JP7288666B2 - 共振器長調整装置 - Google Patents
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Description
その後、これまで困難であった定義に忠実な波長測定に対し、超短光パルスレーザーによる光周波数コムを用いた光周波数の絶対計測(真空波長の計測と等価)が実証された。これにより、定義に忠実な波長計測を定常的に行えるようになり、例えば日本においては、長さの国家標準は「光周波数コム装置」となり、従来のよう素安定化ヘリウムネオンレーザに比べ300倍も高精度化された。
このように、光周波数コム装置を用いると、広い範囲の波長において、波長標準を設定できるとともに、波長の不確かさを大幅に低減することが可能となる。
間隔周波数はレーザ共振器の長さによって決まり、ファイバレーザの場合、短尺化だけでは間隔周波数が10GHzを超えるような光コムを実現することはできない。
そこで、モード同期ファイバレーザから発生した光周波数コムに対し、2つのミラーが対向したファブリペロ型光共振器を用いて光周波数コムを何本かおきに切り出すことが行われている。切り出すためには、光周波数コムのコム・モード群の周波数群と、ファブリペロ光共振器の共鳴周波数群とを一致させる必要がある。
νcomb(N) = N・frep + fCEO・・・・・(1)
と表すことができる。
ここでNは自然数、frepは光周波数コムの繰り返し周波数、そして fCEOは光周波数コムのキャリア・エンベロープ・オフセット周波数である。frep及びfCEOは独立に変えることができ、自由かつ正確な周波数制御が可能である。
一方、ファブリペロ型光共振器の共鳴周波数群νFP(M)は、空気屈折率、ミラーの波長分散及び曲率の影響を無視すれば、
νFP(M) = M・c/2L・・・・・(2)
と表すことができる。
なお、Mは自然数、cは光速、Lは光共振器の共振器長である。
この式の帰結として、光共振器の共鳴周波数群νFP(M)はLのみによってしか制御できず、ある共鳴モードの周波数(νFP(M) = M・c/2L)と、共鳴周波数の間隔(fFSR = c/2L)とを独立に変えることができないことがわかる。
しかしながら、νcomb(N)を変えたくない場合は多く、特に、不要モード抑圧比(切り出す光コム・モードと切り出さず抑圧したい不要なコム・モードのパワー比)を高くするために、切り出し用光共振器を複数用いるような場合には、光共振器のνFP(M)を光周波数コムのνcomb(N)に合わせ込む必要がある。
共振器長Lを変えて、ある有理数比での光周波数コムの切り出しを行おうとするとき、上述した式(1)、(2)によれば、fCEOがゼロでない場合、これらを完全に一致させる共振器長Lは存在しないことがわかる。
実際には光共振器側にもミラーの分散や曲率によりオフセット周波数が存在するが、一般的にはLを変えただけでは複数のνFP(M)をνcomb(N)に完全一致させることはできない。
しかしながら、完全一致に最も近い条件となるLが一つの光共振器につき一つ存在し、多くの場合、共振器長を完全一致に最も近くなるLとすることで、波長帯域及び抑圧比などの点で完全一致に近い切り出し効果を得ることができる。
すなわち、Lを変えたときに二つのミラーの平行度が変わり、共振器の透過モードが変わってしまうと、Lを変えた時にTEM00に回復させるためのミラーのあおり角調整(共振器アライメント)を実行する必要があり、Lを大きく変えるためには、Lの調整と共振器アライメントとを交互に行わなければならず、目標とする共振器長Lを得るのに手間と時間がかかるだけでなく、熟練度も要求されていた。
しかし、共振器長を大きく変えると共振器の透過モードが変わってしまうため、共振器長をわずかに変えただけで再度共振器アライメントする必要があり、共振器をある程度以上大きく変えるためには、長さの調整とミラーのあおりなどの調整とを並行して行わなければならず、正しい光共振器長の設定には手間と時間がかかるだけでなく、熟練度も要求されていた。
そこで、本発明の目的は、光共振器長を変えてfFSRを調整できるようにするとともに、光共振器長のみを連続的に大きく変えつつ、その共鳴周波数群と光コムの周波数群が一致した時には共鳴信号を観察できるようにすることにより、共振器長調整に要する時間が大幅に短縮することにある。
また、好適には、上記共振器長調整装置は、前記第1ミラーマウント及び前記第2ミラーマウントの固定位置を基板上で変更することで光共振器長を変更できるようにしたものである。
