JP7283026B1 - 焼結体用材料及び焼結体 - Google Patents

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Abstract

REaObFc(但し、REが希土類元素であり、b/aが0.9以下であり、c/aが1.1以上である)で表される希土類元素のオキシフッ化物を含有し、材料全体における、希土類元素(RE)のモル数に対するフッ素元素(F)のモル数の比(F/REモル比)が1.3以上2.8以下であり、アルミニウム(Al)の含有量が50質量ppm以下である、焼結体用材料。ケイ素(Si)の含有量が500質量ppm以下であることが好ましい。

Description

本発明は、希土類元素のオキシフッ化物を含む焼結体用材料及び焼結体に関する。
23などの希土類酸化物、YF3などの希土類元素のフッ化物(以下、「希土類フッ化物」と記載する場合がある。)及びY547などの希土類元素のオキシフッ化物(以下「希土類オキシフッ化物」と記載する場合がある。)は、耐食性を有するセラミックスであることから、半導体製造プロセスにおける保護材料としてその皮膜や焼結体が用いられている。
とりわけ希土類オキシフッ化物を含む化合物は、化学的なプラズマ耐性が高いことや半導体製造装置のシーズニング時間を短縮できることが知られている。
特許文献1では、希土類元素のオキシフッ化物を用いることで、この溶射顆粒を用いて作製した溶射膜がF系プラズマ及びCl系プラズマの双方に対して優れた耐食性を示し、プラズマエッチング時にエッチング作用によって削られて飛散するパーティクルが低減されると記載されている。
一方、特許文献2のように、溶射膜に比してより緻密な焼結体を使用することで、ハロゲン系腐食ガスを遮断する機能を向上させることも検討されている。
更に特許文献3では、希土類元素のオキシフッ化物(Ln-O-F)を含む顆粒を用いた焼結用材料として、希土類元素のオキシフッ化物を含む顆粒を含む焼結用材料であって、タップ法見掛け密度が特定範囲であり、特定の粒径を有する焼結用材料は、それを用いて製造した焼結体が塩素系プラズマへの耐食性が高く、緻密であると記載されている。
US2015/096462A1 US2017/0305796 A1 US2018/0016193 A1
しかしながら、従来の希土類オキシフッ化物の焼結体用材料を用いて作製した希土類オキシフッ化物の焼結体では、ドライエッチングで用いられる種々のプラズマや、ウェットエッチングに用いられる薬液に対する耐食性に、改善の余地があった。
したがって、本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る焼結体用材料及び焼結体を提供することにある。
本発明者は希土類オキシフッ化物を用いた焼結体用材料と焼結体についてドライエッチングで用いられるプラズマやウェットエッチングに用いられる薬液に対する耐食性を効果的に高める構成について鋭意検討した。その結果、F/REモル比が所定範囲であり、且つ所定の組成の希土類元素のオキシフッ化物を含む焼結体用材料であってアルミニウム(Al)の含有量が50ppm以下である材料を用いることで、得られる焼結体が緻密で硬度が高く、且つ優れた薬品耐性とプラズマ耐性を持つことを見出した。
従って、本発明は、以下〔1〕~〔14〕を提供するものである。
〔1〕REaObFc(但し、REが希土類元素であり、b/aが0.9以下であり、c/aが1.1以上である)で表される希土類元素のオキシフッ化物を含有し、材料全体における、希土類元素(RE)のモル数に対するフッ素元素(F)のモル数の比(F/REモル比)が1.3以上2.8以下であり、アルミニウム(Al)の含有量が50質量ppm以下である、焼結体用材料。
〔2〕ケイ素(Si)の含有量が500質量ppm以下である、〔1〕に記載の焼結体用材料。
〔3〕水銀圧入法を用いて測定した細孔径分布において、細孔径0.05μm以上0.5μm以下の範囲と細孔径5μm以上50μm以下の範囲にそれぞれピークを有し、細孔径0.05μm以上0.5μm以下の細孔容積が0.1mL/g以上であり、且つ、細孔径5μm以上50μm以下の細孔容積が0.1mL/g以上である、[1]又は〔2〕に記載の焼結体用材料。
〔4〕XRD分析において、希土類元素のオキシフッ化物以外に含まれる結晶相が、実質的にREF3で表される希土類元素のフッ化物のみから構成される、〔1〕~〔3〕の何れか1項に記載の焼結体用材料。
〔5〕REaObFcが、RE769、RE658、RE547、RE436、RE325及びRE2OF4から選ばれる少なくとも一種である、〔1〕~〔4〕の何れか1項に記載の焼結体用材料。
〔6〕希土類元素のオキシフッ化物の希土類元素REがSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選ばれる一種又は二種以上である、〔1〕~〔5〕の何れか1項に記載の焼結体用材料。
〔7〕強熱減量が10質量%以下である、〔1〕~〔6〕の何れか1項に記載の焼結体用材料。
〔8〕BET比表面積が2m2/g以上10m2/g以下である、〔1〕~〔7〕の何れか1項に記載の焼結体用材料。
〔9〕ハウスナー比(タップ密度/嵩密度)が1.0以上1.3以下である、〔1〕~〔8〕の何れか1項に記載の焼結体用材料。
〔10〕REaObFc(但し、REが希土類元素であり、b/aが0.9以下であり、c/aが1.1以上である)で表される希土類元素のオキシフッ化物を含有し、焼結体全体における、希土類元素(RE)のモル数に対するフッ素元素(F)のモル数の比(F/REモル比)が1.3以上2.8以下であり、アルミニウム(Al)の含有量が50質量ppm以下である、焼結体。
〔11〕ケイ素(Si)の含有量が500質量ppm以下である、〔10〕に記載の焼結体。
〔12〕希土類元素のオキシフッ化物以外に含まれる結晶相が、実質的にREF3で表される希土類元素のフッ化物のみから構成される、〔10〕又は〔11〕に記載の焼結体。
〔13〕ビッカース硬度が3GPa以上である、〔10〕~〔12〕の何れか1項に記載の焼結体。
〔14〕〔1〕~〔9〕の何れか1項に記載の焼結体用材料を焼結する、焼結体の製造方法。
図1は、実施例3の焼結体用材料のXRDチャートである。 図2は、実施例3の焼結体用材料の細孔径分布を示すチャートである。
以下、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明する。
まず焼結体用材料について説明する。
本発明の焼結体用材料はREaObFc(但し、REが希土類元素であり、b/aが0.9以下であり、c/aが1.1以上である、以下、単に「REaObFc」とも記載する。)で表される希土類元素のオキシフッ化物を含有し、材料全体における、希土類元素(RE)のモル数に対するフッ素元素(F)のモル数の比(以下、「F/REモル比」とも記載する)が1.3以上2.8以下であることを特徴の一つとする。
本発明者は、希土類元素のオキシフッ化物を用いた焼結体のドライエッチングに用いられるプラズマやウェットエッチングに用いられる薬液への耐食性を検討していたところ、REaObFcを含有し、且つ、F/REモル比が1.3以上2.8以下である焼結体用材料については、緻密で硬度が高い焼結体を得難いために、プラズマ耐性や薬品耐性が向上しがたいという課題を知見した。
そして、その理由について検討した結果、更に以下のことを知見した。
従来、REaObFc等の希土類元素のオキシフッ化物の作製には、フッ素源として希土類フッ化物、フッ化水素酸(以下、「フッ酸」ともいう。)、フッ化アンモニウムや酸性フッ化アンモニウムなどが用いられている。例えば、希土類元素の酸化物にフッ酸を添加して希土類元素のフッ化物の前駆体とし、それを焼成して、希土類元素のフッ化物(REF3)が得られる。また、希土類元素のフッ化物を焼成したり、希土類元素のフッ化物と希土類元素の酸化物を混合して焼成したりすることで、希土類元素のオキシフッ化物が得られる。
上記の各焼成工程は通常電気炉で高温焼成することが一般的であるが、その際にアルミナやムライト等のAl又はAl及びSiを含有する多孔質匣鉢を用いることが広く行われている。アルミナやムライトなどAl又はAl及びSiを含有する多孔質匣鉢は、安価で耐久性が高いために汎用されている。
本発明者は、アルミナやムライトなどのAl又はAl及びSiを含有している多孔質匣鉢を用いて希土類元素のフッ化物やその前駆体を高温焼成する工程を経て作製された希土類元素のオキシフッ化物は、多くのAl又はAl及びSiを含有していることを発見した。そしてその理由として、希土類元素のフッ化物やその前駆体というフッ素源を高温で熱した際に多くのフッ素ガスが発生し、匣鉢中のAl成分やSi成分と反応して希土類元素のオキシフッ化物中に含有されたのではないかと推測した。
更に本発明者は、イットリア匣鉢、ジルコニア匣鉢やプラチナ皿などのAl、特にAl及びSiを殆ど含有しない材質の匣鉢を用いて、ある低温温度域で焼成を行うことでフッ素ガスの発生を大幅に抑制し、Al、特にAl及びSiの含有率が少ないREaObFc含有焼結体用材料を作製することに成功した。
驚くべきことにAl、特にAl及びSiの含有率が少ないREaObFc含有焼結体用材料は、焼結体とすると緻密で硬度が高くなることが分かった。これは焼結時に、温度が上昇していくとAl成分やSi成分と、F成分とが反応して、粒界間に異相を形成することや揮発成分となることで焼結体に開気孔や閉気孔が出来てしまうことを抑制できたためだと本発明者は考えている。
また焼結体用材料中のAl及びSiの含有量が所定値以下であることは、得られる焼結体の最表面でのAl及びSiを減少させる点でフッ素系腐食ガスやフッ素系薬液に対する耐食性を一層向上させやすい可能性もあると発明者は考えている。
特に従来、REaObFcを含みF/REモル比が1.3以上2.8以下である焼結体用材料は、得られる焼結体において緻密さや硬さが得難い傾向にあった。当該組成の焼結体用材料は、フッ素分を多く含む。このため従来当該組成の焼結体用材料中にAl成分やSi成分が存在することで、焼結時にこれらの異相がフッ素分と反応し、開気孔や閉気孔が生じやすいことが上記の一因であったと考えられる。本発明では、Alの含有量、特にAl及びSiの含有量が少ないことで開気孔や閉気孔の生成を効果的に抑制することができ、REaObFcを含むことによるプラズマや薬液への耐食性を効果的に発揮できる。
