JP7253207B2 - 成膜装置及びこれを用いた成膜方法 - Google Patents

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Description

本発明は、成膜装置及びこれを用いた成膜方法に関し、特にイオンビームアシスト真空蒸着方法を用いた成膜装置及び成膜方法に関するものである。
撮像素子として用いられるCCDやCMOSは、銀塩写真フィルムに比べて表面での光反射が強いため、フレアやゴーストが発生し易い。また曲率半径の小さいレンズでは、光線の入射角度が位置によって大きく異なるため、レンズ表面の傾斜が大きな部分では低い反射率を保てない。さらに、LCDのような平面ディスプレイにおいては、ディスプレイ表面の光反射による外光の映り込みが問題になるので、アンチグレア処理が施されているが、ディスプレイの高密度化が進むと、液晶を透過した光がアンチグレア処理された表面で乱反射し、画像の高解像度化の妨げになる。このような基板表面の反射を低減するためには、低屈折率の表面層を成膜することが必要とされる(非特許文献1)。
反射低減技術の新展開(菊田久雄著,日本光学会会誌「光学」第40巻第1号,2011年1月)
屈折率が1.5のガラスに、屈折率が1.38のフッ化マグネシウムのような低屈折材料を用いて表面層を形成することは知られている。しかしながら、1.38の低屈折率材料を用いても、1.4%の反射が残る。現在のところ、1.1~1.2といった低屈折率の薄膜材料は存在しない。また、低屈折率の膜に対し、簡単には剥がれないような機械的強度の向上も求められている。
本発明が解決しようとする課題は、低屈折率の膜を高い機械強度で形成できる成膜装置及びこれを用いた成膜方法を提供することである。
本発明は、少なくとも蒸着材料と被蒸着物とが設けられる成膜室と、前記成膜室の内部全体を減圧する排気装置と、前記被蒸着物を含む第1領域に、形成した膜と反応しないガスを供給する給気装置と、前記給気装置から供給したガスが、前記蒸着材料を含む第2領域に向かって流れるのを抑制する遮断部材と、蒸発した蒸着材料を前記被蒸着物に成膜する制御装置と、を備える成膜装置と、を備える成膜装置を用い、前記第1領域の、蒸発した前記蒸着材料の平均自由行程が、前記被蒸着物と前記蒸着材料との距離より小さくなるように、前記第1領域の圧力を設定し、前記第2領域の、蒸発した前記蒸着材料の平均自由行程が、前記被蒸着物と前記蒸着材料との距離より大きくなるように、前記第2領域の圧力を設定し、この状態で、真空蒸着法により、前記第2領域において前記蒸着材料を蒸発させ、前記第1領域において前記被蒸着物に前記蒸発した蒸着材料を成膜する成膜方法において、膜の厚さ方向に沿う断面視において、空隙を有する柱状構造の膜であって、水に対する接触角が30°以下である薄膜を形成する成膜方法、又は膜の厚さ方向に沿う断面視において空隙を有する柱状構造の第1の膜と、前記第1の膜の上に形成された、前記空隙を有する柱状構造を阻害しない第2の膜と、を有する防曇性を発揮する薄膜を形成する成膜方法によって上記課題を解決する。
本発明によれば、成膜室の内部全体を減圧する一方、被蒸着物を含む第1領域に、形成した膜と反応しないガスを供給するに際し、遮断部材により、前記ガスが蒸着材料を含む第2領域に向かって流れるのを抑制するので、第2領域の雰囲気圧力が高くなるのを抑制することができる。これにより、蒸着材料を蒸発させる第2領域を低圧(高真空)にしながら、被蒸着物に蒸発した蒸着材料を成膜する第1領域を相対的に高圧(低真空)にすることができる。その結果、機械的強度の高い、低屈折率の膜を形成することができる。
本発明に係る真空蒸着装置の第1実施形態を示す概略縦断面である。 図1のII-II線に沿う矢視図である。 本発明に係る真空蒸着装置の第2実施形態を示す概略縦断面である。 図3のIV-IV線に沿う矢視図である。 本発明に係る真空蒸着装置の第3実施形態を示す概略縦断面である。 図5のVI-VI線に沿う矢視図である。 図1に示す第1領域R1及び第2領域R2の雰囲気圧並びに第1排気装置及び第2排気装置の設定圧力を示すグラフ(縦軸は圧力の対数)である。 本発明の比較例に係る真空蒸着装置を示す概略縦断面である。 本発明に係る薄膜の一実施の形態の表面を観察した顕微鏡写真である。 図9Aの断面を観察した顕微鏡写真である。 本発明の参考例1~3に対し防曇性を評価した結果を示す図である。
《低屈折率・高強度の薄膜》
