◇保護膜形成用フィルム
本発明の一実施形態に係る保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性の保護膜形成用フィルムであって、前記保護膜形成用フィルムは、一分子中にカルボキシ基又はカルボキシ基が塩を形成した基と、重合性基と、を有する化合物(本明細書においては、「化合物(p)」と称することがある)を含有する。
後述するように、前記保護膜形成用フィルムを支持シート上に設けることで、保護膜形成用複合シートを構成できる。
前記保護膜形成用フィルムは、エネルギー線の照射によって硬化し、保護膜となる。この保護膜は、半導体ウエハ又は半導体チップの裏面(電極形成面とは反対側の面)を保護するためのものである。保護膜形成用フィルムは、軟質であり、貼付対象物に容易に貼付できる。
前記保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性であることにより、熱硬化性の保護膜形成用フィルムよりも、短時間での硬化によって保護膜を形成できる。
なお、本明細書において、「保護膜形成用フィルム」とは硬化前のものを意味し、「保護膜」とは、保護膜形成用フィルムを硬化させたものを意味する。
前記保護膜形成用フィルムとしては、例えば、後述するエネルギー線硬化性成分(a)及び化合物(p)を含有するものが挙げられる。化合物(p)を含有する保護膜形成用フィルムは、従来知られていない。
エネルギー線硬化性成分(a)は、未硬化であることが好ましく、粘着性を有することが好ましく、未硬化でかつ粘着性を有することがより好ましい。
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。
紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
本明細書において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
前記保護膜形成用フィルムを用いた場合には、内部に改質層が形成された半導体ウエハをその表面(例えば裏面)方向にエキスパンドすることにより、前記改質層の部位において半導体ウエハを分割して、半導体チップを作製する。
半導体ウエハの内部に改質層を形成するためには、半導体ウエハの内部に設定された焦点に集束するように、レーザー光を照射すればよい。半導体ウエハの改質層は、半導体ウエハの他の箇所とは異なり、レーザー光の照射によって変質しており、強度が弱くなっているため、改質層が形成された半導体ウエハを、半導体ウエハの表面方向にエキスパンドすることにより、半導体ウエハ内部の改質層に力が加えられ、この改質層の部位において半導体ウエハが割れて、複数個の半導体チップが得られる。
半導体ウエハに前記改質層を形成するときに照射する前記レーザー光は、赤外域のレーザー光であることが好ましく、波長が1342nmのレーザー光であることがより好ましい。
前記保護膜形成用フィルムが化合物(p)を含有しているため、裏面に保護膜を備えた半導体ウエハ(本明細書においては「保護膜付き半導体ウエハ」と称することがある)をエキスパンドすることにより、保護膜を切断するとともに、半導体ウエハを分割して半導体チップ(本明細書においては「保護膜付き半導体チップ」と称することがある)としたときに、保護膜からの半導体チップの浮きを抑制できる。保護膜形成用フィルムの場合も同様であり、裏面に保護膜形成用フィルムを備えた半導体ウエハ(本明細書においては「保護膜形成用フィルム付き半導体ウエハ」と称することがある)をエキスパンドすることにより、保護膜形成用フィルムを切断するとともに、半導体ウエハを分割して半導体チップ(本明細書においては「保護膜形成用フィルム付き半導体チップ」と称することがある)としたときに、保護膜形成用フィルムからの半導体チップの浮きを抑制できる。
下記方法で測定された、保護膜形成用フィルムとシリコンウエハとの間の粘着力は、3N/25mm以上であることが好ましい。前記粘着力が前記下限値以上であることで、上述の保護膜又は保護膜形成用フィルムからの半導体チップ(シリコンチップに限定されない)の浮きを抑制する効果がより高くなる。
<保護膜形成用フィルムとシリコンウエハとの間の粘着力の測定方法>
厚さが25μmの前記保護膜形成用フィルムを、シリコンウエハに貼付した後、前記保護膜形成用フィルム及びシリコンウエハの互いに接触していた面同士が180°の角度を為すように、剥離速度300mm/minで、シリコンウエハから前記保護膜形成用フィルムを引き剥がしたときの剥離力(N/25mm)を測定して、この測定値を保護膜形成用フィルムとシリコンウエハとの間の粘着力とする。
上述の効果がより高くなる点から、前記粘着力は、3.3N/25mm以上であることがより好ましく、3.6N/25mm以上であることが特に好ましい。
一方、前記粘着力の上限値は特に限定されない。ただし、後述する半導体装置の製造方法において、保護膜付き半導体チップ又は保護膜形成用フィルム付き半導体チップのピックアップがより容易となる点では、前記粘着力は、10N/25mm以下であることが好ましく、9N/25mm以下であることがより好ましく、8N/25mm以下であることが特に好ましい。
前記粘着力は、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、前記粘着力は、好ましくは3~10N/25mm、より好ましくは3.3~9N/25mm、特に好ましくは3.6~8N/25mmである。ただし、これらは、前記粘着力の一例である。
前記粘着力は、例えば、化合物(p)をはじめとする保護膜形成用フィルムの含有成分の種類、及びその含有量、並びに保護膜形成用フィルムの厚さ等を調節することにより、調節できる。
前記保護膜形成用フィルムに紫外線を照射して保護膜を形成したとき、下記方法で測定された、保護膜のせん断強度は、10.5N/3mm□以上であることが好ましい。前記せん断強度が前記下限値以上であることで、上述の保護膜又は保護膜形成用フィルムからの半導体チップの浮きを抑制する効果がより高くなる。
<保護膜のせん断強度>
厚さが25μmの前記保護膜形成用フィルムを、シリコンウエハに貼付した後、照度195mW/cm2、光量170mJ/cm2の条件で、保護膜形成用フィルムに紫外線を照射することにより、保護膜形成用フィルムを硬化させて保護膜とし、得られた保護膜付きシリコンウエハをダイシングすることにより、大きさが3mm×3mmの保護膜付きシリコンチップとし、得られた保護膜付きシリコンチップのうち保護膜のみに、200μm/sの速度で保護膜の表面方向に力を加えて、保護膜が破壊されるまでに加えられていた力の最大値(N/3mm□)を、保護膜のせん断強度とする。
上述の効果がより高くなる点から、前記せん断強度は、10.7N/3mm□以上であることがより好ましく、11.0N/3mm□以上であることが特に好ましい。
一方、前記せん断強度の上限値は特に限定されない。例えば、前記せん断強度は、30.0N/3mm□以下であることが好ましく、27.5N/3mm□以下であることがより好ましく、25.0N/3mm□以下であることが特に好ましく、22.5N/3mm□以下、20.0N/3mm□以下、及び17.5N/3mm□以下のいずれかであってもよい。
前記せん断強度は、上述の下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、前記せん断強度は、好ましくは10.5~30.0N/3mm□、より好ましくは10.7~27.5N/3mm□、特に好ましくは11.0~25.0N/3mm□であり、11.0~22.5N/3mm□、11.0~20.0N/3mm□、及び11.0~17.5N/3mm□のいずれかであってもよい。ただし、これらは、前記せん断強度の一例である。
前記せん断強度は、例えば、化合物(p)をはじめとする保護膜形成用フィルムの含有成分の種類、及びその含有量、並びに保護膜形成用フィルムの厚さ等を調節することにより、調節できる。
前記保護膜形成用フィルムは、前記粘着力及びせん断強度の両方の条件を満たすものが好ましい。
このような保護膜形成用フィルムの一例としては、好ましくは、前記粘着力が3~10N/25mmであり、前記せん断強度が10.5~30.0N/3mm□であるもの;より好ましくは、記粘着力が3.3~9N/25mmであり、前記せん断強度が10.7~27.5N/3mm□であるもの;特に好ましくは、前記粘着力が3.6~8N/25mmであり、前記せん断強度が11.0~25.0N/3mm□であるもの等が挙げられ、前記粘着力が3.6~8N/25mmであり、前記せん断強度が11.0~22.5N/3mm□であるもの、前記粘着力が3.6~8N/25mmであり、前記せん断強度が11.0~20.0N/3mm□であるもの、及び、前記粘着力が3.6~8N/25mmであり、前記せん断強度が11.0~17.5N/3mm□であるもの、のいずれかであってもよい。
ただし、ここに示す前記粘着力及びせん断強度の組み合わせは、一例である。
前記保護膜形成用フィルムと、その硬化物である前記保護膜は、いずれも、半導体ウエハの改質層の形成に必要な前記レーザー光(例えば、波長が1342nmであるレーザー光等の、赤外域のレーザー光)の透過率が高いものが好ましい。保護膜形成用フィルムと保護膜は、いずれも光の透過率については、通常、同様の傾向を示す。
例えば、前記保護膜形成用フィルムの、波長が1342nmであるレーザー光の透過率(本明細書においては、「フィルム透過率(1342nm)」と略記することがある)は、45%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、55%以上であることが特に好ましい。フィルム透過率(1342nm)が前記下限値以上であることで、後述する半導体チップの製造方法において、半導体ウエハに改質層をより容易に形成できる。
前記フィルム透過率(1342nm)の上限値は、特に限定されず、例えば、100%であってもよい。
前記保護膜の、波長が1342nmであるレーザー光の透過率(本明細書においては、「保護膜透過率(1342nm)」と略記することがある)は、45%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、55%以上であることが特に好ましい。保護膜透過率(1342nm)が前記下限値以上であることで、後述する半導体チップの製造方法において、半導体ウエハに改質層をより容易に形成できる。
前記保護膜透過率(1342nm)の上限値は、特に限定されず、例えば、100%であってもよい。
前記フィルム透過率(1342nm)は、例えば、保護膜形成用フィルムの含有成分の種類、及びその含有量、並びに保護膜形成用フィルムの厚さ等を調節することにより、調節できる。
前記保護膜透過率(1342nm)は、例えば、保護膜の含有成分の種類、及びその含有量、並びに保護膜の厚さ等を調節することにより、調節できる。
保護膜形成用フィルムは1層(単層)のみでもよいし、2層以上の複数層でもよく、複数層である場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
なお、本明細書においては、保護膜形成用フィルムの場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
保護膜形成用フィルムの厚さは、1~100μmであることが好ましく、3~75μmであることがより好ましく、5~50μmであることが特に好ましい。保護膜形成用フィルムの厚さが前記下限値以上であることで、保護能がより高い保護膜を形成できる。また、保護膜形成用フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、過剰な厚さとなることが抑制される。
ここで、「保護膜形成用フィルムの厚さ」とは、保護膜形成用フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる保護膜形成用フィルムの厚さとは、保護膜形成用フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
保護膜形成用フィルムを硬化させて保護膜を形成するときの硬化条件は、保護膜が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り特に限定されず、保護膜形成用フィルムの種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、保護膜形成用フィルムの硬化時における、エネルギー線の照度は、4~280mW/cm2であることが好ましい。そして、前記硬化時における、エネルギー線の光量は、3~1000mJ/cm2であることが好ましい。
図1は、本発明の一実施形態に係る保護膜形成用フィルムを模式的に示す断面図である。なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
ここに示す保護膜形成用フィルム13は、その一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)13a上に第1剥離フィルム151を備え、前記第1面13aとは反対側の他方の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)13b上に第2剥離フィルム152を備えている。
このような保護膜形成用フィルム13は、例えば、ロール状として保管するのに好適である。
保護膜形成用フィルム13は、後述する保護膜形成用組成物を用いて形成できる。
保護膜形成用フィルム13は、エネルギー線硬化性であり、化合物(p)を含有する。
第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152は、いずれも公知のものでよい。
第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152は、互いに同じものであってもよいし、例えば、保護膜形成用フィルム13から剥離させるときに必要な剥離力が互いに異なるなど、互いに異なるものであってもよい。
図1に示す保護膜形成用フィルム13は、第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152のいずれか一方が取り除かれ、生じた露出面に、半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付される。そして、第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152の残りの他方が取り除かれ、生じた露出面が支持シートの貼付面となる。
<<保護膜形成用組成物>>
前記保護膜形成用フィルムは、その構成材料を含有する保護膜形成用組成物を用いて形成できる。例えば、保護膜形成用フィルムの形成対象面に保護膜形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に保護膜形成用フィルムを形成できる。保護膜形成用組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、保護膜形成用フィルムの前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
保護膜形成用組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
保護膜形成用組成物の乾燥条件は、特に限定されない。保護膜形成用組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。溶媒を含有する保護膜形成用組成物は、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で乾燥させることが好ましい。
<保護膜形成用組成物(IV-1)>
保護膜形成用組成物としては、例えば、前記エネルギー線硬化性成分(a)及び化合物(p)を含有する保護膜形成用組成物(IV-1)等が挙げられる。化合物(p)を含有する保護膜形成用組成物は、従来知られていない。
[化合物(p)]
化合物(p)は、その一分子中にカルボキシ基(-C(=O)-O-H)又はカルボキシ基が塩を形成した基と、重合性基と、を有する。
カルボキシ基が塩を形成した基としては、例えば、カルボキシ基からプロトン(H+)が乖離して生じたカルボキシラートアニオン(-C(=O)-O-)が、カチオンとともに塩を形成した基が挙げられる。
保護膜形成用組成物(IV-1)及び前記保護膜形成用フィルム中の化合物(p)において、カルボキシ基は、プロトンが未解離(換言すると、カルボキシ基がそのままの状態)であってもよいし、プロトンが乖離して、カルボキシラートアニオンとなっていてもよい。
化合物(p)は、カルボキシ基又はカルボキシ基が塩を形成した基を有していることにより、保護膜形成用フィルム又は保護膜と、半導体ウエハ又は半導体チップと、の相互作用を向上させると推測される。その結果、保護膜又は保護膜形成用フィルムからの半導体チップの浮きが抑制されると推測される。
また、化合物(p)は、重合性基を有していることにより、保護膜中では、いずれかの重合体成分中に取り込まれ(換言すると共重合体を形成し)、保護膜から、この保護膜に隣接する層(膜)への移行が抑制されると推測される。保護膜形成用フィルムは、最終的には硬化によって保護膜を形成するため、このような化合物(p)由来の共重合体が保護膜中に安定して存在することにより、保護膜からの半導体チップの浮きを抑制する効果が、安定して発揮されると推測される。
カルボキシ基が塩を形成した基を有する化合物(p)は、1個又は2個以上のアニオン部と、1個又は2個以上のカチオンと、を含んで構成される。前記アニオン部は、その1個あたりに、1個又は2個以上のカルボキシラートアニオンを有する。
すなわち、化合物(p)一分子中のカルボキシラートアニオンの数は、1個のみであってもよいし、2個以上であってもよい。
同様に、化合物(p)一分子中の前記アニオン部の数は、1個のみであってもよいし、2個以上であってもよく、2個以上である場合、これらアニオン部は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。すなわち、化合物(p)一分子中のアニオン部は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、特に限定されない。
化合物(p)一分子中のカルボキシラートアニオンは、すべてカルボキシ基が塩を形成した基を構成していてもよいし、一部のみカルボキシ基が塩を形成した基を構成していてもよいが、通常は、すべてカルボキシ基が塩を形成した基を構成していることが好ましい。
