JP7255263B2 - 導電性ペーストおよびセラミック電子部品 - Google Patents

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Description

本発明は、導電性ペーストおよびセラミック電子部品に関する。
近年、電子機器の小型化・高機能化が急速に進んでおり、電子機器に搭載される積層セラミックコンデンサについても、小型化が要求されている。たとえば、積層セラミックコンデンサの場合、薄層化技術および多層化技術の進展により、アルミ電解コンデンサに代替できる高静電容量を有するものが商品化されるようになった。
このような、積層セラミックコンデンサ用の内部電極ペーストの溶剤として、特許文献1において開示される導電性ペーストは、ジヒドロターピニルアセテートを使用することで、内部電極ペーストに用いられるバインダであるエチルセルロースを溶解するが、セラミックグリーンシートのバインダであるブチラールを溶解しないとしたものである。すなわち、セラミックグリーンシートに対するシートアタック現象を防ぐことができる。
また、特許文献2に記載の導電性ペーストは、導電性金属粉末、有機溶剤、バインダ、セラミック粉末、分散剤を含む積層セラミックコンデンサ用の導電性ペーストにおいて、分散剤の添加量を導電性金属粉末100重量部に対して、0.4~3.5重量部とすることで、粘度安定性に優れた導電性ペーストとしたものである。
特許第2976268号 特開2016-031807号公報
しかしながら、特許文献1の導電性ペーストは、長期的な粘度の安定性に乏しく、経時的に粘度が増大するという問題を有していた。
また、特許文献2に記載の導電性ペーストは、セラミック粉末に対する分散剤量が考慮されておらず、粘度の安定性に乏しいという問題を有していた。
本発明の目的は、長期的に粘度安定性の高い導電性ペーストを提供することである。また、本発明にかかる導電性ペーストを用いることにより、電気的特性の良好な電子部品を提供することである。
この発明にかかる導電性ペーストは、少なくとも導電性金属粉末と、酸化物と、バインダと、分散剤と、溶剤を含有する導電性ペーストであって、分散剤が、アニオン性高分子分散剤のみであり、分散剤の添加量が、導電性金属粉末と酸化物の合計の比表面積に対して、1.8mg/m2以上3.0mg/m2以下であり、導電性金属粉末は、導電性ペーストの重量に対して40重量%以上55重量%以下で含有され、酸化物は、導電性ペーストの重量に対して2.8重量%以上9.0重量%以下で含有されること、を特徴とする、導電性ペーストである。
また、この発明にかかるセラミック電子部品は、前述の導電性ペーストを用いて導体パターンが作製されたこと、を特徴とする、セラミック電子部品である。
この発明にかかる導電性ペーストにおいて、分散剤は、アニオン性高分子分散剤のみであり、導電性金属粉末とペロブスカイト型酸化物との合計の比表面積に対して、1.8mg/m2以上3.0mg/m2の範囲で含有され、導電性金属粉末は、導電性ペーストの重量に対して40重量%以上55重量%以下で含有され、酸化物は、導電性ペーストの重量に対して2.8重量%以上9.0重量%以下で含有されるので、粘度安定性の高い導電性ペーストを得ることができる。
また、この発明にかかるセラミック電子部品では、内部電極がセラミック本体に埋設されたセラミック電子部品において、前記内部電極が、本発明の導電性ペーストを使用して形成されているので、良好な印刷性を確保することが可能となり、電気的特性の良好なセラミック電子部品を高効率で得ることができる。
本発明によれば、長期的に粘度安定性の高い導電性ペーストを得ることができる。
また、本発明にかかる導電性ペーストを用いることにより、電気的特性の良好なセラミック電子部品を得ることができる。
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
本発明にかかるセラミック電子部品の一実施の形態を示す断面図である。
