以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
なお、以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、及び、第3方向のうち、第1方向を「軸方向X」といい、第2方向を「幅方向Y」といい、第3方向を「高さ方向Z」という。ここでは、軸方向Xと幅方向Yと高さ方向Zとは、相互に略直交する。軸方向Xは、典型的には、金属端子が設けられる配索材の延在方向に相当し、金属端子の電気接続部と配索材圧着部とが並ぶ方向に相当する。幅方向Yと高さ方向Zとは、軸方向Xと交差する交差方向に相当する。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、各部が相互に組み付けられた状態での方向を表すものとする。
[実施形態1]
図1に示す本実施形態に係るワイヤハーネスWHは、車両Vに搭載される。ワイヤハーネスWHは、例えば、車両Vに搭載される各装置間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の配索材Wを束にして集合部品とし、コネクタ等で複数の配索材Wを各装置に接続するようにしたものである。ワイヤハーネスWHは、導電性を有する配索材Wと、当該配索材Wの端末に設けられる金属端子Tとを備える。配索材Wと金属端子Tとは、いわゆる端子付き電線を構成する。ワイヤハーネスWHは、この他、さらに、コルゲートチューブ、グロメット等の外装部材、電気接続箱、固定具など種々の構成部品を含んで構成されてもよい。
配索材Wは、図1、図2に示すように、金属端子Tと電気的に接続されるものである。配索材Wは、導電性を有する線状の導体部W1と、当該導体部W1の外側を覆う絶縁性を有する絶縁被覆部W2とを含んで構成される。配索材Wは、絶縁被覆部W2で導体部W1を被覆した絶縁電線である。本実施形態の導体部W1は、導電性を有する金属素線を複数束ねた芯線であるが、当該複数の金属素線を撚り合わせた撚り芯線であってもよい。また、導体部W1は、いわゆる金属棒であってもよい。絶縁被覆部W2は、導体部W1の外周側を被覆する電線被覆である。絶縁被覆部W2は、例えば、絶縁性の樹脂材料(PPやPVC、架橋PE等。耐摩耗性や耐薬品性、耐熱性等に配慮して適宜選定される。)等を押出成形することによって形成される。配索材Wは、軸方向Xに沿って線状に延在し、延在方向(軸方向X)に対してほぼ同じ径で延びるように形成される。配索材Wは、導体部W1の断面形状(軸方向Xと交差する方向の断面形状)が略円形状、絶縁被覆部W2の断面形状が略円環形状となっており、全体として略円形状の断面形状となっている。配索材Wは、少なくとも導体部W1の一方の端末において、絶縁被覆部W2が剥ぎ取られており、当該導体部W1の一方の端末が絶縁被覆部W2の端末W2aから露出しており、当該露出している導体部W1の端末に金属端子Tが圧着される。
金属端子Tは、図1、図2に示すように、配索材Wの導体部W1に電気的に接続され、導電性を有する相手端子が電気的に接続される端子金具である。金属端子Tは、ワイヤハーネスWHにおいて複数設けられ、例えば、それぞれコネクタハウジングH等に保持される。そして、一対の金属端子Tは、それぞれのコネクタハウジングHが相互に嵌合しコネクタ接合されることで、電気的に接続され相互間に電気的な接続部位が形成される。この結果、相互に接続される一対の金属端子Tは、それぞれに接続された配索材Wを相互に導通接続することができる。この場合において、上記ように相互に接続される一対の金属端子Tは、一方の金属端子Tが他方の金属端子Tにおける相手端子を構成する。
ここで、本実施形態の配索材Wは、導体部W1がアルミニウム(Al)又はアルミニウム合金によって構成される。つまり、本実施形態の導体部W1は、アルミニウム又はアルミニウム合金によって構成された金属素線を複数束ねた芯線である。一方、本実施形態の金属端子Tは、導体部W1とは異なる異種金属、例えば、銅(Cu)又は銅合金によって構成される。このため、本実施形態のワイヤハーネスWHは、導体部W1の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金、金属端子Tの材料が銅又は銅合金であることで、両者の間に水(塩水)等が浸入すると両者のイオン化傾向の違いによって、導体部W1と金属端子Tとの間においてガルバニック腐食が発生するおそれがある。ここで、上記アルミニウム合金は、アルミニウムを主成分とする合金である。また、上記銅合金は、銅を主成分とする合金であり、例えば、いわゆる黄銅等を含む。
