JP7287282B2 - 分析方法、質量分析用ペプチド酸化防止剤および質量分析用キット - Google Patents

分析方法、質量分析用ペプチド酸化防止剤および質量分析用キット Download PDF

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Description

本発明は、分析方法、質量分析用ペプチド酸化防止剤および質量分析用キットに関する。
マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法等を利用した質量分析は、ペプチド等の生体分子を解析するための強力な手段である。しかし、MALDI法等により試料をイオン化する際、試料プレートに試料を配置した後、試料中のペプチドが酸化されることがあった。
試料プレート上でのペプチドの酸化は、試料中の分子の濃度が低かったり、試料プレートに酸化を触媒する銅が不純物として含まれていたり、試料中の酸素濃度が高い場合等に起きやすい。このような試料プレート上でのペプチドの酸化が起きると、本来の試料の酸化状態よりも多く酸化されているように誤って分析されてしまう。
特に、ペプチドの主鎖におけるメチオニン残基は、他のアミノ酸残基に比べ、酸化を受けやすい。このようなメチオニン残基の酸化では、多くの場合、側鎖の硫黄原子が酸化によりスルホキシド型に変換される。
特許文献1では、タンパク質・ペプチド試料中のメチオニン含有化学種を、メチオニン酸化体として収束させることを目的とした方法が提案されている。このような方法は、試料の酸化状態は変化してしまう。非特許文献1では、インスリン等の3000Da以上の高質量のペプチドに対する質量分析の感度を上げるために、ウシ血清アルブミン(BSA)やトランスフェリン等のタンパク質を添加しているが、酸化を抑える目的や効果は記載されていない。
日本国特開2007-292523号公報
Gustavsson N, Kokke BP, Harndahl U, Silow M, Bechtold U, Poghosyan Z, Murphy D, Boelens WC, Sundby C. "A peptide methionine sulfoxide reductase highly expressed in photosynthetic tissue in Arabidopsis thaliana can protect the chaperone-like activity of a chloroplast-localized small heat shock protein," The Plant Journal,(米国), Society for Experimental Biology, 2002年3月1日、Volume 29, Issue 5, pp.545-553
質量分析におけるペプチドのメチオニンの酸化を抑制する、効率的な方法が望ましい。
本発明の第1の態様によると、分析方法は、分析対象のペプチドと、メチオニンの酸化を防止するための、タンパク質を備える酸化防止剤とを含む試料を調製することと、 前記ペプチドをレーザー脱離イオン化法によりイオン化することと、イオン化された前記ペプチドを質量分離して検出することと、を備える。
本発明の第2の態様によると、第1の態様の分析方法において、前記レーザー脱離イオン化法は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法であることが好ましい。
本発明の第3の態様によると、第1または第2の態様の分析方法において、前記タンパク質の濃度は、27.5nM以上275nM未満であることが好ましい。
本発明の第4の態様によると、第3の態様の分析方法において、前記タンパク質の濃度は、260nM未満であることが好ましい。
本発明の第5の態様によると、第4の態様の分析方法において、前記タンパク質の濃度は、45.2nM以上151nM未満であることが好ましい。
本発明の第6の態様によると、第1から第5までのいずれかの態様の分析方法において、前記酸化防止剤は、前記タンパク質の他に、アミノ酸および/または還元剤をさらに備えることが好ましい。
本発明の第7の態様によると、第6の態様の分析方法において、前記アミノ酸および/または還元剤は、メチオニン、ヒスチジン、システイン、トリプトファン、ジチオトレイトール、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン、2-メルカプトエタノール、トリ‐n‐ブチルフォスフィン、ジチオエリトリトール、アスコルビン酸、ポリフェノール、ピロ亜硫酸ナトリウム、クエン酸、グルコース、カロチン、トコフェノール、チオ-グリコール酸、N-アセチルシステイン、ヒドロキシルアミン、還元型グルタチオン、臭化2-アミノエチルイソチオウロニウム、およびチオグリセロールからなる群から選択される少なくとも1種類の化合物であることが好ましい。
本発明の第8の態様によると、第6または第7の態様の分析方法において、前記アミノ酸および/または還元剤の濃度は、0.001mM以上10mM以下であることが好ましい。
本発明の第9の態様によると、第1または第2の態様の分析方法において、前記ペプチドは、アフィニティ精製を用いて精製されたものであり、前記タンパク質は、前記アフィニティ精製に用いたリガンドであり、前記アフィニティ精製において、前記ペプチドを溶出液を用いて溶出する前、または溶出した後に、前記溶出液にアミノ酸および/または還元剤を加えることと、を備えることが好ましい。
本発明の第10の態様によると、第9の態様の分析方法において、前記アミノ酸および/または還元剤は、メチオニン、ヒスチジン、システイン、トリプトファン、ジチオトレイトール、トリス(2‐カルボキシエチル)ホスフィン、2-メルカプトエタノール、トリ‐n‐ブチルフォスフィン、ジチオエリトリトール、アスコルビン酸、ポリフェノール、ピロ亜硫酸ナトリウム、クエン酸、グルコース、カロチン、トコフェノール、チオ-グリコール酸、N-アセチルシステイン、ヒドロキシルアミン、還元型グルタチオン、臭化2-アミノエチルイソチオウロニウム、およびチオグリセロールからなる群から選択される少なくとも1種類の化合物であることが好ましい。
本発明の第11の態様によると、第9または第10の態様の分析方法において、前記アミノ酸および/または還元剤の濃度は、0.0001mM以上10mM以下であることが好ましい。
本発明の第12の態様によると、質量分析用ペプチド酸化防止剤は、メチオニンの酸化を防止するためのものであり、タンパク質を含み、レーザー脱離イオン化法により分析対象のペプチドをイオン化する質量分析における試料の調製に用いる。
本発明の第13の態様によると、第12の態様の質量分析用ペプチド酸化防止剤において、前記タンパク質の濃度は、27.5nM以上275nM未満であることが好ましい。
本発明の第14の態様によると、第12または第13の態様の質量分析用ペプチド酸化防止剤において、前記タンパク質の他に、アミノ酸および/または還元剤をさらに備えることが好ましい。
