以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
実施の形態1.
<全体構成>
図1は、実施の形態1に従う保護リレー装置100の全体構成の一例を示す図である。図1を参照して、保護リレー装置100は、ディジタル型の保護リレー装置であり、例えば、発電所、変電所等の電気所に設置される。保護リレー装置100は、電力系統を構成する送電線、母線および変圧器などの電気設備に関連した電流および電圧等の系統電気量を収集し、その収集した系統電気量に基づいて電気設備の機器の制御を行なう。
電気所の内部には、保護リレー装置100の他に、計器用変流器CT(Current Transformer)、計器用変圧器VT(Voltage Transformer)、遮断器150、変圧器、および断路器等が設置されている。本実施の形態では、保護リレー装置100の外部機器が遮断器150であるとして説明する。ただし、外部機器は、例えば、断路器であってもよい。
図1の例では、計器用変流器CTは、送電線Lを流れる電流を測定する。計器用変圧器VTは、送電線Lの電圧を測定する。計器用変流器CTが測定した電流、および計器用変圧器VTが測定した電圧の情報は、保護リレー装置100に入力される。
保護リレー装置100は、収集した電気量を用いてリレー演算等の電力系統を保護するために必要な演算を実行し、系統事故の発生有無を判定する。そして、保護リレー装置100は、送電線Lにおいて事故を検出すると、遮断器150に対して引き外し信号Koを出力する。なお、電流および電圧のいずれか一方のみしかリレー演算に使用されない場合には、保護リレー装置100は、リレー演算に必要な電流または電圧を取り込むように構成されていてもよい。
遮断器150は、主接点61と、主接点61を駆動するための操作機構62とを含む。操作機構62は、遮断器150を駆動するための駆動コイル63と、補助接点65とを含む。駆動コイル63は、例えば、遮断器150を投入する(すなわち、閉路する)ための投入コイルCC(closing coil)、遮断器150を遮断する(すなわち、開路する)ための引き外しコイルTC(trip coil)等である。本実施の形態では、説明の容易化のため、駆動コイル63が、引き外しコイルTCであるとする。
例えば、保護リレー装置100のディジタル出力(DO:digital output)回路から引き外し信号Koが出力されると、駆動コイル63に電流が流れて励磁され、遮断器150が遮断される。すなわち、主接点61が開路状態となる。主接点61と連動して動作する補助接点65の開閉状態を示す信号Kiが保護リレー装置100のDI回路に入力される。保護リレー装置100は、DI回路に入力された信号Kiに基づいて、遮断器150の開閉状態(この場合、遮断器150の開路状態)を把握できる。
<ハードウェア構成>
図2は、実施の形態1に従う保護リレー装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。図2を参照して、図2を参照して、保護リレー装置100は、補助変成器70と、AD(Analog to Digital)変換部72と、演算処理部90と、DI部94と、入力インターフェイス(IF)95と、通信インターフェイス(IF)96と、DO回路98とを含む。これらは、バス99で結合されている。演算処理部90は、CPU91と、RAM92と、ROM93とを含む。
補助変成器70は、計器用変流器CTおよび計器用変圧器VTから取り込んだ電気量を、リレー内部回路での信号処理に適した電圧に変換して出力する。AD変換部72は、補助変成器70から出力される電圧を取り込んでディジタルデータに変換する。具体的には、AD変換部72は、アナログフィルタと、サンプルホールド回路と、マルチプレクサと、AD変換器とを含む。
アナログフィルタは、補助変成器70から出力される信号から高周波のノイズ成分を除去する。サンプルホールド回路は、アナログフィルタから出力される信号を予め定められたサンプリング周期でサンプリングする。マルチプレクサは、CPU91から入力されるタイミング信号に基づいて、サンプルホールド回路から入力される波形信号を時系列で順次切り替えてAD変換器に入力する。AD変換器は、マルチプレクサから入力される信号をアナログデータからディジタルデータに変換する。AD変換器は、ディジタル変換した信号(すなわち、ディジタルデータ)をCPU91へ出力する。
CPU91は、予めROM93に格納されたプログラムを読み出して実行することによって、保護リレー装置100を制御する。なお、ROM93には、CPU91によって用いられる各種情報が格納されている。CPU91は、たとえば、マイクロプロセッサである。なお、当該ハードウェアは、CPU以外のFPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)およびその他の演算機能を有する回路などであってもよい。
CPU91は、バス99を介して、AD変換部72からディジタルデータを順次RAM92に格納する。CPU91は、ROM93に格納されているプログラムに従って、RAM92から必要なディジタルデータを読み出し、当該読み出したディジタルデータを用いて保護リレー演算を行ない、保護区間(例えば、送電線L)の事故の有無を判定する。CPU91は、事故を検出した場合(例えば、演算値が整定値を上回っている場合)には、保護区間を保護するために、DO回路98を介して引き外し信号を出力する。
