JP7260765B2 - 熱間プレス成形品の製造方法、および鋼板 - Google Patents

熱間プレス成形品の製造方法、および鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、熱間プレス成形品の製造方法、および鋼板に関する。
自動車の軽量化の手段の一つとして、骨格部材等への高強度部材の適用が挙げられる。高強度部材を得る方法の一つに熱間プレス(ホットスタンプ)工法がある。熱間プレス成形品を高強度部材(自動車車体用の部材等)に適用する場合、全ての部位を高強度化するのではなく、特定の箇所を低強度にし、単一成形品内に強度差が大きい強度分布を有する熱間プレス成形品が求められる。つまり、単一成形品内に局所的な軟化部を有する熱間プレス成形品が求められる。
その理由はいくつか挙げられる。例えば、軟化部に穴あけ等の加工を行うことがある。
また、他の事例では、部材が変形する際に軟化部を早期に変形させ、変形挙動を制御することもある。なお、他の事例の熱間プレス成形品としては、例えば,軟質なフランジを有する高強度センターピラー、および、軟化部の配置によって衝突時の折れモードを制御するリアサイドメンバー又はバンパーが例示される。
一般に、単一成形品内に強度差が大きい強度分布を有する熱間プレス成形品を製造するには、熱間プレス後に低強度にする箇所に焼き戻し処理する。これに限らず、焼き戻ししない方法もある。
例えば,黒体塗料を鋼板の表面の一部に塗布し、鋼板の表面に熱放射率分布を持たせる手法(特許文献1~3参照)がある。
黒体塗料を塗布した箇所は、黒体塗料を塗布していない箇所に比べ、加熱したときの昇温速度が高い。すなわち、この鋼板では炉加熱時に温度分布を制御することが可能である。温度の高い箇所を急冷した場合と、温度の低い箇所を急冷した場合とでは、冷却条件が同じであれば、冷却前のオーステナイト組織の割合が高く、かつ温度が高い箇所の方が高強度になる。
すなわち,黒体塗料を表面の一部に塗布した鋼板を熱間プレス成形すると、単一成形品内に強度差を付与できる。つまり、単一成形品内に強度差が大きい強度分布を有する熱間プレス成形品が製造できる。
特開2011-152589公報 特開2012-144773公報 特許4772929明細書
しかし、黒体塗料を一部に塗布した鋼板を熱間プレス成形すると、高強度部位の靭性が不良となる。
そこで、本発明の課題は、単一成形品内に強度差が大きい強度分布を有し、高強度部位の靭性を確保した熱間プレス成形品の製造方法、および、当該製造方法に使用するのに適した鋼板を提供することである。
課題を解決するための手段は、以下の態様を含む。
[1]
第一の領域と第二の領域とを備え、前記第一の領域の表面に酸化被膜を有し、前記第二の領域の表面は地鉄又はめっき層が露出し、鋼板の板厚中心部におけるマルテンサイト組織およびベイナイト組織の合計の面積分率が70%以上であり、前記鋼板の前記板厚中心部における炭素量が0.15~0.80質量%である前記鋼板を準備する準備工程と、
前記鋼板を加熱する加熱工程と、
加熱した前記鋼板を冷却する冷却工程と、
冷却した前記鋼板を熱間プレス成形する成形工程と、
を有する熱間プレス成形品の製造方法。
[2]
前記準備工程において、前記第一の領域における前記酸化被膜の厚さが片面につき0.01μm以上である、[1]に記載の熱間プレス成形品の製造方法。
[3]
前記準備工程において、前記鋼板は、前記第一の領域よりも前記第二の領域の熱放射率が低く、前記第一の領域と前記第二の領域との熱放射率の差が10%以上である、
[1]又は[2]に記載の熱間プレス成形品の製造方法。
[4]
前記鋼板の板厚が3mm以下であり、
前記加熱工程において、前記第一の領域の前記表面における昇温速度が10℃/s以上、前記第一の領域の前記表面における加熱温度がAc3点以上Ac3点+80℃以下で、前記鋼板を加熱し、
前記冷却工程において、前記第一の領域の板厚中心部における組織の面積分率の70%以上をマルテンサイト変態させる冷却速度で、前記鋼板を冷却し、
前記成形工程において、前記第一の領域の前記表面における温度がAr3変態点以上で、前記鋼板を熱間プレス成形する、
[1]~[3]のいずれか1項に記載の熱間プレス成形品の製造方法。
[5]
前記加熱工程における前記鋼板の加熱開始から、前記冷却工程における前記鋼板のマルテンサイト変態開始までの時間が、120秒以内である、
[1]~[4]のいずれか1項に記載の熱間プレス成形品の製造方法。
[6]
第一の領域と第二の領域とを備え、
前記第一の領域の表面に酸化被膜を有し、
前記第二の領域の表面は地鉄又はめっき層が露出しており、
鋼板の板厚中心部における、マルテンサイト組織およびベイナイト組織の合計の面積分率が70%以上であり、
前記鋼板の板厚中心部における炭素量が0.15~0.80質量%である、
鋼板。
[7]
前記第一の領域における前記酸化被膜の厚さが、片面につき0.01μm以上である、
[6]に記載の鋼板。
[8]
前記第一の領域よりも前記第二の領域の熱放射率が低く、前記第一の領域と前記第二の領域との熱放射率の差が10%以上である、
