JP7277923B2 - フルカラー無機ナノ粒子インクとその作製方法、及びシリコンナノ粒子の作製方法 - Google Patents
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Description
シリコン粒子の場合、プリント回路用途として、例えば、ドーピングされたシリコン粒子のインクを特定位置に印刷プロセスにより塗布し、シリコン粒子を基板上に堆積させた位置において焼結などにより回路構造を作製するプロセスにインクを用いる。また、シリカ粒子の場合、光学用途として、例えば、ディスプレイ要素に対する印刷プロセスや、蛍光体特性を安定化させるため、蛍光体粒子をシリカ粒子のインクで被覆させるといった印刷プロセスにインクを用いる。
光学領域で大きな誘電率のシリコンは、波長より十分小さいナノ粒子でもミー共鳴を示すこと、シリコンナノ粒子の吸収断面積は狭帯域であるが、半径の異なるシリコンナノ粒子を用意することで広帯域の光吸収ができることが報告されている(非特許文献2を参照)。
また一方で、高い円形度を有する球体形状で、サイズが制御されたシリコンナノ粒子を作製することは決して容易ではなく、量産化に向けた新たな作製方法が要望されている。
かかる構成のインクによれば、半永久的に変色・退色せず、単色性が高く、高解像度を実現できる。
ここで、粒径分布がターゲットとするインク色に応じた波長λを屈折率nで除算した値(λ/n)は、ミー共鳴の理論そのものの解では無く、近似的に表したものであるが、屈折率と粒径の両方が、散乱波長λに寄与すること、そして、シリコン以外の屈折率が大きい無機材料にも適用することから、近似的に表したものである。
ミー共鳴の波長幅と散乱強度は、屈折率に依存するため、明るく鮮明な色の実現には高い屈折率が不可欠である。シリコンの屈折率は4.32であり、無機化合物であるGaAsの屈折率は4.27、GaPの屈折率は3.6、InPの屈折率は3.0である。これらに特に限定されないが、屈折率nが3以上の無機材料のナノ結晶を用いて、本発明のインクが構成される。
ここで、極性溶媒は、分子内に極性部分を有する溶媒であり、例えば、水、メタノール、エタノールなどのアルコール、アセトン、DMSO、エチレングリコールなどである。
本発明の無機ナノ粒子インクにおいて、粒径分布が、2以上のピークを有し、各々のピークの粒径分布の標準偏差が±15%以内でそれらの合成分布であることでもよい。色が異なる2種以上のインクを混合させたインクは、粒径分布が2以上のピークを有し、各々のピークの粒径分布の標準偏差が±15%以内であり、粒径分布が各々のピークの粒径分布の合成分布になっている。
本発明の無機ナノ粒子インクの作製方法は、下記のステップ1~5を備える。
ステップ1:絶縁基板上、若しくは、絶縁体で表面が被覆された絶縁基板上に、屈折率nが3以上の無機ナノ結晶の無機材料と無機の不純物から成る薄膜を作製する。
ステップ2:アニール処理して無機ナノ結晶を成長させると同時に、無機ナノ結晶の粒子表面に不純物をドーピングさせる。
ステップ3:絶縁基板から酸を用いて無機ナノ結晶を取り出す。
ステップ4:極性溶媒を置換して、無機ナノ結晶が分散した無機ナノ結晶コロイド分散液を調製する。
ステップ5:無機ナノ結晶コロイド分散液における無機ナノ粒子の粒径を分離し、粒径がターゲットとするインク色に応じた波長λを無機ナノ粒子の屈折率nで除算した値となるように分散液中の粒径を揃える。
また、本発明の無機ナノ粒子インクの作製方法によって作製された無機ナノ粒子インクで、インク色が異なり、無機ナノ結晶の表面電位が同一極性であるインクを、2種以上混合させることにより、新たな色のインクを提供することができる。
本発明の無機ナノ粒子インクの塗布方法は、本発明のインクを基板に塗布する場合において、基板の表面を予め無機ナノ粒子の表面電位と逆極性に帯電させるステップと、本発明のインクを用いて、基板の表面に塗布するステップを備える。
本発明のシリコンナノ粒子の作製方法は、上記の本発明の無機ナノ粒子インクにおける無機ナノ粒子として用いられる結晶性シリコンナノ粒子の作製方法であって、一酸化ケイ素に対して単体シリコンの融点より高い温度条件下でアニーリングを施すステップと、アニーリングにより得られた粒子に対してフッ化水素酸によりエッチングを施すステップを備える。
上記方法によれば、高い円形度を有する球体形状で、ミー共鳴が発現できるサイズに制御された高分散性の結晶性シリコンナノ粒子を作製できる。また結晶性シリコンナノ粒子の粒径の増大化が可能でサイズ幅を拡げ、単一の粒子で近赤外領域(800~1200nm)まで強度が高い散乱光を発生させることができる。
