JP7249257B2 - 歯科用ファイル - Google Patents

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Description

本発明は、歯科治療において根管の拡大や清掃に用いられる歯科用ファイルに関するものである。
歯科治療において根管の拡大や清掃に用いられる歯科用根管切削具として、リーマやファイルがある(例えば、特許文献1参照。)。リーマは主に回転させることで根管内を切削し、ファイルは回転させたり軸方向に押し引きしたりして根管内を切削するものである。
一般的な歯科用ファイルには、把持部を手で把持して用いられるものと、把持部を歯科用ハンドピースに接続して用いられるものとがある。歯科用ファイルは、らせん状で先端に向かって細くなっている形状の作業部と、その作業部の後端に連なるシャフトと、そのシャフトの後端に連なる把持部とを有している。このような歯科用ファイルに要求される主な性能としては、複雑な形状の根管に追従できる柔軟性、根管を適切に切削できる切削性、および作業中に破損することがない耐破断性などが挙げられる。これらの性能が高いほど、根管形成を容易かつ素早く行うことが可能となり、施術者および患者の負担を軽減することができる。
特開2005-278945号公報
上記のような事情に鑑み、本発明は、歯科用ファイルの柔軟性、切削性、および/または耐破断性を高くすることを目的としている。
上記の目的を達成するため、本発明は、
らせん状に形成された作業部を有する歯科用ファイルであって、
長手方向に垂直な断面の断面形状が、1本の円弧状部と、上記円弧状部から順次連続する第1から第3の3本の線状部とで構成され、基端部から先端部にかけて、上記円弧状部を含む仮想円の直径が小さく設定されるとともに、
上記第1の線状部と第2の線状部との接続点が、上記仮想円上に位置するように設定され、
上記第2の線状部と第3の線状部との接続点が、上記仮想円よりも内側に位置するように設定されていることを特徴とする。
これにより、例えば歯科用ファイルが上記円弧状部から第1の線状部の方向に回転する場合、切削は、円弧状部と第1の線状部との接続点に加えて、第1の線状部と第2の線状部との接続点によって行われるので、切削能力を高く保つことが容易にできる。一方、第1の線状部と第2の線状部との接続点は、円弧状部と第1の線状部との接続点の対角上にないことなどにより、切削時に噛み込みによる急速回転停止などを生じにくくしたりして、衝撃による破断を生じにくくしたりすることが容易にできる。
本発明によれば、歯科用ファイルの柔軟性、切削性、および/または耐破断性を高くすることができる。
歯科用ファイルの平面図である。 図1のII-II線断面図である。 図1のIII-III線断面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
歯科用ファイル100は、図1に示すように、根管を切削する作業部100aと、その作業部100aの後端に連なるシャフト100bと、そのシャフト100bの後端に連なり歯科用ハンドピースに取り付けられる図示しない把持部とを有している。歯科用ファイル100の素材としては、例えば、複雑に湾曲した根管の治療に適する弾力性の高いニッケルチタン等が用いられる。
歯科用ファイル100の作業部100aは、外面の包絡面が、先端に向かって断面が小さくなるテーパー形状であり、かつ、相似または類似した形状の断面がらせん状に形成された構成を有している。より詳しくは、作業部100aにおける長手方向に垂直な断面の断面形状は、例えば図1のII-II線断面図、またはIII-III線断面図を図2または図3に示すように形成されている。すなわち、上記断面形状は、1本の円弧状部111(ランド部)と、上記円弧状部111から順次連続する第1から第3の3本の線状部112~114とで構成され、作業部100aの基端部から先端部にかけて、上記円弧状部111を含み中心がOの仮想円101の直径が小さくなるように設定されている。上記線状部112~114は、必ずしも正確な直線でなくてもよく、例えば多少湾曲したりしても以下に説明するような作用効果を得ることはできる。ここで、図2および図3においては、便宜上、仮想円101の直径が等しくなるような縮尺で描かれている。
上記第1の線状部112と第2の線状部113との接続点122は、上記仮想円101上に位置するように設定されている。さらに、上記第2の線状部113と第3の線状部114との接続点123が、上記仮想円101よりも内側に位置するように設定されている。また、特に限定されないが、例えば第1の線状部112、および第3の線状部114は、それぞれ、円弧状部111に対応する弦103に垂直で、互いに平行に形成されている。これによって、刃溝研削加工を容易にしたり、刃溝研削加工精度を高くしたりすることなどが容易になっている。
ここで、歯科用ファイル100の通常の使用時において、作業部100aでの切削くずが基部の方に向けて運ばれる回転方向を主となる回転方向Rとすると、すなわち、具体的には例えば、歯科用ファイル100のらせんが右ねじの場合には、先端側から見て反時計回りが主となる回転方向Rとすると、そのようなRの方向に回転する際には、上記のように仮想円101上に位置する2つの接続点121および接続点122が設けられていることによって、これらによる切削が行われることにより、切削能力を高く保つことが容易にできる。一方、接続点122は、接続点121を通る直径からオフセットした位置にあるとともに接続点121と対角上にある接続点123は仮想円101よりも内側にあることによって、切削時に噛み込みによる急速回転停止(ロック)などが生じにくく、それゆえ、ロックによる衝撃での破断も生じにくくすることができる。なお、歯科用ファイル100の回転方向はR方向に限らず、逆回転を含むモードや、交互に回転方向が変わるモードで用いられるなどしてもよい。
また、上記のように第2の線状部113と第3の線状部114との接続点123が設けられていることによって、第1の線状部112と第2の線状部113との接続点122を通る直径と第2の線状部113とのなす角度A21・A22をある程度大きく設定しつつ、第3の線状部114によって円弧状部111の長さが長くなりすぎないように設定することが容易にできる。それゆえ、角度A21・A22をある程度の大きさにして引き込まれやロックによる衝撃破断が生じにくいようにしつつ、円弧状部111が長すぎないようにして、追従性、柔軟性を高めることなどにより疲労破断が生じにくいようにすることが容易にできる。
また、円弧状部111と第1の線状部112との接続点121は、第1の線状部112と第2の線状部113との接続点122よりも、歯科用ファイルの主となる回転方向Rの上流側に位置するように設定されている。また、上記のような断面形状と主となる回転方向の関係の場合には、歯科用ファイル100の先端部から基端部に亘る上記作業部100aの側部には、円弧状部111、および第1から第3の線状部112~114が順に現れるように形成されていることになる。このような断面形状と回転方向の関係の場合、歯科用ファイル100の回転に伴って、円弧状部111における主となる回転方向Rの下流側端部の接続点121による切削に続いて、仮想円101上に位置する接続点122による切削が行われることにより、切削能力を高く保つことが容易にできる。
また、特に限定されないが、例えば、円弧状部111と第1の線状部112との接続点121を通る仮想円101の直径と、第1の線状部112とのなす角度A11・A12と、第1の線状部112と第2の線状部113との接続点122を通る仮想円101の直径と、第2の線状部113とのなす角度A21・A22とは、互いに等しく設定されている。より具体的には、例えば、それぞれ10°以上40°以下、好ましくは概ね30°程度などに設定されている。通常は、このような角度の範囲で、適切な切削能力に設定することが容易にできる。
ここで、上記のような角度の設定に代えて、各部の寸法を規定することもできる。すなわち、例えば仮想円101の中心Oから第1から第3の線状部112~114までの距離が、互いに等しく設定され、またはこれらの線状部112~114が同一の内接円102に接するようにされてもよい。このような形状は、仮想円101の外周から各線状部112~114までの削り込み量を等しくすることによって容易に形成することができ、例えば研削機械を動作させるプログラムにおいて、所定の削り込み量のルーチンを共通に用いて研削することなどが容易にできる。
上記のような断面形状は、作業部100aの長手方向の全長または一部に亘って相似形に形成されてもよいが、図2および図3に示すように変化する形状に形成されてもよい。すなわち、円弧状部111と第1の線状部112との接続点121を通る直径と、第1の線状部112とのなす角度A11・A12が、作業部100aの基端部から先端部にかけて大きく設定されている。また、第1の線状部112と第2の線状部113との接続点122を通る直径と、第2の線状部113とのなす角度A21・A22が、作業部100aの基端部から先端部にかけて大きく設定されている。なお、上記のような角度A11・A12、よび角度A21・A22の変化は、何れか一方だけが生じるように設定されてもよい。
このように歯科用ファイル100の長手方向に沿って変化する断面形状に設定することにより、先端部付近での切削力を比較的小さく抑えつつ、基端部付近での切削力を比較的大きく設定することができる。そこで、例えば根管形成の初期段階や仕上げ段階、全体の切削力を求められる症例で用いられる場合などでも、先端部付近での柔軟性や曲がった根管への高い追従性を確保しつつ、基端部にかけて切削力を増大させることが容易に可能になる。また、特に、接続点121を通る直径と第1の線状部112とのなす角度A11・A12が、先端部から基端部にかけて小さく設定されることにより、仮想円101に対する、いわゆるポケットの割合が増えることにより先端部から基端部に向けて、切削くずの排出を容易にしたり、仮想円101の断面形状に対する断面積(断面2次モーメント)の割合が小さくなることにより柔軟性を一層向上させたりすることも容易にできる。
100 歯科用ファイル
100a 作業部
100b シャフト
101 仮想円
102 内接円
103 弦
111 円弧状部
112 第1の線状部
113 第2の線状部
114 第3の線状部
121 接続点
122 接続点
123 接続点

