JP7297870B2 - 光学部材、照明装置、および、スクリーン - Google Patents

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Description

本発明は、光学部材、ならびに、この光学部材を用いた照明装置およびスクリーンに関する。
コレステリック液晶層は、特定の波長域において右円偏光及び左円偏光のいずれか一方を選択的に反射する性質を有する層として知られている。そのため、種々の用途へ展開されており、例えば、液晶表示装置において用いられる面光源装置の反射部材、投影スクリーン等の投映像表示用部材などとして用いられている。
例えば、特許文献1には、素子平面の法線方向に対して異方的な光学特性を持つ異方性光学素子において、コレステリック規則性を示す重合性の液晶からなる分子配向されたコレステリック液晶層であって、平坦な層平面を持つように形成されたコレステリック液晶層を備え、コレステリック液晶層内の液晶ドメインの螺旋軸方向の平均として規定される螺旋軸主方向が、層平面の法線方向に対して所定の角度だけ傾けられている異方性光学素子(投影スクリーン)が開示されている。
特開2006-317656号公報
本発明者らが、導光部材内を導光される光を出射させるための反射板としてコレステリック液晶層を用いることを検討したところ、光がコレステリック液晶層に対して斜めに入射すると、円偏光選択性が低下することがわかった。
本発明の課題は、このような問題点を解決することにあり、円偏光選択性が高い光学部材、照明装置およびスクリーンを提供することにある。
本発明は、以下の構成によって課題を解決する。
[1] 内部で光を導光する導光部材と、
導光部材の一方の主面に積層されるコレステリック液晶層とを有し、
コレステリック液晶層は、液晶化合物を用いて形成された層であり、
液晶化合物の分子軸が、コレステリック液晶層の主面に対して傾斜しており、
コレステリック液晶層の一対の主面のうち少なくとも一方の主面において、液晶化合物の分子軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している光学部材。
[2] コレステリック液晶層の主面に垂直な断面において走査型電子顕微鏡にて観察されるコレステリック液晶相由来の明部及び暗部の配列方向が、コレステリック液晶層の主面に対して45°~85°傾斜している、[1]に記載の光学部材。
[3] 明部および暗部の配列方向の、コレステリック液晶層の主面に対する傾斜角度が45°~70°である[2]に記載の光学部材。
[4] コレステリック液晶層は、明部および暗部の形状が波状であり、光拡散性を示す[2]または[3]に記載の光学部材。
[5] 選択反射波長の異なる2種以上のコレステリック液晶層を有する[1]~[4]のいずれかに記載の光学部材。
[6] さらに、導光部材の、コレステリック液晶層が配置された面とは反対側の面に積層されるλ/4板を有する[1]~[5]のいずれかに記載の光学部材。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の光学部材と、
導光部材の少なくとも1つの端面に対面して配置される光源とを有する照明装置。
[8] [1]~[6]のいずれかに記載の光学部材と、
導光部材の少なくとも1つの端面に対面して配置され、映像光を出射する画像投影装置とを有するスクリーン。
[9] 導光部材の、コレステリック液晶層が積層された面とは反対側の面から導光部材に入射する光を導光し、導光部材の端面から出射する集光素子として用いる[1]~[6]のいずれかに記載の光学部材。
本発明によれば、円偏光選択性が高い光学部材、照明装置およびスクリーンを提供することができる。
本発明の光学部材を有する照明装置の一例を模式的に表す側面図である。 図1に示す照明装置の作用を説明する図である。 コレステリック液晶層10のX-Y面の模式図である。 コレステリック液晶層10のX-Z面の模式図である。 コレステリック液晶層10のX-Z面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)にて観察した際の模式図である。 従来のコレステリック液晶層20のX-Z面の模式図である。 従来のコレステリック液晶層20のX-Z面をSEMにて観察した際の模式図である。 従来のコレステリック液晶層40のX-Y面の模式図である。 従来のコレステリック液晶層40のX-Z面の模式図である。 液晶化合物と入射する光との角度を説明するための模式図である。 液晶化合物と入射する光との角度を説明するための模式図である。 本発明の光学部材の他の一例を模式的に表す側面図である。 本発明の光学部材の他の一例を模式的に示す側面図である。 本発明の光学部材の他の一例を模式的に示す側面図である。 本発明の光学部材の他の一例を模式的に表す側面図である。 コレステリック液晶層30のX-Y面の模式図である。 コレステリック液晶層30のX-Z面をSEMにて観察した際の模式図である。 本発明の光学部材を用いる液晶表示装置の一例を表す模式図である。 本発明の光学部材を集光素子として用いる例を説明するための図である。 工程2-1において、条件1を満たす組成物層の実施形態の一例を説明するための断面模式図である。 キラル剤A及びキラル剤Bの各々について、螺旋誘起力(HTP: Helical Twisting Power)(μm-1)×濃度(質量%)と光照射量(mJ/cm2)との関係をプロットしたグラフの模式図である。 キラル剤A及びキラル剤Bを併用した系において、加重平均螺旋誘起力(μm-1)と光照射量(mJ/cm2)との関係をプロットしたグラフの模式図である。 キラル剤A及びキラル剤Bの各々について、HTP(μm-1)×濃度(質量%)と温度(℃)との関係をプロットしたグラフの模式図である。 キラル剤A及びキラル剤Bを併用した系において、加重平均螺旋誘起力(μm-1)と温度(℃)との関係をプロットしたグラフの模式図である。 積層体50の断面模式図である。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの両方を表す表記であり、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基の両方を表す表記であり、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの両方を表す表記である。
本明細書において、角度についての「同一」とは、特に記載がなければ、厳密な角度との差異が5度未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との差異は、4度未満であることが好ましく、3度未満であることがより好ましい。
[光学部材]
本発明の光学部材は、
内部で光を導光する導光部材と、
導光部材の一方の主面に積層されるコレステリック液晶層とを有し、
コレステリック液晶層は、液晶化合物を用いて形成された層であり、
液晶化合物の分子軸が、コレステリック液晶層の主面に対して傾斜しており、
コレステリック液晶層の一対の主面のうち少なくとも一方の主面において、液晶化合物の分子軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している光学部材である。
本発明の光学部材、照明装置、および、スクリーンについて、図面を用いて説明する。
図1に、本発明の光学部材を有する、本発明の照明装置の一例を模式的に示す。
図1に示す照明装置70は、光学部材60と、光源72とを有する。光学部材60は、導光部材62と、コレステリック液晶層10とを有する。なお、図面において、コレステリック液晶層の斜線は明暗線の向きを表す。
<光源>
光源72は、光学部材60の導光部材62に入射させる光を出射するものである。光源72としては特に限定はなく、LED(light emitting diode)、蛍光灯等の公知の光源が適宜利用可能である。また、光源72が出射する光の波長についても特に限定はなく、可視光、UV光、IR光が適宜利用可能である。
光源72は、発光面が導光部材62の1つの端面に対面するように配置されており、光源72が出射した光は導光部材62の端面から導光部材62内に入射する。
<導光部材>
導光部材62は、画像表示装置等で用いられている従来公知の導光部材(導光板)であり、透明性を有する板状の直方体形状の部材である。導光部材62は、アクリル等の光学的に透明な樹脂、および、ガラス等からなる。
導光部材62は屈折率が高いことが好ましい。屈折率1.3以上が好ましく、1.4以上がより好ましい。
導光部材62には、光源72から出射された光が端面から入射される。導光部材62内に入射した光は、導光部材62内を伝播し、導光部材62と外部との界面に到達した際に、界面に対する入射角度が閾値角度以上の場合には、光はこの界面で反射されてさらに導光部材62を伝播する。一方、入射角度が閾値角度以下の場合には、光はこの界面を透過して導光部材62から出射される。導光部材62は、界面での光の反射を繰り返しつつ、光を導光部材62内の面方向(図1中、上方向)に伝播させる。
閾値角度は、導光部材と導光部材に接するもの(例えば空気)の屈折率によって定まる。なお、例えば、導光部材62と空気との界面において光は鏡面反射する。
導光部材62の大きさ、および、厚さには特に限定はなく、用途等に応じて適宜設定すればよい。
<コレステリック液晶層>
コレステリック液晶層10は、液晶化合物をコレステリック配向させた層であり、導光部材62の一方の主面(最大面)に積層される。
コレステリック液晶層は、所定の波長域の光に対して選択反射特性を示す層である。コレステリック液晶層は選択反射波長域において、右円偏光及び左円偏光のいずれか一方を選択的に反射させ、他方のセンスの円偏光を透過させる円偏光選択反射層として機能する。
なお、本明細書において、円偏光につき「センス」というときは、右円偏光であるか、又は左円偏光であるかを意味する。円偏光のセンスは、光が手前に向かって進んでくるように眺めた場合に電場ベクトルの先端が時間の増加に従って時計回りに回る場合が右円偏光であり、反時計回りに回る場合が左円偏光であるとして定義される。本明細書においては、コレステリック液晶の螺旋の捩れ方向について「センス」との用語を用いることもある。コレステリック液晶による選択反射は、コレステリック液晶の螺旋の捩れ方向(センス)が右の場合は右円偏光を反射し、左円偏光を透過し、センスが左の場合は左円偏光を反射し、右円偏光を透過する。
ここで、本発明において、コレステリック液晶層10は、液晶化合物の分子軸が、コレステリック液晶層の主面に対して傾斜しており、コレステリック液晶層の一対の主面のうち少なくとも一方の主面において、液晶化合物の分子軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している構成を有する。
後に詳述するが、コレステリック液晶層10を、主面において液晶化合物の分子軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している構成とすることで、コレステリック液晶層10の主面に垂直な断面において走査型電子顕微鏡にて観察されるコレステリック液晶相由来の明部及び暗部の配列方向が、コレステリック液晶層10の主面(導光部材62との界面)に対して傾斜した構成となる。すなわち、コレステリック液晶相由来の明部及び暗部が、コレステリック液晶層10と導光部材62との界面に対して傾斜した構成となる(図5参照)。
コレステリック液晶層においては、明部及び暗部に沿った面が反射面となる。そのため、本発明の光学部材において、コレステリック液晶層10は、コレステリック液晶層10の主面(導光部材62との界面)に対して傾斜した反射面を有するものとなる。したがって、本発明の光学部材60では、導光部材62とコレステリック液晶層10との界面に入射した光はコレステリック液晶層10の反射面に対して鏡面反射して、界面に対しては鏡面反射されずに、界面に対する入射角と反射角とが異なるように反射することができる。
したがって、導光部材62内を面方向に伝播する光を導光部材の正面方向(主面に垂直な方向)に出射させることができる。
この点を、図2を用いて説明する。
図2に示すように、本発明の光学部材60を有する照明装置70において、光源72から出射された光は導光部材62の端面から導光部材62内に入射する。導光部材62内に入射した光は、導光部材62内を主に面方向に伝播するが、種々の方向の成分を有する。
一例として、図2中I1で示す光を用いて説明する。光I1は、導光部材62内を面方向の、コレステリック液晶層10が積層される側の面側に傾斜した方向(図2中、左上方向)に伝播している光である。
光I1は、導光部材62内を伝播して、導光部材62と空気との界面に入射する。光I1の入射角が閾値角度よりも大きいため、光I1は界面で鏡面反射される。反射された光I2は、導光部材62の他方の界面に向かう方向(図2中、右上方向)に伝播し、他方の界面に入射する。光I2の他方の界面に対する入射角は先の入射角と同じになるため、やはり光I2は界面で鏡面反射される。このような界面における反射を繰り返して光が導光部材62内を面方向に伝播すると、光I3はコレステリック液晶層10(導光部材62とコレステリック液晶層10との界面)に入射する。
前述のとおり、コレステリック液晶層10は、コレステリック液晶層10の主面(導光部材62との界面)に対して傾斜した反射面を有する。そのため、コレステリック液晶層10で反射された光I4は、導光部材62とコレステリック液晶層10との界面に対しては鏡面反射されずに、界面に対する入射角とは異なる角度の反射角で反射される。図2に示す例では、導光部材62の主面に略垂直な方向に反射される。コレステリック液晶層10による入射光と反射光の角度の関係は、コレステリック液晶層10の明部および暗部の傾斜角度による。そのため、図2においては、コレステリック液晶層10で反射された光が導光部材62の主面に略垂直な方向に反射されるように、コレステリック液晶層10の明部および暗部の傾斜角度が設定されている。
コレステリック液晶層10で反射された光は、導光部材62の、コレステリック液晶層10が積層されていない側の界面に入射するが、界面に対する入射角が小さいため、この界面(主面)から導光部材62の外に出射される。
このように本発明の光学部材60を有する照明装置70は、導光部材62の端面から入射した光を導光部材62の正面方向に出射させることができる。
ここで、本発明の光学部材においては、コレステリック液晶層10は、液晶化合物の分子軸が、コレステリック液晶層の主面に対して傾斜している。本発明の光学部材は、液晶化合物の分子軸が傾斜した構成とすることで円偏光選択性を高くすることができる。この点については後に詳述する。
