JP7245497B2 - 環境浄化剤 - Google Patents

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特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの掲載日 2018年5月24日 ウェブサイトのアドレス https://doi.org/10.1002/anie.201804924
特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの掲載日 2018年6月4日 ウェブサイトのアドレス http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/index.html http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20180604_sci_1.pdf
本発明は、環境浄化剤等に関する。
近年、環境意識の高まりと共に、土壌汚染等の環境汚染問題に対する意識が高まり、環境汚染に関する法整備も進んできている。例えば、工場、発電所、焼却施設、ガソリンスタンド等の跡地では、ベンゼン等の炭化水素系汚染物質、ダイオキシン類等による土壌汚染が問題となることが多く、その対策が必要である。
土壌汚染対策としては、汚染した土壌を掘削して場外で処理する方法が採られることが多い。しかし、この方法には、土壌の掘削に多額の費用を要するという問題のみならず、環境負荷が大きいという問題、また近年は掘削した汚染土の処理施設が不足しているという問題等がある。
一方、バイオレメディエーションにより土壌浄化を行う方法が近年注目を集めている。この方法であれば、土壌の掘削及び搬出を要しない。しかし、バイオレメディエーションに使用する微生物は、遺伝子組換え生物であったり、特定の生物種であったりするので、その大量調製には多額の費用を要する可能性がある。また、遺伝子組換え生物を利用する場合は、その環境中への拡散を防ぐための処置が必要となる。
特開第2012-024009号公報 特開第2017-071589号公報
本発明は、土壌等の環境における汚染を、簡便且つ効率的に浄化することができる技術を提供することを課題とする。
細菌由来の酵素であるシトクロムP450は、真核生物由来のシトクロムP450に比べて高い触媒活性を持つことが知られている。細菌由来のシトクロムP450として、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来のシトクロムP450camや、バチルス属菌細菌の一種であるBacillus megaterium由来のシトクロムP450BM3等の、シトクロムP450モノオキシゲナーゼが知られている。これらの細菌由来のシトクロムP450は、脂肪酸等の基質を水酸化する高い触媒活性を備えている。また、膜結合型タンパクでないため、取得及び取扱が容易である。こうした理由から細菌由来シトクロムP450モノオキシゲナーゼは、バイオ触媒として適していると考えられる。
そこで、本発明者は、シトクロムP450モノオキシゲナーゼを利用して環境浄化を行うことに着目した。そして、炭化水素、ダイオキシン類等の汚染物質をシトクロムP450モノオキシゲナーゼにより水酸化する点に着目した。汚染物質が水酸化されれば、分解性の向上、水溶性の向上、毒性の低減等の環境浄化へと繋がる。
ただ、野生型シトクロムP450モノオキシゲナーゼは、環境汚染等で問題となる炭化水素、ダイオキシン類等を水酸化するのにあたっては必ずしも触媒活性が高いわけでない。このため、種々の変異型シトクロムP450が提案されているものの、遺伝子変異の導入は煩雑である。これらの問題を解決すべく、本発明者らは、高い触媒活性を呈しない炭化水素に対してシトクロムP450モノオキシゲナーゼを誤作動させるように擬似基質(デコイ基質)を取り込ませることで、炭化水素の水酸化反応を高効率に触媒することを既に報告している(特許文献1及び2)。
しかし、この技術は、水酸化反応をインビトロで行うので、シトクロムP450モノオキシゲナーゼの酵素活性を持続させるためにNADPHを添加する必要があった。このため、コストの観点から、環境浄化には適さないと考えられた。
本発明者はこのような状況下で鋭意研究を進めた結果、一般式(1)で表される化合物が細胞に取り込まれ、シトクロムP450モノオキシゲナーゼのデコイ基質として機能することを見出した。そして、土壌等の環境中にはシトクロムP450を発現する細菌が通常は多く存在するところ、一般式(1)で表される化合物をこのような環境に接触させるのみで、環境中の汚染物質が水酸化されることを見出した。水酸化により、環境汚染物質の分解、環境汚染物質の水溶、毒性の低減等の環境浄化に繋がる。本発明者はこれらの知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
項1. 一般式(1):
Figure 0007245497000001
[式中、R1は置換されていてもよい炭化水素基を示す。R2は単結合又はリンカーを示す。R3は単結合又は式(2):
Figure 0007245497000002
(式中、窒素原子は、R2に結合する。)
で表される基を示す。R4及びR5は同一又は異なったアミノ酸側鎖を示す。R6は水素原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシ基、又はカルボキシ誘導体基を示す。但し、R5及びR6は互いに結合してラクトン環を形成していてもよい。nは0又は1以上の整数を示す。]
で表される化合物、及び前記化合物を含有する細胞からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、環境浄化剤。
項2. 前記R6がカルボキシ基である、項1に記載の環境浄化剤。
項3. 前記アミノ酸側鎖が、置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基、及びヘテロアラルキル基からなる群より選択される少なくとも1種である、項1又は2に記載の環境浄化剤。
項4. 前記R1がアルキルアラルキル基であり、前記R2及びR3が単結合であり、且つnが0である、項1~3のいずれかに記載の環境浄化剤。
項5. 前記R1がアルキル基であり、前記R2が単結合であり、前記R3が前記式(2)で表される基であり、且つnが0である、項1~3のいずれかに記載の環境浄化剤。
項6. 前記化合物が、式(1D):
Figure 0007245497000003
で表される化合物である、項5に記載の環境浄化剤。
項7. 前記R5及び前記R6がラクトン環を形成していない、項1~5のいずれかに記載の環境浄化剤。
項8. 前記R5及び前記R6が互いに結合してラクトン環を形成している、項1~5のいずれかに記載の環境浄化剤。
項9. 前記化合物がクオルモンである、項8に記載の環境浄化剤。
項10. 前記細胞がシトクロムP450モノオキシゲナーゼを有する細胞である、項1~9のいずれかに記載の環境浄化剤。
項11. 前記細胞が、前記化合物が外来的に導入された細胞である、項1~10のいずれかに記載の環境浄化剤。
項12. 浄化対象である前記環境が、シトクロムP450を有する微生物が存在する環境からなる群より選択される少なくとも1種である、項1~11のいずれかに記載の環境浄化剤。
項13. 環境汚染物質の変換に用いるための、項1~12のいずれかに記載の環境浄化剤。
項14. 前記環境汚染物質が、炭化水素系汚染物質、及びダイオキシン類汚染物質からなる群より選択される少なくとも1種である、項1~13のいずれかに記載の環境浄化剤。
項15. 項1~14のいずれかに記載の環境浄化剤を浄化対象の環境に接触させる工程を含む、環境浄化方法。
本発明によれば、土壌等の環境における汚染を、簡便且つ効率的に浄化することができる。
実施例4の実験操作の概略図(左)および反応溶液の写真(右)を示す。 バーミキュライト中のフェノール量の検量線(実施例4)を示す。 C7-L-Pro-L-Pheを用いたフェノールの経時生成量(実施例4)を示す。 巨大菌を用いたモデル土壌中のベンゼンの水酸化反応後のGCクロマトグラム(実施例5)を示す。
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
本発明は、その一部の態様において、一般式(1)で表される化合物、及び前記化合物を含有する細胞からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、環境浄化剤(本明細書において、「本発明の環境浄化剤」と示すこともある。)、並びに本発明の環境浄化剤を浄化対象の環境に接触させる工程を含む、環境浄化方法(本明細書において、「本発明の環境浄化方法」と示すこともある。)に係る。以下に、これらについて説明する。
1.化合物
一般式(1):
Figure 0007245497000004
で表される化合物について説明する。
<1-1.R1
R1は置換されていてもよい炭化水素基を示す。
R1で示される炭化水素基としては、特に制限されず、例えばアルキル基、アリール基等、さらにはこれらが任意に組み合わされてなる基(例えば、アラルキル基、アルキルアリール基、アルキルアラルキル基)等が挙げられる。
R1で示されるアルキル基には、直鎖状、分岐鎖状、又は環状(好ましくは直鎖状又は分枝鎖状、より好ましくは直鎖状)のいずれのものも包含される。該アルキル基の炭素数は、特に制限されず、例えば1~15、好ましくは5~14、より好ましくは6~13、さらに好ましくは6~12、よりさらに好ましくは6~11、よりさらに好ましくは7~11、よりさらに好ましくは7~10、よりさらに好ましくは7~9である。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、3-メチルペンチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。
R1で示されるアリール基は、特に制限されないが、炭素数が6~12のものが好ましく、6~12のものがより好ましく、6~8のものがさらに好ましい。該アリール基は、単環式又は多環式(例えば2環式、3環式等)のいずれでも有り得るが、好ましくは単環式である。該アリール基としては、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、アントラニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオレニル基、フェナントリル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基が挙げられる。
R1で示されるアラルキル基は、特に制限されないが、例えば直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~6(好ましくは1~4、より好ましくは1~3、さらに好ましくは2)のアルキル基の水素原子(例えば1~3つ、好ましくは1つの水素原子)が上記アリール基に置換されてなるアラルキル基等が挙げられる。