一方、希土類オキシフッ化物がREOF(RE111)のみからなり全体のF/REモル比が1.0以上2.8以下である焼結体用材料を用いて焼結体を製造すると、焼結体用材料のAlの含有量、特にAl及びSiの含有量を低減することによる緻密さや硬さの向上効果が十分に得がたい場合がある。この理由としては、以下のように推察される。REOF(RE111)、例えばYOFは、TG-DTAにて570℃付近に可逆的な相転移が観察される。したがって、この相転移の影響がAl成分やSi成分を含有することよりも支配的に微小亀裂や気孔の原因になっているためと考えられる。
これに対し、本発明のREaObFcを含み全体のF/REモル比が1.3以上2.8以下である焼結体用材料では、例えばY547を含む焼結体用材料は、TG-DTAにて可逆的な相転移は観察されず、Alの含有量、特にAl及びSiの含有量が少ないことによる硬さ及び緻密さの向上効果が十分に発揮される。これらを見出した点において、Y547などに代表される、REaObFcを含み全体のF/REモル比が1.3以上2.8以下である焼結体用材料にとって特に技術的意義があると考えている。
本発明の上記の効果を一層優れたものとするために、REaObFcにおけるb/aは0.5以上0.9以下であることが好ましく、一方でc/aが1.1以上2.0以下であることが好ましい。b/aが0.9以下であり、c/aが1.1以上であることで、REOF(RE111)組成を含まない組成であるため、可逆的な相転移が起こらない。これによりAlの含有量、特にAl及びSiの含有量が低いことによる硬さや緻密さの向上効果を大きなものとすることができる。また、b/aが0.5以上であり、c/aが2.0以下であると、入手容易性の点で好ましい。
これらの点から、REaObFcにおけるb/aは0.6以上0.8以下であることがさらに好ましく、c/aが1.3以上1.7以下であることがさらに好ましい。
なお、通常、3a=2b+cである。
とりわけ、REaObFcは、RE769、RE658、RE547、RE436、RE325及びRE2OF4から選ばれる少なくとも一種であることが、Al含有量やSi含有量が低いことによる硬さや緻密さの向上効果を大きなものとすることができる点で好ましく、RE547であることが最も好ましい。
焼結体用材料中のF/REモル比は、1.3以上であることで、Al含有量やSi含有量が低いことによる硬さや緻密さの向上効果を大きなものとすることができる。また、焼結体用材料中のF/REモル比が2.8以下であることで、単一組成で劈開性を持つREF3の含有量を制御でき、焼結体を作製し易くなる利点がある。この観点から、焼結体用材料中のF/REモル比は1.4以上2.6以下がより好ましく、1.5以上2.4以下が特に好ましい。F/REモル比は後述の実施例に記載の方法にて測定できる。
焼結体用材料におけるAl含有量は、50質量ppm以下であることで、得られる焼結体が硬く、緻密なものとなり、プラズマや薬液による処理に対する耐食性が得られる。Al含有量は1質量ppm以上であると、製造における生産性で有利となり、ごく微量のAlが焼結助剤として働く利点があるため好ましい。これらの点から、焼結体用材料におけるAl含有量は、1質量ppm以上35質量ppm以下であることがより好ましく、1質量ppm以上25質量ppm以下であることが更に好ましい。
更に、焼結体用材料におけるSi含有量は、500質量ppm以下であることで、得られる焼結体が更に一層硬く、緻密なものとなり、プラズマや薬液による処理に対する耐食性が得られるため好ましい。Si含有量は1質量ppm以上であると、製造における生産性で有利となり、ごく微量のSiが焼結助剤として働く利点があるため好ましい。
これらの点から、焼結体用材料におけるSi含有量は、1質量ppm以上350質量ppm以下であることがより好ましく、1質量ppm以上200質量ppm以下であることが更に好ましい。
Al含量及びSi含量は、後述する実施例に記載の方法にて測定できる。
希土類元素のオキシフッ化物の希土類元素REが天然に存在しない放射性元素であるPmを除いた、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選ばれる一種又は二種以上であることが焼結体用材料の入手容易性や化学的安定性の点で好ましく、Y、La、Gd、Er、Yb、Luから選ばれる一種又は二種以上であることがより好ましく、Y、Gd、Ybであることが更に一層好ましく、Yであることが最も好ましい。
本発明では、焼結体用材料中にREaObFcに加えてREF3で表される希土類フッ化物が混在する場合、REaObFcのみである場合に比して、焼結体用材料から得られる焼結体の硬度がさらに向上するため好ましい。これは希土類フッ化物が存在することで結晶粒の成長が適度に抑制され、物理的負荷に強い適切なグレインサイズを持つ焼結体となるためであると本発明者は考えている。
焼結体用材料が希土類元素のフッ化物を含む場合、その希土類元素REとしては、オキシフッ化物の希土類元素REとして上記で挙げたものと同様のものをあげることができ、天然に存在しない放射性元素であるPmを除いた、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選ばれる一種又は二種以上であることが焼結体用材料の入手容易性や化学的安定性の点で好ましく、Y、La、Gd、Er、Yb、Luから選ばれる一種又は二種以上であることがより好ましく、Y、Gd、Ybであることが更に一層好ましく、Yであることが最も好ましい。
本発明の焼結体用材料がREaObFc及びREF3で表される希土類元素のフッ化物を含有する場合、REaObFc及びREF3の希土類元素REは同一であっても異なっていてもよい。
本発明の焼結体用材料は、XRD分析において、希土類元素のオキシフッ化物以外に含まれる結晶相が、実質的にREFで表される希土類元素のフッ化物のみから構成されることが好ましい。「希土類元素のオキシフッ化物以外に含まれる結晶相が、実質的に、REFで表される希土類元素のフッ化物のみから構成される」とは、CuKα線を用いて、2θ=20~60°を走査範囲とするXRD分析において、希土類元素のオキシフッ化物及びREFで表される希土類元素のフッ化物以外の化合物(以下「その他の成分」と記載することもある)に由来する結晶相のメインピークのピーク高さが、REaObFcに由来する結晶相のメインピークのピーク高さに対して10%以下であることを意味し、5%以下であることを意味することがより好ましく、3%以下であることを意味することが更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
従って上記XRD分析において、REで表される希土類元素の酸化物の化合物に由来する結晶相のメインピークのピーク高さは、REaObFcに由来する結晶相のメインピークのピーク高さに対して10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
更に、本発明の焼結体用材料は、XRD分析(具体的にはCuKα線を用いて、2θ=20~60°を走査範囲とするXRD分析)において、REaObFc以外の希土類元素のオキシフッ化物に由来するピークが観察される場合、当該ピークのピーク高さが、REaObFcに由来する結晶相のメインピークのピーク高さに対して10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
本発明の焼結体用材料は、REaObFcを主相とすることが好ましい。ここでREaObFcを主相とするとは、CuKα線を用いて、2θ=20~60°を走査範囲とするXRD分析において、REaObFcに由来するピークが最大高さのピークであることを意味する。
また本発明の焼結体用材料は、REaObFcを主相としない場合においても、REF3で表される希土類元素のフッ化物の結晶相のメインピークの高さに対するREaObFcのメインピークのピーク高さ比率が50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
547のメインピークは通常2θ=28.11°に観察される。またY658のメインピークは通常2θ=28.14°に観察される。またY769のメインピークは通常2θ=28.14°に観察される。
La10716のメインピークは通常2θ=26.52°に観察される。
Gd436のメインピークは通常2θ=27.59°に観察される。
Er547のメインピークは通常2θ=28.25°に観察される。
Yb547のメインピークは通常2θ=28.50°観察される。
Lu769のメインピークは通常2θ=28.60°に観察される。
また、YF3のメインピークは通常2θ=27.88°に観察される。
LaF3のメインピークは通常2θ=27.60°に観察される。
GdF3のメインピークは通常2θ=27.54°に観察される。
ErF3のメインピークは通常2θ=27.95°に観察される。
YbF3のメインピークは通常2θ=27.98°に観察される。
LuF3のメインピークは通常2θ=27.97°に観察される。
但し、REaObFcとREF3が観察される場合において、Y547とYF3、Gd436とGdF3、Er547とErF3のように組成の組合せによってメインピーク同士が近い位置(2θの差が0.4°内)に検出される場合は、下記のように測定することができる。
具体的には、後述する所定の面のピークに相当する強度(IS)を当該面の相対強度(メインピークの強度が100、PDFカードに記載の強度:IT)で割り返した数値をメインピークの強度(IM)としてそれぞれ使用してもよい。
※IM=IS/IT×100
547の(0 10 0)面のピークは通常2θ=32.29°に観察され、メインピークに対する相対強度は23.4%となる。
Gd436の(100)面のピークは通常2θ=31.77°に観察され、メインピークに対する相対強度は14.5%となる。
Er547の(171)面のピークは通常2θ=32.48°に観察され、メインピークに対する相対強度は14.2%となる。
REF3の所定のピークは(020)面のピークとすることができる。
例えば、YF3の(020)面のピークは通常2θ=25.98°に観察され、メインピークに対する相対強度は67.6%となる。