なお、図2に示す例では、光学部材60は導光部材62の主面に略垂直な方向に光を出射する構成としたがこれに限定はされず、コレステリック液晶層10の明部および暗部の傾斜角度を適宜設定することにより、任意の方向に出射する構成とすることができる。
〔コレステリック液晶層の詳細〕
以下、コレステリック液晶層について図面を参照して詳細に説明する。
なお、本発明においてコレステリック液晶層は、コレステリック液晶相の光学的性質が層中において保持されていれば十分であり、層中の液晶化合物は液晶性を示さなくてもよい。
図3及び図4に、コレステリック液晶層中の液晶化合物の配向状態を概念的に示す模式図を示す。
図3は、主面11及び主面12からなる一対の主面13を有するコレステリック液晶層10の、主面11及び主面12の面内における液晶化合物の配向状態を示す模式図である。また、図4は、主面11及び主面12に垂直な断面におけるコレステリック液晶相の状態を示す断面模式図である。以下においては、コレステリック液晶層10の主面11及び主面12をX-Y面とし、このX-Y面に対して垂直な断面をX-Z面として説明する。つまり、図3は、コレステリック液晶層10のX-Y面の模式図に相当し、図4は、コレステリック液晶層10のX-Z面の模式図に相当する。
なお、以下においては、液晶化合物として棒状液晶化合物の態様を例に挙げて説明する。
図3に示すように、コレステリック液晶層10のX-Y面において、液晶化合物14は、X-Y面内の互いに平行な複数の配列軸D1に沿って配列しており、それぞれの配列軸D1上において、液晶化合物14の分子軸L1の向きは、配列軸D1に沿った面内の一方向に連続的に回転しながら変化している。ここで、説明のため、配列軸D1がX方向に向いているとする。また、Y方向においては、分子軸L1の向きが等しい液晶化合物14が等間隔で配向している。
なお、「液晶化合物14の分子軸L1の向きが配列軸D1に沿った面内の一方向に連続的に回転しながら変化している」とは、液晶化合物14の分子軸L1と配列軸D1とのなす角度が、配列軸D1方向の位置により異なっており、配列軸D1に沿って分子軸L1と配列軸D1とのなす角度がθからθ+180°あるいはθ-180°まで徐々に変化していることを意味する。つまり、配列軸D1に沿って配列する複数の液晶化合物14は、図3に示すように、分子軸L1が配列軸D1に沿って一定の角度ずつ回転しながら変化する。
また、本明細書において、液晶化合物14が棒状液晶化合物である場合、液晶化合物14の分子軸L1は、棒状液晶化合物の分子長軸を意図する。一方、液晶化合物14が円盤状液晶化合物である場合、液晶化合物14の分子軸L1は、円盤状液晶化合物の円盤面に対する法線方向に平行な軸を意図する。
図4に、コレステリック液晶層10のX-Z面の模式図を示す。
図4に示すコレステリック液晶層10のX-Z面において、液晶化合物14は、主面11及び主面12(X-Y面)に対して、その分子軸L1が傾斜して配向している。
なお、コレステリック液晶層10のX-Z面において、液晶化合物14は、主面11及び主面12(X-Y面)に対して、その分子軸L1が同一の方向に傾斜配向することが好ましい。
分子軸L1が上述した配向をとることで、図4に示すように、コレステリック液晶層10において、コレステリック液晶相由来の螺旋軸C1は、主面11及び主面12(X-Y面)に対して所定角度で傾斜している。つまり、コレステリック液晶層10の反射面(螺旋軸C1に直交し、方位角が等しい液晶化合物が存在する平面)T1は、主面11及び主面12(X-Y面)に対して略一定の方向に傾斜している。
なお、「方位角が等しい液晶分子」とは、主面11及び主面12(X-Y面)に投影したときに、分子軸の配向方向が同一にある液晶分子をいう。
図4に示すコレステリック液晶層10のX-Z面をSEM(走査型電子顕微鏡)にて観察すると、図5に示すような明部15と暗部16とが交互に配列された配列方向P1が、主面11及び主面12(X-Y面)に対して所定角度θ2で傾斜している縞模様が観察される。なお、図5中の明部15が2つと暗部16が2つで螺旋1ピッチ分(螺旋の巻き数1回分)に相当する。
以下、本発明の各種特性が得られる理由に関して説明する。
(反射異方性)
ここで、図6に、従来のコレステリック液晶層の断面模式図を示す。具体的には、図6は、主面21及び主面22からなる一対の主面23を有するコレステリック液晶層20の主面23に垂直な断面でのコレステリック液晶層の状態を示す。以下においては、コレステリック液晶層20の主面21及び主面22をX-Y面とし、このX-Y面に対して垂直な断面をX-Z面として説明する。つまり、図6は、コレステリック液晶層20のX-Z面での模式図に相当する。
図6に示すコレステリック液晶層20において、コレステリック液晶相由来の螺旋軸C2は、主面21及び主面22(X-Y面)に対して垂直であり、その反射面T2は主面21及び主面22(X-Y面)と平行な面である。また、液晶化合物24の分子軸L2は、主面21及び主面22(X-Y面)に対して傾斜していない。言い換えると、分子軸L2は主面21及び主面22(X-Y面)に対して平行である。したがって、図7に示すように、コレステリック液晶層20のX-Z面をSEMにて観察すると、明部25と暗部26とが交互に配列された配列方向P2は主面21及び主面22(X-Y面)と垂直となる。
コレステリック液晶相は鏡面反射性であるため、例えば、コレステリック液晶層20に斜め方向から光が入射される場合、入射角と同じ角度の反射角度で斜め方向に光が反射される(図6中の矢印参照)。このため、コレステリック液晶層20を導光部材に適用した場合、導光部材内を導光される光の、界面に対する角度を変えることができないため、導光部材から出射させることができない。
これに対して、図3及び図4に示すコレステリック液晶層10は、その反射面T1が主面11及び主面12(X-Y面)に対して所定方向に傾斜しているため、反射光異方性を有する。例えば、コレステリック液晶層10に斜め方向から光を入射させると、反射面T1によって、主面11及び主面12(X-Y面)の法線方向に光が反射される(図4中の矢印参照)。
この結果として、コレステリック液晶層10を導光部材に適用した場合、前述のとおり、導光部材内を導光される光の、界面に対する角度を変えることができるため、導光部材の正面方向に出射させることができる。
(ヘイズ)
コレステリック液晶層10は、上述した通り、X-Z面において、液晶化合物14が、主面11及び主面12(X-Y面)に対してその分子軸L1が傾斜配向し、且つ、主面11及び主面12(X-Y面)において、液晶化合物14の分子軸L1の向きが配列軸D1に沿った面内の一方向に連続的に回転しながら変化している。コレステリック液晶層10は、上記構成によって、X-Z面におけるSEMにより観測されるコレステリック液晶相由来の明部及び暗部からなる明暗線が高い直線性を示すと推測され、この結果として、ヘイズが低く、高い透明性を有する。
つまり、図3~図5に示すコレステリック液晶層10は、X-Z面においてSEMにより観察されるコレステリック液晶相由来の明部15がなす線(明線)及び暗部16がなす線(暗線)の直線性が高いほど(図5参照)、ヘイズがより低く、且つ、透明性により優れる。なかでも、コレステリック液晶相由来の暗部16がなす線と主面11とのなす平均傾斜角度と、暗部16がなす線と主面12とのなす平均傾斜角度とが、同一である場合、ヘイズがより低く、且つ、透明性により優れる。
上記平均傾斜角度は、X-Z面におけるSEMにより観測されるコレステリック液晶相由来の明暗線(図5参照)において、暗部16がなす線と主面11又は主面12とのなす角度の平均値として得られる。つまり、主面12側の平均傾斜角度は、主面12側の暗部16がなす線と主面12とのなす傾斜角度θa1、θa2・・θanの平均値として得られる。主面11側の平均傾斜角度は、主面11側の暗部16がなす線と主面11とのなす傾斜角度θb1、θb2・・・θbnの平均値として得られる。
コレステリック液晶層10は、ヘイズがより低く、且つ、透明性により優れる点で、主面11側の平均傾斜角度と主面12側の平均傾斜角度との差は、例えば、0~20°であることが好ましく、0~5°であることがより好ましく、0~1°であることが更に好ましい。なお、上記平均傾斜角度は、SEMにより観察される画像において、コレステリック液晶相由来の暗部16がなす線と主面11(又は主面12)とのなす角度を任意の5か所以上で測定して、それらを算術平均した値である。
(反射光の円偏光度)
ここで、図8及び図9に、他のコレステリック液晶層の模式図を示す。具体的には、図8は、主面41及び主面42からなる一対の主面43を有するコレステリック液晶層40の、主面41及び主面42での液晶化合物の配向状態を概念的に示す模式図である。また、図9は、コレステリック液晶層40の主面43に垂直な断面でのコレステリック液晶層の状態を示す。以下においては、コレステリック液晶層40の主面41及び主面42をX-Y面とし、このX-Y面に対して垂直な断面をX-Z面として説明する。つまり、図9は、コレステリック液晶層40のX-Y面での模式図であり、図9は、コレステリック液晶層40のX-Z面での模式図である。
図8に示すように、コレステリック液晶層40のX-Y面において、液晶化合物44は、X-Y面内の互いに平行な複数の配列軸D2に沿って配列しており、それぞれの配列軸D2上において、液晶化合物44の分子軸L4の向きは、配列軸D2に沿った面内の一方向に連続的に回転しながら変化している。つまり、コレステリック液晶層40のX-Y面における液晶化合物44の配向状態は、図3に示すコレステリック液晶層10のX-Y面における液晶化合物14の配向状態と同じである。
図9に示すように、コレステリック液晶層40のX-Z面においては、液晶化合物44の分子軸L4は、主面41及び主面42(X-Y面)に対して傾斜していない。言い換えると、分子軸L4は主面41及び主面42(X-Y面)に対して平行である。
コレステリック液晶層40は、上述した図8に示すX-Y面及び図9に示すX-Z面を有することにより、コレステリック液晶相由来の螺旋軸C3は、主面41及び主面42(X-Y面)に対して垂直であり、その反射面T3は主面41及び主面42(X-Y面)に対して所定方向に傾斜している。なお、上記コレステリック液晶層40のX-Z面をSEMにて観察すると、明部と暗部とが交互に配列された配列方向が主面41及び主面42(X-Y面)に対して所定角度で傾斜している縞模様が観察される(図5と同様)。
一方、図3及び図4に示すコレステリック液晶層10においては、分子軸L1は、X-Z面におけるSEM観察により観察される明部15と暗部16とが交互に配列された配列方向P1に対して略直交する。つまり、螺旋軸C1の方向は、明部15と暗部16とが交互に配列された配列方向P1に対して略平行となる。この結果として、図10に示すように、斜め方向から入射する光I0と螺旋軸C1とがより平行に近くなりやすく、反射面での反射光は、円偏光度が高くなる。これに対して、コレステリック液晶層40の場合、螺旋軸C3は主面41及び主面42(X-Y面)に対して垂直であることから、図11に示すように、斜め方向から入射する光I0の入射方向と螺旋軸C3の方向とは、そのなす角度がより大きくなる。つまり、斜め方向から入射する光I0の入射方向と螺旋軸C3の方向とがより非平行となる。このため、コレステリック液晶層10は、コレステリック液晶層40と比較すると、反射面での反射光は、円偏光度がより高くなる。
なお、光学部材60において、コレステリック液晶層10が、導光部材62とコレステリック液晶層10との界面に対する入射角と反射角とが異なるように導光部材10内を導光される光を反射するために、すなわち、反射異方性の観点から、コレステリック液晶層の主面に垂直な断面において走査型電子顕微鏡にて観察されるコレステリック液晶相由来の明部及び暗部の配列方向が、コレステリック液晶層の主面に対して10°~85°傾斜していることが好ましく、45°~85°傾斜していることがより好ましく、45°~70°傾斜していることがさらに好ましい。
また、反射光の円偏光度の観点から、コレステリック液晶層10において、液晶化合物14の分子軸L1は、明部15と暗部16とが交互に配列された配列方向P1に対して略直交することが好ましい。具体的には、分子軸L1と配列方向P1とのなす角度は、80~90°が好ましく、85~90°がより好ましい。
なお、液晶化合物14の分子軸L1と主面11及び主面12(X-Y面)とのなす平均角度(平均チルト角)θ3は、コレステリック液晶層10のX-Z面を偏光顕微鏡観察することにより測定できる。したがって、液晶化合物14の分子軸L1と、明部15と暗部16とが交互に配列された配列方向P1とがなす角度は、配列方向P1の、主面11及び主面12(X-Y面)に対する傾斜角度θ2と、平均チルト角θ3から算出することができる。
なお、上記平均チルト角は、コレステリック液晶層断面の偏光顕微鏡観察において、液晶化合物14の分子軸L1と主面11及び主面12とのなす角度を任意の5か所以上で測定して、それらを算術平均した値である。
ここで、図1に示す例では、光学部材60は導光部材62およびコレステリック液晶層10からなる構成としたが、これに限定はされず、他の層を有していてもよい。
例えば、図12に示すように、光学部材60はさらにλ/4板64を有する構成としてもよい。
λ/4板64は、導光部材62の、コレステリック液晶層10が積層される面とは反対側の面に積層されている。すなわち、λ/4板64は、コレステリック液晶層10によって反射された光が導光部材62から出射される面に積層される。また、λ/4板64は、面方向においてコレステリック液晶層10と重複する位置に配置されている。すなわち、λ/4板64は、コレステリック液晶層10によって反射され導光部材62から出射される光が透過するように配置される。
コレステリック液晶層10による反射光は円偏光である。したがって、導光部材62の出射面にλ/4板64を配置することで、光学部材60から出射される光を円偏光から直線偏光に変換することができる。
なお、図12に示す例おいては、λ/4板64は導光部材62の表面に積層する構成としたが、これに限定はされず、λ/4板64を導光部材62とコレステリック液晶層10との間に配置する構成としてもよい。
ここで、図2に示す例では、コレステリック液晶層10は、導光部材62内を導光される光をコレステリック液晶層10が配置される面とは反対側の面側に出射するように配置される構成とした。すなわち、図2に示す例では、コレステリック液晶層10の明部及び暗部の配列方向が、図2中左上向きになるように配置することで、図2中上方向に導光される光を右向きに出射する構成とした。しかしながら、本発明はこれに限定はされない。
