JP7301248B1 - 床桁ユニットおよび仮桟橋の構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】桁高さの低い上部工を簡易に施工できる、床桁ユニットおよび仮桟橋の構造を提供すること。【解決手段】複数の支持杭80の頭部間に掛け渡した受桁81,81間に床桁ユニット10を架設する仮桟橋の構造であって、床桁ユニット10は複数の形鋼20を横列に配置して溶接して一体化したボックス構造の床桁本体30と、床桁本体30の両側部に形成した単数または複数の嵌込式継手とを具備し、隣り合う受桁81,81の間に複数の床桁ユニット10を直接載置して上部工である鋼製床版を形成する。【選択図】図1

Description

本発明は複数の鋼材を使用する仮桟橋に関し、特に使用する鋼材の数量を削減した床桁ユニットおよび仮桟橋の構造に関する。
図13を参照して説明すると、従来の仮桟橋の構築方法は、間隔を隔てて複数の支持杭80を打設した後に(支持杭の打設工)、各支持杭80の頭部間に受桁81を載置し(受桁の載置工)、隣り合う受桁81の上面間に複数の主桁82を掛け渡し(主桁の架設工)、最後に隣り合う主桁82の上面間に複数の覆工板83を敷設(覆工板の敷設工)して施工している(特許文献1)。
一般的に主桁82の高さは覆工板83の高さの数倍の寸法を有していて、主桁82の架設長に応じて高くなる。
主桁82の架設工において、隣り合う主桁82の間に対傾構と呼ばれる架構材88を接合して上部工の安定性を高めている(特許文献2)。
図14を参照して説明すると、路面を形成する覆工板83は、5本程度のH形鋼84を並列に配置し、隣り合うフランジ同士を溶接して覆工板本体85を製作すると共に、覆工板本体85の側面に帯状の妻板86,87を溶接して側面の開口を閉鎖した構造になっている(特許文献3)。
一般的な覆工板83は、高さ約200mm、縦横1m×2mまたは1m×3mの長方形を呈している。
特開2010-59743号公報(図1,2) 特開2017-150289号公報(図2) 特開2008-169620号公報(図14)
既述した仮桟橋の構築技術にあってはつぎの課題を内包している。
<1>仮桟橋の上部工は、複数の主桁82、複数の対傾構および複数の覆工板83といった多くの仮設鋼材で構成するため、資材コストが高くつく。
<2>上部工を構築するには、主桁82の架設工、対傾構の組付け工および覆工板83の敷設工が必要であり、施工に多くの時間と労力を要する。
<3>上部工の解体時にも組立時と同数の作業工程を要して施工性が悪い。
<4>受桁81に搭載した上部工は、主桁82に覆工板83を載せた階層構造となる。
主桁82の高さは強度に大きく影響するため主桁82の全長に比例して高寸法となる。
そのため、主桁82の高さに覆工板83の高さを加えた上部工の桁高hは、主桁82の全長に比例して大きくなる。
上部工の桁高hは高くなるほど、横荷重(水平荷重)の影響を受け易くなる問題にくわえ、上部工の乗り込み部の盛土量が増え、かつ、高さが増すため、重機類の搬出入の際に腹擦りを防止するために乗り込み部のスロープ長を長く確保しなければならない、といった問題や、主桁82の仮置き時に転倒が発生し易くなるといった多くの問題を抱えている。
<5>隣り合う主桁の間に対傾構等の架構材88を組み付けるには、作業足場を設置する必要があるだけでなく、架構材88の組み付けには空中作業を伴うため危険度の高い作業となる。
さらに従来の覆工板にはつぎの課題を内包している。
<1>覆工板には安全柵を設置する構造要素がないため、橋の両端に配設した主桁の上面に設けた溝形鋼製の地覆を利用して安全柵の支柱を立設していて、安全柵の設置に手数がかかる。