DI部94は、遮断器150の開閉状態を示す信号(例えば、補助接点65の開閉状態を示す信号Ki)の入力を受ける。具体的には、DI部94は、複数のDI回路201,202を含む。典型的には、DI部94は、複数のDI回路が設けられた基板で構成される。例えば、DI回路201は、遮断器150に設けられたa接点の開閉状態を示す信号の入力を受ける。DI回路202は、遮断器150に設けられたb接点の開閉状態を示す信号の入力を受ける。
DO回路98は、遮断器150を投入するための信号、遮断器150を遮断するための信号等を出力する。図2の例では、保護リレー装置100が、1つのDO回路98を有する構成となっているが当該構成に限られない。保護リレー装置100は、複数のDO回路を有する構成であってもよい。
入力インターフェイス95は、典型的には、各種ボタン等であり、電力系統の運用者からの各種操作を受け付ける。また、CPU91は、通信インターフェイス96を介して、他の保護リレー装置または他の外部装置と各種情報を送受信する。
<点検方式>
図3は、実施の形態1に従う保護リレー装置100の回路構成の一例を説明するための図である。具体的には、図3には、保護リレー装置100のDI部94の周辺の回路構成が示されている。保護リレー装置100は、スイッチTX0,TX1,X0,X1と、DI部94とを含む。DI部94は、DI回路201,202とを含む。
遮断器150は、補助接点65として、a接点Yaとb接点Ybとを含む。a接点Yaおよびb接点Ybは、保護リレー装置100の外部接点に対応する。DI回路201はa接点Yaに対応して設けられ、DI回路202はb接点Ybに対応して設けられる。
正極電源ラインBPは、電気所に設けられた直流電源のプラス側の電路であり、負極電源ラインBNは、当該直流電源のマイナス側の電路である。なお、この直流電源は、保護リレー装置100の制御電源としても使用される。
スイッチTX0の一次側(すなわち、高圧側)はa接点Yaの二次側(すなわち、低圧側)に接続され、スイッチTX0の低圧側はDI回路201の高圧側に接続される。スイッチX0の高圧側は正極電源ラインBPに接続され、スイッチX0の低圧側はスイッチTX0の低圧側およびDI回路201の高圧側に接続される。
DI回路201の高圧側は、スイッチTX0の低圧側およびスイッチX0の低圧側に接続される。DI回路201の低圧側は、負極電源ラインBNに接続される。遮断器150に設けられたa接点Yaの高圧側は正極電源ラインBPに接続され、a接点Yaの低圧側はスイッチTX0の高圧側に接続される。
スイッチTX1の一次側(すなわち、高圧側)はb接点Ybの二次側(すなわち、低圧側)に接続され、スイッチTX1の低圧側はDI回路202の高圧側に接続される。スイッチX1の高圧側は正極電源ラインBPに接続され、スイッチX1の低圧側はスイッチTX1の低圧側およびDI回路202の高圧側に接続される。
DI回路202の高圧側は、スイッチTX1の低圧側およびスイッチX1の低圧側に接続される。DI回路202の低圧側は、負極電源ラインBNに接続される。遮断器150に設けられたb接点Ybの高圧側は正極電源ラインBPに接続され、b接点Ybの低圧側はスイッチTX1の高圧側に接続される。
なお、遮断器150は三相交流を扱う場合、a接点Yaの開閉状態およびb接点Ybの開閉状態は、遮断器150の各相の開閉状態に合わせてそれぞれ独立して変化する。例えば、a接点Yaの開閉状態は、ある相に設けられた主接点の開閉状態と連動しており、b接点Ybの開閉状態は他の相に設けられた主接点の開閉状態と連動している。
演算処理部90のCPU91は、系統運用者が任意に設定した自動点検周期でDI回路201,202の自動点検を実行する。なお、CPU91は、入力インターフェイス95を介して、系統運用者からの点検指示を受け付けて、DI回路201,202の点検を実行してもよい。CPU91は、各スイッチTX0,TX1,X0,X1に制御信号を与えることにより、各スイッチのON状態(すなわち、閉路状態)およびOFF状態(すなわち、開路状態)を制御して、DI回路201,202の点検を実行する。まず、DI回路201の点検方式について説明する。
CPU91は、DI回路201の自動点検を実施する場合には、スイッチTX0を開路する(すなわち、OFFにする)。これにより、遮断器150からDI回路201への入力を遮断する。なお、CPU91は、DI回路201の自動点検を実施していない通常使用時には、遮断器150からの入力を取り込むためにスイッチTX0を閉じる(すなわち、ONにする)。
CPU91は、スイッチTX0をOFFにした後、スイッチX0をON状態およびOFF状態にそれぞれ制御した場合にDI回路201から出力されるDI信号F1のオンオフ状態を確認する。ここで、DI信号F1のオン状態(以下「ON状態」とも称する。)は、DI回路201のフォトカプラのON状態に対応する。DI信号F1のオフ状態(以下「OFF状態」とも称する。)は、フォトカプラのOFF状態に対応する。例えば、DI信号F1がON状態である場合にはDI信号F1の出力値は「1」を示し、DI信号F1がOFF状態である場合にはDI信号F1の出力値は「0」を示すものとする。
スイッチX0がON状態である場合、DI回路201の高圧側にはスイッチX0を介して正極電源ラインBPが接続されるため、DI回路201に直流電圧が入力される。正常なDI回路201は、入力された直流電圧をディジタル信号であるDI信号F1に変換してCPU91に出力する。なお、DI回路201は、フォトカプラを用いることによって、入力された直流電圧を、入力側と出力側とを電気的に絶縁しつつ、CPU91に伝達することができる。
