次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下では、図面の各図において同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明を省略することがある。また、同一の符号に対応する部材等の名称が、簡略的に言い換えられたり、上位概念又は下位概念の名称で言い換えられたりすることがある。
本発明は、予め定められた圃場内で1台又は複数台の作業車両を走行させて、圃場内における農作業の全部又は一部を実行させるときに、作業車両を自律的に走行させる自律走行システムに関する。本実施形態では、作業車両としてトラクタを例に説明するが、作業車両としては、トラクタの他、田植機、コンバイン、土木・建設作業装置、除雪車等、乗用型作業機に加え、歩行型作業機も含まれる。本明細書において自律走行とは、トラクタが備える制御部(ECU)によりトラクタが備える走行に関する構成が制御されて予め定められた経路に沿ってトラクタが走行することを意味し、自律作業とは、トラクタが備える制御部によりトラクタが備える作業に関する構成が制御されて、予め定められた経路に沿ってトラクタが作業を行うことを意味する。これに対して、手動走行・手動作業とは、トラクタが備える各構成がユーザにより操作され、走行・作業が行われることを意味する。
以下の説明では、自律走行・自律作業されるトラクタを「無人(の)トラクタ」又は「ロボットトラクタ」と称することがあり、手動走行・手動作業されるトラクタを「有人(の)トラクタ」と称することがある。圃場内において農作業の一部が無人トラクタにより実行される場合、残りの農作業は有人トラクタにより実行される。単一の圃場における農作業を無人トラクタ及び有人トラクタで実行することを、農作業の協調作業、追従作業、随伴作業等と称することがある。本明細書において無人トラクタと有人トラクタの違いは、ユーザによる操作の有無であり、各構成は基本的に共通であるものとする。即ち、無人トラクタであってもユーザが搭乗(乗車)して操作することが可能であり(即ち、有人トラクタとして使用することができ)、あるいは有人トラクタであってもユーザが降車して自律走行・自律作業させることが可能である(即ち、無人トラクタとして使用することができる)。なお、農作業の協調作業としては、「単一の圃場における農作業を無人車両及び有人車両で実行すること」に加え、「隣接する圃場等の異なる圃場における農作業を同時期に無人車両及び有人車両が実行すること」が含まれていてもよい。
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る自律走行システム99に備えられるロボットトラクタ1の全体的な構成を示す側面図である。図2は、ロボットトラクタ1の平面図である。図3は、本発明の一実施形態に係る自律走行システム99に備えられる無線通信端末46を示す図である。図4は、ロボットトラクタ1及び無線通信端末46の制御系の主要な構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本発明の実施の一形態に係る自律走行システム99に備えられるロボットトラクタ(作業車両)1は、無線通信端末46との間で無線通信を行うことにより操作される作業車両である。ユーザが無線通信端末46を操作して、当該トラクタ1の制御部4との間で信号のやり取りを適宜行うことにより、トラクタ1を自律走行・自律作業させることができる。
初めに、本発明の実施の一形態に係る自律走行システム99に備えられるロボットトラクタ(以下、単に「トラクタ」と称する場合がある。)1について、主として図1及び図2を参照して説明する。
トラクタ1は、圃場(走行領域)内を自律走行することが可能な走行機体(車体部)2を備える。走行機体2には、図1及び図2に示す作業機3が着脱可能に取り付けられている。この作業機3としては、例えば、耕耘機、プラウ、施肥機、草刈機、播種機等の種々の作業機があり、これらの中から必要に応じて所望の作業機3を選択して走行機体2に装着することができる。走行機体2は、装着された作業機3の高さ及び姿勢を変更可能に構成されている。
トラクタ1の構成について、図1及び図2を参照してより詳細に説明する。トラクタ1の走行機体2は、図1に示すように、その前部が左右1対の前輪(車輪)7,7で支持され、その後部が左右1対の後輪8,8で支持されている。
走行機体2の前部にはボンネット9が配置されている。このボンネット9内には、トラクタ1の駆動源であるエンジン10及び燃料タンク(図略)が収容されている。このエンジン10は、例えばディーゼルエンジンにより構成することができるが、これに限るものではなく、例えばガソリンエンジンにより構成してもよい。また、駆動源としては、エンジンに加えて、又はこれに代えて、電気モータを使用してもよい。
ボンネット9の後方には、ユーザが搭乗するためのキャビン11が配置されている。このキャビン11の内部には、ユーザが操向操作するためのステアリングハンドル12と、ユーザが着座可能な座席13と、各種の操作を行うための様々な操作装置と、が主として設けられている。ただし、作業車両は、キャビン11付きのものに限るものではなく、キャビン11を備えないものであってもよい。
上記の操作装置としては、図2に示すモニタ装置14、スロットルレバー15、主変速レバー27、複数の油圧操作レバー16、PTOスイッチ17、PTO変速レバー18、副変速レバー19、及び作業機昇降スイッチ28等を例として挙げることができる。これらの操作装置は、座席13の近傍、又はステアリングハンドル12の近傍に配置されている。