R1で示されるアルキルアリール基は、特に制限されないが、例えば上記アリール基の水素原子(例えば1~3つ、好ましくは1つの水素原子)が、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~6(好ましくは2~6、より好ましくは3~6、さらに好ましくは3~5、よりさらに好ましくは4)のアルキル基に置換されてなるアルキルアリール基等が挙げられる。
R1で示されるアルキルアラルキル基は、特に制限されないが、例えば上記アラルキル基の芳香環上の水素原子(例えば1~3つ、好ましくは1つの水素原子)が、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~6(好ましくは2~6、より好ましくは3~6、さらに好ましくは3~5、よりさらに好ましくは4)のアルキル基に置換されてなるアルキルアラルキル基等が挙げられる。
R1で示される炭化水素基が有していてもよい置換基としては、特に制限されない。該置換の態様としては、炭化水素基が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子、炭素原子、セレン原子、テルル原子等へ置換する態様が挙げられる。より具体的には、該置換基としては、例えばオキソ基等が挙げられる。置換基の数は、例えば0~3、好ましくは0~1、より好ましくは0である。
R1として、好ましくはアルキル基、アルキルアリール基、アルキルアラルキル基等が挙げられ、より好ましくはアルキル基、アルキルアラルキル基等が挙げられ、さらに好ましくはアルキルアラルキル基が挙げられる。
<1-2.R2
R2は単結合又はリンカーを示す。
R2で示されるリンカーは、主鎖上にヘテロ原子を含む比較的短い二価の基である限り特に制限されない。主鎖上のヘテロ原子としては、例えば酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。リンカーの主鎖を構成する原子数は、例えば1~3である。リンカーとしては、例えば-O-、-C(=O)-、-S(=O)-、-S(=O)2-、-NR-(Rは水素原子又はアルキル基(好ましくは、炭素数1~4のアルキル基)を示す。)等、さらにはこれらが任意に連結してなる二価の基(例えば、-O-C(=O)-、-O-S(=O)-、-O-S(=O)2-、-C(=O)-NR-等)が挙げられる。
R2として、好ましくは単結合が挙げられる。
<1-3.R3
R3は単結合又は式(2):
Figure 0007245497000005
(式中、窒素原子は、R2に結合する。)
で表される基を示す。
R3として、好ましくは式(2)で表される基が挙げられる。
なお、R2及びR3が共に単結合の場合は、R2とR3は一体となって単結合を示す。
<1-4.R1-R2-R3->
従来技術(特許文献2)では、R1-R2-R3-はアルキル基であるとされていたが、本発明者は、予想外にもアルキル基以外の基であっても、高い活性を有することを見出した。この観点からは、R1-R2-R3-としては、アルキル基以外の基が好ましい。中でも、R1がアルキルアラルキル基であること(さらにはR2及びR3が単結合であること)、或いはR3が前記式(2)で表される基であること(さらにはR1がアルキル基であり、R2が単結合であること)が好ましい。
<1-5.R4、R5
R4及びR5は同一又は異なってアミノ酸側鎖を示す。また、R4が複数存在する場合、R4は各出現において独立してアミノ酸側鎖を示す。
R4又はR5で示されるアミノ酸側鎖は、アミノ酸の側鎖として採用することができる一価の基である限り、特に制限されない。なお、ここでいう「アミノ酸」には、天然のアミノ酸の他にも、人工アミノ酸も包含される。アミノ酸側鎖としては、具体的には、例えば置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基、ヘテロアラルキル基等が挙げられる。
R4又はR5で示されるアルキル基には、直鎖状、分岐鎖状、又は環状(好ましくは直鎖状又は分枝鎖状、より好ましくは分枝鎖状)のいずれのものも包含される。該アルキル基の炭素数は、特に制限されず、例えば1~8、好ましくは2~6、より好ましくは3~5である。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、3-メチルペンチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等が挙げられる。
R4又はR5で示されるアルケニル基としては、特に制限はなく、直鎖状、分岐鎖状、又は環状(好ましくは直鎖状又は分枝鎖状)の炭素数2~8、好ましくは2~6、より好ましくは3~5のアルケニル基が挙げられる。このようなアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。
R4又はR5で示されるアリール基は、特に制限されないが、炭素数が6~12のものが好ましく、6~12のものがより好ましく、6~8のものがさらに好ましい。該アリール基は、単環式又は多環式(例えば2環式、3環式等)のいずれでも有り得るが、好ましくは単環式である。該アリール基としては、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、アントラニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオレニル基、フェナントリル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基が挙げられる。
R4又はR5で示されるアラルキル基は、特に制限されないが、例えば直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~6(好ましくは1~4、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2)のアルキル基の水素原子(例えば1~3つ、好ましくは1つの水素原子、より好ましくは末端の水素原子)が上記アリール基に置換されてなるアラルキル基等が挙げられる。
R4又はR5で示されるヘテロアリール基は、特に制限されないが、好ましくは環構成原子数が3~20、好ましくは3~12、より好ましくは7~11のヘテロアリール基である。該へテロアリール基としては、具体的には、例えばピロリル基、ピリジル基、ピロリジル基、ピペリジル基、イミダゾリル基、イミダゾイル基、ピラゾリル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、ピペラジル基、トリアジニル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、モルホリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フラニル基、チオフェニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾイミダゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基、プリニル基、プテリジル基、ベンゾフラニル基、クマリル基、クロモニル基、ベンゾチオフェニル基等が挙げられ、好ましくはインドリル基が挙げられる。
R4又はR5で示されるヘテロアラルキル基は、特に制限されないが、例えば直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~6(好ましくは1~4、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2)のアルキル基の水素原子(例えば1~3つ、好ましくは1つの水素原子、より好ましくは末端の水素原子)が上記へテロアリール基に置換されてなるヘテロアラルキル基等が挙げられる。
R4又はR5で示されるアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基、ヘテロアラルキル基が有していてもよい置換基としては、特に制限されず、例えばアミノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、水酸基、アルキルチオ基等が挙げられ、好ましくは水酸基、アルキルチオ基等があげられる。置換基の数は、特に制限されないが、例えば0~3、好ましくは0~1である。
アミノ酸側鎖として、好ましくはアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン等の疎水性アミノ酸の側鎖が挙げられる。これらの中でも、より好ましくはロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン等の側鎖が挙げられ、さらに好ましくはロイシン、フェニルアラニン等の側鎖が挙げられる。また、従来技術(特許文献2)では、疎水性アミノ酸の側鎖が好ましいとされていたが、本発明者は、予想外にも親水性アミノ酸側鎖も高い活性を有することを見出した。この観点から、アミノ酸側鎖としては、親水性アミノ酸の側鎖も好ましい。親水性アミノ酸の側鎖としては、好ましくはセリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン等の側鎖が挙げられ、より好ましくはセリン、トレオニン等の側鎖が挙げられ、さらに好ましくはセリンの側鎖が挙げられる。
<1-6.R6
R6は水素原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシ基、又はカルボキシ誘導体基を示す。
カルボキシル誘導体基としては、例えば、炭素数1~4程度のアルキルエステル、アミド及び無水物が挙げられる。また、カルボキシル誘導体基としては、カルボキシル基に1又は2以上アミノ酸を導入したアミノアシル基が挙げられる。
R6として、好ましくはカルボキシ基が挙げられる。
<1-7.R5、R6
R5及びR6は互いに結合してラクトン環を形成していてもよい。
ラクトン環は、例えば4~6員環、好ましくは5~6員環、より好ましくは5員環である。
ラクトン環を形成するとは、一般式(1)中の、下記式:
Figure 0007245497000006
で表される部分構造が、例えば以下の式:
Figure 0007245497000007
で表される部分構造となっていることを意味する。
<1-8.n>
nは0又は1以上の整数を示す。
nは、好ましくは0~2、より好ましくは0~1、さらに好ましくは0である。
<1-9.好ましい一般式(1)化合物>
本発明の一態様において、一般式(1)で表される化合物としては、好ましくは一般式(1A):
Figure 0007245497000008
[式中、R1、R2、R3、R5、及びR6は前記に同じである。]
で表される化合物が挙げられ、より好ましくは一般式(1B):
Figure 0007245497000009
