以下に本発明の支持構造の実施形態を、図面を参照して説明する。図1は第一の実施形態に係る位置可調固定支持部材1を適用した二重管構造10の断面図、図2は第一の実施形態に係る位置可調固定支持部材1の断面図である。本発明の位置可調固定支持部材1は、二重管構造10の外管14の孔部16に軸部20を挿通し、軸部20の支持端部26が内管12の外壁に食い込ませるように配設される。ここで二重管構造10は、立設する内管12と、内管12を囲繞する外管14とから成り、内管12の上部に外管14が位置可調固定支持部材1によって固定されるものである。また外管14には、複数の位置可調固定支持部材1が、外管14の管軸に沿って二列に、かつ管軸を中心に点対称に配設される。
位置可調固定支持部材1は、略円柱状の軸部20、第一雌ねじ体30及び第二雌ねじ体40を具えている。軸部20には、外周面に雄ねじ部22、一端側に支持端部26、他端側に伝達端部28が形成される。軸部20は、外管14の内側に支持端部26が位置するように孔部16に挿通される。
第一雌ねじ体30は、軸部20の雄ねじ部22と螺合し、一端部が溶接により外管14の側壁に接合される。第二雌ねじ体40は、雄ねじ部22に螺合して第一雌ねじ体30よりも軸部20の伝達端部28側に配置される。第一雌ねじ体30と第二雌ねじ体40とが係合したとき、第一雌ねじ体30と第二雌ねじ体40との間には嵌合機構60が構成される。
軸部20の雄ねじ部22には、雄ねじ螺旋溝が形成され、本実施形態では、この雄ねじ部22に右ねじである第一雄ねじ螺旋溝23、及び左ねじである第二雄ねじ螺旋溝24の二種類の雄ねじ螺旋溝を同一領域上に重複して形成している。図3は雄ねじ部22を拡大して示した図である。雄ねじ部22には、軸心(ねじ軸)Cに垂直となる面方向に連続する略三日月状のねじ山22aが、雄ねじ部22の一方側(図の左側)及び他方側(図の右側)に交互に設けられており、ねじ山22aをこのように構成することで、右回りに旋回する螺旋溝及び左回りに旋回する螺旋溝の二種類の螺旋溝を、ねじ山22a同士の間に形成することが出来る。
本実施形態では、第一雄ねじ螺旋溝23及び第二雄ねじ螺旋溝24の二種類の雄ねじ螺旋溝を、雄ねじ部22に重畳形成している。従って、雄ねじ部22は、右ねじ及び左ねじの何れの雌ねじ体とも螺合することが可能となっている。なお、二種類の雄ねじ螺旋溝が形成された雄ねじ部22の詳細については、本願の発明者に係る特許第4663813号公報を参照されたい。
支持端部26は、先端が軸方向に突起状に延びる略錐形状を成している。具体的には、内管12の壁に食い込み易くなるように、支持端部26の先端部を図2に示すようにその頂角が鈍角となるように、形成する。なお頂角は直角又は鋭角に設定してもよい。更に支持端部26の形状は、円錐、角錐等、適宜設定され得る。更に支持端部26の突起には、先端にR加工を施してもよい。伝達端部28は、工具と係合して工具からのトルクを軸部20へと伝達させる。
ここでは工具としてのレンチと係合するために軸部20の他端部の一部を欠落して軸部20の回転軸を挟んで互いに平行な二つの面からなる二面幅を少なくとも一対以上形成してもよい。この場合、伝達端部28の断面の円弧部分の対角距離及び二面幅の寸法は軸部20の直径以下である。好ましくは雄ねじ部22の谷の径より小さく設定する。勿論、二面幅を設定することに限らず、凸型多角形や略星形等の凹凸型の多角形状に形成してもよい。
なお工具との係合手法は、様々に存在するが、例えば、スパナと係合するためには、伝達端部28の外形は六角形や凸型と凹型を含めた多角形等の多面形であっても良い。六角レンチ等の工具と係合するためには、伝達端部28が軸部20の他端部の端面に形成された六角穴や六角レンチ等の工具に対応した形状の穴であればよい。
第一雌ねじ体30は、特に限定されるものではないが、ここでは六角ナット形状を有し、軸方向に貫通するねじ孔を有する。第一雌ねじ体30のねじ孔には、右ねじとしての第一雌ねじ螺旋条が形成される。第一雌ねじ体30は、雄ねじ部22における第一雄ねじ螺旋溝23と螺合する。第一雌ねじ体30は、ねじ孔が外管14の孔部16と連通するように外管14の外面に溶接等によって固定される。
第二雌ねじ体40は、特に限定されるものではないが、ここでは六角ナット形状を有し、軸方向に貫通するねじ孔を有する。第二雌ねじ体40のねじ孔には、左ねじとしての第二雌ねじ螺旋条が形成される。第二雌ねじ体40は、雄ねじ部22における第二雄ねじ螺旋溝24と螺合する。第二雌ねじ体40は、軸部20において、第一雌ねじ体30よりも他端側に配置される。
なお、第一雌ねじ体30の第一雌ねじ螺旋条が右ねじ、第二雌ねじ体40の第二雌ねじ螺旋条が左ねじであるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、第一雌ねじ螺旋条が左ねじ、第二雌ねじ螺旋条が右ねじであってもよい。
また、第一雌ねじ体30と第二雌ねじ体40の外形は、同等としてもよいが、一方を他方より大きく、例えば一方の外縁に他方の外縁が外接するように設定して螺合時の回転を妨げないように構成してもよい。
次に嵌合機構60について説明する。図4に示すように嵌合機構60は、第一雌ねじ体30の外側端面30Aに形成される環状凸部(第一嵌合部)32と、第二雌ねじ体40の内側端面40Aに形成される、環状凸部32を収容する環状凹部(第二嵌合部)42を有する。第一雌ねじ体30の環状凸部32の外周面は、軸方向Jに沿って径方向Kに拡径又は縮径するテーパ面となる。ここでは外周面が軸方向Jの外側(第二雌ねじ体40側)に向かって縮径する。即ち環状凸部32の外径は、基端側から先端側にかけて縮径する。
図5に示すように、第一雌ねじ体30の環状凸部32の外周面には、周方向Sに移動するにつれて、軸方向J又は径方向Kに変位する第一条部36が形成される。この第一条部36は帯状の列状突起を成し、図5(A)に示すように、突起の帯の長手方向Lが、周方向Sに移動するにつれて軸方向Jに変位する。同時に、図5(B)に示すように、第一条部36は、突起の帯の長手方向Lが周方向Sに移動するにつれて径方向Kに変位する。つまり、第一条部36は軸方向Jと径方向Kの双方に変位する突起となる。第一条部36は、周方向に均等間隔で複数形成され、ここでは三十条の第一条部36が周方向に12°の相対位相差をもって等間隔に形成される。
図6(A)、(C)に示すように、第二雌ねじ体40の環状凹部42の内周面は、軸方向Jに沿って径方向Kに拡径又は縮径するテーパ面となる。ここでは、内周面が、軸方向Jの内側(第一雌ねじ体30側)に向かって拡径しており、環状凸部32の外周面と平行な面となる。即ち環状凹部42の内径は、底面から開口部に向かって拡径する。
この内周面には、第二条部46が形成される。この第二条部46は帯状の列状突起となっており、図6(D)に示すように、突起の帯の長手方向Lが、軸方向Jと略一致する。同時に、第二条部46は、図6(B)に示すように、突起の帯の長手方向Lが径方向Kに変位する。つまり、軸方向Jと径方向Kの双方に変位する突起となる。この第二条部46は、周方向に均等間隔で複数形成される。ここでは三十条の第二条部46が周方向に12°の相対位相差をもって等間隔に形成される。
なお、第一雌ねじ体30と第二雌ねじ体40が当接状態となる際、第一条部36が変位する方向と、第二条部46が変位する方向とが異なっているため、第一条部36と第二条部46は、互いの突起同士が接触する交差部分70(図7(A)参照)が作出される。
図7(B)に示すように、第一条部36と第二条部46は、締結力を利用して互いに押圧される。結果、第一条部36には、弾性変形及び/又は塑性変形によって径方向内側に凹む第一変位部38が作出される。また第二条部46には、弾性変形及び/又は塑性変形によって径方向外側に凹む第二変位部48が作出される。
なお、図7(B)では、模式的に、単一の第一条部36と単一の第二条部46とが交差することで互いに凹み(第一変位部38、第二変位部48)を形成する場合を示しているが、実際には、第一条部36が複数の第二条部46、或いは第二条部46が複数の第一条部36と交差する場合もある。従って、第一条部36(第二条部46)には、複数の第一変位部38(第二変位部48)が形成される場合もある。
