以下、本発明の各実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明、例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明等は省略する場合がある。以下の説明及び参照される図面は、当業者が本発明を理解するために提供されるものであって、本発明の請求の範囲を限定するためのものではない。
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態に係る服薬指導支援装置10について説明する。
<システム構成>
図1は、服薬指導支援装置10を含む服薬指導支援システム1の構成例を示す図である。図1に示すように、服薬指導支援システム1は、薬局Pに設置された服薬指導支援装置10と、この服薬指導支援装置10と通信ネットワークNを介して接続された服薬指導支援サーバ20と、を有する。図1に示すように、服薬指導支援システム1において、複数の服薬指導支援装置10が複数の薬局Pにそれぞれ設置されることが想定されている。服薬指導支援システム1に含まれる服薬指導支援装置10の数及び服薬指導支援装置10が設置される薬局の数については、本発明では特に限定しない。
服薬指導支援装置10は、薬局Pに勤務する薬剤師が操作する端末であり、例えばPC(Personal Comupter)やタブレット端末等の一般的なコンピュータである。服薬指導支援装置10は、薬局Pを訪れた患者が有する処方箋に関する情報と、その患者に関する情報とに基づいて、薬剤師が薬剤とともに患者に提供するべき服薬指導文書を作成するための支援を行う。なお、本明細書において、服薬指導とは、薬剤師が患者に対して、その患者に処方された薬剤に関する情報提供を行うことを意味しており、服薬指導文書とは、薬剤に関する情報を含む文章等の文字列が記載された文書を意味する。服薬指導文書に記載された文章等の文字列を、以下では指導文と記載する。
服薬指導支援サーバ20は、複数の薬局Pに設置された服薬指導支援装置10と、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、またはインターネット回線等の通信ネットワークNを介して接続されているサーバ装置である。服薬指導支援サーバ20は、例えばクラウドサーバである。服薬指導支援サーバ20は、複数の服薬指導支援装置10において服薬指導文書の作成時に使用された情報を、通信ネットワークNを介して服薬指導支援装置10から受信し、図示しない記憶装置に記憶する。また、服薬指導支援サーバ20は、服薬指導支援装置10からの要求に応じて、服薬指導支援装置10における服薬指導文書の作成時に使用される情報を、通信ネットワークNを介して服薬指導支援装置10に送信する。
<服薬指導支援装置10の構成>
図2は、服薬指導支援装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。
服薬指導支援装置10は、例えば、CPU101、ROM102、RAM103、外部記憶装置104、通信インターフェイス105、入力装置106、および出力装置107等を備えたコンピュータである。外部記憶装置104の例としては、HDD、SSD、またはフラッシュメモリ等が挙げられる。通信インターフェイス105の例としては、LAN回線用の通信コントローラ等が挙げられる。入力装置106の例としては、キーボード、マウス、タッチパネル、スキャナ、バーコードリーダ等が挙げられる。出力装置107の例としては、CRTや液晶等のディスプレイ装置、プリンタ等が挙げられる。
服薬指導支援装置10の後述する各機能は、例えば、CPU101がROM102、RAM103、及び外部記憶装置104等に記憶された処理プログラムや各種データを参照することによって実現される。但し、上記した各機能の一部または全部は、ソフトウェアによる処理に代えて、またはソフトウェアによる処理と共に、専用のハードウェア回路による処理によって実現されてもよい。
図3は、第1の実施の形態における服薬指導支援装置10の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、服薬指導支援装置10は、処方箋データ取得部11、薬剤情報文書データ取得部12、薬剤情報文書データベース(DB)13、患者データ取得部14、患者DB15、ベクトル生成部16、学習モデル生成部17、学習モデルDB18、指導文抽出部19、順位付け部110、指導文表示部111、選択受付部112、服薬指導文書データ生成部113、重み付け部114を有する。
図1に示すように、服薬指導支援装置10は薬局Pに設置されており、薬局Pに勤務する薬剤師によって操作される。医師から入手した処方箋を持った患者が薬局Pを訪れると、薬剤師は、入力装置106(図2参照)を用いて、処方箋に記載された処方箋に関する情報(以下、処方箋データと記載する)を服薬指導支援装置10に入力する。服薬指導支援装置10への処方箋データの入力方法は、例えば薬剤師がマウス、キーボード、タッチパネル等を用いて直接入力する方法の他、処方箋に記載された、処方箋データを表すバーコードや2次元コード等をスキャナ(リーダ装置)等でスキャンする方法等が採用されうる。
処方箋データ取得部11は、入力された処方箋データを取得する。処方箋データには、例えば、その処方箋を有する患者の氏名、生年月日、性別、保険者番号等の情報等の患者に関する情報、および、その患者に処方された薬剤の名称、分量、使用部位、使用時点、使用量等の薬剤に関する情報が含まれる。
薬剤情報文書データ取得部12は、処方箋データに基づいて、患者に処方された薬剤に対応する全指導文に関するデータを薬剤情報文書DB13から取得する。指導文とは、薬剤に関する情報提供のための薬剤情報文書に記載された文章である。薬剤情報文書とは、薬事法第52条に規定される記載事項が記載された添付文書や、くすりのしおり(登録商標)、任意の薬剤情報提供書等、例えば薬剤を製造する医薬品メーカー等から提供されたり、薬剤師の有志によって提供されたりしたものである。
薬剤情報文書は、複数の項目を含み、各項目には、小項目が含まれうる。薬剤情報文書の各項目または小項目には、1または複数の文章、または単語の羅列等の文字列が含まれる。この薬剤情報文書に含まれる文字列を、本明細書では指導文と記載している。この指導文は、本発明における服薬指導用の文字列の一例である。薬剤情報文書の一例としての添付文書には、例えば、「名称」、「禁忌」、「効能・効果」、「用法・用量」、「慎重投与」、「重要な基本的注意」、「相互作用」、「副作用」等の項目が含まれる。これらの各項目には、小項目が含まれうる他、薬剤の性質について説明する指導文、および/または薬剤の使用方法や注意点等に関する指導文等が含まれる。
図4は、添付文書について例示した図である。図4に示す例では、「禁忌」、「慎重投与」、「重要な基本的注意」、「相互作用」、「副作用」等の各項目には、それぞれ複数の指導文(図4では(1)、(2)、(3)・・・等で示される)が含まれている。これらの複数の指導文には、特定の患者には必要がない内容のものも含まれているため、薬局Pにおいて、特定の患者に対する服薬指導のために提供される服薬指導文書を作成するには、その患者に必要な内容の指導文が抽出されることが望ましい。
そこで、本実施の形態に係る服薬指導支援装置10では、以下説明するように、患者に合わせて必要な情報を含む指導文を抽出して提供するようにしている。患者に合わせて必要な情報を含む指導文を抽出する具体的な方法については、後述する。
図3の説明に戻る。患者データ取得部14は、処方箋データおよび患者DB15に基づいて、患者に関する情報(以下、患者データと称する)を取得する。患者データには、患者の氏名、生年月日、性別、疾患、保険者番号等の患者本人に関する情報や、その患者に対する過去の調剤内容や指導履歴等の薬歴情報等が含まれうる。患者DB15には、患者本人に関する情報と、その患者の薬歴情報とが関連づけられてデータベース化されている。ただし、服薬指導支援装置10において用いられる患者データとしては、患者本人に関する情報と、その患者の薬歴情報が全て含まれる必要はなく、その一部のみが用いられてもよい。本実施の形態では、患者データには例えば性別、年齢等の情報が少なくとも含まれる。患者DB15に登録されていない新たな患者が薬局Pを訪れた場合、薬剤師によって、例えば患者から患者データに関する聞き取りを行い、新規患者データを患者DB15に登録する作業等が行われてもよい。
