以下、図1A~図13を参照して本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係る監視装置は、介護施設の居室や独居の高齢者の居宅などに設置され、高齢者などの対象者の日常生活を見守る。以下では、監視装置を介護施設の居室に設置する例を説明する。見守り対象者は、自身の居室などに監視カメラが設置されていることを認識すると、常に見張られていると感じ、日常生活における快適性が損なわれることがある。そこで、本発明の実施形態では、対象者の快適性を損なうことなく日常生活の見守り監視を行うことができるよう、以下のように監視装置を構成する。
図1Aは、本発明の実施形態に係る監視装置が設置される居室RMの一例を概略的に示す正面図であり、図1Bは、図1Aの居室RMを出入口と反対側から見た透視投影図である。図1Aおよび図1Bに示すように、介護施設の各居室RMは、例えば、出入口付近のエリアAR1、洗面所などが設置されて対象者が主に日中に過ごすエリアAR2、ベッドなどが設置されて対象者が主に夜間に過ごすエリアAR3により構成される。
各居室RMには、火災の発生を検出して報知する火災報知機(住宅用火災警報器)1が設置される。火災報知機1は、例えば、火災の初期に発生する煙を検出する煙式(光電式)の住宅用火災警報器により構成される。火災報知機1は、効果的に煙を検出できるように、壁や梁、換気扇、エアコン、照明器具などの付近を避けて、居室RMの中心付近の天井面CLなどに固定して取り付けられる。
監視装置2は、所定角度以上(120°以上。例えば160°)の広角カメラを含んで構成され、介護施設の各居室RMに居住する特定の見守り対象者の日常生活を監視する。監視装置2は、対象者の居室RMへの入室や居室RMからの退室(エリアAR1)、日中、すなわち就寝中以外の様子(エリアAR2)および就寝中の様子(エリアAR3)を監視できるよう、例えば出入口とは反対側の隅の天井面CLに固定して取り付けられる。これにより、居室RMの室内を全体的に撮影することができる。
図2は、火災報知機1の筐体10の一例を概略的に示す斜視図である。火災報知機1の筐体10の内部には、煙を検出する検出ユニットが収容される。検知ユニットは、発光ダイオードなどの発光部と、フォトダイオードなどの受光部と、発光部から受光部への光路を遮断する遮光部と、ブザーや表示灯などの報知部とを有する。筐体10の外部から内部へと煙が流入すると、発光部からの光が煙の粒子により乱反射し、散乱光が受光部により受光されることで煙が検出され、ブザーが鳴動するとともに表示灯が点滅し、火災の発生が報知される。
図2に示すように、火災報知機1の筐体10は、可撓性を有する樹脂材により構成され、ベース部11とカバー部12とを有する。ベース部11は、軸線C1を中心とした半径R1(例えば、50mm程度)の円板部111と円筒部112とを有するトレイ状に形成される。ベース部11の周縁部には被係合部が設けられ、被係合部にカバー部12の係合部が係合されることで、カバー部12がベース部11に着脱可能に取り付けられる。円板部111には締結部材を挿通可能な貫通孔が設けられ、貫通孔を介して木螺子などの締結部材によりベース部11が天井面CLや壁面などに取り付けられる。
カバー部12は、ベース部11に対応して、軸線C1を中心とした半径R1の第1円筒部121と、第1円筒部121の下方に、第1円筒部121よりも小径の半径R2(例えば、25mm程度)の第2円筒部122とを有する略円筒状に形成される。第1円筒部121の上端部にはベース部11に対応して周縁部に係合部が設けられ、係合部がベース部11の被係合部に係合されることで、カバー部12がベース部11に取り付けられる。
第1円筒部121の下端部と第2円筒部122の上端部とは、軸線C1を中心として延在する略リング状の板部123により接続される。板部123には、報知部(ブザー)の鳴動音を筐体10の外部に伝えるためのスリット13と、報知部の鳴動を停止させるための押下可能なボタン14とが設けられる。
第2円筒部122の周面には、煙が筐体10の内部に流入可能となるように、複数の窓部15が設けられる。換言すると、第2円筒部122の周面には、周方向に等間隔に複数(例えば4つ)の柱部16が設けられ、隣接する柱部16の間の周面が開口されて複数(例えば4つ)の窓部15を形成する。第2円筒部122の内周面側には、窓部15を介して流入する煙の粒径を所定値以下に規制する略円筒形状のフィルタ17が配置される。
