JP7288342B2 - 水素・酸素発生装置及び水素ガス製造方法 - Google Patents
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Description
電気分解では陽極側や陰極側が加圧状態であっても水素ガスや酸素ガスが生成可能であるためこの種の水素・酸素発生装置では、加圧状態の水素ガスを製造することができる(下記特許文献1参照)。
さらに、従来の水素・酸素発生装置では、商品価値の高い水素ガスの純度を保つ意味において陰極側から陽極側へガスが移動することがあっても陽極側から陰極側へのガスの移動は抑制されるように運転条件が設定されていることがある。
そこで、本発明はこのような問題の解決を図ることを課題としており、水電解モジュールが運転を停止した後で酸素ガスに水素ガスが高濃度で混入してしまうことを抑制し得る水素・酸素発生装置と水素ガス製造方法との提供を課題としている。
即ち、本発明では、電気分解が停止した際に陰極室の水素ガス量を減少させることができるとともに陰極室に供給された水によって陰極室から陽極室への水素ガスの移動を防ぐことができる。
従って、本発明によれば、電気分解が停止した後で酸素ガスに水素ガスが高濃度で混入されるおそれを抑制させることができる。
本実施形態の水素・酸素発生装置は、太陽光、風力、潮力、地熱などの再生可能エネルギーによって得られた電力を用いて水の電気分解を実施すべく構成されている。
この種の再生可能エネルギーに由来する電力は連続的に安定して得られないことが多く、外部系統電力を利用する場合に比べて水の電気分解を停止する機会が多いことから本発明の効果がより顕著に発揮され得る。
尚、本実施形態の水素・酸素発生装置は、水の電気分解のエネルギー源の一部、又は、全部が一般的な外部系統電力であってもよい。
図1に示すように、本実施形態の水素・酸素発生装置1は、前記電気分解が行われる水電解モジュール2を備えている。
本実施形態の前記水電解モジュール2は、固体高分子電解質膜を介して隣接された陽極室と陰極室とを有し、それぞれに配された電極板と前記固体高分子電解質膜とが1ユニットとされた固体高分子電解質膜ユニットを複数備えている。
従って、本実施形態における水電解モジュール2は、陽極側に水の流入口と排出口とを備えており、陰極側に水分を含んだ水素ガスが排出されるガス排出口21が形成されている。
該気液分離器3は、分離した水を貯留するとともに酸素ガスを大気へ排出するよう構成されている。
該気液分離器3は、本実施形態においては、分離した水を前記水電解モジュール2へ給水するための給水タンクとしても機能している。
即ち、本実施形態における水素・酸素発生装置1は、前記気液分離器3と前記水電解モジュール2とを通って前記水が循環する循環経路100が備えられており、該循環経路100には、気液分離器3、給水経路5、水電解モジュール2、及び、返送経路6が水の移動方向に沿って順に備えられている。
尚、該ポリッシャー53やフィルター54は、その必要性が認められないような場合には、必ずしも本実施形態の水素・酸素発生装置1に設けなくてもよい。
より詳しくは、前記水電解モジュール2は、前記ガス排出口21から排出された水素ガスに僅かに含まれている水分を分離するための気液分離器4を有している。
本実施形態の前記陰極側気液分離器4は、前記水電解モジュール2が電気分解を行っている状況下では加圧状態の水素ガスを収容することになるため圧力容器で構成されている。
本実施形態の水素・酸素発生装置1は、前記製品ガスを貯留する水素ガスタンク11を必要に応じて備えていてもよい。
本実施形態における水素・酸素発生装置1は、前記水素ガス移送経路として前記水電解モジュール2と前記陰極側気液分離器4との間に設けられた第1水素ガス移送経路7と前記陰極側気液分離器4よりも下流側(水素ガスの移送方向における下流側)に設けられた第2水素ガス移送経路12とを備えている。
