却径でのV当量である。)の条件を満たすことを特徴とする。
本発明の熱間圧延用遠心鋳造複合ロールにおいて、前記外層はさらに質量基準でW:0.01~3%、Ti:0.01~0.5%、Al:0.001~0.5%、Zr:0.01~0.5%、及びCo:0.1~5%のうちいずれか1種以上を含有するのが好ましい。
本発明の熱間圧延用遠心鋳造複合ロールにおいて、前記外層のV当量がVeq1/Veq2=1.15~3の条件を満たすのが好ましく、Veq1/Veq2=1.15~2の条件を満たすのがより好ましい。
本発明の熱間圧延用遠心鋳造複合ロールにおいて、前記外層は面積基準で0.3~5%の黒鉛粒子、及び2~20%のMC炭化物を含有するのが好ましい。
本発明の熱間圧延用遠心鋳造複合ロールの製造方法は、遠心鋳造用金型内に、質量基準でC:2.6~3.6%、Si:0.1~3%、Mn:0.3~2%、Ni:2.3~5.5%、Cr:0.5~3.2%、Mo:0.3~1.6%、V:0.2~3.4%、Nb:0.4~3%、及びB:0.06%以下を含有し、0.07≦V/Nb≦2.7であり、V当量(Veq=V+0.55Nb)が2.50質量%以上であり、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有する外層用Fe基合金溶湯を、オーステナイト析出開始温度+(30~150)℃の温度、重力倍数で60~200 Gの範囲内の遠心力、かつ0.5~3 mm/sの平均積層速度で鋳込み、前記外層を鋳造することを特徴とする。
前記外層用溶湯はさらに質量基準でW:0.01~3%、Ti:0.01~0.5%、Al:0.001~0.5%、Zr:0.01~0.5%、及びCo:0.1~5%からなる群から選ばれた少なくとも一種を含有するのが好ましい。
本発明の熱間圧延用遠心鋳造複合ロールの外層では、初径から半径方向30 mmの深さまでの領域(表層部)のVeq1と廃却径でのVeq2とがVeq1/Veq2=1.1~5の条件を満たすので、大きな有効径を有する表層部は耐摩耗性に優れ、廃却径に近い小さな有効径を有する深部は耐ヒートクラック性が向上している。そのため、本発明の熱間圧延用遠心鋳造複合ロールは、(a) 有効径が大きいときには、ホットストリップミルの仕上げ圧延機の下流側のスタンドに用いることにより高い耐摩耗性を利用でき、(b) 表面改削により有効径が小さくなったときには、上流側のスタンドに用いることにより高い耐ヒートクラック性を利用できるという利点を有する。
本発明の熱間圧延用遠心鋳造複合ロールは圧延条件の厳しいホットストリップミルのワークロールとして使用するのに好適であるが、勿論線材用熱間圧延ロール、形鋼用熱間圧延ロール等としても使用できる。
本発明の熱間圧延用遠心鋳造複合ロールを示す概略断面図である。 外層の使用域におけるMC炭化物の分布を概略的に示すグラフである。 本発明の熱間圧延用遠心鋳造複合ロールの製造に用いる鋳型の一例を示す分解断面図である。 本発明の熱間圧延用遠心鋳造複合ロールの製造に用いる鋳型の一例を示す断面図である。 実施例1~3及び比較例1~3の外層におけるVeqの分布を示すグラフである。
本発明の実施形態を以下詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変更をしても良い。特に断りがなければ、単に「%」と記載しているときは「質量%」を意味する。
[1] 熱間圧延用遠心鋳造複合ロール
図1は、遠心鋳造法により形成された外層1と、外層1に溶着一体化した内層2とからなる熱間圧延用複合ロール10を示す。内層2は、外層1に溶着した胴芯部21と、胴芯部21の両端から一体的に延出する軸部22、23とを有する。
(A) 外層
(i) 組成
外層の組成は、外層を形成するのに用いた鉄基合金溶湯の組成により表す。鉄基合金溶湯の組成は外層全体の平均組成に相当する。外層を形成するFe基合金は、基本的に「高合金グレン鋳鉄」のカテゴリーに入るものである。
(a) 必須元素
(1) C:2.6~3.6質量%