第2円筒部122の下端の開口は、軸線C1を中心として延在する略円形状の円板部124により覆われる。円板部124には、軸線C1に沿って半径R3(例えば、4mm程度)の貫通孔18が穿設される。貫通孔18には、報知部(表示灯)の光を筐体10の外部へと導光するための導光レンズ19が設けられる。
図3は、監視装置2の筐体20の一例を概略的に示す斜視図である。以下では、説明の便宜のため、図3に示すように上下方向および左右方向を定義する。図3に示すように、監視装置2の筐体20は、筐体本体20aと、筐体拡張部20bとを有する。筐体本体20aは、火災報知機1の筐体10(図2)と同系色の可撓性を有する樹脂材により構成され、例えば、火災報知機1の筐体10を加工して製作される。筐体拡張部20bは、筐体本体20aと同系色の可撓性を有する樹脂材により構成され、例えば、ケーブル類を配線および保護するための配線モールなどを加工して製作される。これにより、監視装置2は、全体として火災報知機1と略同一の外観形状を呈する。
筐体20は、火災報知機1の筐体10と同様に、天井面CLに固定されるベース部21と、ベース部21の下方に配置され、ベース部21に着脱可能に取り付けられるカバー部22とを有する。
図4は、ベース部21を下方から見た正面図である。図3および図4に示すように、ベース部21は、軸線C2を中心とした半径R1の略円板状または略円筒状に形成されたベース部本体21aと、ベース部本体21aの径方向外側に延設されたベース部拡張部21bとを有する。
ベース部本体21aは、軸線C2を中心とした半径R1の円板部211aと円筒部212aとを有するトレイ状に形成され、ベース部本体21aには、円筒部212aの周方向の一部が切り欠かれて切り欠き部213aが形成される。ベース部本体21aの内側には、周縁部に複数(図4では2つ)の被係合部214aが設けられ、被係合部214aにカバー部22の係合部が係合されることで、カバー部22がベース部21に着脱可能に取り付けられる。また、ベース部本体21aの円板部211aには、締結部材を挿通可能な複数(図4では2つ)の貫通孔215aが設けられ、貫通孔215aを介して木螺子などの締結部材によりベース部本体21aが天井面CLに取り付けられる。
図4に示すように、被係合部214aは、円板部211aから上方に突出するとともに円筒部212aの内壁から径方向内側に突出する突出部214a1と、突出部214a1により支持されて水平方向に延在する延在部214a2とを有する。延在部214a2は、円板部211aおよび円筒部212aの内壁から離間して設けられ、円板部211aと円筒部212aと被係合部214aとにより囲まれた空間214a3が形成される。空間214a3は、時計回りの一方側(図4では、進行方向の反対側)が開放されてカバー部22の係合部の進入を受け入れるとともに、他方側(図4では、進行方向側)が突出部214a1により閉鎖されてカバー部22の係合部が突き当たるように構成される。
ベース部拡張部21bは、全体が略角板状に形成される。ベース部拡張部21bの一端部211bは、ベース部本体21a(円板部211a)の外周部216aに沿うように加工される。ベース部拡張部21bの周縁部には、複数(図4では4つ)の突起部212bが設けられ、突起部212bがカバー部22の溝部に係合することでカバー部22がベース部21に固定され、非係合することで着脱可能となる。
ベース部拡張部21bには、締結部材を挿通可能な複数(図4では2つ)の貫通孔213bが設けられ、貫通孔213bを介して木螺子などの締結部材によりベース部拡張部21bが天井面CLに取り付けられる。また、ベース部拡張部21bには、ケーブル類を挿通可能な所定径(例えば、直径20mm程度)の貫通孔214bが設けられ、貫通孔214bを介して天井面CLに設けられた配線孔(図示せず)からLANケーブルなどを筐体20内に引き込むことができる。
図5および図6は、カバー部22を上方から見た正面図であり、図5は、カバー部22を構成するカバー部本体22aを示し、図6は、カバー部22を構成するカバー部拡張部22bを示す。カバー部本体22aは、図4のベース部本体21aに対応し、カバー部拡張部22bは、図4のベース部拡張部21bに対応する。
