JP7257031B2 - 乳製品の特性改変方法 - Google Patents
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乳酸菌は、発酵乳やチーズなどの乳製品の製造において必要不可欠なものであり、乳製品の旨み、テクスチャーおよび全体的な特徴においても、強く寄与するものである。例えば、ナチュラルチーズの熟成は主に使用する乳酸菌の産生する酵素により進行し、これによりチーズの旨みやテクスチャーが大きく変化するため、使用する乳酸菌の種類がチーズの完成度に大きく関与することはよく知られている。また、酸耐性が強いLG21乳酸菌を使用して得られた発酵乳やチーズなどの乳製品が、人体中のピロリ菌除去効果があることも知られている。
通常、発酵乳やチーズなどの乳製品の製造に使用される乳酸菌は、乳製品製造用の「たね菌」を購入して使用することが多いものの、乳製品に新たな付加価値を付与するために、新たな乳酸菌を創製する試みも多く報告(例えば、特許文献1~4等)されている。
1.ラクトコッカス・ラクチス サブスペーシーズ ラクチス ビオバール ディアセチラクチス株(Lactococcus lactis subsp. lactis biovar diacetylactis strain)NIAI 01-7株を使用して、乳製品の機能性および食感の何れか1以上を改変することを特徴とする、乳製品の特性改変方法。
2.上記乳製品の機能性の改変が、乳製品中の機能性ペプチドの増強であることを特徴とする、1.記載の乳製品の特性改変方法。
3.上記機能性ペプチドが、血圧降下作用ペプチドおよび/または抗不安作用ペプチドであることを特徴とする、2.記載の乳製品の特性改変方法。
4.上記乳製品の食感の改変が、濃厚感の向上であることを特徴とする、1.記載の乳製品の特性改変方法。
5.上記乳製品が、チーズまたは発酵乳であることを特徴とする、1.~4.の何れかに記載の乳製品の特性改変方法。
乳製品中にこれらの機能性ペプチドを増強し得ること、さらには、風味ではなく食感としての濃厚感を向上させ得ることは、本発明において初めて見出されたことであり、乳製品に新たな特徴を付与できる点において、本発明は有用である。
以下、本発明について詳細に説明する。
ラクトコッカス・ラクチス サブスペーシーズ ラクチス ビオバール ディアセチラクチス株(Lactococcus lactis subsp. lactis biovar diacetylactis strain)NIAI 01-7株は、チーズ用の「たね菌」(CHR. Hansen社(デンマーク)から入手)から分離されたものであり(Journal of Dairy Science (1998), 81(6), 1486-1491)、酸生成力およびタンパク質分解力が弱いという特性を有する。この乳酸菌01-7株は、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 畜産研究部門内 畜産物研究領域 乳製品開発ユニット(http://www.naro.affrc.go.jp/laboratory/nilgs/introduction/chart/0704/index.html)から分譲可能である。
本発明における乳製品とは、乳が原料として用いられる製品を意味する。具体的には、例えば、ヨーグルト、チーズ、クリーム、バター、バターオイル、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、たんぱく質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調整粉乳、発酵乳、乳酸菌飲料および乳飲料等が挙げられる。中でも、本発明の乳製品としては、チーズまたは発酵乳が好適である。
乳製品の原料乳としては、例えば、牛乳のほか、山羊乳、羊乳、水牛乳、ロバ乳等が挙げられる。
本発明は、乳酸菌01-7株を使用して乳製品の機能性を改変する方法に関するものである。乳製品の機能性の改変としては、乳製品中の機能性ペプチドの増強が挙げられる。
後述する実施例において詳細に説明するが、乳酸菌01-7株を使用することにより、乳製品中に、Try-Leu-Gly-Try(以下、「YLGY」という。)の配列からなるペプチドが特異的に増強されることや、Phe-Pro-Glu(以下、「FPE」という。)の配列からなるペプチド、Phe-Phe(以下、「FF」という。)の配列からなるペプチド、Pro-Leu-Trp(以下、「PLW」という。)の配列からなるペプチドなどが、特異的に生成することが確認された。