[6]~[7]のいずれか1項に記載の鋼板。
本発明によれば、単一成形品内に強度差が大きい強度分布を有し、高強度部位の靭性を確保した熱間プレス成形品の製造方法、および、当該製造方法に使用するのに適した鋼板が提供できる。
図1は、本実施形態に係る熱間プレス成形品の製造方法の一例を示す工程図である。 図2(1)は、本実施形態に係る熱間プレス成形品の製造方法で適用する鋼板(ブランキングされた鋼板)の一例を示す模式図であり、図2(2)は、本実施形態に係る熱間プレス成形品の製造方法で得られる熱間プレス成形品の一例を示す模式図である。 図3(1)は、本実施形態に係る熱間プレス成形品の製造方法で適用する鋼板(ブランキングされた鋼板)の一例を示す模式図であり、図3(2)は、本実施形態に係る熱間プレス成形品の製造方法で得られる熱間プレス成形品の一例を示す模式図である。 図4(1)は、本実施形態に係る熱間プレス成形品の製造方法で適用する鋼板(ブランキングされた鋼板)の一例を示す模式図であり、図4(2)は、本実施形態に係る熱間プレス成形品の製造方法で得られる熱間プレス成形品の一例を示す模式図である。 図5は、実施例Aの比較例A1~A2(図中比較例1~2と表記)のビッカース硬さの分布を示すグラフである。 図6は、実施例Aの発明例A1のビッカース硬さの分布を示すグラフである。 図7は、実施例Aにおける比較例A1と発明例A1で実施した、バンパーの変形試験を説明する説明図である。 図8は、実施例Aにおける比較例A1と発明例A1で取得した、バンパー断面形状部材における変形抵抗とストローク(変化量)との関係(ストローク曲線)を示すグラフである。
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
なお、本明細書中において、化学組成の各元素の含有量の「%」表示は、「質量%」を意味する。
「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
「~」の前後に記載される数値に「超」または「未満」が付されている場合の数値範囲は、これら数値を下限値または上限値として含まない範囲を意味する。
「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本実施形態に係る熱間プレス成形品の製造方法は、鋼板を準備する準備工程と、鋼板を加熱する加熱工程と、加熱した鋼板を冷却する冷却工程と、冷却した鋼板を熱間プレス成形する成形工程と、を有する。
そして、準備する鋼板として、第一の領域と第二の領域とを備え、第一の領域の表面に酸化被膜を有し、第二の領域の表面は地鉄又はめっき層が露出し、鋼板の板厚中心部におけるマルテンサイトおよびベイナイト組織の合計の面積分率が70%以上であり、鋼板の板厚中心部における炭素量が0.15~0.80質量%である鋼板を適用する。
本実施形態に係る熱間プレス成形品の製造方法は、上記手法により、単一成形品内に強度差が大きい強度分布を有し,高強度部位の靭性を確保した熱間プレス成形品を製造できる。本実施形態に係る熱間プレス成形品の製造方法は、次の知見により見出された。
まず、黒体塗料を鋼板の表面の一部に塗布し,鋼板の表面に熱放射率分布を持たせる手法(以下「黒体塗料を採用した手法」とも称する。特許文献1~3参照)は、昇温時間が短時間で、均熱処理を行わない、という特徴がある。なぜなら、そうしないと、一度付与した温度分布が均熱により無くなってしまうからである。
ただし、昇温時間が短時間で、均熱処理を行わないと、鋼板内の炭素が充分固溶しない原因となる。鋼板内の炭素が充分固溶しないまま急冷すると、炭素が充分固溶した場合に比べ、鋼板の強度が低くなる。すなわち、鋼板に十分な強度が得られない。鋼板内の炭素の固溶を促進するには、加熱温度を高くすることと、均熱処理の時間を長くすることが挙げられる。そして、黒体塗料を採用した手法では、均熱処理に制約があるため、採れる対応は、鋼板の加熱温度を高くすることである。
しかし、加熱温度を高くするほどオーステナイト粒径が大きくなる。オーステナイト粒径の大きな鋼板を急冷すると、冷却後の鋼板の靭性が不良となる。
そのため、黒体塗料を一部に塗布した鋼板を熱間プレス成形すると、高強度部位の靭性が不良となる。
ここで、鋼板中の炭素を十分固溶させるには、鋼板を予めマルテンサイト組織またはベイナイト組織とすることが考えられる。マルテンサイト組織またはベイナイト組織にはフェライト組織に比べ炭素が細かく分散している。したがって、低い温度かつ短時間加熱でも鋼板内の炭素が固溶しやすくなる。鋼板の組織を予めベイナイト又はマルテンサイト組織にすることにより、高強度化と靭性とを両立することができる。これは、いわゆる2回焼入れプロセスを採用した手法である。
しかし、黒体塗料を採用した手法と、2回焼入れプロセスを採用した手法との単純な組み合わせは成立しない。この組み合わせ試験を実施し、その鋼板の硬度を測定した結果を図5に示す。なお、この試験の詳細は、後述する実施例Aの比較例A1~A2に示す。