前記分岐経路13は、水素ガスを系外に放出する経路となっており、水素ガスを系外へ放出する状態と放出しない状態とに切り替えるための水素ガス放出弁13aが設けられている。
前記第2水素ガス移送経路は、前記分岐経路13との分岐地点12aよりも下流側であって前記除湿部よりも上流側において水素ガスの流通を制御する水素ガス遮断弁12bを備えている。
前記の通り本実施形態においては、水素・酸素発生装置1が運転されている間、陽極側には常に水が循環している状態になっているものの陰極側には陽極側に比べて少量の水しか存在していない。
前記バイパス経路9は、水素・酸素発生装置1が運転を停止して電気分解が行われなくなった後で陽極側から水を移送して陰極側に水を供給するための水供給経路として利用される。
尚、本実施形態での前記水供給経路は、陽極側とは別の場所から陰極側に水を供給する経路であってもよい。
一方で、前記給水経路5は、前記第1接続地点91と前記水電解モジュール2(陽極室)との間で循環水の流通を遮断するための循環水遮断弁52を備えている。
また、前記第1水素ガス移送経路7も前記第2接続地点92と前記陰極側気液分離器4との間に遮断弁71を備えている。
その場合、エネルギー源である太陽光の日射量が一定量より少ない時や、日射量のない時(例えば、夜間、早朝、夕刻、雲天時、雨天時など)には、水素・酸素発生装置での電気分解を停止する操作が必要になり、停止操作を行うタイミングが不定期に訪れることがある。
水素・酸素発生装置1の運転を停止するには、まず初めに水電解モジュール2での電気分解を停止すること(S11)が行われる。
このとき、給水ポンプ51まで停止させる必要はなく、必要に応じて陽極側では水を循環させ続けていてもよい。
本実施形態においては、前記バイパス経路9を通って水が陰極側に供給され、水素ガス移送経路7に対して水が供給される。
そして、前記第2接続地点92が、水が供給される給水部となる。
本実施形態においては、水電解モジュール2に特別に給水のための孔を設けたりしなくてもすむように水素ガス移送経路7を通じて前記陰極室に水を供給するようにしているが、要すれば、前記水素ガス移送経路7を介さずに前記陰極室に対して直接的に水を供給するようにしてもよい。
この場合、陰極室の圧力が高く、水素ガスが第1水素ガス移送経路7を勢いよく流れていると陰極室に水が入り込みにくいが、上記のように本実施形態においては予め陰極室の圧力が低下されているため陰極室への水の移動がスムーズに行われ得る。
なお、前記給水部となる前記第2接続地点92を前記陰極室よりも鉛直方向での高位置に設け、陰極室への水の供給に給水ポンプ51による動力だけでなく重力の作用を利用するようにしてもよい。
尚、前記第1の規定値(L1)には、例えば、陰極室に水を流入させるのに適した圧力値を設定することができる。
前記第2の規定値(L2)には、例えば、水素・酸素発生装置1を停止させるのに適した圧力値を設定することができる。
水の供給を開始した後は、タイマーでのカウントをスタートさせ、陰極側の圧力が予め定めた前記第2の規定値(L2)に到達していなければ、予め定めた水の供給時間(T0)が満了するまで前記給水ポンプ51による給水を継続する(S16)。
陰極側に水を流入させると、流入前に比べて陰極側の圧力が上昇する場合がある。
そのため、前記第3の規定値(L3)は、水素・酸素発生装置1を停止させることが可能な状態にまで陰極側の圧力が低下しているかどうかを改めて判定するために設けられる。
そのため、前記第3の規定値(L3)は、前記第2の規定値(L2)と同じ値に設定されてもよい。
この第3の規定値(L3)が達成されたこと(S19)が確認出来たら、水素ガス放出弁13aを全て閉じ、遮断弁71、及び、給水制御弁93を閉じて水素・酸素発生装置1の運転を完全に終了する(S1f)。
そして、前記タイマーのカウントアップを継続するとともに給水を継続する。