また、スイッチX0がOFF状態である場合、DI回路201の高圧側には正極電源ラインBPが接続されないため、DI回路201には直流電圧は印加されない。そのため、正常なDI回路201は、OFF状態を示すDI信号F1をCPU91に出力する。一方、DI回路201に異常が発生している場合、DI回路201は、直流電圧が入力されていないにも関わらず、ON状態を示すDI信号F1をCPU91に出力する場合がある。
上記より、スイッチTX0がOFF状態でありスイッチX0がON状態のときにDI回路201から出力されるDI信号F1がON状態であり、かつスイッチTX0がOFF状態でありスイッチX0がOFF状態のときにDI回路201から出力されるDI信号F1がOFF状態である場合に、CPU91は、DI回路201が正常であると判定する。
DI回路202についてもDI回路201と同様に点検することができる。具体的には、スイッチTX1がOFF状態でありスイッチX1がON状態のときにDI回路202から出力されるDI信号F2がON状態であり、かつスイッチTX1がOFF状態でありスイッチX1がOFF状態のときにDI回路202から出力されるDI信号F2がOFF状態である場合に、CPU91は、DI回路202が正常であると判定する。
なお、保護リレー装置100を通常使用する際には、演算処理部90のCPU91は、スイッチTX0,TX1をON、スイッチX0,X1をOFFにする。これにより、DI回路201,202は、遮断器150からの入力を受けることができる状態となる。具体的には、DI回路201は、遮断器150のa接点YaがONのときには直流電圧の入力を受けて、ON状態を示すDI信号F1をCPU91に出力する。また、DI回路202は、遮断器150のb接点YbがONのときには直流電圧の入力を受けて、ON状態を示すDI信号F2をCPU91に出力する。
図3の例では、遮断器150がa接点Yaおよびb接点Ybを含む構成について説明したが当該構成に限られず、遮断器150は、a接点Yaおよびb接点Ybのいずれか一方のみを含む構成であってもよい。例えば、遮断器150がa接点Yaのみを含む場合、保護リレー装置100にはスイッチTX0,X0が設けられ、DI部94にはDI回路201のみが設けられる。
図3の構成によると、遮断器150からの入力を遮断するためのスイッチTX0,TX1が設けられているため、これらをOFFにしておくことで、遮断器150からの入力の影響を受けずにDI回路201,202の自動点検を実行することができる。また、自動点検を行なうDI回路を系統運用者が選択することができる。例えば、DI回路202の自動点検のみを行なう場合には、CPU91は、スイッチTX1のみをOFFにした状態で、スイッチX1の開閉状態と、DI信号F2のオンオフ状態とに基づいて、DI回路202の自動点検を実行できる。
図4は、実施の形態1に従う保護リレー装置100の回路構成の他の例を説明するための図である。保護リレー装置100Aは、図1に示す保護リレー装置100に対応するが、図3の保護リレー装置100との区別のため、便宜上「A」といった追加の符号を付している。これは、以下の図5についても同様である。
図4を参照して、保護リレー装置100Aは、スイッチTX0,TX1,X3と、ダイオード21,22と、DI部94とを含む。図4に示す保護リレー装置100Aの構成は、図3に示す保護リレー装置100におけるスイッチX0,X1の代わりにスイッチX3を設け、さらにダイオード21,22を追加した構成に対応する。
具体的には、スイッチX3の高圧側は正極電源ラインBPに接続される。スイッチX3の低圧側は、ダイオード21を介してスイッチTX0の低圧側およびDI回路201の高圧側に接続されるとともに、ダイオード22を介してスイッチTX1の低圧側およびDI回路202の高圧側に接続される。
保護リレー装置100を通常使用する際には、CPU91は、スイッチTX0,TX1をON、スイッチX3をOFFにする。ダイオード21は、a接点YaがONのときに、電流がDI回路202側へ逆流するのを防止するために設けられる。同様に、ダイオード22は、b接点YbがONのときに、電流がDI回路201側へ逆流するのを防止するために設けられる。
DI回路201,202の自動点検の際には、CPU91は、スイッチTX0,TX1をOFFにする。この状態で、CPU91は、スイッチX3を開閉させて、DI信号F1,F2のオンオフ状態を確認する。具体的には、スイッチX3がONのときにDI信号F1がON状態であり、かつスイッチX3がOFFのときにDI信号F1がOFF状態である場合に、CPU91は、DI回路201が正常であると判定する。DI回路202についても同様である。
図4の構成によると、図3の構成と比較して、スイッチの数を削減することができる。特に、スイッチが電磁石を使用した機械式リレーで構成されている場合、スイッチの数を削減することにより、保護リレー装置内の実装部品点数を削減することができ、小型化、軽量化も可能となる。
図5は、実施の形態1に従う保護リレー装置100の回路構成のさらに他の例を説明するための図である。図5を参照して、保護リレー装置100Bの回路構成は、DI部94BがスイッチTX0,TX1,X3およびダイオード21,22を含む点で、図4に示す保護リレー装置100Aの回路構成と異なる。DI回路201,202の点検方式については図4で説明した内容と同様である。