CはV、Nb、Cr及びMoと結合して硬質の炭化物を生成し、耐摩耗性の向上に寄与する。またSi及びNi等の黒鉛化促進元素により組織中に黒鉛として晶出し、もって外層に耐焼付性を付与するとともに、外層の靭性を向上させる。Cが2.6質量%未満では黒鉛の晶出が不十分であるだけでなく、硬質の炭化物の晶出量が少なすぎて外層に十分な耐摩耗性を付与することができない。
一方、Cが3.6質量%を超えると黒鉛が過剰となるとともに、その形状も紐状となり、外層の強度が低下する。また炭化物の晶出量が過多となって外層の靱性が低下し、耐クラック性が低下するため、圧延によるクラックが深くなり、ロール損失が増加する。Cの含有量の下限は好ましくは2.7質量%であり、より好ましくは2.8質量%である。Cの含有量の上限は好ましくは3.5質量%であり、より好ましくは3.4質量%である。
(2) Si:0.1~3質量%
Siは溶湯の脱酸により酸化物欠陥を減少するとともに、黒鉛の晶出を助長する作用を有し、耐焼付き性及び亀裂の進展の抑制に寄与する。Siが0.1質量%未満では溶湯の脱酸作用が不十分であり、黒鉛晶出の作用も少ない。一方、Siが3質量%を超えると合金基地が脆化し、外層の靱性は低下する。Siの含有量の下限は好ましくは0.5質量%であり、より好ましくは1質量%である。Siの含有量の上限は好ましくは2.8質量%であり、より好ましくは2.5質量%である。
(3) Mn:0.3~2質量%
Mnは溶湯の脱酸作用の他に、不純物であるSをMnSとして固定する作用を有する。Mnが0.3質量%未満ではそれらの効果は不十分である。一方、Mnが2質量%を超えてもさらなる効果は得られない。Mnの含有量の下限は好ましくは0.4質量%であり、より好ましくは0.5質量%である。Mnの含有量の上限は好ましくは1.5質量%であり、より好ましくは1質量%である。
(4) Ni:2.3~5.5質量%
Niは黒鉛を晶出させる作用があり、耐焼付き性に寄与する。Niはまた基地組織の焼入れ性を向上させる作用を有する。Niが2.3質量%未満ではその作用が十分に得られない。一方、Niが5.5質量%を超えるとオーステナイトが安定化しすぎ、ベイナイト又はマルテンサイトに変態しにくくなる。Niの含有量の下限は好ましくは2.5質量%であり、より好ましくは3質量%であり、更に好ましくは3.5質量%である。Niの含有量の上限は好ましくは5質量%であり、より好ましくは4.8質量%である。
(5) Cr:0.5~3.2質量%
Crは焼き入れ性を向上させるとともに、基地をベイナイト又はマルテンサイトにして硬さを保持し、耐摩耗性を維持するのに有効な元素である。Crが0.5質量%未満ではその添加効果は不十分である。一方、Crが3.2質量%を超えると、黒鉛の晶出を阻害するだけでなく、粗大な共晶炭化物を形成し、基地組織の靭性を低下させる。Crの含有量の下限は好ましくは0.7質量%であり、より好ましくは1質量%である。Crの含有量の上限は好ましくは2.8質量%であり、より好ましくは2.5質量%であり、更に好ましくは2.3質量%である。
(6) Mo:0.3~1.6質量%
MoはCと結合して硬質のMo炭化物を形成し、外層の硬さを増加させるとともに、基地の焼入れ性を向上させる。Moが0.3質量%未満ではそれらの効果は不十分である。一方、Moが1.6質量%を超えると、外層の靭性が劣化し、白銑化傾向が強くなるので黒鉛の晶出を阻害する。Moの含有量の下限は好ましくは0.4質量%である。Moの含有量の上限は好ましくは1.3質量%であり、より好ましくは1質量%である。
(7) V:0.2~3.4質量%
VはCと結合して硬質のMC炭化物を生成する元素である。Vが0.2質量%未満では、MC炭化物の晶出量は不十分である。一方、Vが3.4質量%を超えると、(a) 比重の軽いVC炭化物が遠心鋳造中の遠心力により外層の内側に濃化し、MC炭化物の分布が最大になる範囲が外層の初径から廃却径までの領域からずれてしまうだけでなく、(b) MC炭化物が粗大化して合金組織が粗くなり、圧延時に肌荒れしやすくなる。Vの含有量の下限は好ましくは0.5質量%であり、より好ましくは1.2質量%であり、更に好ましくは1.5質量%であり、最も好ましくは1.8質量%である。Vの含有量の上限は好ましくは3質量%であり、より好ましくは2.7質量%であり、最も好ましくは2.5質量%である。
