JP7270478B2 - 排水処理設備及び排水処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は排水処理設備及び排水処理方法に関し、特に船舶の排ガススクラバから排出されるスクラバ排水の処理設備に関する。
船舶からの硫黄酸化物(SOx)の排出規制に対する対応策の一つとして、ディーゼルエンジンの排ガスからSOxを除去する排ガススクラバを船舶に設置することが検討されている。排ガススクラバにはいくつかの種類があるが、その一つとして水洗浄式が知られている。水洗浄式の排ガススクラバでは、ディーゼルエンジンの排ガスに洗浄水を噴霧し、噴霧された洗浄水を排ガスと気液接触させ、SOxを洗浄水に吸着させて除去する。このタイプの排ガススクラバではSOxの他、排ガスに含まれている煤塵などの微細粒状体、油分、芳香族炭化水素等を含むスクラバ排水が発生する。
スクラバ排水は船外に放出する前にろ過膜装置でろ過されることがある。スクラバ排水は含油排水であるため、ろ過膜装置の膜面に油分と懸濁物質(SS)から構成される含油固形物が付着する。含油固形物は徐々に圧密され膜閉塞を進行させるため、ろ過膜は定期的に逆洗される(特許文献1)。これによって、膜面への含油固形物の付着を抑制することができる。
特開2007-319791号公報
船舶の排ガススクラバでは水資源の有効活用のため、洗浄水として海水が、逆洗水として海水を含むスクラバ排水が用いられることがある。ろ過膜装置は脱塩機能を有していないため、逆洗水は高濃度の塩分を含む可能性がある。このため、逆洗水が低温環境におかれた際に、逆洗水の温度が低下し、逆洗水に含まれる塩分が析出することがある。析出した塩分は、例えばろ過膜装置に逆洗水を供給する逆洗ラインを塞ぎ、逆洗性能に悪影響を与える可能性がある。
本発明は、塩分を含むろ過水をろ過膜装置の逆洗用の原水として利用し、逆洗水からの塩分の析出を抑制することのできる排水処理設備を提供することを目的とする。
本発明の排水処理設備は、塩を含む排水をろ過し、塩を含むろ過水を排出するろ過膜装置と、ろ過水を逆洗水としてろ過膜装置を逆洗する逆洗手段と、逆洗水に含まれる塩の濃度を溶解度以下に抑えることによって逆洗水からの塩の析出を防止する析出防止手段と、を有する。一態様では、析出防止手段は、ろ過水をろ過水よりも塩分濃度が低い水で希釈する希釈手段を有する。他の態様では、排水処理設備は、ろ過膜装置から排出される濃縮排水を貯蔵する濃縮排水タンクと、ろ過膜装置を濃縮排水タンクに接続する濃縮排水ラインと、濃縮排水タンクと濃縮排水ラインの少なくともいずれかに設けられ、濃縮排水からの塩の析出を防止する他の析出防止手段と、を有する。さらに他の態様では、塩を含む排水は、ディーゼル機関から排出される排ガスを海水の噴霧によって処理するスクラバ装置から排出される排水であり、析出防止手段は、ディーゼル機関で発生する熱を加熱源として利用する。
本発明によれば、逆洗水に含まれる塩の濃度を溶解度以下に抑えることができるため、逆洗水からの塩分の析出を抑制することのできる排水処理設備を提供することができる。
本発明の第1の実施形態に係る原動機システムの概略構成図である。 本発明の第2の実施形態に係る原動機システムの概略構成図である。 本発明の第3の実施形態に係る原動機システムの概略構成図である。 ろ過水からの塩分析出抑制効果を示すグラフである。
