JP7276584B1 - プレス成形品のスプリングバック量評価方法、装置及びプログラム、並びにプレス成形品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
さらに、本発明は、スプリングバック量が低減するようにプレス成形条件を調整して実際にプレス成形することにより、寸法精度を向上させた実プレス成形品を製造するプレス成形品の製造方法に関する。
さらに、複数の基準点の相対位置が異なることにより、複数の基準点同士を近傍に設定せざるを得なくなり、かつ、これら基準点を含む領域での両形状データの形状差異が大きい場合には、全体的な形状データの差異を実際よりも大きく見せてしまう危険性があった。そのため、実プレス成形品11に基準点を設定して位置合わせを行う場合においても、力学的解析により得られたプレス成形品解析モデル21のスプリングバック量と、実プレス成形品11のスプリングバック量との間に乖離が生じてしまう場合があるため、スプリングバック量を適切に比較することができず、それぞれのスプリングバック量を評価することが困難であった。
さらに、本発明は、プレス成形品解析モデルのスプリングバック量の評価に基づいてその予測精度を高めた上でスプリングバック量が低減するようにプレス成形条件を調整し、寸法精度を向上させた実プレス成形品を製造するプレス成形品の製造方法に関する。
前記実プレス成形品を離型してスプリングバックした後の表面形状を測定して取得した三次元表面形状測定データからプレス成形品ワーク形状モデルを作成し、該プレス成形品ワーク形状モデルを前記金型の金型モデルによって成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析を行い、成形下死点における前記プレス成形品ワーク形状モデルを取得するプレス成形品ワーク形状モデル取得ステップと、
該取得した成形下死点における前記プレス成形品ワーク形状モデルに所定の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、前記プレス成形品ワーク形状モデルに生じたスプリングバック量を前記実プレス成形品のスプリングバック量として算出する実プレス成形品スプリングバック量算出ステップと、
前記ブランクのブランクモデルを前記金型モデルによってプレス成形する過程の弾塑性力学的解析を単一工程又は複数工程にわたって行い、成形下死点におけるプレス成形品解析モデルを取得するプレス成形品解析モデル取得ステップと、
成形下死点における前記プレス成形品解析モデルに前記実プレス成形品スプリングバック量算出ステップにおいて前記プレス成形品ワーク形状モデルに与えた前記所定の拘束条件と同一の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、前記プレス成形品解析モデルに生じたスプリングバック量を算出するプレス成形品解析モデルスプリングバック量算出ステップと、
前記実プレス成形品スプリングバック量算出ステップにおいて算出した前記実プレス成形品のスプリングバック量と、前記プレス成形品解析モデルスプリングバック量算出ステップにおいて算出した前記プレス成形品解析モデルのスプリングバック量と、を比較し、それぞれのスプリングバック量を評価するスプリングバック量比較・評価ステップと、を含むことを特徴とするものである。
前記実プレス成形品スプリングバック量算出ステップにおける前記弾性力学的解析は弾性有限要素解析であり、
前記プレス成形品解析モデル取得ステップにおける前記弾塑性力学的解析は、弾塑性有限要素解析であることを特徴とするものである。
前記実プレス成形品をプレス成形する過程が該実プレス成形品の部位ごとに成形工程が分かれている場合において、
前記実プレス成形品スプリングバック量算出ステップにおける前記金型モデルは、前記実プレス成形品の各部位を成形する各金型の金型モデルを合成して一つの金型モデルとしたものであることを特徴とするものである。
前記実プレス成形品を離型してスプリングバックした後の表面形状を測定して取得した三次元表面形状測定データからプレス成形品ワーク形状モデルを作成し、該プレス成形品ワーク形状モデルを前記金型の金型モデルによって成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析を行い、成形下死点における前記プレス成形品ワーク形状モデルを取得するプレス成形品ワーク形状モデル取得部と、