モニタ装置14は、トラクタ1の様々な情報を表示可能に構成されている。スロットルレバー15は、エンジン10の出力回転数を設定するための操作具である。主変速レバー27は、トラクタ1の走行速度を無段階で変更するための操作具である。油圧操作レバー16は、図略の油圧外部取出バルブを切換操作するための操作具である。PTOスイッチ17は、トランスミッション22の後端から突出した図略のPTO軸(動力取出軸)への動力の伝達/遮断を切換操作するための操作具である。即ち、PTOスイッチ17がON状態であるときPTO軸に動力が伝達されてPTO軸が回転し、作業機3が駆動される一方、PTOスイッチ17がOFF状態であるときPTO軸への動力が遮断されてPTO軸が回転せず、作業機3が停止される。PTO変速レバー18は、作業機3に入力される動力の変更操作を行うものであり、具体的にはPTO軸の回転速度の変速操作を行うための操作具である。副変速レバー19は、トランスミッション22内の走行副変速ギア機構の変速比を切り換えるための操作具である。作業機昇降スイッチ28は、走行機体2に装着された作業機3の高さを所定範囲内で昇降操作するための操作具である。
図1に示すように、走行機体2の下部には、トラクタ1のシャーシ20が設けられている。当該シャーシ20は、機体フレーム21、トランスミッション22、フロントアクスル23、及びリアアクスル24等から構成されている。
機体フレーム21は、トラクタ1の前部における支持部材であって、直接、又は防振部材等を介してエンジン10を支持している。トランスミッション22は、エンジン10からの動力を変化させてフロントアクスル23及びリアアクスル24に伝達する。フロントアクスル23は、トランスミッション22から入力された動力を前輪7に伝達するように構成されている。リアアクスル24は、トランスミッション22から入力された動力を後輪8に伝達するように構成されている。
図4に示すように、トラクタ1は、走行機体2の動作(前進、後進、停止及び旋回等)並びに作業機3の動作(昇降、駆動及び停止等)を制御するための制御部4を備える。制御部4は、図示しないCPU、ROM、RAM、I/O等を備えて構成されており、CPUは、各種プログラム等をROMから読み出して実行することができる。制御部4には、トラクタ1が備える各構成(例えば、エンジン10等)を制御するためのコントローラ、及び、他の無線通信機器と無線通信可能な無線通信部40等がそれぞれ電気的に接続されている。
上記のコントローラとして、トラクタ1は少なくとも、図略のエンジンコントローラ、車速コントローラ、操向コントローラ及び昇降コントローラを備える。それぞれのコントローラは、制御部4からの電気信号に応じて、トラクタ1の各構成を制御することができる。
エンジンコントローラは、エンジン10の回転数等を制御するものである。具体的には、エンジン10には、当該エンジン10の回転数を変更させる図略のアクチュエータを備えたガバナ装置41が設けられている。エンジンコントローラは、ガバナ装置41を制御することで、エンジン10の回転数を制御することができる。また、エンジン10には、エンジン10の燃焼室内に噴射(供給)するための燃料の噴射時期・噴射量を調整する燃料噴射装置45が付設されている。エンジンコントローラは、燃料噴射装置45を制御することで、例えばエンジン10への燃料の供給を停止させ、エンジン10の駆動を停止させることができる。
車速コントローラは、トラクタ1の車速を制御するものである。具体的には、トランスミッション22には、例えば可動斜板式の油圧式無段変速装置である変速装置42が設けられている。車速コントローラは、変速装置42の斜板の角度を図略のアクチュエータによって変更することで、トランスミッション22の変速比を変更し、所望の車速を実現することができる。
操向コントローラは、ステアリングハンドル12の回動角度を制御するものである。具体的には、ステアリングハンドル12の回転軸(ステアリングシャフト)の中途部には、操向アクチュエータ43が設けられている。この構成で、予め定められた経路をトラクタ1が(無人トラクタとして)走行する場合、制御部4は、当該経路に沿ってトラクタ1が走行するようにステアリングハンドル12の適切な回動角度を計算し、得られた回動角度となるように操向コントローラに制御信号を出力する。操向コントローラは、制御部4から入力された制御信号に基づいて操向アクチュエータ43を駆動し、ステアリングハンドル12の回動角度を制御する。
昇降コントローラは、作業機3の昇降を制御するものである。具体的には、トラクタ1は、作業機3を走行機体2に連結している3点リンク機構の近傍に、油圧シリンダ等からなる昇降アクチュエータ44を備えている。この構成で、昇降コントローラは、制御部4から入力された制御信号に基づいて昇降アクチュエータ44を駆動して作業機3を適宜に昇降動作させることにより、所望の高さで作業機3により農作業を行うことができる。この制御により、作業機3を、退避高さ(農作業を行わない高さ)及び作業高さ(農作業を行う高さ)等の所望の高さで支持することができる。
なお、上述した図略の複数のコントローラは、制御部4から入力される信号に基づいてエンジン10等の各部を制御していることから、制御部4が実質的に各部を制御していると把握することができる。
上述のような制御部4を備えるトラクタ1は、ユーザがキャビン11内に搭乗して各種操作をすることにより、当該制御部4によりトラクタ1の各部(走行機体2、作業機3等)を制御して、圃場内を走行しながら農作業を行うことができるように構成されている。加えて、本実施形態のトラクタ1は、ユーザがトラクタ1に搭乗しなくても、無線通信端末46により出力される所定の制御信号に基づいて自律走行及び自律作業をさせることが可能となっている。
具体的には、図4等に示すように、トラクタ1は、自律走行・自律作業を可能とするための各種の構成を備えている。例えば、トラクタ1は、測位システムに基づいて自ら(走行機体2)の位置情報を取得するために必要な測位用アンテナ6等を備える。このような構成により、トラクタ1は、測位システムに基づいて自らの位置情報を取得して、圃場上を自律走行することが可能となっている。