図3~図5に示すように、カバー部本体22aは、ベース部本体21aに対応して軸線C2を中心とした半径R1の第1円筒部221と、第1円筒部221の下方に、第1円筒部221よりも小径の半径R2の第2円筒部222とを有する略円筒状に形成される。第1円筒部221の下端部と第2円筒部222の上端部とは、軸線C2を中心として延在する略リング状の板部223により接続される。板部223には、スリット23とボタン24とが設けられる。ボタン24は、接着剤などにより、板部223に、押下不能に固定される。
第2円筒部222の周面には、複数の窓部25が設けられる。換言すると、第2円筒部222の周面には、周方向に等間隔に複数(例えば4つ)の柱部26が設けられ、隣接する柱部26の間の周面が開口されて複数(例えば4つ)の窓部25を形成する。第2円筒部222の内周面側には、略円筒形状のフィルタ27が配置される。第2円筒部222の下端の開口は、軸線C2を中心として延在する略円形状の円板部224により覆われる。円板部224には、軸線C2に沿って半径R3の貫通孔28が穿設される。
図3に示すように、貫通孔28には、火災報知機1の導光レンズ19(図2)と同系色の透光性を有する樹脂材により構成されるタブ29が設けられる。タブ29は、貫通孔28を貫通する貫通部29aと、円板部224が延在する延在面から下方に突出する突出部29bとを有する。貫通部29aは、例えば導光レンズ19を加工して製作され、円板部224と同一の厚さの、軸線C2を中心とした半径R3の円板状に形成される。突出部29bは、導光レンズ19と同系色の透光性を有する樹脂材により構成され、所定高さ(例えば、7mm程度)の、軸線C2を中心とした半径R4(例えば、5mm程度)の円柱形状に形成される。突出部29bの上端部は、接着剤などにより貫通部29aの下端部に固定される。
第1円筒部221には、ベース部本体21aの切り欠き部213aに対応した位置に、周方向の一部が切り欠かれて切り欠き部225が形成される。第1円筒部221の上端部には、ベース部本体21aの被係合部214aに対応して、周縁部に複数(図5では2つ)の係合部226が設けられる。係合部226がベース部本体21aの被係合部214aに係合することでカバー部本体22aがベース部本体21aに固定され、非係合することで着脱可能となる。
係合部226は、第1円筒部221の内壁から径方向内側に突出する第1突出部2261と、第1突出部2261から上方に突出する第2突出部2262と、第2突出部2262により支持されて水平方向に延在する延在部2263とを有する。延在部2263は、図4に示すベース部本体21aの空間214a3の開放側から進入して他方側に突き当たることで空間214a3に収容され、被係合部214aの延在部214a2により支持される。
図4、図5に示すように、係合部226の延在部2263および被係合部214aの延在部214a2の周方向の長さを最小限にすることで、ベース部本体21aにカバー部本体22aを着脱するときの周方向の移動量(回転量、係合部の遊び)を最小限にすることができる。ベース部本体21aとカバー部本体22aの係合部の遊びを最小限にすることで、切り欠き部213a,225付近の収容空間と第1円筒部221との干渉を抑制することができる。
図3~図6に示すように、カバー部拡張部22bは、ベース部拡張部21bに対応して全体が略角板状に形成された角板部227と、角板部227の周縁部から上方に突出する側壁部228とを有する略角柱状に形成される。カバー部拡張部22bの一端部229は、カバー部本体22a(板部223)の外周部230(図5)に沿うように加工される。側壁部228の上端部には、ベース部拡張部21bの突起部212bに対応して、周縁部に複数(図4では4つ)の溝部231が設けられる。溝部231にベース部拡張部21bの突起部212bが係合することでカバー部拡張部22bがベース部拡張部21bに固定され、非係合することで着脱可能となる。
図7は、図3のVII-VII線に沿って切断した断面図である。図7に示すように、監視装置2の筐体20の内部には、居室RM内を撮影するカメラ30と、カメラ30により取得された画像信号を処理するコントローラ50とが収容される。コントローラ50は、基板51が天井面CLに略平行になるように、カメラ30の上方に配置される。
カメラ30は、所定角度以上(120°以上。例えば160°)の広角カメラにより構成され、カメラ基板31に実装される。カメラ基板31には、フラットケーブル70(図7で部分的に図示)を介してカメラ30により取得された画像信号を出力する出力ポート32も実装される。図7に示すように、カメラ30およびカメラ基板31は、カメラ30が窓部25(図3)を介して居室RM内を撮影できるように、下方に所定角度θ(例えば、30°程度)傾いた状態でカメラ固定部33により支持される。すなわち、カメラ固定部33によりカメラ30の撮影方向(チルト方向)が固定される。