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る成膜装置の第1実施形態である真空蒸着装置1を示す概略縦断面、図2は、図1のII-II線に沿う矢視図である。なお、真空蒸着装置1は、本発明に係る成膜方法を実施する装置でもある。
本実施形態の真空蒸着装置1は、実質的に密閉空間となる成膜室2aを構成する筐体2と、成膜室2aの内部全体を減圧するための第1排気装置3と、成膜室2aの内部の第2領域R2を局所的に減圧する第2排気装置4と、被蒸着物である基板Sを保持する基板ホルダ5と、蒸着機構6と、第1領域R1(被蒸着物である基板Sと、その周辺を含む領域をいう)に所定のガスを導入する給気装置8と、給気装置8から供給したガスが第2領域R2(蒸着材料Mとその周辺をいう)に向かって流れるのを抑制する遮断部材7と、成膜室2aの内部の雰囲気圧力を制御しながら蒸着材料Mを蒸発させ、基板Sに蒸発した蒸着材料Mを成膜する制御を実行する制御装置10と、イオンアシスト用のイオン源11と、を備える。なお、第1領域R1は、少なくとも基板Sを含んだ領域であればよく、その範囲は明確に規定されるものではなく、何ら限定されない。同様に、第2領域R2は、少なくとも蒸着材料Mを含んだ領域であればよく、その範囲は明確に規定されるものではなく、何ら限定されない。また、成膜室2aは、第1領域R1及び第2領域R2以外の領域を含んでもよく、含まなくてもよい。
本実施形態の真空蒸着装置1は、上面(天井面)、下面(底面)及び複数の側面を有する箱形、又は上面(天井面)、下面(底面)、曲面状の側面を有する筒形で構成された筐体2を有し、当該筐体2の内部が、実質的に密閉空間としての成膜室2aを構成する。図1に示す真空蒸着装置1の姿勢において、筐体2の上側の面を上面、下側の面を下面、横側の面を側面と便宜的に称するが、これは単に筐体2と、当該筐体2に設けられる第1排気装置3、基板ホルダ5及び蒸着機構6との相対的な位置関係を説明するための便宜的な定義であり、実際に設置された真空蒸着装置1の姿勢を絶対的に定義するものではない。
たとえば、図1に示す実施形態の真空蒸着装置1は、基板ホルダ5と蒸着機構6とを上下方向(鉛直方向)に配置しているが、本発明の成膜方法及び成膜装置はこの配置に何ら限定されず、基板ホルダ5と蒸着機構6とを左右方向、水平方向、または斜め方向に配置してもよい。また、図1に示す実施形態の真空蒸着装置1は、基板ホルダ5と蒸着機構6とを上下方向(鉛直方向)に配置したため、そのレイアウトの関係で、第1排気装置3を筐体2の側面に配置し、第2排気装置4を筐体2の下面に配置したが、本発明の成膜装置及び成膜方法はこの配置に何ら限定されず、第1排気装置3及び第2排気装置4は、筐体2に対して適宜箇所に配置することができる。
第1排気装置3は、図1に示すように、筐体2の側面のほぼ中央に、ゲートバルブ3aを介して設けられている。ゲートバルブ3aは、第1排気装置3と成膜室2aとを開閉する気密バルブであり、成膜室2aを減圧する場合にはゲートバルブ3aが開放される。一方、図示しない開口部を介して、基板Sを成膜室2aに投入する場合や、成膜を終えた基板Sを成膜室2aから取り出する場合などは、ゲートバルブ3aが閉塞される。第1排気装置3として、ターボ分子ポンプ(TMP)や定圧ポンプ(CP)を挙げることができ、成膜室2aの内部を0.01Pa以下まで減圧できる定格能力を有することが望ましい。
第2排気装置4は、図1に示すように、筐体2の下面であって蒸着機構6の直下に、ゲートバルブ4aを介して設けられている。ゲートバルブ4aは、第2排気装置4と成膜室2aとを開閉する気密バルブであり、成膜室2aの内部を減圧する場合にはゲートバルブ4aが開放される。一方、図示しない開口部を介して、基板Sを成膜室2aに投入する場合や、成膜を終えた基板Sを成膜室2aから取り出する場合などは、ゲートバルブ4aが閉塞される。第2排気装置4として、ターボ分子ポンプ(TMP)や定圧ポンプ(CP)を挙げることができ、成膜室2aの内部のうち蒸着機構6を含む第2領域R2を0.01Pa以下まで減圧できる定格能力を有することが望ましい。
成膜室2aの内部には、板状の基板ホルダ5が回転軸5bにより懸架され、回転軸5bは筐体2の上面に回転可能に支持されている。そして、基板ホルダ5は、駆動部5cにより回転する回転軸5bを中心に回転可能とされている。基板ホルダ5の基板保持面5aには、蒸着材料Mの蒸着対象となる基板Sが保持される。なお、基板ホルダ5に保持する基板Sの数量は何ら限定されず、1枚であっても複数枚であってもよい。また、基板Sを保持する保持部を基板ホルダ5に対して自転可能に構成し、遊星機構により基板Sを自転及び公転させてもよい。さらに、駆動部5cを省略して非回転の基板ホルダ5としてもよい。図1に示す第1実施形態では、基板ホルダ5の基板保持面5aに複数の基板Sが保持可能とされ、蒸着機構6の直上に複数の基板Sが位置するように基板ホルダ5が設けられている。