この場合、スイッチTX0,TX1,X3には、機械式リレーはなく小型の半導体スイッチが用いられる。なお、DI回路201,202には大電流が流れないため、スイッチTX0,TX1,X3を半導体スイッチで構成できる。図5の構成によると、図4の構成よりもさらに、保護リレー装置内の部品の実装密度を向上させることができ、また、小型化、軽量化も可能となる。
<機能構成>
図6は、実施の形態1に従う保護リレー装置100の機能構成を示すブロック図である。図6を参照して、保護リレー装置100は、主な機能構成として、電気量取得部402と、事故検出部404と、モード設定部406と、点検実行部408とを含む。これらの各機能は、例えば、演算処理部90のCPU91がROM93に格納されたプログラムを実行することによって実現される。なお、これらの機能の一部または全部はハードウェアで実現されるように構成されていてもよい。
電気量取得部402は、計器用変流器CTにより検出された電流と、計器用変圧器VTにより検出された電圧とを含む電気量を取得する。なお、電気量取得部402は、電流または電圧のみを電気量として取得する構成であってもよい。
事故検出部404は、取得された電気量を用いて、電力系統(例えば、送電線L)を保護するためのリレー演算を実行し、当該リレー演算結果に基づいて事故を検出する。
モード設定部406は、保護リレー装置100の動作モードを、通常モードあるいはDI回路201,202を点検するための点検モードに設定する。なお、通常モードは、保護リレー装置100を通常使用する際のモードである。具体的には、モード設定部406は、予め定められた自動点検周期が到来した場合、あるいは系統運用者から点検指示を受け付けた場合には、動作モードを点検モードに設定する。
点検実行部408は、DI回路201,202の点検を実行する。ここで、図3に示す回路構成においてDI回路201を点検する場合を想定する。モード設定部406により動作モードが点検モードに設定された場合、点検実行部408は、DI回路201の点検処理を開始する。
まず、点検実行部408は、スイッチTX0を開路した状態でスイッチX0を開閉する。点検実行部408は、制御信号をスイッチTX0およびスイッチX0に与えることで上記の開閉制御を実行する。点検実行部408は、スイッチX0の開閉状態と、DI回路201から出力されるDI信号F1のオンオフ状態とに基づいて、DI回路201の点検を実行する。具体的には、点検実行部408は、スイッチX0が閉じた状態のときにON状態を示すDI信号F1を受信し、かつスイッチX0が開路状態のときにOFF状態を示すDI信号F1を受信した場合に、DI回路201が正常であると判定する。
また、点検実行部408は、事故検出部404により事故が検出された場合であって、かつモード設定部406により保護リレー装置100の動作モードが点検モードに設定されている場合にはDI回路201の点検を中止する。点検実行部408により点検が中止されると、モード設定部406は、保護リレー装置100の動作モードを点検モードから通常モードに切り替える。
なお、事故検出部404は、事故を検出した場合であって、かつモード設定部406により保護リレー装置100の動作モードが点検モードに設定されていない場合には、DO回路98を介して、引き外し信号を出力する。これにより、遮断器150が遮断される。
<処理手順>
図7は、実施の形態1に従う保護リレー装置100の処理手順の一例を示すフローチャートである。典型的には、以下の各ステップは、保護リレー装置100の演算処理部90のCPU91によって実行される。
図7を参照して、CPU91は、計器用変流器CTおよび計器用変圧器VTから取得した電気量を用いてリレー演算を実行する(ステップS10)。CPU91は、リレー演算結果に基づいて電力系統に事故が発生している否かを判断する(ステップS12)。
事故が発生していない場合には(ステップS12においてNO)、CPU91は、点検モードを起動するか否かを判断する(ステップS16)。例えば、CPU91は、予め定められた自動点検周期が到来した場合、あるいは系統運用者から点検指示を受け付けた場合には、点検モードを起動すると判断する。なお、既に点検モードが起動されている場合(すなわち、保護リレー装置100の現在の動作モードが点検モードである場合)には、CPU91は点検モードを起動しない。
点検モードを起動する場合(ステップS16においてYES)、CPU91は、保護リレー装置100の動作モードを点検モードに移行させて(ステップS22)、ステップS10の処理に戻る。点検モードを起動しない場合(ステップS16においてNO)、CPU91は、ステップS10の処理に戻る。
一方、事故が発生している場合には(ステップS12においてYES)、CPU91は、現在の動作モードが点検モードであるか否かを判断する(ステップS14)。動作モードが点検モードである場合には(ステップS14においてYES)、CPU91は、DI部94の点検を中止して(ステップS18)、ステップS10の処理に戻る。動作モードが点検モードではない(すなわち、通常モード)である場合には(ステップS14においてNO)、CPU91は、DO回路98を介して引き外し信号を出力して(ステップS20)、ステップS10の処理に戻る。
上記の処理によると、DI部94の自動点検中に事故が発生した場合には、自動点検を中止して引き外し信号が出力される。そのため、DI部94の自動点検中であっても事故への対応を速やかに行なうことができる。
図8は、実施の形態1に従う保護リレー装置100が実行する点検処理手順の一例を示すフローチャートである。ここでは、例えば、CPU91は、図3の回路構成においてDI回路201の点検を実行するものとする。なお、CPU91は、図8に示す点検処理と、図7に示す処理とを同時並行で実行するように構成される。