化合物(p)中のカチオンの価数は特に限定されず、1(1価)であってもよいし、2(2価)以上であってもよい。
化合物(p)一分子中のカチオンの数は、1個のみであってもよいし、2個以上であってもよく、2個以上である場合、これらカチオンは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。すなわち、化合物(p)一分子中のカチオンは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、特に限定されない。
化合物(p)一分子中のカチオンは、すべてカルボキシ基が塩を形成した基を構成していてもよいし、一部のみカルボキシ基が塩を形成した基を構成していてもよいが、通常は、すべてカルボキシ基が塩を形成した基を構成していることが好ましい。
化合物(p)一分子中の、カルボキシ基が塩を形成した基は、1個のみであってもよいし、2個以上であってもよく、2個以上である場合、これら基は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。すなわち、化合物(p)一分子中の、カルボキシ基が塩を形成した基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、特に限定されない。
カルボキシ基が塩を形成した基を有する化合物(p)としては、カチオンの種類及び価数に応じて種々の形態が挙げられる。このような化合物(p)として、より具体的には、例えば、1個のアニオン部と1個のカチオンとから構成されたもの;2個以上のアニオン部と1個のカチオンとから構成されたもの;1個のアニオン部と2個以上のカチオンとから構成されたもの;2個以上のアニオン部と2個以上のカチオンとから構成されたもの等が挙げられる。
カルボキシ基が塩を形成した基を有する化合物(p)は、分子全体として電気的に中性であること、すなわち、化合物(p)一分子中のカチオンの価数の合計値とアニオンの価数の合計値とは、同じであることが好ましい。
前記カチオンは、特に限定されず、無機カチオン及び有機カチオンのいずれであってもよい。
前記カチオンのうち、無機カチオンとしては、例えば、リチウムイオン(Li+)、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)等のアルカリ金属のイオン;マグネシウムイオン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)、バリウムイオン(Ba2+)等のアルカリ土類金属のイオン;アルミニウムイオン(Al3+)、亜鉛イオン(Zn2+)、スズイオン(Sn2+、Sn4+)等の典型金属のイオン;銅イオン(Cu+、Cu2+)、鉄イオン(Fe2+、Fe3+)、マンガンイオン、ニッケルイオン等の遷移金属のイオン;アンモニウムイオン(NH4
+)等の非金属のイオン等が挙げられる。
例えば、カチオンがナトリウムイオンである場合の、カルボキシ基が塩を形成した基は、式「-C(=O)-O- Na+」で表される。
前記カチオンのうち、有機カチオンとしては、例えば、アミン化合物由来のカチオン、第4級アンモニウムカチオン等が挙げられる。
前記アミン化合物由来のカチオンとしては、例えば、第1級アミン、第2級アミン又は第3級アミンが、プロトン化されたカチオンが挙げられる。
前記第4級アンモニウムカチオンとしては、例えば、1個の窒素原子に4個の一価の炭化水素基が結合したカチオンが挙げられる。
前記カチオンのうち、非金属のイオンである無機カチオンと、有機カチオンと、で好ましいものとしては、例えば、一般式「(Z1)4N+(式中、Z1は、水素原子、アルキル基又はアリール基であり、複数個のZ1は互いに同一でも異なっていてもよく、2個以上のZ1がアルキル基である場合、これらアルキル基は相互に結合して環を形成していてもよい。)」で表されるカチオンが挙げられる。
このようなカチオンによって構成された、カルボキシ基が塩を形成した基は、一般式「-C(=O)-O- N+(Z1)4(式中、Z1は上記と同様である。)」で表される。
前記一般式中、複数個(すなわち4個)のZ1は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
Z1における前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
Z1における前記アリール基は、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
Z1における直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基の炭素数は、1~10であることが好ましい。このような炭素数のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、3-エチルブチル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1,1-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、4,4-ジメチルペンチル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、4-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、1-プロピルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、5-エチルヘキシル基、1,1-ジメチルヘキシル基、2,2-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、4,4-ジメチルヘキシル基、5,5-ジメチルヘキシル基、1-プロピルペンチル基、2-プロピルペンチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
Z1における直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基の炭素数は、例えば、1~8、1~5及び1~3のいずれかであってもよいが、これらは前記炭素数の一例である。
Z1における環状の前記アルキル基の炭素数は、3~10であることが好ましい。このような炭素数のアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、トリシクロデシル基等が挙げられる。
Z1における環状の前記アルキル基の炭素数は、例えば、3~8及び3~6のいずれかであってもよいが、これらは前記炭素数の一例である。
2個以上(すなわち、2個、3個又は4個)のZ1が前記アルキル基である場合、これら2個以上のアルキル基は相互に結合して、これらアルキル基が結合している窒素原子と共に環を形成していてもよい。この場合の2個以上のアルキル基の互いの結合位置は特に限定されず、形成される前記環は、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
Z1における前記アリール基の炭素数は、6~20であることが好ましい。このような炭素数のアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、キシリル基(別名:ジメチルフェニル基)等が挙げられ、これらアリール基の1個以上の水素原子が、さらにこれらアリール基や、Z1における前記アルキル基で置換されたものも挙げられる。これら置換基を有するアリール基は、置換基も含めて炭素数が6~20であることが好ましい。
化合物(p)は、その一分子中に、カルボキシ基のみを有していてもよいし、カルボキシ基が塩を形成した基のみを有していてもよいし、カルボキシ基及びカルボキシ基が塩を形成した基をともに有していてもよい。
化合物(p)一分子中の、カルボキシ基及びカルボキシ基が塩を形成した基の数は、それぞれ1個のみであってもよいし、2個以上であってもよい。
そして、化合物(p)一分子中の、カルボキシ基及びカルボキシ基が塩を形成した基の総数は、特に限定されないが、1~3個であることが好ましく、1~2個であることがより好ましい。
化合物(p)において、カルボキシ基及びカルボキシ基が塩を形成した基の位置は、特に限定されない。例えば、鎖状構造の化合物(p)において、これらの基は、主鎖の末端部に結合していてもよい(換言すると主鎖の末端部であってもよい)し、非末端部に結合していてもよい。なお、本明細書において、「主鎖」とは、鎖状骨格のうち、これを構成する原子数が最多となるものを意味する。
化合物(p)においては、1個の原子に結合している、カルボキシ基又はカルボキシ基が塩を形成した基の数は、1個のみであってもよいし、2個以上(例えば、前記原子が炭素原子である場合には、2~4個)であってもよい。
化合物(p)中の前記重合性基としては、例えば、重合性不飽和結合を有する基が挙げられ、なかでもエチレン性不飽和結合(すなわち、二重結合、C=C)を有する基が好ましい。
化合物(p)一分子中の前記重合性基の数は、1個のみであってもよいし、2個以上であってもよいが、1~3個であることが好ましく、1~2個であることがより好ましい。
化合物(p)において、前記重合性基の位置は、特に限定されない。例えば、鎖状構造の化合物(p)において、重合性基は、主鎖の末端部であってもよいし、非末端部であってもよい。ただし、通常、重合性基は、主鎖の末端部であることが好ましい。
化合物(p)は、カルボキシ基又はカルボキシ基が塩を形成した基と、重合性基と、を有し、さらにこれら基以外に、エステル結合を有することが好ましく、前記エステル結合として、カルボン酸エステル結合(すなわち、式「-C(=O)-O-」で表される基、カルボニルオキシ基)を有することがより好ましい。このような化合物(p)を用いることで、保護膜又は保護膜形成用フィルムからの半導体チップの浮きを抑制する効果がより高くなる。
化合物(p)一分子中の前記エステル結合の数は、1個のみであってもよいし、2個以上であってもよいが、1~4個であることが好ましく、1~3個であることがより好ましい。
化合物(p)で好ましいものとしては、例えば、脂肪族ジカルボン酸モノ(メタ)アクリロイルオキシアルキルエステル(換言すると、脂肪族ジカルボン酸の1個のカルボキシ基の水素原子が、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基で置換された化合物);芳香族ジカルボン酸モノ(メタ)アクリロイルオキシアルキルエステル(換言すると、芳香族ジカルボン酸の1個のカルボキシ基の水素原子が、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基で置換された化合物);前記脂肪族ジカルボン酸モノ(メタ)アクリロイルオキシアルキルエステルのカルボキシ基が、上述のカルボキシ基が塩を形成した基に置換された化合物;前記芳香族ジカルボン酸モノ(メタ)アクリロイルオキシアルキルエステルのカルボキシ基が、上述のカルボキシ基が塩を形成した基に置換された化合物等が挙げられる。
前記脂肪族ジカルボン酸は、2個のカルボキシ基を有し、これらカルボキシ基以外の部位が、直鎖状、分岐鎖状又は環状である非芳香族性の2価の炭化水素基である化合物を意味する。
前記炭化水素基の炭素数は、1~10であることが好ましく、2~8であることがより好ましく、2~6であることが特に好ましく、例えば、2~5、及び2~4のいずれかであってもよい。
前記炭化水素基は、アルキレン基であることが好ましい。
前記芳香族ジカルボン酸は、2個のカルボキシ基を有し、これらカルボキシ基以外の部位が、2価の芳香族炭化水素基(すなわちアリーレン基)である化合物を意味する。
前記芳香族炭化水素基は、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
前記芳香族炭化水素基としては、例えば、Z1における前記アリール基から1個の水素原子を除いた構造の2価の基(すなわちアリーレン基)が挙げられる。
前記芳香族炭化水素基の炭素数は、6~20であることが好ましく、6~15であることがより好ましく、6~12であることが特に好ましい。
脂肪族ジカルボン酸モノ(メタ)アクリロイルオキシアルキルエステルと、そのカルボキシ基が、上述のカルボキシ基が塩を形成した基に置換された化合物において、(メタ)アクリロイルオキシ基に結合しているアルキル基(換言すると、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基中のアルキレン基)は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、鎖状構造と環状構造をともに有していてもよいが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、1~10であることが好ましく、2~8であることがより好ましく、2~6であることが特に好ましく、例えば、2~5、及び2~4のいずれかであってもよい。
環状の前記アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、3~10であることが好ましく、4~8であることがより好ましく、5~6であることが特に好ましい。
化合物(p)は、鎖状構造を有し、カルボキシ基又はカルボキシ基が塩を形成した基と、重合性基とが、いずれも主鎖の末端部であり、主鎖の非末端部にエステル結合を有するものが好ましい。
このような好ましい化合物(p)としては、脂肪族ジカルボン酸モノ(メタ)アクリロイルオキシアルキルエステル;前記脂肪族ジカルボン酸モノ(メタ)アクリロイルオキシアルキルエステルのカルボキシ基が、上述のカルボキシ基が塩を形成した基に置換された化合物が挙げられる。
化合物(p)で特に好ましいものとしては、コハク酸1-[2-(アクリロイルオキシ)エチル](すなわち、コハク酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、CH2=CH-C(=O)-O-CH2CH2-O-C(=O)-CH2CH2-C(=O)-OH);コハク酸1-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル](すなわち、CH2=C(-CH3)-C(=O)-O-CH2CH2-O-C(=O)-CH2CH2-C(=O)-OH);グルタル酸1-[2-(アクリロイルオキシ)エチル](すなわち、CH2=CH-C(=O)-O-CH2CH2-O-C(=O)-CH2CH2CH2-C(=O)-OH);コハク酸1-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]のカルボキシ基が、上述のカルボキシ基が塩を形成した基に置換された化合物;コハク酸1-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]のカルボキシ基が、上述のカルボキシ基が塩を形成した基に置換された化合物;グルタル酸1-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]のカルボキシ基が、上述のカルボキシ基が塩を形成した基に置換された化合物が挙げられる。
化合物(p)の分子量は、特に限定されないが、100~1000であることが好ましく、100~700であることがより好ましく、100~500であることがさらに好まし、100~300であることが特に好ましい。
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有する化合物(p)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
保護膜形成用組成物(IV-1)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、化合物(p)の含有量の割合(すなわち、保護膜形成用フィルムにおける、保護膜形成用フィルムの総質量に対する、化合物(p)の含有量の割合)は、0.15質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.25質量%以上であることが特に好ましい。前記含有量の割合が前記下限値以上であることで、保護膜又は保護膜形成用フィルムからの半導体チップの浮きを抑制する効果がより高くなる。
一方、前記含有量の割合(保護膜形成用フィルムにおける、保護膜形成用フィルムの総質量に対する、化合物(p)の含有量の割合)の上限値は特に限定されない。ただし、化合物(p)の過剰使用による影響が避けられ、その結果、保護膜の硬化度がより高くなり、保護膜の特性がより向上する点では、前記含有量の割合は、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
前記含有量の割合(保護膜形成用フィルムにおける、保護膜形成用フィルムの総質量に対する、化合物(p)の含有量の割合)は、上述の好ましい下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、前記含有量の割合は、好ましくは0.15~3質量%、より好ましくは0.2~2質量%、特に好ましくは0.25~1質量%である。ただし、これらは前記含有量の割合の一例である。
[エネルギー線硬化性成分(a)]
エネルギー線硬化性成分(a)は、エネルギー線の照射によって硬化する成分であり、保護膜形成用フィルムに造膜性や、可撓性等を付与するための成分でもある。
エネルギー線硬化性成分(a)としては、例えば、エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)が挙げられる。前記重合体(a1)は、その少なくとも一部が、後述する架橋剤(f)によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
なお、本明細書において、重量平均分子量とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値を意味する。
(エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1))
エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1)としては、例えば、他の化合物が有する基と反応可能な官能基を有するアクリル系重合体(a11)と、前記官能基と反応する基、及びエネルギー線硬化性二重結合等のエネルギー線硬化性基を有するエネルギー線硬化性化合物(a12)と、が重合してなるアクリル系樹脂(a1-1)が挙げられる。