GdF3の(020)面のピークは通常2θ=25.47°に観察され、メインピークに対する相対強度は60.0%となる。
ErF3の(020)面のピークは通常2θ=26.03°に観察され、メインピークに対する相対強度は75.0%となる。
上記ピーク位置の誤差は、±0.05°以内が好ましく、±0.03°以内がより好ましく、±0.02°以内が更に好ましく、±0.01°以内が最も好ましい。
本明細書に記載のREaObFcとREF3のメインピーク比の各記載は、メインピークそのもののピーク高さ(強度)を用いてメインピーク高さ比を計算して該当した場合、及び、上述したようにメインピークでないピークのピーク高さ(強度)をPDFカード記載のメインピークの高さ(強度)を100とした場合の相対強度で割り戻して得たメインピーク換算高さを用いてメインピーク高さ比を計算して該当した場合のいずれであってもよく、仮に両方の方法で測定が可能であった場合は、一方の場合において本明細書に記載の比率に該当すれば、他方の場合に該当しなくても、該当したものとする。
本発明の焼結体用材料は、REF3を含有する場合、上述したREF3を含有することの効果を得る点から、REaObFcのメインピークの高さに対するREF3のメインピークの高さの高さ比が1%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましい。上述した通り、本明細書でいうREF3とREaObFcのメインピークの高さ比は、メインピーク同士が近い位置(2θで0.4°以内)である場合、上記の所定の面のピークに相当する強度比(IS)を所定の面の相対強度(PDFカードに記載の強度:IT)で割り返した数値をメインピークの強度(IM)としてそれぞれ使用したものとしてもよい。
なお、上記の説明において、「強度」と記載したのは、PDFカードではピークの「強度」と記載されているからであり、本明細書のピークの「高さ」と同義である。
焼結体用材料のX線回折測定は後述する実施例に記載の方法にて測定できる。下記実施例で用いたX線回折測定装置に限定されず、それと同等以上の精度のものであれば使用することができる。
焼結体用材料は、水銀圧入法を用いて測定した細孔径分布において、細孔径が0.05μm以上0.5μm以下の細孔容積が特定値以下であることが好ましい。当該細孔容積は本発明の焼結体用材料における一次粒子間の空隙に由来する。この範囲の細孔径の細孔容積が0.1mL/g以上であると、顆粒を構成する一次粒子が細かく、一定以上の細孔容積を持つことで、熱が効率よく伝播し、溶融しやすく緻密な焼結体が得やすい。得られる焼結体のプラズマや薬液に対する耐食性を高める観点から、細孔径が0.05μm以上0.5μm以下の細孔容積は0.1mL/g以上であることがより好ましく、0.13mL/g以上であることが更に好ましい。一次粒子間の空隙が過度に広くなると顆粒強度が低下する点から、本発明の粉末は、細孔径が0.05μm以上0.5μm以下の細孔容積が0.23mL/g以下であることが好ましく、0.2mL/g以下であることがより好ましい。以下では細孔径が0.05μm以上0.5μm以下の細孔容積を「細孔第1容積」と記載する場合がある。本明細書において、細孔径は細孔直径を意味する。
焼結体用材料においては、細孔径5μm以上50μm以下の細孔容積が0.1mL/g以上であることも耐食性を向上させる点で好ましい。細孔径が5μm以上50μm以下の細孔容積は、焼結体用材料における二次粒子間の空隙の空間に由来する。焼結体用材料における細孔容積は、0.1mL/g以上であることがより好ましく、0.2mL/g以上であることが特に好ましい。十分な流動性を確保する点から、焼結体用材料は、細孔容積が0.4mL/g以下であることが好ましく、0.3mL/g以下であることがより好ましい。以下では細孔径が5μm以上50μm以下の細孔容積を「細孔第2容積」と記載する場合がある。
得られる焼結体の耐食性を一層向上させる観点から、水銀圧入法を用いて測定した細孔径に対する細孔容積の分布(横軸:細孔径、縦軸:log微分細孔容積)において、細孔径0.05μm以上0.5μm以下の範囲にピークが少なくとも一つ観察されることが好ましい。より一層効果的に耐食性を向上させる観点から、細孔径0.05μm以上0.5μm以下の範囲のピークは、より詳細には、細孔径0.08μm以上0.35μm以下の範囲に少なくとも一つ観察されることがより好ましく、細孔径0.1μm以上0.2μm以下の範囲に少なくとも一つ観察されることが特に好ましい。以下では、細孔容積の分布における細孔径0.05μm以上0.5μm以下の範囲のピークを細孔第1ピークと記載する場合がある。
本発明の焼結体用材料は、水銀圧入法を用いて測定した細孔径に対する細孔容積の分布(横軸:細孔径、縦軸:log微分細孔容積)において、細孔径0.05μm以上0.5μm以下の範囲に加えて、細孔径5μm以上50μm以下の範囲にも少なくとも一つのピークを有することが耐食性を一層向上させる観点から好ましい。本発明の焼結体用材料の製造容易性や焼結体の耐食性を一層向上させる点から、細孔径5μm以上50μm以下の範囲のピークは、より詳細には、細孔径8μm以上35μm以下の範囲に少なくとも一つ観察されることがより好ましく、細孔径10μm以上20μm以下の範囲に少なくとも一つ観察されることが特に好ましい。以下では、細孔容積の分布における細孔径5μm以上50μm以下の範囲のピークを細孔第2ピークと記載する場合がある。
細孔径分布が上記好適な特徴を有する焼結体用材料は、後述する好適な製造方法により本発明の焼結体用材料を製造し、且つ、第4工程の粉砕条件やスプレードライヤーの回転数や乾燥条件を調整すればよい。
本発明の焼結体用材料は550℃、2時間での大気雰囲気中での焼成下での強熱減量が10質量%以下であることが好ましい。本発明の焼結体用材料が当該構成を有する場合、焼結に起因した揮発のない成分の割合が高いことに起因して緻密且つ硬度の高い焼結体が得やすいものとなる。この観点から、焼結体用材料は、上記強熱減量が7質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。強熱減量は後述した実施例に記載の方法にて測定できる。
強熱減量が上記上限以下である焼結体用材料は後述する好適な製造方法において有機物バインダーの量等を調整することや水酸基や水分を含むことを抑制することにより得られる。
本発明の焼結体用材料はBET比表面積が2m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。BET比表面積が2m2/g以上であることは、易焼結性の点から好ましい。BET比表面積が10m2/g以下であることは、顆粒状態における流動性を高めやすい点や成形体密度を高められ、焼結時の収縮率が好適となり目的の焼結体寸法を得やすい点から好ましい。これらの点から、焼結体用材料のBET比表面積は3m2/g以上7m2/g以下であることがより好ましい。
BET比表面積が上記範囲内である焼結体用材料は、後述する好適な製造方法により本発明の焼結体用材料を製造し、且つ、第4工程の粉砕工程での粉砕条件やスプレードライヤーの乾燥条件を調整すればよい。
本発明の焼結体用材料は、タップ密度と嵩密度との比(タップ密度/嵩密度)であるハウスナー比が1.0以上1.3以下であることが好ましい。焼結体用材料のハウスナー比が1.3以下であることは流動性が良くなり均一な成形体が作製し易い点から好ましい。この観点から、焼結体用材料のハウスナー比は1.0以上1.2以下であることがより好ましい。
ハウスナー比が1.0以上1.3以下であることによる効果を一層高める点から、焼結体用材料のタップ密度(タップ法見掛け密度ともいう。略号:TD)は1.4g/cm3以上2.8g/cm3以下であることが好ましく、1.6g/cm3以上2.6g/cm3以下であることが更に好ましい。
ハウスナー比が1.0以上1.3以下であることによる効果を一層高める点から、焼結体用材料の嵩密度(静置法見掛け密度ともいう。略号:AD)は1.1g/cm3以上2.4g/cm3以下であることが好ましく、1.3g/cm3以上2.2g/cm3以下であることが更に好ましい。
ハウスナー比や嵩密度、タップ密度が上記範囲内である焼結体用材料は、後述する好適な製造方法により本発明の焼結体用材料を製造し、且つ、粉砕条件やスプレードライヤー噴霧時のスラリー濃度を調整すればよい。
本発明の焼結体用材料において、平均粒子径は10μm以上100μm以下であることが好ましい。焼結体用材料の平均粒子径が10μm以上であることで、流動性が良くなり均一な成形体(成型体)が作製し易い。また、前記の焼結体用材料の平均粒子径が100μm以下であると、材料のハンドリングが良い。これらの観点から、焼結体用材料の平均粒子径は、20μm以上80μm以下が好ましく、30μm以上60μm以下がさらに好ましい。ここでいう平均粒子径は焼結体用材料の超音波分散処理前に測定した平均粒子径である。平均粒子径はレーザ回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50により定める。
<焼結体用材料の製造方法>
次に本発明の焼結体用材料の好適な製造方法について説明する。本製造方法は好適には、以下の第1工程~第5工程を有するものである。以下、各工程について詳述する。
・第1工程:希土類化合物の水溶液(以下「希土類水溶液」ともいう。)とフッ素含有溶液を反応させて、希土類元素のフッ化物の前駆体(以下、「希土類フッ化物前駆体」ともいう。)の沈殿を得る。
・第2工程:希土類フッ化物前駆体を、300℃~850℃で、材料中へのAlの混入が50質量ppm以下(特に好適には1~50質量ppm)となる環境下にて焼成して、希土類フッ化物を得る。
・第3工程:希土類フッ化物と希土類元素の酸化物及び/又は大気中で焼成すると酸化物になる希土類元素の化合物とを混合後、500℃~900℃で、材料中のAlへの混入が50質量ppm以下(特に好適には1~50質量ppm)となる環境下にて焼成して、REaObFcで表される希土類オキシフッ化物又は該希土類オキシフッ化物と希土類フッ化物の混合物を得る。
・第4工程:REaObFcで表される希土類オキシフッ化物又は該希土類オキシフッ化物と希土類フッ化物の混合物を粉砕して、REaObFcで表される希土類オキシフッ化物又は該希土類オキシフッ化物と希土類フッ化物の混合物のスラリーを得る。
