本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
先ず、最小の基準電圧に対して整数倍以外の基準電圧を発生する本実施形態に係る基準電圧発生回路を十分に理解することができるように、最小の基準電圧を単位として整数倍の基準電圧を発生する基準電圧発生回路について説明する。
図1Aは、最小の基準電圧を発生する基準電圧発生回路を示す図である。図1Bは、最小の基準電圧に対して2倍の基準電圧を発生する基準電圧発生回路を示す図である。図1Cは、最小の基準電圧に対して3倍の基準電圧を発生する基準電圧発生回路を示す図である。図1Dは、最小の基準電圧に対して4倍の基準電圧を発生する基準電圧発生回路を示す図である。図2は、図1A~図1Dの基準電圧と温度との関係を示す特性図である。
図1Aに示す基準電圧発生回路100は、温度補償された基準電圧Vref1(最小の基準電圧)を発生する回路であって、NPNトランジスタ110(第1トランジスタ)、NPNトランジスタ120(第2トランジスタ)、抵抗130、140、170(第1抵抗)、抵抗150(第3抵抗)、抵抗160(第4抵抗)、演算増幅器180、NMOSFET190(第4トランジスタ)を含んで構成されている。
NPNトランジスタ110は、ベース及びコレクタが短絡され(ダイオード接続され)、順方向にバイアスされている。NPNトランジスタ120は、ベース及びコレクタが短絡され、NPNトランジスタ110と同一の電流が流れるように順方向にバイアスされている。NPNトランジスタ120は、NPNトランジスタ110のサイズよりも大きいサイズを有し、例えば、NPNトランジスタ110のサイズに対して4倍のサイズを有している。つまり、NPNトランジスタ120は、NPNトランジスタ110の電流密度よりも小さい電流密度で順方向にバイアスされることとなる。抵抗130は、NPNトランジスタ110のコレクタに接続されている。抵抗140は、抵抗130の抵抗値と同一の抵抗値を有し、NPNトランジスタ120のコレクタに接続されている。抵抗150は、NPNトランジスタ110のベース・エミッタ電圧Vbe1とNPNトランジスタ120のベース・エミッタ電圧Vbe2との差電圧ΔVbe(=Vbe1-Vbe2)が両端の電圧となるように、NPNトランジスタ110のエミッタとNPNトランジスタ120のエミッタとの間に接続されている。抵抗160は、演算増幅器180の入力電圧を設定するための抵抗として、NPNトランジスタ110のエミッタと接地との間に接続されている。演算増幅器180は、抵抗130,140を流れる電流が等しくなるように動作する。そのために、演算増幅器180の非反転入力端子(+)はNPNトランジスタ110のコレクタに接続され、演算増幅器180の反転入力端子(-)はNPNトランジスタ120のコレクタに接続されている。NMOSFET190は、ソースフォロワ回路であって、ゲートは演算増幅器180の出力と接続され、ドレインは電源Vccと接続され、ソースは抵抗170を介して抵抗130,140とそれぞれ直列に接続されている。つまり、演算増幅器180は、抵抗130,140を流れる電流が等しくなるように、抵抗130,140と帰還ループを形成している。そして、抵抗130,140を流れる電流が等しくなるとともに、ベース・エミッタ電圧Vbeの負の温度係数と差電圧ΔVbeの正の温度係数とが打ち消しあうことによって、NMOSFET190のソースには、演算増幅器180の出力に応じて温度補償された基準電圧Vref1(例えば1.246V)が発生することとなる。
図1Bに示す基準電圧発生回路200は、温度補償された基準電圧Vref2(=2Vref1)を発生する回路であって、基準電圧発生回路100に対して、NPNトランジスタ210及び抵抗220を更に含んで構成されている。
NPNトランジスタ210は、ベース及びコレクタが短絡され、順方向にバイアスされている。NPNトランジスタ210及び抵抗220は、NMOSFET190のソースと抵抗170との間に直列に接続されている。NPNトランジスタ210の順方向電圧と抵抗220の両端の電圧との和電圧が基準電圧Vref1と等しくなるように、抵抗220の抵抗値は設定されている。そして、NMOSFET190のソースには、演算増幅器180の出力に応じて温度補償された基準電圧Vref2(例えば2.492V)が発生することとなる。
図1Cに示す基準電圧発生回路300は、温度補償された基準電圧Vref3(=3Vref1)を発生する回路であって、基準電圧発生回路200に対して、NPNトランジスタ310及び抵抗320を更に含んで構成されている。