他の化合物が有する基と反応可能な前記官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基(換言すると、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基)、エポキシ基等が挙げられる。ただし、半導体ウエハや半導体チップ等の回路の腐食を防止するという点では、前記官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
これらの中でも、前記官能基は、水酸基であることが好ましい。
・官能基を有するアクリル系重合体(a11)
前記官能基を有するアクリル系重合体(a11)としては、例えば、前記官能基を有するアクリル系モノマーと、前記官能基を有しないアクリル系モノマーと、が共重合してなるものが挙げられ、これらモノマー以外に、さらにアクリル系モノマー以外のモノマー(換言すると非アクリル系モノマー)が共重合したものであってもよい。
また、前記アクリル系重合体(a11)は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
前記官能基を有するアクリル系モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、置換アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
前記水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ビニルアルコール、アリルアルコール等の非(メタ)アクリル系不飽和アルコール(換言すると、(メタ)アクリロイル骨格を有しない不飽和アルコール)等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様である。
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸(すなわち、エチレン性不飽和結合を有するモノカルボン酸);フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸(すなわち、エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸);前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物;2-カルボキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルエステル等が挙げられる。
前記官能基を有するアクリル系モノマーは、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマーが好ましく、水酸基含有モノマーがより好ましい。
前記アクリル系重合体(a11)を構成する、前記官能基を有するアクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
前記官能基を有しないアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
また、前記官能基を有しないアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル等を含む、芳香族基を有する(メタ)アクリル酸エステル;非架橋性の(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等も挙げられる。
前記アクリル系重合体(a11)を構成する、前記官能基を有しないアクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
前記非アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
前記アクリル系重合体(a11)を構成する前記非アクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
前記アクリル系重合体(a11)において、これを構成する構成単位の全量に対する、前記官能基を有するアクリル系モノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、0.1~50質量%であることが好ましく、1~40質量%であることがより好ましく、3~30質量%であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、前記アクリル系重合体(a11)と前記エネルギー線硬化性化合物(a12)との共重合によって得られた前記アクリル系樹脂(a1-1)において、エネルギー線硬化性基の含有量は、保護膜の硬化の程度を好ましい範囲に容易に調節可能となる。
前記アクリル系樹脂(a1-1)を構成する前記アクリル系重合体(a11)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
保護膜形成用組成物(IV-1)において、保護膜形成用組成物(IV-1)の総質量に対する、アクリル系樹脂(a1-1)の含有量の割合は、1~40質量%であることが好ましく、2~30質量%であることがより好ましく、3~20質量%であることが特に好ましい。
・エネルギー線硬化性化合物(a12)
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、前記アクリル系重合体(a11)が有する官能基と反応可能な基として、イソシアネート基、エポキシ基及びカルボキシ基からなる群より選択される1種又は2種以上を有するものが好ましく、前記基としてイソシアネート基を有するものがより好ましい。前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、例えば、前記基としてイソシアネート基を有する場合、このイソシアネート基が、前記官能基として水酸基を有するアクリル系重合体(a11)のこの水酸基と容易に反応する。
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1分子中に前記エネルギー線硬化性基を1~5個有することが好ましく、1~3個有することがより好ましい。
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと、の反応により得られる、アクリロイルモノイソシアネート化合物;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと、の反応により得られる、アクリロイルモノイソシアネート化合物等が挙げられる。
これらの中でも、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートであることが好ましい。
前記アクリル系樹脂(a1-1)を構成する前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
前記アクリル系樹脂(a1-1)において、前記アクリル系重合体(a11)に由来する前記官能基の含有量に対する、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)に由来するエネルギー線硬化性基の含有量の割合は、20~120モル%であることが好ましく、35~100モル%であることがより好ましく、50~100モル%であることが特に好ましい。前記含有量の割合がこのような範囲であることで、硬化により形成された保護膜の接着力がより大きくなる。なお、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が一官能(すなわち、前記基を1分子中に1個有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%となるが、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が多官能(すなわち、前記基を1分子中に2個以上有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%を超えることがある。
前記重合体(a1)の重量平均分子量(Mw)は、100000~2000000であることが好ましく、300000~1500000であることがより好ましい。
前記重合体(a1)が、その少なくとも一部が架橋剤(f)によって架橋されたものである場合、前記重合体(a1)は、前記アクリル系重合体(a11)を構成するものとして説明した、上述のモノマーのいずれにも該当せず、かつ架橋剤(f)と反応する基を有するモノマーが重合して、架橋剤(f)と反応する基において架橋されたものであってもよいし、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)に由来する、前記官能基と反応する基において、架橋されたものであってもよい。
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有する前記重合体(a1)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
(エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2))
エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)中の、前記エネルギー線硬化性基としては、エネルギー線硬化性二重結合を含む基が挙げられ、好ましいものとしては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
前記化合物(a2)は、上記の条件を満たすものであれば、特に限定されないが、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂等が挙げられる。
前記化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物としては、例えば、多官能のモノマー又はオリゴマー等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
前記アクリレート系化合物としては、例えば、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル]プロパン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート(トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート)、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリロキシプロパン等の2官能(メタ)アクリレート;
トリス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー等の多官能(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
前記化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂としては、例えば、「特開2013-194102号公報」の段落0043等に記載されているものを用いることができる。このような樹脂は、後述する熱硬化性成分(h)を構成する樹脂にも該当するが、本発明においては前記化合物(a2)として取り扱う。
前記化合物(a2)の分子量は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有する前記化合物(a2)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
[エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)]
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムは、前記エネルギー線硬化性成分(a)として前記化合物(a2)を含有する場合、さらにエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)も含有することが好ましい。
前記重合体(b)は、その少なくとも一部が後述する架橋剤(f)によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、アクリル系重合体、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル、ゴム系樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、ブチラール樹脂、ポリエステルウレタン樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、前記重合体(b)は、アクリル系重合体(以下、「アクリル系重合体(b-1)」と略記することがある)であることが好ましい。
アクリル系重合体(b-1)は、公知のものでよく、例えば、1種のアクリル系モノマーの単独重合体であってもよいし、2種以上のアクリル系モノマーの共重合体であってもよいし、1種又は2種以上のアクリル系モノマーと、1種又は2種以上のアクリル系モノマー以外のモノマー(すなわち非アクリル系モノマー)と、の共重合体であってもよい。
アクリル系重合体(b-1)を構成する前記アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、先に説明したとおりである。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
前記環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル等が挙げられる。
前記グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
前記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
前記置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等が挙げられる。
アクリル系重合体(b-1)を構成する前記非アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
少なくとも一部が架橋剤(f)によって架橋された、前記エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、前記重合体(b)中の反応性官能基が架橋剤(f)と反応したものが挙げられる。
前記反応性官能基は、架橋剤(f)の種類等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、架橋剤(f)がポリイソシアネート化合物である場合には、前記反応性官能基としては、水酸基、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられ、これらの中でも、イソシアネート基との反応性が高い水酸基が好ましい。また、架橋剤(f)がエポキシ系化合物である場合には、前記反応性官能基としては、カルボキシ基、アミノ基、アミド基等が挙げられ、これらの中でもエポキシ基との反応性が高いカルボキシ基が好ましい。ただし、半導体ウエハや半導体チップの回路の腐食を防止するという点では、前記反応性官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
前記反応性官能基を有する、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、少なくとも前記反応性官能基を有するモノマーを重合させて得られたものが挙げられる。アクリル系重合体(b-1)の場合であれば、これを構成するモノマーとして挙げた、前記アクリル系モノマー及び非アクリル系モノマーのいずれか一方又は両方として、前記反応性官能基を有するものを用いればよい。反応性官能基として水酸基を有する前記重合体(b)としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを重合して得られたものが挙げられ、これ以外にも、先に挙げた前記アクリル系モノマー又は非アクリル系モノマーにおいて、1個又は2個以上の水素原子が前記反応性官能基で置換されてなるモノマーを重合して得られたものが挙げられる。
反応性官能基を有する前記重合体(b)において、これを構成する構成単位の全量に対する、反応性官能基を有するモノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、1~25質量%であることが好ましく、2~20質量%であることがより好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、前記重合体(b)において、架橋の程度がより好ましい範囲となる。
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の重量平均分子量(Mw)は、保護膜形成用組成物(IV-1)の造膜性がより良好となる点から、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましい。
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有する、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
保護膜形成用組成物(IV-1)としては、化合物(p)以外に、前記重合体(a1)及び前記化合物(a2)のいずれか一方又は両方を含有するものが挙げられる。そして、保護膜形成用組成物(IV-1)は、前記化合物(a2)を含有する場合、さらにエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)も含有することが好ましく、この場合、さらに前記(a1)を含有することも好ましい。また、保護膜形成用組成物(IV-1)は、前記化合物(a2)を含有せず、前記重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)をともに含有していてもよい。
