JP7285646B2 - 濃緑色系ガラス及び濃緑色系ガラス容器 - Google Patents
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前記酸化クロムの前記ガラス中の含有量(X)(質量%)は、Cr2O3換算で、下記式(I)を満たし、
前記ガラスの合計質量に対する、原料として用いるK2Cr2O7の質量の割合を、K2Cr2O7の添加率とした場合、下記式(II)で表されるYは、式(III)を満たす、濃緑色系ガラス。
[3] CIE表示(厚み10mm換算)で、明度Y=2~30%、主波長λd=550~570nm、刺激純度Pe=90~98%である、前項[1]又は[2]に記載の濃緑色系ガラス。
[4] 前項[1]乃至[3]のいずれか一項に記載の濃緑色系ガラスを成形してなる、濃緑色系ガラス容器。
本明細書において、濃緑色系ガラスの光吸収性能を表す指標として、380~500nm積算透過度という値を用いる。380~500nm積算透過度は、以下の式(IV)で表される。
本発明においては、ガラス中の酸化クロムの質量%(X)は、Cr2O3換算で0.45未満である。すなわち、濃緑色系ガラスは、以下の式(I)を満たす。
(成分割合)
成分割合は以下の通りである。
SiO2 72.6質量%
Al2O3 2.1質量%
Fe2O3 0.084質量%
Na2O 13.9質量%
CaO 10.0質量%
上記基本組成に対して、K2Cr2O3を添加したときの、380~500nm積算透過度を測定することにより、式(V)を得た。
本発明の濃緑色系ガラスとして、ソーダ石灰ガラスを用いることができる。ソーダ石灰ガラスの中でも、通常、以下の組成を有するガラスを好ましくは用いることができる。
濃緑色系ガラス中のCr6+の量が多いと380~500nm積算透過度の低いガラスを製造することが可能である。一方、ガラス中の酸化クロムの含有量が多くなると、クロム起因の異物流出が問題となる。よって、本発明の濃緑色系ガラスにおいては、ガラス中の酸化クロム(Cr2O3換算)の質量%(X)は、[式(I)について]で説明したように、下記式(I)を満たすものである。
本発明では、従来のガラスよりもFe2O3濃度が高くても380~500nm積算透過度の低いガラスを製造することが可能である。ガラス中のFe2O3濃度は、式(II)の条件を満たす範囲であれば特に限定されるものではないが、ガラスのリサイクル性、ガラスの酸化還元特性の観点から、濃緑色系ガラス中のFe2O3は、0.06~0.10質量%であることが好ましい。
本発明の母材のガラスとなるソーダ石灰シリカ系ガラスは、SiO2、Na2O、及びCaOを主な構成成分とするガラスであり、耐候性が良好であることから飲料や酒類、調味料用のガラス容器として汎用的に用いられるものである。本発明においては、例えばSiO2、Na2O、及びCaOの3成分の合計が80質量%以上のガラスを用いることができる。
SiO2はガラス骨格を構成する成分であり、含有量は特に制限されるものではないが、通常65~80質量%である。65質量%以上では表面にヤケ等が発生しにくく、耐候性が良好となる。80質量%以下であれば、溶融のための温度が高くなりすぎることがない。
Na2Oはガラスの溶融性を高めるものである。含有量は特に限定されるものではないが、通常、10~18質量%含である。10質量%以上であれば、溶融性が高まり、失透も生じにくくなる。18質量%以下であれば、良好な耐候性を有し、表面にヤケ等が発生しにくくなる。
CaOは溶融温度を下げることができ、耐水性を向上させることができる成分である。含有量は特に制限されるものではないが、通常5~20質量%である。含有量が5質量%以上であれば、良好な溶融性を有することができ、20質量%以下であれば失透しにくくなる。
本発明の濃緑色系ガラスの原料はどのような形態の原料を用いてもかまわない。原料の一例として、下記のような原料、添加率で目的の濃緑色系ガラスが得られる。
珪砂 10~30質量%
石灰 0~10質量%
ソーダ灰 0~10質量%
硝酸ソーダ 0~1質量%
ぼう硝 0~1質量%
重クロム酸カリウム 0~1質量%
カレット 50~90質量%
本発明の濃緑色系ガラスの一つの特徴として、原料として、重クロム酸カリウム(K2Cr2O7)を必須成分として用いる。K2Cr2O7を原料として用いると、ガラス中にCr6+を高い割合で存在させることができ、380~500nm積算透過度が低下させることができる。K2Cr2O7の使用量は、上記式(II)、式(III)を満たすことができれば、特に限定されるものではないが、K2Cr2O7を大量に添加することは、環境負荷やコスト面の観点から好ましくない。したがって、K2Cr2O7添加率は、0~1質量%が好ましい。添加率とは、得られる濃緑色系ガラスの質量を100とした場合に、使用するK2Cr2O7の質量の割合である。
通常、透明色のフリント系カレット中のFe2O3濃度は、0.05~0.06質量%であるのに対し、色ガラス系カレット(「色込みカレット」とも呼ばれる。)中のFe2O3濃度は約0.1~0.25質量%程度であるため、従来の濃緑色系ガラスには、実質的に色ガラス系カレットを使用することができなかった。しかしながら、本発明の濃緑色系ガラスは、ある程度のFe2O3濃度を許容できるため、市中の色ガラス系カレットを使用することができる。具体的には、本発明の濃緑色系ガラスの総質量に対して、0~30質量%の色ガラス系カレットを使用することができる。また、透明色のフリント系カレットは、50~90質量%を使用することができる。0.05~0.3%の範囲内の極めて少量であり