タイマーの累積時間が設定時間(T0)に到達するのが確認(S1b)できたら、給水を止め(給水制御弁93を閉じる)、水素ガス放出弁13aを再び開けて降圧操作を再開する(S1c)。
降圧操作によって水素ガスの圧力が第3の規定値(L3)に到達すると(S1d)、遮断弁71、給水制御弁93、及び、水素ガス放出弁13aを全て閉じ(S1e)、水素・酸素発生装置1の運転を完全に終了する(S1f)。
また、このとき、遮断弁71が閉状態となるので、遮断弁71よりも下流側の圧力とは縁が切れた状態になり、遮断弁71よりも下流側が第3の規定値(L3)よりも高い圧力に転じたとしてもそれが陰極室には伝達され難い。
このように、本実施形態においては陰極室に水素ガスが残存していても圧力が十分低く保たれるため陰極室から陽極室へと移行するのを抑制することができる。
水素ガス移送経路7で水封を行うには、従来公知の排水トラップと同様の形状を備えさせればよく、例えば、椀型トラップ、S字トラップ、P字トラップ、U字トラップ、ドラム型トラップなどと同様の形状を備えさせるようにすればよい。
なお、このような効果は、タイマーでの制御ではなく、単なる水量によって制御しても得られる。
尚、陰極への水の供給量は、前記タイマーなどにより、所定量に調整されることが好ましい。
水の前記供給量は、前記水電解モジュール2と前記遮断弁71との間の経路、及び、前記陰極室を満たす量であることが好ましい。
前記供給量は、前記水電解モジュール2と前記陰極側気液分離器4との間の経路、及び、前記陰極室を満たす量であることがより好ましい。
前記のように本実施形態においては、太陽光などの再生可能エネルギーを電気分解のエネルギー源として用いることが好ましい。
太陽光は、曇天あるいは雨天時、また、早朝あるいは夕刻時において、日射量が低い状態が長時間続くことが多い。日射量が不十分な状態では、電気分解により得られる水素ガスの発生量も少なくなる。
しかし、本実施形態においては、陰極室に水が収容されている分、発生した水素ガスが占有できるスペースが少なくなっているので当該水素ガスの圧力が速やかに向上することになる。
従って、本実施形態の水素・酸素発生装置では従来の水素・酸素発生装置に比べ、日射量が低く得られる電力が少ない状態においても電気分解が再開可能となるため、より多くの再生可能エネルギーを有効活用することができる。風力発電あるいは潮力発電でも低電力の状態があるが、同様に再生可能エネルギーの有効活用が可能となる。
例えば、デイタイムに太陽光発電によって得た電気エネルギーで水の電気分解を行っている最中に突然の日照不足が生じて電気分解を停止しなければならなくなったような場合、比較的、短時間に日射が回復して電気分解が再開可能な状態になることがある。
本実施形態においては、そのような場合においてまで前記水供給機構を稼働させるには及ばない。
そのため、電気分解を停止させた後、直ぐに前記水供給機構による給水を行うのではなく、予め定めた設定時間(例えば、0.5分~30分)が経過するまで待っても電気分解が再開可能な状態にならない場合に前記水供給機構を稼働させるようにしてもよい。
この点に関しては他の再生可能エネルギーに由来する電力で電気分解を行う場合も同じである。
しかも、前記遮断弁71は、気液分離器よりも上流側での前記水素ガス移送経路に設けられている。
斯かる水素・酸素発生装置1によれば、前記遮断弁71により、陰極室に水をより確実に留めておくことが出来る。
しかも、陰極室に気液分離器などからの圧力が加わることが抑制される。
従って、水素ガスが陽極側に移行するのをより一層抑制できる。
斯かる水素・酸素発生装置1では、陰極室から水素ガスを排出させるための水の流入口を特別に設けたりする必要性がないため、装置構成がシンプルなものとなり得る。
酸素ガスに含まれる水素ガスの濃度を水素ガス濃度計で測定する場合、陽極室で発生した直後の酸素ガスを検査用ガスにしてもよく、前記給水タンクに収容されている酸素ガスを検査用ガスとしてもよい。
