以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
図1~図6を参照して、一実施形態によるX線位相撮像システム100の構成について説明する。
(X線位相撮像システムの構成)
まず、図1を参照して、一実施形態によるX線位相撮像システム100の全体構成について説明する。
(X線位相撮像システムの構成)
図1に示すように、X線位相撮像システム100は、被写体90を通過したX線を利用して、被写体90の内部の画像を生成する装置である。具体的には、X線位相撮像システム100は、タルボ(Talbot)効果を利用して、被写体90の内部の画像を生成するX線位相イメージング装置である。X線位相撮像システム100は、たとえば、非破壊検査用途では、物体の内部の画像化に用いることが可能である。
X線位相撮像システム100は、X線位相撮像装置1と、X線画像処理装置2と、画像表示部3とを備える。
X線位相撮像装置1は、X線源10と、検出器11と、第1格子12と、第2格子13と、第3格子14と、撮像装置制御部15と、撮像装置画像処理部16と、格子回転機構17と、回転機構18と、格子移動機構19とを備えている。なお、本明細書において、X線源10から第1格子12に向かう方向をZ2方向、その逆向きの方向をZ1方向とする。また、Z方向と直交する面内の左右方向をX方向とし、紙面の奥に向かう方向をX2方向、紙面の手前側に向かう方向をX1方向とする。また、Z方向と直交する面内の上下方向をY方向とし、上方向をY1方向、下方向をY2方向とする。
X線源10は、高電圧が印加されることにより、X線を発生させるとともに、発生されたX線をZ2方向に向けて照射するように構成されている。
第1格子12は、Y方向に所定の周期(ピッチ)d1で配列される複数のスリット12a、および、X線位相変化部12bを有している。各スリット12aおよびX線位相変化部12bはそれぞれ、直線状に延びるように形成されている。また、各スリット12aおよびX線位相変化部12bはそれぞれ、平行に延びるように形成されている。第1格子12は、いわゆる位相格子である。
第1格子12は、X線源10と、第2格子13との間に配置されており、X線源10からX線が照射される。第1格子12は、タルボ効果により、第1格子12の自己像(図示せず)を形成するために設けられている。なお、可干渉性を有するX線が、スリットが形成された格子を通過すると、格子から所定の距離(タルボ距離)離れた位置に、格子の像(自己像)が形成される。これをタルボ効果という。
第2格子13は、Y方向に所定の周期(ピッチ)d2で配列される複数のX線透過部13aおよびX線吸収部13bを有している。各X線透過部13aおよびX線吸収部13bはそれぞれ、直線状に延びるように形成されている。また、各X線透過部13aおよびX線吸収部13bはそれぞれ、平行に延びるように形成されている。第2格子13は、いわゆる吸収格子である。第1格子12および第2格子13はそれぞれ異なる役割を持つ格子であるが、スリット12aおよびX線透過部13aはそれぞれX線を透過させる。また、X線吸収部13bはX線を遮蔽する役割を担っており、X線位相変化部12bはスリット12aとの屈折率の違いによってX線の位相を変化させる。
第2格子13は、第1格子12と検出器11との間に配置されており、第1格子12を通過したX線が照射される。また、第2格子13は、第1格子12からタルボ距離離れた位置に配置される。第2格子13は、第1格子12の自己像と干渉して、検出器11の検出表面上にモアレ縞(図示せず)を形成する。
第3格子14は、Y方向に所定の周期(ピッチ)d3で配列される複数のX線透過部14aおよびX線吸収部14bを有している。各X線透過部14aおよびX線吸収部14bはそれぞれ、直線状に延びるように形成されている。また、各X線透過部14aおよびX線吸収部14bはそれぞれ、平行に延びるように形成されている。第3格子14は、いわゆるマルチスリットである。
第3格子14は、X線源10と第1格子12との間に配置されている。第3格子14は、各X線透過部14aを通過したX線を線光源とすることにより、X線源10からのX線を多点光源化するように構成されている。3枚の格子(第1格子12、第2格子13、および、第3格子14)のピッチと格子間の距離とが一定の条件を満たすことにより、X線源10から照射されるX線の可干渉性を高めることが可能である。これにより、X線源10の管球の焦点サイズが大きくても干渉強度を保持できる。
検出器11は、X線を検出するとともに、検出されたX線を電気信号に変換し、変換された電気信号を画像信号として読み取るように構成されている。検出器11は、たとえば、FPD(Flat Panel Detector)である。検出器11は、複数の変換素子(図示せず)と複数の変換素子上に配置された画素電極(図示せず)とにより構成されている。複数の変換素子および画素電極は、所定の周期(画素ピッチ)で、X方向およびY方向にアレイ状に配列されている。また、検出器11は、取得した画像信号を、撮像装置画像処理部16に出力するように構成されている。
撮像装置制御部15は、格子回転機構17により、第1格子12、第2格子13、および、第3格子14を、X線の光軸50周りの回転方向に回転させるように構成されている。また、撮像装置制御部15は、回転機構18により、被写体90と、X線源10と複数の格子と検出器11とによって構成される撮影系500とを相対的に回転させるように構成されている。また、撮像装置制御部15は、格子移動機構19により、第1格子12を格子面内において格子方向と直交する方向にステップ移動させるように構成されている。X線位相撮像システム100では、第1格子12を一定周期間隔に走査することにより得られた複数のモアレ縞(画像)から画像を取得する手法(縞走査法)が用いられている。また、撮像装置制御部15は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを含んでいる。
撮像装置画像処理部16は、検出器11から出力された画像信号(検出データ)に基づいて、被写体90の内部の画像を生成するように構成されている。具体的には、撮像装置画像処理部16は、検出器11から出力された画像信号に基づいて、位相コントラスト画像31aを生成する。位相コントラスト画像31aには、吸収像、位相微分像、位相像、および、暗視野像が含まれる。なお、吸収像とは、被写体90によるX線の吸収の差によって生じるコントラストを画像化したものである。また、位相微分像とは、被写体90によるX線の位相の変化によって生じるコントラストを画像化したものである。また、位相像は、被写体90によるX線の位相の変化によって生じるコントラストを画像化したものである。位相像は、位相微分像の各画素において、所定の方向における各画素までの画素値を積分して得られる画像である。また、暗視野像とは、被写体90の内部にある微細構造によるX線の屈折(散乱)によって生じるコントラストを画像化したものである。言い換えると、暗視野像は、被写体90によるビジビリティの低下を画像化したものであり、ビジビリティの低下は被写体90の散乱の程度に依存する。すなわち、暗視野像は、被写体90のX線散乱を画像化したものである。撮像装置画像処理部16によって生成された位相コントラスト画像31aは、撮像装置制御部15によって、X線画像処理装置2に出力される。撮像装置画像処理部16は、たとえば、GPU(Graphics Processing Unit)、または、画像処理用に構成されたFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのプロセッサを含んでいる。
格子回転機構17は、撮像装置制御部15からの信号に基づいて、第1格子12、第2格子13、および、第3格子14をX線の光軸50周りの回転方向に回転させるように構成されている。格子回転機構17は、第1格子12、第2格子13、および、第3格子14の各々に設けられている。格子回転機構17は、複数の格子を回転させる際には、各格子を略同一角度で回転させるように構成されている。図1では、軸線180が延びる方向(図1ではY方向)と、複数の格子の格子方向(図1ではX方向)とが直交している状態を図示しているが、格子回転機構17は、複数の格子の格子方向を所望の方向(たとえばY方向)に変化させることが可能である。なお、格子方向とは、格子の格子パターンが延びる方向である。また、格子パターンとは、各格子のスリット12a、X線位相変化部12b、X線透過部13a、および、X線吸収部13bなどのことである。格子回転機構17によって複数の格子の格子方向を変更することにより、被写体90内で感度を有するシート91を変更することができる。すなわち、位相コントラスト画像31aとし画像化されるシート91を変更することができる。格子回転機構17は、たとえば、モータなどによって駆動される格子保持部を含んでいる。