本発明の第15の態様によると、第14の態様の質量分析用ペプチド酸化防止剤において、前記アミノ酸および/または還元剤は、メチオニン、ヒスチジン、システイン、トリプトファン、ジチオトレイトール、トリス(2‐カルボキシエチル)ホスフィン、2-メルカプトエタノール、トリ‐n‐ブチルフォスフィン、ジチオエリトリトール、アスコルビン酸、ポリフェノール、ピロ亜硫酸ナトリウム、クエン酸、グルコース、カロチン、トコフェノール、チオ-グリコール酸、N-アセチルシステイン、ヒドロキシルアミン、還元型グルタチオン、臭化2-アミノエチルイソチオウロニウム、およびチオグリセロールからなる群から選択される少なくとも1種類の化合物であることが好ましい。
本発明の第16の態様によると、第12から第15までのいずれかの態様の質量分析用ペプチド酸化防止剤において、前記レーザー脱離イオン化法は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法であることが好ましい。
本発明の第17の態様によると、質量分析用キットは、第12から第16までのいずれかの態様の質量分析用ペプチド酸化防止剤と、試料プレートおよびマトリックスからなる群から選択される少なくとも一つとを備える。
本発明によれば、質量分析におけるペプチドのメチオニンの酸化を効率的に抑制し、試料中のメチオニンの酸化状態を従来よりも正確に測定することができる。
図1は、第1実施形態の分析方法の流れを示すフローチャートである。 図2は、第1実施形態に係る質量分析用キットを示す概略図である。 図3は、ペプチドAβ1-40の濃度を変化させた場合のマススペクトルにおけるペプチドAβ1-40に対応するピークを示す図である。 図4は、BSAの濃度を変化させた場合のマススペクトルにおける各ペプチドに対応するピークを示す図である。 図5は、試料に加えられたBSAの量と、マススペクトルに基づく各ペプチドの非酸化体に対する酸化体の比との関係を示すグラフである。 図6は、トランスフェリンの濃度を変化させた場合のマススペクトルにおける各ペプチドに対応するピークを示す図である。 図7は、試料に加えられたトランスフェリンの量と、マススペクトルに基づく各ペプチドの非酸化体に対する酸化体の比との関係を示すグラフである。 図8は、フェツインの濃度を変化させた場合のマススペクトルにおける各ペプチドに対応するピークを示す図である。 図9は、試料に加えられたフェツインの量と、マススペクトルに基づく各ペプチドの非酸化体に対する酸化体の比との関係を示すグラフである。 図10は、第2実施形態の分析方法の流れを示すフローチャートである。 図11は、第2実施形態に係る質量分析用キットを示す概略図である。 図12は、グリシンの濃度を変化させた場合のマススペクトルにおける各ペプチドに対応するピークを示す図である。 図13は、試料に加えられたグリシンの濃度と、マススペクトルに基づく各ペプチドの非酸化体に対する酸化体の比との関係を示すグラフである。 図14は、L-メチオニンの濃度を変化させた場合のマススペクトルにおける各ペプチドに対応するピークを示す図である。 図15は、試料に加えられたL-メチオニンの濃度と、マススペクトルに基づく各ペプチドの非酸化体に対する酸化体の比との関係を示すグラフである。 図16は、L-システインの濃度を変化させた場合のマススペクトルにおける各ペプチドに対応するピークを示す図である。 図17は、試料に加えられたL-システインの濃度と、マススペクトルに基づく各ペプチドの非酸化体に対する酸化体の比との関係を示すグラフである。 図18は、L-ヒスチジンの濃度を変化させた場合のマススペクトルにおける各ペプチドに対応するピークを示す図である。 図19は、試料に加えられたL-ヒスチジンの濃度と、マススペクトルに基づく各ペプチドの非酸化体に対する酸化体の比との関係を示すグラフである。 図20は、DTTの濃度を変化させた場合のマススペクトルにおける各ペプチドに対応するピークを示す図である。 図21は、試料に加えられたDTTの濃度と、マススペクトルに基づく各ペプチドの非酸化体に対する酸化体の比との関係を示すグラフである。 図22は、L-メチオニンまたはDTTを含む試料に、BSAが加えられた場合と、加えられなかった場合とにおける、マススペクトルに基づく各ペプチドの非酸化体に対する酸化体の比を示すグラフである。 図23は、第2実施形態の変形例の分析方法の流れを示すフローチャートである。 図24は、免疫沈降の溶出液のマススペクトルを示す図である。 図25は、免疫沈降の溶出液のL-メチオニン濃度と、マススペクトルに基づく各ペプチドの非酸化体に対する酸化体の比との関係を示すグラフである。
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態の分析方法は、質量分析に用いられる試料に、タンパク質を酸化防止剤として加えることにより、試料中のペプチドのメチオニンの酸化を防ぐものである。
図1は、本実施形態の分析方法の流れを示すフローチャートである。ステップS1001において、分析対象のペプチドと、メチオニンの酸化を防ぐための、タンパク質を備える酸化防止剤とを含む試料が調製される。分析対象のペプチド(以下、対象ペプチドと呼ぶ)は、アミノ酸配列が全体的または部分的に同定されていて、メチオニンを含むペプチドでもよいし、アミノ酸配列が未知のペプチドでもよい。対象ペプチドのアミノ酸配列の残基数等は特に限定されないが、後述の実施例で用いた各ペプチドのような100以下、または50以下の残基数を有するペプチドが好ましい。
後述の実施例ではウシ血清アルブミン(以下、BSAと呼ぶ)、トランスフェリン、フェツイン等のタンパク質が酸化防止剤として用いられているが、酸化防止剤として試料に加えるタンパク質(以下、酸化防止タンパク質と呼ぶ)の種類は特に限定されない。試料中に、対象ペプチドの他に、酸化されやすい分子が存在することで、酸化される対象が分散され、対象ペプチドの酸化が抑制されると考えられる。
より具体的には、ステップS1001において、対象ペプチドを含む溶液(以下、試料溶液と呼ぶ)に、酸化防止タンパク質が、所定の濃度になるように加えられる。酸化防止剤タンパク質の濃度は、27.5nM以上が好ましく、35.0nM以上がより好ましく、39.9nM以上がより一層好ましく、45.2nM以上がさらに好ましい。酸化防止タンパク質の各ウェルあたりの物質量は、27.5fmol/well以上が好ましく、35.0fmol/well以上がより好ましく、39.9fmol/well以上がより一層好ましく、45.2fmol/well以上がさらに好ましい。酸化防止タンパク質の各ウェル当たりの量(質量換算)は、1ng/well以上が好ましく、3ng/well以上がさらに好ましい。酸化防止タンパク質の濃度が高いか、量が多い程、対象ペプチドの酸化を防止する効果が高くなるため好ましい。