図13に示す例のように、コレステリック液晶層10の明部及び暗部の配列方向が、図13中右上向きになるように配置することで、図13中上方向に導光される光を左向きに出射する構成とすることができる。すなわち、コレステリック液晶層10の向きを調整することで、図13に示すように、導光部材62内を導光される光をコレステリック液晶層10が配置される面側に出射する構成とすることもできる。
また、このように導光部材62内を導光される光をコレステリック液晶層10が配置される面側に出射する構成とした場合には、図14に示すようにコレステリック液晶層10の導光部材62とは反対側の面にλ/4板64を配置してもよい。これにより、光学部材60から出射される光を円偏光から直線偏光に変換することができる。
また、図1に示す例では、光学部材60は、1層のコレステリック液晶層10を有する構成としたが、これに限定はされず、光学部材は、2層以上のコレステリック液晶層を有する構成としてもよい。その際、選択反射波長の異なる2種以上のコレステリック液晶層を有する構成とするのが好ましい。
例えば、図15に示す例は、選択反射波長の異なる3種のコレステリック液晶層を有する構成である。コレステリック液晶層10Rは赤色領域に選択反射波長を有するコレステリック液晶層であり、コレステリック液晶層10Gは緑色領域に選択反射波長を有するコレステリック液晶層であり、コレステリック液晶層10Bは青色領域に選択反射波長を有するコレステリック液晶層である。
このように、光学部材が、それぞれ赤色領域、緑色領域および青色領域に選択反射波長を有するコレステリック液晶層を有する構成とすることで、白色光を導光部材の面方向から正面方向に導光する光学部材とすることができる。なお、図15のように、より短波長を反射するコレステリック液晶層を、反射光の出射側に設置することが好ましい。
なお、上記選択反射の中心波長λは、コレステリック液晶相における螺旋構造のピッチP(=螺旋の周期)に依存し、コレステリック液晶層の平均屈折率nとλ=n×Pの関係に従う。なお、ここで、コレステリック液晶層が有する選択反射の中心波長λは、コレステリック液晶層の法線方向から測定した円偏光反射スペクトルの反射ピークの重心位置にある波長を意味する。上記式から分かるように、螺旋構造のピッチを調節することによって、選択反射の中心波長を調節できる。コレステリック液晶相のピッチはキラル剤の種類、又はその添加濃度に依存するため、これらを調節することによって所望のピッチを得ることができる。なお、螺旋のセンス及びピッチの測定法については「液晶化学実験入門」日本液晶学会編 シグマ出版2007年出版、46頁、及び、「液晶便覧」液晶便覧編集委員会 丸善 196頁に記載の方法を用いることができる。
また、図5に示す例では、X-Z面におけるSEMにより観測されるコレステリック液晶相由来の明暗線は、直線状としたが、これに限定はされず、図17に示すコレステリック液晶層30のように、SEMにより観察されるコレステリック液晶相由来の明部25がなす線(明線)及び暗部26がなす線(暗線)が波状構造であってもよい。
コレステリック液晶相由来の明暗線の形状を波状にすることにより、コレステリック液晶層30の主面31及び主面32に対する、明暗線の局所的な位置での角度が異なるものとなるため、コレステリック液晶層30に対する入射角が同じであっても、局所的な位置によって反射角が異なるものとなる。従って、明暗線が直線状の場合と比べて、光拡散性が高くなる。なお、明暗線が波状のコレステリック液晶層30は、明暗線が直線状のコレステリック液晶層に比べてヘイズが若干増加しやすい。
明暗線が波状のコレステリック液晶層30は、例えば、図16に示すように、一方の主面31においては、液晶化合物34の分子軸L3が、面内の一定の方向を向くように配向し、他方の主面32においては、図3と同様に、液晶化合物14は、配列軸D1上において、液晶化合物14の分子軸L1の向きが、配列軸D1に沿った面内の一方向に連続的に回転しながら変化するように配向している構成とすることで形成することができる。
なお、コレステリック液晶層10において、主面11に存在する配列軸D1と主面12に存在する配列軸D1とは、平行であることが好ましい。
また、本発明において、コレステリック液晶層の液晶化合物の分子軸の向きが面内の少なくとも一つの方向に沿って連続的に回転しながら変化している主面において、液晶化合物の分子軸の向きが180°回転する長さを1周期Λとした際に、1周期Λの変動係数が0.6以下であることが好ましく、0.0~0.4がより好ましく、0.0~0.1がさらに好ましい。
1周期Λの変動係数を0.6以下とすることで、ヘイズをより低くすることができ、また、反射光の円偏光度をより高くすることができる。
なお、1周期Λの変動係数は、コレステリック液晶層の両主面側で上記範囲となるのが好ましい。
上記1周期Λは、反射偏光顕微鏡観察における明暗線の間隔に相当する。したがって、1周期Λの変動係数(標準偏差/平均値)は、反射偏光顕微鏡観察における明暗線の間隔をコレステリック液晶層の両主面についてそれぞれ10点測定して算出すればよい。
〔用途〕
本発明の光学部材において、コレステリック液晶層を1層又は2層以上含む光学部材は、様々な用途に用いることができる。コレステリック液晶層を2層以上含む光学部材において、各コレステリック液晶層が反射する円偏光のセンスは用途に応じて同じでも逆であってもよい。また、各コレステリック液晶層の後述の選択反射の中心波長も用途に応じて同じでも異なっていてもよい。
例えば、可視光波長域(波長400~750nm)に選択反射特性を示すコレステリック液晶層を含む光学部材は、各種の照明、スクリーン、加飾、透明ハーフミラー、反射板、光センサー、光発電等に利用できる。
また、紫外線領域あるいは赤外線領域の不可視光波長域に選択反射特性を示すコレステリック液晶層を含む光学部材は、セキュリティ用部材、光センサー、光発電等に利用できる。
具体的には、照明用途としては、図1に示す照明装置70のように、導光部材62の端面に対面して配置される光源72を有する構成とすることで、導光部材62の正面(主面)から面状の光を照射する照明装置とすることができる。このような面状の照明装置は、天井等に設けられる室内用の照明として用いることができる。また、窓として建物の壁の開口に照明装置70を配置することで、光源72を消灯した場合には外部の景色が視認でき、光源72を点灯した場合には照明となる、窓および照明装置としての機能を持つものとして用いることができる。また、パーテーションの窓としても上記と同様に用いることができる。
あるいは、図18に示す液晶表示装置80のように、液晶表示装置用の面状照明装置(バックライト)として用いることもできる。
図18に示す液晶表示装置80は、本発明の光学部材60を有する照明装置70と、光学部材60の導光部材62の、コレステリック液晶層10が積層された面とは反対側の主面に対面して配置される液晶パネル82とを有する。
一般的な液晶表示装置においては、導光部材の背面側(液晶パネルとは反対側の面側)には、反射板が配置されている。従って、図18に示す液晶表示装置80は、反射板としてコレステリック液晶層10を配置したものと言える。
ここで、本発明の光学部材では、容易に光を導光部材62の正面方向に反射することができるため、導光部材と液晶パネルとの間に光の方向を調整するためのプリズムシート等の部材が不要となるため薄型化することができる。
また、一般的な液晶表示装置において用いられている反射板は金属等からなり透明性を有さない。これに対して、本発明の光学部材を有する照明装置ではバックライトを透明化することができる。
また、上述のような、光源72を消灯した場合には向こう側の景色が視認でき、光源72を点灯した場合には照明となる照明装置は、透明ハーフミラーとして利用可能である。
また、図1に示す構成において、光源72を、プロジェクター等の画像投影装置に代えることで、投映像を表示するスクリーンとして用いることができる。
このようなスクリーン用途として用いる場合には、コレステリック液晶層の上記の機能により、投射光のうち選択反射を示す波長において、いずれか一方のセンスの円偏光を反射させて、投映像を形成できる。投映像は光学部材(導光部材)表面で表示され、そのように視認されるものであってもよく、観察者から見て光学部材(導光部材)の先に浮かび上がって見える虚像であってもよい。
また、光学部材をスクリーンとして用いる場合には、選択反射波長の異なる2種以上のコレステリック液晶層を有する構成とするのが好ましい。
各コレステリック液晶層の選択反射の中心波長を、投映に用いられる光源の発光波長域に応じて調節することにより、光利用効率良く鮮明な投映像を表示できる。特にコレステリック液晶層の選択反射の中心波長をそれぞれ投映に用いられる光源の発光波長域等に応じてそれぞれ調節することにより、光利用効率良く鮮明なカラー投映像を表示できる。
また、例えば、光学部材を可視光領域の光に対して透過性を有する構成とすることによりヘッドアップディスプレイのコンバイナとして使用可能な投影表示用ハーフミラーとすることができる。投映像表示用ハーフミラーは、プロジェクターから投映された画像を視認可能に表示できるとともに、画像が表示されている同じ面側から投映像表示用ハーフミラーを観察したときに、反対の面側にある情報又は風景を同時に観察できる。
また、光学部材が紫外線領域あるいは赤外線領域の不可視光波長域に選択反射特性を示すコレステリック液晶層を含む構成とすることで、光学部材をセキュリティ用部材として用いることができる。この場合には、導光部材の端面から紫外線あるいは赤外線を導光部材に入射して、導光部材の正面方向から出射されるか否かによって光学部材の真贋を判定することができる。
また、上記用途の例では、光学部材は、導光部材の端面から光を入射して導光部材の主面に平行な方向に導光する光を導光部材の正面方向に出射させる構成としたが、これに限定はされず、光学部材は、導光部材の正面方向から導光部材に入射する光を導光部材の端面に導光する構成としてもよい。
例えば、図19に示す例では、光学部材60の導光部材62の端面に太陽電池モジュール92が配置されている。このような構成において、導光部材62の正面から入射した光はコレステリック液晶層10の反射異方性によって導光部材62の面方向に進行するように反射されて、導光部材62の端面に向かって導光される。導光部材62の端面に到達した光は端面から出射されて太陽電池モジュール92に入射する。これにより導光部材62の主面に入射する光を導光部材62の端面に集光することができる。
このように、本発明の光学部材は、集光素子としても利用可能である。光学部材を集光素子として用いる場合には、上述のような光発電用途、および、光センサー用途の集光素子として用いることができる。
また、光学素子を集光素子として、上述のような光発電用途に用いる場合には、紫外線領域あるいは赤外線領域の不可視光波長域に選択反射特性を示すコレステリック液晶層を含む構成としてもよい。また、可視光波長域および不可視光波長域にそれぞれ選択反射特性を示すコレステリック液晶層を含む構成としてもよい。
また、光学素子を集光素子として用いる場合には、選択反射波長が同じで反射する円偏光のセンスが異なる2層を有する構成とするのが好ましい。
[コレステリック液晶層の製造方法]
本発明におけるコレステリック液晶層を製造するための製造方法として、コレステリック液晶層の配向基板として所定の液晶層を用い、且つ光照射により螺旋誘起力(HTP)が変化するキラル剤X、又は温度変化により螺旋誘起力が変化するキラル剤Yを含む液晶組成物を使用する方法が挙げられる。
以下に、本発明におけるコレステリック液晶層の製造方法について詳述する。
本発明におけるコレステリック液晶層の製造方法の一実施形態は、下記工程1及び下記工程2を有する。
工程1:円盤状液晶化合物を含む組成物を用いて、少なくとも一方の表面において上記円盤状液晶化合物の分子軸が上記表面に対して傾斜している液晶層を形成する工程1と、
工程2: 上記液晶層上に、液晶化合物を含む組成物を用いて、本発明のコレステリック液晶層を形成する工程2と、を有する。
以下、工程1及び工程2について、上述した第1実施形態のコレステリック液晶層10を例に挙げて詳述する。
〔工程1〕
工程1は、円盤状液晶化合物を含む組成物を用いて液晶層を形成する工程である。
上記液晶層の少なくとも一方の表面において、円盤状液晶化合物の分子軸は、上記表面に対して傾斜している。言い換えると、上記液晶層の少なくとも一方の表面において、円盤状液晶化合物は、その分子軸が上記表面に対して傾斜するように配向している。なお、本発明の製造方法においては、円盤状液晶化合物が傾斜配向した表面(以下「傾斜配向面」ともいう。)を有する液晶層の上記傾斜配向面上にコレステリック液晶層を形成する。
工程1の具体的な方法としては特に制限されず、下記工程1-1及び下記工程1-2を含むことが好ましい。なお、以下においては、円盤状液晶化合物を傾斜配向させる手法として、プレチルト角を有するラビング配向膜を表面に配置した基板を用いて組成物層を形成する方法(工程1-1)を示すが、円盤状液晶化合物を傾斜配向させる手法はこれに制限されず、例えば、液晶層形成用組成物に界面活性剤を添加する手法(例えば下記工程1-1’)であってもよい。この場合、工程1において、工程1-1の代わりに、下記工程1-1’を実施すればよい。
工程1-1’:円盤状液晶化合物及び界面活性剤を含む組成物を用いて、基板(表面にラビング配向膜を配置していなくてもよい)上に組成物層を形成する工程
また、円盤状液晶化合物が重合性基を有する場合、工程1は、後述するように、組成物層に対して硬化処理を実施することが好ましい。
工程1-1:円盤状液晶化合物を含む組成物(液晶層形成用組成物)を用いて、プレチルト角を有するラビング配向膜を表面に配置した基板上に組成物層を形成する工程
工程1-2:上記組成物層中の円盤状化合物を配向させる工程
以下に、工程1について説明する。
<基板>
基板は、後述する組成物層を支持する板である。なかでも、透明基板であることが好ましい。なお、透明基板とは、可視光の透過率が60%以上である基板を意図し、その透過率は80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
