JP7265780B2 - 抗腫瘍組成物 - Google Patents

抗腫瘍組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP7265780B2
JP7265780B2 JP2020103289A JP2020103289A JP7265780B2 JP 7265780 B2 JP7265780 B2 JP 7265780B2 JP 2020103289 A JP2020103289 A JP 2020103289A JP 2020103289 A JP2020103289 A JP 2020103289A JP 7265780 B2 JP7265780 B2 JP 7265780B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
extract
lees
sweet potato
distiller
purple sweet
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2020103289A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021195340A (ja
Inventor
大幹 永根
匡 山下
潤一 上家
尚之 相原
征克 宮鍋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
GENUINE R&D CO., LTD.
Original Assignee
GENUINE R&D CO., LTD.
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by GENUINE R&D CO., LTD. filed Critical GENUINE R&D CO., LTD.
Priority to JP2020103289A priority Critical patent/JP7265780B2/ja
Publication of JP2021195340A publication Critical patent/JP2021195340A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7265780B2 publication Critical patent/JP7265780B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Medicines Containing Plant Substances (AREA)
  • Acyclic And Carbocyclic Compounds In Medicinal Compositions (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Medicines Containing Material From Animals Or Micro-Organisms (AREA)

Description

特許法第30条第2項適用 2019年6月20日に送付された「第72回日本酸化ストレス学会学術集会 プログラム・要旨」データで公開
特許法第30条第2項適用 2019年6月27日に頒布された「第72回日本酸化ストレス学会学術集会 プログラム・抄録集」で公開
特許法第30条第2項適用 2019年6月27日~2019年6月28日に北海道立道民活動センターかでる2・7かでるホール(札幌市中央区北2条西7丁目 道民活動センタービル)で開催された「第72回日本酸化ストレス学会学術集会」で公開
本開示は抗腫瘍組成物等に関する。なお、本明細書に記載される全ての文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
現代社会(特に日本国)では、腫瘍(特に悪性腫瘍、いわゆる癌)で死亡する人が増え続けており、腫瘍の治療効率の向上は喫緊の課題である。
特開2008-092912号公報 特開2015-105272号公報
J. Agric. Food Chem. 2006, 54, 5375-5381 YAKUGAKU ZASSHI 127(11) 1837-1842 (2007) Biosci. Biotechnol. Biochem., 68 (12), 2619-2622, 2004
本発明者らは、新規な抗腫瘍手段を得るべく検討を進めた。
本発明者らは、紫芋もろみ蒸留粕抽出物に優れた抗腫瘍効果があることを見いだした。そして当該知見に基づき、さらに改良を重ねた。
本開示は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
紫芋もろみ蒸留粕抽出物を含有する、抗腫瘍組成物。
項2.
紫芋もろみ蒸留粕抽出物及び活性酸素生成抗癌剤を含有する、抗腫瘍組成物。
項3.
紫芋もろみ蒸留粕抽出物を含有する、活性酸素生成抗癌剤の抗癌作用増強組成物。
項4.
活性酸素生成抗癌剤を投与される若しくは投与された人に投与されるように用いられる、紫芋もろみ蒸留粕抽出物含有組成物。
項5.
活性酸素生成抗癌剤が、白金製剤、アントラサイクリン系抗癌剤、及びビンカアルカロイドからなる群より選択される少なくとも1種である、項2~4のいずれかに記載の組成物。
項6.
活性酸素が、スーパーオキシド、過酸化水素、及びヒドロキシルラジカルからなる群より選択される少なくとも1種である、項2~4のいずれかに記載の組成物。
項7.
紫芋もろみ蒸留粕抽出物が、紫芋もろみ蒸留粕アルコール抽出物である、項1~6のいずれかに記載の組成物。
項8.
紫芋もろみ蒸留粕抽出物が、カフェ酸アルキルエステルを含む、項1~7のいずれかに記載の組成物。
項9.
紫芋もろみ蒸留粕抽出物が、カフェ酸アルキルエステルを含む紫芋もろみ蒸留粕アルコール抽出物であり、
活性酸素生成抗癌剤が、白金製剤、アントラサイクリン系抗癌剤、及びビンカアルカロイドからなる群より選択される少なくとも1種である、
項2~4のいずれかに記載の組成物。
項10.
紫芋もろみ蒸留粕抽出物含有組成物及び活性酸素生成抗癌剤を備えた抗腫瘍キット。
紫芋もろみ蒸留粕抽出物を含有する抗腫瘍組成物が提供される。
また、本発明者らは、活性酸素(ROS)生成抗癌剤、つまり、ROSを生成する抗癌剤と、紫芋もろみ蒸留粕抽出物とを組み合わせて用いることにより、当該抗癌剤単独使用時よりも優れた抗腫瘍効果を奏すること(すなわち、紫芋もろみ蒸留粕抽出物は活性酸素生成抗癌剤の抗癌作用を増強する効果を奏すること)を見いだした。なお、ROS生成抗癌剤は、ROSを生成する抗癌剤であれば特に制限はされず、例えば、生成されたROSにより主に抗癌作用が奏される抗癌剤、及び、二次的にROSが生成され抗癌作用若しくは副作用(例えば細胞障害)が奏される抗癌剤等が包含される。