酸化防止タンパク質の濃度は、275nM未満が好ましく、260nM未満がより好ましく、151nM未満がより一層好ましく、133nM未満がさらに好ましい。酸化防止タンパク質の各ウェル当たりの物質量は、275fmol/well未満が好ましく、260fmol/well未満がより好ましく、151fmol/well未満がより一層好ましく、133fmol/well未満がさらに好ましい。酸化防止タンパク質の各ウェル当たりの量(質量換算)は、30ng/well未満が好ましく、10ng/well以下がさらに好ましい。酸化防止タンパク質の濃度が高過ぎるか、量が多すぎると、酸化防止タンパク質によるイオン化抑制や夾雑物の生成が起こりやすくなるため、好ましくない。
さらに、マトリックスおよびマトリックス添加剤を含む溶液(以下、添加剤含有マトリックス溶液と呼ぶ)が調製される。マトリックスの種類は特に限定されず、α-cyano-4-hydroxycinnamic acid(以下、CHCAと呼ぶ)、2,5-dihydroxybenzoic acid(以下、DHBと呼ぶ)、またはシナピン酸等を用いることができる。マトリックス添加剤の種類は特に限定されず、methylenediphosphonic acid(以下、MDPNAと呼ぶ)等を用いることができる。ステップS1001が終了したらステップS1003が開始される。
ステップS1003において、ステップS1001で調製された試料が質量分析計の試料プレートに配置される。添加剤含有マトリックス溶液が試料プレートの各ウェルに配置され、乾固された後、酸化防止タンパク質が加えられた試料溶液が、乾固されたマトリックスに加えられ、乾固される。試料プレートは、MALDI用の試料プレートが用いられるが、マトリックスを用いない場合は、レーザー脱離イオン化用の試料プレートが用いられる。ステップS1003が終了したら、ステップS1005が開始される。
なお、質量分析用の試料の調製方法は上記の方法に限定されず、例えば、対象ペプチド、酸化防止タンパク質、マトリックスおよびマトリックス添加剤を含む溶液が調製された後、この溶液が試料プレートに配置されて乾固されてもよい。
ステップS1005において、試料プレートに配置された試料がレーザー脱離イオン化法によりイオン化される。ステップS1003で乾固された、試料プレート上のマトリックスと混合された試料に、質量分析計のレーザー装置から出射されたレーザー光が照射され、試料のイオン化が引き起こされる。レーザー光は波長337nmの紫外光等が用いられるがイオン化が適切にされれば特に限定されない。本実施形態では、上述のようにマトリックスと試料とを混合した後にレーザーを照射してイオン化するMALDI法の例を示したが、マトリックスを用いないレーザー脱離イオン化法にも本発明は適用可能である。ステップS1005が終了したら、ステップS1007が開始される。
ステップS1007において、ステップS1005でイオン化された試料が質量分離されて検出される。イオン化された試料の質量分離を行う質量分析計の種類は、対象ペプチドを所望の精度で検出することができれば特に限定されないが、ペプチドが数千Da以上の高質量の場合でも正確に質量分離する観点から、飛行時間型質量分析計が好ましい。質量分離されたイオンの強度を示す検出信号から、マススペクトルが作成される。例えば、飛行時間型質量分析計では、予め取得されている較正データに基づいて飛行時間がm/zに変換され、m/zに対応する検出されたイオンの強度がマススペクトルに示される。その他、適宜質量分析により測定されたデータの解析が行われる。ステップS1007が終了したら、処理を終了する。
図2は、本実施形態の分析方法に用いる試薬等を提供するための質量分析用キットを模式的に示す図である。質量分析用キット1は、酸化防止タンパク質10と、マトリックス20と、試料プレート30とを備える。
酸化防止タンパク質10は、レーザー脱離イオン化法、特にMALDI法によりイオン化する試料の調製に用いられ、対象ペプチドのメチオニンの酸化を防止する質量分析用ペプチド酸化防止剤である。マトリックス20は、上述したCHCA、DHB、またはシナピン酸等のマトリックスを含む。マトリックス20は、固体状態でもよいし、水および/またはアセトニトリル等を含む任意の溶媒に溶解された状態でもよい。図2では、酸化防止タンパク質10およびマトリックス20はそれぞれ容器C1およびC2の内部に格納されているが、容器C1およびC2の種類、形状等は特に限定されない。試料プレート30は、レーザー脱離イオン化用、特にMALDI用の試料プレートであり、複数のウェル31が形成されているが、ウェル31の形状、個数、配置される位置等は特に限定されない。
なお、本実施形態に係る質量分析用キットは、少なくとも酸化防止タンパク質10を備えていればよく、マトリックス20および試料プレート30については備えなくともよいし、いずれか一方または両方を備えていてもよい。
(第1実施形態の実施例)
以下に、本実施形態に係る実施例を示すが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
<1-1.酸化防止タンパク質を含む試料溶液の調製>
3種類のペプチドAβ1-40(Anaspec)、Aβ1-42(Anaspec)、APP669-711(ペプチド研究所)の混合液に、BSA(ナカライテスク)、Human
transferrin(Sigma-Aldrich)、Bovine fetuin(Sigma-Aldrich)のいずれかのタンパク質を添加した試料溶液と、タンパク質を添加していない試料溶液を調製した。試料溶液の溶媒には5 mM 塩酸を含有する70%(v/v) アセトニトリルを使用した。試料溶液に添加して得られた上記タンパク質の濃度は0.1, 0.3, 1, 3, 10, 30, 100 ng/μLであった。他に、上記3種類のタンパク質をいずれも含まず、Aβ1-40を10,100,1000 fmol/μLの各濃度で含む試料溶液(以下、Aβ1-40溶液と呼ぶ)を調製した。
分析対象のペプチド(対象ペプチド)の一文字表記のアミノ酸配列と、対応する配列表の配列番号を以下の表に示す。Aβ1-40とAβ1-42はメチオニン(M)が1残基含まれているため、側鎖の硫黄原子に対応する酸化されやすい部位は1箇所であり、APP669-711はメチオニンが2残基含まれているため酸化されやすい部位は2箇所である。
Figure 0007287282000001

<1-2.飛行時間型質量分析>
質量分析用のマトリックスとしてCHCAを用いた。マトリックス溶液は、CHCA 1 mgを70%(v/v) アセトニトリル 1 mLで溶解することによって調製した。マトリックス添加剤としてMDPNAを含む、0.4%(w/v) MDPNA溶液をマトリックス添加剤溶液とした。マトリックス溶液とマトリックス添加剤溶液を等量混合して添加剤含有マトリックス溶液を調製した後、添加剤含有マトリックス溶液0.5μLをMALDI用の試料プレート(μFocus MALDI plate 900μm、Hudson Surface Technology, Inc., Fort Lee, NJ)上の各ウェルに滴下し、乾固させた。その後、1-1で調製した試料溶液を1μL取り、上記の試料プレート上のマトリックスへ滴下して乾固させた。
