以下、図面について、本発明の一実施例を詳細する。
(1)本実施形態によるインタラクティブ情報伝達システムの構成
図1及び図2は全体として本実施の形態によるインタラクティブ情報伝達システム1を示し、熟練者側に設けられた指導側情報処理装置2と協働者側に設けられた協働側情報処理装置3との間をネットワーク4を介して通信接続しておき、熟練者と協働者とが相互に情報授受しながら、熟練者が特定の作業に関して自己の技能を協働者に対して指導するようになされている。
指導側情報処理装置2は、指導側制御部10の統括制御下において、指導側通信部11と指導側映像表示部12と視線検知部13と動き検知ユニット14とを有する。指導側通信部11は、動き検知ユニット14から無線LANや近距離無線通信等を介して得られた手先動作データD1をリアルタイムでネットワーク4を介して送信する。
指導側映像表示部12は、映像用ディスプレイ及びスピーカを有し、指導側通信部11にてネットワーク4を通じて無線LANや近距離無線通信等を介して受信した映像を表示する。
視線検知部13は、指導側映像表示部12に表示されている映像の表示範囲内における熟練者の視線延長先の位置を視線位置データD2として検知する。すなわち、視線検知部13は、協働者の眼球の動きを画像認識して当該協働者の視線を検知し、指導側映像表示部12に表示されている映像の表示範囲内の視線の位置を算出する。視線検知部13の構成及び方法については特に限定しないが、撮像方式の他には、赤外線差分画像を用いた方式や、ハーフミラー搭載の眼鏡状センサによる視線特定方式なども適用してもよい。
例えば、赤外線差分画像を用いた方式は、視線上に光源を置いた場合に目から強い反射像が得られることを利用したものであり、異なる波長を有する2つの赤外線を協働者の目に照射し、それぞれの反射画像の差分から虹彩部の反射像を抽出して、この反射像から協働者の視線を特定する方式である。
動き検知ユニット14は、熟練者の手元を中心とする実技範囲内を3次元方向から撮影するための複数の撮像カメラ(立体撮像部)15A、15B(本実施形態では2台であるが3台以上でも可)を有し、熟練者の手先に所定パターンの模様が形成されたグローブ16を装着させた状態において、グローブ16に対して複数方向から撮像して、指導側制御部(動作演算部)10が協働者の視線の延長先を原点とする3次元座標を演算することにより、熟練者の各指先をエンドポイントとしてそれぞれ3次元方向の動きに応じた手先動作データD1を検知する。
この指導側情報処理装置2において、指導側通信部11は、視線検知部13から得られた視線位置データD2及び動き検知ユニット14から得られた指先動作データD1をリアルタイムでネットワーク4を介して協働側情報処理装置3に送信する。
また協働側情報処理装置3は、協働側制御部20の統括制御下において、協働側通信部21と対象物撮像部22と協働側映像表示部23と力変位伝達ユニット24とを有する。協働側通信部21は、指導側送信部11からネットワーク4を通じて送信される視線位置データD2及び手先動作データD1を無線LANや近距離無線通信等を介して受信する。対象物撮像部22は、撮像カメラからなり、協働者が作業を行う際の対象物を中心として撮像する。
協働側映像表示部23は、対象物撮像部22により撮像される映像を表示すると同時に、表示範囲内において協働側通信部21にて受信した視線位置データD2に基づく熟練者の視線延長先の位置をマーク表示する。すなわち指導側映像表示部12の表示範囲に2次元座標系を設定した場合に、視線位置データD2に基づく座標位置と一致する座標位置にて協働側映像表示部23の表示範囲にリアルタイムで所定のマークM1を表示する。
力変位伝達ユニット24は、協働者の各指先にそれぞれ装着されるエンドエフェクタ25を有し、当該各エンドエフェクタ25について協働側通信部21にて受信した指先動作データD1に基づく3次元方向の動きを伝達しながら、当該各指に対して3次元的な動作を促すような力覚を与える。
協働側通信部21は、対象物撮像部22により撮像される映像とともに、力変位伝達ユニット24の伝達結果である各エンドエフェクタ25の物理フィードバック情報D3を、ネットワーク4を介して指導側情報処理装置2における指導側通信部11に送信する。
このように発明によるインタラクティブ情報伝達システム1では、熟練者は、協働者が扱う対象物を中心とする映像と同一の映像を目視しながら、自己の視線先の位置をリアルタイムで協働者に伝達すると同時に、自己の指先の3次元方向の動きをリアルタイムで協働者の各指に力覚として伝達させるように指導しながら、当該伝達結果を熟練者にフィードバックする。
この結果、協働者は、自分の作業を行う際に、遠隔地にいる熟練者と臨場感を共有しながら、当該熟練者の暗黙知である手技を間接的にリアルタイムで指導を受けることができる。さらに熟練者は協働者への力覚伝達結果をフィードバック的に感知することにより、自己の指導内容と協働者の応答内容とのギャップをリアルタイムで感知することができる。
後述するが、本実施形態によるインタラクティブ情報伝達システム2は、指導側情報処理装置2及び協働側情報処理装置3における熟練者及び協働者の一連の動作内容を含む種々の情報がネットワーク4を介してデータ管理装置40にサーバ記録されるようになされている。
なお、指導側情報処理装置2及び協働側情報処理装置3においては、後述する実施形態において、指導側制御部10及び協働側制御部20の制御下にて、周辺温度を共有するための協働者側の周辺温度計測部50及び熟練者側の指先温度調整部51と、種々のデータ群映像を共有するための協働者側の協働側データ表示部60及び熟練者側の指導側データ表示部61と、協働側の周囲音を共有するための協働者側の周囲音集音部70及び熟練者側の周囲音再生部71と、熟練者側から協働者側への音声指導のための協働者側のスピーカ80及び熟練者側のマイクロホン81とが設けられている。
(2)本実施の形態による力変位伝達ユニットの構成
協働側情報処理装置3における力変位伝達ユニット24は、詳細構成は複数実施例として後述するが、図3に示すように、協働者の少なくとも母指、示指及び中指を含む各指先にそれぞれ装着されるエンドエフェクタ25と力覚伝達駆動部30と信号変換部31と力覚伝達制御部32とを有する。なお本実施形態では、信号変換部31及び力覚伝達制御部32は、協働側制御部20の部分的機能として実行し得るようになされている。
力覚伝達駆動部30は、各エンドエフェクタ25をそれぞれ指の伸展又は屈曲方向、当該指の内転又は外転方向及び当該指の周回方向に誘導するように駆動する。
信号変換部31は、協働側通信部21にて受信した手先動作データD1に基づいて、熟練者の各エンドポイントごとの3次元方向の動きを、当該エンドポイントの位置、速度、加速度、角速度、力、モーメントに分解して、それぞれ動作要素データD4に変換する。
力覚伝達制御部32は、各エンドエフェクタ25の各方向における位置、速度、加速度、角速度、力、モーメントが信号変換部から得られた動作要素データD4に基づく状態となるように、力覚伝達駆動部30を制御する。
