JP7276551B2 - 微小粒子分取方法、微小粒子分取用プログラム及び微小粒子分取用システム - Google Patents

微小粒子分取方法、微小粒子分取用プログラム及び微小粒子分取用システム Download PDF

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Description

本発明は、微小粒子分取方法、微小粒子分取用プログラム及び微小粒子分取用システムに関する。
従来、フローサイトメータ等の微小粒子分取装置では、流路を通流するシースフローから目的とする微小粒子のみを高速かつ安定して取り出すことが課題となっていた。
この課題を解決するため、例えば、特許文献1に記載される微小粒子分取方法が開発されている。
特許文献1の微小粒子分取方法は、具体的には、主流路を通流する液体中の微小粒子を、前記主流路に連通する分岐流路における前記液体の流れ方向に対する垂直断面が他の部分よりも大きく形成された一部の領域内、すなわち圧力室内に、負圧を発生させることにより取り込む方法である。そして、圧力室内の負圧の発生には、該圧力室の内空を変形させるように圧力室外に備え付けられたアクチュエータを用いている。
特開2014-30534号公報
前記微小粒子分取方法においては、1個の微小粒子を分取した後、次の微小粒子を分取する際、微小粒子の間隔が近接であっても遠隔であっても、一定の電圧をアクチュエータに印加している。
ところが、液体の流れには、アクチュエータの駆動と対比すると遅れる現象があるため、微小粒子の間隔が近接しているときには、前記一定の電圧を印加していると、余分な駆動電圧を印加して微小粒子を分取していることになる。
このような余分な駆動電圧でアクチュエータを稼働しているため、アクチュエータの多段的な駆動可能回数の制約が大きくなる。
また、微小粒子の流れやシースフローには、ある程度擾乱が残っているため、微小粒子を分取するときにより一層の高電圧をアクチュエータに印加することが望まれる場合においても、前記一定の電圧を印加していた。
更に、分取すべき微小粒子と一緒に吸引される液体は、微小粒子の分取を続けると分取領域に蓄積されてしまう。蓄積された不要な液体は、適宜、分取領域から吐出することが望まれる。
本技術は、このような課題を解決するため、微小粒子分取用マイクロチップを用いた、微小粒子の分取と分取領域の液体の吐出とを制御する微小粒子分取方法を提供することを主目的とする。
前記課題解決のため、本技術は、
微小粒子が通流する主流路と該主流路に連通する圧力室とを含む、微小粒子分取用マイクロチップを用いて、
前記主流路に通流する液体中の微小粒子を、前記主流路に連通する前記圧力室内に負圧を発生させることにより、前記圧力室に分取する工程、
前記圧力室内の液体を、前記圧力室内に前記発生させた負圧の合計絶対値以下の正圧を発生させることにより、前記主流路に吐出する工程、
を含み、
前記負圧又は正圧は前記主流路に通流する液体中の微小粒子が検出された時間間隔により制御される、
微小粒子分取方法を提供する。
前記微小粒子分取方法は、前記主流路に通流する液体中の微小粒子を、前記主流路に連通する圧力室内に負圧を発生させることにより、前記圧力室に分取する工程の後に、
前記圧力室内の圧力が一定時間保持される工程、
を含み、
前記一定時間が所定値以下の場合、前記主流路に通流する液体中の次の微小粒子を、前記圧力室内に更なる負圧を発生させることにより、前記圧力室に分取する工程、を更に含んでもよい。
また、前記更なる負圧は、前記主流路に通流する液体中の微小粒子が検出された時間と前記主流路に通流する液体中の次の微小粒子が検出された時間の間隔により制御され得る。
そして、前記更なる負圧は前記負圧以下であることが好ましい。
また、前記工程において、アクチュエータにより前記圧力室の内空を変形させる力を印加して前記負圧又は正圧を発生させ、該内空の容積を増大又は減少させる手順を行うことができる。
前記手順では、前記アクチュエータにパルス波形、ステップ波形又はアンダーシュート付ステップ波形の駆動波形を印加し得る。
前記パルス波形の印加は、立下り波形部と立上り波形部とで個別に制御され得る。
また、前記立下り波形部の電圧は、前記主流路に通流する液体中の微小粒子が検出された時間間隔により制御され得る。
また、前記立下り波形部の電圧は、前記主流路に通流する液体中の微小粒子が検出された時間と前記主流路に通流する液体中の次の微小粒子が検出された時間の間隔が所定値以下の場合、最大電圧以下に制御され得る。
更に、前記立下り波形部は、最大電圧による印加から一定時間経過後に最大電圧で再度印加するように制御され得る。
また、前記微小粒子分取方法は、前記主流路に通流する液体中の微小粒子を、前記主流路に連通する圧力室内に負圧を発生させることにより、前記圧力室に分取する工程の後に、
前記圧力室内の圧力が一定時間保持される工程、を含み、
前記一定時間が所定値以上の場合、前記圧力室内の液体を、前記圧力室内に前記発生させた負圧の合計絶対値よりも低い正圧を発生させることにより、前記主流路に吐出する工程、を更に含んでもよい。
また、前記圧力室内の液体を、前記圧力室内に前記発生させた負圧の合計絶対値以下の正圧を発生させることにより、前記主流路に吐出する工程の後に、
前記圧力室内の圧力が50μs以上保持される工程、を含んでもよい。
更に、前記圧力室内の圧力が50μs以上保持される工程の後に、
前記圧力室内の更なる液体を、前記圧力室内に更なる正圧を発生させることにより、前記主流路に吐出する工程、を含んでもよい。
また、前記圧力室内の更なる液体を、前記圧力室内に更なる正圧を発生させることにより、前記主流路に吐出する工程において、
前記更なる正圧が、前記負圧の合計絶対値と前記正圧との差分範囲以内の正圧であり得
る。
また、本技術は、
主流路に含まれる微小粒子検出領域に光を照射する光照射部と、
前記微小粒子から発せられた散乱光及び/又は蛍光を検出する検出部と、
を備えた微小粒子分取用システムにおいて、
前記主流路に連通する圧力室内の圧力をアクチュエータが変化させて、前記主流路に通流する液体中の微小粒子を分取することを実行することを含み、
前記アクチュエータに印可される電圧の値又は波形が、前記主流路に通流する液体中の微小粒子が検出された時間間隔に基づき特定される、
微小粒子分取方法も提供する。
前記時間間隔と所定値との比較の結果又は前記時間間隔の長さの判定の結果に基づき、前記電圧の値又は波形が特定されうる。
前記アクチュエータに、パルス波形、ステップ波形、又はアンダーシュート付ステップ波形の駆動波形が印加されうる。
前記電圧の値は、前記時間間隔に依存して決定される係数を用いて特定されうる。
微小粒子間の時間を因数とした関数を用いて前記アクチュエータの駆動が制御されうる。


更に、本技術は、
微小粒子が通流する主流路と該主流路に連通する圧力室とを含む、微小粒子分取用マイクロチップと、
前記微小粒子分取用マイクロチップを搭載するマイクロチップ搭載部と、
前記主流路に含まれる微小粒子検出領域に光を照射する光照射部と、
前記微小粒子から発せられた散乱光及び/又は蛍光を検出する検出部と、
前記圧力室の室内を負圧又は正圧にする圧力室制御部と、
を備え、
前記圧力室制御部は、
前記主流路に通流する液体中の微小粒子を、前記主流路に連通する前記圧力室内に負圧を発生させることにより、前記圧力室に分取すること、
前記圧力室内の液体を、前記圧力室内に前記発生させた負圧の合計絶対値以下の正圧を発生させることにより、前記主流路に吐出すること、及び
前記負圧又は正圧を、前記主流路に通流する液体中の微小粒子が検出された時間間隔により制御すること、
をコンピュータに実行させる微小粒子分取用プログラムにより制御される、
微小粒子分取用システムを提供する。
また、本技術は、
主流路に含まれる微小粒子検出領域に光を照射する光照射部と、
前記微小粒子から発せられた散乱光及び/又は蛍光を検出する検出部と、
圧力室内の圧力を制御する圧力室制御部と、
を備え、
前記圧力室制御部は、
前記主流路に連通する前記圧力室内の圧力をアクチュエータが変化させて前記主流路を流れる微小粒子を分取することを微小粒子分取用システムに実行させ、且つ、
前記アクチュエータに印可される電圧の値又は波形を、前記主流路に通流する液体中の微小粒子が検出された時間間隔に基づき特定する、
微小粒子分取用システムも提供する。
前記圧力室制御部は、前記時間間隔と所定値との比較の結果又は前記時間間隔の長さの判定の結果に基づき、前記電圧の値又は波形を特定するように構成されうる。
前記アクチュエータに、パルス波形、ステップ波形、又はアンダーシュート付ステップ波形の駆動波形が印加されうる。
前記アクチュエータにパルス波形の駆動波形が印可されるように構成されており、
前記パルス波形の印加を、立下り波形部と立上り波形部とで個別に制御しうる。
前記立下り波形部の電圧は、前記主流路に通流する液体中の微小粒子が検出された時間間隔により制御されうる。
前記立下り波形部の電圧の値又は波形が、前記時間間隔により制御されうる。
前記電圧の値は、前記時間間隔に依存して決定される係数を用いて特定されうる。
前記圧力室制御部は、微小粒子間の時間を因数とした関数を用いて前記アクチュエータの駆動を制御しうる。
前記微小粒子分取用システムは、前記主流路が設けられた微小粒子分取用マイクロチップを用いて、微小粒子の分取を実行しうる。
また、本技術は、
主流路に含まれる微小粒子検出領域に光を照射する光照射部と、
前記微小粒子から発せられた散乱光及び/又は蛍光を検出する検出部と、
目的粒子の分取流路内への分取を行うアクチュエータを駆動する駆動部と、
を備え、
前記駆動部は、
前記アクチュエータを駆動して前記分取流路内の圧力を変化させて、前記主流路に通流する液体中の微小粒子を分取することを微小粒子分取用システムに実行させ、且つ、
前記アクチュエータに印可される電圧の値又は波形を、前記主流路に通流する液体中の微小粒子が検出された時間間隔に基づき特定する、
微小粒子分取用システムも提供する。

更に、本技術は、
微小粒子が通流する主流路と該主流路に連通する圧力室とを含む、微小粒子分取用マイクロチップと、
前記微小粒子分取用マイクロチップを搭載するマイクロチップ搭載部と、
前記主流路に含まれる微小粒子検出領域に光を照射する光照射部と、
前記微小粒子から発せられた散乱光及び/又は蛍光を検出する検出部と、
前記圧力室の室内を負圧又は正圧にする圧力室制御部と、
を備え、
前記圧力室制御部は、
前記主流路に通流する液体中の微小粒子を、前記主流路に連通する前記圧力室内に負圧を発生させることにより、前記圧力室に分取すること、
前記圧力室内の液体を、前記圧力室内に前記発生させた負圧の合計絶対値以下の正圧を発生させることにより、前記主流路に吐出すること、及び
前記負圧又は正圧を、前記主流路に通流する液体中の微小粒子が検出された時間間隔により制御すること、
をコンピュータに実行させる微小粒子分取用プログラムにより制御される、
微小粒子分取用システムを提供する。
本技術によれば、液体中の微小粒子を、より低電圧で分取し、分取した微小粒子を吐出することなく微小粒子と一緒に取り込んだ液を吐出し、微小粒子を高回収率、高純度、高効率で分取することができる。