MALDI法を用いた飛行時間型質量分析(以下、MALDI-TOF MSと呼ぶ)はリニアモードで行い、AXIMA Performance (Shimadzu/KRATOS, Manchester, UK)を用いて、ポジティブイオンモードで検出した。m/z値はピークのアベレージマスで表示した。m/z値は外部標準としてhuman angiotensin II、human ACTH fragment 18-39、bovine insulin oxidized beta-chain、およびbovine insulinを用いて較正した。
<1-3.ペプチドの濃度と酸化状態について>
図3は、Aβ1-40溶液(10~1000fmol/μL)1μLを試料プレートへ滴下し乾固させて得た試料(10~1000fmol/well Aβ1-40)を質量分析して得たマススペクトルにおける、Aβ1-40に対応するピークを示す図である。ペプチドが低濃度になるほど非酸化体よりも酸化体が強く検出され、10fmol/wellでは同等のピークの高さになった。
<1-4.タンパク質による酸化抑制の評価>
図4、図6および図8は、それぞれBSA、transferrinおよびfetuinの各タンパク質の濃度を変化させた場合のマススペクトルにおける各ペプチドに対応するピークを示す図である。タンパク質を添加しない(図中「タンパク質添加なし」)で各ペプチド(各ペプチドの濃度500amol/μL)をMALDI-TOF MSで分析すると、Aβ1-40とAβ1-42は酸化体が、APP669-711では二酸化体(図中「酸化体(2か所)」)のピークが突出して検出された(図4、図6、図8)。
0.1, 0.3, 1, 3, 10, 30, 100 ng/μLの濃度で各タンパク質を添加した試料では、添加量を上げていくと非酸化体がメインのピークとなり、各ペプチドの酸化が抑制されていた。ここで、0.1, 0.3, 1, 3, 10, 30, 100ng/μLの濃度で各タンパク質を添加した場合、試料プレート上には0.1, 0.3, 1, 3, 10, 30, 100 ng/wellのタンパク質が存在することになる。酸化抑制の効果は、使用したタンパク質、すなわちBSA、トランスフェリンおよびフェツインの全てにおいて観察された。しかし、添加量が多いと逆に非酸化体のピークが弱くなった。タンパク質の添加量が多過ぎてイオンサプレッションが起きていると考えられる。さらに、添加量が多すぎるとタンパク質由来の夾雑物に対応するピーク(夾雑物ピーク)が強く検出されてしまう。本実施例では夾雑物ピークと対象ペプチドに対応するピークのm/zが異なっていたが、もしm/zが近い値をとりこの2つのピークが重なる場合は対象ペプチドの特異性が低下する。この点を鑑み、対象ペプチドに対応するピークのm/zに応じて、添加するタンパク質の種類が適宜選択されることが好ましい。
酸化体に対応するピークよりも非酸化体に対応するピークの方が強度が高く、明確なピーク形状をしているタンパク質の量の範囲は、BSAでは3-10
ng/well(45.2-151 fmol/wellに対応)となり、試料溶液を試料プレート上に滴下する際の濃度としては3-10ng/μL(45.2-151 nMに対応)となった。transferrinにおける上記範囲は3-10 ng/well(39.9-133 fmol/wellに対応)となり、試料溶液を試料プレート上に滴下する際の濃度としては3-10ng/μL(39.9-133 nMに対応)となった。fetuinにおける上記範囲は1-10 ng/well(27.5-275 fmol/wellに対応)となり、試料溶液を試料プレート上に滴下する際の濃度としては1-10ng/μL(27.5-275 nMに対応)となった。重さ(g)で比較すると、fetuinは他よりも3倍低い添加量の1 ng/wellでも酸化抑制効果が確認された。物質量(mol)で比較すると、BSAでは45.2 fmol/well、transferrinでは39.9 fmol/well、fetuinでは27.5 fmol/wellと、酸化抑制効果がある物質量(mol)の下限は同程度だった。つまり、酸化抑制効果は重さ(g)よりも物質量(mol)に依存していると考えられる。一方、ピーク形状が不明確になるタンパク質の量の範囲はBSA、transferrinおよびfetuinの全てにおいて30 ng/well以上であるので、イオンサプレッションは重さ(g)に依存していると考えられる。以上のデータから、酸化抑制のためのタンパク質添加量は27.5-275 fmol/well(27.5-275 nM)が適している。
図5,7,9は、それぞれ試料に加えられたBSA, transferrinおよびfetuinの量と、マススペクトルに基づく各ペプチドの非酸化体に対する酸化体の比との関係を示すグラフである。タンパク質が添加されていない試料では、非酸化体に対する酸化体のピークはAβ1-40で8.5倍、Aβ1-42では6.1倍高く、APP669-711では、酸化体(一酸化体(1か所)と二酸化体(酸化体(2か所))とのピーク強度を合算した値が非酸化体よりも11.6倍高かった。一方、タンパク質を添加することにより非酸化体に対する酸化体の割合は減少し、最大96%の減少が確認された。以上の結果から、試料にタンパク質を添加することで酸化を抑制する効果があり、様々なタンパク質を使用しても効果があることが判明した
(第2実施形態)
第2実施形態の分析方法は、質量分析に用いられる試料に、タンパク質に加えてアミノ酸および/または還元剤を酸化防止剤として加えることにより、試料中のペプチドのメチオニンの酸化を防ぐものである。
図10は、本実施形態の分析方法の流れを示すフローチャートである。ステップS2001において、分析対象のペプチド(対象ペプチド)と、メチオニンの酸化を防ぐための、タンパク質ならびに、当該タンパク質以外のアミノ酸(遊離アミノ酸)および/または還元剤を備える酸化防止剤とを含む試料を調製する酸化防止剤とを含む試料が調製される。対象ペプチドは、アミノ酸配列が全体的または部分的に同定されていて、メチオニンを含むペプチドでもよいし、アミノ酸配列が未知のペプチドでもよい。対象ペプチドのアミノ酸配列の残基数等は特に限定されないが、実施例で用いた各ペプチドのような100以下、または50以下の残基数を有するペプチドが好ましい。
上記酸化防止剤に含まれるタンパク質(酸化防止タンパク質)の種類は特に限定されない。第1実施形態の場合と同様、試料中に、対象ペプチドの他に、酸化されやすい分子が存在することで、酸化される対象が分散され、対象ペプチドの酸化が抑制されると考えられる。
より具体的には、ステップS2001において、対象ペプチドを含む溶液(試料溶液)に、酸化防止タンパク質が、所定の濃度になるように加えられる。酸化防止タンパク質の濃度は特に限定されないが、酸化防止タンパク質による酸化の防止を促進する観点から、上述の第1実施形態で好ましいとされた濃度、物質量または質量の範囲内が望ましい。