保護膜形成用組成物(IV-1)が、前記重合体(a1)、前記化合物(a2)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)を含有する場合、保護膜形成用組成物(IV-1)において、前記化合物(a2)の含有量は、前記重合体(a1)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の総含有量100質量部に対して、10~400質量部であることが好ましく、30~350質量部であることがより好ましい。
保護膜形成用組成物(IV-1)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、前記エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の合計含有量の割合(すなわち、保護膜形成用フィルムにおける、保護膜形成用フィルムの総質量に対する、前記エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の合計含有量の割合)は、5~90質量%であることが好ましく、10~80質量%であることがより好ましく、15~70質量%であることが特に好ましく、例えば、20~60質量%、及び25~50質量%のいずれかであってもよい。前記合計含有量の割合がこのような範囲であることで、保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化性がより良好となる。
保護膜形成用組成物(IV-1)が前記エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)を含有する場合、保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムにおいて、前記重合体(b)の含有量は、エネルギー線硬化性成分(a)の含有量100質量部に対して、50~400質量部であることが好ましく、100~350質量部であることがより好ましく、150~300質量部であることが特に好ましい。前記重合体(b)の前記含有量がこのような範囲であることで、保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化性がより良好となる。
保護膜形成用組成物(IV-1)は、目的に応じて、エネルギー線硬化性成分(a)、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)及び化合物(p)以外の、光重合開始剤(c)、充填材(d)、カップリング剤(e)、架橋剤(f)、着色剤(g)、熱硬化性成分(h)、硬化促進剤(i)、及び汎用添加剤(z)からなる群より選択される1種又は2種以上を含有していてもよい。
例えば、前記エネルギー線硬化性成分(a)及び熱硬化性成分(h)を含有する保護膜形成用組成物(IV-1)を用いることにより、形成される保護膜形成用フィルムは、加熱によって被着体に対する接着力が向上し、この保護膜形成用フィルムから形成された保護膜の強度も向上する。
[光重合開始剤(c)]
光重合開始剤(c)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;ベンゾフェノン、2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のベンゾフェノン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;2-クロロアントラキノン等が挙げられる。
また、光重合開始剤(c)としては、例えば、1-クロロアントラキノン等のキノン化合物;アミン等の光増感剤等を用いることもできる。
保護膜形成用組成物(IV-1)が含有する光重合開始剤(c)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
光重合開始剤(c)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)において、光重合開始剤(c)の含有量は、エネルギー線硬化性化合物(a)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.03~15質量部であることがより好ましく、0.05~10質量部であることが特に好ましい。
[充填材(d)]
保護膜形成用フィルムが充填材(d)を含有することにより、保護膜形成用フィルムを硬化して得られた保護膜は、熱膨張係数の調整が容易となる。そして、この熱膨張係数を保護膜の形成対象物に対して最適化することで、保護膜形成用複合シートを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。また、保護膜形成用フィルムが充填材(d)を含有することにより、保護膜の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
充填材(d)としては、例えば、熱伝導性材料からなるものが挙げられる。
充填材(d)は、有機充填材及び無機充填材のいずれでもよいが、無機充填材であることが好ましい。
好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
これらの中でも、無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましい。
充填材(d)の平均粒子径は、特に限定されないが、0.01~20μmであることが好ましく、0.1~15μmであることがより好ましく、0.3~10μmであることが特に好ましい。充填材(d)の平均粒子径がこのような範囲であることで、保護膜の形成対象物に対する接着性を維持しつつ、保護膜の光の透過率の低下を抑制できる。
なお、本明細書において「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、レーザー回折散乱法によって求められた粒度分布曲線における、積算値50%での粒子径(D50)の値を意味する。
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有する充填材(d)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
充填材(d)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する充填材(d)の含有量の割合(すなわち、保護膜形成用フィルムにおける、保護膜形成用フィルムの総質量に対する、充填材(d)の含有量の割合)は、10~85質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましく、30~75質量%であることが特に好ましく、例えば、40~70質量%、及び45~65質量%のいずれかであってもよい。充填材(d)の含有量がこのような範囲であることで、上記の熱膨張係数の調整がより容易となる。
[カップリング剤(e)]
カップリング剤(e)として、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有するものを用いることにより、保護膜形成用フィルムの被着体に対する接着性及び密着性を向上させることができる。また、カップリング剤(e)を用いることで、保護膜形成用フィルムを硬化して得られた保護膜は、耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。
カップリング剤(e)は、エネルギー線硬化性成分(a)、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
好ましい前記シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有するカップリング剤(e)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
カップリング剤(e)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムにおいて、カップリング剤(e)の含有量は、エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の総含有量100質量部に対して、0.03~20質量部であることが好ましく、0.05~10質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることが特に好ましい。カップリング剤(e)の前記含有量が前記下限値以上であることで、充填材(d)の樹脂への分散性の向上や、保護膜形成用フィルムの被着体との接着性の向上など、カップリング剤(e)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、カップリング剤(e)の前記含有量が前記上限値以下であることで、アウトガスの発生がより抑制される。
[架橋剤(f)]
架橋剤(f)を用いて、上述のエネルギー線硬化性成分(a)やエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)を架橋することにより、保護膜形成用フィルムの初期接着力及び凝集力を調節できる。
架橋剤(f)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(すなわち、金属キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(すなわち、アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
前記有機多価イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物及び脂環族多価イソシアネート化合物(以下、これら化合物をまとめて「芳香族多価イソシアネート化合物等」と略記することがある);前記芳香族多価イソシアネート化合物等の三量体、イソシアヌレート体及びアダクト体;前記芳香族多価イソシアネート化合物等とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。前記「アダクト体」は、前記芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物又は脂環族多価イソシアネート化合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン又はヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物を意味する。前記アダクト体の例としては、後述するようなトリメチロールプロパンのキシリレンジイソシアネート付加物等が挙げられる。また、「末端イソシアネートウレタンプレポリマー」とは、ウレタン結合を有するとともに、分子の末端部にイソシアネート基を有するプレポリマーを意味する。
前記有機多価イソシアネート化合物として、より具体的には、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート;2,6-トリレンジイソシアネート;1,3-キシリレンジイソシアネート;1,4-キシリレンジイソシアネート;ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート;3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート;トリメチロールプロパン等のポリオールのすべて又は一部の水酸基に、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートのいずれか1種又は2種以上が付加した化合物;リジンジイソシアネート等が挙げられる。
前記有機多価イミン化合物としては、例えば、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等が挙げられる。
架橋剤(f)として有機多価イソシアネート化合物を用いる場合、エネルギー線硬化性成分(a)又はエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、水酸基含有重合体を用いることが好ましい。架橋剤(f)がイソシアネート基を有し、エネルギー線硬化性成分(a)又はエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)が水酸基を有する場合、架橋剤(f)とエネルギー線硬化性成分(a)又はエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)との反応によって、保護膜形成用フィルムに架橋構造を簡便に導入できる。
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有する架橋剤(f)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
架橋剤(f)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)において、架橋剤(f)の含有量は、エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の総含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることが特に好ましい。架橋剤(f)の前記含有量が前記下限値以上であることで、架橋剤(f)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、架橋剤(f)の前記含有量が前記上限値以下であることで、架橋剤(f)の過剰使用が抑制される。
[着色剤(g)]
着色剤(g)としては、例えば、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料等、公知のものが挙げられる。
前記有機系顔料及び有機系染料としては、例えば、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ピランスロン系色素及びスレン系色素等が挙げられる。
前記無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられる。
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有する着色剤(g)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
着色剤(g)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムの着色剤(g)の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよい。例えば、着色剤(g)の含有量を調節し、保護膜の光透過性を調節することにより、印字視認性を調節する場合、保護膜形成用組成物(IV-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する着色剤(g)の含有量の割合(すなわち、保護膜形成用フィルムにおける、保護膜形成用フィルムの総質量に対する、着色剤(g)の含有量の割合)は、0.1~10質量%であることが好ましく、0.4~7.5質量%であることがより好ましく、0.8~5質量%であることが特に好ましい。着色剤(g)の前記含有量が前記下限値以上であることで、着色剤(g)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、着色剤(g)の前記含有量が前記上限値以下であることで、着色剤(g)の過剰使用が抑制される。
[熱硬化性成分(h)]
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有する熱硬化性成分(h)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
熱硬化性成分(h)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、熱硬化性ポリイミド、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂等が挙げられ、エポキシ系熱硬化性樹脂が好ましい。
(エポキシ系熱硬化性樹脂)
エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(h1)及び熱硬化剤(h2)からなる。
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有するエポキシ系熱硬化性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
・エポキシ樹脂(h1)
エポキシ樹脂(h1)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
エポキシ樹脂(h1)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂は、不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂よりもアクリル系樹脂との相溶性が高い。そのため、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いることで、保護膜形成用複合シートを用いて得られたパッケージの信頼性が向上する。
不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、多官能系エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が不飽和炭化水素基を有する基に変換されてなる化合物が挙げられる。このような化合物は、例えば、エポキシ基へ(メタ)アクリル酸又はその誘導体を付加反応させることにより得られる。
また、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を構成する芳香環等に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合した化合物等が挙げられる。
不飽和炭化水素基は、重合性を有する不飽和基であり、その具体的な例としては、エテニル基(ビニル基)、2-プロペニル基(アリル基)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基等が挙げられ、アクリロイル基が好ましい。