この結果、協働者の各指に装着するエンドエフェクタ25を、熟練者の各指先であるエンドポイントの3次元方向の動きに合わせて駆動することにより、協働者の各指に伸展又は屈曲方向、当該指の内転又は外転方向及び当該指の周回方向に誘導するような力覚を付与することができる。
さらに協働側情報処理装置3における力変位伝達ユニット24は、外部操作に応じた設定内容を変更する伝達比設定部33を有し、協働者による操作に応じて、各エンドエフェクタ25に対する手先動作データD1に基づく3次元方向の動きの伝達比を可変設定する。信号処理部31は、熟練者の各エンドポイントの動作内容である手先動作データD1を伝達比設定部33により設定された伝達比に調整して、各エンドエフェクタ25の3次元方向の動きである動作要素データD4に変換する。
この結果、協働者は自己の作業に支障が生じると判断した場合、自ら伝達比を調整することにより、熟練者の各指先の3次元方向の動きを伝達される度合いを高くしたり低くしたりすることが可能となる。
例えば、伝達比が1の場合には、熟練者の指先の動きに関連する情報(力、速度、変位)は、遠隔では熟練者自身が作業(カテーテルアブレーション治療手術)を行うことと等価となる。熟練者は、遠隔の動作(カテーテル操作)時の指先情報(力、速度、変位や、これらで構成される反力や粘性摩擦などの情報)を感じながら、当該作業(遠隔治療)を実施することができる。
これに対して、伝達比が0の場合には、遠隔の協働者の作業(施術)が妨げられることなく、協働者は自らの意思で当該作業における動作内容を実施することができる。このようにインタラクティブに手先動作データD1に基づく3次元方向の動きの伝達比を可変することにより、熟練者優位か協働者優位かを調整することが可能となる。
(3)本実施形態によるエンドエフェクタの構成
本実施形態においては、下記の第1実施形態に示すエンドエフェクタ25を適用する場合について述べるが、本発明はこれに限らず、第2~第4実施形態に示すエンドエフェクタを適用してもよく、これら第1~第4実施形態のエンドエフェクタの全部又は一部を組み合わせて適用するようにしても良い。
(3-1)エンドエフェクタの第1実施形態
図4に示すように、協働者の各指先に装着するエンドエフェクタ100は、指先の背部に接触保持される指先背保持部101と、当該指先背保持部101の端部101Aから上下及び左右からそれぞれ対の状態で引き出された第1線状部材102及び第2線状部材103とを有する。図4においては、一対の第1線状部材102及び一対の第2線状部材103は、4本ともに線状カバー部105にて被覆され、指の関節間及び手の甲にそれぞれ装着された各ガイド部GDを経て手首に巻回された駆動ユニット106まで引き出されている。
指先背保持部101は、図5に示すように、指先の爪の根元から第1関節までの背部分(以下、指先背部という。)に固着された樹脂材からなるチップ状部材であり、指の根元側の端面から指先との当接面にかけて内部に4つの貫通孔101HA~101HD(図6(A)及び(B))が形成されている。図5において、矢印A-A’で示す指先背保持部101の断面図を図6(C)に示し、矢印B-B’で示す指先背保持部101の断面図を図6(D)に示す。
指先背保持部101に形成される各貫通孔101HA~101HDは、端面の上下左右の所定位置から当接面の前後左右の所定位置まで所定径にて形成されている。
図5に示すように、指先背保持部101の当接面101Bの前後左右の所定位置には、それぞれ一対の第1線状部材102及び第2線状部材103の一端が固定され、各貫通孔101HA~101HDを通じて端面101Aの上下左右の所定位置から第1線状部材102及び第2線状部材103の各他端が引き出されて、駆動ユニット106における伸屈駆動部107及び内外転駆動部108とそれぞれ係合されている。
図7において、伸屈駆動部107は、直径約10mmのプーリ109が出力軸に係合されたサーボモータ110を有し、当該プーリ109に張架された第1線状部材102を介して指先背保持部101を保持しつつ、当該指先背保持部101を前後方向に付勢するようになされている。
第1線状部材102は、引張強度の高い金属製ワイヤからなり、指先背保持部101の当接面101Bの前後の所定位置に一端及び他端が固定されるとともに、プーリ109に固定接続されている。
伸屈駆動部107は、力覚伝達制御部32の制御に応じた回転方向及び回転速度にてサーボモータ110の出力軸を回転させることにより、その回転力をプーリ109を介して第1線状部材102に直線運動として伝達させる。指先背保持部101は、プーリ109の現在の回転角度に基づいて、当接面101Bの前後方向のいずれかに指先背部に対して微小に押圧する。
内外転駆動部108は、直径約10mmのプーリ111が出力軸に係合されたサーボモータ112を有し、当該プーリ111に張架された第2線状部材103を介して指先背保持部101を保持しつつ、当該指先背保持部101を左右方向に付勢するようになされている。
第2線状部材103は、引張強度の高い金属製ワイヤからなり、指先背保持部101の当接面101Bの左右の所定位置に一端及び他端が固定されるとともに、プーリ111に固定接続されている。
内外転駆動部108は、力覚伝達制御部32の制御に応じた回転方向及び回転速度にてサーボモータ112の出力軸を回転させることにより、その回転力をプーリ111を介して第2線状部材103に直線運動として伝達させる。指先背保持部101は、プーリ111の現在の回転角度に基づいて、当接面101Bの左右方向のいずれかに指先背部に対して微小に押圧する。
かくして力覚伝達制御部32は、駆動ユニット106における伸屈駆動部107及び内外転駆動部108をそれぞれ動作要素データD4に基づく状態となるように制御することにより、第1線状部材102を押出又は引込方向に移動させて、指先背部に対して当該方向に応じた押圧力覚を与えて、指先を伸展又は屈曲方向に誘導するとともに、第2線状部材103を左右方向に移動させて、指先背部に対して当該方向に応じた押圧力覚を与えて、指先を内転又は外転方向に誘導する。
この結果、協働者が各指に装着するエンドエフェクタ100について、熟練者の作業による手先の動きを繊細なレベルで協働者に伝達することができる。また、協働者の各指に装着するエンドエフェクタ100を、当該指の腹部が遮られない構造にしたことにより、協働者は対象物を直接各指で触れながら自己の作業を行うことが可能となる。
(3-2)エンドエフェクタの第2実施形態
協働者の各指先に装着するエンドエフェクタ120は、図8(A)及び(B)に示すように、指輪の一部が開口した略C字形状のリング部(巻着回動部)121を有する。リング部121は、フレームとしての外輪122に対して回動自在に取り付けられた内輪123がアクチュエータ(回転駆動部)124による駆動に応じて往復運動するように構成されている。
具体的にこのアクチュエータ124は、励磁コイルに電流を流して、固定子である外輪及び可動子である内輪123で構成される磁気回路を励磁して磁束を生成し、発生した電磁力によって内輪を往復運動させる。