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明のいくつかの実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る船舶の原動機システムの概略構成図である。原動機システム1はディーゼル機関2と、ディーゼル機関2から排出される排ガスを処理するスクラバ装置3と、を有している。スクラバ装置3は、内部にスプレイ管5を備えたスクラバ容器4を有している。スクラバ容器4には、ディーゼル機関2の排気ラインL1と海水補給ラインL2と循環ラインL3とが接続されている。海水補給ラインL2は海から海水を取水する取水部(図示せず)に接続され、海水をスクラバ容器4に供給する。循環ラインL3には循環ポンプ6が設けられている。循環ラインL3の下流側の端部はスクラバ容器4内に設けられ、スプレイ管5が接続されている。スクラバ容器4の底部には海水が貯留される。海水は循環ポンプ6で加圧され、スプレイ管5からスクラバ容器4内に噴霧される。噴霧された海水は排気ラインL1から供給された排気ガスと気液接触し、排気ガスに含まれるSOx、煤塵、油分、芳香族炭化水素等を吸着除去する。海水はスクラバ容器4の底部に戻り、循環ポンプ6によって再びスプレイ管5からスクラバ容器4内に噴霧される。
スクラバ容器4の底部にはスクラバ排水移送ラインL4が接続されている。スクラバ容器4の底部に貯留された海水はスクラバ排水として、スクラバ排水移送ラインL4を通って排水処理設備11に送られる。スクラバ排水移送ラインL4には、スクラバ排水を移送するスクラバ排水移送ポンプ12と弁13とが設けられている。弁13を開閉することでスクラバ排水を間歇的に排水処理設備11に送ることができる。弁13を開放したままにしてスクラバ排水を連続的に排水処理設備11に送るようにしてもよい。本実施形態では、スクラバ容器4で一定の濃度まで濃縮された海水が排水処理設備11に送られる(このようなシステムはクローズドループと呼ばれる)。しかし、本発明はスクラバ排水を処理しないで船外に放出する方法(このようなシステムはオープンループと呼ばれる)をクローズドループと組み合わせた方法(このようなシステムはハイブリッド型と呼ばれる)にも適用することができる。
スクラバ排水は油分、SSなどに加えて、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)などの海水由来の塩分を含んでいる。スクラバ容器4内の海水は高温の排気ガスによって加熱されるため、循環する間に水分が失われ、塩分濃度が高くなる。一例では、スクラバ排水に含まれるNa2SO4は9重量%、Na2SO3は4重量%程度まで濃縮されるが、本発明が適用されるスクラバ排水は、Na2SO4が4重量%程度以上、Na2SO3が2重量%程度以上であればよい。
排水処理設備11は、スクラバ排水を受け入れる原水タンク14と、スクラバ排水が導入される膜浸漬槽15と、膜浸漬槽15に収容され、スクラバ排水をろ過するろ過膜装置16と、を有している。膜浸漬槽15はろ過膜装置16の設置スペースよりも十分に大きな容積を有し、膜浸漬槽15とろ過膜装置16との間の空間が含油固形物で閉塞されることが防止される。ろ過膜装置16は複数の中空糸膜17で構成されている。中空糸膜17は親水性の材料で形成されることが好ましい。親水性の材料としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PES(ポリエーテルスルホン)、PAN(ポリアクリロニトリル)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)などの有機材料が挙げられる。ろ過膜装置16としてセラミック製の平膜を用いることも可能であるが、船舶の振動や揺れに対する耐性の観点からは有機膜の中空糸膜17のほうがより好ましい。複数の中空糸膜17は共通の上部支持部18と下部支持部19との間に設けられている。中空糸膜17はケーシング等で覆われておらず、膜浸漬槽15のスクラバ排水に対してむき出しの状態とされている。スクラバ排水は中空糸膜17の外側(以下、1次側ともいう)で中空糸膜17の側壁に接液し、中空糸膜17の側壁でろ過される。油分やSSが除去または低減されたスクラバ排水はろ過水として中空糸膜17の内側(以下、2次側ともいう)に流入する。