本実施形態に係る酸化防止剤は、酸化防止タンパク質に加え、アミノ酸および/または還元剤を含む。アミノ酸および/または還元剤は低分子化合物が好ましく、当該低分子化合物の分子量は、10000未満が好ましく、5000未満がより好ましい。また、当該低分子化合物の分子量は、上記酸化防止タンパク質の分子量より小さいことが好ましい。酸素を捕捉する低分子化合物が試料溶液中に存在することにより、酸化防止タンパク質のみでは防止できない対象ペプチドの酸化が抑制されると考えられる。以下では、本実施形態において酸化防止剤に含まれる遊離アミノ酸および/還元剤を、低分子酸素捕捉物質と呼ぶ。
低分子酸素捕捉物質の濃度は、0.001mM以上が好ましく、0.01mM以上がより好ましく、0.1mM以上がさらに好ましい。低分子酸素捕捉物質の各ウェルあたりの物質量は、1pmol/well以上が好ましく、10pmol/well以上がより好ましく、100pmol/well以上がさらに好ましい。低分子酸素捕捉物質の濃度が高いか、量が多い程、対象ペプチドの酸化を防止する効果が高くなるため好ましい。
低分子酸素捕捉物質の濃度は、10mM未満が好ましく、1mM未満がより好ましい。低分子酸素捕捉物質の各ウェルあたりの物質量は、10nmol/well未満が好ましく、1nmol/well未満がより好ましい。低分子酸素捕捉物質の濃度が高すぎたり、量が多過ぎると、イオン化抑制等が起こり質量分析における感度が低下する場合があるため、好ましくない。
低分子酸素捕捉物質におけるアミノ酸は、酸化されやすい側鎖を有するメチオニン、ヒスチジン、システインおよびトリプトファンの少なくとも一つが好ましい。これらのアミノ酸の側鎖が酸素を受け取ることにより、試料溶液内の酸化される対象が分散され、対象ペプチドが酸化されにくくなる。
低分子酸素捕捉物質における還元剤は、上述のように低分子化合物であることが好ましいが、特に限定されず、ジチオトレイトール(DTT)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、2-メルカプトエタノール(2-ME)、トリ-n-ブチルホスフィン (TBP) 、ジチオエリトリトール(DTE)、アスコルビン酸、ポリフェノール、ピロ亜硫酸ナトリウム、クエン酸、グルコース、カロチン、トコフェノール、チオ-グリコール酸、N-アセチルシステイン、ヒドロキシルアミン、還元型グルタチオン、臭化2-アミノエチルイソチオウロニウムおよびチオグリセロールからなる群から選択される少なくとも一つの化合物が好ましい。上記のうち、ポリフェノールは、カテキン、イソフラボン、エラグ酸、タンニンが特に好ましい。
さらに、マトリックスおよびマトリックス添加剤を含む溶液(添加剤含有マトリックス溶液)が調製される。マトリックスの種類は特に限定されず、CHCA、DHBまたはシナピン酸等を用いることができる。マトリックス添加剤の種類は特に限定されず、MDPNA等を用いることができる。ステップS2001が終了したらステップS2003が開始される。
ステップS2003において、ステップS2001で調製された試料が質量分析計の試料プレートに配置される。添加剤含有マトリックス溶液が試料プレートの各ウェルに配置され、乾固された後、酸化防止タンパク質、ならびに、アミノ酸および/または還元剤が加えられた試料溶液が、乾固されたマトリックスに加えられ、乾固される。試料プレートは、レーザー脱離イオン化用であり、特にMALDI用の試料プレートが好ましい。ステップS2003が終了したら、ステップS2005が開始される。
なお、質量分析用の試料の調製方法は上記の方法に限定されず、例えば、対象ペプチド、酸化防止タンパク質、アミノ酸および/または還元剤、マトリックスならびにマトリックス添加剤を含む溶液が調製された後、この溶液が試料プレートに配置されて乾固されてもよい。
ステップS2005およびステップS2007は、それぞれステップS1005およびステップS1007と同様であるため記載を省略する。ステップS2007が終了したら、処理を終了する。
図11は、本実施形態の分析方法に用いる試薬等を提供するための質量分析用キットを模式的に示す図である。本実施形態に係る質量分析用キット2は、酸化防止タンパク質10と、マトリックス20と、試料プレート30と、アミノ酸および/または還元剤を含む低分子酸素捕捉物質40とを備える。
酸化防止タンパク質10ならびに、低分子酸素捕捉物質40は、レーザー脱離イオン化法、特にMALDI法によりイオン化する試料の調製に用いられ、対象ペプチドのメチオニンの酸化を防止する質量分析用ペプチド酸化防止剤である。マトリックス20は、上述したCHCA、DHB、またはシナピン酸等のマトリックスを含む。マトリックス20は、固体状態でもよいし、水および/またはアセトニトリル等を含む任意の溶媒に溶解された状態でもよい。図11では、酸化防止タンパク質10、マトリックス20ならびに低分子酸素捕捉物質40はそれぞれ容器C1、C2およびC3の内部に格納されているが、容器C1,C2およびC3の種類、形状等は特に限定されない。試料プレート30は、レーザー脱離イオン化用の試料プレートであり、複数のウェル31が形成されているが、ウェル31の形状、個数、配置される位置等は特に限定されない。
なお、本実施形態に係る質量分析用キットは、少なくとも低分子酸素捕捉物質40を備えていればよく、酸化防止タンパク質10、マトリックス20および試料プレート30については備えなくともよいし、いずれか1つ、2つまたは全部を備えていてもよい。
(第2実施形態の実施例)
以下に、本実施形態に係る実施例を示すが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。第1実施形態の実施例では、Aβ1-40、Aβ1-42およびAPP669-711の混合液に、BSAを0.1、0.3、1、3、10、30、または100ng/μL添加した試料溶液を作成して、質量分析を行い、ペプチドの酸化抑制を検討した(図4参照)。以下では、この試料溶液にさらにアミノ酸および/または還元剤を加えて、ペプチドの酸化抑制の評価を行った。
<2-1.酸化防止タンパク質およびアミノ酸によるペプチドの酸化抑制の評価>
3種類の合成ペプチドAβ1-40、Aβ1-42およびAPP669-711(第1実施形態の実施例の表参照)の混合液に、BSA 10ng/μLと共にアミノ酸を添加した試料溶液と、アミノ酸を添加していない試料溶液とを調製した。溶媒は5 mM 塩酸を含有する70%(v/v) アセトニトリルを使用した。アミノ酸含有試料溶液は、アミノ酸としてグリシン(ナカライテスク)、L-メチオニン(ナカライテスク)、L-システイン(Thermo Fisher Scientific)およびL-ヒスチジン(Fluka)のいずれかが添加された。上述の通り、メチオニン、システインおよびヒスチジンは側鎖に酸化されやすい部位を有するが、グリシンは側鎖に酸化されやすい部位を有さない。従って、グリシンは比較例として用いた。添加されたアミノ酸の濃度は各アミノ酸毎に、0.0001、0.001、0.01、0.1、1および10 mMであった。これらの試料を第1実施形態の実施例と同様の条件で、MALDI-TOF MSにより測定した。