図8を参照して、CPU91は、現在のDI回路201の状態を記憶する(ステップS50)。具体的には、CPU91は、自動点検直前のDI回路201からのDI信号F1のオンオフ状態をメモリ(例えば、RAM92)に記憶する。
ステップS50の処理は、保護リレー装置100の保護機能に影響を与えないために行なわれる。具体的には、DI回路201の自動点検中には、a接点Yaの開閉状態に関わらず強制的にDI回路201に直流電圧が印加される。そのため、DI信号F1のオンオフ状態がa接点Yaの開閉状態を反映したものとはならない。そこで、保護リレー装置100は、自動点検直前のDI信号F1のオンオフ状態(すなわち、a接点Yaの開閉状態)を記憶しておく。
CPU91は、スイッチTX0をOFFにする(ステップS52)。CPU91は、スイッチX0をONにしてDI回路201からのDI信号F1のオンオフ状態を確認する(ステップS54)。具体的には、CPU91は、ON状態を示すDI信号F1を受信したか否かを確認する。続いて、CPU91は、スイッチX0をOFFにしてDI回路201からのDI信号F1のオンオフ状態を確認する(ステップS56)。
CPU91は、ステップS54,S56の処理によるDI信号F1のオンオフ状態に基づいて、DI回路201が正常か否かを判断する(ステップS58)。具体的には、CPU91は、スイッチX0がONのときにON状態を示すDI信号F1を受信し、かつスイッチX0がOFFのときにOFF状態を示すDI信号F1を受信した場合に、DI回路201が正常であると判断する。
DI回路201が正常である場合には(ステップS58においてYES)、CPU91は、DI回路201が正常であること示す正常結果を出力する(ステップS60)。CPU91は、点検モードを終了して動作モードを通常モードへ移行させる(ステップS64)。一方、DI回路201が正常ではない場合には(ステップS58においてNO)、CPU91は、DI回路201が不良(すなわち、異常)であること示す不良結果を出力して(ステップS62)、ステップS64の処理を実行する。例えば、CPU91は、ディスプレイ、ランプ、警報用接点等を用いて不良結果を系統運用者に報知してもよいし、不良結果を音声出力してもよい。
上記において、CPU91は、DI回路201が正常である場合にステップS60を実行せずに、DI回路201の点検回数をカウントする構成であってもよい。
<利点>
実施の形態1によると、DI回路の自動点検化により、保守作業者が現地で作業することなく、簡易にDI回路の健全性を定期的に確認できる。また、1つの外部接点に対してDI回路を二重化することなく、また、連動して動作するa接点およびb接点の情報を取り込むことなく、DI回路の健全性を確認できる。このように、簡易な構成により、DI回路を適切に点検することができる。
実施の形態2.
実施の形態1では、点検によりDI回路が正常か異常かを判定する構成について説明したが、実施の形態2では、DI回路が劣化しているか否かをさらに判定する構成について説明する。
<点検方式>
図9は、実施の形態2に従う保護リレー装置100Cの回路構成を説明するための図である。保護リレー装置100Cは、図1に示す保護リレー装置100に対応するが、実施の形態1との区別のため、便宜上「C」といった追加の符号を付している。保護リレー装置100Cは、図3の保護リレー装置100の構成において、スイッチX0を電圧生成回路300に置き換え、スイッチX1を電圧生成回路301に置き換えた構成に相当する。
スイッチTX0の高圧側はa接点Yaの低圧側に接続され、スイッチTX0の低圧側はDI回路201の高圧側に接続される。電圧生成回路300の一次側(すなわち、入力側)は、正極電源ラインBPに接続されており、電圧生成回路300の二次側(すなわち、出力側)は、スイッチTX0の低圧側およびDI回路201の高圧側に接続されている。a接点Yaの高圧側は正極電源ラインBPに接続され、a接点Yaの低圧側はスイッチTX0の高圧側に接続される。
スイッチTX1の高圧側はb接点Ybの低圧側に接続され、スイッチTX1の低圧側はDI回路202の高圧側に接続される。電圧生成回路301の入力側は、正極電源ラインBPに接続され、電圧生成回路301の出力側は、スイッチTX1の低圧側およびDI回路202の高圧側に接続される。b接点Ybの高圧側は正極電源ラインBPに接続され、b接点Ybの低圧側はスイッチTX1の高圧側に接続される。
CPU91は、系統運用者が任意に設定した自動点検周期でDI部94の自動点検を実行する。CPU91は、スイッチTX0,TX1をOFFにした後、電圧生成回路300,301から基準電圧波形を出力させることにより、DI回路201,202の点検を実行する。
CPU91は、DI回路201の自動点検を実行する場合、まず、スイッチTX0をOFFにする。次に、CPU91は、DI回路201の点検用の基準電圧波形を出力するように電圧生成回路300に指示する。電圧生成回路300は、当該指示に従って基準電圧波形を出力する。
図10は、実施の形態2に従うDI回路の点検方式を説明するための図である。図10を参照して、電圧生成回路300は、基準電圧波形として、図10に示すような三角波500を生成する。ここで、図10中の斜線部分は、DI回路201が動作する(すなわち、DI信号F1がON状態となる)電圧の規定範囲を示している。DI回路201がこの規定範囲内で動作すれば正常であると判定される。電圧Vhは規定範囲の上限値を示し、電圧Vlは規定範囲の下限値を示している。