・第5工程:REaObFcで表される希土類オキシフッ化物又は該希土類オキシフッ化物と希土類フッ化物の混合物のスラリーをスプレードライヤーで乾燥させて、希土類オキシフッ化物又は希土類オキシフッ化物と希土類フッ化物の混合物の顆粒を得る。
材料中へのAlの混入が50質量ppm以下(特に好適には1~50質量ppm)となる環境下は、材料中へのSiの混入が500質量ppm以下(特に好適には1~500質量ppm)となる環境下でもあることが特に好ましい。
〔第1工程〕
本工程においては、希土類フッ化物前駆体を得る。希土類水溶液にフッ素含有溶液を滴下して沈殿作製を行う。希土類水溶液としては、希土類元素の塩化物の水溶液、希土類元素の硝酸塩の水溶液または希土類元素の酢酸塩の水溶液などから選ばれる1種又は2種以上を用いることが製造コストの点で好ましく、希土類元素の塩化物の水溶液や硝酸塩の水溶液が希土類フッ化物前駆体の収率の点で特に好ましい。フッ素含有溶液としては、フッ化水素酸水溶液(フッ酸)、フッ化水素アンモニウム水溶液またはフッ化アンモニウム水溶液などから選ばれる1種又は2種以上を用いることが製造コストの点で好ましく、フッ化水素酸水溶液(フッ酸)を用いることが希土類フッ化物前駆体の収率の点で特に好ましい。またAl及びSi混入源とならない限度において、目的に応じてpH調整剤、凝集剤や分散剤などの種々の添加物を加えても良い。
得られた沈殿物を洗浄及びろ過して、希土類フッ化物前駆体を得る。このとき沈殿物の洗浄・ろ過には減圧濾過、遠心分離機、遠心脱水機やフィルタープレスなど各種洗浄・ろ過装置を1種類または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
〔第2工程〕
本工程においては、第1工程で得られた希土類フッ化物前駆体を焼成することで希土類フッ化物の粉末を得る。焼成の前に必要に応じて乾燥などを加えても良い。材料中へのAl、Siの混入が、上記所定値以下となる環境としては、希土類フッ化物前駆体焼成時に前駆体と直接接触する炉材又は匣鉢若しくは皿にAlやSiの混入を避けるために、イットリア(Y23)、ジルコニア(ZrO2)やプラチナ(Pt)などの極力Al、Si成分が含まれない材質を使用することが挙げられる。また、焼成時の温度も前駆体から発生するフッ素ガスを極力少なくするために300℃~850℃の温度で焼成することが好ましい。より好ましくは350℃~800℃、更に好ましくは400℃~750℃で焼成することが好ましい。これより低温になると水和物が残留して次工程での仕込み量の管理が難しくなり、高温になるとフッ素ガスが著しく揮発して炉材や匣鉢などのAlやSi成分と反応しやすくなるためである。また低温焼成であると焼成物が凝縮せず、粉砕せずとも粉末が得られるが、800℃超で焼成すると、焼成物が凝固しやすく、粉砕の手間が必要となる場合がある。焼成には電気炉、ローラーハースキルンやロータリーキルンなどから1種類を用いて焼成することが好ましい。焼成は大気雰囲気等の活性雰囲気及びアルゴンなどの不活性雰囲気のいずれをも使用できるが、大気雰囲気であることが所望の材料組成を得る点や製造コストの点で好ましい。焼成時間は所望の材料組成を得る点、及び、Al又はAl及びSiの混入を抑制する点から、例えば3~48時間、特に5~24時間とすることが好適である。
〔第3工程〕
本工程においては、第2工程で得られた希土類フッ化物と希土類元素の酸化物及び/又は大気中で焼成すると酸化物になる希土類元素の化合物とを混合後焼成して、REaObFcで表される希土類オキシフッ化物又は該希土類オキシフッ化物と希土類フッ化物の混合物を得る。大気中で焼成すると酸化物になる希土類元素の化合物としては、希土類元素の水酸化物、希土類元素の炭酸塩、希土類元素温酢酸塩、希土類元素のシュウ酸塩や各種の希土類錯体などを用いることができる。本工程で希土類フッ化物と混合する希土類元素の化合物としては、希土類元素の酸化物などのガス成分が出にくいものが、炉材に与えるダメージが少なく、AlやSiやその他不純物を低減できるため好ましい。
なお、希土類オキシフッ化物と希土類フッ化物との混合物は、粉末X線回折において、希土類オキシフッ化物のピーク及び希土類フッ化物のピークが両方観察されるものであるため混合物と称するものである。
混合前に必要に応じて希土類フッ化物や希土類元素の化合物を扱いやすい粒径に粉砕などを行っても良い。混合には種々の乾式粉砕機、湿式粉砕機、混合機や混合方法を用いて行うことができる。
希土類フッ化物と希土類酸化物及び/又は大気中で焼成すると酸化物になる化合物との混合比率は、目的とする焼結体用材料のF/REモル比(以下、「モル比1」ともいう。)と同程度又は焼成によりFがわずかに揮発することを考慮して若干大きくすることが好ましい。例えば、希土類フッ化物と希土類酸化物及び/又は大気中で焼成すると酸化物になる化合物との混合比率のF/REモル比(以下、「モル比2」ともいう。)は、モル比2/モル比1が0.95~1.10となることが所望の組成を得る点やAl、Siの混入防止の点から好適であり、1.00~1.05となることが特に好適である。
混合後の焼成において、材料中へのAlの混入が、上記所定値以下となる環境としては、第2工程と同様に上記混合物と直接接触する炉材又は匣鉢若しくは皿として、イットリア(Y23)、ジルコニア(ZrO2)やプラチナ(Pt)などの極力Al、Si成分が含まれない材質を使用することが挙げられる。焼成温度としては、500℃~900℃の温度で焼成することが好ましく、より好ましくは550℃~850℃、更に好ましくは600℃~800℃で焼成することが好ましい。これより低温になると希土類オキシフッ化物の生成が不十分となり、高温になるとフッ化水素ガスが著しく揮発するためである。焼成は大気雰囲気等の活性雰囲気及びアルゴンなどの不活性雰囲気のいずれをも使用できるが、大気雰囲気であることが所望の組成を得る点及び製造コストの点から好ましい。焼成時間は所望の材料組成を得る点、及び、はAl又はAl及びSiの混入を抑制する点から、例えば3~24時間、特に5~12時間とすることが好適である。
なお、本方法の場合、Al、Siの量は通常上述した下限値以上となる。これは、原材料中に元々含まれるAl、Siや製造装置の素材中に一部含有しているAlやSiが原因と考えられる。
〔第4工程〕
本工程においては、REaObFcで表される希土類オキシフッ化物又は該希土類オキシフッ化物と希土類フッ化物との混合物を解砕して、REaObFcで表される希土類オキシフッ化物又は該希土類オキシフッ化物と希土類フッ化物との混合物のスラリーを得る。粉砕には乾式粉砕及び湿式粉砕のいずれも適用可能である。粉砕は1段階で実施してもよく、あるいは2段階以上で実施してもよい。コストと手間の点から1段階で粉砕を行うことが好ましい。粉砕後に水等の液媒を加えてスラリー化することが好ましい。乾式粉砕を行う場合には、例えば擂潰機、ジェットミル、ボールミル、ハンマーミル及びピンミルなどの各種乾式粉砕機を用いることができる。一方、湿式粉砕を行う場合には、例えばボールミルやビーズミルなどの各種湿式粉砕機を用いることができる。粉砕機において被粉砕物と接する部分(例えば粉砕媒体、装置内面)には極力、Al、特にAl及びSiを含まないものを用いることが望ましい。例えば装置内面にはステンレス(ただし、以下で単に「ステンレス」という場合、例えばSUS405、SUS631のようにAlを添加したものを除く)、ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)(なお、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)はイットリア部分安定化ジルコニアも包含する意味で使用する。)、や汎用プラスチック等を用いることができる。また粉砕媒体としてはステンレス、ジルコニア、YSZや樹脂被覆ビーズ等を用いることができる。
本工程における希土類オキシフッ化物又は希土類オキシフッ化物と希土類フッ化物との混合物の粉砕の程度は、粉砕したスラリーを乾燥させた後にBET1点法を用いて測定したBET比表面積(BET)が2m2/g~10m2/gとなる程度が好ましい。この程度の粉砕を行うことで、好適な細孔範囲に細孔ピークと好適な細孔容積を有し、且つBET比表面積が好適な範囲内である顆粒が得やすくなる。これらの観点から、BET比表面積(BET)は3m2/g~8m2/gであることが更に好ましい。
本工程における希土類オキシフッ化物又は希土類オキシフッ化物と希土類フッ化物との混合物の化合物濃度を、100g/L~1500g/L、特に300g/L~1000g/Lとすることが好ましい。スラリーの濃度をこの範囲内に設定することで、エネルギーの過度の消費を抑制することができ、またスラリーの粘度が適切なものになって噴霧を安定させることができる。
スラリーの濃度を調整する工程で必要に応じて、種々のバインダー、可塑剤や分散剤などの添加剤を加えても良い。このとき添加剤を加える場合は、有機物の総量を10質量%以下とすることが、次工程の成形体の焼成時に有機物除去をしやすくなる観点から好ましい。バインダーである有機物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、分子中にカルボキシル基又はその誘導体を含むアクリル系バインダー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等の有機高分子バインダーを使用可能である。
〔第5工程〕
本工程においては、第4工程で得られたスラリーを、スプレードライヤーで造粒してREaObFcで表される希土類オキシフッ化物又は該希土類オキシフッ化物と希土類フッ化物との混合物の造粒物を得る。スプレードライヤーを運転するときのアトマイザーの回転数は5000min-1~25000min-1とすることが好ましい。回転数を5000min-1以上とすることで、均一な造粒物を得ることができる。一方、回転数を25000min-1以下とすることで、所望の顆粒径や流動性の良い顆粒を得やすくなる。これらの観点から、アトマイザーの回転数は6000min-1~20000min-1とすることが更に好ましい。
スプレードライヤーを運転するときの入口温度は150℃~300℃とすることが好ましい。入口温度を150℃以上とすることで、固形分の乾燥を十分に行うことができ、残存する水分が少ない顆粒が得やすくなる。一方、入口温度を300℃以下とすることで、無駄なエネルギーの消費を抑制できる。スプレードライヤーにおいてスラリーと接する部分は、極力、Al、特にAl及びSiを有しない部材を用いる事が好ましい。その様な部材としては、ステンレスやテフロン(登録商標)が挙げられる。