<2>仮桟橋の路面の下方にボックスカルバート等の大型管渠を敷設する際には、一部の覆工板を取り外して、吊込用の開口空間を開設する場合がある。
吊込用の開口寸法は覆工板の長辺の長さ(最大3m~4m)の制約を受けるため、管渠の幅寸法が開口幅(覆工板の長辺の長さ)を超えた寸法であると管渠の吊り込みができない。
本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的は、以上の課題を解決できる、床桁ユニットおよび仮桟橋の構造を提供することにある。
本発明は、間隔を隔てて立設した複数の支持杭と該支持杭の頭部間に掛け渡した受桁を具備し、前記受桁に橋軸方向に向けて直接載置して並設し、主桁機能と覆工板機能とを少なくとも併せ持つ仮桟橋の床桁ユニットであって、断面H形を呈する複数の形鋼を横列に配置し、隣り合う形鋼のフランジの接合部を溶接してボックス構造とした床桁本体と、前記床桁本体のボックス構造の内部に形鋼のフランジとウェブで囲繞して形成した内部空間と、前記床桁本体の両側部に断面H形を呈する形鋼のフランジとウェブで囲繞して形成した開放空間からなる一対の側溝と、前記一対の側溝に形成した単数または複数の嵌込式継手とを具備し、前記嵌込式継手が床桁本体の少なくとも何れか一方の側溝から桁本体の側方へ向けて突設した突起体と、前記床桁本体の少なくとも何れか他方の側溝の開放空間の一部に形成した受口とからなり、隣り合わせて前記床桁本体を並設したときに前記突起体と受口とが互いに嵌合可能である
本発明の他の形態において、前記床桁本体が2本または3本の形鋼を並設して構成する。
本発明の他の形態において、前記床桁本体は高さが400mm、橋軸横断方向に向けた床桁本体の横幅が800~1200mm、橋軸方向に向けた床桁本体の全長が6~8mである
本発明の他の形態において、前記受桁に対して係脱可能な複数のクランプ装置を前記床桁本体の底面の周縁部に追加して設置する。
本発明の他の形態において、前記嵌込式継手の突起体と受口は、隣り合わせて床桁本体を並設したときに前記突起体と受口とが互いに嵌合可能な位置に形成してある。
本発明の他の形態において、前記突起体の先端面を下向きに傾斜して形成してもよい。
本発明は、間隔を隔てて立設した複数の支持杭と、該支持杭の頭部間に掛け渡した受桁と、隣り合う受桁の間に掛け渡した鋼製床版とを具備する仮桟橋の構造であって、前記鋼製床版が既述した何れかの床桁ユニットの集合体からなり、前記隣り合う受桁の間に前記複数の床桁ユニットを橋軸方向に向けて直接載置する。
本発明の他の形態において、嵌込式継手を介して隣り合う床桁ユニットを着脱可能に一体化して鋼製床版を構成してもよいし、間隔を隔てて床桁ユニットを配置し、前記床桁ユニットの間に形成した開口部を覆工網で封鎖して鋼製床版を構成してもよい。
本発明の他の形態において、前記鋼製床版の最側方に位置する床桁ユニットの側面に地覆を取り付け、前記地覆に安全柵用の支柱を立設してもよい。

本発明は少なくともつぎのひとつの効果を奏する。
<1>断面H形を呈する形鋼を溶接するだけで高剛性の床桁ユニットを製作できると共に、これら複数の床桁ユニットを受桁間に並べて上部工となる鋼製床版を簡易に形成することができる。
<2>ボックス構造を呈する高剛性の床桁ユニットを、従来の仮桟橋の構成部材であった主桁、対傾構および覆工板の代替部材として活用できる。
そのため、仮桟橋で使用する鋼材量を大幅に削減できて、コストの大幅削減が可能となる。
<3>従来の上部工で個別に行っていた主桁の架設工、対傾構の組付け工および覆工板の敷設工といった複数の作業工程を、鋼製床版を構築するための床桁ユニットの架設工で代用できるので、大幅な工期の短縮と省力化を図って施工性を改善することができる。
<4>上部工である鋼製床版が複数の床桁ユニットによる単層構造となるため、従来と比べて上部工の桁高を低く抑えることができる。