[式中、R1、R2、R3、及びR5は前記に同じである。]
で表される化合物が挙げられ、より好ましくは一般式(1C):
Figure 0007245497000010
[式中、R1、R3、及びR5は前記に同じである。]
で表される化合物が挙げられる。
また、細菌等が合成するクオルモンと同様の構造であり、後述の本発明の用途において、内在性のクオルモン又はクオルモンのラクトン環が加水分解されたものをデコイ基質として用いることができるという観点から、一般式(1)において、好ましくはR5及びR6は互いに結合して5員環のラクトン環を形成し、R2及びR3が単結合であり、且つn=0であること、或いはR5がセリン側鎖であり、R6はカルボキシ基であり、R2及びR3が単結合であり、且つn=0であることが好ましい。これらの場合において、R1は、好ましくは1又は2つ(好ましくは1つ)のオキソ基で置換されていてもよいアルキル基である。
一般式(1)に包含されるクオルモンとしては、例えば以下に列挙するものが挙げられる。
Figure 0007245497000011
<1-10.異性体、塩、水和物、溶媒和物>
一般式(1)で表される化合物には、立体異性体及び光学異性体が含まれ、これらは特に限定されるものではない。
一般式(1)で表される化合物にはその塩の形態も包含される。塩は特に制限されるものではない。該塩としては、酸性塩、塩基性塩のいずれも採用することができる。酸性塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩; 酢酸塩、プロピオン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられ、塩基性塩の例としては、ナトリウム塩、及びカリウム塩等のアルカリ金属塩; 並びにカルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩; アンモニアとの塩; モルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、モノ(ヒドロキシアルキル)アミン、ジ(ヒドロキシアルキル)アミン、トリ(ヒドロキシアルキル)アミン等の有機アミンとの塩等が挙げられる。
一般式(1)で表される化合物には水和物及び溶媒和物の形態も包含される。溶媒和物を形成する溶媒としては、例えば、有機溶媒(例えばエタノール、グリセロール、酢酸等)等が挙げられる。
2.製造方法
一般式(1)で表される化合物は、様々な方法で合成することができる。例えば、一般式(1)においてnが0である化合物(一般式(1A)で表される化合物)は、以下の反応式:
Figure 0007245497000012
[式中、R1、R2、R3、R5、及びR6は前記に同じである。]
に従って又は準じて合成することができる。また、一般式(1)においてnが1以上である化合物についても、これに準じた方法で合成することができる。
本反応では、一般式(1a)で表される化合物と一般式(1b)で表される化合物とを反応させることで、一般式(1A)で表される化合物を得ることができる。
一般式(1b)で表される化合物の使用量は、収率等の観点から、一般式(1a)で表される化合物1モルに対して、通常、0.3~3モルが好ましく、0.5~2モルがより好ましく、0.8~1.2モルがさらに好ましい。
本反応は、縮合剤の存在下で行うことが好ましい。縮合剤としては、特に制限されるものではなく、例えば公知の縮合剤を広く使用することができる。縮合剤としては、具体的には1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等が挙げられ、好ましくはEDCが挙げられる。縮合剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
縮合剤の使用量は、触媒の種類によっても異なるが、一例として、一般式(1a)で表される化合物1モルに対して、0.5~3モルが好ましく、1~2モルがより好ましい。
本反応は、塩基触媒の存在下で行うことが好ましい。塩基触媒としては、特に制限されるものではなく、例えば公知の塩基触媒を広く使用することができる。塩基触媒としては、具体的にはジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)等が挙げられ、好ましくはDIPEAが挙げられる。塩基触媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
塩基触媒の使用量は、触媒の種類によっても異なるが、一例として、一般式(1a)で表される化合物1モルに対して、0.8~4モルが好ましく、1.2~2モルがより好ましい。
本反応は、その他にも、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール等の各種添加剤の存在下で行うことが好ましい。
本反応は、通常、反応溶媒の存在下で行われる。反応溶媒としては、特に制限されないが、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、アセトン、トルエン等が挙げられ、好ましくはN,N-ジメチルホルムアミドが挙げられる。溶媒は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。
反応温度は、加熱下、常温下及び冷却下のいずれでも行うことができ、通常、0~50℃(特に10~30℃)で行うことが好ましい。反応時間は特に制限されず、通常、1時間~12時間、特に4時間~8時間とすることができる。
反応の進行は、クロマトグラフィーのような通常の方法で追跡することができる。反応終了後、溶媒を留去し、生成物はクロマトグラフィー法、再結晶法等の通常の方法で単離精製することができる。また、生成物の構造は、元素分析、MS(FD-MS)分析、IR分析、1H-NMR、13C-NMR等により同定することができる。
なお、上記反応においては、一般式(1a)で表される化合物及び/又は一般式(1b)で表される化合物中に上記反応を阻害する官能基がある場合には、これらに代えて、これらの化合物中の官能基が保護された化合物を用いることもできる。この場合、上記反応終了後に、必要に応じて、脱保護処理が行われる。
3.用途
一般式(1)で表される化合物は、シトクロムP450モノオキシゲナーゼデコイ基質として機能する。このメカニズムは、限定的な解釈を望むものではないが、次のように考えられる。シトクロムP450モノオキシゲナーゼ(以下、単に、P450という。)の活性中心には、基質が結合する基質結合部位が存在する。基質が基質結合部位に結合すると、活性中心に存在する水分子が活性中心から押し出される。以下、この状態を活性化スイッチが入る、と呼ぶ。活性中心は、その後、電子や酸素分子等の作用を受けた後に、基質の水酸化を触媒する。したがって、活性化スイッチが入らないと、P450の触媒反応は開始しないと考えられている。なお、野生型のP450の基質としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸が知られている。これらの基質は、概して、基質結合部位に結合する末端構造と、アルキル鎖とを持つ。一般式(1)で表される化合物においては、P450の基質結合部位に結合可能な部位(-C(=O)-NH-CH2(-R5)-R6)と、基質のアルキル鎖に相当する部位(R1-R2-R3-)とを備える。一般式(1)で表される化合物は、これら2つの部位を備えるために、基質のかわりにP450の基質結合部位に結合できる。一方で、一般式(1)で表される化合物は、活性中心からは十分な距離を保つため、活性スイッチは入らない。炭化水素系基質、ダイオキシン類基質等の基質が、一般式(1)で表される化合物と活性中心の間に入り込むと、P450の構造変化により、活性中心近傍に存在する水分子が活性中心から押し出され、活性化スイッチが入る。これにより該基質が水酸化されると考えられる。
一般式(1)で表される化合物は、環境中のシトクロムP450発現細胞内に入ってデコイ基質として機能し、環境汚染物質をより分解性の高い物質に変換(水酸化)すると考えられる。これにより、環境汚染物質の分解、環境汚染物質の水溶、毒性の低減等の環境浄化に繋がる。このため、一般式(1)で表される化合物、及び前記化合物を含有する細胞からなる群より選択される少なくとも1種は、環境浄化剤の有効成分として使用できる。
細胞は、一般式(1)で表される化合物を含有し得る細胞である限り、特に制限されない。細胞としては、例えば大腸菌、緑膿菌等のグラム陰性菌;バチルス属菌、ブレビバチルス属菌等のグラム陽性菌(特に、グラム陽性内生胞子形成桿菌)等の原核細胞(好ましくは、グラム陽性菌)や、酵母、植物細胞、動物細胞等の真核細胞等を利用することができる。
一般式(1)で表される化合物を含有する細胞を得る方法は、特に制限されないが、一例として、一般式(1)で表される化合物を細胞懸濁液に添加することにより細胞内に導入してもよい。この際、細胞内で用いる一般式(1)で表される化合物の細胞膜透過性が低い場合(例えば、R4及び/又はR5が親水性アミノ酸側鎖である場合等)は、公知の方法に従って有機溶媒等で細胞を処理することにより細胞膜透過性を高めてから一般式(1)で表される化合物を導入してもよいし、一般式(1)で表される化合物の前駆体(例えば、細胞内で用いようとする一般式(1)で表される化合物においてR5が親水性アミノ酸側鎖である場合は、R5及びR6が互いに結合してラクタム環を形成している化合物)を細胞内に導入してから、細胞内で該前駆体から(例えば、ラクタム環の加水分解等により)一般式(1)で表される化合物を生成させてもよい。後者の場合は、前駆体からの一般式(1)で表される化合物の生成を促進するために、例えばAHL-ラクトナーゼ等の加水分解酵素等を細胞内で発現させておくことが好ましい。
また、用いようとする一般式(1)で表される化合物が細胞内在性の化合物(例えば、クオルモン等)である場合は、該クオルモンを内在的に含む細胞自体を用いるか、該クオルモンを分泌する細胞と共培養させるか、或いはクオルモンの生合成遺伝子とAHL-ラクトナーゼ等の加水分解酵素遺伝子が導入された細胞を用いることにより、一般式(1)で表される化合物を含有する細胞を得ることができる。
細胞は、シトクロムP450モノオキシゲナーゼを内在する細胞であることが好ましい。このような細胞を使用することにより、本発明の浄化効果を発揮することができる。なお、本発明の一態様において、細胞は、一般式(1)で表される化合物が外来的に導入された細胞である。
本発明の浄化効果が発揮される態様としては、例えば環境中に存在する野生細菌(遺伝子組換えでない)を利用して浄化する態様が挙げられる。環境中にP450を有する細菌があること分かれば、この態様を利用することができる。なお、環境中にP450を有する細菌があるか否かは、土壌微生物のメタゲノム解析、土壌サンプルの一部を用いて実際に試験を行う等によって、判定することができる。また、上記態様の別の例として、組換え微生物の使用が可能な環境であれば、P450を導入した微生物と一般式(1)で表される化合物を当該環境に散布することで浄化する態様が挙げられる。