これに対して、本実施形態のワイヤハーネスWHは、図1に示すように、車両Vにおいて領域分けされる腐食対策不要領域VAと腐食対策要求領域VBとにおいて、金属端子Tとして非防食端子T1と防食端子T2とを適正に使い分けられて構成される。非防食端子T1は、上記のような腐食を防止する防食が施されていない金属端子Tである。一方、防食端子T2は、上記のような腐食を防止する防食が施された金属端子Tである。
ここで、腐食対策不要領域VAとは、上記のような腐食に対する対策が不要とされる領域である。腐食対策不要領域VAは、典型的には、水等が浸入しない領域であり、例えば、防水構造等によって防水された区画内の領域である。一方、腐食対策要求領域VBとは、上記のような腐食に対する対策が要求される領域である。腐食対策要求領域VBは、典型的には、水等が浸入し上記のようなガルバニック腐食が発生しうる領域である。腐食対策不要領域VAと腐食対策要求領域VBとは、車両Vにおいて、金属端子Tの配置位置、及び、当該配置位置における周辺環境等に応じて予め領域分けされる。
本実施形態のワイヤハーネスWHは、腐食対策不要領域VAにおいて、典型的には、金属端子Tとして非防食端子T1が適用される。その上で、本実施形態のワイヤハーネスWHは、腐食対策要求領域VBにおいては、金属端子Tとして、一律に防食端子T2を適用するのではなく、腐食対策要求領域VBであっても防食端子T2だけでなく条件に応じてあえて非防食端子T1も適用される。すなわち、本実施形態の金属端子Tは、腐食対策要求領域VBに複数設けられ、当該腐食対策要求領域VB内の複数の金属端子Tは、非防食端子T1、及び、防食端子T2を含んで構成される。この構成により、本実施形態のワイヤハーネスWHは、ワイヤハーネスWH全体において、適正化された防食性能の確保を図ったものである。以下では、まず、図2、図3、図4、図5、図6を参照して非防食端子T1の一例を説明し、図7、図8を参照して防食端子T2の一例を説明する。
非防食端子T1は、バリエーションとして、図2、図3に示す非防食メス端子T11と、図4に示す非防食オス端子T12とを含んで構成される。非防食メス端子T11は、非防食オス端子T12における相手端子を構成し、非防食オス端子T12は、非防食メス端子T11における相手端子を構成する。
図2、図3に示す非防食メス端子T11は、電気接続部2と、連結部3と、配索材圧着部4とを含んで構成される。電気接続部2と連結部3と配索材圧着部4とは、全体が一体で導電性を有する金属部材によって構成される。非防食メス端子T11は、一枚の板金を、電気接続部2、連結部3、配索材圧着部4等の各部に対応した形状にあわせて打ち抜き加工、プレス加工、折り曲げ加工等の各種加工によって成形することで各部が立体的に一体で形成される。非防食メス端子T11は、軸方向Xに沿って一方側から他方側に向かって、電気接続部2、連結部3、配索材圧着部4の順で並んで相互に連結される。
一方、図4に示す非防食オス端子T12は、電気接続部2にかえて電気接続部102を含んで構成される点で非防食メス端子T11と異なる。非防食オス端子T12のその他の構成は、若干形状が異なる部分があるものの、概ね非防食メス端子T11と略同様の構成である。
以下では、連結部3、配索材圧着部4については、非防食メス端子T11と非防食オス端子T12とで共通の説明とし、電気接続部2と電気接続部102とについては、電気接続部2と電気接続部102との相違点以外はできる限り共通の説明とする。
電気接続部2、102は、相手端子(非防食メス端子T11においては非防食オス端子T12、非防食オス端子T12においては非防食メス端子T11)と電気的に接続される部分である。本実施形態の電気接続部2は、メス型の端子形状をなし、オス型の端子形状の相手端子である非防食オス端子T12の電気接続部102と電気的に接続される。一方、本実施形態の電気接続部102は、オス型の端子形状をなし、メス型の端子形状の相手端子である非防食メス端子T11の電気接続部2と電気的に接続される。