そのため、鋼製床版が横荷重の影響を受け難くなって上部工の安定性がよくなるうえに、重機類の搬出入路となる乗り込み部のスロープ長を短くでき、さらに床桁ユニットの仮置き時に転倒が発生し難くなる。
<5>作業足場を使用せずに床桁ユニットの架設工を行えるだけでなく、作業員による危険な空中作業を回避して安全な環境下で上部工の施工を行える。
<6>鋼製床版を兼ねた複数の床桁ユニットは、嵌込式継手を介して互いに着脱可能な構造になっている。
そのため、細幅の床桁ユニットの敷設枚数を適宜選択することで、鋼製床版の横幅(橋軸横断方向の幅寸法)を現場の要求寸法に応じて調整できるので、覆工板を用いた従来工と比べて現場における寸法調整の対応性が格段に高くなる。
<7>嵌込式継手を構成する突起体の先端面を下向きに傾斜して形成すると、既設の床桁ユニットの隣に新たな床桁ユニットを吊り込むだけの簡単な作業で以て、嵌込式継手の嵌め込み作業と床桁ユニットの敷設作業を同時に行うことができる。
<8>従来の仮桟橋は床版の下方に管渠を吊り降ろす際に、床版に開設可能な開口寸法が覆工板の寸法的な制約を受けることから、床版に覆工板の全長を超える大きさの開口を開設することができなかった。
これに対して本発明では、管渠の吊り込みの障害となる主桁が存在しないうえに、任意の位置の床桁ユニットの取り外しが可能であるため、鋼製床版に任意の大きさの開口を開設することができる。
したがって、従来では困難であった大型の管渠の吊り込みが可能となる。
<9>床桁ユニットの側面に地覆を取り付けできるので、安全柵の設置が簡単に行える。
<10>従来と比べて上部工を大幅に簡略化できるので、上部工の構成資材の搬入量および搬出量を大幅に削減でき、さらに現場における仮置き場や作業ヤードの縮小が可能である。
<11>床桁ユニットの全体形状が単純なため、製作がし易い上に床桁ユニットの保管時の安定性が向上する。
本発明に係る床桁ユニットを用いた仮桟橋の斜視図 一部を省略した床桁ユニットの斜視図 床桁ユニットの説明図で、(A)は2本の形鋼を並設した床桁ユニットの断面図、(B)は3本の形鋼を並設した床桁ユニットの断面図 中間部を省略した床桁ユニットの底面図 クランプ装置の説明図で、(A)はクランプ装置の分解組立図、(B)はクランプ装置を介した床桁ユニットと受桁の固定部の断面図 連結ボルトを用いた床桁ユニットと受桁の固定部の断面図 支持杭の立設工と受桁の設置工の説明図し本発明の説明図で、右方側から見た床桁ユニットの斜視図 床桁ユニットの並列方法の説明図で、(A)は床桁ユニットの単体を架設した説明図、(B)は既設の床桁ユニットの隣に別途の床桁ユニットを並列に配置する説明図、(C)は既設の隣り合う床桁ユニットを嵌合させて並列に並設した説明図 鋼製床版の平面図 床桁ユニットの側面に安全柵を設けた仮桟橋の部分断面図底面側から見た床桁ユニットの斜視図 一部の床桁ユニットを撤去した鋼製床版の平面図 間隔を隔てて床桁ユニットを配置した鋼製床版の断面図 従来の仮桟橋の施工方法の説明図で、(A)は主桁と覆工板の架設の説明図、(B)は主桁と覆工板の介装構造の説明図 従来の覆工板の説明図で、(A)は覆工板の斜視図、(B)は覆工板の断面図
以下に図面を参照しながら本発明について詳細に説明する。
<1>床桁ユニットの概要
図1を参照して説明する。本発明に係る床桁ユニット10は鋼製床版60の構成材である。
床桁ユニット10は、従来の上部工の構成材である主桁、対傾構等の架構材および覆工板の三部材の機能を併せ持つ複合鋼材であり、複数の支持杭80の頭部間に掛け渡した受桁81,81の上面間に載置して使用する。
一対の受桁81,81の上方空間を複数の床桁ユニット10で閉鎖することで、一対の受桁81,81の間に鋼製床版60を構築する。
