JP7266268B2 - 塊状ガス含有氷の製造方法 - Google Patents
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Description
このようにファインバブルとしてガスを含有し、規格化された大きさ、形状の塊状のガス含有氷に対する一定のニーズがある。
<1> ファインバブル状の原料ガスを過飽和に含有する原料ファインバブル水を、仕切られた複数の製氷領域を有するアルミパウチ容器に充填する工程と、
液体窒素の中に、原料ファインバブル水を充填したアルミパウチ容器を浸漬させて、急速凍結して製氷する工程と、を有し、
前記アルミパウチ容器における前記仕切られた複数の製氷領域のそれぞれの容積が、4mL以上120mL以下であり、かつ、液体窒素の中へのアルミパウチ容器の浸漬時間が45秒未満であるガス含有氷の製造方法。
<2> 前記アルミパウチ容器における前記仕切られた複数の製氷領域のそれぞれが、原料ファインバブル水を充填した際に略球形である<1>に記載のガス含有氷の製造方法。
<3> 原料ガスをファインバブルとして含有する<1>または<2>に記載のガス含有氷の製造方法。
<4> 原料ガスが、酸素、オゾン、二酸化炭素、窒素、アルゴン、水素のいずれか、またはこれらの混合ガスである<1>から<3>のいずれかに記載のガス含有氷の製造方法。
<5> 液体窒素の中へのアルミパウチ容器の浸漬時間が15秒以上30秒以下である<1>から<4>のいずれかに記載のガス含有氷の製造方法。
<6> 前記アルミパウチ容器における製氷領域が10個以上20個以下である<1>から<5>のいずれかに記載のガス含有氷の製造方法。
<7> <1>から<6>のいずれかに記載の方法で製造された塊状のガス含有氷。
<8> 直径が1cm以上6cm以下である<7>に記載のガス含有氷。
<9> 含有ガスが酸素、オゾン、二酸化炭素、窒素、アルゴン、水素のいずれか、またはこれらの混合ガスである<7>または<8>に記載のガス含有氷。
液体窒素の中に、原料ファインバブル水を充填したアルミパウチ容器を浸漬させて、急速凍結して製氷する工程と、を有し、
前記アルミパウチ容器における前記仕切られた複数の製氷領域のそれぞれの容積が、4mL以上120mL以下であり、かつ、液体窒素の中へのアルミパウチ容器の浸漬時間が45秒未満であるガス含有氷の製造方法に関する。
このような特定の製氷領域を有するアルミパウチ容器を使用し、当該製氷領域に原料ファインバブル水を充填し、特定の時間で液体窒素冷却を行うことによって得られるガス含有氷は、ひびや割れがない塊状であって、微細気孔の内部にガスを含有して全体が白濁するほど多量のガスを内包することができる。微細気孔を多く含む構造の氷は機械的強度が弱く、凍結の時に発生する応力により、割れたり粉砕したりする傾向にあるが、本発明の製造方法であれば、液体窒素による急冷であっても、微細気孔を保持しつつ、氷のひびや割れがほぼ生じない。
この理由については現段階では明らかでない点もあるが、アルミパウチ容器の仕切られた製氷領域の容積を、4mL以上120mL以下(好適には10mL以上50mL以下)とすることにより、内部まで均等に冷却され、かつ、応力も均等に発生するため、凍結時のひび割れの発生を回避し、液体窒素への浸漬時間を45秒以下(好適には15秒以上30秒以下)に制限することによって氷の微細破壊を回避できているものと推測される。
なお、本発明において「略球形」とは完全な球形以外を含む概念であり、断面が楕円であってもよいものとする。
参考に図1に実施例で使用したアルミパウチ容器の外観写真、図2に製氷領域の内部構造(厚み方向の切断面)を示す写真を示す。
工程(1)は、ファインバブル状の原料ガスを過飽和に含有する原料ファインバブル水を、仕切られた複数の製氷領域を有するアルミパウチ容器に充填する工程である。