基板を構成する材料は特に制限されず、例えば、セルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、(メタ)アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、アミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、及び、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー等が挙げられる。
基板には、UV(紫外線)吸収剤、マット剤微粒子、可塑剤、劣化防止剤、及び、剥離剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。
なお、基板は、可視光領域で低複屈折性であることが好ましい。例えば、基板の波長550nmにおける位相差は50nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましい。
基板の厚さは特に制限されないが、薄型化、及び、取り扱い性の点から、10~200μmが好ましく、20~100μmがより好ましい。
上記厚さは平均厚さを意図し、基板の任意の5点の厚さを測定し、それらを算術平均したものである。この厚さの測定方法に関しては、後述する液晶層の厚さ、及びコレステリック液晶層の厚さも同様である。
プレチルト角を有するラビング配向膜の種類としては特に制限されないが、例えば、ポリビニルアルコール配向膜、及びポリイミド配向膜等を使用できる。
<液晶層形成用組成物>
以下、液晶層形成用組成物について説明する。
(円盤状液晶化合物)
液晶層形成用組成物は、円盤状液晶化合物を含む。
円盤状液晶化合物としては特に制限されず、公知の化合物を使用できるが、なかでも、トリフェニレン骨格を有するものが好ましい。
円盤状液晶化合物は、重合性基を有していてもよい。重合性基の種類は特に制限されず、付加重合反応が可能な官能基が好ましく、重合性エチレン性不飽和基又は環重合性基がより好ましい。より具体的には、重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基、エポキシ基、又は、オキセタン基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
(重合開始剤)
液晶層形成用組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。特に、円盤状液晶化合物が重合性基を有する場合、液晶層形成用組成物は重合開始剤を含むことが好ましい。
重合開始剤としては、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であることが好ましい。光重合開始剤としては、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
液晶層形成用組成物中での重合開始剤の含有量(重合開始剤が複数種含まれる場合にはその合計量)は特に制限されないが、円盤状液晶化合物全質量に対して、0.1~20質量%が好ましく、1.0~8.0質量%がより好ましい。
(界面活性剤)
液晶層形成用組成物は、上記組成物層の基板側表面及び/又は基板とは反対側の表面に偏在し得る界面活性剤を含んでいてもよい。液晶層形成用組成物が界面活性剤を含む場合、円盤状化合物が所望の傾斜角度で配向しやすくなる。
界面活性剤としては、例えば、オニウム塩化合物(特開2012-208397号明細書記載)、ボロン酸化合物(特開2013-54201明細書記載)、パーフルオロアルキル化合物(特許4592225号明細書記載、ネオス社フタージェント等)、及びこれらの官能基を含む高分子等が挙げられる。
界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
液晶層形成用組成物中での界面活性剤の含有量(界面活性剤が複数種含まれる場合にはその合計量)は特に制限されないが、円盤状化合物全質量に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.01~5.0質量%がより好ましく、0.01~2.0質量%が更に好ましい。
(溶媒)
液晶層形成用組成物は、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒としては、水又は有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ピリジン等のヘテロ環化合物;ベンゼン、及びヘキサン等の炭化水素;クロロホルム、及びジクロロメタン等のアルキルハライド類;酢酸メチル、酢酸ブチル、及びプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、及びシクロペンタノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、及び1,2-ジメトキシエタン等のエーテル類;1,4-ブタンジオールジアセテート;等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(その他の添加剤)
液晶層形成用組成物は、1種又は2種類以上の酸化防止剤、紫外線吸収剤、増感剤、安定剤、可塑剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、消泡剤、レべリング剤、増粘剤、難燃剤、界面活性物質、分散剤、並びに、染料及び顔料等の色材、等の他の添加剤を含んでいてもよい。
<工程1-1の手順>
工程1-1において、基板上に組成物層を形成する工程としては、上記基板上に、上述した液晶層形成用組成物の塗膜を形成する工程であることが好ましい。
塗布方法は特に制限されず、例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、及びダイコーティング法等が挙げられる。
なお、必要に応じて、液晶層形成用組成物の塗布後に、基板上に塗布された塗膜を乾燥する処理を実施してもよい。乾燥処理を実施することにより、塗膜から溶媒を除去できる。
塗膜の膜厚は特に制限されないが、0.1~20μmが好ましく、0.2~15μmがより好ましく、0.5~10μmが更に好ましい。また、一般的に導光板の入射端部側ほど光量が多いことから、均一な照明として用いる際には、コレステリック液晶層の膜厚が連続的に変化し、入射端部側ほど薄くなっている(反射率が小さくなっている)ことが好ましい。
<工程1-2の手順>
工程1-2は、上記塗膜を加熱することによって、上記組成物層中の円盤状化合物を配向させる工程であることが好ましい。
好ましい加熱条件としては、40~150℃(好ましくは、60~100℃)で0.5~5分間(好ましくは、0.5~2分間)にわたって組成物層を加熱することが好ましい。なお、組成物層を加熱する際には、液晶化合物が等方相(Iso)となる温度まで加熱しないことが好ましい。円盤状液晶化合物が等方相となる温度以上に組成物層を加熱してしまうと、傾斜配向した液晶相の欠陥が増加してしまい、好ましくない。
〔硬化処理〕
なお、円盤状液晶化合物が重合性基を有する場合、組成物層に対して硬化処理を実施することが好ましい。
硬化処理の方法は特に制限されず、光硬化処理及び熱硬化処理が挙げられる。なかでも、光照射処理が好ましく、紫外線照射処理がより好ましい。円盤状液晶化合物が重合性基を有する場合には、硬化処理は、光照射(特に紫外線照射)による重合反応であるのが好ましく、光照射(特に紫外線照射)によるラジカル重合反応であるのがより好ましい。
紫外線照射には、紫外線ランプ等の光源が利用される。
紫外線の照射エネルギー量は特に制限されないが、一般的には、100~800mJ/cm2程度が好ましい。なお、紫外線を照射する時間は特に制限されないが、得られる層の充分な強度及び生産性の双方の観点から適宜決定すればよい。
〔円盤状液晶化合物の平均傾斜角度、及び液晶層の傾斜配向面の方位角規制力〕
上記液晶層の上記傾斜配向面においては、液晶層の表面に対する円盤状液晶化合物の平均傾斜角度(平均チルト角)が、例えば、20~90°であることが好ましく、20~80°であることがより好ましく、30~80°であることが更に好ましく、30~65°であることが更に好ましい。
なお、上記平均傾斜角度は、液晶層断面の偏光顕微鏡観察において、円盤状液晶化合物の分子軸と液晶層の表面とのなす角度を任意の5か所以上で測定して、それらを算術平均した値である。
上記液晶層の上記傾斜配向面における、液晶層の表面に対する円盤状液晶化合物の平均傾斜角度は、液晶層断面の偏光顕微鏡観察することにより測定できる。
また、上記液晶層の上記傾斜配向面は、方位角規制力が、例えば、0.00030J/m2以下であり、0.00020J/m2未満であることが好ましく、0.00010J/m2以下がより好ましく、0.00005J/m2以下が更に好ましい。なお、下限は特に制限されないが、例えば、0.00000J/m2以上である。
上記液晶層の上記傾斜配向面における方位角規制力は、J. Appl. Phys. 1992, 33, L1242に記載の方法により測定できる。
〔工程2〕
工程2は、上記液晶層上に、液晶化合物を含む組成物を用いてコレステリック液晶層を形成する工程である。以下、工程2について説明する。
工程2は、下記工程2-1及び下記工程2-2を有することが好ましい。
工程2-1:
工程1で形成した液晶層上に、下記条件1又は下記条件2を満たす組成物層を形成する工程
条件1:上記組成物層中の上記液晶化合物の少なくとも一部が、上記組成物層表面に対して、傾斜配向している
条件2:上記組成物層中の上記液晶化合物のチルト角が厚み方向に沿って連続的に変化するように、上記液晶化合物が配向している
工程2-2:
上記組成物層中の上記液晶化合物をコレステリック配向させる処理を実施して、コレステリック液晶層を形成する工程。
以下に、工程2-1及び工程2-2について説明する。
<工程2-1の作用機序>
まず、図20に、工程2-1により得られる条件1を満たす組成物層の断面模式図を示す。なお、図20に示す液晶化合物14は、棒状液晶化合物である。
図20に示すように、組成物層100は、円盤状液晶化合物を用いて形成された液晶層102上に形成される。液晶層102は、組成物層100と接する側の表面において、円盤状液晶化合物の分子軸が、液晶層102の表面に対して傾斜している傾斜配向面102aを有する。なお、液晶層102及び傾斜配向面102aについては後述する。
図20に示すように、液晶層102の傾斜配向面102a上に配置される組成物層100中、液晶化合物14は、傾斜配向面102aによって緩く配向規制されることで、傾斜配向面102aに対して傾斜するように配向する。言い換えると、組成物層100中において、液晶化合物14は、液晶化合物14の分子軸L1が組成物層100の表面に対して所定の角度θ10となるように一定の方向(一軸方向)に配向している。
なお、図20では、組成物層100の厚み方向R1の全域に渡って、液晶化合物14が、傾斜配向面102aに対して分子軸L1が所定の角度θ10となるように配向している実施形態を示したが、工程2-1により得られる条件1を満たす組成物層としては、液晶化合物14の一部が傾斜配向していればよく、組成物層100の傾斜配向面102a側表面(図20中の領域Aに該当)、及び、組成物層100の傾斜配向面102a側とは反対側の表面(図20中の領域Bに該当)の少なくとも一方において、液晶化合物14が組成物層100の表面に対して分子軸L1が所定の角度θ10となるように配向していることが好ましく、傾斜配向面102a側表面において、液晶化合物14が、組成物層100の表面に対して分子軸L1が所定の角度θ10となるように傾斜配向していることがより好ましい。なお、領域A及び領域Bのいずれか少なくとも一方において、液晶化合物14が組成物層100の表面に対して分子軸L1が所定の角度θ10となるように配向していれば、続く工程2-2において液晶化合物14をコレステリック液晶相の状態とした際に、領域A及び/又は領域B中の配向された液晶化合物14に基づく配向規制力により、他の領域の液晶化合物14のコレステリック配向を誘起させることができる。
また、図示はしないが、上述した条件2を満たす組成物層は、上記図20に示す組成物層100において、液晶化合物14が、組成物層100の表面に対してハイブリッド配向したものに相当する。つまり、上述の図20の説明において、角度θ10が厚さ方向で連続的に変化する態様に相当する。具体的には、液晶化合物14は、そのチルト角θ20(組成物層100の表面に対する分子軸L1の角度)が組成物層100の厚み方向Rに沿って連続的に変化するように配向する。
なお、工程2-1により得られる条件2を満たす組成物層としては、液晶化合物14の一部がハイブリッド配向していればよく、組成物層100の傾斜配向面102a側表面(図20中の領域Aに該当)、及び、組成物層100の傾斜配向面102a側とは反対側の表面(図20中の領域Bに該当)の少なくとも一方において、液晶化合物14が傾斜配向面102aに対してハイブリッド配向していることが好ましく、傾斜配向面102a側表面において液晶化合物14が組成物層100の表面に対してハイブリッド配向していることがより好ましい。
角度θ10及びθ20は、組成物層全体において0°でなければ特に制限されない(なお、角度θ10が組成物層全体において0°である場合、液晶化合物14の分子軸L1は、液晶化合物14が棒状液晶化合物であるときは傾斜配向面102aに対して平行となる。)。言い換えると、組成物層の一部の領域において角度θ10及びθ20が0°であることを妨げるものではない。
角度θ10及びθ20としては、例えば0~90°である。なかでも、角度θ10及びθ20は、0~50°であることが好ましく、0~10°であることがより好ましい。
なお、コレステリック液晶層の反射異方性がより優れる点で、工程2-1により得られる組成物層は、条件1又は条件2を満たす組成物層が好ましく、条件2を満たす組成物層がより好ましい。
<工程2-2の作用機序>
上記工程2-1により条件1又は条件2を満たす組成物層を得た後、工程2-2において上記組成物層中の液晶化合物をコレステリック配向させて(言い換えると、上記液晶化合物をコレステリック液晶相として)、コレステリック液晶層を形成する。
この結果として、本実施形態のコレステリック液晶層(図3及び図4に示すコレステリック液晶層10)が得られる。
<液晶組成物の作用機序>
上述したとおり、本発明者らは、上記コレステリック液晶層の製造方法を達成する方法の一つとして、光照射により螺旋誘起力(HTP)が変化するキラル剤X、又は温度変化により螺旋誘起力が変化するキラル剤Yを含む液晶組成物を使用する方法を見いだしている。以下において、キラル剤Xを含む液晶組成物の作用機序、及びキラル剤Yを含む液晶組成物の作用機序について詳述する。