膜浸漬槽15、より具体的には中空糸膜17の2次側にはろ過水排出ラインL5が接続されている。ろ過水排出ラインL5にはろ過水排出ポンプ20(吸引ポンプ)が設けられている。ろ過水排出ポンプ20で吸引することによって中空糸膜17の2次側が負圧となり、スクラバ排水を効率よくろ過することができる。ろ過膜装置16でろ過されたろ過水はろ過水排出ラインL5を流通し、必要に応じ水質を確認した後船外に放出される。膜ろ過は圧力差があれば可能であるため、吸引ポンプを設ける他に、水頭差を利用してもよい。どのようにして圧力差を設けるかは本発明が適用される船舶の構造により適宜決定すればよい。
排水処理設備11は、ろ過水の一部を逆洗水としてろ過膜装置16を逆洗する逆洗手段21を有している。逆洗手段21は、ろ過水を貯蔵するろ過水タンク22と、ろ過水タンク22をろ過膜装置16に接続する逆洗ラインL6と、ろ過水タンク22にろ過水を供給するタンク入口ラインL7と、を有している。ろ過水タンク22には逆洗ラインL6とタンク入口ラインL7とが接続されている。タンク入口ラインL7はろ過水排出ラインL5から分岐しており、逆洗ラインL6はろ過膜装置16とタンク入口ラインL7の分岐部との間でろ過水排出ラインL5に合流している。逆洗ラインL6には逆洗水を移送する逆洗水移送ポンプ23が設けられている。逆洗ラインLには弁24が、ろ過水排出ラインL5のタンク入口ラインL7の分岐部と逆洗ラインL6の合流部との間には弁25が、タンク入口ラインL7には弁26が設けられている。
ろ過膜装置16でろ過を行うと、膜浸漬槽15内のSSや油分の濃度が上昇していく。このため、排水処理設備11は、SSや油分の濃度が上昇したスクラバ排水を濃縮排水として貯蔵する濃縮排水タンク27を有している。濃縮排水タンク27は濃縮排水ラインL8によって膜浸漬槽15(中空糸膜17の1次側)に接続されている。濃縮排水は高濃度のSSや油分を含んでいるため、船舶の航行中は濃縮排水タンク27に保管される。濃縮排水ラインL8には弁28が設けられており、弁28を開くことによって、濃縮排水が濃縮排水タンク27に回収される。膜浸漬槽15からの濃縮排水の取り出しは連続的に行ってもよいし、間歇的に行ってもよい。膜浸漬槽15内のスクラバ排水のSS濃度、油濃度を測定し、これらの一方または双方が一定の基準値に達したときに濃縮排水を取り出すようにしてもよい。なお、逆洗時に中空糸膜17から剥離される油分やSSも濃縮排水タンク27に回収される。
排水処理設備11は以下のように作動する。スクラバ装置3からのスクラバ排水はスクラバ排水移送ラインL4によって膜浸漬槽15に供給される。弁25は開き、弁24は閉じている。弁26は開いているが、ろ過水タンク22が一定の水位に達すると閉められる。ろ過水排出ポンプ20の吸引圧力によってスクラバ排水は中空糸膜17の1次側から2次側に移動し、SSや油分が中空糸膜17に捕捉される。一定時間ろ過水排出ポンプ20を作動させてろ過工程を行った後、ろ過水排出ポンプ20を停止し、弁24,25を切り替えて、逆洗ラインL6による短時間の逆洗を行う。具体的には弁25を閉じ、24を開け、逆洗水移送ポンプ23を起動する。これによって、逆洗水が中空糸膜17の外側(1次側)に付着したSSや油分を剥離させ、中空糸膜17が再生される。ろ過と逆洗をセットとして、これを繰り返すことで、中空糸膜17の性能を維持しながらろ過工程を行うことができる。逆洗に要する時間はろ過と比べてはるかに短く、例えばろ過を数十分行った後、1~2分間実施される程度である。
前述の通り、スクラバ排水は高濃度の塩分を含んでいる。スクラバ排水はディーゼル機関2の排気ガスで30~50℃程度に加熱されており、且つろ過膜装置16は脱塩機能を有していない。このため、スクラバ排水は塩分が溶解した状態で中空糸膜17を通過し、ろ過水にはスクラバ排水と同程度の濃度の溶解した塩分が含まれる。しかし、船舶が寒冷地などの低温環境下を航行する場合、ろ過水の温度が低下し、ろ過水に含まれる塩分が析出することがある。ろ過水排出ラインL5を流れるろ過水は温度がそれほど低下していないため、塩分が析出する可能性は低い。