ここで、Try-Leu(YL)の配列からなるジペプチドは、強力な抗不安作用(精神的ストレス緩和作用)を有し、経口投与でも効果を示すことが報告(Kanegawa et al. FEBS Lett 2010)されており、Try-Leu(YL)モチーフを有するペプチドが、同じメディエーターを介して抗不安作用を有することや、抗うつ作用を示すことも明らかとなっている。すなわち、乳酸菌01-7株を使用することにより、乳製品中にペプチド「YLGY」が特異的に増強されることにより、当該乳製品に抗不安作用や抗うつ作用といった機能性を付与し、乳製品の機能性を改変するものといえる。
また、ペプチド「FPE」、「FF」、「PLW」は、ACE阻害作用、血圧降下作用ペプチドとして知られている。すなわち、乳酸菌01-7株を使用することにより、乳製品中にペプチド「FPE」、「FF」、「PLW」が特異的に生成されることにより、当該乳製品に血圧降下作用といった機能性を付与し、乳製品の機能性を改変するものといえる。
本発明は、乳酸菌01-7株を使用して乳製品の食感を改変する方法に関するものである。
後述する実施例において詳細に説明するが、乳酸菌01-7株を使用することにより、乳製品の食感を特異的に改変することができる。具体的には、官能評価に使用する実用官能評価用語を選定するために、ISO22935-2:2009のAnnex Aに示された評価用語集から発酵乳に関する官能評価用語を選択した。訓練を受けた分析型官能評価パネリストを用いて官能評価を行った結果について、一般化線形モデル(累積ロジット関数)分析を行ったところ、乳酸菌01-7株を使用した発酵乳は、食感の評価用語である「濃厚な」について、強度の高い尺度が選択される確率を有意に(p<0.05)高めた。すなわち、乳酸菌01-7株を使用することにより、乳製品に対して風味である「コク」ではなく、食感である「濃厚さ」を高め、乳製品の食感を改変するものである。
なお、官能評価は、味および食感と匂いに関してそれぞれ実施した。味に関する語は、塩味、渋味、苦味、酸味、甘味、刺激、計6語、食感に関する語は、濃厚な、水分の多い、ふわふわした、薄片状の、ゼラチン状の、砂っぽい、固まり状の、どろっとした、ねばねばした、計9語、匂いに関する語は、チーズ臭、バター臭、クリーム臭、発酵臭、ヨーグルト臭、ミルク臭など計32語である。
ここで、上述した分析型官能評価について、以下説明する。
分析型官能評価パネリストは国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 畜産研究部門において選抜および訓練を受け、官能評価に関する知識および経験を有する15名からなる。分析型官能評価は検体の品質を客観的に評価することを目的としており、主観的な好ましさは評価しない。
分析型官能評価パネリストは検体を喫食し、前述の選抜した味6語、食感9語、匂い32語からなる評価用語群を用い、各用語および用語に付した定義によって表現される特性があてはまるか否かを判定させるとともに、あてはまる場合はその程度を「強く」「中位に」「弱く」の3段階で評価した。
分析型官能評価パネリストには、官能評価に先立ち評価の手法について十分説明するとともに、検体の味、食感、および匂い以外の影響を排するため、官能評価は黄色照明下で個別に区切られたブース内で実施した。この時、1点の検体を評価した後に、逆浸透水で口をすすぐとともに、1分間以上の休憩を行うことで、複数検体を1セッションで評価する場合は、前検体の影響を受けないようにした。
この官能評価は、1セッションあたり各検体を2回ずつ評価するとともに、評価順序の影響も考慮した解析を可能とするため、1セッション内での検体の評価順序はラテン方格法により1人ずつ異なる順序で評価させた。
ここで、分析型官能評価に関する一般化線形モデル(累積ロジット関数)分析ついて、以下説明する。
分析型官能評価のデータ解析は、分析型官能評価パネリスト間のベースラインを補正するために、分析型官能評価パネリストをランダム効果とした、混合モデル分析を行うことが適切と考えるのが近年の世界的な潮流である。しかし、本発明で実施した官能評価から得られる評点データは、正規分布しておらず、正規分布を前提とした混合モデル分析を用いることは不適である。他方、目的変数が3分類以上の順序分類尺度のデータにおいては、累積ロジットをリンク関数とした一般化線形混合モデルを利用できる。