図12は、グリシンの濃度を変化させた場合のマススペクトルにおける各ペプチドに対応するピークを示す図である。図13は、試料に加えられたグリシンの濃度と、マススペクトルに基づく各ペプチドの非酸化体に対する酸化体の比との関係を示すグラフである。BSAに加えてグリシンを様々な濃度で試料溶液へ添加しても、酸化体のピークに変化はなかった。つまり、グリシンの添加によるペプチドの酸化を抑制する効果は確認されなかった。
図14、16、18は、それぞれL-メチオニン、L-システインおよびL-ヒスチジンの濃度を変化させた場合のマススペクトルにおける各ペプチドに対応するピークを示す図である。図15、17、19は、それぞれ試料に加えられたL-メチオニン、L-システインおよびL-ヒスチジンの濃度と、マススペクトルに基づく各ペプチドの非酸化体に対する酸化体の比との関係を示すグラフである。L-メチオニン、L-システインおよびL-ヒスチジンを試料溶液に添加したそれぞれの場合では、酸化体のピークが低下し、非酸化体に対する酸化体のピークの割合は減少した。
酸化抑制の評価は、有意水準をp<0.05としてDunnett's testにより行った。アミノ酸添加なしのコントロールと比べて、3種類のペプチドのうち少なくとも1種類で酸化体の割合が統計学的有意に減少していたアミノ酸濃度は、L-メチオニンの場合で0.001-10 mM、L-システインの場合で10 mM、L-ヒスチジンの場合で0.01-10 mMであった。グリシンの場合では統計学的有意な酸化体の減少は確認されなかった。最も酸化を抑制する効果の大きい濃度は、L-メチオニンの場合は100μMまたは1 mM、L-システインの場合は1 mM または10 mM、L-ヒスチジンの場合は1 mMであった。L-ヒスチジンに関しては10 mMの高濃度になるとイオンサプレッションが強く、ピークは検出できなかった。L-メチオニンおよびL-システインの場合でも、10 mMの濃度では感度が低下する傾向があった。酸化抑制を示したアミノ酸に共通する点は、酸化を受けやすい側鎖を有している点である。つまり、側鎖が酸素を捕捉することにより、対象ペプチドの酸化を抑制していると考えられる。
<2-2.酸化防止タンパク質および還元剤によるペプチドの酸化抑制の評価>
3種類の合成ペプチドAβ1-40、Aβ1-42、APP669-711の混合液に、BSA 10ng/μLと共に還元剤DTTを添加した試料溶液と、DTTを添加していない試料溶液を調製した。溶媒は5 mM 塩酸を含有する70%(v/v) アセトニトリルを使用した。添加されたDTT濃度は0.0001、0.001、0.01、0.1、1、10 mMであった。これらの試料を上記アミノ酸の場合(2-1)と同様の条件で、MALDI-TOF MSにより測定した。
図20は、DTTの濃度を変化させた場合のマススペクトルにおける各ペプチドに対応するピークを示す図である。図21は、試料に加えられたDTTの濃度と、マススペクトルに基づく各ペプチドの非酸化体に対する酸化体の比との関係を示すグラフである。BSAに加えてDTTを様々な濃度で試料溶液へ添加すると、10μM以上で酸化体のピークが低下し、非酸化体に対する酸化体のピークの割合は減少した。
酸化抑制の評価は、有意水準をp<0.05としてDunnett's testにより行った。還元剤添加なしのコントロールと比べて、3種類のペプチドのうち少なくとも1種類で酸化体の割合が統計学的有意に減少していたDTTの濃度は10 mMだった。還元剤を添加した場合でも試料プレート上での酸化が抑制されることを示している。最も効果の大きい濃度は、10 mMだった。なお、10 mMの濃度では感度が低下する傾向があった。
<2-3.試料溶液に酸化防止タンパク質を含まない場合の、アミノ酸または還元剤によるペプチドの酸化抑制の評価>
3種類の合成ペプチドAβ1-40、Aβ1-42およびAPP669-711の混合液に、1 mM L-メチオニンを含み酸化防止タンパク質が添加されていない試料溶液、および10 mM DTTを含み酸化防止タンパク質が添加されていない試料溶液、ならびに、これらの試料溶液に10ng/μL BSAを添加した試料溶液を調製した。溶媒は5 mM 塩酸を含有する70%(v/v) アセトニトリルを使用した。これらの試料を上記アミノ酸の場合(2-1)と同様の条件で、MALDI-TOF MSにより測定した。
図22は、L-メチオニンまたはDTTを含む試料に、BSAが加えられた場合と、加えられなかった場合とにおける、マススペクトルに基づく各ペプチドの非酸化体に対する酸化体の比を示すグラフである。試料溶液に1 mM L-メチオニンや10 mM DTTを単独で添加した場合でも、非酸化体に対する酸化体のピークの割合は減少し、酸化を抑制する効果が観察された。これらに加えてBSAも添加することで、非酸化体に対する酸化体のピークの割合は更に減少した。この結果は、アミノ酸や還元剤を含み酸化防止タンパク質を含まない試料溶液に、酸化防止タンパク質を添加することで、更にペプチドの酸化が抑制されることを示している。
(第3実施形態)
第3実施形態の分析方法は、第2実施形態の分析方法と同様、質量分析に用いられる試料に、タンパク質(酸化防止タンパク質)に加えてアミノ酸および/または還元剤を酸化防止剤として加えることにより、試料中のペプチドのメチオニンの酸化を防ぐものである。しかし、本実施形態の分析方法では、アフィニティ精製により分析対象のペプチド(対象ペプチド)が精製され、アフィニティ精製において溶出液に含まれるリガンドを酸化防止タンパク質として用いる。これにより、酸化防止タンパク質を試料溶液に加える操作を必要とせずに、対象ペプチドの酸化を効果的に抑制することができる。
図23は、本実施形態の分析方法の流れを示すフローチャートである。ステップS3001において、アフィニティ精製を用いて対象ペプチドが精製される。アフィニティ精製の方法は、支持体に結合されたリガンドとしてタンパク質を用いることができるものであれば特に限定されず、免疫沈降(IP)、クロマチン免疫沈降(ChIP)、プルダウン・アッセイまたはアフィニティ・クロマトグラフィ等を用いることができる。抗体をリガンドとして用いる場合には、当該抗体は、スピンカラム等を含む任意のカラムの他、ピペットチップやマイクロ流路に固定されたものでもよい。
アフィニティ精製では、対象ペプチドを含むペプチド溶液を、支持体に結合されたリガンドに接触させ、ペプチド溶液中の対象ペプチドをリガンドに結合させる。リガンドの種類は、支持体に結合可能で対象ペプチドと結合することができれば特に限定されず、対象ペプチドに特異的または非特異的に結合可能な抗体等を用いることができる。