紫芋焼酎粕や紫芋もろみ蒸留粕抽出物は抗酸化作用を奏することが知られており(特許文献1及び2)、当該効果は活性酸素を抑制することにより奏されると考えられているところ、紫芋もろみ蒸留粕抽出物を活性酸素(ROS)生成抗癌剤と組み合わせて用いると、活性酸素(ROS)生成抗癌剤が生成するROSを紫芋もろみ蒸留粕抽出物が抑制(消去)してしまうと考えられるから、これらを組み合わせて用いることで当該抗癌剤単独使用時よりも優れた抗腫瘍効果が得られることは、意外といえる。当該知見に基づき、紫芋もろみ蒸留粕抽出物及び活性酸素(ROS)生成抗癌剤を含有する抗腫瘍組成物も提供される。
紫芋焼酎粕エタノール抽出物のアセトン抽出物の、中性脂質クラスのTLC分析結果を示す。検出試薬は、A(左)が50%硫酸、B(右)が1mM DPPH試薬である。それぞれスポットは、1が脂肪酸エチルエステル、2がトリグリセリド、3がα-トコフェロール、4が脂肪酸、5がステロールを示す。 紫芋焼酎粕又は黄芋焼酎粕エタノール抽出物のアセトン抽出物中の、抗酸化成分のTLC分析結果を示す。検出試薬はDPPH、展開溶媒はクロロホルム/メタノール/水(65:16:2)である。Aは、焼酎粕(左レーン;黄芋焼酎粕、右レーン:紫芋焼酎粕)の分析結果を、Bは、紫芋(左レーン:生紫芋、右レーン:紫芋焼酎粕)の分析結果を、それぞれ示す。 図2のスポットXのTMS誘導体のGC-MS解析結果を示す。図中、A~B、1~4はそれぞれ次の結果を示している。A,:トータルイオンクロマト(TIC)、B:TIC拡大図、1:Bのピーク1、2:Bのピーク2、3:Bのピーク3、4:Bのピーク4。 カフェ酸アルキルエステルの質量スペクトル解析結果を示す。 紫芋又は黄芋の脂質濃縮物のラジカル消去活性の解析結果を示す。 紫芋焼酎粕セラミド濃縮物のTLC分析結果を示す。なお、展開溶媒は、クロロホルム/メタノール/水(90:10:1)である。また、セラミドNP、ASG、セラミドAP、SG、GCはそれぞれ、セラミドNP(ノルマル酸-ファイトスフィンゴシン)、アシルステリルグルコシド、セラミドAP(αヒドロキシ酸-ファイトスフィンゴシン)、ステリルグルコシド、グルコシルセラミド、を示す。 紫芋焼酎粕から得たセラミド濃縮物のセラミド含量をHPLCで解析した結果を示す。 紫芋焼酎粕から得たセラミド濃縮物のLC-MS/MS解析結果を示す。 図8の結果を基に、紫芋焼酎粕から得たセラミド濃縮物に含まれるフリーセラミドの分子種(スフィンゴイド塩基-脂肪酸)を分類した一覧を示す。 紫芋焼酎粕エタノール抽出物のアセトン抽出物(PPL)の、抗腫瘍効果を検討した結果を示す。 紫芋焼酎粕エタノール抽出物のアセトン抽出物(PPL)添加して培養した乳がん細胞の共焦点顕微鏡像を示す。 紫芋焼酎粕エタノール抽出物のアセトン抽出物(PPL)及びその他の抗酸化剤の、抗酸化効果を検討した結果を示す。 CBDCA(カルボプラチン)単独、あるいは、CBDCAとPPL又はNAC(N-アセチルシステイン)とを組み合わせて用いた場合における、カルボプラチン濃度と生存率との関係を示す。 VCR(ビンクリスチン)単独、あるいは、VCRとPPL又はNAC(N-アセチルシステイン)とを組み合わせて用いた場合における、ビンクリスチン濃度と生存率との関係を示す。 腫瘍移植マウスにPPL及び/又はCBDCAを投与したときの、移植からの日数と腫瘍体積との関係を示す。 腫瘍移植マウスにPPL及び/又はCBDCAを投与したときの、移植からの日数と生存率との関係を示す。 コントロール群マウス及びPPL投与群マウスの腫瘍におけるCleaved Capase3を免疫染色した結果を示す。 コントロール群マウス及びPPL投与群マウスの腫瘍におけるCleaved Capase3を免疫染色した際の、染色された細胞数/mmをグラフにして示す。
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。本開示は、紫芋もろみ蒸留粕抽出物を含有する抗腫瘍組成物、並びに、紫芋もろみ蒸留粕抽出物及び活性酸素生成抗癌剤を含有する抗腫瘍組成物、さらには、紫芋もろみ蒸留粕抽出物を含有する、活性酸素生成抗癌剤の抗癌作用増強組成物等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本開示は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
本開示に包含される抗腫瘍組成物は、紫芋もろみ蒸留粕抽出物を含有する。また、一実施形態においては、当該抗腫瘍組成物は、紫芋もろみ蒸留粕抽出物及び活性酸素生成抗癌剤を含有する。紫芋もろみ蒸留粕抽出物を含有する抗腫瘍組成物を抗腫瘍組成物Aと、紫芋もろみ蒸留粕抽出物及び活性酸素生成抗癌剤を含有する抗腫瘍組成物を抗腫瘍組成物Bと、それぞれ表記することがある。また、抗腫瘍組成物A及び抗腫瘍組成物Bをまとめて本開示の抗腫瘍組成物と表記することがある。
紫芋もろみ蒸留粕抽出物は、紫芋のもろみから得た蒸留粕を抽出して得た抽出物である。
紫芋としては、中まで紫色をしている(すなわち、果肉色が紫色系である)サツマイモの一種であり、例えば、アヤムラサキ、エイムラサキ、ムラサキマサリ、ナカムラサキ、種子島紫、沖縄産紅芋、山川紫、パープルスイートロード、宮農36号、九州109号など好ましく例示できる。
紫芋のもろみは、紫芋に対して糖化反応を施し、アルコール発酵を行うことによって得られる。糖化反応後にアルコール発酵を行ってもよいし、糖化反応とアルコール発酵を同時に行ってもよい。糖化反応は麹を用いて行うことが好ましい。用いる麹としては、米麹あるいは芋麹(黒麹菌や白麹菌、黄麹菌など)が好ましく例示できる。また、アルコール発酵は、酵母を用いて行うことが好ましい。酵母としては、例えば、ワイン酵母、焼酎酵母、ビール酵母、清酒酵母等が挙げられ、中でも焼酎酵母が好ましい。特に芋焼酎製造に用いられる公知の酵母が好ましい。例えば、蒸煮した紫芋を、麹および酵母の存在下、温度10~40℃で放置して、糖化とアルコール発酵を行わせ、もろみを製造することができる。
蒸留粕は、もろみを蒸留することにより得られる。具体的には、アルコール発酵後に蒸留を行い、蒸留液とその残渣である蒸留粕を得ることができる。蒸留粕は固液分離を行い、液部と固形部に分離してもよい。分離は、薮田式フィルタープレス、遠心分離法等により行うことができる。なお、蒸留前に固液分離を行い、液部と固形部を分離した後に、それぞれ蒸留してもよい。この場合、液部及び固形部から得られた残渣を併せて蒸留粕として用いてもよく、固形部から得られた残渣のみを蒸留粕として用いることがより好ましい。なお、紫芋を用いて芋焼酎を製造する際のもろみから得られた粕(すなわち芋焼酎粕)を、蒸留粕として好ましく用いることができる。
蒸留粕は、そのまま抽出に供してもよく、蒸留粕をさらに固液分離することにより得られる固形部を抽出に供してもよい。抽出は、アルコール抽出が好ましい。特に、固形部をさらに乾燥処理して乾燥固形部とし、これをアルコール抽出に供することが好ましい。乾燥固形部は、水分が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。乾燥法としては、例えば、ダブルドラムドライヤ、棚式通風乾燥機、スラリードライヤ、真空式ドラムドライヤ、真空乾燥機、凍結乾燥機、などが挙げられ、抗酸化成分の品質維持やコスト面から、ダブルドラムドライヤが中でも好適である。乾燥固形部は、抽出(好ましくはアルコール抽出)に供される前に粉砕処理を施して粉砕乾燥固形部としてもよい。粉砕処理は、ジェットミル、ハンマーミル、グラインダー、気流粉砕器、など短時間で高温を防止できる粉砕機を用いて行うことが好ましい。