本明細書において、「ファインバブル」とは、マイクロオーダー(1~100μm)、ナノオーダー(1μm以下)の直径のガスの微細気泡を意味する。微細気泡の直径の下限は、ガス状であればよく、通常、5nm以上である。特に本発明においては原料ファインバブル水に含まれるファインバブル状のガスは、直径1~50μm程度のマイクロバブルと10nm~300nm程度のナノバブルが混合したものであることが好ましい。なお、一般的に、水中に存在するガスの大きさにより、原料ファインバブル水の外観が異なる。水中に存在するサブミリオーダーのバブルは、目視ができる。マイクロバブルを含有する水は白濁する。水中のナノバブルは目視することはできないが、水にレーザーポインターを当ててみて、軌跡(レーザーの線)が見えるか否かで、ナノバブルの存在が判断できる。
ガスの種類としては、本発明の製造方法に適用できるガスであれば任意であり、例えば、酸素、オゾン、二酸化炭素、窒素、アルゴン、水素のいずれか、またはこれらの混合ガスが挙げられる。この中でも、酸素が好適なガスの一例である。
例えば、ファインバブルを発生させる方式として、対象気体と液体を高速旋回させ、せん断力によりファインバブルを発生させる「気液混合せん断方式」、液中に圧縮した気体を一気に解放させることによりファインバブルを発生させる「加圧溶解方式」、液中のポーラス、オリフィスなどに圧力をかけて気体を通すことによりファインバブルを発生させる「微細孔方式」等が挙げられる。また、ファインバブル状のガスが生成できるならば、上記方法以外でもよい。これらの発生方式は2種以上を組み合わせもよい。
気液混合せん断方式でのファインバブル発生装置の具体例として、有限会社バブルタンク製「マイクロ・ナノバブル発生装置、型番:BT50」を好適な一例として挙げることができる。この装置を使用すると、直径1~50μmのマイクロバブルと10nm~300nmのナノバブルが混合して含有された原料ファインバブル水を得ることができる。この場合、原料ファインバブル水には、マイクロバブルとナノバブルとが混合して含有されるため、白濁している。
より具体的には、水中の溶存ガスを不活性ガス(例えば、窒素)で置換した後に、気液混合せん断方式と加圧溶解方式を組み合わせた方式にて目的とするガスを供給することにより、過飽和にガスを含む原料ファインバブル水を製造することができる。
本発明でいう「アルミパウチ容器」は、2枚のプラスチックフィルムの間にアルミニウム層を挟み込んだシート材料を二枚重ねにしてその周縁をヒートシールしたガス非透過性の可撓性容器である。アルミパウチ容器は、偏平状態にしてその内部に原料ファインバブル水を外気と接触させることなく充填でき、かつ、充填直後に充填口を密閉し、内部からのガス漏洩を完全に抑制することができ、充填した原料ファインバブル水を充填時の状態に維持することができる。
本発明において、アルミパウチ容器を構成するフィルムは液体窒素による冷却を阻害しない限り、アルミニウムと樹脂フィルムの積層フィルム、アルミニウムを蒸着した樹脂フィルムであってもよい。
アルミパウチ容器において仕切られた製氷領域は、それぞれが隣接する他の製氷領域と連通している。これにより、アルミパウチ容器の注水口から供給される原料ファインバブル水はそれぞれの仕切られた製氷領域に充填される。
上記容積であると液体窒素中に後述する時間(45秒以下)で浸漬しても、製造されるガス含有氷は、微細気孔を保持しつつ、微細気孔のひびや割れが生じること回避できる。
なお、容積が120mLを超えると原料ファインバブル水の均一冷却が困難となり、4mL未満であると実用な大きさの塊状の氷が得ることができない。
工程(2)は、液体窒素の中に、原料ファインバブル水を充填したアルミパウチ容器を浸漬させて、急速凍結して製氷する工程である。
原料ファインバブル水を液体窒素温度(-196℃)で強制的に急速凍結することにより、極めて短時間で原料ファインバブル水を凍結することができるため、得られるガス含有氷は全体的に、原料ファインバブル水中のファインバブル状のガスを取り込んだ状態で凍結され、氷の内部に過飽和状態でガスが捕捉され、原料ガスをファインバブルとして含有する。そのため、より高濃度のガスを含有し、全体的に白濁したガス含有氷を製造することができる。