図7(A)に示すように、第一条部36及び第二条部46の表面において、複数の交差部分70が、ねじ部の1ピッチ以上の軸方向範囲(領域)Wに亘って存在する。交差部分70では、第一条部36と第二条部46とが互いにくい込んだ状態で第一変位部38及び第二変位部48が作出され、これによって第一雌ねじ体30と第二雌ねじ体40との嵌合状態を保持する効果を発揮できる。第一変位部38及び第二変位部48が、軸方向に1ピッチ以上の範囲に亘って形成されることで、第二雌ねじ体40が、緩み方向に1回転する際に、あらゆる位相において常に、当該回転が抑制され、嵌合状態の保持効果を発揮できる。
なお、環状凸部32と環状凹部42を他の構成とすることもできる。例えば第二雌ねじ体40の環状凹部42の内周面を第二雌ねじ体40のねじ孔の中心からの距離が周方向に沿って変動する形状とする。具体的には図11(a)に示すように、環状凸部32は、軸心が第一雌ねじ体30のねじ孔の軸心と一致し、外周面80が基端側から先端側に向かって縮径するテーパ面とする。一方、環状凹部42は、軸心が第二雌ねじ体40の雌ねじの軸心に対して偏心し、内周面82が底面側から開口部側に向かって拡径するテーパ面であって環状凸部32の外周面80と平行な面となる。従って、環状凹部42に環状凸部32が嵌入したとき、環状凹部42の内周面82と環状凸部32の外周面80とが当接し、嵌入を進めることにより、第一雌ねじ体30を押圧する図11に示す矢印a方向の力が増大する。これにより第二雌ねじ体40の締め込み量の増加に伴い、環状凹部42と環状凸部32との接触部分において、軸心に直交する方向に互いを圧迫する力が増加し、第一雌ねじ体30と第二雌ねじ体40の嵌合状態の保持効果を発揮できる。
なお、環状凹部42の内周面がねじの軸心に対して偏心した円形状であるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、図11(b)に示すように、環状凸部32の外周面がねじの軸心に対して偏心した円形状であってもよく、また環状凸部32の外周面及び環状凹部42の内周面がねじの軸心に対して偏心した円形状であってもよい。
また、環状凸部32と環状凹部42の他の構成としては、例えば図11(c)に示すように、環状凸部32の縦断面の外形を成す輪郭形状と、環状凹部42の縦断面の内形を成す輪郭形状とが互いに異なるように設定する。具体的には基端から先端にかけて縮径した環状凸部32の外周面の軸方向に対する傾斜角と、開口面から底面にかけて縮径した環状凹部42の内周面の軸方向に対する傾斜角とが、互いに異なるように設定したものであってもよい。この場合、基端側から先端側にかけて縮径した環状凸部32の外周面の軸方向に対する傾斜角に対し、開口面から底面にかけて縮径した環状凹部42の内周面の軸方向に対する傾斜角を小さく設定することで、環状凹部42に対する環状凸部32の嵌入を徐々に進める際に自ずと環状凸部32に対する環状凹部42による締付けが増大し次第に弾性変形を伴うようにすることが可能となる。
また、環状凸部32を環状凹部42に嵌入させたとき、環状凸部32と環状凹部42が嵌合して周方向に係合するように、環状凸部32の外周形状及び/又は環状凹部42の内周形状を、軸心からの距離が周方向に沿って異なる形状を有するように形成してもよい。例えば、環状凸部32は、図11(d)に示す外周形状をルーローの三角形様に設定しても好い。このとき、三角形の各角部は丸みを持たせても好い。また環状凹部42は、内周形状が環状凸部32の外周形状に対応するルーローの三角形様を成すように設定しても好い。このとき、三角形の各角部は丸みを持たせても好い。また環状凸部32が環状凹部42内に嵌合可能とするために、周長を環状凸部32に対して環状凹部42がやや大きい程度とすることが好ましい。
なお環状凸部32の外周形状及び環状凹部42の内周形状は、楕円形やルーローの多角形等の他の非正円形を成す形状に設定してもよい。また環状凸部32の外周形状が正円形であって、環状凹部42の内周形状が非正円形であってもよい。勿論環状凸部32の外周形状が非正円形であって、環状凹部42の内周形状が正円形であってもよい。
また、環状凸部32と環状凹部42の他の構成としては、例えば図11(e)に示すように環状凸部32の外周面と環状凹部42の内周面とに鋸歯状に形成された係合部を設けてもよい。この場合の緩み止めの機構としては、環状凹部42に対する環状凸部32の嵌入時、第二雌ねじ体40の締付け方向に対する回転が許容され、緩み方向の回転が防止されるように歯の方向を設定する。また歯幅は、環状凸部32の外周面において基端側で広く、先端に向かって狭まるように設定し、環状凹部42において底面側で狭く、開口端に向かって広がるように設定する。また係合部の数量は少なくとも一つ設けられていればよく、特に限定されるものではないので、例えば等ピッチで複数設けるようにしてもよい。また係合部の鋸歯形状も特に限定されるものではなく、例えば係合部の構成としては、多条ねじのようにスパイラル状に形成されたものであってもよい。
次に、位置可調固定支持部材1の外管14への取付けについて説明する。まず軸部20を孔部16に挿通する。このとき軸部20は、外管14の内側から伝達端部28を挿入端として孔部16に挿通され、軸方向を外管14の管軸に直交させ配置される。次に第一雌ねじ体30を軸部20に沿って移動させ外管14の側壁に固定する。即ち外管14の外側から第一雌ねじ体30を軸部20の雄ねじ部22に螺合させて外管14に当接する位置に移動させ、溶接により外管14の側壁に固定する。
なお、軸部20及び第一雌ねじ体30を外管14に取付ける手順は、上記手順に限定されるものではない。例えば、最初に第一雌ねじ体30を、ねじ孔が孔部16と連通するように外管14の側壁に固定し、伝達端部28を挿入端として軸部20を外管14の内側から孔部16に挿通し、軸部20の雄ねじ部22を第一雌ねじ体30に螺合させるようにしてもよい。
第二雌ねじ体40は、第一雌ねじ体30の外側から雄ねじ部22に螺合し、後述する軸部20の軸方向位置の調整のために第一雌ねじ体30から所定の間隔を存して配置される。以上により位置可調固定支持部材1の外管14への取付けが完了する。
次に位置可調固定支持部材1における軸部20の軸方向位置の調整及び固定について説明する。第二雌ねじ体40が第一雌ねじ体30から所定の間隔を存して配置されているとき、締結工具を伝達端部28に係合させ軸部20にトルクを付加したとき、軸部20は第一雌ねじ体30と相対的に回転し軸方向に移動する。これにより軸部20の軸方向位置が調整可能となる。
これに対して、第一雌ねじ体30と第二雌ねじ体40とが当接状態であって、第一雌ねじ体30の環状凸部32が第二雌ねじ体40の環状凹部42に嵌合しているとき、軸部20の軸方向位置は固定される。具体的には、軸部20を一端側(内管12側)に進行させる方向のトルクが付加されたとき、それに連れて第二雌ねじ体40は第一雌ねじ体30側に移動する。しかし第二雌ねじ体40は、第一雌ねじ体30と当接しているため、移動が規制される。従って第二雌ねじ体40が固定されて回転せず、それに伴い軸部20は回転が規制されて一端側への移動が規制される。
また、軸部20を他端側(外管14の外側)に進行させる方向のトルクが付加されたとき、それに連れて第二雌ねじ体40は第一雌ねじ体30に対して緩み方向に回転しようとする。しかし第二雌ねじ体40は、上述した嵌合機構60による環状凸部32と環状凹部42との嵌合状態の保持効果により回転が規制される。従って第二雌ねじ体40が固定されて回転せず、軸部20は回転が規制されて他端側への移動が規制される。
上述したように軸方向位置の調整は、軸部20を第一雌ねじ体30に対して回転させることにより行う。また軸方向位置の固定は、外管14に固定した第一雌ねじ体30に第二雌ねじ体40を当接させ、環状凸部32を環状凹部42に嵌合させて嵌合機構60を形成し、第二雌ねじ体40の回転を規制することにより行う。従って第一雌ねじ体30、第二雌ねじ体40、係合機構60が軸部20の軸方向位置を調整可能に固定し得る位置可調固定機構として作用する。
位置可調固定支持部材1を取付けた外管14は、内管12を囲繞するように内管12上部に配される。具体的にはまず内管12を囲繞するように外管14の位置合わせを行う。このとき各位置可調固定支持部材1の軸部20は、伝達端部28に係合させた締結工具からトルクが付加されることで回転し、支持端部26の先端が内管12を所定の押圧力で押圧する位置まで移動する。そして図2に示すように第一雌ねじ体30の環状凸部32に第二雌ねじ体40の環状凹部42を嵌合させ嵌合機構60が形成されたときに、各位置可調固定支持部材1の軸部20は、軸回りのトルクや軸力が作用しても、嵌合機構60によって軸部20の回転並びに軸方向位置が規制され固定される。