回転機構18は、撮像装置制御部15からの信号に基づいて、X線源10と複数の格子と検出器11とによって構成される撮影系500と、被写体90とを相対的に回転させるように構成されている。具体的には、回転機構18は、被写体90を軸線180周りに回転させることにより、撮影系500に対して被写体90を相対的に回転させるように構成されている。回転機構18によって撮影系500と被写体90とを回転させながら撮影することにより、後述するボリュームデータ42を生成することができる。また、回転機構18は、たとえば、モータなどによって駆動される回転ステージ18aを含んでいる。
格子移動機構19は、撮像装置制御部15からの信号に基づいて、第1格子12を格子面内(XY面内)において格子方向と直交する方向(図1ではY方向)にステップ移動させるように構成されている。具体的には、格子移動機構19は、第1格子12の周期d1をn分割し、d1/nずつ第1格子12をステップ移動させる。格子移動機構19は、少なくとも第1格子12の1周期d1分、第1格子12をステップ移動させるように構成されている。なお、nは正の整数であり、たとえば、9などである。格子移動機構19によって第1格子12をステップ移動させることにより、撮像装置画像処理部16において、位相コントラスト画像31aを生成することができる。また、格子移動機構19は、たとえば、ステッピングモータやピエゾアクチュエータなどを含んでいる。
X線画像処理装置2は、制御部20と、画像記憶部21と、画像取得部22とを備えている。
制御部20は、後述するエッジ情報40、および、後述するシート91の配置情報41を取得する制御を行うように構成されている。また、制御部20は、後述するエッジ解析画像30、および、後述する被写体解析画像31を画像記憶部21に記憶させるように構成されている。また、制御部20は、後述するエッジ解析画像30、および、後述する被写体解析画像31を、画像表示部3に出力する制御を行うように構成されている。また、制御部20は、エッジ情報取得部20aと、画像処理部20bと、シート配置情報取得部20cと、画像表示制御部20dとを含んでいる。制御部20は、画像記憶部21に記憶された各種プログラムを実行することにより、エッジ情報取得部20a、画像処理部20b、シート配置情報取得部20c、および、画像表示制御部20dとして機能する。制御部20は、たとえば、CPUなどを含む。
エッジ情報取得部20aは、検出器11により検出されたX線の強度分布に基づいて生成された位相コントラスト画像31aに基づいて、複数のシート91が積層された構造を有する被写体90の複数のシート91のエッジ情報40を取得するように構成されている。エッジ情報取得部20aがエッジ情報40を取得する構成の詳細については、後述する。
画像処理部20bは、エッジ情報取得部20aによって取得されたエッジ情報40に基づいて、複数のシート91のエッジ91aの分布を視認可能なエッジ解析画像30を生成するように構成されている。画像処理部20bがエッジ解析画像30を生成する構成の詳細については、後述する。
シート配置情報取得部20cは、格子回転機構17によって複数の格子を回転させながら撮影することによって生成された複数の位相コントラスト画像31aに基づいて、シート91の配置情報41を取得するように構成されている。配置情報41の詳細、および、シート配置情報取得部20cが配置情報41を取得する構成の詳細については、後述する。
画像表示制御部20dは、画像処理部20bによって生成されたエッジ解析画像30と、被写体90を解析した被写体解析画像31とを画像表示部3において同時に表示させる制御を行うように構成されている。被写体解析画像31は、位相コントラスト画像31aと、複数のシート91の配置情報41を視認可能なシート配置解析画像31bとのうちの少なくともいずれかを含む。シート配置解析画像31bの詳細、および、画像表示制御部20dがエッジ解析画像30と被写体解析画像31とを表示させる構成の詳細については、後述する。
画像記憶部21は、制御部20が実行する各種プログラムを記憶している。また、画像記憶部21は、制御部20の制御の下、後述するエッジ解析画像30と、被写体解析画像31とを関連付けて記憶するように構成されている。画像記憶部21は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)、または、不揮発性のメモリなどを含む。
画像取得部22は、位相コントラスト画像31aを取得するように構成されている。画像取得部22は、X線位相撮像装置1とX線画像処理装置2とを電気的に接続する際の入出力ポートを含む。
画像表示部3は、画像処理部20bによって生成されたエッジ解析画像30と、被写体解析画像31とを同時に表示するように構成されている。画像表示部3は、たとえば、液晶モニタなどを含む。
(被写体の構成)
次に、図2を参照して、被写体90の構成について説明する。
図2に示す被写体90は、炭素繊維と、母材である樹脂との複合材料である炭素繊維強化プラスチック(CFRP)である。被写体90は、ランダムに配置された複数のシート91(テープ)が積層された構造を有している。シート91は、炭素繊維が多数集まって束状になった繊維束であり、薄膜形状を有している。被写体90は、たとえば、ランダムに配置した複数のシート91に対して、加熱と加圧(プレス)とを行うことにより、成形することができる。なお、図2では、図示の都合上、積層されたシート91のうちの被写体90の表面のシート91のみが図示されている。しかしながら、シート91は、被写体90の表面だけでなく、内部にも存在している。
図2に示すような被写体90では、被写体90の品質を評価する際にシート91のエッジ91a(シート端面)の検出が重要であると考えられている。シート91のエッジ91aには、母材である樹脂が偏析しやすいため、シート91のエッジ91aが、破壊の起点となりやすい可能性があると予想されているためである。このため、本実施形態のX線位相撮像システム100は、被写体90のシート91のエッジ91aの分布を視認可能なエッジ解析画像30を生成し、表示する。なお、エッジ91aの分布を視認可能なエッジ解析画像30とは、エッジ91aの分布を、エッジ91a以外の部分と容易に区別することが可能な画像である。
(エッジ解析画像の取得処理)
次に、図3を参照して、エッジ情報取得部20aがエッジ情報40を取得する構成、および、画像処理部20bがエッジ解析画像30を生成する構成について説明する。
画像処理部20bは、撮影系500と被写体90とを相対回転させながら撮影された複数の位相コントラスト画像31aに基づいて、3次元のボリュームデータ42を取得するように構成されている。具体的には、画像処理部20bは、検出器11によるX線の検出データに基づいて、FBP(Filtered Back Projection)などの再構成処理により3次元のボリュームデータ(CTデータ)42を取得する。より具体的には、画像処理部20bは、回転機構18を回転させながら複数の回転角度の各々において撮像された複数の画像に基づいて、再構成処理により3次元のボリュームデータ42を取得する。図3には、画像処理部20bが、複数の暗視野像に基づいて、暗視野像のボリュームデータ42を取得する例を示している。
また、画像処理部20bは、取得したボリュームデータ42に基づいて複数のスライス画像32を生成するように構成されている。複数のスライス画像32は、X線の照射方向において、所定の厚みを有する断層を画像化した画像である。各スライス画像32には、所定の厚みの断層の1枚分に含まれるシート91が写る。なお、スライス画像32では、シート91のエッジ91aのみならず、シート91に含まれる線状の炭素繊維も写るため、炭素繊維とエッジ91aとを区別してエッジ91aの分布を識別することは困難である。
そこで、本実施形態では、エッジ情報取得部20aは、エッジ情報40として、複数のシート91のエッジ91aの位置の情報である、エッジ位置の情報40aを取得するように構成されている。具体的には、エッジ情報取得部20aは、画像処理部20bによって取得された複数のスライス画像32に基づいて、エッジ情報40として、少なくとも、複数のシート91のエッジ位置の情報40aを取得するように構成されている。より具体的には、エッジ情報取得部20aは、複数のスライス画像32に対して、微分処理、平滑化処理、および、投影処理などを行うことにより、各スライス画像32の各々に写るエッジ91aの位置座標を含むエッジ位置の情報40aを取得する。
本実施形態では、画像処理部20bは、取得された複数のシート91のエッジ位置の情報40aに基づいて、エッジ解析画像30として、エッジ位置画像30aを生成するように構成されている。エッジ位置画像30aは、被写体90における複数のシート91のエッジ91aと、被写体90における複数のシート91のエッジ91a以外の部分とを識別可能に表示した画像である。具体的には、画像処理部20bは、エッジ位置画像30aにおいて、エッジ91aを黒または白で画像化し、エッジ91a以外の部分を白または黒で画像化することにより、エッジ91aとエッジ91a以外の部分とを識別可能にしている。
また、画像処理部20bは、エッジ情報40に基づいて、複数のスライス画像32の各々において、エッジ91aとエッジ91a以外の部分とを識別可能に表示し、複数のスライス画像32の全てを重ねることにより、エッジ位置画像30aを生成する。言い換えると、画像処理部20bは、エッジ91aのボリュームデータを作成し、X方向からの投影画像としてエッジ位置画像30aを表示する。したがって、エッジ位置画像30aには、X線の照射方向(Z方向)において積層する全てのシート91のエッジ91aが写る。