三角波500が電圧生成回路300から出力されると、DI回路201に三角波500が印加される。このとき、CPU91は、DI回路201のON時間を示す時間Tonを測定する。具体的には、CPU91は、DI回路201から受信したDI信号F1がON状態(すなわち、出力値が「1」)になった時刻から、DI信号F1がOFF状態(すなわち、出力値が「0」)になった時刻までの時間(すなわち、DI信号F1のON状態の継続時間)を時間Tonとして測定する。なお、DI回路201のON時間は、DI回路201を構成しているフォトカプラのON時間に相当する。
図10に示すように、測定された時間Tonに基づいて、DI回路201の動作電圧Vshが一意に定まる。動作電圧Vshは、DI回路201がON状態となる電圧である。動作電圧VshがVl≦Vsh≦Vhを満たす場合には、DI回路201は正常である。具体的には、CPU91は、時間Tonが、電圧Vhに対応する時間T1以上であって、かつ電圧Vlに対応する時間T2以下である場合(すなわち、T1≦Ton≦T2の場合)には、DI回路201が正常であると判定する。
また、DI回路201の劣化状況を把握するために、電圧Vhよりも高い電圧Vth1に対応する時間T3と、電圧Vlよりも低い電圧Vth2に対応する時間T4が定義される。ここで、時間T1,T2,T3,T4は、T3<T1<T2<T4の関係を満たす。
CPU91は、時間Tonが、時間T1よりも小さく(すなわち、短く)、かつ時間T3以上である場合(すなわち、T3≦Ton<T1の場合)には、DI回路201が劣化していると判定する。また、CPU91は、時間Tonが、時間T2よりも大きく(すなわち、長く)、かつ時間T4以下である場合(すなわち、T2<Ton≦T4の場合)にも、DI回路201が劣化していると判定する。
さらに、CPU91は、時間Tonが、時間T3よりも小さい、または時間T4よりも大きい場合(すなわち、Ton<T3またはT4<Tonの場合)には、DI回路201が異常であると判定する。なぜなら、この場合には、動作電圧Vshが高すぎる、あるいは低すぎると考えられるためである。
上記のように、CPU91は、基準電圧波形が出力されているときのDI信号F1のオンオフ状態に基づいて、DI回路201の点検を実行する。具体的には、CPU91は、DI信号F1のオンオフ状態から時間Tonを測定し、時間Tonと、時間T1,T2,T3,T4とを比較することにより、DI回路201が正常なのか、劣化しているのか、異常なのかを判定することができる。なお、DI回路202の自動点検についても同様に行なわれる。
上記では、基準電圧波形が三角波500であるとして説明したが、当該構成に限られない。基準電圧波形は、最小電圧値から最大電圧値へ連続的に変化し、そして、最大電圧値から最小電圧値へ連続的に変化する電圧波形であればよい。そのため、基準電圧波形は、直線状に変化するのではなく、放物線のように曲線状に変化してもよい。
<機能構成>
図11は、実施の形態2に従う保護リレー装置100Cの機能構成を示すブロック図である。図11を参照して、保護リレー装置100Cは、図6に示す保護リレー装置100の点検実行部408を、点検実行部408Cに置き換えた構成に相当する。以下では、主に、点検実行部408Cの機能構成について説明する。なお、説明の容易化のため、DI回路201を点検する場合を想定する。
保護リレー装置100Cの動作モードが点検モードに設定された場合、点検実行部408Cは、DI回路201の点検処理を開始する。具体的には、点検実行部408Cは、スイッチTX0を開路した状態で、電圧生成回路300から基準電圧波形を出力させる。具体的には、点検実行部408Cは、電圧生成回路300に基準電圧波形の出力指令を与える。点検実行部408Cは、基準電圧波形の出力中のDI信号F1のオンオフ状態に基づいて、DI回路201の点検を実行する。
ある局面では、点検実行部408Cは、基準電圧波形の出力中に、DI回路201から出力されるDI信号F1がON状態になってから、DI信号F1がOFF状態になるまでの時間(例えば、時間Ton)を測定する。点検実行部408Cは、時間Tonが時間T1以上であって、かつ時間T2(ただし、T1<T2)以下である場合、DI回路201が正常であると判定する。
他の局面では、点検実行部408Cは、時間Tonが時間T1よりも小さくかつ時間T3(ただし、T3<T1)以上である場合、または、時間Tonが時間T2よりも大きくかつ時間T4(ただし、T2<T4)以下である場合、DI回路201が劣化していると判定する。
さらに他の局面では、点検実行部408Cは、時間Tonが時間T3よりも小さい、または、時間Tonが時間T4よりも大きい場合、DI回路201が異常であると判定する。
<処理手順>
図12は、実施の形態2に従う保護リレー装置100Cが実行する点検処理手順の一例を示すフローチャートである。ここでは、例えば、CPU91は、DI回路201の点検を実行するものとする。なお、CPU91は、図12に示す点検処理と、図7に示す処理とを同時並行で実行するように構成される。
図12を参照して、ステップS50,S52の処理については、図8で説明した処理と同様であるため、その詳細な説明は繰り返さない。
