JP7274016B1 - 歩行解析による疾患タイプ予測モデルを用いた歩行者転倒予防システム - Google Patents

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Abstract

【課題】転倒リスクや疾患別に高齢者の歩行を補助する。【解決手段】道路上の転倒危険箇所を抽出し、携帯端末から取得する歩行データや問診票から算出した転倒リスク別に道路上の転倒危険箇所を警告するシステムからなる。また、転倒リスクを算出するに用いた歩行データや問診回答から疾患を予測することも可能である。歩行データは携帯端末等のウェアラブルデバイスから取得するため、端末を携帯しているだけで歩行特性や転倒リスクが取得される。これによって、道路上に多数存在する転倒危険箇所を転倒リスクと合わせて階層化することで、リスク別に本当に危険な転倒危険箇所だけを通知することできる。また、散歩中の高齢者の歩行データから歩行に影響が現れる疾患の予測ができれば単に転倒防止だけではなく疾患の早期発見に繋がることが期待できる。【選択図】図1

Description

本発明は、道路情報取得システム、歩行者情報取得による疾患タイプの検出・予測システム、及び双方を組み合わせた転倒予防システムに関するものである。
毎年、65歳以上の人の約28~35%が転倒しており、70歳以上の人では32~42%に増えている。実際に転倒は救急部門の全受診率の10~15%の根本原因にもなっている。この社会課題の解決が求められている。
この転倒のうち約1/4は屋外での転倒であり、屋外には多くの転倒危険箇所がある。この道路上の転倒危険箇所を抽出することで、歩きやすいまちづくりに寄与することができる。また、道路上の転倒危険箇所が明らかになれば、道路上の危険箇所で歩行者に警告する等の方法により歩行者を補助することで、転倒を予防することが可能になる。
しかし、道路上の転倒危険箇所が多い場合、警告の頻度が過剰になり適切な歩行補助ができているとはいえない。そこで、歩行者の持つ疾患タイプや転倒リスクに応じて、転倒のリスクが高い転倒危険箇所を警告することで、過剰な警告により歩行を妨げることなく、精度の高い転倒予防が可能になる。
一方、歩行データと合わせて転倒があった場所のデータを収集することで、転倒箇所の傾向やその頻度から疾患タイプや転倒リスクを評価することも可能である。
散歩やウォーキングをする高齢者の歩行データから、個人の歩行特性が明らかになれば、歩行に影響が現れる疾患の予測や転倒リスクの評価が可能になり、転倒の原因となる疾患の早期発見も実現できる。
さらに、疾患タイプや転倒リスク別に転倒予防プログラムを組むことも可能になる。
特許文献1には、自動走行ロボットの技術を用い、住居内の段差や傾斜等の歩行障害を自動検知し、居住者等に通知して住居若しくは介護施設の歩行環境を把握させる装置を開示している。非特許文献1には、転倒予測ツールを用いて転倒リスクを評価し、転倒防止の注意喚起に役立てている例が示されている。
特許文献2には、ユーザーの歩行特性を抽出した上で、当該ユーザーの体調を検出するシステムが開示されている。歩行特性の抽出にはユーザーの歩行動作を撮影した画像を用いている。体調変化の一例としてパーキンソン病等の多系統萎縮症の疑いの例も記述されている。非特許文献2にはサルコペニア診断にサルコペニアのスクリーニングで用いられるSARC-F、SARC-CalFが活用されている事例が開示されている。
先行特許文献
特許文献
特開2016-192040 特開2017-205134
東京都健康長寿医療センターでの転倒予測ツールである転倒スコアの活用事例 https://www.tmghig.jp/about/hiketsu/8-fall/ 札幌清田整形外科病院でのサルコペニア診断のSARC-F、SARC-CalF活用事例 http://www.kiyotaseikei.or.jp/osteo-sarco/sarcopenia/
特許文献1は、住居や介護施設等の屋内における居住者の危険箇所をあらかじめ調査し情報として提供することで、屋内の移動時の注意を喚起するシステムである。このシステムは屋内に限定されており、高齢者に推奨されている散歩やウォーキング等の野外での歩行には効果がない。また、非特許文献1は質問により転倒リスクを把握し注意喚起する転倒予測ツールである。屋外で常に転倒に注意して歩行することは困難である。時間の経過と共に注意がおろそかになるのは人間の常である。