本発明で実施した官能評価の回答データは強度に関し順序のある4段階の分類尺度(「無選択」「弱い」「中位」「強い」)であることから、累積ロジットをリンク関数とした一般化線形混合モデルを用い、乳酸菌01-7株添加の有無、「たね菌」株の違い(実施例における、乳酸菌01-1株もしくは乳酸菌B-1株)、および原材料のロット差を母数効果とし、分析型官能評価パネリストをランダム効果として解析することで、乳酸菌01-7株添加の有無が各評価項目の強度に影響を及ぼすかについて検証できる。
各分析型官能評価パネリストによる官能特性の感知の感度には、個人差があることが当然に想定されるが、一般化線形混合モデルにおいてランダム効果として分析型官能評価パネリストを含めることで、各分析型官能評価パネリストにおける官能特性の基準値の違いを平準化し、これを解決できる。すなわち、本モデルによる解析で、分析型官能評価パネリストによる基準値の違いや、乳酸菌01-7株以外に用いる「たね菌」株の違い、官能評価セッション内における提示順序の違いを差し引いた、乳酸菌01-7株添加の影響のみを解析することができる。
さらに、各強度における対数オッズの最小二乗平均値については、差の検定に供することができるため、乳酸菌01-7株添加の影響が認められた評価項目について、当該評価項目によって評価される特性が強くなったか、もしくは弱くなったかについても解析することができる。
本発明は、乳酸菌01-7株を使用して乳製品の特性を改変する方法に関するものである。乳酸菌01-7株の使用方法については特に限定されないが、乳酸菌01-7株を使用して乳製品を製造することが好ましい。
例えば、乳酸菌01-7株を使用してチーズの特性を改変する方法について、簡単に説明する。
原料となる乳の由来は限定されず、山羊、牛、羊等の乳を用いることができるが、この中でも牛乳または山羊乳が好ましい。チーズの特性改変は、チーズ製造用原料乳に、乳酸菌01-7株を接種し、レンネット等の凝乳酵素を添加し、発酵させ、発酵期間中に溶出するホエイを抜き、熟成を行い、最終的に熟成するという公知のチーズ製造方法と同様の方法に従い製造すればよい。また、チーズ製造用原料乳には、公知の「たね菌」を使用して、ホエイを排出した後のチーズカードやチーズに、乳酸菌01-7株を接種してもよい。
また、乳酸菌01-7株を使用して発酵乳の特性を改変する場合においても、一般的な発酵乳の製造方法と同様の方法に準じて行う。原料となる乳の由来は限定されないが、牛乳が好ましい。乳酸菌01-7株は、単独で「たね菌」として使用しても、公知の「たね菌」と併用してもよい。
<実施例1:乳製品の機能性改変方法>
(1)乳酸菌01-7株を使用したチーズの製造方法について
牛乳(ホルスタイン)30kgを72℃で15秒間殺菌し、30℃に冷却後、300mLのスキムミルク培地で2日間培養した乳酸菌01-1株と乳酸菌01-7株を使用した。この2株(乳酸菌01-1株と乳酸菌01-7株)を添加したチーズは「01-7株チーズ」、乳酸菌01-1株のみ添加したものは「コントロールチーズ」とする。30℃、1時間静置後、30kgに対し0.9 g の レンネット(Fromase 2200 TL Granulate; DSM Food Specialities, Heerlen, The Netherlands)を添加し、30℃において、1時間静置した。凝固した牛乳をカードナイフで1~2cm3のキューブ状になるようにカットした。クッキングは36℃で約1時間行い、チーズカードを型に詰め、1kgの重さでプレスし、36℃、90分間反転をしながら型をつくった。これを、8重量%NaCl水溶液に10℃、16時間浸漬した後、10℃で1週間乾燥させた。乾燥後、バキュームパッケージに包装し、13℃で180日間熟成させた。
なお、上記の乳酸菌01-1株は、ラクトコッカス・ラクチス サブスペーシーズ クレモリス株(Lactococcus lactis subsp. cremoris strain)NIAI 01-1株(以下、「01-1株」ということもある。)を意味する。この乳酸菌01-1株は、乳酸菌01-7株と同様に、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 畜産研究部門内 畜産物研究領域 乳製品開発ユニットから分譲可能である。
チーズのメタボローム解析は、かずさDNA研究所に委託して実施した。
解析手法の詳細は以下のとおりである。
「01-7株チーズ」と「コントロールチーズ」それぞれを細かく切り、チーズサンプル量の3倍量の75%メタノール水溶液に溶解した。撹拌後、10倍量の75%メタノール水溶液で希釈し、孔径0.2μmメンブレンフィルターでろ過後、固相抽出遠心カラム(Monospin C18 centrifuge、GL Science製)で処理し、カラムを通過した溶液5μlを、LC-MSにて測定した。