まず、表面の一部に黒体塗料を塗布した鋼板に、一般的な1回焼入れを実施した場合、黒体塗料が塗布された領域(図5中「黒体塗料あり」と表記)と黒体塗料が塗布されていない領域(図5中「黒体塗料なし」と表記)とのビッカース硬さの差は、約300Hvとなる(図5参照)。この硬度差は、引張強度(TS)差950MPaに相当する。
一方、1回目の焼入れを実施した鋼板表面の一部に黒体塗料を塗布した後、2回目の焼き入れを実施した場合、黒体塗料が塗布された領域と黒体塗料が塗布されていない領域とのビッカース硬さの差は、約100Hvとなる(図5参照)。この硬度差は、引張強度(TS)差330MPaに相当する。
このように、黒体塗料を採用した手法と、2回焼入れプロセスを採用した手法とを組み合わせると、得られる強度差が小さくなる。
十分な強度差が得られない原因は、1回目の焼き入れによって、鋼板表面に生成した酸化被膜にある。酸化被膜がある鋼板表面の一部に黒体塗料を塗布しても、黒体塗料が塗布された領域と黒体塗料が塗布されていない領域との熱放射率差は小さい。つまり、2回焼入れプロセスを採用した手法においては、黒体塗料を採用した手法による熱放射率分布を作り込み難く、強度差および靭性の増加は両立しない。
それに対して、第一の領域の表面に酸化被膜を有し、第二の領域の表面は地鉄又はめっき層が露出した鋼板を適用すると、酸化被膜の有無により、第一の領域よりも第二の領域の熱放射率が十分低くなる。それにより、同一鋼板内で、熱放射率差の大きい、熱放射率分布を付与できる。この鋼板に熱間プレスを施すと、熱放射率が低い第一の領域は、第二の領域よりも、加熱したときの昇温速度が高くなり、十分高強度化される。その結果、強度差が大きい、高強度部位からなる第一の領域と軟化部位からなる第二の領域とを有する熱間プレス成形品が得られる。
それに加え、適用する鋼板の板厚中心部におけるマルテンサイトおよびベイナイト組織の合計の面積分率を70%以上、かつ、適用する鋼板の板厚中心部における炭素量を0.15~0.80質量%とする。それにより、熱間プレス成形時に、炭素が固溶しやすくなり、得られる熱間プレス成形品の高強度部(第一の領域)に高い靭性が付与できる。
以上の知見により、本実施形態に係る熱間プレス成形品の製造方法では、単一成形品内に強度差が大きい強度分布を有し、高強度部位の靭性を確保した熱間プレス成形品を製造できることが見出された。
以下、図面を参照しつつ、本実施形態に係る熱間プレス成形品の詳細について説明する。
図1は、本実施形態に係る熱間プレス成形品の製造方法の一例を示す工程図である。
なお、図1中、10は鋼板、20は鋼板コイル、22はブランキングされた鋼板(以下「ブランキング材」とも称する。)、24は加熱炉、26は金型、26Aは上金型(ダイ)、26Bは下金型(パンチ)、26Cはホルダー、28は熱間プレス成形品を示す。
(準備工程)
準備工程では、所定の鋼板を準備する。
具体的には、例えば、準備工程では、鋼板がコイル状に巻かれた鋼板コイル(図1(1)参照)から鋼板を引き出し(図1(2)参照)、ブランキング(切り抜き加工)する(図1(3)参照))。
ここで、ブランキング材(ブランキングされた鋼板)は、鋼板の板厚中心部におけるマルテンサイト組織およびベイナイト組織の合計の面積分率が70%以上であり、鋼板の板厚中心部における炭素量が0.15~0.80質量%である鋼板を適用する。
ブランキング材において、マルテンサイト組織およびベイナイト組織の合計の面積分率が70%未満であると、得られる熱間プレス成形品中の炭素の固溶量が低減し、高強度部位(第一の領域)が靭性不良となる。そのため、マルテンサイト組織およびベイナイト組織の合計の面積分率が70%以上とする。
マルテンサイト組織およびベイナイト組織の合計の面積分率は、熱間プレス成形品の高強度部位(第一の領域)の靭性確保の観点から、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
ここで、マルテンサイト組織およびベイナイト組織の合計の面積分率が70%以上とするには、ブランキング材(ブランキングされた鋼板)をAc3変態点より高温に加熱してオーステナイト化した後、冷却してマルテンサイト変態又はベイナイト変態させる熱処理を施すことがよい。
なお、ブランキングされる前の鋼板(鋼板コイルから引き出された鋼板)、鋼板コイルに巻かれる前の鋼板に対して、この熱処理を施して、マルテンサイト組織およびベイナイト組織の合計の面積分率が70%以上としてもよい。
マルテンサイト組織およびベイナイト組織の合計の面積分率の測定は、次の通りである。
鋼板を圧延方向および厚さ方向に沿って切断した断面(以下「L断面」とも称する)を有する試料を採取する。
試料のL断面を、鏡面研磨を施し、ナイタール溶液(硝酸3gをエタノール100mlで溶解し、必要に応じて界面活性剤を加えた溶液)を用いて、5~30秒腐食した後、水洗する。