ベクトル生成部16は、薬剤情報文書データ取得部12が取得した指導文に関するデータ、および患者データ取得部14が取得した患者データに基づいて、指導文ベクトルおよび患者ベクトルを生成する。指導文ベクトルとは、薬剤情報文書に含まれる各指導文をベクトル変換したものであり、患者ベクトルとは、患者データの各項目の内容をベクトル変換したものである。指導文および患者データをベクトル変換する具体例な方法としては、例えば文章あるいは患者データ中に含まれる単語の出現回数をカウントするBag of Wordsや、単語そのものをベクトル変換するWord2Vec等が採用されうる。より精度のよいベクトル変換のため、医療用語辞書等を用いて学習された学習モデルを用いてもよい。なお、指導文ベクトルは本発明の文字列ベクトルの一例である。
図5は、患者データおよび指導文のベクトル変換の例について説明するための図である。図5Aは患者データに基づく患者ベクトルの生成について例示した図であり、図5Bは指導文に基づく指導文ベクトルの生成について例示した図である。
図5Aでは、患者データの項目として、「年齢」、「性別」、「妊婦」、「授乳」、「新規」、「アレルギー」、「併用薬」、「高血圧」、「腎機能障害」、「肝機能障害」、「前回同じ指導済み」等が設けられている。「データ内容」行は各項目に対応した内容を示し、このデータ内容をベクトル変換したものが「ベクトル値」行に示されている。図5Aに示す例では、年齢および性別を除いて、単にデータ内容が「あり」または「YES」である項目のベクトル値を「1」、データ内容が「なし」または「NO」である項目のベクトル値を「0」とした場合について例示している。このような方法により、患者データの項目数と同じ次元を有する患者ベクトルが生成される。
なお、ここでは、患者データの項目数と同じ次元を有するように患者ベクトルを生成したが、よりユニークに表現するために次元を拡張してもよい。例えばEntity Embeddings(Entity Embeddings of Categorical Variables)という手法を用いれば、患者データの各項目を任意の次元に拡張して表現することができる。
図5Bでは、図4に例示した薬剤情報文書の項目「重要な基本的注意」に例示した指導文(1)から(3)をベクトル変換した例が示されている。図5Bに示すように、指導文(1)には、「両側性」、「腎動脈狭窄」、「患者」、「使用」、「避ける」等の単語が出現しており、この場合これらの各単語の出現回数がカウントされ、カウント値がベクトル値に対応している。このような方法により、単語数と同じ次元を有する指導文ベクトルが生成される。なお、図5Bでは指導文中に出現する単語の一部のみ示しているが、実際には全ての単語について出現回数のカウントが行われる。
各指導文から単語を抽出する方法については、例えば既知の形態素解析の手法を適用することができる。また、1つの単語として扱われるべき単語が複数に分割されることを防止するため、例えば医療用語辞書等を併用して形態素解析を行うことが望ましい。具体的には、例えば「間質性肺炎」という単語が「間」、「質性」、「肺炎」等と3つの単語に分割されてしまうと精度のよい指導文ベクトルを生成するためには好適ではないため、「間質性肺炎」が1つの単語として登録された医療用語辞書を用いることでこれを防止する例が挙げられる。
また、図5Bに示す例では、各単語の出現回数をそのままベクトル値として使用する方法(Bag-of-Words)が採用されているが、本発明はこれに限定されず、他の方法を採用してもよい。例えば、TF-IDF等、より文章中の特徴的な単語を評価するような手法を採用することができる。また、Word2vec等、単語毎に意味をベースにベクトル変換を行い、指導文に出現する全単語のベクトルに基づいて指導文ベクトルを生成するようにしてもよい。
図3の説明に戻る。学習モデル生成部17は、ベクトル生成部16が生成した患者ベクトルおよび指導文ベクトルを教師データとして機械学習を行い、学習モデルを生成する。より具体的には、学習モデル生成部17が用いる教師データは、複数の患者に対応する患者ベクトルと、過去にそれぞれの患者に対して提供された指導文に対応する指導文ベクトルとが互いに対応づけられた教師データである。
本第1の実施の形態において、学習モデル生成部17が生成する学習モデルは、患者ベクトルおよび複数の指導文ベクトルの入力に対して、その患者ベクトルとの類似の度合いが大きい順に指導文ベクトルを並べ替えて出力するように学習されたモデルである。
患者ベクトルと指導文ベクトルとの類似の度合いは、例えばベクトル間の類似度を算出することにより判断される。類似度の算出方法としては、例えばコサイン類似度等の既知の手法が採用されうる。コサイン類似度とは、正規化したベクトル同士の内積を用いて算出する、2つのベクトル同士の成す角度の近さを示す値である。コサイン類似度では、2つのベクトル同士の向きが近いほど1に近い値となり、これらのベクトルが類似していることが示される。学習モデル生成部17にて生成された学習モデルは、学習モデルDB18に登録され、必要に応じて指導文抽出部19に読み出される。
なお、学習モデルDB18には、通信ネットワークNを介して服薬指導支援サーバ20(図1参照)から、後述の再学習により新規作成または更新された学習モデルが送信される。学習モデルDB18は、新規作成または更新された学習モデルを受信すると、登録された学習モデルを新たに受信した学習モデルで随時更新する。
学習モデル生成部17による学習モデルの生成は、例えば薬局Pにおける服薬指導支援装置10の稼働前に行われていることが望ましいが、本発明では必ずしも服薬指導支援装置10の稼働前に学習モデルの生成が行われていなくてもよい。すなわち、薬局Pにおいて服薬指導支援装置10が稼働した状態で、新たな患者の患者ベクトルと、その患者に対して薬剤師が作成した指導文の指導文ベクトルとを新たな教師データとして、随時学習モデルを更新し続ける(任意のタイミングで追加学習、もしくは再学習する)ような形態を採用してもよい。
上記説明では、服薬指導支援装置10が学習モデル生成部17を有している例について説明したが、学習モデル生成部17は、服薬指導支援装置10内に存在しなくてもよい。すなわち、学習モデル生成部17は、例えば通信ネットワークNを介して通信可能な他の装置内、例えば服薬指導支援サーバ20内に存在してもよい。この場合、服薬指導支援装置10は、モデル生成に必要な情報(患者ベクトルおよび指導文ベクトル)を通信ネットワークNを介して服薬指導支援サーバ20に伝達して学習モデルを生成するというような形態を採用してもよい。
指導文抽出部19は、学習モデルDB18から読み出した学習モデルを用いて、薬剤情報文書中の項目毎に、患者に提供する服薬指導文書に含まれるべき指導文を抽出する。具体的には、指導文抽出部19は、ベクトル生成部16から、新たな患者ベクトルと、その患者に処方された薬剤の薬剤情報文書に含まれる全指導文の指導文ベクトルとを取得し、全指導文の指導文ベクトルを項目毎の指導文ベクトルに分類する。そして、指導文抽出部19は、患者ベクトルと項目毎の指導文ベクトルとを学習モデルに入力し、患者ベクトルとの類似度が大きい順に並べ替えられた指導文ベクトルの出力を得る。そして、指導文抽出部19は、出力された指導文ベクトルの上位所定数(例えば1つ)の指導文ベクトルに対応する指導文を抽出する。これにより、指導文抽出部19は、薬剤情報文書に含まれる指導文の中から、項目毎に、患者との関連性が大きい指導文を抽出することができる。例えば図4に例示した薬剤情報文書の場合、指導文抽出部19は、項目「禁忌」から1つ、「効能・効果」から1つ、「用法・用量」から1つ、というように指導文を抽出することができる。
順位付け部110は、学習モデルDB18から読み出した学習モデルを用いて、指導文抽出部19が薬剤情報文書の項目毎に抽出した指導文の順位付けを行う。具体的には、順位付け部110は、患者ベクトルと、項目毎に抽出された指導文ベクトルと、を学習モデルに入力し、患者ベクトルとの類似度が大きい順に並べ替えられた指導文ベクトルの出力を得る。これにより、順位付け部110は、より患者にとって関連性が高い項目の指導文を、より上位に順位付けすることができる。
指導文表示部111は、指導文抽出部19によって抽出された項目毎の指導文を、順位付け部110によって順位付けされた順位の通りに、出力装置107(図2参照)に表示させる。図6は、出力装置107がディスプレイ装置である場合の、指導文表示部111による表示画面を例示した図である。