なお、回転駆動部としてのアクチュエータ124は、電磁力以外にも圧電推力によって内輪を外輪に対して往復運動させるような構成にしても良い。例えば、圧電アクチュエータの変位によりその変位方向及び変位量を、外輪に対する内輪の往復変位方向及び往復変位量に変換する構成にしても良い。
図9において、手首に巻回された駆動ユニット125は、力覚伝達制御部32による動作要素データD4に基づく状態となるように制御司令信号を受けると、近距離無線通信等の通信手段(図示せず)を介して各アクチュエータ124をそれぞれ駆動制御する。
このリング部121は、指先から第1関節までの間、当該第1関節から第2関節までの間、当該第2関節から第3関節までの間のいずれか一箇所以上に当該指の背部を中心に、当該指との接触面が周回方向に回動自在に巻着される。
かくして力覚伝達制御部32は、アクチュエータ(回転駆動部)124を動作要素データD4に基づく状態となるように制御することにより、リング部121の指との接触面を電磁力又は圧電推力に応じて回動させて、指を周回方向に誘導する。
この結果、協働者が各指に装着するエンドエフェクタ120について、伸展又は屈曲方向と内外転方向とのみならず、指先を用いて捻る動作を行う場合に当該指を周回方向に誘導するようにも力覚を伝達することにより、さらに熟練者の作業による手先の動きを繊細なレベルで協働者に伝達することができる。また、協働者の各指に装着するエンドエフェクタ120を、当該指の腹部が遮られない構造にしたことにより、協働者は対象物を直接各指で触れながら自己の作業を行うことが可能となる。
(3-3)エンドエフェクタの第3実施形態
協働者の各指先に装着するエンドエフェクタ(図示せず)は、協働者の指先背部を中心に装着された単数又は複数の振動素子を駆動する振動アクチュエータ(振動駆動部)を有する。例えば超音波振動を利用する振動アクチュエータは、単数又は複数の圧電素子(振動素子)に交流電圧を印加して固定子の表面に楕円運動又は進行波を発生させて、固定子に可動子を加圧接触させることによりこれら両者間の摩擦力を介して可動子を3次元方向に指向性を持たせて運動させる。
かくして力覚伝達制御部32は、振動駆動部を動作要素データD4に基づく状態となるように制御することにより、単数又は複数の振動素子を指の伸展又は屈曲方向、当該指の内転又は外転方向及び当該指の周回方向にそれぞれ誘導する。
この結果、協働者が各指に装着するエンドエフェクタについて、熟練者の作業による手先の動きを繊細なレベルで協働者に伝達することができる。また、協働者の各指に装着するエンドエフェクタを、当該指の腹部が遮られない構造にしたことにより、協働者は対象物を直接各指で触れながら自己の作業を行うことが可能となる。
(3-4)エンドエフェクタの第4実施形態
協働者の各指先に装着するエンドエフェクタ(図示せず)は、協働者の指先背部を中心に装着された単数又は複数の発光素子(例えば小型LED等)を駆動する発光駆動部を有する。発光駆動部は、単数又は複数の発光素子を3次元方向に指向性を持たせるような点灯パターン又は点滅パターンにて発光駆動させる。
かくして力覚伝達制御部32は、発光駆動部を動作要素データD4に基づく状態となるような発光状態で駆動制御することにより、単数又は複数の発光素子を指の伸展又は屈曲方向、当該指の内転又は外転方向及び当該指の周回方向にそれぞれ誘導する。
この結果、協働者が各指に装着するエンドエフェクタについて、熟練者の作業による手先の動きを繊細なレベルで協働者に伝達することができる。また、協働者の各指に装着するエンドエフェクタを、当該指の腹部が遮られない構造にしたことにより、協働者は対象物を直接各指で触れながら自己の作業を行うことが可能となる。
(4)本実施形態による作業用電子器具の構成
本実施の形態によるインタラクティブ情報伝達システム1を、協働者の環境が医療機関の手術室内に適用した場合について説明する。例えば頻脈性不整脈を患う患者に対して、協働者がカテーテルアブレーション治療手術を施す場合について説明する。
本治療手術において、協働者は、先端が二方向へ屈曲するディフレクタブルな電極カテーテルを、局所麻酔下で患者の足の付け根や首の静脈から血管をたどり心臓内に挿入して、カテーテル先端の電極を介して心電図を計測しながら不整脈の原因箇所を突き止めた後、治療部位へカテーテル先端から高周波電流を流して心臓組織を焼灼させる。
なお、この電極カテーテルは、心筋灼熱術(アブレーション)の際には、専用の高周波出力発生装置(図示せず)と併用するとともに、X線投資と心腔内電位記録により留置部位が適切であることを確認しながら用いられる。
この電極カテーテル130は、図10(A)及び(B)に示すように、手で把持するハンドル部131と、当該ハンドル部131の端部に形成され、高周波出力発生装置と電気的に接続するためのコネクタ132と、当該ハンドル部131の先方に設けられたレバー133及びテンションノブ134と、先端にチップ電極135が取り付けられた微細管であるシャフト136とから構成されている。
協働者は、電極カテーテル130のハンドル部131を把持した状態で、別の手でレバー133を回転させることにより、シャフト136の先端部を所望の曲率で屈曲させることができる(図11(A)~(C))。シャフト136の屈曲の大きさはレバー133の回転の程度に比例するようになされている。また、レバー133の反対側に設けられたテンションノブ134を回転させることにより、屈曲機能における摩擦を増減させることができる。そしてチップ電極135が標的部位に安定して接触していることを認めた時点で、足元のペダル(図示せず)を踏んで高周波出力発生装置によりコネクタ132を介して高周波通電させる。
本実施形態においては、図12に示すように、指導側情報処理装置2には、熟練者が作業を行う際に自己の指先を用いて操作する電極カテーテル(指導側作業用電子器具)130と、当該電極カテーテル130の操作内容のうち定量化可能な操作による調整量を抽出する操作データ定量抽出部140とが設けられている。
操作データ定量抽出部140は、電極カテーテル130のレバー133及びテンションノブ134の回転度合いをそれぞれ微小角度単位(例えば360度基準の1度単位)で調整量として抽出し、当該調整量を指導側調整データD10としてネットワーク4(図12には図示せず)を介して協働側情報処理装置3における協働側通信部21に送信する。
協働側情報処理装置3には、指導側作業用電子器具である電極カテーテルと同一構成からなり、協働者が自己の指先を用いて操作する電極カテーテル(協働側作業用電子器具)130と、協働側通信部21にて受信した指導側調整データD10に基づいて、該当する操作内容の調整量を協働者による操作よりも優先させて電極カテーテル(協働側作業用電子器具)130の操作内容に反映させる操作データ優先反映部141とが設けられている。
この結果、熟練者と協働者が同一構成の電極カテーテル(作業用電子器具)130を用いて操作する場合、熟練者の操作内容の調整量を協働者による操作よりも優先させて、協働者による電極カテーテル130の操作内容に反映させるようにしたことにより、作業における一連の動作に誤りが生じるのを未然に回避することができる。すなわち、遠隔の協働者が自分の指先を電極カテーテル130のレバー133及びテンションノブ134に添えると、協働者は熟練者の手技を習い動作として感じることができる。
