JP7294536B2 - 切削工具および切削システム - Google Patents

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Description

本開示は、切削工具および切削システムに関する。
この出願は、2020年11月30日に出願された国際出願PCT/JP2020/44421を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
特許文献1(特開2019-209420号公報)には、以下のような切削加工システムが開示されている。すなわち、切削加工システムは、工具固定部に固定され所定長さで延出する切削工具の端部に設けられた刃先を回転する被削物に接触させて切削加工を行う加工装置本体と、測定データ取得装置と、情報処理装置と、を備える切削加工システムであって、切削加工時の切削抵抗により前記切削工具に生じる歪を計測する複数の歪センサが、前記切削工具の長手方向に沿って並べて設けられ、前記測定データ取得装置は、歪センサの夫々の出力信号に基づくデータであるセンサデータを取得し、前記情報処理装置は、前記複数の歪センサの夫々の前記センサデータを受信し、前記複数の歪センサの夫々の前記センサデータに基づき前記切削工具の撓みを求め、前記撓みに基づき前記切削加工における加工誤差を求める。
特開2019-209420号公報 特開2012-91277号公報 欧州特許出願公開第3292930号明細書
本開示の切削工具は、旋削加工用の切削工具であって、切刃を有するか、または切刃を取り付け可能なシャンクと、前記シャンクの表面に搭載された複数のセンサとを備え、前記複数のセンサのうちの少なくともいずれか2つは、前記シャンクのせん断ひずみを測定可能なせん断ひずみセンサであり、前記シャンクのシャンク高さをWとし、前記シャンクの底面と平行であり、かつ前記シャンクの軸に直交する方向である第1方向における、前記センサの搭載位置における前記シャンクの中心と前記切刃の基準点との間の距離を距離dxとし、前記シャンクの底面に直交する方向である第2方向における、前記搭載位置における前記シャンクの中心と前記基準点との間の距離を距離dyとし、前記軸と平行な方向である第3方向における、前記搭載位置と前記基準点との間の距離をセンサ距離Dとし、前記距離dxおよび前記距離dyが互いに異なる値である場合に前記距離dxおよび前記距離dyのうち小さい方をmindxyとしたとき、2つの前記せん断ひずみセンサの前記センサ距離Dは、式(A)を満たし、
D<0.74W+2.09mindxy ・・・ (A)
前記2つのせん断ひずみセンサの一方は、前記第1方向の負荷である第1負荷、前記第2方向の負荷である第2負荷、および前記第3方向の負荷である第3負荷のうち、前記第2負荷に対して最大の感度を有し、前記2つのせん断ひずみセンサの他方は、前記第1負荷、前記第2負荷および前記第3負荷のうち、前記第1負荷に対して最大の感度を有する。
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る切削システムの構成を示す図である。 図2は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具を工作機械に取り付けた状態を示す図である。 図3は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成を示す断面図である。 図4は、本開示の第1の実施の形態に係る切削システムにおける処理装置の構成を示す図である。 図5は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成の一例を示す図である。 図6は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成を示す断面図である。 図7は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成を示す断面図である。 図8は、本開示の第1の実施の形態の変形例1に係る切削工具の構成の一例を示す図である。 図9は、本開示の第1の実施の形態の変形例1に係る切削工具の構成を示す断面図である。 図10は、本開示の第1の実施の形態の変形例1に係る切削工具の構成を示す断面図である。 図11は、本開示の第1の実施の形態の変形例2に係る切削工具の構成の一例を示す図である。 図12は、本開示の第1の実施の形態の変形例2に係る切削工具の構成を示す断面図である。 図13は、本開示の第1の実施の形態の変形例2に係る切削工具の構成を示す断面図である。 図14は、本開示の第1の実施の形態の変形例3に係る切削工具の構成の一例を示す図である。 図15は、本開示の第1の実施の形態の変形例3に係る切削工具の構成を示す断面図である。 図16は、本開示の第1の実施の形態の変形例3に係る切削工具の構成を示す断面図である。 図17は、本開示の第1の実施の形態の変形例4に係る切削工具の構成の一例を示す図である。 図18は、本開示の第1の実施の形態の変形例5に係る切削工具の構成の一例を示す図である。 図19は、本開示の第1の実施の形態の変形例6に係る切削工具の構成の一例を示す図である。 図20は、本開示の第1の実施の形態の変形例7に係る切削工具の構成の一例を示す図である。 図21は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の一例である外径バイトの構成を示す図である。 図22は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の一例である外径バイトの構成を示す断面図である。 図23は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の一例である外径バイトにおける垂直ひずみの計算結果を示す図である。 図24は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の一例である外径バイトにおける垂直ひずみの計算結果を示す図である。 図25は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の一例である外径バイトにおける垂直ひずみの計算結果を示す図である。 図26は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の一例である外径バイトにおけるせん断ひずみの計算結果を示す図である。 図27は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の一例である外径バイトにおけるせん断ひずみの計算結果を示す図である。 図28は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の一例である外径バイトにおけるせん断ひずみの計算結果を示す図である。 図29は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の一例である外径バイトにおける基準点からの距離と垂直ひずみおよびせん断ひずみとの関係を示す図である。 図30は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の一例である外径バイトにおける基準点からの距離と垂直ひずみおよびせん断ひずみとの関係を示す図である。 図31は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の一例である外径バイトにおけるシャンク高さと等ひずみ距離との関係を示す図である。 図32は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の一例である剣バイトにおけるシャンク高さと等ひずみ距離との関係を示す図である。 図33は、本開示の第2の実施の形態に係る切削工具の構成の一例を示す図である。 図34は、本開示の第2の実施の形態に係る切削工具の構成を示す断面図である。 図35は、本開示の第3の実施の形態に係る切削工具の構成の一例を示す図である。 図36は、本開示の第3の実施の形態に係る切削工具の構成を示す断面図である。 図37は、本開示の第4の実施の形態に係る切削工具の構成の一例を示す図である。 図38は、本開示の第1~第4の実施の形態に係る切削工具におけるひずみセンサの搭載位置の他の例を示す図である。 図39は、本開示の第1~第4の実施の形態に係る切削工具におけるひずみセンサの搭載位置の他の例を示す図である。
従来、切削工具にひずみセンサを取り付け、ひずみセンサによる切削加工時の切削工具のひずみの計測結果に基づいて、切削抵抗を算出したり、切削工具における切刃の異常を検知したりする技術が提案されている。
[本開示が解決しようとする課題]
上述した特許文献1~3に記載の技術を超えて、ひずみセンサを用いてシャンクのひずみをより高感度で測定することが可能な技術が望まれる。
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、ひずみセンサを用いてシャンクのひずみをより高感度で測定することが可能な切削工具および切削システムを提供することである。
[本開示の効果]
本開示によれば、ひずみセンサを用いてシャンクのひずみをより高感度で測定することができる。
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本開示の実施の形態に係る切削工具は、旋削加工用の切削工具であって、切刃を有するか、または切刃を取り付け可能なシャンクと、前記シャンクの表面に搭載された複数のセンサとを備え、前記複数のセンサのうちの少なくともいずれか2つは、前記シャンクのせん断ひずみを測定可能なせん断ひずみセンサであり、前記シャンクのシャンク高さをWとし、前記シャンクの底面と平行であり、かつ前記シャンクの軸に直交する方向である第1方向における、前記センサの搭載位置における前記シャンクの中心と前記切刃の基準点との間の距離を距離dxとし、前記シャンクの底面に直交する方向である第2方向における、前記搭載位置における前記シャンクの中心と前記基準点との間の距離を距離dyとし、前記軸と平行な方向である第3方向における、前記搭載位置と前記基準点との間の距離をセンサ距離Dとし、前記距離dxおよび前記距離dyが互いに異なる値である場合に前記距離dxおよび前記距離dyのうち小さい方をmindxyとしたとき、2つの前記せん断ひずみセンサの前記センサ距離Dは、式(A)を満たし、
D<0.74W+2.09mindxy ・・・ (A)
前記2つのせん断ひずみセンサの一方は、前記第1方向の負荷である第1負荷、前記第2方向の負荷である第2負荷、および前記第3方向の負荷である第3負荷のうち、前記第2負荷に対して最大の感度を有し、前記2つのせん断ひずみセンサの他方は、前記第1負荷、前記第2負荷および前記第3負荷のうち、前記第1負荷に対して最大の感度を有する。
このように、せん断ひずみセンサのセンサ距離Dが上記式(A)を満たす構成により、せん断ひずみセンサの代わりにシャンクの垂直ひずみを測定可能な垂直ひずみセンサを用いる構成と比べて、第1方向または第2方向の負荷に伴って生じるせん断ひずみをより高感度で測定することができる。したがって、ひずみセンサを用いてシャンクのひずみをより高感度で測定することができる。さらに、上記の構成により、シャンクの複数の表面におけるせん断ひずみを高感度で測定することができる。また、上記の構成により、切削加工時における2つのせん断ひずみセンサの測定結果に基づいて、切削抵抗の3分力のうちの2つを算出することができる。