(8) Nb:0.4~3質量%
NbはCと結合してMC炭化物を生成する。NbをVに組合せることにより、(a) MC炭化物に固溶してMC炭化物を強化し、外層の耐摩耗性を向上させるだけでなく、(a) MC炭化物の比重を増大させ、MC炭化物が外層内周側に偏析するのを防止する。Nbが0.4質量%未満ではこれらの効果は不十分である。一方、Nbが3質量%を超えると、MC炭化物の比重が大きくなりすぎ、MC炭化物の分布が外周から初径までの削除領域に多くなりすぎる。Nbの含有量の下限は好ましくは0.6質量%であり、より好ましくは0.8質量%である。Nbの含有量の上限は好ましくは2.5質量%であり、より好ましくは2質量%である。
(9) B:0.06質量%以下
Bは炭化物を微細化する作用を有する。また微量のBは黒鉛の晶出に寄与する。しかしBが0.06質量%を超えると、白銑化効果が強くなり黒鉛が晶出しにくくなる。従って、Bの含有量は0.06質量%以下である。Bの添加効果を得るために、Bの含有量の下限は好ましくは0.001質量%であり、より好ましくは0.002質量%である。Bの含有量の上限は好ましくは0.04質量%である。
(10) V/Nb
V及びNbを含有する鉄基合金を遠心鋳造してなる外層ではVC及びNbCからなるMC炭化物が晶出するが、VCは基地より小さい比重を有するので外層の内周側に偏析する傾向があり、NbCは基地より大きい比重を有するので外層の外周側に偏析する傾向がある。ところで、遠心鋳造された外層は、図2に示すように、外周側を初径Diの深さ(一般に10 mm)まで切削除去した後、初径Diから所定の深さの廃却径Dd(例えば、初径Diから50 mmの深さ)まで使用するので、初径Diから廃却径Ddまでの使用域(有効径域)にMC炭化物が主として分布するのが好ましい。このようなMC炭化物分布の例を図2に示す。MC炭化物分布Iはピークが使用域のほぼ中央に位置し、MC炭化物分布IIはピークが初径Di付近に位置し、いずれも好ましいMC炭化物分布である。これに対して、MC炭化物分布IIIはピークが内層側付近に位置するが、使用域の範囲外であるので、使用域では十分なMC炭化物が存在せず、十分な耐摩耗性を発揮できない。
有効径が大きい(初径Diに近い)ときに耐摩耗性が高く、改削により有効径が小さくなる(廃却径Ddに近くなる)と耐ヒートクラック性が向上するようになるためには、後述する通り外層におけるV当量の分布がVeq1/Veq2=1.1~5の条件を満たさなければならない。
上記条件を満たすためには、0.07≦V/Nb≦2.7の条件を満たす必要がある。V/Nbが2.7を超えると、比重の小さいMC炭化物が増えて遠心鋳造外層の内周側に多く偏析するようになり、使用域におけるMC炭化物の分布が少なくなるだけでなく、Veq1/Veq2=1.1~5の条件を満たさなくなる。一方、V/Nbが0.07未満であると、比重の大きいMC炭化物が増えて遠心鋳造外層の外周側に多く偏析しすぎる。V/Nbの下限は0.5が好ましく、1がより好ましく、1.2が最も好ましい。一方、V/Nbの上限は2.65が好ましく、2.6がより好ましい。
(11) V当量
外層に形成されるMC炭化物の量はV当量(Veq=V+0.55Nb)により表すことができる。Veqが大きいほど、MC炭化物が多く晶出される。Veqは2.50質量%以上であるのが好ましい。Veqが2.50質量%未満であると、耐摩耗性に効果のあるMC炭化物が少なすぎる。一方、Veqが多くなりすぎるとMC炭化物以外のセメンタイトや黒鉛が少なくなりすぎる。必要量のセメンタイト及び黒鉛を確保するためにはMC炭化物に応じたCを添加すれば良いが、C及びVeqを多く添加しすぎると鉄基地より早く凝固するMC炭化物の量が多くなりすぎる。凝固時に液相中にMC炭化物が多いと、MC炭化物の偏析が起こりやすい。このため、Veqは5質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましく、3.5質量%以下が最も好ましい。また、Veqの下限は2.55質量%が好ましく、2.60質量%がより好ましく、2.65質量%が最も好ましい。
