JP7300902B2 - 含窒素有機物の処理装置及び処理方法 - Google Patents
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Description
近年では、水の臨界点(374℃、22MPa)以上の高温高圧の条件(超臨界条件)下で含窒素有機物を処理する技術が検討されている。超臨界条件下で含窒素有機物を処理すると、含窒素有機物を完全に分解し、無害化することが可能となる。
特許文献1の発明では、含窒素有機物中の窒素の有効利用について考慮されていない。
加えて、特許文献1の発明では、酸素、空気等の酸化剤の供給を必須としており、酸化分解する処理装置が大型化するといった問題がある。
[1] 含窒素有機物を水の亜臨界条件、かつ、前記含窒素有機物を酸化処理するための酸素量を1とした場合、酸素比が0.1以下である嫌気条件とし、アンモニアを含む第一の流体を生成する熱分解部と、吸着剤としてプルシアンブルー及びプルシアンブルー類似体から選ばれる1種以上の化合物を有する、前記第一の流体からアンモニアを分離するアンモニア分離部と、を備える、含窒素有機物の処理装置。
[3]前記アンモニア分離部が吸着塔であり、前記熱分解部で発生した反応熱を前記吸着塔の加熱源として使用する[1]記載の含窒素有機物の処理装置。
[4]前記アンモニア分離工程は吸着塔で行われ、前記熱分解工程で発生した反応熱を前記吸着塔の加熱源として使用する[2]記載の含窒素有機物の処理方法。
本明細書では、上記の水の亜臨界条件での含窒素有機物の熱分解を亜臨界熱分解処理という。
<含窒素有機物の処理装置>
本発明の含窒素有機物の処理装置は、熱分解部と、アンモニア分離部とを備える。
以下に、本発明の含窒素有機物の処理装置の第一実施形態について、図1に基づき詳細に説明する。
供給部10と熱分解部20とは、配管L0によって接続されている。熱分解部20とアンモニア分離部30とは、配管L1によって接続されている。
第二ヒーター33としては、第一ヒーター22と同様のヒーターが挙げられる。第二ヒーター33と第一ヒーター22とは、異なっていてもよく、同じでもよい。
第三ヒーター34としては、第一ヒーター22と同様のヒーターが挙げられる。第三ヒーター34と第一ヒーター22とは、異なっていてもよく、同じでもよい。第三ヒーター34と第二ヒーター33とは、異なっていてもよく、同じでもよい。
第二測定部35としては、第一測定部23と同様の計器が挙げられる。第二測定部35と第一測定部23とは、異なっていてもよく、同じでもよい。
第三測定部36としては、第一測定部23と同様の計器が挙げられる。第三測定部36と第一測定部23とは、異なっていてもよく、同じでもよい。第三測定部36と第二測定部35とは、異なっていてもよく、同じでもよい。
圧力調整バルブB8~B11としては、圧力調整バルブB1と同様のバルブが挙げられる。圧力調整バルブB8~B11と圧力調整バルブB1とは、異なっていてもよく、同じでもよい。また、圧力調整バルブB8~B11は、それぞれが異なっていてもよく、同じでもよい。
開閉バルブB7としては、開閉バルブB6と同様のバルブが挙げられる。開閉バルブB7と開閉バルブB6とは、異なっていてもよく、同じでもよい。
配管L1~L11としては、配管L0と同様の配管が挙げられる。
配管L1、L2、L6~L11は、耐圧性を有する配管であることが好ましい。
配管L1~L11と配管L0とは、異なっていてもよく、同じでもよい。また、配管L1~L11は、それぞれが異なっていてもよく、同じでもよい。
本発明の含窒素有機物の処理方法は、含窒素有機物を水の亜臨界条件、かつ、嫌気条件とし、アンモニアを含む第一の流体を生成する熱分解工程と、前記第一の流体からアンモニアを分離するアンモニア分離工程と、を備える。
処理装置1を用いた含窒素有機物の処理方法について、図1に基づいて説明する。
次に、含窒素有機物を含む混合物と水のスラリー混合物とを供給部10から高圧ポンプP1を介して、それぞれ熱分解部20に供給する。この際、酸素や空気等を熱分解部20に送り込まないことで、熱分解部20の熱分解槽21を嫌気条件としている。熱分解槽21を嫌気条件とする方法としては、この他、希ガス等の不活性ガスで熱分解槽21をパージする方法等が挙げられる。
本実施形態の処理装置1では、熱分解槽21を高温高圧にして含窒素有機物を熱分解し、水蒸気を含むガス成分と固形分とを分離するため、脱水工程及び焼却工程が不要である。