(2)前記複数のセンサのうちの少なくともいずれか1つは、前記シャンクの垂直ひずみを測定可能な垂直ひずみセンサであってもよい。
このような構成により、せん断ひずみセンサでは測定することが困難である、軸方向の負荷に伴って生じる垂直ひずみを測定することができる。
(3)前記垂直ひずみセンサは、前記第1方向の負荷である第1負荷、前記第2方向の負荷である第2負荷、および前記第3方向の負荷である第3負荷のうち、前記第3負荷に対して最大の感度を有してもよい。
このような構成により、切削加工時における垂直ひずみの測定結果に基づいて、切削抵抗の3分力のうちの軸方向の分力を算出することができる。
(4)前記垂直ひずみセンサの前記センサ距離Dは、式(B)を満たし、
0.74W+2.09mindxy<D<0.74W+2.09maxdxy ・・・ (B)
前記垂直ひずみセンサは、前記距離dxが前記距離dyより大きい場合、前記第1方向の負荷である第1負荷、前記第2方向の負荷である第2負荷、および前記第3方向の負荷である第3負荷のうち、前記第1負荷に対して最大の感度を有し、前記垂直ひずみセンサは、前記距離dyが前記距離dxより大きい場合、前記第1負荷、前記第2負荷、および前記第3負荷のうち、前記第2負荷に対して最大の感度を有してもよい。
このような構成により、垂直ひずみセンサを用いて、第1負荷または第2負荷に伴って生じるひずみをより高感度で測定することができる。
(5)本開示の実施の形態に係る切削システムは、前記切削工具と、処理装置とを備え、前記処理装置は、切削加工時の前記センサの計測結果に基づいて、前記切削工具に関する異常を検知する。
このような構成により、切削工具に関する異常をより正確に検知することができる。
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
<第1の実施の形態>
[切削システム]
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る切削システムの構成を示す図である。図1を参照して、切削システム301は、旋削加工用の切削工具101と、処理装置201とを備える。切削工具101は、たとえば、金属等からなる切削対象物の旋削加工に用いられる。切削工具101は、シャンク10と、1または複数のひずみセンサ20とを備える。ひずみセンサ20は、シャンク10の表面に搭載される。たとえば、ひずみセンサ20は、接着剤または粘着剤を介してシャンク10の表面に取り付けられる。たとえば、ひずみセンサ20は、シャンク10に取り付けられた状態で樹脂材料等に埋め込まれることにより固定されてもよい。処理装置201は、切削加工時のひずみセンサ20の計測結果に基づいて、切削工具101に関する異常を検知する。
[切削工具]
シャンク10の形状は、たとえば正四角柱形状である。より詳細には、シャンク10は、シャンク10の断面における幅方向WDの長さを幅bとし、シャンク10の断面における高さ方向HDの長さを高さhとしたとき、幅bと高さhとが等しく、かつ断面形状が正四角形の角シャンクである。ここで、高さ方向HDとは、工具系基準方式において、シャンク10の長手方向に垂直な平面内において主運動の方向と平行な方向であり、幅方向WDとは、当該平面内において主運動の方向に垂直な方向である。なお、シャンク10は、高さhが幅bよりも大きく、かつ断面形状が四角形である角シャンクであってもよい。また、シャンク10は、幅bと高さhとが等しく、かつ断面形状が正四角形ではない丸シャンクであってもよい。また、シャンク10は、幅bが高さhよりも大きく、かつ断面形状が正四角形ではない丸シャンクであってもよい。角シャンクの形状および寸法は、JIS(Japanese Industrial Standards) B 4126(2016年11月21日制定)、およびISO(International Organization for Standardization) 5610(2014年8月21日制定)により規定されている。丸シャンクの形状および寸法は、JIS B 4129(2020年1月20日制定)、およびISO 5609(2012年12月13日制定)により規定されている。以下、ひずみセンサ20の搭載位置におけるシャンク10の高さ方向HDの最大長さを高さhsenとし、ひずみセンサ20の搭載位置におけるシャンク10の幅方向WDの最大長さを幅bsenとする。また、高さhsenをシャンク高さWとも称する。
丸シャンクであるシャンク10の外周面におけるフラットすなわち平面の数は、ゼロ、1つ、2つ、3つおよび4つのいずれであってもよい。すなわち、丸シャンクであるシャンク10の、JIS B 4129-1において定義される断面形状記号は、「10」、「11」、「12」、「13」、「14」、「21」、「22」、「31」、「32」、「33」、「34」、および「41」のいずれであってもよい。当該断面形状記号が「13」、「14」または「22」であるシャンク10の幅方向WDは、直径φdの方向と平行な方向である。すなわち、当該断面形状記号が「13」、「14」または「22」であるシャンク10の断面における幅方向WDの長さは、シャンク10の直径φdと等しい。また、当該断面形状記号が「11」、「12」または「21」であるシャンク10の高さ方向HDは、直径φdの方向と平行な方向である。すなわち、当該断面形状記号が「11」、「12」または「21」であるシャンク10の断面における高さ方向HDの長さは、シャンク10の直径φdと等しい。
たとえば、シャンク10は、切刃を取り付け可能である。より詳細には、シャンク10は、仮想的な軸17の方向における第1端に切刃を有するチップ1を取り付け可能である。すなわち、切削工具101は、刃先交換式のバイトすなわちスローアウェイバイトである。チップ1は、たとえば、上面視で三角形、正方形、ひし形、および五角形等の多角形状である。チップ1は、たとえば、上面の中央において貫通孔が形成され、固定用部材3A,3Bによりシャンク10に固定される。なお、シャンク10は、切刃を取り付け可能である代わりに切刃を有する構成であってもよい。より詳細には、シャンク10は、軸17の方向における第1端に切刃を有する。すなわち、切削工具101は、たとえばむくバイトまたはろう付けバイト等の、スローアウェイバイト以外のバイトであってもよい。ここで、軸17は、シャンク10を曲げた時に伸びも縮みもしない中立軸である。中立軸である軸17は、シャンク10が単一材料により形成されている場合、シャンク10の断面における重心と一致する。
チップ1は、基準点1Kを有する。基準点1Kは、たとえばチップ1の先端部分である。より詳細には、切込み角が90°以下のチップ1における基準点1Kは、想定作業面と、切れ刃面と、すくい面との交点である。また、切込み角が90°より大きいチップ1における基準点1Kは、想定作業面と、想定作業面に垂直でありチップ1のコーナ半径に接する面と、すくい面との交点である。また、円形チップが付いた切刃の形状記号Dすなわち「ひし形頂角55°」に対しての基準点1Kは、チップ1の中心軸を通る想定作業面と、想定作業面に垂直であり切れ刃に接する面と、すくい面との交点である。また、円形チップが付いた切刃の形状記号Sすなわち「正方形」に対しての基準点1Kは、チップ1の中心軸を通る想定作業面と、想定作業面に垂直であり切れ刃に接する面と、すくい面との交点である。なお、切刃の形状記号Sの場合、直交する二つの主送り方向によって、想定作業面が2面存在するので、基準点1Kも2つ存在する。たとえば、基準点1Kは、JIS B 4126-1により定義されている。
図2は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具を工作機械に取り付けた状態を示す図である。図2を参照して、切削工具101は、旋盤等の工作機械における刃物台50A,50Bにより上下から挟まれて固定される。より詳細には、切削工具101は、刃物台50Aの上に載置され、刃物台50Bにより上から挟まれて固定される。切削工具101は、刃物台50A,50Bにより固定された状態で切削加工を行う。
図3は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成を示す断面図である。図3は、図2におけるIII-III線矢視断面図である。図3を参照して、シャンク10は、仮想的な軸17を囲む4つの表面を含む。より詳細には、シャンク10は、刃物台50Aに載置される面である底面S1と、底面S1と対向する面である上面S2と、チップ1側から見て上面S2と時計回り方向に隣接する面である側面S3と、側面S3と対向する面である側面S4とを含む。以下では、説明のため、底面S1と平行であり、かつ軸17に直交する方向をX方向とし、底面S1に直交する方向をY方向とし、軸17と平行な方向をZ方向とする。X方向は、上述の幅方向WDと平行な方向であり、第1方向の一例である。Y方向は、上述の高さ方向HDと平行な方向であり、第2方向の一例である。Z方向は、第3方向の一例である。図3では、軸17を通り、かつX方向と平行な仮想線VL1と、軸17を通り、かつY方向と平行な仮想線VL2と、軸17、上面S2および側面S4の境界部ならびに底面S1および側面S3の境界部を通る仮想線VL3と、軸17、上面S2および側面S3の境界部ならびに底面S1および側面S4の境界部を通る仮想線VL4とを破線で示している。
以下では、説明のため、X方向とY方向とを含むXY平面において、軸17よりも側面S4側の領域であって、仮想線VL1と仮想線VL3との間の領域を第1象限Q1と称する。また、XY平面において、軸17よりも上面S2側の領域であって、仮想線VL3と仮想線VL2との間の領域を第2象限Q2と称し、軸17よりも上面S2側の領域であって、仮想線VL2と仮想線VL4との間の領域を第3象限Q3と称し、軸17よりも側面S3側の領域であって、仮想線VL4と仮想線VL1との間の領域を第4象限Q4と称し、軸17よりも側面S3側の領域であって、仮想線VL1と仮想線VL3との間の領域を第5象限Q5と称し、軸17よりも底面S1側の領域であって、仮想線VL3と仮想線VL2との間の領域を第6象限Q6と称し、軸17よりも底面S1側の領域であって、仮想線VL2と仮想線VL4との間の領域を第7象限Q7と称し、軸17よりも側面S4側の領域であって、仮想線VL4と仮想線VL1との間の領域を第8象限Q8と称する。
切削工具101において、基準点1Kは任意の位置に存在する。たとえば、XY平面における基準点1Kの位置は、第1象限Q1、第2象限Q2、第3象限Q3、第4象限Q4、第5象限Q5、第6象限Q6、第7象限Q7および第8象限Q8のうちのいずれの領域内であってもよい。具体的には、XY平面における基準点1Kの位置は、図3に示す位置PK1~PK8のいずれであってもよい。また、XY平面における基準点1Kの位置は、第2象限Q2と第3象限Q3との境界付近の位置PK9であってもよいし、第6象限Q6と第7象限Q7との境界付近の位置PK10であってもよいし、第8象限Q8と第1象限Q1との境界付近の位置PK11であってもよいし、第4象限Q4と第5象限Q5との境界付近の位置PK12であってもよい。