さらに協働側作業用電子器具である電極カテーテル130において、指導側調整データD10に基づくレバー133やテンションノブ134の操作内容の調整量と、協働者によるレバー133やテンションノブ134の操作内容の調整量とのずれ量を検知する操作ずれ量検知部142が設けられている。
操作ずれ量検知部142は、検知したずれ量が所定の閾値以上であれば操作ギャップデータD11として、協働側通信部21及びネットワーク4を介して指導側情報処理装置2における指導側通信部11に送信する。この閾値はレベル調整可能であり、協働者の技能レベルに応じて高くなるように調整するようにしてもよく、上述したようなインタラクティブに伝達比を可変することにより、熟練者優位か協働者優位かを調整するようにしても良い。
指導側作業用電子器具である電極カテーテル130において、指導側通信部11にて受信した操作ギャップデータD11に基づくずれ量に応じた振動を熟練者の指先に付与してフィードバック的に感知させる振動フィードバック付与部143が設けられている。
振動フィードバック付与部143は、例えば超音波振動を利用する振動アクチュエータを有し、操作ギャップデータD11に基づくずれ量に応じた強度で圧電素子を駆動することにより、熟練者の指先に力覚をフィードバックさせて感知させる。
この結果、熟練者と協働者が同一構成の電子カテーテル(作業用電子器具)130を用いて操作する場合、熟練者の操作内容の調整量を協働者による操作よりも優先させて、協働者による電子カテーテル(作業用電子器具)130の操作内容に反映させるが、協働者の操作内容の調整量とのずれ量が所定レベル以上である場合は、熟練者にそのずれ量をフィードバックするようにしたことにより、熟練者が協働者との操作内容の相違部分をリアルタイムで感覚的に認識することができる。
(5)本実施形態による共有周辺環境に関する構成
(5-1)周辺温度を共有する場合
協働側情報処理装置3において、力変位伝達ユニット24は、各エンドエフェクタ25にそれぞれ放射温度計(物体から放射される赤外線や可視光線の強度を測定して、物体の温度を測定する温度計)である周辺温度計測部50(図2)を設けており、各エンドエフェクタ25の周囲温度をそれぞれ非接触で計測するようになされている。
協働側通信部21は、周辺温度計測部50により計測された各エンドエフェクタ25の周辺温度を周辺温度データとして、指導側情報処理装置2における指導側通信部11に送信する。指導側情報処理装置2において、熟練者の各指先にそれぞれ熱電素子が搭載されたエンドサックを装着しておき、指先温度調節部51(図2)は、指導側通信部11にて受信した周辺温度データに基づく温度と同等の温度に各熱電素子を調節する。
この結果、熟練者が装着する各エンドサックを協働者の各指先で感じる温度と同等の温度に調整することにより、対象物を扱う際に臨場感を向上させることができる。
(5-2)複数の映像表示を共有する場合
インタラクティブ情報伝達システム1において、協働側情報処理装置3の協働側映像表示部23の近傍に、対象物に関連する各種データを一覧表示する協働側データ表示部60(図2)を設けるとともに、指導側情報処理装置2の指導側映像表示部12の近傍に、協働側データ表示部60に表示されるデータ群と同一のデータ群を表示する指導側データ表示部61(図2)とを設けるようにした。
例えば協働者がカテーテルアブレーション治療手術を施す場合において、協働側映像表示部23に患者の心臓内部等の対象物を中心とする映像(X線透過映像)を表示すると同時に、指導側映像表示部12に同様の映像を表示する。これ以外にも別の表示モニタに心腔内電位記録データを表示する場合に、協働者側及び熟練者側に共通の表示モニタ(協働側データ表示部及び指導側データ表示部)60、61にそれぞれ同一のデータ内容を表示させる。
指導側情報処理装置2において、指導側通信部11は、視線検知部13から得られた視線位置データD2をリアルタイムでネットワーク4を介して協働側情報処理装置3に送信する。協働側データ表示部60は、表示範囲内において協働側通信部21にて受信した視線位置データD2に基づく熟練者の視線延長先の位置をマーク表示する。すなわち指導側データ表示部61の表示範囲に2次元座標系を設定した場合に、視線位置データD2に基づく座標位置と一致する座標位置にて協働側データ表示部60の表示範囲にリアルタイムで所定のマークを表示する。
この結果、熟練者は協働者が扱う対象物を中心とする映像を共有しながら、視線延長先の位置を同一映像の表示範囲にマーク表示するのみならず、現在の作業に必要なデータ群の表示内容についても同様に視線教示することにより、熟練者の技能を視線の移動タイミングを交えてよりリアルに指導することができる。
(5-3)周囲音を共有する場合
インタラクティブ情報伝達システム1において、協働側情報処理装置3に設けられた周囲音集音部70(図2)は、比較的高感度の広帯域マイクロホンからなり、対象物撮像部22による撮像と同期して、協働者の周囲に発生する可聴音及び超音波を含む音波を集音する。
指導側情報処理装置2に設けられた周囲音再生部71(図2)は、可聴周波数帯のみならず高周波帯域の音波を再生可能な超音波スピーカからなり、周囲音集音部70から指導側通信部11にて受信した可聴音及び超音波を再生する。
この結果、熟練者は協働者の周囲環境について可聴音のみならず超音波も自己の環境下で聴覚にて感知することにより、協働者の周囲環境を視聴覚にて高い精度で共有することが可能となる。
(5-4)熟練者側から協働者側への音声指導
インタラクティブ情報伝達システム1において、指導側情報処理装置2に設けられたマイクロホン81(図2)は、熟練者の音声を集音して得られた音声データを指導側通信部11及び続くネットワーク4を介してリアルタイムで送信する。協働側情報処理装置3に設けられたスピーカ80(図2)は、協働側通信部21にて受信した音声データに基づく音声をリアルタイムに再生する。
この結果、熟練者は自己の手技を協働者に指導する際に、力覚による手先への伝達のみならず、音声による耳への伝達をも同時に行うことができ、より一層リアルタイムで正確な指導を行うことが可能となる。
さらに協働側情報処理装置3における力変位伝達ユニット24は、協働側通信部21にて受信した音声データに基づく発話内容に応じて、協働者への力覚付与を即座に停止させ又は再開させる。この結果、熟練者が協働者に指導する際に手技の間接的な力覚による伝達よりも、言葉で直接伝えた方が伝わりやすい場合には、リアルタイムで口頭指導を優先させることが可能となる。
(6)蓄積データ管理及び活用方法
インタラクティブ情報伝達システム1において、指導側情報処理装置2の指導側通信部11及び協働側情報処理装置3の協働側通信部21にそれぞれネットワーク4を介してデータ管理装置40が接続されている(図2)。このデータ管理装置40は、図13に示すように、サーバ構成の作業データ記憶部150を有し、作業に関する熟練者及び協働者の一連の動作内容をそれぞれ指導側作業データ及び協働側作業データとして相互に対応付けて当該作業データ記憶部150に記憶する。