カメラ固定部33は、例えばシリコン粘土などにより構成され、カメラ30のレンズ部を挟持するような形状に加工される。カメラ固定部33の下端部は、貫通孔28およびタブ29の貫通部29aの上端部を覆うように形成され、これにより、カメラ固定部33は、筐体20(カバー部本体22aの円板部224)により支持される。また、カメラ固定部33の下端部は、接着剤などによりタブ29の貫通部29aの上端部に固定され、これにより、タブ29とカメラ固定部33とは、互いに接続され、軸線C2を中心として一体的に回転可能に構成される。すなわち、タブ29を介して筐体20の外部からカメラ30の撮影方向(パン方向)を調整することができる。
なお、監視装置2を介護施設の複数の居室RMに設置して各居室RMの対象者の見守り監視を行う場合は、例えば3Dプリンタなどを使用して複数のカメラ固定部33を製作する。この場合、各居室RMの間取りや天井高は一般的に共通するため、複数のカメラ固定部33の形状を統一することができる。
図7に示すように、タブ29の突出部29bの上端周縁には傾斜部が設けられ、これにより、タブ29を介してカメラ固定部33を滑らかに回転させることができる。また、カメラ30の撮影方向に位置する柱部26(図7では、右側の柱部26)は、他の柱部26よりも径方向の厚さが薄くなるように構成され、例えば、火災報知機1の筐体10の柱部16の内壁側を削って加工される。これにより、カメラ30と筐体20(カバー部本体22aの柱部26)との干渉を抑制することができる。
カメラ30と筐体20(カバー部本体22aの柱部26)との間には、略円筒形状のフィルタ27が介挿される。フィルタ27は、例えば火災報知機1のフィルタ17により構成される。カメラ30と筐体20との間にフィルタ27が介挿されることで、筐体20の外部からカメラ30を視認し難くすることができる。
コントローラ50は、単一の基板51に、カメラ30により取得された画像信号を処理する処理部52などが実装されたラズベリーパイ(Rasberry Pi)などのシングルボードコンピュータにより構成される。なお、以下では、コントローラ50としてラズベリーパイ3モデルB+(長さ:約86mm;幅:約57mm;高さ:約17mm)を用いる例を説明する。
図8は、コントローラ50を下方から見た正面図である。図8に示すように、基板51には、処理部52に加え、カメラ入力ポート53と、HDMI(登録商標)出力ポート54と、マイクロUSB給電ポート55とが実装される。マイクロUSB給電ポート55には、例えばL字型のマイクロUSBケーブル55aが接続され、マイクロUSBケーブル55aを介して外部からコントローラ50に電源が供給される。例えば、PoEハブやPoEスプリッタなどの給電機器を用いることで、LANケーブルおよびマイクロUSBケーブル55aを介して、外部からコントローラ50に電源を供給することができる。
また、基板51には、ディスプレイ出力ポート56と、アンテナ57と、LANチップ58と、A/V出力ポート59と、汎用入出力ポート60と、PoE(Power over Ethernet)ポート61と、USBポート62,63と、LANポート64とが実装される。LANポート64には、LANケーブル64aが接続され、LANケーブル64aを介してコントローラ50と外部との間でデータ信号の送受信が行われる。
さらに、基板51の背面には、マイクロSDカードスロット65が実装され、マイクロSDカードスロット65には、マイクロSDカード65aが挿入される。マイクロSDカード65aには、コントローラ50のオペレーティングシステム(OS)などのプログラムが予め記憶される。
図9は、カメラ30とコントローラ50とを接続するフラットケーブル70の一例を概略的に示す正面図である。図9に示すように、フラットケーブル70は、2枚の絶縁フィルムの間に、幅方向に一定間隔で配置された複数本(図9では15本)の平型の導体71が挟み込まれ、全体として折り曲げ自在なリボン状に形成される。フラットケーブル70の一端部70aは、導体71の裏側が絶縁フィルムにより被覆される一方、表側が露出され、他端部70bは、導体71の表側が絶縁フィルムにより被覆される一方、裏側が露出される。一端部70aの裏側および他端部70bの表側は、折り曲げ不能な板状のフィルムにより補強され、これによりフラットケーブル70を各種の接続ポートに容易に挿入することができる。