P450としては、公知のシトクロムP450モノオキシゲナーゼを包含できる。P450としては、好ましくは細菌由来のP450が挙げられ、より好ましくは緑膿菌由来のP450やバチルス属由来のP450が挙げられる。こうしたP450としては、例えば、シトクロムP450BM3(CYP102A1)等のCYP102ファミリー酵素、、その他、脂肪酸を対象とするP450(例えばCYP153A1等のCYP153ファミリー酵素等)等が挙げられる。
P450には、アミノ酸配列が既知のP450とアミノ酸配列の同一性が40%以上のP450も包含される。例えば、シトクロムP450BM3のアミノ酸配列と40%以上の同一性を持つP450(シトクロムP450BM3のファミリー酵素)や、シトクロムP450BM3のアミノ酸配列と55%以上の同一性を持つP450(シトクロムP450BM3のサブファミリー(CYP102A等)の酵素)が好ましく挙げられる。或いは、シトクロムP450camのアミノ酸配列と40%以上の同一性を持つP450(シトクロムP450camのファミリー酵素)や、シトクロムP450camのアミノ酸配列と55%以上の同一性を持つP450(シトクロムP450camのサブファミリー酵素)が好ましく挙げられる。なお、シトクロムP450BM3のファミリー酵素またはサブファミリー酵素は脂肪酸を水酸化可能であるのが好ましく、シトクロムP450camのファミリー酵素またはサブファミリー酵素はカンファー(C10H16O)を水酸化可能であるのが好ましい。
ここで、アミノ酸配列の「同一性」とは、2以上の対比可能なアミノ酸配列の、お互いに対するアミノ酸配列の一致の程度をいう。従って、ある2つのアミノ酸配列の一致性が高いほど、それらの配列の同一性又は類似性は高い。アミノ酸配列の同一性のレベルは、例えば、配列分析用ツールであるFASTAを用い、デフォルトパラメータを用いて決定される。若しくは、Karlin及びAltschulによるアルゴリズムBLAST(KarlinS, Altschul SF.“Methods for assessing the statistical significance of molecular sequence features by using general scoringschemes”Proc Natl Acad Sci USA.87:2264-2268(1990)、KarlinS,Altschul SF.“Applications and statistics for multiple high-scoring segments in molecular sequences.”Proc Natl Acad Sci USA.90:5873-7(1993))を用いて決定できる。このようなBLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている。これらの解析方法の具体的な手法は公知であり、National Center of Biotechnology Information(NCBI)のウェエブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を参照すればよい。また、塩基配列の『同一性』も上記に準じて定義される。
こうしたシトクロムP450BM3のアミノ酸配列は、例えばJ.Biol.chem.264(19),10987-10998(1989)や、NCBIのベータベース(National Center for Biotechnology Information http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/P14779.2)に開示されている。また、シトクロムP450camのアミノ酸もまた、NCBIデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/YP_714029)に開示されている。
P450は、野生型のほか変異型であってもよい。変異型としては、例えば、細菌由来のP450の変異型が好ましく挙げられる。例えば、シトクロムP450BM3やシトクロムP450camの変異型が挙げられる。これらの変異型の詳細及び取得方法については、例えば、特表第2000-508163号公報、特表第2003-517815号公報、特表第2003-521889号公報、C. J. C. Whitehouse, S. G. Bell, L. L. Wong, Chem. Soc. Rev. 2012, 41, 1218-1260(以上、シトクロムP450BM3の変異型全般)、F. Xu, S. G. Bell, J. Lednik, A. Insley, Z. H. Rao, L. L. Wong, Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 4029-4032、H. Joo, Z. L. Lin, F. H. Arnold, Nature 1999, 399, 670-673(以上、シトクロムP450camの変異型)等に開示されている。
浄化対象である環境としては、シトクロムP450を有する細胞が生息可能な環境である限り特に制限されず、例えば土壌、湖沼、海、地下水、下水、貯水池、汚泥、河川、工業廃水等が挙げられる。通常、これらの環境中には微生物が存在し、その中にシトクロムP450モノオキシゲナーゼを発現する微生物も存在する。該環境は、シトクロムP450を有する微生物が存在する環境であることが好ましい。環境中に存在するこのような微生物としては、例えば巨大菌、納豆菌、枯草菌等のバチルス属細菌等が挙げられる。
一般式(1)で表される化合物は、より具体的には、環境汚染物質の変換(水酸化)のために用いられる。このため、本発明の環境浄化剤は、環境汚染物質の変換のために用いることができる。環境汚染物質としては、デコイ基質の存在下でシトクロムP450によって変換(水酸化)され得る物質である限り、特に制限されない。環境汚染物質として、例えば、ベンゼン等の揮発性有機化合物に代表される有機化合物、ダイオキシン類、農薬、鉱油、重油等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは炭化水素系汚染物質、ダイオキシン類汚染物質等が挙げられる。なお、本明細書において、環境汚染物質の水酸化とは、環境汚染物質のC-H結合を酸化反応により酸化し、結果として炭素原子に水酸基を導入することを意味している。
炭化水素系汚染物質としては、特に制限されず、例えば芳香族化合物、アルカン、アルケン、シクロアルカン、シクロアルケン等が挙げられる。
芳香族化合物としては、一置換されてもよいし多置換されていてもよい。置換基としては、炭素数1~4のアルキル、炭素数2~4のアルケニル、水酸基、ハロゲン原子等が挙げられる。アルキル置換基又はアルケニル置換基は、ケト基又はアルデヒド基を有していてもよい。芳香族化合物は、単核であってもよい多核であってもよい。好ましくは単核又は2核である。また、芳香族化合物は、2以上の核が縮合していてもよいし、非芳香族環と縮合していてもよい。こうした芳香族化合物としては、単核又は二核の芳香族化合物が挙げられ、より具体的には、置換されていてもよいベンゼン、ナフタレン、インデン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ベンゼンが挙げられる。
アルカンとしては、例えば、炭素数1~15程度の直鎖状又は分岐鎖状のアルカンが挙げられる。例えば、メタン、エタン、n-プロパン、n-ブタン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン及びn-ドデカン等並びにこれらの2以上の分岐を有する分岐鎖体が挙げられる。
アルケンとしては、上記したアルカンにおいて1又は2以上の不飽和結合を備えるものが挙げられる。例えば、1不飽和を備えるアルケンが挙げられる。
シクロアルカン及びシクロアルケンとしては、置換されていてもよい、炭素数4~8個の炭素原子からなるシクロアルカン及びシクロアルケンが挙げられる。例えば、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘプタン、シクロヘプテン等が挙げられる。シクロアルカン及びシクロアルケンは、1又は2以上の置換基を有していてもよく、例えば、1~5個以下の置換基を有していてもよい。置換基としては、既述の置換を適用できる。シクロアルカン及びシクロアルケンとしては、無置換又は1~3個程度の置換基を備えるシクロヘキサン、シクロヘキセン等が挙げられる。
ダイオキシン類汚染物質としては、例えば、ハロゲン化ジベンゾジオキシン類やハロゲン化ジベンゾフラン類、PCB類(特に、オルト位以外に塩素原子が置換したコプラナーPCB類)等が挙げられる。
ハロゲン化ジベンゾジオキシン類の例としては、2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-P-ジオキシン、1,2,3,7,8-ペンタクロロジベンゾ-P-ジオキシン、1,2,3,4,7,8-ヘキサクロロジベンゾ-P-ジオキシン、1,2,3,4,6,7,8-ヘプタクロロジベンゾ-P-ジオキシン、1,2,3,4,6,7,8,9-オクタクロロジベンゾ-P-ジオキシン等が挙げられる。
ハロゲン化ジベンゾフラン類の例としては、2,3,7,8-テトラクロロジベンゾフラン、1,2,3,7,8-ペンタクロロジベンゾフラン、1,2,3,4,7,8-ヘキサクロロジベンゾフラン、1,2,3,4,6,7,8-ヘプタクロロジベンゾフラン、1,2,3,4,6,7,8,9-オクタクロロジベンゾフラン等が挙げられる。
PCB類(特に、オルト位以外に塩素原子が置換したコプラナーPCB類)の例としては、3,3’,4,4’,5-テトラクロロビフェニル、3,3’,4,4’,5-ペンタクロロビフェニル、3,3’,4,4’,5,5’-ヘキサクロロビフェニル等が挙げられる。
本発明の環境浄化剤は、有効成分以外の他の成分を含有し得る。他の成分としては、例えば担体、固着剤、分散剤、補助剤等が挙げられる。担体としては、例えば、タルク、ベントナイト、クレー、カオリン、ケイソウ土、ホワイトカーボン、バーミキュライト、ケイ砂等の固体担体;水溶性高分子化合物(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸等)、水、植物油、液体動物油等の液体担体等が挙げられる。固着剤としては、例えば、カゼイン、ゼラチン、アラビアゴム、アルギン酸等が挙げられる。分散剤としては、例えば、アルコール硫酸エステル類、ポリオキシエチレングリコールエーテル等が挙げられる。補助剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、デンプン、乳糖等が挙げられる。上記担体、固着剤、分散剤および補助剤は、それぞれの目的に応じて、それぞれ単独でまたは適宜組合せて使用することができる。