より具体的には、電気接続部2は、図2、図3、図5に示すように、箱状部21と、バネ接点部22とを含んで構成される。箱状部21は、内部に形成される端子挿入空間部23に軸方向Xに沿って相手端子である非防食オス端子T12の電気接続部102を挿入可能な部分を構成する。箱状部21は、中心軸線が軸方向Xに沿い、両端が開口した略矩形筒状(箱状)に形成される。箱状部21は、軸方向Xに沿って延在し、軸方向Xの一方側から電気接続部102が挿入され、他方側に連結部3を介して配索材圧着部4が連結される。バネ接点部22は、端子挿入空間部23内に位置し箱状部21に弾性変形可能に片持ち状に支持され非防食オス端子T12の電気接続部102との接点を形成する部分である。バネ接点部22は、板厚方向が高さ方向Zに沿う略矩形板状に形成される。
バネ接点部22は、軸方向Xの一方側(電気接続部102が挿入される側)の端部が箱状部21に連結され支持され、軸方向Xに沿って延在する。そして、バネ接点部22は、軸方向Xの他方側の端部が自由端となる。この構成により、バネ接点部22は、箱状部21に高さ方向Zに対して弾性変形可能に片持ち状に支持される。
一方、電気接続部102は、図4、図5に示すように、箱状部121と、タブ部122とを含んで構成され。箱状部121は、タブ部122の基端を支持する部分を構成する。箱状部121は、中心軸線が軸方向Xに沿う略矩形筒状(箱状)に形成される。箱状部121は、軸方向Xに沿って延在し、軸方向Xの一方側にタブ部122が連結され、他方側に連結部3を介して配索材圧着部4が連結される。タブ部122は、電気接続部2の端子挿入空間部23内に挿入され、非防食メス端子T11の電気接続部2との接点を形成する部分である。タブ部122は、箱状部121の軸方向Xの一方の端部から当該軸方向Xの一方側に突出し軸方向Xに沿って延在する。タブ部122は、電気接続部2の端子挿入空間部23内に軸方向Xに沿って挿入可能な略直線針状に形成される。
連結部3は、図2、図3、図4に示すように、電気接続部2、102と配索材圧着部4との間に介在し、当該電気接続部2、102と当該配索材圧着部4とを連結する部分である。非防食メス端子T11、非防食オス端子T12は、電気接続部2、102と配索材圧着部4とが連結部3を介して電気的に接続され、当該配索材圧着部4を介して電気接続部2、102と配索材Wの導体部W1とが電気的に接続され導通される。
配索材圧着部4は、図2、図3、図4に示すように、配索材Wが接続され、当該配索材Wの端末と金属端子Tとを電気的に接続する部分である。配索材圧着部4は、配索材Wの端末に加締められ圧着される。配索材圧着部4は、基部41、及び、二組の一対のバレル片部42、43、44、45を含んで構成される。配索材圧着部4は、基部41と二組の一対のバレル片部42、43、44、45とによって配索材Wに対して加締められ圧着される。さらに言えば、配索材圧着部4は、基部41、及び、二組の一対のバレル片部42、43、44、45によって、導体圧着部46、中間部47、及び、被覆圧着部48が構成される。言い換えれば、配索材圧着部4は、基部41、及び、二組の一対のバレル片部42、43、44、45によって構成される導体圧着部46、中間部47、及び、被覆圧着部48を含んで構成される。導体圧着部46は、基部41の一部、及び、一対のバレル片部42、43によって構成される。中間部47は、基部41の一部によって構成される。被覆圧着部48は、基部41の一部、及び、一対のバレル片部44、45によって構成される。配索材圧着部4は、軸方向Xに沿って電気接続部2、102側から反対側に向かって、導体圧着部46、中間部47、被覆圧着部48の順で並んで相互に連結される。そして、本実施形態の配索材圧着部4は、中間部47を介して一対のバレル片部42、43と一対のバレル片部44、45とが分断されたいわゆる別体バレル型の圧着部を構成する。
具体的には、基部41は、軸方向Xに沿って延在し、配索材Wへの圧着前の状態(図2等参照)において、略U字状に形成された配索材圧着部4の底壁となる部分である。基部41は、板厚方向が高さ方向Zに沿う板状に形成される。基部41は、圧着加工の際に配索材Wの端部が載置される。基部41は、軸方向Xの一方側に連結部3を介して電気接続部2が連結される。基部41は、各部において幅方向Yの両端部が高さ方向Zに沿って立ち上がっている。より具体的には、基部41は、軸方向Xに沿って、導体圧着部46、中間部47、及び、被覆圧着部48に渡って連続する。つまり、基部41は、導体圧着部46を構成する第1基部41a、中間部47を構成する第2基部41b、被覆圧着部48を構成する第3基部41cが軸方向Xに沿って連なって構成される。基部41は、第1基部41aの軸方向Xの一方の端部に電気接続部2、102が連結される。また、基部41は、圧着加工前の状態において、第3基部41cの軸方向Xの他方の端部にキャリア連結されており、例えば、圧着加工時にキャリアから切断される。