再び図2を参照して、ひずみセンサ20は、切削加工時のシャンク10のひずみを測定し、たとえば当該ひずみに応じたレベルのアナログ信号を図示しない信号線経由で図示しない無線通信装置へ送信する。無線通信装置は、たとえば通信用IC(Integrated Circuit)等の通信回路を含む。ひずみセンサ20および無線通信装置は、図示しない電力線を介して、図示しない電池から電力の供給を受ける。無線通信装置は、ひずみセンサ20から受信したアナログ信号を所定のサンプリング周期でAD(Analog Digital)変換し、変換後のデジタル値であるセンサ計測値を生成する。より詳細には、無線通信装置は、ひずみセンサ20から受けるアナログ信号をAD変換することによりセンサ計測値sを生成する。無線通信装置は、生成したセンサ計測値sにサンプリングタイミングを示すタイムスタンプを付与し、タイムスタンプが付与されたセンサ計測値sを図示しない記憶部に保存する。再び図1を参照して、無線通信装置は、たとえば所定周期で、当該記憶部から1または複数のセンサ計測値sを取得し、取得したセンサ計測値sを含む無線信号を生成し、生成した無線信号を処理装置201へ送信する。
[処理装置]
図4は、本開示の第1の実施の形態に係る切削システムにおける処理装置の構成を示す図である。図4を参照して、処理装置201は、無線通信部110と、処理部120と、記憶部130とを備える。無線通信部110は、たとえば通信用IC等の通信回路により実現される。処理部120は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)およびDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサによって実現される。記憶部130は、たとえば不揮発性メモリである。無線通信部110は、切削工具101における無線通信装置と無線による通信を行う。当該無線通信装置および無線通信部110は、たとえば、IEEE 802.15.4に準拠したZigBee(登録商標)、IEEE 802.15.1に準拠したBluetooth(登録商標)およびIEEE802.15.3aに準拠したUWB(Ultra Wide Band)等の通信プロトコルを用いた無線による通信を行う。なお、当該無線通信装置と無線通信部110との間において、上記以外の通信プロトコルが用いられてもよい。無線通信部110は、切削工具101における無線通信装置から受信した無線信号からセンサ計測値sを取得し、取得したセンサ計測値sを記憶部130に保存する。処理部120は、無線通信部110により記憶部130に保存されたセンサ計測値sを解析することにより、切削工具101に関する異常を検知する。
[ひずみセンサ]
図5は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成の一例を示す図である。第1の実施の形態に係るチップ1は、基準点1Kである基準点1K1を有する。基準点1K1の位置は、図3に示す位置PK1の一例である。図5を参照して、切削工具101は、ひずみセンサ20として、ひずみセンサ20A,20B,20Cを備える。たとえば、ひずみセンサ20A,20Cは、シャンク10の側面S4に搭載される。また、たとえば、ひずみセンサ20Bは、シャンク10の上面S2に搭載される。
たとえば、ひずみセンサ20のうちの少なくともいずれか2つは、シャンク10のせん断ひずみを測定可能なせん断ひずみセンサである。また、たとえば、ひずみセンサ20のうちの少なくともいずれか1つは、シャンク10の垂直ひずみを測定可能な垂直ひずみセンサである。このように、ひずみセンサ20のうちの少なくともいずれか1つが垂直ひずみセンサである構成により、せん断ひずみセンサでは測定することが困難である、Z方向の負荷に伴って生じる垂直ひずみを測定することができる。一例として、ひずみセンサ20A,20Bは、せん断ひずみセンサである。また、一例として、ひずみセンサ20Cは、垂直ひずみセンサである。
ひずみセンサ20Aは、ひずみセンサ20Aの搭載位置におけるシャンク10のせん断ひずみεyzを測定する。より詳細には、ひずみセンサ20Aは、たとえば、シャンク10の側面S4と平行であり、かつ軸17との間のなす角度が45°である測定軸a1と、シャンク10の側面S4と平行であり、かつ測定軸a1に直交する測定軸a2とを有する。ひずみセンサ20Aは、測定軸a1の方向におけるひずみsa1と、測定軸a2の方向におけるひずみsa2とを測定し、ひずみsa1に応じたレベルのアナログ信号ASa1とひずみsa2に応じたレベルのアナログ信号ASa2との差分を、せん断ひずみεyzに対応するアナログ信号ASyzとして上述した無線通信装置へ出力する。なお、ひずみセンサ20Aは、アナログ信号ASyzの代わりに、アナログ信号ASa1およびアナログ信号ASa2を当該無線通信装置へそれぞれ出力する構成であってもよい。
ひずみセンサ20Bは、ひずみセンサ20Bの搭載位置におけるシャンク10のせん断ひずみεxzを測定する。より詳細には、ひずみセンサ20Bは、たとえば、シャンク10の上面S2と平行であり、かつ軸17との間のなす角度が45°である測定軸b1と、シャンク10の上面S2と平行であり、かつ測定軸b1に直交する測定軸b2とを有する。ひずみセンサ20Bは、測定軸b1の方向におけるひずみsb1と、測定軸b2の方向におけるひずみsb2とを測定し、ひずみsb1に応じたレベルのアナログ信号ASb1とひずみsb2に応じたレベルのアナログ信号ASb2との差分を、せん断ひずみεxzに対応するアナログ信号ASxzとして上述した無線通信装置へ出力する。なお、ひずみセンサ20Bは、アナログ信号ASxzの代わりに、アナログ信号ASb1およびアナログ信号ASb2を当該無線通信装置へそれぞれ出力する構成であってもよい。
ひずみセンサ20Cは、ひずみセンサ20Cの搭載位置におけるシャンク10の垂直ひずみεzzを測定する。より詳細には、ひずみセンサ20Cは、たとえば、軸17と平行な測定軸c1を有する。ひずみセンサ20Cは、測定軸c1の方向におけるひずみsc1を測定し、ひずみsc1に応じたレベルのアナログ信号ASc1を垂直ひずみεzzに対応するアナログ信号ASzzとして上述した無線通信装置へ出力する。
以下では、シャンク10に加わるX方向の負荷を荷重Fxとも称し、シャンク10に加わるY方向の負荷を荷重Fyとも称し、シャンク10に加わるZ方向の負荷を荷重Fzとも称する。荷重Fxは、第1負荷の一例であり、荷重Fyは、第2負荷の一例であり、荷重Fzは、第3負荷の一例である。
たとえば、ひずみセンサ20A,20Bの一方は、荷重Fx,Fy,Fzのうち、荷重Fxに対して最大の感度を有し、ひずみセンサ20A,20Bの他方は、荷重Fx,Fy,Fzのうち、荷重Fyに対して最大の感度を有する。このような構成により、切削加工時におけるひずみセンサ20A,20Bの測定結果に基づいて、切削抵抗の3分力のうちの2つを算出することができる。また、たとえば、ひずみセンサ20Cは、荷重Fx,Fy,Fzのうち、荷重Fzに対して最大の感度を有する。このような構成により、切削加工時におけるひずみセンサ20Cの測定結果に基づいて、切削抵抗の3分力のうちのZ方向の分力を算出することができる。
一例として、ひずみセンサ20Aは、荷重Fyに対して最大の感度を有する。より詳細には、ある大きさの荷重Fyをシャンク10に加えたときにひずみセンサ20Aから出力されるアナログ信号ASyzの大きさは、荷重Fyと同じ大きさの荷重Fxをシャンク10に加えたときにひずみセンサ20Aから出力されるアナログ信号ASyzの大きさ、および荷重Fyと同じ大きさの荷重Fzをシャンク10に加えたときにひずみセンサ20Aから出力されるアナログ信号ASyzの大きさよりも大きい。
また、一例として、ひずみセンサ20Bは、荷重Fxに対して最大の感度を有する。より詳細には、ある大きさの荷重Fxをシャンク10に加えたときにひずみセンサ20Bから出力されるアナログ信号ASxzの大きさは、荷重Fxと同じ大きさの荷重Fyをシャンク10に加えたときにひずみセンサ20Bから出力されるアナログ信号ASxzの大きさ、および荷重Fxと同じ大きさの荷重Fzをシャンク10に加えたときにひずみセンサ20Bから出力されるアナログ信号ASxzの大きさよりも大きい。
また、上述したように、ひずみセンサ20Cは、荷重Fzに対して最大の感度を有する。より詳細には、ある大きさの荷重Fzをシャンク10に加えたときにひずみセンサ20Cから出力されるアナログ信号ASzzの大きさは、荷重Fzと同じ大きさの荷重Fxをシャンク10に加えたときにひずみセンサ20Cから出力されるアナログ信号ASzzの大きさ、および荷重Fzと同じ大きさの荷重Fyをシャンク10に加えたときにひずみセンサ20Cから出力されるアナログ信号ASzzの大きさよりも大きい。
したがって、大きさおよび方向が既知の荷重をシャンク10に加えたときにひずみセンサ20から出力されるアナログ信号を確認することにより、当該ひずみセンサ20がいずれの荷重に対して最大の感度を有するかを確認することができる。また、ひずみセンサ20が取り付けられた位置における荷重と垂直ひずみおよびせん断ひずみとの関係をシミュレーションし、既知の荷重をシャンク10に加えたときにひずみセンサ20から出力されるアナログ信号とシミュレーション結果とに基づいて、当該ひずみセンサ20が垂直ひずみセンサおよびせん断ひずみセンサのいずれであるかを確認することができる。
(軸方向におけるひずみセンサ20Aの搭載位置)
図6は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成を示す断面図である。図6は、図5におけるVI-VI線矢視断面図である。図6では、基準点1K1をZ方向に沿ってVI-VI線矢視断面へ平行移動させたときのチップ1の位置および基準点1K1の位置を破線および黒丸でそれぞれ示している。図6を参照して、VI-VI線矢視断面におけるシャンク10のシャンク高さをWaとする。たとえば、Waは、上述のシャンク高さWと等しい。以下、後述の変形例においても同様に、Waはシャンク高さWと等しいものとする。また、X方向における、ひずみセンサ20Aの搭載位置におけるシャンク10の中心と、チップ1における切刃の基準点1Kとの間の距離を距離dxaとする。また、Y方向における、ひずみセンサ20Aの搭載位置におけるシャンク10の中心と、基準点1Kとの間の距離を距離dyaとする。なお、ひずみセンサ20の搭載位置とは、たとえば、ひずみセンサ20におけるシャンク10との接触面の中心を意味するものとする。
また、距離dxaおよび距離dyaが互いに異なる値である場合、距離dxaおよび距離dyaのうちの大きい方をmaxdxyaとし、小さい方をmindxyaとする。なお、距離dxaおよび距離dyaが等しい値である場合、距離dxaおよび距離dyaをmaxdxyaとする。図6に示す例では、距離dxaおよび距離dyaが互いに異なる値であり、かつ距離dxaは距離dyaよりも大きい。したがって、距離dxaをmaxdxyaとし、距離dyaをmindxyaとする。再び図5を参照して、このとき、Z方向における、ひずみセンサ20Aの搭載位置と基準点1Kとの間の距離をセンサ距離Daとすると、センサ距離Daは、下記式(1)を満たす。
Da<0.74W+2.09maxdxya ・・・ (1)
このように、せん断ひずみセンサであるひずみセンサ20Aのセンサ距離Daが式(1)を満たす構成により、ひずみセンサ20Aの代わりに垂直ひずみセンサを用いる構成と比べて、荷重Fxまたは荷重Fyが加わることに伴って生じるせん断ひずみをより高感度で測定することができる。したがって、ひずみセンサを用いてシャンクのひずみをより高感度で測定することができる。
センサ距離Daは、下記式(2)を満たす。
Da<0.74W+2.09mindxya ・・・ (2)
センサ距離Daが式(2)を満たす構成により、ひずみセンサ20Aの代わりに垂直ひずみセンサを用いる構成と比べて、荷重Fxまたは荷重Fyが加わることに伴って生じるせん断ひずみをより一層高感度で測定することができる。
(軸方向におけるひずみセンサ20Bの搭載位置)