(シート配置解析画像の取得処理)
次に、図4および図5を参照して、配置情報41の詳細、シート配置情報取得部20cが配置情報41を取得する構成、および、画像処理部20bがシート配置解析画像31bを生成する構成について説明する。
配置情報41は、X線の照射方向における複数のシート91の積層量、被写体90における複数のシート91の配置の方向、および、被写体90における複数のシート91の配置方向の偏り度合いのうち、少なくともいずれかを含む。また、本実施形態では、シート配置情報取得部20cは、配置情報41として、X線の照射方向における複数のシート91の積層量、被写体90における複数のシート91の配置の方向、および、被写体90における複数のシート91の配置方向の偏り度合いを取得する。
シート配置情報取得部20cは、格子回転機構17によって複数の格子をX線の光軸50周りに回転させながら撮影することによって生成された複数の位相コントラスト画像31aに基づいて、配置情報41を取得するように構成されている。本実施形態では、たとえば、図4に示すように、シート配置情報取得部20cは、格子回転機構17によって複数の格子を回転させながら撮影した複数の暗視野像に基づいて、配置情報41を取得する。
図4に示す例は、格子回転機構17によって、複数の格子の格子方向が、第1方向~第4方向となるように、X線の光軸50周りに複数の格子を回転させつつ、複数回撮像することにより得られた暗視野像である。第1方向は、複数の格子の各々の格子方向がX方向となるように複数の格子を配置した際の方向である。また、第2方向は、複数の格子の各々の格子方向が斜め方向となる方向である。具体的には、第2方向は、複数の格子の各々の格子方向とY方向とがなす角度θ1が、45度となる向きに複数の格子を配置した際の方向である。また、第3方向は、複数の格子の各々の格子方向がY方向となるように複数の格子を配置した際の方向である。また、第4方向は、複数の格子の各々の格子方向が、第2方向とは異なる方向の斜め方向となる方向である。具体的には、第4方向は、複数の格子の各々の格子方向とY方向とがなす角度θ2が、135度となる向きに複数の格子を配置した際の方向である。
図4に示す例では、凡例80に示すように、X線の散乱量が多い部分が白く写り、X線の散乱量が少ない部分が黒く写るように画像化した暗視野像を示している。暗視野像は、格子の向きに沿う向きに配置されたシート91によって散乱したX線に基づいて画像化された画像である。したがって、同一の被写体90を撮像した場合でも、格子方向によって、生成される暗視野像に写るシート91は変化する。
本実施形態では、画像処理部20bは、シート配置情報取得部20cによって取得された配置情報41に基づいて、シート配置解析画像31bを生成するように構成されている。具体的には、図5に示すように、画像処理部20bは、シート配置解析画像31bとして、散乱度画像131、方位画像132、異方度画像133、および、ベクトル画像134のうちの、少なくともいずれかを生成するように構成されている。
散乱度画像131は、格子の方向を異ならせて生成された複数の暗視野像を平均することにより生成される。したがって、散乱度画像131によって、配置情報41として、X線の照射方向におけるシート91の積層量を把握することができる。
また、方位画像132は、シート91の向きを識別可能な画像である。具体的には、方位画像132は、シート91の向き毎に表示色を異ならせて表示した画像である。したがって、方位画像132によって、配置情報41として、被写体90における複数のシート91の向きを把握することができる。なお、図5に示す例では、シート91の向き毎に、異なるハッチングを付すことにより、シート91の向きを識別可能に表示している。また、図5に示す例では、方位画像132は、凡例81に示すように、シート91の向きとして6方向を識別可能に表示する。
また、異方度画像133は、被写体90における複数のシート91の配置方向の偏り度合いを識別可能に表示した画像である。図5に示す例では、シート91の配置方向の偏り度合いが大きくなるほど、画素値が低く(暗く)なるように表示させている。したがって、異方度画像133によって、配置情報41として、シート91の配置方向の偏り度合いを把握することができる。なお、シート91の配置方向の偏り度合いとは、シート91の向きがそろっているか否かを意味する。シート91の配置の偏り度合いが大きいほど、シート91の配置方向が一定であることを意味する。
また、ベクトル画像134は、方位画像132と異方度画像133とを合成した画像である。すなわち、ベクトル画像134は、方位画像132と異方度画像133とに基づいて、シート91の向きと、シート91の向きごとの位置とを識別可能に表示した画像である。したがって、ベクトル画像134によって、配置情報41として、シート91の向き、および、シート91の配置の方向の偏り度合いを把握することができる。
(エッジ解析画像および被写体解析画像の表示処理)
本実施形態では、図6に示すように、画像表示部3は、エッジ位置画像30aと、被写体解析画像31とを同時に表示するように構成されている。具体的には、画像表示制御部20dは、画像処理部20bが生成したエッジ位置画像30aと、被写体解析画像31とを画像表示部3に出力する。画像表示部3は、画像表示制御部20dから出力されたエッジ解析画像30および被写体解析画像31を同一画面上に表示する。
本実施形態では、画像表示部3は、エッジ解析画像30と、位相コントラスト画像31aおよびシート配置解析画像31bのうちの少なくともいずれかとを、同時に表示するように構成されている。具体的には、画像表示部3は、エッジ解析画像30と、被写体解析画像31としてのシート配置解析画像31bと、を同時に表示するように構成されている。また、本実施形態では、画像表示部3は、エッジ解析画像30と、シート配置解析画像31bとを、並べて表示するか、または、重ねて表示するように構成されている。図6に示す例では、画像処理部20bは、エッジ解析画像30と、シート配置解析画像31bとを並べて表示している。また、図6に示す例では、画像表示部3は、位相コントラスト画像31aである暗視野像と、エッジ位置画像30aと、シート配置解析画像31bであるベクトル画像134とを同時に並べて表示している。
また、本実施形態では、画像表示制御部20dは、エッジ解析画像30と、シート配置解析画像31bとのスケールを合わせた状態で、画像表示部3に対して出力する。また、画像表示制御部20dは、位相コントラスト画像31aについても、エッジ解析画像30およびシート配置解析画像31bとスケールを合わせた状態で、画像表示部3に出力する。したがって、画像表示部3は、エッジ解析画像30と、シート配置解析画像31bとを並べて表示する際に、各画像のスケールを合わせた状態で、並べて表示するように構成されている。なお、本明細書において、スケールとは、各画像の倍率を意味する。
(エッジ解析画像および被写体解析画像の保存)
本実施形態では、画像記憶部21は、エッジ解析画像30と、少なくともシート配置解析画像31bとを関連付けて記憶する。具体的には、画像記憶部21は、エッジ位置画像30aと、位相コントラスト画像31aと、シート配置解析画像31bとを関連付けて記憶する。画像処理部20bは、たとえば、位相コントラスト画像31aと、シート配置解析画像31bとを同一のフォルダにまとめて画像記憶部21に記憶させることにより、各画像を関連付けて記憶させる。なお、画像処理部20bは、各画像のファイルのファイル名に共通の識別IDを付与して画像記憶部21に記憶させることにより、各画像を関連付けて記憶させてもよい。
(エッジ解析画像および被写体解析画像の表示処理)
次に、図7を参照して、X線位相撮像システム100がエッジ解析画像30および被写体解析画像31を画像表示部3に表示する処理について説明する。
ステップ101において、画像取得部22は、被写体90を通過したX線の強度分布に基づいて生成された位相コントラスト画像31aを取得する。具体的には、画像取得部22は、X線位相撮像装置1によって、複数の格子の向きを変更しながら撮影することにより生成された複数の位相コントラスト画像31aを取得する。また、ステップ101において、画像取得部22は、X線位相撮像装置1によって、被写体90と撮影系500とを相対回転させながら撮影された複数の位相コントラスト画像31aを取得する。
ステップ102において、画像処理部20bは、取得した複数の位相コントラスト画像31aに基づいて、ボリュームデータ42を取得する。
ステップ103にいて、エッジ情報取得部20aは、取得された位相コントラスト画像31aに基づいて、複数のシート91が積層された構造を有する被写体90の複数のシート91のエッジ情報40を取得する。
ステップ104において、画像処理部20bは、取得されたエッジ情報40に基づいて、複数のシート91のエッジ91aの分布を視認可能なエッジ解析画像30を生成する。本実施形態では、ステップ104の処理において、画像処理部20bは、エッジ位置画像30aを生成する。