次に、自律走行を可能とするためにトラクタ1が備える構成について、より詳細に説明する。具体的には、本実施形態のトラクタ1は、図4等に示すように、操向アクチュエータ43、測位用アンテナ6、無線通信用アンテナ48、前方カメラ56、後方カメラ57、車速センサ、及び記憶部55等を備える。また、これらに加えて、トラクタ1には、走行機体2の姿勢(ロール角、ピッチ角、ヨー角)を特定することが可能な慣性計測ユニット(IMU)が備えられている。
測位用アンテナ6は、例えば衛星測位システム(GNSS)等の測位システムを構成する測位衛星からの信号を受信するものである。図1に示すように、測位用アンテナ6は、トラクタ1のキャビン11のルーフ92の上面に取り付けられている。測位用アンテナ6で受信された測位信号は、図4に示す位置検出部としての位置情報取得部49に入力される。位置情報取得部49は、トラクタ1の走行機体2(厳密には、測位用アンテナ6)の位置情報を、例えば緯度・経度情報として算出し、取得する。当該位置情報取得部49で取得された位置情報は、制御部4に入力されて、自律走行に利用される。
なお、本実施形態ではGNSS-RTK法を利用した高精度の衛星測位システムが用いられているが、これに限るものではなく、高精度の位置座標が得られる限りにおいて他の測位システムを用いてもよい。例えば、相対測位方式(DGPS)、又は静止衛星型衛星航法補強システム(SBAS)を使用することが考えられる。
無線通信用アンテナ48は、ユーザが操作する無線通信端末46からの信号を受信したり、無線通信端末46への信号を送信したりするものである。図1に示すように、無線通信用アンテナ48は、トラクタ1のキャビン11が備えるルーフ92の上面に取り付けられている。無線通信用アンテナ48で受信した無線通信端末46からの信号は、図4に示す無線通信部40で信号処理された後、制御部4に入力される。また、制御部4等から無線通信端末46に送信する信号は、無線通信部40で信号処理された後、無線通信用アンテナ48から送信されて無線通信端末46で受信される。
前方カメラ56はトラクタ1の前方を撮影するものである。後方カメラ57はトラクタ1の後方を撮影するものである。前方カメラ56及び後方カメラ57はトラクタ1のルーフ92に取り付けられている。前方カメラ56及び後方カメラ57で撮影された動画データは、無線通信部40により、無線通信用アンテナ48から無線通信端末46に送信される。動画データを受信した無線通信端末46は、その内容をディスプレイ37に表示する。
上記の車速センサは、トラクタ1の車速を検出するものであり、例えば前輪7,7の間の車軸に設けられる。車速センサで得られた検出結果のデータは、無線通信部40で信号処理された後、無線通信用アンテナ48から送信されて無線通信端末46で受信されて、その内容がディスプレイ37に表示される。なお、トラクタ1には車速センサ以外にも、当該トラクタ1の状態を検出(監視)するための種々のセンサが設けられている。
記憶部55は、トラクタ1を自律走行させる走行経路や自律作業させる作業経路を記憶したり、自律走行中のトラクタ1(厳密には、測位用アンテナ6)の位置の推移(走行軌跡)を記憶したりするメモリである。その他にも、記憶部55は、トラクタ1を自律走行・自律作業させるために必要な様々な情報を記憶している。
無線通信端末46は、図3に示すように、タッチパネル39を備えるタブレット型のパーソナルコンピュータとして構成される。ユーザは、無線通信端末46のディスプレイ37に表示された情報(例えば、前方カメラ56や、後方カメラ57や、車速センサ等からの情報)を参照して確認することができる。また、ユーザは、上記のタッチパネル39、又はディスプレイ37の近傍に配置されたハードウェアキー38等を操作して、トラクタ1の制御部4に、トラクタ1を制御するための制御信号(例えば、一時停止信号等)を送信することができる。なお、無線通信端末46はタブレット型のパーソナルコンピュータに限るものではなく、こえに代えて、例えばノート型のパーソナルコンピュータで構成することも可能である。あるいは、前述の協調作業を行うために有人のトラクタを無人のトラクタ1に付随して走行させる場合、有人側のトラクタに搭載されるモニタ装置14を無線通信端末とすることもできる。
このように構成されたトラクタ1は、無線通信端末46を用いるユーザの指示に基づいて、圃場上の走行経路Pに沿って走行しつつ、作業経路P1に沿って作業機3による農作業を行うことができる。
具体的には、ユーザは、無線通信端末46を用いて各種設定を行うことにより、農作業を行う直線状又は折れ線状の作業経路P1と、当該作業経路P1の端同士を繋ぐ円弧状の旋回路(トラクタ1が旋回を行う非作業経路)P2と、を交互に繋いだ一連の経路としての走行経路(パス)Pを生成することができる。そして、このようにして生成した走行経路(作業経路P1及び非作業経路P2)Pの情報を、トラクタ1の制御部4に電気的に接続された記憶部55に入力(転送)して所定の操作をすることにより、当該制御部4によりトラクタ1を制御して、当該トラクタ1を走行経路Pに沿って自律走行させながら、作業経路P1に沿って作業機3により自律作業させることができる。
以下では、図3から図5までを参照して、無線通信端末46の構成についてより詳細に説明する。図5は、無線通信端末46のディスプレイ37における監視画面100の表示例を示す図である。
図3及び図4に示すように、本実施形態の無線通信端末46は、ディスプレイ37、ハードウェアキー38、及びタッチパネル39の他、制御系の主要な構成として、表示制御部31、記憶部32、圃場取得部33、作業領域取得部34、走行経路取得部35、自動位置合わせ開始指示部36、及び自律走行・自律作業再開指示部30等を備える。