抽出は、例えば水及び/又はアルコールを用いて公知の方法により行うことができる。例えば、蒸留粕(固形部、乾燥固形部又は粉末乾燥固形部等であり得る)をアルコールに一晩、25~45℃程度で、撹拌しつつ浸漬させる方法が例示できる。アルコール抽出に用いるアルコールとしては、炭素数1、2、3、若しくは4のアルキルアルコールが好ましく、特にエタノールが好ましい。
抽出物は、抽出液そのものであってもよいし、当該抽出液を濃縮したもの(抽出濃縮物)であってもよい。例えば、アルコール抽出物は、アルコール抽出液そのものであってもよいし、当該抽出液を濃縮したもの(アルコール抽出濃縮物)であってもよい。当該濃縮物は、濃縮乾固されていてもよい。濃縮方法は特に制限されず、例えばエバポレーターを用いて濃縮乾固することができる。また、下述するように、アルコール抽出液を濃縮し、さらに例えばアセトン又はヘキサンで抽出して得た抽出物であってもよい。つまり、紫芋もろみ蒸留粕をアルコール抽出して得た抽出物に、さらに濃縮及び/又は抽出操作が加えられたものも、紫芋もろみ蒸留粕アルコール抽出物に包含される。
前述の通り、紫芋もろみ蒸留粕抽出物は、上記抽出濃縮物(好ましくはアルコール抽出濃縮物)を水溶性溶媒で抽出して得た水溶性溶媒抽出物をも包含する。水溶性溶媒としては、例えば、水、エタノール、又は水及びエタノールの混合溶媒が好ましい。当該水溶性溶媒を用いた抽出は、公知の方法により行うことができる。例えば、上記抽出物(好ましくはアルコール抽出濃縮物)に水溶性溶媒を加え、静置又は撹拌することにより、水溶性溶媒抽出物を得ることができる。当該水溶性溶媒抽出物は、水溶性溶媒抽出液そのものであってもよいし、当該抽出液を濃縮したもの(水溶性溶媒抽出濃縮物)であってもよい。当該濃縮物は、濃縮乾固されていてもよい。濃縮方法は特に制限されず、例えばエバポレーターを用いて濃縮乾固することができる。
前述の通り、紫芋もろみ蒸留粕抽出物は、また、上記アルコール抽出濃縮物をアセトン又はヘキサンで抽出して得た抽出物をも包含する。アセトンで抽出して得た抽出物がより好ましい。当該アセトン又はヘキサンによる抽出は、公知の方法により行うことができる。例えば、上記アルコール抽出濃縮物(上記水溶性溶媒抽出作業後に残ったアルコール抽出濃縮物を用いることもできる)にアセトン又はヘキサンを加え、1又は複数回(例えば2、3、若しくは4回)遠心分離(若しくは濾過)することにより、その上清(若しくは濾液)を回収して、抽出物として用いることができる。とくに制限されないが、遠心分離は、冷却(例えば4℃)して行われることが好ましい。当該抽出物は、抽出液(例えば上記上清)そのものであってもよいし、当該抽出液を濃縮したもの(抽出濃縮物)であってもよい。当該濃縮物は、濃縮乾固されていてもよい。濃縮方法は特に制限されず、例えばエバポレーターを用いて濃縮乾固することができる。
紫芋もろみ蒸留粕抽出物には、抗酸化成分として知られる脂溶性ポリフェノール(例えば脂肪酸エチルエステル、カフェ酸アルキルエステル、フェルラ酸アルキルエステル等)が多く含まれている。特に、上記のアセトン又はヘキサンで抽出して得た抽出物には、脂溶性ポリフェノールが多く含まれている(すなわち、濃縮されている)。紫芋もろみ蒸留粕抽出物には、脂溶性ポリフェノールの中でも、カフェ酸アルキルエステル及び/又はフェルラ酸アルキルエステルが含まれることが好ましい。カフェ酸アルキルエステルは、天然にはほとんど存在しない脂溶性抗酸化成分として知られている。カフェ酸アルキルエステルとしては、炭素数12~20(12、13、14、15、16、17、18、19、又は20)のアルキルアルコールとカフェ酸(Caffeic acid)とのエステルが好ましい。炭素数12~20のアルキルアルコールのなかでも、炭素数14~18がより好ましく、炭素数16~18がさらに好ましい。また、アルキルアルコールのアルキルは直鎖又は分岐鎖であり得、直鎖であることが好ましい。また、フェルラ酸アルキルエステルとしては、炭素数12~20(12、13、14、15、16、17、18、19、又は20)のアルキルアルコールとフェルラ酸(Ferulic acid)とのエステルが好ましい。炭素数12~20のアルキルアルコールのなかでも、炭素数14~18がより好ましく、炭素数16~18がさらに好ましい。また、アルキルアルコールのアルキルは直鎖又は分岐鎖であり得、直鎖であることが好ましい。限定される訳では無いが、カフェ酸エチルエステル(CA2)、カフェ酸セチルエステル(CA16)、カフェ酸ヘプタデシルエステル(CA17)、カフェ酸オクタデシルエステル(CA18)、フェルラ酸ヘキサデシルエステル(FA16)、フェルラ酸オクタデシルエステル(FA18)が含まれることが特に好ましい。当該抽出物に含まれる脂溶性ポリフェノールは、いずれか1種又は2種以上の組み合わせであってよい。
またさらに、特に限定はされないが、紫芋もろみ蒸留粕抽出物には、セラミドを比較的多く含有されていてのよい。セラミドは、肌の保湿や皮膚のバリア機能を強化する等の優れた効果を有することが知られている。紫芋もろみ蒸留粕抽出物には、グルコシルセラミドの他、特にフリーセラミドが多く含まれていてもよい。
活性酸素(ROS)生成抗癌剤は、前述したように、ROSを生成する抗癌剤である。当該抗癌効果は、例えば、当該抗癌剤自身により生成されたROSによるDNA損傷からアポトーシスに至ることにより奏される場合や、抗癌剤によるDNA損傷を介して二次的にROSが生成し、当該ROSによりアポトーシスが誘導されることにより奏される場合等があり得るが、どのような機構により当該抗癌効果が得られるかによっては、当該抗癌剤は特に限定されない。当該抗癌剤としては、具体的には例えば、白金製剤、アントラサイクリン系抗癌剤、ビンカアルカロイド等の化合物が挙げられ、白金製剤及びアントラサイクリン系抗癌剤がより好ましい。白金製剤としては、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、及びネダプラチン等が挙げられる。アントラサイクリン系抗癌剤としては、例えば、アクチノマイシンD、アクラルビシン、アムルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ジノスタチンスチマラマー、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ピラルビシン、ブレオマイシン、ペプロマイシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、及びリポソーマルドキソルビシン等が挙げられる。ビンカアルカロイドとしては、例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン等が挙げられる。当該抗癌剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、当該抗癌剤により生成されるROSとしては、特に限定はされないが、例えばスーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシルラジカル等が挙げられる。ROS生成抗癌剤により生成されるROSは、1種であっても2種以上の組みあわせであってもよい。