対象ペプチドがリガンドに結合されたら、緩衝液を用いて当該結合を保ったまま支持体が洗浄され、リガンドに結合しなかったペプチド溶液の成分が除去される。その後、低pHまたは高pHの緩衝液等を含む溶出液と支持体とが接触されることにより、対象ペプチドが溶出される。ステップS3001が終了したら、ステップS3003が開始される。
ステップS3003において、対象ペプチドを含むアフィニティ精製の溶出液にアミノ酸および/または還元剤が加えられ、試料溶液が調整される。アミノ酸および還元剤は、第2実施形態における低分子酸素捕捉物質の、アミノ酸および還元剤を用いることが好ましい。試料溶液には、アフィニティ精製で用いたリガンドが含まれる。上述の実施形態の場合と同様、試料中に、対象ペプチドの他に、酸化されやすい分子が存在することで、酸化される対象が分散され、対象ペプチドの酸化が抑制されると考えられる。
なお、アフィニティ精製において、上述の溶出液に低分子酸素捕捉物質のアミノ酸および還元剤を予め加えておいてもよい。これにより、溶出後に低分子酸素捕捉物質を加えることを必要とせず、対象ペプチドの酸化が抑制された試料溶液を調製することができる。
本実施形態における低分子酸素捕捉物質の濃度は、0.0001mM以上が好ましく、0.00067mM以上がより好ましく、0.0067mM以上がより一層好ましく、0.067mM以上がさらに好ましい。低分子酸素捕捉物質の濃度が高い程、対象ペプチドの酸化を防止する効果が高くなるため好ましい。本実施形態における低分子酸素捕捉物質の濃度は、10mM未満が好ましく、1mM未満がより好ましい。低分子酸素捕捉物質の濃度が高過ぎると、イオン化抑制等が起こり質量分析における感度が低下する場合があるため、好ましくない。
また、マトリックスおよびマトリックス添加剤を含む溶液(添加剤含有マトリックス溶液)が調製される。マトリックスの種類は特に限定されず、CHCA、DHBまたはシナピン酸等を用いることができる。マトリックス添加剤の種類は特に限定されず、MDPNA等を用いることができる。ステップS3003が終了したらステップS3005が開始される。
ステップS3005において、ステップS3003で調製された試料が質量分析計の試料プレートに配置される。添加剤含有マトリックス溶液が試料プレートの各ウェルに配置され、乾固された後、酸化防止タンパク質としての上記リガンド、ならびに、アミノ酸および/または還元剤が加えられた試料溶液が、乾固されたマトリックスに加えられ、乾固される。ステップS3005が終了したら、ステップS3007が開始される。
なお、質量分析用の試料の調製方法は上記の方法に限定されず、例えば、対象ペプチド、上記リガンド、アミノ酸および/または還元剤、マトリックスならびにマトリックス添加剤を含む溶液が調製された後、この溶液が試料プレートに配置されて乾固されてもよい。
ステップS3007およびステップS3009は、それぞれステップS1005およびステップS1007と同様であるため記載を省略する。ステップS3009が終了したら、処理を終了する。
(第3実施形態の実施例)
以下に、本実施形態に係る実施例を示すが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
<3-1.免疫沈降法(IP)>
抗Aβ抗体(クローン6E10)をEpoxy磁性ビーズ(Thermo Fisher Scientific)に結合させ、免疫沈降用の抗Aβ抗体ビーズを用意した。ヒト血漿に合成ペプチドAβ1-40(40 pM)、Aβ1-42(10 pM)、APP669-711(10 pM)を添加したものを試料として用意した。合成ペプチド(対象ペプチド)がスパイクされた血漿250μLにDDMとNTMを含むTris緩衝液250μLを混合させた後、氷上で5分静置させた。その血漿を抗Aβ抗体ビーズと混ぜて、氷上で1時間振盪させた。その後、抗体ビーズをDDMとNTMを含むTris緩衝液100μLで3回洗浄し、50 mM 酢酸アンモニウム緩衝液50μLで2回洗浄した後、DDMを含むグリシン緩衝液により抗体ビーズに結合している対象ペプチドを溶出させた。その溶出液をDDMを含むTris緩衝液と混合させた後、抗体ビーズと混ぜて、氷上で1時間振盪させた。その後、抗体ビーズをDDMを含むTris緩衝液50μLで5回洗浄し、50 mM 酢酸アンモニウム緩衝液50μLで2回洗浄し、さらにH2O 30μLで一回洗浄した後、溶出液(5 mM 塩酸を含有する70%(v/v) アセトニトリル)5μLにより抗体ビーズに結合しているペプチドを溶出させた。溶出液はL-メチオニンを含有しているものと、含有していないものを使用した。L-メチオニン濃度は、0.0067~67μMを使用した。免疫沈降により溶出させた対象ペプチドを第2実施形態の実施例(2-1)と同様の条件で、MALDI-TOF MSにより測定した。
図24は、免疫沈降の溶出液のマススペクトルを示す図である。図24ではm/zが4000~20000の範囲が示されており、Aβ1-40に対応するピークは図の左側に示されている。図24の溶出液のマススペクトルにIgGに対応するピークが観察されるように、ヒト血漿を免疫沈降で処理したサンプルには、抗体ビーズ由来のIgGが混入する。そのため、酸化防止を目的としてBSA等のタンパク質を添加する必要はないが、アミノ酸等の低分子酸素捕捉物質を添加することによりさらに酸化を抑制できる可能性が有る。そこで、メチオニンを添加することにより対象ペプチドの酸化が更に抑制されるかを評価した。
図25は、免疫沈降の溶出液のL-メチオニンの濃度と、マススペクトルに基づく各ペプチドの非酸化体に対する酸化体の比との関係を示すグラフである。L-メチオニンが添加された溶出液では、L-メチオニンを添加しなかった溶出液と比べて、非酸化体に対する酸化体のピークの割合は減少した。酸化抑制の評価は、有意水準をp<0.05としてDunnett's testにより行った。L-メチオニンの濃度が0.67μM以上の場合に、アミノ酸添加なしのコントロールと比べて、3種類の対象ペプチドのうち少なくとも1種類で酸化体の割合が統計学的有意に減少していた。この結果は、免疫沈降後のサンプル中にL-メチオニンなどの低分子酸素捕捉物質が含まれていると、酸化が抑制されることを示している。
本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特許出願2018年第013052号(2018年1月29日出願)
1,2…質量分析用キット、10…酸化防止タンパク質、20…マトリックス、30…試料プレート、31…ウェル、40…低分子酸素捕捉物質、C1,C2,C3…容器。

Claims (19)

  1. メチオニンを含むペプチドを分析対象とする分析方法であって、
    前記分析対象のペプチドと、レーザ脱離イオン化質量分析計の試料プレート上でのメチオニンの酸化を防止するための、タンパク質を備える酸化防止剤とを含む混合試料を調製することと、
    前記混合試料をレーザ脱離イオン化質量分析計の試料プレートに配置することと、
    前記試料プレートに配置された混合試料をレーザー脱離イオン化法によりイオン化することと、