上記工程にて、焼結体用材料が得られる。
次いで、本発明の焼結体について説明する。
本発明の焼結体は、REaObFcを含有し、
焼結体全体における、希土類元素(RE)のモル数に対するフッ素元素(F)のモル数の比(F/REモル比)が1.3以上2.8以下であり、
アルミニウム(Al)の含有量が50質量ppm以下である。
本発明の焼結体は、上記構成により、プラズマや薬液に対して優れた耐食性を示す。
焼結体を構成するREaObFcの好ましいものとしては、上述した焼結体用材料のREaObFcの好ましい構成についての記載を全て当てはめることができる。
上記の焼結体によるプラズマ及び薬液に対する優れた耐食性の効果を一層高める点から、焼結体のF/REモル比は、1.3以上2.8以下であることが好ましく、1.4以上2.6以下がより好ましく、1.5以上2.4以下が特に好ましい。焼結体のF/REモル比は後述の実施例に記載の方法にて測定できる。
焼結体におけるAl含量は、50質量ppm以下であることでAlに起因する異相や大きな不純物粒界を抑制できることから、プラズマや薬液による処理に対する耐食性に優れる。また、焼結体におけるAl含量は、1質量ppm以上であることで、製造が容易であるほか、機械的強度が向上する利点がある。この点から、焼結体用材料におけるAl含量は、1質量ppm以上35質量ppm以下であることがより好ましく、1質量ppm以上25質量ppm以下であることが特に好ましい。焼結体のAl含量は後述の実施例に記載の方法にて測定できる。
更に、焼結体におけるSi含量は、500質量ppm以下であることでAlに起因する異相や大きな不純物粒界を抑制できることから、プラズマや薬液による処理に対する耐食性に優れる。また、焼結体におけるSi含量は、1質量ppm以上であることで、製造が容易であるほか、機械的強度が向上する利点がある。この点から、焼結体用材料におけるSi含量は、1質量ppm以上350質量ppm以下であることがより好ましく、1質量ppm以上200質量ppm以下であることが特に好ましい。焼結体のSi含量は後述の実施例に記載の方法にて測定できる。
本発明の焼結体は、XRD分析において、希土類元素のオキシフッ化物以外に含まれる結晶相が、実質的にREF3で表される希土類元素のフッ化物のみから構成されることが好ましい。実質的に、REF3で表される希土類元素のフッ化物のみから構成されるとは、CuKα線を用いて2θ=20~60°を走査範囲とするXRD分析において、希土類元素のオキシフッ化物及びREF3で表される希土類元素のフッ化物以外の化合物に由来する結晶相の最大高さのピーク(メインピーク)の高さが、REaObFcに由来する結晶相の最大高さのピーク(メインピーク)のピーク高さに対して10%以下であることを意味し、5%以下であることを意味することがより好ましく、3%以下であることを意味することが更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
更に、本発明の焼結体は、XRD分析において(具体的には、CuKα線を用いて2θ=20~60°を走査範囲とするXRD分析において)、REaObFc以外の希土類元素のオキシフッ化物に由来するピークが観察される場合、当該ピークのピーク高さが、REaObFcに由来する結晶相の最大高さのピーク(メインピーク)のピーク高さに対して10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。
本発明の焼結体は、REaObFcを主相とすることが好ましい。ここでREaObFcを主相とするとは、CuKα線を用いて2θ=20~60°を走査範囲とするXRD分析において、REaObFcに由来するピークが最大高さのピークであることを意味する。
また本発明の焼結体は、REaObFcを主相としない場合においても、REF3で表される希土類元素のフッ化物REF3の結晶相の所定の面のピークのピーク高さに対するREaObFcのメインピークのピーク高さ比率が50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。当該所定の面のピークは、上述した焼結体用材料におけるREF3の結晶相の所定の面のピークと同じである。
本発明の焼結体は、REF3を含有する場合、上述したREF3を含有することの効果を得る点から、REaObFcのメインピークの高さに対するREF3のメインピークの高さの高さ比が1%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましい。
本発明の焼結体は緻密であることを反映して、相対密度の高いものである。相対密度の高い焼結体とすることにより、ハロゲン系腐食ガス等の腐食ガスの遮断性を高いものとすることが可能である。本発明の焼結体は緻密性が高く、腐食ガスの遮断性に優れるため、これを例えば半導体装置の構成部材に用いた場合、この部材内部への腐食ガスや薬液の流入を防止できる。このため本発明の焼結体は、腐食ガスや薬液による腐食防止性能の高いものである。このように腐食ガスの遮断性が高い部材は、例えば、エッチング装置の真空チャンバー構成部材やエッチングガス供給口、フォーカスリング、ウェハーホルダーなどに好適に用いられる。また薬液への遮断性が高いことはウェットエッチングの容器などの部材に好適である。本発明の焼結体をより緻密なものにする観点から、該焼結体は相対密度が90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、98%以上が特に好ましい。相対密度は後述した方法で測定できる。
更に、耐食性向上の観点から、気孔率、特に開気孔率(OP)は小さいほうが好ましい。開気孔率は1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましく、0.3質量%以下が特に好ましい。気孔率(開気孔率)は後述した方法で測定できる。
上記の相対密度及び開気孔率(OP)を有する焼結体は、本発明の焼結体を後述する好適な製造方法で製造する際に、その温度条件や圧力条件を調整することにより得ることができる。
本発明者の焼結体は緻密なものであり硬度が高く、部材内部への腐食ガスや薬液の流入を一層効果的に防止でき、ハロゲン系プラズマ等のプラズマ及び薬液に対し耐食性に優れる。具体的には、本発明の焼結体において、ビッカース硬度は3GPa以上であることが好ましく、4GPa以上であることがより好ましい。またビッカース硬度は大きいほど好ましいものではあるが、焼結体の製造容易性の観点からは、8GPa以下であることがより好ましく7GPa以下であることが更に好ましい。
ビッカース硬度は後述する実施例に記載の方法にて測定できる。
本発明の焼結体は、特定組成を有することに起因したプラズマや薬液に対する耐食性に起因して、プラズマに曝される表面を、当該焼結体により形成した耐プラズマ部材、或いはウェットエッチングの薬液と接触する表面を当該焼結体により形成した耐薬液部材として好適に用いられる。
耐プラズマ部材は、半導体のプラズマ処理プロセスで利用されるフッ素系及び塩素系等のハロゲン系の腐食性ガス存在下でプラズマに曝される部材であることが好ましく、プラズマ処理装置用部材と呼ぶこともできる。耐プラズマ部材としては、具体的に、プラズマエッチング装置における真空チャンバー等のチャンバーやチャンバー内部で使用されるものが挙げられる。チャンバー内部で使用される耐プラズマ部材としては、例えば、半導体デバイス製造工程において、基板等にプラズマエッチング処理を行う際に用いられるフォーカスリング、シャワーヘッド、静電チャック、天板やガスノズル等が挙げられる。ハロゲン系の腐食性ガスとしては、SF6,CF4,CHF3,ClF3,HF等のフッ素系ガス、Cl2,HCl,BCl3等の塩素系ガス、Br2,HBr,BBr3等の臭素系ガス及びヨウ素系ガス等が知られているがこれに限定されない。
耐薬液部材は、半導体製造時のウェットエッチングで利用される容器等、ウェットエッチングの薬液と接触する部材であることが好ましい。ウェットエッチングの薬液としては、フッ酸、塩酸などのハロゲン系や非ハロゲン系のものがあり、また酸系薬液やアルカリ系薬液が使用され、本発明ではいずれであってもよいがハロゲン系の薬液に対して特に有効である。
本発明の焼結体は半導体製造装置内部やその構成部材以外にも各種プラズマ処理装置、化学プラントの構成部材の用途に用いることができる。
本発明の焼結体は本発明の焼結体用材料を焼結することにより好適に得ることができる。
上記焼結工程では、焼結体用材料をプレス機や焼成炉などを用いて成形及び焼結させる。
本工程においては成形工程と焼結工程をそれぞれ行っても良いし、加圧焼結を用いて成形工程の少なくとも一部と焼結工程を同時に行ってもよい。成形工程の少なくとも一部と焼結工程を同時に行う場合とは、例えば、焼結体用材料を成形後に加圧焼結する場合等が挙げられる。また金型成形と静水圧成形(CIP)を組み合わせるなど成形工程を2段階状組み合わせる場合や、常圧焼結と加圧焼結を組み合わせるなど焼結工程を2段階以上組み合わせて行う場合もある。
本作製方法においては、原料粉末の成形工程として、金型プレス法、ラバープレス(静水圧プレス)法、シート成形法、押し出し成形法、鋳込み成形法等を用いることができる。成形後の焼結には、無加圧焼結法、ガス圧焼結法、熱間等方圧加圧(HIP)、ホットプレス(HP)やパルス通電加圧(SPS)などの種々の焼結方法から1種類または2種類以上を組み合わせて用いることができる。なお各種「成形法」は「成型法」と記載する場合もある。
上記の焼結方法のうち、ガス圧焼結法、熱間等方圧加圧(HIP)、ホットプレス(HP)やパルス通電加圧(SPS)などの加圧焼結法が緻密で硬度が高く、優れた薬品耐性とプラズマ耐性を持つ焼結体が得られる点で好ましい。
加圧焼結の圧力は10~100MPa、温度700~1100℃が好適に挙げられる。
無加圧焼結法を使用する場合は、成形工程として、金型プレス法にて一次成形を行い、さらにラバープレス法にて二次成形を行うことが、加圧焼結法ほどではないが、かなり緻密で硬度が高く、優れた薬品耐性とプラズマ耐性を持つ焼結体が得られる点で好ましい。