データ管理装置40は、管理制御部(有意特徴抽出部及び技能分析部)151を有し、作業データ記憶部150から読み出した指導側作業データ及び協働側作業データに基づいて、各動作内容のうち有意な特徴点(熟練者の手技のうち協働者との差異が比較的大きい動作)を時系列的に順次抽出した後、当該抽出した各特徴点について、作業における優れた技能に相当するか否かを分析する。
続いて管理制御部151は、肯定的な分析結果として得られた各特徴点を含む動作内容を、熟練者による優れた技能を表す技能データとしてサーバ構成の技能データ記憶部152に記憶する。本実施形態では作業データ記憶部150と技能データ記憶部152を別体のサーバ構成にした場合について述べたが、いずれか一方のサーバに統合させるようにしても良い。
この結果、熟練者及び協働者の作業内容(一連の動作内容)を作業データ記憶部150に蓄積するとともに、当該蓄積データを解析して、技能向上に役立つ動作の提案や推定のための情報を技能データ記憶部152に記憶しながら提供することが可能となる。
さらにデータ管理装置40において、管理制御部(データ読出部及び動作内容推定部)151は、作業と同一の作業に関して、協働者が一連の動作内容を実行する際、当該各動作内容と関連性の高い技能データを技能データ記憶部152から逐次読み出した後、協働者の各動作内容について、技能データに基づく優れた技能に相当する動作内容と合致する可能性が時系列的に高くなるか否かを逐次推定する。
すなわち協働者が現在の作業である一連の動作内容を実行しながら、熟練者の技能である動作内容についてリアルタイムで指導を受けるには、その直前の動作内容から推定する必要がある。動作内容の前後での相関性の高さに基づいて、優れた技能に相当する動作内容をリアルタイムで推定することが望ましい。
続いて管理制御部(動作内容反映部)151は、当該推定結果に基づいて、技能データに基づく優れた技能に相当する動作内容を、リアルタイムで協働者が実行する動作内容に反映させて協働者を指導する。
この結果、熟練者による技能に関する情報を蓄積しておくことにより、同一の作業を協働者が実行する際に、熟練者が不在の場合でも技能承継を行うことが可能となる(仮想的に熟練者による指導を行い得る)。さらに技能に関する教育用の情報としても活用することが見込まれる。
(7)本実施形態の動作及び効果
以上の構成において、インタラクティブ情報伝達システム1では、熟練者と協働者とがネットワーク4を介して相互に情報授受しながら、熟練者が特定の作業に関して自己の技能を協働者に対して指導するに際して、図14に示すインタラクティブ情報伝達処理手順RT1をステップSP0から開始する。
まず熟練者側では、協働者が扱う対象物の映像をネットワーク4を介して受信して表示しながら、当該映像の表示範囲内における熟練者の視線延長先の位置を視線位置データとして検知する(ステップSP1)。
これと同時に、熟練者の各指先をエンドポイントとして、それぞれ3次元方向の動きに応じた手先動作データを検知した後(ステップSP2)、視線位置データ及び手先動作データをリアルタイムでネットワークを介して協働者側に送信する(ステップSP3)。
続いて、協働者側では、対象物を中心とする映像を撮像しながら、当該映像の表示範囲内においてネットワークを介して熟練者側から受信した視線位置データに基づく熟練者の視線延長先の位置をマーク表示する(ステップSP4)。
これと同時に、協働者の各指先にそれぞれ装着されるエンドエフェクタについて手先動作データに基づく3次元方向の動きを伝達しながら、当該各指に対して3次元的な動作を促すような力覚を与えた後(ステップSP5)、対象物を中心として撮像される映像とともに、3次元方向の動きの伝達結果である各エンドエフェクタの物理フィードバック情報を、ネットワークを介して熟練者側に送信する(ステップSP6)。この後、再度ステップSP1に戻って上述と同様の処理を繰り返す。
このように熟練者は、協働者が扱う対象物を中心とする映像と同一の映像を目視しながら、自己の視線先の位置をリアルタイムで協働者に伝達すると同時に、自己の指先の3次元方向の動きをリアルタイムで協働者の各指に力覚として伝達させるように指導しながら、当該伝達結果を熟練者にフィードバックする。
この結果、協働者は、自分の作業を行う際に、遠隔地にいる熟練者と臨場感を共有しながら、当該熟練者の暗黙知である手技を間接的にリアルタイムで指導を受けることができる。さらに熟練者は協働者への力覚伝達結果をフィードバック的に感知することにより、自己の指導内容と協働者の応答内容とのギャップをリアルタイムで感知することができる。
以上の構成によれば、遠隔地にいる熟練者がネットワークを介して協働者と臨場感を共有しながら、相互に情報授受すると同時に、特定の作業に関して暗黙知である自己の技能を非常に高い精度で間接的にリアルタイムで協働者に指導すること可能なインタラクティブ情報伝達システムを実現できる。
(8)他の実施の形態
なお本実施の形態においては、熟練者と協働者とがネットワークを介して相互に情報授受しながら、熟練者がカテーテルアブレーション治療手術に関して自己の技能を協働者に対して指導するインタラクティブ情報伝達システム1について述べたが、本発明はこれに限らず、熟練者の手技を技能として協働者に指導する作業であれば、治療手術以外にも伝統工芸や料理などの職人技の技能承継につながる種々の作業に広く適用することができる。
また本実施の形態においては、指導側情報処理装置2における視線検知部13を用いて、指導側映像表示部12に表示されている映像の表示範囲内における熟練者の視線延長先の位置を検知し、協働側情報処置装置3における協働側映像表示部23の表示範囲内にて当該検知結果である熟練者の視線延長先の位置をマーク表示するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、協働側映像表示部23の表示範囲内における協働者の視線延長先の位置を検知して指導側映像表示部12にマーク表示させるようにしても良い。
すなわち図2との対応部分に同一符号を付した図15に示すように、インタラクティブ情報伝達システム200における協働側情報処理装置201において、視線検知部202は、図2に示す視線検知部13と同様の構成からなり、協働側映像表示部23の表示範囲内における協働者の視線延長先の位置を視線位置データとして検知するようになされている。
視線検知部202は、視線位置データを協働側通信部21に送出し、指導側映像表示部23は、表示範囲内において指導側通信部11にて受信した視線位置データに基づく協働者の視線延長先の位置をマーク表示する。
この結果、図16に示すように、熟練者は、自己の視線先の位置を協働側映像表示部23の表示範囲内にマーク表示(M1)させると同時に、協働者の視線先の位置を指導側映像表示部12の表示範囲内にマーク表示(M2)させることができ、協働者及び熟練者が相手側の視線位置を相互にリアルタイムで目視確認しながら作業することが可能となる。