一対のバレル片部42、43は、基部41の一部である第1基部41aと共に導体圧着部46を構成する部分である。導体圧着部46は、配索材圧着部4において軸方向Xの一端側、ここでは、電気接続部2、102側に設けられ配索材Wの導体部W1に対して加締められ圧着される部分である。更に言えば、導体圧着部46は、導体部W1に対して加締められ圧着されることで、当該導体部W1と電気的に接続される部分である。一対のバレル片部42、43は、当該導体圧着部46において第1基部41aから幅方向Yの両側にそれぞれ帯状に延びて形成され、第1基部41aとの間に配索材Wの導体部W1を包んで加締められ圧着される部分である。バレル片部42、43は、圧着加工前の状態において、U字状に形成された配索材圧着部4の側壁となる部分である。バレル片部42は、第1基部41aから軸方向Xと交差する幅方向Yの一方側に延びる。バレル片部43は、第1基部41aから幅方向Yの他方側に延びる。バレル片部42、43は、配索材Wの導体部W1に対して加締められ圧着される前の状態では、第1基部41aに対して曲げ加工が施され当該第1基部41aとあわせて略U字状に成形されている。本実施形態の一対のバレル片部42、43は、導体部W1に対して巻き付けられて加締められ、圧着された状態で、互いに重なり合わない(オーバーラップしない)ように第1基部41a側の根元から先端までの長さが設定されている。導体圧着部46は、第1基部41a、及び、一対のバレル片部42、43によって、一対のバレル片部42、43の間に配置された配索材Wの導体部W1の外側を包んで導体部W1に対して加締められ圧着される。ここでは、一対のバレル片部42、43は、いわゆるBクリンプと称する加締め圧着がなされるものとして図示している。導体圧着部46は、Bクリンプでは、第1基部41aと一対のバレル片部42、43とによって導体部W1を包んで圧着された状態で、バレル片部42、43のそれぞれが第1基部41a側に向けて折り曲げられた状態とされる。そして、導体圧着部46は、この状態で当該一対のバレル片部42、43の先端がそれぞれ導体部W1に接触して押しつけられるように加締められ圧着される。なお、導体圧着部46は、第1基部41a、及び、一対のバレル片部42、43において導体部W1と接触する部分に、導体部W1との接触面積を増やし接触安定性を向上すると共に凝着強度を向上するためのセレーション46a(図2参照)等が設けられていてもよい。また、導体圧着部46は、上記の形式に限らず、例えば、一対のバレル片部42、43が配索材Wに対して巻き付けられて加締められ、圧着された状態で、互いに重なり合う(オーバーラップする)ように構成されてもよい。
一対のバレル片部44、45は、基部41の一部である第3基部41cと共に被覆圧着部48を構成する部分である。被覆圧着部48は、配索材圧着部4において軸方向Xの他端側、ここでは、電気接続部2、102側とは反対側に設けられ配索材Wの絶縁被覆部W2に対して加締められ圧着される部分である。一対のバレル片部44、45は、当該被覆圧着部48において第3基部41cから幅方向Yの両側にそれぞれ帯状に延びて形成され、第3基部41cとの間に配索材Wの絶縁被覆部W2を包んで加締められ圧着される部分である。バレル片部44、45は、圧着加工前の状態において、U字状に形成された配索材圧着部4の側壁となる部分である。バレル片部44は、第3基部41cから軸方向Xと交差する幅方向Yの一方側に延びる。バレル片部45は、第3基部41cから幅方向Yの他方側に延びる。バレル片部44、45は、配索材Wの絶縁被覆部W2に対して加締められ圧着される前の状態では、第3基部41cに対して曲げ加工が施され当該第3基部41cとあわせて略U字状に成形されている。本実施形態の一対のバレル片部44、45は、絶縁被覆部W2に対して巻き付けられて加締められ、圧着された状態で、互いに重なり合わない(オーバーラップしない)ように第3基部41c側の根元から先端までの長さが設定され、かつ、軸方向Xにずらされて形成される。被覆圧着部48は、第3基部41c、及び、一対のバレル片部44、45によって、一対のバレル片部44、45の間に配置された配索材Wの絶縁被覆部W2の外側を包んで絶縁被覆部W2に対して加締められ圧着される。なお、被覆圧着部48は、一対のバレル片部44、45が配索材Wに対して巻き付けられて加締められ、圧着された状態で、互いに重なり合う(オーバーラップする)ように構成されてもよい。