その後、後方散乱電子回折パターン分析装置(EBSD装置)付き走査電子顕微鏡により、試料のL断面のうち、鋼板の板厚中心部に位置する領域(200μm×200mμ)を倍率500倍で観察する。この観察画面において、観察画面に対する、マルテンサイト組織およびベイナイト組織の合計の面積分率を計測する。そして、計測した10視野の算術平均をマルテンサイト組織およびベイナイト組織の合計の面積分率とする。
ここで、観察画面において、各組織(マルテンサイト組織、ベイナイト組織、フェライト組織等)は、EBSD測定結果分析ソフトウェアOIMAnalysis version 7.2.1を用い、BCC結晶構造を持つ測定点を表示し、結晶方位分布とImage Quality Mapの値により識別する。なお、オーステナイト組織(残留オーステナイト組織含む)は、FCC結晶構造を持つ測定点を表示し、同様の方法により識別する。
ブランキング材(ブランキングされた鋼板)において、炭素量を0.15質量%未満とすると、得られる熱間プレス成形品中の炭素の固溶量が少なく、高強度部位(第一の領域)が靭性不良となる。一方、炭素量が0.80質量%超えとすると、得られる熱間プレス成形品中に過剰に炭素が固溶し、高強度部位(第一の領域)が靭性不良となる。そのため、炭素量は、0.15~0.80質量%とする。
炭素量は、熱間プレス成形品の高強度部位(第一の領域)の靭性確保の観点から、0.15~0.60質量%が好ましく、0.25~0.40質量%がより好ましい。
なお、ブランキング材(ブランキングされた鋼板)の化学組成は、質量%で、C:0.15~0.80%、Si:0.001~2.0%、Mn:0.5~3.0%、P:0~0.05%、S:0~0.01%、N:0~0.01%、Al:0.001~1.0%、B:0~0.01%、並びに、残部:Feおよび不純物を含む化学組成が例示される。
次に、ブランキング材(ブランキングされた鋼板)の表面に対して、部分的に酸化被膜を除去する。それにより、表面に酸化被膜を有する第一の領域と、表面に地鉄又はめっき層が露出した第二の領域と、を備える鋼板とする(図2(1)~図4(1)参照)。
なお、図2~図4中、22はブランキング材(ブランキングされた鋼板10)、22Aは第一の領域、22Bは第二の領域、28Aは高強度部位(第一の領域)、28Bは軟化部位(第二の領域)、30Aは天板部、30Bは縦壁部、30Cはフランジ部、28は熱間プレス成形品を示す。
第一の領域の酸化被膜の厚さは、得られる熱間プレス成形品の高強度部位(第一の領域)の高強度化の観点から、片面につき0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましい。ただし、プレス成形品の組み立て時に多用される電気抵抗溶接時に飛び散りが発生するとの観点から、第一の領域の酸化被膜の厚さは、片面につき0.1μm以下がよい。
第二の領域は、地鉄又はめっき層が露出した領域であるが、例えば、ショットピーニング処理、エッチング処理、研磨,研削,切削,レーザークリーニング処理等の処理により形成する。
第二の領域は、鋼板の片面で地鉄又はめっき層が露出した領域であってもよいし、鋼板の両面で地鉄又はめっき層が露出した領域であってもよい。
第二の領域は、一つの領域であっても、複数の領域としてもよい。
第二の領域は、地鉄又はめっき層が露出していればよい。これには、削り残し、すなわち酸化被膜が部分的に残存した態様、酸化被膜を除去後に熱放射率に影響を及ぼさない程度の薄い酸化被膜が生成した態様も含まれる。このような態様は、炉加熱の際に完全に地鉄又はめっき層が露出したのとほぼ同じ昇温速度になるからである。
第二の領域は、得られる熱間プレス成形品の軟化部位とする領域に形成する。軟化部位とする領域としては、例えば、ボルト締めする目的で、穴あけ加工を施す部位(例えばフランジ部等)、衝突時の折れモードを制御する目的で、成形品が変形する際に早期に変形させたい部位等が例示できる。
具体的には、例えば、天板部、縦壁部およびフランジ部を有する熱間プレス成形品において、フランジ部の一部を穴あけ加工を施す部位(軟化部位)とする場合(図2(2)~図3(2)参照)、対応するブランキング材の領域に第二の領域を形成する(図2(1)~図3(1)参照)。
なお、第二の領域は、穴あけ加工を施す複数の部位を取り囲むように連続して形成してもよいし(図2(1)、図2(2)参照)、穴あけ加工を施す複数の部位の周囲のみを不連続で形成してもよい(図3(1)、図3(2)参照)
また、例えば、天板部、縦壁部およびフランジ部を有する熱間プレス成形品において、長手方向中央部を、成形品が変形する際に早期に変形させたい部位(軟化部位)とする場合(図4(2)参照)、対応するブランキング材の領域に第二の領域を形成する(図4(1)参照)。
ブランキング材(ブランキングされた鋼板)において、第一の領域よりも第二の領域の熱放射率が低く、かつ第一の領域と第二の領域との熱放射率の差が20%以上であることがよい。
第一の領域と第二の領域との熱放射率の差が20%未満であると、得られる熱間プレス成形品における、高強度部位(第一の領域)と軟化部位(第二の領域)との強度差が得られ難く、目的とする強度分布を有する熱間プレス成形品が得られない場合がある。