図2~4を参照しながら床桁ユニット10について詳しく説明する。
床桁ユニット10は、2~3本の形鋼20を同一面上で横列に配置して一体化した細帯状の床桁本体30と、床桁本体30の内部に長手方向に沿って連続して画成した方形の内部空間31と、床桁本体30の左右の側部に形成した開放構造の一対の側溝32と、一対の側溝32を利用して形成した単数または複数の嵌込式継手33と、床桁本体30の底面の周縁部に設置し、受桁81に対して係脱可能な複数のクランプ装置40とを少なくとも具備する。
<2>床桁本体
床桁本体30は、断面H形を呈する複数の形鋼20を横方向に並べ、その接合部を溶接して固定した鋼材である。
本例では図3(A)に示すように2本の形鋼20を横列配置して溶接した形態について説明するが、図3(B)に示すように3本の形鋼20を横列配置して溶接した形態でもよい。
床桁本体30は所定の高さHと横幅Bを有し、床桁本体30の横幅Bが高さHを卓越する寸法関係にある。
床桁本体30をこのような寸法関係にするのは、輸送時や施工時等において床桁ユニット10の転倒をし難くして床桁ユニット10の安定性を高めるためである。
<2.1>形鋼
図2を参照して説明すると、形鋼20は第1フランジ21と、第2フランジ22と、両フランジ21,21の間を接続するウェブ23とを具備した公知のH形鋼である。
一対の形鋼20,20は同一形状、同一寸法の組み合わせであり、第1フランジ21と第2フランジ22がそれぞれ同一平面上に位置し、かつ一対のウェブ23が相対向して位置する。
<2.2>床桁本体の断面寸法と全長
床桁本体30の断面寸法(高さと横幅)と全長は、載荷重量等を考慮して適宜選択する。
床桁本体30の全長Lは図1に示した受桁81,81間の橋軸方向Xに向けて架設可能な寸法を有し、従来の覆工板の全長より大きい寸法関係にある。
床桁本体30の横幅Bは従来の覆工板の横幅より小さい寸法関係にある。
形鋼20に高さ×横幅が400mm×400mmのSM490材またはSM490YA材を使用した場合における床桁本体30形鋼20の断面寸法(高さと横幅)と全長について例示すると、床桁本体30の高さHは400mm、床桁本体30の横幅Bは800mm(図3)、床桁本体30の全長Lは6~8mとなる(図1)。
上記した寸法条件の場合における載荷可能な作業重量は50~120tとなる。
<2.3>形鋼同士の接合手段
一対の形鋼20,20の接合手段としては、隣り合う第1フランジ21,21の間と第2フランジ22,22の間に横架可能な添接板と、多数の連結ボルトを使用して接合する方法が考えられるが、添接板と多数の連結ボルトの組み合わせによる接合手段は鋼材の使用量が増えて重量増加とコスト高の問題が生じる。
そこで本発明では、上記した問題を回避するため、一対の形鋼20,20同士の接合手段として溶接を採用することとし、第1フランジ21,21の間の接合部34と第2フランジ22,22の間の接合部34をそれぞれ溶接して一体化する。
接合部34は各フランジ21,22の全長に亘って連続して形成することが望ましいが、間欠的に形成してもよい。
一対の形鋼20,20の接合手段に溶接手段を採用することで、添接板や多数の連結ボルトが不要となるので、重量増加とコスト高の問題を回避できる。
<2.4>内部空間と側溝
床桁本体30の中心部には第1および第2フランジ21,22とウェブ23で囲繞した断面形状が矩形を呈する内部空間31を形成し、この内部空間31の外側に側溝32を形成する。
一対の形鋼20,20の水平に張り出た第1、第2フランジ21,22を活用することで、内部空間31に影響を与えずに開放構造の側溝32を形成することが可能となる。
<2.5>床桁本体の断面形状
床桁本体30の中心部に内部空間31を形成することで、床桁本体30の中心部がボックス構造となる。