ステップ105において、シート配置情報取得部20cは、取得されたエッジ情報40に基づいて、複数のシート91の配置情報41を取得する。
ステップ106において、画像処理部20bは、取得した配置情報41に基づいて、シート配置解析画像31bを生成する。本実施形態では、ステップ106の処理において、画像処理部20bは、ベクトル画像134を生成する。
ステップ107において、画像処理部20bは、各画像のスケールがあっているか否かを判定する。各画像のスケールが合っていない場合、処理は、ステップ108へ進む。各画像のスケールが合っている場合、処理は、ステップ109へ進む。なお、画像処理部20bは、各画像を撮影した際のZ方向における被写体90の位置に基づいて、各画像のスケールを取得する。
ステップ108において、画像処理部20bは、各画像のスケールを合わせる。画像処理部20bは、各画像のうち、いずれかの画像の大きさを基準にして、各画像のスケールを合わせる。本実施形態では、たとえば、画像処理部20bは、エッジ解析画像30の大きさを基準にして、各画像のスケールを合わせる。
ステップ109において、画像表示部3は、生成されたエッジ解析画像30と被写体90を解析した被写体解析画像31とを同時に表示する。本実施形態では、ステップ109の処理において、画像表示部3は、エッジ位置画像30aと、被写体解析画像31としての暗視野像およびベクトル画像134とを同時に表示する。その後、処理は、終了する。
なお、ステップ102~ステップ104の処理と、ステップ105およびステップ106との処理は、どちらが先に行われてもよい。すなわち、エッジ位置画像30aの生成と、ベクトル画像134の生成とは、どちらが先に行われてもよい。
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
本実施形態では、上記のように、X線位相撮像システム100は、X線源10と、X線源10から照射されて、被写体90を通過したX線が照射される検出器11と、X線源10と検出器11との間に配置され、X線源10からX線が照射される第1格子12と、第1格子12を通過したX線が照射される第2格子13と、を含む複数の格子と、検出器11により検出されたX線の強度分布に基づいて生成された位相コントラスト画像31aに基づいて、複数のシート91が積層された構造を有する被写体90の複数のシート91のエッジ情報40を取得するエッジ情報取得部20aと、エッジ情報取得部20aによって取得されたエッジ情報40に基づいて、複数のシート91のエッジ91aの分布を視認可能なエッジ解析画像30を生成する画像処理部20bと、画像処理部20bによって生成されたエッジ解析画像30と、被写体90を解析した被写体解析画像31とを同時に表示する画像表示部3とを備える。
これにより、複数のシート91が積層された被写体90であっても、エッジ解析画像30によって、被写体90のシート91のエッジ91aの分布を視認することができる。また、エッジ解析画像30とともに、被写体90を解析した被写体解析画像31を同時に表示することによって、各シート91を区別して把握するための手がかりとなるシート91のエッジ91aの分布とともに、被写体90の形状などを確認することができる。これにより、複数のシート91が積層された被写体90であっても、被写体90の品質を精度良く評価することが可能な画像を表示させることができる。
また、本実施形態では、上記のように、被写体解析画像31は、位相コントラスト画像31aと、複数のシート91の配置情報41を視認可能なシート配置解析画像31bとのうちの少なくともいずれかを含み、画像表示部3は、エッジ解析画像30と、位相コントラスト画像31aおよびシート配置解析画像31bのうちの少なくともいずれかとを、同時に表示するように構成されている。これにより、エッジ解析画像30と位相コントラスト画像31aとを同時に表示する場合には、シート91のエッジ91aの分布と、被写体90の外形形状とを確認することができる。また、エッジ解析画像30とシート配置解析画像31bとを同時に表示する場合には、シート91のエッジ91aの分布と、シート91の配置情報とを確認することができる。これらの結果、複数のシート91が積層された被写体90の品質を評価する際に、少なくとも2つの観点で画像化された画像が同時に表示されるので、被写体90の品質評価の精度を向上させることができる。
また、本実施形態では、上記のように、画像処理部20bは、取得された複数のシート91のエッジ位置の情報40aに基づいて、エッジ解析画像30として、被写体90における複数のシート91のエッジ91aと、被写体90における複数のシート91のエッジ91a以外の部分とを識別可能に表示した画像であるエッジ位置画像30aを生成するように構成されており、画像表示部3は、エッジ位置画像30aと、被写体解析画像31とを同時に表示するように構成されている。これにより、シート91のエッジ91aのみが表示されるエッジ位置画像30aが表示されるので、ユーザは、エッジ91aの分布を容易に把握することができる。
また、本実施形態では、上記のように、複数の格子を回転させる格子回転機構17と、格子回転機構17によって複数の格子を回転させながら撮影することによって生成された複数の位相コントラスト画像31aに基づいて、配置情報41を取得するシート配置情報取得部20cと、をさらに備え、配置情報41は、X線の照射方向における複数のシート91の積層量、被写体90における複数のシート91の配置の方向、および、被写体90における複数のシート91の配置方向の偏り度合いのうち、少なくともいずれかを含み、画像処理部20bは、シート配置情報取得部20cによって取得された配置情報41に基づいて、シート配置解析画像31bを生成するように構成されており、画像表示部3は、エッジ解析画像30と、被写体解析画像31としてのシート配置解析画像31bと、を同時に表示するように構成されている。これにより、シート91のエッジ91aの分布と、シート91の配置の状態とを、同時に確認することができる。したがって、シート91のエッジ91aの分布に基づく被写体90の品質の評価と、シート91の配置の情報に基づく被写体90の品質の評価とを、行うことができる。その結果、複数の観点から被写体90の品質の評価を行うことが可能となるので、エッジ解析画像30またはシート配置解析画像31bのいずれかのみを表示する構成と比較して、被写体90の品質評価の精度を向上させることが可能な画像を表示することができる。
また、本実施形態では、上記のように、画像表示部3は、エッジ解析画像30と、シート配置解析画像31bとを、並べて表示するか、または、重ねて表示するように構成されている。これにより、エッジ解析画像30とシート配置解析画像31bとを並べて表示させる場合には、各々の画像を見比べることが可能となるので、各々の画像により、エッジ91aの分布とシート91の配置情報とを確認することができる。また、エッジ解析画像30とシート配置解析画像31bとを重ねて表示させる場合には、画面に表示された画像を確認することにより、1つの画像においてエッジ91aの分布とシート91の配置とを確認することができる。
また、本実施形態では、上記のように、画像表示部3は、エッジ解析画像30と、シート配置解析画像31bとを並べて表示する際に、各画像のスケールを合わせた状態で、並べて表示するように構成されている。これにより、たとえば、エッジ解析画像30を撮影する際の撮影倍率と、シート配置解析画像31bを撮影する際の撮影倍率とが異なった場合でも、各々の画像のスケールが合わされるので、各々の画像を容易に比較することができる。
また、本実施形態では、上記のように、エッジ解析画像30と、少なくともシート配置解析画像31bとを関連付けて記憶する画像記憶部21をさらに備える。これにより、同一の被写体90を撮影することにより生成されたエッジ解析画像30とシート配置解析画像31bとが関連付けて記憶されるため、たとえば、同一の被写体90を撮影することにより得られたエッジ解析画像30とシート配置解析画像31bとを関連付けて記憶しない構成と比較して、関連のあるエッジ解析画像30とシート配置解析画像31bとを容易に参照することが可能となる。その結果、たとえば、ユーザが各画像のファイルを移動、または、各画像のファイルのコピーなどを容易に行うことが可能となるので、ユーザの利便性を向上させることができる。
また、本実施形態では、上記のように、X線源10と、複数の格子と、検出器11とによって構成される撮影系500と、被写体90とを相対回転させる回転機構18をさらに備え、画像処理部20bは、撮影系500と被写体90とを相対回転させながら撮影された複数の位相コントラスト画像31aに基づいて、3次元のボリュームデータ42を取得するとともに、取得したボリュームデータ42に基づいて複数のスライス画像32を生成するように構成されており、エッジ情報取得部20aは、画像処理部20bによって取得された複数のスライス画像32に基づいて、エッジ情報40として、少なくとも、複数のシート91のエッジ位置の情報40aを取得するように構成されている。これにより、複数のシート91が積層した被写体90であっても、被写体90のシート91のエッジ91aを精度良く検出することができるとともに、精度良く検出した被写体90のシート91のエッジ91aを含むエッジ解析画像30を生成し、表示することができる。その結果、精度良く検出した被写体90のシート91のエッジ91aを含むエッジ解析画像30を表示させることが可能となるので、被写体90のシート91のエッジ解析を精度良く行うことができる。