第一の領域と第二の領域との熱放射率の差は、高強度部位(第一の領域)と軟化部位(第二の領域)との強度差を高くする観点から、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。
第一の領域と第二の領域との熱放射率の測定は、次の通りである。
評価する第一の領域又は第二の領域が収まるように鋼板を10×10mmで切断し、これを試料とする。フーリエ変換赤外分光光度計を用いて,波長4~22μmにおける試料表面の分光反射輝度を測定する。得られた分光反射輝度から波長4~22μmにおける分光放射率を求める。分光放射率は熱放射率と同義である。
なお、第二の領域の形成は、ブランキング材(ブランキングされた鋼板)に形成する態様に限られず、ブランキングされる前の鋼板(鋼板コイルから引き出された鋼板)に形成する態様、鋼板コイルに巻かれる前の鋼板に形成する態様等であってもよい。
ブランキング材(ブランキングされた鋼板)は、非めっき鋼板であってもよいし、めっき鋼板(例えば、Alめっき鋼板、亜鉛めっき鋼板、亜鉛合金めっき鋼板等)であってもよい。めっき鋼板の表面にも、酸化被膜が形成されるためである。
ブランキング材(ブランキングされた鋼板)の板厚は、成形性の観点から、3mm以下が好ましく、1.0~2.6mmがより好ましい。
以上のようにして、第一の領域と第二の領域とを備えた鋼板(ブランキングされた鋼板)を準備する。
(加熱工程)
加熱工程では、鋼板を加熱する(図1(4)参照)。
具体的には、例えば、加熱工程では、ブランキングされた鋼板を、加熱炉で加熱する。
加熱工程では、第一の領域の表面における昇温速度が10℃/s以上、第一の領域の表面における加熱温度がAc3点以上Ac3点+80℃以下で、鋼板を加熱することが好ましい。また、加熱時間は、加熱温度がAc3点以上Ac3点+80℃以下に到達してから、1秒以内が好ましい。
第一の領域の表面における加熱条件を上記範囲とすることで、鋼板の金属組織が十分にオーステナイト化し、加熱後の冷却により、第一の領域(高強度部位)のマルテンサイト変態が十分に進行する。そのため、十分に高強度化した高強度部位(第一の領域)を有する熱間プレス成形品が得られ易くなる。つまり、強度差が大きい、高強度部位(第一の領域)と軟化部位(第二の領域)とを有する熱間プレス成形体が得られ易くなる。
十分に高強度化した高強度部位(第一の領域)を有する熱間プレス成形品が得られる観点から、昇温速度は10℃/s以上がより好ましく、20℃/s以上がさらに好ましい。
また、同観点から、加熱温度は、Ac3点点以上Ac3点+80℃以下がより好ましく、Ac3点点以上Ac3点+50℃以下がさらに好ましい。
また、同観点から、加熱時間は、45~90秒がより好ましい。
ここで、Ac3点は、次式により計算する。
Ac3=910-203×(C)0.5-15.2×Ni+44.7×Si+104×V+31.5×Mo-30×Mn-11×Cr-20×Cu+700×P+400×Al+400×Ti
上記式中、各元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。ただし、鋼板に対象の元素が含まれない場合、0を代入して計算する。
なお、第二の領域の表面における加熱条件には、特に制限はない。目的とする熱間プレス成形品の軟化部位(第二の領域)の強度に応じて、適宜設定する。
第二の領域の表面における加熱条件の一例としては、例えば、第二の領域の表面における昇温速度3~8℃/s、第二の領域の表面における加熱温度500℃以上Ac3点未満、加熱時間45~90秒が例示される。
(冷却工程、成形工程)
冷却工程は、加熱した鋼板を冷却する。そして、成形工程は、冷却した鋼板を熱間プレス成形する(図1(5)参照)。それにより、目的とするプレス成形品が得られる(図1(6))。
具体的には、例えば、冷却工程および成形工程では、ブランキング材(ブランキングされた鋼板)を加熱炉から取り出した後、ホルダーで上金型としてのダイに押さえ付けた状態で冷却する。その後、上金型としてのダイ及び下金型としてのパンチの一対の金型により、ブランキング材をプレスして成形する。そして、金型から取り外すことで、目的とするプレス成形品が得られる。
冷却工程では、第一の領域の板厚中心部における組織の面積分率の70%以上をマルテンサイト変態させる冷却速度で、鋼板を冷却することが好ましい。それにより、第一の領域(高強度部位)のマルテンサイト変態が十分に進行する。そのため、十分に高強度化した高強度部位(第一の領域)を有する熱間プレス成形品が得られ易くなる。つまり、強度差が大きい、高強度部位(第一の領域)と軟化部位(第二の領域)とを有する熱間プレス成形体が得られ易くなる。
十分に高強度化した高強度部位(第一の領域)を有する熱間プレス成形品が得られる観点から、80%以上をマルテンサイト変態させる冷却速度であることがより好ましく、90%以上をマルテンサイト変態させる冷却速度がさらに好ましい。
所定の割合以上をマルテンサイト変態させる冷却速度は、連続冷却変態図(いわゆるCCT図)から求まる臨界冷却速度を満たしていればよい.具体的な冷却速度は、例えば、15~200℃/sが好ましく、30~100℃/sがより好ましく、50~100℃/sが最も好ましい。