微小粒子分取方法を実施するために適した微小粒子分取装置Aの構成を説明する図である。 微小粒子分取装置Aに搭載されるマイクロチップ1aの構成を説明する図である。 マイクロチップ1aの構成を説明する図である。 マイクロチップ1aの構成を説明する図である。 マイクロチップ1aの主流路15と分取流路16の分岐部の構成を説明する図である。 微小粒子分取装置Aの分取動作を説明する図である。 マイクロチップ1aの圧力室161の機能を説明する図である。 微小粒子分取用システムの駆動部23の構成を説明するブロック図である。 イベント検出回路2303によって読み込まれた電気信号の波形を説明する図である。 イベントデータパケットを説明する概念図である。 ヒストグラムチャートおよび2Dチャートに対するゲーティングを説明する図である。 立下り波形部および立上り波形部を説明する模式図である。 微小粒子分取方法を説明する第1のフローチャートである。 微小粒子分取方法を説明する第2のフローチャートである。 ステップカウンタ値に応じた立上りタイミングの計算の態様を説明する図である。 微小粒子分取方法を説明するタイムチャートである。 イベント時間間隔の分布を説明するグラフである。 基本となる微小粒子分取方法におけるアクチュエータ駆動の入力波形を示す図である。 基本となる微小粒子分取方法におけるアクチュエータ駆動の入力波形を示す図である。 微小粒子分取方法におけるアクチュエータ駆動の入力波形を示す図である。 微小粒子分取用マイクロチップの分取流路の分岐部における微小粒子の挙動を示す図である。 アクチュエータ駆動波形の立上げ後一定時間と分取部(オリフィス内)流速の関係の関係を示すグラフである。 ピエゾ素子駆動後からの経過時間とオリフィス入口からの粒子距離の流速の関係を示すグラフである。 パラメータの初期設定の例とピエゾ素子駆動波形の関係を示す図である。 Tp<Tfの場合及びTf<Tpの場合のピエゾ素子駆動波形を示す。 微小粒子分取方法における3種類のパラメータの駆動波形を示す模式図である。 Tpに依存したピエゾ素子駆動波形のパターンの例を示す図である。 検証で入力されるピエゾ素子駆動波形の例を示す図である。 関数αと微小粒子の回収率との関係を示すグラフである。 基本となる微小粒子分取方法と本技術の微小粒子分取方法とのDAアボートの比較を示すグラフである。 基本となる微小粒子分取方法と本技術の微小粒子分取方法とのDAアボートの比較を示すグラフである。 基本となる微小粒子分取方法と本技術の微小粒子分取方法との回収率の比較を示すグラフである。 微小粒子が連続で近接して分取部に到来した場合のピエゾ素子駆動波形例である。 微小粒子が連続で近接して分取部に到来した場合の好適なピエゾ素子駆動波形例である。 ピエゾ素子の最大変位を変えたイベントレート時のDAアボート解析結果を示すグラフである。
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。説明は以下の順序で行う。
1.基本となる微小粒子分取方法
1-1.微小粒子分取装置の全体構成
1-2.マイクロチップの構成の概略
1-3.微小粒子の基本的分取動作
1-4.基本的駆動信号
2.微小粒子分取用プログラム
3.微小粒子分取用システム
3-1.駆動部の全体構成
3-2.駆動部の詳細
4.微小粒子分取方法の実施態様
5.実施例
5-1.微小粒子の再放出の解析
5-2.低電圧での微小粒子の分取の検討
5-3.基本となる微小粒子分取方法と本技術の微小粒子分取方法との比較
5-4.回収率の比較
5-5.ピエゾ素子のばらつきと微小粒子の分取速度の関係
なお、本技術において、「微小粒子」とは、細胞や微生物、リポソームなどの生体関連微小粒子、あるいはラテックス粒子やゲル粒子、工業用粒子などの合成粒子などが広く含まれる。
生体関連微小粒子には、各種細胞を構成する染色体、リポソーム、ミトコンドリア、オルガネラ(細胞小器官)などが含まれる。細胞には、動物細胞(血球系細胞など)および植物細胞が含まれる。微生物には、大腸菌などの細菌類、タバコモザイクウイルスなどのウイルス類、イースト菌などの菌類などが含まれる。さらに、生体関連微小粒子には、核酸やタンパク質、これらの複合体などの生体関連高分子も包含され得るものとする。また、工業用粒子は、例えば有機もしくは無機高分子材料、金属などであってもよい。有機高分子材料には、ポリスチレン、スチレン・ジビニルベンゼン、ポリメチルメタクリレートなどが含まれる。無機高分子材料には、ガラス、シリカ、磁性体材料などが含まれる。金属には、金コロイド、アルミなどが含まれる。これら微小粒子の形状は、一般には球形であるのが普通であるが、非球形であってもよく、また大きさや質量なども特に限定されない。
<1.基本的となる微小粒子分取方法>
1-1.微小粒子分取装置の全体構成
図1は、本技術に係る微小粒子分取方法の実施に適した微小粒子分取装置Aの構成を説明する図である。
また、図2から図4は、微小粒子分取装置Aに搭載されるマイクロチップ1aの構成の概略を説明する図である。図2は上面図、図3は斜視図、図4は図2中Q-Q断面に対応する断面図である。
微小粒子分取装置Aは、マイクロチップ1aと、照射部21、検出部22及び駆動部23とを含んで構成されている。マイクロチップ1aには、分析対象となる微小粒子を含む液体(サンプル液)が通流される主流路15が形成されている(図2参照)。また、マイクロチップ1aの表面には、アクチュエータ31が配置されている(図3参照)。
照射部21は、マイクロチップ1aの主流路15を通流する微小粒子に光(励起光)を照射する。照射部21は、励起光を出射する光源と、主流路15を通流する微小粒子に対して励起光を集光する対物レンズ等を含んで構成される。光源は、分析の目的に応じてレーザダイオード、SHGレーザ、固体レーザ、ガスレーザ及び高輝度LEDなどから適宜選択される。照射部21は、必要に応じて、光源及び対物レンズ以外の光学素子を有していてもよい。
検出部22は、励起光の照射によって微小粒子から発生する蛍光及び散乱光を検出する。検出部22は、微小粒子から発生する蛍光及び散乱光を集光する集光レンズと検出器等を含んで構成される。検出器には、PMT、フォトダイオード、CCD及びCMOSなどが用いられる。検出部22は、必要に応じて、集光レンズ及び検出器以外の光学素子を有していてもよい。
検出部22により検出される蛍光は、微小粒子そのものから発生する蛍光及び微小粒子に標識された蛍光物質等から発生する蛍光であってよい。また、検出部22により検出される散乱光は、前方散乱光、側方散乱光、レイリー散乱及びミー散乱などの各種散乱光であってよい。
1-2.マイクロチップの構成の概略
図2から図4を参照して、マイクロチップ1aの構成を詳しく説明する。微小粒子を含むサンプル液は、サンプル液インレット11からサンプル液流路12に導入される。また、シース液インレット13からはシース液が導入される。シース液インレット13から導入されたシース液は、2本のシース液流路14,14に分流されて送液される。サンプル液流路12とシース液流路14,14は合流して主流路15となる。サンプル液流路12を送液されるサンプル液層流と、シース液流路14,14を送液されるシース液層流と、は主流路15内において合流し、サンプル液層流がシース液層流に挟み込まれたシースフローを形成する(後述の図5C参照)。
図中符号15aは、照射部21により励起光が照射され、検出部22による蛍光及び散乱光の検出が行われる検出領域を示す。微小粒子は、主流路15に形成されるシースフロー中に一列に配列した状態で検出領域15aに送流され、照射部21からの励起光により照射される。
主流路15は、検出領域15aの下流において、3つの流路に分岐している。主流路15の分岐部の構成を図5に示す。主流路15は、検出領域15aの下流において、分取流路16及び廃棄流路17,17の3つの分岐流路と連通している。このうち、分取流路16は、駆動部23によって所定の光学特性を満たすと判定された微小粒子(以下、「目的粒子」と称する)が取り込まれる流路である。一方、駆動部23によって所定の光学特性を満たさないと判定された微小粒子(以下、「非目的粒子」とも称する)は、分取流路16内に取り込まれることなく、2本の廃棄流路17のいずれか一方に流れる。
目的粒子の分取流路16内への取り込みは、アクチュエータ31によって分取流路16内に負圧を発生させ、この負圧を利用して目的粒子を含むサンプル液及びシース液を分取流路16内に吸い込むことによって行われる。アクチュエータ31は、ピエゾ素子などの圧電素子とされる。アクチュエータ31は、マイクロチップ1aの表面に接触して配置され、分取流路16に対応する位置に配置されている。より具体的には、アクチュエータ31は、分取流路16において内空が拡張された領域として設けられた圧力室161に対応する位置に配置されている(図3及び図4参照)。
圧力室161の内空は、図2に示されるように平面方向(分取流路16の幅方向)に拡張されるとともに、図4に示されるように断面方向(分取流路16の高さ方向)にも拡張されている。すなわち、分取流路16は、圧力室161において幅方向及び高さ方向に拡張されている。換言すると、分取流路16は、圧力室161においてサンプル液及びシース液の流れ方向に対する垂直断面が大きくなるように形成されている。
アクチュエータ31は、印加される電圧の変化に伴って伸縮力を発生し、マイクロチップ1aの表面(接触面)を介して分取流路16内に圧力変化を生じさせる。分取流路16内の圧力変化に伴って分取流路16内に流動が生じると、同時に、分取流路16内の体積が変化する。分取流路16内の体積は、印加電圧に対応したアクチュエータ31の変位量によって規定される体積に到達するまで変化する。より具体的には、アクチュエータ31は、電圧を印加されて伸張した状態においては、圧力室161を構成する変位板311(図4参照)を押圧して圧力室161の体積を小さく維持している。そして、印加される電圧が低下すると、アクチュエータ31は収縮する方向へ力を発生し、変位板311への押圧を弱めることによって圧力室161内に負圧を発生させる。
アクチュエータ31の伸縮力を効率良く圧力室161内へ伝達するため、図4に示すように、マイクロチップ1aの表面を圧力室161に対応する位置において陥凹させ、該陥凹内にアクチュエータ31を配置することが好ましい。これにより、アクチュエータ31の接触面となる変位板311を薄くでき、変位板311がアクチュエータ31の伸縮に伴う押圧力の変化によって容易に変位して、圧力室161の容積変化をもたらすようにできる。
図4及び図5中、符号156により、主流路15への分取流路16の連通口を示す。主流路15内に形成されたシースフロー中を送流される目的粒子は、連通口156から分取流路16内に取り込まれる。連通口は、オリフィスとして機能する。
主流路15から分取流路16への目的粒子の取り込みを容易にするため、連通口156は、図5Cに示すように、主流路15内に形成されるシースフロー中のサンプル液層流Sに対応する位置に開口されていることが望ましい。連通口156の形状は、特に限定されないが、例えば図5Aに示すような平面に開口する形状や、図5Bに示すように2本の廃棄流路17の流路壁を切り欠いて開口とする形状を採用できる。