具体的には、無線通信端末46は上述のとおりコンピュータとして構成されており、CPU、ROM、RAM等を備える。また、前記ROMには、トラクタ1に自律走行・自律作業を行わせるための適宜のプログラムが記憶されている。このソフトウェアとハードウェアの協働により、無線通信端末46を、表示制御部31、記憶部32、圃場取得部33、作業領域取得部34、走行経路取得部35、自動位置合わせ開始指示部36、及び自律走行・自律作業再開指示部30等として動作させることができる。
表示制御部31は、ディスプレイ37に表示する表示用データを作成し、表示内容を適宜に制御する。例えば、表示制御部31は、トラクタ1を走行経路Pに沿って自律走行させながら作業経路P1に沿って自律作業させている間は、図5に示す監視画面100をディスプレイ37に表示させる。
記憶部32は、ユーザが無線通信端末46のタッチパネル39を操作することにより入力したトラクタ1に関する情報や圃場に関する情報等を記憶するとともに、作成された走行経路P(作業経路P1及び非作業経路P2)の情報等を記憶するメモリである。
圃場取得部33は、トラクタ1が自律走行・自律作業を行う対象となる圃場(走行領域)の位置及び形状を記憶する。圃場の位置及び形状は、例えばユーザがトラクタ1に搭乗して圃場の外周に沿って1回り周回するように運転し、そのときの測位用アンテナ6の位置情報の推移を記録することで、取得することができる。圃場取得部33が取得した圃場の位置及び形状は、圃場情報として記憶部32に記憶される。
作業領域取得部34は、トラクタ1が自律走行を行う対象の圃場内に配置される、農作業を行う作業領域の位置を設定するものである。具体的に説明すると、本実施形態の無線通信端末46においては、所定の操作をすることにより、枕地の幅と、非耕作地の幅と、を設定可能に構成されている。そして、枕地及び非耕作地からなる非作業領域が、上記の設定内容と、圃場取得部33で取得された圃場の位置及び形状と、に基づいて定められるとともに、圃場の領域から非作業領域を除いた領域が作業領域として定められる。
走行経路取得部35は、圃場内においてトラクタ1が自律的に農作業を行う作業経路P1と、この作業経路P1の端同士を結ぶ非作業経路(旋回路)P2と、を交互に繋いだ走行経路Pを生成し、取得する。走行経路Pの生成に必要な情報をユーザがタッチパネル39等により入力すると、走行経路取得部35は、その情報に基づいて自動的に走行経路P(作業経路P1及び非作業経路P2)を作成する。この走行経路Pは、直線状又は折れ線状の作業経路P1が作業領域に含まれ、非作業経路(旋回路)P2が枕地等の非作業領域に含まれるように生成される。走行経路取得部35が生成した走行経路Pは、記憶部32に記憶される。
ユーザは、無線通信端末46を適宜操作して、走行経路取得部35で生成された走行経路Pの情報をトラクタ1の記憶部55に入力(転送)する。その後、ユーザはトラクタ1に搭乗して運転することで、トラクタ1を走行経路Pの開始位置(図9及び図10を参照)に配置する。続いて、ユーザがトラクタ1から降車して無線通信端末46を操作し、自律走行・自律作業の開始を指示する。これにより、トラクタ1が当該走行経路Pに沿って走行しながら作業経路P1に沿って農作業を行うように、制御部4がトラクタ1の走行及び農作業を制御する。
自律走行・自律作業の開始に伴って、ディスプレイ37の表示画面は、図5に示す監視画面100に切り換わる。
監視画面100の左部には、前方カメラ56及び後方カメラ57から送信されてきたデータをそれぞれ動画データとして表示する前方カメラ表示部101及び後方カメラ表示部102が上下に配置される。監視画面100の右部には、トラクタ1の走行経路P及び現在位置等を図面等でグラフィカルに示す作業状態表示部103が配置される。前方カメラ表示部101の上方には、トラクタ1の現在の車速を表示する車速表示部106が設けられる。車速表示部106には、上述の車速センサから送信されてきたデータに基づいて取得された、トラクタ1の現在の車速が表示される。
次に、本実施形態のトラクタ1で行われる自律走行・自律作業に関する制御について、図4及び図6等を参照しながら説明する。図6は、作業経路P1に設定される逸脱判定幅JW及びマージン幅MWを説明する説明図である。
本実施形態のトラクタ1は、自律走行・自律作業している間、自機が走行経路Pから逸脱したか否かを常に監視する構成となっている。そして、トラクタ1が例えばスリップや操向アクチュエータ43の不具合等の何らかの事情により走行経路Pから逸脱した場合、トラクタ1(走行機体2)の制御部4は、走行機体2の停止制御をして走行を自動的に停止させる。図6は、走行経路Pの一部である作業経路P1からトラクタ1が逸脱したために停止した様子を示している。
更に、本実施形態においては、トラクタ1が走行経路Pから逸脱したことに基づいて自動的に停止された場合、その後に自律走行・自律作業を再開するための再開位置(再開地点)が設定される構成となっている。なお、ここでの再開位置とは、走行経路Pの中途部から走行・作業を再開するためにトラクタ1を配置する位置を意味する。
本実施形態のトラクタ1は、上記の機能を実現するための特徴的な構成として、図4に示すように、逸脱判定部51と、再開位置設定部52と、位置合わせ用経路作成判定部53と、位置合わせ用経路作成部54と、を主として備えている。また、上記の機能に関連する構成として、無線通信端末46に自動位置合わせ開始指示部36及び自律走行・自律作業再開指示部30が設けられている。
以下では、上記の機能に関連する各構成について、図4等を参照して詳細に説明する。