なお、具体的な冷却速度は、加熱終了後(炉から搬出後)から熱間プレス成形までの平均冷却速度である。
ここで、加熱工程における鋼板の加熱開始から、冷却工程における鋼板のマルテンサイト変態開始までの時間が、120秒以内であることが好ましい。それにより、高強度部位(第一の領域)が70%以上のマルテンサイト組織で高強度化された熱間プレス成形品が得られ易くなる。
加熱工程における鋼板の加熱開始から、冷却工程における鋼板のマルテンサイト変態開始までの時間は、加熱工程における加熱昇温時間及び炉内均熱時間、冷却工程における冷却時間、並びに、成形工程におけるプレス成形時間が含まれる。
ここで、加熱昇温時間は、加熱開始時刻から加熱炉の設定温度と鋼板の温度との差が10℃未満となる時刻の差をいう。加熱昇温時間は、第一の領域と第二の領域の温度差の観点から、90秒以内が好ましい。
炉内均熱時間は,加熱炉の設定温度と鋼板の温度との差が10℃未満になる時刻から鋼板を加熱炉から搬出する時刻の差をいう。炉内均熱時間は結晶粒径粗大化の観点から,1秒以下が好ましい。
プレス成形時間は,鋼板を加熱炉から搬出する時刻からプレス成形完了までの時刻の差をいう。プレス成形時間は,生産性を阻害しないよう、30秒以下が好ましい。
冷却時間は,水冷や金型冷却を行っている時間をいう。冷却時間は,高強度なプレス製品を生産するために20秒以内が好ましい。つまり、加熱工程における鋼板の加熱開始から、冷却工程における鋼板のマルテンサイト変態開始までの時間は、120秒以内が好ましく、さらに好ましくは90秒以内である。
なお、第二の領域の表面における冷却速度には、特に制限はない。目的とする熱間プレス成形品の軟化部位(第二の領域)の強度に応じて、適宜設定する。
第二の領域の表面における冷却速度の一例としては、例えば、15~200℃/sが例示される。
一方、成形工程では、第一の領域の表面における温度がAr3変態点以上で、鋼板を熱間プレス成形することが好ましい。具体的には、例えば、成形工程では、金型により、ブランキング材を所定形状にプレス成形する時点まではAr3変態点以上の温度を保ち、その直後から、金型により熱を奪って急冷して、熱間プレス成形することが好ましい。
それにより、冷却斑の発生が抑えられ、平坦度が高く、かつ高強度部位(第一の領域)が70%以上のマルテンサイト組織で高強度化された熱間プレス成形品が得られ易くなる。
ここで、Ar3変態点は、次式により計算する。
Ar3=901-325×C+33×Si-92×(Mn+Ni/2+Cr/2+Cu/2+Mo/2)+52×Al
上記式中、各元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。ただし、鋼板に対象の元素が含まれない場合、0を代入して計算する。
以上の工程を経て、本実施形態に係る熱間プレス成形品の製造方法では、熱間プレス成形品が得られる。
ここで、得られる熱間プレス成形品は、例えば、
第一の領域と第二の領域とを備え、
第一の領域の表面に酸化被膜を有し、
第二の領域の表面に第一の領域の酸化被膜より0.01μm以上薄い酸化被膜を有し、
第一の領域の板厚中心部におけるマルテンサイト組織の面積分率が70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上)であり、
成形品の板厚中心部における炭素量が0.15~0.80質量%である、
第一の領域の板厚中心部におけるビッカース硬さが、第二の領域の板厚中心部におけるビッカース硬さに比べて、100HV以上高い、
熱間プレス成形品が例示される。
この熱間プレス成形品は、第一の領域が高強度部位、第二の領域が軟化部位であり、単一成形品内に強度差が大きい強度分布を有し、高強度部位の靭性を確保した熱間プレス成形品である。
なお、ビッカース硬さは、JIS Z 2244(2009)に準拠して測定する。ビッカース硬さは、熱間プレス成形品の板厚中央部を2mmピッチで10点測定した算術平均値とする。ビッカース硬さの測定は、荷重9.8Nの条件で行う。
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
(実施例A)
黒体塗料を採用した手法により、単一成形品内に強度差が大きい強度分布を有する熱間プレス成形品を得る試験を行った。具体的には、次の通りである。
試験体には、鋼板の板厚中心部において、C:0.36%、Si:0.17%、Mn:1.28%、P:0.008%、S:0.0006%、N:0.002%、Cu:0.01%、Cr:0.21%、並びに、残部:Feおよび不純物からなる化学組成を有し、引張強度2.0GPa級ホットスタンプ用Alめっき冷延鋼板(Ac3点=820℃)を使用した。すなわち、試験体は表1の鋼板No.Cの組成とめっき種である。試験体のサイズは、長さ150mm×巾75mm×厚さ1.6mmとした。
-比較例A1:1回焼入れプロセス例-