加えて、本実施形態の処理装置1では、熱分解槽21を嫌気条件にして含窒素有機物を熱分解するため、酸素や空気等の酸化剤を供給する工程が不要である。
なお、熱分解工程で生成する含窒素有機物の固形分は、排出ポンプP2を用いて、配管L2を介して熱分解槽21の外部へと排出できる。
含窒素有機物を含む混合物と水のスラリー混合物とを熱分解部20の熱分解槽21に供給した後、第一ヒーター22を加熱し、かつ、高圧ポンプP1を加圧し、含窒素有機物を水の亜臨界条件、かつ、嫌気条件とする。
含窒素有機物を水の亜臨界条件、かつ、嫌気条件とすることで、含窒素有機物は、二酸化炭素、水、アンモニア等に熱分解され、第一の流体が生成する。
第一処理温度は、水の臨界温度(374℃)以上であり、374℃以上500℃以下が好ましく、400℃以上450℃以下がより好ましい。第一処理温度が上記下限値以上であると、含窒素有機物を十分に熱分解することができる。第一処理温度が上記上限値以下であると、第一の流体に含まれるアンモニアへの転化率を向上しやすく、第一ヒーター22を加熱する際のエネルギーを節約しやすい。
第一処理圧力は、水の臨界圧力(22MPa)未満であり、5MPa以上20MPa以下が好ましく、10MPa以上20MPa以下がより好ましく、10MPa以上15MPa以下がさらに好ましい。第一処理圧力が上記下限値以上であると、含窒素有機物を十分に熱分解することができる。第一処理圧力が上記上限値以下であると、熱分解槽21にかかる負荷を低減しやすい。
図3の消化汚泥中の炭素、水素、窒素、酸素の割合から消化汚泥の模擬的な組成式を決定し、その消化汚泥を酸化処理するための酸素量を下記式(1)にて推算する。この際必要な酸素量を化学量論(酸素比=1)とする。
C5.9H11.2NO3.3+6.3O2 → 5.9CO2+4.1H2O+NH3・・・(1)
式(1)より、消化汚泥1kgを酸素比1で亜臨界水酸化処理をする場合、36.6gの酸素が必要となる。
例えば、400℃、10MPaの反応条件で亜臨界水酸化処理を行った場合、消化汚泥中の水分がガス化することにより、その体積は25.7Lとなる。43.9gの酸素は、0.8Lとなり、処理装置1の3.0%を占める。
亜臨界水酸化処理を行う場合、通常、空気(窒素80%、酸素20%)を利用する。43.9gの酸素を確保するためには、164.9Lの空気(20℃試算)が必要である。この空気の処理装置1内での容積は、4.0Lとなり、処理装置1の13.4%を空気が占めることとなる。
さらに、本実施形態では、嫌気条件で熱分解を行うため、亜酸化窒素の発生量を著しく低減できる。この点については、後述する。
ここで、「含窒素有機物を酸化するための酸素が実質的にない」とは、酸素比が0.1以下であることをいう。
なお、含窒素有機物に含まれている溶存酸素や、溶存している結合性の酸素は存在していてもよい。すなわち、本明細書における嫌気条件は、一般的な水処理における「嫌気条件」(溶存酸素や結合性の酸素が一切存在しない条件)とは異なる意味で定義される。
アンモニア分離工程は、第一の流体に含まれるアンモニアを分離する工程である。
アンモニア分離部30へと流入した第一の流体は、配管L6を介して吸着塔31へと流入する。
吸着塔31の内部には、アンモニアを選択的に吸着する吸着剤(不図示)が充填されている。
吸着剤としては、例えば、ゼオライト、リン酸マグネシウム等、公知の吸着剤が挙げられる。吸着剤としては、下記一般式(2)で表される化合物を適用してもよい。
AxM[M’(CN)6]y・zH2O ・・・(2)
式(2)中、xは0~3、yは0.1~1.5、zは0~6の数値を表し、Aは、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンからなる群より選択される少なくとも1種の陽イオンを表し、M、M’は、それぞれ独立に原子番号3~83の原子からなる群より選択される少なくとも1種の陽イオン(ただし、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンを除く。)を表す。
式(2)において、yは0.1~1.5であり、0.2~1.3が好ましく、0.3~1.0がより好ましい。
式(2)において、zは0~6であり、0~5が好ましく、0~4がより好ましい。
アンモニア分離部30へと流入した第一の流体は、配管L7を介して吸着塔32へと流入する。
吸着塔32の内部には、アンモニアを選択的に吸着する吸着剤(不図示)が充填されている。
吸着塔32の内部の吸着剤としては、吸着塔31の内部の吸着剤と同様の吸着剤が挙げられる。吸着塔302の内部の吸着剤と吸着塔31の内部の吸着剤とは、異なっていてもよく、同じでもよい。