塩分が析出しても、塩分は流動するろ過水に同伴して流れるため、スクラバ排水移送ラインL4に塩分が滞積する可能性は低い。一方、ろ過水タンク22に貯留されたろ過水や逆洗ラインL6に残存するろ過水はろ過水排出ラインL5を流れるろ過水より温度が低下しているため、塩分が析出する可能性がより高い。ろ過水タンク22及びろ過水排出ラインL5は逆洗のためだけに設けられており、しかも逆洗は短時間間歇的に行われるだけであるため、ろ過水の流動はほとんど生じず、析出した塩分が堆積しやすい。このため、例えば逆洗ラインL6やろ過水タンク22の逆洗ラインL6の入口付近で塩分の析出物が滞積すると、逆洗水が逆洗ラインL6を流れず逆洗不良が生じる可能性がある。タンク入口ラインL7についてもほとんどろ過水の流動がないため、同様の問題がある。さらに、逆洗ラインL6で析出した塩分が中空糸膜17の2次側(内壁)に付着すると、中空糸膜17が閉塞する可能性がある。
そのため、本実施形態の排水処理設備11は、逆洗水に含まれる塩の濃度を溶解度以下に抑えることによって逆洗水からの塩の析出を防止する析出防止手段29を有している。本実施形態では、析出防止手段29は逆洗水を加熱する加熱手段29Aを有している。加熱手段29Aはディーゼル機関2で発生する熱を加熱源として利用する。具体的には、ディーゼル機関2の排気ラインL1、冷却水ライン(図示せず)、水冷用ジャケット(図示せず)などの任意の発熱部から熱を取り出す第1の熱交換器30と、第1の熱交換器30で取り出した熱を移送する熱移送ラインL9と、が設けられている(熱移送ラインL9は往路と復路があるが、図1では1本の線で表示している)。逆洗ラインL6には、熱移送ラインL9で移送されてきた熱を受け取る第2の熱交換器31が設置されている。逆洗ラインL6は逆洗水移送ポンプ23が設けられることから、一般的にろ過水タンク22やタンク入口ラインL7より下方にあり、析出した塩分が堆積しやすい。第2の熱交換器31の設置位置は塩分の析出を防止する部位であれば特に限定されず、逆洗ラインL6、ろ過水タンク22、タンク入口ラインL7の少なくともいずれかであってよい(図1の二重線は加熱対象を示している)。
逆洗水の加熱温度は、塩の濃度(Na2SO4及びNa2SO3の濃度)を溶解度以下に抑えることができる程度、具体的には30℃~40℃程度の範囲に維持できれば十分である。ディーゼル機関2は常に稼働しているため好ましい熱源の一つであるが、熱源はディーゼル機関2に限定されない。例えば逆洗ラインL6やタンク入口ラインL7に電気式のバンドヒータやベルトヒータを巻き付けてもよい。
加熱手段29Aは濃縮排水タンク27または濃縮排水ラインL8に設けることもできる。前述のように、濃縮排水タンク27には間歇的にしか濃縮排水が排出されないことがあり、その場合、濃縮排水タンク27に貯留される濃縮排水や濃縮排水ラインL8に残存する濃縮排水の温度が低下する可能性がある。特に濃縮排水ラインL8が析出物で閉塞すると、濃縮排水が排出できない可能性が生じる。析出防止手段29は少なくとも濃縮排水ラインL8に設けることが好ましく、濃縮排水タンク27に設けることもできる。本実施形態では熱移送ラインL9からラインL10が分岐しており、ラインL10は濃縮排水ラインL8に設けられた第3の熱交換器32に接続されている。
図示は省略するが、加熱手段29Aはディーゼル機関2の輻射熱を利用したものでもよい。例えば、ろ過水タンク22と、逆洗ラインL6と、タンク入口ラインL7の少なくとも一部をディーゼル機関2と同じ部屋に設置し、これらの加熱対象がディーゼル機関2の輻射熱で加熱されるようにすることができる。このような構成によれば、加熱のための熱交換器や配管を省略することができる。
加熱手段29Aに代えて、または加熱手段29Aとともに保温手段を設けてもよい。上述の通り、本発明では逆洗水や濃縮排水を高温まで加熱する必要はなく、高々常温程度の温度に維持すればいい。スクラバ排水はディーゼル機関2の排気ガスで加熱されているため、船舶の航行する海域の温度がそれほど低くない場合や、排水処理設備11が屋内設置されている場合は、大掛かりな加熱装置が不要となる可能性がある。保温手段としては上述の各加熱対象を覆う保温材を用いることができる。