該取得した成形下死点における前記プレス成形品ワーク形状モデルに所定の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、前記プレス成形品ワーク形状モデルに生じたスプリングバック量を前記実プレス成形品のスプリングバック量として算出する実プレス成形品スプリングバック量算出部と、
前記ブランクのブランクモデルを前記金型モデルによってプレス成形する過程の弾塑性力学的解析を単一工程又は複数工程にわたって行い、成形下死点におけるプレス成形品解析モデルを取得するプレス成形品解析モデル取得部と、
成形下死点における前記プレス成形品解析モデルに前記実プレス成形品スプリングバック量算出部により前記プレス成形品ワーク形状モデルに与えた前記所定の拘束条件と同一の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、前記プレス成形品解析モデルに生じたスプリングバック量を算出するプレス成形品解析モデルスプリングバック量算出部と、
前記実プレス成形品スプリングバック量算出部により算出した前記実プレス成形品のスプリングバック量と、前記プレス成形品解析モデルスプリングバック量算出部により算出した前記プレス成形品解析モデルのスプリングバック量と、を比較し、それぞれのスプリングバック量を評価するスプリングバック量比較・評価部と、を含むことを特徴とするものである。
コンピュータを、
前記実プレス成形品を離型してスプリングバックした後の表面形状を測定して取得した三次元表面形状測定データからプレス成形品ワーク形状モデルを作成し、該プレス成形品ワーク形状モデルを前記金型の金型モデルによって成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析を行い、成形下死点における前記プレス成形品ワーク形状モデルを取得するプレス成形品ワーク形状モデル取得部と、
該取得した成形下死点における前記プレス成形品ワーク形状モデルに所定の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、前記プレス成形品ワーク形状モデルに生じたスプリングバック量を前記実プレス成形品のスプリングバック量として算出する実プレス成形品スプリングバック量算出部と、
前記ブランクのブランクモデルを前記金型モデルによってプレス成形する過程の弾塑性力学的解析を単一工程又は複数工程にわたって行い、成形下死点におけるプレス成形品解析モデルを取得するプレス成形品解析モデル取得部と、
成形下死点における前記プレス成形品解析モデルに前記実プレス成形品スプリングバック量算出部により前記プレス成形品ワーク形状モデルに与えた前記所定の拘束条件と同一の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、前記プレス成形品解析モデルに生じたスプリングバック量を算出するプレス成形品解析モデルスプリングバック量算出部と、
前記実プレス成形品スプリングバック量算出部により算出した前記実プレス成形品のスプリングバック量と、前記プレス成形品解析モデルスプリングバック量算出部により算出した前記プレス成形品解析モデルのスプリングバック量と、を比較し、それぞれのスプリングバック量を評価するスプリングバック量比較・評価部と、して実行させる機能を有することを特徴とするものである。
上記(1)~(3)のいずれかに記載のプレス成形品のスプリングバック量評価方法に基づいて、実際に金型を用いてブランクをプレス成形した実プレス成形品の離型後のスプリングバック量と、前記実プレス成形品をプレス成形する過程とその後のスプリングバック過程の力学的解析により求めたプレス成形品解析モデルのスプリングバック量との差異を、前記プレス成形品解析モデルのスプリングバック量の予測精度として求めるスプリングバック量予測精度取得ステップと、
該取得した前記プレス成形品解析モデルのスプリングバック量の予測精度を高めるように、前記実プレス成形品をプレス成形する過程とその後のスプリングバック過程の力学的解析における前記プレス成形品解析モデルの境界条件を調整する境界条件調整ステップと、
該調整した前記境界条件で求められる前記プレス成形品解析モデルのスプリングバック量が予め定めた所定の範囲内に収まるように、前記実プレス成形品をプレス成形する過程の力学的解析におけるプレス成形条件を調整するプレス成形条件調整ステップと、
該プレス成形条件調整ステップにおいて調整した前記プレス成形条件の下で実際に金型を用いて前記実プレス成形品をプレス成形するプレス成形ステップと、を含むことを特徴とするものである。