なお、キラル剤の螺旋誘起力(HTP)は、下記式(1A)で表される螺旋配向能力を示すファクターである。
式(1A) HTP=1/(螺旋ピッチの長さ(単位:μm)×液晶組成物中におけるキラル剤濃度(質量%))[μm-1
螺旋ピッチの長さとは、コレステリック液晶相の螺旋構造のピッチP(=螺旋の周期)の長さをいい、液晶便覧(丸善株式会社出版)の196ページに記載の方法で測定できる。
なお、上記HTPの値は、キラル剤の種類のみならず、組成物中に含まれる液晶化合物の種類によっても影響を受ける。よって、例えば、所定のキラル剤X及び液晶化合物Aを含む組成物と、所定のキラル剤X及び液晶化合物Aとは異なる液晶化合物Bを含む組成物とを用意し、同一温度で両者のHTPを測定した場合、その値が異なる場合もある。
なお、キラル剤の螺旋誘起力(HTP)は、下記式(1B)としても表される。
式(1B):HTP=(液晶化合物の平均屈折率)/{(液晶組成物中におけるキラル剤濃度(質量%))×(中心反射波長(nm))}[μm-1
なお、液相組成物が、2種以上のキラル剤を含む場合、上記式(1A)及び(1B)における「液晶組成物中におけるキラル剤濃度」は全キラル剤の濃度の総和に相当する。
(キラル剤Xを含む液晶組成物の作用機序)
以下において、キラル剤Xを含む液晶組成物を使用してコレステリック液晶層を形成する方法を説明する。
キラル剤Xを含む液晶組成物を使用してコレステリック液晶層を形成する場合、工程2-1において条件1又は条件2を満たす組成物層を形成した後、工程2-2において、上記組成物層に光照射処理を施すことにより、上記組成物層中の液晶化合物をコレステリック配向させる。つまり、上記工程2-2では、光照射処理によって、組成物層中のキラル剤Xの螺旋誘起力を変化させることにより、組成物層中の液晶化合物をコレステリック配向させている。
ここで、組成物層中の液晶化合物を配向させてコレステリック液晶相の状態とする上で、液晶化合物の螺旋を誘起する螺旋誘起力は、組成物層中に含まれているキラル剤の加重平均螺旋誘起力に概ね該当すると考えられる。ここでいう加重平均螺旋誘起力とは、例えば、2種類のキラル剤(キラル剤A及びキラル剤B)を併用した場合、下記式(1C)により表される。
式(1C) 加重平均螺旋誘起力(μm-1)=(キラル剤Aの螺旋誘起力(μm-1)×液晶組成物中におけるキラル剤Aの濃度(質量%)+キラル剤Bの螺旋誘起力(μm-1)×液晶組成物中におけるキラル剤Bの濃度(質量%))/(液晶組成物中におけるキラル剤Aの濃度(質量%)+液晶組成物中におけるキラル剤Bの濃度(質量%))
ただし、上記式(1C)において、キラル剤の螺旋方向が右巻きの場合、その螺旋誘起力は正の値とする。また、キラル剤の螺旋方向が左巻きの場合、その螺旋誘起力は負の値とする。つまり、例えば、螺旋誘起力が10μm-1のキラル剤の場合、上記キラル剤により誘起される螺旋の螺旋方向が右であるときは、螺旋誘起力を10μm-1として表す。一方、上記キラル剤により誘起される螺旋の螺旋方向が左であるときは、螺旋誘起力を-10μm-1として表す。
なお、上記式(1C)により得られる加重平均螺旋誘起力(μm-1)は、上記式(1A)及び上記式(1B)からも算出できる。
以下に、例えば、組成物層中に下記特性を有するキラル剤A及びキラル剤Bが含まれている場合の加重平均螺旋誘起力について述べる。
図21に示すように、上記キラル剤Aは、キラル剤Xに該当し、左方向(-)の螺旋誘起力を有し、光照射により螺旋誘起力を低減させるキラル剤である。
また、図21に示すように、上記キラル剤Bは、キラル剤Aとは逆方向である右方向(+)の螺旋誘起力を有し、光照射により螺旋誘起力が変化しないキラル剤である。ここで、未光照射時の「キラル剤Aの螺旋誘起力(μm-1)×キラル剤Aの濃度(質量%)」と「キラル剤Bの螺旋誘起力(μm-1)×キラル剤Bの濃度(質量%)」は等しいものとする。なお、図21において、縦軸の「キラル剤の螺旋誘起力(μm-1)×キラル剤の濃度(質量%)」は、その値がゼロから離れるほど、螺旋誘起力が大きくなる。
組成物層が上記キラル剤A及びキラル剤Bを含む場合、液晶化合物の螺旋を誘起する螺旋誘起力は、キラル剤A及びキラル剤Bの加重平均螺旋誘起力に一致する。この結果として、上記キラル剤Aと上記キラル剤Bとを併用した系においては、図22に示すように、液晶化合物の螺旋を誘起する螺旋誘起力は、照射光量が大きいほど、キラル剤B(キラル剤Yに該当)が誘起する螺旋の方向(+)に螺旋誘起力が大きくなると考えられる。
本実施形態のコレステリック液晶層の製造方法においては、工程2-1により形成される組成物層中のキラル剤の加重平均螺旋誘起力の絶対値は特に制限されないが、組成物層が形成しやすい点で、例えば、0.0~1.9μm-1が好ましく、0.0~1.5μm-1がより好ましく、0.0~0.5μm-1が更に好ましく、ゼロが最も好ましい(図21参照)。一方で、工程2-2の光照射処理の際においては、組成物層中のキラル剤の加重平均螺旋誘起力の絶対値は、液晶化合物をコレステリック配向させることが可能であれば特に制限されないが、例えば、10.0μm-1以上が好ましく、10.0~200.0μm-1がより好ましく、20.0~200.0μm-1が更に好ましい。
つまり、工程2-1の際には組成物層中のキラル剤Xはその螺旋誘起力が略ゼロに相殺されることによって、組成物層中の液晶化合物を配向させて、傾斜配向、又はハイブリッド配向とすることができる。次いで、工程2-2の光照射処理を契機として、キラル剤Xの螺旋誘起力を変化させて、組成物層中のキラル剤の加重平均螺旋誘起力を右方向(+)又は左方向(-)のいずれかの方向に増大させることで、本実施形態のコレステリック液晶層(例えば、コレステリック液晶層10)が得られる。
(キラル剤Yを含む液晶組成物の作用機序)
次に、キラル剤Yを含む液晶組成物を使用してコレステリック液晶層を形成する方法を説明する。
キラル剤Yを含む液晶組成物を使用してコレステリック液晶層を形成する場合、工程2-1において条件1又は条件2を満たす組成物層を形成した後、工程2-2において、上記組成物層に冷却処理又は加熱処理を施すことにより、上記組成物層中の液晶化合物をコレステリック配向させる。つまり、上記工程2-2では、冷却処理又は加熱処理によって、組成物層中のキラル剤Yの螺旋誘起力を変化させることにより、組成物層中の液晶化合物をコレステリック配向させている。
上述の通り、組成物層中の液晶化合物を配向させてコレステリック液晶相の状態とする上で、液晶化合物の螺旋を誘起する螺旋誘起力は、組成物層中に含まれているキラル剤の加重平均螺旋誘起力に概ね相当すると考えられる。ここでいう加重平均螺旋誘起力とは、上述した通りである。
以下に、工程2―2において冷却処理を施すことによって上記組成物層中の液晶化合物をコレステリック配向させる実施形態を一例として、キラル剤Yの作用機序を説明する。
まず、以下において、例えば、組成物層中に下記特性を有するキラル剤A及びキラル剤Bが含まれている場合の加重平均螺旋誘起力について述べる。
図23に示すように、上記キラル剤Aは、キラル剤Yに該当し、工程1において条件1又は条件2を満たす組成物層を形成するための液晶化合物の配向処理が実施される温度T11、及び工程2-2の冷却処理が実施される温度T12において左方向(-)の螺旋誘起力を有し、より低温領域であるほど左方向(-)への螺旋誘起力を増大させるキラル剤である。また、図23に示すように、上記キラル剤Bは、キラル剤Aとは逆方向である右方向(+)の螺旋誘起力を有し、温度変化により螺旋誘起力が変化しないキラル剤である。ここで、温度T11時の「キラル剤Aの螺旋誘起力(μm-1)×キラル剤Aの濃度(質量%)」と「キラル剤Bの螺旋誘起力(μm-1)×キラル剤Bの濃度(質量%)」は等しいものとする。
組成物層が上記キラル剤A及びキラル剤Bを含む場合、液晶化合物の螺旋を誘起する螺旋誘起力は、キラル剤A及びキラル剤Bの加重平均螺旋誘起力に一致する。この結果として、上記キラル剤Aと上記キラル剤Bとを併用した系においては、図24に示すように、液晶化合物の螺旋を誘起する螺旋誘起力は、より低温領域であるほど、キラル剤A(キラル剤Yに該当)が誘起する螺旋の方向(-)に螺旋誘起力が大きくなると考えられる。
本実施形態のコレステリック液晶層の製造方法においては、組成物層中のキラル剤の加重平均螺旋誘起力の絶対値は特に制限されないが、工程2-1の条件1又は条件2を満たす組成物層を形成する際においては(つまり、本実施形態の場合、条件1又は条件2を満たす組成物層を形成するための液晶化合物の配向処理が実施される温度T11においては)組成物層が形成しやすい点で、0.0~1.9μm-1が好ましく、0.0~1.5μm-1がより好ましく、0.0~0.5μm-1が更に好ましく、ゼロが最も好ましい。
一方で、工程2-2の冷却処理が実施される温度T12においては、組成物層中のキラル剤の加重平均螺旋誘起力の絶対値は、液晶化合物をコレステリック配向させることが可能であれば特に制限されないが、10.0μm-1以上が好ましく、10.0~200.0μm-1がより好ましく、20.0~200.0μm-1が更に好ましい(図24参照)。
つまり、温度T11においてキラル剤Yはその螺旋誘起力が略ゼロに相殺されているため、液晶化合物を傾斜配向又はハイブリッド配向とすることができる。次いで、工程2-2の冷却処理又は加熱処理(温度T12への温度変化)を契機として、キラル剤Yの螺旋誘起力を増大させて、組成物層中のキラル剤の加重平均螺旋誘起力を右方向(+)又は左方向(-)のいずれかの方向に増大させることで、本実施形態のコレステリック液晶層(例えば、コレステリック液晶層10)が得られる。
<工程2の手順>
以下に、工程2の手順について詳述する。なお、以下においては、キラル剤Xを含む液晶組成物を使用する態様と、キラル剤Yを含む液晶組成物を使用する態様とに分けて詳述する。
(キラル剤Xを含む液晶組成物を使用する態様)
以下、キラル剤Xを含む液晶組成物を使用した工程2の手順(以下、「工程2X」ともいう。)について説明する。
工程2Xは、下記工程2X-1及び工程2X-2を少なくとも有する。
工程2X-1:キラル剤X及び液晶化合物を含む液晶組成物を用いて、液晶層上に下記条件1又は下記条件2を満たす組成物層を形成する工程
工程2X-2:上記組成物層に対して光照射処理を施すことにより、上記組成物層中の上記液晶化合物をコレステリック配向させてコレステリック液晶層を形成する工程
条件1:上記組成物層中の上記液晶化合物の少なくとも一部が、上記組成物層表面に対して、傾斜配向している
条件2:上記組成物層中の上記液晶化合物のチルト角が厚み方向に沿って連続的に変化するように、上記液晶化合物が配向している
また、液晶化合物が重合性基を有する場合、工程2Xは、後述するように、組成物層に対して硬化処理を実施することが好ましい。
以下、各工程で使用される材料、及び、各工程の手順について詳述する。
≪工程2X-1≫
工程2X-1は、キラル剤X及び液晶化合物を含む液晶組成物(以下、「組成物X」ともいう。)を用いて、液晶層上に上記条件1又は上記条件2を満たす組成物層を形成する工程である。
以下では、組成物Xについて詳述し、その後、工程の手順について詳述する。
≪≪組成物X≫≫
組成物Xは、液晶化合物と、光照射により螺旋誘起力が変化するキラル剤Xと、を含む。以下に、各成分について説明する。
上述したとおり、工程2X-1により得られる組成物層中のキラル剤の加重平均螺旋誘起力の絶対値は、組成物層が形成しやすい点で、0.0~1.9μm-1が好ましく、0.0~1.5μm-1がより好ましく、0.0~0.5μm-1が更に好ましく、ゼロが最も好ましい。したがって、キラル剤Xが未光照射処理の状態で上記所定範囲を超える螺旋誘起力を有する場合、組成物Xは、キラル剤Xとは逆方向の螺旋を誘起させるキラル剤(以下、「キラル剤XA」ともいう。)を含み、工程2X-1の際にはキラル剤Xの螺旋誘起力を略ゼロに相殺させておく(つまり、工程2X-1により得られる組成物層中のキラル剤の加重平均螺旋誘起力を上記所定範囲としておく)ことが好ましい。なお、キラル剤XAは、光照射処理により螺旋誘起力を変化させない化合物であることがより好ましい。
また、液晶組成物がキラル剤としてキラル剤Xを複数種含むときであって、未光照射処理の状態で複数種のキラル剤Xの加重平均螺旋誘起力が上記所定範囲外の螺旋誘起力である場合、「キラル剤Xとは逆方向の螺旋を誘起させる他のキラル剤XA」とは、上記複数種のキラル剤Xの加重平均螺旋誘起力に対して逆方向の螺旋を誘起させるキラル剤を意図する。
キラル剤Xが一種単独で、未光照射処理の状態で螺旋誘起力を有さず、光照射によって螺旋誘起力を増大させる特性を有する場合、キラル剤XAを併用しなくてもよい。
・液晶化合物
液晶化合物の種類は、特に制限されない。
一般的に、液晶化合物はその形状から、棒状タイプ(棒状液晶化合物)と円盤状タイプ(ディスコティック液晶化合物、円盤状液晶化合物)とに分類できる。更に、棒状タイプ及び円盤状タイプには、それぞれ低分子タイプと高分子タイプとがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶化合物を用いることもできる。また、2種以上の液晶化合物を併用してもよい。
液晶化合物は、重合性基を有する重合性液晶化合物であってもよい。重合性基の種類は特に制限されず、付加重合反応が可能な官能基が好ましく、重合性エチレン性不飽和基又は環重合性基がより好ましい。より具体的には、重合性基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基、エポキシ基、又は、オキセタン基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。重合性基は種々の方法で、液晶化合物の分子中に導入できる。重合性液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1~6個、より好ましくは1~3個である。
重合性液晶化合物の例は、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、米国特許第5622648号明細書、米国特許第5770107号明細書、国際公開第95/22586号、国際公開第95/24455号、国際公開第97/00600号、国際公開第98/23580号、国際公開第98/52905号、特開平1-272551号公報、特開平6-16616号公報、特開平7-110469号公報、特開平11-80081号公報、および、特開2001-328973号公報等に記載の化合物が含まれる。
・光照射により螺旋誘起力が変化するキラル剤X