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態に係る船舶の原動機システム1の概略構成図である。本実施形態は析出防止手段29が逆洗水を脱塩する脱塩手段29Bを有することを除き、第1の実施形態と同じである。説明を省略した構成については第1の実施形態の説明を参照されたい。脱塩手段29Bは限定されないが、例えば逆浸透膜装置(RO)33を挙げることができる。RO33の代わりに電気脱塩装置(EDR)を用いてもよい。RO33はラインL11によってろ過水タンク22に接続されている(ラインL11は往路と復路があるが、図2では1本の線で表示している)。すなわち、ろ過水タンク22のろ過水がRO33で脱塩され、脱塩水がろ過水タンク22に戻される。これによって、ろ過水タンク22に貯留されるろ過水の塩分濃度は溶解度以下に維持される。RO33の接続先はろ過水タンク22に限定されず、逆洗ラインL6またはタンク入口ラインL7でもよい。すなわち、ラインL11はろ過水タンク22、逆洗ラインL6、タンク入口ラインL7のいずれかからろ過水を取水し、ろ過水タンク22、逆洗ラインL6、タンク入口ラインL7のいずれかに脱塩水を戻すように設けることができる。
(第3の実施形態)
図3は、本発明の第3の実施形態に係る船舶の原動機システム1の概略構成図である。本実施形態は析出防止手段29が逆洗水を希釈する希釈手段29Cを有することを除き、第1の実施形態と同じである。説明を省略した構成については第1の実施形態の説明を参照されたい。希釈手段29Cは希釈水を供給する希釈水供給ラインL12を有している。希釈水はろ過水よりも塩分濃度が低い水であれば限定されず、船舶に貯留されている生活用水、ユーティリティ水などの淡水を用いることができる。あるいは希釈水供給ラインL12上にRO33などの脱塩手段29Bを設け、脱塩手段29Bで脱塩した海水を希釈水として用いてもよい。
以上説明した実施形態は相互に組み合わることができる。例えば、ろ過水タンク22、逆洗ラインL6、タンク入口ラインL7を保温材で覆うとともに、脱塩手段29Bまたは希釈手段29Cを設けてもよい。あるいは、ろ過水タンク22、逆洗ラインL6、タンク入口ラインL7に加熱手段29Aを設け、濃縮排水タンク27及び濃縮排水ラインL8を保温材で覆ってもよい。
(実施例)
人工海水を3.3重量%、Na2SO4を9.6重量%、Na2SO3を4.8重量%、SSを3.0重量%、油分を3.0%、水を76.4重量%含む液体(模擬スクラバ排水)を対象に試験を行った。ろ過膜装置16としてPTFE製の中空糸膜を使用し、ろ過膜装置16を膜浸漬槽15に収容し、29分間のろ過と1分間の逆洗を繰り返し実施した。ろ過Fluxは0.3m/dとした。実施例1(第2の実施形態に対応)では、模擬スクラバ排水を脱塩した脱塩水を用いてろ過膜装置16の逆洗を行った。実施例2(第1の実施形態に対応)では、模擬スクラバ排水を20℃に温度調整してろ過膜装置16の逆洗を行った。比較例では、模擬スクラバ排水を3℃に温度調整してろ過膜装置16の逆洗を行った。模擬スクラバ排水におけるNa2SO4及びNa2SO3の濃度は3℃におけるこれらの溶解度を上回っており、20℃におけるこれらの溶解度を下回っている。図4にはろ過時間と吸引圧力の関係を示している。吸引圧力はろ過水排出ポンプ20の入口側圧力であり、図1にAで示す位置の圧力である。ろ過水排出ポンプ20の入口側圧力は負圧となっており、中空糸膜17の差圧が増えるとA点の負圧が低下する(負圧の絶対値が増加する)。比較例では、析出した塩分が中空糸膜17の内面(2次側)に時間とともに付着していったため、負圧が急激に増加した。このため逆洗流量も低下した。これに対し、実施例1,2では負圧の時間的変化はほとんどなく、塩分の析出が防止ないし抑制されたことが確認された。