本発明は屋外歩行時の歩行道中にある転倒危険箇所を、疾患タイプや転倒リスクに応じて道路上の転倒危険箇所を適切に注意喚起し、歩行を補助することで転倒を防止することができる。
特許文献2は歩行データの取得に撮影した画像を用いているため、撮影機材の設置が必要である。散歩やウォーキング等の野外歩行のデータ収集には向いていない。また、非特許文献2は質問によりサルコペニアの可能性を把握するが、自覚症状が無い場合や時間の経過と共にサルコペニアの症状が出てくる場合は把握しづらい。
本発明では歩行者が携帯する端末で歩行データを収集し歩行特性として累積しておくことで、変化も把握できる。またスクリーニング検査で用いられる問診と併用する事で疾患タイプ予測の正確性が増す。
本システムは利用者が歩行時に携帯する携帯端末10とそれとデータを交換するデータ解析装置20で構成されている。携帯端末10は、歩行データ収集のためセンサーを装備し、センサーデータから歩行特性を抽出し、利用者の転倒時に転倒危険箇所情報を収集し、必要に応じて利用者に問診し、それらの結果をデータ解析装置20に送信する機能を有している。また転倒予防のため、データ解析装置20から歩行予定場所の危険箇所データと利用者の疾患タイプ情報を入手し、利用者が危険箇所に近づいた時、総合的に判断して利用者に警告を発する機能で、転倒危険箇所に気がつかずに転倒することを防止することや、目的地までの転倒危険箇所の少ない安全な歩行経路を進める事ができる。
データ解析装置20は、利用者が携帯している携帯端末10が歩行時に収集した利用者の歩行特性や問診回答、危険箇所情報を携帯端末10から受け取り、歩行特性データから利用者の予想される疾患タイプを特定する機能と疾患タイプ予測非該当者に対しては転倒予測ツールから転倒リスクを評価する機能を有している。また、利用者の転倒予防のため、危険箇所データを、疾患タイプの分類や転倒頻度別に危険箇所のランク付けを行い利用者へ情報提供する機能を有している。
さらに、利用者の予測疾患タイプと転倒危険箇所の地形特徴を関連づける機能を有しており、携帯端末10はデータ解析装置20から当該関連データを危険データとして受信し、転倒危険警報発生の判定に反映させる機能を有している。
また、転倒箇所と転倒者の予測疾患タイプとの関連を解析し、転倒箇所と疾患タイプの関係を疾患特異的転倒危険箇所情報として歩行者に提供し、転倒危険警報発生の判定に反映させる機能を有している。
本発明は、道路上の転倒危険箇所に対して、疾患タイプや転倒リスクに応じて警告または誘導することで道路上での転倒を防ぐ。また、歩行特性データや問診回答から疾患タイプが予測できる。歩行特性データはウェアラブルデバイスを含むRWD(リアルワールドデータ)から取得するため、端末を携帯しているだけで歩行特性が取得される。
本発明の転倒予防システムの全体構成図である。 本発明の転倒予防システムの携帯端末構成図である。 本発明の転倒予防システムのデータ解析装置構成図である。
本発明の転倒予防システムの実施例を図1から図3を用いて説明する。
図1のごとく、システムは携帯端末10とデータ解析装置20とからなる。携帯端末10は利用者が歩行時に携帯し、利用者の歩行特性データを収集すると共に、転倒危険箇所近くで利用者へ転倒危険警報を発する。データ解析装置20は携帯端末10から利用者の歩行特性データや転倒箇所情報を入手し、解析し、データベース化することで、利用者の転倒しやすい疾患タイプの予測とその危険性を把握する。併せて転倒危険箇所の解析を行い、結果をデータベース化する。
携帯端末10は既存の携帯電話とそのアプリで構成されても専用の端末を回路基板とそのソフトウェアで構成しても良い。また、データ解析装置20装置はパソコン等を含む電子計算機とそのソフトウェアで構成されても専用の回路基板とそのソフトウェアで構成しても良い。両者のデータ通信は携帯電話回線等の無線でもUSB等の有線で構成されても良い。
ここで携帯するとは歩行特性データを取得するため、からだ本体と一体で動くように持ち運ぶ意味である。眼鏡型やヘッドフォン型、時計型であり、スマートフォンのような小型機器はベルトで腰に固定する、ポケットに入れているなど体と一体になって動くようにしたものである。また、利用者各人で携帯の方式は変わって良いが、データの一貫性から同一利用者の携帯方式は変わらないことが望ましい。
1.携帯端末10
図2を用いて、携帯端末10の構成およびその機能を説明する。携帯端末10は通信部11、センサー部12、歩行特性抽出部13、問診回答入力部14、転倒箇所情報入力部15及び転倒危険判断部16からなっている。