金型プレス法での圧力は10~100MPa、ラバープレス法による加圧力は50~300MPa、常圧焼結の温度は1000~1600℃が好適である。
なお、成形型や焼成型、パンチ、ダイス、敷板や敷粉等、成形及び焼結時にそれぞれ焼結体用材料と接する部材にはAl、特にAl及びSiを含むものは用いないものとする。使用可能な材質としては、ステンレス、カーボン、イットリアやゴムが挙げられる。
焼結雰囲気は、アルゴンや窒素などの不活性雰囲気又は真空雰囲気であることが好ましい。なお、真空雰囲気とは、圧力が絶対圧で105Pa以下の雰囲気をいう。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
(実施例1)
〔第1工程〕
酸化イットリウム(Y23)換算25kgの硝酸イットリウム水溶液200Lに、50質量%フッ化水素酸26.6kgを滴下して、フッ化イットリウム前駆体の沈殿を得た。得られた沈殿をリパルプ洗浄した後、遠心分離機にてろ過を行い、フッ化イットリウム前駆体のケーキを得た。
〔第2工程〕
第1工程で得られたケーキをイットリア匣鉢に適量入れて、電気炉にて大気雰囲気中で650℃で24時間焼成して、フッ化イットリウム(YF3)粉末を得た。なお得られたフッ化イットリウム粉末は、実施例1~5までのフッ化イットリウム原料として使用した。
〔第3工程〕
第2工程で得られたフッ化イットリウム粉末1.06kgと酸化イットリウム(Y23)粉末0.94kgを混合して、イットリア匣鉢に投入して、電気炉にて大気雰囲気中で650℃で5時間焼成して、オキシフッ化イットリウム粉末を得た。
〔第4工程〕
第3工程で得られたオキシフッ化イットリウム粉末と純水を混合して、ビーズミル(ビーズの材質; YSZ、粉砕装置内面の材質;ポリプロピレン)にて表1に記載のBET比表面積となるように粉砕した。粉砕後に純水を加えて500g/Lのオキシフッ化イットリウムのスラリーとした。BET比表面積は、粉砕中のスラリーの一部を採取して乾燥し、後述する焼結体用材料と同様の方法にて測定した。
〔第5工程〕
第4工程で得られたスラリーをスプレードライヤー(大川原加工機(株)製)(装置内面の材質;ステンレス)を用いて造粒・乾燥し、オキシフッ化イットリウムの顆粒である焼結体用材料を得た。スプレードライヤーの操作条件は以下のとおりとした。
・スラリー供給速度:75mL/min
・アトマイザー回転数:12500rpm
・入口温度:250℃
〔第6工程〕
第5工程で得られた顆粒状焼結体用材料5gについて、シンターランド(株)製パルス通電加圧装置(ダイスの材質;カーボン、パンチの材質;カーボン)を用いて、真空雰囲気中、30MPa、850℃での加圧焼結を行いφ20mm×4mmtのオキシフッ化イットリウムの焼結体を得た。
(実施例2)
実施例1の第3工程の混合に供するフッ化イットリウム粉末及び酸化イットリウム粉末の量をフッ化イットリウム粉末1.25kgと酸化イットリウム粉末0.75kgに変更する以外は、実施例1と同様にして、オキシフッ化イットリウムとフッ化イットリウムとの混合物の顆粒である焼結体用材料及びその焼結体を得た。
(実施例3)
実施例1の第3工程の混合に供するフッ化イットリウム粉末及び酸化イットリウム粉末の量をフッ化イットリウム粉末1.44kgと酸化イットリウム粉末0.56kgに変更する以外は、実施例1と同様にして、オキシフッ化イットリウムとフッ化イットリウムとの混合物の顆粒である焼結体用材料及びその焼結体を得た。
(実施例4)
実施例1の第3工程の混合に供するフッ化イットリウム粉末及び酸化イットリウム粉末の量をフッ化イットリウム粉末1.62kgと酸化イットリウム粉末0.38kgに変更する以外は、実施例1と同様にして、オキシフッ化イットリウムとフッ化イットリウムとの混合物の顆粒である焼結体用材料及びその焼結体を得た。
(実施例5)
実施例1の第3工程の混合に供するフッ化イットリウム粉末及び酸化イットリウム粉末の量をフッ化イットリウム粉末1.81kgと酸化イットリウム粉末0.19kgに変更する以外は、実施例1と同様にして、オキシフッ化イットリウムとフッ化イットリウムとの混合物の顆粒である焼結体用材料及びその焼結体を得た。
(実施例6)
実施例1の第2工程の焼成温度を650℃から750℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、オキシフッ化イットリウムの顆粒である焼結体用材料、及びその焼結体を得た。
(実施例7)
実施例1の第2工程を焼成温度を650℃から850℃に変更し、第4工程でスラリーに有機物バインダーを総量で4質量%添加した以外は実施例1と同様にして、オキシフッ化イットリウムの顆粒である焼結体用材料を得た。また前記第6工程をパルス通電加圧装置を用いた加圧焼結の代わりに、第5工程で得られた顆粒状焼結体用材料について49MPaの圧力にて金型成形(金型の材質:ステンレス)を行った後、294MPaの圧力にて静水圧成形(型の材質:ゴム)をして、得られた成形体をアルゴン雰囲気中、1500℃にて2時間焼成する(焼成用敷板の材質:イットリア)以外は、実施例1と同様にして、オキシフッ化イットリウムの焼結体を得た。
(実施例8)
実施例7の第2工程の焼成温度を550℃に変更して、第3工程の混合に供するフッ化イットリウム粉末及び酸化イットリウム粉末の量をフッ化イットリウム粉末1.15kgと酸化イットリウム粉末0.85kgに変更して、第5工程のアトマイザー回転数を20000rpmに変更する以外は、実施例7と同様にして、オキシフッ化イットリウムとフッ化イットリウムとの混合物の顆粒である焼結体用材料及びその焼結体を得た。
(実施例9)
実施例3の第6工程をパルス通電加圧装置を用いた加圧焼結の代わりに、第5工程で得られた顆粒状焼結体用材料についてホットプレス(HP)を用いて、アルゴン雰囲気にて20MPa、920℃にて加圧焼結を行う(パンチの材質:カーボン、ダイスの材質;カーボン)以外は、実施例3と同様にして、オキシフッ化イットリウムとフッ化イットリウムとの混合物の顆粒である焼結体用材料及びその焼結体を得た。
(実施例10)
実施例1の希土類元素(RE)をイットリウム(Y)からランタン(La)に変え、第1工程を酸化ランタン(La23)換算2.5kgの硝酸ランタン水溶液20Lに、50質量%フッ化水素酸1.8kgを滴下して、フッ化ランタン前駆体の沈殿を得ることにより、第2工程でフッ化ランタン(LaF3)粉末を得た。更に第3工程での混合を、第2工程で得られたフッ化ランタン粉末1.73kgと酸化ランタン(La23)粉末0.27kgの混合とした。これらの点以外は、実施例1と同様にして、オキシフッ化ランタンとフッ化ランタンとの混合物の顆粒である焼結体用材料、及び、その焼結体を得た。
(実施例11)
実施例1の希土類元素をイットリウムからガドリニウム(Gd)に変え、第1工程を酸化ガドリニウム(Gd23)換算5kgの硝酸ガドリニウム水溶液40Lに、50質量%フッ化水素酸3.3kgを滴下して、フッ化ガドリニウム前駆体の沈殿を得ることで第2工程でフッ化ガドリニウム粉末を得た。更に、第3工程での混合を、第2工程で得られたフッ化ガドリニウム(GdF3)粉末1.09kgと酸化ガドリニウム(Gd23)粉末0.91kgの混合とした。これらの点以外は、実施例1と同様にして、オキシフッ化ガドリニウムとフッ化ガドリニウムとの混合物の顆粒である焼結体用材料及びその焼結体を得た。
(実施例12)
実施例11の第3工程での混合を、第2工程で得られたフッ化ガドリニウム粉末1.55kgと酸化ガドリニウム粉末0.45kgの混合とした以外は、実施例11と同様にして、オキシフッ化ガドリニウムとフッ化ガドリニウムとの混合物の顆粒である焼結体用材料及びその焼結体を得た。
(実施例13)
実施例1の希土類元素をイットリウムからエルビウム(Er)に変え、第1工程を酸化エルビウム(Er23)換算2.5kgの硝酸エルビウム水溶液20Lに、50質量%フッ化水素酸1.6kgを滴下して、フッ化エルビウム前駆体の沈殿を得ることにより、第2工程でフッ化エルビウム(ErF3)粉末を得た。更に第3工程での混合を、第2工程で得られたフッ化エルビウム粉末1.36kgと酸化エルビウム(Er23)粉末0.64kgの混合とした。これらの点以外は、実施例1と同様にして、オキシフッ化エルビウムとフッ化エルビウムとの混合物の顆粒である焼結体用材料及びその焼結体を得た。
(実施例14)
実施例1の希土類元素をイットリウムからイッテルビウム(Yb)に変え、第1工程を酸化イッテルビウム(Yb23)換算5kgの硝酸イッテルビウム水溶液40Lに、50質量%フッ化水素酸3kgを滴下して、フッ化イッテルビウム前駆体の沈殿を得ることにより、第2工程でフッ化イッテルビウム粉末を得た。更に第3工程での混合を、第2工程で得られたフッ化イッテルビウム(YbF3)粉末1.01kgと酸化イッテルビウム(Yb23)粉末0.99kgの混合とした。これらの点以外は、実施例1と同様にして、オキシフッ化イッテルビウムの顆粒である焼結体用材料及びその焼結体を得た。
(実施例15)
実施例14の第3工程での混合を、第2工程で得られたフッ化イッテルビウム粉末1.84kgと酸化イッテルビウム粉末0.16kgの混合とした以外は、実施例14と同様にして、オキシフッ化イッテルビウムとフッ化イッテルビウムとの混合物の顆粒である焼結体用材料及びその焼結体を得た。
(実施例16)
実施例1の希土類元素をイットリウムからルテチウム(Lu)に変え、第1工程を酸化ルテチウム(Lu23)換算2.5kgの硝酸ルテチウム水溶液20Lに、50質量%フッ化水素酸1.5kgを滴下して、フッ化ルテチウム前駆体の沈殿を得ることにより、第2工程でフッ化ルテチウム(LuF3)粉末を得た。更に第3工程での混合を、第2工程で得られたフッ化ルテチウム粉末1.01kgと酸化ルテチウム(Lu23)粉末0.99kgの混合とした以外は、実施例1と同様にして、オキシフッ化ルテチウムとフッ化ルテチウムとの混合物の顆粒である焼結体用材料及びその焼結体を得た。
(比較例1)
特許文献3に記載の実施例6の作製法を用いて作製した。
(ア)A工程:混合
日本イットリウム社製の微粉末酸化イットリウム(Y23)(D*50D:0.24μm、炭素:0.1質量%)と日本イットリウム社製フッ化イットリウム(YF3)(D*50D:7.4μm、炭素:0.05質量%)とをLnF3/Ln=0.55モル比にて混合した。
(イ)B工程:焼成