図6では、表示画面200内に指導文表示欄201が表示された例が示されている。指導文表示欄201には、複数の項目の指導文が順位付けされた順番で表示されている。図6では、項目毎のフィルタ機能により、例えば薬剤師によって選択された項目のみ表示されるようになっている。また、指導文表示欄201には、「キーワード」列が設けられており、その指導文が抽出される根拠となった単語が表示されている。このようなキーワードの抽出方法としては、例えば抽出された指導文の指導文ベクトルと、学習モデル生成のための教師データに用いられた患者データの項目名(「性別」、「妊婦」等)をベクトル変換したものとの類似度を算出し、指導文ベクトルとの類似度が大きい項目名をキーワードとする方法が採用されうる。このような方法を用いたキーワードの抽出は、例えば指導文表示部111によって実行されればよい。
選択受付部112は、指導文表示部111が表示した複数項目の指導文のうち、薬剤師が患者に提供するべきと判断したものの選択を受け付ける。薬剤師による選択は、例えば図2に示す入力装置106(マウス、キーボード、タッチパネル等)によって行われればよい。
服薬指導文書データ生成部113は、選択受付部112が受け付けた薬剤師の選択に基づいて、選択された指導文を含む服薬指導文書データを生成する。服薬指導文書データは、指導文抽出部19によって項目毎に抽出され、順位付け部110によって項目毎に順位づけされた指導文のうち、薬剤師によって選択された指導文が記載された文書データである。服薬指導文書データ生成部113は、生成した服薬指導文書データを出力装置107(図2参照、例えばプリンタ等)へ出力する。これにより、例えば服薬指導文書データが印刷されて、薬剤とともに患者に提供される。なお、服薬指導文書データは印刷されるのではなく、例えば患者の有する携帯端末等に表示されてもよい。
また、服薬指導文書データ生成部113は、生成した服薬指導文書データを、患者DB15において、患者の薬歴データと関連づけて登録するようにしてもよい。
なお、本実施の形態では、服薬指導文書データ生成部113が生成した服薬指導文書データに含まれる指導文は、添付文書、くすりのしおり、または薬剤情報提供書に基づく文章(または文字列)であり、必ずしも患者にとってわかりやすい文章とは限らない。患者にとってわかりやすい文章が記載された服薬指導文書を提供するため、服薬指導文書データ生成部113は、指導文の文章形式を例えば口語体に変換する口語体変換処理を行ってもよい。
口語体変換処理には、例えばsequence to sequence(seq2seq)等の機械学習モデルを用いることができる。口語体変換処理に用いられる学習モデルを生成するための教師データには、例えば医療用語辞書が用いられることが好適である。このような処理により、平易でわかりやすい指導文が記載された服薬指導文書を患者に対して提供することができる。ここで、服薬指導支援装置10における機械学習の設計を容易にするため、順位付け部110によって順位付けされた順に、口語体変換処理を1文ずつ行うようにすることが好適である。
一方、重み付け部114は、選択受付部112が受け付けた、薬剤師による指導文の選択または非選択に基づいて、学習モデル生成部17における学習モデル生成の際に使用される教師データに対する重み付け値を設定する。図7は、重み付け部114による重み付けの例について説明するための図である。
図7には、重み付け前の教師データと、重み付け部114による重み付け後の教師データと、が例示されている。図7に示す例では、教師データに含まれる3つの指導文(文1、文2、文3)のうち、文1が非選択、文2および文3が選択された場合が示されている。図7に示す例では、文1は非選択であったため、文1に出現する全ての単語に対応したベクトル値(上記した指導文ベクトル)には0.5倍の重み付けがなされる。これにより、例えば重み付け前における、文1に含まれる単語1のベクトル値「5」は、重み付け後においては「2.5」となっている。同様に、文1に含まれる他の単語についても、ベクトル値が全て0.5倍されている。
一方、文2および文3は選択されていたため、文2および文3に出現する全ての単語には2倍の重み付けがなされる。これにより、例えば重み付け前における、文2に含まれる単語2のベクトル値「3」は、重み付け後においては「6」となっている。同様に、文2および文3に含まれる他の単語についても、ベクトル値が全て2倍されている。
このように、重み付け部114は、指導文が薬剤師によって選択されたか否かに基づいて、指導文ベクトルのベクトル値に対して重み付けを行う。なお、上記例では選択された場合2倍、選択されなかった場合0.5倍の重み付けを行っていたが、本発明はこれに限定されず、重み付けの量については適宜設定されればよい。
重み付け部114においてなされた重み付け後の教師データは、学習モデル生成部17に入力される。学習モデル生成部17は、重み付け後の教師データを用いて再学習を行い、学習モデルを更新して新たな学習モデルを学習モデルDB18に登録する。また、重み付け部114においてなされた重み付け後の教師データは、通信ネットワークNを介して服薬指導支援サーバ20(図1参照)へ送信されてもよい。重み付け部114においてなされた重み付けに関する情報と、重み付けされていない教師データとが服薬指導支援サーバ20に対して送信されてもよい。
服薬指導支援サーバ20では、送信された教師データ(および重み付けに関する情報)が記憶されるとともに、重み付けされた教師データを用いた再学習により新たな学習モデルが生成される、または既存の学習モデルが更新される。服薬指導支援サーバ20において新規作成または更新された学習モデルは、通信ネットワークNを介して、必要に応じて上記説明した学習モデルDB18に送信される。
服薬指導支援サーバ20は、複数の薬局Pから重み付けに関する情報および教師データを収集し、学習データを更新するサーバ装置であることが望ましい。服薬指導支援サーバ20は、全店舗からの情報および教師データに基づいて、全店舗で使用可能な学習モデルを生成してもよいし、一部の薬局Pから収集した情報および教師データに基づいて、一部の薬局Pに適合した学習モデルを生成してもよい。一部の薬局Pとは、例えば一店舗だけでもよいし、ある地域内に存在する複数の店舗であってもよい。また、店舗毎ではなく、薬剤師の識別情報を併せて収集し、薬剤師毎に学習モデルを生成するようにしてもよい。このように複数の学習モデルを生成しておくことで、服薬指導支援装置10において、店舗、地域、または薬剤師に最適化された学習モデルを用いて、より患者に適した服薬指導文書を作成することができるようになる。
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態に係る服薬指導支援装置10は、患者ベクトルと指導文ベクトルとに基づいて学習モデルを生成し、この学習モデルを用いて、薬剤情報文書の項目毎に、患者ベクトルと類似度が大きい指導文ベクトルに対応する指導文を抽出する。そして、対応する指導文ベクトルの患者ベクトルとの類似度に基づいて、項目毎に抽出された指導文を順位付けする。
このため、患者にとって関連性が高く、重要な内容を含む指導文が、項目毎に抽出される。また、項目毎の順位付けもされているので、抽出された指導文の中でもどの指導文がより重要であるのかがわかりやすい。さらに、項目毎に指導文の抽出を行っているため、例えば全指導文から患者にとって重要なものを抽出する場合と比較して、項目毎の重要な情報を含む指導文が抽出されずに漏れてしまう事態を回避しやすい。これにより、服薬指導支援装置10は、薬剤師による服薬指導文書の作成を好適に支援することができる。
なお、上記説明において、学習モデル生成部17は、ベクトル同士の類似度を算出して類似する指導文ベクトルを出力するような学習モデルを生成していたが、本発明はこれに限定されない。例えばあらかじめ患者ベクトルおよび指導文ベクトルにクラスタリングを行って患者クラスタと指導文クラスタとを生成しておき、クラスタ同士の類似度を算出して類似するクラスタを出力するような学習モデルを生成してもよい。この場合、例えば指導文抽出部19は、出力された指導文クラスタの例えば中心に位置する指導文ベクトルに対応する指導文を抽出するようにすればよい。なお、指導文抽出部19が、学習モデルを用いて得られた指導文クラスタからどの指導文ベクトルを抽出するか、については本発明では特に限定しない。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図8は、第2の実施の形態における服薬指導支援装置10Aの機能構成の一例を示すブロック図である。第2の実施の形態では、学習モデル生成部により生成される学習モデルが上記説明した第1の実施の形態と異なっている。このため、以下では、第2の実施の形態における、学習モデル生成部17Aの第1の実施の形態の学習モデル生成部17とは異なる動作について説明し、第1の実施の形態と同じ動作を行う構成については説明を省略する。