図7は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の構成を示す断面図である。図7は、図5におけるVII-VII線矢視断面図である。図7では、基準点1K1をZ方向に沿ってVII-VII線矢視断面へ平行移動させたときのチップ1の位置および基準点1K1の位置を破線および黒丸でそれぞれ示している。図7を参照して、VII-VII線矢視断面におけるシャンク10のシャンク高さをWbとする。たとえば、Wbは、上述のシャンク高さWと等しい。以下、後述の変形例においても同様に、Wbはシャンク高さWと等しいものとする。また、X方向における、ひずみセンサ20Bの搭載位置におけるシャンク10の中心と、基準点1Kとの間の距離を距離dxbとする。また、Y方向における、ひずみセンサ20Aの搭載位置におけるシャンク10の中心と、基準点1Kとの間の距離を距離dybとする。
また、距離dxbおよび距離dybが互いに異なる値である場合、距離dxbおよび距離dybのうちの大きい方をmaxdxybとし、小さい方をmindxybとする。なお、距離dxbおよび距離dybが等しい値である場合、距離dxbおよび距離dybをmaxdxybとする。図7に示す例では、距離dxbおよび距離dybが互いに異なる値であり、かつ距離dxbは距離dybよりも大きい。したがって、距離dxbをmaxdxybとし、距離dybをmindxybとする。再び図5を参照して、このとき、たとえば、Z方向における、ひずみセンサ20Bの搭載位置と基準点1Kとの間の距離をセンサ距離Dbとすると、センサ距離Dbは、下記式(3)を満たす。
Db<0.74W+2.09mindxyb ・・・ (3)
このように、せん断ひずみセンサであるひずみセンサ20Bのセンサ距離Dbが式(3)を満たす構成により、ひずみセンサ20Bの代わりに垂直ひずみセンサを用いる構成と比べて、荷重Fxまたは荷重Fyが加わることに伴って生じるせん断ひずみをより高感度で測定することができる。なお、センサ距離Daとセンサ距離Dbとは、異なってもよいし、同じであってもよい。
[変形例1]
図8は、本開示の第1の実施の形態の変形例1に係る切削工具の構成の一例を示す図である。変形例1に係るチップ1は、基準点1Kである基準点1K2を有する。基準点1K2のXY平面における位置は、図3に示す第2象限Q2の領域内であるものとする。基準点1K2の位置は、図3に示す位置PK2の一例である。図8を参照して、切削工具101Aは、ひずみセンサ20A,20B,20Cを備える。たとえば、ひずみセンサ20A,20Cは、シャンク10の側面S4に搭載される。また、たとえば、ひずみセンサ20Bは、シャンク10の上面S2に搭載される。
(軸方向におけるひずみセンサ20Bの搭載位置)
図9は、本開示の第1の実施の形態の変形例1に係る切削工具の構成を示す断面図である。図9は、図8におけるIX-IX線矢視断面図である。図9では、基準点1K2をZ方向に沿ってIX-IX線矢視断面へ平行移動させたときのチップ1の位置および基準点1K2の位置を破線および黒丸でそれぞれ示している。図9を参照して、距離dxbおよび距離dybが互いに異なる値であり、かつ距離dybは距離dxbよりも大きいので、距離dybをmaxdxybとし、距離dxbをmindxybとする。再び図8を参照して、このとき、センサ距離Dbは、下記式(4)を満たす。
Db<0.74W+2.09maxdxyb ・・・ (4)
このように、せん断ひずみセンサであるひずみセンサ20Bのセンサ距離Dbが式(4)を満たす構成により、ひずみセンサ20Bの代わりに垂直ひずみセンサを用いる構成と比べて、荷重Fxまたは荷重Fyが加わることに伴って生じるせん断ひずみをより高感度で測定することができる。したがって、ひずみセンサを用いてシャンクのひずみをより高感度で測定することができる。
好ましくは、センサ距離Dbは、上述の式(3)を満たす。センサ距離Dbが式(4)に加えてさらに式(3)を満たす構成により、せん断ひずみセンサの代わりに垂直ひずみセンサを用いる構成と比べて、荷重Fxまたは荷重Fyが加わることに伴って生じるせん断ひずみをより一層高感度で測定することができる。
(軸方向におけるひずみセンサ20Aの搭載位置)
図10は、本開示の第1の実施の形態の変形例1に係る切削工具の構成を示す断面図である。図10は、図8におけるX-X線矢視断面図である。図10では、基準点1K2をZ方向に沿ってX-X線矢視断面へ平行移動させたときのチップ1の位置および基準点1K2の位置を破線および黒丸でそれぞれ示している。図10を参照して、距離dxaおよび距離dyaが互いに異なる値であり、かつ距離dyaは距離dxaよりも大きいので、距離dyaをmaxdxyaとし、距離dxaをmindxyaとする。再び図8を参照して、このとき、たとえば、センサ距離Daは、上述の式(2)を満たす。
このように、せん断ひずみセンサであるひずみセンサ20Aのセンサ距離Daが式(2)を満たす構成により、ひずみセンサ20Aの代わりに垂直ひずみセンサを用いる構成と比べて、荷重Fxまたは荷重Fyが加わることに伴って生じるせん断ひずみをより高感度で測定することができる。
[変形例2]
図11は、本開示の第1の実施の形態の変形例2に係る切削工具の構成の一例を示す図である。図11では、シャンク10の側面S3に搭載されるひずみセンサ20A,20Cを破線で示している。変形例2に係るチップ1は、基準点1Kである基準点1K3を有する。基準点1K3のXY平面における位置は、図3に示す第4象限Q4の領域内であるものとする。基準点1K3の位置は、図3に示す位置PK4の一例である。図11を参照して、切削工具101Bは、ひずみセンサ20A,20B,20Cを備える。たとえば、ひずみセンサ20A,20Cは、シャンク10の側面S3に搭載される。また、たとえば、ひずみセンサ20Bは、シャンク10の上面S2に搭載される。
(軸方向におけるひずみセンサ20Aの搭載位置)
図12は、本開示の第1の実施の形態の変形例2に係る切削工具の構成を示す断面図である。図12は、図11におけるXII-XII線矢視断面図である。図12では、基準点1K3をZ方向に沿ってXII-XII線矢視断面へ平行移動させたときの基準点1K3の位置を黒丸で示している。ここで、距離dxa、距離dya、maxdxya、mindxya、およびセンサ距離Daの関係は、上述の第1の実施の形態と同様である。すなわち、図12を参照して、距離dxaおよび距離dyaが互いに異なる値であり、かつ距離dxaは距離dyaよりも大きいので、距離dxaをmaxdxyaとし、距離dybをmindxyaとする。このとき、再び図11を参照して、たとえば、センサ距離Daは、上述の式(1)を満たす。また、たとえば、センサ距離Daは、上述の式(2)を満たす。
(軸方向におけるひずみセンサ20Bの搭載位置)
図13は、本開示の第1の実施の形態の変形例2に係る切削工具の構成を示す断面図である。図13は、図11におけるXIII-XIII線矢視断面図である。図13では、基準点1K3をZ方向に沿ってXIII-XIII線矢視断面へ平行移動させたときの基準点1K3の位置を黒丸で示している。ここで、距離dxb、距離dyb、maxdxyb、mindxyb、およびセンサ距離Dbの関係は、上述の第1の実施の形態と同様である。すなわち、図13を参照して、距離dxbおよび距離dybが互いに異なる値であり、かつ距離dxbは距離dybよりも大きいので、距離dxbをmaxdxybとし、距離dybをmindxybとする。このとき、再び図11を参照して、たとえば、センサ距離Dbは、上述の式(3)を満たす。
[変形例3]
図14は、本開示の第1の実施の形態の変形例3に係る切削工具の構成の一例を示す図である。図14では、シャンク10の側面S3に搭載されるひずみセンサ20A,20Cを破線で示している。変形例3に係るチップ1は、基準点1Kである基準点1K4を有する。基準点1K4のXY平面における位置は、図3に示す第3象限Q3の領域内であるものとする。基準点1K4の位置は、図3に示す位置PK3の一例である。図14を参照して、切削工具101Cは、ひずみセンサ20A,20B,20Cを備える。たとえば、ひずみセンサ20A,20Cは、シャンク10の側面S3に搭載される。また、たとえば、ひずみセンサ20Bは、シャンク10の上面S2に搭載される。
(軸方向におけるひずみセンサ20Bの搭載位置)
図15は、本開示の第1の実施の形態の変形例3に係る切削工具の構成を示す断面図である。図15は、図14におけるXV-XV線矢視断面図である。図15では、基準点1K4をZ方向に沿ってXV-XV線矢視断面へ平行移動させたときの基準点1K4の位置を黒丸で示している。ここで、距離dxb、距離dyb、maxdxyb、mindxyb、およびセンサ距離Dbの関係は、上述の変形例1と同様である。すなわち、図15を参照して、距離dxbおよび距離dybが互いに異なる値であり、かつ距離dybは距離dxbよりも大きいので、距離dybをmaxdxybとし、距離dxbをmindxybとする。このとき、再び図14を参照して、たとえば、センサ距離Dbは、上述の式(4)を満たす。また、たとえば、センサ距離Dbは、上述の式(3)を満たす。
(軸方向におけるひずみセンサ20Aの搭載位置)
図16は、本開示の第1の実施の形態の変形例3に係る切削工具の構成を示す断面図である。図16は、図14におけるXVI-XVI線矢視断面図である。図16では、基準点1K4をZ方向に沿ってXVI-XVI線矢視断面へ平行移動させたときの基準点1K4の位置を黒丸で示している。ここで、距離dxa、距離dya、maxdxya、mindxya、およびセンサ距離Daの関係は、上述の変形例1と同様である。すなわち、図16を参照して、距離dxaおよび距離dyaが互いに異なる値であり、かつ距離dyaは距離dxaよりも大きいので、距離dyaをmaxdxyaとし、距離dxaをmindxyaとする。このとき、再び図14を参照して、たとえば、センサ距離Daは、上述の式(2)を満たす。
[変形例4]
図17は、本開示の第1の実施の形態の変形例4に係る切削工具の構成の一例を示す図である。変形例4に係るチップ1は、基準点1Kである基準点1K5を有する。基準点1K5のXY平面における位置は、図3に示す第8象限Q8の領域内であるものとする。基準点1K5の位置は、図3に示す位置PK8の一例である。図17を参照して、切削工具101Dは、ひずみセンサ20A,20B,20Cを備える。たとえば、ひずみセンサ20A,20Cは、シャンク10の側面S4に搭載される。また、たとえば、ひずみセンサ20Bは、シャンク10の底面S1に搭載される。
(軸方向におけるひずみセンサ20Aの搭載位置)
距離dxa、距離dya、maxdxya、mindxya、およびセンサ距離Daの関係は、上述の第1の実施の形態と同様である。よって、たとえば、センサ距離Daは、上述の式(1)を満たす。また、たとえば、センサ距離Daは、上述の式(2)を満たす。
(軸方向におけるひずみセンサ20Bの搭載位置)
距離dxb、距離dyb、maxdxyb、mindxyb、およびセンサ距離Dbの関係は、上述の第1の実施の形態と同様である。よって、たとえば、センサ距離Dbは、上述の式(3)を満たす。
[変形例5]
図18は、本開示の第1の実施の形態の変形例5に係る切削工具の構成の一例を示す図である。変形例5に係るチップ1は、基準点1Kである基準点1K6を有する。基準点1K6のXY平面における位置は、図3に示す第7象限Q7の領域内であるものとする。基準点1K6の位置は、図3に示す位置PK7の一例である。図18を参照して、切削工具101Eは、ひずみセンサ20A,20B,20Cを備える。たとえば、ひずみセンサ20A,20Cは、シャンク10の側面S4に搭載される。また、たとえば、ひずみセンサ20Bは、シャンク10の底面S1に搭載される。