通信部11はデータ解析装置20との間でデータの交換をする。利用者は散歩やウォーキングなどの歩行へ出発する前にデータ解析装置20に要求して、危険データを受け取る。危険データとは歩行予定地域の地図情報とそれに関連づけた危険箇所座標とその地点に関連付けられた疾患タイプ名である疾患特異的転倒危険箇所情報や地形的特徴と周辺画像であり、当該利用者の予測された疾患タイプ名やそれに関連づけられた地形特徴や疾患タイプ予測非該当者の転倒リスクである。その際、併せて問診表が送付された場合、問診回答入力部14へ問診表を送付する。
散歩やウォーキング等の歩行終了時に保存してある歩行特性や転倒箇所情報入力部で入力されたデータや問診表の回答データを制御・通信部21へ送信する。
センサー部12は端末、引いては端末利用者に関する一次データを収集し、要求に応じて画像を取得する。例えば3次元加速度センサー、3次元ジャイロセンサー、GSP等の位置センサー、時計、カメラ、心拍センサー、などである。歩行時はこれらの機能を働かせる。
歩行特性抽出部13はセンサー部12の入手した一次データから端末利用者の歩行特性を抽出する。例えば次のようなものである。抽出した歩行特性は端末に保存し、歩行終了時にデータ解析装置20へ送信する。
(1)移動距離
位置センサーからの位置を地図上にプロットし、プロット間距離の積算で移動距離が推定できる。位置が一定時間変化しないような場合は排除する。
(2)歩行速度
一定距離(1km等)の歩行に要した時間から歩行速度が推定できる。静止していると考えられる加速度センサーの数値が0に近い等の異常値は排除する。
(3)RMS
歩行速度算出に利用した距離内での3次元加速度計の各軸の振幅の合計を歩行速度の二乗値で除す。
(4)歩数
3次元加速度センサーの周波数解析から歩行周期が推定でき、左右の足の運びと考え歩数が推定できる。
(5)歩幅
一定距離(1km等)の歩行に要した歩数から歩幅が推定できる。
(6)体軸の傾き
3次元ジャイロの周波数解析と3次元加速度センサーで得た進行方向情報から体軸の左右の傾きが推定できる。
(7)転倒
3次元加速度センサーと3次元ジャイロセンサーの急激な変動で転倒や衝突の可能性が検出できる。鉛直方向の加速度とジャイロの傾きから転倒の可能性を検出できる。加速度が静止し、ジャイロが90度近くなれば転倒と判断する。それ以外を転倒しそうになったと判断する。ただし、気圧センサーや心拍センサー等(Apple Watch等のwatch型のwearableデバイスの推定)の他のセンサーとの組み合わせや機械学習等による転倒の精度を高めることも含む。例えば、(10)にあるように、転倒と判断が難しい場合に、心拍数や血圧の変化が見られた場合を転倒とすることで精度を高めることができる。また転倒時の3次元加速度センサーと3次元ジャイロセンサーの変動は利用者によって異なる場合がある。そのため、個別の転倒検知の制度を高めるために機械学習も有用である。以降両者を含めて転倒と表記する。3次元加速度センサーの感受方向と3次元ジャイロセンサーの検出方向とから転倒方向(仰臥、伏臥、左右側臥)も判別可能である。転倒と判断した場合、問診回答入力部14と転倒危険判断部16へ通知し利用者を停止させ、転倒箇所情報の入力を促す。
(8)歩行バランス
ジャイロスコープと3次元加速度センサーの周波数解析から歩行周期が推定でき、左右の足の運びの違いから左右差を推定する。
(9)運動習慣
運動時の単位時間あたり合成加速度の量(大きさに応じて運動強度を積算量したもの)をその継続時間で算出する。携帯端末内のアプリケーションとの連携や利用者の入力によって取得することもできる。
(10)心拍数と心拍変動
脈拍の動きを感知することから、心拍数を検知し、その変動から心拍変動を得る。
(11)自律神の変化
心拍変動をもとに、心拍数が上昇した時に交感神経が優位になったと推測する。
(12)下腿の筋力
座位から立位に変わるときのZ方向の加速度センサーによる速度の単位時間あたりの変化量からたちあがりの速度を推定する。この立ち上がりの速度から、下腿の筋力量を推定する。特に立ち上がり時に3秒以上有する場合は、転倒リスクが高いと考えられる。
転問診回答入力部14は、データ解析装置20から問診表を送付されたとの情報を通信部11から得た場合、送信された問診表に従い利用者へ回答を促す。問診表結果は保存しておき、携帯端末10が制御・通信部21部に接続した際に通信部11から送付される。