本開示の抗腫瘍組成物Aにおける紫芋もろみ蒸留粕抽出物の含有割合は、効果が損なわれない範囲であれば特に制限はされない。例えば0.01~100質量%又は0.01~99.99質量%程度が例示される。また、本開示の抗腫瘍組成物Bにおける紫芋もろみ蒸留粕抽出物の含有割合は、効果が損なわれない範囲であれば特に制限はされない。例えば0.01~99.99質量%程度が例示される。
なお、本開示の抗腫瘍組成物Bにおける紫芋もろみ蒸留粕抽出物及び活性酸素生成抗癌剤の含有割合は、紫芋もろみ蒸留粕抽出物による活性酸素生成抗癌剤の抗癌作用増強効果が損なわれない範囲であれば、特に制限はされない。また、当該含有割合葉、用いる活性酸素生成抗癌剤の通常投与量やドーズに応じて適宜設定することができる。例えば、活性酸素生成抗癌剤1モル部に対して紫芋もろみ蒸留粕抽出物1~2000モル部程度が例示される。特に、活性酸素生成抗癌剤が白金製剤の場合は、活性酸素生成抗癌剤1モル部に対して紫芋もろみ蒸留粕抽出物0.5~10モル部程度が例示される。当該範囲の上限または下限は、例えば1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、又は9.5モル部であってもよい。例えば、当該範囲は1~5モル部であってもよい。
また、本開示の抗腫瘍組成物は、効果が損なわれない範囲において、紫芋もろみ蒸留粕抽出物及び活性酸素生成抗癌剤以外の、抗腫瘍組成物に使用されることが公知の成分を含有してもよい。このような成分としては、例えば薬学的に許容される担体が好ましく挙げられる。より具体的には、例えば、賦形剤又は添加剤、例えば、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤等が挙げられる。また、本開示の抗腫瘍組成物は、例えば紫芋もろみ蒸留粕抽出物及び活性酸素生成抗癌剤に必要に応じて薬学的に許容される担体等を組み合わせて調製することができる。調製は、公知の方法又は公知の方法から容易に想到する方法によって行うことができる。当該組成物の形態としては、治療の目的に従って様々な形態から選択することができる。典型的な例には、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、注射剤(液剤、懸濁剤など)などが含まれる。なお、また、その投与経路もとくに限定はされず、例えば経口投与、皮下投与、筋肉投与、経血管投与(特に静脈投与)、腹腔内投与などが例示される。また、当該組成物は特に医薬組成物として好ましく用いられ得る。
本開示はまた、紫芋もろみ蒸留粕抽出物を含有する組成物をも包含する。当該組成物を組成物Iと表記することがある。また、組成物Iのうち、活性酸素生成抗癌剤の抗癌作用増強用である組成物、及び、活性酸素生成抗癌剤を投与される若しくは投与された人に投与されるように用いられる組成物、が好ましい。前者を組成物Ia、後者を組成物Ibと表記することがある。なお、抗腫瘍組成物A及び抗腫瘍組成物B(好ましくは抗腫瘍組成物A)を、組成物Ia又は組成物Ibとして用いることも可能である。また、組成物I(好ましくは組成物Ia又は組成物Ib)は、紫芋もろみ蒸留粕抽出物そのものであってもよいし、紫芋もろみ蒸留粕抽出物にその他成分がさらに含有されたものであってもよい。このようなその他成分としては、上述した薬学的に許容される担体等が好ましく例示される。また、組成物I(好ましくは組成物Ia又は組成物Ib)も、好ましくは医薬組成物である。また例えば、上述した抗腫瘍組成物の形態と同様の形態として用いることができる。
組成物Iaを組成物Ibとして用いることも可能であるし、組成物Ibを組成物Iaとして用いることも可能である。
本開示はさらにまた、紫芋もろみ蒸留粕抽出物含有組成物(つまり、組成物I)及び活性酸素生成抗癌剤を備えた抗腫瘍キットをも包含する。
本開示において、腫瘍とは、異常な細胞増殖による疾患であり、好ましくは悪性腫瘍(癌)である。より具体的には、乳癌(例えば、浸潤性乳管癌、非浸潤性乳管癌、炎症性乳癌等)、前立腺癌(例えば、ホルモン依存性前立腺癌、ホルモン非依存性前立腺癌等)、膵癌(例えば、膵管癌等)、胃癌(例えば、乳頭腺癌、粘液性腺癌、腺扁平上皮癌等)、肺癌(例えば、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、悪性中皮腫等)、結腸癌(例えば、消化管間質腫瘍等)、直腸癌(例えば、消化管間質腫瘍等)、大腸癌(例えば、家族性大腸癌、遺伝性非ポリポーシス大腸癌、消化管間質腫瘍等)、小腸癌(例えば、消化管間質腫瘍等)、食道癌、十二指腸癌、舌癌、咽頭癌(例えば、上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌等)、唾液腺癌、脳腫瘍(例えば、松果体星細胞腫瘍、毛様細胞性星細胞腫、びまん性星細胞腫、退形成性星細胞腫等)、神経鞘腫、肝臓癌(例えば、原発性肝癌、肝外胆管癌等)、腎臓癌(例えば、腎細胞癌、腎盂と尿管の移行上皮がん等)、胆管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、子宮肉腫、卵巣癌(例えば、上皮性卵巣癌、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣性胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍等)、膀胱癌、尿道がん、皮膚癌(例えば、眼内(眼)黒色腫、メルケル細胞がん等)、血管腫、悪性リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫等)、悪性黒色腫、甲状腺癌(例えば、甲状腺髄様癌等)、副甲状腺がん、鼻腔がん、副鼻腔がん、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、骨腫瘍(例えば、骨肉腫、ユーイング腫瘍、軟部組織肉腫等)、骨髄異形性腫瘍、骨髄増殖性腫瘍、血管線維腫、網膜肉腫、陰茎癌、精巣腫瘍、小児固形癌(例えば、ウィルムス腫瘍、小児腎腫瘍等)、カポジ肉腫、AIDSに起因するカポジ肉腫、上顎洞腫瘍、線維性組織球腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病等)が挙げられる。なかでも、本開示の抗腫瘍組成物、キット、若しくは予防または治療方法の適用対象として特に好ましい癌種として、悪性リンパ腫、白血病、骨髄腫、乳癌、胃癌、膵癌、肺癌、卵巣癌等が挙げられる。