さらに、好適には、上記共振器長調整装置は、前記支持材として低熱膨張率を有する柱状のロッドを用いたものである。
また、好適には、上記共振器長調整装置は、前記第1ミラーマウントと前記第1ミラーの間、または前記第2ミラーマウントと前記第2ミラーの間に、共振器長を高速に変更する第2電歪素子が挟持されているものである。
さらに、好適には、上記共振器長調整装置は、第1ファイバコリメータを搭載する第1ファイバコリメータ用マウントと、前記第1ファイバコリメータに対向する第2ファイバコリメータを搭載する第2ファイバコリメータ用マウントが、前記第1ミラー及び第2ミラーとで構成される光共振器の外側に配置され、光共振器への入射光及び出射光が両ファイバコリメータに結合されているものである。
これにより、短時間での正確な共振器アライメントが可能となり、複数共振器を用いたり、光コムの切り出し次数を変更したりするための時間を大幅に短縮することができる。
光共振器を構成する第1ミラー7と第2ミラー8は、それぞれ、基板1上に搭載された第1ミラーマウント2と第2ミラーマウント3を介して互いに対向するよう配置されている。
基板1には、第1ロッドホルダ5、第2ロッドホルダ6及びこれらの間に配置された第3ロッドホルダ17を介して、支持材として、柱状のロッド4が取り付けられている。
また、第2ロッドホルダ6を貫通して、ねじなどで固定されたロッド4の左端面には、第1電歪素子11がねじ止め構造などにより一体的に連結されている。
一方、保持部12a、端部12bが一体となって構成されている送りねじ機構12は、保持部12aが第2ミラーマウント3に固定された治具18(図4参照)の開口に挿入された状態で、ねじなどで固定されている。第1電歪素子11の先端部11aは、送りねじ機構12の右側端部12bに当接するよう配置されており、両者の当接部分は、第1電歪素子11と治具18との間を、図示しない、伸張した状態のバネで連結することにより、第1電歪素子11を治具18側に引き寄せて、送りねじ機構12の端部12bとの当接面に押し付けられるよう弾圧されている。
直進ガイド機構10としては、がたつきなどを発生することなく、第2ミラーマウント3を光軸方向に円滑かつ高精度に直進させる必要がある。ここでは、光軸方向のガイド両端に転がり機構の出入りのためのスペースが必要なく、あおりに対して高い剛性が期待できる有限移動距離転がり機構の一つであるクロスローラガイドを採用する。なお、第2ミラーマウント3は、直進ガイド機構10としてのクロスローラガイドにねじ止めなどにより固定されている。
また、第2ミラー8の直進は、治具18の開口に挿入される送りねじ機構12の端部12bと第1電歪素子11の先端部11aとの押圧力により行われる。
したがって、共振器長Lをレーザが共鳴する長さに精密に合わせる観点から、第1ミラーマウント2と第2ミラーマウント3を可能な限り高精度で安定した状態に維持することが必要である。そのため、支持材(ここではロッド4)には単に第1電歪素子及び送りねじ機構の支点としての役割だけでなく、高い軸剛性と低熱膨張性を有し共振器長を安定に保持する機能も持たせることが望ましい。例えば、スーパーインバー(鉄、ニッケル、及びコバルトの合金で、公的名称:FN-315)で形成された高剛性・低熱膨張の円柱(ロッド)が好適である。
さらに、支持材として、第1ロッドホルダ5、第2ロッドホルダ6、第3ロッドホルダ17により基板1に固定されるロッド4を用いたが、第1電歪素子11と送りねじ機構12により共振器長Lを調整する際、第1ミラーマウント2と第2ミラーマウント3の間に角度変更を発生させない程度の軸剛性を発揮するものであれば、ロッドの形態に限られるものではない。もちろん、基板1に一体的に形成されたものでもよい。
また、あり溝上で第1ミラーマウント2をスライドさせて固定位置を変えることにより、第1電歪素子11及び送りねじ機構12による共振器長Lの調整を行う前に、両者による調整で目標とする共振器長Lに到達できるようなミラー間隔に収まるよう粗調を行うことが可能である。
なお、この実施例では、光共振器長Lの制御応答速度をさらに高めるため、第1ミラー7は、高速電歪素子である第2電歪素子9を介して第1ミラーマウント2に固定されている。
このような軸ずれが問題となる場合には、第2ミラーマウント3に取り付ける第2ミラー8を平面ミラーとすることで、光軸と第1ミラーマウント3の直進方向とのずれによる共振器アライメントの狂いをさらに抑制することができる。