まず、試験体の半分の領域(75mm×75mm)の表裏面に対し、バーコータを用いて黒体塗料を塗布した。この黒体塗料はカーボンブラックと樹脂を混ぜ合わせることで作製した。このようにして、黒体塗料によって熱放射率を部分的に高めた試験体を作製した。
次に、試験体を1000℃に設定した大気炉で75秒間加熱し、搬出直後に平板金型で金型冷却した。冷却後の試験体の断面(板厚中央部)の硬度分布をビッカース硬さ試験で測定した。その結果を図5に示す。
図5に示すように、黒体塗料が塗布された領域(図5中「黒体塗料あり」と表記)の硬度は高く、一方で、黒体塗料を塗布していない領域(図5中「黒体塗料なし」と表記)の硬度は低いことがわかる。その硬度差は約430Hvであり、硬度差を引張強度差に換算すると、引張強度差1400MPaに相当する。このように、強度差が大きい強度分布が付与されていることがわかる。
次に、冷却後の試験体における「黒体塗料が塗布された領域(高強度部位)」の靭性を次の通り調べた。
別途、1回焼入れプロセスにおける鋼板の熱履歴でバンパー断面形状部材を作製した。黒体塗料を全面に塗布したブランキング材を1000℃に設定した大気炉で75秒間加熱した後、直ちに冷却工程においてプレス金型内へ投入して成形加工を行い、金型で冷却した。
次に、上記バンパー断面形状部材に対して、図7に示すように、バンパーの変形試験機により、ハット頂部から静的な荷重を与え、バンパー断面形状部材における変形抵抗とストローク(変形量)との関係(ストローク曲線)を取得した。その結果を図8に示す。一般的なホットスタンピングプロセスのバンパー断面形状部材は、ストロークが8.5mmで破断し荷重が急激に低下している。これは部材に生じた亀裂が進展したためである。
このように、冷却後の試験体における「黒体塗料が塗布された領域(高強度部位)」の靭性は低かった。
なお、図7中、280はバンパー断面形状部材、282Aは変形試験機の上型、282Bは変形試験機の下型を示す。
-比較例A2:2回焼入れプロセス例-
まず、試験体を、900℃設定の大気炉で4分間加熱した後、平板金型で型冷却を行った。それにより、試験体の板厚中央部における組織を、マルテンサイト組織およびベイナイト組織の合計の面積分率=100%とした。
次に、加熱冷却後の試験体の半分の領域(75mm×75mm)の表裏面に対し、バーコータを用いて黒体塗料を塗布した。このようにして、黒体塗料によって熱放射率を部分的に高めた試験体を作製した。
次に、黒体塗料を塗布した試験体を、1000℃に設定した大気炉で48秒間加熱し、搬出直後に平板金型で金型冷却した。冷却後の試験体の断面(板厚中央部)の硬度分布をビッカース硬さ試験で測定した。その結果を図5に示す。
図5に示すように、黒体塗料が塗布された領域(図5中「黒体塗料あり」と表記)の硬度と、黒体塗料を塗布していない領域(図5中「黒体塗料なし」と表記)の硬度との硬度差は約100Hvであった。その硬度差を引張強度差に換算すると、引張強度差330MPaに相当する。このように、付与される強度分布における強度差が小さいことがわかる。
-発明例A1-
まず、試験体を、900℃設定の大気炉で4分間加熱した後、平板金型で型冷却を行った。それにより、試験体の板厚中央部における組織を、マルテンサイト組織およびベイナイト組織の合計の面積分率=100%とした。
次に、加熱冷却後の試験体の半分の領域の表裏面を研磨紙で磨き、光沢を得た。それにより、片面当たりの厚さが0.05μmの酸化被膜を有する第一の領域と、表裏面にめっき層が露出した第二の領域と、を有する試験体を得た。なお、第一の領域と第二の領域との熱放射率の差は32%であった。
次に、第一および第二の領域を有する試験体を、1000℃に設定した炉で、第一の領域の昇温速度20.8℃/sで、85秒間加熱し、搬出直後に平板金型で金型冷却した。金型冷却の冷却速度は、21℃/sであり、第一の領域の板厚中心部における組織の面積分率の100%をマルテンサイト変態させる冷却速度に相当する。
次に、冷却後の試験体の断面(板厚中央部)の硬度分布をビッカース硬さ試験で測定した。その結果を図6に示す。
図6に示すように、第一の領域(図6中「研磨なし」と表記)の硬度は高く、一方で、研磨して研いた領域(図6中「研磨あり」と表記)の硬度は低いことがわかる。その硬度差は約280Hvであり、硬度差を引張強度差に換算すると、引張強度差930MPaに相当する。このように、強度差が大きい強度分布が付与されていることがわかる。
次に、冷却後の試験体における「第一の領域(高強度部位)」の靭性を、比較例A1と同様に調べた。
別途、上記第一の領域に与えた熱履歴と同様の熱履歴でバンパー断面形状部材を作製した。準備工程では、全面研磨なしのブランキング材を900℃まで加熱して約4分間等温保持した後,直ちにプレス金型内に投入し、金型による接触熱伝達を利用して室温まで冷却し、焼入れした。その後、加熱工程と冷却工程ではAc3変態点直上の約900℃まで加熱した後、直ちに金型内に投入して成形加工を行いながら金型で冷却することで焼入れして、バンパー断面形状部材を作製した。