マイクロチップ1aは、主流路15等が形成された基板層を貼り合わせて構成できる。基板層への主流路15等の形成は、金型を用いた熱可塑性樹脂の射出成形により行うことができる。熱可塑性樹脂には、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、環状ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン及びポリジメチルシロキサン(PDMS)などの従来マイクロチップの材料として公知のプラスチックを採用できる。
以上の説明は、圧力室内に目的粒子を直接取り込む例であるが、変形例として、分取流路16と圧力室164との間に、直列に配置され内空が拡張された、目的粒子の捕獲室を有してもよい。圧力室及び捕獲室はそれぞれ複数を配してもよい。この場合、分取流路16において圧力室及び捕獲室を直列に接続するとともに、圧力室に対して捕獲室が主流路15側に位置するように配置する。
1-3.微小粒子の基本的分取動作
次に、本技術に係る微小粒子の基本的分取動作について、微小粒子分取装置Aの動作とともに説明する。
ユーザが分析を開始すると、微小粒子分取装置Aは、ポンプを駆動して、サンプル液及びシース液をマイクロチップ1aのサンプル液インレット11及びシース液インレット13に送液する。これにより、主流路15内に、サンプル液層流がシース液層流に挟み込まれたシースフローが形成される。
微小粒子はシースフロー中を一列に配列された状態で検出領域15aまで送流され、照射部21からの励起光によって照射される。励起光の照射により微小粒子から発生する蛍光及び散乱光は、検出部22によって検出され、電気信号に変換され、駆動部23に出力される。
駆動部23は、入力される電気信号に基づいて微小粒子の光学特性を判定する。微小粒子が目的粒子と判定された場合、駆動部23は、図6A及びBに示すように、当該目的粒子が検出領域15aから分岐部に移動するまでの時間(遅れ時間)を経過した後に、アクチュエータ31に当該微小粒子を取得するための駆動信号を発生する。その際、必要であれば、アンプを介してアクチュエータ31を駆動させるようにしてもよい。
具体的には、アクチュエータ31がピエゾ素子である場合、駆動部23は、ピエゾ収縮となる電圧を印加し、圧力室161内を負圧にすることで、目的粒子を主流路15から分取流路16へ引き込む。
一方、微小粒子が非目的粒子と判定された場合、駆動部23は、図6C及びDに示すように、アクチュエータ31に非取得の駆動信号を発生し、次の微小粒子の光学特性判定を行う。なお、非取得の駆動信号を受けたアクチュエータ31は動作しない。
駆動部23は、微小粒子の光学特性の判定と、アクチュエータ31への駆動信号の出力とを分析終了まで繰り返し(図6E~F参照)、目的粒子のみを分取流路16内に蓄積する(図6F参照)。分析終了後、分取流路16内に分別された目的粒子はユーザによって回収される。なお、廃棄流路17に流された非目的粒子は、廃棄流路17内に蓄積するか、外部に排出すればよい。
分取流路16内へ引き込まれた目的粒子は、図7Aに示すように、圧力室161内にまで取り込まれる。図中、符号Pは、圧力室161内に取り込まれた目的粒子を示し、符号162は、圧力室161への目的粒子Pの取込口を示す。目的粒子Pを含むサンプル液及びシース液の流れは、内空が拡張された圧力室161に流入する際に噴流(ジェット)となり、流路壁面から剥離する(図7A中矢印参照)。このため、目的粒子Pは、取込口162から離れて、圧力室161の奥まで取り込まれる。
目的粒子を主流路15から圧力室161内にまで引き込むため、圧力室161の容積の増大量は、連通口156から取込口162までの分取流路16の容積(図4参照)よりも大きくされる。また、圧力室161の容積の増大量は、目的粒子Pを含むサンプル液及びシース液の流れを取込口162において流路壁面から剥離させるために十分な負圧を発生するような大きさとされる。駆動部23は、これらの容積増大量に見合った電圧幅のピエゾ収縮信号をアクチュエータ31に出力する。
分取流路16の連通口156から取込口162までの長さは、より短くなるように設計してもよい。連通口156から取込口162までの長さを短くする程、連通口156から取込口162までの分取流路16の容積が小さくなるため、目的粒子を主流路15から圧力室161内にまで引き込むための圧力室161の容積の増大量を小さくできる。その結果、アクチュエータ31への印加電圧幅を小さくでき、効率的な分取動作が可能となる。換言すれば、低駆動電圧で噴流を発生させて粒子を捕獲することができる。
このように、目的粒子Pを分取流路16において内空が拡張された圧力室161の奥にまで取り込むようにすることで、分取流路16内の圧力が逆転して正圧になった場合にも、目的粒子Pが圧力室161から主流路15側へ再流出することを防止できる。すなわち、図7Bに示すように、分取流路16内が正圧となった場合にも、サンプル液及びシース液が取込口162の近傍から広く流出していくため、取込口162から離れた位置まで取り込まれた目的粒子Pそのものの移動量は小さくなる。このため、目的粒子Pは、再流出することなく、圧力室161内に保持される。
1-4.基本的駆動信号
駆動部23からアクチュエータ31に印加される電圧の基本的な波形(目的粒子を取得する際の基本的な駆動信号)を説明する。アクチュエータ31に印加される電圧の波形は、擬ステップ波形である。
パルス波形の振幅は、目的粒子を主流路15から圧力室161内にまで引き込むため及び目的粒子Pを含むサンプル液及びシース液の流れを取込口162において流路壁面から剥離させるため、十分な容積増加を圧力室161にもたらすように設定される。また、一波形分の電圧値の低下幅も、同様の条件を満たすように設定される。
本技術では、主流路15中の目的粒子を、分取流路16において内空が拡張された圧力室161内へ取り込むことで、分取流路16内に引き込んだ目的粒子を再流出させないようにできる。このため、目的粒子の分別を安定して行うことができる。また、本技術では、分取流路16内が正圧になることがあっても、目的粒子を圧力室161内に保持できる。このため、アクチュエータ31への駆動電圧の制御をロバストな条件で行うことが可能となる。さらに、本技術では、アクチュエータ31の駆動をパルス波形の電圧によって行うことができる。このため、アクチュエータ31の可動範囲によらず、目的粒子の分取を数量の制限なく行うことができる。
<2.微小粒子分取用プログラム>
上述の微小粒子分取装置Aの駆動部23には、上述の動作を実行するための微小粒子分取用プログラムが格納されている。
プログラムは、ハードディスクに格納・保持され、CPU及びOSの制御の下でメモリに読み込まれて、上述の分取動作を実行する。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されたものとできる。記録媒体としては、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であれば特に制限はないが、具体的には、例えば、フレキシブルディスクやCD-ROM等の円盤形記録媒体が用いられる。また、磁気テープ等のテープ型記録媒体を用いてもよい。また、一部の処理をDSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programing Logic Device)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成し、前記ソフトウエアプログラムと連携させて高速処理を行う構成も採用できる。
前記微小粒子分取用プログラムは、前記微小粒子分取用マイクロチップにおいて、 前記主流路に通流する液体中の微小粒子を、前記主流路に連通する前記圧力室内に負圧を発生させることにより前記圧力室に分取すること、前記圧力室内の液体を、前記圧力室内に前記発生させた負圧の合計絶対値以下の正圧を発生させることにより前記主流路に吐出すること、及び前記負圧又は正圧を、前記主流路に通流する液体中の微小粒子が検出された時間間隔により制御すること、をコンピュータに実行させるように構成されている。
特に、微小粒子が検出された時間間隔で前記負圧又は正圧をどのように制御するかについて、後述する微小粒子分取方法の実施態様の駆動波形の項目にて詳述する。
<3.微小粒子分取用システム>
以下に、図8を参照して本技術の微小粒子分取用システムを説明する。
3-1.駆動部の全体構成
図8は、微小粒子分取用システムの駆動部を説明する図である。なお、本実施形態においては、図1に示した微小粒子分取装置Aの構成要素に対応するものについては、同一の符号を用いて説明する。図8に示すように、駆動部23は、バス2301にそれぞれ接続された複数の回路2302~2309を有している。
具体的には、同図中の符号2302で示される回路は、アナログ―デジタル変換回路2302である。また、符号2303で示される回路は、イベント検出回路2303である。さらに、符号2304で示される回路は、到達時間計算回路2304である。さらにまた、符号2305で示される回路は、ゲーティング回路2305である。また、符号2306で示される回路は、出力待ち行列回路2306である。さらに、符号2307で示される回路は、出力タイミング生成回路2307である。さらにまた、符号2308で示される回路は、出力信号生成回路2308である。また、符号2309で示される回路は、MPU(マイクロプロセッシングユニット)2309である。なお、アナログ―デジタル変換回路2302は、同図において「A/D」と表されている。
また、図8に示すように、駆動部23は、クロックカウンタ2310を有している。このクロックカウンタ2310は、イベント検出回路2303、到達時間計算回路2304、ゲーティング回路2305、出力待ち行列回路2306、出力タイミング生成回路2307および出力信号生成回路2308に接続されている。
さらに、図8に示すように、駆動部23は、MPU2309に接続されたPCI/O部(パーソナルコンピュータ接続用のInput/Output Interface回路)2311と、このPC
I/O部2311に接続された制御PC2312とを有している。
さらにまた、図8に示すように、駆動部23は、出力信号生成回路2308に接続されたデジタル-アナログ変換回路2313を有している。なお、デジタル-アナログ変換回路2313は、同図において「D/A」と表されている。
3-2.駆動部の詳細
[アナログ-デジタル変換回路]
アナログ-デジタル変換回路2302は、検出部22(図1参照)の後段(出力側)の回路であり、検出部22と接続されている。また、アナログ-デジタル変換回路2302は、複数配置されている。ここで、アナログ-デジタル変換回路2302は、検出部22によって検出される複数の光(波長領域)にそれぞれ対応するように、検出部22のチャンネル(図13におけるCh)数と同数配置されていてもよい。あるいは、アナログ-デジタル変換回路2302は、検出部2302のセンサ数と同数配置されていてもよい。