(軸方向におけるひずみセンサ20Bの搭載位置)
距離dxb、距離dyb、maxdxyb、mindxyb、およびセンサ距離Dbの関係は、上述の変形例1と同様である。よって、たとえば、センサ距離Dbは、上述の式(4)を満たす。また、たとえば、センサ距離Dbは、上述の式(3)を満たす。
(軸方向におけるひずみセンサ20Aの搭載位置)
距離dxa、距離dya、maxdxya、mindxya、およびセンサ距離Daの関係は、上述の変形例1と同様である。よって、たとえば、センサ距離Daは、上述の式(2)を満たす。
[変形例6]
図19は、本開示の第1の実施の形態の変形例6に係る切削工具の構成の一例を示す図である。図19では、シャンク10の側面S3に搭載されるひずみセンサ20A,20Cを破線で示している。変形例6に係るチップ1は、基準点1Kである基準点1K7を有する。基準点1K7のXY平面における位置は、図3に示す第5象限Q5の領域内であるものとする。基準点1K7の位置は、図3に示す位置PK5の一例である。図19を参照して、切削工具101Fは、ひずみセンサ20A,20B,20Cを備える。たとえば、ひずみセンサ20A,20Cは、シャンク10の側面S3に搭載される。また、たとえば、ひずみセンサ20Bは、シャンク10の底面S1に搭載される。
(軸方向におけるひずみセンサ20Aの搭載位置)
距離dxa、距離dya、maxdxya、mindxya、およびセンサ距離Daの関係は、上述の第1の実施の形態と同様である。よって、たとえば、センサ距離Daは、上述の式(1)を満たす。また、たとえば、センサ距離Daは、上述の式(2)を満たす。
(軸方向におけるひずみセンサ20Bの搭載位置)
距離dxb、距離dyb、maxdxyb、mindxyb、およびセンサ距離Dbの関係は、上述の第1の実施の形態と同様である。よって、たとえば、センサ距離Dbは、上述の式(3)を満たす。
[変形例7]
図20は、本開示の第1の実施の形態の変形例7に係る切削工具の構成の一例を示す図である。図20では、シャンク10の側面S3に搭載されるひずみセンサ20A,20Cを破線で示している。変形例7に係るチップ1は、基準点1Kである基準点1K8を有する。基準点1K8のXY平面における位置は、図3に示す第6象限Q6の領域内であるものとする。基準点1K8の位置は、図3に示す位置PK6の一例である。図20を参照して、切削工具101Gは、ひずみセンサ20A,20B,20Cを備える。たとえば、ひずみセンサ20A,20Cは、シャンク10の側面S3に搭載される。また、たとえば、ひずみセンサ20Bは、シャンク10の底面S1に搭載される。
(軸方向におけるひずみセンサ20Bの搭載位置)
距離dxb、距離dyb、maxdxyb、mindxyb、およびセンサ距離Dbの関係は、上述の変形例1と同様である。よって、たとえば、センサ距離Dbは、上述の式(4)を満たす。また、たとえば、センサ距離Dbは、上述の式(3)を満たす。
(軸方向におけるひずみセンサ20Aの搭載位置)
距離dxa、距離dya、maxdxya、mindxya、およびセンサ距離Daの関係は、上述の変形例1と同様である。よって、たとえば、センサ距離Daは、上述の式(2)を満たす。
上述した第1の実施の形態および変形例2,4,6において、ひずみセンサ20Aは、第1のせん断ひずみセンサの一例であり、ひずみセンサ20Bは、第2のせん断ひずみセンサの一例であり、ひずみセンサ20Cは、第1の垂直ひずみセンサの一例である。また、上述した変形例1,3,5,7において、ひずみセンサ20Aは、第2のせん断ひずみセンサの一例であり、ひずみセンサ20Bは、第1のせん断ひずみセンサの一例であり、ひずみセンサ20Cは、第1の垂直ひずみセンサの一例である。
なお、図中に示す基準点1K1~1K8の位置は一例である。切削工具101,101A,101B,101C,101D,101E,101F,101Gにおいて、基準点1Kの位置が対応する象限内にある限りにおいて、ひずみセンサ20A,20B,20Cは、上述した搭載位置に搭載される。
[ひずみセンサの搭載位置についての検証]
本願発明者は、切刃に切削抵抗が加わったときのシャンク10における応力分布をシミュレーションし、シミュレーション結果に基づいて、切削加工時にシャンク10において生じるひずみをより高感度で計測するための、ひずみセンサ20の好ましい搭載位置を検証した。まず、本願発明者は、シャンク10における応力分布のシミュレーション結果に基づいて、シャンク10の表面上の複数の対象位置における垂直ひずみおよびせん断ひずみを計算した。具体的には、本願発明者は、シャンク10における応力分布のシミュレーション結果から複数の対象位置における応力テンソルを取得し、取得した応力テンソルと、応力-ひずみ変換式とを用いてひずみテンソルを計算し、当該ひずみテンソルから各対象位置における垂直ひずみおよびせん断ひずみの計算結果を取り出した。
(外径バイトを用いたシミュレーション結果)
図21は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の一例である外径バイトの構成を示す図である。図22は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の一例である外径バイトの構成を示す断面図である。図22は、図21におけるXXII-XXII線矢視断面図である。図22では、基準点1KをZ方向に沿ってXXII-XXII線矢視断面へ平行移動させたときの基準点1Kの位置を黒丸で示している。
図21および図22を参照して、本願発明者は、シャンク高さWが25mmである外径バイト101DBの表面上の位置であって、Z方向において基準点1Kから距離Ds離れた20箇所の対象位置Psにおける垂直ひずみおよびせん断ひずみをそれぞれ計算した。より詳細には、本願発明者は、底面S1上の5箇所の対象位置Ps、上面S2上の5箇所の対象位置Ps、側面S3上の5箇所の対象位置Ps、および側面S4上の5箇所の対象位置Psにおける垂直ひずみおよびせん断ひずみをそれぞれ計算した。対象位置Psは、シャンク10の各面を5つの領域に等分したときの各領域の中点である。すなわち、たとえば底面S1における5つの対象位置Psと、底面S1の端部との間の距離は、それぞれ、2.5mm、7.5mm、12.5mm、17.5mmおよび22.5mmである。
図23~図25は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の一例である外径バイトにおける垂直ひずみの計算結果を示す図である。図23は、距離Dsが20mmである各対象位置Psにおける垂直ひずみを示している。図24は、距離Dsが40mmである各対象位置Psにおける垂直ひずみを示している。図25は、距離Dsが60mmである各対象位置Psにおける垂直ひずみを示している。図23~図25において、丸プロットは、外径バイト101DBに荷重Fxが加わることに伴って対象位置Psにおいて生じる垂直ひずみsnxを示しており、三角プロットは、外径バイト101DBに荷重Fyが加わることに伴って対象位置Psにおいて生じる垂直ひずみsnyを示しており、四角プロットは、外径バイト101DBに荷重Fzが加わることに伴って対象位置Psにおいて生じる垂直ひずみsnzを示している。また、図23~図25において、縦軸は垂直ひずみ[με]を示しており、横軸は、上面S2と側面S4との境界位置を始点とする、周方向に沿った対象位置Psの距離[mm]を示している。
図26~図28は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の一例である外径バイトにおけるせん断ひずみの計算結果を示す図である。図26は、距離Dsが20mmである各対象位置Psにおけるせん断ひずみを示している。図27は、距離Dsが40mmである各対象位置Psにおけるせん断ひずみを示している。図28は、距離Dsが60mmである各対象位置Psにおけるせん断ひずみを示している。図26~図28において、丸プロットは、外径バイト101DBに荷重Fxが加わることに伴って対象位置Psにおいて生じるせん断ひずみssxを示しており、三角プロットは、外径バイト101DBに荷重Fyが加わることに伴って対象位置Psにおいて生じるせん断ひずみssyを示しており、四角プロットは、外径バイト101DBに荷重Fzが加わることに伴って対象位置Psにおいて生じるせん断ひずみsszを示している。また、図26~図28において、縦軸はせん断ひずみ[με]を示しており、横軸は、上面S2と側面S4との境界位置を始点とする、周方向に沿った対象位置Psの距離[mm]を示している。
図23~図25を参照して、垂直ひずみsnxの絶対値は、側面S3および側面S4において最大値となる。また、垂直ひずみsnyの絶対値は、底面S1および上面S2において最大値となる。また、垂直ひずみsnyの絶対値は、上面S2と側面S4との境界部分の近傍および底面S1と側面S3との境界部分の近傍において極大値となり、上面S2と側面S4との境界部分の近傍において最大値となる。また、垂直ひずみsnx,snyの絶対値は、距離Dsが長くなるほど大きくなる一方で、垂直ひずみsnzの絶対値は、距離Dsに関わらず一定である。
図26~図28を参照して、各対象位置Psにおけるせん断ひずみsszは、距離Dsに関わらず常にゼロである。また、各対象位置Psにおけるせん断ひずみssx,ssyの絶対値は、距離Dsに関わらず一定である。また、せん断ひずみssxの絶対値は、4つの表面の周方向における中央部分において極大値となり、上面S2の周方向における中央部分において最大値となる。また、せん断ひずみssyの絶対値は、4つの表面の周方向における中央部分において極大値となり、側面S4の周方向における中央部分において最大値となる。
(垂直ひずみおよびせん断ひずみの大小比較)
図29は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の一例である外径バイトにおける基準点からの距離と垂直ひずみおよびせん断ひずみとの関係を示す図である。図29において、丸プロットは、外径バイト101DBに荷重Fxが加わることに伴って20箇所の対象位置Psにおいて生じる垂直ひずみsnxの絶対値の最大値である最大垂直ひずみMsnxを示しており、三角プロットは、外径バイト101DBに荷重Fxが加わることに伴って20箇所の対象位置Psにおいて生じるせん断ひずみssxの絶対値の最大値である最大せん断ひずみMssxを示している。また、図29において、横軸は距離Ds[mm]を示しており、縦軸はひずみの絶対値[με]を示している。
図29を参照して、最大垂直ひずみMsnxは距離Dsに比例する一方で、最大せん断ひずみMssxは距離Dsに関わらず一定である。以下、最大垂直ひずみMsnxと最大せん断ひずみMssxとが等しくなるときの距離Dsを等ひずみ距離Leqxとも称する。シャンク10の表面上の位置であって、Z方向における基準点1Kとの間の距離が等ひずみ距離Leqxより大きい位置では、最大せん断ひずみMssxよりも最大垂直ひずみMsnxの方が大きい。したがって、シャンク10の表面上の位置であって、Z方向における基準点1Kとの間の距離が等ひずみ距離Leqxより大きい位置にひずみセンサ20を搭載する場合、垂直ひずみセンサを搭載することにより、せん断ひずみセンサを搭載する場合と比べて、荷重Fxが加わることに伴って生じるひずみをより高感度で測定することができる。一方、シャンク10の表面上の位置であって、Z方向における基準点1Kとの間の距離が等ひずみ距離Leqxより小さい位置では、最大垂直ひずみMsnxよりも最大せん断ひずみMssxの方が大きい。したがって、シャンク10の表面上の位置であって、Z方向における基準点1Kとの間の距離が等ひずみ距離Leqxより小さい位置にひずみセンサ20を搭載する場合、せん断ひずみセンサを搭載することにより、垂直ひずみセンサを搭載する場合と比べて、荷重Fxが加わることに伴って生じるひずみをより高感度で測定することができる。