転倒箇所情報入力部15は、歩行特性抽出部13から転倒判断の情報を得た場合は、その地点座標を保存し、利用者に転倒したと思われる地点周辺の画像撮影とその地点の地形的特徴の入力を促す。地形的特徴とは段差、突起物、穴、坂、階段、衝突した設置物、砂利道、悪路、縁石等である。入力指示に従いそれぞれ入力する。利用者が救急搬送等により転倒データを入力できない事態になった場合は、歩行同伴者や救助者、近隣住民などその場に居合わせた人が代わって転倒データを作成し送信してもよい。また、事後に転倒が判明した場合はデータベース管理者が転倒データを作成し送信してもよい。後日入力する場合や転倒者以外の者が自分の携帯端末10で入力する場合は、当該転倒箇所情報入力部15にアクセスして必要データを入力する。
転倒危険判断部16は、入手した危険データに基づき利用者が転倒危険箇所に近づいた時に警報を発する。危険データは散歩やウォーキングなどの歩行へ出発する前に制御・通信部21に要求して受け取る。
転倒危険判断部16は、携帯端末の位置センサー情報をチェックし、入手した転倒危険箇所位置から一定距離に近づいたとき、次のいずれかに該当した時に警報を出す。(1)近づいた利用者の疾患タイプがその疾患タイプの疾患特異的転倒危険箇所に該当する場合、(2)近づいた利用者の疾患タイプが近づいた転倒危険箇所の地形特徴と関連付けられている場合、(3)疾患タイプ予測非該当者であって転倒予測ツールのスコアから転倒リスクが高い利用者で、近づいた転倒危険箇所が危険度Aの場合である。警報はそのあらかじめ登録した方法に応じた内容であり、地図上に利用者地点と転倒危険箇所を表示しその間を矢印で繋ぎ表示する。更に利用者からの要求に応じて疾患特異的転倒危険箇所情報や地図、地形的特徴を表示する。地図を表示する際には迂回ルートを示す。
疾患タイプや疾患タイプ予測非該当者の転倒リスクに応じて、最適な警報の方法を利用者が事前に登録しておく。
警報の方法は次のようにする。
(1)方法1
注意喚起による警報を行う。「近くに転倒危険箇所があります。ご注意ください。」
(2)方法2
注意喚起に合わせて具体的な道路の危険箇所を伝える。「近くに転倒危険所があります。2m先の段差にご注意下さい。」
(3)方法3
上記に加えて、具体的な歩行アドバイスを行う。「近くに転倒危険箇所があります。歩道からはみ出ず1m車道側を歩いて下さい。」
(4)方法4
注意喚起の言葉を変えて危険性の高さを伝える。「危険!危険!近くに転倒危険箇所があります」
(5)方法5
別のルートを提案する。「この先、非常に危険な箇所があります。別ルートを案内します。」
(6)方法6
携帯端末に振動が起こり、音声での警告がされる。
転倒原因となる疾患の有無や転倒予測ツールのスコア結果に応じて、高い転倒リスク者や転倒が頻発している転倒危険箇所では、適切な歩行補助を行う。
誰もが使いやすい設計に工夫するため色覚能力の低下による転倒リスク者には、画面表示の色彩を利用者が変更可能とし、聴覚障害の低下による転倒リスク者には、音声ではなく振動での通知を行う等の転倒リスクごとに通知方法を利用者自身で変更することを可能とする。
また、歩行特性抽出部13から転倒判断の情報を得た場合は、利用者の安全を確認したのちに、転倒箇所情報入力部15からの転倒箇所情報の入力を求めることで、転倒危険箇所の登録を促す。
しかし転倒による緊急度の高い場合は、救急車への連絡することや同じ歩行ナビサービスをもった利用者が位置情報から近くにいれば助けを求めることも可能にする。
2.データ解析装置20の構成
図3を用いて、データ解析装置20の構成およびその機能を説明する。
データ解析装置20は制御・通信部21とデータベース入出力部22と疾患タイプ予測部23と危険箇所解析部24からなっている。またデータベースとして利用者データベース31と危険箇所データベース32を管理する。
制御・通信部21は、携帯端末からの要求に応じてデータの送受信を行う。受信データの内、転倒情報を転倒予防部へ、利用者の歩行特性データや問診回答データを疾患タイプ予測部へ振り分ける。データ送信部は携帯端末からの要求に応じ、利用者の転倒危険に関係するデータを利用者データベース31から、危険箇所に関するデータを危険箇所データベース32から受け取り、危険データとして携帯端末へ送信する。また、問診表の回答が必要と判断された利用者の場合は問診表を送信する。
データベース入出力部22は利用者データベース31と危険箇所データベース32のデータ構築、取り出しを行う。利用者データベース31は携帯端末から受信した歩行特性データや問診回答データを利用者毎に時系列で格納している。また、疾患タイプ予測部23が予測した疾患名を利用者毎に時系列で格納する。予測される疾患タイプ毎に関連づけられた転倒しやすい地形特徴も疾患名と併せて格納する。