なお、支持端部26が内管12を押圧する押圧力は、内管12表面が凹む程度の押圧力に設定する。即ち支持端部26を内管12にめり込ませるように、軸部20に付加するトルクの大きさが設定されることが好ましい。
位置可調固定支持部材1は、二重管構造の大きさや用途等により適宜設置数が設定される。例えば外管14が内管12に対して位置がずれることなく、確実に荷重を支えることを要する二重管構造10の場合には、図8に示すように、外管14の周方向に沿って所定の間隔を存して位置可調固定支持部材1を配置することが好ましい。その場合の具体的な外管14の構成について説明する。図9に示すように外管14の側壁には、位置可調固定支持部材1を設置する為の複数の孔部16が貫穿されている。孔部16は、外管14の側壁の全周に亘って所定の間隔を存して設けられ、ここでは八個の孔部16が周方向に45°の相対位相差を以って等間隔に形成される。更に周方向に沿って形成された八個の孔部16は、外管14の軸方向に沿って平行に二列形成される。従って外管14には、十六個の孔部16が形成される。
このように、位置可調固定支持部材1は、外管14の側壁の周方向に45°の相対位相差を以って等間隔で且つ外管14の管軸方向に二列に配設される。更に各位置可調固定支持部材1は、押圧部52により内管12を押圧するので、複数の位置可調固定支持部材1が内管12の全周に亘って押圧力を付加した状態となる。これにより、外管14は、複数の位置可調固定支持部材1によって支持され、内管12に対して所定位置に固定される。
また、複数の位置可調固定支持部材1を等間隔に配置した為、内管12に複数の位置可調固定支持部材1から付与される半径方向の押圧力が互いを相殺して、内管12と複数の位置可調固定支持部材1との間に相対的な偏心力が作用することを抑制できる。これにより外管14は、内管12に取付けられた状態のまま維持される。
次に位置可調固定支持部材1による外管14の角度調節について説明する。複数の位置可調固定支持部材1は、各々の軸部20の軸方向位置を変えることにより、外管14を内管12に傾斜させて固定できる。例えば図10に示すように右側に傾斜した内管12に外管14を鉛直方向に立設する場合、複数の位置可調固定支持部材1の内、図10における外管14の右下及び左上に位置する位置可調固定支持部材1の軸部20の軸方向位置を調整する。即ち外管14の右下及び左上に位置する位置可調固定支持部材1の凸曲面端部26を他の位置可調固定支持部材1の凸曲面端部26よりも内管12の軸心側に配置するように軸部20を固定する。このように内管12が鉛直方向から右に傾斜しているとき、外管14が左に傾斜するように各位置可調固定支持部材1の軸方向位置を変えることで外管14を確実に鉛直方向に立設できる。
このとき支持端部26は、内管12に食い込んで当接するため、内管12が鉛直方向から傾斜した場合でも、内管12の側壁に沿うように当接した状態が維持される。即ち本実施形態の位置可調固定支持部材1によれば、内管12に対して外管14を傾斜させても、位置可調固定支持部材1の支持端部26が内管12にめり込んでいることから、支持端部26が内管12から離間せず、外管14を内管12に対して傾斜させた姿勢を維持するように固定することができる。
また、支持端部26が内管12に食い込むので、位置可調固定支持部材1は、内管12から軸部20の軸方向に沿った入力を受容し得る。例えば外管14が振動した場合、その振動に連れて位置可調固定支持部材1が内管12に対して振動するため、位置可調固定支持部材1には、内管12から軸方向や軸方向周りの力が付加される。このとき支持端部26が内管12にめり込んでいるため、位置可調固定支持部材1に作用する軸方向及び軸方向周りの入力が受容され、支持端部26による内管12に当接する状態が維持される。
以上説明したように、第一の実施形態の位置可調固定支持部材1によれば、各軸部20の軸方向位置を変えることにより、外管14を内管12に対して所定位置で且つ内管12に対して傾斜させて配置することができる。従って内管12が鉛直方向から傾斜している場合、軸部20毎の軸方向位置を変えることで外管14を鉛直方向に立設させることができる。その為、二重管構造が机、椅子等のパイプ脚部や、建造物の脚部等である場合に、外管14の上方に構成される机、椅子等の天板や、建造物の上部構造物等が、脚部の傾斜により設計された姿勢から傾斜して構成されてしまうことを防止し、天板や上部構造物等を設計された姿勢や、所望の姿勢で設置することができる。
なお、第一の実施形態において、雄ねじ部22が右ねじである第一雄ねじ螺旋溝23、及び左ねじである第二雄ねじ螺旋溝24の二種類の雄ねじ螺旋溝を同一領域上に重複して形成しているものとして説明したが、右ねじ又は左ねじの何れか一方のみを形成したものであってもよい。この場合雄ねじ部22に形成された雄ねじ螺旋溝に対応する雌ねじ螺旋条が第一雌ねじ体30及び第二雌ねじ体40に形成される。また二種類の雄ねじ螺旋溝は、互いに異なるピッチで構成してもよい。
また、第一雌ねじ体30が環状凸部32を有し、第二雌ねじ体40が環状凹部42を有するものとして説明したが、これに限定されるものではなく、第一雌ねじ体30が環状凹部を有し、第二雌ねじ体40が環状凸部を有するように構成するようにしてもよい。
次に図12を参照して第二の実施形態に係る位置可調固定支持部材1について説明する。図12は外管14の管軸方向から視た位置可調固定支持部材1を示す断面図である。なお第一の実施形態と同様の箇所については、同一の符号を付して説明を省略する。第二の実施形態においては、第一雌ねじ体30の代わりに介在部材としての角ワッシャ96を設け、角ワッシャ96と第二雌ねじ体40を係合させて嵌合機構60を形成する。
また、伝達端部28は軸部20の他端部の端面に形成された六角穴とする。外管14の孔部16には、雄ねじ部22に螺合する右ねじの外管側雌ねじ螺旋条94が形成され、外管14と第二雌ねじ体40との間には、矩形状の角ワッシャ96が配置される。第二雌ねじ体40は、環状凹部42の代わりに突出部100(図14参照)を有する。
角ワッシャ96は、図13に示す軸部20を挿通させる孔96aと、係止端部96bと、複数の突起98とを有する。係止端部96bは、向かい合う一組の端部をそれぞれ外管14側に折曲げて形成される。これにより係止端部96bは、角ワッシャ96の外管14に対向する面よりも外管14側に突出し、角ワッシャ96を外管14に当接させたとき、角ワッシャ96の外管14に対する相対回転を防止する回転止めとして機能する。即ち係止端部96bは、第二雌ねじ体40と係合した角ワッシャ96が外管14に当接しているときに第二雌ねじ体40と共に回転するのを防止する。
突起98は、突出成形等により形成され、角ワッシャ96の第二雌ねじ体40に対向する面から第二雌ねじ体40側に突出する。ここでは十個の突起98が孔96aを囲むように所定の間隔を存して配置される。
突出部100は、図14(B)に示すように、第二雌ねじ体40の角ワッシャ96に対向する雌ねじ側座面40aに複数形成される。また突出部100は、図14(A)に示すように、雌ねじ側座面40aの面方向に伸びる係止部100aと、第二雌ねじ体40の締付け方向に沿って係止部100aの先端側から雌ねじ側座面40aにかけて徐々に係止部100aから離間する方向に傾斜する傾斜部100bを有する。即ち突出部100は、基端側から先端側にかけて徐々に幅が狭くなる形状を有する。また突出部100は、上述の突起98間に嵌入可能な大きさに形成される。従って、ここでは十個の突出部100が第二雌ねじ体40のねじ孔の周りを囲むように所定の間隔を存して配置される。
角ワッシャ96と雌ねじ側座面40aとの間には嵌合機構60が形成される。即ち第二雌ねじ体40を締付け方向に回転させた場合、第二雌ねじ体40の突出部100の傾斜部100bが突起98に接触する。このとき突起98と突出部100の少なくとも一方が弾性変形することで第二雌ねじ体40の締付け方向の回転が許容される。突出部100が突起98間に嵌入すると、第二雌ねじ体40と角ワッシャ96とが係合して嵌合機構60を形成する。これにより第二雌ねじ体40が角ワッシャ96に対して緩み方向に回転しようとすると、各突出部100の係止部100aが突起98に当接する。その結果、第二雌ねじ体40の緩み方向の回転が規制される。