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
<紫芋もろみ蒸留粕抽出物の調製及び分析>
紫芋の蒸留粕からの抽出
紫芋を原料とした焼酎粕から、薮田式フィルタープレスにより固液分離固体を得た。それをダブルドラムドライヤにより乾燥処理し、乾燥焼酎粕を調製した。1kgに3Lの99.5度のエタノールを添加して40℃で一晩撹拌抽出した。抽出後の固液分離は、24cmSUSロートと真空ポンプ付きのブフナーロート式の吸引ろ過により行った。ろ紙にはアドバンテックNo.1ろ紙を使用した。十分にろ過したエタノール溶液を、ナス型フラスコを用いてロータリーエバポレーターで濃縮乾固し、エタノール抽出濃縮物を得た。濃縮時のエタノールは回収した。
エタノール抽出濃縮物重量は66g(乾燥焼酎粕の6.6%)であった。次にエタノール抽出濃縮物(固形部)をアセトンで洗って遠心チューブに移し、4℃で冷却遠心分離(3000rpm×10min)した。得られたアセトン液層をアセトン抽出物とした。アセトン抽出物をロータリーエバポレーターで濃縮乾固し、アセトン抽出濃縮物を得た。その重量は11g(エタノール抽出濃縮物の17%)であった。遠心分離の沈殿物には、エタノール及び水を添加して15℃で遠心分離を行った。液層と沈殿部分とを分け、沈殿部分に対して再度同様の操作により遠心分離を行った。得られた遠心沈殿物には、アセトンを添加し、撹拌遠心をアセトンへの着色がなくなるまで繰り返した。得られた沈殿物(セラミド濃縮物)を乾燥処理をしてから回収した(エタノール抽出濃縮物の1.6%)。
なお、黄芋(コガネセンガン)焼酎粕を用いて、同様の抽出を行った。ただし、以下の解析に供したのは、特に断らない限り、紫芋焼酎粕から得た抽出物である。
アセトン抽出物中の抗酸化成分の解析
アセトン抽出濃縮物をクロロホルム/メタノール(2:1)に溶解してケイ酸TLCで分析した結果を図1に示す。展開溶媒としてヘキサン/ジエチルエーテル/酢酸(80:20:1)を用いて中性脂質クラスを検出すると(図1のA)、脂肪酸エチルエステルの大きなスポットが認められ、他に、脂肪酸、ステロール類が検出された。検出試薬としてラジカル剤であるDPPH溶液を噴霧すると(図1のB)、原点付近に強いラジカル消去活性を有する成分の存在が認められた。
また、アセトン抽出濃縮物をヘキサンで2回抽出し、ヘキサン層を水洗後に濃縮乾固し、ヘキサンに再溶解してGC-MS分析を行い、当該抽出物に含まれる脂肪酸エチルエステル(FAEE)の脂肪酸組成を調べた。結果を表1に示す。
Figure 0007265780000001
次にクロロホルム/メタノール/水(65:16:2)を展開溶媒として、極性脂質クラスを分析した(図2)。DPPH試薬による検出により、紫芋焼酎粕ではラジカル消去活性を有するスポットXとスポットYが認められたが、黄芋(コガネセンガン)焼酎粕では微量であった(図2のA)。また、本抗酸化成分は、原料芋にはほとんど認められず(図2のB)、紫芋焼酎粕に特異的に存在することが示された。このことから、抗酸化成分は、紫芋を用いて焼酎を製造する際、焼酎粕中に生成されることが分かった。
抗酸化成分の構造解析
アセトン抽出濃縮物をケイ酸TLCで分離し、上記スポットXを抽出・精製した。常法に従い、脂質をトリメチルシリル(TMS)エーテル誘導体としてGC-MS分析に供した(図3)。スポットXからは複数のピークが検出され、MS解析の結果から、多量成分であるピーク1がカフェ酸セチルエステル(CA16)、ピーク4がカフェ酸オクタデシルエステル(CA18)であることが分かった(図4)。また、これらの他にも、スポットXからは、カフェ酸エチルエステル(CA2)、カフェ酸ヘプタデシルエステル(CA17)、フェルラ酸ヘキサデシルエステル(FA16)、フェルラ酸オクタデシルエステル(FA18)が検出された。
アセトン抽出物のラジカル消去活性
アセトン抽出濃縮物を2-プロパノールに溶解し、DPPHエタノール溶液中に添加してラジカル消去活性を比色定量した(図5)。紫芋焼酎粕由来アセトン抽出物は、反応系への1mgの添加量で黄芋焼酎粕アセトン抽出物の2.5倍の抗酸化活性を示した。また、紫芋焼酎粕アセトン抽出物1.5mgの抗酸化活性が、試薬純品のγ-オリザノール1.0mgの活性と同等であった。
セラミド濃縮物の解析
アルコール抽出からのアセトン抽出物を得た後の残渣(セラミド濃縮物)をTLCで分析すると(図6)、グルコシルセラミドの他、フリーセラミドの大きなスポットが検出された。(焼酎粕中には原料となるサツマイモや麹菌に由来するグルコシルセラミドが含まれることは既に知られているが、自然界では極めて稀なフリーセラミドが濃縮されていた。)
HPLCを用いてセラミド濃縮物を定量すると、他の多く食品や食品残渣ではまったく検出されないフリーセラミドが、紫芋焼酎粕乾物100gあたり275mgと高濃度で含まれていた。また、グルコシルセラミドも他の原料よりも多く含まれていることも示された(図7)。
セラミド濃縮物をLC-MS/MSで構造解析すると、30種のセラミドピークが同定された(図8)。セラミドのスフィンゴイド塩基と脂肪酸との組合せにより5つのグループに分類すると、ファイトスフィンゴシンと超長鎖ヒドロキシ脂肪酸の結合したセラミドAPが大部分を占めていた(図9)。
<紫芋もろみ蒸留粕抽出物の抗腫瘍効果の検討>
上で調製したアセトン抽出濃縮物を用いて、紫芋もろみ蒸留粕抽出物の抗腫瘍効果を検討した。なお、当該検討においては、当該アセトン抽出濃縮物をPPLと表記することがある。PPLを培地に溶解させて用いる際には、培地におけるDMSO終濃度が0.1%となるように、PPLをDMSOに溶解させたものを用いた。また、以下の図において、*はp<0.05を、**はp<0.01を、それぞれ示す。
PPLの効果の検討1
マウス乳がんE0771細胞を10 % FBS を含む RPMI-1640培地中で加湿、37℃、5% CO条件下で培養した。コロニー形成試験は次のようにして行った。当該細胞をトリプシン処理し、20~200個/mlの細胞密度に調整し、60 mm ディッシュに5 ml ずつ播種した。CO2 インキュベーターで6時間培養した後、培地を新たな2 ml の培地にPPLを溶解し、48時間培養した。48時間後に薬剤を除去し、新たに培地を5 ml 添加し、CO2 インキュベーターにて 7~10 日培養した。培養後、培地を除去し、メタノールを用いて細胞を固定した。10分乾燥させた後、0.03 % クリスタルバイオレットを各シャーレ2 ml ずつ加えてコロニーの染色を行った。20 分静置後、染色液を捨て、乾燥させた。50 個以上の細胞で形成されるコロニー数を計数し生存率を算出した。また、IC50はGraphpad Prism8 softwareで算出した。生存率(PPLを加えない場合を1としたときの相対値)と培地におけるPPL濃度の関係をグラフにして図10に示す。また、IC50は116.0μMであった。なお、PPLのモル濃度は、含まれる成分(主成分は脂肪酸ポリフェノール)を658g/モル(13mg/ml)と仮定して算出した。