(12) V当量の分布
外層の使用域におけるMC炭化物の分布は、初径Diから半径方向30 mmの深さまでの領域のVeq1と廃却径DdでのVeq2との比Veq1/Veq2により評価することができる。ここで、「初径から半径方向30 mmの深さまでの領域」は、図2に示すように、初径Diと初径Diから半径方向30 mmの深さでの直径D30との間の領域を意味する。Veq1は、初径位置、初径から半径方向内部10 mmの位置、初径から半径方向内部20 mmの位置、及び初径から半径方向内部30 mmの位置で測定したV当量Veqの平均値である。初径Diから直径D30までの領域を「表層部」と呼び、直径D30を超え廃却径Ddまでの領域を「深部」と呼ぶ。
本発明の遠心鋳造外層は、Veq1/Veq2=1.1~5の条件を満たす必要がある。Veq1/Veq2=1.1~5の条件を満たすことにより、外層の表層部は、MC炭化物により十分な耐摩耗性を発揮し、廃却径Ddに近い小さな有効径を有する深部は耐ヒートクラック性が良好になる。そのため、(a) ホットストリップミルの仕上げ圧延機の下流側のスタンド(例えば、第七スタンド)に使用される大径ロールのときには外層は十分な耐摩耗性を発揮し、(b) 改削によりロール径が徐々に小さくなるにつれて、上流側のスタンドに適する耐ヒートクラック性を発揮することができる。Veq1/Veq2の下限は1.15が好ましい。また、Veq1/Veq2の上限は3が好ましく、2がより好ましい。
(b) 任意組成
本発明の熱間圧延用遠心鋳造複合ロールの外層は、上記必須元素の他に下記元素を含有しても良い。
(1) W:0.01~3質量%
WはCと結合して硬質のM2Cの炭化物を生成し、外層の耐摩耗性向上に寄与する。またMC炭化物にも固溶してその比重を増加させ、偏析を軽減させる作用を有する。しかし、Wが3質量%を超えると、溶湯の比重を重くするため、炭化物偏析が発生しやすくなる。従って、Wを添加する場合、その好ましい含有量は3質量%以下である。Wの含有量の下限はより好ましくは0.02質量%である。Wの含有量の上限はより好ましくは2.9質量%である。
(2) Zr:0.01~0.5質量%
ZrはCと結合してMC炭化物を生成し、外層の耐摩耗性を向上させる。また溶湯中で生成したZr酸化物は結晶核として作用するために、凝固組織が微細になる。またMC炭化物の比重を増加させ偏析を防止する。しかし、Zrが0.5質量%を超えると、介在物を生成し好ましくない。従って、Zrを添加する場合、その含有量は0.5質量%以下が好ましい。一方、Zrが0.01質量%未満では、その添加効果は不十分である。Zrの含有量の下限はより好ましくは0.02質量%である。Zrの含有量の上限はより好ましくは0.4質量%である。
(3) Co:0.1~5質量%
Coは基地組織の強化に有効な元素である。また、Coは黒鉛を晶出し易くする。しかし、Coが5質量%を超えると外層の靱性は低下する。従って、Coを添加する場合、その含有量は5質量%以下が好ましい。一方、Coが0.1質量%未満では、その添加効果は不十分である。Coの含有量の下限はより好ましくは0.2質量%である。Coの含有量の上限はより好ましくは4.9質量%である。
(4) Ti:0.01~0.5質量%
Tiは黒鉛化阻害元素であるN及びOと結合し、酸化物又は窒化物を形成する。酸化物又は窒化物は溶湯中に懸濁されて核となり、MC炭化物を微細化及び均質化する。しかし、Tiが0.5質量%を超えると、溶湯の粘性が増加し、鋳造欠陥が発生しやすくなる。従って、Tiを添加する場合、その好ましい含有量は0.5質量%以下である。一方、Tiが0.01質量%未満ではその添加効果は不十分である。Tiの含有量の下限はより好ましくは0.02質量%である。Tiの含有量の上限はより好ましくは0.4質量%である。
(5) Al:0.001~0.5質量%
