JP7280597B2 - 移植魚、種苗、及び成魚の製造方法、並びに、生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法 - Google Patents

移植魚、種苗、及び成魚の製造方法、並びに、生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法 Download PDF

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Description

本発明は、移植魚、種苗、及び成魚の製造方法、並びに、生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法に関する。
従来より、優良な形質を有する魚類の育種や安定した供給のために、生殖細胞等の各種細胞を宿主魚類(「代理親魚」とも呼ばれる。)に移植し、これを生殖細胞系列へ分化誘導することを経て新たな個体を得る技術が開発されている。
しかし、宿主魚類に移植された細胞を分化誘導させるに際しては、宿主魚類に導入した生殖細胞を、高い割合で生殖腺に生着させる必要がある。そのために、例えば、特許文献1では、宿主魚類とは異系統又は異種の魚類由来の分離生殖細胞を、孵化前後の宿主魚類の腹腔内への移植により宿主魚類個体に移植することからなる分離生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法において、移植を受けた宿主魚類個体を、分離生殖細胞の由来となる魚類の産卵から仔稚魚期に該当する生育温度帯であり、かつ、宿主魚類の飼育可能温度帯で飼育することが提案されている。
国際公開第2011/118225(A1)号
しかし、特許文献1の方法は、孵化前後の小さく脆弱な宿主魚類に対して移植を行うため、熟練者による精緻な作業が必要となるうえ、宿主魚類の移植後の生残率が低い可能性がある。
したがって、移植した生殖細胞が宿主魚類に生着でき、かつ、生殖細胞を移植した宿主魚類の生残率が高い技術へのニーズがあった。このようなニーズは、優良な形質を有する個体の育種や安定的供給のための技術が求められるスマ類において特に高い。
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、スマ類である移植魚の製造方法において、移植した生殖細胞が宿主魚類に生着でき、かつ、生殖細胞を移植した宿主魚類の生残率を向上させることができる、高い移植効率を実現する技術の提供を目的とする。
本発明者らは、生殖細胞の移植を、孵化後19日以上25日以下の宿主魚類(スマ類)の腹腔内に対して行うことで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は、以下のようなものを提供する。
(1) スマ類由来のドナー生殖細胞を、孵化後19日以上25日以下の宿主魚類の腹腔内へ移植する工程を含み、
前記宿主魚類はスマ類である、移植魚の製造方法。
(2) 前記ドナー生殖細胞は、生殖幹細胞を含む、(1)に記載の製造方法。
(3) (1)又は(2)に記載の製造方法によって得られた移植魚から種苗を得る工程を含む、種苗の製造方法。
(4) (3)に記載の製造方法によって得られた種苗から成魚を得る工程を含む、成魚の製造方法。
(5) スマ類由来のドナー生殖細胞を、孵化後19日以上25日以下の宿主魚類の腹腔内へ移植する工程を含み、
前記宿主魚類はスマ類である、生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法。
本発明によれば、スマ類である移植魚の製造方法において、移植した生殖細胞が宿主魚類に生着でき、かつ、生殖細胞を移植した宿主魚類の生残率を向上させることができる、高い移植効率を実現する技術が提供される。
スマ稚魚における生殖細胞の移植部位を示した図である。 移植10日後の生殖腺の観察結果を示した図である。 移植22日後の生殖腺の観察結果を示した図である。 移植後10、22及び30日後の各時点の生殖腺における生殖細胞の数を示した図である。 移植25日後の生殖腺の観察結果を示した図である。 (A)及び(B)は、腹腔に移植後15日後の明視野、暗視野の結果をそれぞれ示した図である。(C)及び(D)は、背側筋中に移植後15日後の明視野、暗視野の結果をそれぞれ示した図である。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに特に限定されるものではない。