また、本発明によれば、金型形状等の調整を何度も繰り返さなくても、スプリングバックした後の実プレス成形品について許容される寸法精度を満たすことができる。その結果、実プレス成形品の生産準備の費用及び期間を大きく短縮することができる。
以下、本発明の実施の形態1に係るプレス成形品のスプリングバック量評価方法、装置及びプログラムについて、図1~図4を参照して説明する。なお、本実施の形態1では、一例として図2に示す、自動車のAピラーアッパーを模擬したハット断面形状の実プレス成形品11を対象とした。実プレス成形品11は、980MPa級、板厚1.4mmの冷延鋼板をプレス成形したものである。
また、本願の図2、図3及び図5におけるX、Y及びZは、実プレス成形品11、三次元表面形状測定データ13、プレス成形品ワーク形状モデル15、17及びプレス成形品解析モデル21の長手方向(X方向)、幅方向(Y方向)及び高さ方向(Z方向)を示している。
本発明の実施の形態1に係るプレス成形品のスプリングバック量評価方法は、一例として図2(a)に示すように、実際に金型を用いてブランクをプレス成形した実プレス成形品11のスプリングバック量を、一例として図2(d)~(e)に示すようにして求め、実プレス成形品11をプレス成形する過程の弾塑性力学的解析により求めたプレス成形品解析モデル21のスプリングバック量と、を比較しそれぞれを評価するものであって、図1に示すように、プレス成形品ワーク形状モデル取得ステップS1と、実プレス成形品スプリングバック量算出ステップS3と、プレス成形品解析モデル取得ステップS5と、プレス成形品解析モデルスプリングバック量算出ステップS7と、スプリングバック量比較・評価ステップS9と、を含むものである。
以下、上記の各ステップについて説明する。
プレス成形品ワーク形状モデル取得ステップS1は、図1及び図2に示すように、実際にプレス成形した実プレス成形品11を離型してスプリングバックした後の表面形状を測定して取得した三次元表面形状測定データ13からプレス成形品ワーク形状モデル15を作成し、プレス成形品ワーク形状モデル15を実際のプレス成形に用いた金型の金型モデル1によって成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析を行い、成形下死点におけるプレス成形品ワーク形状モデル17を取得するステップである。
次に、取得した三次元表面形状測定データ13を弾性力学的解析のシェル要素として扱えるようにするために、図2(c)に示すように、一定の要素サイズの要素(例えば、三角形要素)にリメッシュし、その後、板厚中央に相当する位置にオフセットすることにより、プレス成形品ワーク形状モデル15を作成する(S1b)。ここで、必要に応じて、三次元表面形状測定データ13は、エッジ(輪郭)付近のノイズを除去する操作を行ってもよい。
なお、三次元表面形状測定データを弾性力学的解析においてシェル要素として扱う代わりに、取得した三次元表面形状測定データを板厚分だけ裏面側にオフセットさせて三次元表面形状測定データを取得し、あるいは、表面側および裏面側それぞれの三次元表面形状測定データを測定することで表裏両面の三次元表面形状測定データを取得し、これら表裏面の三次元表面形状測定データで挟まれた三次元空間をソリッド要素に分割する方法を用いてもよい。
あるいは、一旦プレス成形品ワーク形状モデル15を金型モデル1の下型モデル3を基準としてベストフィット等の自動的な位置合わせを行い、続いて、上型モデル5をプレス成形方向に沿って下型モデル3と接触しないところまで平行移動させてもよい。
そして、本実施の形態1では、プレス成形品ワーク形状モデル取得ステップS1における弾性力学的解析として、弾性有限要素解析を行う(図2(d)、S1d)。
実プレス成形品スプリングバック量算出ステップS3は、図1及び図2(e)に示すように、プレス成形品ワーク形状モデル取得ステップS1において取得した成形下死点におけるプレス成形品ワーク形状モデル17に所定の拘束条件を与えて(S3a)スプリングバック解析を行い(S3b)、プレス成形品ワーク形状モデル17に生じたスプリングバック量を実プレス成形品11のスプリングバック量として算出するステップである。
したがって、実プレス成形品スプリングバック量算出ステップS3において与える所定の拘束条件は、上記の1つ目の理由で述べた複数の解が発生しないことを前提として、各々のプレス成形品の用途や品質評価基準にしたがい、適宜設定すればよい。