成膜室2aの内部の下面近傍には、蒸着機構6が設けられている。本実施形態の蒸着機構6は、電子ビーム蒸着源からなり、蒸着材料Mを充填する坩堝6aと、坩堝6aに充填された蒸着材料Mに電子ビームを照射する電子銃6bとを備える。また、坩堝6aの上方には、当該坩堝6aの上部開口を開閉するシャッタ6cが移動可能に設けられている。基板ホルダ5に保持された基板Sに対して成膜処理を行う場合には、電子銃6bを作動して坩堝6aに充填された蒸着材料Mを加熱蒸発させるとともにシャッタ6cを開き、蒸発した蒸着材料Mを基板Sに付着させる。なお、図1に示す符号6dは、マイスナトラップの冷却管コイルであって、成膜室2aの内部を真空排気したときに、基板Sから放出される水分を効率的に除去するものである。本実施形態の真空蒸着装置1にて用いられる蒸着材料Mとしては、特に限定はされないが、二酸化ケイ素,フッ化マグネシウム,酸化アルミニウム,二酸化ジルコニウム,酸化タンタル,二酸化チタン,酸化ニオブ又は二酸化ハフニウム、などを挙げることができる。
なお、蒸着機構6の蒸発源として、電子銃を用いた電子ビーム加熱の代わりに、抵抗加熱を用いてもよい。抵抗加熱は、発熱体の両端に電圧をかけ、流れる電流によるジュール熱で加熱する方法である。発熱体として用いられるのは、タングステン、タンタル、モリブデンなどの高融点金属や、カーボン、窒化ホウ素・ホウ化チタン混合焼結体などである。発熱体は蒸発物質に応じて、適した形状に加工して用いてもよいし、耐熱性の坩堝を併用してもよい。
成膜室2aの内部の下面近傍で、蒸着機構6の側方の第2領域R2には、イオン源11が設置されている。イオン源11は、蒸着機構6による基板Sの成膜処理を、イオンによって補助するイオンアシスト用のイオン源である。イオン源11のイオンビームの照射範囲は、基板ホルダ5の基板保持面5aの全部又は一部の所定範囲とされている。本実施形態の基板ホルダ5の基板保持面5aに保持された基板Sの一部は、基板ホルダ5の回転に伴って一時的に遮断部材7により隠れるため、イオンビームが遮断部材7により遮蔽されない範囲に向けてイオン源11からのイオンビームが照射される。
本実施形態では、イオン源11として、例えば、プラズマからのイオンの引き出しに格子状の電極を利用するイオン源、いわゆるカウフマン型イオン源を用いている。カウフマン型イオン源の動作圧力は、0.02Pa以下である。図示は省略するが、カウフマン型のイオン源11は、筐体と、筐体内に配されたアノード及びフィラメントと、筐体外部に配された磁界発生用のマグネットと、筐体の開口部に配されて筐体と同電位に保たれたスクリーン電極と、スクリーン電極の外側に配されるスクリーン状の加速電極とを備える。筐体内に酸素などの反応性ガス又はアルゴンなどの不活性ガスを供給し、アノードに正の電位を印可してフィラメントを加熱すると、放電が発生し、放電により発生した電子とガスとの衝突により、筐体内にプラズマが生成する。生成したプラズマは、筐体外部に配されたマグネットの磁界によって高密度化される。この状態で、加速電極に負の電位を印可すると、プラズマからイオンが引き出されてスクリーン電極を通過し、加速されて基板Sに照射される。
蒸着機構6により基板Sに堆積する蒸着膜にイオンビームを照射することで、緻密で強度が高く、表面が平滑な膜を得ることができる。なお、イオン源11の上方に、基板Sに対するイオンの照射を遮るシャッタや、イオンの指向性を調整するための調整板などを設置してもよい。また、イオン源11から照射された正イオンにより帯電した基板Sを電気的に中和するために、基板Sに向けて負の電子を照射するニュートラライザを成膜室2aに設置してもよい。さらに、イオン源11は、カウフマン型イオン源に限定されず、動作圧力が第2領域R2の雰囲気圧力である0.05Pa以下であれば、カウフマン型以外の形式のイオン源を用いてもよい。
本実施形態の真空蒸着装置1は、成膜室2aのうちの、基板Sを含む第1領域R1の雰囲気圧力を第1圧力に設定する一方で、成膜室2aのうちの、蒸着材料Mを含む第2領域R2の雰囲気圧力を第1圧力より低い第2圧力に設定し、蒸着処理を行うことができる。そして、蒸着材料Mを含む第2領域R2の第2圧力は、上述した第1排気装置3と第2排気装置4の排気によって設定される。これに対して、基板Sを含む第1領域R1の第1圧力は、上述した第1排気装置3と第2排気装置4の排気に加え、給気装置8によるガスの供給と、遮断部材7によるガス流れの制御によって設定される。