エポキシ樹脂(h1)の数平均分子量は、特に限定されないが、保護膜形成用フィルムの硬化性、並びに保護膜の強度及び耐熱性の点から、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
エポキシ樹脂(h1)のエポキシ当量は、100~1000g/eqであることが好ましく、150~800g/eqであることがより好ましい。
エポキシ樹脂(h1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
・熱硬化剤(h2)
熱硬化剤(h2)は、エポキシ樹脂(h1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(h2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
熱硬化剤(h2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、アラルキルフェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(h2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド等が挙げられる。
熱硬化剤(h2)は、不飽和炭化水素基を有するものでもよい。
不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(h2)としては、例えば、フェノール樹脂の水酸基の一部が、不飽和炭化水素基を有する基で置換されてなる化合物、フェノール樹脂の芳香環に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合してなる化合物等が挙げられる。
熱硬化剤(h2)における前記不飽和炭化水素基は、上述の不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂における不飽和炭化水素基と同様のものである。
熱硬化剤(h2)としてフェノール系硬化剤を用いる場合には、保護膜の支持シートからの剥離性が向上する点から、熱硬化剤(h2)は軟化点又はガラス転移温度が高いものが好ましい。
熱硬化剤(h2)のうち、例えば、多官能フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、アラルキルフェノール樹脂等の樹脂成分の数平均分子量は、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
熱硬化剤(h2)のうち、例えば、ビフェノール、ジシアンジアミド等の非樹脂成分の分子量は、特に限定されないが、例えば、60~500であることが好ましい。
熱硬化剤(h2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
熱硬化性成分(h)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムにおいて、熱硬化剤(h2)の含有量は、エポキシ樹脂(h1)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
熱硬化性成分(h)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムにおいて、熱硬化性成分(h)の含有量(例えば、エポキシ樹脂(h1)及び熱硬化剤(h2)の総含有量)は、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の含有量100質量部に対して、1~500質量部であることが好ましい。
[硬化促進剤(i)]
硬化促進剤(i)は、保護膜形成用フィルムの硬化速度を調整するための成分である。
好ましい硬化促進剤(i)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
硬化促進剤(i)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
硬化促進剤(i)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムの硬化促進剤(i)の含有量は、特に限定されず、併用する成分に応じて適宜選択すればよい。
[汎用添加剤(z)]
汎用添加剤(z)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。好ましいも汎用添加剤(z)としては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ゲッタリング剤等が挙げられる。
保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムが含有する汎用添加剤(z)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
汎用添加剤(z)を用いる場合、保護膜形成用組成物(IV-1)及び保護膜形成用フィルムの汎用添加剤(z)の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
[溶媒]
保護膜形成用組成物(IV-1)は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する保護膜形成用組成物(IV-1)は、取り扱い性が良好となる。
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(別名:2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(すなわち、アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
保護膜形成用組成物(IV-1)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
保護膜形成用組成物(IV-1)が含有する溶媒は、保護膜形成用組成物(IV-1)中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン、トルエン又は酢酸エチル等であることが好ましい。
<<保護膜形成用組成物の製造方法>>
保護膜形成用組成物(IV-1)等の保護膜形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
◇保護膜形成用フィルムの製造方法
前記保護膜形成用フィルムは、剥離フィルム(好ましくはその剥離処理面)上に保護膜形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで製造できる。このときの製造方法は、先に説明したとおりである。
なお、保護膜形成用フィルムは、例えば、図1に示すように、通常、その両面に剥離フィルムが貼り合わされた状態で保管される。そのためには、上記のように剥離フィルム上に形成した保護膜形成用フィルムの露出面(剥離フィルムを備えている側とは反対側の面)に、さらに剥離フィルム(好ましくはその剥離処理面)を貼り合わせればよい。
◇保護膜形成用フィルムの使用方法
前記保護膜形成用フィルムは、上述のように、支持シート上に設けることで、保護膜形成用複合シートを構成できる。保護膜形成用複合シートは、その保護膜形成用フィルムにより、半導体ウエハの裏面(電極形成面とは反対側の面)に貼付される。以降、この状態から、後述する製造方法により、目的とする半導体チップ及び半導体装置を製造できる。
一方、前記保護膜形成用フィルムは、支持シートではなく、半導体ウエハの裏面に先に設けてもよい。例えば、まず、保護膜形成用フィルムを半導体ウエハの裏面に貼付し、この保護膜形成用フィルムの露出面(半導体ウエハに貼付されている側とは反対側の面)に支持シートを貼り合わせるか、又はこの貼付した状態の保護膜形成用フィルムにエネルギー線を照射して、硬化させて保護膜としてから、この保護膜の露出面(半導体ウエハに貼付されている側とは反対側の面)に支持シートを貼り合わせて、保護膜形成用複合シートとする。以降、この状態から、後述する製造方法により、目的とする半導体チップ及び半導体装置を製造できる。
◇保護膜形成用複合シート
本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートは、支持シートを備え、前記支持シート上に、前記保護膜形成用フィルムを備えたものである。
本発明においては、保護膜形成用フィルムが硬化した後であっても、支持シート及び保護膜形成用フィルムの硬化物(換言すると、支持シート及び保護膜)の積層構造が維持されている限り、この積層構造体を「保護膜形成用複合シート」と称する。
本発明の保護膜形成用複合シートの使用対象である半導体ウエハの厚さは、特に限定されないが、後述する半導体チップへの分割がより容易となる点では、30~1000μmであることが好ましく、100~400μmであることがより好ましい。
以下、保護膜形成用複合シートの構成について、詳細に説明する。
◎支持シート
前記支持シートは、1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。支持シートが複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
好ましい支持シートとしては、例えば、基材を備え、前記基材上に粘着剤層が直接接触して積層されてなるもの(換言すると、基材及び粘着剤層がこの順に直接接触して積層されてなるもの);基材、中間層及び粘着剤層がこの順に、これらの厚さ方向において直接接触して積層されてなるもの;基材のみからなるもの等が挙げられる。
本発明の保護膜形成用複合シートの例を、このような支持シートの種類ごとに、以下、図面を参照しながら説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
なお、図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
ここに示す保護膜形成用複合シート1Aは、基材11を備え、基材11上に粘着剤層12を備え、粘着剤層12上に保護膜形成用フィルム13を備えている。支持シート10は、基材11及び粘着剤層12の積層体であり、保護膜形成用複合シート1Aは、換言すると、支持シート10の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)10a上に保護膜形成用フィルム13が積層された構成を有する。また、保護膜形成用複合シート1Aは、さらに保護膜形成用フィルム13上に剥離フィルム15を備えている。
保護膜形成用複合シート1Aにおいては、基材11の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)11aに粘着剤層12が積層され、粘着剤層12の一方の面(すなわち基材11側とは反対側の面、本明細書においては、「第1面」と称することがある)12aの全面に保護膜形成用フィルム13が積層され、保護膜形成用フィルム13の第1面13aの一部、すなわち、周縁部近傍の領域に治具用接着剤層16が積層され、保護膜形成用フィルム13の第1面13aのうち、治具用接着剤層16が積層されていない面と、治具用接着剤層16の、保護膜形成用フィルム13と接触していない面16a(上面及び側面)に、剥離フィルム15が積層されている。
保護膜形成用複合シート1Aにおいて、保護膜形成用フィルム13は、エネルギー線硬化性であり、化合物(p)を含有する。
治具用接着剤層16は、例えば、接着剤成分を含有する単層構造のものであってもよいし、芯材となるシートの両面に接着剤成分を含有する層が積層された複数層構造のものであってもよい。
図2に示す保護膜形成用複合シート1Aは、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム13の第1面13aに半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、治具用接着剤層16の面16aのうち上面が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
図3は、本発明の他の実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート1Bは、治具用接着剤層16を備えていない点以外は、図2に示す保護膜形成用複合シート1Aと同じである。すなわち、保護膜形成用複合シート1Bにおいては、基材11の第1面11aに粘着剤層12が積層され、粘着剤層12の第1面12aの全面に保護膜形成用フィルム13が積層され、保護膜形成用フィルム13の第1面13aの全面に剥離フィルム15が積層されている。
保護膜形成用複合シート1Bにおいて、保護膜形成用フィルム13は、エネルギー線硬化性であり、化合物(p)を含有する。
図3に示す保護膜形成用複合シート1Bは、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム13の第1面13aのうち、中央側の一部の領域に半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、周縁部近傍の領域が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
図4は、本発明のさらに他の実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート1Cは、粘着剤層12を備えていない点以外は、図2に示す保護膜形成用複合シート1Aと同じである。すなわち、保護膜形成用複合シート1Cにおいては、支持シート10が基材11のみからなる。そして、基材11の第1面11a(支持シート10の第1面10a)に保護膜形成用フィルム13が積層され、保護膜形成用フィルム13の第1面13aの一部、すなわち、周縁部近傍の領域に治具用接着剤層16が積層され、保護膜形成用フィルム13の第1面13aのうち、治具用接着剤層16が積層されていない領域と、治具用接着剤層16の面16a(上面及び側面)に、剥離フィルム15が積層されている。
保護膜形成用複合シート1Cにおいて、保護膜形成用フィルム13は、エネルギー線硬化性であり、化合物(p)を含有する。
図4に示す保護膜形成用複合シート1Cは、図2に示す保護膜形成用複合シート1Aと同様に、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム13の第1面13aに半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、治具用接着剤層16の面16aのうち上面が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
図5は、本発明のさらに他の実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート1Dは、治具用接着剤層16を備えていない点以外は、図4に示す保護膜形成用複合シート1Cと同じである。すなわち、保護膜形成用複合シート1Dにおいては、基材11の第1面11aに保護膜形成用フィルム13が積層され、保護膜形成用フィルム13の第1面13aの全面に剥離フィルム15が積層されている。
保護膜形成用複合シート1Dにおいて、保護膜形成用フィルム13は、エネルギー線硬化性であり、化合物(p)を含有する。
図5に示す保護膜形成用複合シート1Dは、図3に示す保護膜形成用複合シート1Bと同様に、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム13の第1面13aのうち、中央側の一部の領域に半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、周縁部近傍の領域が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
図6は、本発明のさらに他の実施形態に係る保護膜形成用複合シートを模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート1Eは、保護膜形成用フィルムの形状が異なる点以外は、図3に示す保護膜形成用複合シート1Bと同じである。すなわち、保護膜形成用複合シート1Eは、基材11を備え、基材11上に粘着剤層12を備え、粘着剤層12上に保護膜形成用フィルム23を備えている。支持シート10は、基材11及び粘着剤層12の積層体であり、保護膜形成用複合シート1Eは、換言すると、支持シート10の第1面10a上に保護膜形成用フィルム23が積層された構成を有する。また、保護膜形成用複合シート1Eは、さらに保護膜形成用フィルム23上に剥離フィルム15を備えている。
保護膜形成用複合シート1Eにおいては、基材11の第1面11aに粘着剤層12が積層され、粘着剤層12の第1面12aの一部、すなわち、中央側の領域に保護膜形成用フィルム23が積層されている。そして、粘着剤層12の第1面12aのうち、保護膜形成用フィルム23が積層されていない領域と、保護膜形成用フィルム23の、粘着剤層12と接触していない面23a(上面及び側面)の上に、剥離フィルム15が積層されている。
保護膜形成用複合シート1Eを上方から見下ろして平面視したときに、保護膜形成用フィルム23は粘着剤層12よりも表面積が小さく、例えば、円形状等の形状を有する。
保護膜形成用複合シート1Eにおいて、保護膜形成用フィルム23は、エネルギー線硬化性であり、化合物(p)を含有する。
図6に示す保護膜形成用複合シート1Eは、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム23の表面23aに半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、粘着剤層12の第1面12aのうち、保護膜形成用フィルム23が積層されていない領域が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
なお、図6に示す保護膜形成用複合シート1Eにおいては、粘着剤層12の第1面12aのうち、保護膜形成用フィルム23が積層されていない領域に、図2及び図4に示すものと同様に治具用接着剤層が積層されていてもよい(図示略)。このような治具用接着剤層を備えた保護膜形成用複合シート1Eは、図2及び図4に示す保護膜形成用複合シートと同様に、治具用接着剤層の表面が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