本発明にかかる導電性ペーストおよびその導電性ペーストを用いて導体パターンが形成されたセラミック電子部品の一実施の形態を、その製造方法と共に説明する。セラミック電子部品は、たとえば、積層セラミックコンデンサまたは積層セラミックインダクタのような受動素子や、素子間を電気的に接続する配線導体が形成されている多層セラミック基板などである。本実施の形態では、セラミック電子部品として、積層セラミックコンデンサを例にして説明する。
1.導電性ペースト
本発明にかかる導電性ペーストは、導電性金属粉末と、共材であるペロブスカイト型酸化物と、バインダと、分散剤と、ペースト溶剤とを含む。
導電性金属粉末は、たとえば、Ni粉末が用いられる。Ni粉末は、ペースト重量に対して、40重量%以上55重量%以下、含有される。
なお、導電性ペーストに含有される導電性金属粉末の材料としては、Niの他に、Cu、Ag、Pd、Auなどの金属や、これらの金属の1種を含む合金(たとえば、Ag-Pd合金)などの導電材料も用いることができる。
また、導電性金属粉末の平均粒径は、100nm以上400nm以下の範囲であることが好ましく、これらの間で適宜選択することができる。セラミック電子部品の内部電極の薄層化・多層化の要求に対応するためである。
また、共材であるペロブスカイト型酸化物は、セラミックグリーンシートに用いられる誘電体材料に応じて、BaTiO3、CaZrO3、SrZrO3から選ばれる少なくとも1種を主成分とされる。このペロブスカイト型酸化物は、ペースト重量に対して、2.8重量%以上9.0重量%以下の範囲で含有される。
共材であるペロブスカイト型酸化物の平均粒径は、10nm以上100nmの範囲であることが好ましく、これらの間で適宜選択することができる。セラミック電子部品の内部電極の薄層化・多層化の要求に対応するためである。
バインダは、たとえば、エチルセルロースが用いられる。エチルセルロースは、Ni重量に対して、2.8重量%以上5.0重量%以下の範囲で含有される。
なお、バインダとしては、エチルセルロースの他に、メチルセルロース、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂を用いることができる。
分散剤は、アニオン性高分子分散剤であり、導電性金属粉末とペロブスカイト型酸化物との合計の比表面積に対して、1.8mg/m2以上3.0mg/m2の範囲で含有される。また、導電性金属粉末とペロブスカイト型酸化物との合計の比表面積に対して、2.0mg/m2以上3.0mg/m2の範囲で含有されることがより好ましい。この導電性ペーストによりスクリーン印刷に適した粘弾性を発現させることができる。導電性金属粉末とペロブスカイト型酸化物との合計の比表面積に対して、1.8mg/m2より小さいと、セラミックグリーンシートに対してスクリーン印刷したとき、カスレが生じやすくなる。一方、導電性金属粉末とペロブスカイト型酸化物との合計の比表面積に対して、3.0mg/m2より大きいと、粘度安定性が低下し、セラミックグリーンシートに対してスクリーン印刷したとき、ニジミが生じやすくなる。
ここで、ニジミとは、1つの内部電極パターンの図形のエッジから、ニジんでいる最大のニジミ箇所をニジミ距離とし、ニジミ距離が10μm以上の場合、それをニジミと定義し、カスレとは、1つの内部電極パターンの図形中に白抜けがある場合、または図形のエッジが欠けている場合、それをカスレと定義する。
なお、アニオン性高分子分散剤としては、スチレン/無水マレイン酸共重合物、オレフィン/無水マレイン酸共重合物、またはポリスチレンスルホン酸塩を用いることができる。
ペースト溶剤は、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ターピニルアセテート、ジヒドロターピニルアセテートなどが用いられる。
本発明にかかる導電性ペーストによれば、分散剤がアニオン性高分子分散剤であり、そのアニオン性高分子分散剤が導電性金属粉末とペロブスカイト型酸化物との合計の比表面積に対して、1.8mg/m2以上3.0mg/m2の範囲で含有されるので、粘度安定性のより向上した導電性ペーストを得ることができる。