<移植魚の製造方法>
本発明に係る移植魚の製造方法は、スマ類由来のドナー生殖細胞を、孵化後19日以上25日以下の宿主魚類の腹腔内へ移植することを特徴とする。本発明における宿主魚類は、ドナー生殖細胞の由来同様、スマ類である。
本発明において、「ドナー生殖細胞」とは、宿主魚類に対して移植しようとする生殖細胞を意味する。
通常、魚類の生殖腺は、未熟な状態から精巣又は卵巣への分化が明瞭となり、雌雄の判別が可能となる。スマで類では孵化後約40日を経過すると組織学的な雌雄の判別が可能となる。生殖腺が完全に分化した後は、移植された生殖細胞が生殖腺に生着しにくく、分化が困難となる。そのため、従来、生殖腺への生着率を高める観点から、生殖細胞を、孵化前後(つまり、生殖腺形成前)の宿主魚類の腹腔内へ移植する方法が知られていた。
しかし、本発明者らの検討の結果、意外にも、孵化前後ではなく、孵化後19日以上25日以下の宿主魚類(スマ類)の腹腔内へドナー生殖細胞を移植すると、移植したドナー生殖細胞が宿主魚類の生殖腺へ生着できるだけではなく、宿主魚類の生残率が高まり、高い移植効率を実現できることが見出された。
本発明において、「移植したドナー生殖細胞が宿主魚類の生殖腺へ生着できる」とは、宿主魚類に移植した生殖細胞(ドナー生殖細胞)が、生殖腺に生着し、さらには、宿主魚類由来の生殖細胞(宿主生殖細胞)と同様に分化及び増殖できることを意味する。
本発明において、「宿主魚類の生残率が高い」とは、ドナー生殖細胞を移植された宿主魚類のうち、移植後(例えば、移植後15~25日まで)に生存している割合、すなわち生残率が相対的に高いことを意味する。本発明によれば、ドナー生殖細胞を移植された宿主魚類は、例えば、移植直後から移植20日後までの生残率が5~20%である。この値は、従来の方法(例えば、孵化前後の宿主魚類に対して移植を行う方法)における値(例えば、1%未満)よりも顕著に高い。
本発明において、「移植効率が高い」とは、移植したドナー生殖細胞が宿主魚類に生着できること、及び、ドナー生殖細胞を移植した宿主魚類の生残率が向上することを両立できることを意味する。例えば、孵化前後の宿主魚類に対して移植を行うと、移植したドナー生殖細胞が宿主魚類の生殖腺へ生着できても、宿主魚類の生残率が著しく低いため、移植効率が低い。また、孵化後26日以上の宿主魚類に対して移植を行うと、宿主魚類の生残率が高くても、移植したドナー生殖細胞が宿主魚類の生殖腺へ生着しにくいため、移植効率が低い。
本発明においては、上記のとおり、孵化後19日以上25日以下の宿主魚類に対してドナー生殖細胞を移植する。孵化後19日以上25日以下の宿主魚類における生殖腺は、精巣又は卵巣へ十分に分化していない状態である。孵化後19日以上25日以下の宿主魚類の腹腔内へ移植されたドナー生殖細胞は、生殖腺へ移動して生着し、分化することができる。
孵化後19日未満の宿主魚類を用いると、魚体が脆弱というデメリットがある。したがって、このような宿主魚類に移植を行うと、生残率が低下する。なお、スマ類と比較的特性が近いサバにおいては、孵化後13日以降に移植された生殖細胞の生着率が低下するという報告がある(Biol Reprod. 2010 May;82(5):896-904)。しかし、意外にも、スマ類においては、孵化後19日以上25日以下であれば、移植されたドナー生殖細胞が宿主魚類の生殖腺に十分に生着できることが見出された。
孵化後25日超の宿主魚類を用いると、生殖腺の分化が進み過ぎ、さらには腹腔が大きくなることから腹腔内から生殖腺への生殖細胞の移動距離が長くなり、移植された生殖細胞が宿主魚類の生殖腺に生着しにくくなる、かつ移植ドナー生殖細胞を腹腔の大きさに合わせ多量に移植する必要がある。
宿主魚類(スマ類)へは、孵化後21日以上でドナー生殖細胞を移植することがより好ましい。
宿主魚類(スマ類)へは、孵化後24日以下でドナー生殖細胞を移植することが好ましい。
宿主魚類の孵化後の日齢は、宿主魚類の体長から判断し得る。例えば、体長3.5~5.5cmのスマ類の個体を宿主魚類として用いることができる。