キラル剤Xは、液晶化合物の螺旋を誘起する化合物であり、光照射により螺旋誘起力(HTP)が変化するキラル剤であれば特に制限されない。
また、キラル剤Xは、液晶性であっても、非液晶性であってもよい。キラル剤Xは、一般に不斉炭素原子を含む。ただし、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物又は面性不斉化合物を、キラル剤Xとして用いることもできる。キラル剤Xは、重合性基を有していてもよい。
キラル剤Xとしては、いわゆる光反応型キラル剤が挙げられる。光反応型キラル剤とは、キラル部位と光照射によって構造変化する光反応部位を有し、例えば、照射光量に応じて液晶化合物の捩れ力を大きく変化させる化合物である。
光照射によって構造変化する光反応部位の例としては、フォトクロミック化合物(内田欣吾、入江正浩、化学工業、vol.64、640p,1999、内田欣吾、入江正浩、ファインケミカル、vol.28(9)、15p,1999)等が挙げられる。また、上記構造変化とは、光反応部位への光照射により生ずる、分解、付加反応、異性化、及び2量化反応等を意味し、上記構造変化は不可逆的であってもよい。また、キラル部位としては、例えば、野平博之、化学総説、No.22液晶の化学、73p:1994に記載の不斉炭素等が相当する。
上記光反応型キラル剤としては、例えば、特開2001-159709号公報の段落0044~0047に記載の光反応型キラル剤、特開2002-179669号公報の段落0019~0043に記載の光学活性化合物、特開2002-179633号公報の段落0020~0044に記載の光学活性化合物、特開2002-179670号公報の段落0016~0040に記載の光学活性化合物、特開2002-179668号公報の段落0017~0050に記載の光学活性化合物、特開2002-180051号公報の段落0018~0044に記載の光学活性化合物、特開2002-338575号公報の段落0016~0055に記載の光学活性化合物、及び特開2002-179682号公報の段落0020~0049に記載の光学活性化合物等が挙げられる。
キラル剤Xとしては、なかでも、光異性化部位を少なくとも一つ有する化合物が好ましい。上記光異性化部位としては、可視光の吸収が小さく、光異性化が起こりやすく、且つ、光照射前後の螺旋誘起力差が大きいという点で、シンナモイル部位、カルコン部位、アゾベンゼン部位、スチルベン部位又はクマリン部位が好ましく、シンナモイル部位又はカルコン部位がより好ましい。なお、光異性化部位は、上述した光照射によって構造変化する光反応部位に該当する。
また、キラル剤Xは、光照射前後の螺旋誘起力差が大きいという点で、イソソルビド系光学活性化合物、イソマンニド系光学化合物、又はビナフトール系光学活性化合物が好ましい。つまり、キラル剤Xは、上述したキラル部位として、イソソルビド骨格、イソマンニド骨格、又はビナフトール骨格を有していることが好ましい。キラル剤Xとしては、なかでも、光照射前後の螺旋誘起力差がより大きいという点で、イソソルビド系光学活性化合物又はビナフトール系光学活性化合物がより好ましく、イソソルビド系光学活性化合物が更に好ましい。
コレステリック液晶相の螺旋ピッチはキラル剤Xの種類及びその添加濃度に大きく依存するため、これらを調節することによって所望のピッチを得ることができる。
キラル剤Xは、1種単独で使用しても、複数種を併用してもよい。
組成物X中におけるキラル剤の総含有量(組成物X中の全てのキラル剤の総含有量)は、液晶化合物の全質量に対して、2.0質量%以上が好ましく、3.0質量%以上がより好ましい。また、組成物X中におけるキラル剤の総含有量の上限は、コレステリック液晶層のヘイズ抑制の点で、液晶化合物の全質量に対して、15.0質量%以下が好ましく、12.0質量%以下がより好ましい。
・任意の成分
組成物Xには、液晶化合物、キラル剤X以外の他の成分が含まれていてもよい。
・・キラル剤XA
キラル剤XAとしては、液晶化合物の螺旋を誘起する化合物であり、光照射により螺旋誘起力(HTP)が変化しないキラル剤が好ましい。
また、キラル剤XAは、液晶性であっても、非液晶性であってもよい。キラル剤XAは、一般に不斉炭素原子を含む。ただし、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物又は面性不斉化合物を、キラル剤XAとして用いることもできる。キラル剤XAは、重合性基を有していてもよい。
キラル剤XAとしては、公知のキラル剤を使用できる。
液晶組成物が、キラル剤Xを1種単独で含み、キラル剤Xが未光照射処理の状態で所定範囲(例えば、0.0~1.9μm-1)を超える螺旋誘起力を有する場合、キラル剤XAは、上述したキラル剤Xと逆向きの螺旋を誘起するキラル剤であることが好ましい。つまり、例えば、キラル剤Xにより誘起する螺旋が右方向の場合には、キラル剤XAにより誘起する螺旋は左方向となる。
また、液晶組成物がキラル剤としてキラル剤Xを複数種含むときであって、未光照射処理の状態でその加重平均螺旋誘起力が上記所定範囲を超える場合、キラル剤XAは、上記加重平均螺旋誘起力に対して逆方向の螺旋を誘起させるキラル剤であることが好ましい。
・・重合開始剤
組成物Xは、重合開始剤を含んでいてもよい。特に、液晶化合物が重合性基を有する場合、組成物Xが重合開始剤を含むことが好ましい。
重合開始剤としては、液晶層中に含み得る重合開始剤と同様のものが挙げられる。なお、液晶層中に含み得る重合開始剤については上述の通りである。
組成物X中での重合開始剤の含有量(重合開始剤が複数種含まれる場合にはその合計量)は特に制限されないが、液晶化合物全質量に対して、0.1~20質量%が好ましく、1.0~8.0質量%がより好ましい。
・・界面活性剤
組成物Xは、組成物層の傾斜配向面102a側表面及び/又は傾斜配向面102aとは反対側の表面に偏在し得る界面活性剤を含んでいてもよい。
組成物Xに配向制御剤が界面活性剤を含む場合、上記条件1又は上記条件2を満たす組成物層が得られやすくなり、また、安定的又は迅速なコレステリック液晶相の形成が可能となる。
界面活性剤としては、液晶層中に含み得る界面活性剤と同様のものが挙げられる。なお、液晶層中に含み得る界面活性剤については上述の通りである。
組成物Xは、なかでも、工程2X-1において形成される組成物層中、傾斜配向面102a側表面において液晶化合物14の分子軸Lの傾斜配向面102a面に対する傾斜角(図20参照)を制御し得る界面活性剤(例えば、オニウム塩化合物(特開2012-208397号明細書記載))、及び、傾斜配向面102a側とは反対側の表面において上記液晶化合物14の分子軸L1の傾斜配向面102a面に対する傾斜角(図20参照)を制御し得る界面活性剤(例えば、パーフルオロアルキル基を側鎖に有する高分子等)を含むことが好ましい。また、組成物Xが上述の界面活性剤を含む場合、得られるコレステリック液晶層はヘイズが小さいという利点も有する。
界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
組成物X中での界面活性剤の含有量(界面活性剤が複数種含まれる場合にはその合計量)は特に制限されないが、液晶化合物全質量に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.01~5.0質量%がより好ましく、0.01~2.0質量%が更に好ましい。
・・溶媒
組成物Xは、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒としては、液晶層中に含み得る溶媒と同様のものが挙げられる。なお、液晶層中に含み得る溶媒については上述の通りである。
・・その他の添加剤
組成物Xは、1種又は2種類以上の酸化防止剤、紫外線吸収剤、増感剤、安定剤、可塑剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、消泡剤、レべリング剤、増粘剤、難燃剤、界面活性物質、分散剤、並びに、染料及び顔料等の色材、等の他の添加剤を含んでいてもよい。
組成物Xを構成する化合物の1以上が、複数の重合性基を有する化合物(多官能性化合物)であるのが好ましい。更に、組成物Xにおいては、複数の重合性基を有する化合物の総含有量が、組成物X中の全固形分に対して、80質量%以上であるのが好ましい。なお、この上記固形分とは、コレステリック液晶層を形成する成分であり、溶媒は含まれない。
組成物X中の全固形分の80質量%以上を、複数の重合性基を有する化合物とすることにより、コレステリック液晶相の構造を強固に固定して耐久性を付与できる等の点で好ましい。
なお、複数の重合性基を有する化合物とは、1分子内に2つ以上の固定化可能な基を有する化合物である。本発明において、組成物Xが含む多官能性化合物は、液晶性を有するものでも、液晶性を有さないものでもよい。
≪≪工程2X-1の手順≫≫
工程2X-1は、下記工程2X-1-1と、下記工程2X-1-2と、を有することが好ましい。
工程2X-1-1:組成物Xと上記液晶層とを接触させて、上記液晶層上に塗膜を形成する工程
工程2X-1-2:上記塗膜を加熱することによって、上記条件1又は上記条件2を満たす組成物層を形成する工程
・工程2X-1-1:塗膜形成工程
工程2X-1-1では、まず、上述した組成物Xを液晶層上に塗布する。塗布方法は特に制限されず、例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、及び、ダイコーティング法等が挙げられる。なお、組成物Xの塗布に先立ち、上記液晶層に公知のラビング処理を施してもよい。
なお、必要に応じて、組成物Xの塗布後に、上記液晶層上に塗布された塗膜を乾燥する処理を実施してもよい。乾燥処理を実施することにより、塗膜から溶媒を除去できる。
塗膜の膜厚は特に制限されないが、コレステリック液晶層の反射異方性及びヘイズがより優れる点で、0.1~20μmが好ましく、0.2~15μmがより好ましく、0.5~10μmが更に好ましい。
・工程2X-1-2:組成物層形成工程
組成物Xの液晶相転移温度は、製造適性の面から10~250℃の範囲内が好ましく、10~150℃の範囲内がより好ましい。
好ましい加熱条件としては、40~100℃(好ましくは、60~100℃)で0.5~5分間(好ましくは、0.5~2分間)にわたって組成物層を加熱することが好ましい。
組成物層を加熱する際には、液晶化合物が等方相(Iso)となる温度まで加熱しないことが好ましい。液晶化合物が等方相となる温度以上に組成物層を加熱してしまうと、傾斜配向した液晶相又はハイブリッド配向した液晶相の欠陥が増加してしまい、好ましくない。
上記工程2X-1-2により、上記条件1又は上記条件2を満たす組成物層が得られる。
なお、液晶化合物を傾斜配向又はハイブリッド配向させるためには、界面にプレチルト角度を与えることが有効であり、具体的には、下記の方法が挙げられる。
(1)組成物X中に、空気界面及び/又は液晶層界面に偏在して、液晶化合物の配向を制御する配向制御剤を添加する。
(2)組成物X中に、液晶化合物として、界面におけるプレチルト各が大きい液晶性化合物を添加する。
≪工程2X-2≫
工程2X-2は、工程2X-1により得られた組成物層に対して光照射処理を施すことにより、キラル剤Xの螺旋誘起力を変化させ、組成物層中の液晶化合物をコレステリック配向させてコレステリック液晶層を形成する工程である。
なお、光照射領域を複数のドメインに分割し、各ドメイン毎に照射光量を調整することにより、更に螺旋ピッチが異なる領域(選択反射波長が異なる領域)を形成できる。
工程2X-2における光照射の照射強度は特に制限されず、キラル剤Xの螺旋誘起力に基づいて適宜決定することができる。工程2X-2における光照射の照射強度は、一般的には、0.1~200mW/cm2程度が好ましい。また、光を照射する時間は特に制限されないが、得られる層の充分な強度及び生産性の双方の観点から適宜決定すればよい。
また、光照射時における組成物層の温度は、例えば、0~100℃であり、10~60℃が好ましい。
光照射に使用される光は、キラル剤Xの螺旋誘起力を変化させる活性光線又は放射線であれば特に制限されず、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光:Extreme Ultraviolet)、X線、紫外線、及び電子線(EB:Electron Beam)等を意味する。なかでも、紫外線が好ましい。
ここで、本発明で用いられるコレステリック液晶層の製造方法においては、組成物層が風に晒されると、形成されるコレステリック液晶層の表面の面状にムラが生じてしまう可能性がある。この点を考慮すると、本発明で用いられるコレステリック液晶層の製造方法では、工程2Xの全工程において、組成物層が晒される環境の風速が低い方が好ましい。具体的には、本発明で用いられるコレステリック液晶層の製造方法では、工程2Xの全工程において、組成物層が晒される環境の風速は、1m/s以下が好ましい。
≪硬化処理≫
なお、液晶化合物が重合性基を有する場合、組成物層に対して硬化処理を実施することが好ましい。組成物層に対して硬化処理を実施する手順としては、以下に示す(1)及び(2)が挙げられる。
(1)工程2X-2の際に、コレステリック配向状態を固定化する硬化処理を施し、コレステリック配向状態が固定化されたコレステリック液晶層を形成する(つまり、工程2X-2と同時に硬化処理を実施する)か、又は、
(2)工程2X-2の後に、コレステリック配向状態を固定化する硬化処理を施し、コレステリック配向状態が固定化されたコレステリック液晶層を形成する工程3Xを更に有する。
つまり、硬化処理を実施して得られるコレステリック液晶層は、コレステリック液晶相を固定してなる層に該当する。
なお、ここで、コレステリック液晶相を「固定化した」状態は、コレステリック液晶相となっている液晶化合物の配向が保持された状態が最も典型的、且つ、好ましい態様である。それだけには制限されず、具体的には、通常0~50℃、より過酷な条件下では-30~70℃の温度範囲において、層に流動性が無く、また、外場もしくは外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を意味するものとする。本発明では、後述するように、紫外線照射によって進行する硬化反応により、コレステリック液晶相の配向状態を固定することが好ましい。
なお、コレステリック液晶相を固定してなる層においては、コレステリック液晶相の光学的性質が層中において保持されていれば十分であり、最終的に層中の組成物がもはや液晶性を示す必要はない。