図30は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の一例である外径バイトにおける基準点からの距離と垂直ひずみおよびせん断ひずみとの関係を示す図である。図30において、丸プロットは、外径バイト101DBに荷重Fyが加わることに伴って20箇所の対象位置Psにおいて生じる垂直ひずみsnyの絶対値の最大値である最大垂直ひずみMsnyを示しており、三角プロットは、外径バイト101DBに荷重Fyが加わることに伴って20箇所の対象位置Psにおいて生じるせん断ひずみssyの絶対値の最大値である最大せん断ひずみMssyを示している。また、図30において、横軸は距離Ds[mm]を示しており、縦軸はひずみの絶対値[με]を示している。
図30を参照して、最大垂直ひずみMsnyは距離Dsに比例する一方で、最大せん断ひずみMssyは距離Dsに関わらず一定である。以下、最大垂直ひずみMsnyと最大せん断ひずみMssyとが等しくなるときの距離Dsを等ひずみ距離Leqyとも称する。シャンク10の表面上の位置であって、Z方向における基準点1Kとの間の距離が等ひずみ距離Leqyより大きい位置では、最大せん断ひずみMssyよりも最大垂直ひずみMsnyの方が大きい。したがって、シャンク10の表面上の位置であって、Z方向における基準点1Kとの間の距離が等ひずみ距離Leqyより大きい位置にひずみセンサ20を搭載する場合、垂直ひずみセンサを搭載することにより、せん断ひずみセンサを搭載する場合と比べて、荷重Fyが加わることに伴って生じるひずみをより高感度で測定することができる。一方、シャンク10の表面上の位置であって、Z方向における基準点1Kとの間の距離が等ひずみ距離Leqyより小さい位置では、最大垂直ひずみMsnxよりも最大せん断ひずみMssyの方が大きい。したがって、シャンク10の表面上の位置であって、Z方向における基準点1Kとの間の距離が等ひずみ距離Leqyより小さい位置にひずみセンサ20を搭載する場合、せん断ひずみセンサを搭載することにより、垂直ひずみセンサを搭載する場合と比べて、荷重Fyが加わることに伴って生じるひずみをより高感度で測定することができる。
(ひずみセンサの選択基準に関する検証)
本願発明者らは、同様に、シャンク高さWが25mmである剣バイト101SBに関するシミュレーション結果を用いて、等ひずみ距離Leqx,Leqyを算出した。また、本願発明者らは、シャンク高さWが8mmである外径バイト101DBおよび剣バイト101SB、シャンク高さWが16mmである外径バイト101DBおよび剣バイト101SB、シャンク高さWが40mmである外径バイト101DBおよび剣バイト101SB、ならびにシャンク高さWが50mmである外径バイト101DBおよび剣バイト101SBについての応力分布のシミュレーション結果を用いて、同様に、等ひずみ距離Leqx,Leqyを算出した。
ここで、シャンク高さWが8mmである外径バイト101DBは、距離dxが6mmであり、距離dyが4mmである。シャンク高さWが16mmである外径バイト101DBは、距離dxが12mmであり、距離dyが8mmである。シャンク高さWが25mmである外径バイト101DBは、距離dxが19.5mmであり、距離dyが12.5mmである。シャンク高さWが40mmである外径バイト101DBは、距離dxが30mmであり、距離dyが20mmである。シャンク高さWが50mmである外径バイト101DBは、距離dxが38mmであり、距離dyが25mmである。外径バイト101DBにおける上記距離dx,dyは、ISOに準拠した値である。また、シャンク高さWが8mmである剣バイト101SBは、距離dxが0mmであり、距離dyが4mmである。シャンク高さWが16mmである剣バイト101SBは、距離dxが0mmであり、距離dyが8mmである。シャンク高さWが25mmである剣バイト101SBは、距離dxが0mmであり、距離dyが12.5mmである。シャンク高さWが40mmである剣バイト101SBは、距離dxが0mmであり、距離dyが20mmである。シャンク高さWが50mmである剣バイト101SBは、距離dxが0mmであり、距離dyが25mmである。剣バイト101SBにおける上記距離dx,dyは、ISOに準拠した値である。
図31は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の一例である外径バイトにおけるシャンク高さと等ひずみ距離との関係を示す図である。図31において、丸プロットは、外径バイト101DBにおける等ひずみ距離Leqxを示しており、三角プロットは、外径バイト101DBにおける等ひずみ距離Leqyを示している。また、図31において、横軸はシャンク高さW[mm]を示し、縦軸は等ひずみ距離[mm]を示している。
図32は、本開示の第1の実施の形態に係る切削工具の一例である剣バイトにおけるシャンク高さと等ひずみ距離との関係を示す図である。図32において、丸プロットは、剣バイト101SBにおける等ひずみ距離Leqxを示し、三角プロットは、剣バイト101SBにおける等ひずみ距離Leqyを示している。また、図32において、横軸はシャンク高さW[mm]を示し、縦軸は等ひずみ距離[mm]を示している。
図31および図32を参照して、外径バイト101DBおよび剣バイト101SBにおいて、等ひずみ距離Leqx,Leqyはシャンク高さWに比例する。また、外径バイト101DBにおける等ひずみ距離Leqyと、剣バイト101SBにおける等ひずみ距離Leqyとは、互いに異なる。一方、シャンク高さWが互いに等しい外径バイト101DBおよび剣バイト101SBにおいて、等ひずみ距離Leqxは互いに等しい。これは、外径バイト101DBにおける基準点1Kの位置および剣バイト101SBにおける基準点1Kの位置に起因する。
より詳細には、上述したように剣バイト101SBでは距離dxがゼロであるので、シャンク10に荷重Fyが加わった場合であっても軸17周りのモーメントすなわちトルクが発生しない一方で、外径バイト101DBでは距離dxがゼロではないので、シャンク10に荷重Fyが加わることによりトルクが発生する。したがって、外径バイト101DBのシャンク10に荷重Fyが加わることに伴って生じるせん断ひずみssyおよび最大せん断ひずみMssyは、当該トルクの影響により、剣バイト101SBのシャンク10に荷重Fyが加わることに伴って生じるせん断ひずみssyおよび最大せん断ひずみMssyよりも大きい。そして、外径バイト101DBにおける最大せん断ひずみMssyが、剣バイト101SBにおける最大せん断ひずみMssyよりも大きいことから、あるシャンク高さWの外径バイト101DBにおける等ひずみ距離Leqyは、同じシャンク高さWの剣バイト101SBにおける等ひずみ距離Leqyよりも大きい。一方、上述したように外径バイト101DBおよび剣バイト101SBでは距離dyが互いに等しいので、シャンク10に荷重Fxが加わることにより発生するトルクの影響が等しく、荷重Fxが加わることに伴って生じるせん断ひずみssxおよび最大せん断ひずみMssxが互いに等しい。したがって、シャンク高さWが互いに等しい外径バイト101DBおよび剣バイト101SBにおいて、等ひずみ距離Leqxは互いに等しい。
ここで、外径バイト101DBにおけるシャンク高さWと等ひずみ距離Leqyとの関係および距離dx、ならびに剣バイト101DBにおけるシャンク高さWと等ひずみ距離Leqyとの関係および距離dxに基づいて、等ひずみ距離Leqyは、下記式(5)により表される。
Leqy=0.74W+2.09dx ・・・(5)
また、基準点1Kの位置が、図22に示す基準点1Kの位置から軸17を中心として反時計回りに90°回転させた位置である場合についても同様に考えると、等ひずみ距離Leqxは、下記式(6)により表される。
Leqx=0.74W+2.09dy ・・・(6)
すなわち、シャンク10の表面上の位置であって、Z方向における基準点1Kとの間の距離が上記式(5)により表される等ひずみ距離Leqyより小さい位置では、せん断ひずみセンサを搭載することにより、垂直ひずみセンサを搭載する場合と比べて、荷重Fyが加わることに伴って生じるひずみをより高感度で測定することができる。一方、シャンク10の表面上の位置であって、Z方向における基準点1Kとの間の距離が上記式(5)により表される等ひずみ距離Leqyより大きい位置では、垂直ひずみセンサを搭載することにより、せん断ひずみセンサを搭載する場合と比べて、荷重Fyが加わることに伴って生じるひずみをより高感度で測定することができる。また、シャンク10の表面上の位置であって、Z方向における基準点1Kとの間の距離が上記式(6)により表される等ひずみ距離Leqxより小さい位置では、せん断ひずみセンサを搭載することにより、垂直ひずみセンサを搭載する場合と比べて、荷重Fxが加わることに伴って生じるひずみをより高感度で測定することができる。一方、シャンク10の表面上の位置であって、Z方向における基準点1Kとの間の距離が上記式(6)により表される等ひずみ距離Leqxより大きい位置では、垂直ひずみセンサを搭載することにより、せん断ひずみセンサを搭載する場合と比べて、荷重Fxが加わることに伴って生じるひずみをより高感度で測定することができる。
また、図26~図28を参照して説明したように、各対象位置Psにおけるせん断ひずみsszは、距離Dsに関わらず常にゼロであることから、荷重Fzが加わることに伴って生じるひずみをせん断ひずみセンサを用いて測定することは困難である。
以上より、3つのひずみセンサを用いて、荷重Fxが加わることに伴って生じるひずみ、荷重Fyが加わることに伴って生じるひずみ、および荷重Fzが加わることに伴って生じるひずみを測定する場合、3つのひずみセンサの種別を以下の通り選択することが好ましい。すなわち、シャンク10が正四角柱であり、距離dyよりも距離dxの方が大きい場合、Z方向における基準点1Kからの距離が(0.74W+2.09dx)以上である位置に、荷重Fxに対して最大感度を有する垂直ひずみセンサ、荷重Fyに対して最大感度を有する垂直ひずみセンサ、および荷重Fzに対して最大感度を有する垂直ひずみセンサを搭載する。あるいは、Z方向における基準点1Kからの距離が(0.74W+2.09dy)より大きく(0.74W+2.09dx)未満である位置に、荷重Fxに対して最大感度を有する垂直ひずみセンサ、荷重Fyに対して最大感度を有するせん断ひずみセンサ、および荷重Fzに対して最大感度を有する垂直ひずみセンサを搭載する。あるいは、Z方向における基準点1Kからの距離が(0.74W+2.09dy)以下である位置に、荷重Fxに対して最大感度を有するせん断ひずみセンサ、荷重Fyに対して最大感度を有するせん断ひずみセンサ、および荷重Fzに対して最大感度を有する垂直ひずみセンサを搭載する。