図10は、筐体20へのフラットケーブル70の収容方法について説明するための図であり、図3のVII-VII線に沿って切断した筐体20およびフィルタ27の部分断面とともに、側方から見たフラットケーブル70の周辺の構成を示す。図10に示すように、フラットケーブル70の一端部70aはコントローラ50のカメラ入力ポート53に接続され、他端部70bはカメラ30の出力ポート32に接続され、これによりカメラ30とコントローラ50とがフラットケーブル70を介して接続される。
図9および図10に示すように、フラットケーブル70には、複数か所(図9,10では5か所)に折り目F1~F5が付けられ、折り目F1~F5に沿って折り畳まれて筐体20の内部の空間に収容される。例えば、図9に一点鎖線で示す折り目F1,F3,F5で山折りされ、二点鎖線で示す折り目F2,F4で谷折りされる。カメラ30により取得された画像信号は、出力ポート32、フラットケーブル70、カメラ入力ポート53を介してコントローラ50に入力される。
図8のコントローラ50の処理部52は、単一の半導体チップ上にCPUコア、GPU、メモリ、その他の周辺回路が集積されたSoC(System-on-a-chip)として構成される。処理部52は、予めマイクロSDカード65aに記憶されたプログラムに従い、カメラ入力ポート53を介して入力された画像信号などを処理する。例えば、画像信号に基づいて、画像中の対象者の骨格やシルエットのみを抽出する処理(プライバシ処理)を行う。これにより、対象者の画像データを外部に出力する場合にも、対象者のプライバシを保護することができる。
処理部52は、画像信号に基づいて所定割合を超える画素に変化があったか否かを判定し、居室RMにおける対象者の動きの有無を判定してもよい。この場合、コントローラ50を人感センサとして使用することができる。さらに、起床予定時刻から就寝予定時刻までなどの予め設定された時間帯において、所定時間(例えば、1時間)以上、対象者の動きがない(不動状態)と判定されると、異常が発生したと判定して外部に報知指令を出力してもよい。不動状態の継続時間とともに継続時間に応じた報知指令を出力してもよい。
処理部52は、画像信号に基づいて全画素の平均輝度の変化が所定値以上であるか否かを判定し、居室RMにおける照明の点灯、消灯、カーテンや雨戸などの開閉の有無を判定してもよい。この場合、コントローラ50を照度センサとして使用することができる。さらに、起床予定時刻や就寝予定時刻に照度の変化がない場合や、通常と異なる照度の変化が判定されると、異常が発生したと判定して外部に報知指令を出力してもよい。
処理部52は、汎用入出力ポート60、USBポート62,63、LANポート64を介して入力される信号に基づいて処理を行うこともできる。例えば、汎用入出力ポート60に温度センサや湿度センサなどの環境センサ40を接続して、居室RM内の環境を監視することができる。この場合、環境センサ40からの信号に基づいて、居室RM内の温度や湿度が予め設定された適正範囲内にないと判定されると外部に報知指令を出力してもよい。報知指令の出力に代えて、あるいは報知指令の出力に加えて、居室RMに設置されたエアコンなどの空調設備の動作を制御してもよい。
処理部52による処理結果は、HDMI(登録商標)出力ポート54、ディスプレイ出力ポート56、A/V出力ポート59、汎用入出力ポート60、USBポート62,63またはLANポート64を介して出力することができる。本実施形態では、LANポート64を介して処理部52による処理結果を出力する。
図8に示すコントローラ50の構成のうち、使用しないポートや基板51の一部を必要に応じて削り取ることで、筐体20の内部の収容空間を十分に確保することができる。例えば、図8に示すように、基板51の一部(図8の右下角部)および基板51の側方に突出したA/V出力ポート59の一部が削り取られる。また、図7および図10に示すように、下方に突出するディスプレイ出力ポート56の一部が、突出量が所定高さ(例えば、3mm程度)以下となるように削り取られる。なお、コントローラ50としてラズベリーパイ3モデルB+に代えてラズベリーパイゼロ(長さ:約65mm;幅:約30mm;高さ:約5mm)などを用いることで、筐体20の内部の収容空間を確保することもできる。