床桁本体30の断面形状を、ボックス構造を含む「II形」に形成することで、床桁本体30の断面性能(曲げや座屈等)が格段に高まり、床桁ユニット10の長尺化を可能とする。
すなわち、一対の形鋼20,20を溶接して接合した床桁本体30は、中心部がボックス構造となって曲げ強度が高くなるので、形鋼20を一本配置した形態と比べて、床桁本体30(床桁ユニット10)の全長を長く設定することができる。
<2.6>リブ板
必要に応じて、各形鋼20の側溝32内に補強用のリブ板35を設ける。
リブ板35は鋼板あり、溶接等で固着する。
本例では、各形鋼20のウェブ23の両側にリブ板35を設けた形態について説明するが、床桁本体30の最外側の側溝32のみにリブ板35を設けてもよい。
<3>嵌込式継手
図2を参照して説明する。床桁ユニット10は嵌込式継手33を具備する。
嵌込式継手33は、床桁ユニット10を並設する際に、隣り合う床桁本体30の間を係脱可能に連結する継手であり、床桁本体30の何れか一方(本例では右方)の側面に突設した突起体33aと、床桁本体30の何れか他方(本例では左方)の側面に形成した受口33bとからなる。
突起体33aと受口33bは互いに嵌合可能な形状であればよい。
<3.1>突起体
床桁本体30の何れか一方の側面には、間隔を隔てて複数の突起体33aを水平(真横)に向けて突設している。
突起体33aは断面形状が角形を呈する鋼管または鋼材を使用できる。
本例では側溝32内に鋼管製の突起体33aを収容し、ボルト止めまたは溶接により固着した形態を示す。
突起体33aはその最上部に水平当接面33cを有している。
突起体33aの設置数は単数でもよいが、間隔を隔てて複数箇所に設けることが望ましい。
突起体33aは均一断面を有する突起物でもよいが、図2に拡大して示すようにオーバーハング(下向き)となるように突起体33aの先端面33dを斜めに形成すると、突起体33aに対して受口33bを上下方向に移動することで嵌込式継手33の着脱を簡単に行うことができる。
<3.2>受口
床桁本体30の他方の側面には、突起体33aを収容可能な受口33bを形成している。
本例では床桁本体30の側面に形成した側溝32の一部空間を受口33bとして活用した形態をしめしている。
尚、本例では床桁本体30の左右の各側面にそれぞれ同種の突起体33aと受口33bとを設けた形態について説明するが、床桁本体30の左右の各側面にそれぞれ異種の突起体33aと受口33bとを組合せ、床桁本体30の左右の両側面に突起体33aまたは受口33bを設けてもよい。
<4>クランプ装置
図4,5を参照して説明する。床桁本体30はその底面の両端部に複数のクランプ装置40を具備する。
クランプ装置40は床桁本体30と受桁81の上位のフランジ81aとの間を固定するため装置であり、公知のスライド式クランプ装置や回転式クランプ装置等を適用できる。
公知のスライド式または回転式のクランプ装置40は、作業者が床桁ユニット10に乗ったままの状態で、床桁本体30に開設した吊り孔を兼ねた操作孔に電動インパクトレンチ等の操作工具を挿通して受桁81に対するクランプ操作およびクランプ解除操作が可能である。
図5に例示したスライド式クランプ装置40について説明する。
このクランプ装置40は特許第5629396号に開示された装置であり、水平ガイド孔を有するブラケット41と、水平の支軸を介してブラケット41の水平ガイド孔内に摺動自在で、かつ回動可能に軸支したクランプ42と、ブラケット41とクランプ42の間に張設した弾性部材43と、床桁本体30およびブラケットを貫通してナット45と螺合する操作ボルト44と、クランプ42内に回転不能で、かつ摺動自在に係合したナット45とを具備する。