第二の実施形態に係る位置可調固定支持部材1の外管14への取付けについて説明する。まず軸部20が孔部16に挿通される。このとき軸部20は、伝達端部28を挿入端として、外管14の内側から孔部16に挿通され、雄ねじ部22を孔部16の外管側雌ねじ螺旋条94に螺合させる。次に角ワッシャ96を外管14の外側から軸部20に挿通させる。このとき角ワッシャ96は、係止端部96bを外管14の管軸方向に沿わせて外管14に当接させるように設置される。
第二雌ねじ体40は、角ワッシャ96の外側から雄ねじ部22に螺合され、軸方向位置の調整のために角ワッシャ96から所定の間隔を存して配置される。以上により位置可調固定支持部材1の外管14への取付けが完了する。
位置可調固定支持部材1における軸部20の軸方向位置の調整及び固定について説明する。締結工具を伝達端部28に係合させ軸部20にトルクを作用させたとき、軸部20は孔部16に対して回転して移動する。これにより軸部20の軸方向位置が調整される。
第二雌ねじ体40と角ワッシャ96とが当接状態にあって第二雌ねじ体40の突出部100が角ワッシャ96の突起98間に嵌入したとき、軸部20の軸方向位置は固定される。具体的には、軸部20に内管12側に進行する方向のトルクが付加されたとき、それに連れて第二雌ねじ体40が軸部20と共に回転し角ワッシャ96側に移動する。しかし第二雌ねじ体40と角ワッシャ96とが当接している為、第二雌ねじ体40は、回転できず且つ移動が規制された状態となる。従って軸部20は、回転が規制され内管12側への移動が規制される。
また、軸部20に外管14の外側に進行する方向のトルクが付加されたとき、それに連れて第二雌ねじ体40は、軸部20と一体的に外管14の外側に移動する回転方向、即ち角ワッシャ96に対して緩み方向に回転しようとする。しかし第二雌ねじ体40は、突出部100の係止部100aが突起98に当接するため回転が規制されて固定される。従って軸部20は、回転が規制され外管14の外側への移動が規制される。これにより位置可調固定支持部材1の軸方向位置が固定される。更に各位置可調固定支持部材1の軸部20の位置を変えることによって上記第一の実施形態と同様に内管12に対する外管14の角度調節を行うことができる。
なお、上記第二の実施形態において、角ワッシャ96に突起98、第二雌ねじ体40に突出部100を設けているが、これに限定されるものではなく、角ワッシャ96の外側端面に第一雌ねじ体30の環状凸部32と同様の環状凸部を形成し、第一の実施形態の第二雌ねじ体40の環状凹部42を角ワッシャ96の環状凸部に嵌合させて嵌合機構60を形成するようにしてもよい。
また、第二の実施形態においては、第一雌ねじ体30の代わりに角ワッシャ96を設け、更に孔部16に外管側雌ねじ螺旋条94を形成した場合を例示したが、これに限定されるものではなく、矩形形状の孔部16に挿して嵌める挿嵌部材120を設け、挿嵌部材120の内周面に雄ねじ部22に螺合する部材側雌ねじ部螺旋条126を形成するようにしてもよい。図15は外管14の管軸方向から視た挿嵌部材120を有する位置可調固定支持部材1を示す断面図である。
図16(A)は挿嵌部材120の他端部側の平面図、(B)は挿嵌部材120側面の断面図、(C)は挿嵌部材120の円形状の場合の平面図である。挿嵌部材120は、矩形形状の孔部16に嵌る中空の筒部122と、筒部122の一端部に形成され外管14の側壁の内周面に当接するフランジ124と、筒部122の他端面に形成された凹凸面128とを有している。筒部122は、外管14の厚みよりも長く、孔部16と略同じ形状と大きさの外形を有する。筒部122は、中空の内周面が軸部20の外周面と略同じ形状と大きさを有する。また筒部122の中空の内周面には、雄ねじ部22に螺合する右ねじの部材側雌ねじ螺旋条126が形成される。
筒部122の外周及び孔部16の内周を矩形形状に形成することで、挿嵌部材120の回転を防止するように機能させている。しかし回転防止を目的とした場合、筒部122の外周及び孔部16の内周は、矩形形状に限定されるものではなく、多角形状や楕円形状等の非円形状であればよい。また図16(C)に示すように筒部122の外周及び孔部16の内周を円形状とした場合には、フランジ124において、外管14の側壁の内周面に当接する当接面を、外管14の内周面の円弧に沿って湾曲した弧形状の湾曲面にすればよい。即ちフランジ124の弧形状の湾曲面を外管14の側壁の内周面に沿わせて密着させることにより、挿嵌部材120の回転防止機能を発揮させてもよい。また、フランジ124の外管14に密着する面積が広いほど、挿嵌部材120の回転防止機能をより高度に発揮することができる。勿論、筒部122の外周は、螺旋溝を形成して外管14に対して螺合するようにしてもよい。
凹凸面128は、筒部122の他端部の端面に形成され、第二雌ねじ体40の突出部100に嵌合する凹部と、突出部100に当接する凸部とを交互に複数有している。凹凸面128は、挿嵌部材120が孔部16に挿通されたとき、外管14の側壁よりも外側に突出する。
凹凸面128と雌ねじ側座面40aとの間には嵌合機構60が形成される。即ち第二雌ねじ体40を締付け方向に回転させた場合、第二雌ねじ体40の突出部100の傾斜部100bが凹凸面128の凸部に接触する。このとき凸部と突出部100の少なくとも一方が弾性変形することで第二雌ねじ体40の締付け方向の回転が許容される。突出部100が凹部に入り込むと、第二雌ねじ体40と挿嵌部材120とが係合して嵌合機構60が形成される。第二雌ねじ体40を緩み方向に回転させようとすると、各突出部100は、係止部100aが凸部に当接して移動が規制される。結果、第二雌ねじ体40の緩み方向の回転が規制され、位置可調固定支持部材1の軸方向位置を調整可能に固定することができる。
なお、挿嵌部材120を有する位置可調固定支持部材1の外管14への取付けは、以下のようにして行う。まず挿嵌部材120は、外管14内部において凹凸面128側の端部を挿入端として孔部16に挿通され、フランジ124が外管14の内壁面に当接する位置に配置される。ここでは筒部122の外形と孔部16とが略同じ形状と大きさを有することから、挿嵌部材120は、孔部16内で回転が規制される。
次に軸部20を外管14内側から挿嵌部材120に挿通させる。即ち、凸曲面端部26を外管14内部に位置させ、雄ねじ部22を挿嵌部材120の部材側雌ねじ螺旋条126に螺合させる。第二雌ねじ体40は、外管14の外側から雄ねじ部22に螺合し、軸方向位置の調整のために挿嵌部材120の凹凸面128から間隔を存して配置される。以上により位置可調固定支持部材1の外管14への取付けが完了する。
なお、上記位置可調固定支持部材1は、嵌合機構60を、挿嵌部材120の凹凸面128と第二雌ねじ体40の雌ねじ側座面40aとの間に形成したが、これに限定されるものではなく、挿嵌部材120の他端部の外側端面に環状凸部32と同様の環状凸部を形成し、更に環状凹部42を有する第二雌ねじ体40を用いることで、挿嵌部材120と第二雌ねじ体40との間に上述の第一の実施形態の嵌合機構60と略同様の嵌合機構を形成してもよい。
上記各実施形態では、位置可調固定支持部材1を軸部20が外管14に対して直交する向きに設置しているが、これに限定されるものではなく、軸部20の軸方向を外管14の管軸に直交する方向から傾斜させて設置してもよい。例えば図17(A)に示すように軸部20を、凸曲面端部26が伝達端部28よりも下方に位置するように傾斜、即ち軸部20が内管12側に向かって下降するように傾斜させてもよい。勿論、傾斜向きや傾斜角度は±90°の範囲内であればよく、特に限定されるものではない。
軸部20を傾斜させた場合、軸部20を外管14の軸方向に対する直交方向に設置したときに剪断力として作用していた力の一部を軸部20の軸方向に沿った力とすることができる。ここで図17(B)は、(A)に示すΔLを説明するための概略図であり、ΔLは、軸部20を傾斜させた場合の軸部20の仮想固定点の水平方向成分L´と、軸部20を水平に設置した場合の軸部20の仮想固定点の水平方向成分Lとの差分であって、外管14の位置が下方にずれる場合には、差分ΔLだけ軸部20を変位させるための力が必要となり、これが外管14の位置ずれに抵抗する力として作用する。従って、鉛直下向きの荷重が作用する外管14には、全周に亘って内管12からの反力が作用するので、外管14を内管12に対してより強固に固定することができる。