図11は、LANポート64の周辺の構成について説明するための図であり、図3のVII-VII線に沿って切断した筐体20の部分断面とともに、側方から見たLANポート64の周辺の構成を示す。図7および図10に示すように、コントローラ50の基板51に実装されたディスプレイ出力ポート56の下端部は、カメラ基板31の上端部31aにより支持される。また、図7および図11に示すように、コントローラ50の基板51に実装されたUSBポート62,63の下端部は、筐体20、より具体的にはカバー部拡張部22bの角板部227により支持される。さらに、コントローラ50は、図8に示すように、筐体20(カバー部拡張部22bの側壁部228(図6))により幅方向の移動が規制されるとともに、図11に示すように、筐体20およびLANケーブル64aにより長さ方向の移動が規制される。これにより、基板51が天井面CLに略平行となるように、コントローラ50が支持される。
なお、図8に示すように、コントローラ50の基板51には締結部材を挿通可能な取り付け用の貫通孔66が設けられるが、コントローラ50は、締結部材を使用することなく筐体20の内部に収容することができる。
図7および図10に示すように、筐体20の内部に収容されたコントローラ50の処理部52の下方には開放された空間SPが形成され、空間SPにフラットケーブル70が収容される。処理部52の周辺に空間SPが確保されることで、処理部52の冷却効率を向上することができる。また、処理部52および空間SPは、筐体20のスリット23および窓部25(図3)の付近に配置されるため、処理部52の冷却効率を一層向上することができる。
このように、監視装置2の筐体20は、火災報知機1の筐体10の外観を維持しながら、内部にカメラ30、コントローラ50、LANケーブル64aなどの必要な構成を効率的に収容可能な形状に加工される。特に、図8などに示すように、筐体本体20a(ベース部本体21a、カバー部本体22a)に収まらないコントローラ50の基板51の一部が収容されるように、筐体拡張部20b(ベース部拡張部21b、カバー部拡張部22b)が構成される。
図1Aおよび図1Bに示すように、監視装置2は、筐体本体20a側(図3に示す監視装置2の右側)が居室RMの中央に向かい、筐体拡張部20b側(図3に示す監視装置2の左側)が居室RMの隅に向かうように居室RMの天井面CLに設置される。これにより、居室RM内から見上げたときの監視装置2の外観形状が火災報知機1と略同一の外観形状として認識されやすくなる。また、同一の居室RMに設置される火災報知機1の筐体10を加工して監視装置2の筐体20を製作することで、監視装置2が火災報知機1と同じものとして認識されやすくなる。これにより対象者は見張られていると感じ難くなるため、監視装置2により対象者の快適性を損なうことなく日常生活の見守り監視を行うことができる。
図12および図13は、監視装置2を有する監視システム100A,100Bの全体構成の一例を概略的に示すブロック図である。図12、図13に示すように、監視システム100A,100Bは、監視装置2と、介護施設のナースステーションなどに設置されたデスクトップコンピュータや介護スタッフのノートパソコン、タブレット端末、スマートフォンなどの施設端末90とを有する。
監視装置2は、介護施設の複数の居室RMのそれぞれに設置され、各居室RMの対象者の見守り監視を行う複数の監視装置2であり、各居室RMの監視装置2とデスクトップコンピュータなどの施設端末90とは、LANケーブル64aを介して接続される。タブレット端末などの施設端末90は、さらに無線LANを介して各居室RMの監視装置2と接続される。
監視装置2の処理部52は、機能的構成として、プライバシ処理部520と、動作有無判定部521と、照度変化判定部522と、適正環境判定部523と、姿勢/動作判定部524とを有する。プライバシ処理部520は、カメラ30から入力された画像信号に基づいてプライバシ処理を行い、処理後の画像データを施設端末90に出力する。例えば、画像データに含まれる対象者の骨格が、居室RMに応じた所定の背景画像に重畳して施設端末90の表示部に表示される。動作有無判定部521は、カメラ30から入力された画像信号に基づいて居室RMにおける対象者の動きの有無を判定し、必要に応じて施設端末90に報知指令を出力する。照度変化判定部522は、カメラ30から入力された画像信号に基づいて居室RMにおける照度の変化の有無を判定し、必要に応じて施設端末90に報知指令を出力する。適正環境判定部523は、環境センサ40から入力された信号に基づいて居室RM内の環境が適正であるか否かを判定し、必要に応じて施設端末90に報知指令を出力する。