また、本実施形態では、上記のように、複数の格子は、X線源10と第1格子12との間に配置された第3格子14をさらに含む。これにより、第3格子14によって、X線源10から照射されるX線の可干渉性を向上させることができる。その結果、X線源10から照射されるX線の可干渉性が低い場合でも、第3格子14によって照射されるX線の可干渉性が向上されるので、X線源10の選択の自由度を向上させることができる。
また、本実施形態では、上記のように、X線画像処理装置2は、被写体90を通過したX線の強度分布に基づいて生成された位相コントラスト画像31aを取得する画像取得部22と、取得された位相コントラスト画像31aに基づいて、複数のシート91が積層された構造を有する被写体90の複数のシート91のエッジ情報40を取得するエッジ情報取得部20aと、エッジ情報取得部20aによって取得されたエッジ情報40に基づいて、複数のシート91のエッジ91aの分布を視認可能なエッジ解析画像30を生成する画像処理部20bと、画像処理部20bによって生成されたエッジ解析画像30と被写体90を解析した被写体解析画像31とを同時に表示させる制御を行う画像表示制御部20dとを備える。これにより、ユーザが被写体90の品質評価を行う際に、エッジ解析画像30と被写体解析画像31とを表示させることができる。その結果、複数のシート91が積層された被写体90であっても、被写体90の品質を精度良く評価することが可能な画像を表示させることが可能なX線画像処理装置2を提供することができる。
また、本実施形態では、上記のように、X線画像処理方法は、被写体90を通過したX線の強度分布に基づいて生成された位相コントラスト画像31aを取得するステップと、取得された位相コントラスト画像31aに基づいて、複数のシート91が積層された構造を有する被写体90の複数のシート91のエッジ情報40を取得するステップと、取得されたエッジ情報40に基づいて、複数のシート91のエッジ91aの分布を視認可能なエッジ解析画像30を生成するステップと、生成されたエッジ解析画像30と被写体90を解析した被写体解析画像31とを同時に表示するステップと、を備える。これにより、ユーザが被写体90の品質評価を行う際に表示させる、エッジ解析画像30と被写体解析画像31とを表示させることができる。その結果、複数のシートが積層された被写体であっても、被写体90の品質を精度良く評価することが可能な画像を表示させることが可能なX線画像処理装置を提供することができる。
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
(第1変形例)
たとえば、上記実施形態では、X線位相撮像システム100が、エッジ解析画像30として、エッジ位置画像30aのみを生成し、画像表示部3に表示する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図8に示す第1変形例のX線位相撮像システム200のように、エッジ解析画像30としてエッジ位置画像30aの代わりに、エッジ密度画像30b(図9参照)を生成し、画像表示部3に表示するように構成されていてもよい。
第1変形例によるX線位相撮像システム200は、X線画像処理装置2の代わりに、X線画像処理装置201を備える点で、上記実施形態によるX線位相撮像システム100とは異なる。
X線画像処理装置201は、エッジ情報取得部20aおよび画像処理部20bの代わりに、エッジ情報取得部120aおよび画像処理部120bを備える点で、上記実施形態によるX線画像処理装置2とは異なる。
画像処理部120bは、図9に示すように、複数のシート91のエッジ位置の情報40aと、エッジ密度の情報40bとに基づいて、エッジ解析画像30として、被写体90における複数のシート91のエッジ91aの密度の分布を視認可能に表示したエッジ密度画像30bを生成するように構成されている。具体的には、画像処理部120bは、エッジ位置画像30aと、エッジ密度の情報40bとに基づいて、エッジ密度画像30bを生成する。
第1変形例によるエッジ情報取得部120aは、エッジ位置の情報40aに加えて、位相コントラスト画像31aに基づいて、被写体90における複数のシート91のエッジ密度の情報40bをさらに取得するように構成されている。エッジ情報取得部120aは、ボリュームデータ42に基づいて、エッジ密度の情報40bを取得するように構成されている。具体的には、エッジ情報取得部120aは、エッジ位置画像30aにおいて、単位面積あたりに含まれるエッジ91aの面積を取得する。エッジ情報取得部120aは、ボリュームデータ42の奥行方向についても、単位面積内のエッジ91aの面積を取得する。また、エッジ情報取得部120a、単位面積当たりのエッジ91a以外の面積を取得する。また、エッジ情報取得部120a、ボリュームデータ42の奥行方向についても、単位面積当たりのエッジ91a以外の面積を取得する。エッジ情報取得部120aは、取得したエッジ91aの面積と、エッジ91a以外の面積とに基づいて、エッジ密度の情報40bを算出する。なお、エッジ情報取得部120aは、エッジ位置画像30aの所定の面積あたりのエッジ91aの本数に基づいて、エッジ91a密度の情報40bを取得するように構成されていてもよい。
画像処理部120bは、エッジ情報取得部120aが取得したエッジ位置の情報40aと、エッジ密度の情報40bとに基づいて、単位面積当たりのエッジ91aの密度の分布を取得し、画像化することにより、エッジ密度画像30bを生成する。
画像表示部3は、図10に示すように、エッジ密度画像30bと、被写体解析画像31とを同時に表示するように構成されている。具体的には、画像表示部3は、エッジ密度画像30bと、被写体解析画像31としての暗視野像およびベクトル画像134とを、同時に表示する。また、画像表示部3は、ベクトル画像134とともに、凡例81も表示する。
次に、図11を参照して、第1変形例によるX線位相撮像システム200がエッジ解析画像30および被写体解析画像31を表示する処理について説明する。なお、上記実施形態によるX線位相撮像システム100と同様の処理については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
ステップ101~ステップ103において、X線画像処理装置201は、エッジ位置の情報40aを取得する。
ステップ110において、エッジ情報取得部120aは、エッジ密度の情報40bを取得する。
ステップ111において、画像処理部120bは、エッジ密度画像30bを生成する。
次に、ステップ105~ステップ108において、シート配置情報取得部20cおよび画像処理部120bは、シート配置解析画像31bを生成する。また、画像処理部120bは、各画像のスケールが合っていない場合には、各画像のスケールを合わせる処理を行う。なお、各画像のスケールが合っている場合には、ステップ108の処理を行わす、ステップ112へ進む。
ステップ112において、画像表示制御部20dは、エッジ密度画像30b、暗視野像、および、ベクトル画像134を画像表示部3に出力し、表示させる。その後、処理は、終了する。
なお、第1変形例によるX線位相撮像システム200のその他の構成は、上記実施形態によるX線位相撮像システム100と同様の構成である。
(第1変形例の効果)
第1変形例によるX線位相撮像システム200では、上記のように、エッジ情報取得部120aは、位相コントラスト画像31aに基づいて、被写体90における複数のシート91のエッジ密度の情報40bをさらに取得するように構成されており、画像処理部120bは、複数のシート91のエッジ位置の情報40aと、エッジ密度の情報40bとに基づいて、エッジ解析画像30として、被写体90における複数のシート91のエッジ91aの密度の分布を視認可能に表示したエッジ密度画像30bを生成するように構成されており、画像表示部3は、エッジ密度画像30bと、被写体解析画像31とを同時に表示するように構成されている。このように構成すれば、被写体90のシート91のエッジ91aの密度の分布を容易に視認することが可能となるので、被写体90のシート91のエッジ91aが集まっている箇所を容易に確認することができる。その結果、被写体90において、破壊が起こりやすい場所を容易に予測することができる。
なお、第1変形例によるX線位相撮像システム200のその他の効果は、上記実施形態によるX線位相撮像システム100の効果と同様である。
(第2変形例)
また、上記実施形態によるX線位相撮像システム100では、エッジ解析画像30と被写体解析画像31とを画像表示部3に表示する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図12に示す第2変形例によるX線位相撮像システム300のように、画像表示部3に、エッジ解析画像30とシート配置解析画像31bとを合成した合成画像33を表示するように構成されていてもよい。