NPNトランジスタ310は、ベース及びコレクタが短絡され、順方向にバイアスされている。NPNトランジスタ310及び抵抗320は、NMOSFET190のソースと抵抗170との間においてNPNトランジスタ210及び抵抗220と直列に接続されている。NPNトランジスタ310の順方向電圧と抵抗320の両端の電圧との和電圧が基準電圧Vref1と等しくなるように、抵抗320の抵抗値は抵抗220の抵抗値と等しく設定されている。そして、NMOSFET190のソースには、演算増幅器180の出力に応じて温度補償された基準電圧Vref3(例えば3.738V)が発生することとなる。
図1Dに示す基準電圧発生回路400は、温度補償された基準電圧Vref4(=4Vref1)を発生する回路であって、基準電圧発生回路300に対して、NPNトランジスタ410及び抵抗420を更に含んで構成されている。
NPNトランジスタ410は、ベース及びコレクタが短絡され、順方向にバイアスされている。NPNトランジスタ410及び抵抗420は、NMOSFET190のソースと抵抗170との間においてNPNトランジスタ210,310及び抵抗220,320と直列に接続されている。NPNトランジスタ410の順方向電圧と抵抗420の両端の電圧との和電圧が基準電圧Vref1と等しくなるように、抵抗420の抵抗値は抵抗220,320の抵抗値と等しく設定されている。そして、NMOSFET190のソースには、演算増幅器180の出力に応じて温度補償された基準電圧Vref4(例えば4.984V)が発生することとなる。
このように、NMOSFET190のソースと抵抗170との間に直列に接続するトランジスタ(210,310,410・・・)及び抵抗(220,320,420・・・)の数を調整することによって、基準電圧Vref1の整数倍(n倍)となる基準電圧Vrefnを発生することができる。
演算増幅器180は、抵抗130,140を流れる電流が等しくなることを保証するために設けられている。なお、演算増幅器180の内部構成は、上述の本出願人の特開2002-202824号と同様の構成としてよい。例えば図1Aを参照しながら、抵抗130,140を流れる電流(NPNトランジスタ110,120を流れる電流)I1,I2を考慮しつつ基準電圧Vref1について説明する。
先ず、基準電圧Vref1は、以下の式(1)のように示すことができる。
R:抵抗150の抵抗値
b’R:抵抗170の抵抗値
bR:抵抗130,140の抵抗値
cR:抵抗160の抵抗値
演算増幅器180の非反転入力端子(+)及び反転入力端子(-)はイマジナリショートであるため、I1bR=I2bRからI1=12となり、I1R=I2R=Vbe1-Vbe2となることが分かる。よって、基準電圧Vref1は、以下の式(2)のように変形することができる。
電流I
1,I
2は、それぞれ以下の式(3)(4)のように示すことができる。
但し、式(3)(4)における各値は、以下の通りである。
Is:NPNトランジスタ110,120の飽和電流
k:ボルツマン定数
q:電子の電荷
T:絶対温度
ベース・エミッタ間電圧Vref1,Vref2は、式(3)(4)から式(5)(6)のように示すことができる。
ベース・エミッタ間電圧V
ref1,V
ref2の差電圧V
be1-V
be2は、式(5)(6)から以下の式(7)のように示すことができる。
よって、基準電圧V
ref1は、式(7)から以下の式(8)のように変形することができる。
ここで、式(8)の右辺において、V
be1の項は温度に反比例し、V
be1以外の項は温度に比例する。
尚、基準電圧Vref2~Vref4についても、同様に求めることができる。
以上より、基準電圧Vrefnは、以下の式(9)のように示すことができる。
aR:抵抗220,320,420の各抵抗値
Vbe:NPNトランジスタ110,210,310,410のベース・エミッタ間電圧
基準電圧Vrefnが温度特性を持たないためには、式(9)を温度Tで偏微分して以下の式(10)が成り立たなければならない
更に、式(10)を変形して以下の式(11)のように示すことができる。
式(11)を満足するように、a=8.5、b’=3、b=3.5、c=3.5に設定すると、Vref1~Vref4は、まとめて以下の式(12)のように示すことができる。
従って、図2に示すように、-50℃から125℃まで温度の変動の影響を受けない温度補償された基準電圧V
refnを発生することができる。尚、図1A~図1Dにおいて、電源電圧V