また、当該検討において、PPL濃度50μMの培地で48時間培養した細胞について、共焦点顕微鏡でEx/Em = 331 nm/427 nmで画像を取得した。図11に示す。図11には、PPL溶液の代わりにDMSOを加えて同様にして取得した画像も示す。なお、PPLをPBSに溶解し、300-600 nmまで掃引して吸収波長を求めたところ、吸収のピークが331 nmにあり、その極大の時点で427 nmの蛍光を発する蛍光特性があることを事前に見いだしており、当該検討は当該知見を活用して行った検討である。
また、当該検討において、PPLの代わりに各種抗酸化剤(アスコルビン酸:AA、及びN-アセチルシステイン:NAC)若しくはDMSO(コントロールとして使用)を加えて48時間ではなく24時間培養した後、20 μMの2',7' -dichlorofluorescin diacetate(DCF-DA)を含む培地へ交換し、60分37℃、5 % CO2でインキュベートした。その後、シャーレの培養上清を15 ml チューブへ映し、シャーレにPBSを加え、同じチューブに上清と同じチューブに回収した。0.05 %トリプシンで処理し、再び同じチューブに回収した。400×g、4℃、5分で遠心した。1 ml のPBSで再懸濁し、細胞数を計算し、1×106 個分の細胞懸濁液を別の1.5 ml チューブに移し、400×g、4℃、5分で遠心した。上清を全て捨て、1 ml の無血清培地で再懸濁し、40 μm フィルターメッシュを通してフローサイトメーター測定用チューブに移した。また、フローサイトメーター(EC800 SONY Japan)で細胞内の蛍光強度(Excitation/Emission = 495/529) を測定した。結果を図12に示す。なお、DCFH-DAは細胞内に散在して、細胞内エステラーゼにより脱アセチル化し、非蛍光型 2’, 7’-Dichlorodihydrofluorescin (DCFH) になり、更にROSにより酸化され、強く蛍光する 2’, 7’-Dichlorodihydrofluorescein (DCF)に変化する。このため、蛍光強度が高いほど、ROSが多い(抗酸化効果が低い)ことを示す。
以上の結果から、PPLは優れた抗酸化作用を示すことが確認できた。
さらに、当該検討において、PPLを培地に溶解させる際に、併せて活性酸素生成抗癌剤(カルボプラチン:CBDCA、又はビンクリスチン:VCR)も培地に溶解させ、活性酸素生成抗癌剤の抗腫瘍効果がPPLによってどのように変化するかを検討した。なお、活性酸素生成抗癌剤と組み合わせる成分として、PPLの代わりにNAC又はDMSO(コントロール)を用いた検討も行った。カルボプラチン使用時の結果を図13aに、ビンクリスチン使用時の結果を図13bに、それぞれ示す。図13a及び図13bにおいて、PPL0μMは、活性酸素生成抗癌剤とDMSOを培地に添加した結果(コントロール)を、PPL20μMは、活性酸素生成抗癌剤とPPL20μMを培地に添加した結果を、NAC5mMは、活性酸素生成抗癌剤とNAC5mMを培地に添加した結果を、それぞれ示す。よって、PPL0μMは活性酸素生成抗癌剤単独による抗腫瘍効果を、PPL20μMは活性酸素生成抗癌剤とPPLとの組み合わせによる抗腫瘍効果を、NAC5mMは活性酸素生成抗癌剤とNACとの組み合わせによる抗腫瘍効果を、それぞれ示すと解釈される。
抗酸化作用を有する物質は、ROSを消去するはたらきがあるため、活性酸素生成抗癌剤と組み合わせて用いると、活性酸素生成抗癌剤が生成するROSを消去してしまい、活性酸素生成抗癌剤の抗癌作用を抑制すると考えられる。そして、上記の通り、PPL及びNACは優れた抗酸化作用を示すことから、PPLを活性酸素生成抗癌剤と組み合わせて用いると、活性酸素生成抗癌剤が生成するROSを消去してしまい、活性酸素生成抗癌剤の抗癌作用を抑制すると予測された。NACは、当該予測通り、活性酸素生成抗癌剤の抗癌作用を弱めた。しかし、意外なことに、PPLは活性酸素生成抗癌剤の抗癌作用を増強することが分かった(図13a及び図13b)。
PPLの効果の検討2
日本チャールズリバーより購入した7から8週齢の C57BL/6Nマウスの雌を用い、同種移植片移植を行った。具体的には、2% イソフルラン (インターベット, 東京) 吸入麻酔下において、皮膚を 70 % エタノールで殺菌した後、2×106 個の E0771 細胞を乳腺脂肪内に移植した。当該マウスを次の4群に分けた。コントロール群(Control)、PPL投与群(PPL)、CBDCA投与群(CBDCA)、PPL及びCBDCA投与群(PPl+ CBDCA)。
腫瘍移植8日後よりPPLを6 mg/kg/dayの用量で1週間経口投与した(合計7回)。また、CBDCAは移植8日後に200 mg/kgで単回、腹腔投与した。すべての腫瘍は体積を2日間ごとに記録し、2000 mm3以上の腫瘍体積、20%以上の体重減少などをエンドポイントとした。生存曲線は Graphpad Prism8を用いてカプランマイヤー法により計算した。
移植後の日数と腫瘍体積との関係を図14aに、移植後の日数と生存率との関係を図14bに、それぞれ示す。さらに、各群の移植26日後における腫瘍体積について比較したときのp値を次の表に示す。
Figure 0007265780000002
これらの結果から、PPLとCBDCAとを組み合わせて投与することにより、有意に腫瘍体積が減少し、また、有意に生存期間が延長することが分かった。
さらに、組織学的評価として、コントロール群マウス及びPPL投与群マウスの腫瘍塊を切り出し、4% 中性緩衝ホルマリンにて一晩腫瘍組織を固定した。エタノールで脱水、キシレンで透徹、パラフィンに置換した後、包埋を行った。パラフィンブロックは滑走型ミクロトームを用いて 5μmに薄切し、パラフィン包埋組織切片を作成した。脱パラフィン後、イムノセイバー (Cat. No.333, 日新EM, 東京) を用い、電動ポットで98度45分の保温状態におき、抗原の賦活化を行った。 水洗、PBS-T にて3 回洗浄の後、5% ヤギ血清、0.1% Triton-X100を含む PBS を用いて30分反応させることで非特異反応を除いた。ブロッキング、洗浄の後、5%ヤギ血清、0.1% Triton-X100を含むPBSに希釈した抗Cleaved Capase3抗体と反応後、HistoFineMax二次抗体とVector Lab DAB substrateにより発色した。組織画像はBZ-700 (Keyence)により取得した。
得られた組織画像を図15aに示す。図15aの下段は上段の四角枠部分の拡大図である。また、図15aの発色細胞(Cleaved Capase3 positive細胞)の個数(1mmあたり)を数えて作成したグラフを図15bに示す。
当該結果から、PPL単独の投与によっても腫瘍細胞のアポトーシスが誘導され得ることが確認できた。