また、シャンク10が正四角柱であり、距離dxよりも距離dyの方が大きい場合、Z方向における基準点1Kからの距離が(0.74W+2.09dy)以上である位置に、荷重Fxに対して最大感度を有する垂直ひずみセンサ、荷重Fyに対して最大感度を有する垂直ひずみセンサ、および荷重Fzに対して最大感度を有する垂直ひずみセンサを搭載する。あるいは、Z方向における基準点1Kからの距離が(0.74W+2.09dx)より大きく(0.74W+2.09dy)未満である位置に、荷重Fxに対して最大感度を有するせん断ひずみセンサ、荷重Fyに対して最大感度を有する垂直ひずみセンサ、および荷重Fzに対して最大感度を有する垂直ひずみセンサを搭載する。あるいは、Z方向における基準点1Kからの距離が(0.74W+2.09dx)以下である位置に、荷重Fxに対して最大感度を有するせん断ひずみセンサ、荷重Fyに対して最大感度を有するせん断ひずみセンサ、および荷重Fzに対して最大感度を有する垂直ひずみセンサを搭載する。
なお、シャンク10が、幅bと高さhとが等しい丸シャンクである場合、3つのひずみセンサの搭載位置ごとの種別を、シャンク10が正四角柱である場合と同様に選択することが好ましい。また、シャンク10が、高さhが幅bよりも大きい角シャンクである場合、または幅bが高さhよりも大きい丸シャンクである場合、シャンク10に荷重Fyが加わったときに発生するモーメントに対して重要な要素である高さhをシャンク高さWに当てはめて、ひずみセンサの選択基準をシャンク10が正四角柱である場合と同様に扱うことができるので、3つのひずみセンサの搭載位置ごとの種別を、シャンク10が正四角柱である場合と同様に選択することが好ましい。
(軸方向におけるせん断ひずみセンサの搭載位置)
以上より、荷重Fx,Fy,Fzのうちの荷重Fyに対して最大の感度を有するせん断ひずみセンサであるひずみセンサ20Aをシャンク10に搭載する場合、ひずみセンサ20Aのセンサ距離Daは、下記式(7)を満たすことが好ましい。
Da<0.74W+2.09dxa ・・・ (7)
また、荷重Fx,Fy,Fzのうちの荷重Fxに対して最大の感度を有するせん断ひずみセンサであるひずみセンサ20Bをシャンク10に搭載する場合、ひずみセンサ20Bのセンサ距離Dbは、下記式(8)を満たすことが好ましい。
Db<0.74W+2.09dyb ・・・ (8)
すなわち、荷重Fx,Fy,Fzのうちの荷重Fxまたは荷重Fyに対して最大の感度を有するせん断ひずみセンサをシャンク10に搭載する場合、せん断ひずみセンサのセンサ距離Dは、下記式(9)を満たすことが好ましい。
D<0.74W+2.09maxdxy ・・・ (9)
また、荷重Fx,Fy,Fzのうちの荷重Fxまたは荷重Fyに対して最大の感度を有する他のせん断ひずみセンサをシャンク10にさらに搭載する場合、2つのせん断ひずみセンサのセンサ距離Dは、下記式(10)を満たすことが好ましい。
D<0.74W+2.09mindxy ・・・ (10)
ここで、dxは、X方向における、せん断ひずみセンサの搭載位置におけるシャンク10の中心と基準点1Kとの間の距離である。dyは、Y方向における、せん断ひずみセンサの搭載位置におけるシャンク10の中心と基準点1Kとの間の距離である。maxdxyは、dxおよびdyが互いに異なる値である場合、dxおよびdyのうちの大きい方である。なお、dxおよびdyが等しい値である場合、dxおよびdyをmaxdxyとする。mindxyは、dxおよびdyのうちの小さい方である。
次に、本開示の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
<第2の実施の形態>
本実施の形態は、第1の実施の形態に係る切削工具101と比べて、ひずみセンサ20Bの代わりにひずみセンサ20Dを備える切削工具102に関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る切削工具101と同様である。第2の実施の形態では、XY平面における基準点1Kの位置は、図3に示す第1象限Q1の領域内であるものとする。第2の実施の形態における基準点1Kの位置は、図3に示す位置PK1の一例である。
図33は、本開示の第2の実施の形態に係る切削工具の構成の一例を示す図である。図33を参照して、切削工具102は、ひずみセンサ20として、ひずみセンサ20A,20C,20Dを備える。たとえば、ひずみセンサ20A,20C,20Dは、シャンク10の側面S4に搭載される。ひずみセンサ20A,20Cの搭載位置は、第1の実施の形態と同じである。
たとえば、ひずみセンサ20Dは、シャンク10の垂直ひずみを測定可能な垂直ひずみセンサである。ひずみセンサ20Dは、第2の垂直ひずみセンサの一例である。ひずみセンサ20Dは、ひずみセンサ20Dの搭載位置におけるシャンク10の垂直ひずみεzzを測定する。より詳細には、ひずみセンサ20Dは、たとえば、軸17と平行な測定軸d1を有する。ひずみセンサ20Dは、測定軸d1の方向におけるひずみsd1を測定し、ひずみsd1に応じたレベルのアナログ信号ASd1を垂直ひずみεzzに対応するアナログ信号ASzzとして上述した無線通信装置へ出力する。たとえば、ひずみセンサ20Dは、荷重Fx,Fy,Fzのうち、荷重Fxに対して最大の感度を有する。
(軸方向におけるひずみセンサ20Dの搭載位置)
図34は、本開示の第2の実施の形態に係る切削工具の構成を示す断面図である。図34は、図33におけるXXXIV-XXXIV線矢視断面図である。図34では、基準点1KをZ方向に沿ってXXXIV-XXXIV線矢視断面へ平行移動させたときの基準点1Kの位置を黒丸で示している。図34を参照して、ひずみセンサ20Dの搭載位置におけるシャンク10のシャンク高さをWdとする。また、X方向における、ひずみセンサ20Dの搭載位置におけるシャンク10の中心と、チップ1における切刃の基準点1Kとの間の距離を距離dxdとする。また、Y方向における、ひずみセンサ20Dの搭載位置におけるシャンク10の中心と、基準点1Kとの間の距離を距離dydとする。
また、距離dxdおよび距離dydが互いに異なる値である場合、距離dxdおよび距離dydのうちの大きい方をmaxdxydとし、小さい方をmindxydとする。なお、距離dxdおよび距離dydが等しい値である場合、距離dxdおよび距離dydをmaxdxydとする。図34に示す例では、距離dxdおよび距離dydが互いに異なる値であり、かつ距離dxdは距離dydよりも大きい。したがって、距離dxdをmaxdxydとし、距離dydをmindxydとする。再び図33を参照して、このとき、Z方向における、ひずみセンサ20Dの搭載位置と基準点1Kとの間の距離をセンサ距離Ddとすると、センサ距離Ddは、下記式(11)を満たす。
0.74Wd+2.09mindxyd<Dd<0.74Wd+2.09maxdxyd ・・・ (11)
このような構成により、ひずみセンサ20Dを用いて、荷重Fxに伴って生じるひずみをより高感度で測定することができる。
(周方向におけるひずみセンサ20Dの搭載位置)
ひずみセンサ20Dは、シャンク10の4つの表面のうちの底面S1に隣接する側面S4における任意の位置に搭載される。なお、ひずみセンサ20Dは、側面S3における任意の位置に搭載されてもよい。側面S3は、第1側面の一例であり、側面S4は、第2側面の一例である。本実施の形態の切削工具102によれば、切削加工時における3つのひずみセンサ20A,20C,20Dの測定結果に基づいて、切削抵抗の3分力を算出することができる。
切削工具102にひずみセンサ20を搭載する際の搭載方法は、以下の通りである。すなわち、まず、切削工具102のユーザは、シャンク10と、ひずみセンサ20A,20C,20Dとを準備する。次に、ユーザは、シャンク10の表面にひずみセンサ20A,20C,20Dを搭載する。より詳細には、ひずみセンサ20A,20C,20Dを、上述した搭載位置に搭載する。
[変形例]
なお、切削工具102において、XY平面における基準点1Kの位置は、図3に示す第1象限Q1以外の領域内であってもよい。ひずみセンサ20A,20Cは、XY平面における基準点1Kの位置が第1象限Q1以外の領域内である場合、第1の実施の形態の変形例1~7で説明した搭載位置に搭載される。ひずみセンサ20Dは、基準点1Kの位置に関わらず、上述したように、側面S4における任意の位置または側面S3における任意の位置に搭載される。
<第3の実施の形態>
本実施の形態は、第1の実施の形態に係る切削工具101と比べて、ひずみセンサ20Aの代わりにひずみセンサ20Eを備える切削工具102Aに関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る切削工具101と同様である。第3の実施の形態では、XY平面における基準点1Kの位置は、図3に示す第2象限Q2の領域内であるものとする。第3の実施の形態における基準点1Kの位置は、図3に示す位置PK2の一例である。
図35は、本開示の第3の実施の形態に係る切削工具の構成の一例を示す図である。図35を参照して、切削工具102Aは、ひずみセンサ20として、ひずみセンサ20B,20C,20Eを備える。たとえば、ひずみセンサ20B,20Eは、シャンク10の上面S2に搭載される。また、たとえば、ひずみセンサ20Cは、シャンク10の側面S4に搭載される。ひずみセンサ20B,20Cの搭載位置は、第1の実施の形態の変形例1と同じである。
たとえば、ひずみセンサ20Eは、シャンク10の垂直ひずみを測定可能な垂直ひずみセンサである。ひずみセンサ20Eは、第3の垂直ひずみセンサの一例である。ひずみセンサ20Eは、ひずみセンサ20Eの搭載位置におけるシャンク10の垂直ひずみεzzを測定する。より詳細には、ひずみセンサ20Eは、たとえば、軸17と平行な測定軸e1を有する。ひずみセンサ20Eは、測定軸e1の方向におけるひずみse1を測定し、ひずみse1に応じたレベルのアナログ信号ASe1を垂直ひずみεzzに対応するアナログ信号ASzzとして上述した無線通信装置へ出力する。たとえば、ひずみセンサ20Eは、荷重Fx,Fy,Fzのうち、荷重Fyに対して最大の感度を有する。
(軸方向におけるひずみセンサ20Eの搭載位置)
図36は、本開示の第3の実施の形態に係る切削工具の構成を示す断面図である。図36は、図35におけるXXXVI-XXXVI線矢視断面図である。図36では、基準点1KをZ方向に沿ってXXXVI-XXXVI線矢視断面へ平行移動させたときの基準点1Kの位置を黒丸で示している。図36を参照して、ひずみセンサ20Eの搭載位置におけるシャンク10のシャンク高さをWeとする。また、X方向における、ひずみセンサ20Eの搭載位置におけるシャンク10の中心と、チップ1における切刃の基準点1Kとの間の距離を距離dxeとする。また、Y方向における、ひずみセンサ20Eの搭載位置におけるシャンク10の中心と、基準点1Kとの間の距離を距離dyeとする。
また、距離dxeおよび距離dyeが互いに異なる値である場合、距離dxeおよび距離dyeのうちの大きい方をmaxdxyeとし、小さい方をmindxyeとする。なお、距離dxeおよび距離dyeが等しい値である場合、距離dxeおよび距離dyeをmaxdxyeとする。図36に示す例では、距離dxeおよび距離dyeが互いに異なる値であり、かつ距離dyeは距離dxeよりも大きい。したがって、距離dxeをmaxdxyeとし、距離dyeをmindxyeとする。再び図35を参照して、このとき、Z方向における、ひずみセンサ20Eの搭載位置と基準点1Kとの間の距離をセンサ距離Deとすると、センサ距離Deは、下記式(12)を満たす。
0.74We+2.09mindxye<De<0.74We+2.09maxdxye ・・・ (12)
このような構成により、ひずみセンサ20Eを用いて、荷重Fyに伴って生じるひずみをより高感度で測定することができる。
(周方向におけるひずみセンサ20Eの搭載位置)