作製された結晶性シリコンナノ粒子は、円形度が、平面内での公差域が径の0.05%だけ離れた二つの同心円の間の領域に存在し、真球に近い形状である。
ここで、成形するステップは、例えば、ガラス基板や透光性樹脂基板に成膜するステップである。また、結晶性シリコンナノ粒子の粒径を揃えるステップは、好ましくは、密度勾配遠心分離法、又は、貧溶媒添加による粒径選別法を用いることができる。
そして、密度勾配遠心分離法や貧溶媒添加による粒径選別法を用いて、分散液中の無機ナノ結晶の粒径を揃える(ステップS05)。分散液中の無機ナノ結晶の粒径を揃え、粒径分布が、ターゲットとするインク色に応じた波長λを屈折率nから得られる値(λ/n)をピークとして標準偏差が±15%以内になるように分散液を調製する(ステップS06)。
まず、シリコンナノ結晶(SiNC)コロイド溶液の調製について、図2のフローを参照して説明する。ターゲットとするインク色を決定し(ステップS11)、シリコンナノ結晶コロイド分散液を調製する。
シリコンナノ結晶(SiNC)コロイド溶液の調製は、まず高周波スパッタリング法(Radio Frequency Sputtering)を用いて、ボロンリンシリケートガラス(BPSG:Boron Phosphorus Silicate Glass)膜を作製し(ステップS12)、作製したBPSG膜に対して、窒素雰囲気で1500℃、30分間、アニール処理を施して、BPSG膜中にシリコンナノ結晶(SiNC)を成長させる(ステップS13)。
以上述べたように、シリコン、酸素、リン、ホウ素からなる混合薄膜を形成し、高温熱処理することで、シリコンナノ粒子を固体薄膜中に成長させた後、ウェットエッチングによりシリコンナノ粒子を溶液中に取り出すことでインクの原料を作製する。
作製したインクの原料には、様々な粒径のシリコンナノ粒子が混在している。単色性が高いインクを得るためには、シリコンナノ粒子の粒径を揃える必要がある。ここでは、密度勾配遠心分離法によりコロイド溶液中のシリコンナノ粒子の粒径を、ターゲットとするインク色を散乱する粒径に揃える(ステップS16)。
粒径分布がターゲットとするインク色に応じた波長λとSiの屈折率nから得られる値(λ/n)をピークとして標準偏差が±15%以内になるまで分散液を調製する(ステップS17)。
遠心管内の溶液を肉眼で見ると、溶液の色が底部から上部に向かってグラデーションができ、色が連続的に変化しているのが確認できる。
ターゲットとするインク色の散乱光に対応するシリコンナノ粒子の粒径が揃った層から分散液を取出し、ターゲットとするインク色のインクを得る。
拡散反射スペクトルの測定結果を図6に示す。図6(1)は、図2に示す作製フローにおけるステップS13のアニール処理の温度が1500℃の試料A~Hを示している。一方、図6(2)はアニール温度が1550℃の試料A~Hを示している。
図6(1)(2)を比較すると、1550℃の試料の方が、ピークが可視域(400~700nm)の長波長側に分布しており、予め粒径分布のピークが異なる試料からインクを作製すると、アニール温度を高めることで長波長化が可能であることが確認された。
粒径が異なり色の異なる2種類のインクを混合させて、新たな色のインクを任意に作製することができる。
図7に示すように、粒径分布において粒径80nmにピークを有する第1のインクと、粒径140nmにピークを有する第2のインクを所定の割合で混合して得られる混合溶液は、インクジェット印刷技術において、一つのノズルで塗布できる。得られる混合溶液は、2つの粒径分布が重なり合い、それぞれのピークの粒径のナノ粒子によるミー共鳴による散乱光が干渉し、肉眼で見た場合、第1のインクのインク色や第2のインクのインク色とは異なる新たなインク色を認識することになる。
シリコンナノ粒子のインクを基板に塗布する場合、基板の表面を予めシリコンナノ粒子の表面電位と逆極性に帯電させる。不純物のドーピングにより、シリコンナノ粒子の表面電位が負電位になっている場合には、基板の表面を正電位になるように予め帯電させる。
そして、シリコンナノ粒子のインクを基板に塗布する。塗布後、溶媒を蒸発させることで、シリコンナノ粒子が基板表面に付着する。保護膜が必要な場合には、保護膜を付けることでもよい。インクを基板に塗布する別の方法は、まず基板上で文字や図形を描く場合に、基板上の所定位置に、文字や図形の形のメッキを行って、その部分のみを帯電させ、その後、インクを基板上に流して、帯電した部分にのみインクを付着させ、最後に保護膜を付けることでもよい。