A工程で得られた混合品を、アルミナ製の皿に入れ、電気炉で大気雰囲気中950℃にて8時間焼成した。
(ウ)C工程:粉砕
B工程で得られた焼成品をアトマイザー(装置内部の材質:アルミナ)にて乾式粉砕後、同質量の純水と混合し、直径0.8mmのイットリア安定化ジルコニア(YSZ)ボールを用いたビーズミル(装置内面の材質:ジルコニア強化アルミナ)にて4時間粉砕した。その後、直径0.4mmのイットリア安定化ジルコニア(YSZ)ボールを用いたビーズミル(装置内部の材質:ジルコニア強化アルミナ)にて3時間粉砕して湿式粉砕スラリーを得た。
(エ)D工程:噴霧乾燥
C工程で得た湿式粉砕スラリーにアクリル系のバインダー及び純水を添加、混合して、スラリー濃度を1000g/Lに、スラリー中に含まれる粉末に対するバインダーの量を3.5質量%とした。
このスラリーをスプレードライヤー(大河原化工機(株)(装置内面の材質;ステンレス)を用いて噴霧乾燥し、顆粒である焼結体用材料を得た。スプレードライヤーの操作条件は以下のとおりとした。
・スラリー供給速度:300mL/min
・アトマイザー回転数:9000min-1
・入口温度:200℃
(オ)E工程
D工程で得られた焼結体用材料について、49MPaの圧力にて金型成形(金型の材質:ステンレス)を行った後、294MPaの圧力にて静水圧成形(型の材質:ゴム)をした。得られた成形体をアルゴン雰囲気中、1500℃にて2時間焼成(焼結用敷板の材質:イットリア)し、電気炉中で150℃まで自然放冷して、オキシフッ化イットリウムの焼結体を得た。
(比較例2)
比較例1のA工程及びB工程を行わず、日本イットリウム社製フッ化イットリウム(YF3)(D*50D:7.4μm、炭素:0.05質量%)のみをC工程に供用したこと及びE工程の焼結温度を1000℃としたこと以外は、比較例1と同様にして、フッ化イットリウムの焼結体を得た。
(比較例3)
比較例1のA工程及びB工程を行わず、日本イットリウム社製微粉末酸化イットリウム(Y23)(D*50D:0.24μm、炭素:0.1質量%)のみをC工程に供用したこと並びにE工程の雰囲気を大気雰囲気中としたこと及び焼結温度を1600℃とした以外は、比較例1と同様にして、酸化イットリウムの焼結体を得た。
(比較例4)
実施例1の第1工程で得られたフッ化イットリウム前駆体のケーキを、ムライト匣鉢に適量入れて、電気炉にて大気雰囲気中で900℃で24時間焼成して、フッ化イットリウムの塊を得た。その後石臼式摩耗粉砕機にて粉砕を行いフッ化イットリウムの粉末を得た。得られたフッ化イットリウムの粉末1.72kgと酸化イットリウム0.28kgを混合して、ムライト匣鉢に入れて、電気炉にて大気雰囲気中で900℃で5時間焼成して、オキシフッ化イットリウムの粉末を得た。得られた粉末の内5gを、シンターランド(株)製パルス通電加圧装置(ダイスの材質;カーボン、パンチの材質;カーボン)を用いて、真空雰囲気中、30MPa、850℃にて加圧焼結を行いφ20mm×4mmtのオキシフッ化イットリウムの焼結体を得た。
(比較例5)
実施例3の第2工程で使用する匣鉢をムライト製にしたこと並びに第2工程の焼成温度及び時間を900℃、24時間としたこと以外は、実施例3と同様にしてオキシフッ化イットリウムの焼結体を得た。
(比較例6)
実施例1の第5工程で得られた顆粒をムライト匣鉢に入れて、電気炉にて大気雰囲気中、900℃で5時間焼成したものを第6工程に供用すること以外は、実施例1と同様にしてオキシフッ化イットリウムの焼結体を得た。
(測定・評価)
得られた焼結体用材料について表1に記載の項目を以下の方法により測定した。結果を表1に示す。
<酸素量(質量%)>
不活性ガス中融解―赤外吸収法(ただし、ハロゲントラップ使用)にて酸素の質量%を測定した。
<F/REモル比>
材料のF(フッ素)含量はRigaku社製ZSX Primus IIを用いてXRF法にて測定し、粉末1kg当たりの希土類元素のモル数に換算した。また材料のRE(希土類元素)含量は、過塩素酸溶解-ICP-AES法にて希土類元素の質量%を測定し、粉末1kg当たりの希土類元素のモル数に換算した。求めたF(フッ素)含量とRE(希土類元素)含量より、F/REモル比を求めた。
<焼結体用材料のX線回折測定>
更に、得られた焼結体用材料について、有機物を除去するために大気雰囲気下で550℃で2時間焼成を行ったものを以下の方法で、粉末X線回折測定法によるX線回折測定を行った。結晶相を特定した結果を表1に示す。なお表1におけるX線回折ピーク強度は、各化合物に由来する結晶相のメインピークのピーク高さ比であって、2θ=20°~60°のメインピークのピーク高さを100としたときの値を示す。各実施例及び比較例において、希土類元素のオキシフッ化物及びREF3で表される希土類元素のフッ化物以外の化合物に由来する結晶相のメインピークのピーク高さは、REaObFcに由来する結晶相のメインピークのピーク高さに対して1%以下であった。
ただしPDFカードにおけるメインピーク位置の差が2θ=0.4°内であるY547とYF3、Gd436とGdF3、Er547とErF3の組み合わせに係る実施例1~9、11~13、比較例4~6は、上記の所定の面のピークに相当する強度(IS)を所定の面の相対強度(メインピークの強度が100)(PDFカードに記載の強度:IT)で割り返した数値をメインピークの強度(IM)としてそれぞれ使用した。
なお大気中、550℃、2時間の焼成は、各実施例及び各比較例における焼結体用材料の組成に影響を与えない。
〔X線回折測定〕
・装置:UltimaIV(株式会社リガク製)
・線源:CuKα線
・管電圧:40kV
・管電流:40mA
・スキャン速度:2度/min
・ステップ:0.02度
・スキャン範囲:2θ=20°~60°
<Al含有量の測定方法>
日立ハイテクサイエンス社製SPS3520V-DDを用いて過塩素酸溶解-ICP-AES分析方法にて、材料中のAl含量を測定した。
<Si含有量の測定方法>
ビーエルテック社製連続流れ分析装置(STAA―3)を用いて酸溶解・四フッ化けい素気化分離・モリブドけい酸青吸光光度法にて、材料中のSi含量を測定した。
<強熱減量>
測定試料である焼結体用材料を大気雰囲気中、550℃で2時間焼成した後、デシケーター中で自然放冷にて冷却した(以下、焼成から冷却までを「強熱処理」という)。強熱処理の前後で質量を測定した。
下記式の値を強熱減量とした。
式:(強熱処理前の質量-強熱処理後の質量)/強熱処理前の質量×100(質量%)
<ハウスナー比>
ハウスナー比=タップ密度(g/cm3)/嵩密度(g/cm3)にて求めた。
多機能型粉体物性測定器マルチテスターMT-1001k型(株式会社セイシン企業製)を用い、タップ法見掛け嵩密度TD(g/cm3)と静置法見掛け密度AD(g/cm3)を測定し、その比を求めた。タップ法見掛け密度TD(g/cm3)の測定は、前記測定器の取扱説明書の「7-1.擦り切り定重量法によるタッピング密度の測定方法」に従って、JIS Z 2512に準拠して行い、静置法見掛け嵩密度AD(g/cm3)の測定は、前記測定器の取扱説明書の「7-2.静カサ密度(最疎充填カサ密度)の測定方法」に従って、JIS K 5101-12-1に準拠して行った。
<BET比表面積>
BET比表面積は測定装置としてマウンテック社製Macsorbを用い、BET1点法で求めた。測定用のガスとしては窒素30体積%-ヘリウム70体積%の混合ガスを、キャリブレーション用のガスとしては純窒素を用いた。
<平均粒子径D50>
焼結体用材料を、純水が入った日機装株式会社製マイクロトラック3300EXIIの試料循環器のチャンバーに、適正濃度であると装置が判定するまで投入して、測定した。
<細孔第1ピーク、細孔第2ピーク、0.05μm以上0.5μm以下の細孔容積、5μm以上50μm以下の細孔容積>
・装置:オートポアIV(マイクロメリティクス社製)
・細孔第1ピーク:通常、一次粒子で構成された顆粒の細孔径分布を測定すると2つのピークが得られるが、このピークのうち、小径側のピークを細孔第1ピークとする。
・細孔第2ピーク:前述のピークのうち、大径側のピークを細孔第2ピークとする。
・0.05μm以上0.5μm以下の細孔容積:細孔径0.05μm以上0.5μm以下の細孔容積の積算値(表1の細孔第1容積)
・5μm以上50μm以下の細孔容積:細孔径5μm以上50μm以下の細孔容積の積算値(表1の細孔第2容積)
Figure 0007283026000001
上記方法で得られた各実施例及び比較例の焼結体について、XRFとXRD測定を焼結体用材料と同様の方法で測定して、組成比とF/REモル比を求めた。ただし焼結体は、粉末化せずにXRFとXRDの測定に供した。また焼結体のXRD測定では、550℃の焼成の前処理は行わなかった。各実施例及び比較例の焼結体のXRD測定において、希土類元素のオキシフッ化物及びREF3で表される希土類元素のフッ化物以外の化合物に由来する結晶相のメインピークのピーク高さは、REaObFcに由来する結晶相のメインピークのピーク高さに対して1%以下であった。また焼結体の一部をステンレス製の乳鉢で十分に粉砕して上記焼結体用材料と同様の方法にて、Al含有量及びSi含有量を求めた。
更に、以下の方法にて、相対密度と気孔率、ビッカース硬度を求めた。
また以下の方法にて浸漬試験及びプラズマ試験(エッチングレートの測定)に供した。
これらの結果を表2に示す。
<相対密度(%)及び気孔率>
焼結体を蒸留水に入れ、ダイアフラム型真空ポンプによる減圧下で1時間保持した後、水中重量W2[g]を測定する。また、余分な水分を湿布で取り除き、飽水重量W3[g]を測定する。その後、乾燥器に入れて焼結体を十分に乾燥させた後、乾燥重量W1[g]を測定する。以下の式により、かさ密度ρb[g/cm3]と開気孔率OPを算出する。
ρb=W1/(W3-W2)×ρ1(g/cm3
OP=(W3-W1)/(W3-W2)×100(質量%)
ここで、ρ1 [g/cm3]は蒸留水の密度である。得られたかさ密度ρbと、理論密度ρc[g/cm3]を用いて、相対密度(RD)[%]を以下の式により算出する。
RD=ρb/ρc×100(%)
なお、表2中、相対密度が「ND」とは、XRDの粉末解析データベースであるICDD(International Centre for Diffraction Data)にカード情報が存在せず、理論密度が明らかになっていないことから相対密度が計算できないものを示す。
<ビッカース硬度>