本発明の環境浄化剤における有効成分の含有量は、特に制限されず、例えば0.001~100質量%である。
本発明の環境浄化剤の剤形は、特に制限されない。例えば粒剤、粉剤、粉粒剤、粉末、水和剤、乳剤、液剤、油剤、エアゾル、ペースト剤、マイクロカプセル剤、パック剤等が挙げられる。
本発明の環境浄化剤は、浄化対象の環境に接触させることにより、使用することができる。接触の方法は、環境の種類に応じて適宜選択することができる。例えば土壌浄化に使用する場合は、例えば土壌に散布、混和、灌注する方法等が挙げられる。接触後、一定時間放置することにより、環境汚染物質のより分解性の高い物質への変換(水酸化)が起こり、環境浄化が達成される。
使用方法のより具体的な態様については以下の通りである。
環境浄化剤の散布方法としては、例えば、一般式(1)で表される化合物を汚染環境に散布して、汚染環境に存在するシトクロム P450 に取り込ませる方法、一般式(1)で表される化合物を取り込んだ細胞を汚染土壌に散布する方法、一般式(1)で表される化合物と P450 を有する細胞を別々に散布する方法等が挙げられる。
環境浄化剤の作用方法としては、例えば、汚染環境に散布して、浸透作用により汚染環境に接触させる方法、汚染環境と浄化剤を撹拌して接触させる方法等が挙げられる。
環境浄化剤の作用場所としては、例えば、汚染環境現場、汚染環境(土壌、液体)を回収して持ち帰った先が挙げられる。
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
合成例1.ノナノイル-L-アラニン(C9-L-Ala)
<アミノ酸のエステル保護>
Figure 0007245497000013
ナス型フラスコにL-アラニン 1.69 g (19 mmol, 1.0 eq)を量り取り、メタノール 19 mLを加えて溶解させた。溶液を-20°C(ice/NaCl)に冷却し、塩化チオニル 1.45 mL (2.37 g, 20 mmol, 1.05 eq)を滴下した。溶液を0°Cで1時間撹拌した後、室温下で16時間撹拌し、溶媒をエバポレーターにより留去した。得られた白色固体をジエチルエーテルで洗い、真空乾燥して白色固体 2.32 gを得た(収率:88%)。
<カルボン酸とアミノ酸の縮合>
Figure 0007245497000014
ナス型フラスコにノナン酸949 mg (6 mmol), L-アラニンメチルエステル塩酸塩 838 mg (6 mmol), 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)1.44 mg (7.5 mmol), 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール1水和物(HOBt・H2O)1.15 g (0.75 mmol)を量り取り、アルゴン雰囲気下で脱水ジメチルホルムアミド 30 mLを加えた。次いで、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)1.29 g (10 mmol)を加え、室温下で6時間撹拌した。反応溶液に20 mL程度のイオン交換水を加え、酢酸エチルで3回抽出し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムを加えて10分間乾燥し、ろ過後、溶媒をエバポレーターにより留去した。ヘキサン:酢酸エチル = 4:1を展開溶媒として用いて、シリカゲルカラムで精製した。対応するフラクションを集めて溶媒を留去し、真空乾燥して白色固体 1.01 gを得た(収率: 69%)。
<脱メチル化>
Figure 0007245497000015
ナス型フラスコにC9-L-Ala-Me 851 mg (3.5 mmol) を量り取り、1 M LiOH水溶液/THF = 4:1を加え、60°Cで3時間撹拌した。溶液を室温まで冷却した後、2 M塩酸を加えてpHを1~2にし、Et2Oで3回抽出した。抽出した有機相を合わせ、硫酸マグネシウムを加えて30分間乾燥し、ろ過後、溶媒をエバポレーターにより留去した。ヘキサン‐酢酸エチルから再結晶し、真空乾燥して白色結晶658 mgを得た(収率:82%)。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.44 (1H, br), 8.06 (1H, d, J = 7.3 Hz), 4.17 (1H, quin), 2.08 (2H, t, J = 7.6 Hz), 1.47 (2H, s), 1.27-1.23 (13H, m), 0.85 (3H, t, J= 6.6 Hz). ESI-MS: m/z 252.16 ([M+Na]+), 481.34 ([2M+Na]+), 503.32 ([2M-H+2Na]+), 710.49 ([3M+Na]+), 732.50 ([3M-H+2Na]+)。
合成例2.オクタノイル-L-フェニルアラニン(C8-L-Phe)
Figure 0007245497000016
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.66 (1H, s), 8.11 (1H, d, J = 8.3 Hz), 7.28-7.17 (5H, m), 4.41 (1H, td, J = 9.1, 4.4 Hz), 3.05 (1H, dd, J = 13.7, 4.4 Hz), 2.82 (1H, dd, J = 13.7, 10.2 Hz), 2.02 (2H, t, J = 7.3 Hz), 1.37 (2H, quin, J = 7.4 Hz), 1.27-1.08 (8H, m), 0.85 (3H, t, J = 7.1 Hz). ESI-MS: m/z 314.18 ([M+Na]+), 605.37 ([2M+Na]+), 896.56 ([3M+Na]+), 918.54 ([3M-H+2Na]+)。
合成例3.ノナノイル-L-フェニルアラニン(C9-L-Phe)
Figure 0007245497000017
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.66 (1H, s), 8.11 (1H, d, J = 8.3 Hz), 7.28-7.17 (5H, m), 4.42 (1H, td, J = 9.0, 4.2 Hz), 3.05 (1H, dd, J = 13.7, 4.4 Hz), 2.82 (1H, dd, J = 13.7, 10.2 Hz), 2.02 (2H, t, J = 7.3 Hz), 1.37 (2H, quin, J = 7.3 Hz), 1.29-1.10 (10H, m), 0.86 (3H, t, J= 6.8 Hz). ESI-MS: m/z 328.19 ([M+Na]+), 350.17 ([M-H+2Na]+), 633.40 ([2M+Na]+), 655.38 ([2M-H+2Na]+), 938.60 ([3M+Na]+), 960.58 ([3M-H+2Na]+) 。
合成例4.デカノイル-L-フェニルアラニン(C10-L-Phe)
Figure 0007245497000018
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.66 (1H, s), 8.11 (1H, d, J = 8.3 Hz), 7.28-7.17 (5H, m), 4.41 (1H, td, J = 9.0, 4.1 Hz), 3.05 (1H, dd, J = 13.9, 4.6 Hz), 2.82 (1H, dd, J = 13.4, 10.0 Hz), 2.02 (2H, t, J = 7.3 Hz), 1.37 (2H, quin, J = 7.3 Hz), 1.27-1.10 (12H, m), 0.86 (3H, t, J= 6.8 Hz). ESI-MS: m/z 342.21 ([M+Na]+), 364.19 ([M-H+2Na]+), 661.43 ([2M+Na]+), 683.41 ([2M-H+2Na]+), 980.65 ([3M+Na]+), 1002.63 ([3M-H+2Na]+) 。
合成例5.ウンデカノイル-L-フェニルアラニン(C11-L-Phe)
Figure 0007245497000019
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.66 (1H, s), 8.11 (1H, d, J = 8.3 Hz), 7.28-7.17 (5H, m), 4.41 (1H, td, J = 8.9, 4.4 Hz), 3.05 (1H, dd, J = 13.9, 4.6 Hz), 2.82 (1H, dd, J = 13.7, 10.2 Hz), 2.02 (2H, t, J = 7.1 Hz), 1.41-1.33 (2H, quin, 7.1 Hz), 1.29-1.10 (14H, m), 0.86 (3H, t, J = 6.6 Hz). ESI-MS: m/z 356.23 ([M+Na]+), 378.23 ([M-H+2Na]+), 689.46 ([2M+Na]+), 711.44 ([2M-H+2Na]+), 1022.68 ([3M+Na]+), 1044.68 ([3M-H+2Na]+) 。
合成例6.オクタノイル-L-ロイシン(C8-L-Leu)
Figure 0007245497000020
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.66 (1H, s), 8.11 (1H, d, J = 8.3 Hz), 7.28-7.17 (5H, m), 4.41 (1H, td, J = 9.1, 4.4 Hz), 3.05 (1H, dd, J= 13.7, 4.4 Hz), 2.82 (1H, dd, J = 13.7, 10.2 Hz), 2.02 (2H, t, J= 7.3 Hz), 1.37 (2H, quin, J = 7.4 Hz), 1.27-1.08 (8H, m), 0.85 (3H, t, J= 7.1 Hz). ESI-MS: m/z 314.18 ([M+Na]+), 605.37 ([2M+Na]+), 896.56 ([3M+Na]+), 918.54 ([3M-H+2Na]+) 。
合成例7.ノナノイル-L-ロイシン(C9-L-Leu)
Figure 0007245497000021
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.45 (1H, s), 8.02 (1H, d, J = 8.3 Hz), 4.20 (1H, td, J = 8.9, 5.0 Hz), 2.15-2.03 (2H, m), 1.67-1.57 (1H, m), 1.55-1.42 (4H, m), 1.29-1.23 (10H, m), 0.89-0.82 (9H, m). ESI-MS: m/z 294.21 ([M+Na]+), 565.44 ([2M+Na]+), 836.66 ([3M+Na]+), 858.64 ([3M-H+2Na]+), 1129.87 ([4M-H+2Na]+), 1151.85 ([4M-2H+3Na]+) 。