なお、ファインバブル状のガスを過飽和に含有する原料ファインバブル水であっても、徐冷をすると、凍結過程において、ファインバブル状のガスと水(氷)とが分離して、製造される氷においてガス分布が不均一になり、得られるガス含有氷は全体的に白濁せずに透明になる傾向にある。
本出願人が特許文献4(WO2017/082305)で開示したように、原料ファインバブル水と液体窒素とを接触させて急速凍結することによって、凍結途中でのガスと水との分離を回避し、高濃度にガスを含有する氷を製造することができる。なお、特許文献4の水素含有氷の方法では、液体窒素へのアルミパウチ容器の浸漬時間は少なくとも1分以上としていた。この方法では白濁した水素含有氷が確実に製造できるものの、ガス含有氷にひび割れが発生しやすく、さらに浸漬時間が長くなるとガス含有氷が破砕されるという問題が生じる。
本発明の製造方法では、上述した特定の大きさ、形状の製氷領域を有するアルミパウチ容器を使用し、液体窒素への浸漬時間を45秒以下(好適には15秒以上30秒以下)に制限することによって、液体窒素による急冷に起因する氷の破壊を回避できているものと推測される。
また、通常、製造方法で使用したアルミパウチ容器をそのまま包装容器に使用するが、製造されたガス含有氷を多量に保管・輸送する場合などには、製氷に使用したアルミパウチ容器からガス含有氷を取り出し、別の容器に入れてもよい。
以下にガス含有氷(及び解凍したファインバブル含有水)による代表的な作用を記載するが、ガス含有氷(及び解凍したファインバブル含有水)の使用目的はこれらの作用に基づくものに限定されるものではない。
(1)酸素含有氷
飲食用として、冷却と同時に細胞の活性化、免疫力向上、乳酸や脂肪の分解作用等が期待される。また、排水処理等に用いることができる。
(2)オゾン含有氷
生鮮食料品の保存用として、鮮度保持、殺菌、脱臭作用等が期待される。また、殺菌作用を利用して医療分野への応用も期待できる。
(3)二酸化炭素含有氷、
飲料用として、炭酸飲料の炭酸量を増量等が期待される。
(4)窒素含有氷、アルゴン含有氷
反応性ガスが好ましくない環境での冷却用途等(金属部品製造、表面処理の洗浄等)に用いることができる。また、生鮮食品、葉物野菜等の酸化劣化防止用としても用いることができる。
(5)水素含有氷
飲料用として、老化抑制作用、美容作用、疲労回復、ストレス改善、皮膚炎の改善等が期待される。
1.酸素含有氷の製造
1-1.原料ファインバブル含有水の製造
目的ガスとして酸素を含有する実施例の酸素含有氷は、以下の手順で製造した。
原料ファインバブル含有水(酸素)は、有限会社バブルタンク製「マイクロ・ナノバブル発生装置、型番:BT50」とガス溶解器を使用し、原料水(水温21℃、酸素濃度:85%)に対し、ファインバブル状の酸素ガスを流量0.5mL/分で供給することによって製造した。
原料ファインバブル含有水(酸素)をサンプリングして、酸素濃度は溶存酸素計(ハンナ インスツルメンツ・ジャパン株式会社、HI9147)で評価したところ、酸素溶存量は製造後519%であり、1日後では320%であった。
原料ファインバブル含有水は、アルミパウチ容器(4層ラミネートのスパウト付アルミパウチ、容積:360mL)に充填して密閉した。使用したアルミパウチ容器は16個の製氷領域に仕切られており、それぞれ領域の容積は22.4mLである。原料ファインバブル含有水を充填するとそれぞれの製氷領域は直径約3.5cmの略球形となる。
液体窒素を入れたステンレス製容器(魔法瓶タイプ、容積50L)を準備し、これに原料ファインバブル含有水を充填したアルミパウチ容器を液体窒素に完全に浸漬するように入れ製氷した。所定の時間浸漬後、アルミパウチ容器を液体窒素から取り出し、アルミパウチ容器に入った酸素含有氷を得た。
2-1.酸素含有氷の凍結状態の評価
上述の製造方法で得られたアルミパウチ容器を切開し、アルミパウチ容器内部の酸素含有氷の状態を確認した。図3に浸漬時間30秒、図4に浸漬時間60秒の酸素含有氷の外観写真を示す。