プレス成形品解析モデル取得ステップS5は、図1に示すように、実際のプレス成形に用いたブランクのブランクモデルを金型モデル1によってプレス成形する過程の弾塑性力学的解析を行い、成形下死点におけるプレス成形品解析モデル21を取得するステップである(S5a)。
プレス成形品解析モデルスプリングバック量算出ステップS7は、図1に示すように、成形下死点におけるプレス成形品解析モデル21に実プレス成形品スプリングバック量算出ステップS3においてプレス成形品ワーク形状モデル17に与えたのと同一の拘束条件を与えて(S7a)スプリングバック解析を行い(S7b)、プレス成形品解析モデル21に生じたスプリングバック量を算出するステップである。
スプリングバック量比較・評価ステップS9は、図1に示すように、実プレス成形品スプリングバック量算出ステップS3において算出した実プレス成形品11のスプリングバック量と、プレス成形品解析モデルスプリングバック量算出ステップS7において算出したプレス成形品解析モデル21のスプリングバック量と、を比較し、それぞれのスプリングバック量を評価するステップである。
図3(c)に、実プレス成形品11のスプリングバック量として算出するプレス成形品ワーク形状モデル17を基準としたときのプレス成形品解析モデル21のスプリングバック量の乖離量の結果を示す。図3(c)に示す乖離量は、プレス成形品解析モデル21のz方向(金型ストローク方向)の乖離量の分布を示したものである。この乖離量の算出においては、改めての位置合わせは行っていない。
図3(c)に示した乖離量の結果から、弾塑性有限要素解析によるプレス成形品解析モデル21におけるスプリングバック量は、実プレス成形品11のスプリングバック量と比べてフランジ部21b全体が高さ方向のマイナス方向(-z方向)に乖離していることが分かる。
ここで、同一条件とは、プレス成形品ワーク形状モデル17のスプリングバック解析と、プレス成形品解析モデル21のスプリングバック解析とで、与える拘束条件が同一であることをいう。これは、拘束条件が異なると、スプリングバック解析によるスプリングバック量に差異が生じるためである。
そして、実プレス成形品11のスプリングバック量とプレス成形品解析モデル21のスプリングバック量との差異に基づき、有限要素法を用いたプレス成形過程とその後のスプリングバック過程の力学的解析における境界条件等を調整してプレス成形品の寸法精度の予測精度を高めることができるので、プレス成形品の寸法精度不良を防ぐことができる。
本発明の実施の形態1に係るプレス成形品のスプリングバック量評価装置31(以下、「スプリングバック量評価装置31」という)は、一例として図2(a)に示すように、実際に金型を用いてブランクをプレス成形した実プレス成形品11のスプリングバック量と、実プレス成形品11をプレス成形する過程の弾塑性力学的解析により求めたプレス成形品解析モデル21のスプリングバック量と、を比較しそれぞれを評価するものであって、図4に示すように、プレス成形品ワーク形状モデル取得部33と、実プレス成形品スプリングバック量算出部35と、プレス成形品解析モデル取得部37と、プレス成形品解析モデルスプリングバック量算出部39と、スプリングバック量比較・評価部41と、を備えたことを特徴とするものである。
スプリングバック量評価装置31は、コンピュータ(PC等)のCPU(中央演算処理装置)によって構成されたものであってもよい。この場合、上記の各部は、コンピュータのCPUが所定のプログラムを実行することによって機能する。
プレス成形品ワーク形状モデル取得部33は、図2及び図4に示すように、実際にプレス成形した実プレス成形品11を離型してスプリングバックした後の表面形状を測定して取得した三次元表面形状測定データ13からプレス成形品ワーク形状モデル15を作成し、プレス成形品ワーク形状モデル15を実際のプレス成形に用いた金型の金型モデル1によって成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析を行い、成形下死点におけるプレス成形品ワーク形状モデル17を取得するものである。
実プレス成形品スプリングバック量算出部35は、プレス成形品ワーク形状モデル取得部33により取得した成形下死点におけるプレス成形品ワーク形状モデル17に所定の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、プレス成形品ワーク形状モデル17に生じたスプリングバック量を実際にプレス成形した実プレス成形品11のスプリングバック量として算出するものである。