すなわち、本実施形態の真空蒸着装置1は、基板ホルダ5に保持された基板Sを含む第1領域R1に、所定の不活性ガス又は形成した膜と反応しない活性ガスを導入する給気装置8を備える。本実施形態の給気装置8は、ノズル8a及びガス供給源8bを含む。ガス供給源8bは、成膜室2aの内部の雰囲気ガスを供給するための供給源であり、たとえばアルゴンガスその他の不活性ガス又は形成した膜と反応しないガスなどを供給するための供給源である。ノズル8a及びガス供給源8bは、第1領域R1の雰囲気圧力を第2領域の雰囲気圧力に対して増加させることを唯一の目的とするものであり、反応性ガスを供給して反応した膜を生成するものではない。したがって、蒸着材料が二酸化ケイ素の場合の酸素ガスのように、活性ガスであっても、形成した二酸化ケイ素の膜とほとんど反応しない活性ガスは、第1領域R1に導入してもよい。
図1には、1つのノズル8a及びガス供給源8bを示しているが、1つ又は複数のガス供給源8bに複数のノズル8aを接続し、当該複数のノズル8aから第1領域R1に向かって所定のガスを吹き付けるようにしてもよい。なお、成膜室2aの内部は、不活性ガス雰囲気又は形成した膜と反応しない活性ガス雰囲気とされている。
また本実施形態の真空蒸着装置1は、基板Sを含む第1領域R1の第1圧力を設定するために、給気装置8から供給したガスが第2領域R2に向かって流れるのを抑制する遮断部材7を備える。本実施形態の遮断部材7は、底面7aと、当該底面7aから立ち上がる側面7bとを有するとともに、底面7aに対面する上面7cの全部又は一部が開口された有底筒状に形成されている。図1に示す遮断部材7の横断面は、図2に示すように円形であるが、本発明はこれに限定されず、楕円形、多角形のいずれでもよく、基板ホルダ5の形状に応じて設定してもよい。また、図1に示すように、遮断部材7を貫通してノズル8aを固定してもよい。
そして、本実施形態の遮断部材7は、その開口した上面7cと基板ホルダ5の基板保持面5aとの間に、所定の隙間Gが形成されるように配置されている。この隙間Gは、遮断部材7で囲まれた第3領域R3に給気装置8からガスを導入したときに、当該ガスが隙間Gを通って第1領域R1に漏れるとともに、第1領域R1を第2領域R2よりも高い第1圧力に調整可能な寸法とされている。この隙間Gを設けることにより、給気装置8から供給されて第3領域R3に吹出したガスは、遮断部材7の底面7a及び/又は側面7bによって第2領域R2に直接向かう流れが抑制されながら、上面7cの開口に至り、当該隙間Gを介して基板ホルダ5の基板保持面5aに沿って第1領域R1へ流出する。好適な隙間Gの寸法は、主として、遮断部材7で囲まれる第3領域R3の容積,給気装置8からのガスの流量,調整される第1領域R1の第1圧力及び第2領域R2の第2圧力により決定することができる。
制御装置10は、第1排気装置3のON/OFF、ゲートバルブ3aの開閉、第2排気装置4のON/OFF、ゲートバルブ4aの開閉、基板ホルダ5の駆動部5cのON/OFFを含む回転速度制御、シャッタ6cの開閉を含む蒸着機構6の作動制御、ノズル8aのON/OFFを含むガス流量制御、イオン源11のON/OFFを含む作動制御などを司る。そして、成膜室2aの内部を所定の雰囲気圧力に制御した状態で、イオンアシスト真空蒸着法による成膜制御を実行する。
次に作用を説明する。
本実施形態の真空蒸着装置1及びこれを用いた成膜方法は、基板ホルダ5の基板保持面5aに基板Sを装着し、筐体2を密閉したのち、ゲートバルブ3aを開いて第1排気装置3を作動し、当該第1排気装置3の設定値をたとえば0.01Paに設定して成膜室2aの内部を全体的に減圧する。これと相前後してゲートバルブ4aを開いて第2排気装置4を作動し、当該第2排気装置4の設定値をたとえば0.01Paに設定して蒸着機構6を含む第2領域R2を局所的に減圧する。また、これと相前後して給気装置8からガスを第3領域R3に供給し始める。なお、この時点で駆動部5cを駆動して基板ホルダ5の所定の回転速度で回転し始めてもよい。
時間の経過とともに成膜室2aの内部は、常圧から減圧されるが、第3領域R3に供給されて隙間Gから漏れ出した不活性ガス等が、図1及び図2に破線矢印で示すように、基板ホルダ5に保持された基板Sを含む第1領域R1に向かって流れる。これにより、基板ホルダ5に保持された基板Sを含む第1領域R1の雰囲気圧力は、成膜室2aの内部の一般領域に比べて高圧となる。これに対して、第3領域R3に供給されたガスは、遮断部材7の底面7a及び/又は側面7bによって、第2領域R2へ向かって直接流れることが抑制又は阻止されるので、第2領域R2には給気装置8による増圧効果は及ばない。これにより、蒸着機構6及びイオン源11を含む第2領域R2の雰囲気圧力は、第2排気装置4により局所的な排気が行われるため、第1領域R1よりも低圧雰囲気が維持されることになる。