第2変形例によるX線位相撮像システム300は、X線画像処理装置2の代わりに、X線画像処理装置301を備える点で、上記実施形態によるX線位相撮像システム100とは異なる。
第2変形例によるX線画像処理装置301は、画像合成部20eをさらに備える点で、上記実施形態によるX線画像処理装置2とは異なる。
画像合成部20eは、エッジ解析画像30と、シート配置解析画像31bとを合成した合成画像33を生成するように構成されている。具体的には、画像合成部20eは、図13に示すように、エッジ位置画像30aと、方位画像132とを加算することにより、合成画像33を生成するように構成されている。なお、画像合成部20eは、エッジ位置画像30aと方位画像132とを除算することにより、合成画像33を生成するように構成されていてもよい。画像合成部20eが合成画像33を生成する手段は、どのような手段であってもよい。
また、画像合成部20eは、エッジ位置画像30aと、散乱度画像131とを合成することにより、合成画像33を生成してもよい。また、画像合成部20eは、エッジ位置画像30aと、異方度画像133とを合成することにより、合成画像33を生成してもよい。また、画像合成部20eは、エッジ位置画像30aと、ベクトル画像134とを合成することにより、合成画像33を生成してもよい。また、画像合成部20eは、エッジ解析画像30として、上記第1変形例によるX線画像処理装置201が生成するエッジ密度画像30bと、シート配置解析画像31bとを合成することにより、合成画像33を生成してもよい。画像合成部20eが合成画像33を生成する際は、エッジ解析画像30とシート配置解析画像31bとを合成すれば、エッジ解析画像30の種類、および、シート配置解析画像31bの種類は問わない。
第2変形例では、図14に示すように、画像表示部3は、合成画像33を表示するように構成されている。具体的には、画像表示部3は、合成画像33と位相コントラスト画像31aとを並べて表示するか、または、重ねて表示するように構成されている。図14に示す例では、画像表示部3は、合成画像33と、位相コントラスト画像31aである暗視野像とを並べて表示している。また、図14に示す例では、画像表示部3は、合成画像33と、暗視野像と、エッジ位置画像30aとを並べて表示している。なお、画像表示部3は、合成画像33と位相コントラスト画像31aとを重ねて表示してもよい。
次に、図15を参照して、第2変形例によるX線位相撮像システム300が合成画像33および位相コントラスト画像31aを表示する処理について説明する。なお、上記実施形態によるX線位相撮像システム100と同様の処理については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
ステップ101~ステップ106において、X線画像処理装置301は、エッジ位置画像30a、および、シート配置解析画像31bを生成する。第2変形例では、X線画像処理装置301は、シート配置解析画像31bとして、方位画像132を生成する。
次に、ステップ113において、画像合成部20eは、エッジ位置画像30aと方位画像132とを合成して、合成画像33を生成する。
次に、ステップ107およびステップ108において、画像処理部121は、各画像のスケールが合っていない場合には、各画像のスケールを合わせる処理を行う。なお、各画像のスケールが合っている場合には、ステップ108の処理を行わす、ステップ114へ進む。
ステップ114において、画像表示制御部20dは、合成画像33、暗視野像、および、エッジ位置画像30aを画像表示部3に出力し、表示させる。その後、処理は、終了する。
なお、第2変形例によるX線位相撮像システム300のその他の構成は、上記実施形態によるX線位相撮像システム100と同様の構成である。
(第2変形例の効果)
第2変形例によるX線位相撮像システム300では、上記のように、エッジ解析画像30と、シート配置解析画像31bとを合成した合成画像33を生成する画像合成部20eをさらに備え、画像表示部3は、合成画像33を表示するように構成されている。このように構成すれば、合成画像33によって、エッジ91aの分布と、シート91の配置とを複合した情報を確認することができる。その結果、エッジ解析画像30とシート配置解析画像31bとを個々の確認しながら被写体90の品質の評価を行う場合と比較して、エッジ91aの分布と、シート91の配置とを、一見して容易に確認することができる。
また、第2変形例では、上記のように、画像表示部3は、合成画像33と、位相コントラスト画像31aとを並べて表示するか、または、重ねて表示するように構成されている。これにより、合成画像33によってエッジ91aの分布とシート91の配置とを確認しつつ、位相コントラスト画像31aによって、被写体90の外形形状などを確認することができる。したがって、エッジ解析画像30とシート配置解析画像31bと位相コントラスト画像31aとを同時に表示する場合と比較して、同時に表示されるデータ量が減少することを抑制しつつ、同時に表示される画像の数を減少させることができる。その結果、被写体90の品質を評価する際に、確認する画像の数が減少するため、ユーザの負担を軽減することができる。
なお、第2変形例によるX線位相撮像システム300のその他の効果は、上記実施形態によるX線位相撮像システム100の効果と同様である。
(第3変形例)
また、上記実施形態では、X線位相撮像システム100が、X線の照射方向において積層する全てのシート91のエッジ91aが写るエッジ解析画像30と被写体解析画像31とを同時に表示する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図16に示す第3変形例によるX線位相撮像システム400のように、エッジ解析画像30として、断層画像130(図17参照)と被写体解析画像31とを表示するように構成されていてもよい。
第3変形例によるX線位相撮像システム400は、X線画像処理装置2の代わりに、X線画像処理装置401を備える点、および、入力部4をさらに備えるで、上記実施形態によるX線位相撮像システム100とは異なる。
入力部4は、操作者の入力をX線画像処理装置401に入力するように構成されている。入力部4は、たとえば、マウス、キーボードなどを含む。
X線画像処理装置401は、画像処理部20bの代わりに、画像処理部121を備える点、および、操作者の操作入力を受け付ける入力受付部23をさらに備える点で、上記実施形態によるX線画像処理装置2とは異なる。
入力受付部23は、入力部4において操作者が入力した操作入力を受け付けるように構成されている。入力受付部23は、たとえば、入力部4と電気的に接続される入力ポートを含む。
画像処理部121は、図17に示すように、エッジ解析画像30として、複数のシート91のエッジ91aの分布を視認可能な複数の断層画像130を生成するように構成されている。また、画像処理部121は、複数のスライス画像32(図3参照)を生成するように構成されている。画像処理部121は、エッジ位置の情報40aと、生成した複数のスライス画像32とに基づいて、複数の断層画像130を生成するように構成されている。具体的には、画像処理部121は、複数のスライス画像32の各々において、シート91のエッジ91aの分布を視認可能とすることにより、複数の断層画像130を生成する。
図17に示す例では、画像処理部121は、複数の断層画像130をZ方向から投影して画像としてエッジ位置画像230aを生成する。すなわち、画像処理部121は、ボリュームデータとしてのエッジ位置画像230aを生成する。したがって、エッジ位置画像230aには、Z1方向側からZ2方向側に向けて、第1断層画像130a、第2断層画像130b、・・・、および、第m断層画像130cが含まれる。なお、mは、正の整数である。
第3変形例では、画像表示部3は、複数の断層画像130のうち、操作者によって選択された断層画像130を表示するよう構成されている。具体的には、図18に示すように、画像表示部3は、位相コントラスト画像31aとしての吸収像と、断層画像130と、操作者が表示させたい断層を選択する選択部とを表示する。図18に示す例では、画像表示部3は、選択部として、スライダ5を表示する。図18に示すスライダ5は、画面の左側に移動させることにより、手前側(図17に示すZ1方向側)の断層画像130を選択できるように構成されている。また、スライダ5は、画面の右側に移動させることにより、奥側(図17に示すZ2方向側)の断層画像130を選択できるように構成されている。したがって、操作者は、スライダ5を操作することにより、表示させたい断層画像130を選択することができる。図18に示す例は、操作者が2層目の断層画像130を選択した場合の例であり、位相コントラスト画像31aとしての吸収像と、第2断層画像130bとが表示されている。
なお、第3変形例によるX線位相撮像システム400のその他の構成は、上記実施形態によるX線位相撮像システム100と同様の構成である。