なお、軸部20を支持端部26が伝達端部28よりも下方に位置するように傾斜させたが、これに限定されるものではなく、逆向きの傾斜、即ち支持端部26が伝達端部28よりも上方に位置するように傾斜させてもよい。また外管14の全周に亘って配設される位置可調固定支持部材1を、軸部20が支持端部26を下向きに傾斜したものと、支持端部26が上向きに傾斜したものとを互い違い配置してもよい。また位置可調固定支持部材1を、外管14の管軸に沿って、支持端部26を下向きに傾斜させたものと、支持端部26を上向きに傾斜させたものとを段違い配置、即ち上段列と下段列とで軸部20の傾斜を異ならせて配置してもよい。
次に図18を参照して第三の実施形態に係る位置可調固定支持部材1について説明する。なお第一の実施形態と同様の箇所については、同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態ではナット形溶接部材130を第一雌ねじ体30と第二雌ねじ体40とに対して回転させ、摩擦攪拌接合(Friction Stir Welding)によって第一雌ねじ体30、第二雌ねじ体40、ナット形溶接部材130を一体化させて嵌合機構60を形成し、軸部20の軸方向位置の固定を行う。
本実施形態の第二雌ねじ体40は、略円錐台形状を有し、外周面の軸方向に対する傾斜角が、第二雌ねじ体40の環状凸部32の軸方向に対する傾斜角と略一致する。即ち第二雌ねじ体40の外周面は、他端側に向かって縮径するテーパ面となっている。また第二雌ねじ体40の外周面は、第二雌ねじ体40の一端が第一雌ねじ体30と当接したとき、環状凸部32の外周面に連続する面となる。
第二雌ねじ体40の外周面には、図19(A)、(B)に示す六角ナット形状を有するナット形溶接部材130が締嵌めにより嵌合され且つ点溶接により仮固定されている。なお、第二雌ねじ体40にナット形溶接部材130を仮固定する方法は、点溶接に限定されるものではなく、ろう接、アーク溶接等、点溶接以外の溶接、接着剤による接着等の方法でもよい。
ナット形溶接部材130は、摩擦撹拌接合によって第一雌ねじ体30及び第二雌ねじ体40と接合するのに適した材料、例えば、一般鋼材や機械構造用鋼等の炭素鋼や、クロムモリブデン鋼やニッケルクロムモリブデン鋼等の合金鋼等により構成される。
また、ナット形溶接部材130は、内周面が第二雌ねじ体40の外周面と略平行なテーパ面を成している。即ち内周面の軸方向に対する傾斜角が第二雌ねじ体40の外周面の軸方向の傾斜角と略一致する。ナット形溶接部材130の一端部(第一雌ねじ体40側の端部)は、第二雌ねじ体40の先端面よりも第一雌ねじ体30側に突出し、第一雌ねじ体30の環状凸部32を嵌合させて収容する収容空間132として機能する。収容空間132の軸方向の長さは、環状凸部32の軸方向の長さよりも長く形成されている。また収容空間132の開口側の内径は、環状凸部32の先端部の外径よりも大きく、かつ基端部の外径よりも小さく設定される。
次に嵌合機構60について説明する。第一雌ねじ体30に軸部20を螺合させた後、図20(A)示すように第二雌ねじ体40を第一雌ねじ体30の外側から軸部20に挿通させ、雄ねじ部22に螺合させる。第二雌ねじ体40は、ナット形溶接部材130にトルクを付加したときナット形溶接部材130と共に回転する。ナット形溶接部材130は、外周面に自動油圧ポンプ等の駆動源が接続された六角ソケット(不図示)を装着し、六角ソケットを介してトルクが付加され回転する。ナット形溶接部材130及び第二雌ねじ体40は、図20の矢印Lで示す左ねじの締付け方向に回転し、矢印Xで示す第一雌ねじ体30側へ移動する。
第一雌ねじ体30の環状凸部32は、図20(B)に示すようにナット形溶接部材130の開口から収容空間132内に進入する。第二雌ねじ体40及びナット形溶接部材130は、更に矢印X方向に移動したとき、第二雌ねじ体40の一端が、図20(C)に示すように環状凸部32の先端に当接し、移動が規制される。
そして、ナット形溶接部材130は、駆動源から六角ソケットを介して点溶接された部分(仮固定された部分)を破壊する所定以上のトルクが付加されて、点溶接された部分が破壊される。従って、第二雌ねじ体40は、所定のトルクで締結された状態となって回転が停止する。このとき六角ソケットは、ナット形溶接部材130を軸方向に押し込むようにし、ナット形溶接部材130に押圧力を付加する。これによりナット形溶接部材130は、第一雌ねじ体30及び第二雌ねじ体40に対して摺動する。またナット形溶接部材130を軸方向に押し込む押圧力を付加するので、ナット形溶接部材130、第一雌ねじ体30及び第二雌ねじ体40には、それぞれ面圧が付加される。
この摺動による摩擦熱によって、ナット形溶接部材130と環状凸部32との境界面及びナット形溶接部材130と第二雌ねじ体40との境界面にそれぞれ可塑化、粘性化した層を形成する。可塑化、粘性化した層の材料は、溶接部材130の回転によって攪拌され、結果ナット形溶接部材130と環状凸部32とを接合し、更にナット形溶接部材130と第二雌ねじ体40とを接合する。このようにナット形溶接部材130を介して第一雌ねじ体30と第二雌ねじ体40とを接合し嵌合機構60を形成する。
本実施形態においては、ナット形溶接部材130を介して第一雌ねじ体30と第二雌ねじ体40とが接合するため、第一雌ねじ体30及び第二雌ねじ体40は、互いに相対回転できない状態となる。従って位置可調固定支持部材1の軸方向位置を固定することができる。更に各位置可調固定支持部材1の軸部20の位置を変えることによって上記第一の実施形態と同様に内管12に対する外管14の角度調節を行うことができる。
なお、第三の実施形態において、第一雌ねじ体30の環状凸部32の外周面、第二雌ねじ体40の外周面及びナット形溶接部材130の内周面の傾斜角は、特定の角度に限定されるものではない。例えば第一雌ねじ体30の環状凸部32の外周面、第二雌ねじ体40の外周面及びナット形溶接部材130の内周面の軸方向に対する傾斜角αを、図21(a)に示すように30°、図21(b)に示すように45°、図21(c)に示すように60°等のように設定してもよい。図21(a)~(c)を比較して明らかなように、傾斜角αを大きくすることにより、ナット形溶接部材13の進行方向に対するナット形溶接部材130の内周面と、環状凸部32及び第二雌ねじ体40の外周面の傾斜が軸方向に対して直交方向に近づくので、ナット径溶接部130に軸方向の一定の押圧力を付加した場合に、ナット形溶接部材130から環状凸部32及び第二雌ねじ体40に付加される面圧を高めることができる。
また、環状凸部32と第二雌ねじ体40の傾斜角を異ならせ、またナット形溶接部材130の内周面を、軸方向に沿って途中で傾斜角が変化する複合角度円錐台の形状としてもよい。例えば図22に示すように、環状凸部32の外周面が軸方向から30°傾斜し、第二雌ねじ体40の外周面が軸方向から45°傾斜していた場合、ナット形溶接部材130の内周面の軸方向に対する傾斜角は、第二雌ねじ体40の外周面に嵌合している内周面においては45°とする。また収納空間132が形成されている一端部の内周面においては、第二雌ねじ体40近傍が45°で、当該近傍から一端部の先端までの中途から30°に切り替わるように形成する。
次に、図23を参照して第四の実施形態の位置可調固定支持部材1について説明する。なお第一の実施形態と同様の箇所については、同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では第一雌ねじ体140が支持端部26を収容することで、支持端部26を外管14の外側に退避させる退避空間としてのハウジング部150を有するものである。なお第一雌ねじ体140は、第一雌ねじ体30と同様に軸方向に貫通するねじ孔と、環状凸部32を有する。
ここでは第一雌ねじ体140をハウジング部150と一体に構成しているが、第一雌ねじ体140とハウジング部150とを別体に構成してもよい。ハウジング部150は、一端部が開口し、他端部に軸部20の雄ねじ部22と螺合するねじ孔が貫通する底部152が形成された有底の円筒形状を有し、内周面によって囲まれる空間内に支持端部26を収容可能に構成される。またハウジング部150の一端部の外周には、ハウジング部150を介して第一雌ねじ体140を外管14に固定するための、外側にフランジ状に突出する固定端部154が形成され、底部152の外側端面には第一雌ねじ体140の環状凸部32が形成される。