Alは黒鉛化阻害元素であるN及びOと結合して、酸化物又は窒化物を形成し、それが溶湯中に懸濁されて核となり、MC炭化物を微細均一に晶出させる。しかし、Alが0.5質量%を超えると、外層が脆くなり、機械的性質の劣化を招く。従って、Alを添加する場合、その好ましい含有量は0.5質量%以下である。一方、Alの含有量が0.001質量%未満では、その添加効果は不十分である。Alの含有量の下限はより好ましくは0.01質量%、更に好ましくは0.02質量%である。Alの含有量の上限はより好ましくは0.4質量%である。
(c) 不純物 外層組成の残部はFe及び不純物からなる。P、S、Cu等は不純物元素で微量の混入が避けられないが、黒鉛形成に影響することが知られている。特にP及びSは微量でも黒鉛に影響することが知られている。本発明の遠心鋳造複合ロールにおいても好ましい面積率の黒鉛粒子を得るために、不純物元素の含有量を制御する必要がある。また、P及びSは機械的性質の劣化を招くので、その含有量は所定のレベルに抑制しなければならない。Cuも黒鉛に影響するが、微量な範囲での影響度は小さい。その他の不可避的不純物としてCa、Ba、Mg、Sb、Te、Ce等の元素が挙げられる。具体的には、P及びSの含有量はそれぞれ0.1質量%以下、Cuは0.5質量%以下、Ca及びBaはそれぞれ0.05質量%以下、Mgは0.07質量%以下、Sbは0.05質量%以下、Te及びCeはそれぞれ0.03質量%以下の範囲内であれば、本発明の効果をほとんど損なわないため許容できる。
(ii) 組織
本発明の熱間圧延用遠心鋳造複合ロールの外層の組織は、基地、黒鉛、MC炭化物及びセメンタイトからなる。本発明の熱間圧延用遠心鋳造複合ロールの外層の組織は、面積基準で0.3~5%の黒鉛粒子、及び2~20%のMC炭化物を含有するのが好ましい。外層の基地組織は実質的にマルテンサイト、ベイナイト又はパーライトからなるのが好ましい。外層の基地組織はさらに15~45面積%のセメンタイト相を有するのが好ましい。
(a) 黒鉛粒子の面積率:0.3~5%
外層組織に晶出する黒鉛粒子の面積率は0.3~5%である。黒鉛粒子の面積率が0.3%未満では、外層の耐焼付性向上の効果が不十分である。一方、黒鉛粒子が5面積%を超えると、外層の機械的性質は低下する。黒鉛粒子の面積の下限は0.5%が好ましく、1%がより好ましい。一方、黒鉛粒子の面積の上限は、4%が好ましく、3%がより好ましい。
(b) MC炭化物の面積率:2~20%
外層組織に晶出するMC炭化物の面積率が2%未満であると、外層は十分な耐摩耗性を有さないことがある。また黒鉛との共存関係によりMC炭化物の面積率を20%超にするのは困難である。MC炭化物の面積率は、2.2%以上がより好ましく、2.5%以上が更に好ましい。また黒鉛粒子の面積率を0.3~5%とするために、MC炭化物は17%以下がより好ましく、15%以下がさらに好ましく、10%以下が最も好ましい。
(B) 内層
内層を形成する鉄系合金としては、強靭なダクタイル鋳鉄であるのが好ましい。ダクタイル鋳鉄の組成は、質量基準でC:2.3~3.6%、Si:1.5~3.5%、Mn:0.2~2%、Ni:0.3~2%、Cr:0.05~1%、Mo:0.05~1%、Mg:0.01~0.08%、及びV:0.05~1%を含有し、残部Fe及び不純物からなるのが好ましい。上記必須元素の他に、Nb:0.7%以下、及びW:0.7%以下を含有しても良い。ダクタイル鋳鉄は、鉄基地がフェライト及びパーライトを主体とし、その他は黒鉛及び微量のセメンタイトを主に含む。外層と内層との間に、成分混入の抑制や緩衝等の目的で中間層を介在させても良い。
[2] 熱間圧延用遠心鋳造複合ロールの製造方法
本発明の熱間圧延用遠心鋳造複合ロールの製造方法は、遠心鋳造用金型内に、質量基準でC:2.6~3.6%、Si:0.1~3%、Mn:0.3~2%、Ni:2.3~5.5%、Cr:0.5~3.2%、Mo:0.3~1.6%、V:0.2~3.4%、Nb:0.4~3%、及びB:0.06%以下を含有し、0.07≦V/Nb≦2.7であり、V当量(Veq=V+0.55Nb)が2.50質量%以上であり、残部がFe及び不純物からなるFe基合金からなる化学組成を有する外層用溶湯を、オーステナイト析出開始温度+(30~150)℃の温度、重力倍数で60~200 Gの範囲内の遠心力、かつ0.5~3 mm/sの平均積層速度で鋳込み、前記外層を鋳造することを特徴とする。平均積層速度の下限は0.6 mm/sが好ましく、上限は2.5 mm/sが好ましい。ここで、外層の「平均積層速度」は、鋳造により積層される外層の厚さを鋳込み時間で割った値、すなわち単位時間当たりの外層の厚さ増加速度である。