CPU91は、スイッチTX0をOFFにした後、電圧生成回路300に基準電圧波形を出力させる(ステップS70)。CPU91は、基準電圧波形の出力中のDI信号F1のオンオフ状態に基づいて、DI回路201のON時間(すなわち、時間Ton)を測定する(ステップS72)。CPU91は、時間Tonが異常であるか否かを判断する(ステップS74)。具体的には、CPU91は、時間Tonが時間T3よりも小さいとの条件、および時間Tonが時間T4よりも大きいとの条件のいずれかを満たすか否かを判断する。CPU91は、両条件のいずれかを満たす場合には時間Tonが異常であると判断する。
時間Tonが異常である場合(ステップS74においてYES)、CPU91は、DI回路201が不良であること示す不良結果を出力して(ステップS62)、保護リレー装置100Cの動作モードを通常モードへ移行させる(ステップS64)。時間Tonが異常ではない場合(ステップS74においてNO)、CPU91は、時間Tonが規定時間内であるか否かを判断する(ステップS76)。具体的には、CPU91は、時間Tonが時間T1以上かつ時間T2以下であるとの条件を満たすか否かを判断する。CPU91は、当該条件を満たす場合には時間Tonが規定時間内であると判断する。
時間Tonが規定時間内である場合には(ステップS76においてYES)、CPU91は、DI回路201が正常であること示す正常結果を出力して(ステップS60)、保護リレー装置100Cの動作モードを通常モードへ移行させる(ステップS64)。
時間Tonが規定時間内ではない場合には(ステップS76においてNO)、CPU91は、DI回路201が劣化していることを通知する(ステップS80)。例えば、CPU91は、ディスプレイ、ランプ、警報用接点等を用いてDI回路201の劣化を系統運用者に報知してもよいし、音声出力により当該劣化を報知してもよい。そして、CPU91は、保護リレー装置100Cの動作モードを通常モードへ移行させる(ステップS64)。
<変形例>
実施の形態2の変形例として、上述した点検方式とは異なる点検方式について説明する。変形例に従う保護リレー装置100Cの回路構成は、図9の回路構成と同様である。
(点検方式)
図13は、実施の形態2の変形例に従う点検方式を説明するための図である。図13を参照して、電圧生成回路300が基準電圧波形として三角波500を生成する点については同様である。
CPU91は、DI回路201の自動点検を実行する場合、スイッチTX0をOFFにする。次に、CPU91は、直流電圧を出力するように電圧生成回路300に指示する。この直流電圧は、時間に応じて電圧値が変化しない電圧である。CPU91は、ある電圧値の直流電圧が印加されたDI回路201からのDI信号F1がON状態か否かを判断する。CPU91は、DI回路201からのDI信号F1がOFF状態であれば、直流電圧の電圧値を増大させる。このように、CPU91は、直流電圧の電圧値を0から徐々に上げながら、DI信号F1がON状態となった電圧値を測定する。この測定された電圧値が、DI回路201の動作電圧Vshとなる。
CPU91は、動作電圧Vshが基準電圧範囲外(例えば、Vsh≧Vmax)である場合には、DI回路201が異常であると判定する。電圧Vmaxは、三角波500の最大値に相当する。CPU91は、動作電圧Vshが基準電圧範囲内(例えば、0<Vsh<Vmax)である場合には、電圧生成回路300から三角波500を出力させる。CPU91は、測定した動作電圧Vshと、三角波500を出力させた場合のDI信号F1のオンオフ状態とに基づいて、DI回路201の応答性を判定する。
具体的には、三角波500の電圧値が最小値から最大値へ連続的に増大する領域510において、三角波500の電圧値が動作電圧Vshと一致する時刻はt1である。そして、CPU91は、時刻t2において、DI回路201からON状態を示すDI信号F1を受信したとする。この場合、CPU91は、時刻t1から、ON状態を示すDI信号F1を受信した時刻t2までの時間を、DI回路201がONする際の応答時間TRonとして測定する。
また、三角波500の電圧値が最大値から最小値へ連続的に低下する領域520において、三角波500の電圧値が動作電圧Vshと一致する時刻はt3である。そして、CPU91は、時刻t4において、DI回路201からOFF状態を示すDI信号F1を受信したとする。この場合、CPU91は、時刻t3から、OFF状態を示すDI信号F1を受信した時刻t4までの時間を、DI回路201がOFFする際の応答時間TRoffとして測定する。
応答時間TRonおよび応答時間TRoffが閾値Tth未満である場合には、DI回路201の応答性が良好であることを意味する。そのため、CPU91は、DI回路201が正常であると判定する。一方、応答時間TRonおよび応答時間TRoffの少なくとも一方が閾値Tth以上である場合には、DI回路201の応答性が悪いことを意味する。そのため、CPU91は、DI回路201が劣化していると判定する。
上記のように、CPU91は、DI回路201に直流電圧を印加した場合のDI信号F1のオンオフ状態に基づいてDI回路201の動作電圧Vshを測定し、この動作電圧Vshに基づいてDI回路201が異常か否かを判定する。CPU91は、DI回路201が異常ではないと判定すると、DI回路201に三角波500を印加した場合のDI信号F1のオンオフ状態に基づいてDI回路201の応答時間TRon,TRoffを測定する。CPU91は、応答時間TRon,TRoffと閾値Tthとを比較することにより、DI回路201が正常なのか、劣化しているのかを判定する。
上記では、基準電圧範囲を0よりも大きく電圧Vmaxよりも小さい範囲に設定する構成について説明したが、当該構成に限られない。例えば、基準電圧範囲を、これよりも狭い電圧V1以上かつ電圧Vh以下の範囲に設定する構成であってもよい。