まず、市販されている一酸化ケイ素5の粉末を原料として用い、一酸化ケイ素5の粉末を単体シリコンの融点(1414℃)より低い温度条件から融点より高い温度条件(1350~1600℃)まで窒素(N2)雰囲気にて30分間アニール処理を行った(ステップS21)。アニール処理後に得られる粉末は、結晶性シリコンナノ粒子1を含有する二酸化ケイ素6の粒子である。
次に、アニール処理された粉末に対してフッ化水素酸(HF)を用いてエッチングを行った(ステップS22)。フッ化水素酸によりエッチングすることにより、二酸化ケイ素6の部分だけがエッチングされ、粒子内に含有されていた結晶性シリコンナノ粒子1を取り出すことができる。エッチングの後、極性溶媒としてメタノール7を用いて、メタノール7とエッチング液を置換した(ステップS23)。その後、超音波ホモジナイザーで攪拌し、メタノール7中で結晶性シリコンナノ粒子1を分散させ、分散液に対して密度勾配遠心分離法を用いて結晶性シリコンナノ粒子1の粒径を揃えた(ステップS24)。
以上の処理により、サイズが制御された結晶性シリコンナノ粒子1を作製することができた。作製された結晶性シリコンナノ粒子1は、高い円形度を有する球体形状で、ミー共鳴が発現できるサイズに制御されたものである。
このように、本実施例の作製方法によって作製された結晶性シリコンナノ粒子は、高い円形度を有する球体形状で、ミー共鳴が発現できるサイズに制御されたものであり、粒径が増大し、近赤外領域まで強い散乱光を発生させるものであった。
本実施例では、ガラス基板上に成膜したが、PET基板などのフレキシブル基板にも成膜可能である。また、成膜後にフィルムの剥離も可能である。さらに、高コントラストのために黒色系基板を用いることでも構わない。高分子有機材料としては、PVPの他、PMMA、PS、PET、ナイロン、PE、シリコン樹脂なども利用することができる。
(1)上述の実施例1~4では、無機ナノ粒子としてシリコンナノ粒子を用いたが、GaAs,GaP,InPなどの屈折率3以上の無機材料のナノ粒子を用いてもよい。GaAs,GaP,InPなどのナノ粒子の場合にも、不純物をドーピングして、ナノ粒子の表面電位を正又は負の電位にして溶液中の分散性を高める。そして、粒径分布がターゲットとするインク色に応じた波長λと、無機材料の屈折率nに基づく値(λ/n)をピークとして標準偏差が±15%以内の分散液をインクとして用いる。このインクによれば、半永久的に変色・退色せず、単色性に優れ、高解像度を実現できる。
2 高分子有機材料
3 ガラス基板
5 一酸化ケイ素
6 二酸化ケイ素
7 メタノール
Claims (21)
- 無機ナノ結晶コロイド分散液であって、
無機ナノ結晶は、屈折率nが3以上の無機材料からなり、表面電位が正又は負の電位であり、粒径分布がターゲットとするインク色に応じた波長λを前記屈折率nで除算した値をピークとして標準偏差が±15%以内である無機ナノ粒子インク。 - 極性溶媒と、屈折率nが3以上の無機材料からなり前記溶媒中に分散して浮遊する表面電位が正又は負の電位を有する無機ナノ粒子、を備え、
粒径分布がターゲットとするインク色に応じた波長λを前記屈折率nで除算した値をピークとして標準偏差が±15%以内である無機ナノ粒子インク。 - 前記無機材料は、消光係数が0.5以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の無機ナノ粒子インク。
- 前記無機ナノ粒子は、球体形状であり、粒径分布のピーク値が90~200nmの範囲内であることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の無機ナノ粒子インク。
- 前記無機ナノ粒子は、前記無機材料の固溶限界濃度より高濃度にホウ素とリンが粒子表面にドーピングされ、表面電位が正又は負に帯電したことを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の無機ナノ粒子インク。
- 前記無機ナノ粒子は、前記インク色が可視光の色である場合には、GaAs,GaP,Si,InPから選択される無機材料からなることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の無機ナノ粒子インク。
- 前記インク色が異なり、前記無機ナノ結晶の表面電位が同一極性である請求項1~6の何れかの無機ナノ粒子インクを、2種以上混合させたことを特徴とする無機ナノ粒子インク。