また本実施の形態においては、熟練者側が各指先の動作をエンドポイントとして動き検知すると同時に、協働者側が各指先にエンドエフェクタを装着して、熟練者の技能を協働者に指導する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、熟練者が協働者と同一構成(同等の機能と構造)を有するエンドポイントを各指先に装着して、遠隔の協働者側のエンドエフェクタと熟練者側のエンドエフェクタが一体的に動作するようにしても良い。その際、インタラクティブに手先動作データD1に基づく3次元方向の動きの伝達比を可変することにより、熟練者優位か協働者優位かを調整することができる。
同一構成の力変位伝達ユニットを熟練者及び協働者の手先にそれぞれ装着する場合について説明する。この力変位伝達ユニット205は、図17に示すような上下左右の自由度で駆動されるワイヤWRを3本の指(親指、人差し指、中指)に添わせて指先の動作をガイドできる構造のエンドエフェタ206を有する。このエンドエフェクタ206は、上述した図4に示す線状部材から構成されるエンドエフェクタ101と実質的に同一構造からなる。
手の甲に巻着されているガイド部GDには、使用状況に応じて点灯又は点滅するリング状発光部207が取り付けられている。このリング状発光部207には、熟練者及び協業者のインタラクティブな動きの伝達比、または、相手側(熟練者にとっては協業者、協業者にとっては熟練者)の力、または変位の大きさにに応じた発光状態(発光色、点灯又は点滅パターン)で発光させることにより、熟練者優位か協働者優位かをそれぞれ本人が認識することができる。
熟練者は、各エンドエフェクタ206について指導側通信部11にて受信した協働側の各エンドエフェクタ206の物理フィードバック情報に基づく3次元方向の動きを伝達しながら、当該各指に対して3次元的な動作を促すような力覚を感知することができる。すなわち、熟練者は、協働者と同一構成のエンドエフェクタ206を各指に装着した状態において、自分が伝達した手先の動きに対して協働者の作業内容を力覚伝達結果として力変位伝達ユニット205を通じてフィードバック的に感知することができる。
従って、熟練者は、自己の指導内容と協働者の応答内容とのギャップをリアルタイムで感知することができるのみならず、各エンドエフェクタ206が協働者と一体的に動作し、インタラクティブに指先の動作情報を伝達し合うことが可能となる。熟練者及び協働者が互いに指先の動かし具合を確認しながら同一の作業をすることが可能となる。
実際に熟練者及び協働者がそれぞれ両手に力変位伝達ユニット205(主としてエンドエフェクタ206)を装着した状態で、同一構成の電極カテーテル130を保持しながらカテーテルアブレーション治療を実施する場合を図18(A)及び(B)に示す。実際の治療現場にて治療にあたる遠隔の協働医師側(図18(A))に対して、指導医師側(図18(B))が電極カテーテル130を操作して指導を行うことにより、熟練者の手を遠隔の協働者の手に添えているかのごとく、擬似的な二人羽織(熟練者が協働者とともに治療に参画)を実現することが可能となる。
さらに本実施の形態においては、熟練者と協働者が同一構成の電極カテーテル(作業用電子器具)130を用いて操作する場合、熟練者の操作内容の調整量を協働者による操作よりも優先させて電極カテーテル130の操作内容に反映させるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、作業用電子器具(電極カテーテル)に専用の器具用アタッチメントを取り付けることにより、当該器具用アタッチメントを介して作業用電子器具における複数の操作内容を定量的に計測するようにしてもよい。
すなわち図19に示すように、電極カテーテル130に対して当該電極カテーテル130と別体に着脱自在に器具用アタッチメント210を取り付ける。この器具用アタッチメント210は、電極カテーテル130のハンドル部131を覆うハンドル保持部211と、電極カテーテル130のシャフト136を上下方向から挟み込んで把持するシャフト把持部212とを有する。
ハンドル保持部211は、図20(B)に示すように、電極カテーテル130のハンドル部131を覆うシェル筐体部220と、電極カテーテル130のレバー133と一体となって可動自在に固定されるレバー保持部221と、当該レバー保持部221のレバー回転軸を挟んで両側から引き出された一対のワイヤ222と、当該各ワイヤ222のいずれか一方のみ押し出し又は引き込むように駆動するワイヤ駆動部223とを有する。
シャフト把持部212は、図19及び図20(B)に示すように、一対の湾曲当接部230の凸側同士をシャフト136の上下方向から挟み込んで当該シャフト136を把持するとともに、把持力調整部231により一対の湾曲当接部230の挟み込み力を調整するようになされている。
このように電極カテーテル130(図20(A))に対して器具用アタッチメント210(図20(B))を取り付けることにより、図19及び図20(C)のように一体化した装置として、電極カテーテル130のレバー133を調整し、シャフト136を絡めた特定の操作を行い得る。
この器具用アタッチメント210におけるハンドル保持部211のシェル筐体部220の外側表面には、図21(A)及び(B)に示すように、全外周面にわたって力覚フィードバック付与部235が設けられており、当該ハンドル保持部211を把持する熟練者又は協働者の手のひらに対して物理的な力覚を感知させ得るようになされている。
図22に器具用アタッチメント210の回路構成を示す。器具用アタッチメント210は、複数の操作内容のうち定量化可能な操作手段(レバー133やテンションノブ134、一対の湾曲当接部230)による調整量を計測する調整量計測部240と、当該複数の操作内容のうち操作手段以外の操作状態を定量化して計測する操作状態計測部241と、調整量計測部240及び操作状態計測部241による計測結果に基づいて、当該計測結果を併せた同期データを生成する同期データ生成部242とを有する。
操作状態計測部241は、加速度センサ及びジャイロセンサ(角速度センサ)を有し、器具用アタッチメント210の3次元姿勢を動的に計測するようになされている。なお、操作状態計測部241は、加速度センサ及びジャイロセンサのような慣性センサのみならず、必要に応じて種々のセンサ(光電センサ、超音波センサ、画像判別センサ、レーザセンサ、磁気センサ等の物理センサ)を搭載するようにしてもよい。
同期データ生成部242は、協働側情報処理装置3における協働側通信部21と指導側情報処理装置2における指導側通信部11との間で、協働側制御部20及び指導側制御部10の制御下において、ネットワーク4を介して同期データを相互に送受信する。
協働側及び指導側の器具用アタッチメント210は、協働側及び指導側の間にて同期データのデータ比較結果に基づく操作内容の差異量を検知する差異量検知部243と、差異量検知部により検知された差異量に応じた力覚を協働者及び熟練者の手先にそれぞれ付与してフィードバック的に感知させる力覚フィードバック付与部235(図21)とをそれぞれ備える。