焼結体を粗研磨の後に平均粒径0.05μmのダイヤモンドスラリーを用いて研磨した。この試料を用いて、JIS R1610 に基いて、ビッカース硬度を測定した。測定には、ビッカース硬度計MVK-G1(明石製作所)を用いた。ビッカース硬度試験の条件は、荷重100gf(0.980665N)で、JIS R1610の4.6.11の規定に沿う圧痕が得られる荷重を採用し、15秒保持とし、10点測定し、平均値を求めた。圧痕を光学顕微鏡により観察し、圧痕の大きさを測定した。ビッカース硬度HVは、以下の式により算出した。
HV=(0.1891F)/d2
ここで、Fは試験荷重[N]、dは圧痕の対角線長さの平均[mm]である。
<浸漬試験>
焼結体をφ20mm×2mmtの片面鏡面研磨状態(Ra10nm以下)に加工後、50質量%HF、35質量%HClのそれぞれの水溶液が50mL入ったポリプロピレン製容器に入れて当該溶液中に常温で1週間浸漬させて、重量減少率と研磨面の表面粗さを測定し、評価した。下記の評価基準(i)及び(ii)を両方とも満たすものは○(耐性良)、下記の評価基準(i)又は(ii)のどちらか一方のみを満たすものは△(耐性並)、下記の評価基準(i)及び(ii)を両方とも満たさないものは×(耐性悪)とした。
なお評価基準は、(i)重量減少率が0.5%以下、(ii)研摩面の表面粗さの増加が20nm以下、とした。
またRa(算術平均粗さ)の測定は、触針式表面粗さ測定器(JIS B0651:2001)を用いて行った。
<プラズマ試験>
焼結体をφ20mm×2mmtの片面鏡面研磨状態(Ra10nm以下)に加工後、焼結体の半分にカプトンテープを貼り、エッチング装置(SAMCO社製RIE-10NR)のチャンバーに焼結体鏡面部が上を向いた状態で戴置してプラズマエッチングを行った。プラズマエッチング条件は以下のとおりにした。
エッチングレートの測定は、プラズマ暴露面と、プラズマ照射後テープをはがした非暴露面の段差を前述の表面粗さ測定によって計測した。測定点は焼結体1面につき3点とし、3点の平均値を求めた。
・雰囲気ガス:CF4/O2/Ar=40/20/40(cc/min)
・高周波電力:RF 300W
・圧力:5Pa
・エッチング時間:15時間
Figure 0007283026000002
上記表2の通り、各実施例の焼結体用材料によれば、得られたREaObFcを含む焼結体が緻密で硬度が高く、浸漬試験、プラズマ試験とも、薬液への浸漬やプラズマエッチングに対して優れた耐性評価が得られた。
一方、特許文献3相当品である、Al、Si量が多いYOFからなる比較例1の焼結体用材料による焼結体では、薬液浸漬やプラズマエッチングに対する耐性は各実施例に比して低かった。
また比較例2のようにYF3からなりAl、Si量が多い焼結体用材料による焼結体は、緻密さに劣り、エッチングレートが高く、比較例3のようにY23からなる焼結体用材料はAl、Si量が少なくても、その焼結体は塩酸に対する耐性に劣るものであった。
更に比較例4~6のように、REaObFcを含み、F/REが本発明と同様である場合、Al、Si量が多いと、各実施例に比して、硬さ、緻密さに劣り、薬液への浸漬やプラズマエッチングに対する耐性に劣ることが判った。
本発明の焼結体用材料及びそれを用いた焼結体の製造方法により、得られる焼結体が優れた薬品耐性とプラズマ耐性を有する。
また本発明の焼結体は、優れた薬品耐性とプラズマ耐性を有する。

Claims (11)

  1. REaObFc(但し、REが希土類元素であり、b/aが0.9以下であり、c/aが1.1以上である)で表される希土類元素のオキシフッ化物を含有し、
    材料全体における、希土類元素(RE)のモル数に対するフッ素元素(F)のモル数の比(F/REモル比)が1.3以上2.8以下であり、
    アルミニウム(Al)の含有量が50質量ppm以下であり、
    ケイ素(Si)の含有量が500質量ppm以下であり、
    水銀圧入法を用いて測定した細孔径分布において、
    細孔径0.05μm以上0.5μm以下の範囲と細孔径5μm以上50μm以下の範囲にそれぞれピークを有し、
    細孔径0.05μm以上0.5μm以下の細孔容積が0.1mL/g以上であり、且つ、細孔径5μm以上50μm以下の細孔容積が0.1mL/g以上である、焼結体用材料。
  2. REaObFc(但し、REが希土類元素であり、b/aが0.9以下であり、c/aが1.1以上である)で表される希土類元素のオキシフッ化物を含有し、
    材料全体における、希土類元素(RE)のモル数に対するフッ素元素(F)のモル数の比(F/REモル比)が1.3以上2.8以下であり、
    アルミニウム(Al)の含有量が50質量ppm以下であり、
    ケイ素(Si)の含有量が500質量ppm以下であり、以下(A)又は(B)である、焼結体用材料。
    (A)REFで表される希土類元素のフッ化物を含有せず、且つCuKα線を用いて、2θ=20~60°を走査範囲とするXRD分析において、希土類元素のオキシフッ化物以外の化合物に由来する結晶相のメインピークのピーク高さが、REaObFcで表される希土類元素のオキシフッ化物に由来する結晶相のメインピークのピーク高さに対して1%以下である。
    (B)REFで表される希土類元素のフッ化物を含有し、且つXRD分析において、希土類元素のオキシフッ化物以外に含まれる結晶相が、実質的にREFで表される希土類元素のフッ化物のみから構成される。
  3. REaObFc(但し、REが希土類元素であり、b/aが0.9以下であり、c/aが1.1以上である)で表される希土類元素のオキシフッ化物を含有し、
    材料全体における、希土類元素(RE)のモル数に対するフッ素元素(F)のモル数の比(F/REモル比)が1.3以上2.8以下であり、
    アルミニウム(Al)の含有量が50質量ppm以下であり、
    ケイ素(Si)の含有量が500質量ppm以下であり、
    強熱減量が10質量%以下である、焼結体用材料。
  4. REaObFc(但し、REが希土類元素であり、b/aが0.9以下であり、c/aが1.1以上である)で表される希土類元素のオキシフッ化物を含有し、
    材料全体における、希土類元素(RE)のモル数に対するフッ素元素(F)のモル数の比(F/REモル比)が1.3以上2.8以下であり、
    アルミニウム(Al)の含有量が50質量ppm以下であり、
    ケイ素(Si)の含有量が500質量ppm以下であり、
    BET比表面積が2m/g以上10m/g以下である、
    焼結体用材料。
  5. REaObFc(但し、REが希土類元素であり、b/aが0.9以下であり、c/aが1.1以上である)で表される希土類元素のオキシフッ化物を含有し、
    材料全体における、希土類元素(RE)のモル数に対するフッ素元素(F)のモル数の比(F/REモル比)が1.3以上2.8以下であり、
    アルミニウム(Al)の含有量が50質量ppm以下であり、
    ケイ素(Si)の含有量が500質量ppm以下であり、
    ハウスナー比(タップ密度/嵩密度)が1.0以上1.3以下である、焼結体用材料。
  6. 以下(A)又は(B)である、請求項1、3ないし5のいずれか1項に記載の焼結体用材料。
    (A)REFで表される希土類元素のフッ化物を含有せず、且つCuKα線を用いて、2θ=20~60°を走査範囲とするXRD分析において、希土類元素のオキシフッ化物以外の化合物に由来する結晶相のメインピークのピーク高さが、REaObFcで表される希土類元素のオキシフッ化物に由来する結晶相のメインピークのピーク高さに対して1%以下である。
    (B)REFで表される希土類元素のフッ化物を含有し、且つXRD分析において、希土類元素のオキシフッ化物以外に含まれる結晶相が、実質的にREFで表される希土類元素のフッ化物のみから構成される。
  7. REaObFcが、RE、RE、RE、RE、RE及びREOFから選ばれる少なくとも一種である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の焼結体用材料。
  8. 希土類元素のオキシフッ化物の希土類元素REがSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuから選ばれる一種又は二種以上である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の焼結体用材料。
  9. REaObFc(但し、REが希土類元素であり、b/aが0.9以下であり、c/aが1.1以上である)で表される希土類元素のオキシフッ化物を含有し、
    焼結体全体における、希土類元素(RE)のモル数に対するフッ素元素(F)のモル数の比(F/REモル比)が1.3以上2.8以下であり、
    アルミニウム(Al)の含有量が50質量ppm以下であり、
    ケイ素(Si)の含有量が500質量ppm以下であり、
    以下(A)又は(B)である、焼結体。
    (A)REFで表される希土類元素のフッ化物を含有せず、且つCuKα線を用いて、2θ=20~60°を走査範囲とするXRD分析において、希土類元素のオキシフッ化物以外の化合物に由来する結晶相のメインピークのピーク高さが、REaObFcで表される希土類元素のオキシフッ化物に由来する結晶相のメインピークのピーク高さに対して10%以下である。
    (B)REFで表される希土類元素のフッ化物を含有し、且つ、希土類元素のオキシフッ化物以外に含まれる結晶相が、実質的にREFで表される希土類元素のフッ化物のみから構成される。
  10. REaObFc(但し、REが希土類元素であり、b/aが0.9以下であり、c/aが1.1以上である)で表される希土類元素のオキシフッ化物を含有し、
    焼結体全体における、希土類元素(RE)のモル数に対するフッ素元素(F)のモル数の比(F/REモル比)が1.3以上2.8以下であり、
    アルミニウム(Al)の含有量が50質量ppm以下であり、
    ケイ素(Si)の含有量が500質量ppm以下であり、
    ビッカース硬度が3GPa以上である、焼結体。
  11. ビッカース硬度が3GPa以上である、請求項9に記載の焼結体。
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