第一の流体に含まれるアンモニアは、吸着塔32の内部に充填された吸着剤によって選択的に吸着され、分離される。
この際、アンモニアは、気体であってもよく、液体であってもよい。外部へと回収されるアンモニアは、エネルギー源としての利用において取り扱いが容易となる観点から、液体であることが好ましい。例えば、吸着塔31の内部の圧力を0.8MPa以上となるように圧力調整バルブB8を調整することにより、液体としてアンモニアを回収できる。
吸着塔31でアンモニアを吸着している間に吸着塔32が減圧されることで、吸着塔32の内部の吸着剤に吸着されたアンモニアの全部又は一部が吸着剤から脱離される。また、第三ヒーター34で吸着塔32を加熱することで、吸着塔32の内部の吸着剤に吸着されたアンモニアを脱離してもよい。
例えば、吸着塔32の内部の圧力を0.8MPa以上となるように圧力調整バルブB9を調整することにより、液体としてアンモニアを回収できる。
このように、二つの吸着塔31と32とを交互に用いることで、効率よくアンモニアを分離し、回収できる。
なお、本実施形態では、二つの吸着塔を用いているが、吸着塔の数は二つに限られず、三つ以上でもよい。
アンモニアの状態は、吸着塔31又は32の内部の温度及び圧力によって制御できる。
吸着塔31の内部の温度は、第二ヒーター33によって制御できる。吸着塔32の内部の温度は、第三ヒーター34によって制御できる。吸着塔31の内部の圧力は、圧力調整バルブB8、B10によって制御できる。吸着塔32の内部の圧力は、圧力調整バルブB9、B11によって制御できる。
第三ヒーター34の熱源としては、熱分解工程における亜臨界熱分解処理による反応熱を利用できる。前記反応熱を利用することにより、第三ヒーター34の消費エネルギーを節約できる。
第一の流体から分離された気体は、配管L4を介して処理装置1の外部へと排出される。
第一の流体から分離された液体は、配管L5を介して処理装置1の外部へと排出される。
本実施形態では、酸素や空気を供給するための設備を必要としないため、処理装置1の小型化を図れる。
加えて、本実施形態では、嫌気条件で熱分解を行うため、亜酸化窒素の発生量を著しく低減できる。
さらに、本実施形態によれば、分離したアンモニアをエネルギー源として利用できる。
<含窒素有機物の処理装置>
図2に、本発明の第二実施形態に係る含窒素有機物の処理装置の模式図を示す。第一実施形態と同じ構成には、同じ符号を付して、その説明を省略する。
図2に示すように、本実施形態の含窒素有機物の処理装置2(以下、単に処理装置2ともいう。)は、アンモニア分離部30に代えて、アンモニア分離部30’を備える。
処理装置2を用いた含窒素有機物の処理方法について、図2に基づいて説明する。
熱分解工程で生成された第一の流体は、配管L1を介して気液分離器38へと流入する。
気液分離器38へと流入した第一の流体は、気体とアンモニアを含む液体とに分離される。アンモニアを含む液体としては、液体アンモニア、アンモニア水が挙げられる。
第一の流体から分離された気体は、配管L4を介して処理装置2の外部へと排出される。
第一の流体から分離された液体は、配管L12を介して蒸留塔39へと流入する。
例えば、分縮器40の内部の圧力を0.8MPa以上とすることにより、液体としてアンモニアを回収できる。
アンモニアの状態は、分縮器40の内部の温度及び圧力によって制御できる。
分縮器40の内部の温度は、分縮器40の外部の冷却水の温度や流量によって制御できる。分縮器40の内部の圧力は、配管中の任意の箇所に設けられた高圧ポンプ等(不図示)によって制御できる。
アンモニア分離部は、上述したアンモニア分離部30や30’以外の態様であってもよい。
例えば、熱分解部とアンモニア分離部とは、同一の容器が兼ねる態様であってもよい。
上述の実施形態では、高圧ポンプP1は配管L0に設けられているが、他の配管中の任意の箇所に設けられてもよい。
高圧ポンプは、一つに限られず、二つ以上設けられてもよい。
装置間の流体の移動には、高圧ポンプの代わりに真空ポンプを用いてもよい。
開閉バルブは、他の配管中の任意の箇所に設けられてもよい。
圧力調整バルブは、他の配管中の任意の箇所に設けられてもよい。
本発明の含窒素有機物の処理装置によれば、アンモニア分離部でアンモニアを分離できる。アンモニアを分離することで、高い効率でアンモニアを回収することができ、含窒素有機物中の窒素を有効利用できる。
本発明の含窒素有機物の処理装置によれば、有機汚泥を確実に処理することができる。