本実施形態の位置可調固定支持部材1の組み立て、及び外管14への取付けは以下の手順により行う。先ず軸部20を第一雌ねじ体140のねじ孔に螺合させて挿通させる。このとき軸部20は、伝達端部28を挿入端としてハウジング部150の開口から第一雌ねじ体140のねじ孔に挿通され、支持端部26がハウジング部150に収容されるように軸方向位置が決定される。第二雌ねじ体40は、第一雌ねじ体140の外側から雄ねじ部22に螺合して配置される。このとき支持端部26を軸方向に沿って変位し得るように、第二雌ねじ体40は、第一雌ねじ体140から所定の間隔を存して配置される。以上により位置可調固定支持部材1が構成される。
位置可調固定支持部材1は、ハウジング部150の開口と外管14の孔部16とが連通するように設置位置が決められて固定される。具体的には、まずハウジング部150の開口と孔部16とが連通するようにハウジング部150を外管14の外周面に当接させ、お互いを固定する。固定端部154と外管14との固定方法は、特に限定されるものではないが、ここではボルトを締結することによって固定する。他の固定方法として溶接や接着による固定を行ってもよい。
本実施形態では、第一雌ねじ体140のハウジング部150内に支持端部26を収容し、外管14内から支持端部26を退避させることが可能となる。従って、内管12の上部に外管14を配置する際に、支持端部26と内管12との接触を避けることができる。また位置可調固定支持部材1は外管14の側壁に周方向に等間隔で配置されるため、支持端部26が外管14の内側に存していると各支持端部26が内管12に接触しないように外管14を内管12の上部に設置することが困難であるが、本実施形態のように支持端部26をハウジング部150に収容し外管14の外側に位置させれば、内管12に対する外管14の設置が容易となる。また予め位置可調固定支持部材1を構成しておき、外管14の外側にハウジング部150を固定するだけで位置可調固定支持部材1を外管14に取付けできるため、外管14への位置可調固定支持部材1の取付けが第一乃至第三の実施形態の場合と比較して容易となる。
なお、第一雌ねじ体140とハウジング部150とが一体に構成されているものとして説明したが、第一雌ねじ体140とハウジング部150とを別体で構成した場合、第一雌ねじ体140は、図24に示すようにハウジング部150の底部152に当接するフランジ状の係合部142と、ハウジング部150に形成された孔から外部に突出する環状凸部32とを有する構成とすることが出来る。このとき環状凸部32の外周面と底部152の孔との間に、互いの相対回転を規制する相対回転防止機構を設けることで締結時の共回りを防止することが出来る。勿論、別体に設ける第一雌ねじ体140とハウジング部150との嵌合は、ねじ締結や溶接としてもよいことは言うまでもない。
例えば、環状凸部32の外周面に一部を欠落して軸部20の回転軸を挟んで互いに平行な二つの面からなる二面幅を形成し、またハウジング部150の孔の内周面を環状凸部32の外周面に対応させた形状とすることで第一雌ねじ体140とハウジング部150との相対回転を規制する。このように第一雌ねじ体140とハウジング部150とを別体で構成した場合、支持端部26が内管12を押圧したときに、第一雌ねじ体140にはハウジング部150側を押し付ける反力が作用する。
また、ハウジング部150が外管14に固定されている為、軸部20を締め付ける程、支持端部26が内管12を押圧する図24の矢印aで示す方向の押圧力と共に第一雌ねじ体140にハウジング部150を押し付ける矢印bで示す方向の反力が強くなり、位置可調固定支持部材1が内管12を押し付ける力が強固となって安定して内管12に外管14を固定した状態を維持することができる。なお、第一雌ねじ体140とハウジング部150との相対回転を抑止するための構造は上記に限定されず、例えば係合部142を底部152に嵌合させる構造を採用してもよい。具体例としては、係合部142を断面矩形状に形成し、底部152に係合部142の断面形状と同様の矩形状の凹みを設け、係合部142を底部152の凹みに嵌合させることで、第一雌ねじ体140とハウジング部150との相対回転を抑止する構造を採用してもよい。
なお、第一雌ねじ体140とハウジング部150とを別体に構成した場合、第一雌ねじ体140とハウジング部150との分離を防止する分離防止部を設けてもよい。例えば、図25(A)に示すようにハウジング部150の外側で第一雌ねじ体140の外周面に分離防止部としてのCリング等の止め輪144aを装着させてもよい。また分離防止部としてナットを用いるようにしてもよく、その場合には第一雌ねじ体140の外周面に雄ねじ溝146を形成し、図25(B)に示すようにハウジング部150の外側で第一雌ねじ体140の外周面に分離防止部としてのナット144bを螺合させる。なお、分離防止部は、上記に限定されるものではなく、ワッシャ等であってもよい。分離防止部を設けておけば、第一雌ねじ体140に軸部20を挿通させる前に、第一雌ねじ体140とハウジング部150とを容易に組み合わせた状態にしておくことができる。
なお、上述した説明において、ハウジング部150を外管の外周面に固定した場合を例に説明したが、これに限定するものではない。例えば図26に示すように、ハウジング部200を外管14の孔部16に挿通させた状態で固定してもよい。この場合、位置可調固定支持部材1をハウジング部200、ハウジング部200の外周面に配設されるナット210、ハウジング部200内に配設され軸部20に螺合する第一雌ねじ体220、軸部20及び第二雌ねじ体40等によって構成する。
ハウジング部200は、有底の筒状を成し、一端部にフランジ部202を具える。またハウジング部200の底部には、第一雌ねじ体220を介して軸部20を挿通させる孔204が形成される。またハウジング部200の外周面には、雄ねじ部が形成される。
ナット210は、ハウジング部200の外周面の雄ねじ部に螺合する雌ねじ螺旋条を有し、ハウジング部200に螺合して外管14を押圧する位置に配置される。ここでは、ナット210と外管14との間にワッシャ215を配設するが、勿論ワッシャ215を除く構成であってもよい。ワッシャ215は、外管14の外周面に対して係合し得る形状を有しており、ここでは外管14に対向する一端面が外管14の外周面に沿った湾曲形状を成すように外形形状が設定される。勿論、ワッシャ215の形状は、これに限定されるものではなく、外管14の外周面に向けて突き出す爪状の端部を形成し、該端部を外管14に突き立てることで、係合させる等、形状等は適宜設定し得る。
また、ワッシャ215の他端面は、ナット210に対向し、且つ表面に一又は複数の鋸歯状(例えば直角三角形状)の凹凸を配設したワッシャ側係合面215aとなっている。一方、ナット210のワッシャ215と対向する一端面には、ワッシャ側係合面215aの凹凸と係合し得る鋸歯状の凹凸を具えたナット側係合面210aが形成される。ここでの鋸歯形状の凹凸は、ナット210を締め込む方向には回転できるが、緩める方向には回転できないように形状が設定される。
即ち、両者の鋸歯形状は、図41に示すように、ナット210が締結方向Aに回転しようとすると、ナット210の傾斜面210Y、ワッシャ215の傾斜面215Yが互いに当接して締結方向Aの回転を許容する。一方、ナット210が緩み方向Xに回転しようとすると、互いの垂直面(傾斜が強い側の面)210X、215Xが当接して、ナット210の緩み方向Xの回転を防止する。とりわけナット210を締めつけることによって、ナット側係合面210aとワッシャ側係合面215aとの距離が縮む程、両者の鋸歯の噛み合いが強くなり、緩み方向X側の係合強度が向上する。
第一雌ねじ体220は、外形形状がハウジング部200の内周面に略沿った形状である。また第一雌ねじ体220は、第一雌ねじ体30と同様に軸方向に貫通するねじ孔と、軸方向の端部に環状凸部32を有する。第一雌ねじ体220は、環状凸部32を孔204に挿通させてハウジング部200内に配設される。これにより環状凸部32は、外管14の外側に突出する。
このようなハウジング部200は、フランジ部202を外管14の内周面に当接させ、底部側が外管4の外側に突出するように外管4の孔部16に挿通される。次にワッシャ215を外管14の外側でハウジング部200に配設し、ナット210をハウジング部200の外周面に螺合させ、ワッシャ215を介して外管14を押圧する位置まで締付け方向に沿って移動させる。結果、ハウジング部200は、フランジ部202と、ナット210とで外管14を挟むように取り付けられ、外管14に固定される。