硬化処理の方法は特に制限されず、光硬化処理及び熱硬化処理が挙げられる。なかでも、光照射処理が好ましく、紫外線照射処理がより好ましい。また、前述のように、液晶化合物は、重合性基を有する液晶化合物であるのが好ましい。液晶化合物が重合性基を有する場合には、硬化処理は、光照射(特に紫外線照射)による重合反応であるのが好ましく、光照射(特に紫外線照射)によるラジカル重合反応であるのがより好ましい。
紫外線照射には、紫外線ランプ等の光源が利用される。
紫外線の照射エネルギー量は特に制限されないが、一般的には、100~800mJ/cm2程度が好ましい。なお、紫外線を照射する時間は特に制限されないが、得られる層の充分な強度及び生産性の双方の観点から適宜決定すればよい。
(キラル剤Yを含む液晶組成物を使用する態様)
以下、キラル剤Yを含む液晶組成物を使用したコレステリック液晶層の製造方法(以下、「工程2Y」ともいう。)について説明する。
製造方法2Yは、下記工程2Y-1及び工程2Y-2を少なくとも有する。
工程2Y-1:キラル剤Y及び液晶化合物を含む液晶組成物を用いて、上記液晶層上に下記条件1又は下記条件2を満たす組成物層を形成する工程
工程2Y-2:上記組成物層に対して冷却処理又は加熱処理を施すことにより、上記組成物層中の上記液晶化合物をコレステリック配向させてコレステリック液晶層を形成する工程
条件1:上記組成物層中の上記液晶化合物少なくとも一部が、上記組成物層表面に対して、傾斜配向している
条件2:上記組成物層中の上記液晶化合物のチルト角が厚み方向に沿って連続的に変化するように、上記液晶化合物が配向している
また、液晶化合物が重合性基を有する場合、工程2Yは、後述するように、組成物層に対して硬化処理を実施することが好ましい。
以下、各工程で使用される材料、及び、各工程の手順について詳述する。
≪工程2Y-1≫
工程2Y-1は、キラル剤Y及び液晶化合物を含む液晶組成物(以下、「組成物Y」ともいう)。を用いて、液晶層上に上記条件1又は上記条件2を満たす組成物層を形成する工程である。
工程2Y-1は、組成物Xの代わりに組成物Yを使用する点以外は、工程手順はいずれも上述した工程2X-1と同様であり、説明を省略する。
≪≪組成物Y≫≫
組成物Yは、液晶化合物と、温度変化により螺旋誘起力が変化するキラル剤Yと、を含む。以下に、各成分について説明する。
なお、上述したとおり、組成物層中のキラル剤の加重平均螺旋誘起力の絶対値は、工程2Y-1における上記条件1又は上記条件2を満たす組成物層を形成するための液晶化合物の配向処理が実施される温度T11においては、組成物層が形成しやすい点で、例えば、0.0~1.9μm-1であり、0.0~1.5μm-1が好ましく、0.0~0.5μm-1が更に好ましく、ゼロが特に好ましい。したがって、キラル剤Yが上記温度T11において上記所定範囲を超える螺旋誘起力を有する場合、組成物Yは、上記温度T11においてキラル剤Yとは逆方向の螺旋を誘起させるキラル剤(以下、「キラル剤YA」ともいう。)を含み、工程2Y-1の際においてキラル剤Yの螺旋誘起力を略ゼロに相殺させておく(つまり、組成物層中のキラル剤の加重平均螺旋誘起力を上記所定範囲としておく)ことが好ましい。なお、キラル剤YAは温度変化により螺旋誘起力を変化させないことが好ましい。
また、液晶組成物がキラル剤としてキラル剤Yを複数種含むときであって、上記温度T11において複数種のキラル剤Yの加重平均螺旋誘起力が上記所定範囲外の螺旋誘起力である場合、「キラル剤Yとは逆方向の螺旋を誘起させる他のキラル剤YA」とは、上記複数種のキラル剤Yの加重平均螺旋誘起力に対して逆方向の螺旋を誘起させるキラル剤を意図する。
キラル剤Yが一種単独で、上記温度T11において螺旋誘起力を有さず、温度変化により螺旋誘起力を増大させる特性を有する場合、キラル剤YAを併用しなくてもよい。
以下、組成物Yが含む各種材料について説明する。なお、組成物Y中に含まれる材料のうちキラル剤以外の成分については、組成物Xに含まれる材料と同様であるため、その説明を省略する。
・冷却又は加熱により螺旋誘起力が変化するキラル剤Y
キラル剤Yは、液晶化合物の螺旋を誘起する化合物であり、冷却又は加熱により螺旋誘起力が大きくなるキラル剤であれば特に制限されない。なお、ここでいう「冷却又は加熱」とは、工程2Y-1において実施される冷却処理又は加熱処理を意味する。また、冷却又は加熱の温度の上限は、通常±150℃程度である(言い換えると、±150℃以内の冷却又は加熱により螺旋誘起力が大きくなるキラル剤が好ましい)。なかでも、冷却により螺旋誘起力が大きくなるキラル剤が好ましい。
キラル剤Yは、液晶性であっても、非液晶性であってもよい。キラル剤は、公知の種々のキラル剤(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4-3項、TN(Twisted Nematic)、STN(Super Twisted Nematic)用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)から選択できる。キラル剤Yは、一般に不斉炭素原子を含む。ただし、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物又は面性不斉化合物を、キラル剤Yとして用いることもできる。軸性不斉化合物又は面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファン及びこれらの誘導体が含まれる。キラル剤Yは、重合性基を有していてもよい。
キラル剤Yは、なかでも、温度変化後の螺旋誘起力差が大きいという点で、イソソルビド系光学活性化合物、イソマンニド系光学活性化合物又はビナフトール系光学活性化合物が好ましく、ビナフトール系光学活性化合物がより好ましい。
組成物Y中におけるキラル剤の総含有量(組成物Y中の全てのキラル剤の総含有量)は、液晶化合物の全質量に対して、2.0質量%以上が好ましく、3.0質量%以上がより好ましい。また、組成物X中におけるキラル剤の総含有量の上限は、コレステリック液晶層のヘイズ抑制の点で、液晶化合物の全質量に対して、15.0質量%以下が好ましく、12.0質量%以下がより好ましい。
なお、上記キラル剤Yの使用量は、より少ないことが液晶性に影響を及ぼさない傾向があるため好まれる。従って、上記キラル剤Yとしては、少量でも所望の螺旋ピッチの捩れ配向を達成可能なように、強い捩り力のある化合物が好ましい。
・キラル剤YA
キラル剤YAとしては、液晶化合物の螺旋を誘起する化合物であり、温度変化により螺旋誘起力(HTP)が変化しないことが好ましい。
また、キラル剤YAは、液晶性であっても、非液晶性であってもよい。キラル剤XAは、一般に不斉炭素原子を含む。ただし、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物又は面性不斉化合物を、キラル剤YAとして用いることもできる。キラル剤YAは、重合性基を有していてもよい。
キラル剤YAとしては、公知のキラル剤を使用できる。
液晶組成物が、キラル剤Yを1種単独で含み、キラル剤Yが上記温度T11において所定範囲(例えば、0.0~1.9μm-1)を超える螺旋誘起力を有する場合、キラル剤YAは、上述したキラル剤Yと逆向きの螺旋を誘起するキラル剤であることが好ましい。つまり、例えば、キラル剤Yにより誘起する螺旋が右方向の場合には、キラル剤YAにより誘起する螺旋は左方向となる。
また、液晶組成物がキラル剤としてキラル剤Yを複数種含むときであって、上記温度T11において複数種のキラル剤Yの加重平均螺旋誘起力が上記所定範囲を超える場合、キラル剤YAは、上記加重平均螺旋誘起力に対して逆方向の螺旋を誘起させるキラル剤であることが好ましい。
≪工程2Y-2≫
工程2Y-2は、工程2Y-1により得られた組成物層に対して冷却処理又は加熱処理を施すことにより、キラル剤Yの螺旋誘起力を変化させ、組成物層中の液晶化合物をコレステリック配向させてコレステリック液晶層を形成する工程である。本工程では、なかでも、組成物層を冷却するのが好ましい。
組成物層を冷却する際には、コレステリック液晶層の反射異方性がより優れる点で、組成物層の温度が30℃以上下がるように、組成物層を冷却することが好ましい。なかでも、上記効果がより優れる点で、40℃以上下がるように組成物層を冷却することが好ましく、50℃以上下がるように組成物層を冷却することがより好ましい。上記冷却処理の低減温度幅の上限値は特に制限されないが、通常、150℃程度である。
なお、上記冷却処理は、言い換えると、冷却前の工程1に得られた上記条件1又は上記条件2を満たす組成物層の温度をT℃とする場合、T-30℃以下となるように、組成物層を冷却することを意図する(つまり、図23に示す態様の場合、T12≦T11-30℃となる)。
上記冷却の方法は特に制限されず、組成物層が配置された液晶層を所定の温度の雰囲気中に静置する方法が挙げられる。
冷却処理における冷却速度には制限はないが、コレステリック液晶層の反射異方性がより優れる点で、冷却速度を、ある程度の速さにするのが好ましい。
具体的には、冷却処理における冷却速度は、その最大値が毎秒1℃以上であるのが好ましく、毎秒2℃以上であるのがより好ましく、毎秒3℃以上であるのが更に好ましい。なお、冷却速度の上限は、特に制限されないが、毎秒10℃以下の場合が多い。
ここで、本発明で用いられるコレステリック液晶層の製造方法においては、組成物層が風に晒されると、形成されるコレステリック液晶層の表面の面状にムラが生じてしまう可能性がある。この点を考慮すると、本発明で用いられるコレステリック液晶層の製造方法では、工程2Yの全工程において、組成物層が晒される環境の風速が低い方が好ましい。具体的には、本発明のコレステリック液晶層の製造方法では、工程2Yの全工程において、組成物層が晒される環境の風速は、1m/s以下が好ましい。
なお、組成物層を加熱する場合、加熱処理の増加温度幅の上限値は特に制限されないが、通常、150℃程度である。
≪硬化処理≫
なお、液晶化合物が重合性基を有する場合、組成物層に対して硬化処理を実施することが好ましい。組成物層に対して硬化処理を実施する手順としては、製造方法2Xにて述べた方法と同様であり、好適態様も同じである。
本発明で用いられるコレステリック液晶層の製造方法の他の実施形態として、上述したコレステリック液晶層、または、後述の積層体に含まれるコレステリック液晶層の上に、コレステリック液晶層を積層するコレステリック液晶層の製造方法(積層体の製造方法)がある。
本発明で用いられるコレステリック液晶層の上に、液晶化合物を含む組成物層を形成すると、組成物層中の液晶化合物が、コレステリック液晶層中の液晶組成物の傾斜配向に倣って傾斜配向する。そのため、コレステリック液晶層上に形成された組成物層中の液晶化合物をコレステリック配向させる処理を実施して、コレステリック液晶層を形成することで、コレステリック液晶層の上に、本発明で用いられるコレステリック液晶層を形成することができる。
なお、本発明で用いられるコレステリック液晶層の上に、液晶化合物を含む組成物層を形成して新たなコレステリック液晶層を形成する場合の組成物の組成等は前述の液晶組成物と同様である。
[積層体]
以下に、積層体について説明する。
積層体は、円盤状液晶化合物を用いて形成された液晶層と、上記液晶層上に接するように配置された上述したコレステリック液晶層と、を含む。
図25に、積層体の断面模式図を示す。
図25に示す積層体50は、円盤状液晶化合物18を用いて形成された液晶層102と、液晶層102上に接するように配置されたコレステリック液晶層10とを含む。
液晶層102は、コレステリック液晶層10と接する側の表面において、円盤状液晶化合物18の分子軸L5が、液晶層102の表面(コレステリック液晶層10の主面11及び主面12(X-Y面)にも相当する。)に対して傾斜している傾斜配向面102aを有する。つまり、傾斜配向面102aにおいて、円盤状液晶化合物18は、その分子軸L5が液晶層102の表面に対して傾斜するように配向している。
上記液晶層102の上記傾斜配向面102aにおいては、上記液晶層102の表面に対する円盤状液晶化合物18の平均傾斜角度θ4(上記液晶層102の表面と円盤状液晶化合物18のなす角度θ5の角度の平均値)が、例えば、20~90°であることが好ましく、20~80°であることがより好ましく、30~80°であることが更に好ましく、30~65°であることが特に好ましい。
上記液晶層102の上記傾斜配向面102aにおける、液晶層102の表面に対する円盤状液晶化合物18の平均傾斜角度θ5は、液晶層断面を偏光顕微鏡観察することにより測定できる。なお、上記平均傾斜角度は、液晶層断面の偏光顕微鏡観察において、円盤状液晶化合物18の分子軸L5と液晶層102の表面とのなす角度を任意の5か所以上で測定して、それらを算術平均した値である。
また、上記液晶層102の上記傾斜配向面102aは、方位角規制力が、例えば、0.00030J/m2以下であり、0.00020J/m2未満であることが好ましく、0.00010J/m2以下がより好ましく、0.00005J/m2以下がより好ましい。なお、下限は特に制限されないが、例えば、0.00000J/m2以上である。
上記液晶層102の上記傾斜配向面102aにおける方位角規制力は、J. Appl. Phys. 1992, 33, L1242に記載の方法により測定できる。
なお、図25においてコレステリック液晶層の螺旋軸と円盤状液晶化合物の分子軸とは逆方向に傾斜しているように記載されているが、この傾斜方向は一致していてもよい。
また、積層体50において、円盤状液晶化合物18は、その配向状態が層中において保持されていれば十分であり、最終的に層中の組成物がもはや液晶性を示す必要はない。
なお、コレステリック液晶層10については、既に上述したとおりである。
積層体の他の実施形態は、上述したコレステリック液晶層10を2層以上積層した積層体である。
積層した2層以上のコレステリック液晶のうちの2層のコレステリック液晶層は、コレステリック液晶相由来の螺旋軸の旋回方向(センス)が同じであっても逆であってもよい。
2層のコレステリック液晶層の螺旋軸の旋回方向が同じの場合には、2層のコレステリック液晶層の主面に垂直な断面においてSEMにより観察されるコレステリック液晶相由来の明部及び暗部(明暗線)の傾斜方向は、同じである。
明暗線の傾斜方向が同じ方向のコレステリック液晶層を積層することで、一方向からのみ色および/または像を検出できる。また、選択反射波長が異なるコレステリック液晶層を積層することで積層体としての反射波長帯域を広げることができる。
また、2層のコレステリック液晶層の螺旋軸の旋回方向が逆の場合には、2層のコレステリック液晶層の主面に垂直な断面においてSEMにより観察されるコレステリック液晶相由来の明部及び暗部(明暗線)の傾斜方向は、逆である。