なお、生殖細胞を腹腔内以外の部位(筋中等)に移植しても、生殖腺への生着は認められない。
(宿主魚類)
宿主魚類としてはスマ類を用いる。宿主魚類と、ドナー生殖細胞が由来する魚類とは、同種の魚類である。
スマ類は、スズキ目サバ亜目サバ科スマ属の魚類の総称である。スマ類としては、スマ(学名:Euthynnus affinis)が好ましい。
(ドナー生殖細胞)
宿主魚類へ移植されるドナー生殖細胞としては、スマ類に由来し、かつ、生殖細胞系列(卵子、卵細胞、精子、精細胞等)へと分化できる細胞が挙げられる。例えば、魚類の生殖幹細胞、始原生殖細胞、精原細胞、及び卵原細胞等や、これらの混合物が挙げられる。これらのうち、生殖腺へ生着しやすい細胞であるという観点から、生殖幹細胞が好ましい。
ドナー生殖細胞の由来となる魚類(ドナー魚類)の種類は、スマ類である。用いるスマ類の詳細は、上記(宿主魚類)の項における説明と同様である。
ドナー生殖細胞は、ドナー魚類の組織から、公知の方法で単離できる。例えば、ドナーである魚類から、各種組織(精巣、卵巣、分化前の生殖腺等)を摘出し、酵素処理等によって細胞へ分散させることによってドナー生殖細胞を得ることができる。
(宿主魚類へのドナー生殖細胞の移植)
宿主魚類へドナー生殖細胞を移植することで、移植魚が得られる。移植は、孵化後19日以上25日以下の宿主魚類の腹腔内へ移植できれば、代理親魚技法において通常用いられる方法を採用できる。なお、「代理親魚技法」とは、生殖細胞を宿主魚類に移植することで得られる移植魚の生殖腺内において生殖細胞を増殖及び分化させ、ドナー魚類に由来する配偶子を得て、該配偶子を用いて生殖細胞が由来する魚類の子孫である種苗(仔魚、稚魚等)を得る技術である。
宿主魚類へのドナー生殖細胞の移植に用いる器具は特に限定されず、例えば、注射器、各種マニュピュレーターを用いてドナー生殖細胞を宿主魚類の腹腔内に導入することで実施できる。ただし、本発明における宿主魚類はある程度成長しているため、マニュピュレーター等を用いた精緻な作業を行わなくともよい。例えば、注射器等を用いて簡便に移植を行うことができる。
導入されるドナー生殖細胞の数は特に限定されないが、10万細胞以上であってもよい。ドナー生殖細胞の細胞溶液量は10μl以上であってもよい。本発明における宿主魚類に対して移植できる細胞量や細胞溶液量は、本発明における宿主魚類よりも低い日齢(例えば、孵化前後)の宿主魚類より顕著に多いため、より効率的に移植し得る。他方で、本発明における宿主魚類よりも高い日齢では、移植しようとする細胞量や細胞溶液量を増やしても生殖腺の分化が進んでいること等から生着が困難であるため、移植しにくくなる。したがって、本発明によれば、比較的多い細胞量や細胞溶液量を用いて効率的に移植を行うことができる。
ドナー生殖細胞が宿主魚類の生殖腺に生着したかどうかは、ドナー生殖細胞と、宿主魚類の細胞とをそれぞれ識別できる任意の手法を用いて特定できる。例えば、このような手法として、蛍光色素(PKH26、PKH67等)、抗体、及び遺伝子等の指標を用いる方法が挙げられる。より具体的には、実施例に示した方法が挙げられる。
(種苗の作製)
上記のように得られた移植魚を飼育することで、生殖腺に生着したドナー生殖細胞が増殖分化し、ドナー魚類に由来する配偶子を得ることができる。得られた配偶子を、他の個体から得られた精子又は卵と掛け合わせて受精卵を作製して、該受精卵を育成することで、種苗が得られる。該種苗を育成することで、ドナー魚類の子孫である成魚が得られる。得られた成魚は、養殖魚等の各種用途に利用できる。
移植魚、受精卵、種苗の飼育条件は特に限定されず、魚類の種類や用いる手法等に応じて適宜設定できる。
<生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法>
本発明によれば、上記のとおり、スマ類由来のドナー生殖細胞を、孵化後19日以上25日以下の宿主魚類(スマ類)の腹腔内へ移植することで、ドナー生殖細胞を生殖細胞系列へ効率的に分化誘導させることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<ドナー生殖細胞の調製>