各アナログ-デジタル変換回路2302には、検出部2から出力された各アナログ-デジタル変換回路2302にそれぞれ対応する電気信号が入力する。該電気信号は、検出部22によって検出された光(蛍光および散乱光)が検出部22によって光電変換されたアナログ信号である。そして、各アナログ-デジタル変換回路2302は、入力された各電気信号をそれぞれアナログ信号からデジタル信号へと変換する。さらに、各アナログ-デジタル変換回路2302は、デジタル信号に変換された電気信号を後段に出力する。
[イベント検出回路]
イベント検出回路2303は、各アナログ-デジタル変換回路2302の後段の回路であり、各アナログ-デジタル変換回路2302と接続されている。
イベント検出回路2303には、各アナログ-デジタル変換回路2302から出力された電気信号が入力される。そして、イベント検出回路2303は、入力された各電気信号のうちの特定の信号を微小粒子を認知するためのトリガ信号として用いる。すなわち、イベント検出回路2303は、トリガ信号の値が所定の条件を満足する場合に、各電気信号が微小粒子から検出されたものであることを認知する。なお、トリガ信号は、検出部22によって検出される複数の光のうちの強度が最大の光(例えば、前方散乱光)の電気信号であってもよいが、これに限定されなくてもよい。
また、イベント検出回路2303は、図9に示すように、入力された各電気信号の波形を読み込み、読み込まれた波形の幅、高さおよび面積を計算する。さらに、イベント検出回路2303は、算出された該波形の各値等を用いて、図10に示すように、各電気信号をこれらに対応する1つの微小粒子に関連付けたイベントデータパケットを作成する。このイベントデータパケットは、1つの微小粒子に対する測定データの一例である。そして、イベント検出回路2303は、作成されたイベントデータパケットを後段に出力する。
ここで、イベントデータパケットには、該パケットの作成時にデータの記録が完了する項目(以下、第1の項目と称する)が含まれている。また、イベントデータパケットには、該パケットの作成後における該パケットに対応する電気信号に関する処理が進むにつれて更新される項目(以下、第2の項目と称する)が含まれている。
第1の項目には、例えば、以下の項目が含まれている。
・電気信号の波形の幅、高さおよび面積
・認知された微小粒子の番号(イベント番号)
・トリガ信号となった電気信号の番号
・トリガ信号の検出時刻
なお、トリガ信号となった電気信号の番号は、チャンネル番号であってもよい。また、トリガ信号の検出時刻の記録には、クロックカウンタ2310から入力される信号を用いてもよい。この信号は、クロックカウンタ2310が、自身に入力されたクロック生成回路(図示せず)からのクロック信号を計数したものであってもよい。
一方、第2の項目には、例えば、以下の項目が含まれている。
・微小粒子の取り込みを行うべき時刻
・微小粒子の取り込みを行うか否かを示す第1のフラグ
・微小粒子の取り込みを行うか否かを示す第2のフラグ
なお、第1のフラグは、ゲーティング回路2305によって設定されるフラグである。一方、第2のフラグは、出力待ち行列回路2306によって設定されるフラグである。これら第1のフラグおよび第2のフラグは、基本的に1または0に設定されていて、対応する微小粒子の取り込みを行うか否かの判断に供されるようにしてもよい。各フラグの更なる詳細については後述する。
[到達時間計算回路]
図8に示すように、到達時間計算回路2304は、イベント検出回路2303の後段の回路であり、イベント検出回路2303と接続されている。
到達時間計算回路2304には、イベント検出回路2303から出力されたイベントデータパケットが入力される。そして、到達時間計算回路2304は、入力されたイベントデータパケットに基づいて、第2の項目に含まれる微小粒子の取り込みを行うべき時刻として、微小粒子(目的粒子)が連通口156に到達する到達時刻を計算する。以下、「微小粒子の取り込みを行うべき時刻」を、「到達時刻」に置き換えて説明する。到達時間計算回路2304は、該計算によって算出された到達時刻をイベントデータパケットに記録し、この記録後のイベントデータパケットを後段に出力する。
到達時刻の計算は、第2の項目に含まれるトリガ信号の検出時刻に、目的粒子が検出領域15aから連通口156に到達するまでの所要時間(遅れ時間)を加算することによって行うようにしてもよい。また、到達時刻をクロックカウンタ値として計算しても良い。
[ゲーティング回路]
ゲーティング回路2305は、イベント検出回路2303の後段の回路であり、イベント検出回路2303と接続されている。
ゲーティング回路2305には、イベント検出回路2303から出力されたイベントデータパケットが入力される。そして、ゲーティング回路2305は、入力されたイベントデータパケットに対して、第1のフラグの設定を行う。さらに、ゲーティング回路2305は、第1のフラグを設定した後のイベントデータパケットを後段に出力する。
第1のフラグの設定は、イベントデータパケットに含まれる各電気信号のパラメータについての予め設定されている閾値に基づいて行うようにしてもよい。この場合、閾値は、波形の幅、高さおよび面積の少なくとも1つであってもよい。そして、パラメータが閾値を満足する場合には、第1のフラグの値を、微小粒子の取り込みを行うことを示す値(例えば、「1」)に設定してもよい。一方、パラメータが閾値を満足しない場合には、第1のフラグの値を、微小粒子の取り込みを行わないことを示す値(例えば、「0」)に設定してもよい。
また、閾値は、ゲーティングによって予め設定された範囲であってもよい。ここで、ゲーティングは、微小粒子集団中における微小粒子の特性分布を表す分布図上において、目的粒子に該当する範囲を囲い込んで指定する処理である。このゲーティングは、目的粒子の取り込み動作の開始前に行われる。なお、分布図は、制御PC2312上のGUI(グラフィカルユーザインターフェース)によって作成するようにしてもよい。また、ゲーティングは、ゲーティング回路2305によって行うようにしてもよい。
ここで、図11Aは、分布図の一例としてのヒストグラムチャートに対するゲーティングの結果を示したものである。このヒストグラムチャートは、横軸がパラメータを示し、縦軸が粒子数を示す。同図におけるパラメータは、チャンネル番号1番(Ch1)に該当する電気信号の波形の面積であるが、これ以外のパラメータを用いてもよい。そして、同図における矩形枠が、目的粒子に該当する範囲を指定したゲートであり、該範囲が第1のフラグの設定のための閾値として用いられてもよい。
一方、図11Bは、分布図の他の一例としての2D(2次元)チャートに対するゲーティングの結果を示したものである。この2Dチャートは、横軸および縦軸に互いに異なるパラメータが割り当てられている。同図における横軸のパラメータは、チャンネル番号2番(Ch2)に該当する電気信号の波形の面積であり、縦軸のパラメータは、チャンネル番号3番(Ch3)に該当する電気信号の波形の面積である。しかし、これら両電気信号の波形の面積以外のパラメータを用いてもよい。そして、同図における矩形枠が、目的粒子に該当する範囲を指定したゲートであり、該範囲が第1のフラグの設定のための閾値として用いられてもよい。
[出力待ち行列回路]
図8に戻って、出力待ち行列回路2306は、到達時間計算回路2304およびゲーティング回路2305の後段の回路であり、これら到達時間計算回路2304およびゲーティング回路2305と接続されている。
出力待ち行列回路2306には、到達時間計算回路2304から出力されたイベントデータパケットおよびゲーティング回路2305から出力されたイベントデータパケットが入力される。そして、出力待ち行列回路2306は、入力された両イベントデータパケットであって、互いに同一の微小粒子すなわちイベント番号を示すもの同士を、1つのイベントデータパケットに統合(合成)する。この統合されたイベントデータパケットは、遅延時刻および第1のフラグの双方が書き込まれたものである。なお、イベントデータパケットの統合は、到達時間計算回路2304とゲーティング回路2305との間での通信によって、両回路2304、2305のいずれかで行うようにしてもよい。また、到達時間計算回路2304とゲーティング回路2305とは直列に接続されていてもよい。
また、出力待ち行列回路2306は、逐次入力された互いに異なる微小粒子のイベントデータパケットを、イベントデータパケットに含まれる到達時刻が早い順に並べる。ここで、出力待ち行列回路2306に入力されたイベントデータパケットであって、該当する微小粒子の取り込みのための駆動波形の出力待ちのものを、「出力待ち行列」と定義する。出力待ち行列は、出力待ち行列回路2306への新たなイベントデータパケットの入力に応じて更新される。
さらに、出力待ち行列回路2306は、純度優先モードまたは取得率優先モードに応じて、各イベントデータパケットに対応する微小粒子の取り込みを行うか否かを判断する。なお、純度優先モードおよび取得率優先モードは、微小粒子の取り込み動作の開始前に予め選択的に設定されている駆動部23の動作モードである。該モードの設定は、各種のユーザインターフェースを介して制御PC2312によって行うようにしてもよい。
ここで、純度優先モードとは、目的粒子と非目的粒子とが互いに近接した状態で流通してきた場合であって、両粒子が一緒に捕捉される可能性が高い場合に、敢えて当該目的粒子を「非目的粒子(非取得)」とみなして捕獲粒子の純度を高めるモードである。つまり、純度優先モードが設定されている場合には、非目的粒子に近接する目的粒子は取り込まれず廃棄されることになる。
一方、取得率優先モードとは、目的粒子と非目的粒子とが互いに近接した状態で流通してきた場合であって、両粒子が一緒に捕捉される可能性が高い場合に、両粒子をともに取得し、捕獲粒子の純度が下がっても取得粒子数をより多くするモードである。
そして、出力待ち行列回路2306は、設定されているモードに応じた微小粒子の取り込みの有無の判断の結果に基づいて、第2のフラグの設定を行う。このとき、出力待ち行列回路2306は、微小粒子の取り込みを行うと判断した場合には、第2のフラグを「1」に設定してもよい。一方、出力待ち行列回路2306は、微小粒子の取り込みを行わないと判断した場合には、第2のフラグを「0」に設定してもよい。なお、このようなフラグの設定の態様に限定されなくてもよい。
さらにまた、出力待ち行列回路2306は、アクチュエータ31に印加すべき駆動波形の印加タイミングをメモリに書き出す。このメモリは、RAM(ランダムアクセスメモリ)であってもよい。また、メモリは、バス2301に接続されていてもよく、また、駆動部23の回路や制御PC2312に内蔵されていてもよい。さらに、印加タイミングを書き出すにあたっては、第1のフラグおよび第2のフラグの設定値を参照してもよい。この場合、両フラグがともに取り込み実行を示す値に設定されている場合に、該当する微小粒子を取り込むような印加タイミングを書き出してもよい。さらにまた、駆動波形は、駆動電圧であってもよい。
ここで、出力待ち行列回路2306は、駆動波形を印加する場合には、立下り波形部の印加タイミングと立上り波形部の印加タイミングとをメモリに書き込む。立下り波形部および立上り波形部の例を図12に示す。