(第3変形例の効果)
第3変形例によるX線位相撮像システム400では、上記のように、操作者の操作入力を受け付ける入力受付部23をさらに備え、画像処理部121は、複数のシート91のエッジ91aの分布を視認可能な複数の断層画像130を生成するように構成されており、画像表示部3は、複数の断層画像130のうち、操作者によって選択された断層画像130を表示するよう構成されている。このように構成すれば、ユーザの選択に応じて、複数の断層画像130のうち、所望の断層画像130が表示されるので、ユーザの利便性を向上させることができる。
なお、第3変形例によるX線位相撮像システム400のその他の効果は、上記実施形態によるX線位相撮像システム100の効果と同様である。
(第4変形例)
また、上記実施形態では、X線位相撮像システム100が、エッジ解析画像30と被写体解析画像31とを表示する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図19に示す第4変形例のように、画像表示部3において、エッジ解析画像30と、被写体解析画像31と、被写体90の解析の結果とを表示させてもよい。第4変形例では、被写体90の解析結果として、引張試験結果の画像34を、エッジ解析画像30および被写体解析画像31とともに表示させている。なお、解析結果として、被写体90を超音波検査した際の検査結果の画像、または、被写体90の熱特性の分布を示した画像などを表示させてもよい。
引張試験結果の画像34は、被写体90をY方向に引っ張った際に被写体90に生じるひずみを視認可能に表示した画像である。図19に示すように、引張試験結果の画像34は、ひずみの量に応じて、異なる表示色によって表示される。なお、図19に示す例は、引張試験結果の画像34におけるひずみ量の違いを、異なるハッチングを付すことにより図示している。たとえば、図19に示す凡例82のように、ひずみの量が大きくなるにつれて、濃いハッチングを付している。図19に示す引張試験結果の画像34では、Y方向における両端部において、ひずみの量が大きくなっていることがわかる。
また、図19に示す例では、画像表示部3は、位相コントラスト画像31aとして暗視野像を表示している。図19に示す例では、Y方向に沿う方向に配置されたシート91の量に応じて、異なる表示色で表示する。なお、図19に示す例は、暗視野像におけるY方向に沿う方向に配置されるシート91の量の違いを、異なるハッチングを付すことにより図示している。たとえば、図19に示す凡例83のように、Y方向に沿う方向に配置されるシート91の量が少なくなるにつれて、濃いハッチングを付している。シート91は、炭素繊維が多数集まって束上になった繊維束であるため、引っ張る方向(Y方向)に沿う方向のシート91が多いほど、Y方向に対する機械的強度が高い。図19に示す例では、Y方向側の両端部は、中央部分と比較して、Y方向に沿う方向に配置されるシート91の量が少ないことがわかる。そのため、Y方向側の両端部においては、Y方向に対する機械的強度が低いことが予想される。
また、図19に示す例では、画像表示部3は、エッジ解析画像30として、エッジ密度画像30bを表示している。図19に示す例では、エッジ91aの密度に応じて、異なる表示色で表示する。なお、図19に示す例は、エッジ密度画像30bにおけるエッジ密度の違いを、異なるハッチングを付すことにより図示している。たとえば、図19に示す凡例84のように、エッジ91aの密度が大きくなるにつれて、濃いハッチングを付している。シート91のエッジ91aには、母材である樹脂が偏析するため、シート91のエッジ91aの密度が高い部分は、破壊の起点となると予想される。図19に示すエッジ密度画像30bでは、Y方向における両端部分において、エッジ91aの密度が高い部分がある。そのため、図19に示すエッジ密度画像30bでは、Y方向における両端部分が、破壊の起点となることが予想される。
第4変形例では、上記のように構成することにより、エッジ解析画像30と被写体解析画像31と引張試験結果の画像34とを同時に確認することが可能となるので、エッジ解析画像30および被写体解析画像31と、実際の強度試験の結果とを確認することができる。その結果、強度試験の結果と、エッジ91aの分布およびシート91の分布とを比較することにより、被写体90の品質の予測精度を向上させることができる。
(その他の変形例)
また、上記実施形態では、X線位相撮像システムが、エッジ位置画像と位相コントラスト画像とシート配置解析画像とを同時に表示する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、X線位相撮像システムは、エッジ位置画像と、位相コントラスト画像とを表示するように構成されていてもよい。また、X線位相撮像システムは、エッジ位置画像とシート配置解析画像とを表示するように構成されていてもよい。
また、上記実施形態では、X線位相撮像システムが、格子回転機構を備える構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、X線位相撮像システムが、エッジ解析画像と位相コントラスト画像とを表示する場合には、シートの配置情報を取得しなくてもよいため、X線位相撮像システムは、格子回転機構を備えていなくてもよい。
また、上記実施形態では、X線位相撮像システムが、エッジ解析画像とシート配置解析画像とを並べて表示する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、エッジ解析画像とシート配置解析画像とを重ねて表示してもよい。
また、上記実施形態では、X線位相撮像システムが、エッジ解析画像とシート配置解析画像とをスケールを合わせた状態で表示する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、エッジ解析画像とシート配置解析画像とを、スケールを合わせていない状態で表示してもよい。しかしながら、エッジ解析画像のスケールとシート配置解析画像のスケールとが合っていない場合、各画像の大きさが異なるため、各画像を比較しにくくなる可能性がある。したがって、エッジ解析画像とシート配置解析画像とは、スケールを合わせた状態で表示することが好ましい。また、エッジ解析画像とシート配置解析画像と位相コントラスト画像とを並べて表示する場合にも、各画像のスケールを合わせた状態で表示することが好ましい。
また、上記実施形態では、画像処理部が、エッジ位置画像を生成する際に、スライス画像を生成する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、画像処理部は、スライス画像の画像データを取得するとともに、取得したスライス画像のデータに基づいて、エッジ位置画像を生成するように構成されていてもよい。すなわち、画像処理部は、必ずしもスライス画像を生成しなくてもよい。
また、上記実施形態では、回転機構が被写体を回転させることにより、被写体と撮影系とを相対回転させる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、回転機構は、撮影系を回転させることにより、被写体と撮影系とを相対回転させるように構成されていてもよい。
また、上記実施形態では、X線位相撮像システムが、回転機構を備える構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、X線位相撮像装置が、3次元のボリュームデータと同様のデータを取得することが可能であれば、X線位相撮像システムは、回転機構を備えていなくてもよい。たとえば、X線位相撮像装置が、X線源を移動させながら撮影する、いわゆるトモシンセシス撮影を行うことが可能なように構成すれば、3次元のボリュームデータと同様のデータを取得することができるため、X線位相撮像システムは、回転機構を備えていなくてもよい。
また、上記実施形態では、被写体が、ランダムに配置された複数のシートが積層された構造を有している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、被写体が、必ずしもランダムに配置された複数のシートが積層された構造を有していなくてもよい。なお、本発明は、内部にエッジ構造を有する被写体に対して好適である。
また、上記実施形態では、暗視野像のボリュームデータに基づいて、エッジ情報が取得される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、吸収像のボリュームデータ、または、位相微分像のボリュームデータ、または、位相像のボリュームデータに基づいて、エッジ情報が取得されてもよい。
また、上記実施形態では、制御部がCPUを含む構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部は、GPU、または、画像処理用に構成されたFPGAなどのプロセッサを含んでいてもよい。
また、上記実施形態では、第3格子が設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第3格子が必ずしも設けられていなくてもよい。