クランプ42はブラケット41に対して回動可能であり、かつ水平にスライド可能である。
操作ボルト44の押し込み操作と水平軸を中心とした回転操作に伴い、クランプ42の昇降と水平移動を行うことで、床桁本体30を受桁81に固定することができる。
[仮桟橋の構築方法]
床桁ユニット10を用いた仮桟橋の構築方法について説明する。
<1>下部工
図7を参照して説明する。間隔を隔てて複数の支持杭80を打設した後、各支持杭80の頭部間に橋軸横断方向Yへ向けて受桁81を載置して掛け渡すこと従来工法と同様である。
上部工を構成する床桁ユニット10の橋軸方向Xの全長を、従来の覆工板の全長と比べて数倍以上の長さを有するので、支持杭80の打設間隔を拡げて支持杭80の総数を大幅に減らすことができる。
<2>上部工
図1に示すように、隣り合う受桁81,81の上面間に橋軸方向Xへ向けて複数の床桁ユニット10を搭載して上部工を施工する。
以下に図7を参照しながら上部工の施工方法について詳しく説明する。
<2.1>床桁ユニットの架設(図8(A))
クレーン等で水平にして吊り上げた床桁ユニット10を、隣り合う受桁81の間に架設して、受桁81,81の間に形成された開放空間の一部を閉鎖する
床桁ユニット10は従来の主桁、架構材および覆工板の三部材の機能を有するため、受桁81と床桁ユニット10との間に他の鋼材が介在せず、床桁ユニット10を受桁81に直接載置する。
本発明では、従来のような独立した主桁、架構材および覆工板を個別に設置する作業が不要となるので、周囲に作業足場を設ける必要がない。
<2.2>床桁ユニットの固定
床桁ユニット10の底面を受桁81の上面に載置したら、図5(B)に示すように床桁ユニット10の底面に配備した複数のクランプ装置40を遠隔操作して床桁ユニット10を受桁81の上位のフランジ81aに固定する。
床桁ユニット10と受桁81との固定手段はクランプ装置40のみに限定されない。
図6に連結ボルト46とナット47を使用した他の固定手段を示す。
床桁ユニット10の第2フランジ22と受桁81の上位のフランジ81aにそれぞれ複数のボルト孔を開設し、これらのボルト孔に連結ボルト46を挿通してナット47で締結して床桁ユニット10と受桁81との間を固定してもよい。
さらに床桁ユニット10と受桁81との固定手段は、これらのクランプ装置40と連結ボルト46を併用してもよい。
クランプ装置40を用いた固定作業は、従来と同様に作業員が床桁ユニット10の上面に乗って行えるので、作業者の安全性が確保できる。
<2.3>床桁ユニットの並設(図8(B),(C))
床桁ユニット10の単体の架設作業を完了したら、架設済みの床桁ユニット10の隣に別途の床桁ユニット10を配置して隣接する。
本例で示したように、突起体33aの先端面33dが斜めに形成してあると、既設の床桁ユニット10の隣に新たな床桁ユニット10を吊り込むだけの作業で以て、嵌込式継手33の嵌め込みを完了させることができる。
<2.3.1>嵌込式継手の嵌合構造
図8(C)は受口33bと突起体33aとの嵌合を完了した状態を示している。
隣り合う一対の床桁ユニット10,10の相対向する側面に形成した受口33bと突起体33aとが互いに嵌合し合い、嵌込式継手33を通じて一対の床桁ユニット10,10が一体化している。
突起体33aの水平当接面33cは受口33bの最上面である第1フランジ21の下方に位置し、水平当接面33cが隣り合う一対の第1フランジ21,21の間を跨いで位置する。
<2.3.2>覆工面積の拡張
既述した床桁ユニット10の架設作業を繰り返し行い、複数の床桁ユニット10を橋軸横断方向Yへ向けて増設する。
床桁ユニット10は覆工板機能を有するので、床桁ユニット10の架設数に比例して覆工面積が拡張する。
図9は受桁81の全長に亘り複数の床桁ユニット10を並設して鋼製床版60を完成する。