逸脱判定部51は、トラクタ1(走行機体2、厳密には測位用アンテナ6)の位置が走行経路Pから逸脱しているか否かを、位置情報取得部49から得られた位置情報、及び記憶部55から読み出したパスに基づいて判定する。図6には走行経路Pのうち直線状の作業経路P1からの逸脱を判定する場合が示されているが、本実施形態では、逸脱判定部51は、作業経路P1に対して予め定められた所定の逸脱判定幅(自律走行継続範囲)JWからトラクタ1の位置が外に出た場合に、トラクタ1が作業経路P1から逸脱したと判定する。作業経路P1に設定された逸脱判定幅JWの例が図6に示され、この逸脱判定幅JWは、作業経路P1を中心として例えば左に車幅(走行機体2の横幅)の1/2、右に車幅の1/2の幅とすることができる。トラクタ1には走行慣性が作用するので、トラクタ1が逸脱判定幅JWから外れた位置T2は、その後にトラクタ1が実際に停止した位置T3とは原則として一致しない。制御部4は、トラクタ1が逸脱判定幅JWから外れ、走行機体2が実際に停止したときの上記位置T3の位置座標を逸脱停止位置として記憶部55に記憶させる。
なお、逸脱判定部51は、トラクタ1の位置が、上記の逸脱判定幅JWから外れているか否かを監視すると同時に、それよりも狭い幅となるように定められたマージン幅MWから外れているか否かについても監視する。マージン幅MWの例が図6に示され、このマージン幅MWは、例えばGNSSの誤差の範囲をカバーする幅となるように、作業経路P1を中心として左にMA、右にMAの幅とすることができる(ただし、MA<車幅の1/2)。トラクタ1の位置がマージン幅MWから外に出た場合でも、逸脱判定幅JWから外に出ていない限りは、逸脱判定部51は、トラクタ1が作業経路から逸脱したとは判定しない。これにより、GNSSの誤差の範囲は超えてしまうが経路逸脱として処理する必要がない程度の走行経路からのズレによっては、トラクタ1が逸脱に基づいて停止しないようにすることができる。ただし、マージン幅MWから外に出た時点でのトラクタ1の位置は、トラクタ1の走行軌跡にある程度のズレが生じた点として記憶部55に記憶される。以下の説明では、トラクタ1の位置がマージン幅MWの外にはみ出した地点の位置(図6の位置T1)をマージン超過位置と呼ぶことがある。
なお、非作業経路P2からの逸脱の判定については、詳細は説明しないが、例えば、作業経路P1からの逸脱の判定と同様に、トラクタ1の位置が所定の逸脱判定幅を外れるか否かで判定するように構成することができる。
再開位置設定部52は、トラクタ1が走行経路Pから逸脱した場合に、トラクタ1がその後に自律走行・自律作業を再開する位置となる再開位置R1を算出し、設定する。
位置合わせ用経路作成判定部53は、走行経路Pに対して走行機体2が逸脱したことに基づいてトラクタ1が停止した後、必要に応じて、トラクタ1を現在位置から再開位置R1まで走行させるための位置合わせ用経路の作成を位置合わせ用経路作成部54に指示する。具体的には、図12に示すように再開位置R1を基準とした2つの範囲(第1範囲、及び、前記第1範囲より大きい第2範囲)を考えたときに、位置合わせ用経路作成判定部53は、トラクタ1の現在位置が第1範囲内であるときには、位置合わせ用経路の作成を位置合わせ用経路作成部54に指示しない。一方、位置合わせ用経路作成判定部53は、トラクタ1の現在位置が第1範囲外かつ第2範囲内にあるときには、位置合わせ用経路の作成を位置合わせ用経路作成部54に指示する。
第1範囲及び第2範囲の例が図12に示されている。図12においては誇張して描かれているが、本実施形態においては、再開位置R1を中心とした小さい円(例えば、半径r=2cmの円)で囲まれた領域が第1範囲であり、再開位置R1を中心とした大きい円(例えば、半径r=車幅/2の円)で囲まれた領域が第2範囲である。
自動位置合わせ開始指示部36は、トラクタ1の位置を再開位置R1に合わせる位置合わせを自動で行いたい場合に、ユーザがその旨の信号を制御部4に送信するための操作部である。自動位置合わせ開始指示部36は、例えばディスプレイ37に表示される仮想的なボタンとして構成することができる。
自律走行・自律作業再開指示部30は、走行経路Pに対して走行機体2が逸脱したことに基づいてトラクタ1が停止した後に、トラクタ1の自律走行・自律作業を開始させたい場合に、ユーザが操作する操作部である。自律走行・自律作業再開指示部30は、例えばディスプレイ37に表示される仮想的なボタンとして構成することができる。本実施形態の自律走行・自律作業再開指示部30は、トラクタ1を再開位置又はその近傍(前記第1範囲内)で一定時間停止させたときに操作可能となり、それ以外の場合には操作不能とされる。
次に、トラクタ1の自律走行中に何らかの事情により走行機体2が走行経路Pから逸脱した場合に、逸脱判定部51、再開位置設定部52、位置合わせ用経路作成判定部53、及び位置合わせ用経路作成部54等によって行われる処理について、主として図7及び図8を参照して説明する。図7及び図8は、トラクタ1が走行経路から逸脱して停止した後に、自律走行・自律作業を再開するまでの処理を説明する図である。
トラクタ1の自律走行時において、逸脱判定部51は、位置情報取得部49により得られた測位用アンテナ6の位置を所定の時間間隔で反復して取得し、測位用アンテナ6の位置が上記の逸脱判定幅JWからはみ出していないかを監視する。トラクタ1が走行経路Pから逸脱した(即ち、測位用アンテナ6の位置が逸脱判定幅JWから外れた)と逸脱判定部51により判定された場合、トラクタ1の制御部4は、走行機体2を停止させるための停止制御を直ちに行う。
トラクタ1が走行経路Pのうち作業経路P1を走行している場合において、当該トラクタ1が逸脱判定幅JWから外れたときは、その前の段階で、マージン幅MWからも外れているはずである。トラクタ1(厳密に言えば、測位用アンテナ6)の位置がマージン幅MWから外れたと逸脱判定部51が判定した時点で、トラクタ1の制御部4は、当該時点での測位用アンテナ6の位置を示す情報を取得し、上記のマージン超過位置として記憶部55に記憶しておく。