このように、保護膜形成用複合シートは、支持シート及び保護膜形成用フィルムがどのような形態であっても、治具用接着剤層を備えたものであってもよい。ただし、通常は、図2及び図4に示すように、治具用接着剤層を備えた保護膜形成用複合シートとしては、保護膜形成用フィルム上に治具用接着剤層を備えたものが好ましい。
本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートは、図2~図6に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、図2~図6に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
例えば、図4及び図5に示す保護膜形成用複合シートにおいては、基材11と保護膜形成用フィルム13との間に、中間層が設けられていてもよい。すなわち、本発明の保護膜形成用複合シートにおいて、支持シートは、基材及び中間層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されていてもよい。中間層としては、目的に応じて任意のものを選択できる。
また、図2、図3及び図6に示す保護膜形成用複合シートにおいては、基材11と粘着剤層12との間に中間層が設けられていてもよい。すなわち、本発明の保護膜形成用複合シートにおいて、支持シートは、基材、中間層及び粘着剤層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されていてもよい。ここで中間層とは、図4及び図5に示す保護膜形成用複合シートにおいて設けられていてもよい中間層と同じである。
また、図2~図6に示す保護膜形成用複合シートは、前記中間層以外の層が、任意の箇所に設けられていてもよい。
また、保護膜形成用複合シートにおいては、剥離フィルムと、この剥離フィルムと直接接触している層との間に、一部隙間が生じていてもよい。
また、保護膜形成用複合シートにおいては、各層の大きさや形状は、目的に応じて任意に調節できる。
本発明の保護膜形成用複合シートにおいては、後述するように、粘着剤層等の、支持シートの保護膜形成用フィルムと直接接触している層が、非エネルギー線硬化性であることが好ましい。このような保護膜形成用複合シートは、保護膜付き半導体チップの、より容易なピックアップを可能とする。
支持シートは、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよい。
なかでも、保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性を有する本発明においては、支持シートはエネルギー線を透過させるものが好ましい。
例えば、支持シートにおいて、波長375nmの光の透過率は30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることが特に好ましい。前記光の透過率がこのような範囲であることで、支持シートを介して保護膜形成用フィルムにエネルギー線(紫外線)を照射したときに、保護膜形成用フィルムの硬化度がより向上する。
一方、支持シートにおいて、波長375nmの光の透過率の上限値は特に限定されない。例えば、前記光の透過率は95%以下であってもよい。
また、支持シートにおいて、波長532nmの光の透過率は30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることが特に好ましい。前記光の透過率がこのような範囲であることで、支持シートを介して保護膜形成用フィルム又は保護膜にレーザー光を照射して、これらに印字したときに、より明りょうに印字できる。
一方、支持シートにおいて、波長532nmの光の透過率の上限値は特に限定されない。例えば、前記光の透過率は95%以下であってもよい。
また、支持シートにおいて、波長1064nmの光の透過率は30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることが特に好ましい。前記光の透過率がこのような範囲であることで、支持シートを介して保護膜形成用フィルム又は保護膜にレーザー光を照射して、これらに印字したときに、より明りょうに印字できる。
一方、支持シートにおいて、波長1064nmの光の透過率の上限値は特に限定されない。例えば、前記光の透過率は95%以下であってもよい。
また、支持シートにおいて、波長1342nmの光の透過率は30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることが特に好ましい。前記光の透過率がこのような範囲であることで、支持シートと、保護膜形成用フィルム又は保護膜と、を介して、半導体ウエハにレーザー光を照射して、半導体ウエハに改質層をより容易に形成できる。
一方、支持シートにおいて、波長1342nmの光の透過率の上限値は特に限定されない。例えば、前記光の透過率は95%以下であってもよい。
次に、支持シートを構成する各層について、さらに詳細に説明する。
○基材
前記基材は、シート状又はフィルム状であり、その構成材料としては、例えば、各種樹脂が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン樹脂等のポリエチレン以外のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ノルボルネン共重合体等のエチレン系共重合体(すなわち、モノマーとしてエチレンを用いて得られた共重合体);ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂(すなわち、モノマーとして塩化ビニルを用いて得られた樹脂);ポリスチレン;ポリシクロオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、すべての構成単位が芳香族環式基を有する全芳香族ポリエステル等のポリエステル;2種以上の前記ポリエステルの共重合体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリウレタン;ポリウレタンアクリレート;ポリイミド;ポリアミド;ポリカーボネート;フッ素樹脂;ポリアセタール;変性ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン;ポリエーテルケトン等が挙げられる。
また、前記樹脂としては、例えば、前記ポリエステルとそれ以外の樹脂との混合物等のポリマーアロイも挙げられる。前記ポリエステルとそれ以外の樹脂とのポリマーアロイは、ポリエステル以外の樹脂の量が比較的少量であるものが好ましい。
また、前記樹脂としては、例えば、ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上が架橋した架橋樹脂;ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上を用いたアイオノマー等の変性樹脂も挙げられる。
基材を構成する樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
基材は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
基材の厚さは、50~300μmであることが好ましく、60~100μmであることがより好ましい。基材の厚さがこのような範囲であることで、前記保護膜形成用複合シートの可撓性と、半導体ウエハ又は半導体チップへの貼付性がより向上する。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
基材は、厚さの精度が高いもの、すなわち、部位によらず厚さのばらつきが抑制されたものが好ましい。上述の構成材料のうち、このような厚さの精度が高い基材を構成するのに使用可能な材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレン以外のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
基材は、前記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
基材の光学特性は、先に説明した支持シートの光学特性を満たすようになっていることが好ましい。例えば、基材は、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよいし、他の層が蒸着されていてもよい。
そして、保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性を有する本発明においては、基材はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
基材は、その上に設けられる粘着剤層等の他の層との密着性を向上させるために、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理や、コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理等が表面に施されたものであってもよい。
また、基材は、表面がプライマー処理を施されたものであってもよい。
また、基材は、帯電防止コート層;保護膜形成用複合シートを重ね合わせて保存する際に、基材が他のシートに接着することや、基材が吸着テーブルに接着することを防止する層等を有するものであってもよい。
基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する基材は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
○粘着剤層
前記粘着剤層は、シート状又はフィルム状であり、粘着剤を含有する。
前記粘着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、エステル系樹脂等の粘着性樹脂が挙げられ、アクリル系樹脂が好ましい。
なお、本発明において、「粘着性樹脂」とは、粘着性を有する樹脂と、接着性を有する樹脂と、の両方を含む概念であり、例えば、樹脂自体が粘着性を有するものだけでなく、添加剤等の他の成分との併用により粘着性を示す樹脂や、熱又は水等のトリガーの存在によって接着性を示す樹脂等も含む。
粘着剤層は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
粘着剤層の厚さは1~100μmであることが好ましく、1~60μmであることがより好ましく、1~30μmであることが特に好ましい。
ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
粘着剤層の光学特性は、先に説明した支持シートの光学特性を満たすようになっていることが好ましい。例えば、粘着剤層は、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよい。
そして、保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性を有する本発明においては、粘着剤層はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
粘着剤層は、エネルギー線硬化性粘着剤を用いて形成されたものであってもよいし、非エネルギー線硬化性粘着剤を用いて形成されたものであってもよい。エネルギー線硬化性の粘着剤を用いて形成された粘着剤層は、硬化前及び硬化後での物性を、容易に調節できる。
<<粘着剤組成物>>
粘着剤層は、粘着剤を含有する粘着剤組成物を用いて形成できる。例えば、粘着剤層の形成対象面に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に粘着剤層を形成できる。粘着剤層のより具体的な形成方法は、他の層の形成方法とともに、後ほど詳細に説明する。粘着剤組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、粘着剤層の前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
粘着剤組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
粘着剤組成物の乾燥条件は、特に限定されないが、粘着剤組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。溶媒を含有する粘着剤組成物は、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で乾燥させることが好ましい。
粘着剤層がエネルギー線硬化性である場合、エネルギー線硬化性粘着剤を含有する粘着剤組成物、すなわち、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)(以下、「粘着性樹脂(I-1a)」と略記することがある)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-1);非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)(以下、「粘着性樹脂(I-2a)」と略記することがある)を含有する粘着剤組成物(I-2);前記粘着性樹脂(I-2a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-3)等が挙げられる。
<粘着剤組成物(I-1)>
前記粘着剤組成物(I-1)は、上述の様に、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する。
[粘着性樹脂(I-1a)]
前記粘着性樹脂(I-1a)は、アクリル系樹脂であることが好ましい。
前記アクリル系樹脂としては、例えば、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有するアクリル系重合体が挙げられる。
前記アクリル系樹脂が有する構成単位は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキルエステルを構成するアルキル基の炭素数が1~20であるのものが挙げられ、前記アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、より具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸イコシル等が挙げられる。
粘着剤層の粘着力が向上する点から、前記アクリル系重合体は、前記アルキル基の炭素数が4以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有することが好ましい。そして、粘着剤層の粘着力がより向上する点から、前記アルキル基の炭素数は、4~12であることが好ましく、4~8であることがより好ましい。また、前記アルキル基の炭素数が4以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、メタクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。
前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有することが好ましい。
前記官能基含有モノマーとしては、例えば、前記官能基が後述する架橋剤と反応することで架橋の起点となったり、前記官能基が後述する不飽和基含有化合物中の不飽和基と反応することで、アクリル系重合体の側鎖に不飽和基の導入を可能とするものが挙げられる。
官能基含有モノマー中の前記官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。
すなわち、官能基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
前記水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ビニルアルコール、アリルアルコール等の非(メタ)アクリル系不飽和アルコール(すなわち、(メタ)アクリロイル骨格を有しない不飽和アルコール)等が挙げられる。
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸(すなわち、エチレン性不飽和結合を有するモノカルボン酸);フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸(すなわち、エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸);前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物;2-カルボキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルエステル等が挙げられる。
官能基含有モノマーは、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマーが好ましく、水酸基含有モノマーがより好ましい。
前記アクリル系重合体を構成する官能基含有モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
前記アクリル系重合体において、官能基含有モノマー由来の構成単位の含有量は、構成単位の全量に対して、1~35質量%であることが好ましく、2~32質量%であることがより好ましく、3~30質量%であることが特に好ましい。
前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位、及び官能基含有モノマー由来の構成単位以外に、さらに、他のモノマー由来の構成単位を有していてもよい。
前記他のモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等と共重合可能なものであれば特に限定されない。
前記他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド等が挙げられる。
前記アクリル系重合体を構成する前記他のモノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