また、各実施形態において、内管12の上部に当接キャップを設置し、当接キャップと外管14との間で外管14の内側に嵌まる被支持部材を配設してもよい。具体的に図27(a)に示すように当接キャップ230は、上面が凸曲面状に形成された上曲面部230aを具える。被支持部材240は、凹状の被支持面240aと外管14の天面に当接する当接面240bとを具え、被支持面240aが上曲面部230a上で支持される。凹状の被支持面240aは、上曲面部230aと当接する面が仮想球面の一部を成すように構成されることが荷重分散上、好ましい。これにより、図27(b)に示すように外管14を内管12に対して傾斜させた場合であっても、上曲面部230aの曲面に沿って被支持面240aの位置が変わり、当接キャップ230による被支持部材240の支持状態が維持される。結果、外管14が内管12に対して傾斜しても、外管14が内管12上に載置されているので、位置可調固定支持部材1に掛かる負荷を低減させることができる。
また、被支持面240aは、凹状に限定するものではなく、図27(c)に示すように、凹曲面状であってもよく、このようにすれば上曲面部230aとの接触面積を増えて、位置可調固定支持部材1に掛かる負荷を更に低減させることができる。
また、外管14は、図27(d)に示すように中途部に仕切り板250を有する形状であって、仕切り板250の上方及び下方のそれぞれに内管12を配設し得るようにしてもよい。その場合は仕切り板250の上方においても、当接キャップ230と被支持部材240を配設してもよく、ここでは当接キャップ230を内管12の下部に設置し、被支持部材240を仕切り板250の上面に配設する。
また、上記各実施形態において、支持端部26が錐形状の突起を有するものとして説明したが、これに限定されるものではい。ここで図28は錐台形状の支持端部26を示し、(a)は側面図、(b)は平面図であり、図28に示すように支持端部26の突起は、錐台形状、即ち基端から軸方向に先端部が延び、且つ先端面を有する形状であってもよい。
また、支持端部26は、図29に示すように基準面26aと、基準面26aから軸方向に延びる突起部26bとを有して成るものであってもよい。このような突起部26bとしては、図29(a)に示す柱形状の他、図29(b)に示す錐形状や、図29(c)に示す錐台形状等がある。勿論突起部26bの先端面が曲面状であってもよい。
なお、突起部26bの数は、一つに限定するものではなく、複数あってもよい。ここで図30は突起部26bを複数具える支持端部26を示す図であり、図30(a)に示すように、複数の突起部26bを基準面26aにおける全域に略等間隔に配置してもよい。また各突起部26bの位置や、その長さは適宜設定し得るものであり、突起部26bの各々の長さを異ならせるように設定しても良い。例えば図30(b)に示すように、各突起部26bの長さを基準面26aの中央部に近い程、長く設定し、中央部から遠い程、短く設定して各突起部26bの先端を結ぶ仮想面を球面状や放物面状等としてもよい。勿論、各突起部26bの長さは、中央部に近い程短く、中央部から遠い程長くなるように設定してもよい。なお突起部26bの頂角は、全て同一としてもよいが、各々異なる角度であっても良いことは言うまでもない。
ここで図31は円筒状の筒状突起部を有する支持端部を示し、(a)は側断面図、(b)は平面図である。支持端部26は、外縁部が中央部に対して突出した、中央部が凹んだ凹形状であってもよい。即ち、支持端部26は、基準面26aの外縁部に沿って配設された円筒或いは角筒等の筒形状の筒状突起部226を有する形状であってもよい。
また支持端部26の凹み形状は特に限定するものではなく、適宜設定し得る。例えば図32(a)に示すように筒状突起部226の内周面と基準面26aとにより曲面を成すように円形に凹んだ形状であってもよい。また筒状突起部226は、図32(a)、(b)に示すようにその厚みを基端側から先端側にかけて徐々に薄くするように形成してもよい。更に筒状突起部226を複数配設してもよく、例えば、図32(c)に示す外縁近傍に配設した筒状突起部226aと、筒状突起部226aの内壁側に径を小さくした筒状突起部226bを配設し得る。また図32(d)に示すように、筒状突起部226a、226bによって囲繞される部分に突起部26bを配設してもよい。即ち突起部26bを中心に、同心円状に筒状突起部226a、226bを配設してもよい。
また、突起部26b及び複数の筒状突起部226を具える場合において、軸方向の長さを変えるように各々の軸方向に沿った長さを設定してもよい。例えば図33に示すように、突起部26bを囲繞するように、筒状突起部226a、226bが配設されている場合において、中央部に位置する突起部26bの軸方向の長さが最も長く、突起部26b近傍の筒状突起部226bの軸方向長さが更に外側に位置する筒状突起部226aよりも長く設定してもよい。この場合においても、突起部26b及び筒状突起部226a、226bの先端を結ぶ仮想面を球面状や放物面状等となるように設定してもよい。
また、上述した第一の実施形態に係る第一雌ねじ体30を外管14の外面に溶接して固定した場合を例に説明したが、これに限定するものではない。溶接等の固定以外の方法として、例えば第一雌ねじ体30を着脱可能に挿設(例えば嵌めて保持)するあり溝を有する雌ねじ保持部(あり溝部材)を設けてもよい。具体的には雌ねじ保持部を外管14に固設し、この雌ねじ保持部に第一雌ねじ体を挿設することで、外管14に第一雌ねじ体を配設してもよい。
図34は雌ねじ保持部300に保持された第一雌ねじ体310を有する位置可調固定支持部材1を示す平面視断面図である。図35は外管14に固定された雌ねじ保持部300を示す図であり、(a)は平面視断面図、(b)は外管14の内周側から視た図である。雌ねじ保持部300は、外管14の内周面に沿って孔部16を囲繞する形状であって、第一雌ねじ体310を嵌合し得るあり溝を有する。雌ねじ保持部300は、溶接やねじ締結等によって外管14に固着される。
雌ねじ保持部300は、O形状の一部を切り欠いた切欠部分(切欠部という。)によって略C形状(図35(b)参照)に形成される。切欠部は、図35(b)に示すように雌ねじ保持部300の下部において、鉛直方向に沿って成される。この切欠部により略C形状の両端は、嵌合規制部304として機能する。なお、雌ねじ保持部300における切欠きの位置やその方向は、特に限定するものではない。従って切欠部は、雌ねじ保持部300の下部以外の位置に形成してもよく、また水平方向等、鉛直方向以外の方向に延伸し得るように形成してもよい。
また嵌合規制部304においては、雌ねじ保持部300と外管14の壁面との間にあり溝としての間隙を画成し得るように厚み方向の一部が切り欠かれる。従って嵌合規制部304の内壁面は、下端に向かって徐々に外管14に接近する方向に傾斜し、下端が外管14の内壁面に当接する。また、切欠部は、嵌合規制部304が左右対称な略V字形状を成すように形成される。この嵌合規制部304のV字を成す面が第一雌ねじ体310の外周面に当接する面となる。従って第一雌ねじ体310は、嵌合規制部304と外管14との間のあり溝に嵌合することで、下部が支持されると共に、嵌合規制部304に対して軸方向に係合する。
ここで図36は第一雌ねじ体310を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。第一雌ねじ体310は、一端に形成された環状凸部36と、(即ち嵌合規制部304と外管14との間隙)に嵌入し得、他端部を成す雌ねじ体嵌入部312とにより構成される。
雌ねじ体嵌入部312は、あり溝の形状に沿った外形を有し、他端側から一端側に向かって幅が拡がる形状であって、且つ下端縁に向かって縮幅する形状を有する。この雌ねじ体嵌入部312の下端縁に向かって縮幅する形状は、上記の嵌合規制部304の略V字形状に当接し得る傾斜面314によって形成される。従って第一雌ねじ体310は、傾斜面314が嵌合規制部304に当接した状態で嵌合することで、幅方向の位置が規制される。
第一雌ねじ体310は、環状凸部32を外管30の外側に突出させる向きに配設される。従って第一雌ねじ体310の環状凸部32は、孔部16に挿通される。この孔部16は、環状凸部32を上下方向に摺動可能に案内するよう、長孔或いは楕円形状等の開口形状(図35(b)参照)に設定される。勿論孔部16は、摺動範囲を網羅する大きさの正円形の開口形状であっても好い。
次に第一雌ねじ体310の雌ねじ保持部300への設置について説明する。第一雌ねじ体310は、図37(a)に示すように、第一雌ねじ体310の環状凸部36を、孔部16の上端部に挿通させる。即ち第一雌ねじ体310は、嵌合規制部304から離間した位置に配置される。