ここでは、配索材圧着部4は、軸方向Xに対して当該被覆圧着部48と導体圧着部46との間に中間部47が介在する。中間部47は、導体圧着部46と被覆圧着部48との間に介在し、当該導体圧着部46と当該被覆圧着部48とを連結する部分である。中間部47は、第2基部41bによって構成され、当該第2基部41bの軸方向Xの一方側の端部に導体圧着部46の第1基部41aが連結され、他方側の端部に被覆圧着部48の第3基部41cが連結される。上述したように、バレル片部42、43とバレル片部44、45とは、それぞれ、互いの間に当該中間部47が介在することで相互に間隔をあけて分断して形成される。そして、中間部47は、導体部W1の中間露出部W1aが露出する部分を構成する。
非防食メス端子T11、非防食オス端子T12は、上記のような構成にあって、図5、図6に示しように、導電性を有する金属部材である母材10によって電気接続部2、102、連結部3、及び、配索材圧着部4が一体で形成される。配索材圧着部4は、上述したように、導体圧着部46、中間部47、及び、被覆圧着部48を含み、配索材圧着部4においてはこれら導体圧着部46、中間部47、及び、被覆圧着部48が母材10によって一体で形成される。そして、非防食メス端子T11、非防食オス端子T12は、当該母材10にメッキ11が施されている。本実施形態の非防食メス端子T11、非防食オス端子T12において、母材10は、アルミニウム又はアルミニウム合金によって構成された導体部W1とは異なる異種金属、ここでは、銅又は銅合金によって構成される。そして、メッキ11は、すず(Sn)によって構成される。メッキ11の下地は、銅下地、ニッケル(Ni)下地、亜鉛(Zu)下地等、いずれの下地であってもよい。
上記のように構成される非防食メス端子T11、非防食オス端子T12は、図6に示すように、導体圧着部46が配索材Wの導体部W1に圧着され、被覆圧着部48が配索材Wの絶縁被覆部W2に圧着されることで、それぞれ配索材Wの端末に圧着される。この状態で、非防食メス端子T11、非防食オス端子T12は、導体圧着部46と導体部W1との間に接点部位12が形成される。この結果、非防食メス端子T11、非防食オス端子T12は、それぞれ、この接点部位12を介して配索材Wの導体部W1と導通接続される。
そして、非防食メス端子T11と非防食オス端子T12とは、相互に接続される際には、図5に示すように、タブ部122が軸方向Xに沿って端子挿入空間部23に挿入される。このとき、タブ部122は、バネ接点部22を撓ませながら端子挿入空間部23に挿入される。そして、非防食メス端子T11と非防食オス端子T12とは、バネ接点部22の弾性復元力によってタブ部122を端子挿入空間部23内に保持した状態で、タブ部122とバネ接点部22との間やタブ部122と箱状部21の内壁面との間に接点部位13が形成される。この結果、非防食メス端子T11と非防食オス端子T12とは、接点部位13等を介して互いに導通接続され、それぞれに接続されている配索材Wの導体部W1同士が導通接続される。
そして、非防食メス端子T11、非防食オス端子T12は、ともに導体圧着部46に上述したような腐食を防止する防食が施されていない。ここでは一例として、非防食メス端子T11、非防食オス端子T12は、後述の防食端子T2で説明する防食部14が施されておらず、導体部W1の中間露出部W1a等、腐食の可能性のある部分が導体圧着部46と被覆圧着部48との間の中間部47から外部に露出している。
一方、防食端子T2は、バリエーションとして、図7に示す防食メス端子T21と、図8に示す防食オス端子T22とを含んで構成される。防食メス端子T21は、防食オス端子T22における相手端子を構成し、防食オス端子T22は、防食メス端子T21における相手端子を構成する。そして、防食メス端子T21は、防食部14を含んで構成される点で上述した非防食メス端子T11と異なる。同様に、防食オス端子T22は、防食部14を含んで構成される点で上述した非防食オス端子T12と異なる。防食メス端子T21、防食オス端子T22のその他の構成は、それぞれ非防食メス端子T11、非防食オス端子T12と略同様の構成であるので、説明を省略する。