以下の2種類の標識された生殖細胞(ドナー細胞1、及びドナー細胞2)を調製した。次いで、50μlあたりドナー細胞1を10万細胞、及び、ドナー細胞2を100細胞となるよう混合し、「ドナー生殖細胞」を細胞溶液として調製した。溶媒には、培地L-15培地又はPBS中に、以下の成分;1/1000 recombinant DNaseI(TAKARA)、10%FBS、2x PSN抗生物質 10mg/ml Gentamycine sulfate、0.01%ビタミンE(抗炎症剤)を含む溶液を用いた。
(ドナー細胞1の調製)
スマ成魚雌の卵巣を、コラゲナーゼ及びトリプシンを用いて酵素処理し、卵原細胞を得た。得られた卵原細胞をPKH26(Sigma-Aldrich社製)で蛍光標識し、「ドナー細胞1」を得た。
(ドナー細胞2の調製)
スマ成魚雌の卵巣を、コラゲナーゼ及びトリプシンを用いて酵素処理し、次いで、Percoll密度勾配遠心法により得られた10~30%の分画の細胞を培養した。この分画には生殖幹細胞や体細胞等の生殖細胞が含まれるが、培養過程で体細胞は除かれる。培養には、L-15培地(10% knockout serum、1mM ピルビン酸ナトリウム、1% 非必須アミノ酸、1×必須アミノ酸を含有)を用い、27℃という条件で30日間培養した。得られた培養物をPKH67(Sigma-Aldrich社製)で蛍光標識し、「ドナー細胞2」を得た。
<ドナー生殖細胞を用いた移植試験>
以下の方法で、移植したドナー生殖細胞が宿主魚類に生着するかを検討した。
宿主魚類として、愛媛県農林水産業水産研究センターにて種苗生産された、孵化後23日、平均尾叉長4.35±0.47cm(最小尾叉長3.46cm、最大尾叉長5.08cm)のスマ稚魚800尾を用いた。これらのスマ稚魚を、陸上水槽から、愛媛県愛南町中泊の地先に設置した愛媛大学の海面生簀に沖出し、以下の試験に供した。なお、800尾のスマ稚魚のうち300尾を移植試験に供し、移植試験を開始するまで陸上に設置した1t簡易ビニール水槽に一旦収容した。残りの500尾は移植試験を行わない対照群とした。
ドナー生殖細胞を1mlのシリンジに充填し、口径26Gの注射針を用い、各スマ稚魚に対し移植を行った。より具体的には、簡易ビニール水槽に収容していたスマ稚魚を網ですくい、ポリエチレン製の袋に移し、作業台の上に静置した。注射針を、内臓器官を避けて5mm程の深さになるように左側面腹腔に刺し、およそ50μlのドナー生殖細胞溶液を注入した。穿孔箇所を図1に示す。移植した個体は5m角形海面生簀に収容し、飼育した。なお、図1は、ドナー生殖細胞の移植時に撮影した画像データを用いてプロクラステス解析を行い、移植部位(矢印)を標準化(n=34)したものである。
移植後、各スマ稚魚を海面生簀で飼育した。
移植10日後(孵化後33日)、ドナー生殖細胞の生着を確認するため、蛍光実体顕微鏡(商品名「Olympus SZX-16」、オリンパス株式会社製)を用いて、移植を行ったスマ稚魚のうち10個体を観察した。その結果を図2に示す。なお、以下、ドナー生殖細胞が生着した部位を「ホスト生殖腺」という。
図2Aは、移植後10日のスマ稚魚を開腹し、内臓を取り除いた後の腹腔背面を明視野で撮影した画像である。点線部分内は生殖腺の位置を示す。
図2Bは、図2Aの点線部分内を拡大し、蛍光顕微鏡下で撮影した画像である。図2B中、ドナー細胞1に相当するPKH26陽性細胞が赤色蛍光(実線矢印の矢頭)として観察され、ドナー細胞2に相当するPKH67陽性細胞が緑色蛍光(破線矢印の矢頭)として観察された。
移植22日後(孵化後45日)、ドナー生殖細胞のホスト生殖腺内における状態を調べるため、共焦点レーザー顕微鏡(商品名「ZEISS 700」、カールツァイス社製)を用いて観察を行った。その結果を図3に示す。図3中、白矢印(右側2箇所)で示された細胞はPKH26陽性細胞であり、ドナー細胞1に由来する生殖細胞であると考えられた。一方、白抜き矢印(左側2箇所)で示された細胞はPKH67陽性細胞であり、細胞の大きさから、ドナー細胞2に由来する卵原細胞であると考えられた。