2.積層セラミックコンデンサ
図1は、前述の導電性ペーストを用いて内部電極が形成された積層セラミックコンデンサ1を示す長さ方向の垂直断面図である。
積層セラミックコンデンサ1は、セラミック本体10と、セラミック本体10の左右の端部に形成された外部電極20,22とを備えている。
セラミック本体10は、複数の内層用セラミック層11と、複数の内層用セラミック層11同士の界面に配設された複数の内部電極12,13と、複数の内層用セラミック層11を挟むように上下に配設された外層用セラミック層15a,15bとで構成された直方体形状の積層体構造を有している。
内部電極12と内部電極13とは、厚み方向において、内層用セラミック層11を介して対向している。この内部電極12と内部電極13とが、内層用セラミック層11を介して対向している部分に静電容量が形成されている。内部電極12,13は、前述の導電性ペーストを用いて作製されている。内部電極12,13は、Niからなる卑金属電極である。なお、内部電極12,13は、たとえば、Niの他に、Cu、Ag、Pd、Auなどの金属や、これらの金属の1種を含む合金(たとえば、Ag-Pd合金)などの導電材料も用いることができる。
内部電極12の左側端部は、セラミック本体10の左側の端面に引き出されて外部電極20に電気的に接続されている。内部電極13の右側端部は、セラミック本体10の右側の端面に引き出されて外部電極22に電気的に接続されている。
内層用セラミック層11は、Sr、Zrを主たる成分とするペロブスカイト型酸化物などの誘電体材料からなる。上下に配設された外層用セラミック層15a,15bも、それぞれ、内層用セラミック層11と同じ誘電体材料が用いられている。なお、この誘電体材料は、Ba、Tiを主たる成分とするペロブスカイト型酸化物でもよいし、Ca、Zrを主たる成分とするペロブスカイト型酸化物でもよい。
また、外部電極20,22は、Cuを含む電極層と、その電極層の表面に形成されるはんだ食われを防止するためのNiを含む第1のめっき層と、第1のめっき層の表面に形成されるSnを含む第2のめっき層とにより構成された3層構造で構成されている。
以上の構成からなる積層セラミックコンデンサ1は、内部電極12,13に対して、分散剤がアニオン性高分子分散剤であり、そのアニオン性高分子分散剤が導電性金属粉末とペロブスカイト型酸化物との合計の比表面積に対して、1.8mg/m2以上3.0mg/m2の範囲で含有される導電性ペーストを用いているため、導電性ペーストの粘度安定性が向上することから、良好な粘度特性及び印刷性を得ることができる。したがって、この発明にかかる導電性ペーストを使用することによって、良好な印刷性を確保することが可能となり、電気的特性の良好な積層セラミック電子部品を高効率で得ることができる。
3.積層セラミックコンデンサの製造方法
次に、前述の積層セラミックコンデンサ1の製造方法を説明する。
(内層もしくは外層用セラミックグリーンシートの作製)
まず、誘電体材料として、Sr、Zrを主たる成分とするペロブスカイト型酸化物が準備される。この誘電体材料から得られた誘電体粉末に有機バインダ、有機溶剤、可塑剤および分散剤を所定の割合で混合し、セラミックスラリーが作製される。このセラミックスラリーは、樹脂フィルム上に、内層もしくは外層用セラミックグリーンシートに成形される。
(導電性ペーストの作製)
次に、内部電極を形成するための導電性ペーストを作製するために、導電性金属粉末であるNi粉末と、共材であるペロブスカイト型酸化物と、バインダと、アニオン性高分子分散剤と、ペースト溶剤とが準備される。
導電性金属粉末は、たとえば、Ni粉末が用いられる。Ni粉末は、ペースト重量に対して、40重量%以上55重量%以下、含有される。
なお、導電性ペーストに含有される導電性金属粉末の材料としては、Niの他に、Cu、Ag、Pd、Auなどの金属や、これらの金属の1種を含む合金(たとえば、Ag-Pd合金)などの導電材料を用いることができる。