トラクタ1が走行経路Pからの逸脱に基づいて停止制御されて、走行機体2が実際に停止したことが車速センサの検出結果により確認されると、図7の処理が開始される。再開位置設定部52は、初めに、走行経路Pから逸脱する直前にトラクタ1が走行していた経路が、直線状又は折れ線状の作業経路(農作業が行われる経路)P1であったか否かを判断する(ステップS101)。即ち、トラクタ1が走行経路Pから逸脱する場合としては、図9のように作業経路(農作業が行われる経路)P1から逸脱する場合と、図10のように非作業経路(旋回路)P2から逸脱する場合とがあり、再開位置設定部52は、上記の場合のうちの何れであったかを判断する。
ステップS101の判断で、走行経路Pから逸脱した直前にトラクタ1が走行していた経路が作業経路P1であると判断された場合(ステップS101、Yes)、再開位置設定部52は、再開位置を算出するために必要な情報として、上記のマージン超過位置(図6の例では、位置T1)の位置情報を記憶部55から取得する(ステップS102)。
続いて、再開位置設定部52は、走行経路Pから逸脱する直前にトラクタ1が走行していた作業経路P1を複数の作業経路P1,P1,・・・の中から特定し、当該特定した作業経路P1に対して、ステップS102で取得したマージン超過位置T1から仮想的な垂線を引く(ステップS103)。なお、図6は、図11のマージン超過位置T1近傍を拡大したものであり、この図6において上記の垂線が説明されている。そして、再開位置設定部52は、ステップS103で引いた垂線の足の位置(上記の垂線と、作業経路P1と、の交点の位置)を、自律作業を再開する再開位置R1として設定し、記憶する(ステップS104)。
ステップS101の判断で、走行経路Pから逸脱する直前にトラクタ1が走行していた経路が非作業経路(農作業を行わずに走行機体2の方向変換を行う経路)P2であった場合、続いて再開位置設定部52は、トラクタ1が停止した位置が作業領域内に入っているか否かを判定する(ステップS105)。
図10の例に示すようにトラクタ1の停止位置が非作業領域であった場合(ステップS105、No)、再開位置設定部52は、その非作業経路P2上の適宜の位置を再開位置として設定する(ステップS106)。この再開位置の設定方法としては、例えば、図10のように非作業経路P2に直線部分がある場合に、その直線部分において停止位置から最も近い点を再開位置R1とすることが考えられる。ただし、上記の方法に限定されず、再開位置は他の方法で定められても良い。
一方、トラクタ1の停止位置が作業領域であった場合(ステップS105、Yes)、図11の例に示すように、トラクタ1の停止制御が行われてから実際にトラクタ1が停止するまでの間に、トラクタ1が非作業領域と作業領域の境界を跨いで、作業領域に入り込んだことを意味する。その場合、圃場に対してムラなく(未耕地領域を残すことなく)農作業を施すために、再開位置設定部52は、逸脱した非作業経路P2の下流端(言い換えれば、当該非作業経路P2に下流側で接続する作業経路P1の上流端)を、再開位置R1として設定する。この再開位置R1は、走行経路Pにおいて、作業領域と非作業領域の境界に位置する。
経路の逸脱によりトラクタ1が停止した後、ユーザは、経路逸脱の原因を調べるために、トラクタ1の状態を点検する。このとき、点検をし易くするために、例えば圃場の適宜の場所にトラクタ1を移動させても良い。
その後、ユーザが自律走行・自律作業の再開を望む場合、トラクタ1に搭乗して手動で運転し、再開位置R1又はその近傍まで移動させ、停止させる。このとき、再開位置R1(好ましくは、更に、図8のステップS112における第2範囲)とともにトラクタ1の現在位置を無線通信端末46のディスプレイ37にリアルタイムで表示すると、ユーザがトラクタ1を再開位置R1までどのように移動させるべきかを理解し易くなる点で好ましい。
何れの地点に再開位置R1が設定された場合でも、位置合わせ用経路作成判定部53は、ユーザが自律走行・自律作業再開指示部30を操作して自律走行を再開する旨の指示を行うまで待機する(図8のステップS108)。
ユーザがトラクタ1から降車し、無線通信端末46の自律走行・自律作業再開指示部30を操作して自律走行を再開する旨の指示を行った場合は(ステップS108、Yes)、位置合わせ用経路作成判定部53はトラクタ1の現在位置を取得する(ステップS109)。
続いて、位置合わせ用経路作成判定部53は、トラクタ1の現在位置が、再開位置R1を基準とした第1範囲に入っているかを判定する(ステップS110)。なお、本実施形態の第1範囲は、再開位置R1を中心とした半径2cm程度の範囲に設定されている。トラクタ1の現在位置が第1範囲に入っている場合(ステップS110、Yes)、トラクタ1の現在位置が再開位置R1に十分に近いので、再開位置R1へのトラクタ1の位置合わせを改めて行う必要性が乏しい。従って、この場合は、位置合わせ用経路作成判定部53は、位置合わせ用経路の作成を位置合わせ用経路作成部54に指示しない。
そして、制御部4は走行機体2及び作業機3等を制御して、現在位置から自律走行・自律作業を再開し(ステップS111)、一連の処理を終了する。
ステップS110での判断の結果、トラクタ1の現在位置が第1範囲に入っていない場合(ステップS110、No)、位置合わせ用経路作成判定部53は、トラクタ1の現在位置が再開位置R1を基準とした第2範囲に入っているかを判定する(ステップS112)。なお、本実施形態の第2範囲は、再開位置R1を中心とした半径が車幅の1/2程度範囲に設定されている。ステップS112での判断の結果、トラクタ1の現在位置が第2範囲に入っていない場合(ステップS112、No)、トラクタ1が走行経路Pから逸脱して停止した状態を維持して、ステップS108に戻る。
トラクタ1の現在位置が第1範囲外かつ第2範囲内である場合(ステップS112、Yes)、トラクタ1の現在位置が再開位置R1からやや離れているので、自動で再開位置R1に位置合わせを行うことが望ましいと考えられる。そこで、位置合わせ用経路作成判定部53は、位置合わせ用経路作成部54に位置合わせ用経路を作成させるための指示を行う。これを受けて、位置合わせ用経路作成部54は、トラクタ1の現在位置(始点)から再開位置R1(終点)までを繋ぐ一連の位置合わせ用経路を作成する(ステップS113)。