ここで、原料として、クロムを含む色ガラス系カレットを使用したとしても、色ガラス系カレットには、六価クロムはほとんど存在しないか、極めて少ないと考えられ、そのため、本発明の濃緑色系ガラス中の六価クロムの大部分は、添加する重クロム酸カリウム由来であると考えられる。色ガラス系カレット中に六価クロムがほとんど存在しないか、極めて少ない理由は、色ガラス系カレットには、ワイン用ガラス容器などの還元性ガラスも多く含まれるため、色ガラス系カレットに含まれる一部のガラスにクロムが六価の状態のものが含まれていたとしても、他のガラスと混合・熔融されればすぐに三価クロムの状態になると考えられるからである。
したがって、本件では、リサイクルの色ガラス系カレットを多く用いた場合であっても、得られるガラスの酸化クロム含有量、添加する重クロム酸カリウムと得られるガラスのFe2O3との割合を特定すれば、所定の積算透過率の濃緑色系ガラスを得ることができる。
一般的な市中の色ガラス系カレットの組成を記す。
(カレットの組成例)
SiO2・・・70~74質量%
Na2O・・・12~16質量%
CaO・・・8~12質量%
Al2O3・・・1~3質量%
K2O・・・0~2質量%
Fe2O3・・・0.18~0.26質量%
Cr2O3・・・0.10~0.16質量%
なお、カレット由来の有機物や、還元性ガラスが大量に混入すると、380~500nm積算透過度が上昇する可能性があるため、これらの項目については別途管理する必要がある。
本発明のガラスは、通常のガラスの製造方法で製造することができる。すなわち、所定の組成になるように、粉体のガラス原料を混合・溶融し、冷却することにより、製造することができる。なお、冷却は、ひずみによりガラスが割れてしまうため、徐冷することが好ましい。
基本ガラスは、下記の範囲を満たすものであった。
SiO2 70~74質量%
Al2O3 1~4質量%
K2O 0~2質量%
Na2O 12~15質量%
CaO 8~12質量%
このガラス中のCr2O3質量%、ガラス中のFe2O3質量%、K2Cr2O7の添加率が、それぞれ表1に記載された値としたときのガラス1を作製した。ガラス1のXとYの値は、図1の通りである。なお、380~500nmの積算透過度は81.1であった。その他の値は、表1のとおり
ガラス中のCr2O3質量%、ガラス中のFe2O3質量%、K2Cr2O7の添加率が、それぞれ表1に記載された以外は、実施例1と同様の条件により、ガラス2を作製した。ガラス2のXとYの値は、図1の通りである。なお、380~500nmの積算透過度は40.5であった。その他の値は、表1の通りである。
ガラス中のCr2O3質量%、ガラス中のFe2O3質量%、K2Cr2O7の添加率が、それぞれ表1に記載された以外は、実施例1と同様の条件により、ガラス3を作製した。ガラス3のXとYの値は、図1の通りである。なお、380~500nmの積算透過度は81.1であった。その他の値は、表1の通りである。
ガラス中のCr2O3質量%、ガラス中のFe2O3質量%、K2Cr2O7の添加率が、それぞれ表1に記載された以外は、実施例1と同様の条件により、ガラス4を作製した。ガラス4のXとYの値は、図1の通りである。なお、380~500nmの積算透過度は40.5であった。その他の値は、表1の通りである。
ガラス中のCr2O3質量%、ガラス中のFe2O3質量%、K2Cr2O7の添加率が、それぞれ表1に記載された以外は、実施例1と同様の条件により、ガラス5を作製した。ガラス5のXとYの値は、図1の通りである。なお、380~500nmの積算透過度は8.7であったが、Cr2O3の含有量が高いものである。その他の値は、表1の通りである。
特許文献2における実施例1のガラス(ガラス6とする)のX、Y値を図1にプロットした。本発明の範囲から外れるものであった。
特許文献2における実施例2のガラス(ガラス7とする)のX、Y値を図1にプロットした。本発明の範囲から外れるものであった。
特許文献2における実施例3のガラス(ガラス8とする)のX、Y値を図1にプロットした。本発明の範囲から外れるものであった。
特許文献2における実施例4のガラス(ガラス9とする)のX、Y値を図1にプロットした。本発明の範囲から外れるものであった。
Claims (3)
- ガラス成分として酸化クロム及び酸化鉄を含む濃緑色ガラスの製造方法であって、
原料としてK 2 Cr 2 O 7 を用いる工程を含み、
前記ガラス中の酸化クロムの含有量(X)(質量%)は、Cr2O3換算で、下記式(I)を満たし、
Fe2O3の含有量は0.06~0.10質量%であり、
前記ガラスの合計質量に対する、原料として用いるK2Cr2O7の質量の割合を、K2Cr2O7の添加率とした場合、下記式(II)で表されるYは、式(III)を満たし、
前記ガラスの厚さ10mmで測定した場合の、下記式(IV)で表される380~500nmの積算透過度が20以下である、濃緑色ガラスの製造方法。
- CIE表示(厚み10mm換算)で、明度Y=2~30%、主波長λd=550~570nm、刺激純度Pe=90~98%である、請求項1に記載の濃緑色系ガラスの製造方法。
- 請求項1又は2に記載の製造方法で得られる濃緑色系ガラスを成形する工程を含む、濃緑色系ガラス容器の製造方法。
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