Claims (4)

  1. らせん状に形成された作業部を有する歯科用ファイルであって、
    長手方向に垂直な断面の断面形状が、1本の円弧状部と、上記円弧状部から順次連続する第1から第3の3本の線状部とで構成され、基端部から先端部にかけて、上記円弧状部を含む仮想円の直径が小さく設定されるとともに、
    上記第1の線状部と第2の線状部との接続点が、上記仮想円上に位置するように設定され、
    上記第2の線状部と第3の線状部との接続点が、上記仮想円よりも内側に位置するように設定されるとともに、
    上記第1および第3の線状部は、それぞれ、上記円弧状部に対応する弦に垂直に形成され、
    上記仮想円の中心から上記第1から第3の線状部までの距離が、互いに等しく設定されていることを特徴とする歯科用ファイル。
  2. 請求項1の歯科用ファイルであって、
    上記円弧状部と上記第1の線状部との接続点を通る直径と、第1の線状部とのなす角度と、
    上記第1の線状部と上記第2の線状部との接続点を通る直径と、第2の線状部とのなす角度とが、互いに等しく設定されていることを特徴とする歯科用ファイル。
  3. 請求項1の歯科用ファイルであって、
    上記円弧状部と上記第1の線状部との接続点が、上記第1の線状部と上記第2の線状部との接続点よりも、歯科用ファイルの主となる回転方向上流側に位置することを特徴とする歯科用ファイル。
  4. 請求項1の歯科用ファイルであって、
    上記円弧状部と上記第1の線状部との接続点を通る直径と、第1の線状部とのなす角度、および、上記第1の線状部と上記第2の線状部との接続点を通る直径と、第2の線状部とのなす角度の少なくとも一方が、上記基端部から先端部にかけて大きく設定されていることを特徴とする歯科用ファイル。
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