本第2の実施の形態において、学習モデル生成部17Aが生成する学習モデルは、ある患者の患者ベクトルの入力に対して、その患者ベクトルと類似する患者ベクトルとあらかじめ対応づけられた指導文ベクトルが出力されるように学習処理が施されたモデルである。患者ベクトルとあらかじめ対応づけられた指導文ベクトルとは、ある患者ベクトルに対応する患者に対して過去に提供された指導文に対応する指導文ベクトルを意味する。
学習モデル生成部17Aは、第1の実施の形態と同様に、複数の患者に対応する患者ベクトルと、それぞれの患者に対して過去に提供された指導文の指導文ベクトルと、を教師データとして、このような学習モデルを生成すればよい。患者ベクトル同士の類似の度合いについても、第1の実施の形態と同様に、コサイン類似度等の既知の手法により判断されればよい。このように生成された学習モデルは、学習モデルDB18Aに登録される。
このように生成された学習モデルを用いて、以後の服薬指導支援装置10Aにおける処理が実行される。すなわち、指導文抽出部19が学習モデルを用いて新たな患者に提供する指導文を項目毎に抽出し、順位付け部110が項目毎の指導文の順位付けを行い、指導文表示部111が順位付けの通りに指導文を表示する。そして、選択受付部112が薬剤師の選択を受け付け、服薬指導文書データ生成部113が選択された指導文を含む服薬指導文書データを生成する。重み付け部114は薬剤師の選択に基づいて教師データに重み付けを行い、服薬指導支援サーバ20に重み付け情報または教師データを送信する。
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態に係る服薬指導支援装置10Aでは、入力された患者ベクトルと類似する患者ベクトルにあらかじめ対応づけられた指導文ベクトルを出力するように学習処理が施された学習モデルが生成される。このため、服薬指導支援装置10Aによれば、過去に様々な患者に対して提供した服薬指導文書の蓄積を活かして、新たな患者に対して最適な指導文を含む服薬指導文書を作成するための支援を行うことができる。
なお、上記説明した第2の実施の形態では、患者ベクトルの入力に対して、その患者ベクトルと類似する患者ベクトルとあらかじめ対応づけられた指導文ベクトルが出力されるように学習処理が施された学習モデルが生成されると説明した。しかしながら、例えば、患者ベクトルの入力に対して、その患者ベクトルと類似する患者ベクトルが出力されるように学習処理が施された学習モデルが生成されるようにしてもよい。この場合、複数の患者に対して過去に提供された指導文があらかじめ登録されたデータベースを用意しておき、指導文抽出部19は、このデータベースを参照することで、新たな患者の患者ベクトルを学習モデルに入力したときに出力された患者ベクトルに対応する患者に対して提供された指導文を新たな患者に提供する指導文として抽出することができる。
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図9は、第3の実施の形態に係る服薬指導支援装置10Bの機能構成の一例を示すブロック図である。
上記説明した第1の実施の形態では、学習モデル生成部17の生成した学習モデルを用いて、指導文抽出部19が項目毎に指導文を抽出し、順位付け部110が抽出された指導文の順位付けを行っていた。以下説明する第3の実施の形態では、指導文の項目毎の抽出と、順位付けとが一度に(1ステップで)行われる。これを実現するため、第3の実施の形態に係る服薬指導支援装置10Bは、ベクトル生成部16Bと、学習モデル生成部17Bと、指導文抽出部19Bと、重み付け部114Bと、を有する。また、第3の実施の形態に係る服薬指導支援装置10Bは、第1の実施の形態の服薬指導支援装置10が有する順位付け部110を有していない。
本第3の実施の形態において、学習モデル生成部17Bが生成する学習モデルは、ある患者の患者ベクトルと、その患者に処方された薬剤に対応する全指導文の指導文ベクトルと、の入力に対して、指導文ベクトル毎の確信度を出力するように学習処理が施されたモデルである。なお、本明細書において、確信度とは、ある指導文が、ある患者に対して必要な情報を含む度合い(確からしさ)を示す値である。確信度についての詳細は後述する。このように生成された学習モデルは、学習モデルDB18Bに登録される。
このような学習モデルを生成するために、本第3の実施の形態では、複数の患者の患者ベクトルと、各患者に処方された薬剤に関する全指導文の指導文ベクトルと、を含み、患者に提供された服薬指導文書において各指導文が使用されたか否かを示す情報があらかじめ付与された教師データが用いられる。
図10は、第3の実施の形態において用いられる教師データを例示した図である。図10に示すように、教師データには、薬剤に関する情報、患者データ、指導文、および重要度が含まれる。なお、重要度とは、各指導文が患者に提供された服薬指導文書において使用されたか否かを示す情報(ラベル)であり、使用された指導文については重要度が「1」、使用されなかった指導文については重要度が「0」となっている。
図10に示すような教師データは、ベクトル生成部16Bによってベクトル変換される。本第3の実施の形態において、ベクトル生成部16Bによる指導文のベクトル変換には、単語毎のベクトル変換であるWord2vecが用いられる。具体的には、ベクトル生成部16Bは、形態素解析により指導文から単語を抽出し、Word2vecを用いて単語のベクトル変換を行う。これにより指導文に含まれる単語を変換した単語ベクトルが生成される。この単語ベクトルの次元は、単語数には依存せず、あらかじめ決めた固定の次元である。次元を大きくすると、指導文を表現する性能が上がることが知られており、例えば200次元等とすればよい。そして、ベクトル生成部16Bは、指導文に含まれる全単語ベクトルに基づいて指導文ベクトルを生成する。単語ベクトルに基づいて指導文ベクトルを生成するには、例えば指導文に含まれる単語ベクトルの平均を取ればよい。
このような教師データを用いて、学習モデル生成部17Bは、以下のような学習モデルを生成する。本第3の実施の形態において、学習モデル生成部17Bは、複数の予測モデルの集合としての学習モデルを生成する。図11は、第3の実施の形態における学習モデルの概念図である。
図11に示す例では、4つの予測モデルが生成されている。図11に示す例では、それぞれの予測モデルには、教師データに基づいて、例えば患者データの各項目、または指導文に含まれる単語ベクトルを説明変数とし、重要度を目的変数とする決定木が含まれる。例えば予測モデル1では、ルートノードで「性別」について分類され、その下の子ノードで「併用薬」、あるいは「年齢」について分類されている。また、予測モデル2では、ルートノードで「成分[n]」(指導文ベクトル内のn個目の成分(要素)ベクトル)について分類され、その下の子ノードで「肝機能障害」、あるいは「性別」について分類されている。
図11に示すように、学習モデル生成部17Bが生成する学習モデルは、複数の予測モデルが出力した重要度の平均値を算出し、この平均値を確信度として出力している。上記のように、重要度は0または1の値であるため、確信度は0以上1以下の値をとる。図11の例では、4つの予測モデルの出力する重要度が1,0,1,1であるため、確信度は0.75となる。
複数の予測モデルが出力する重要度は、患者データおよび指導文の一部の要素(患者データの項目または指導文の単語)のみを考慮して予測された重要度である。このため、複数の予測モデルが出力する重要度の平均値である確信度は、患者データおよび指導文の全要素を考慮して予測されており、ある指導文が、ある患者に対して必要な情報を含む度合い(確からしさ)を示す値となる。
なお、図11に示す例では、4つの予測モデルが学習モデルに含まれていたが、実際にはより多くの予測モデルが生成されることが望ましい。確信度の精度を確保するためには、少なくとも、患者データの全ての項目を説明変数として含むだけの予測モデルが生成されることが望ましい。また、図11に示す例では、各予測モデルの決定木に含まれるノードの数は3つであったが、各決定木にはより多くのノードが含まれてもよい。