一般的に、介護施設における見守り監視では、1人の介護スタッフが複数の監視装置2からの画像を監視する必要があるため、介護スタッフにとっての監視負担が大きく、見守り対象者の異変が見落とされたり見過ごされたりするおそれがある。監視装置2により、カメラ30からの画像の転送に加えて、対象者の動作の有無などを判定し、必要に応じて施設端末90に報知指令を出力することで、画像の見落としや見過ごしがあった場合でも介護スタッフに対象者の異変を知らせることができる。
さらに、施設端末90は、監視装置2による見守り監視の画像データに基づいて、見守り対象者ごとの種々の姿勢や動作を学習する。見守り監視の対象者の姿勢や動作は、腰が曲がっているなどの身体の状態に応じて、対象者ごとに大きく異なることがある。このような対象者ごとの日常生活を見守り監視して得られた画像データに基づいて対象者ごとの姿勢や動作を学習し、学習モデルを生成することで、監視装置2により各対象者の姿勢や動作を自動的に検出し、必要に応じて報知や記録を行うことができる。
図12の監視システム100Aでは、各居室RMの監視装置2から施設端末90に見守り監視の画像データが出力され、各対象者の識別IDに対応付けて蓄積され、管理される。蓄積された画像データは、立位や座位、歩行や転倒、むせ込みなどの種々の姿勢や動作ごとに分類され、各対象者の種々の姿勢や動作ごとの学習データとして蓄積され、蓄積された学習データに基づいて各対象者の種々の姿勢や動作ごとの学習モデルが生成される。
図13は、学習モデルが生成された後の監視システム100Bを示し、図13に示す監視システム100Bの監視装置2のマイクロSDカード65aには、図12に示す監視システム100Aの施設端末90により生成された学習モデルが記憶される。図13に示すように、監視システム100Bの監視装置2の処理部52は、機能的構成として、さらに、姿勢/動作判定部524を有する。
姿勢/動作判定部524は、マイクロSDカード65aに記憶された学習モデルとカメラ30から入力された画像信号とに基づいて、対象者の現在の姿勢や動作がどの姿勢や動作に該当するかを判定することで、対象者の姿勢や動作を認識する。姿勢/動作判定部524による判定結果(認識結果)は、例えば認識された姿勢、動作を示すテキストデータとして施設端末90に出力される。姿勢/動作判定部524は、必要に応じて施設端末90に報知指令を出力する。例えば、日中における所定時間以上の臥位(姿勢)が検出された場合、転倒や誤嚥などの動作が検出された場合には、報知指令を出力する。
監視装置2により、カメラ30からの画像の転送に加えて、対象者の姿勢や動作を認識し、認識結果を施設端末90に出力することで、対象者に異変があったときは適時に、介護スタッフに知らせることができる。また、対象者の姿勢や動作の認識結果を常時、テキストデータとして施設端末90に出力することで、例えば、対象者の日常生活について介護記録に記録する作業を自動化し、介護スタッフの作業負担を軽減することができる。
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)監視装置2は、居室RM内の見守り対象者を監視する(図1A、図1B)。監視装置2は、天井面CLに固定されるベース部21と、ベース部21の下方に配置され、ベース部21に着脱可能に取り付けられるカバー部22とを有する筐体20と、筐体20の内部に収容され、居室RM内を撮影するカメラ30と、筐体20により支持され、カメラ30を固定するカメラ固定部33と、筐体20の内部に収容され、カメラ30により取得された画像信号を処理する処理部52と処理部52が実装された基板51とを有するコントローラ50とを備える(図3、図7)。筐体20は、カメラ30が居室RM内を撮影可能となるように側面が開口された窓部25を有する(図3)。基板51は、カメラ30の上方に、天井面CLに略平行に配置される(図7)。
これにより、監視装置2を火災報知機1と略同一の外観形状とすることができ、対象者に見張られている感覚を与え難い形状に構成できるため、監視装置2により対象者の快適性を損なうことなく日常生活の見守り監視を行うことができる。