cc=10V、R=7.5kΩとしている。しかし、5V系の電源となる基準電圧には図1Dの基準電圧発生回路によって対応できるが、1.8V系や3.3V系の電源となる基準電圧には対応することができない。
そこで、本出願人は、1.8V系や3.3V系の電源として用いることが可能な基準電圧を発生する基準電圧発生回路を提供することとし、その詳細を以下に説明する。
図3Aは、最小の基準電圧に対して1.5倍の基準電圧を発生する本実施形態に係る基準電圧発生回路を示す図である。図3Bは、最小の基準電圧に対して2.5倍の基準電圧を発生する本実施形態に係る基準電圧発生回路を示す図である。図3Cは、最小の基準電圧に対して3.5倍の基準電圧を発生する本実施形態に係る基準電圧発生回路を示す図である。図4は、図3A~図3Cの基準電圧と温度との関係を示す特性図である。
図3Aに示す基準電圧発生回路500は、温度補償された基準電圧Vref1.5(=1.5Vref1)を発生する回路であって、演算増幅器180の第1及び第2入力端子180a、180bと出力端子180cとの間で第1帰還ループ90aに加えて、第2帰還ループ90bを形成する配線90を備える。第1帰還ループ90aは、基準電圧を出力するNMOSFET190の下流側の分岐点Zから演算増幅器180へと帰還される第1の経路を指す。第2帰還ループ90bは、基準電圧を出力するNMOSFET190の下流側の分岐点Zから演算増幅器180へと帰還される第2の経路を指す。すなわち、第1帰還ループ90aと第2帰還ループ90bとでは、分岐点Zから下流側の経路が異なる。第1帰還ループ90aは、NPNトランジスタ110と第1入力端子180aとの接続点X1よりも上流側の分岐点X2で並列に分岐し第1及び第2入力端子180a、180bに接続される。第2帰還ループ90bは、NPNトランジスタ120と第2入力端子180bとの接続点Y1よりも上流側の分岐点Y2で並列に分岐し第1及び第2入力端子180a、180bに接続される。第1帰還ループ90aには、抵抗130、140、170、520(第1抵抗)が設けられる。第2帰還ループ90bには、抵抗130’、140’、170’、520’(第2抵抗)と、NPNトランジスタ510(第2帰還ループ90bの第3トランジスタ)とが設けられる。
抵抗130、140、170は、上述の基準電圧発生回路100と同様の構成である。抵抗130’は、NPNトランジスタ110のコレクタに抵抗130とは並列に接続されている。抵抗140’は、抵抗130’の抵抗値と同一の抵抗値を有し、NPNトランジスタ120のコレクタに抵抗140とは並列に接続されている。抵抗520は、基準電圧Vref1.5に応じた抵抗値を有し、NMOSFET190のソースと抵抗170との間に接続されている。つまり、演算増幅器180は、抵抗130,140を流れる電流が等しくなるように、NMOSFET190及び抵抗520,170を介して抵抗130,140と第1帰還ループ90aを形成している。なお、抵抗130、140は接続点X1と分岐点X2との間に、抵抗170は分岐点X2の上流側に設けられる。
NPNトランジスタ510は、ベース及びコレクタが短絡され、順方向にバイアスされている。抵抗520’,170’は、抵抗520,170の抵抗値と同一の抵抗値を有している。NPNトランジスタ510及び抵抗520’170’は、NMOSFET190のソースと抵抗130’,140’との間に直列に接続されている。つまり、演算増幅器180は、抵抗130’,140’を流れる電流が等しくなるように、NMOSFET190、NPNトランジスタ510、抵抗520’,170’を介して抵抗130’,140’と第2帰還ループ90bを形成している。そして、抵抗130,140及び抵抗130’,140’を流れる電流がともに等しくなるとともに、ベース・エミッタ電圧Vbeの負の温度係数と差電圧ΔVbeの正の温度係数とが打ち消しあうことによって、NMOSFET190のソースには、演算増幅器180の出力に応じて温度補償された基準電圧Vref1.5(例えば1.869V)が発生することとなる。なお、抵抗130’、140’は接続点Y1と分岐点Y2との間に、抵抗170’は分岐点Y2の上流側に設けられる。
ここで、第1抵抗として、抵抗130、140、170、520を設けているが、これらは1つの抵抗として形成されてもよい。また、第2抵抗として、抵抗130’、140’、170’、520’を設けているが、これらは1つの抵抗として形成されてもよい。以下においても同様である。