浸漬時間15秒、30秒、45秒では塊状の氷が得られていた。浸漬時間30秒では塊状の酸素含有氷は乳白色であり、破砕して観察すると内部まで白濁していた。また、酸素含有氷を破砕した断面を拡大確認すると微細気孔が多量に含まれていることが確認された。浸漬時間30秒の酸素含有氷を、水の中にいれると細かな気泡が発生し、酸素含有氷が解凍されることにより、酸素ガスが放出されていることが確認された。
一方、浸漬時間60秒以上では乳白色の酸素含有氷が得られていたが、氷は粉々に砕けていることが確認された。また、浸漬時間60秒以上ではアルミパウチ容器の数か所に破損が確認されたことから、浸漬時間が長すぎるとアルミパウチ容器での氷の状態変化に起因して、酸素含有氷の粉砕化、アルミパウチ容器の破損が生じることが明らかになった。
酸素含有氷を解凍して得られる解凍水の溶存酸素濃度は、JISK 0102 32.1に準じる方法で行った。
簡単に説明すると、液体窒素浸漬時間15秒,30秒及び60秒の酸素含有氷を、アルミパウチの状態で室温(約25℃)の環境下に静置し、完全に解凍したのちにサンプリングし、溶存酸素量を求めた。
溶存酸素量は、液体窒素の浸漬時間15秒の解凍水で122%(DO値:14.5ppm)、浸漬時間30秒の解凍水で169%(DO値:18.4ppm)、浸漬時間60秒の解凍水で112%(DO値:10.9ppm)であった。浸漬時間30秒の解凍水は透明であったが、レーザーポインターによる確認により、ナノバブルが含有されていることが確認された。
1.アルゴン含有氷の製造
使用するガス種を酸素ガスから、アルゴンガスに変えた以外は、実施例1と同様にしてアルゴン含有氷を得た。
2.評価
浸漬時間30秒で得られたアルゴン含有氷を確認したところ、浸漬時間30秒では塊状のアルゴン含有氷は乳白色であり、破砕して観察すると内部まで白濁していた。また、アルゴン含有氷を破砕した断面を拡大確認すると微細気孔が多量に含まれていることが確認された。浸漬時間30秒のアルゴン含有氷を、水の中にいれると細かな気泡が発生し、アルゴン含有氷が解凍されることにより、アルゴンガスが放出されていることが確認された。一方、浸漬時間60秒で得られたアルゴン含有氷は、氷は粉々に砕けていることが確認された。
1.水素含有氷の製造
使用するガス種を酸素ガスから、水素ガスに変えた以外は、実施例1と同様にしてアルゴン含有氷を得た。
2.評価
浸漬時間30秒で得られた水素含有氷を確認したところ、浸漬時間30秒では塊状の水素含有氷は乳白色であり、破砕して観察すると内部まで白濁していた。また、水素含有氷を破砕した断面を拡大確認すると微細気孔が多量に含まれていることが確認された。浸漬時間30秒の水素含有氷を、水の中にいれると細かな気泡が発生し、水素含有氷が解凍されることにより、水素ガスが放出されていることが確認された。一方、浸漬時間60秒で得られた水素含有氷は、氷は粉々に砕けていることが確認された。
Claims (3)
- 微細気孔の内部に原料ガスを含有し全体が白濁した略球形の塊状ガス含有氷の製造方法であって、
ファインバブル状の原料ガスを過飽和に含有する原料ファインバブル水を、仕切られた複数の製氷領域を有するアルミパウチ容器に充填する工程と、
液体窒素の中に、原料ファインバブル水を充填したアルミパウチ容器を浸漬させて、急速凍結して製氷する工程と、を有し、
前記アルミパウチ容器における前記仕切られた複数の製氷領域のそれぞれが、原料ファインバブル水を充填した際に略球形であり、前記アルミパウチ容器における前記仕切られた複数の製氷領域のそれぞれの容積が、4mL以上120mL以下であり、かつ、液体窒素の中へのアルミパウチ容器の浸漬時間が15秒以上30秒以下であることを特徴とする塊状ガス含有氷の製造方法。 - 原料ガスが、酸素、オゾン、二酸化炭素、窒素、アルゴン、水素のいずれか、またはこれらの混合ガスである請求項1に記載の塊状ガス含有氷の製造方法。
- 前記アルミパウチ容器における製氷領域が10個以上20個以下である請求項1または2に記載の塊状ガス含有氷の製造方法。
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