(機能構成)
実施の形態2の変形例に従う保護リレー装置100Cの機能構成は、図11に示す機能構成と同様である。ただし、点検実行部408Cの機能が異なるため、当該機能について説明する。なお、説明の容易化のため、DI回路201を点検する場合を想定する。
保護リレー装置100Cの動作モードが点検モードに設定された場合、点検実行部408Cは、DI回路201の点検処理を開始する。まず、点検実行部408Cは、スイッチTX0を開路した状態で、電圧生成回路300から直流電圧を出力させる。
次に、点検実行部408Cは、電圧生成回路300からの直流電圧に基づいて、DI回路201が動作する(すなわち、ON状態となる)動作電圧を測定する。具体的には、点検実行部408Cは、直流電圧の電圧値を徐々に増大していったときに、DI回路201からON状態を示すDI信号F1を受信した際の直流電圧の電圧値をDI回路201の動作電圧として測定する。点検実行部408Cは、測定した動作電圧が基準電圧範囲外(例えば、Vsh>Vmax)である場合、DI回路201が異常であると判定する。
ある局面では、測定した動作電圧が基準電圧範囲内(例えば、0<Vsh<Vmax)である場合、点検実行部408Cは、三角波500が最小電圧値から最大電圧値へ連続的に変化しているときに、三角波500が動作電圧に到達してから、ON状態を示すDI信号F1を受信するまでの時間(例えば、応答時間TRon)を測定する。点検実行部408Cは、応答時間TRonが閾値Tth以上である場合、DI回路201が劣化していると判定する。
他の局面では、点検実行部408Cは、三角波500が最大電圧値から最小電圧値へ連続的に変化しているときに、三角波500が動作電圧に到達してから、OFF状態を示すDI信号F1を受信するまでの時間(例えば、応答時間TRoff)を測定する。点検実行部408Cは、応答時間TRoffが閾値Tth以上である場合、DI回路201が劣化していると判定する。
さらに他の局面では、点検実行部408Cは、応答時間TRonおよび応答時間TRoffが閾値Tth未満である場合に、DI回路201が正常であると判定する。
(処理手順)
図14は、実施の形態2の変形例に従う保護リレー装置100Cが実行する点検処理手順の一例を示すフローチャートである。ここでは、例えば、CPU91は、DI回路201の点検を実行するものとする。
図14を参照して、ステップS50,S52の処理については、図8で説明した処理と同様であるため、その詳細な説明は繰り返さない。
CPU91は、スイッチTX0をOFFにした後、電圧生成回路300に直流電圧を出力させることにより、DI回路201の動作電圧を測定する(ステップS90)。CPU91は、動作電圧が基準電圧範囲内であるか否かを判断する(ステップS92)。動作電圧が基準電圧範囲外である場合(ステップS92においてNO)、CPU91は、DI回路201が不良であること示す不良結果を出力して(ステップS62)、保護リレー装置100Cの動作モードを通常モードへ移行させる(ステップS64)。
動作電圧が基準電圧範囲内である場合(ステップS92においてYES)、CPU91は、基準電圧波形を出力させる(ステップS70)。CPU91は、基準電圧波形の出力中のDI信号F1のオンオフ状態に基づいて、DI回路201の応答時間TRon,TRoffを測定する(ステップS94)。
CPU91は、DI回路201の応答性が正常であるか否かを判断する(ステップS96)。具体的には、CPU91は、応答時間TRonおよび応答時間TRoffの両方が閾値Tth未満であるか否かを判断する。応答時間TRonおよび応答時間TRoffの両方が閾値Tth未満である場合に、CPU91はDI回路201の応答性が正常であると判断する。
DI回路201の応答性が正常である場合には(ステップS96においてYES)、CPU91は、DI回路201が正常であること示す正常結果を出力して(ステップS60)、保護リレー装置100Cの動作モードを通常モードへ移行させる(ステップS64)。DI回路201の応答性が正常ではない場合には(ステップS96においてNO)、CPU91は、DI回路201が劣化していることを通知して(ステップS80)、保護リレー装置100Cの動作モードを通常モードへ移行させる(ステップS64)。
<利点>
実施の形態2によると、実施の形態1の利点に加えて、DI回路の劣化を系統運用者に通知することができる。これにより、系統運用者はDI回路の劣化状況を把握できるため、DI回路が故障する前に定期点検等でDI回路が搭載された基板を交換でき、予期しない基板故障によるトラブルが発生し復旧に時間を要するといった事態等を回避できる。
その他の実施の形態.
(1)上述した実施の形態2の図9では、図3の回路構成のスイッチX0を電圧生成回路300に置き換え、スイッチX1を電圧生成回路301に置き換えた構成について説明したが、当該構成に限られない。図4あるいは図5の回路構成のスイッチX3を電圧生成回路300に置き換える構成であってもよい。なお、点検方式について上述した実施の形態2と同様である。
(2)上述の実施の形態として例示した構成は、本発明の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能である。また、上述した実施の形態において、他の実施の形態で説明した処理および構成を適宜採用して実施する場合であってもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。