指導文抽出部19Bは、このように生成された学習モデルを用いて、患者に提供すべき指導文を抽出する。具体的には、指導文抽出部19Bは、新たに患者ベクトルと、その患者に処方された薬剤の薬剤情報文書に含まれる全指導文の指導文ベクトルとを取得すると、新たな患者ベクトルと各指導文ベクトルとを学習モデルに入力し、その指導文ベクトルの確信度の出力を得る。
ここで、指導文抽出部19Bは、ある指導文ベクトルの確信度が所定の閾値以上である場合には、入力された指導文ベクトルに対応する指導文が、入力された患者ベクトルに対応する患者にとって重要である、と判定し、当該指導文を選択する。また、指導文抽出部19Bは、ある指導文ベクトルの確信度が所定の閾値より小さい場合には、入力された指導文ベクトルに対応する指導文が、入力された患者ベクトルに対応する患者にとって重要ではない、と判定し、当該指導文を選択しない。指導文抽出部19Bは、全ての指導文ベクトルに対してこのような判定を行い、選択された指導文ベクトルに対応する指導文を抽出する。このように抽出された指導文は、患者に提供すべき(患者にとって重要な)可能性が高い指導文である。
なお、所定の閾値としては、例えば0.5等の値が採用されうる。また、統計的解析手法を用いることで、動的に閾値を決定するようにしてもよい。具体的には、学習モデルから出力された確信度の頻度分布に対し、判別分析2値化法(大津の手法)やMaxEntropy法を用いて、頻度分布の谷の値を閾値とする方法がある。これにより学習モデルの出力特性に応じて、適切な指導文の抽出を行うことができる。
指導文抽出部19Bは、上記説明した指導文の抽出を、薬剤情報文書の項目毎に行う。そして、指導文抽出部19Bは、抽出した指導文に対して、確信度の大きさに基づく順位付けを行う。これにより、第3の実施の形態に係る服薬指導支援装置10Bでは、第1の実施の形態に係る服薬指導支援装置10(図1参照)における指導文抽出部19による指導文の抽出と、順位付け部110による順位付けと、を一度に行うことができるようになる。
なお、上記説明では、指導文の確信度の出力を得るために図11に示すランダムフォレスト分類器を用いたが、他の方法を採用してもよい。具体的には、SGD(Stochastic Gradient Descent)、SVM(Support Vector Machine)、NN(Neural Network)やCNN(Convolutional Neural Network)のどれか、あるいはその組み合わせにより構成された分類器を用いてもよい。
一方、重み付け部114Bは、選択受付部112が受け付けた薬剤師による指導文の選択結果に基づいて、学習モデル生成部17Bにおける学習モデル生成の際に使用される教師データに対する重み付けを設定する。
重み付け部114Bは、薬剤師により選択された指導文と、その指導文に関連する薬剤に関する情報、患者データ、および重要度を教師データ内に複数回登録させることで、該当指導文の重み付けを実現する。つまり、重み付け部114Bは、新たに薬剤師に選択された指導文と、その指導文に対する薬剤に関する情報、患者データ、および重要度を取得する。そして、重み付け部114Bは、その指導文の重要度が「1」であった場合(その指導文が既に選択されていた場合)は、その指導文を再度教師データに追加する。これにより、同一の指導文およびその指導文に関連する薬剤に関する情報、患者データ、および重要度が教師データ内に重複して存在するようになる。従って、その教師データを用いて生成された学習モデルが、重複して存在する指導文の確信度を高く出力するような重み付けが可能となる。
追加する指導文の個数は、薬剤師によって選択された回数と同じにしてもよいし、選択された回数と比例させるようにしてもよい。追加する指導文の個数を選択された回数と比例させる場合、選択された回数を指導文毎に別途管理すればよい。また、緩やかな重み付けを実施する場合は、選択回数と指導文をと関連付けて管理しておき、選択回数の常用対数に比例させるようにしてもよい。すなわち、例えば10回選択されたときにその指導文を教師データに追加するようにしてもよい。また重み付け部114Bは、薬剤師に選択された指導文の重要度が「0」であった場合は、教師データに追加せず、該当する指導文の重要度を「1」に上書き設定する。
重み付け部114Bにおいてこのようになされた重み付け後の教師データは、学習モデル生成部17Bに入力される。学習モデル生成部17Bは、重み付け後の教師データを用いて再学習を行い、学習モデルを更新して新たな学習モデルを学習モデルDB18Bに登録する。また、重み付け部114Bによって更新した教師データは服薬指導支援サーバ20に送信されてもよい。更新された教師データを受信した服薬指導支援サーバ20の動作に関しては、上記した第1の実施の形態と同様である。
以上説明したように、本発明の第3の実施の形態に係る服薬指導支援装置10Bでは、ある患者の患者ベクトルと、その患者に処方された薬剤に対応する全指導文の指導文ベクトルと、の入力に対して、指導文ベクトル毎の確信度を出力するように学習処理が施されたモデルが生成される。そして、新たに患者ベクトルと、その患者に処方された薬剤の薬剤情報文書に含まれる全指導文の指導文ベクトルとが入力されると、新たな患者ベクトルと各指導文ベクトルとを学習モデルに入力し、その指導文ベクトルの確信度の出力を得る。これにより、患者に対して必要な情報を含む度合いが大きい指導文を抽出できるとともに、確信度に基づいて抽出した指導文の順位付けを行うことができる。
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。本第4の実施の形態では、同じ内容の異なる指導文が複数抽出されることが防止される。なお、本第4の実施の形態の服薬指導支援装置の機能構成については、図9を参照して説明した第3の実施の形態の服薬指導支援装置10Bと同様である。
以下、本第4の実施の形態における服薬指導支援装置の特徴的な動作について、具体例を挙げて説明する。例えば薬剤情報文書の「副作用」という項目において、指導文の出典(添付文書、くすりのしおり、薬剤情報提供書等)によっては、例えば以下のようにほぼ同一内容で異なる表記の指導文が存在しうる。
・主な副作用として、発疹、食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢などが報告されています。
・主な副作用は、食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢等です。
・副作用:食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢
本第4の実施の形態では、以下のような構成により、これらのようにほぼ同一内容で異なる表記の指導文が複数抽出されることを防止する。
図12は、第4の実施の形態における教師データを例示した図である。図12に例示した本第4の実施の形態における教師データには、図10に例示した第3の実施の形態における教師データに加えて、「グループ番号」が付与されている。この「グループ番号」は、同一内容の指導文に対してあらかじめ付与されたラベルである(本発明のグループラベルの一例である)。
第4の実施の形態において、学習モデル生成部17Bは、グループ番号を加味して学習モデルを生成する。具体的には、学習モデル生成部17Bは、上記第3の実施の形態にて説明したランダムフォレスト分類器を、multi label classifier等を用いてマルチラベル型分類器に拡張することで、学習モデルを生成する。この学習モデルは、患者ベクトルと指導文ベクトルとの入力に対して、確信度とグループ番号とを出力する。
第4の実施の形態において、指導文抽出部19Bは、確信度が所定の閾値以上の指導文についてグループ番号を参照し、同じグループ番号の指導文が複数あった場合、最も確信度が大きい指導文のみを抽出し、他を破棄する。これにより、ほぼ同一内容で異なる表記の指導文が複数抽出されることを防止することができる。
また、薬剤情報文書DB13には、薬剤師の有志によって提供されるような任意の文書も含まれるため、ベテラン薬剤師の作成した文書や、ベテラン薬剤師が選択した文書を、優先的に抽出したいというような場合がある。このように特定の文書を優先して抽出したい場合にも、第4の実施の形態を拡張することで対応が可能である。