このように協働側及び指導側において作業用電子器具(電極カテーテル130)にそれぞれ同一構成の器具用アタッチメント210を装着することにより、図23(A)及び(B)に示すように、協働者も熟練者もお互いに相手側の操作手段による調整量及びそれ以外の操作状態を力覚として感知し合いながら、作業用電子器具を操作することができる。特に作業用電子器具の操作手段以外の操作状態である、手先の繊細な作業による手技や判断についても定量的な力覚として相互に伝達することが可能となる。
ここで、図23(A)及び(B)に示すように熟練者及び協働者が力変位伝達ユニット205をそれぞれ装着した左右の手で器具用アタッチメント210のハンドル保持部211及びシャフト把持部212を操作する場合について説明する。熟練者が右手で器具用アタッチメント210のハンドル保持部211を把持するとともに、左手で器具用アタッチメント210のシャフト把持部212を把持する。
熟練者は、右手でハンドル保持部211を把持しながら、レバー保持部212を介して電極カテーテル130のレバー133を操作すると同時に、左手で器具用アタッチメント210のシャフト保持部212の一対の湾曲当接部230を指先で上下方向から挟むようにつまみながら、当該各湾曲当接部230を介して電極カテーテル130のシャフト136を把持する。
熟練者が右手でハンドル保持部211をシャフト136の長手方向を回転中心としてねじると同時に長手方向又はこれとは逆方向に移動させながら、左手でシャフト把持部212の挟み込み力を調整することにより、シャフト136のひねり具合を微調整しながら先端部の屈曲状態を非常に細かいレベルまで調整することができる(図24)。
このような手技は、力変位伝達ユニット205のエンドエフェクタ206のみからは伝達困難な技能であり、作業用電子器具(電極カテーテル130)の特有の器具用アタッチメント210を用いて操作内容を定量化させることが可能となる。
さらに本実施の形態においては、データ管理装置40では、作業に関する熟練者及び協働者の一連の動作内容をそれぞれ指導側作業データ及び協働側作業データとして相互に対応付けて当該作業データ記憶部150に記憶するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、作業(カテーテルアブレーション治療手術)に伴う各種情報、すなわち、熟練者の手技や指示、作業(治療)時の対象者(患者)に関する種々の記録可能な情報(例えば、時間軸情報を伴う周囲や作業状態の動画像や、音、生理状態、治療状態、身体に関する情報など)、協働者の作業(治療実施)に伴う情報、温度や音響を含む環境情報などについても作業データ記憶部150に記憶するようにしても良い。
またデータ管理装置40において、熟練者から得られる全ての情報は、人工知能による深層学習を促進させるための情報としても活用することが可能である。さらに協働者は、熟練者が不在の場合でも、データ管理装置40に記録された種々の情報に基づいて、過去に実施した作業(治療)の結果を何度でも再現しながら、自己の作業(治療)の技量を高めるための反復練習を行うことにより、熟練者の養成が可能なシステムとして利用することも可能となる。
さらに本実施の形態においては、熟練者と協働者が同一構成の電極カテーテル(作業用電子器具)130に上述した器具用アタッチメントを介して作業用電子器具における複数の操作内容を定量的に計測するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、協働側器具用アタッチメント自体を協働者の操作と無関係に動作可能にロボット化して、指導側器具用アタッチメントの操作内容をそのまま協働側器具用アタッチメントの操作内容として伝達するようにしても良い。
A.熟練者が作業用電子器具をそのまま操作する場合
図12との対応部分に同一符号を付して示す図25において、この情報伝達システム250では、熟練者が特定の作業を行う際に自己の指先を用いて指導側作業用電子器具130を操作しながら、当該作業に関して自己の技能をネットワーク4を介して協働側に伝達するようになされている。協働側は上述した器具用アタッチメント210と機構的にはほぼ同一の構成を有する協働側器具用アタッチメント式ロボット260を装着するが、当該器具用アタッチメント210とは信号処理系の回路構成が異なる。
指導側情報処理装置2は、指導側制御部10の統括制御下、指導側作業用電子器具130の操作内容のうち定量化可能な操作による調整量を指導側調整データD10として抽出する操作データ定量抽出部140と、当該指導側調整データD10を送信する指導側通信部11(図25では省略)とを有する。
協働側器具用アタッチメント式ロボット260は、指導側作業用電子器具130と同一構成からなる協働側作業用電子器具130に着脱自在に取り付けられ、指導側通信部11からネットワーク4を介して送信される指導側調整データD10を受信する協働側通信部21(図25では省略)と、指導側調整データD10に基づいて、該当する操作内容の調整量を協働側作業用電子器具130の操作内容に反映させる操作内容反映部270とを有する。
また協働側器具用アタッチメント式ロボット260は、協働側作業用電子器具130における複数の操作内容のうち定量化可能な操作による調整量を計測する調整量計測部280を備える。操作内容反映部270は、調整量計測部280からフィードバックされる調整量に基づいて、協働側作業用電子器具130における当該操作内容の調整量をキャリブレーション補正する。
このように情報伝達システム250では、協働側器具用アタッチメント式ロボット260は、熟練者による指導側作業用電子器具130の操作内容が伝達されるタイミングに同期して、当該操作内容と同一の操作内容を協働側作業用電子器具130に対してリアルタイムで動作実行することができる。
この結果、協働側にて協働者の手先による操作を行うことなく、協働側器具用アタッチメント式ロボット260が熟練者による指導側作業用電子器具130の操作内容に関して暗黙知である技能を非常に高い精度で間接的にリアルタイムに再現することができる。
B.熟練者が作業用電子器具を器具用アタッチメントを装着した状態で操作する場合
図19との対応部分に同一符号を付して示す図26において、協働側器具用アタッチメント式ロボット290は、上述した器具用アタッチメント210とは力覚フィードバック付与部235を除くとともに信号処理系の回路が異なる点を除いて、機構的にはほぼ同一の構成を有する。
この情報伝達システム300(後述する図27)では、熟練者が特定の作業を行う際に自己の指先を用いて指導側作業用電子器具130を操作しながら、当該作業に関して自己の技能をネットワーク4を介して協働側に伝達するようになされている。
協働側器具用アタッチメント式ロボット290は、上述した電極カテーテル(指導側作業用電子器具)130(図20(A))と別体に着脱自在に取り付け可能であり、電極カテーテル130のハンドル部131を覆うハンドル保持部211と、電極カテーテル130のシャフト136を上下方向から挟み込んで把持するシャフト把持部212とを有する。