既述した下部工を先行して行いつつ、下部工の真上に上部工を並行して行い、スパン単位で鋼製床版60を延長して仮桟橋を構築する。
このように本発明では、仮桟橋の上部工を床桁ユニット10のみで構成するので、従来と比べて上部工の資材コストを大幅に削減できるだけでなく、上部工の施工に要する時間と労力を大幅に削減できる。
<2.4>安全柵の設置(図10)
仮桟橋に安全柵を設置する場合は、最外側に位置する床桁ユニット10の側面に形鋼製の地覆50を溶接等で取り付け、地覆50を基に基礎筒51に安全柵用の支柱52を立設する。
本発明では床桁ユニット10の一部に地覆50を簡単に設置できるので、多くの手数を掛けずに安全柵を設置できる。
[上部工の特徴]
床桁ユニット10を用いた構築した仮桟橋の上部工である鋼製床版60の特性について説明する。
<1>上部工の桁高さについて
主桁82に覆工板83を重ねた従来の上部工の桁高さhは、主桁82の高さに覆工板83の高さを加えた寸法である(図13(B))。
これに対しては、本発明では、受桁81の真上に載置する鋼材が床桁ユニット10ののみであり、上部工の高さを床桁ユニット10のみの高さHに低く抑えることができる(図10)。
換言すれば、本発明は、鋼製床版60を構成する床桁ユニット10の全長を、従来の覆工板の全長の数倍以上の長さに設定しつつ、上部工の厚さを薄くすることができる。
そのため、鋼製床版60を構成する床桁ユニット10が横荷重(水平荷重)に対して影響が受け難くなって、仮桟橋の安定性および安全性が格段に高くなる。
<2>床桁ユニットのせん断抵抗について
本発明では複数の鋼材を単に並べただけの構造体ではなく、図8(C)に示したように、嵌合要素を具備した複数の床桁ユニット10を敷き並べ、嵌込式継手33を通じて隣り合う一対の床桁ユニット10,10を一体化した構造である。
そのため、嵌込式継手33を介して荷重伝達が可能であるため、隣り合う床桁ユニット10,10の相互間の撓み変形を効果的に拘束できる。
<3>鋼製床版の開口部の寸法について
図11を参照して説明する。
図外のクランプ装置40等の解除操作を行った後に、床桁ユニット10を吊り上げるだけの簡単な操作で以て、任意の位置の床桁ユニット10を撤去して、鋼製床版60の一部に開口部61を開設できる。
床桁ユニット10の全長Lに対応する橋軸方向Xに向けた開口部61の開口寸法は、従来の覆工板の全長と比べて数倍の長さを有しているので、開口部61を通じてボックスカルバート等の大型管渠を吊り降ろして施工することが可能となる。
さらに、細帯状の床桁ユニット10の撤去枚数を選択することで、橋軸横断方向Yへ向けた開口部61の開口寸法を小さな単位(床桁ユニット10の横幅B単位)で調整することもできる。
<4>鋼製床版の解体
鋼製床版60の解体作業は、既述した上部工の組立て作業と逆の工程を行うことで、簡単に解体することができる。
<5>他の鋼製床版
以上は複数の床桁ユニット10を隣り合わせに並設して鋼製床版60を構成する形態について説明したが、図12に示すように、隣り合う床桁ユニット10の間に間隔を隔てて複数の床桁ユニット10を並列に配置し、これらの複数の床桁ユニット10の上面に有孔構造の覆工網62を敷設して鋼製床版60を構成することも可能である。
本例では、隣り合う床桁ユニット10の間に任意の幅の開口部61を形成する。
覆工網62はエキスパンドメタルや有孔構造の鋼板等で構成し、各開口部61を封鎖可能な寸法と、撓み変形に耐えられるだけの剛性を有している。
本例のように、鋼製床版60の一部に開口部61を設けることで、これらの開口部61を通じて透水できるため、浸水のおそれがある現場でも、浸水による床桁ユニット10の分解を確実に防止することができる。
10・・・・床桁ユニット