プレス成形品解析モデル取得部37は、実際のプレス成形に用いたブランクのブランクモデルを金型モデル1によってプレス成形する過程の弾塑性力学的解析を行い、成形下死点におけるプレス成形品解析モデル21を取得するものである。
プレス成形品解析モデルスプリングバック量算出部39は、成形下死点におけるプレス成形品解析モデル21に実プレス成形品スプリングバック量算出部によりプレス成形品ワーク形状モデル17に与えた拘束条件と同一の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、プレス成形品解析モデル21に生じたスプリングバック量を算出するものである。
スプリングバック量比較・評価部41は、実プレス成形品スプリングバック量算出部35において算出した実プレス成形品11のスプリングバック量と、プレス成形品解析モデルスプリングバック量算出部39により算出したプレス成形品解析モデル21のスプリングバック量と、を比較し、それぞれのスプリングバック量を評価するものである。
本発明の実施の形態1は、プレス成形品のスプリングバック量評価プログラムとして構成することができる。
すなわち、本発明の実施の形態1に係るプレス成形品のスプリングバック量評価プログラムは、実際に金型を用いてブランクをプレス成形した実プレス成形品のスプリングバック量と、前記プレス成形品をプレス成形する過程の弾塑性力学的解析により求めたプレス成形品解析モデルのスプリングバック量と、を比較しそれぞれを評価するものであって、図4に示すように、コンピュータを、プレス成形品ワーク形状モデル取得部33と、実プレス成形品スプリングバック量算出部35と、プレス成形品解析モデル取得部37と、プレス成形品解析モデルスプリングバック量算出部39と、スプリングバック量比較・評価部41と、して実行させる機能を有することを特徴とするものである。
さらに、本発明に係るプレス成形品のスプリングバック量評価装置及びプログラムは、プレス成形品解析モデルのスプリングバック量を基準として、実プレス成形品11のスプリングバック量を比較することにより、プレス成形品解析モデルのスプリングバック量と同一条件で実プレス成形品のスプリングバック量を評価することが可能となる。
そして、本発明によれば、実プレス成形品のスプリングバック量とプレス成形解析モデルのスプリングバック量との差異に基づき、有限要素法を用いたプレス成形過程とその後のスプリングバック過程の力学的解析における境界条件等を調整してプレス成形品の寸法精度の予測精度を高めることができるので、プレス成形品の寸法精度不良を防ぐことができる。
<プレス成形品の製造方法>
本発明の実施の形態2に係るプレス成形品の製造方法は、スプリングバック量が低減するようにプレス成形条件を調整して寸法精度を向上させた実プレス成形品を製造するものである。そして、本実施の形態2に係るプレス成形品の製造方法は、図6に示すように、スプリングバック量予測精度取得ステップS11と、境界条件調整ステップS13と、プレス成形条件調整ステップS15と、プレス成形ステップS17と、を含む。
以下、一例として、図2(a)に示す実プレス成形品11を製造する場合について、上記の各ステップについて説明する。
スプリングバック量予測精度取得ステップS11は、前述した実施の形態1に係るプレス成形品のスプリングバック量評価方法により、実際に金型を用いてブランクをプレス成形した実プレス成形品11の離型後のスプリングバック量を求める。さらに、スプリングバック量予測精度取得ステップS11は、実施の形態1に係る方法により、実プレス成形品11をプレス成形する過程とその後のスプリングバック過程の力学的解析によりプレス成形品解析モデル21のスプリングバック量を求める。そして、実プレス成形品11の離型後のスプリングバック量と、プレス成形品解析モデル21のスプリングバック量との差異を、プレス成形品解析モデル21のスプリングバック量の予測精度として求める。
また、プレス成形品解析モデル21のスプリングバック量は、実施の形態1に係るプレス成形品解析モデル取得ステップS5と、プレス成形品解析モデルスプリングバック量算出ステップS7と、を実施することにより取得することができる(図3(b)参照)。
境界条件調整ステップS13は、プレス成形品解析モデル21のスプリングバック量の予測精度を高めるように、実プレス成形品11をプレス成形する過程とその後のスプリングバック過程の力学的解析におけるプレス成形品解析モデル21のベースとなる解析条件(以降、境界条件と称す)境界条件を調整するステップである。