また、導電性金属粉末の平均粒径は、100nm以上400nm以下の範囲であることが好ましく、これらの間で適宜選択することができる。
また、共材であるペロブスカイト型酸化物として、たとえば、SrZrO3が準備される。このペロブスカイト型酸化物は、ペースト重量に対して、2.8重量%以上9.0重量%以下の範囲で含有される。
なお、共材であるペロブスカイト型酸化物は、セラミックグリーンシートに用いられる誘電体材料に応じて、BaTiO3、CaZrO3、SrZrO3から選ばれる少なくとも1種を主成分とされる。
また、共材であるペロブスカイト型酸化物の平均粒径は、10nm以上100nmの範囲であることが好ましい。
バインダは、たとえば、エチルセルロースが用いられる。エチルセルロースは、Ni重量に対して、2.8重量%以上5.0重量%以下の範囲で含有される。
なお、バインダとしては、エチルセルロースの他に、メチルセルロース、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂を用いることができる。
分散剤は、アニオン性高分子分散剤であり、Niとペロブスカイト型酸化物との合計の比表面積に対して、1.8mg/m2以上3.0mg/m2の範囲で含有される。
なお、アニオン性高分子分散剤としては、スチレン/無水マレイン酸共重合物、オレフィン/無水マレイン酸共重合物、またはポリスチレンスルホン酸塩を用いることができる。
ペースト溶剤は、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ターピニルアセテート、ジヒドロターピニルアセテートなどが用いられる。
そして、上記に示した材料である導電性金属粉末、共材であるペロブスカイト型酸化物、バインダ、アニオン性高分子分散剤およびペースト溶剤が調合され、3本ロールミル等で分散することにより、導電性ペーストが作製される。
(積層セラミックコンデンサの作製)
次に、内層用セラミックグリーンシート上に、本発明にかかる導電性ペーストがスクリーン印刷され、内部電極12,13となる導電性ペースト膜(焼成前の導体パターン)が形成される。
次に、導電性ペースト膜が形成された内層用セラミックグリーンシートは、導電性ペースト膜の端部の引き出し方向が互い違いになるように、複数枚積層される。さらに、外層用セラミックグリーンシート層が、積層された内層用セラミックグリーンシートを挟むように上下に積層される。すなわち、内層用セラミックグリーンシートと同じ材料からなり、かつ、導電性ペースト膜が形成されていない外層用セラミックグリーンシートが、所定の厚みになるように複数枚積層されて圧着され、積層体が形成される。そして、この積層体は、所定の製品サイズに切り分けられ、未焼成のセラミック本体10が得られる。
次に、切り分けられた未焼成のセラミック本体10は、窒素雰囲気中、400℃、10時間の条件で脱脂処理された後、窒素-水素-水蒸気混合雰囲気中、トップ温度1200℃、酸素分圧10-9~10-10MPaの条件で焼成され、焼結したセラミック本体10とされる。
内層用および外層用セラミックグリーンシートと導電性ペースト膜とは同時焼成され、内層用セラミックグリーンシートは内層用セラミック層11となり、外層用セラミックグリーンシートは外層用セラミック層15a,15bとなり、導電性ペースト膜は内部電極12,13となる。
次に、焼結したセラミック本体10の両端部に、それぞれ、Cuを主成分とする外部電極ペーストが塗布されて焼き付けられ、内部電極12,13に電気的に接続された電極層が形成される。さらに、電極層の表層に、NiめっきおよびSnめっきが施され、外部電極20,22が形成される。こうして、所望の積層セラミックコンデンサ1が得られる。
(実験例)
1.実験例
以下、実験例の試料が作製され、導電性ペーストの特性評価(粘度安定性および印刷性)が行われた。
(内層用もしくは外層用セラミックグリーンシートの作製)