図3に示す含水率、元素組成、溶存窒素を有する下水の消化汚泥(有機汚泥)を温度400℃、圧力10MPa(水の亜臨界条件)で亜臨界熱分解処理した場合のアンモニア性窒素としての発生率を測定した。アンモニア性窒素としての発生率は、亜臨界熱分解処理を行った後のアンモニア性窒素の質量を、亜臨界水酸化処理を行う前の有機汚泥に含まれる窒素成分の総質量(液分の有機態窒素と無機態窒素、固形分の窒素成分の合計)で除することにより求めた。
液分の全窒素は、全有機炭素計(TOC-V/TN、(株)島津製作所製)で、質量を測定することにより求めた。
液分の無機態窒素は、イオンクロマトグラフィー(Dionex ICS-1600、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)で、質量を測定することにより求めた。液分の有機態窒素の質量は、全窒素の質量から無機態窒素の質量を差し引くことで求めた。
固形分中の窒素成分は、全自動元素分析装置(2400II、パーキンエルマー社製)で、質量を測定することにより求めた。
処理時間0分~15分までの亜臨界熱分解処理を行い、アンモニア性窒素の発生率を測定した。結果を図4に示す。
実験例1と同じ試料について、圧力条件を変更して亜臨界熱分解処理(温度400℃、処理時間5分)を行った。有機汚泥中の窒素成分のアンモニア性窒素としての発生率を図5に示す。
図5に示すように、処理圧力5~25MPaでアンモニア性窒素としての発生率が60%以上であった。処理圧力が5~25MPaでアンモニア性窒素としての発生率に大きな変化はなかった。
実験例1と同じ試料について、温度条件を変更して亜臨界熱分解処理(圧力10MPa、処理時間5分)を行った。有機汚泥中の窒素成分のアンモニア性窒素としての発生率を図6に示す。
図6に示すように、処理温度が350~450℃でアンモニア性窒素としての発生率に大きな変化はなかった。
実験例1と同じ有機汚泥を嫌気条件(Heが100%のキャリアガス)と、酸化条件(Heが80%、酸素が20%のキャリアガス)とで室温から1000℃まで加熱したときの亜酸化窒素の発生量(mg/kg-wet)を測定した。亜酸化窒素の発生量は、フーリエ変換赤外分光法(IFS 125HR、ブルカー社製)により測定した。結果を図7に示す。
図7に示すように、嫌気条件では、亜酸化窒素の発生量は、検出限界(3mg/kg-dry)以下であったため、検出限界値が発生したと仮定したときの0.081mg/kg-wetであった。
一方、酸化条件では、亜酸化窒素の発生量は、8.37mg/kg-wetだった。
このことから、嫌気条件で熱分解処理をすることで、亜酸化窒素の発生量を100倍以上低減できることが分かった。
なお、亜酸化窒素は、アンモニア以上に安定な物質であり、超臨界水酸化技術を用いても650℃以上の反応温度でなければ完全に分解することができない。このため、亜酸化窒素はできるだけ生成しない方が好ましい。亜酸化窒素は、含窒素有機物と酸素とが酸化反応することにより発生し、亜臨界条件においても、窒素成分の一部が亜酸化窒素として排出される可能性がある。亜酸化窒素は、温暖化ガス排出抑制の観点から、排出しないことが好ましい。
Claims (4)
- 含窒素有機物を水の亜臨界条件、かつ、前記含窒素有機物を酸化処理するための酸素量を1とした場合、酸素比が0.1以下である嫌気条件とし、アンモニアを含む第一の流体を生成する熱分解部と、
吸着剤としてプルシアンブルー及びプルシアンブルー類似体から選ばれる1種以上の化合物を有する、前記第一の流体からアンモニアを分離するアンモニア分離部と、
を備える、含窒素有機物の処理装置。 - 含窒素有機物を水の亜臨界条件、かつ、前記含窒素有機物を酸化処理するための酸素量を1とした場合、酸素比が0.1以下である嫌気条件とし、アンモニアを含む第一の流体を生成する熱分解工程と、
吸着剤としてプルシアンブルー及びプルシアンブルー類似体から選ばれる1種以上の化合物を使用する、前記第一の流体からアンモニアを分離するアンモニア分離工程と、
を備える、含窒素有機物の処理方法。 - 前記アンモニア分離部が吸着塔であり、前記熱分解部で発生した反応熱を前記吸着塔の加熱源として使用する請求項1記載の含窒素有機物の処理装置。
- 前記アンモニア分離工程は吸着塔で行われ、前記熱分解工程で発生した反応熱を前記吸着塔の加熱源として使用する請求項2記載の含窒素有機物の処理方法。
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