具体的には、教師データに「グループ番号」とともに、「優先度」を付与する。「優先度」とは、大きい値ほど優先度合いが高くなる値であり、ベテラン薬剤師が選択した等、その後優先的に抽出されるべき指導文に設定される値である。優先度の例としては、特定の薬剤師が選択した回数等、任意の値が設定されうる。それまで選択されたことがない指導文の優先度は、「0」に設定される。
学習モデル生成部17Bは、このようにグループ番号と優先度が付与された教師データを用いて、グループ番号と優先度を加味した学習モデルを生成する。このように生成された学習モデルは、患者ベクトルと指導文ベクトルとの入力に対して、確信度とグループ番号と優先度を出力する。指導文抽出部19Bは、学習モデルの出力結果に対し、優先度が設定されている(0でない)指導文については、優先度の値を用いて確信度に対して優先処理を行うことで、優先度が設定された指導文を抽出する可能性を高くすることができる。
なお、優先処理の具体例としては、優先度の大きさによって決まる値を確信度に対して加算する等の方法がある。具体例としては、優先度×固定値(例えば0.1)を確信度に加算すればよい。指導文抽出部19Bは、このような優先処理を学習モデルの出力後に実施するため、優先度が変更された場合(新たに特定の薬剤師による指導文の選択があった場合)でも再学習が不要である。このため、上記拡張は容易に実現が可能である。
教師データにおいて、同一内容の指導文にグループ番号を付与するためには、教師データとして用いられる指導文の中から同一内容の指導文を抽出する必要がある。同一内容の指導文の抽出方法としては、例えば以下のような方法がある。すなわち、あらかじめ全ての指導文の指導文ベクトルを算出しておき、特定の2つの指導文ベクトル間の類似度(コサイン類似度等)を算出する。そして、全ての組み合わせの類似度を算出し、類似度が所定の閾値以上の組み合わせを同一内容の指導文と判断する。
この際、類似度算出の演算量削減のため、指導文ベクトルの次元削減や正規化を行ってもよい。
また、同一内容の指導文ベクトルがあるか否かに基づいて、重み付けを行うようにしてもよい。図7を参照して説明したように、指導文に含まれる単語毎に重み付けをする場合、特定の2つの指導文ベクトル同士の距離(スカラー値)に基づいて、指導文に含まれる単語全体に距離に応じたベクトル値を加算すればよい。また、図10を参照して説明したように、指導文毎に重み付けをする場合、重要度として「0」か「1」かを追加する代わりに、距離に応じた値を重要度として設定すればよい。
なお、指導文ベクトル間の距離に応じた値yの一例としては、例えば距離を正規化し、その変数をx(0~1)としたとき、y=-x+1で与えられる値とすればよい。すなわち、yは指導文ベクトル同士の類似度が大きいほど1に近く、小さいほど0に近くなるような値である。
このような重み付けにより、同一内容の指導文とそうでない指導文とで、重み付けに差を付けられるため、例えば類似する指導文が同時に抽出されにくくしたり、反対に類似する指導文が同時に抽出されやすくしたりすることができる。また、抽出結果の指導文を表示画面に表示する際に、同一内容の指導文を強調して表示したり、1つの指導文が選択されたときに同一内容の他の指導文を同時に選択したりする等の制御が可能となる。
(第5の実施の形態)
さらに、本発明の第5の実施の形態について説明する。図13は、第5の実施の形態に係る服薬指導支援装置10Cの機能構成を示すブロック図である。図13に示すように、第5の実施の形態に係る服薬指導支援装置10Cは、図9に示す第3の実施の形態に係る服薬指導支援装置10Bの機能構成に加えて、第2学習モデル生成部115、第2学習モデルDB116、および第2指導文抽出部117を有する。また、第5の実施の形態に係る服薬指導支援装置10Cが有する薬剤情報文書データ取得部12C、患者データ取得部14C、およびベクトル生成部16Cは、第3の実施の形態にて説明した薬剤情報文書データ取得部12、患者データ取得部14、およびベクトル生成部16Bとは動作が異なっている。以下では、これらの詳細について説明する。
第5の実施の形態では、以下のような場合を想定する。例えばある薬剤を処方された患者が、その薬剤とは別の薬剤を使用していることが、薬剤師の問診やお薬手帳等によって発覚することがある。以下では処方された薬剤を主薬剤と記載し、別の薬剤を併用薬剤と記載する。このような場合、患者に対して提供する服薬指導文書には、主薬剤と併用薬剤とを併用した場合の注意事項を含む指導文が記載されることが望ましい。
主薬剤と併用薬剤とを併用した場合の注意事項を含む指導文を抽出するためには、例えば主薬剤の指導文全体を併用薬剤の薬名でテキスト検索する方法が考えられる。しかしながら、薬名には頻繁に表記揺れが存在するため、単にテキスト検索しただけでは漏れが生じる可能性がある。表記揺れの具体例としては、例えば「ムンプスワクチン」と「おたふくかぜワクチン」、または「イソニアジド」と「抗結核薬」のような例が挙げられる。
本第5の実施の形態では、主薬剤の他に併用薬剤を使用する患者に対して、薬剤情報文書データ取得部12Cが、主薬剤の全指導文を取得した際に、主薬剤との併用時に注意が必要な併用薬剤の名称と、その注意事項を含む指導文と、を抽出する。主薬剤の全指導文のうち、併用時に注意が必要な併用薬剤の名称は、例えば薬剤情報文書が添付文書である場合、項目「相互作用」内の小項目「併用禁忌」や「併用注意」に含まれる「薬剤名」等に記載されている。また、主薬剤の全指導文のうち、併用時に注意が必要な併用薬剤の注意事項は、例えば薬剤情報文書が添付文書である場合、項目「相互作用」内の小項目「併用禁忌」や「併用注意」に含まれる「臨床症状・措置方法」等に記載されている。
以下の説明において、薬剤情報文書データ取得部12Cが取得した、主薬剤との併用時に注意が必要な併用薬剤の名称を「注意併用薬剤名」、その注意事項を含む指導文を「注意指導文」と記載する。以後の処理において、「注意併用薬剤名」とその薬剤に関する「注意指導文」とは互いに関連づけられて用いられる。
一方、患者データ取得部14Cは、患者データに加えて、例えば問診やお薬手帳等から、患者が使用する併用薬剤の名称を取得する。以下の説明において、患者が使用する併用薬剤の名称を、「使用併用薬剤名」と記載する。
ベクトル生成部16Cには、患者データ取得部14Cから患者データと使用併用薬剤名とが入力される。また、ベクトル生成部16Cには、薬剤情報文書データ取得部12Cから全指導文と、注意併用薬剤名と、注意指導文とが入力される。これにより、ベクトル生成部16Cは、患者ベクトルと、使用併用薬剤名ベクトルと、全指導文の指導文ベクトルと、注意併用薬剤名ベクトルとを生成する。本第5の実施の形態では、これらのベクトル変換には、それぞれの単語ベクトルを生成する方法(word2vec等)が用いられる。
この際、ベクトル生成部16Cは、医療用語辞書を学習させたモデルを使用してベクトル変換を行うことにより、薬剤の名称だけではなく、薬剤名を構成する各単語の意味を含む使用併用薬剤名ベクトルと、注意併用薬剤名ベクトルとを生成する。
ベクトル生成部16Cが生成した各ベクトルのうち、患者ベクトルおよび全指導文の指導文ベクトルは、上記第3の実施の形態と同様に、学習モデル生成部17Bおよび指導文抽出部19Bに入力される。
一方、使用併用薬剤名ベクトルおよび注意併用薬剤名ベクトルは、第2学習モデル生成部115に入力される。そして、第2学習モデル生成部115は、使用併用薬剤名ベクトルとの類似度が大きい注意指導文ベクトルを出力するように学習された第2学習モデルを生成する。ここで、各薬剤名ベクトルは、薬剤名を構成する各単語の意味を含んでいるため、表記揺れによる同一薬剤の抽出漏れを最小限に抑えることができる。類似度の算出方法については、上記第1の実施の形態と同様であるため説明を省略する。第2学習モデルは、第2学習モデルDB116に登録される。
第2指導文抽出部117は、第2学習モデルに使用併用薬剤名ベクトルを入力して類似度が大きい注意併用薬剤名ベクトルの出力を得、出力された注意併用薬剤名ベクトルの注意併用薬剤名に関連づけられた注意指導文を抽出する。
指導文表示部111Cは、指導文抽出部19Bが抽出した指導文と、第2指導文抽出部117が抽出した指導文とを表示する。以後の処理については上記説明した各実施の形態の服薬指導支援装置と同様である。