FEM解析条件としては、例えば、ブランクの要素分割サイズ、要素内の積分点数、選択する要素の種類、金属材料の材料構成則等、が挙げられる。
プレス成形解析条件としては、例えば、金型の成形下死点位置、金型とブランクとの間の摩擦係数、金型(パンチとダイ)のクリアランス、金型の成形速度、等が挙げられる。
一方、プレス成形解析条件に関しては、図3(c)のプレス成形品解析モデル21と実プレス成形品11とのスプリングバック量の乖離の状況に基づき、プレス成形解析条件である金型モデル1とブランク間の摩擦係数を0.10から0.11に変更した。
プレス成形条件調整ステップS15は、実プレス成形品11をプレス成形する過程の力学的解析におけるプレス成形条件を調整するステップである。そして、プレス成形条件調整ステップS15において、プレス成形条件の調整は、境界条件調整ステップS13において調整した境界条件の下で求められるプレス成形品解析モデル21のスプリングバック量が予め定めた所定の範囲内に収まるように行う。
(B)当該力学的解析により求めたプレス成形品解析モデル21のスプリング量が予め定めた所定の範囲内に収まっているかどうかを判定する。
(C)予め定めた所定の範囲内に収まっていないと判定された場合、プレス成形品解析モデル21を用いてプレス成形する過程とその後のスプリングバックする過程との力学的解析におけるプレス成形条件を調整する。
(D)調整したプレス成形条件の下で求めたプレス成形品解析モデル21のスプリングバック量が予め定めた所定の範囲内に収まるまで、上記の(A)~(C)を繰り返す。
プレス成形ステップS17は、プレス成形条件調整ステップS15において調整したプレス成形条件の下で実際に金型を用いてブランクをプレス成形し、実プレス成形品11を製造するステップである。
この場合、本発明において、プレス成形品ワーク形状モデルのスプリングバック量の算出に用いる金型モデルは、実プレス成形品の各部位を成形する各金型の金型モデルを合成して一つの金型モデルとすればよい。
そして、金型モデルによりプレス成形品ワーク形状モデルを挟み込んだ部位と、当該部位に相当するプレス成形品解析モデルにおける部位と、を位置合わせすればよい。
実施例では、図2に示す実プレス成形品11について、スプリングバック量を低減するようにプレス成形条件の調整を行った。実プレス成形品11は、前述した本実施の形態1及び実施の形態2と同様、自動車のAピラーアッパーを模擬したものであり、引張強度980MPa級、板厚1.4mmの冷延鋼板をプレス成形したものである。
発明例において、プレス成形条件調整ステップS15では、プレス成形品解析モデル21のスプリングバック量が小さくなるように、プレス成形条件として金型の形状を調整した。また、プレス成形ステップS17においては、プレス成形品解析モデル21について調整した金型モデル1の形状に基づいて実際に金型を作製し、作製した金型を用いて実プレス成形品11をプレス成形した。プレス成形した実プレス成形品11については、金型から離型してスプリングバックした後の表面形状を測定し、スプリングバック量を求めた。
比較例においては、実プレス成形品11のスプリングバック量と乖離が生じたままのプレス成形品解析モデル21を用いてプレス成形条件調整ステップS15を実施し、プレス成形品解析モデル21のスプリングバック量が低減するようにプレス成形条件を調整した。
この結果から、本発明に係る方法によれば、実プレス成形品11の寸法精度を向上できることが実証された。
したがって、本発明に係る方法によれば、より少ない金型形状の調整回数で実プレス成形品について許容される寸法精度を達成できることが実証された。これにより、プレス成形品の生産準備の費用及び期間を大きく短縮することができることが示された。
3 下型モデル
5 上型モデル
11 実プレス成形品
11a パンチ底部
13 三次元表面形状測定データ
13a パンチ底部
15 プレス成形品ワーク形状モデル
17 プレス成形品ワーク形状モデル
21 プレス成形品解析モデル
21a パンチ底部
21b フランジ部
31 プレス成形品のスプリングバック量評価装置
33 プレス成形品ワーク形状モデル取得部
35 実プレス成形品スプリングバック量算出部
37 プレス成形品解析モデル取得部
39 プレス成形品解析モデルスプリングバック量算出部
41 スプリングバック量比較・評価部
Claims (6)