本実施形態の防食メス端子T21、防食オス端子T22は、少なくとも導体圧着部46に腐食を防止する防食が施される。ここでは、防食メス端子T21、防食オス端子T22は、防食部14によって導体圧着部46を含む配索材圧着部4の所定の部位が覆われて防食されている。防食部14は、例えば、紫外線を照射することで硬化するUV(Ultraviolet、紫外線)硬化型樹脂を所定の部位に塗布し紫外線を照射させ硬化させることで構成される。UV硬化型樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート系の樹脂を用いることができるがこれに限らない。防食部14は、導体圧着部46、被覆圧着部48の一部、導体部W1の中間露出部W1a、導体部W1の先端部W1bを覆うことで止水し、水(塩水等)が内部に浸入することを規制することができる。この結果、防食メス端子T21、防食オス端子T22は、適正な止水性能を確保することができ、ガルバニック腐食等が発生することを抑制することができる。なお、防食メス端子T21、防食オス端子T22は、上述の防食部14に限らず、他の手法によって防食が施されていてもよい。例えば、防食部14は、熱を加えることで硬化する熱硬化型樹脂によって構成されてもよいし、防食端子T2を保持するコネクタハウジングH全体を封止するように設けられてもよい。
そして、本実施形態のワイヤハーネスWHは、腐食対策要求領域VBにおいて、上記のように構成される非防食端子T1と防食端子T2とが圧着部寿命と電気接続部寿命との関係に応じて使い分けるられる。
ここで、圧着部寿命とは、腐食を防止する防食が施されていない状態での導体圧着部46の導体部W1との接点部位12(図6参照)の腐食に対する寿命である。一方、電気接続部寿命とは、電気接続部2、102の相手端子との接点部位13(図5参照)の腐食に対する寿命である。
ワイヤハーネスWHは、腐食対策要求領域VB内において、圧着部寿命が電気接続部寿命より短い金属端子Tには、防食端子T2(防食メス端子T21、 防食オス端子T22)が適用される。つまり言い換えれば、防食端子T2は、腐食対策要求領域VB内において、防食が施されていない状態での圧着部寿命が電気接続部寿命より短い(圧着部寿命<電気接続部寿命)金属端子Tである。この場合、防食端子T2は、防食が施されていない状態での圧着部寿命が電気接続部寿命より短い金属端子Tにおいて、防食部14によって導体圧着部46に防食が施されることで、圧着部寿命が延命され、この結果、金属端子T全体での寿命を相対的に長くすることができる。
一方、ワイヤハーネスWHは、腐食対策要求領域VB内において、圧着部寿命が電気接続部寿命より長い金属端子Tには、腐食対策要求領域VB内であってもあえて非防食端子T1(非防食メス端子T11、 非防食オス端子T12)が適用される。つまり言い換えれば、非防食端子T1は、腐食対策要求領域VB内において、防食が施されていない状態での圧着部寿命が電気接続部寿命より長い(圧着部寿命>電気接続部寿命)金属端子Tである。非防食端子T1は、防食が施されていない状態での圧着部寿命が電気接続部寿命より長い金属端子Tにおいて、仮に防食部14によって圧着部寿命が延命されたとしても、電気接続部寿命が延命されない限り、結果的に金属端子T全体での寿命を相対的に長くすることはできない。したがってこの場合、ワイヤハーネスWHは、防食が施されていない状態での圧着部寿命が電気接続部寿命より長い金属端子Tにおいては、あえて非防食端子T1を用いることで、無駄に防食が施されることを回避することができる。
図9、図10は、ワイヤハーネスWHの金属端子Tにおける電気接続部寿命と圧着部寿命との比較の一例を表しており、電気接続部寿命、圧着部寿命の寿命評価試験の結果を表している。寿命評価試験では、非防食メス端子T11、非防食オス端子T12を塩水に浸漬し乾燥させた後、高温高湿度環境下で、接点部位12、13における抵抗値に基づいて導通性能を評価し、当該抵抗値が所定の判定値を超えるまでに要した期間をそれぞれの「寿命」として判定した。図9、図10は、このようにして評価された「寿命」を縦軸に表している。