移植後10、22及び30日後の各時点のホスト生殖腺におけるドナー生殖細胞の数をフローサイトメーター(商品名「Millipore Guava」、Merck Millipore社製)を用いて計測した。具体的には、まず、フローサイトメーターを用いて、生殖幹細胞(gonadal stem cell)マーカーであるTYH1.2、及び、生殖細胞特異転写因子であるOct-4に対して陽性の細胞が出現する分画を決定した。次いで、ホスト生殖腺の一部を採取し、これを酵素処理し、フィルター(40μm)を通して得られた細胞をフローサイトメーターに供し、上記分画に出現した細胞を生殖細胞として計数した。その結果を図4に示す。
図4に示されるとおり、対照群の生殖腺及びホスト生殖腺における生殖細胞は、移植からの日数が経過するにつれ、数が増加した。移植後30日には、細胞数の増加に2つのパターン(増加が認められないパターン、及び、日数経過につれ増加するパターン)が認められた。
図4に示されるとおり、ドナー細胞1由来の生殖細胞、及び、ドナー細胞2由来の生殖細胞についても、移植からの日数が経過するにつれ、数が増加した。移植後30日には、ホスト生殖腺における生殖細胞と同様に、細胞数の増加に2つのパターンが認められた。
ここで、図5に示されるとおり、移植後25日(孵化後48日)のスマ生殖腺では、精巣(図5(A))又は卵巣(図5(B))への分化が組織学的に確認された。このことから、移植後30日に求められた細胞数の増加の2つのパターンは、日数が経過しても増加が認められないパターンについては精巣への分化にともなう細胞増殖、日数の経過につれ増加するパターンについては卵巣への分化にともなう細胞増殖を示すものと考えられた。
以上から、移植したドナー細胞が、ホスト生殖腺に生着し、さらには分化誘導されていることが示された。
<参考試験;移植部位の検討>
上記<ドナー生殖細胞を用いた移植試験>と同様の方法で、ドナー生殖細胞を、孵化後23日のスマ稚魚の腹腔又は背側筋中に移植し、経過を観測した。その結果を図6に示す。
図6(A)及び(B)は、腹腔への移植14日後の明視野、暗視野の結果をそれぞれ示す。図6(C)及び(D)は、背側筋中への移植14日後の明視野、暗視野の結果をそれぞれ示す。腹腔に移植した個体では、生殖腺付近にPKH26陽性細胞が認められた(図6(B)矢印)。一方、背側筋中に個体では、生殖腺付近にPKH26陽性細胞は認められなかった(図6(D))。これらのことから、移植したドナー生殖細胞が、生殖腺に生着し、分化誘導されるためには、ドナー生殖細胞を腹腔に移植する必要があることがわかった。
<移植後の宿主魚類の生残率の検討>
本発明の方法に従い移植を行って得られた移植魚の生残率を以下のように検討した。
上記<ドナー生殖細胞を用いた移植試験>と同様に、孵化後23日のスマ稚魚300尾にドナー生殖細胞を移植した。移植10日後、65尾が生存していた。つまり、移植直後から移植10日後(孵化後33日)までの生残率は、65/300×100=約21.7%だった。
孵化後23日のスマ稚魚の代わりに、孵化後3日のスマ稚魚を用いて、上記同様に生残率を検討したところ、移植2日後、18尾が生存していた。スマの孵化仔魚から孵化後16~19日までの生残率は通常10%程度である。つまり、移植直後から移植14日後(孵化後19日)までの生残率は、18×0.1/300×100=約0.6%だった。
孵化後23日のスマ稚魚の代わりに、孵化後30日のスマ稚魚を用いて、上記同様に生残率の検討を試みようとしたところ、稚魚の体長が大きくなり過ぎ、移植のためには現実的ではないほどの大量のドナー生殖細胞を要するうえ、生殖腺へのドナー生殖細胞の生着がほぼ認められないことが予測されたため、検討を断念した。

Claims (4)

  1. スマ類由来のドナー生殖細胞を、孵化後19日以上25日以下の宿主魚類の腹腔内へ移植する工程を含み、
    前記宿主魚類はスマ類である、移植魚の製造方法。
  2. 前記ドナー生殖細胞は、生殖幹細胞を含む、請求項1に記載の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の製造方法によって得られた移植魚から種苗を得る工程を含む、種苗の製造方法。
  4. スマ類由来のドナー生殖細胞を、孵化後19日以上25日以下の宿主魚類の腹腔内へ移植する工程を含み、
    前記宿主魚類はスマ類である、生殖細胞の生殖細胞系列への分化誘導方法。
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