前記アクリル系重合体は、上述の非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)として使用できる。
一方、前記アクリル系重合体中の官能基に、エネルギー線重合性不飽和基(エネルギー線重合性基)を有する不飽和基含有化合物を反応させたものは、上述のエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)として使用できる。
粘着剤組成物(I-1)が含有する粘着性樹脂(I-1a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I-1)において、粘着剤組成物(I-1)の総質量に対する、粘着性樹脂(I-1a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、15~90質量%であることが特に好ましい。
[エネルギー線硬化性化合物]
粘着剤組成物(I-1)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物としては、エネルギー線重合性不飽和基を有し、エネルギー線の照射により硬化可能なモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物のうち、モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオール(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート;ポリエーテル(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物のうち、オリゴマーとしては、例えば、上記で例示したモノマーが重合してなるオリゴマー等が挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物は、分子量が比較的大きく、粘着剤層の貯蔵弾性率を低下させにくいという点では、ウレタン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
粘着剤組成物(I-1)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
前記粘着剤組成物(I-1)において、粘着剤組成物(I-1)の総質量に対する、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量の割合は、1~95質量%であることが好ましく、5~90質量%であることがより好ましく、10~85質量%であることが特に好ましい。
[架橋剤]
粘着性樹脂(I-1a)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-1)は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
前記架橋剤は、例えば、前記官能基と反応して、粘着性樹脂(I-1a)同士を架橋するものである。
架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのアダクト体等のイソシアネート系架橋剤(すなわち、イソシアネート基を有する架橋剤);エチレングリコールグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤(すなわち、グリシジル基を有する架橋剤);ヘキサ[1-(2-メチル)-アジリジニル]トリフオスファトリアジン等のアジリジン系架橋剤(すなわち、アジリジニル基を有する架橋剤);アルミニウムキレート等の金属キレート系架橋剤(すなわち、金属キレート構造を有する架橋剤);イソシアヌレート系架橋剤(すなわち、イソシアヌル酸骨格を有する架橋剤)等が挙げられる。
粘着剤の凝集力を向上させて粘着剤層の粘着力を向上させる点、及び入手が容易である等の点から、架橋剤はイソシアネート系架橋剤であることが好ましい。
粘着剤組成物(I-1)が含有する架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
架橋剤を用いる場合、前記粘着剤組成物(I-1)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-1a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、0.1~20質量部であることがより好ましく、0.3~15質量部であることが特に好ましい。
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-1)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-1)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;2-クロロアントラキノン等が挙げられる。
また、前記光重合開始剤としては、例えば、1-クロロアントラキノン等のキノン化合物;アミン等の光増感剤等を用いることもできる。
粘着剤組成物(I-1)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
光重合開始剤を用いる場合、粘着剤組成物(I-1)において、光重合開始剤の含有量は、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.03~10質量部であることがより好ましく、0.05~5質量部であることが特に好ましい。
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-1)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
前記その他の添加剤としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填材(フィラー)、防錆剤、着色剤(顔料、染料)、増感剤、粘着付与剤、反応遅延剤、架橋促進剤(触媒)等の公知の添加剤が挙げられる。
なお、反応遅延剤とは、例えば、粘着剤組成物(I-1)中に混入している触媒の作用によって、保存中の粘着剤組成物(I-1)において、目的としない架橋反応が進行するのを抑制するものである。反応遅延剤としては、例えば、触媒に対するキレートによってキレート錯体を形成するものが挙げられ、より具体的には、1分子中にカルボニル基(-C(=O)-)を2個以上有するものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-1)が含有するその他の添加剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
その他の添加剤を用いる場合、粘着剤組成物(I-1)のその他の添加剤の含有量は、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
[溶媒]
粘着剤組成物(I-1)は、溶媒を含有していてもよい。粘着剤組成物(I-1)は、溶媒を含有していることで、塗工対象面への塗工適性が向上する。
前記溶媒は有機溶媒であることが好ましく、前記有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;酢酸エチル等のエステル(例えば、カルボン酸エステル);テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;シクロヘキサン、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコール等が挙げられる。
前記溶媒としては、例えば、粘着性樹脂(I-1a)の製造時に用いたものを粘着性樹脂(I-1a)から取り除かずに、そのまま粘着剤組成物(I-1)において用いてもよいし、粘着性樹脂(I-1a)の製造時に用いたものと同一又は異なる種類の溶媒を、粘着剤組成物(I-1)の製造時に別途添加してもよい。
粘着剤組成物(I-1)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
溶媒を用いる場合、粘着剤組成物(I-1)の溶媒の含有量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。
<粘着剤組成物(I-2)>
前記粘着剤組成物(I-2)は、上述の様に、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)を含有する。
[粘着性樹脂(I-2a)]
前記粘着性樹脂(I-2a)は、例えば、粘着性樹脂(I-1a)中の官能基に、エネルギー線重合性不飽和基を有する不飽和基含有化合物を反応させることで得られる。
前記不飽和基含有化合物は、前記エネルギー線重合性不飽和基以外に、さらに粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と反応することで、粘着性樹脂(I-1a)と結合可能な基を有する化合物である。
前記エネルギー線重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基(別名:エテニル基)、アリル基(別名:2-プロペニル基)等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と結合可能な基としては、例えば、水酸基又はアミノ基と結合可能なイソシアネート基及びグリシジル基、並びにカルボキシ基又はエポキシ基と結合可能な水酸基及びアミノ基等が挙げられる。
前記不飽和基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
粘着剤組成物(I-2)が含有する粘着性樹脂(I-2a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I-2)において、粘着剤組成物(I-2)の総質量に対する、粘着性樹脂(I-2a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、10~90質量%であることが特に好ましい。
[架橋剤]
粘着性樹脂(I-2a)として、例えば、粘着性樹脂(I-1a)におけるものと同様の、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-2)は、さらに架橋剤を含有していてもよい。
粘着剤組成物(I-2)における前記架橋剤としては、粘着剤組成物(I-1)における架橋剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-2)が含有する架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
架橋剤を用いる場合、前記粘着剤組成物(I-2)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、0.1~20質量部であることがより好ましく、0.3~15質量部であることが特に好ましい。
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-2)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-2)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
粘着剤組成物(I-2)における前記光重合開始剤としては、粘着剤組成物(I-1)における光重合開始剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-2)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
光重合開始剤を用いる場合、粘着剤組成物(I-2)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.03~10質量部であることがより好ましく、0.05~5質量部であることが特に好ましい。
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-2)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
粘着剤組成物(I-2)における前記その他の添加剤としては、粘着剤組成物(I-1)におけるその他の添加剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-2)が含有するその他の添加剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
その他の添加剤を用いる場合、粘着剤組成物(I-2)のその他の添加剤の含有量は、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
[溶媒]
粘着剤組成物(I-2)は、粘着剤組成物(I-1)の場合と同様の目的で、溶媒を含有していてもよい。
粘着剤組成物(I-2)における前記溶媒としては、粘着剤組成物(I-1)における溶媒と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-2)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
溶媒を用いる場合、粘着剤組成物(I-2)の溶媒の含有量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。
<粘着剤組成物(I-3)>
前記粘着剤組成物(I-3)は、上述の様に、前記粘着性樹脂(I-2a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する。
粘着剤組成物(I-3)において、粘着剤組成物(I-3)の総質量に対する、粘着性樹脂(I-2a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、15~90質量%であることが特に好ましい。
[エネルギー線硬化性化合物]
粘着剤組成物(I-3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物としては、エネルギー線重合性不飽和基を有し、エネルギー線の照射により硬化可能なモノマー及びオリゴマーが挙げられ、粘着剤組成物(I-1)が含有するエネルギー線硬化性化合物と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
前記粘着剤組成物(I-3)において、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~300質量部であることが好ましく、0.03~200質量部であることがより好ましく、0.05~100質量部であることが特に好ましい。
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-3)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-3)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
粘着剤組成物(I-3)における前記光重合開始剤としては、粘着剤組成物(I-1)における光重合開始剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-3)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
光重合開始剤を用いる場合、粘着剤組成物(I-3)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)及び前記エネルギー線硬化性化合物の総含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.03~10質量部であることがより好ましく、0.05~5質量部であることが特に好ましい。
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-3)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
前記その他の添加剤としては、粘着剤組成物(I-1)におけるその他の添加剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-3)が含有するその他の添加剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
その他の添加剤を用いる場合、粘着剤組成物(I-3)のその他の添加剤の含有量は、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
[溶媒]
粘着剤組成物(I-3)は、粘着剤組成物(I-1)の場合と同様の目的で、溶媒を含有していてもよい。
粘着剤組成物(I-3)における前記溶媒としては、粘着剤組成物(I-1)における溶媒と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-3)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
溶媒を用いる場合、粘着剤組成物(I-3)の溶媒の含有量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。
<粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物>
ここまでは、粘着剤組成物(I-1)、粘着剤組成物(I-2)及び粘着剤組成物(I-3)について主に説明したが、これらの含有成分として説明したものは、これら3種の粘着剤組成物以外の全般的な粘着剤組成物(本明細書においては、「粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物」と称する)でも、同様に用いることができる。
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物としては、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物以外に、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物も挙げられる。