合成例8.ノナノイル-L-メチオニン(C9-L-Met)
Figure 0007245497000022
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.56 (1H, s), 8.07 (1H, d, J = 7.8 Hz), 4.29 (1H, td, J = 8.7, 4.6 Hz), 2.48-2.40 (2H, m), 2.10 (2H, t, J = 7.1 Hz), 2.03 (3H, s), 1.97-1.89 (1H, m), 1.86-1.78 (1H, m), 1.51-1.44 (2H, m), 1.29-1.24 (10H, m), 0.85 (3H, t, J = 6.6 Hz). ESI-MS: m/z 312.17 ([M+Na]+), 601.36 ([2M+Na]+), 890.53 ([3M-H+2Na]+) 。
合成例9.ノナノイル-L-トリプトファン(C9-L-Trp)
Figure 0007245497000023
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.55 (1H, s), 10.82 (1H, s), 8.03 (1H, d, J = 8.3 Hz), 7.52 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.32 (1H, d, J = 8.3 Hz), 7.12 (1H, d, J = 2.0 Hz), 7.05 (1H, t, J = 7.3 Hz), 6.97 (1H, t, J = 7.3 Hz), 4.46 (1H, td, J = 8.3, 4.9 Hz), 3.15 (1H, dd, J = 14.6, 4.9 Hz), 2.98 (1H, dd, J = 14.6, 8.8 Hz), 2.05 (2H, t, J = 7.1 Hz), 1.40 (2H, quin, J = 7.2 Hz), 1.32-1.08 (10H, m), 0.85 (3H, t, J = 6.8 Hz). ESI-MS: m/z 367.21 ([M+Na]+), 711.43 ([2M+Na]+), 1055.64 ([3M+Na]+) 。
合成例10.ノナノイル-D-フェニルアラニン(C9-D-Phe)
Figure 0007245497000024
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.65 (1H, s), 8.09 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.28-7.17 (5H, m), 4.42 (1H, td, J = 9.0, 3.9 Hz), 3.05 (1H, dd, J = 13.9, 4.6 Hz), 2.82 (1H, dd, J = 13.7, 9.8 Hz), 2.02 (2H, t, J = 7.3 Hz), 1.37 (2H, quin, J = 7.3 Hz), 1.27-1.10 (10H, m), 0.86 (3H, t, J= 6.8 Hz). ESI-MS: m/z 328.20 ([M+Na]+), 633.41 ([2M+Na]+), 938.61 ([3M+Na]+), 960.59 ([3M-H+2Na]+) 。
合成例11.ノナノイル-D-ロイシン(C9-D-Leu)
Figure 0007245497000025
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.44 (1H, s), 8.01 (1H, d, J = 7.8 Hz), 4.21 (1H, td, J = 8.9, 5.0 Hz), 2.13-2.05 (2H, m), 1.65-1.58 (1H, m), 1.52-1.46 (4H, m), 1.28-1.23 (10H, m), 0.89-0.82 (9H, m). ESI-MS: m/z 294.21 ([M+Na]+), 565.44 ([2M+Na]+), 587.41 ([2M-H+2Na]+), 836.65 ([3M+Na]+), 858.64 ([3M-H+2Na]+), 1129.86 ([4M+Na]+), 1151.84 ([4M-H+2Na]+) 。
合成例12.(2-(4-イソブチルフェニル)プロパノイル)-L-フェニルアラニン (R-Ibu-L-Phe)
Figure 0007245497000026
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
1H-NMR (CDCl3) δ: 7.82 (1H, br s), 7.17-7.08 (7H, m), 6.82 (2H, d, J = 7.3 Hz), 5.76 (1H, d, J = 7.3 Hz), 4.83 (1H, q, J = 6.2 Hz), 3.51 (1H, q, J = 7.0 Hz), 3.08 (1H, dd, J = 13.9, 5.1 Hz), 2.99 (1H, dd, J = 13.9, 6.1 Hz), 2.48 (2H, d, J = 7.3 Hz), 1.91-1.84 (1H, m), 1.46 (3H, d, J = 6.8 Hz), 0.92 (6H, d, J = 6.8 Hz). ESI-MS: m/z 376.18 ([M+Na]+), 729.38 ([2M+Na]+), 1082.58 ([3M+Na]+), 1104.57 ([3M-H+2Na]+) 。
合成例13.(2-(4-イソブチルフェニル)プロパノイル)-L-フェニルアラニン (S-Ibu-L-Phe)
Figure 0007245497000027
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
1H-NMR (CDCl3) δ: 8.06 (1H, br s), 7.22-7.20 (3H, m), 7.10-7.07 (4H, m), 6.96-6.94 (2H, m), 5.76 (1H, d, J = 6.8 Hz), 4.74 (1H, q, J = 6.3 Hz), 3.54 (1H, q, J = 7.2 Hz), 3.15 (1H, dd, J = 13.8, 5.2 Hz), 3.00 (1H, dd, J = 14.0, 6.7 Hz), 2.46 (2H, d, J = 7.3 Hz), 1.91-1.80 (1H, m), 1.49 (3H, d, J = 7.3 Hz), 0.90 (6H, d, J = 6.6 Hz). ESI-MS: m/z 376.19 ([M+Na]+), 729.40 ([2M+Na]+), 1082.60 ([3M+Na]+), 1104.58 ([3M-H+2Na]+) 。
合成例14.(ベンジルオキシ)カルボニル)グリシル-L-フェニルアラニン (Z-Gly-L-Phe)
Figure 0007245497000028
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.78 (1H, s), 8.12 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.42-7.20 (11H, m), 5.02 (2H, s), 4.44 (1H, td, J = 8.1, 5.2 Hz), 3.61 (2H, qd, J = 16.7, 6.4 Hz), 3.04 (1H, dd, J = 13.9, 5.1 Hz), 2.89 (1H, dd, J = 13.4, 9.0 Hz). ESI-MS: m/z 379.12 ([M+Na]+), 735.26 ([2M+Na]+) 。
合成例15.N-(6-フェニルヘキサノイル)-L-フェニルアラニン (PhC6-L-Phe)
Figure 0007245497000029
合成例1に従って、適切な材料を用いて合成した。
1H NMR (DMSO-d6, 600MHz at 80°C) δ: 12.30 (1H, brs), 7.75 (1H, d, J = 5.4 Hz), 7.28-7.11 (10H, m), 4.48 (1H, td, J = 9.0, 5.4 Hz), 3.06 (1H, dd, J = 14.4, 5.4 Hz), 2.87 (1H, dd, J = 14.1, 9.6 Hz), 2.52 (2H, t, J = 7.8 Hz), 2.05 (2H, t, J = 7.8 Hz), 1.52 (2H, m, J = 7.8 Hz), 1.45 (2H, m, J = 7.8 Hz), 1.21 (2H, m, J = 7.8 Hz). ESI-MS: m/z 362.17 ([M+Na]+), 384.15 ([M-H+2Na]+), 701.36 ([2M+Na]+), 1040.55 ([3M+Na]+) 。
参考例1.N-アルキルプロリン
Figure 0007245497000030
ナス型フラスコにL-プロリンメチルエステル 388 mg (3 mmol) を量り取り、アセトニトリル8 mLに溶解させた。炭酸水素ナトリウム 1.01 g (12 mmol) と1-ブロモヘキサン 743 mg (4.5 mmol) を加えた後、60°Cで48時間撹拌した。溶液を室温まで冷却し、ジエチルエーテルで3回抽出した。抽出した有機相を合わせて食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムを加えて10分間乾燥させた。ろ過後、溶媒をエバポレーターにより留去し、黄色オイル状物質461 mgを得た。(収率:72%)
生成物中にL-プロリンメチルエステルと1-ブロモヘキサンが残っていないことをFAB-MSで確認した。
合成例16.(ベンジルオキシ)カルボニル)-L-プロリル-L-フェニルアラニン (Z-L-Pro-L-Phe)
Figure 0007245497000031
合成例2に従って、ノナン酸に代えて、参考例1と同様にして合成したプロリン誘導体を用いて、合成した。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.70 (1H, s), 8.17 (1H, dd, J = 39.0, 7.8 Hz), 7.38-7.18 (10H, m), 5.10-4.84 (2H, m), 4.50-4.39 (1H, m), 4.22 (1H, d, J = 8.3 Hz), 3.45-3.35 (2H, m), 3.07-2.86 (2H, m), 2.09-1.99 (1H, m), 1.77-1.68 (3H, m). ESI-MS: m/z 419.16 ([M+Na]+), 441.14 ([M-H+2Na]+), 859.30 ([2M-2H+3Na]+)。