この際、例えば図12に示すように、トラクタ1の現在位置が再開位置R1に対して進行方向前方(走行経路Pにおける進行方向前方)に位置している場合、位置合わせ用経路作成部54は、トラクタ1を後進させる経路を含む位置合わせ用経路を作成する。図12の例では、作成された位置合わせ用経路が太線の破線で描かれている。位置合わせ用経路作成部54が作成する位置合わせ用経路は、その終点にトラクタ1が至ったときに走行機体2の向きが進行方向前方を向くように算出される。
一方、例えば図13に示すように、トラクタ1の現在位置が再開位置R1に対して進行方向後方(走行経路Pにおける進行方向後方)に位置している場合、位置合わせ用経路作成部54は、トラクタ1を前進させて再開位置R1に到達させるような位置合わせ用経路を作成する。位置合わせ用経路作成部54で作成された位置合わせ用経路は、記憶部55に記憶される。
ステップS113において位置合わせ用経路が作成されたら、その後、制御部4は、ステップS113で作成した位置合わせ用経路に沿ってトラクタ1を自律的に走行させて、再開位置R1においてトラクタ1が停止するように制御する(ステップS114)。この際、本実施形態では、例えば図13の例で示すように、トラクタ1を前進させながら再開位置R1に到達させる位置合わせ用経路が生成されている場合、制御部4は、トラクタ1を位置合わせ経路に沿って自律的に走行させながら、作業機3で農作業を行わせる。一方、図12の例で示すように、トラクタ1を後進させながら再開位置R1に到達させる位置合わせ用経路の場合には、作業機3を停止させた状態でトラクタ1の位置合わせが行われる。
上記の処理によりトラクタ1が走行経路P上の中途部(再開位置)に復帰し、その後ユーザが無線通信端末46を用いて適宜の処理をすることにより、自律走行・自律作業を再開させることができる。
このように、本実施形態においては、ユーザがロボットトラクタ1に搭乗して当該トラクタ1を運転操作して再開位置R1にピンポイントで移動させなくても、逸脱停止後のトラクタ1の位置が第1範囲内に入っていればその位置から自律走行・自律作業を再開することができる。更には、逸脱停止後のトラクタ1の位置が第1範囲外かつ第2範囲内であれば、位置合わせ用経路(図12及び図13の太い点線を参照)を生成して、この経路に沿ってトラクタ1を自動で運転して再開位置R1に位置合わせをすることができる。このように、従来のようにトラクタの位置を手動操作で再開位置に正確に合わせる必要がなくなるので、高度な運転技術が必要でなくなり、容易に位置合わせを行うことができる。
また、本実施形態においては、再開位置R1に対して進行方向前方にトラクタ1が位置している場合、手動操作では難しい後進走行を自動(自律走行)で行うことにより、トラクタ1を再開位置R1に正確に到達させることができる。よって、切返し操作等を多用することなく、トラクタ1を再開位置R1に配置することができるので、圃場を過剰に傷めてしまうおそれが軽減される。
また、本実施形態においては、トラクタ1が非作業経路P2から逸脱してから実際に停止するまでの間にトラクタ1が非作業領域と作業領域の境界を跨いで作業領域に入り込んだ場合に、非作業領域と作業領域の境界に設定された再開位置R1まで自動で移動させて、その位置から自律作業を再開することができる。よって、未作業領域が生じることなく農作業を行うことができる。
また、本実施形態においては、トラクタ1が走行経路Pから逸脱したことに基づいて停止された場合に限り、再開位置R1を設定する。即ち、トラクタ1が走行経路Pから逸脱していないが、例えばユーザが無線通信端末46に対して適宜の停止操作を行ったために一時停止や緊急停止がされたような場合には、再開位置は設定されない。よって、再開位置の設定(算出)に伴う計算負荷を減らすことができる。
以上に説明したように、本実施形態の自律走行システム99は、位置情報取得部49と、制御部4と、再開位置設定部52と、を備える。位置情報取得部49は、トラクタ(作業車両)1の位置情報を取得する。制御部4は、予め定められた走行経路Pに沿ってトラクタ1を自律走行させながら予め定められた作業経路P1に沿って自律作業させるとともに、走行経路Pに対するトラクタ1の逸脱に基づいてトラクタ1を停止させる。再開位置設定部52は、前記停止後、トラクタ1による自律作業の再開位置R1を設定する。制御部4は、前記停止後、トラクタ1の現在位置が再開位置R1を基準とした第1範囲内である場合、トラクタ1の自律作業をトラクタ1の現在位置から再開させることが可能である。また、制御部4は、トラクタ1の現在位置が第1範囲外であり、かつ、再開位置R1を基準とした第2範囲内である場合、トラクタ1を現在位置から再開位置R1まで自律走行させた後に、自律作業を再開させることが可能である。
これにより、ユーザがトラクタ1を運転して再開位置R1にピンポイントで移動させなくても、自律作業を再開することができ、停止後、自律作業の再開が容易に行える。
また、本実施形態の自律走行システム99においては、制御部4は、前記停止後のトラクタ1の現在位置が、再開位置R1から第1範囲外かつ第2範囲内であって、再開位置R1に対して走行経路Pの進行方向前方である場合、図12に示すように、トラクタ1を再開位置R1まで後進させた後、作業経路P1に沿ってトラクタ1に自律作業させることが可能である。
これにより、トラクタ1が再開位置R1に対して進行方向前方にある場合に、トラクタ1の車体の向きによっては、後進して再開位置R1に到達させることができる。