明暗線の傾斜方向が逆方向のコレステリック液晶層を積層することで、二方向から色および/または像を検出できる。
また、2層以上のコレステリック液晶層を有する場合には、2層以上のコレステリック液晶層のうちのいずれかのコレステリック液晶層同士の間に他の層を有していてもよい。例えば、コレステリック液晶層同士の間に液晶層、ラビング配向層、または光配向層を含んでいてもよい。
基板上に作製したコレステリック液晶層は、基板から剥離して導光部材に転写する構成としてもよいし、基板と積層したままで、導光部材に積層する構成としてもよいし、基板として導光部材を用いて導光部材上に直接、コレステリック液晶層を形成する構成としてもよい。
なお、コレステリック液晶層を導光部材に転写、あるいは、形成する場合には、コレステリック液晶層の明暗線の傾斜方向を、導光部材の光源等が配置される端面の方向に合わせて転写、あるいは、形成すればよい。
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
〔各種成分〕
以下において、まず、実施例及び比較例において使用する各種成分について説明する。
<キラル剤>
(化合物CD-1の合成)
以下の合成手順に従い、一般的な手法にて化合物CD-1を合成した。なお、化合物CD-1は、螺旋方向は左であり、温度変化又は光照射により螺旋誘起力が変化しないキラル剤である。
Figure 0007297870000001
(化合物CD-2Aの合成)
特開2002-338575号公報に準じて、下記化合物CD-2Aを合成して使用した。なお、化合物CD-2Aは、螺旋方向は右であり、光照射により螺旋誘起力が変化するキラル剤である(キラル剤Xに該当する)。
Figure 0007297870000002
<円盤状液晶化合物>
(円盤状液晶化合物D-1)
円盤状液晶化合物として、特開2007-131765号公報に記載の下記円盤状液晶化合物D-1を使用した。
Figure 0007297870000003
<界面活性剤>
界面活性剤としては、界面活性剤A-1及び界面活性剤S-1を使用した。
(界面活性剤A-1)
特開2012-208397に記載の下記界面活性剤A-1を使用した。
Figure 0007297870000004
(界面活性剤S-1)
特許第5774518号公報に記載の下記界面活性剤S-1を使用した。
Figure 0007297870000005
〔実施例1〕
<工程1:液晶層1の作製>
(試料溶液の調製)
下記組成の試料溶液を調製した。
・化合物D-1 100質量部
・開始剤Irg-907(BASF製) 3.0質量部
・溶剤(MEK(メチルエチルケトン)/シクロヘキサノン=90/10(質量比))
溶質濃度が30質量%となる量
(液晶層1の作製)
次に、PVA-203(クラレ製)を塗布したガラス基板にラビング処理することにより、配向膜付き基板を作製した。この配向膜のラビング処理面に、30μLの上記試料溶液を回転数1000rpm、10秒間の条件でスピンコートし、130℃で5分間熟成した。続いて、130℃、窒素雰囲気下で500mJ/cm2の照射量でUV(紫外線)を照射することにより上記塗膜を硬化し、液晶層1を得た。
<工程2:コレステリック液晶層1の作製>
(試料溶液の調製)
下記組成の試料溶液を調製した。
・下記構造で表される液晶性化合物LC-1 100質量部
・化合物A-1 0.2質量部
・化合物S-1 0.4質量部
・化合物CD-1 5.8質量部
・化合物CD-2A 5.8質量部
・開始剤Irg-907(BASF製) 2.0質量部
・溶剤(MEK(メチルエチルケトン)/シクロヘキサノン=90/10(質量比))
溶質濃度が30質量%となる量
Figure 0007297870000006
(コレステリック液晶層1の作製)
次に、液晶層1上に、40μLの上記試料溶液を回転数1000rpm、10秒間の条件でスピンコートして組成物層を形成した後、上記組成物層を90℃で1分間熟成した。続いて、熟成後の上記組成物層に対して、30℃にて光源(UVP社製、2UV・トランスイルミネーター)より315nm光を0.3mW/cm2の照射強度で600秒間紫外線を照射した。続いて、組成物層に90℃、窒素雰囲気下で500mJ/cm2の照射量でUV(紫外線)を照射して液晶化合物の重合反応を実施することにより、コレステリック配向状態が固定化されたコレステリック液晶層1を得た。
(コレステリック液晶層1と導光部材の積層)
上記で得たコレステリック液晶層1を導光部材の一方の主面に貼合し、光学部材を作製した。導光部材は、アクリル製で、大きさ200mm×300mm、厚さ5mmとした。
また、コレステリック液晶層1と導光部材とはOCA(Optical Clear Adhesive)フィルム(リンテック社製)を用いて積層した。
〔実施例2~17〕
表1に示すように、コレステリック液晶層1製膜時の試料溶液組成と照度を変更した以外は、実施例1と同様の手法にて光学部材を作製した。
〔実施例18〕
コレステリック液晶層1製膜の際の硬化時の温度を30℃に変更した以外は、実施例4と同様の手法にて光学部材を作製した。得られたコレステリック液晶相の断面SEM観察において、明部及び暗部は波状構造となっていることが分かった。また、このコレステリック液晶相は光拡散性を示し、導光板を導光する光を効率よく拡散するため、照明用途に適していることを確認した。
Figure 0007297870000007
〔比較例1〕
Optics Express 2017, 25, 19298.に記載の方法にて、干渉露光時のパターン間隔とキラル剤量を調整し、明部暗部の配列方向の層主面に対する傾斜角が70°、膜厚2.5μmのコレステリック液晶層C1を作製し、このコレステリック液晶層C1を導光部材に貼合して光学部材を作製した。
〔比較例2〕
特開2006-317656号公報の実施例1に記載の手法でコレステリック液晶層C2を作製し、このコレステリック液晶層C2を導光部材に貼合して光学部材を作製した。
得られた光学部材のコレステリック液晶層について、導光部材に貼合する前に下記測定を行った。
<明部及び暗部の配列方向の主面に対する傾斜角の測定>
コレステリック液晶層を主面に垂直に割断し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。観察されるコレステリック液晶相由来の明部及び暗部の配列方向の主面に対する平均傾斜角を測定した。
<主面に対する液晶分子の分子軸の傾斜角の測定>
コレステリック液晶層をミクロトームで主面に垂直に割断し、その断面を偏光顕微鏡にて観察し、主面に対する遅相軸の平均傾斜角(チルト角)を測定した(遅相軸は液晶化合物の分子軸と一致する)。
<液晶化合物の分子軸の面内配列の測定>
コレステリック液晶層の表面反射像を偏光顕微鏡にて観察し、アナライザーを回転させた際の明暗線の変化挙動から、液晶化合物の分子軸の面内配列を測定した。
A:両主面において、液晶化合物の分子軸が面内の一方向に沿って連続的に回転している。
B:少なくとも一方の主面において、液晶化合物の分子軸が面内の一方向に沿って連続的に回転していない。
〔評価〕
得られた光学部材について、下記の評価を実施した。
<円偏光選択性の評価>
コレステリック液晶層の正面において最も強く反射光を検出できる方向の導光部材の端部から光を入射し、GENESIA GONIO(ジェネシア社製)を用いて検出角0°(正面)における反射強度を測定した。このとき、コレステリック液晶層と検出機との間に、右または左円偏光板(右:MCPR-4、左:MCPL-4、いずれも美舘イメージング社製)を設置した状態で測定を行った。左右の円偏光板を介した各反射強度のうち、大きい値をx、小さい値をyとした時、下記式より円偏光選択性を算出した。
(円偏光選択性)=x/(x+y)
なお、光源としてはLED白色光源(アドメシー社製、STEROPES-LED)を用いた。
A:円偏光選択性が90%以上である。
B:円偏光選択性が60%以上90%未満である。
C:円偏光選択性が60%未満である。
<反射特性1>
導光部材の端部より白色LED光を入射し、コレステリック液晶層の正面から観察した際に、コレステリック液晶層を貼合した領域において反射光を観察し、下記指標にて反射特性1を評価した。
A:反射光が観察される。
B:反射光が観察されない。
<反射特性2>
導光部材の端部より白色LED光を入射し、コレステリック液晶層の正面(検出角0°)から観察した際の反射光の極大波長を絶対反射率測定装置にて測定した。つづいて、検出角を10°、-10°方向にそれぞれあおった際の反射光の極大波長を測定し、検出角0°に対する波長シフト量を測定した。
<ヘイズ>
ヘーズメーターNDH-4000(日本電色製)光学部材のヘイズ値を測定した。
A:ヘイズ値が5%未満である。
B:ヘイズ値が5%以上である。
結果を表2に示す。
Figure 0007297870000008
表1および表2から、実施例1~18は比較例1および2に比べて、高い円偏光選択性を示すことがわかる。これは実施例1~18は、主面に対して液晶化合物の分子軸が傾斜しているためである。従って、本発明の光学部材は、偏光を出射する導光照明として適していることが分かった。
また、実施例4~14と実施例1~3および15~17との比較より、主面に垂直な断面において走査型電子顕微鏡にて観察されるコレステリック液晶相由来の明部及び暗部の配列方向が、コレステリック液晶層の主面に対して20~70°傾斜している場合に、導光板内部を伝搬した光を正面方向に反射でき好ましいことが分かった(反射特性1)。
また、実施例1~17の比較より、明部及び暗部の配列方向の、コレステリック液晶層の主面に対する傾斜角が大きいほど、反射特性2が小さくなり、正面から視点をずらした際の色味変化を小さくできることが分かった。
さらに、実施例1と実施例7の比較から、主面に対する液晶化合物の分子軸が傾斜していることにより、反射特性2が小さくなり、正面から視点をずらした際の色味変化を小さくできることが分かった。
〔実施例19〕
導光部材上にλ/4板を貼合し、その上に実施例1のコレステリック液晶層1を貼合した。導光部材の端部から白色LED光を入射し、コレステリック液晶層が貼合されている領域を直線偏光板を介して観察した結果、正面方向に直線偏光が出射していることを確認した。
10,20,30,40 コレステリック液晶層
11,12,13,21,22,23,31,32,41,42,43 主面
14,24,34,44 液晶化合物
1,L2,L3,L4,L5 分子軸
1,D2 配列軸
θ2,θ5,θ10,θ20,θa1,θa2,θa3,θb1,θb2,θb3 角度
1,C2,C3 コレステリック液晶相由来の螺旋軸
1,T2,T3 反射面
15,25 明部
16,26 暗部
18 円盤状液晶化合物
1,P2 明部と暗部とが交互に配列された配列方向
50 積層体
60 光学部材
62 導光部材
64 λ/4板
70 照明装置
72 光源
80 液晶表示装置
82 液晶パネル
92 太陽電池モジュール
100 組成物層
102 液晶層
102a 傾斜配向面
A,B 領域
11 工程2-1(工程2Y-1)において液晶化合物の配向処理が実施される温度
12 工程2-2(工程2Y-2)の冷却処理が実施される温度
1 厚み方向
0,I1,I2,I3,I4

Claims (13)

  1. 内部で光を導光する導光部材と、
    前記導光部材の一方の主面に積層されるコレステリック液晶層とを有し、
    前記コレステリック液晶層は、液晶化合物を用いて形成された層であり、
    前記液晶化合物の分子軸が、前記コレステリック液晶層の主面に対して傾斜しており、
    前記コレステリック液晶層の一対の主面のうち少なくとも一方の主面において、前記液晶化合物の分子軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している光学部材。
  2. 前記コレステリック液晶層の主面に垂直な断面において走査型電子顕微鏡にて観察されるコレステリック液晶相由来の明部及び暗部の配列方向が、前記コレステリック液晶層の主面に対して45°~85°傾斜している、請求項1に記載の光学部材。
  3. 前記明部および暗部の配列方向の、前記コレステリック液晶層の主面に対する傾斜角度が45°~70°である請求項2に記載の光学部材。
  4. 前記コレステリック液晶層は、前記明部および暗部の形状が波状であり、光拡散性を示す請求項2または3に記載の光学部材。
  5. 選択反射波長の異なる2種以上の前記コレステリック液晶層を有する請求項1~4のいずれか一項に記載の光学部材。
  6. さらに、前記導光部材の、前記コレステリック液晶層が配置された面とは反対側の面に積層されるλ/4板を有する請求項1~5のいずれか一項に記載の光学部材。
  7. 前記コレステリック液晶層は、複数の液晶化合物を用いて形成された層であり、
    前記複数の液晶化合物の分子軸が、前記コレステリック液晶層の主面に対して同一の方向に傾斜して配向しており、
    前記コレステリック液晶層の一対の主面のうち少なくとも一方の主面において、前記複数の液晶化合物の分子軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している、請求項1~6のいずれか一項に記載の光学部材。
  8. 前記コレステリック液晶層のコレステリック液晶相由来の螺旋軸が、前記コレステリック液晶層の主面に対して一定の角度で傾斜している、請求項1~7のいずれか一項に記載の光学部材。
  9. 前記コレステリック液晶層が2種以上のキラル剤を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の光学部材。
  10. 前記コレステリック液晶層が2種以上の界面活性剤を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の光学部材。
  11. 前記導光部材の、前記コレステリック液晶層が積層された面とは反対側の面から前記導光部材に入射する光を導光し、前記導光部材の端面から出射する集光素子として用いる請求項1~10のいずれか一項に記載の光学部材。
  12. 請求項1~11のいずれか一項に記載の光学部材と、
    前記導光部材の少なくとも1つの端面に対面して配置される光源とを有する照明装置。
  13. 請求項1~11のいずれか一項に記載の光学部材と、
    前記導光部材の少なくとも1つの端面に対面して配置され、映像光を出射する画像投影装置とを有するスクリーン。
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