危険箇所データベース32は携帯端末から受信した転倒データを格納するものである。転倒データは利用者が転倒したと携帯端末が判定した時の時刻、位置、その場所の周辺画像、転倒箇所の地形的特徴や転倒した利用者に関する情報を含む。
当該データベースでは、位置は地理情報システムを利用して地図情報と利用者の疾患タイプを連携させる。携帯端末の位置検出機能の精度の範囲は同一地点とし、その位置の情報として累積する。危険箇所解析部24が付与した疾患特異的転倒危険箇所情報も併せて格納する。
危険箇所解析部24は転倒データを受信した時に、転倒者の疾患タイプと転倒箇所をもとに、その箇所を疾患特異的転倒危険箇所として登録する。これは携帯端末での警報時に利用者の疾患タイプと危険箇所との関連に応じて警報されることになる。
また、過去一ヶ月などの所定期間内の転倒者の疾患タイプと転倒地点の地形特徴から疾患タイプ毎に転倒しやすい地形特徴との関連を把握する。
疾患タイプの内的要因と地形特徴の外的要因との関連した転倒傾向は、疾患タイプと地理的特徴の関連性は例えば機械学習や統計解析を用いて常に精度を高めていく。この機械学習には、まず歩行者のデータを疾患タイプと転倒予測ツールのスコアをもとに転倒箇所情報のクラスタリングを行う。具体的には、認知症などの疾患タイプのグループや非特許文献1にあるような転倒予測ツールのスコアに応じてクラス分類する。具体的には、認知症の方の転倒箇所データ、転倒予測ツールのスコアが15点の方の人が転倒箇所情報などである。この転倒者の疾患タイプや転倒予測ツールのスコアと紐付いた転倒箇所情報の画像をニューラルネットワーク技術によって画像解析する。例えば、転倒箇所の画像データから、段差、突起物、穴、坂、階段、衝突した設置物、砂利道、悪路、縁石など地形的特徴から大きさや角度、材質などの量を、畳み込みニューラルネットワークを用いて算出する。この算出された画像データは疾患タイプとの紐付けがされていることによって疾患タイプと転倒危険箇所との整合性が高まる。例えば同じ段差でもサルコペニアの人と認知症の人とで転倒リスクの高い段差に違いがあることを明らかにする。また転倒者の情報と紐付いた転倒箇所データは常に蓄積されていくことで精度を高めていく。
更に、危険箇所解析部24は転倒データを受信した時に、一ヶ月などの所定期間内での同一地点での転倒頻度を算出し、転倒頻度が多い場合は危険度A、それ以外を危険度Bなどその地点の危険度をランク分けする。これは疾患タイプ予測の非該当者であって、転倒予測ツールで予測される転倒リスクが高い場合の警報に利用される。
疾患タイプ予測部は問診回答データ取得機能と疾患タイプ予測機能を有している。
問診回答データ取得機能は一ヶ月単位などのように定期的に利用者へ問診表を送付し回答を集める方法と疾患タイプの予測がされた時に記入を求める方法をとる。定期的な問診表は非特許文献1のような転倒リスク評価シート等で転倒予測ツールとして用い、疾患タイプの予測時に集めるのは、非特許文献2のようなSARC-F、SARC-CalFの問診表や緑内障タイプ判定の問診票などである。問診回答データはその結果を携帯端末経由で入力したものである。サルコペニアのように、問診回答データを用いることが疾患タイプ予測に有効な疾患が疑われた場合はその都度利用者へ問診表を送付し回答を集める。問診票の送付は携帯端末がデータ送信部に接続された時に接続した利用者が問診票の回答を必要とされているかを判断し、必要であればデータ送信部経由で当該携帯端末へ問診票を送付する。
疾患タイプとは、転倒の原因となる疾患のことである。要因別に疾患を次に記載する。これらの疾患タイプの診断を医師から受けた場合は、利用者に選択入力を求める。
(a)循環器要因
1)不整脈2)起立性低血圧、高血圧3)心不全、虚血性心疾患4)脳循環障害5)一過性脳虚血発作6)脳血管疾患7)硬膜下血腫
(b)神経系要因(パーキンソン病、認知症など)
1)パーキンソン症候群2)脊髄後索障害3)末梢性神経障害4)てんかん発作5)小脳障害6)認知症
(c)筋・骨格系要因(骨粗鬆症、変形性関節症など)
1)骨関節炎、関節リウマチ2)骨折,脱臼3)ミオパチー
(d)視覚・認知要因(白内障、緑内障など)
1)白内障2)屈折異常3)眼鏡不適合4)緑内障
(e)加齢変化(運動速度の低下、平衡機能低下など)