図3Bに示す基準電圧発生回路600は、温度補償された基準電圧Vref2.5(=2.5Vref1)を発生する回路であって、基準電圧発生回路100に対して、NPNトランジスタ610(第1帰還ループ90aの第3トランジスタ)、NPNトランジスタ620,630(第2帰還ループ90bの第3トランジスタ)、抵抗640(第1抵抗)、抵抗130’、140’、170’、640’(第2抵抗)を更に含んで構成されている。
NPNトランジスタ610は、ベース及びコレクタが短絡され、順方向にバイアスされている。抵抗640は、基準電圧Vref2.5に応じた抵抗値を有している。NPNトランジスタ610及び抵抗640は、NMOSFET190のソースと抵抗170との間に直列に接続されている。つまり、演算増幅器180は、抵抗130,140を流れる電流が等しくなるように、NMOSFET190、NPNトランジスタ610、抵抗640,170を介して抵抗130,140と第1帰還ループ90aを形成している。一方、NPNトランジスタ620,630は、ベース及びコレクタが短絡され、順方向にバイアスされている。抵抗640’は、抵抗640の抵抗値と同一の抵抗値を有している。NPNトランジスタ620,630及び抵抗640’170’は、NMOSFET190のソースと抵抗130’,140’との間に直列に接続されている。つまり、演算増幅器180は、抵抗130’,140’を流れる電流が等しくなるように、NMOSFET190、NPNトランジスタ620,630、抵抗640’,170’を介して抵抗130’,140’と第2帰還ループ90bを形成している。そして、抵抗130,140及び抵抗130’,140’を流れる電流がともに等しくなるとともに、ベース・エミッタ電圧Vbeの負の温度係数と差電圧ΔVbeの正の温度係数とが打ち消しあうことによって、NMOSFET190のソースには、演算増幅器180の出力に応じて温度補償された基準電圧Vref2.5(例えば3.115V)が発生することとなる。
図3Cに示す基準電圧発生回路700は、温度補償された基準電圧Vref3.5(=3.5Vref1)を発生する回路であって、基準電圧発生回路100に対して、NPNトランジスタ710,720(第1帰還ループ90aの第3トランジスタ)、NPNトランジスタ730,740,750(第2帰還ループ90bの第3トランジスタ)、抵抗760(第1抵抗)、抵抗130’、140’、170’、760’(第2抵抗)を更に含んで構成されている。
NPNトランジスタ710,720は、ベース及びコレクタが短絡され、順方向にバイアスされている。抵抗760は、基準電圧Vref3.5に応じた抵抗値を有している。NPNトランジスタ710,720及び抵抗760は、NMOSFET190のソースと抵抗170との間に直列に接続されている。つまり、演算増幅器180は、抵抗130,140を流れる電流が等しくなるように、NMOSFET190、NPNトランジスタ710,720及び抵抗760,170を介して抵抗130,140と第1帰還ループ90aを形成している。一方、PNPトランジスタ730,740,750は、ベース及びコレクタが短絡され、順方向にバイアスされている。抵抗760’は、抵抗760の抵抗値と同一の抵抗値を有している。PNPトランジスタ730,740,750及び抵抗760’170’は、NMOSFET190のソースと抵抗130’,140’との間に直列に接続されている。つまり、演算増幅器180は、抵抗130’,140’を流れる電流が等しくなるように、NMOSFET190、NPNトランジスタ730,740,750及び抵抗760’,170’を介して抵抗130’,140’と第2帰還ループ90bを形成している。そして、抵抗130,140及び抵抗130’,140’を流れる電流がともに等しくなるとともに、ベース・エミッタ電圧Vbeの負の温度係数と差電圧ΔVbeの正の温度係数とが打ち消しあうことによって、NMOSFET190のソースには、演算増幅器180の出力に応じて温度補償された基準電圧Vref3.5(例えば4.361V)が発生することとなる。