- 前記粒径分布は、2以上のピークを有し、各々のピークの粒径分布の標準偏差が±15%以内でそれらの合成分布であることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の無機ナノ粒子インク。
- 絶縁基板上、若しくは、絶縁体で表面が被覆された絶縁基板上に、屈折率nが3以上の無機ナノ結晶の無機材料と無機の不純物から成る薄膜を作製するステップと、
アニール処理して無機ナノ結晶を成長させると同時に、無機ナノ結晶の粒子表面に不純物をドーピングさせるステップと、
前記絶縁基板から酸を用いて無機ナノ結晶を取り出すステップと、
極性溶媒を置換して、無機ナノ結晶が分散した無機ナノ結晶コロイド分散液を調製するステップと、
無機ナノ結晶コロイド分散液における無機ナノ粒子の粒径を分離し、粒径がターゲットとするインク色に応じた波長λを無機ナノ粒子の屈折率nで除算した値となるように前記分散液中の粒径を揃えるステップ、
を備えた無機ナノ粒子インクの作製方法。 - 前記無機ナノ結晶の粒子表面に不純物をドーピングさせるステップにおいて、
前記無機ナノ粒子の粒子表面に、前記無機材料の固溶限界濃度より高濃度にホウ素とリンをドーピングさせ、表面電位が正又は負に帯電させることを特徴とする請求項9に記載の無機ナノ粒子インクの作製方法。 - 前記分散液中の粒径を揃えるステップは、密度勾配遠心分離法、又は、貧溶媒添加による粒径選別法を用いることを特徴とする請求項9に記載の無機ナノ粒子インクの作製方法。
- 前記インク色が異なり、前記無機ナノ結晶の表面電位が同一極性である請求項1~6の何れかの無機ナノ粒子インクを、2種以上混合させるステップ、
又は、
請求項9~11の何れかの無機ナノ粒子インクの作製方法によって作製された無機ナノ粒子インクであって、前記インク色が異なり、前記無機ナノ結晶の表面電位が同一極性であるインクを、2種以上混合させるステップ、
を備えたことを特徴とする無機ナノ粒子インクの作製方法。 - 請求項1~8の何れかの無機ナノ粒子インクを基板に塗布する場合において、
前記基板の表面を予め前記無機ナノ粒子の表面電位と逆極性に帯電させるステップと、
前記インクを用いて、前記基板の表面に塗布するステップ、
を備えたことを特徴とする無機ナノ粒子インクの塗布方法。 - 前記基板の表面に塗布するステップにおいて、
先に塗布したインク色と異なる色の前記インクを更に上から塗布し、用いたインク色と異なる新たな色を前記基板の表面に形成するステップを備えたことを特徴とする請求項13に記載の無機ナノ粒子インクの塗布方法。 - 請求項1又は2に記載の無機ナノ粒子インクにおける無機ナノ粒子として用いられる結晶性シリコンナノ粒子の作製方法であって、
一酸化ケイ素を単体シリコンの融点より高い温度条件下でアニーリングを施すステップと、
前記アニーリングにより得られた粒子をフッ化水素酸によりエッチングを施すステップ、を備えることを特徴とするシリコンナノ粒子の作製方法。 - 前記アニーリングにおいて、
温度条件を制御することにより、前記シリコンナノ粒子の粒径制御を行うことを特徴とする請求項15に記載のシリコンナノ粒子の作製方法。 - 前記シリコンナノ粒子の粒径制御は、粒径分布のピーク値が150~250nmの範囲内で行われることを特徴とする請求項15又は16に記載のシリコンナノ粒子の作製方法。
- 前記シリコンナノ粒子は、電子顕微鏡像から得られる4π×(面積)/(周長の2乗)で定義される円形度が、平面内での公差域が径の5%だけ離れた二つの同心円の間の領域に存在することを特徴とする請求項15~17の何れかに記載のシリコンナノ粒子の作製方法。
- 前記エッチングの後、極性溶媒でエッチング液を置換するステップと、
前記極性溶媒の分散液中で前記結晶性シリコンナノ粒子の粒径を揃えるステップと、
粒径が揃った前記分散液に透明性又は透光性樹脂を混練するステップと、
前記混練によって得られる流動体を成形するステップ、を更に備えることを特徴とする請求項15~18の何れかに記載のシリコンナノ粒子の作製方法。 - 前記成形するステップは、ガラス基板又は樹脂基板に成膜するステップであることを特徴とする請求項19に記載のシリコンナノ粒子の作製方法。
- 前記シリコンナノ粒子の粒径を揃えるステップは、密度勾配遠心分離法、又は、貧溶媒添加による粒径選別法を用いることを特徴とする請求項19に記載のシリコンナノ粒子の作製方法。
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