- 実際に金型を用いてブランクをプレス成形した実プレス成形品のスプリングバック量と、前記実プレス成形品をプレス成形する過程の弾塑性力学的解析により求めたプレス成形品解析モデルのスプリングバック量と、を比較しそれぞれを評価するプレス成形品のスプリングバック量評価方法であって、
前記実プレス成形品を離型してスプリングバックした後の表面形状を測定して取得した三次元表面形状測定データからプレス成形品ワーク形状モデルを作成し、該プレス成形品ワーク形状モデルを前記金型の金型モデルによって成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析を行い、成形下死点における前記プレス成形品ワーク形状モデルを取得するプレス成形品ワーク形状モデル取得ステップと、
該取得した成形下死点における前記プレス成形品ワーク形状モデルに所定の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、前記プレス成形品ワーク形状モデルに生じたスプリングバック量を前記実プレス成形品のスプリングバック量として算出する実プレス成形品スプリングバック量算出ステップと、
前記ブランクのブランクモデルを前記金型モデルによってプレス成形する過程の弾塑性力学的解析を単一工程又は複数工程にわたって行い、成形下死点におけるプレス成形品解析モデルを取得するプレス成形品解析モデル取得ステップと、
成形下死点における前記プレス成形品解析モデルに前記実プレス成形品スプリングバック量算出ステップにおいて前記プレス成形品ワーク形状モデルに与えた前記所定の拘束条件と同一の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、前記プレス成形品解析モデルに生じたスプリングバック量を算出するプレス成形品解析モデルスプリングバック量算出ステップと、
前記実プレス成形品スプリングバック量算出ステップにおいて算出した前記実プレス成形品のスプリングバック量と、前記プレス成形品解析モデルスプリングバック量算出ステップにおいて算出した前記プレス成形品解析モデルのスプリングバック量と、を比較し、それぞれのスプリングバック量を評価するスプリングバック量比較・評価ステップと、を含むことを特徴とするプレス成形品のスプリングバック量評価方法。 - 前記実プレス成形品スプリングバック量算出ステップにおける前記弾性力学的解析は弾性有限要素解析であり、
前記プレス成形品解析モデル取得ステップにおける前記弾塑性力学的解析は、弾塑性有限要素解析であることを特徴とする請求項1記載のプレス成形品のスプリングバック量評価方法。 - 前記実プレス成形品をプレス成形する過程が該実プレス成形品の部位ごとに成形工程が分かれている場合において、
前記実プレス成形品スプリングバック量算出ステップにおける前記金型モデルは、前記実プレス成形品の各部位を成形する各金型の金型モデルを合成して一つの金型モデルとしたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のプレス成形品のスプリングバック量評価方法。 - 実際に金型を用いてブランクをプレス成形した実プレス成形品のスプリングバック量と、前記実プレス成形品をプレス成形する過程の弾塑性力学的解析により求めたプレス成形品解析モデルのスプリングバック量と、を比較しそれぞれを評価するプレス成形品のスプリングバック量評価装置であって、
前記実プレス成形品を離型してスプリングバックした後の表面形状を測定して取得した三次元表面形状測定データからプレス成形品ワーク形状モデルを作成し、該プレス成形品ワーク形状モデルを前記金型の金型モデルによって成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析を行い、成形下死点における前記プレス成形品ワーク形状モデルを取得するプレス成形品ワーク形状モデル取得部と、
該取得した成形下死点における前記プレス成形品ワーク形状モデルに所定の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、前記プレス成形品ワーク形状モデルに生じたスプリングバック量を前記実プレス成形品のスプリングバック量として算出する実プレス成形品スプリングバック量算出部と、
前記ブランクのブランクモデルを前記金型モデルによってプレス成形する過程の弾塑性力学的解析を単一工程又は複数工程にわたって行い、成形下死点におけるプレス成形品解析モデルを取得するプレス成形品解析モデル取得部と、