また、上記実施形態では、第1格子が位相格子である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1格子が吸収格子であってもよい。
また、上記実施形態では、第1格子が格子面内においてステップ移動される例を示したが、本発明はこれに限られない。複数の格子のうち、いずれの格子がステップ移動されてもよい。
また、上記実施形態では、被写体として、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が撮像される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、被写体として、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)などが撮像されてもよい。
また、上記実施形態では、X線位相撮像システムの撮像装置画像処理部において、位相コントラスト画像が生成される構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、X線位相撮像装置から、検出器により検出されたX線の強度分布(画像信号)をX線画像処理装置に出力し、X線画像処理装置の画像処理部において位相コントラスト画像を生成してもよい。
また、上記実施形態では、X線位相撮像システムが、X線画像処理装置を備える構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、X線位相撮像システムは、X線画像処理装置を備えていなくてもよい。X線位相撮像システムがX線画像処理装置を備えていない場合、X線位相撮影装置が備える撮像装置画像処理部において、エッジ解析画像およびシート配置解析画像を生成し、画像表示部に表示させればよい。
また、上記第1変形例では、X線位相撮像システムが、エッジ解析画像としてエッジ位置画像の代わりに、エッジ密度画像を表示する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、X線位相撮像システムは、エッジ解析画像として、エッジ位置画像とエッジ密度画像とを生成し、表示するように構成されていてもよい。
[態様]
上記した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
(項目1)
X線源と、
前記X線源から照射されて、被写体を通過したX線が照射される検出器と、
前記X線源と前記検出器との間に配置され、前記X線源からX線が照射される第1格子と、前記第1格子を通過したX線が照射される第2格子と、を含む複数の格子と、
前記検出器により検出されたX線の強度分布に基づいて生成された位相コントラスト画像に基づいて、複数のシートが積層された構造を有する前記被写体の前記複数のシートのエッジ情報を取得するエッジ情報取得部と、
前記エッジ情報取得部によって取得された前記エッジ情報に基づいて、前記複数のシートのエッジの分布を視認可能なエッジ解析画像を生成する画像処理部と、
前記画像処理部によって生成された前記エッジ解析画像と、前記被写体を解析した被写体解析画像とを同時に表示する画像表示部とを備える、X線位相撮像システム。
(項目2)
前記被写体解析画像は、前記位相コントラスト画像と、前記複数のシートの配置情報を視認可能なシート配置解析画像とのうちの少なくともいずれかを含み、
前記画像表示部は、前記エッジ解析画像と、前記位相コントラスト画像および前記シート配置解析画像のうちの少なくともいずれかとを、同時に表示するように構成されている、項目1に記載のX線位相撮像システム。
(項目3)
前記画像処理部は、取得された前記複数のシートのエッジ位置の情報に基づいて、前記エッジ解析画像として、前記被写体における前記複数のシートのエッジと、前記被写体における前記複数のシートのエッジ以外の部分とを識別可能に表示した画像であるエッジ位置画像を生成するように構成されており、
前記画像表示部は、前記エッジ位置画像と、前記被写体解析画像とを同時に表示するように構成されている、項目2に記載のX線位相撮像システム。
(項目4)
前記エッジ情報取得部は、前記位相コントラスト画像に基づいて、前記被写体における前記複数のシートのエッジ密度の情報をさらに取得するように構成されており、
前記画像処理部は、前記複数のシートのエッジ位置の情報と、前記エッジ密度の情報とに基づいて、前記エッジ解析画像として、前記被写体における前記複数のシートのエッジの密度の分布を視認可能に表示したエッジ密度画像を生成するように構成されており、
前記画像表示部は、前記エッジ密度画像と、前記被写体解析画像とを同時に表示するように構成されている、項目2または3に記載のX線位相撮像システム。
(項目5)
前記複数の格子を回転させる格子回転機構と、
前記格子回転機構によって前記複数の格子を回転させながら撮影することによって生成された複数の前記位相コントラスト画像に基づいて、前記配置情報を取得するシート配置情報取得部と、をさらに備え、
前記配置情報は、X線の照射方向における前記複数のシートの積層量、前記被写体における前記複数のシートの配置の方向、および、前記被写体における前記複数のシートの配置方向の偏り度合いのうち、少なくともいずれかを含み、
前記画像処理部は、前記シート配置情報取得部によって取得された前記配置情報に基づいて、前記シート配置解析画像を生成するように構成されており、
前記画像表示部は、前記エッジ解析画像と、前記被写体解析画像としての前記シート配置解析画像と、を同時に表示するように構成されている、項目3または4に記載のX線位相撮像システム。
(項目6)
前記画像表示部は、前記エッジ解析画像と、前記シート配置解析画像とを、並べて表示するか、または、重ねて表示するように構成されている、項目5に記載のX線位相撮像システム。
(項目7)
前記画像表示部は、前記エッジ解析画像と、前記シート配置解析画像とを並べて表示する際に、各画像のスケールを合わせた状態で、並べて表示するように構成されている、項目6に記載のX線位相撮像システム。
(項目8)
前記エッジ解析画像と、前記シート配置解析画像とを合成した合成画像を生成する画像合成部をさらに備え、
前記画像表示部は、前記合成画像を表示するように構成されている、項目5に記載のX線位相撮像システム。
(項目9)
前記画像表示部は、前記合成画像と、前記位相コントラスト画像とを並べて表示するか、または、重ねて表示するように構成されている、項目8に記載のX線位相撮像システム。
(項目10)
前記エッジ解析画像と、少なくとも前記シート配置解析画像とを関連付けて記憶する画像記憶部をさらに備える、項目2~9のいずれか1項に記載のX線位相撮像システム。
(項目11)
前記X線源と、前記複数の格子と、前記検出器とによって構成される撮影系と、被写体とを相対回転させる回転機構をさらに備え、
前記画像処理部は、前記撮影系と被写体とを相対回転させながら撮影された複数の前記位相コントラスト画像に基づいて、3次元のボリュームデータを取得するように構成されており、
前記エッジ情報取得部は、前記画像処理部によって取得された前記ボリュームデータに基づいて複数のスライス画像を取得するとともに、取得した前記複数のスライス画像に基づいて、前記エッジ情報として、少なくとも、前記複数のシートのエッジ位置の情報を取得するように構成されている、項目2~10のいずれか1項に記載のX線位相撮像システム。
(項目12)
操作者の操作入力を受け付ける入力受付部をさらに備え、
前記画像処理部は、前記複数のシートのエッジの分布を視認可能な複数の断層画像を生成するように構成されており、
前記画像表示部は、前記複数の断層画像のうち、操作者によって選択された断層画像を表示するよう構成されている、項目11に記載のX線位相撮像システム。
(項目13)
前記複数の格子は、前記X線源と前記第1格子との間に配置された第3格子をさらに含む、項目1~12のいずれか1項に記載のX線位相撮像システム。
(項目14)
被写体を通過したX線の強度分布に基づいて生成された位相コントラスト画像を取得する画像取得部と、
取得された前記位相コントラスト画像に基づいて、複数のシートが積層された構造を有する前記被写体の前記複数のシートのエッジ情報を取得するエッジ情報取得部と、
前記エッジ情報取得部によって取得された前記エッジ情報に基づいて、前記複数のシートのエッジの分布を視認可能なエッジ解析画像を生成する画像処理部と、
前記画像処理部によって生成された前記エッジ解析画像と前記被写体を解析した被写体解析画像とを同時に表示させる制御を行う画像表示制御部とを備える、X線画像処理装置。
(項目15)
被写体を通過したX線の強度分布に基づいて生成された位相コントラスト画像を取得するステップと、
取得された前記位相コントラスト画像に基づいて、複数のシートが積層された構造を有する前記被写体の前記複数のシートのエッジ情報を取得するステップと、
取得された前記エッジ情報に基づいて、前記複数のシートのエッジの分布を視認可能なエッジ解析画像を生成するステップと、
生成された前記エッジ解析画像と前記被写体を解析した被写体解析画像とを同時に表示するステップと、を備える、X線画像処理方法。