これら第1排気装置3、第2排気装置4、給気装置8及び遮断部材7の協働作用により、好ましくは、第2領域R2の雰囲気圧力が0.05Pa以下、第1領域R1の雰囲気圧力が0.05~100Paになったら、蒸着機構6の電子銃6bを作動して坩堝6aに充填された蒸着材料Mを加熱蒸発させるとともにシャッタ6cを開き、蒸発した蒸着材料Mを基板Sに付着させる。なお、図示は省略するが、第1領域R1及び第2領域R2のそれぞれには雰囲気圧力を検出する圧力センサが設けられ、この圧力センサの出力信号を制御装置10で読み出すことで、蒸着機構6のシャッタ6cの開閉制御が実行される。
また、イオン源11は、蒸着機構6の作動と同時、あるいは蒸着機構6の作動よりも先あるいは後に動作を開始し、基板Sに向けてイオンを照射する。イオン源11は、動作圧力が0.05Pa以下とされたカウフマン型イオン源であるため、第2領域R2の雰囲気圧力で適正に動作する。
イオン源11から照射されたイオンの運動エネルギにより、蒸着機構6により蒸発されて浮遊している蒸着材料Mを加速させて基板Sに押し付けたり、基板Sに堆積した薄膜の表面を緻密化したりする。これにより、基板Sの表面に形成される薄膜は、密着性、緻密性及び機械的強度が高くなる。
図7は、第1領域R1及び第2領域R2の雰囲気圧並びに第1排気装置3及び第2排気装置4の設定圧力を示すグラフであり、縦軸は圧力の対数を示す。同図に示すように、蒸着機構6を含む第2領域R2を0.05Pa以下にする理由は、これより雰囲気圧力が高いと蒸着材料Mが蒸発しないからである。一方、基板Sを含む第1領域R1を0.05Pa以上にする理由は、これより雰囲気圧力が低いと所望の低屈折率の薄膜が得られないからである。また、基板Sを含む第1領域R1を100Pa以下にする理由は、これより雰囲気圧力が高いと蒸着材料Mが基板Sに届かず成膜できないからである。本実施形態では、蒸着機構6を含む第2領域R2が0.05Pa以下、基板Sを含む第1領域R1が、0.05~100Paになればよいので、第1排気装置3及び第2排気装置4の設定圧力と、給気装置8からのガス供給量の具体的数値は特に限定されない。
以上のとおり、本実施形態の真空蒸着装置1及びこれを用いた成膜方法によれば、蒸着機構6を含む第2領域R2の雰囲気圧力を蒸着が可能な圧力(好ましくは上限に近い範囲の圧力)に設定する一方で、基板Sを含む第1領域R1の雰囲気圧力は相対的に高圧にするので、真空蒸着法により低屈折率の薄膜を得ることができる。また、第2領域R2内で動作可能なイオン源11を用いてイオンアシストを行うので、イオンアシストを行わない場合に比べ、薄膜の機械的強度を高めることができる。
本発明の成膜装置及びこれを用いた成膜方法は、上述した図1及び図2に示す第1実施形態にのみ限定されず、種々に改変することができる。上述した第1実施形態では、基板ホルダ5に装着した基板Sの成膜を終了したら成膜室2aを大気圧雰囲気に戻し、成膜後の基板Sを取り外すとともに成膜前の基板Sを装着する、いわゆるバッチ式生産方式による真空蒸着装置1を示したが、成膜室2aに仕切バルブを介してロードロック室を接続し、基板Sを装着した基板ホルダ5を、ロードロック室を介して搬出/搬入する、いわゆる連続生産方式による真空蒸着装置1であってもよい。
また、上述した第1実施形態では、蒸着膜を形成する被成膜物として、半導体ウェーハやガラス基板などを例示し、これを基板ホルダ5に装着したが、長尺フィルムのようにロール状に巻回された被成膜物であってもよい。ロール状に巻回された被成膜物の場合には、基板ホルダ5に代えて、成膜前のロールを支持してフィルムを送り出す送り側ローラと、成膜後のフィルムを巻き取る巻取側ローラとを設けてもよい。
図3は、本発明に係る真空蒸着装置の第2実施形態を示す概略縦断面、図4は、図3のIV-IV線に沿う矢視図、図5は、本発明に係る真空蒸着装置の第3実施形態を示す概略縦断面、図6は、図5のVI-VI線に沿う矢視図である。第2実施形態及び第3実施形態は、第1実施形態に比べ、遮断部材7の構成が相違する。その他の構成については、第1実施形態の記載をここに援用する。