このように、第1帰還ループ90aにm-1(m≧1)個の順方向電圧を発生する第3トランジスタ(図3BのNPNトランジスタ610、図3CのNPNトランジスタ710,720)と基準電圧に応じた抵抗値を有する1個の抵抗(図3Aの抵抗520、図3Bの抵抗640、図3Cの抵抗760)とを直列に接続し、第2帰還ループ90bにm個の順方向電圧を発生する第3トランジスタ(図3AのNPNトランジスタ510、図3BのNPNトランジスタ620,630、図3CのNPNトランジスタ730,740,750)と基準電圧に応じた抵抗値を有する1個の抵抗(図3Aの抵抗520’、図3Bの抵抗640’、図3Cの抵抗760’)とを直列に接続し、第1帰還ループ90aにおけるm-1個のNPNトランジスタを流れる電流の1/2の電流と、第2帰還ループ90bにおけるm個のNPNトランジスタを流れる電流の1/2の電流との和電流を、NPNトランジスタ110に供給している。これによって、最小の基準電圧Vref1に対して整数倍以外(1.5倍、2,5倍、3.5倍等)の基準電圧VrefAmを発生することができる。尚、Am=[m+(m+1)]/2であって、例えば、基準電圧Vref1.5の場合はm=1、基準電圧Vref2.5の場合はm=2、基準電圧Vref3.5の場合はm=3となる。この際、第3トランジスタの数は、奇数となる。当然ながら、第1帰還ループ90aにm個の順方向電圧を発生する第3トランジスタを設け、第2帰還ループ90bにm-1(m≧1)個の順方向電圧を発生する第3トランジスタを設けてもよい。
なお、図3A~図3Cでは、第1帰還ループ90aと第2帰還ループ90bとにおける第3トランジスタの差が1以下である。このため、第1帰還ループ90aと第2帰還ループ90bとの安定性をより高めることができる。
例えば、図3Bを参照しつつ、基準電圧Vref2.5が温度特性を持たないことについて説明する。
先ず、抵抗150の抵抗値=R/2、抵抗160の抵抗値=3.5R/2、抵抗130,130’,140,140’の各抵抗値=3.5R、抵抗170,170’の各抵抗値=3R、抵抗640,640’の各抵抗値=8.5×1.5Rとする。又、NPNトランジスタ610を流れる電流2I2は、図1BのNPNトランジスタ210を流れる電流に相当し、NPNトランジスタ620,630を流れる電流2I2’は、図1CのNPNトランジスタ210,310を流れる電流に相当することとする。
バンドギャップを構成するNPNトランジスタ110,120の定電流回路を流れる電流I2+I2’は、以下の式(5)のように示すことができる。
又、基準電圧V
ref2.5は、電流がNPNトランジスタ610,110を流れる左側の電流路と、電流がNPNトランジスタ620,630,110を流れる右側の電流路と、において等しいことから、以下の式(6)のように示すことができる。
式(14)変形して以下の式(15)のように示すことができる。
式(13)(15)から電流I
2,I
2’は、それぞれ以下の式(16)(17)のように示すことができる。
式(16)(17)から基準電圧V
ref2.5を以下の式(18)のように示すことができる。
式(18)を温度Tで偏微分すると以下の式(19)のように示すことができ、基準電圧V
ref2.5は温度特性を持たないことが分かる。
基準電圧V
ref1.5及び基準電圧V
ref3.5も、基準電圧V
ref2.5と同様にして、温度特性を持たないことを導くことができる。
そこで、基準電圧Vref1.5、Vref2.5、Vref3.5を基準電圧VrefAmとしてまとめると、式(14)は以下の式(20)のように示すことができる。
式(20)を変形して以下の式(21)のように示すことができる。
式(13)(21)から電流I
2,I
2’は、それぞれ以下の式(22)(23)のように示すことができる。
式(22)(23)から基準電圧V
refAmを以下の式(24)のように示すことができる。
式(24)を温度Tで偏微分すると以下の式(25)のように示すことができ、基準電圧V
refAmは温度特性を持たないことが分かる。
従って、図4に示すように、-50℃から125℃まで温度の変動の影響を受けない温度補償された基準電圧V
refAmを発生することができる。尚、図3A~図3Cにおいて、電源電圧Vcc=10V、R=7.5kΩとしている。つまり、基準電圧V
refAm(破線)は基準電圧V
refn(実線)の間の電圧であって、本実施形態に係る基準電圧発生回路は、1.8V系や3.3V系の電源となる基準電圧を発生することができる。
なお、ここでは、第3トランジスタの数が奇数となる場合について説明したが、第3トランジスタの数が偶数の場合には、図2に示すような基準電圧を発生することができる。