成形下死点における前記プレス成形品解析モデルに前記実プレス成形品スプリングバック量算出部により前記プレス成形品ワーク形状モデルに与えた前記所定の拘束条件と同一の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、前記プレス成形品解析モデルに生じたスプリングバック量を算出するプレス成形品解析モデルスプリングバック量算出部と、
前記実プレス成形品スプリングバック量算出部により算出した前記実プレス成形品のスプリングバック量と、前記プレス成形品解析モデルスプリングバック量算出部により算出した前記プレス成形品解析モデルのスプリングバック量と、を比較し、それぞれのスプリングバック量を評価するスプリングバック量比較・評価部と、を含むことを特徴とするプレス成形品のスプリングバック量評価装置。 - 実際に金型を用いてブランクをプレス成形した実プレス成形品のスプリングバック量と、前記実プレス成形品をプレス成形する過程の弾塑性力学的解析により求めたプレス成形品解析モデルのスプリングバック量と、を比較しそれぞれを評価するプレス成形品のスプリングバック量評価プログラムであって、
コンピュータを、
前記実プレス成形品を離型してスプリングバックした後の表面形状を測定して取得した三次元表面形状測定データからプレス成形品ワーク形状モデルを作成し、該プレス成形品ワーク形状モデルを前記金型の金型モデルによって成形下死点まで挟み込む過程の弾性力学的解析を行い、成形下死点における前記プレス成形品ワーク形状モデルを取得するプレス成形品ワーク形状モデル取得部と、
該取得した成形下死点における前記プレス成形品ワーク形状モデルに所定の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、前記プレス成形品ワーク形状モデルに生じたスプリングバック量を前記実プレス成形品のスプリングバック量として算出する実プレス成形品スプリングバック量算出部と、
前記ブランクのブランクモデルを前記金型モデルによってプレス成形する過程の弾塑性力学的解析を単一工程又は複数工程にわたって行い、成形下死点におけるプレス成形品解析モデルを取得するプレス成形品解析モデル取得部と、
成形下死点における前記プレス成形品解析モデルに前記実プレス成形品スプリングバック量算出部により前記プレス成形品ワーク形状モデルに与えた前記所定の拘束条件と同一の拘束条件を与えてスプリングバック解析を行い、前記プレス成形品解析モデルに生じたスプリングバック量を算出するプレス成形品解析モデルスプリングバック量算出部と、
前記実プレス成形品スプリングバック量算出部により算出した前記実プレス成形品のスプリングバック量と、前記プレス成形品解析モデルスプリングバック量算出部により算出した前記プレス成形品解析モデルのスプリングバック量と、を比較し、それぞれのスプリングバック量を評価するスプリングバック量比較・評価部と、して実行させる機能を有することを特徴とするプレス成形品のスプリングバック量評価プログラム。 - スプリングバック量が低減するようにプレス成形条件を調整して寸法精度を向上させた実プレス成形品を製造するプレス成形品の製造方法であって、
請求項1に記載のプレス成形品のスプリングバック量評価方法に基づいて、実際に金型を用いてブランクをプレス成形した実プレス成形品の離型後のスプリングバック量と、前記実プレス成形品をプレス成形する過程とその後のスプリングバック過程の力学的解析により求めたプレス成形品解析モデルのスプリングバック量との差異を、前記プレス成形品解析モデルのスプリングバック量の予測精度として求めるスプリングバック量予測精度取得ステップと、
該取得した前記プレス成形品解析モデルのスプリングバック量の予測精度を高めるように、前記実プレス成形品をプレス成形する過程とその後のスプリングバック過程の力学的解析における前記プレス成形品解析モデルの境界条件を調整する境界条件調整ステップと、
該調整した前記境界条件で求められる前記プレス成形品解析モデルのスプリングバック量が予め定めた所定の範囲内に収まるように、前記実プレス成形品をプレス成形する過程の力学的解析におけるプレス成形条件を調整するプレス成形条件調整ステップと、
該プレス成形条件調整ステップにおいて調整した前記プレス成形条件の下で実際に金型を用いて前記実プレス成形品をプレス成形するプレス成形ステップと、を含むことを特徴とするプレス成形品の製造方法。
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