第1の立上り波形部は、立下り波形部の後端に第1の平坦部をつないだ形状を呈している。立下り波形部は、第2の立下り波形部の後端に第2の平坦部をつないだ形状を呈しており、立上り波形部は、第2の立上り波形部の後端に第3の平坦部を繋いだ形状を呈している。第3の平坦部は第1の平坦部よりも低い信号値となるように、第2の立上り波形部の信号が制御される。
図12に示した波形は平坦部を明確に示した一例であって、パルス波形をとってもよい。また、詳細は後述するが、例えば図16のステップ波形をとってもよい。更に、図12のとおりにアンダーシュートの平坦部が付いたアンダーシュート付ステップ波形でもよい。
立下り波形部は、分取流路16(圧力室161)の内空に負圧を発生させて微小粒子の取り込みを行うために印加される。負圧の発生は、アクチュエータ31に、該内空をこれの容積が増大する方向に変形させる力を生じさせることによって行われる。この力は前述したように、圧力室161内の容積を増大させるために変位板311への押圧を弱める力であってもよい。また、アクチュエータ31がピエゾ素子である場合、立下り波形部は、伸張されているピエゾ素子に印加されている駆動電圧を低減させて、ピエゾ素子を収縮させる波形であってもよい。
一方、立上り波形部は、アクチュエータ31を、負圧の発生のために分取流路16(圧力室161)の内空を変形させた状態から復帰させるために正圧が印加される。この復帰は、アクチュエータ31に、該内空をこれの容積を減少させる方向に変形させる力を生じさせることによって行われる。この力は、前述したように、圧力室161内の容積を減少させるために変位板311への押圧を強める力であってもよい。また、アクチュエータ31がピエゾ素子である場合、立上り波形部は、収縮されているピエゾ素子に印加されている駆動電圧を増大させて、ピエゾ素子を伸張させる波形であってもよい。
また、出力待ち行列回路2306は、立下り波形部および立上り波形部の印加タイミングをメモリに書き出す場合、該印加タイミングを、時系列的に前後する立下り波形部及び立上り波形部の印加タイミング同士の間の時間間隔(換言すれば、イベントの時間間隔)に基づいて計算する。
[出力タイミング生成回路]
図8に示すように、出力タイミング生成回路2307は、出力待ち行列回路2306と接続されている。出力タイミング生成回路2307は、出力待ち行列回路2306がRAMに書き出した出力待ち行列の最も先頭に配列されたイベントデータパケットの到達時刻を、該RAMから読み出す。そして、出力タイミング生成回路2307は、読み出された到達時刻をクロックカウンタ2310からの信号の値と比較して、該到達時刻に出力タイミング信号を生成する。ここで、出力タイミング信号は、駆動波形の出力タイミングを割り当てるための信号である。出力タイミング生成回路2307は、生成された出力タイミング信号を後段に出力する。さらに、出力待ち行列回路2307は、出力タイミング信号の出力後、出力待ち行列回路2306に完了信号を送信して、出力待ち行列の更新を促してもよい。
[出力信号生成回路]
出力信号生成回路2308は、出力タイミング生成回路2307の後段の回路であり、出力タイミング生成回路2307と接続されている。
出力信号生成回路2308には、出力タイミング生成回路2307から出力された出力タイミング信号が入力される。そして、出力信号生成回路2308は、入力された出力タイミング信号に対応する駆動波形(出力信号)を生成して後段に出力する。さらに、出力信号生成回路2308は、駆動波形の出力後、ステップカウンタおよび出力ステータス信号を更新する。なお、出力ステータス信号は、波形停止中/出力中(出力可(enable)/不可(disable))の状態を表す信号である。
ここで、ステップカウンタは、駆動波形の段階的な出力レベルを示す。換言すれば、ステップカウンタは、駆動波形の印加の回数の増加にともなって段階的に変動する駆動波形の基準値からの変動値を示す。このステップカウンタの1段分のレベル差ごとの出力の差は一定である。ステップカウンタおよび出力ステータス信号は、出力待ち行列回路2306や出力タイミング生成回路2307に入力されて各回路2306、2307の処理に利用されてもよい。
[デジタル-アナログ変換回路]
デジタル-アナログ変換回路2313には、出力信号生成回路2308から出力された駆動波形が入力される。そして、デジタル-アナログ変換回路2313は、入力された駆動波形をデジタル信号からアナログ信号に変換して、アクチュエータ31の駆動回路へと出力する。
上記微小粒子分取用システムの全体構成としては、前記微小粒子分取用マイクロチップと、それを搭載するマイクロチップ搭載部と、微小粒子分取用マイクロチップの微小粒子検出領域に光を照射する光照射部と、光照射により微小粒子から発せられた散乱光及び/又は蛍光を検出する検出部と、前記圧力室の室内を負圧又は正圧にする圧力室制御部とを備えるものとなっている。
前記圧力室制御部は、圧力室内に負圧を発生させることにより微小粒子を圧力室に分取し、また、圧力室内に前記発生させた負圧の合計絶対値以下の正圧を発生させることにより圧力室内の液体を吐出するように微小粒子分取用プログラムにより制御される。そして、前記負圧又は正圧は、微小粒子が検出された時間間隔に依存して制御される。
<4.微小粒子分取方法の実施態様>
次に、図8の駆動部23を備えた微小粒子分取装置を適用した本技術に係る微小粒子分取方法の実施態様について、微小粒子分取装置の動作とともに説明する。本実施態様における微小粒子分取方法は、アクチュエータ31に対する擬ステップ波形の印加を、立下り波形部の印加と立上り波形部の印加とで個別に制御する方法である。
本実施態様における微小粒子分取方法は、この方法を具現化するアルゴリズムの一例を視覚化した図13および図14のフローチャートに従うようにしてもよい。ここで、図13および図14は、主として出力待ち行列回路2306の動作を示すフローチャートである。より具体的には、図13は、動作全般を、図14は、立上り波形部の立上りタイミングすなわち印加タイミングの計算を示す。以下、各図のフローチャートについて順次説明する。
[動作全般]
図13のフローチャートにおいては、以下の第1~第3の処理を個別かつ並行して行う。
[第1の処理]
第1の処理においては、まず、ステップ181-1(S181-1)において、イベント(イベントデータパケット)の入力の有無を判定する。この判定には、前段回路(例えば、到達時間計算回路2304およびゲーティング回路2305)から入力されたイベントデータパケットを利用する。そして、ステップ181-1(S181-1)において肯定的な判定結果が得られた場合には、ステップ181-2(S181-2)に進み、否定的な判定結果が得られた場合には、ステップ181-1(S181-1)を繰り返す。
次いで、ステップ181-2(S181-2)において、ステップ181-1(S181-1)において「入力有り」と判定された新たなイベントを出力待ち行列に追加することによって、出力待ち行列を更新する。
最後に、ステップ181-3(S181-3)において、ステップ181-2(S181-2)において更新された出力待ち行列に基づいて、微小粒子を取り込むか否か(取得/非取得)を再評価して、ステップ181-1(S181-1)に戻る。ここで、「再評価」と表現している理由は、本ステップにおける評価が、既に待ち行列にあるイベント(既に評価され第2のフラグが設定されているイベント)を再び評価する処理に当たるためである。純度優先の場合、後から待ち行列に加わるイベントが前に加えられたイベントと近接している可能性があるため、本ステップの処理が有効に働く。
[第2の処理](立下りタイミング)
第2の処理においては、まず、ステップ182-1(S182-1)において、次に取得すべきイベント(目的粒子)についての立下り波形部の立下りタイミングを、メモリ(図13においてはRAM)に書き出す。この書き出された立下りタイミングは、出力タイミング生成回路2307によって参照されることになる。
次いで、ステップ182-2(S182-2)において、立下り波形部の立下りトリガ出力が完了したか否かを判定する。ここで、「立下りトリガ出力」とは、出力タイミング生成回路2307によって生成された立下り波形部の出力タイミングが出力信号生成回路2308に出力されることである。本ステップにおける判定には、出力タイミング生成回路2307から入力された立下りトリガ出力の完了を知らせる完了信号を利用する。
最後に、ステップ182-3(S182-3)において、立下りトリガ出力が完了したイベントを出力待ち行列から削除することによって、出力待ち行列を更新して、ステップ182-1(S182-1)に戻る。
[第3の処理](立上りタイミング)
第3の処理においては、まず、ステップ183-1(S183-1)において、立上り波形部の立上りタイミングを計算する。
次いで、ステップ183-2(S183-2)において、ステップ183-1(S183-1)において算出された立上りタイミングをメモリ(図18におけるRAM)に書き出す。この書き出された立上りタイミングは、出力タイミング生成回路2307によって参照されることになる。
次いで、ステップ183-3(S183-3)において、立上り波形部の立上りトリガ出力が完了したか否かを判定する。ここで、「立上りトリガ出力」とは、出力タイミング生成回路2307によって生成された立上り波形部の出力タイミング信号が出力信号生成回路2308に出力されることである。本ステップにおける判定には、出力タイミング生成回路2307から入力された立上りトリガ出力の完了を知らせる完了信号を利用する。そして、ステップ183-3(S183-3)において肯定的な判定結果が得られた場合には、ステップ183-1(S183-1)に戻り、否定的な判定結果が得られた場合には、ステップ183-3(S183-3)を繰り返す。
図14のフローチャートは、図13のステップ183-1(S183-1)すなわち立上りタイミングの計算の詳細を示したものである。
図14のフローチャートにおいては、まず、ステップ191(S191)において、ステップカウンタの値が0よりも大きいか否かを判定する。そして、ステップ191(S191)において肯定的な判定結果が得られた場合には、ステップ192(S192)に進み、否定的な判定結果が得られた場合には、ステップ191(S191)に戻る。
ここで、ステップ191(S191)において否定的な判定結果が得られる場合とは、図15Aに示すように、ステップカウンタの値が0の場合である。これは、パルス波形の値が基準値(図16参照)である場合に相当する。この基準値は、パルス波形のホールド値であってもよく、更に、このホールド値は、ピークホールド値あってもよい。基準値をピークホールド値とする場合、図15Aの状態は、アクチュエータ31に対して駆動波形の最大値が印加されている状態に相当する。更に、その場合において、アクチュエータ31がピエゾ素子である場合、図15Aの状態は、ピエゾ素子が、予定されている最大の伸張を示している状態に相当する。
そして、図15Aに示すように、ステップカウンタの値が0である場合には、該当するイベント(次に取得すべきイベント)について、立上りタイミングを計算しない(何もしない)ようにする。