図3及び図4に示す第2実施形態の真空蒸着装置1では、遮断部材7の側面7bが筐体2に接続され、第3領域R3は、遮断部材7と筐体2の一部とで構成されている。このように、遮断部材7は、他の部品とともに第3領域R3を構成してもよい。また図5及び図6に示す第3実施形態の真空蒸着装置1では、遮断部材7が、給気装置8のノズル8aの一部として構成されている。このように、遮断部材7は、それ単独ではなく他の部品の一部として構成してもよい。
《親水性・親水機能の持続性・耐久性に優れた薄膜》
本発明の成膜装置及びこれを用いた成膜方法は、親水性・親水機能の持続性・耐久性に優れた薄膜と、当該特性を有する薄膜の成膜方法にも適用することができる。最初に本発明により成膜できる薄膜の一実施の形態を説明したのち、その成膜方法の一実施の形態を説明する。
本実施形態の薄膜は、膜の厚さ方向に沿う断面視において、空隙を有する柱状構造の第1の膜Fを少なくとも含む薄膜である。この第1の膜Fの表面は、水に対する接触角が30°以下、好ましくは10°以下である。後述する成膜方法により成膜した二酸化ケイ素からなる第1の膜Fの表面を観察した顕微鏡写真を図9Aに示し、同じく第1の膜Fの断面を観察した顕微鏡写真を図9Bに示す。図9Bにおいて、符号Sが基板を示し、符号Fが第1の膜を示す。また、図9Aにおいて、符号CRが後述する亀裂を示す。本実施形態の第1の膜Fの柱状構造は、図9Bに示すように、基本的には基板Sなどの下地の表面に対して90°±20°方向に延在する柱状構造である。
本実施形態の第1の膜Fが形成される下地は、特に限定されず、たとえば基板の表面、他の膜の表面、他の膜の層間などに形成される。成膜対象物である基板Sとしては、特に限定されず、ガラス基板のほか、アクリルその他のプラスチック基板や金属基板を適用することができる。なかでも撥水性があるために防曇処理が必要とされ、しかも触手や洗浄などの機会があるため機械的強度などの耐久性が必要とされる光学用途の基板を用いると、本発明の効果がより一層発揮される。
本実施形態の第1の膜Fは、図9Bに示すように、膜の厚さ方向に沿う断面視において、空隙を有する柱状構造の膜である。すなわち、本実施形態の第1の膜Fは、二酸化ケイ素の柱状構造の結晶が基板Sに対して略垂直、すなわち90°±20°方向に延在し、その間に微細な空隙が、第1の膜Fの表面から裏面に向けて形成されている。また、図9Aに示すように、第1の膜Fの表面には、空隙と連通する亀裂CRが形成されている。つまり、二酸化ケイ素の結晶の間に形成された微細な空隙は、第1の膜Fの表面で亀裂CRとなって露呈している。
本実施形態の第1の膜Fは、特に限定はされないが、鉛筆硬度が2B以上であることが望ましい。また、本実施形態の薄膜Fは、特に限定はされないが、屈折率が1.44未満であることが望ましい。さらに、本実施形態の第1の膜Fは、特に限定はされないが、単一の膜で構成してもよく、多層膜に適用してもよいが、単一の膜からなることが望ましい。本実施形態の第1の膜Fを多層膜に適用する場合、最下層、中間層又は最表面の何れに適用してもよい。本実施形態の第1の膜Fを含む薄膜の用途は、特に限定はされず、光学用途、機能用途、その他の用途に用いることができる。
本実施形態の第1の膜Fの材料としては、二酸化ケイ素,フッ化マグネシウム,酸化アルミニウム,二酸化ジルコニウム,酸化タンタル,二酸化チタン,酸化ニオブ又は二酸化ハフニウムなどを例示することができる。
さらに、本実施形態の第1の膜Fの表面に第2の膜を形成してもよい。このとき形成する第2の膜は、第1の膜Fの空隙を有する柱状構造を阻害しない、又は空隙を有する柱状構造を維持できる薄膜であることが望ましい。この種の第2の膜として、特に限定はされないが、二酸化ケイ素,フッ化マグネシウム,酸化アルミニウム,二酸化ジルコニウム,酸化タンタル,二酸化チタン,酸化ニオブ又は二酸化ハフニウムなどの単層薄膜を挙げることができる。また、この種の第2の膜として、有機膜を挙げることができる。さらにこの種の第2の膜として、二酸化ケイ素,フッ化マグネシウム,酸化アルミニウム,二酸化ジルコニウム,酸化タンタル,二酸化チタン,酸化ニオブ又は二酸化ハフニウム、又は有機膜を含む多層膜を挙げることができる。