以上説明したように、本実施形態に係る基準電圧発生回路(500,600,700)は、第1帰還ループ90aの分岐点X2よりも上流側、または、前記第2帰還ループ90bの分岐点Y2よりも上流側の少なくともいずれか一方に、順方向にバイアスされるN(N≧1)個の第3トランジスタを設ける。すなわち、順方向にバイアスされるNPNトランジスタ110と、NPNトランジスタ110の電流密度よりも小さい電流密度で順方向にバイアスされるNPNトランジスタ120と、NPNトランジスタ110,120のコレクタにそれぞれ接続される抵抗130,140と、NPNトランジスタ110,120のコレクタに抵抗130,140とは並列にそれぞれ接続される抵抗130’,140’と、NPNトランジスタ110,120の順方向電圧の差電圧が両端電圧となるように、NPNトランジスタ120のエミッタに接続される抵抗150と、抵抗130,140を流れる電流が等しくなるように、抵抗130,140と第1帰還ループ90aを形成するとともに、抵抗130’,140’を流れる電流が等しくなるように、抵抗130’,140’と第2帰還ループ90bを形成する演算増幅器180と、演算増幅器180の出力に基づいて、第1帰還ループ90aの中で抵抗130,140に直列に接続される順方向にバイアスされるm-1(m≧1)個のNPNトランジスタ(610(図3B)、710,720(図3C))と、演算増幅器180の出力に基づいて、第2帰還ループ90bの中で抵抗130’,140’に直列に接続される順方向にバイアスされるm個のNPNトランジスタ(510(図3A)、620,630(図3B)、730,740,750(図3C))と、演算増幅器180の出力に基づいて温度補償された基準電圧VrefAmを出力するNMOSFET190と、を含んで構成されている。これによって、最小の基準電圧Vref1に対して整数倍以外の基準電圧Vref1,5、Vref2.5、Vref3.5等の基準電圧VrefAmを発生することが可能となる。
又、本実施形態に係る基準電圧発生回路(500,600,700)は、NPNトランジスタ110のエミッタと、抵抗150のNPNトランジスタ120のエミッタとは反対側の一端と、の接続点と接地との間に接続される抵抗160を備えている。これによって、演算増幅器180の非反転入力端子及び反転入力端子に入力される電圧のレベルを容易に設定することが可能となる。
又、本実施形態に係る基準電圧発生回路(500,600,700)は、基準電圧VrefAmの値に応じた抵抗値を有し、第1帰還ループ90aの中に接続される抵抗(520(図3A)、640(図3B)、760(図3C))と、基準電圧VrefAmの値に応じた抵抗値を有し、第2帰還ループ90bの中に接続される抵抗(520’(図3A)、640’(図3B)、760’(図3C))と、を備えている。ここで、抵抗520,520’(図3A)の抵抗値、抵抗640,640’(図3B)の抵抗値、抵抗760,760’(図3C)の抵抗値は、それぞれ、基準電圧VrefAmの値に応じて同一の値に設定されている。これによって、温度特性を持たない基準電圧VrefAmを発生することが可能となる。
尚、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
例えば、NPNトランジスタ(510(図3A)、610~630(図3B)、710~750(図3C))に相当するNPNトランジスタを、第1帰還ループ90aと第2帰還ループ90bの何れか一方に全て設ける構成としてもよい。以下、その具体例を図5及び図6を用いて説明する。
図5は、本実施形態に係る基準電圧発生回路の他の例を示す回路図である。尚、図5において、図3A~図3Cに示す回路と同一の素子については、同一の番号を記すとともにその説明を省略する。
図5に示す基準電圧発生回路800は、温度補償された基準電圧VrefAmを発生する回路であって、図3Aの基準電圧発生回路500のNPNトランジスタ510及び抵抗520,520’の代わりに、(2m-1)個のNPNトランジスタ810と抵抗820,820’を含んで構成されている。ここでは、図3A~図3Cの第1帰還ループ90aのm-1(m≧1)個の第3トランジスタと、第2帰還ループ90bのm個の第3トランジスタとを足し合わせて((m-1)+m=2m-1)、第2帰還ループ90bに配置している。