次に環状凸部36を孔部16に沿わせてスライドさせて第一雌ねじ体310を下降させる。これにより第一雌ねじ体310は、あり溝に嵌合する。即ち雌ねじ体嵌入部312が嵌合規制部304に嵌入して、第一雌ねじ体310は、図37(b)に示すように軸方向の移動が規制された状態となって雌ねじ保持部300に設置される。
このように第一雌ねじ体310を設置可能な雌ねじ保持部300を設けたことで、第一雌ねじ体を溶接させずとも外管14に固定的に保持でき、交換時には容易に取り外せるので破壊の必要性も無く、より交換性を向上させることができる。
また、上記においては雌ねじ保持部300を外管14の内周側に設けた場合を例に説明したが、勿論外管14の外周側に設けても良いことは言うまでもない。ここで図38は外管14の外周側に位置する雌ねじ保持部300に設置された第一雌ねじ体310を示す図である。雌ねじ保持部300が外管14の外周、即ち第二雌ねじ体40に対向する位置に固着された場合、嵌合規制部304の形状は、環状凸部32と環状凹部42とが嵌合し得るように設定する。即ち環状凸部32が、V字状の切欠きによって成る嵌合規制部304間の切欠部を通過して第二雌ねじ体40側に突出し、第二雌ねじ体40の環状凹部42と嵌合するように、嵌合規制部304の形状を設定する。
雌ねじ保持部300を外管14の外周に設けた場合、内周側に設ける場合と比較して、外管14へ固着を容易に行うことができる。また第一雌ねじ体310の着脱についても、外管14の内周側と比較して外管14の外周側の方が容易に行うことができる。
なお、雌ねじ保持部300は、嵌合規制部304が下部となるように設置向きを設定したが、これに限定されるものではない。雌ねじ保持部300の設置向きは適宜設定し得る。従って向きを異ならせた複数の雌ねじ保持部300を外管14の周方向に沿って配設してもよい。例えば図39(a)に示すように、嵌合規制部304を下部に位置させた雌ねじ保持部300と、嵌合規制部304を上部に位置させた雌ねじ保持部300とを交互に配置する。また図39(b)に示すように、嵌合規制部304を左側に向けた雌ねじ保持部300と、嵌合規制部304を右側に向けた雌ねじ保持部300とを交互に配置する。このように異なる二つの設置向きの雌ねじ保持部300を互い違いに配置してもよい。
また嵌合規制部304が左右側に位置する向きの雌ねじ保持部300を配設する場合、第一雌ねじ体310を外管14の軸方向に対し直交方向にスライド可能に孔部16を形成する。従って、孔部16は、例えば図40(b)に示すように、水平方向(左右方向)に長い横長の長円等の形状にする。勿論、孔部16は、楕円や正円形状であってもよい。
また、雌ねじ保持部300が第一雌ねじ体30を嵌めて保持する為のあり溝を有する形状であるものとして説明したが、少なくとも第一雌ねじ体310を所定位置で支持し得るものであれば、形状は適宜設定可能である。従って、図40(a)、(b)に示す第一雌ねじ体310の下部を支持する突出支持部350によって構成してもよい。即ち、雌ねじ保持部としての突出支持部350は、外管14の面方向に突出し、第一雌ねじ体310を載置し得る形状を有する。このとき突出支持部350は、面方向に沿って視たときの形状が図40(a)に示すように略C字状の一連の部材であってもよく、また図40(b)に示すように二個一対の略L字状の部材を対向配置させて構成してもよい。このように、C字状や一対のL字状の突出支持部350であれば、第一雌ねじ体310の下部と共に両側部の位置も支持し得る。勿論、突出支持部350は、図40(c)に示すように周方向に沿って延びる略直線状に構成した部材で構成され、第一雌ねじ体310の下部を支持するものであってもよいことは言うまでもない。
また、上記第一の実施形態において、第一雌ねじ体30を外管14の側壁に溶接によって固定しているが、勿論、これに限定されるものではなく、図42に示すように、第一雌ねじ体30を外管14の内側から、孔部16に挿通させて配設してもよい。
即ち、孔部16は、第一雌ねじ体30を挿通し得る大きさの開口を有し、また第一雌ねじ体30の一端部(環状凸部32に対して軸方向の反対側の端部)は、外管14の内周面に当接し得るフランジ360(当接部)を有する。フランジ360は、外管14の内周面に対して係合し得る形状を有しており、ここでは外管14の内周面の曲面に沿った湾曲形状を成す。勿論、フランジ360の形状は、これに限定されるものではなく、外管14の内周面に向けて突き出す爪状の端部を形成し、該端部を外管14の内周面に突き立てることで係合させる等、形状等は適宜設定し得る。
また第一雌ねじ体30は、環状凸部32が外管14の外側に突出するように、外管14の内側から孔部16に挿通される。第一雌ねじ体30は、フランジ360の曲面が外管14の曲面に重なるように当接させ配設される。これにより第一雌ねじ体30にトルクが作用しても、フランジ360と外管14とを互いに曲面を重ねて当接させているので、外管14に対する第一雌ねじ体30の相対回転を抑止でき、溶接を行うことなく第一雌ねじ体30を外管14に対して回転しないように固定することができる。
なお、図42に示す第一雌ねじ体30は、単に外管14の孔部16に挿通させたものであるが、第一雌ねじ体30の外管14からの分離を防止するための部材を第一雌ねじ体30に装着してもよい。例えば、第一雌ねじ体30の外周面であって、外管14の外側に突出している箇所にCリング等の止め輪を嵌めることで、第一雌ねじ体30が外管14から分離するのを防止してもよい。
また、第一雌ねじ体30の外周面に固定ナットを螺合させて装着してもよい。即ち、図43に示すように、第一雌ねじ体30の外周面に雄ねじ溝370を形成し、外管14の外側で固定ナット380を第一雌ねじ体140の外周面に螺合させてもよい。この場合、固定ナット380の緩み方向の回転を抑止する回転防止ワッシャ390を外管14と固定ナット380との間に配設することが好ましい。
回転防止ワッシャ390は、外管14に対向する一端面が外管14の外周面に沿った湾曲形状を成すように外形形状が設定される。また回転防止ワッシャ390の他端面は、固定ナット380と係合し得るように表面に一又は複数の鋸歯状の凹凸を有する。一方、固定ナット380は、回転防止ワッシャ390と対向する一端面に回転防止ワッシャ390の鋸歯状の凹凸と係合し得る鋸歯状の凹凸を有する。鋸歯形状の凹凸は、固定ナット390を締め込む方向に回転可能とし、緩める方向には回転できないように形状が設定される。
また、孔部16の形状は、適宜設定し得るが、例えば図44に示すように、孔部16の開口を外管14の外側から内側に向かって徐々に拡がるように設定してもよい。この場合、第一雌ねじ体30の外形を、他端部側から一端部側にかけて徐々に拡大させ、孔部16に嵌合し得る形状とする。このようにすれば、上記フランジ360を省略することができ、第一雌ねじ体30の一部が外管14の内周面よりも内側に突出してしまうことを防止できる。
また、位置可調固定支持部材1を構成する素材については、適宜設定し得るものであるが、鉄系素材を用いる場合には熱処理(焼入れ、焼なまし、焼ならし、焼戻し)を施す。また軸部20は、粘り強さ(靱性)を必要とする一方で、支持端部26が内管12に食い込むように、軸部20の他の部分と比較して硬度を高めることが好ましいので、軸部20全体に施す熱処理とは別に支持端部26に対して部分的な焼入れを追加して施してもよい。これにより支持端部26は、軸部20における他の部分と比較して高い硬度を有することができる。
支持端部26への焼入れの方法としては、例えば高周波焼入れが好ましいが、支持端部26だけに絞った部分的な焼入れが可能であれば、浸炭焼入れ、レーザー焼入れ、窒化処理等を採用してもよい。
また、上記各実施形態の雄ねじ部において、リード方向が相異なる右ねじと左ねじの螺旋構造が形成される場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。即ち、リード角及び/又はリード方向が相異なる第一及び第二螺旋構造となるような、あらゆる態様を含む。例えば、リード方向は同じでも、互いにリード角が異なるようにすればよい。
本発明の支持構造を、位置可調固定支持部材によって二重管構造の外管を支持し、外管を内管に対して固定する場合を例に説明したが、支持構造は、二重管構造に限定して適用されるものではなく、位置可調固定支持部材によって被固定部材に対して所定位置に配置される支持体を支持するものであれば、適用される部材等は限定されない。