1 船舶の原動機システム
2 ディーゼル機関
3 スクラバ装置
11 排水処理設備
16 ろ過膜装置
21 逆洗手段
22 ろ過水タンク
26 濃縮排水タンク
29 析出防止手段
29A 加熱手段
29B 脱塩手段
29C 希釈手段
L6 逆洗ライン
L8 濃縮排水ライン

Claims (10)

  1. 塩を含む排水をろ過し、前記塩を含むろ過水を排出するろ過膜装置と、
    前記ろ過水を逆洗水として前記ろ過膜装置を逆洗する逆洗手段と、
    前記逆洗水に含まれる前記塩の濃度を溶解度以下に抑えることによって前記逆洗水からの前記塩の析出を防止する析出防止手段と、を有し、
    前記析出防止手段は、前記ろ過水を前記ろ過水よりも塩分濃度が低い水で希釈する希釈手段を有する排水処理設備。
  2. 塩を含む排水をろ過し、前記塩を含むろ過水を排出するろ過膜装置と、
    前記ろ過水を逆洗水として前記ろ過膜装置を逆洗する逆洗手段と、
    前記逆洗水に含まれる前記塩の濃度を溶解度以下に抑えることによって前記逆洗水からの前記塩の析出を防止する析出防止手段と、
    前記ろ過膜装置から排出される濃縮排水を貯蔵する濃縮排水タンクと、
    前記ろ過膜装置を前記濃縮排水タンクに接続する濃縮排水ラインと
    前記濃縮排水タンクと前記濃縮排水ラインの少なくともいずれかに設けられ、前記濃縮排水からの塩の析出を防止する他の析出防止手段と、を有する排水処理設備。
  3. 前記塩を含む排水は、ディーゼル機関から排出される排ガスを海水の噴霧によって処理するスクラバ装置から排出される排水である、請求項1または2に記載の排水処理設備。
  4. 塩を含む排水をろ過し、前記塩を含むろ過水を排出するろ過膜装置と、
    前記ろ過水を逆洗水として前記ろ過膜装置を逆洗する逆洗手段と、
    前記逆洗水に含まれる前記塩の濃度を溶解度以下に抑えることによって前記逆洗水からの前記塩の析出を防止する析出防止手段と、を有し、
    前記塩を含む排水は、ディーゼル機関から排出される排ガスを海水の噴霧によって処理するスクラバ装置から排出される排水であり、前記析出防止手段は、前記ディーゼル機関で発生する熱を加熱源として利用する排水処理設備。
  5. 前記析出防止手段は前記逆洗水を加熱する加熱手段を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の排水処理設備。
  6. 前記析出防止手段は前記逆洗水を保温する保温手段を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の排水処理設備。
  7. 前記析出防止手段は前記逆洗水の温度を30℃~40℃の範囲に維持する、請求項5または6に記載の排水処理設備。
  8. 前記逆洗手段は、前記ろ過水を貯蔵するろ過水タンクと、前記ろ過水タンクに前記ろ過水を供給するタンク入口ラインと、前記ろ過水タンクを前記ろ過膜装置に接続する逆洗ラインと、を有し、前記析出防止手段は前記ろ過水タンクと、前記タンク入口ラインと、前記逆洗ラインの少なくともいずれかに設けられている、請求項1から7のいずれか1項に記載の排水処理設備。
  9. 前記析出防止手段は前記逆洗水を脱塩する脱塩手段を有する、請求項1からのいずれか1項に記載の排水処理設備。
  10. ろ過膜装置によって、塩を含む排水をろ過し、前記塩を含むろ過水を排出することと、
    逆洗手段によって、前記ろ過水を逆洗水として前記ろ過膜装置を逆洗することと、
    析出防止手段によって、前記逆洗水に含まれる前記塩の濃度を溶解度以下に抑え、それによって前記逆洗水からの前記塩の析出を防止することと、を有し、
    前記析出防止手段は前記ろ過水を前記ろ過水よりも塩分濃度が低い水で希釈する希釈手段を有する排水処理方法。
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