次いで、図14のステップ192(S192)において、ステップカウンタの値が最大値よりも小さいか否かを判定する。すなわち、主流路に通流する微小粒子を含む液体の圧力室内への分取が、アクチュエータ31で分取できる液体の最大量よりも小さいか否かの判定に対応する。そして、ステップ192(S192)において肯定的な判定結果が得られた場合には、ステップ193(S193)に進み、否定的な判定結果が得られた場合には、ステップ194(S194)に進む。
ここで、ステップ192(S192)において否定的な判定結果が得られる場合とは、図15Bに示すように、ステップカウンタの値が最大値の場合である。すなわち、主流路に通流する微小粒子を含む液体の圧力室内への分取が、アクチュエータ31で分取できる液体の最大量の場合である。基準値がピークホールド値であり、アクチュエータ31がピエゾ素子である場合、図15Bの状態は、ピエゾ素子が、予定されている最大の伸張状態からの最大の収縮を示している状態に相当する。なお、同図におけるステップカウンタの最大値は「3」であるが、これに限定される必要はない。
そして、図15Bに示すように、ステップカウンタの値が最大値である場合には、ステップ194(S194)において、該当するイベントについて強制的に立上りタイミグを計算する。「強制的に」とは、次の立下りまでの時間の長短を問わない意義である。ステップ194(S194)の詳細については後述する。
次いで、図14のステップ193(S193)に進んだ場合には、次の立下りまでの時間が予め設定された第1の設定値以上か否かを判定する。ここで、次の立下りまでの時間は、現在印加した立下り波形部の印加の終了時(換言すれば、現在時刻)を起算点としている。また、第1の設定値は、立上り波形部の固定された印加時間に、回路の動作マージンの時間(既知の時間)を加算したものであってもよい。そして、ステップ193(S193)において肯定的な判定結果が得られた場合には、ステップ194(S194)に進み、否定的な判定結果が得られた場合には、ステップ193(S193)に戻る。
ここで、ステップ193(S193)において否定的な判定結果が得られる場合とは、図15Cに示すように、前後の立下りタイミング同士の時間間隔(次の立下りまでの時間)が短い場合である。この場合は、該当するイベントについて立上りタイミングを計算せずに、連続的な立下り波形部の印加が行われるようにする。
一方、図15Dに示すように、前後の立下りタイミング同士の時間間隔が十分に長い場合は、ステップ194(S194)において、該当するイベントについての立上りタイミグを計算する。
ステップ194(S194)における立上りタイミングの計算は、現在時刻に、回路の動作マージンの時間を加算することによって行ってもよい。
また、ステップ194(S194)においては、次の立下りまでの時間によっては、図15B、図15Dのような1回分の立上りのタイミングにとどまらず、複数回分の連続的な立上りのタイミング(複数のタイミング)を計算してもよい。例えば、現在のステップカウンタの値が「2」以上であり、次の立下りまでの時間が前述した第1の設定値と立上り波形部の固定された印加時間との合計値以上である場合には、2回分以上の立上りタイミングを計算するようにしてもよい。連続的な立上りの回数は、現在のステップカウンタの値またはステップカウンタがとり得る値の総数(段数)に応じて異なってもよい。
具体的には、図15Eのような、0.5ステップ立上って更に1.5ステップ立上る場合、図15Fのような、1.5ステップ回分立上って更に0.5ステップ立上る場合、図15Gのような、0.5ステップ立上って、次にステップ立上って、更に0.5ステップ立上るようにする態様が挙げられるが、これらに限定されない。すなわち、0ステップからステップカウンタが0に戻るステップ総数までを取り得る。
立下りについても、前記立上りと同様、0からステップカウンタが0に戻るステップ総数を取り得る。
立下り及び立上り、即ち負圧又は正圧が、どのくらいのステップカウンタをとるかは、主流路15に流通する液体中の微小粒子が検出部22で検出された時間間隔により制御される。
例えば、立下りでは、微小粒子の通流を開始して一番目と二番目の微小粒子が検出された時間間隔よりも、二番目と三番目の微小粒子が検出された時間間隔が短ければ、最初の立下りステップカウンタは、例えば0.5ステップ、次の立下りステップカウンタは、例えば0.2となる。そして、最初の立下りと次の立下りの間には、図15や図12に示した平坦部を有する。
一方、立上りでは、微小粒子の検出の時間間隔が長ければ、前記立下りにより圧力室161に取り込まれた液体を吐出するため、前記立下りのステップカウンタの総数よりも低い値をとる。
例えば、前記例では、立下りのステップカウンタの総数は0.7であるので、立上りのステップカウンタは、例えば0.4を取り得る。
また、立上りでは、前記ステップカウンタがゼロに戻るまで、複数段階に分けて立ち上がる。
[駆動波形]
前記立下り及び立上りについて、図16を参照しつつ説明する。
本技術の微小粒子分取方法によれば、例えば、図16のタイムチャートに示すような駆動波形(駆動信号)の印加が行われる。同図には、駆動波形以外にも、イベント検出時刻、立下り時刻、基準値が示されている。なお、図16のイベント検出時刻は、図17に示すように、前後のイベント同士の時間間隔(検出時刻の間隔)の分布がポアソン分布を示し、平均的な時間間隔は、200μsecの間隔を取り得る。
図16に示す最初の基準値では、圧力室16の容積が最も大きい状態、すなわちアクチュエータ31に最大電圧が印加している状態である。
まず、1個目の微小粒子が検出部22にて検出されると、そのイベント検出時刻から微小粒子を圧力室に分取すべくアクチュエータに電圧が最大電圧よりも下がり、図16に示すVpの負圧が印加して、1回目の立下りとなった後、圧力室内の圧力は2個目の微小粒子が検出されるまで保持される。
次に、2個目の微小粒子が検出されると、2個目の微小粒子を分取すべくアクチュエータに更に負圧α1Vpが印加して、2回目の立下りとなる。α1Vpは、1個目と2個目の微小粒子が検出された時間間隔によって制御される。検出の時間間隔の長さは、どの程度の更なる負圧(吸引力)をかければ、2個目の微小粒子を圧力室に分取できるかの算出のパラメータとなり、α1Vpは、できるだけ小さい負圧が好ましい。2回目の立下りの負圧は1回目の立下りの負圧以下であることが好ましい。
2回目の立下りとなった後、圧力室内の圧力は3個目の微小粒子が検出されるまで保持される。
次に、3個目の微小粒子が検出されると、3個目の微小粒子を分取すべくアクチュエータに更に負圧α2Vpが印加して、3回目の立下りとなる。負圧α2Vpは、2個目と3個目の微小粒子が検出された時間間隔によって制御されるので、1個目と2個目の微小粒子が検出された時間間隔と、2個目と3個目の微小粒子が検出された時間間隔とが異なれば、α1Vpとα2Vpも異なる。3回目の立下りとなった後、圧力室内の圧力は上述と同様に保持される。
そして、前記3回目の立下り後の圧力室内の圧力が一定時間保持された後、微小粒子が検出されなかったとする。その場合、それまでの微小粒子の分取時に一緒に圧力室内に取り込んだ液体を吐出すべくアクチュエータにVpの正圧が印加し、1回目の立上りとなる。この時の正圧は、必ずしも前記負圧Vpに対応する正圧Vpでなくてもよい。ただし、それまでに印加した負圧Vp+α1Vp+α2Vpの合計絶対値以下の正圧になるようにする。
1回目の立上りとなった後、圧力室内の圧力は4個目の微小粒子が検出されるまで保持される。
ここで、前記圧力室内の圧力が一定時間保持すべき時間を、所定値として規定しておき、所定値を超えても微小粒子が検出されない場合は、正圧により圧力室から液体を吐出する。所定値以下で微小粒子が検出された場合は、負圧により圧力室に微小粒子を分取する。
4個目の微小粒子が検出されると、前記同様、4個目の微小粒子を分取すべくアクチュエータに負圧α3Vpが印加して、4回目の立下りとなる。
その後、圧力室の圧力が保持される一定時間が所定値を超えても微小粒子が検出されないと、圧力室の液体を吐出すべく2回目の立上りとなる。立上りは、一度に基準値まで戻るのではなく、複数の段階を踏んで基準値まで戻る。立上りと立上りの間には圧力室の圧力が一定時間保持される。
例えば、図16に示すように、Vp分ずつ戻ることを目安として前記2回目、更に3回目の立上りとなり、最後に4回目として基準値までの残りの立上りとする。もちろん、基準値までの立上りの回数はこれに限定されず、Vp分ずつ戻ることも限定されないのは言うまでもない。
例えば、Vp分ずつ戻ることに代わって、前記3回目の立上りは、立上り直前の負圧の合計絶対値(図16ではVp+α3Vp)と前記2回目の立上りとの差分範囲以内の正圧で戻ればよい。そして、前記4回目の立上りで立上り直前の負圧の合計絶対値まで正圧を印加して基準値に戻ればよい。
次に、前述のように、圧力室の圧力が最大電圧により印加されることにより基準値まで戻って圧力室の圧力が一定時間経過後に5個目の微小粒子が検出されると、前記同様、5個目の微小粒子を分取すべくアクチュエータに負圧Vpが印加して、5回目の立下りとなる。そして、圧力室の圧力が一定時間保持される所定値を超えると、圧力室の液体を吐出すべく、5回目の立上りとなり、圧力室の圧力が最大電圧で再度印加されることにより基準値まで戻る。
なお、前記α1Vp、α2Vp、α3Vpにおいて、αは係数として定めることができ、詳細は後述する。
以上説明したように、本実施態様によれば、図12に示したような立下り波形部、平坦部、立上り波形部を制御することで、アクチュエータ31による微小粒子の取り込み動作に対して、アクチュエータ31による復帰動作を独立して制御することができると同時に、圧力室に分取した微小粒子を吐出せずに液体のみを吐出することができる。これにより、次の目的粒子の取り込み動作の妨げや目的粒子の放出となるような動作を未然に回避することができ、ひいては、目的粒子の取得率を向上させることができる。
また、本実施態様によれば、立下り波形部の印加を、微小粒子が分取流路16における主流路15との連通口156に到達するタイミングで行うことで、目的粒子に対して、最適なタイミングで負圧を作用させることができる。これにより、目的粒子を圧力室161(領域)内に効率的かつ適正に取り込むことができる。
さらに、本実施態様によれば、立上り波形部の印加を、段階的に行うことで、いったん分取した微小粒子を圧力室から吐出せずに液体のみを吐出することができる。
5.実施例
5-1.微小粒子の再放出の解析
前述した微小粒子分取用マイクロチップを用いた基本となる微小粒子分取方法では、アボート処理することなく、連続的に微小粒子を圧力室に分取することができる。
前記基本となる微小粒子分取方法では、連続的に微小粒子を分取した後、アクチュエータ(ピエゾ素子ともいう。)を初期位置に復帰させ、また微小粒子を分取できるようにする必要があるが、実際に該方法を行うと、ピエゾ素子が初期位置に復帰する際に、微小粒子と一緒に分取された液体を圧力室から高電圧で吐出することとなり、分取済み微小粒子の再放出が発生することが観察された。