ハンドル保持部211は、電極カテーテル130のハンドル部131を覆うシェル筐体部220と、電極カテーテル130のレバー133と一体となって可動自在に固定されるレバー保持部221と、当該レバー保持部221のレバー回転軸を挟んで両側から引き出された一対のワイヤ222と、当該各ワイヤ222のいずれか一方のみ押し出し又は引き込むように駆動するワイヤ駆動部223とを有する。
シャフト把持部212は、一対の湾曲当接部230の凸側同士をシャフト136の上下方向から挟み込んで当該シャフト136を把持するとともに、把持力調整部231により一対の湾曲当接部230の挟み込み力を調整するようになされている。
このように協働側器具用アタッチメント式ロボット290を電極カテーテル130に対して取り付けることにより、一体化した装置として、電極カテーテル130のレバー133を自動的に操作し、シャフト136を絡めた特定の操作を行い得る。
さらに協働側器具用アタッチメント式ロボット290においては、ハンドル保持部211及びシャフト把持部212に、それぞれ加速度センサ及びジャイロセンサ(角速度センサ)を含む種々の物理センサ(光電センサ、超音波センサ、画像判別センサ、レーザセンサ、磁気センサ等の物理センサ)を搭載するようにしてもよい。本実施の形態では、物理センサとして、例えば、3軸加速度センサ及び3軸角速度センサ(ジャイロセンサ)からなる6軸モーションセンサが搭載されている。
図22との対応部分に同一符号を付して示す図27において、指導側器具用アタッチメント210は、指導側作業用電子器具130に着脱自在に取り付けられ、複数の操作内容のうち定量化可能な操作手段による調整量を計測する調整量計測部240と、当該複数の操作内容のうち操作手段以外の操作状態を定量化して計測する操作状態計測部241と、調整量計測部240及び操作状態計測部241による計測結果に基づいて、当該計測結果を併せた同期データを生成する同期データ生成部242と、同期データを送信する指導側通信部11とを有する。
協働側器具用アタッチメント式ロボット290は、指導側作業用電子器具130と同一構成からなる協働側作業用電子器具130に着脱自在に取り付けられ、指導側通信部11からネットワーク4を介して送信される同期データを受信する協働側通信部21と、同期データに基づく各操作手段の調整量及び当該操作手段同士の操作タイミングを制御信号として生成する操作制御部310と、当該操作制御部310による制御信号に基づいて各操作手段を駆動する操作手段駆動部320とを有する。
操作制御部310は、複数の操作内容のうち定量化可能な操作手段(レバー133やテンションノブ134、一対の湾曲当接部230)について、その調整量及び当該操作手段同士の操作タイミングを同期データから抽出し、制御信号として操作手段駆動部320に送出する。
操作手段駆動部320は、ハンドル保持部211のワイヤ駆動部223およびシャフト把持部212の把持力調整部231とからなり、操作制御部310からの制御信号に基づいて、対応する操作手段を駆動する。
また協働側器具用アタッチメント式ロボット290は、協働側作業用電子器具130における複数の操作内容のうち定量化可能な操作手段による調整量を計測する調整量フィードバック計測部330を備える。操作制御部320は、調整量フィードバック計測部330からフィードバックされる調整量に基づいて、操作手段の調整量をキャリブレーション補正する。
さらに協働側器具用アタッチメント式ロボット290は、協働側作業用電子器具130における複数の操作内容のうち操作手段以外の操作状態を定量化して計測する操作状態フィードバック計測部340を備える。
この協働側器具用アタッチメント式ロボット290にも、ハンドル保持部211及びシャフト把持部212に、それぞれ加速度センサ及びジャイロセンサ(角速度センサ)を含む種々の物理センサ(光電センサ、超音波センサ、画像判別センサ、レーザセンサ、磁気センサ等の物理センサ)が搭載されている。本実施の形態では、物理センサとして、例えば、3軸加速度センサ及び3軸角速度センサ(ジャイロセンサ)からなる6軸モーションセンサが搭載されている。
ここで複数の操作内容のうち操作手段以外の操作状態とは、上述した図24に示すように、熟練者が右手でハンドル保持部211をシャフト136の長手方向を回転中心としてねじると同時に長手方向又はこれとは逆方向に移動させながら、左手でシャフト把持部212の挟み込み力を調整することにより、シャフト136のひねり具合を微調整しながら先端部の屈曲状態を非常に細かいレベルまで調整するような操作状態が挙げられる。
このように作業用電子器具の操作手段以外の操作状態である、手先の繊細な作業による手技や判断についても、操作手段同士の相互の動作状態をリアルタイムで関連付けながら物理センサの検出結果に基づいて定量化させる。
操作制御部310は、同期データに基づく操作手段以外の操作状態の計測量(物理センサの検出結果)を制御信号に含めて生成し、当該制御信号を協働側通信部21を介して協働側作業用電子機器130と連携動作する外部機器(図示せず)に送信する。
操作制御部320は、外部機器及び協働側作業用電子器具130を介して操作状態フィードバック計測部340からフィードバックされる操作状態の計測量と指導側の操作状態の計測量との比較結果を表すキャリブレーションデータを生成する。
この外部機器は、ハンドル保持部211及びシャフト把持部212をそれぞれ保持するロボットアーム(図示せず)からなり、ハンドル保持部211のワイヤ駆動部223およびシャフト把持部212の把持力調整部231の相互の動作状態をリアルタイムで関連つけながら3次元姿勢状態を検出するようになされている。
この外部機器に対して、協働側器具用アタッチメント式ロボット290からキャリブレーションデータを送信することにより、外部機器にて操作手段同士の動作状態をキャリブレーション補正することが可能となる。
外部機器としては、ロボットアーム以外にも、協働側器具用アタッチメント式ロボット290における操作手段同士の相互の3次元動作状態をリアルタイムで正確かつ高精度に検出することができれば、ロボットアーム以外の構造のものを適用してもよい。
このように情報伝達システム300では、協働側器具用アタッチメント式ロボット290は、熟練者による指導側作業用電子器具130の操作内容が器具用アタッチメント210を介して伝達されるタイミングに同期して、当該操作内容と同一の操作内容を協働側作業用電子器具130に対してリアルタイムで動作実行することができる。
その際、協働側器具用アタッチメント式ロボット290は、定量化可能な操作手段による操作状態のみならず、外部機器による当該操作手段以外の操作状態(操作手段同士の相互の3次元動作状態)をリアルタイムで正確かつ高精度に検出することができる。
この結果、協働側にて協働者の手先による操作を行うことなく、協働側器具用アタッチメント式ロボット290が熟練者による指導側作業用電子器具130の操作内容に関して暗黙知である技能を非常に高い精度で間接的にリアルタイムに再現することができる。さらに、熟練者から得られる操作内容に関する全ての情報は、人工知能の学習促進のための情報としても活用し、ロボット化次世代治療システムとしても展開することが可能となる。