合成例17.(N-へキシル-L-プロリル)-L-フェニルアラニン(C6-L-Pro-L-Phe)
Figure 0007245497000032
合成例2に従って、ノナン酸に代えて、参考例1と同様にして合成したプロリン誘導体を用いて、合成した。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.90 (0.7H, br s), 7.76 (1H, d, J = 6.8 Hz), 7.26-7.14 (5H, m), 4.53-4.48 (1H, m), 3.10 (1H, dd, J = 13.7, 4.9 Hz), 3.04-2.95 (2H, m), 2.83 (1H, d, J = 7.8 Hz), 2.45-2.40 (1H, m), 2.32-2.26 (1H, m), 2.21-2.16 (1H, m), 2.00-1.90 (1H, m), 1.68-1.62 (1H, m), 1.53-1.42 (2H, m), 1.35-1.18 (8H, m), 0.84 (3H, t, J = 6.8 Hz). ESI-MS: m/z 347.2 ([M+H]+). MS calcd for [M+H]+ m/z 347.2, found m/z 347。
合成例18.(N-ヘプチル-L-プロリル)-L-フェニルアラニン(C7-L-Pro-L-Phe)
Figure 0007245497000033
合成例2に従って、ノナン酸に代えて、参考例1と同様にして合成したプロリン誘導体を用いて、合成した。
1H-NMR (DMSO-D6) δ: 12.91 (1H, br s), 7.76 (1H, d, J = 6.8 Hz), 7.28-7.14 (5H, m), 4.53-4.48 (1H, m), 3.10 (1H, dd, J = 13.7, 4.9 Hz), 3.03-2.95 (2H, m), 2.83 (1H, d, J = 7.8 Hz), 2.45-2.40 (1H, m), 2.32-2.26 (1H, m), 2.22-2.16 (1H, m), 1.97-1.92 (1H, m), 1.68-1.62 (1H, m), 1.53-1.44 (2H, m), 1.36-1.19 (10H, m), 0.85 (3H, t, J = 6.8 Hz). ESI-MS: m/z 361.26 ([M+H]+), 383.24 ([M+Na]+), 721.50 ([2M+H]+), 743.49 ([2M+Na]+)。
合成例19-22.N-アシルホモセリンラクトン(AHL)
Figure 0007245497000034
(合成例19:n=5、合成例20:n=6、合成例21:n=7、合成例22:n=8)
l-Homoserine latone (1.2 mmol, 165 mg) とTriethylamine (1.2 mmol, 170 _L) を水20 mL に溶かし、そこへアセトニトリル10 mL にEDC-HCl (1.6 mmol, 310 mg) とC7-C10 カルボン酸(1.6mmol, C7 227μL, C8 254μL, C9 278μL, C10 276 mg) を溶かした溶液を加えた。撹拌しながら室温、overnight で反応させ、その後溶媒を留去した。固体をクロロホルムに溶かし、飽和NaHCO3 水溶液、1 M NaHSO4水溶液、飽和NaCl 水溶液で洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥させ溶媒を留去した後にHexane : EtOAc = 2 : 1 の溶液で再結晶を行った。固体を冷やした少量のEtOAc で洗浄し、目的の化合物を得た(収率:C7AHL 45.6%, C8AHL 43.0%, C9AHL 35.5%, C10AHL 33.5%)。6 mg の化合物をd6-DMSO に溶かし、1H NMR によって同定を行った。代表化合物(C8AHL)1H NMRチャートを以下に示す。
1H-NMR (DMSO-D6, 400 MHz, TMS) δ (ppm): 8.30 (1H, d, J = 8.3 Hz), 4.52 (1H, dt, J = 10.0, 8.8 Hz), 4.33 (1H, td, J = 8.8, 2.0 Hz), 4.21-4.18 (1H, m), 2.39-2.35 (1H, m), 2.18-2.08 (3H, m), 1.50 (2H, quintet, J = 6.8 Hz), 1.28-1.26 (8H, m), 0.86 (3H, t, J = 6.8 Hz)。
合成例23-25.N-アシルホモセリン(AHS)
Figure 0007245497000035
(合成例23:n=6、合成例24:n=7、合成例25:n=8)
合成したC8, C9, C10AHL 30 mg に対して水4.5 mL、1 M LiOH 水溶液1.0 mL を加え、攪拌しながら22 時間反応させた。その後、氷冷した反応溶液に対して6 M HCl 水溶液を1 mL 滴下した。1 時間反応溶液を氷冷した後溶液を吸引ろ過し、析出した固体を回収した。固体を冷やした少量のEtOAc で洗浄し、目的の化合物を得た(収率:C8AHS 57.4%, C9AHS 56.2%, C10AHS 57.4%)。6mg の化合物をd6-DMSO に溶かし、1H NMR によって同定を行った。代表化合物(C10AHS)1H NMRチャートを以下に示す。
1H-NMR (DMSO-D6, 400 MHz, TMS) δ (ppm): 7.99 (1H, d, J = 8.0 Hz), 4.27-4.22 (1H, m), 2.09 (2H, t, J = 6.8 Hz), 1.86-1.80 (1H, m), 1.72-1.65 (1H, m), 1.48-1.46 (2H, m), 1.27-1.24 (12H, m), 0.86 (3H, t, J = 6.8 Hz)。
実施例1.細胞内でのフェノールの製造(ベンゼンの水酸化反応)
合成例で得られた化合物をデコイ基質として用い、細胞内でフェノールを製造した。具体的には以下の様にして行った。
<菌体懸濁液の調製>
野生型P450BM3全長の塩基配列を挿入した強制発現用ベクターpET28a(+)によって形質転換された大腸菌BL21(DE3)株を、15μg/mLのカナマイシンを含むLB培地に加え、37℃、180 rpmで培養した。OD600が0.4-0.6になった時に5-アミノレブリン酸を終濃度0.5 mMとなるように加え、OD600が0.8-0.9となった時にIPTGを終濃度1 mMとなるように加え、培養温度を下げて25℃で12時間酵素発現を誘導した。誘導後、7300gで6分間遠心分離を行って集菌し、反応用バッファー(NaCl 86 mM, Na2PO4 93 mM, KH2PO415 mM, MgSO4 7 mM, CaCl2 0.1 mM, H3BO320 μM, CoCl2 1.5 μM, CuSO4 0.5 μM, MnCl2 4.0 μM, ZnSO4 0.5 μM, Na2MoO4 1.0 μM, pH 7.4)で二回洗浄した後、同様のバッファーでOD600が7.0となるように再懸濁した。
<ベンゼンの水酸化反応>
菌体懸濁液900 μL (終濃度25 g/L wet cell weight)、2 Mグルコース溶液20 μL (終濃度40 mM)、20 mMデコイ基質DMSO溶液5 μL (終濃度100 μM )、反応用バッファー65 μL、1 MベンゼンDMSO溶液 10 μL (終濃度10 mM ) を6 mLサンプル瓶に加えて25℃, 200 rpmで9時間反応を行った。反応後、反応溶液を2 mLエッペンドルフチューブに移し、液体窒素で凍らせて反応を停止し、融解させてから菌体を超音波で破砕した(Vibra Cell sonics VCX-750、AMPL 25%、10min)。破砕液にジクロロメタン800 μL、内部標準として40 mM 4-クロロトルエンDMSO溶液を10 μL加えてボルテックスし、20000gで3分間遠心分離した。その後、有機層を抽出し、ガスクロマトグラフィーによって分析した。ガスクロマトグラフは島津社製のFID検出器を有するGC-2014を用い、カラムはRestek社製のRtx-1カラム(内径0.53 mm、膜厚3μm、カラム長60 m)を用いた。分離の条件は、試料注入口温度、検出器温度を250℃とし、カラムオーブンの温度プログラムは120℃で25分維持、5分かけて250℃まで昇温し、そのまま15分間維持するよう設定した。
<結果>
フェノール濃度(μM)及びフェノール転化率(%)を表1に示す。
Figure 0007245497000036
実施例2.細胞内でのクレゾールの製造(トルエンの水酸化反応)
合成例で得られた化合物をデコイ基質として用い、細胞内でクレゾールを製造した。具体的には以下の様にして行った。
<菌体懸濁液の調製>
実施例1と同様の方法で行った。
<トルエンの水酸化反応>
菌体懸濁液900 μL (終濃度25 g/L wet cell weight)、4 Mグルコース溶液10 μL (終濃度40 mM)、20 mMデコイ基質DMSO溶液10 μL (終濃度200 μM )、反応用バッファー65 μL、4 MトルエンDMSO溶液 5 μL (終濃度20 mM ) を6 mLサンプル瓶に加えて25℃, 200 rpmで9時間反応を行った。反応後、反応溶液を2 mLエッペンドルフチューブに移し、液体窒素で凍らせて反応を停止し、融解させてから菌体を超音波で破砕した(Vibra Cell sonics VCX-750、AMPL 25%、10min)。破砕液にジクロロメタン400 μL、内部標準として40 mM 4-クロロトルエンDMSO溶液を10 μL加えてボルテックスし、20000gで3分間遠心分離した。その後、有機層を抽出し、ガスクロマトグラフィーによって分析した。ガスクロマトグラフは島津社製のFID検出器を有するGC-2014を用い、カラムはRestek社製のRtx-1カラム(内径0.53 mm、膜厚3 μm、カラム長60 m)を用いた。分離の条件は、試料注入口温度、検出器温度を250 ℃とし、カラムオーブンの温度プログラムは120 ℃で25分維持、5分かけて250 ℃まで昇温し、そのまま15分間維持するよう設定した。
<結果>
検出されたクレゾールの大部分がo-クレゾールであった。o-クレゾール濃度(μM)及びo-選択性(%)を表2に示す。
Figure 0007245497000037
実施例3.インビトロでのフェノールの製造(ベンゼンの水酸化反応)
合成例で得られた化合物をデコイ基質として用い、インビトロでフェノールを製造した。具体的には以下の様にして行った。
<シトクロムP450BM3(CYP102A1)の調製>