次に、比較例A1と同様に、上記バンパー断面形状部材における変形抵抗とストローク(変形量)との関係(ストローク曲線)を取得した。その結果を図8に示す。本発明例A1のプロセスのバンパー断面形状部材は、ストロークが17mm超まで破断せずに高い変形荷重を維持した。なお、表1に記載の鋼種Aならびに鋼種Bを使用しても同様の結果が得られた。
このように、冷却後の試験体における第一の領域(高強度部位)の靭性は高かった。
以上の各例の結果から、所定の鋼板に熱間プレス成形を施すことで、単一成形品内に強度差が大きい強度分布を有し、高強度部位の靭性を確保した熱間プレス成形品が製造できることがわかる。
(実施例B)
板厚1.6mmで、表1に示す特性を持つ鋼板を準備し、半分の領域の表裏面を研磨紙で磨き、光沢を得た。それにより、片面当たりの厚さが所定の酸化被膜を有する第一の領域と、表裏面にめっき層が露出した第二の領域と、を有する試験体を得た。
なお、第一の領域の酸化被膜の厚さ、第一の領域と第二の領域との熱放射率の差(表1中「熱放射率差」と表記)を表1に示す。
また、表1中、「MA+B面積率」との表記は、鋼板の板厚中心部におけるマルテンサイト組織およびベイナイト組織の合計の面積分率を示す。
次に、表2に示す条件に従って、鋼板を、加熱および冷却後、熱間プレス成形を行って、熱間プレス成形品の試験体を得た。
なお、表2中、「*1」は、冷却工程での冷却速度により、第一の領域の板厚中心部における組織において、マルテンサイト変態させる割合(%)を示す。
また、「*2」は、加熱工程における前記鋼板の加熱開始から、前記冷却工程における前記鋼板のマルテンサイト変態開始までの時間を示す。
また、「プレス成形温度」は、第一の領域の前記表面における温度を示す。
また、「GA」は、溶融Znめっき鋼板を示す。
また、「Al」は、Alめっき鋼板を示す。
次に、熱間プレス成形品の試験体の断面(板厚中央部)のビッカース硬さを、既述の方法で測定した。その結果を表2に示す。
Figure 0007260765000001
Figure 0007260765000002
実施例Bの結果から、本発明例に相当する試験体No.1~3は、単一成形品内に強度差が大きい強度分布を有し、高強度部位の靭性を確保した熱間プレス成形品が製造できることがわかる。
以上、本発明の好適な実施形態および実施例について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
10 鋼板
20 鋼板コイル
22 ブランキングされた鋼板(ブランキング材)
22A 第一の領域
22B 第二の領域、
24 加熱炉
26 金型
26A 上金型(ダイ)
26B 下金型(パンチ)
26C ホルダー
28 熱間プレス成形品
28A 高強度部位(第一の領域)
28B 軟化部位(第二の領域)
30A 天板部
30B、縦壁部
30C、フランジ部

Claims (5)

  1. 第一の領域と第二の領域とを備え、前記第一の領域の表面に酸化被膜を有し、前記第二の領域の表面は地鉄又はめっき層が露出し、鋼板の板厚中心部におけるマルテンサイト組織およびベイナイト組織の合計の面積分率が70%以上であり、前記鋼板の前記板厚中心部における炭素量が0.15~0.80質量%である前記鋼板を準備する準備工程と、
    前記鋼板を加熱する加熱工程と、
    加熱した前記鋼板を冷却する冷却工程と、
    冷却した前記鋼板を熱間プレス成形する成形工程と、
    を有する熱間プレス成形品の製造方法。
  2. 前記準備工程において、前記第一の領域における前記酸化被膜の厚さが片面につき0.01μm以上である、請求項1に記載の熱間プレス成形品の製造方法。
  3. 前記準備工程において、前記鋼板は、前記第一の領域よりも前記第二の領域の熱放射率が低く、前記第一の領域と前記第二の領域との熱放射率の差が10%以上である、
    請求項1又は請求項2に記載の熱間プレス成形品の製造方法。
  4. 前記鋼板の板厚が3mm以下であり、
    前記加熱工程において、前記第一の領域の前記表面における昇温速度が10℃/s以上、前記第一の領域の前記表面における加熱温度がAc3点以上Ac3点+80℃以下で、前記鋼板を加熱し、
    前記冷却工程において、前記第一の領域の板厚中心部における組織の面積分率の70%以上をマルテンサイト変態させる冷却速度で、前記鋼板を冷却し、
    前記成形工程において、前記第一の領域の前記表面における温度がAr3変態点以上で、前記鋼板を熱間プレス成形する、
    請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の熱間プレス成形品の製造方法。
  5. 前記加熱工程における前記鋼板の加熱開始から、前記冷却工程における前記鋼板のマルテンサイト変態開始までの時間が、120秒以内である、
    請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の熱間プレス成形品の製造方法。
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