なお、ファイバコリメータ15及びファイバコリメータ16は、どちらを入射側としてもよい。例えば14を入射側とした場合、入射レーザ光は第1ミラー7及び第2ミラー8により構成される光共振器に入射し、反射光はファイバコリメータホルダ14へ、透過光はファイバコリメータ15へと向かい、それぞれのレーザ光はファイバに結合される。
まず、計算により、目標共振器長を決定し、第1ミラーマウント2をロッド4に固定する。
共振器調整は、前述のように、光共振器の共鳴周波数νFP(M)=M・c/2Lと光コムのコム・モード群の周波数群νcomb(N) = N・frep + fCEOとを一致させるために行う。ここで、「一致」とは図2に示すようにすべてのモードが完全に一致している状態ではなく、νFP(M)についてαモードおきに、νcomb(N)についてβモードおきに一致する状態のことである。
ここでα及びβは互いに素な整数であり、βは「切り出し次数」と呼ばれる。この状態は、光共振器の共鳴周波数νFP(M)の間隔周波数のα倍α・c/2Lと、光コムのコム・モード周波数νcomb(N)の間隔周波数のβ倍β・frepとが一致することを意味し、
α・c/2L = β・frep・・・・・(3)
の関係が成り立つ。この式(3)が成り立つように共振器長Lを調整するというのが基本的な考え方である。
例えば、光コムの繰り返し周波数frep = 230,870,000Hz、(α,β) = (3, 26)とすると、Lは74.92mm(FSR約2.00GHz)となる。したがって、第1ミラー7と第2ミラー8の間隔がこれに近くなるよう、物差しなどで第1ミラーマウント2の位置を決め、第1ミラーマウント2に固定されている第3ロッドホルダ17をロッド4に固定する。この初期調整により、第1ミラー7と第2ミラー8の間隔(光共振器長L)は、送りねじ機構12により、74.92mmちょうどに設定できる状態になる。
ファイバコリメータ15、16のワークディスタンス及びそれらの間の距離、ならびに二つのミラーの曲率半径や各コリメータとの距離については、ガウシアンビームのTEM00モードがとる伝播距離と波面の曲率半径から計算する方法がよく知られており、それに基づいて適切な距離を決める。計算の詳細はここでは省略するが、本実施例では、ファイバコリメータ15、16はワーキングディスタンスとして250mm、第1ミラー7には平面ミラー、そして第2ミラー8の曲率半径として500mmのものを用いた。
第1ミラー7、第2ミラー8をそれぞれ第1ミラーマウント2、第2ミラーマウント3に取り付け、第1の電歪素子11で10Hz程度の変調周波数及び波長の5~10倍程度のストローク(例として波長1540nmの光コムと連続発振レーザ)を入射した場合、ストロークは7~15μm)で第2ミラー8を動かす。
この状態で入射したミラーと逆のミラー(例えば、入射したミラーが第1ミラー7であれば、第2ミラー8)からの透過光をオシロスコープで変調周波数に同期して観察すれば、Scanning Fabry-Perotスペクトルアナライザとなり、入射光の光スペクトルが高分解能(=FSR/フィネス、ここでは2.00GHz/100~20.0MHz)で観察できる。この状態をSFPモードと呼ぶことにする。
そして、光共振器をSFPモードにして、CW光の透過光を観察し、透過光スペクトルが単一になる(すなわちTEM00のみが透過する)ように第1ミラーマウント2、第2ミラーマウント3を使って第1ミラー7、第2ミラー8のあおりを調整する。
光共振器はSFPモードのまま、光コムの透過信号を観察する。この状態で、送りねじ機構12の送りねじ部を使って光共振器長Lを変えることにより、前述のように、第2ミラー8のミラーのあおりを変えずに直進させることができる。
したがって、送りねじ部12を使って共振器長Lを変えていくと、式(1)を満たす光共振器長Lに近づいたときに、図5に示すように、オシロスコープでコム様の透過信号を観察することができる。
なお、下側の波形信号が光コムの透過信号であり、上側の信号は、CW光の反射光によるPound-Drever安定化法のための復調信号であり、CW光の透過と同じ位置に出る信号である。光コムの透過信号において、高さの違う複数の信号が見えるのは、最適なLからわずかにずれても、ある程度の波長範囲にある光コムは光共振器を透過できるからである。しかし、この中で中心部付近にある最も高い強度を示す信号に相当する光共振器長Lが、最も広い波長範囲でコムを切り出すことのできる最適な光共振器長Lである。