図9は、タブ部122の幅が1.5mmでバネ接点部22による接圧が5Nとなる非防食メス端子T11、非防食オス端子T12の組み合わせを使用し、配索材圧着部4に接続される配索材Wの導体部W1の太さを「0.5sq」、「0.75sq」、「2.5sq」として行った寿命評価試験の結果を表している。図9中、棒グラフL11は、上記のような非防食メス端子T11、非防食オス端子T12の電気接続部寿命を表し、棒グラフL12は、導体部W1の太さが「0.5sq」である場合の圧着部寿命を表し、棒グラフL13は、導体部W1の太さが「0.75sq」である場合の圧着部寿命を表し、棒グラフL14は、導体部W1の太さが「2.5sq」である場合の圧着部寿命を表している。
図10は、タブ部122の幅が8.0mmでバネ接点部22による接圧が24.5Nとなる非防食メス端子T11、非防食オス端子T12の組み合わせを使用し、配索材圧着部4に接続される配索材Wの導体部W1の太さを「0.75sq」、「2.5sq」、「5sq」、「8sq」として行った寿命評価試験の結果を表している。図10中、棒グラフL21は、上記のような非防食メス端子T11、非防食オス端子T12の電気接続部寿命を表し、棒グラフL22は、導体部W1の太さが「0.75sq」である場合の圧着部寿命を表し、棒グラフL23は、導体部W1の太さが「2.5sq」である場合の圧着部寿命を表し、棒グラフL24は、導体部W1の太さが「5sq」である場合の圧着部寿命を表し、棒グラフL25は、導体部W1の太さが「8sq」である場合の圧着部寿命を表している。
電気接続部寿命(接点部位13の寿命)は、図9、図10からも明らかなように、使用されるタブ部122の幅が相対的に幅広(言い換えれば接触面積(導通面積)が広い)で、かつ、接圧が相対的に高いほど、相対的に長くなる傾向にある。接点部位13は、例えば、メッキ11の溶出等によって腐食し、腐食生成物への乗り上げ等により抵抗値が増大し、導通性能が悪化するものと推定される。また、圧着部寿命(接点部位12の寿命)は、図9、図10からも明らかなように、使用される配索材Wの導体部W1の太さが相対的に太いものであるほど、相対的に長くなる傾向にある。接点部位12は、例えば、メッキ11の溶出や上述したような水(塩水)等の浸入に起因するガルバニック腐食等によって腐食し、導体圧着部46と導体部W1との接触面積(導通面積)の減少等により抵抗値が増大し、導通性能が悪化するものと推定される。そして、電気接続部寿命と圧着部寿命とは、図9、図10からも明らかなように、導体部W1の太さが相対的に細い配索材Wを使用した場合には、電気接続部寿命が圧着部寿命より長くなる傾向にある。その上で、電気接続部寿命と圧着部寿命とは、導体部W1の太さが所定の太さとなると電気接続部寿命と圧着部寿命との大小関係が逆転し、導体部W1の太さが相対的に太い配索材Wを使用した場合には、圧着部寿命が電気接続部寿命より長くなる傾向にある。図9の例では、導体部W1の太さが「0.5sq」である場合ですでに圧着部寿命が電気接続部寿命より長く、これより導体部W1の太さが太い「0.75sq」である場合、「2.5sq」である場合でも圧着部寿命が電気接続部寿命より長くなっている。一方、図10の例では、導体部W1の太さが「5sq」である場合に電気接続部寿命と圧着部寿命との大小関係が逆転し、これより導体部W1の太さが太い「8sq」である場合でも圧着部寿命が電気接続部寿命より長くなっている。
本実施形態のワイヤハーネスWHは、上記のような寿命評価試験の結果を踏まえて、非防食端子T1と防食端子T2とが使い分けられることで、当該非防食端子T1と当該防食端子T2とが圧着部寿命と電気接続部寿命との関係に応じて使い分けるられる。
すなわち一例として、本実施形態のワイヤハーネスWHは、腐食対策要求領域VB内において、太さが予め定められた閾値未満である導体部W1に対して導体圧着部46が圧着された金属端子Tには、防食端子T2(防食メス端子T21、 防食オス端子T22)が適用される。図9の例では、当該閾値は、例えば、「0.5sq」以下の値であり、図10の例では、当該閾値は、例えば、「5sq」である。つまり言い換えれば、防食端子T2は、腐食対策要求領域VB内において、太さが閾値未満である導体部W1に対して導体圧着部46が圧着された金属端子Tである。上述したように、電気接続部寿命と圧着部寿命とは、導体部W1の太さが相対的に細い配索材Wを使用した場合には、電気接続部寿命が圧着部寿命より長くなる傾向にある。このため、ワイヤハーネスWHは、太さが閾値未満である導体部W1に対して導体圧着部46が圧着された金属端子Tに防食端子T2を適用することで、結果的に、上記のように圧着部寿命が電気接続部寿命より短い金属端子Tに防食端子T2が適用されることとなる。