図3(a) 及び図3(b) は、遠心鋳造用円筒状鋳型30で外層1を遠心鋳造した後に内層2を鋳造するのに用いる静置鋳造用鋳型の一例を示す。静置鋳造用鋳型100は、内面に外層1を有する円筒状鋳型30と、その上下端に設けられた上型40及び下型50とからなる。円筒状鋳型30は鋳型本体31と、その内側に形成された砂型32と、鋳型本体31及び砂型32の下端部に形成された砂型33とからなる。上型40は鋳型本体41と、その内側に形成された砂型42とからなる。下型50は鋳型本体51と、その内側に形成された砂型52とからなる。下型50には内層用溶湯を保持するための底板53が設けられている。円筒状鋳型30内の外層1の内面は内層2の胴芯部21を形成するためのキャビティ60aを有し、上型40は内層2の軸部23を形成するためのキャビティ60bを有し、下型50は内層2の軸部22を形成するためのキャビティ60cを有する。円筒状鋳型30を用いる遠心鋳造法は水平型、傾斜型又は垂直型のいずれでも良い。
軸部22形成用の下型50の上端部54上に、外層1を遠心鋳造した円筒状鋳型30を起立させて設置し、円筒状鋳型30の上に軸部23形成用の上型40を設置すると、静置鋳造用鋳型100が構成される。静置鋳造用鋳型100において、外層1内のキャビティ60aは上型40のキャビティ60b及び下型50のキャビティ60cと連通し、内層1全体を一体的に形成するキャビティ60が構成される。
遠心鋳造法により形成した外層1の凝固後に、内層2用のダクタイル鋳鉄溶湯が上型40の上方開口部43からキャビティ60内に注入されるに従い、キャビティ60内の溶湯の湯面は下型50から上型40まで次第に上昇し、軸部22、胴芯部21及び軸部23からなる内層2が一体的に鋳造される。
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例1~3、及び比較例1~3
図3(a) に示す構造の円筒状鋳型30(内径800 mm、及び長さ2500 mm)を水平型の遠心鋳造機に設置し、表1に示す組成の各溶湯を、表2に示す温度、重力倍数及び平均積層速度で鋳込み、外層1を遠心鋳造した。外層1が凝固した後、内面に外層1(厚さ:90 mm)が形成された円筒状鋳型30を起立させ、軸部22形成用の中空状下型50(内径600 mm、及び長さ1500 mm)の上に円筒状鋳型30を立設し、円筒状鋳型30の上に軸部23形成用の中空状上型40(内径600 mm、及び長さ2000 mm)を立設し、図3(b) に示す静置鋳造用鋳型100を構成した。
静置鋳造用鋳型100のキャビティ60に、質量基準でC:3.0%、Si:2.6%、Mn:0.3%、Ni:1.4%、Cr:0.1%、Mo:0.2%、Mg:0.05%、P:0.03%、及びS:0.03%を含有し、残部がFe及び不純物である化学組成を有するダクタイル鋳鉄溶湯を上方開口部43から注湯し、途中でSiを含む黒鉛化接種材を接種して、外層1の内面に内層2が一体的に溶着した複合ロールを製造した。
Figure 0007302232000001
注:(1) 外層の平均組成に相当する。
Figure 0007302232000002
注:(1) Veq=V+0.55Nb(単位:質量%)。
(2) 単位:質量%。
Figure 0007302232000003
注:(1) γはオーステナイト析出開始温度。