LC-MSは、高速液体クロマトグラフィー(Agilent 1200 series、Agilent Technologies Inc.製) に 高分解能質量分析システム(LTQ orbitrap XL、Thermo Fisher Scientific製)を接続したものを使用した。高速液体クロマトグラフィーは、カラム(C18 column、TOSOH TSK-GEL ODS-100V、5μm、3×50mm)、検出部(photo diode array、190-950 nm)を装備したものを、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS) は、ポジティブイオンモードで行った。
LC-MSは、質量範囲100~1500m/zでMSデータを取得し、ソフトウェア(MSGet、http://www.kazusa.or.jp/komics/ja/tool-ja/66-msget.html)を使用して、出力されたMSデータをテキストファイルに変換し、得られたデータから、MSデータを解析するためのツール(PowerGet)により、化合物を推定(MFSearcher)した。
参考文献:Sakurai, N., Ara, T., Enomoto, M., Motegi, T., Morishita, Y., Kurabayashi, A., Iijima, Y., Ogata, Y., Nakajima, D., Suzuki, H., & Shibata, D. (2014) Tools and databases of the KOMICS web portal for preprocessing, mining, and dissemination of metabolomics data. BioMed Research International, 2014, 194812; Sakurai, N., Ara, T., Kanaya, S., Nakamura, Y., Iijima, Y., Enomoto, M., Motegi, T., Aoki, K., Suzuki, H., & Shibata, D. (2013) An application of a relational database system for high-throughput prediction of elemental compositions from accurate mass values. Bioinformatics, 29, 290-291.
質量ピーク強度を基に、「01-7株チーズ」(n=3)とコントロールチーズ(n=3)における化合物量を比較し、p値(有意確率)が0.05未満(p<0.05)の化合物を有意差ありとして抽出した。
上記メタボローム解析により、コントロールチーズでは検出されず、「01-7株チーズ」にのみ検出された成分を、下記表1にまとめ示した。また、両チーズにおいて検出された成分のうち、「コントロールチーズ」に比べて「01-7株チーズ」で増加した成分を、下記表2にまとめ示した。表2中の「増加率」は、MSピークを基準に、「01-7株チーズ」に含まれる化合物量を「コントロールチーズ」に含まれる同じ化合物量で除した値である。
この他にも、その機能性は不明ながらLeu-Glu-Glu-Leu(以下、「LEEL」の配列からなるペプチド、Valを2残基、Lys、Proを1残基ずつ含むペプチド、さらに、桂皮酸やジヒドロクマリンなどの化学式「C9H8O2」で表される芳香族化合物群が特異的に生成することも確認された。
また、表2に示すとおり、乳酸菌01-7株を使用した乳製品には、乳酸菌01-1株のみを使用した乳酸菌に比べて、機能性を付与する成分がより多く検出されることが明らかとなった。特に、乳酸菌01-7株を使用した乳製品には、強力な抗不安作用(精神的ストレス緩和作用)を有することが知られているTry-Leu-Gly-Try(以下、「YLGY」という。)の配列からなるペプチドが特異的に増強されることが確認された。また、抗癌作用が知られている化学式「C31H47NO11」で表されるテオペデリンL(Theopedrine L)も特異的に増強されることが確認された。
この他にも、その機能性は不明ながらGlu-Leu-Glu-Glu-Leu(以下、「ELEEL」の配列からなるペプチドや、Pro-Leu-Pro-Pro-Thr-Val(以下、「PLPPTV」の配列からなるペプチドも特異的に増強されることが確認された。