一方、本実施形態のワイヤハーネスWHは、腐食対策要求領域VB内において、太さが閾値以上である導体部W1に対して導体圧着部46が圧着された金属端子Tには、非防食端子T1(非防食メス端子T11、 非防食オス端子T12)が適用される。つまり言い換えれば、非防食端子T1は、腐食対策要求領域VB内において、太さが閾値以上である導体部W1に対して導体圧着部46が圧着された金属端子Tである。上述したように、電気接続部寿命と圧着部寿命とは、導体部W1の太さが相対的に太い配索材Wを使用した場合には、圧着部寿命が電気接続部寿命より長くなる傾向にある。このため、ワイヤハーネスWHは、太さが閾値以上である導体部W1に対して導体圧着部46が圧着された金属端子Tに非防食端子T1を適用することで、結果的に、上記のように圧着部寿命が電気接続部寿命より長い金属端子Tに非防食端子T1が適用されることとなる。
例えば、図9の例では、腐食対策要求領域VB内の金属端子Tは、すべて非防食端子T1が適用される。一方、図10の例では、腐食対策要求領域VB内の金属端子Tは、導体部W1の太さが「0.75sq」、及び、「2.5sq」の配索材Wが適用された金属端子Tには防食端子T2が適用され、導体部W1の太さが「5sq」、及び、「8sq」の配索材Wが適用された金属端子Tには非防食端子T1が適用される。
以上で説明したワイヤハーネスWHは、銅又は銅合金によって構成された金属端子Tの導体圧着部46がアルミニウム又はアルミニウム合金によって構成された配索材Wの導体部W1に対して圧着され、金属端子Tの電気接続部2、102に相手端子が電気的に接続される。そして、上記のように構成される金属端子Tは、車両Vの腐食対策要求領域VB内において、圧着部寿命と電気接続部寿命との関係に応じて、防食端子T2と非防食端子T1とを適正に使い分けることができる。この場合、ワイヤハーネスWHは、車両Vの腐食対策要求領域VB内において、圧着部寿命が電気接続部寿命より短い金属端子Tには、導体圧着部46に防食が施された防食端子T2が適用される。一方、ワイヤハーネスWHは、車両Vの腐食対策要求領域VB内において、圧着部寿命が電気接続部寿命より長い金属端子Tには、腐食対策要求領域VB内であってもあえて導体圧着部46に防食が施されていない非防食端子T1が適用される。これにより、ワイヤハーネスWHは、仮に防食部14によって圧着部寿命が延命されたとしても、金属端子T全体での寿命を相対的に長くすることはできない金属端子Tに、不必要に防食端子T2を適用することを回避することができる。そして、ワイヤハーネスWHは、このような場合に無駄に防食を施すことなく、非防食端子T1を用いることで、例えば、製造コスト等を抑制することができる。この結果、ワイヤハーネスWHは、車両Vに搭載されるワイヤハーネスWH全体において、適正な防食性能を確保することができる。これにより、ワイヤハーネスWHは、例えば、適正な防食性能を確保した上で、コネクタの大型化抑制、重量の増大抑制、製造コストの増大抑制等を図ることができる。
以上で説明したワイヤハーネスWHは、典型的には、腐食対策要求領域VB内において、相対的に細い導体部W1によって構成された配索材Wが適用された金属端子Tに防食端子T2が適用される。一方、ワイヤハーネスWHは、典型的には、腐食対策要求領域VB内において、相対的に太い導体部W1によって構成された配索材Wが適用された金属端子Tに非防食端子T1が適用される。この結果、ワイヤハーネスWHは、上記のように圧着部寿命が電気接続部寿命より短い金属端子Tに防食端子T2が適用され、圧着部寿命が電気接続部寿命より長い金属端子Tに非防食端子T1が適用されることとなる。したがって、ワイヤハーネスWHは、上記のように車両Vに搭載されるワイヤハーネスWH全体において、適正な防食性能を確保することができる。
なお、上述した本発明の実施形態に係るワイヤハーネスは、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
本実施形態に係るワイヤハーネスは、以上で説明した実施形態、変形例の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。