抵抗820は、基準電圧VrefAmに応じた抵抗値8.5(Am-1)Rを有し、NMOSFET190のソースと抵抗170との間に接続されている。つまり、演算増幅器180は、抵抗130,140を流れる電流が等しくなるように、NMOSFET190及び抵抗820,170を介して抵抗130,140と第1帰還ループ90aを形成している。(2m-1)個のNPNトランジスタ810は、それぞれのベース及びコレクタが短絡されるとともに直列に接続されている。抵抗820’は、抵抗820と同様に、基準電圧VrefAmに応じた抵抗値8.5(Am-1)Rを有している。(2m-1)個のNPNトランジスタ810からなる直列体と抵抗820’とは、MOSFET190のソースと抵抗170‘との間に接続されている。つまり、演算増幅器180は、抵抗130’,140’を流れる電流が等しくなるように、NMOSFET190、(2m-1)個のNPNトランジスタ810、抵抗820’,170’を介して抵抗130’,140’と第2帰還ループ90bを形成している。そして、抵抗130,140及び抵抗130’,140’を流れる電流がともに等しくなるとともに、ベース・エミッタ電圧Vbeの負の温度係数と差電圧ΔVbeの正の温度係数とが打ち消しあうことによって、NMOSFET190のソースには、演算増幅器180の出力に応じて温度補償された基準電圧VrefAmが発生することとなる。
図5から、基準電圧VrefAmは、以下の式(26)のように示すことができる。
式(26)を変形して以下の式(27)のように示すことができる。
式(13)(27)から電流I
2,I
2’は、それぞれ以下の式(28)(29)のように示すことができる。
式(28)(29)から基準電圧V
refAmを以下の式(30)のように示すことができる。
ここで、式(30)は式(24)と同じである。よって、図5の基準電圧V
refAmは温度補償された電圧であることが分かる。
次に、図6は、本実施形態に係る基準電圧発生回路のもう1つの他の例を示す回路図である。尚、図6において、図5に示す回路と同一の素子については、同一の番号を記すとともにその説明を省略する。
図6に示す基準電圧発生回路900は、温度補償された基準電圧VrefAmを発生する回路であって、図5の基準電圧発生回路800に示すような(2m-1)個のNPNトランジスタ810を第2帰還ループ90bに設ける代わりに、(2m-1)個のNPNトランジスタ910を第1帰還ループ90aに設ける構成となっている。
(2m-1)個のNPNトランジスタ910は、それぞれのベース及びコレクタが短絡され、NMOSFET190のソースと抵抗820との間に直列に接続されている。つまり、演算増幅器180は、抵抗130,140を流れる電流が等しくなるように、NMOSFET190、(2m-1)個のNPNトランジスタ910、抵抗820,170を介して抵抗130,140と第1帰還ループ90aを形成している。抵抗820’の一端は、MOSFET190のソースと接続されている。つまり、演算増幅器180は、抵抗130’,140’を流れる電流が等しくなるように、NMOSFET190及び抵抗820’,170’を介して抵抗130’,140’と第2帰還ループ90bを形成している。そして、抵抗130,140及び抵抗130’,140’を流れる電流がともに等しくなるとともに、ベース・エミッタ電圧Vbeの負の温度係数と差電圧ΔVbeの正の温度係数とが打ち消しあうことによって、NMOSFET190のソースには、演算増幅器180の出力に応じて温度補償された基準電圧VrefAmが発生することとなる。
図6から、基準電圧VrefAmは、以下の式(31)のように示すことができる。
式(31)を変形して以下の式(32)のように示すことができる。
式(13)(32)から電流I
2,I
2’は、それぞれ以下の式(33)(34)のように示すことができる。
式(33)(34)から基準電圧V
refAmを以下の式(35)のように示すことができる。
ここで、式(35)は式(24)と同じである。よって、図6の基準電圧V
refAmは温度補償された電圧であることが分かる。
このように、第1帰還ループ90a又は第2帰還ループ90bの何れか一方のみに(2m-1)個のNPNトランジスタ810(又は910)の直列体を設けることによって、例えば、基準電圧Vref1.5,Vref2.5,Vref3.5等を発生することも可能である。
なお、本実施形態では、演算増幅器180の第1及び第2入力端子180a、180bと出力端子180cとの間で第1帰還ループ90aに加えて、第2帰還ループ90bを形成する配線90を備える構成とした。しかし、演算増幅器180の第1及び第2入力端子180a、180bと出力端子180cとの間で第1及び第2帰還ループ90a、90bに加えて、更に帰還ループを含む構成としてもよい。この場合、帰還ループの合計が偶数個の場合に取る基準電圧VrefAmは、第1及び第2帰還ループ90a、90bを設けた場合(図3A~図3C、図5、図6)と同様となり、帰還ループの合計が奇数個の場合に取る基準電圧VrefAmは、第1帰還ループ90aを設けた場合(図1A~図1D)と同様となる。