得られた各遠心鋳造複合ロールについて、外層におけるV当量の分布を以下の方法により測定した。まず、各外層の長手方向端部において、初径Diの位置(黒皮から約10 mmの深さの位置)、及び初径Diからそれぞれ10 mm、20 mm、30 mm、40 mm及び50 mmの深さの位置で、厚さ5 mmの分析用試験片を採取し、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析によりV及びNbの含有量を測定し、Veq=V+0.55Nbの式により、初径Di、及び初径Diからそれぞれ10 mm、20 mm、30 mm、40 mm及び50 mmの深さでのV当量(Veq0、Veq10、Veq20、Veq30、Veq40、Veq50)を求めた。50 mmの深さの位置は廃却径Ddの位置に相当し、Veq50=Veq2である。Veq0、Veq10、Veq20及びVeq30を平均し、Veq1とし、Veq1/Veq2の比を算出した。各外層について、Veq1/Veq2の比を表3に示し、Veqの分布を図4に示す。
Figure 0007302232000004
実施例1~3の外層ではVeq1/Veq2は1.1~5の範囲内にあったが、比較例1~3の外層ではVeq1/Veq2は1.1~5の範囲内になかった。そのため、図4から明らかなように、実施例1~3の外層ではVeq1の分布は使用域内にピークがあったが、比較例1~3の外層ではVeq1の分布は使用域全体でほぼ平坦であった。これから、実施例1~3の複合ロールは初径に近いときには耐摩耗性が高く、かつ改削により廃却径に近くなると耐ヒートクラック性が向上するが、比較例1~3のロールにはそのような機能はないことが分かる。
実施例1~3の外層の長手方向端部において、初径Diの位置(黒皮から約10 mmの深さの位置)、及び初径Diからそれぞれ10 mm、20 mm、30 mm、40 mm及び50 mmの深さの位置での外層組織を顕微鏡観察した結果、面積基準で0.3~5%の黒鉛粒子、及び2~20%のMC炭化物を有することが確認された。
1・・・外層
2・・・内層
10・・・熱間圧延用遠心鋳造複合ロール
21・・・胴芯部
22,23・・・軸部
30・・・遠心鋳造用円筒状鋳型
31,41,51・・・鋳型本体
32,33,42,52・・・砂型
40・・・静置鋳造用上型
50・・・静置鋳造用下型
60,60a,60b,60c・・・キャビティ
100・・・静置鋳造用鋳型

Claims (3)

  1. 質量基準でC:2.6~3.6%、Si:0.1~3%、Mn:0.3~2%、Ni:2.3~5.5%、Cr:0.5~3.2%、Mo:0.3~1.6%、V:0.2~3.4%、Nb:0.4~3%、及びB: 0.06%以下を含有し、0.07≦V/Nb≦2.7であり、V当量(Veq=V+0.55Nb)が2.50質量%以上であり、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有するFe基合金からなる外層に、鉄系合金からなる内層が溶着一体化した熱間圧延用遠心鋳造複合ロールにおいて、前記外層のV当量が、下記式:
    Veq1/Veq2=1.1~2
    (ただし、Veq1は初径から半径方向30 mmの深さまでの領域のV当量であり、Veq2は廃却径でのV当量である。)の条件を満たすことを特徴とする熱間圧延用遠心鋳造複合ロール。
  2. 請求項1に記載の熱間圧延用遠心鋳造複合ロールにおいて、前記外層が面積基準で0.3~5%の黒鉛粒子、及び2~20%のMC炭化物を含有することを特徴とする熱間圧延用遠心鋳造複合ロール。
  3. 請求項1及び2に記載の熱間圧延用遠心鋳造複合ロールを製造する方法であって、遠心鋳造用金型内に、質量基準でC:2.6~3.6%、Si:0.1~3%、Mn:0.3~2%、Ni:2.3~5.5%、Cr:0.5~3.2%、Mo:0.3~1.6%、V:0.2~3.4%、Nb:0.4~3%、及びB:0.06%以下を含有し、0.07≦V/Nb≦2.7であり、V当量(Veq=V+0.55Nb)が2.50質量%以上であり、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有する外層用Fe基合金溶湯を、オーステナイト析出開始温度+(30~150)℃の温度、重力倍数で60~200 Gの範囲内の遠心力、かつ0.5~3 mm/sの平均積層速度で鋳込み、前記外層を鋳造することを特徴とする方法。
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