以上説明したように、第5の実施の形態に係る服薬指導支援装置10Cでは、患者が使用する使用併用薬剤名に基づく使用併用薬剤名ベクトルと、主薬剤の指導文の中からあらかじめ抽出された、注意が必要な注意併用薬剤名に基づく注意併用薬剤名ベクトルと、に基づいて、入力された使用併用薬剤名ベクトルと類似度が大きい注意併用薬剤名ベクトルを出力するように学習された第2学習モデルを生成し、この第2学習モデルを用いて、主薬剤の指導文の中から、患者が使用する使用併用薬剤に関する注意事項を含む指導文を抽出する。この際、薬剤名のベクトル変換では単語の意味を考慮したベクトル変換が行われているため、表記揺れにより、主薬剤の指導文の中から、使用併用薬剤に関する指導文が抽出できない事態を回避することができる。
なお、第5の実施の形態では、第2指導文抽出部117の抽出した指導文には、上記第3の実施の形態にて説明した確信度が算出されていない。このため、第5の実施の形態では、確信度に基づいて、抽出された指導文の順位付けを行うことができない。しかしながら、第2指導文抽出部117の抽出した指導文に基づいて、学習モデルDB18Bに登録された学習モデルを用いて確信度の算出を行うことにより、第2指導文抽出部117の抽出した指導文の順位付けを行うようにしてもよい。また、指導文抽出部19Bが抽出した指導文の中に、第2指導文抽出部117の抽出した指導文と同一内容のものが含まれているか否かを確認し、含まれていない場合にのみ第2指導文抽出部117の抽出した指導文を指導文抽出部19Bが抽出した指導文に追加するようにしてもよい。
(第6の実施の形態)
さらに、本発明の第6の実施の形態について説明する。図14は、第6の実施の形態に係る服薬指導支援装置10Dの機能構成を示すブロック図である。
上記説明した各実施の形態では、処方箋データに含まれる薬剤に関する情報に基づいて、薬剤毎に患者にとって重要な指導文を抽出する形態について説明した。本第6の実施の形態では、薬剤毎にではなく、処方箋毎に指導文を抽出する形態について説明する。
図14に示すように、第6の実施の形態の服薬指導支援装置10Dは、第3の実施の形態に係る服薬指導支援装置10Bの機能構成(図9参照)に加えて、教師データDB118、第3学習モデル生成部119、第3指導文抽出部120、および第3学習モデルDB121を有する。また、第6の実施の形態の服薬指導支援装置10Dは、第3の実施の形態に係る服薬指導支援装置10Bの選択受付部112とは動作が異なる選択受付部112Dを有する。
教師データDB118には、過去の処方箋データに対して指導文抽出部19Bが抽出した指導文に基づく教師データがあらかじめ格納されている。本第6の実施の形態における教師データを、以下では処方箋教師データと称する。処方箋教師データは、例えば以下のようにして生成される。
図15は、第6の実施の形態の処方箋教師データを生成するための収集データの例を示す図である。収集データは、過去の処方箋データ、その処方箋データに対して、指導文抽出部19Bから出力されたデータ(以下、抽出部出力データと称する)、および、薬剤師によって付けられた順位(以下、薬剤師順位と称する)を示す薬剤師順位データを含む。
図15に示すように、処方箋データは、過去のある処方箋に対応するデータ、例えば患者名、およびその患者に対して処方された複数の薬剤名を含む。また、抽出部出力データは、当該処方箋データに対して過去に指導文抽出部19Bが出力したデータである。抽出部出力データには、指導文抽出部19Bにより抽出された所定数(図15では3つ)の指導文、および指導文毎の確信度が含まれる。抽出部出力データには、指導文そのものが含まれていてもよいし、指導文を識別する識別情報のみが含まれていてもよい。また、薬剤師順位データは、当該処方箋に対して指導文抽出部19Bが抽出した所定数の指導文のうち、実際に薬剤師が選択した指導文と、選択した指導文のそれぞれに対して薬剤師が付けた順位とを示すデータである。薬剤師順位データは、例えば選択受付部112Dにより生成される。
図15には、3つの薬剤(薬剤1~3)が記載された患者1の処方箋に基づく収集データの例が示されている。図15に示す例では、例えば薬剤1については3種類の指導文1-1~1-3が抽出されており、それぞれ指導文ベクトルの確信度は1、0.9、0.8である。また、薬剤2についても3種類の指導文2-1~2-3が抽出されており、それぞれ指導文ベクトルの確信度は0.9、0.8、0.7である。また、薬剤3についても3種類の指導文3-1~3-3が抽出されており、それぞれ指導文ベクトルの確信度は1、0.9、0.8である。そして、薬剤師は、この処方箋において、指導文1-1を1位に、指導文2-2を2位に、指導文3-1を3位に、それぞれ順位付けており、その他の指導文については選択しなかったとする。収集データにおいて、薬剤師が選択しなかった指導文については、順位付けがなされておらず、薬剤師順位データが「-」で示されている。
このような収集データに基づいて、処方箋教師データが生成される。図16A~図16Cは、図15に示す収集データに基づいて生成された処方箋教師データの例を示す図である。
図16A~図16Cに示すように、処方箋教師データは、2つの指導文に対応する、患者名、指導文、確信度、薬剤師順位、および優劣ラベルを含む。優劣ラベルは、2つの指導文同士の優劣を示している。
本第6の実施の形態では、過去の処方箋データに対して抽出された全ての指導文における、2つの指導文同士の組み合わせの全てに対応する処方箋教師データがそれぞれ独立して生成される。
優劣ラベルは、薬剤師順位に基づいて決定される。図16Aに示すように、特定の2つの指導文のいずれにも薬剤師順位が与えられている場合、より薬剤師順位が高い指導文1-1に優劣ラベル「1」が、より薬剤師順位が低い指導文2-2に優劣ラベル「0」が付与される。
また、図16Bおよび図16Cに示すように、一方の指導文には薬剤師順位が与えられ、他方の指導文には薬剤師順位が与えられていない場合、薬剤師順位が与えられていない方の指導文に付与される優劣ラベルの値は、常に「0」である。従って、図16Bに示すように、指導文2-2には順位が与えられているが、指導文3-2には順位が与えられていない場合、指導文2-2に優劣ラベル「1」が、指導文3-2には優劣ラベル「0」が、それぞれ付与される。
また、図16Cに示すように、指導文1-2、指導文1-3ともに順位がつけられていない(すなわち過去に薬剤師によって選択されていない)場合には、いずれの指導文に対しても優劣ラベル「0」が付与される。
また、確信度を優劣ラベルに反映するようにしてもよい。すなわち、例えば図16A、図16Bおよび図16Cに示すように、決定した優劣ラベルの値に対して、対応する指導文の確信度を掛けることで、確信度を考慮した優劣ラベルを各指導文に付与するようにしてもよい。具体的には、図16Aに示す例では、指導文1-1の確信度が「1」、優劣ラベルが「1」であるため、確信度を考慮した場合の優劣ラベルは「1」となる。また図16Bに示す例では、指導文2-2の確信度が「0.8」、優劣ラベルが「1」であるので、確信度を考慮した場合の優劣ラベルは「0.8」となる。さらに図16Cに示す例では、優劣ラベルがともに「0」であるため、確信度の値に関わらず、確信度を考慮した場合の優劣ラベルは「0」となる。このようにすることで、確信度の高い指導文の優劣ラベルを相対的に高くする制御が可能となる。
以上説明したように、処方箋教師データは、過去の処方箋データに対して抽出された全ての指導文のうち、特定の2つの指導文同士の優劣(薬剤師順位の高低)を示している。
なお、上記したように、本第6の実施の形態では、過去の処方箋データに対して抽出された全ての指導文における、2つの指導文の組み合わせの全てに対応する処方箋教師データがあらかじめ生成される必要がある。例えば図15の収集データのように、9個の指導文が抽出されている場合、9C2=36個の組み合わせに対応する36個の処方箋教師データが生成される。ただし、予測モデルの出力する優劣ラベルの精度を確保するためには、2つの指導文のデータ内での順序を区別する必要があり、9P2=72個の組み合わせの処方箋教師データが生成される。
このようにして生成された処方箋教師データが、教師データDB118に格納されている。
第3学習モデル生成部119は、教師データDB118に格納された処方箋教師データを用いて学習モデルを生成する。第3学習モデル生成部119が生成する学習モデルは、新たな処方箋データが入力された際に、新たな処方箋に記載された複数の薬剤に対応する複数の指導文の中から、患者にとって重要な指導文を出力するように学習処理が施されたモデルである。