そこで、微小粒子を取得した後の圧力室からの吐出挙動を制御することにより、分取済み微小粒子の再放出を抑制することができると推測された。
また、液体の流れを観察すると、液体の応答が、ピエゾ素子の駆動波形に対し遅れを有することが明らかとなった。
そこで、微小粒子が一定の間隔で流れていれば、液体は駆動波形に対して遅れているため、定電圧で分取可能であると推測された。
前述した本技術の基本となる微小粒子の分取方法は、図18に示すピエゾ素子駆動の入力波形で行っている。図18のAのような入力を使用した場合、図19に示す入力波形のように立上り波形を連続的に、多段階にすることなく、行ってしまい、1500epsで微小粒子分取実験をした場合は、回収率が64.5%であった。
一方で、図18のBのような立上り波形の後に平坦部を有する入力波形を使用した場合は、図20に示したように、1回目の立上り後、一時的に平坦部が存在し、2回目が立ち上がることになるため、1500epsで微小粒子分取実験を実施した場合、回収率は100%を維持できることが明らかとなった。
そこで、本技術においてピエゾ素子の駆動波形を、立上げ後、ある一定の時間(以下、「Th2」(単位:μs)ということがある。)以内では、立上げを実施しないこととし、Th2後に再度立上げを実施することとした。
微小粒子分取用マイクロチップの分取流路の分岐部における微小粒子の挙動について、2種類のピエゾ素子駆動波形で微小粒子を取得した場合をシミュレーションにより解析した。解析の例を図21に示す。
図21のA~Cは、前記Th2(立上げ後の一定時間)を10μsとした例、図21のD~Eは、Th2を50μsとした例を示す。矢印は流れを示す。
そして、図21のAとDは、ピエゾ素子駆動後70μs後の微小粒子の様子を示し、BとEは、ピエゾ素子駆動後260μs後の微小粒子の様子を示し、CとFは、ピエゾ素子駆動後660μs後の微小粒子の様子を示す。
図21のCに示すように、Th2=10μsとし、ピエゾ素子駆動後660μsが経過したとき、微小粒子はオリフィス近傍に数個存在し、粒子が逆流していることがわかった。よって、微小粒子の再放出が発生し得た。一方、図21のD~EのTh2=50μsとした場合は、オリフィス近傍に微小粒子が存在せず、微小粒子の再放出が発生しないことが確認された。よって、例えば、立ち上げ後の一定時間は50μsとすることが好ましく、圧力室内の圧力は50μs保持されることになる。
なお、解析条件は、シース液1ml/min、ゲート流150μl/min、分取流120μm/minとし、ピエゾ素子駆動は、1回の微小粒子分取動作後、3回吐出動作を実行する条件とした。
また、図22に、Th2とオリフィス内流速の関係を示す。
図22より、Th2を短く設定すると、吐出時の流速が早く、分取した微小粒子が再放出されやすい条件になりやすいことが示された。この現象は、ピエゾ素子駆動波形に対し、圧力室内の圧力変動が遅れることに起因していると推測された。
5-2.低電圧での微小粒子の分取の検討
前述した基本となる微小粒子分取方法では、近接した微小粒子が来た際に、分取動作を立て続けに行う仕様となっている。
しかし、実際は、立上げ時間(以下、「Tf」(単位:μs)ということがある。)10μs後のホールド時には既に負圧となっているため、この期間は通常よりも弱い分取動作で微小粒子を分取できると考えられる。
図23に、ピエゾ素子駆動後からの経過時間とオリフィス入口からの粒子距離の流速の関係を示す。
駆動波形cos5-5-10及びcos10-5-10で微小粒子の分取を実行した場合の微小粒子が取り込まれる様子を高速カメラで観察した。
図23に示すように、ピエゾ素子駆動後25μs付近まで微小粒子はオリフィス内に取り込まれており、液体の取り込みは維持されていることが分かった。
そこで、近接した微小粒子の分取は、微小粒子間の時間(以下、「Tp」(単位:μs)ということがある。)を因数とした関数で駆動制御を行うことが望ましいと推測された。すなわち、Tp依存の縮尺率α(前述の係数α)で分取及び吐出動作を振幅、時間方向に縮尺する。
ここで、αは下記により定義される関数であり、振幅コントロールを適応する最大2微小粒子間隔(Tmax)、kを入力パラメータとして自由に選択できる。
Tp<Tmax
α=1-k(ΔTmax-Tp)/Tmax
Tmax<Tp
α=1
本技術により用いることができる設定パラメータの例を以下の表1に示し、図24に、本技術で用いられるパラメータの初期設定の例とピエゾ素子駆動波形の関係について示す。
Figure 0007276551000001
表1及び図24において、パラメータTsetは、
Tset=Tf+Th1+Tr+Th3
で表すことができる。
また、パラメータα、βはそれぞれ、
α=1-k1|Tmax-ΔT|/Tmax
β=1-k2|Tmax-ΔT|/Tmax
で表すことができる。
また、図25に、本技術の基本となる微小粒子分取方法における、Tp<Tfの場合(分取動作を途中で止めて、1駆動して立下げたとき)のピエゾ素子駆動波形、Tf<Tpの場合(同一電圧で2連続駆動させて2段階で立下げたとき)のピエゾ素子駆動波形を示す。Tp<Tfでは連続的に立下げを行うが、Tf<Tpでは同一電圧で2段階以上の立下げになるようピエゾ素子駆動する。
ここで、本技術の微小粒子分取方法では、最初の読み込みを図26に示す3種類のパラメータ(A、B、C)に分けて読み込むようにしている。すなわち、吸い込み動作(A)は前述の立下げ駆動に対応し、吐出動作(B)は立上げ駆動に対応し、複数の吸い込み動作の間に保持時間(C)、複数の吐出動作の間に保持時間(C)、吸い込み動作と吐出動作の間に保持時間(C)が確保されるように、パラメータを設定する。
また、図27に、Tpに依存したピエゾ素子駆動波形のパターンの例a~dを示す。
aは、Tpが短い場合に立下げ駆動の2段目を低電圧で行うパターンを示す。
bは、Tpが長い場合に立下げ駆動の2段目を通常通り行うパターンを示す。
cは、立下げ駆動後、一定時間保持し、立上げ駆動を通常通り行い、次の立下げ駆動を高電圧で行うパターンを示す。
dは、立下げ駆動後、一定時間保持し、立上げ駆動を通常通り行い、次の立下げ駆動を通常通り行うパターンを示す。
本技術では、ピエゾ素子への電圧の印加に基づいた微小粒子の分取と圧力室からの吐出が、適宜、図27のa~dの波形でピエゾ素子を駆動して行うよう制御する。
前記図27のパターンaに示したように、立下げ駆動の2段目を低電圧で行った場合、微小粒子の間隔がどの程度であれば低電圧で分取可能かを検証した。
前記微小粒子分取用マイクロチップを使用し、図28に示すピエゾ素子駆動波形を入力し、図中の第2駆動(2段目の分取駆動)を用いて微小粒子の分取を行った場合の回数率を調べた。
ここで、図28に示したTfを10μs、Th1を5μs、Trを10μsと設定し、Vpを27Vとし、Tpを20μsとした。
この条件での前記αと回収率との関係を、図29に示す。
図29に示すように、Tpが20μs、すなわち20μs間隔で微小粒子が到来した場合は、α=0.1とすれば少なくとも2.7V以上でピエゾ素子を駆動すれば分取可能であることが示された。また、40μs間隔で連続して微小粒子が到来したと仮定し、α=0.2(5.4V)で第2駆動を駆動した場合の回収率は100%であった。
以上より、微小粒子の分取の最適値に関しては、微小粒子分取用マイクロチップごとに調整していく必要はあり得るが、図28の第2駆動に関しては第1駆動(1段目の分取駆動)よりも低電圧で分取可能であることが示された。
この第2駆動は、微小粒子間隔依存的に決定することができ、αは、例えば以下のように定義される関数として定めることができる。以下のTmax、Tstable、kは入力パラメータとして自由に選択できる。また、以下のV0は初期ピエゾ素子駆動電圧を示す。
Tp<Tmax
α=1-k(Tmax-Tp)/Tmax
Vp=αV0
Tmax<Tp<Tstable
α=1+k(Tp-Tmax)/Tmax
Vp=αV0
Tstable>Tp
α=1
Vp=V0
5-3.基本となる微小粒子分取方法と本技術の微小粒子分取方法との比較
実際に、前記低電圧で分取する駆動方式を実装し、DAアボートを比較することにより、前述した基本となる微小粒子分取方法と本技術の微小粒子分取方法との差異を比較した。
前記微小粒子分取用マイクロチップを使用し、各イベントレート時のDAアボートについて、ログファイルを解析することにより比較した。
Tf/Trを10μsとし、Th1を5μsとし、電圧27Vとし、k=0とした場合と、k=1、Tmaxを100μsとした場合のDAアボートを比較した結果(実験値)を、図30に示す。また、シミュレーションにより計算した結果(Sim)も図30に示した。
図30より、本技術の微小粒子分取方法の方式を用いることにより、高イベントにおいて発生するDAアボートを、シミュレーションの結果から著しく低下し得ることがわかっただけでなく、実験値でより低下できることが示された。
5-4.回収率の比較
前記微小粒子分取用マイクロチップを使用し、各イベントレート時のDAアボートについて、ログファイルを解析することにより比較した。
このとき、シース流量を10ml/minとし、ゲート流量を100~110μl/minとし、分取外流量100μl~110μl/minに設定した。また、ピエゾ素子駆動波形に関して、Tf/Trを10μs、Th1を5μs、Th2を5μs、Th3を10μsと設定し、本技術の微小粒子分取方法において、k1=1、k2=0、Tmax=100と設定した。
基本となる微小粒子分取方法と本技術の微小粒子分取方法とで、DAアボートを比較した結果を図31に、回収率を比較した結果を図32に示す。
図31に示すように、図30で得られた結果と同様に、本技術の微小粒子分取方法では、DAアボートが基本となる微小粒子分取方法と比較して低値を示した。
また、図32に示すように、毎秒の微小粒子の検出数(イベントレート)が10000~15000epsにおいて、基本となる微小粒子分取方法では回収率が70%程度であったのに対し、本技術の微小粒子分取方法での回収率が100%程度であった。これは、基本となる微小粒子分取方法では、高電圧での分取動作及び吐出動作が行われており、微小粒子の再放出が発生しているためと考えられる。
一方、本技術の微小粒子分取方法では、イベントレートが、20000epsくらいになると、回収率が低下する傾向がみられた。これは、ピエゾ素子電圧の復帰の際の吐出の影響で、連続分取性能が低下すること及び微小粒子再放出が発生している可能性を示唆すると考えられた。
しかし、この可能性に関し、本技術の微小粒子分取方法では、隣り合う微小粒子の間隔を用いてピエゾ素子駆動電圧を計算しているため、例えば、35μs以内の間隔で連続して微小粒子が到来すると、図33に示すように、非常に低電圧で微小粒子の分取実行を連続的に行うことになる。本技術の微小粒子分取方法は、圧力室内の圧力が定常状態に復帰するまでに時間がかかることを利用したものであるため、一定時間後には、再度一定以上の駆動力で分取動作を実施しないと、圧力室内を負圧にすることができない。つまり、図33のような挙動となった場合、一定時間後は低電圧では微小粒子を分取できなくなる可能性があると考えられる。