Claims (8)

  1. 紫芋もろみ蒸留粕抽出物及び
    白金製剤及びビンカアルカロイドからなる群より選択される少なくとも1種の活性酸素生成抗癌剤
    を含有する、抗腫瘍用組成物。
  2. 紫芋もろみ蒸留粕抽出物を含有する、白金製剤及びビンカアルカロイドからなる群より選択される少なくとも1種の活性酸素生成抗癌剤の抗癌作用増強用組成物。
  3. 白金製剤及びビンカアルカロイドからなる群より選択される少なくとも1種の活性酸素生成抗癌剤を投与される若しくは投与された人に投与されるように用いられる、紫芋もろみ蒸留粕抽出物含有組成物。
  4. 活性酸素が、スーパーオキシド、過酸化水素、及びヒドロキシルラジカルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
  5. 紫芋もろみ蒸留粕抽出物が、紫芋もろみ蒸留粕アルコール抽出物である、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
  6. 紫芋もろみ蒸留粕抽出物が、カフェ酸アルキルエステルを含む、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
  7. 紫芋もろみ蒸留粕抽出物が、カフェ酸アルキルエステルを含む紫芋もろみ蒸留粕アルコール抽出物であり、
    活性酸素生成抗癌剤が、白金製剤及びビンカアルカロイドからなる群より選択される少なくとも1種である、
    請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
  8. 紫芋もろみ蒸留粕抽出物含有組成物及び
    白金製剤及びビンカアルカロイドからなる群より選択される少なくとも1種の活性酸素生成抗癌剤
    を備えた抗腫瘍用キット。
JP2020103289A 2020-06-15 2020-06-15 抗腫瘍組成物 Active JP7265780B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020103289A JP7265780B2 (ja) 2020-06-15 2020-06-15 抗腫瘍組成物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020103289A JP7265780B2 (ja) 2020-06-15 2020-06-15 抗腫瘍組成物