    イオン化された前記混合試料中のペプチドのメチオニン酸化体及びメチオニン非酸化体とを質量分離して該メチオニン酸化体及び該メチオニン非酸化体の少なくとも一方を検出することと、を備え、
    前記タンパク質が、前記混合試料中において自身の酸化が生じることで該混合試料中のペプチドのメチオニンの酸化を防止するものであり、
    前記酸化防止剤が、前記タンパク質の他に、側鎖に被酸化部位を有するアミノ酸をさらに備え
    前記アミノ酸が、前記混合試料中において前記側鎖が酸素を捕捉することにより該混合試料中のペプチドのメチオニンの酸化を抑制するものである、分析方法。
  2. 請求項1に記載の分析方法において、
    前記レーザー脱離イオン化法は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法である分析方法。
  3. 請求項1に記載の分析方法において、
    前記タンパク質の濃度は、27.5nM以上275nM未満である分析方法。
  4. 請求項3に記載の分析方法において、
    前記タンパク質の濃度は、260nM未満である分析方法。
  5. 請求項4に記載の分析方法において、
    前記タンパク質の濃度は、45.2nM以上151nM未満である分析方法。
  6. 請求項1から5までのいずれか一項に記載の分析方法において、
    前記酸化防止剤は、前記タンパク質および前記アミノ酸の他に、還元剤をさらに備える分析方法。
  7. 請求項6に記載の分析方法において、
    前記アミノ酸は、メチオニン、ヒスチジン、システイン、およびトリプトファンからなる群から選択される少なくとも1種類の化合物であり、
    前記還元剤は、ジチオトレイトール、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン、2-メルカプトエタノール、トリ‐n‐ブチルフォスフィン、ジチオエリトリトール、アスコルビン酸、ポリフェノール、ピロ亜硫酸ナトリウム、クエン酸、グルコース、カロチン、トコフェノール、チオ-グリコール酸、N-アセチルシステイン、ヒドロキシルアミン、還元型グルタチオン、臭化2-アミノエチルイソチオウロニウム、およびチオグリセロールからなる群から選択される少なくとも1種類の化合物である分析方法。
  8. 請求項6に記載の分析方法において、
    前記アミノ酸および前記還元剤の濃度は、0.001mM以上10mM以下である分析方法。
  9. 請求項1または2に記載の分析方法において、
    前記ペプチドは、アフィニティ精製を用いて精製されたものであり、
    前記タンパク質は、前記アフィニティ精製に用いたリガンドであり、
    前記アフィニティ精製において、前記ペプチドを溶出液を用いて溶出する前、または溶出した後に、前記溶出液に前記アミノ酸と、さらに還元剤とを加えることと、を備える分析方法。
  10. 請求項9に記載の分析方法において、
    前記アミノ酸は、メチオニン、ヒスチジン、システイン、およびトリプトファンからなる群から選択される少なくとも1種類の化合物であり、
    前記還元剤は、ジチオトレイトール、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン、2-メルカプトエタノール、トリ‐n‐ブチルフォスフィン、ジチオエリトリトール、アスコルビン酸、ポリフェノール、ピロ亜硫酸ナトリウム、クエン酸、グルコース、カロチン、トコフェノール、チオ-グリコール酸、N-アセチルシステイン、ヒドロキシルアミン、還元型グルタチオン、臭化2-アミノエチルイソチオウロニウム、およびチオグリセロールからなる群から選択される少なくとも1種類の化合物である分析方法。
  11. 請求項9に記載の分析方法において、
    前記アミノ酸および前記還元剤の濃度は、0.0001mM以上10mM以下である分析方法。
  12. 請求項1~11のいずれか一項に記載の分析方法において、
    前記タンパク質が、ウシ血清アルブミン、トランスフェリン、フェツインからなる群から選択される少なくとも1つである、分析方法。
  13. 請求項1または2に記載の分析方法において用いられるペプチド酸化防止剤であって、
    レーザー脱離イオン化法により分析対象のペプチドをイオン化する質量分析における試料の調製に用いられる、前記分析対象に含まれるメチオニンの酸化を防止するための、タンパク質および側鎖に被酸化部位を有するアミノ酸を含み、
    前記タンパク質が、前記混合試料中において自身の酸化が生じることで該混合試料中のペプチドのメチオニンの酸化を防止し、
    前記アミノ酸が、前記混合試料中において前記側鎖が酸素を捕捉することにより該混合試料中のペプチドのメチオニンの酸化を抑制するものである、質量分析用ペプチド酸化防止剤。
  14. 請求項13に記載の質量分析用ペプチド酸化防止剤において、
    前記タンパク質の濃度は、27.5nM以上275nM未満である質量分析用ペプチド酸化防止剤。
  15. 請求項13に記載の質量分析用ペプチド酸化防止剤において、
    前記タンパク質および前記アミノ酸の他に、還元剤をさらに備える質量分析用ペプチド酸化防止剤。
  16. 請求項15に記載の質量分析用ペプチド酸化防止剤において、
    前記アミノ酸は、メチオニン、ヒスチジン、システイン、およびトリプトファンからなる群から選択される少なくとも1種類の化合物であり、
    前記還元剤は、ジチオトレイトール、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン、2-メルカプトエタノール、トリ‐n‐ブチルフォスフィン、ジチオエリトリトール、アスコルビン酸、ポリフェノール、ピロ亜硫酸ナトリウム、クエン酸、グルコース、カロチン、トコフェノール、チオ-グリコール酸、N-アセチルシステイン、ヒドロキシルアミン、還元型グルタチオン、臭化2-アミノエチルイソチオウロニウム、およびチオグリセロールからなる群から選択される少なくとも1種類の化合物である質量分析用ペプチド酸化防止剤。
  17. 請求項13から16までのいずれか一項に記載の質量分析用ペプチド酸化防止剤において、
    前記レーザー脱離イオン化法は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法である質量分析用ペプチド酸化防止剤。
  18. 請求項13から17までのいずれか一項に記載の質量分析用ペプチド酸化防止剤において、
    前記タンパク質が、ウシ血清アルブミン、トランスフェリン、フェツインからなる群から選択される少なくとも1つである、質量分析用ペプチド酸化防止剤。
  19. 請求項13から18までのいずれか一項に記載の質量分析用ペプチド酸化防止剤と、
    試料プレートおよびマトリックスからなる群から選択される少なくとも一つとを備える質量分析用キット。
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