そこで、図34に示すように、α=1の微小粒子分取実行後、一定時間後Tmaxには、再度α=1の条件で分取実行するように変更することが好適である。
5-5.ピエゾ素子のばらつきと微小粒子の分取速度の関係
ピエゾ素子を消耗品とすることを想定した場合、ピエゾ素子自身のばらつきにより、微小粒子の分取特性が変化することが考えられる。そこで、ピエゾ素子のばらつきが分取特性に及ぼす影響を検討した。
ピエゾ素子の最大変位をパラメータとして与え、モンテカルロシミュレーションを実施し、各イベントレートで微小粒子分取を実行した場合のアボート率を計算した。ピエゾ素子の最大変位ばらつきは、カタログ値を参照し、4.6μm±1.5μmとした。
ピエゾ素子の最大変位を変え、イベントレート時のDAアボートを解析した結果を図35に示す。
図35より、本技術の微小粒子分取方法のピエゾ素子駆動波形であれば、20000epsにおいてどの変異のピエゾ素子においても、DAアボート<5%であり、かつその特性ばらつきは1%以下となることが示された。
よって、ピエゾ素子のばらつきが微小粒子の分取特性に及ぼす影響はほとんどないと判断された。
なお、本技術は、以下のような構成も採ることができる。
[1] 微小粒子が通流する主流路と該主流路に連通する圧力室とを含む、微小粒子分取用マイクロチップを用いて、
前記主流路に通流する液体中の微小粒子を、前記主流路に連通する前記圧力室内に負圧を発生させることにより、前記圧力室に分取する工程、
前記圧力室内の液体を、前記圧力室内に前記発生させた負圧の合計絶対値以下の正圧を発生させることにより、前記主流路に吐出する工程、
を含み、
前記負圧又は正圧は前記主流路に通流する液体中の微小粒子が検出された時間間隔により制御される、
微小粒子分取方法。
[2] 前記主流路に通流する液体中の微小粒子を、前記主流路に連通する圧力室内に負圧を発生させることにより、前記圧力室に分取する工程の後に、
前記圧力室内の圧力が一定時間保持される工程、
を含み、
前記一定時間が所定値以下の場合、前記主流路に通流する液体中の次の微小粒子を、前記圧力室内に更なる負圧を発生させることにより、前記圧力室に分取する工程、を更に含む、[1]に記載の微小粒子分取方法。
[3] 前記更なる負圧は、前記主流路に通流する液体中の微小粒子が検出された時間と前記主流路に通流する液体中の次の微小粒子が検出された時間の間隔により制御される、[2]に記載の微小粒子分取方法。
[4] 前記更なる負圧は前記負圧以下である、[3]に記載の微小粒子分取方法。
[5] 前記工程において、アクチュエータにより前記圧力室の内空を変形させる力を印加して前記負圧又は正圧を発生させ、該内空の容積を増大又は減少させる手順を行う、[1]~[4]のいずれかに記載の微小粒子分取方法。
[6] 前記手順において、前記アクチュエータにパルス波形、ステップ波形又はアンダーシュート付ステップ波形の駆動波形を印加する、[5]に記載の微小粒子分取方法。
[7] 前記パルス波形の印加を、立下り波形部と立上り波形部とで個別に制御する、[6]に記載の微小粒子分取方法。
[8] 前記立下り波形部の電圧は、前記主流路に通流する液体中の微小粒子が検出された時間間隔により制御される、[7]に記載の微小粒子分取方法。
[9] 前記立下り波形部の電圧は、前記主流路に通流する液体中の微小粒子が検出された時間と前記主流路に通流する液体中の次の微小粒子が検出された時間の間隔が所定値以下の場合、最大電圧以下に制御される、[8]に記載の微小粒子分取方法。
[10] 前記立下り波形部は、最大電圧による印加から一定時間経過後に最大電圧で再度印加するように制御される、[8]又は[9]に記載の微小粒子分取方法。
[11] 前記主流路に通流する液体中の微小粒子を、前記主流路に連通する圧力室内に負圧を発生させることにより、前記圧力室に分取する工程の後に、
前記圧力室内の圧力が一定時間保持される工程、を含み、
前記一定時間が所定値以上の場合、前記圧力室内の液体を、前記圧力室内に前記発生させた負圧の合計絶対値よりも低い正圧を発生させることにより、前記主流路に吐出する工程、を更に含む、[1]~[10]のいずれかに記載の微小粒子分取方法。
[12] 前記圧力室内の液体を、前記圧力室内に前記発生させた負圧の合計絶対値以下の正圧を発生させることにより、前記主流路に吐出する工程の後に、
前記圧力室内の圧力が50μs以上保持される工程、を含む、[1]~[11]のいずれかに記載の微小粒子分取方法。
[13] 前記圧力室内の圧力が50μs以上保持される工程の後に、
前記圧力室内の更なる液体を、前記圧力室内に更なる正圧を発生させることにより、前記主流路に吐出する工程、を更に含む、[12]に記載の微小粒子分取方法。
[14] 前記圧力室内の更なる液体を、前記圧力室内に更なる正圧を発生させることにより、前記主流路に吐出する工程において、
前記更なる正圧が、前記負圧の合計絶対値と前記正圧との差分範囲以内の正圧である、[13]に記載の微小粒子分取方法。
[15] 微小粒子が通流する主流路と該主流路に連通する圧力室とを含む、微小粒子分取用マイクロチップにおいて、
前記主流路に通流する液体中の微小粒子を、前記主流路に連通する前記圧力室内に負圧を発生させることにより、前記圧力室に分取すること、
前記圧力室内の液体を、前記圧力室内に前記発生させた負圧の合計絶対値以下の正圧を発生させることにより、前記主流路に吐出すること、及び
前記負圧又は正圧を、前記主流路に通流する液体中の微小粒子が検出された時間間隔により制御すること、
をコンピュータに実行させる、微小粒子分取用プログラム。
[16] 微小粒子が通流する主流路と該主流路に連通する圧力室とを含む、微小粒子分取用マイクロチップと、
前記微小粒子分取用マイクロチップを搭載するマイクロチップ搭載部と、
前記主流路に含まれる微小粒子検出領域に光を照射する光照射部と、
前記微小粒子から発せられた散乱光及び/又は蛍光を検出する検出部と、
前記圧力室の室内を負圧又は正圧にする圧力室制御部と、
を備え、
前記圧力室制御部は、
前記主流路に通流する液体中の微小粒子を、前記主流路に連通する前記圧力室内に負圧を発生させることにより、前記圧力室に分取すること、
前記圧力室内の液体を、前記圧力室内に前記発生させた負圧の合計絶対値以下の正圧を発生させることにより、前記主流路に吐出すること、及び
前記負圧又は正圧を、前記主流路に通流する液体中の微小粒子が検出された時間間隔により制御すること、
をコンピュータに実行させる微小粒子分取用プログラムにより制御される、
微小粒子分取用システム。
A:微小粒子分取装置、S:サンプル液層流、T:シース液層流、1a,1b:マイクロチップ、11:サンプル液インレット、12:サンプル液流路、13:シース液インレット、14:シース液流路、15:主流路、15a:検出領域、156:連通口、16:分取流路、161,164:圧力室、162:取込口、163:捕獲室、17:廃棄流路、21:照射部、22:検出部、23:駆動部、31:アクチュエータ、311:変位板

Claims (15)

  1. 主流路に含まれる微小粒子検出領域に光を照射する光照射部と、
    前記微小粒子から発せられた散乱光及び/又は蛍光を検出する検出部と、
    圧力室内の圧力を制御する圧力室制御部と、
    を備え、
    前記圧力室制御部は、
    前記主流路に連通する前記圧力室内の圧力をアクチュエータが変化させて前記主流路を流れる微小粒子を分取することを微小粒子分取用システムに実行させ、且つ、
    前記アクチュエータに印可される電圧の値又は波形を、前記主流路に通流する液体中の微小粒子が検出された時間間隔に基づき特定する、
    微小粒子分取用システム。
  2. 前記圧力室制御部は、前記時間間隔と所定値との比較の結果又は前記時間間隔の長さの判定の結果に基づき、前記電圧の値又は波形を特定するように構成されている、請求項1に記載の微小粒子分取用システム。
  3. 前記アクチュエータに、パルス波形、ステップ波形、又はアンダーシュート付ステップ波形の駆動波形が印加される、請求項1又は2に記載の微小粒子分取用システム。
  4. 前記アクチュエータにパルス波形の駆動波形が印可されるように構成されており、
    前記パルス波形の印加を、立下り波形部と立上り波形部とで個別に制御する、請求項1又は2に記載の微小粒子分取用システム。
  5. 前記立下り波形部の電圧は、前記主流路に通流する液体中の微小粒子が検出された時間間隔により制御される、請求項4に記載の微小粒子分取用システム。
  6. 前記立下り波形部の電圧の値又は波形が、前記時間間隔により制御される、請求項4又は5に記載の微小粒子分取用システム。
  7. 前記電圧の値は、前記時間間隔に依存して決定される係数を用いて特定される、請求項1~6のいずれか一項に記載の微小粒子分取用システム。
  8. 前記圧力室制御部は、微小粒子間の時間を因数とした関数を用いて前記アクチュエータの駆動を制御する、請求項1に記載の微小粒子分取用システム。
  9. 前記微小粒子分取用システムは、前記主流路が設けられた微小粒子分取用マイクロチップを用いて、微小粒子の分取を実行する、請求項1~8のいずれか一項に記載の微小粒子分取用システム。
  10. 主流路に含まれる微小粒子検出領域に光を照射する光照射部と、
    前記微小粒子から発せられた散乱光及び/又は蛍光を検出する検出部と、
    目的粒子の分取流路内への分取を行うアクチュエータを駆動する駆動部と、
    を備え、
    前記駆動部は、
    前記アクチュエータを駆動して前記分取流路内の圧力を変化させて、前記主流路に通流する液体中の微小粒子を分取することを微小粒子分取用システムに実行させ、且つ、
    前記アクチュエータに印可される電圧の値又は波形を、前記主流路に通流する液体中の微小粒子が検出された時間間隔に基づき特定する、
    微小粒子分取用システム。
  11. 主流路に含まれる微小粒子検出領域に光を照射する光照射部と、
    前記微小粒子から発せられた散乱光及び/又は蛍光を検出する検出部と、
    を備えた微小粒子分取用システムにおいて、
    前記主流路に連通する圧力室内の圧力をアクチュエータが変化させて、前記主流路に通流する液体中の微小粒子を分取することを実行することを含み、
    前記アクチュエータに印可される電圧の値又は波形が、前記主流路に通流する液体中の微小粒子が検出された時間間隔に基づき特定される、
    微小粒子分取方法。
  12. 前記時間間隔と所定値との比較の結果又は前記時間間隔の長さの判定の結果に基づき、前記電圧の値又は波形が特定される、請求項11に記載の微小粒子分取方法。
  13. 前記アクチュエータに、パルス波形、ステップ波形、又はアンダーシュート付ステップ波形の駆動波形が印加される、請求項11又は12に記載の微小粒子分取方法。
  14. 前記電圧の値は、前記時間間隔に依存して決定される係数を用いて特定される、請求項11~13のいずれか一項に記載の微小粒子分取方法。
  15. 微小粒子間の時間を因数とした関数を用いて前記アクチュエータの駆動が制御される、請求項11~14のいずれか一項に記載の微小粒子分取方法。


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