1)最大筋力低下2)筋の持続力低下3)運動速度の低下4)反応時間の延長5)巧緻性低下6)姿勢反射の低下7)深部感覚低下8)平衡機能低下
(f)薬物によるもの
睡眠薬、抗うつ薬など
(g)外的要因
段差、履物など
しかしながら、利用者がもつ転倒要因となる疾患タイプ情報を利用者から得ることが難しい場合も推定される。そこで次のような予測機能を設ける。疾患タイプ予測機能は歩行特性データや非特許文献2のようなSARC-F、SARC-CalFの問診表や緑内障タイプ判定の問診票等のスクリーニング検査による問診回答データが携帯端末から送付されデータベースに格納された時に、当該利用者に関するデータベースを利用して利用者の転倒原因となる疾患を予測する。これによって、疾患タイプと転倒危険箇所を合わせて警告することが可能になる。また疾患タイプ別に、予防方法の提案を行うこともできる。
例えば次のような歩行に影響が現れる疾患である。次に転倒要因とその疾患の予測の例を示す。
(a)循環器要因(不整脈、起立性低血圧など)
・不整脈
心拍変動から推定。不整脈は経過観察とするものと治療が必要なものがあるが、心拍の異常と合わせて転倒が見られた場合は、易転倒者として判別する。
・起立性血圧
仰臥位または坐位から立位への体位変換に伴い、起立3分以内に収縮期血圧が20mmHg以上低下するか、または収縮期血圧の絶対値が90mmHg未満に低下、あるいは拡張期血圧の10mmHg以上の低下が認められた際に推定する。また運動後に転倒がみられた場合は、運動時の血圧をシステムが自動的に確認される。
・失神
心拍数と血圧の著しい変化に伴って、突然の転倒(失神)がみられた場合に確認される。
(b)神経系要因(パーキンソン病、認知症など)
・認知症
RMSが過去の最低値から一定値以上増大した場合。認知症では、視空間認知に機能障害がみられ、よくしっている場所で道に迷う。このことから、移動歴の歩行データから、定期的に歩いている道をよく知っている道と判断し、その道であって歩行速度の低下や目的地の周辺を数m以下の間隔で行き来している場合は道に迷っていると推測し、認知症のリスクが高いと考える。問診回答データからのMMSE(ミニメンタルスケート検査)やHDS-R(改訂版長谷川式簡易知能評価スケール)のスクリーニング結果を考慮する。
・パーキンソン病
歩行開始時に、小さな段差でも頻回のつまづくが検出され、座位時転倒(腰かけていても状態が傾いて、そのまま転倒。)がみられる。特許文献2の段落番号0117に記載の判定基準、身体の傾きの経時変化量が閾値を超えた場合に当該タイプと予測する事を使用することができる。
・進行性核上性麻痺(PSP)
座位から立位に変化した直後に後方への転倒(ロケットサイン)がみられる。座位から立位へのZ方向の加速度センサーの変化を検知後、後方への転倒がみられる。後方への転倒は、転倒後の立ち上がり時に身体を反転させることができる3次元加速度センサーの回転から判断する。
(c)筋・骨格系要因(骨粗鬆症、変形性関節症など)
・サルコペニア
歩行速度が1.0m/秒以下である。歩行速度は、加速・減速を除く、通常歩行速度を4m以上の歩行により評価する。ある特定の6m以上の歩行から、1mから5mまでの4m歩行に要する時間を測定し、その平均値を採用する。問診回答データからのSARC-FやSARC-CalFのスクリーニング結果を考慮する。
(d)視覚・認知要因(白内障、緑内障など)
・緑内障
問診として(高血圧・糖尿秒・片頭痛等の危険因子の有無、既往歴、家族歴)と、自覚症状(眼痛、頭痛、霧視、視野欠損、充血)、緑内障のセルフチェックを確認する。地理情報システムから得た段差での転倒の頻回発生、転倒不安による歩行速度の低下が計測される。
(e)加齢変化(運動速度の低下、平衡機能低下など)
・筋力量低下
座位から立位に変わる立ち上がりの加速度の単位時間あたりの変化量と身長から予測した下肢の筋力量が、経時的に低下傾向となっている。
(f)薬物によるもの(睡眠薬、抗うつ薬など)
・転倒の危険性が高まる薬剤を服用
脱力、筋緊張の低下を及ぼす薬(筋弛緩剤、抗不安薬)、ふらつきやめまいを引き起こす薬(抗不安薬、睡眠薬、NSAID、抗てんかん剤、麻薬、非麻酔性鎮痛剤、抗がん剤)、眠気や集中力・注意力の低下を与える薬(睡眠薬、抗ヒスタミン剤、血糖降下剤)等の薬剤を服用している。
上記疾患タイプ予測の非該当者である場合は、非特許文献1にある転倒スコア等の転倒予測ツールを用いて転倒リスクの高さを評価する。