第3学習モデル生成部119による学習モデルの生成は、学習モデル生成部17Bによる学習モデルの生成と同様、例えば薬局Pにおける服薬指導支援装置10Dの稼働前に行われていることが望ましい。しかしながら、薬局Pにおいて服薬指導支援装置10Dが稼働した状態で、新たな処方箋データに対する抽出部出力データおよび薬剤師順位データが新たに生成された場合、これを新たな処方箋教師データとして用いて、随時第3学習モデルDB121の学習モデルを更新し続ける(任意のタイミングで追加学習、もしくは再学習する)ような形態を採用してもよい。
第3指導文抽出部120は、このように生成された学習モデルを用いて、患者に提供すべき指導文を抽出する。具体的には、第3指導文抽出部120は、新たに入力された処方箋データに基づき、当該処方箋データに対して抽出された指導文を取得する。そして、第3指導文抽出部120は、学習モデルを用いて、取得した指導文における、全ての2つの指導文の組み合わせでの指導文の優劣を判定し、上位所定数の指導文を抽出する。
このような構成により、第6の実施の形態に係る服薬指導支援装置10Dは、薬剤毎にではなく、処方箋毎に、患者にとって重要な指導文を抽出することができる。これにより、処方箋にて処方されている薬剤同士の相互関係を考慮した指導文を患者に提供することができる。また、薬剤師によって選択されなかった指導文についても、処方箋教師データにおいて除外せず、優劣ラベル「0」を持つ要素として扱っているため、より実態に即した指導文の選択を行うことができる。
このような構成により、例えば以下のような効果が得られる。薬剤によっては、他の薬剤と併用してはならないもの(併用禁忌)や、他の薬剤との併用によって相互作用が生じるものがある。処方箋に記載された薬剤にこのような併用禁忌や相互作用がある場合、薬剤毎に指導文抽出を行った場合、併用禁忌や相互作用に関する指導文が抽出されないことがある。しかしながら、同様の組み合わせの薬剤が記載された過去の処方箋に対して、薬剤師が併用禁忌や相互作用を考慮した指導文の選択(順位付け)を行っている可能性が高い。このことから、第6の実施の形態に係る服薬指導支援装置10Dでは、過去の処方箋毎に薬剤師が順位付けした結果に基づいて学習モデルを生成するため、薬剤毎の抽出では抽出されなかった指導文が抽出されることが期待される。
(第6の実施の形態の変形例)
上記説明した第6の実施の形態では、新たに入力された処方箋データに基づき、処方箋データに対して抽出された全ての指導文において、2つの指導文の組み合わせの全てに対応する処方箋教師データに基づき、学習モデルを生成していた。従って、第3指導文抽出部120による指導文の抽出の際には、全ての2つの指導文の組み合わせの優劣を判定してから、上位所定数の指導文を抽出していた。
本変形例では、生成した学習モデルを利用した優劣ラベル予測時の演算量を低減するため、あらかじめ所定数の指導文間における優劣を判定することができる学習モデルを生成する例について説明する。
本変形例においては、処方箋教師データとして、所定数の指導文間の優劣を示す教師データが教師データDB118に格納されている。図17Aおよび図17Bは、処方箋教師データの他の例を示す図である。図17Aおよび図17Bに示す処方箋教師データは、図15に示す収集データに基づいて生成されたものである。
図17Aに示す例では、所定数を3とした場合、すなわち3個の指導文のそれぞれに対して、薬剤師順位データに基づく優劣ラベルが付与された処方箋教師データが示されている。本変形例では、所定数の指導文間の優劣を示す必要があるため、優劣ラベルには例えば0から1までの間の任意の数が使用される。図17Aに示す例では、薬剤師順位が1位である指導文1-1に対して優劣ラベル「1」が付与されている。また、薬剤師順位が2位である指導文2-2に対して優劣ラベル「0.5」が付与されている。また、薬剤師順位が3位(全部で3個なので最下位)である指導文3-1に対しては優劣ラベル「0」が付与されている。この場合、処方箋教師データは、これら3行の順序すべてのパターンを考慮した3!=6通り生成される。
一方、図17Bに示す例では、所定数を100とした場合、すなわち100個の指導文のそれぞれに対して、薬剤師順位データに基づく優劣ラベルが付与された処方箋教師データが示されている。図17Bに示す例では、薬剤師順位が3位である指導文3-1が最下位ではなく、薬剤師により選択されていない指導文1-1,2-2,3-1以外の全ての指導文がより下位である。このため、図17Aに示す例では、薬剤師順位が1位である指導文1-1に対して優劣ラベル「1」が付与されている。また、薬剤師順位が2位である指導文2-2に対して優劣ラベル「0.9」が付与されている。また、薬剤師順位が3位である指導文3-1に対しては優劣ラベル「0.8」が付与されている。さらに、それ以外の全ての指導文に対しては優劣ラベル「0」が付与されている。優劣ラベルの値は相対値であり、薬剤師順位を反映する任意の値に設定されればよい。ただし、異なる処方箋に対する複数の処方箋教師データ間においては、同様の設定方法を採用する必要がある。
図15に示す収集データには、全部で9個の指導文しか含まれていないため、図17Bに示す例では、100個の指導文を含む処方箋教師データを生成するためには、91個の指導文が足りていない。これを補うため、足りない指導文には空のデータを付与する。空のデータとは、図17Bの最下段に例示するような、指導文およびその識別情報、確信度、および優劣ラベルが全て0のデータである。また、処方箋教師データは、指導文の順序を考慮して並べ替えたデータも利用するので、図17Bに示す例では、9!=362,880通りのデータが生成される。
第3学習モデル生成部119は、このように生成された処方箋教師データに基づいて、複数の指導文間の優劣を出力できる学習モデルを生成する。これにより、本変形例では、演算処理量を上記説明した第6の実施の形態と比較して、演算量を低減することができる。
(第7の実施の形態)
上記説明した第1の実施の形態において、薬剤師による指導文の選択または非選択に基づいて、教師データの重み付けを行い、重み付け後の教師データを用いて、学習モデル生成部17が再学習を行っていた。このような構成において、薬剤師が選択しなかった指導文に1未満の重み付けがなされることにより、薬剤師が選択しなかった指導文の順位付けが大きく下がっていくことがある。順位付けが下がると、その指導文が表示される優先順位が下がり、薬剤師の目に触れにくくなるため、例えその指導文が実際にはある患者にとって重要な指導文であったとしても、薬剤師によって選択されにくくなってしまう。
本第7の実施の形態では、このような事態に対応するため、以下のような構成を採用する。なお、本第7の実施の形態の服薬指導支援装置の機能構成については、図3を参照して説明した第1の実施の形態の服薬指導支援装置10と同様である。
指導文表示部111は、順位付け部110が行った順位付けに従って項目毎に上位所定数の指導文を表示する指導文表示欄201に加えて、指導文毎に薬剤師による選択を受け付けるチェック欄202を表示させる。また、指導文表示部111は、表示画面200内に、指導文を表示させるための表示要素(ボタン等)を表示する。図18は、チェック欄202および指導文を表示させるためのボタン210の表示例を示す図である。薬剤師が入力装置106を介してボタン210を選択すると、現在指導文表示欄201に表示されている指導文より少し下位の指導文が指導文表示欄201に表示される。
薬剤師は、今の患者に対しては選択はしないが、患者によっては重要であるため順位を下げたくないと考える指導文に対して、入力装置106を介してチェック欄202をチェックすることができる。薬剤師によりチェックがなされると、チェックされた指導文に対しては、順位が下がらないような処理がなされる。具体的には、例えば重み付け部114が、薬剤師がチェックした指導文に対して1倍以上の重み付けをすればよい。
また、薬剤師は、現在指導文表示欄201に表示されている指導文より下位の指導文に対してチェック付けを行いたい場合には、ボタン210を押下する。これにより、現在より少し下位の指導文が指導文表示欄201に表示され、薬剤師がチェック付けを行うことができるようになる。
なお、薬剤師によってはチェック付けを行わない、あるいはチェック付けできることを薬剤師が知らない場合がある。これに対処するため、表示画面200内に他の指導文を閲覧できること、および重要な指導文について順位を下げない操作を行えることを報知する文章や記号等を表示してもよい。
また、薬剤師が順位を下げたくないと考える指導文に対してチェックするのではなく、薬剤師が複数の指導文の順位を直接編集できるようにしてもよい。
以上のような構成により、薬剤師が選択しなかった指導文の順位が大きく下がり、薬剤師の目に触れにくくなる事態を回避できる。