(2)ベース部21は、上下方向の軸線C2を中心として略円板状または略円筒状に形成されたベース部本体21aを有する(図3、図4、図7)。カバー部22は、ベース部本体21aに対応して軸線C2を中心として略円板状または略円筒状に形成され、ベース部本体21aの周縁部に取り付けられるカバー部本体22aを有する(図3、図5、図7)。すなわち、監視装置2の筐体本体20aは、火災報知機1の筐体10と略同一の外観形状として構成される。
(3)筐体20(筐体本体20a)は、軸線C2を中心とした第1円筒部221と、第1円筒部221の下方に、第1円筒部221よりも小径の軸線C2を中心とした第2円筒部222と、第1円筒部221の下端部と第2円筒部222の上端部とを接続する軸線C2を中心とした略リング状の板部223とを有する(図3、図5)。窓部25は、第2円筒部222の周面に設けられる(図3、図5)。すなわち、火災報知機1において煙が筐体10の内部に流入可能となるように設けられた窓部15を、監視装置2において筐体20の内部から居室RM内を撮影するための窓部25として利用することができる。
(4)筐体20は、第2円筒部222の下端の開口を覆うように延在する軸線C2を中心とした略円形状の円板部224をさらに有する(図3、図5、図7)。円板部224に、軸線C2に沿って貫通孔28が穿設される(図3、図5、図7)。監視装置2は、貫通孔28を貫通して軸線C2を中心に回転可能に設けられ、カメラ固定部33に接続されたタブ29をさらに備える(図3、図7)。これにより、タブ29を介して筐体20の外部からカメラ30の撮影方向(パン方向)を調整することができる。
(5)タブ29は、透光性を有する樹脂材により構成される。これにより、監視装置2のタブ29の外観を火災報知機1の導光レンズ19の外観に合わせることができ、監視装置2の全体的な外観を、火災報知機1の全体的な外観に合わせることができる。
(6)筐体20は、第1円筒部221の側面から径方向外側に延設された筐体拡張部20bをさらに有する(図3、図7)。筐体拡張部20bに、基板51の一部が収容される(図3、図7)。これにより、監視装置2全体を火災報知機1と略同一の外観形状に維持しながら、筐体20の内部に必要な構成を収容することができる。
(7)カメラ30は、広角カメラである。これにより、単一のカメラ30により居室RMの内部を全体的に撮影することができる。
(8)コントローラ50は、カメラ30により取得された画像信号が入力されるカメラ入力ポート53と、処理部52による処理結果を出力するLANポート64とをさらに有する(図8)。監視装置2は、カメラ入力ポート53とカメラ30とを接続するフラットケーブル70をさらに備える(図9、図10)。LANポート64は、LANケーブル64aが挿脱可能に構成される(図11)。すなわち、監視装置2の筐体20には、カメラ30とコントローラ50とを接続するフラットケーブル70や、コントローラ50と外部の機器とを接続するLANケーブル64aなどの必要な構成も効率的に収容することができる。
(9)コントローラ50は、居室RM内の見守り対象者の姿勢および動作の学習モデルを記憶するマイクロSDカード65aを有する(図13)。処理部52は、カメラ30により取得された画像信号と、マイクロSDカード65aに記憶された学習モデルとに基づいて、対象者の姿勢および動作を認識する。すなわち、監視画像の転送だけでなく、見守り対象者の姿勢や動作の認識を行うことができるため、介護スタッフの負担を軽減することができる。
(10)監視システム100A,100Bは、監視装置2と、処理部52による処理結果を取得する施設端末90とを備える(図12、図13)。監視装置2は、複数の居室RM内を有する施設の各居室RM内の見守り対象者を監視する。これにより、単一の施設端末90を介して複数の対象者の見守り監視を効果的に行うことができる。
なお、上記実施形態では、図2、図3などにおいて火災報知機1および監視装置2の具体的な形状を例示して説明したが、監視装置の形状はこのようなものに限らない。上記実施形態では、コントローラ50の処理部52で監視画像中の対象者のシルエット化するとしたが、居室RMの利用形態などに応じてカメラ30からの画像データをそのまま施設端末90に出力するように構成してもよい。
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。