第2の膜として、二酸化ケイ素,フッ化マグネシウム,酸化アルミニウム,二酸化ジルコニウム,酸化タンタル,二酸化チタン,酸化ニオブ又は二酸化ハフニウム、又は有機膜を含む多層膜を用いる場合、上記柱状構造を有する第1の膜Fの上に、二酸化ケイ素,フッ化マグネシウム,酸化アルミニウム,二酸化ジルコニウム,酸化タンタル,二酸化チタン,酸化ニオブ又は二酸化ハフニウムの多層膜を形成することができる。また、第2の膜として、二酸化ケイ素,フッ化マグネシウム,酸化アルミニウム,二酸化ジルコニウム,酸化タンタル,二酸化チタン,酸化ニオブ又は二酸化ハフニウム、又は有機膜を含む多層膜を用いる場合、上記柱状構造を有する第1の膜Fの上に、二酸化ケイ素,フッ化マグネシウム,酸化アルミニウム,二酸化ジルコニウム,酸化タンタル,二酸化チタン,酸化ニオブ又は二酸化ハフニウムの単層膜を形成し、さらにその上に有機膜を形成することができる。さらに、第2の膜として、二酸化ケイ素,フッ化マグネシウム,酸化アルミニウム,二酸化ジルコニウム,酸化タンタル,二酸化チタン,酸化ニオブ又は二酸化ハフニウム、又は有機膜を含む多層膜を用いる場合、上記柱状構造を有する第1の膜Fの上に、二酸化ケイ素,フッ化マグネシウム,酸化アルミニウム,二酸化ジルコニウム,酸化タンタル,二酸化チタン,酸化ニオブ又は二酸化ハフニウムの多層膜を形成し、さらにその上に有機膜を形成することができる。またはこれに代えて、第2の膜として、二酸化ケイ素,フッ化マグネシウム,酸化アルミニウム,二酸化ジルコニウム,酸化タンタル,二酸化チタン,酸化ニオブ又は二酸化ハフニウム、又は有機膜を含む多層膜を用いる場合、上記柱状構造を有する第1の膜Fの上に、低屈折率材料の薄膜と高屈折率材料の薄膜とを交互に形成してもよい。
柱状構造を有する第1の膜Fの上に第2の膜を形成する場合、第1の膜Fの空隙を有する柱状構造を阻害しない、又は空隙を有する柱状構造を維持できる薄膜であることが望ましいので、第2の膜の膜厚は200nm以下程度にすることが望ましい。膜の厚さ方向に沿う断面視において空隙を有する柱状構造の第1の膜Fの表面は、水との接触角が30°以下と小さいが、この上にたとえば有機膜を、第1の膜Fの空隙を有する柱状構造を阻害しないように、又は空隙を有する柱状構造を維持できるように形成すると、水との接触角は大きいが防曇性のある薄膜が得られる。
図10は、上述した第1の膜Fの単層膜の参考例1と、第1の膜Fの上に第2の膜を形成した参考例2と、空隙を有する柱状構造ではない単層膜の参考例3とを用いて、JIS K2399(自動車用くもり止め剤)に準拠した装置にて3分間蒸気にさらし、曇りの有無を目視にて確認した結果を示す図である。水との接触角は、協和界面科学社製DM-301を用いて測定した。図10に示すように、参考例3の薄膜の防曇性に比べると、参考例1の薄膜の防曇性は著しく優れているし、参考例2の薄膜の防曇性も見劣りなく優れている。
上述した低屈折率・高強度と、親水性・親水機能の持続性・耐久性との両方に優れた薄膜について、さらに具体的な実施例と比較例を挙げ、本発明を説明する。
[実施例1]
図1~2の真空蒸着装置1を用いて、ガラス製の基板S(SCHOTT社製N-BK7,板厚1.0mm,φ30mm,屈折率n:1.5168)の片面に、目標膜厚を500nmにして二酸化ケイ素の薄膜を成膜した。このときの成膜条件として、図1に示す蒸着機構6の坩堝6aと基板Sとの垂直方向の距離を35~70cm、第1領域R1の目標真空度を1Pa、第2領域R2の目標真空度を0.001Paとした。また、蒸着材料Mとして二酸化ケイ素を用い、電子銃6bの電流量を170mAとした。また基板Sは200℃に加熱した。また、イオン源としてカウフマン型のイオン源11を用い、出力設定については、加速電圧を1.0kV、加速電流を0.8Aとした。
得られた二酸化ケイ素膜について、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製U-4100)を用いて分光透過率と分光反射率を測定し、その透過率と反射率より成膜後の膜の屈折率を算出した。また、同じ膜について鉛筆硬度試験(JIS K5600 塗料一般試験方法 4.4 引っかき硬度(鉛筆法)に準じた。)を行った。また、同じ膜について協和界面科学社製DM-301を用いて、水に対する接触角を測定した。この結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1で用いた真空蒸着装置1から遮断部材7を取り外し(図8参照)、成膜室2aの内部全体の真空度を0.001Paとし、イオン源11の出力設定については、加速電圧を0.5kV、加速電流を0.2Aとして真空蒸着による成膜を行ったこと以外は実施例1と同じ条件で成膜した。得られた二酸化ケイ素膜の鉛筆硬度と屈折率を表1に示す。
Figure 0007253207000001
[考察]