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021195340A JP2021195340A (ja) 2021-12-27
JP7265780B2 true JP7265780B2 (ja) 2023-04-27

Family

ID=79197110

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020103289A Active JP7265780B2 (ja) 2020-06-15 2020-06-15 抗腫瘍組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7265780B2 (ja)

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015105272A (ja) 2013-12-03 2015-06-08 宮鍋 征克 紫芋もろみ蒸留粕抽出物

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015105272A (ja) 2013-12-03 2015-06-08 宮鍋 征克 紫芋もろみ蒸留粕抽出物

Non-Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
J. Agric. Food Chem.,2006年,Vol. 54, No. 15,pp. 5375-5381
J. Agric. Food Chem.,2017年,Vol. 65,pp. 7228-7239
PLOS ONE,2014年,Vol. 9, No. 4, e95909,pp. 1-10
ムラサキマサリを用いた高度循環型醸造に関する産官学研究(3),総合農学研究所報,2010年,Vol. 26,pp. 1-17,https://www.u-tokai.ac.jp/education-research/research-centers/the-research-institute-of-agriculture/shohou/

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021195340A (ja) 2021-12-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Krol et al. Inhibition of neutrophils' chemiluminescence by ethanol extract of propolis (EEP) and its phenolic components
Jayaprakasha et al. Novel triterpenoid from Citrus aurantium L. possesses chemopreventive properties against human colon cancer cells
Sadek et al. Polyphenolic composition and antioxidant characteristics of kumquat (Fortunella margarita) peel fractions
CN108265007B (zh) 深海真菌3a00421及其发酵化合物的应用
Zhao et al. Bioactivity evaluations of ingredients extracted from the flowers of Citrus aurantium L. var. amara Engl
Pacifico et al. Influence of harvest season on chemical composition and bioactivity of wild rue plant hydroalcoholic extracts
Ke et al. Foeniculum vulgare seed extract induces apoptosis in lung cancer cells partly through the down-regulation of Bcl-2
EP2719287B1 (en) Compositions for the treatment of hyperlipidemia
Lee et al. Induction of apoptotic cell death by synthetic naringenin derivatives in human lung epithelial carcinoma A549 cells
CN105482129A (zh) 抗癌萃取物及化合物
Tene et al. Polyphenolic-rich compounds from Dillenia pentagyna (Roxb.) attenuates the doxorubicin-induced cardiotoxicity: a high-frequency ultrasonography assisted approach
WO2016009594A1 (ja) 肝臓保護剤、糖代謝改善剤及び抗肥満剤
de Santana Aquino et al. Investigation of the antioxidant and hypoglycemiant properties of Alibertia edulis (LC Rich.) AC Rich. leaves
JP7265780B2 (ja) 抗腫瘍組成物
KR100969134B1 (ko) 상동나무 지상부로부터 유용 플라보노이드 다량 함유획분과 신규 플라보노이드 물질의 분리 방법
Araújo et al. In vivo chemotherapeutic insight of a novel isocoumarin (3-hexyl-5, 7-dimethoxy-isochromen-1-one): Genotoxicity, cell death induction, leukometry and phagocytic evaluation
Nakamura et al. β-Sitosterol from psyllium seed husk (Plantago ovata Forsk) restores gap junctional intercellular communication in Ha-ras transfected rat liver cells
Schroeder et al. The effects of petroselinum crispum on estrogen receptor-positive benign and malignant mammary cells (MCF12A/MCF7)
Lee et al. Benzyl salicylate from the stems and stem barks of Cornus walteri as a nephroprotective agent against cisplatin-induced apoptotic cell death in LLC-PK1 cells
Yoon et al. A novel synthetic analog of Militarin, MA-1 induces mitochondrial dependent apoptosis by ROS generation in human lung cancer cells
JP3274506B2 (ja) 皮膚外用剤
Lorenz et al. n-Alkylresorcinol occurrence in Mercurialis perennis L.(Euphorbiaceae)
JP6143167B2 (ja) 小眼球症関連転写因子抑制剤、メラニン産生抑制剤、化粧品組成物及び抗ガン剤
Nakano et al. Screening of promising chemotherapeutic candidates from plants against human adult T-cell leukemia/lymphoma (VI): Cardenolides from Asclepias curassavica
El Hawary et al. Phytochemical profile and cytotoxic activity of selected organs of Sambucus nigra L. via enzyme assay and molecular docking study

Legal Events

Date Code Title Description
A80 Written request to apply exceptions to lack of novelty of invention

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A80

Effective date: 20200710

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20211026

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20221018

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20221129

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230110

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230220

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230404

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230410

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7265780

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150