20・・・・形鋼
21・・・・第1フランジ
22・・・・第2フランジ
23・・・・ウェブ
30・・・・床桁本体
31・・・・内部空間
32・・・・側溝
33・・・・嵌込式継手
33a・・・突起体
33b・・・受口
34・・・・接合部
35・・・・リブ板
40・・・・・クランプ装置
41・・・・ブラケット
42・・・・クランプ
43・・・・弾性部材
44・・・・操作ボルト
45・・・・ナット
47・・・・ナット
50・・・・地覆
51・・・・基礎筒
52・・・・支柱
60・・・・鋼製床版
61・・・・開口部
62・・・・覆工網
80・・・・支持杭
81・・・・受桁
81a・・・上位のフランジ

Claims (10)

  1. 間隔を隔てて立設した複数の支持杭と該支持杭の頭部間に掛け渡した受桁を具備し、前記受桁に直接載置して並設し、主桁機能と覆工板機能とを少なくとも併せ持ち、橋軸方向に向けて架設可能な寸法を有する仮桟橋の床桁ユニットであって、
    断面H形を呈する複数の形鋼を横列に配置し、隣り合う形鋼のフランジの接合部を溶接してボックス構造とした床桁本体と、
    前記床桁本体のボックス構造の内部に形鋼のフランジとウェブで囲繞して形成した内部空間と、
    前記床桁本体の両側部に断面H形を呈する形鋼のフランジとウェブで囲繞して形成した開放空間からなる一対の側溝と、
    前記一対の側溝に形成した単数または複数の嵌込式継手とを具備し、
    前記嵌込式継手が床桁本体の少なくとも何れか一方の側溝から桁本体の側方へ向けて突設した突起体と、
    前記床桁本体の少なくとも何れか他方の側溝の開放空間の一部に形成した受口とからなり、
    隣り合わせて前記床桁本体を並設したときに前記突起体と受口とが互いに嵌合可能であることを特徴とする、
    床桁ユニット。
  2. 前記床桁本体が2本または3本の形鋼を並設して構成することを特徴とする、請求項1に記載の床桁ユニット。
  3. 前記床桁本体は高さが400mm、橋軸横断方向に向けた床桁本体の横幅が800~1200mm、橋軸方向に向けた床桁本体の全長が6~8mであることを特徴とする、請求項に記載の床桁ユニット。
  4. 前記受桁に対して係脱可能な複数のクランプ装置を前記床桁本体の底面の周縁部に追加して設置したことを特徴とする、請求項1に記載の床桁ユニット。
  5. 前記嵌込式継手の突起体と受口は隣り合わせて前記床桁本体を並設したときに前記突起体と受口とが互いに嵌合可能な位置に形成してあることを特徴とする、請求項1に記載の床桁ユニット。
  6. 前記突起体の先端面を下向きに傾斜して形成したことを特徴とする、請求項1または5に記載の床桁ユニット。
  7. 間隔を隔てて立設した複数の支持杭と、該支持杭の頭部間に掛け渡した受桁と、隣り合う受桁の間に掛け渡した鋼製床版とを具備する仮桟橋の構造であって、
    前記鋼製床版が請求項1乃至6の何れか一項に記載の床桁ユニットの集合体からなり、
    前記隣り合う受桁の間に前記複数の床桁ユニットを橋軸方向に向けて直接載置したことを特徴とする、
    仮桟橋の構造。
  8. 嵌込式継手を介して隣り合う床桁ユニットを着脱可能に一体化して鋼製床版を構成することを特徴とする、請求項7に記載の仮桟橋の構造。
  9. 間隔を隔てて床桁ユニットを配置し、前記床桁ユニットの間に形成した開口部を覆工網で封鎖して鋼製床版を構成することを特徴とする、請求項7に記載の仮桟橋の構造。
  10. 前記鋼製床版の最側方に位置する床桁ユニットの側面に地覆を取り付け、前記地覆に安全柵用の支柱を立設したことを特徴とする、請求項7に記載の仮桟橋の構造。
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