実施例1の結果のとおり、第1領域R1の雰囲気圧力を0.05~100Pa、第2領域R2の圧力を0.05Pa以下とし、遮断部材7を用いた真空蒸着装置1によるイオンアシスト真空蒸着法を行うと、成膜材料である二酸化ケイ素(バルク)の屈折率1.46より低い、1.333の屈折率の膜が形成された。また、一般的に低屈折率膜は機械的強度が低いが、実施例1では、鉛筆硬度試験結果が2Hの膜が形成された。これは、第2領域R2の真空度が充分高くなったため、イオン源11の出力設定値を高くできたからである。これに対して、比較例1の結果のとおり、図8に示す、遮断部材7のない真空蒸着装置1を用いたイオンアシスト真空蒸着法により、ガラス製の基板の表面に二酸化ケイ素膜を形成すると、第2領域R2の真空度が高くならず、イオン源11の出力設定値を大きくできなかった。そのため、成膜された二酸化ケイ素膜の屈折率は1.364と低いが、膜の強度が相対的に小さくなった。なお、親水性については、実施例1及び比較例1共に、水に対する接触角が小さく親水性に優れていることが確認された。また、鉛筆硬度試験で確認される機械的強度も2Hと大きいことが確認された。これは、第2領域R2の真空度が充分高くなったため、イオン源11の出力設定値を高くできたからである。
1…真空蒸着装置
2…筐体
2a…成膜室
3…第1排気装置
3a…ゲートバルブ
4…第2排気装置
5…基板ホルダ
5a…基板保持面
5b…回転軸
5c…駆動部
6…蒸着機構
6a…坩堝
6b…電子銃
6c…シャッタ
6d…マイスナトラップ
7…遮断部材
7a…底面
7b…側面
7c…上面
8…給気装置
8a…ノズル
8b…ガス供給源
10…制御装置
11…イオン源
R1…第1領域
R2…第2領域
R3…第3領域
S…基板
M…蒸着材料

Claims (7)

  1. 少なくとも蒸着材料と被蒸着物とが設けられる成膜室と、
    前記成膜室の内部全体を減圧する排気装置と、
    前記被蒸着物を含む第1領域に、形成した膜と反応しないガスを供給する給気装置と、
    前記給気装置から供給したガスが、前記蒸着材料を含む第2領域に向かって流れるのを抑制する遮断部材と、
    蒸発した前記蒸着材料を前記被蒸着物に成膜する制御装置と、を備える成膜装置を用い、
    前記第1領域の、蒸発した前記蒸着材料の平均自由行程が、前記被蒸着物と前記蒸着材料との距離より小さくなるように、前記第1領域の圧力を設定し、
    前記第2領域の、蒸発した前記蒸着材料の平均自由行程が、前記被蒸着物と前記蒸着材料との距離より大きくなるように、前記第2領域の圧力を設定し、
    この状態で、真空蒸着法により、前記第2領域において前記蒸着材料を蒸発させ、前記第1領域において前記被蒸着物に前記蒸発した蒸着材料を成膜する成膜方法において、
    膜の厚さ方向に沿う断面視において、空隙を有する柱状構造の膜であって、
    水に対する接触角が30°以下である薄膜を形成する成膜方法。
  2. 少なくとも蒸着材料と被蒸着物とが設けられる成膜室と、
    前記成膜室の内部全体を減圧する排気装置と、
    前記被蒸着物を含む第1領域に、形成した膜と反応しないガスを供給する給気装置と、
    前記給気装置から供給したガスが、前記蒸着材料を含む第2領域に向かって流れるのを抑制する遮断部材と、
    蒸発した前記蒸着材料を前記被蒸着物に成膜する制御装置と、を備える成膜装置を用い、
    前記第1領域の、蒸発した前記蒸着材料の平均自由行程が、前記被蒸着物と前記蒸着材料との距離より小さくなるように、前記第1領域の圧力を設定し、
    前記第2領域の、蒸発した前記蒸着材料の平均自由行程が、前記被蒸着物と前記蒸着材料との距離より大きくなるように、前記第2領域の圧力を設定し、
    この状態で、真空蒸着法により、前記第2領域において前記蒸着材料を蒸発させ、前記第1領域において前記被蒸着物に前記蒸発した蒸着材料を成膜する成膜方法において、
    膜の厚さ方向に沿う断面視において空隙を有する柱状構造の第1の膜と、
    前記第1の膜の上に形成された、前記空隙を有する柱状構造を阻害しない第2の膜と、を有する防曇性を発揮する薄膜を形成する成膜方法。
  3. 前記空隙は、前記膜の表面から裏面に向けて形成されている請求項1又は2に記載の成膜方法。
  4. 前記膜の表面に、前記空隙と連通する亀裂を有する請求項1~3のいずれか一項に記載の成膜方法。
  5. 前記薄膜の鉛筆硬度が2B以上である請求項1~4のいずれか一項に記載の成膜方法。
  6. 前記薄膜の屈折率が1.44未満である請求項1~5のいずれか一項に記載の成膜方法。
  7. 膜の材料が二酸化ケイ素である請求項1~6のいずれか一項に記載の成膜方法。
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