また、予測される疾患タイプ毎に転倒しやすい地形特徴と関連づけておく。例えば緑内障や白内障等の視覚に影響を与える疾患であれば、視野狭窄により小さな段差に気がつかずに転倒する場合が多く、パーキンソン病等の振戦や失神を伴う神経性の疾患では、突然転倒することが多く、筋力低下が見られる場合は階段での足が上がらず転倒する場合が多いと考えられる。
この予測される疾患タイプ毎の転倒しやすい地形特徴との関連づけは、危険箇所解析部24で両者の関連を事前に解析して把握した情報を用いる。
また、高齢者の転倒は多数の内的要因と外的要因とが複雑に関連することで発生するため、単純に疾患タイプと転倒しやすい地形とを関連づけることが難しい場合も考えられる。その時に有用なのが、疾患タイプ予測の非該当者に向けた転倒予測ツールのスコアである。非特許文献1にあるように、転倒スコアを評価することで内的及び外的要因を総合的に評価することができ、転倒スコアをもとにした転倒リスク別に転倒危険箇所での警告を発することも可能である。
3.データベースの構成
図3の利用者データベース31と危険箇所データベース32のデータ構成を説明する。利用者データベース31は利用者毎に作成されるもので、以下のデータからなっている。
1. (1) 個人属性
固有番号、生年月日または年齢、性別、身長、体重
2. (2) 歩行周辺地図
利用者が登録した歩行予定の複数地区のGIS(地理情報システム)適応地図
2. (3) 歩行特性
携帯端末10で収集したデータで時刻と共に時系列で保存
2. (4) 問診データ
問診要求の有無、要求問診票、過去の問診回答の時系列データ
2. (5) 利用者転倒危険データ
疾患タイプ予測部23で予測された疾患タイプや予測日時、また、前記疾患タイプと関連付けられた地形特徴や疾患タイプ予測非該当者の転倒リスクやリスク付けの日時を時系列で保存。体重や身長、地図など経時変化する情報は適宜更新しておく。
危険箇所データベース32は利用者などから報告のあった転倒箇所毎に作成されるものと転倒検知を行った位置情報から取得するもので、以下のデータからなっている。
(1)地点情報
地点固有番号、GIS(地理情報システム)対応の代表位置、センサーの誤差範囲
(2)地形情報
a.
転倒危険箇所の特徴データで、過去や随時転倒が報告された転倒箇所の道路画像や映像データを解析し転倒発生の可能性の高い道路特徴を抽出することによって得る。画像解析やAI等の技術を用いてこれらの情報を取得する。
b.
Googleストリートビューや国土地理院の基盤地図情報等の道路情報のオープンデータから得た歩道情報
c.
画像取得デバイスから撮影された道路情報。この画像取得デバイスとは、スマートフォン、MMS(Mobile Mapping System)、360度カメラ、自転車、人工衛星、防犯カメラ、自動走行ロボット、ドローン等の小型ヘリコプター、ドライブレコーダー、ウォーキングメジャーを含む。
(3)転倒情報
転倒日時、報告者、転倒者、転倒者の疾患タイプと転倒予測ツールのスコア、地形特徴、周辺画像を時系列で保存
(4)危険箇所解析部24が付与した疾患特異的転倒危険箇所情報であるその箇所に関連する疾患タイプとその付与日時
(5)危険箇所解析部24が付与した危険度ランクとその付与日時
いずれのデータベースにおいても、時系列で保存してあるデータを要求に応じ取り出す場合は、常に最新のデータを提供する。
10 携帯端末
11 通信部
12 センサー部
13 歩行特性抽出部
14 問診回答入力部
15 転倒箇所情報入力部
16 転倒危険判断部
20 データ解析装置
21 制御・通信部
22 データベース入出力部
23 疾患タイプ予測部
24 危険箇所解析部
<データベース>
31 利用者データベース
32 危険箇所データベース

Claims (12)

  1. センサー部と歩行特性抽出部と問診回答入力部と転倒箇所情報入力部と疾患タイプ予測部と危険箇所解析部と転倒危険判断部からなるシステムであって、
    前記センサー部は、利用者の歩行時の歩行に関するデータを収集する機能を有し、
    前記歩行特性抽出部は前記センサー部のデータから利用者の歩行特性を抽出する機能を有し、
    前記問診回答入力部は、問診への回答が必要な利用者へ回答入力を促し回答を得る機能を有し、
    転倒箇所情報入力部は、利用者が転倒したとの判断情報を前記歩行特性抽出部から得て、転倒した地点に関する転倒箇所情報入力を利用者へ促し情報を得る機能を有し、
    前記疾患タイプ予測部は、前記問診回答入力部からの入力値と前記歩行特性とそれらの過去のデータを用いて、利用者の疾患タイプを予測する機能を有し、