そして、本実施形態における前記水供給機構は、この水素ガス濃度計での計測結果に基づいて動作するものであってもよい。
具体的には、水の電気分解が停止した後の前記水供給機構による陰極室への給水は、前記電気分解を停止する前、又は、前記電気分解を停止した後の少なくとも一方において前記水素ガス濃度計で計測される水素濃度が予め定めた規定値未満の場合に実施せず、該水素濃度が前記規定値以上の場合に実施するようにしてもよい。
即ち、酸素ガスにおける水素濃度が十分低濃度である場合は、水供給機構を稼働させないようにしてもよい。
そして、本実施形態の水素ガス製造方法で用いる水素・酸素発生装置は、水を電気分解して水素ガスと酸素ガスとを発生させる水電解モジュールを備え、該水電解モジュールが前記水素ガスを発生させる陰極室と、前記酸素ガスを発生させる陽極室とを備えている。
しかも、本実施形態の水素ガス製造方法では、前記電気分解を停止した後に水が供給され前記陰極室から水素ガスが排出される。
そのため、本実施形態では、陰極室への水の供給をスムーズに行うことができる。
従って、本実施形態では、必要以上に水が供給されて却って不具合が生じてしまうおそれを抑制させることができる。
即ち、本発明は上記例示に何等限定されるものではない。
Claims (6)
- 水を電気分解して水素ガスと酸素ガスとを発生させる水電解モジュールを備え、
該水電解モジュールが水素ガスを発生させる陰極室と、酸素ガスを発生させる陽極室とを備えており、
前記陰極室で発生した前記水素ガスを移送するための水素ガス移送経路と、前記電気分解を停止した後に前記陰極室に水を供給して該陰極室内の水素ガスを排出させる水供給機構とをさらに備え、
前記水素ガス移送経路は、前記陰極室に連通されており、且つ、前記水供給機構によって前記水が供給される給水部が設けられており、
前記陰極室への前記水の供給が前記水素ガス移送経路を通じて行われる、水素・酸素発生装置。 - 前記水供給機構によって供給された前記水の移動経路を遮断して前記陰極室から前記水が流出することを抑制する遮断弁が備えられている請求項1記載の水素・酸素発生装置。
- 前記水電解モジュールが前記陰極室で発生した前記水素ガスを排出するガス排出口を有し、
前記ガス排出口からは水分を含んだ水素ガスが排出され、
該水素ガスから前記水分を分離するための気液分離器を有し、
前記水素ガス移送経路が前記陰極室と前記気液分離器とを連通させるように設けられており、
該水素ガス移送経路での水の移動を遮断する遮断弁が備えられ、
該遮断弁が前記給水部と前記気液分離器との間に設けられている請求項1又は2記載の水素・酸素発生装置。 - 水を電気分解して水素ガスと酸素ガスとを発生させる水電解モジュールを備え、該水電解モジュールが前記水素ガスを発生させる陰極室と、前記酸素ガスを発生させる陽極室とを備えている水素・酸素発生装置を使って水素ガスを製造する水素ガス製造方法であって、
前記水素・酸素発生装置は、前記陰極室で発生した前記水素ガスを移送するための、前記陰極室に連通されている水素ガス移送経路をさらに備えており、
前記電気分解を停止した後に水を供給して該水によって前記陰極室から水素ガスを排出させ、前記陰極室への前記水の供給が前記水素ガス移送経路を通じて行われる水素ガス製造方法。 - 前記陰極室で発生させた前記水素ガスを、前記電気分解の停止後且つ前記水の供給前に、系外に放出して前記陰極室の圧力を低下させる請求項4記載の水素ガス製造方法。
- 前記供給される前記水の量、及び、前記供給が行われる時間の少なくとも一方について予め規定値を設定し、前記水の前記供給が該規定値を満たしたときには前記水の供給停止が行われる請求項4又は5記載の水素ガス製造方法。
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