まず、内層用および外層用セラミック層の主成分は、誘電体材料として、ペロブスカイト型酸化物を使用した。上記セラミックス誘電体粉末を有機バインダ、有機溶剤、可塑剤、分散剤を所定の割合で混合し、セラミックスラリーを調整した。それから、このセラミックスラリーを樹脂フィルム上に、内層用セラミックグリーンシートを作製した。
(導電性ペーストの作製)
次に、実験例の試料である導電性ペーストを作製した。
試料である導電性ペーストを作製するために、導電性金属粉末と、共材であるペロブスカイト型酸化物と、バインダと、分散剤と、ペースト溶剤とを準備した。
導電性金属粉末としては、Ni粉末を準備し、ペースト重量に対して、40重量%以上55重量%以下となるようにした。
共材である酸化物としては、ペロブスカイト型酸化物であるSrZrO3、CaZrO3およびBaTiO3を準備し、ペースト重量に対して、2.8重量%以上9.0重量%以下となるようにした。
バインダとしては、エチルセルロースを準備し、Ni重量に対して、2.8重量%以上5.0重量%以下とした。
分散剤としては、アニオン性高分子分散剤を準備し、Niと共材である酸化物との合計の比表面積に対して、1.3mg/m2以上4.8mg/m2の範囲内で準備した(表1を参照)。なお、比表面積は、BET法により求めた。
ペースト溶剤としては、ジヒドロターピニルアセテートを準備した。
なお、Ni粉末の平均粒径は、200nmのものを用いた。また、ペロブスカイト型酸化物については、SrZrO3の平均粒径は25nm以上60nm以下のものを、CaZrO3の平均粒径は100nmのものを、BaTiO3の平均粒径は20nmのものを用いた。なお、平均粒径は、メジアン径(D50)である。
そして、上記に示した材料であるNi粉末、共材であるペロブスカイト型酸化物、バインダ、アニオン性高分子分散剤およびペースト溶剤が、上述した比率で調合され、3本ロールミル等で分散することにより、各試料の導電性ペーストを作製した。
表1は、各試料における導電性金属粉末、Niの比表面積、酸化物の材料、酸化物の比表面積および分散剤の添加量のそれぞれを示す。なお、表中の*印を付した試料番号の試料は、本発明の範囲外である。
Figure 0007255263000001

2.各試料の特性評価の方法
まず、導電性ペーストの粘度の測定方法および内層用セラミックグリーンシートに対する印刷条件は、以下の通りとした。
(ペースト粘度の測定方法)
各試料である導電性ペーストの粘度の測定方法は以下の通りとした。すなわち、粘度の測定には、東機産業(製)RE80型粘度計を用いた。粘度の測定条件は、回転数を10rpm(ずり速度:20s-1)とし、温度は、25℃とした。
(印刷条件)
各試料である導電性ペーストを内層用セラミックグリーンシート上に印刷した。開口部の厚みが4μm、メッシュ孔部厚みが10μmであり、開口率が48%の印刷パターン、およびゴム硬度90度の樹脂製スキージを用いてスクリーン印刷により内部電極パターン(導電性ペースト膜)を形成した。内部電極パターンの図形は、0.4mm×0.7mmの長方形パターンとした。印刷方向は図形パターンに対して長手方向とした。試料数は、各試料につき30個の内部電極パターンを準備した。
また、導電性ペーストの評価は、粘度安定性と印刷性とにより行った。
(粘度安定性)
粘度安定性は、導電性ペーストの作製時における粘度(初期粘度)と、導電性ペーストを作製してから30日経過後における粘度(30日後の粘度)とに基づいて、以下の式により、増粘率を算出した。

増粘率(%)=((30日後の粘度)-(初期粘度))/(初期粘度)×100

ここで、増粘率が±20%以内であれば、粘度安定性が良好であると判定し、増粘率が±20%を超える場合であれば、粘度安定性が不良であると判定した。なお、導電性ペーストの30日の保存状態は、5℃~10℃の範囲で冷蔵し、密閉状態とした。
(印刷性)
作製後の導電性ペーストを印刷し、内層用セラミックグリーンシートに対する内部電極パターンの印刷性を観察した。