また、本実施形態の自律走行システム99は、以下の構成とされる。即ち、制御部4が、トラクタ1により作業が行われない非作業経路P2における走行経路Pに対するトラクタ1の逸脱に基づいてトラクタ1の停止制御をした結果、トラクタ1が当該トラクタ1により作業が行われる作業領域において停止した場合、再開位置設定部52は、図11に示すように、走行経路P上であって、作業領域と非作業領域との境界に再開位置R1を設定することが可能である。制御部4は、再開位置設定部52により前記境界に再開位置R1が設定された場合、走行機体2を前記境界上の再開位置R1まで自律走行させた後、作業経路P1に沿ってトラクタ1に自律作業させることが可能である。
これにより、トラクタ1の逸脱に基づいてトラクタ1の停止制御が行われてから実際にトラクタ1が停止するまでの間に、トラクタ1が非作業領域と作業領域との境界を跨いで作業領域に入り込んだ場合、再開位置R1が両領域の境界に設定されるので、適切に作業が行われる。
また、本実施形態の自律走行システム99においては、再開位置設定部52は、トラクタ1が走行経路P上に位置するときに停止信号に基づいて制御部4により停止された場合、再開位置R1を設定しない。
これにより、その場で自律走行・自律作業を再開すれば良い場合には再開位置R1が設定されないので、処理を効率化することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記の実施形態では、トラクタ1の現在位置が再開位置R1に対して進行方向の後方の位置にあり、当該位置から再開位置R1に自動で位置合わせが行われる場合には、トラクタ1を当該位置合わせ用経路に沿って自律走行させながら作業機3で農作業を行わせるものとした。しかしながら、必ずしもこれに限るものではなく、トラクタ1を現在位置から再開位置R1まで位置合わせ用経路に沿って走行させる際に、農作業を行わせずに走行させる(空走させる)ものとしてもよい。
あるいは、トラクタ1の現在位置が再開位置R1に対して進行方向に対してどの方角の位置にあるかに関わらず、トラクタ1を現在位置から再開位置R1まで位置合わせ用経路に沿って走行させる際に、農作業を行わせながら走行させることとてもよい。その場合、例えば、作業機3が接地したことを条件にして、位置合わせ用経路作成判定部53による判定処理を開始することとしてもよい。
あるいは、上記に代えて、トラクタ1が所定時間以上停止したことを条件にして、位置合わせ用経路作成判定部53による判定処理を開始することとしてもよい。
上記の実施形態では、トラクタ1が非作業経路で逸脱した後に作業経路に入り込んで停止した場合に、トラクタ1が走行経路Pから逸脱する直前に走行していた非作業経路P2の下流端から始まる作業経路P1の上流端の位置を、再開位置R1として設定するものとした。しかしながら、再開位置R1は、作業経路P1上であって、作業領域と非作業領域との境界に設定されるものであればよく、例えばこれに代えて、未作業の(まだ農作業が施されていない)他の作業経路P1の上流端又は下流端に再開位置R1を設定するものとしてもよい。その場合、最終的に全ての作業経路P1,P1,・・・に対して農作業が施されるように、自律作業再開後の走行経路Pを再生成する(未作業の作業経路P1に対して作業を施す順序を適宜入れ換える)ものとしてもよい。
上記の実施形態では、第1範囲及び第2範囲は、何れも、再開位置R1を中心とした円形状の領域であるものとしたが、これに限るものではなく、例えばこれに代えて、第1範囲及び第2範囲を、再開位置R1を中心とした四角い形状の領域あるいは楕円形状の領域であるものとしてもよい。また、再開位置R1は、必ずしも第1範囲及び/又は第2範囲の中心に配置されている必要はなく、再開位置R1が第1範囲及び/又は第2範囲の既作業領域寄りに(既に農作業を施している側に偏って)配置されていてもよい。また、第1範囲及び/又は第2範囲の外周は必ずしも連続的である必要はなく、一部の箇所で不連続となっていてもよい。図12及び図13に示した例以外の、第1範囲及び第2範囲の設定例を図14に示す。図14中のハッチングは、第1範囲外かつ第2範囲内の領域を表しており、この範囲内にトラクタ1が配置されている場合に、自動で位置合わせを行うための位置合わせ用経路が作成される。
上記の実施形態では、逸脱判定部51、再開位置設定部52、位置合わせ用経路作成判定部53、及び位置合わせ用経路作成部54はトラクタ1に備えられるものとしたが、これらの構成部分がトラクタ1及び無線通信端末46の何れに備えられるかについてはこれに限定されるものではない。また、これ以外の構成部分についても、トラクタ1及び無線通信端末46の何れに備えられていてもよい。
無線通信端末46に相当する機能を有する装置(即ち、圃場の取得、作業領域の取得、走行経路・作業経路の取得、自動位置合わせ開始の指示、及び自律走行・自律作業再開の指示等を行うことが可能な操作装置)が、例えばトラクタ1に付随して走行する有人のトラクタ1の走行機体2に取外し不能に備えられていてもよい。この場合、無線通信端末46を省略することができる。
走行経路Pが、作業領域での自律作業を全て完了した後に、当該作業領域の周囲の非作業領域について自律作業を行う作業経路(例えば、非作業領域に沿って周回するような作業経路)を含んでも良い。この場合、上記のように枕地及び非耕作地として設定された領域においても最終的にはトラクタ1による自律作業が行われることになるが、トラクタ1が作業領域での自律作業を行っている段階では枕地及び非耕作地の領域で作業が行われないため、当該領域を非作業領域として把握することができる。
上記の実施形態では、作業車両は、ユーザが搭乗せずに自律走行するロボットトラクタ1であるものとした。しかしながら、これに代えて、ユーザが搭乗して作業を行う一般的なトラクタに本発明を適用し、当該トラクタが走行経路Pから逸脱した後に作業を再開させるときにだけ、この自律走行システム99を利用した自律走行(自動走行)を行うこととしてもよい。