すなわち、乳酸菌01-7株を使用することにより、乳製品中に機能性を有するペプチド「FPE」、「FF」、「PLW」、「YLGY」などが特異的に生成または増強され、当該乳製品に血圧降下作用、抗不安作用、抗うつ作用といった機能性を付与することができて、乳製品の機能性が改変されるものと考える。
(1)乳酸菌01-7株を使用した発酵乳の製造方法について
乳酸菌01-1株、Lactobacillus helveticus B-1株および乳酸菌01-7株をスキムミルク培地において、30℃でそれぞれ48時間培養し、「たね菌」を調製した。ホモゲナイズド殺菌乳(殺菌条件:94℃、20分間)に、たね菌01-1株もしくはB-1株に、01-7株を添加もしくは添加しない4通りの組合せで、1%(v/v)接種して、約90gずつカップに分注し、30℃、48時間培養後、カップを密封して4℃で冷蔵保管して製造した発酵乳(ヨーグルト)を、官能評価に供した。
なお、上記のLactobacillus helveticus B-1株も、乳酸菌01-7株と同様に、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 畜産研究部門内 畜産物研究領域 乳製品開発ユニットから分譲可能である。
分析型官能評価に供した発酵乳検体はヨーグルトであり、原料乳を乳酸菌01-1株のみ、もしくはこれに乳酸菌01-7株を添加して製造したもの、および乳酸菌B-1株のみ、もしくはこれに乳酸菌01-7株を添加して製造した4種類である。
分析型官能評価パネリストは、これら4種のヨーグルトを1セッション中に2回ずつ喫食し、上述の味6語、食感9語、匂い32語からなる評価用語群を用い、各用語および用語に付した定義によって表現される特性があてはまるか否かを各回に判定させるとともに、あてはまる場合はその程度を「強く」「中位に」「弱く」の3段階で評価した。
官能評価は、ヨーグルト製造に用いた原料乳のロットを変えて2セッション実施した。すなわち、分析型官能評価パネリスト1名あたり製造した菌株の異なるヨーグルト1種類について4回の評価を行った。また、1セッション内での検体の評価順序は、ラテン方格法により1人ずつ異なる順序で評価させ、評価順序の影響も考慮した解析を可能とした。ただし、官能評価に参加したパネリストの人数は、1セッション目は13名、2セッション目は14名であることから、一部のパネリストにおいてはヨーグルト1種類あたりの評価回数は2回であり、参加しなかったセッションのデータは欠測値として解析した。
一般化線形混合モデルの結果から、乳酸菌01-7株添加の有無、「たね菌」株の違い(乳酸菌01-1株もしくは乳酸菌B-1株)、およびこれらの交互作用が強度に有意に影響をおよぼした官能評価項目は、下記表3に示す結果の通りであり、乳酸菌01-7株添加は食感評価用語のうち、「濃厚」において、p値(有意確率)が0.05未満であり、有意に影響をおよぼすことが明らかとなった。
また、一般化線形混合モデル分析から得られた対数オッズの最小二乗平均値から、乳酸菌01-7株添加もしくは無添加の場合に、「濃厚」について「無回答」「弱い」「中位」「強い」がそれぞれ選択される確率を算出しグラフとしたものが、下記の図1である。この図1から、乳酸菌01-7株添加により「濃厚」についてより強い分類尺度が選択されること、すなわち、乳酸菌01-7株添加により発酵乳の食感がより「濃厚」になることを示している。
乳製品中にこれらの機能性ペプチドを増強し得ること、さらには、風味ではなく食感としての濃厚感を向上させ得ることは、本発明において初めて見出されたことであり、乳製品に新たな特徴を付与できる点において、本発明は有用である。
Claims (3)
- ラクトコッカス・ラクチス サブスペーシーズ ラクチス ビオバール ディアセチラクチス株(Lactococcus lactis subsp. lactis biovar diacetylactis strain)NIAI 01-7株を使用して、乳製品の機能性および食感の何れか1以上を改変し、
前記乳製品の機能性の改変が、抗不安作用ペプチドの増強であることを特徴とする、乳製品の特性改変方法。 - 上記乳製品の食感の改変が、濃厚感の向上であることを特徴とする、請求項1記載の乳製品の特性改変方法。
- 上記乳製品が、チーズまたは発酵乳であることを特徴とする、請求項1、2の何れかに記載の乳製品の特性改変方法。
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