ひずみセンサ20Eは、シャンク10の4つの表面のうちの上面S2における任意の位置に搭載される。なお、ひずみセンサ20Eは、底面S1における任意の位置に搭載されてもよい。本実施の形態の切削工具102Aによれば、切削加工時における3つのひずみセンサ20B,20C,20Eの測定結果に基づいて、切削抵抗の3分力を算出することができる。
切削工具102Aにひずみセンサ20を搭載する際の搭載方法は、以下の通りである。すなわち、まず、切削工具102Aのユーザは、シャンク10と、ひずみセンサ20B,20C,20Eとを準備する。次に、ユーザは、シャンク10の表面にひずみセンサ20B,20C,20Eを搭載する。より詳細には、ひずみセンサ20B,20C,20Eを、上述した搭載位置に搭載する。
[変形例]
なお、切削工具102Aにおいて、XY平面における基準点1Kの位置は、図3に示す第2象限Q2以外の領域内であってもよい。ひずみセンサ20B,20Cは、XY平面における基準点1Kの位置が第2象限Q2以外の領域内である場合、第1の実施の形態、および第1の実施の形態の変形例2~7で説明した搭載位置に搭載される。ひずみセンサ20Eは、基準点1Kの位置に関わらず、上述したように、上面S2における任意の位置または底面S1における任意の位置に搭載される。
<第4の実施の形態>
本実施の形態は、第1の実施の形態に係る切削工具101と比べて、ひずみセンサ20Aの代わりにひずみセンサ20Eを備え、かつひずみセンサ20Bの代わりにひずみセンサ20Dを備える切削工具102Bに関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る切削工具101と同様である。第4の実施の形態では、XY平面における基準点1Kの位置は、図3に示す第1象限Q1の領域内であるものとする。第4の実施の形態における基準点1Kの位置は、図3に示す位置PK1の一例である。
図37は、本開示の第4の実施の形態に係る切削工具の構成の一例を示す図である。図37を参照して、切削工具102Bは、ひずみセンサ20として、ひずみセンサ20C,20D,20Eを備える。たとえば、ひずみセンサ20Eは、シャンク10の上面S2に搭載される。また、たとえば、ひずみセンサ20C,20Dは、シャンク10の側面S4に搭載される。ひずみセンサ20Cの搭載位置は、第1の実施の形態と同じである。
(ひずみセンサ20D,20Eの搭載位置)
Z方向におけるセンサ距離Ddは、下記式(13)を満たす。また、Z方向におけるセンサ距離Deは、下記式(14)を満たす。
0.74Wd+2.09maxdxyd<Dd ・・・ (13)
0.74We+2.09maxdxye<De ・・・ (14)
周方向におけるひずみセンサ20Dの搭載位置は、第2の実施の形態で説明した搭載位置と同じである。周方向におけるひずみセンサ20Eの搭載位置は、第3の実施の形態で説明した搭載位置と同じである。本実施の形態の切削工具102Bによれば、切削加工時における3つのひずみセンサ20C,20D,20Eの測定結果に基づいて、切削抵抗の3分力を算出することができる。
切削工具102Bにひずみセンサ20を搭載する際の搭載方法は、以下の通りである。すなわち、まず、切削工具102Bのユーザは、シャンク10と、ひずみセンサ20C,20D,20Eとを準備する。次に、ユーザは、シャンク10の表面にひずみセンサ20C,20D,20Eを搭載する。より詳細には、ひずみセンサ20C,20D,20Eを、上述した搭載位置に搭載する。
[変形例]
なお、切削工具102Bにおいて、XY平面における基準点1Kの位置は、図3に示す第1象限Q1以外の領域内であってもよい。ひずみセンサ20Cは、XY平面における基準点1Kの位置が第1象限Q1以外の領域内である場合、第1の実施の形態の変形例1~7で説明した搭載位置に搭載される。
[ひずみセンサの取り付け位置の変形例]
図38および図39は、本開示の第1~第4の実施の形態に係る切削工具におけるひずみセンサの搭載位置の他の例を示す図である。図38は、角シャンクであるシャンク10の長手方向に垂直な方向における断面を示している。図39は、丸シャンクであるシャンク10の長手方向に垂直な方向における断面を示している。図38および図39を参照して、たとえば、シャンク10は、高さ方向HDにおける彫り込み深さがhdである凹部22Aを有する。ひずみセンサ20は、当該凹部22Aの内部におけるシャンク10の表面に取り付けられる。この場合、図38および図39に示すシャンク10の高さhsenは以下の通り定義するものとする。すなわち、シャンク10に凹部22Aが設けられていないと仮定した場合の高さhsenをhxとしたとき、hd/hxが0.2未満である場合、hxを高さhsenとし、hd/hxが0.2以上である場合、(hx-hd)を高さhsenとする。また、たとえば、ひずみセンサ20は、シャンク10の幅方向WDにおける彫り込み深さがbdである凹部の内部における、シャンク10の表面に取り付けられてもよい。この場合、シャンク10の幅bsenは、高さhsenと同様に、以下の通り定義するものとする。すなわち、シャンク10に凹部が設けられていないと仮定した場合の幅bsenをbxとしたとき、bd/bxが0.2未満である場合、bxを幅bsenとし、bd/bxが0.2以上である場合、(bx-bd)を幅bsenとする。
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 チップ
1K 基準点
10 シャンク
17 軸
20 ひずみセンサ
22A 凹部
3A,3B 固定用部材
50A,50B 刃物台
101,101A~101G 切削工具
102,102A,102B 切削工具
101DB 外径バイト
110 無線通信部
120 処理部
130 記憶部
201 処理装置
301 切削システム
S1 底面
S2 上面
S3 側面
S4 側面

Claims (8)

  1. 旋削加工用の切削工具であって、
    切刃を有するか、または切刃を取り付け可能なシャンクと、
    前記シャンクの表面に搭載された複数のセンサとを備え、
    前記複数のセンサのうちの少なくともいずれか2つは、前記シャンクのせん断ひずみを測定可能なせん断ひずみセンサであり、
    工具系基準方式において、前記シャンクの軸に垂直な平面内において主運動の方向に垂直な方向である第1方向における、前記センサの搭載位置における前記シャンクの中心と前記切刃の基準点との間の距離を距離dxとし、工具系基準方式において、前記平面内において主運動の方向と平行な方向である第2方向における、前記搭載位置における前記シャンクの中心と前記基準点との間の距離を距離dyとし、前記軸と平行な方向である第3方向における、前記搭載位置と前記基準点との間の距離をセンサ距離Dとし、前記第2方向における前記シャンクの長さをシャンク高さWとし、前記距離dxおよび前記距離dyが互いに異なる値であり、前記距離dxおよび前記距離dyのうち小さい方をmindxyとしたとき、
    2つの前記せん断ひずみセンサの前記センサ距離Dは、式(A)を満たし、
    D<0.74W+2.09mindxy ・・・ (A)
    前記2つのせん断ひずみセンサの一方は、前記第1方向の負荷である第1負荷、前記第2方向の負荷である第2負荷、および前記第3方向の負荷である第3負荷のうち、前記第2負荷に対して最大の感度を有し、
    前記2つのせん断ひずみセンサの他方は、前記第1負荷、前記第2負荷および前記第3負荷のうち、前記第1負荷に対して最大の感度を有する、切削工具。
  2. 前記複数のセンサのうちの少なくともいずれか1つは、前記シャンクの垂直ひずみを測定可能な垂直ひずみセンサである、請求項1に記載の切削工具。
  3. 前記垂直ひずみセンサは、前記第1方向の負荷である第1負荷、前記第2方向の負荷である第2負荷、および前記第3方向の負荷である第3負荷のうち、前記第3負荷に対して最大の感度を有する、請求項2に記載の切削工具。
  4. 旋削加工用の切削工具であって、
    切刃を有するか、または切刃を取り付け可能なシャンクと、
    前記シャンクの表面に搭載された複数のセンサとを備え、
    前記複数のセンサのうちの少なくともいずれか2つは、前記シャンクの垂直ひずみを測定可能な第1垂直ひずみセンサ、および前記シャンクのせん断ひずみを測定可能なせん断ひずみセンサであり、
    工具系基準方式において、前記シャンクの軸に垂直な平面内において主運動の方向に垂直な方向である第1方向における、前記センサの搭載位置における前記シャンクの中心と前記切刃の基準点との間の距離を距離dxとし、工具系基準方式において、前記平面内において主運動の方向と平行な方向である第2方向における、前記搭載位置における前記シャンクの中心と前記基準点との間の距離を距離dyとし、前記軸と平行な方向である第3方向における、前記搭載位置と前記基準点との間の距離をセンサ距離Dとし、前記第2方向における前記シャンクの長さをシャンク高さWとし、前記距離dxおよび前記距離dyが互いに異なる値であり、前記距離dxおよび前記距離dyのうち小さい方をmindxyとし、前記距離dxおよび前記距離dyのうち大きい方をmaxdxyとしたとき、
    前記第1垂直ひずみセンサの前記センサ距離Dは、式(B)を満たし、
    0.74W+2.09mindxy<D<0.74W+2.09maxdxy ・・・ (B)
    前記第1垂直ひずみセンサは、前記距離dxが前記距離dyより大きい場合、前記第1方向の負荷である第1負荷、前記第2方向の負荷である第2負荷、および前記第3方向の負荷である第3負荷のうち、前記第1負荷に対して最大の感度を有し、
    前記第1垂直ひずみセンサは、前記距離dyが前記距離dxより大きい場合、前記第1負荷、前記第2負荷、および前記第3負荷のうち、前記第2負荷に対して最大の感度を有し、
    前記せん断ひずみセンサは、前記距離dxが前記距離dyより大きい場合、前記第1負荷、前記第2負荷、および前記第3負荷のうち、前記第2負荷に対して最大の感度を有し、
    前記せん断ひずみセンサは、前記距離dyが前記距離dxより大きい場合、前記第1負荷、前記第2負荷、および前記第3負荷のうち、前記第1負荷に対して最大の感度を有する、切削工具。
  5. 前記複数のセンサは、前記第1垂直ひずみセンサ、前記せん断ひずみセンサ、および前記シャンクの垂直ひずみを測定可能な第2垂直ひずみセンサであり、
    前記第2垂直ひずみセンサは、前記第1負荷、前記第2負荷、および前記第3負荷のうち、前記第3負荷に対して最大の感度を有する、請求項4に記載の切削工具。
  6. 前記シャンクは、前記軸を囲む4つの表面を含み、
    少なくとも2つの前記せん断ひずみセンサは、異なる前記表面に搭載される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の切削工具。
  7. 前記シャンクは、前記シャンクの表面に前記センサを搭載されるための凹部が設けられており、
    前記凹部の彫り込み深さをhdとし、前記第2方向における前記シャンクの最大長さをhxとしたとき、
    hd/hxが0.2未満である場合には、hxを前記シャンク高さWとし、
    hd/hxが0.2以上である場合には、(hx-hd)を前記シャンク高さWとする、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の切削工具。
  8. 請求項1から請求項のいずれか1項に記載の切削工具と、
    処理装置とを備え、
    前記処理装置は、切削加工時の前記センサの計測結果に基づいて、前記切削工具に関する異常を検知する、切削システム。
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