形成した内部電極パターンの表面を光学顕微鏡で観察し、ニジミ、カスレの有無を評価した。各試料に対して内部電極パターン30個を観察し、ニジミ、カスレともに1つも存在しなかった場合は、印刷性は良好と判定し、ニジミ、カスレの少なくともどちらか一方が観察されれば印刷性は不良であると判定した。
なお、ニジミは、1つの内部電極パターンの図形のエッジから、ニジんでいる最大のニジミ箇所をニジミ距離とし、ニジミ距離が10μm以上の場合、それをニジミありと判断した。
また、カスレは、1つの内部電極パターンの図形中に白抜けがある場合、または図形のエッジが欠けている場合、それをカスレありと判断した。
3.各試料に対する特性評価の結果
表2は、増粘率、粘度安定性および印刷性のそれぞれの評価結果を示す。なお、表中の*印を付した試料番号の試料は、本発明の範囲外である。
Figure 0007255263000002

表1および表2から、本発明の範囲内である、試料番号2、試料番号4ないし試料番号6、試料番号10および試料番号13の導電性ペーストを用いた場合、分散剤であるアニオン性高分子分散剤が、導電性金属粉末であるNi粉末とペロブスカイト型酸化物との合計の比表面積に対して、1.8mg/m2以上3.0mg/m2の範囲であるので、粘度安定性に優れ、かつ、カスレおよびニジミも生じなかったことから、印刷性についても良好であることが確認された。
一方、本発明の範囲外である、試料番号1、試料番号3、試料番号9および試料番号14では、粘度安定性は良好であったが、カスレが発生し、印刷性が不良と判断された。これは、分散剤の添加量が少なかったことから、導電性ペーストの流動性が乏しかったためと推測される。
また、本発明の範囲外である、試料番号7および試料番号11では、粘度安定性も不良であり、スクリーン印刷時にニジミも発生し、印刷性も不良と判断された。これは、分散剤の添加量が過剰であり、導電性ペーストの流動性が高すぎたためと推測される。
さらに、本発明の範囲外である、試料番号8および試料番号12では、ニジミもカスレも発生せず、印刷性は良好と判断されたが、粘度安定性が不良であった。
なお、以上のように、本発明の実施の形態は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施の形態に対し、機序、形状、材質、数量、位置又は配置等に関して、様々の変更を加えることができるものであり、それらは、本発明に含まれるものである。
1 セラミック電子部品(積層セラミックコンデンサ)
10 セラミック本体
11 内層用セラミック層
12,13 内部電極
15a,15b 外層用セラミック層
20,22 外部電極

Claims (4)

  1. 少なくとも導電性金属粉末と、酸化物と、バインダと、分散剤と、溶剤を含有する導電性ペーストであって、
    前記分散剤は、アニオン性高分子分散剤のみであり、
    前記分散剤の添加量が、前記導電性金属粉末と前記酸化物の合計の比表面積に対して、1.8mg/m2以上3.0mg/m2以下であり、
    前記導電性金属粉末は、前記導電性ペーストの重量に対して40重量%以上55重量%以下で含有され、
    前記酸化物は、前記導電性ペーストの重量に対して2.8重量%以上9.0重量%以下で含有されること、
    を特徴とする、導電性ペースト。
  2. 前記酸化物は、BaTiO3、CaZrO3、SrZrO3から選ばれる少なくとも1種を主成分とする、請求項1に記載の導電性ペースト。
  3. 前記アニオン性高分子分散剤は、スチレン/無水マレイン酸共重合物、オレフィン/無水マレイン酸共重合物、またはポリスチレンスルホン酸塩であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の導電性ペースト。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の導電性ペーストを用いて導体パターンが作製されたこと、を特徴とする、セラミック電子部品。
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