    前記危険箇所解析部は、前記転倒箇所情報入力部からの情報と同一地点の過去の転倒箇所情報から前記転倒箇所の危険度をランク分けする機能を有し、
    前記転倒危険判断部は、利用者の歩行位置を前記センサー部から入手し、利用者が地図上に位置づけされた転倒危険箇所へ近づいた時、利用者へ警報を発するか判断し事前に選択された内容の警報を発する機能を有する
    歩行者転倒予防システム
  2. 前記問診回答入力部は、前記疾患タイプ予測部で疾患タイプ予測に問診が必要と判断された利用者に疾患タイプ固有の問診表への入力を促す機能と、利用者の転倒リスク評価のための問診表へ全利用者に定期的に入力を促す機能を有する
    請求項1に記載の歩行者転倒予防システム
  3. 前記転倒箇所情報入力部は、転倒と判断された地点の地形特徴と周辺画像とを含む前記転倒箇所情報を転倒データとして入力させる機能を有する
    請求項1又は2に記載の歩行者転倒予防システム
  4. 前記疾患タイプ予測部は、前記歩行特性と前記問診への回答とそれらの過去のデータを用いて利用者の疾患タイプを予測する機能を有する
    請求項1から3のいずれかに記載の歩行者転倒予防システム
  5. 前記疾患タイプ予測部は、予測された疾患タイプと前記地形特徴とを関連つける機能を有する
    請求項3に記載の歩行者転倒予防システム
  6. 前記危険箇所解析部は、過去からの転倒者の疾患タイプと前記地形特徴とを解析し前記疾患タイプと前記地形特徴の関連性を抽出する機能を有する
    請求項5に記載の歩行者転倒予防システム
  7. 前記危険箇所解析部は、蓄積された転倒者の前記疾患タイプや転倒予測ツールのスコアやその転倒に紐付いた前記転倒箇所の前記転倒箇所情報を統計解析や機械学習の手法を用いて解析し、前記疾患タイプと前記地形特徴の関連性の精度を高める機能を有する
    請求項6に記載の歩行者転倒予防システム
  8. 前記危険箇所解析部は、前記転倒データを受信した時に、前記転倒者の前記疾患タイプと前記転倒箇所をもとに、その箇所をその疾患タイプの疾患特異的転倒危険箇所として登録する機能を有する
    請求項6又は7のいずれかに記載の歩行者転倒予防システム
  9. 前記転倒危険判断部は、前記転倒危険箇所が前記利用者の疾患タイプの前記疾患特異的転倒危険箇所に該当する場合、前記利用者の疾患タイプが前記転倒危険箇所の前記地形特徴と関連付けられている場合、疾患タイプ予測非該当者で且つ転倒リスクが高い利用者で近づいた前記転倒危険箇所が高危険ランクの場合のいずれかの場合に警報を発する機能を有する
    請求項8に記載の歩行者転倒予防システム
  10. 利用者データベースと危険箇所データベースを有し、
    前記利用者データベースは、個人属性、歩行周辺地図、歩行特性、問診データ、利用者転倒危険データを利用者毎に保管し、
    前記危険箇所データベースは、地点情報、地形情報、転倒情報、前記危険箇所解析部が付与した疾患特異的転倒危険箇所情報であるその箇所に関連する疾患タイプ、前記危険箇所解析部が付与した危険度ランクを転倒箇所毎に保管し
    前記危険箇所解析部や前記転倒危険判断部にデータを提供する機能を有する
    請求項1に記載の歩行者転倒予防システム
  11. 相互にデータ交換をする携帯端末とデータ解析装置からなり、
    前記携帯端末は、前記センサー部と前記歩行特性抽出部と前記問診回答入力部と前記転倒箇所情報入力部と前記転倒危険判断部を含み、
    前記データ解析装置は、前記疾患タイプ予測部と前記危険箇所解析部を含む
    請求項1に記載の歩行者転倒予防システム
  12. 歩行時データ収集部とデータ解析部と転倒警報部からなり、
    前記歩行時データ収集部は、利用者の歩行時の歩行に関するデータを収集し、利用者が転倒した時の転倒箇所情報から前記転倒箇所を転倒危険箇所として登録する機能を有し、
    前記データ解析部は前記歩行時データ収集部が収集した前記歩行に関するデータから前記利用者の疾患タイプを予測し、前記転倒箇所情報と関連付けて解析し、疾患タイプと転倒箇所との関係を抽出する機能を有し、
    転倒警報部は、歩行者が前記転危険箇所に近づいた時、前記利用者の前記疾患タイプ予測と前記転倒危険箇所との関係を用いて、前記利用者への警報を出すか判断する機能を有する
    歩行者転倒予防システム
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