大腸菌BL21(DE3)株に、シトクロムP450BM3(CYP102A1)全長をコードするDNA(アミノ酸配列、配列番号1)(C. J. C. Whitehouse, S. G. Bell, L. L. Wong, Chem. Soc. Rev. 2012, 41, 1218-1260.のFig.2に開示されるCYP102Aサブファミリーのアライメント結果におけるA1である。)をコードするDNAを挿入したpUCベクターを組み込んで、P450BM3遺伝子を発現させた。産生したP450BM3を大腸菌から抽出、精製するため、大腸菌を超音波で破砕し、破砕液を遠心分離して上清を回収し、この上清を陰イオン交換カラム(DE-52)に一旦結合させ、0~250mM KClの濃度勾配を用いて溶出し、P450BM3を示す茶色のピーク画分を回収した。
溶出したピーク画分の精製度をSDS-PAGEで確認し、精製度が高い画分を混合し、分画分子量(MWCO)が30,000の限外濾過キットで濃縮した後、緩衝液A(20mM Tris-HCl(pH7.4))で希釈してKCl濃度を5mM 以下にして脱塩した。続いて、陰イオン交換カラム(DEAE650S)を用いてKClを0~1000mMの範囲で濃度勾配をかけてBM3を溶出させ、同様に精製を行った。最後に、ゲル濾過カラム(Sephacryl S-300HR)に緩衝液B(20mM Tris-HCl(pH7.4)、100mM KCl)を流してP450BM3を溶出させ、得られた茶色のピーク画分を回収し、これを野生型のP450BM3試料として、以下の水酸化反応で用いた。
<ベンゼンの水酸化反応>
高純度酸素ガスを吹き込み飽和させた緩衝液(20mM Tris-HCl(pH7.4)、100mM KCl)で反応溶液の全体積の90%以上を満たし、500nM(終濃度) 野生型P450BM3、10mM(終濃度)ベンゼン、100μM(終濃度)デコイ基質になるように各成分を加え、最後に5mM NADPHを添加し反応を開始した。なお、デコイ基質を溶解するのにDMSO溶液を用いる必要があるため、結果として、反応液は0.5v/v%のDMSOを含有していた。
反応は、密閉したバイアルで行い、25℃以下で反応液を撹拌しながら進行させた。10分間の反応後、1M塩酸0.15mL を加えて反応を停止し、10分間撹拌した。反応液を1M水酸化ナトリウム水溶液0.15mLで中和し、アセトニトリル1.3mLを加えた後、フィルター濾過をしてHPLCで分析した。HPLCは島津社製のLC-10ADVPを用い、カラムはGL Sciences社製の逆相カラムInertsil ODS-3(内径4.6 mm、カラム長250mm、粒子径5μm)を用いた。溶離液には緩衝液B/アセトニトリル=1:1を用いて、流速0.5 mL/minで35分間測定を行った。
なお、デコイ基質を添加せず、代わりに0.5v/v%のDMSOのみを添加した系として同様の操作を行った(対照例)。
各反応液のHPLCのクロマトグラム上には、対照例には見られない新しいピークが観察された。新ピークの保持時間は、フェノールの保持時間と一致することを確認できたため、本反応液には、反応生成物としてフェノールが生成していることがわかった。各反応液におけるフェノール量及びNADPHの消費量も測定した。
<結果>
表3に、添加したデコイ基質に対する1分間あたりのフェノールの生成量(フェノール生成速度)、及びNADPHの消費量のうちフェノールの生成に利用された割合(カップリング率)を示す。
Figure 0007245497000038
実施例4.環境浄化試験1
合成例で得られた化合物をデコイ基質として用い、環境浄化試験を行った。具体的には以下の様にして行った。
<反応溶液の調製>
大腸菌懸濁液:文献1(M. Karasawa et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2018, 57, 12264-12269.)と同様の条件で、遺伝子操作によってP450BM3を過剰発現させた大腸菌懸濁液を、菌体量が一定となるように調製した(OD600 = 1.6, 3.2, 6.3, 12.6, 25.2, 反応時の濃度)。その後、菌体懸濁液にグルコース溶液とデコイ基質DMSO溶液を加え、大腸菌懸濁液を調製した(グルコース40 mM, デコイ基質100 μM、反応時の濃度)。
ベンゼン溶液:反応に用いる緩衝液にベンゼンDMSO溶液を加え、ベンゼン溶液を調製した(10 mM、反応時の濃度)。
<デコイ基質と組み換え大腸菌を利用したモデル土壌中のベンゼンの水酸化反応>
6 mLガラスサンプル瓶に、反応溶液1 mL当たり0.3 gのバーミキュライトを、モデル土壌として加えた。バーミキュライトを加えたサンプル瓶に対して、調製したベンゼン溶液を加え、その後、大腸菌懸濁液を加えた(図1左)。この際、反応溶液がバーミキュライトによって吸着されていることを確認した(図1右)。
反応後、ジクロロメタン1000 μL、内部標準として40 mMインダンDMSO溶液を10 μL加えてボルテックスし、20000gで3分間遠心分離した。その後、有機層を抽出し、ガスクロマトグラフィーによって分析した。ガスクロマトグラフは島津社製のFID検出器を有するGC-2014を用い、カラムはRestek社製のRtx-1(内径0.53 mm、膜厚3 μm、カラム長60 m)を用いた。分離の条件は、試料注入口温度、検出器温度を250℃とし、カラムオーブンの温度プログラムは120℃で25分維持、5分かけて250℃まで昇温し、そのまま15分間維持するよう設定した。
まず、バーミキュライト中のフェノールを定量するために、検量線を作成した。バーミキュライトに対して各濃度のフェノール溶液を加え、反応時と同様の条件で抽出および分析を行った。作成した検量線は良い直線性を示し、本反応系におけるフェノール量が定量可能であることが明らかとなった(図2)。
<結果1>
デコイ基質の種類、モデル土壌中のベンゼン量、菌体量を変え、ベンゼンの水酸化を行った。結果を表4~6に示す。
Figure 0007245497000039
Figure 0007245497000040
Figure 0007245497000041
デコイ基質を添加しない条件ではフェノールが全く観測されなかったのに対して、大腸菌にデコイ基質を作用させることでフェノールの生成量が大きく増加した。水相系での反応で最も高い活性を示したC7-L-Pro-L-Pheは、土壌モデルでも高効率にベンゼンの水酸化を促進した(表4)。さらに、使用するデコイ基質量を10分の1に減じても、同等のフェノール転化率を示した。
ベンゼンの量に関わらず、フェノールへの転化率は同程度であり、1 mMという低濃度のベンゼン存在下でも本システムが有効であることが示唆された(表5)。
菌体量の変化によって、フェノールへの転化率は大きく変化しなかった。この結果から、少量の菌体を用いて、土壌中のベンゼンを水酸化できることが明らかとなった(表6)。
<結果2>
次に、反応時間を変化させ、ベンゼンの水酸化反応を行った。菌体量をOD600 = 6.3、ベンゼン濃度を10 mMとし、デコイ基質としてC7-Pro-Pheを用いた。結果を図3に示す。
反応時間の延長によりフェノールへの転化率が大きく増加し、24 hの反応で、フェノールへの転化率は28%に達した(図3)。
実施例5.環境浄化試験2
巨大菌標準株を用いたモデル土壌中のベンゼンの水酸化反応を行った。具体的には以下のようにして行った。
P450BM3発現ベクターを導入した組み換え大腸菌の代わりに、野生型巨大菌標準株ATCC14581を用いて、実施例4と同様にして、モデル土壌中でのベンゼンの水酸化反応を行った。巨大菌はLB培地中30℃, 150 rpmで好気条件下培養を行い、集菌した後、大腸菌と同様の反応溶液に再懸濁した。菌体量はOD600= 14.8 (約50 g/L wet cell weight)とし、ベンゼン5 mM、C7-Pro-Phe 100 μM存在下、44時間バーミキュライト中で反応を行った。反応後は同様にジクロロメタンで抽出し、ガスクロマトグラフィーによって評価した。
反応後のGCクロマトグラフを図4に示す。デコイ基質非存在下ではフェノールのピークが全く観測されなかったが、デコイ基質の添加によって、フェノールの生成が観測され、転化率は6%に達した。

Claims (10)

  1. 一般式(1):
    Figure 0007245497000042
    [式中、R1は置換されていてもよい炭化水素基を示す。R2は単結合又はリンカーを示す。R3は単結合又は式(2):
    Figure 0007245497000043
    (式中、窒素原子は、R2に結合する。)
    で表される基を示す。R4及びR5は同一又は異なったアミノ酸側鎖を示す。R6は水素原子、水酸基、アルデヒド基、カルボキシ基、又はカルボキシ誘導体基を示す。但し、R5及びR6は互いに結合してラクトン環を形成していてもよい。nは0又は1以上の整数を示す。]で表される化合物、及び前記化合物を含有する細胞からなる群より選択される少なくとも1種を含有且つ
    前記細胞を含有し且つ前記細胞がシトクロムP450モノオキシゲナーゼを有する非遺伝子組換え細胞である、又は浄化対象である土壌がシトクロムP450を有する非遺伝子組換え微生物が存在する土壌であり、
    土壌中の、置換されていてもよいベンゼン、置換されていてもよいナフタレン、置換されていてもよいインデン、置換されていてもよい炭素数1~15のアルカン、置換されていてもよい炭素数1~15のアルケン、置換されていてもよい炭素数4~8のシクロアルカン、置換されていてもよい炭素数4~8のシクロアルケン、及びダイオキシンからなる群より選択される少なくとも1種の環境汚染物質の変換に用いるための土壌浄化剤。
  2. 前記R6がカルボキシ基である、請求項1に記載の土壌浄化剤。
  3. 前記アミノ酸側鎖が、置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基、及びヘテロアラルキル基からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の土壌浄化剤。
  4. 前記R1がアルキルアラルキル基であり、前記R2及びR3が単結合であり、且つnが0である、請求項1~3のいずれかに記載の土壌浄化剤。
  5. 前記R1がアルキル基であり、前記R2が単結合であり、前記R3が前記式(2)で表される基であり、且つnが0である、請求項1~3のいずれかに記載の土壌浄化剤。
  6. 前記化合物が、式(1D):
    Figure 0007245497000044
    で表される化合物である、請求項5に記載の土壌浄化剤。
  7. 前記R5及び前記R6がラクトン環を形成していない、請求項1~5のいずれかに記載の土壌浄化剤。
  8. 前記R5及び前記R6が互いに結合してラクトン環を形成している、請求項1~5のいずれかに記載の土壌浄化剤。
  9. 前記化合物がクオルモンである、請求項8に記載の土壌浄化剤。
  10. 請求項1~のいずれかに記載の環境浄化剤を浄化対象の土壌に接触させる工程を含む、土壌浄化方法。
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