光コムの透過が最も高くなる信号を見つけたら、CW光の透過信号と合わせて観察し、CW光の透過信号の間隔(光共振器のFSRに相当)中に光コムの透過信号がβ個(切り出し次数分)あることを確認する。そして、光コムの透過が最も高くなるよう、第1電歪素子11を使って、光共振器長Lを安定化制御する。安定化制御の方法は色々あるが、ここではCW光の反射によるPound-Drever法(R. W. P. Drever, J. L. Hall, F. V. Kowalski, J. Hough, G. M. Ford, A. J. Munley, and H. Ward, "Laser phase and frequency stabilization using an optical-resonator," Applied Physics B-Photophysics and Laser Chemistry 31, 97-105 (1983)参照。)を用いた。
そのような時でも、本実施例によれば、次のように、高い切り出し次数に調整することができる。
しかし、まず先に説明した、(α,β) = (3, 26)を満たすLに共振器長を合わせ、透過信号を確認すれば、このときのLを基準とし、すなわち74.92mmであるとして、送りねじ機構の送りねじ部12の値を読みながらLを71.67mmに合わせる。
送りねじ機構12としてマイクロメータを用いれば、L決定に関して0.01mm程度の精度は得られ、かつ3.25mm移動してもミラーの角度は保たれあおりに関する際アライメントは不要なので、L = 71.67mmの近傍に(α,β) = (17, 154)に相当する透過信号を見つけることができる。
βの値を透過信号から直接確認することはできないが、このような狭い範囲に他の(α,β)の組み合わせがあることは少なく、有無についても計算で予想できるので、(α,β) = (17, 154)に相当する透過信号であると決定することができる。
2:第1ミラーマウント
3:第2ミラーマウント
4:ロッド
5:第1ロッドホルダ
6:第2ロッドホルダ
7:第1ミラー
8:第2ミラー
9:第2電歪素子
10:直進ガイド機構
11:第1電歪素子
12 送りねじ機構
13、14:ファイバコリメータホルダ
15、16:ファイバコリメータ
17:第3ロッドホルダ
18:治具
19、20:ファイバコリメータホルダ用マウント
Claims (5)
- 第1ミラーを搭載する第1ミラーマウントと、
前記第1ミラーに対向する第2ミラーを搭載する第2ミラーマウントと、
基板と、
前記基板に一体形成あるいは固定されている支持材と、
送りねじ機構と、
前記送りねじ機構の端部と自端部が当接するよう前記支持材に固定された第1電歪素子と、
直進ガイド機構と
を有し、
前記第1ミラーマウントは、前記基板及び前記支持材のいずれか一方に固定され、
前記第2ミラーマウントは、前記直進ガイド機構を介して前記基板に取り付けられ、
前記送りねじ機構の支持部は、前記第2ミラーマウント又は前記直進ガイド機構に固定され、
前記第1電歪素子と前記送りねじ機構の作動に伴い、前記支持材と前記直線ガイド機構が共働して、前記第1ミラーと前記第2ミラーの間隔を、前記第1ミラーと前記第2ミラー間で角度変動を生じさせることなく変更できるようにし、共鳴周波数を調整するための共振器長調整装置。 - 前記第1ミラーマウント及び前記第2ミラーマウントの固定位置を基板上で変更することで光共振器長を変更できるようにしたことを特徴とする請求項1に記載された共振器長調整装置。
- 前記支持材が柱状のロッドを用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された共振器長調整装置。
- 前記第1ミラーマウントと前記第1ミラーの間、または前記第2ミラーマウントと前記第2ミラーの間に、共振器長を変更する第2電歪素子が挟持されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された共振器長調整装置。
- 第1ファイバコリメータを搭載する第1ファイバコリメータ用マウントと、前記第1ファイバコリメータに対向する第2ファイバコリメータを搭載する第2ファイバコリメータ用マウントが、前記第1ミラー及び前記第2ミラーで構成される光共振器の外側に配置され、当該光共振器への入射光及び出射光が前記第1ファイバコリメータ及び前記第2ファイバコリメータに結合されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載された共振器長調整装置。
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