非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、エステル系樹脂等の、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)を含有する粘着剤組成物(I-4)が挙げられ、アクリル系樹脂を含有するものが好ましい。
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物は、1種又は2種以上の架橋剤を含有することが好ましく、その含有量は、上述の粘着剤組成物(I-1)等の場合と同様とすることができる。
<粘着剤組成物(I-4)>
粘着剤組成物(I-4)で好ましいものとしては、例えば、前記粘着性樹脂(I-1a)と、架橋剤と、を含有するものが挙げられる。
[粘着性樹脂(I-1a)]
粘着剤組成物(I-4)における粘着性樹脂(I-1a)としては、粘着剤組成物(I-1)における粘着性樹脂(I-1a)と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-4)が含有する粘着性樹脂(I-1a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I-4)において、粘着剤組成物(I-4)の総質量に対する、粘着性樹脂(I-1a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましく、10~95質量%であることがより好ましく、15~90質量%であることが特に好ましい。
粘着剤組成物(I-4)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する粘着性樹脂(I-1a)の含有量の割合(すなわち、粘着剤層における、粘着剤層の総質量に対する、粘着性樹脂(I-1a)の含有量の割合)は、50~98質量%であることが好ましく、例えば、65~98質量%、及び80~98質量%のいずれかであってもよい。
[架橋剤]
粘着性樹脂(I-1a)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-4)は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
粘着剤組成物(I-4)における架橋剤としては、粘着剤組成物(I-1)における架橋剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-4)が含有する架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
前記粘着剤組成物(I-4)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-1a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、0.1~20質量部であることがより好ましく、0.3~15質量部であることが特に好ましい。
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-4)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
前記その他の添加剤としては、粘着剤組成物(I-1)におけるその他の添加剤と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-4)が含有するその他の添加剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
その他の添加剤を用いる場合、粘着剤組成物(I-4)のその他の添加剤の含有量は、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
[溶媒]
粘着剤組成物(I-4)は、粘着剤組成物(I-1)の場合と同様の目的で、溶媒を含有していてもよい。
粘着剤組成物(I-4)における前記溶媒としては、粘着剤組成物(I-1)における溶媒と同じものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-4)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
溶媒を用いる場合、粘着剤組成物(I-4)の溶媒の含有量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。
前記保護膜形成用複合シートにおいて、粘着剤層は非エネルギー線硬化性であることが好ましい。これは、粘着剤層がエネルギー線硬化性であると、エネルギー線の照射によって保護膜形成用フィルムを硬化させるときに、粘着剤層も同時に硬化するのを抑制できないことがあるためである。粘着剤層が保護膜形成用フィルムと同時に硬化してしまうと、保護膜形成用フィルムの硬化物及び粘着剤層の硬化物が、これらの界面において剥離不能な程度に貼り付いてしまうことがある。その場合、保護膜形成用フィルムの硬化物、すなわち保護膜を裏面に備えた半導体チップ(すなわち保護膜付き半導体チップ)を、粘着剤層の硬化物を備えた支持シートから剥離させることが困難となり、保護膜付き半導体チップを正常にピックアップできなくなってしまう。前記支持シートにおいて、粘着剤層を非エネルギー線硬化性のものとすることで、このような不具合を確実に回避でき、保護膜付き半導体チップをより容易にピックアップできる。
ここでは、粘着剤層が非エネルギー線硬化性である場合の効果について説明したが、支持シートの保護膜形成用フィルムと直接接触している層が粘着剤層以外の層であっても、この層が非エネルギー線硬化性であれば、同様の効果を奏する。
<<粘着剤組成物の製造方法>>
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)や、粘着剤組成物(I-4)等の粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の粘着剤組成物は、前記粘着剤と、必要に応じて前記粘着剤以外の成分等の、粘着剤組成物を構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
◇保護膜形成用複合シートの製造方法
前記保護膜形成用複合シートは、上述の各層を対応する位置関係となるように積層することで製造できる。各層の形成方法は、先に説明したとおりである。
例えば、支持シートを製造するときに、基材上に粘着剤層を積層する場合には、基材上に上述の粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させればよい。
一方、例えば、基材上に積層済みの粘着剤層の上に、さらに保護膜形成用フィルムを積層する場合には、粘着剤層上に保護膜形成用組成物を塗工して、保護膜形成用フィルムを直接形成することが可能である。保護膜形成用フィルム以外の層も、この層を形成するための組成物を用いて、同様の方法で、粘着剤層の上にこの層を積層できる。このように、いずれかの組成物を用いて、連続する2層の積層構造を形成する場合には、前記組成物から形成された層の上に、さらに組成物を塗工して新たに層を形成することが可能である。ただし、これら2層のうちの後から積層する層は、別の剥離フィルム上に前記組成物を用いてあらかじめ形成しておき、この形成済みの層の前記剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面を、既に形成済みの残りの層の露出面と貼り合わせることで、連続する2層の積層構造を形成することが好ましい。このとき、前記組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。
例えば、基材上に粘着剤層が積層され、前記粘着剤層上に保護膜形成用フィルムが積層されてなる保護膜形成用複合シート(換言すると、支持シートが基材及び粘着剤層の積層物である保護膜形成用複合シート)を製造する場合には、基材上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、基材上に粘着剤層を積層しておき、別途、剥離フィルム上に保護膜形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に保護膜形成用フィルムを形成しておく。そして、この保護膜形成用フィルムの露出面を、基材上に積層済みの粘着剤層の露出面と貼り合わせて、保護膜形成用フィルムを粘着剤層上に積層することで、保護膜形成用複合シートが得られる。
なお、基材上に粘着剤層を積層する場合には、上述の様に、基材上に粘着剤組成物を塗工する方法に代えて、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、この層の露出面を、基材の一方の表面と貼り合わせることで、粘着剤層を基材上に積層してもよい。
いずれの方法においても、剥離フィルムは目的とする積層構造を形成後の任意のタイミングで取り除けばよい。
このように、保護膜形成用複合シートを構成する基材以外の層はいずれも、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、目的とする層の表面に貼り合わせる方法で積層できるため、必要に応じてこのような工程を採用する層を適宜選択して、保護膜形成用複合シートを製造すればよい。
なお、保護膜形成用複合シートは、通常、その支持シートとは反対側の最表層(例えば、保護膜形成用フィルム)の表面に剥離フィルムが貼り合わされた状態で保管される。したがって、この剥離フィルム(好ましくはその剥離処理面)上に、保護膜形成用組成物等の、最表層を構成する層を形成するための組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に最表層を構成する層を形成しておき、この層の剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面上に残りの各層を上述のいずれかの方法で積層し、剥離フィルムを取り除かずに貼り合わせた状態のままとすることでも、保護膜形成用複合シートが得られる。
◇半導体チップの製造方法
前記保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートは、半導体チップの製造に用いることができる。
このときの半導体チップの製造方法としては、例えば、前記保護膜形成用複合シートを構成していない保護膜形成用フィルム、又は前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、半導体ウエハに貼付する工程(以下、「貼付工程」と略記することがある)と、前記半導体ウエハに貼付した後の前記保護膜形成用フィルムにエネルギー線を照射することにより、保護膜を形成する工程(以下、「保護膜形成工程」と略記することがある)と、前記半導体ウエハの内部に設定された焦点に集束するように、前記保護膜又は保護膜形成用フィルムを介してレーザー光を照射することにより、前記半導体ウエハの内部に改質層を形成する工程(以下、「改質層形成工程」と略記することがある)と、前記改質層を形成した前記半導体ウエハを、前記保護膜又は保護膜形成用フィルムとともに、前記保護膜又は保護膜形成用フィルムの表面方向(表面に対して平行な方向)にエキスパンドすることにより、前記保護膜又は保護膜形成用フィルムを切断するとともに、前記改質層の部位において前記半導体ウエハを分割し、複数個の半導体チップを得る工程(以下、「分割工程」と略記することがある)と、を有するものが挙げられる。
ここでは、半導体ウエハのエキスパンドの方向を、保護膜又は保護膜形成用フィルムの表面方向と特定しているが、通常、この表面方向は、半導体ウエハの表面方向(例えば、前記裏面の方向)と同じである。
以下、図面を参照しながら、上述の製造方法について説明する。図7~図9は、保護膜形成用複合シートを構成していない保護膜形成用フィルムを用いた場合の、半導体チップの製造方法の一実施形態を、模式的に説明するための断面図である。また、図10~図12は、保護膜形成用フィルムを予め支持シートと一体化させて構成した保護膜形成用複合シートを用いた場合の、半導体チップの製造方法の一実施形態を、模式的に説明するための断面図である。
<<保護膜形成用複合シートを構成していない保護膜形成用フィルムを用いる場合の半導体チップの製造方法>>
まず、保護膜形成用複合シートを構成していない保護膜形成用フィルムを用いた場合の、半導体チップの製造方法の一実施形態について、保護膜形成用フィルムが図1に示すものである場合を例に挙げて、説明する(本実施形態を「製造方法(1)-1」と称することがある)。
製造方法(1)-1の前記貼付工程においては、図7(a)に示すように、半導体ウエハ9の裏面(換言すると、電極形成面とは反対側の面)9bに保護膜形成用フィルム13を貼付する。ここでは、保護膜形成用フィルム13から第1剥離フィルム151を取り除き、保護膜形成用フィルム13の第1面13aを半導体ウエハ9の裏面9bに貼り合わせた場合を示している。また、ここでは、半導体ウエハ9において、回路面上のバンプ等の図示を省略している。
製造方法(1)-1の貼付工程後は、前記保護膜形成工程において、半導体ウエハ9に貼付した後の保護膜形成用フィルム13にエネルギー線を照射することにより、図7(b)に示すように、半導体ウエハ9に保護膜13’を形成する。エネルギー線の照射は、保護膜形成用フィルム13から第2剥離フィルム152を取り除いてから行ってもよい。
また、製造方法(1)-1の貼付工程後は、前記改質層形成工程において、半導体ウエハ9の内部に設定された焦点に集束するように、保護膜13’を介して、レーザー光を照射することにより、図7(c)に示すように、半導体ウエハ9の内部に改質層91を形成する。レーザー光の照射は、保護膜13’から第2剥離フィルム152を取り除いてから行う。
製造方法(1)-1の改質層形成工程後は、前記分割工程に先立って、図7(d)に示すように、保護膜13’の半導体ウエハ9が貼付されている側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)13a’とは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)13b’に、支持シート10を貼付する。支持シート10は、図2等で示したものであり、その粘着剤層12によって、保護膜13’に貼付される。
次いで、製造方法(1)-1の前記分割工程において、改質層91を形成した半導体ウエハ9を、保護膜13’とともに、保護膜13’の表面(すなわち、第1面13a’又は第2面13b’)方向にエキスパンドすることにより、保護膜13’を切断するとともに、改質層91の部位において半導体ウエハ9を分割し、図7(e)に示すように、複数個の半導体チップ9’を得る。このとき、保護膜13’は、半導体ウエハ9の分割箇所、換言すると、半導体チップ9’の周縁部、に沿った位置で切断(分割)される。この切断後の保護膜13’を符号130’で示している。
分割工程では、図7(d)中の矢印Iで示す方向に、半導体ウエハ9及び保護膜13’をエキスパンド(拡張)することにより、この方向に力(すなわち引張力)が加えられた半導体ウエハ9及び保護膜13’が分割される。
以上により、目的とする半導体チップ9’が、保護膜付き半導体チップとして得られる。
なお、図7では、保護膜形成工程及び改質層形成工程を行ってから、保護膜13’へ支持シート10を貼付する場合について示している。ただし、製造方法(1)-1においては、保護膜形成用フィルム13へ支持シート10を貼付してから、保護膜形成工程及び改質層形成工程を行ってもよいし、保護膜形成工程後、保護膜13’へ支持シート10を貼付してから、改質層形成工程を行ってもよい。
製造方法(1)-1においては、保護膜形成用フィルム13を用いていることにより、前記分割工程において、半導体ウエハ9を分割して半導体チップ9’としたときに、保護膜13’又は切断後の保護膜130’からの、半導体チップ9’の浮きを抑制できる。
製造方法(1)-1においては、保護膜形成工程後に改質層形成工程を行うが、本実施形態に係る半導体チップの製造方法においては、改質層形成工程後に保護膜形成工程を行ってもよい(本実施形態を「製造方法(1)-2」と称することがある)。
図8は、このような半導体チップの製造方法の一実施形態を模式的に説明するための断面図である。
製造方法(1)-2の前記貼付工程では、製造方法(1)-1の場合と同様に、図8(a)に示すように、半導体ウエハ9の裏面9bに保護膜形成用フィルム13を貼付する。
製造方法(1)-2の貼付工程後は、前記改質層形成工程において、半導体ウエハ9の内部に設定された焦点に集束するように、保護膜形成用フィルム13を介して、レーザー光を照射することにより、図8(b)に示すように、半導体ウエハ9の内部に改質層91を形成する。レーザー光の照射は、保護膜形成用フィルム13から第2剥離フィルム152を取り除いてから行う。
また、製造方法(1)-2の貼付工程後は、前記保護膜形成工程において、半導体ウエハ9に貼付した後の保護膜形成用フィルム13にエネルギー線を照射することにより、図8(c)に示すように、半導体ウエハ9に保護膜13’を形成する。本工程を行うことにより、製造方法(1)-1の改質層形成工程終了後、すなわち、図7(c)と同じ状態の保護膜付き半導体ウエハが得られる。
以降は、図8(d)~図8(e)に示すように、製造方法(1)-1の場合と同様に(より具体的には、図7(d)~図7(e)に示すように)、保護膜13’の第2面13b’に、支持シート10を貼付し、次いで、前記分割工程を行うことにより、保護膜13’を切断するとともに、改質層91の部位において半導体ウエハ9を分割し、複数個の半導体チップ9’を得る。
以上により、目的とする半導体チップ9’が、保護膜付き半導体チップとして得られる。
なお、図8では、改質層形成工程及び保護膜形成工程を行ってから、保護膜13’へ支持シート10を貼付する場合について示している。ただし、製造方法(1)-2においては、保護膜形成用フィルム13へ支持シート10を貼付してから、改質層形成工程及び保護膜形成工程を行ってもよいし、改質層形成工程後、保護膜形成用フィルム13へ支持シート10を貼付してから、保護膜形成工程を行ってもよい。
製造方法(1)-2においても、保護膜形成用フィルム13を用いていることにより、前記分割工程において、半導体ウエハ9を分割して半導体チップ9’としたときに、保護膜13’又は切断後の保護膜130’からの、半導体チップ9’の浮きを抑制できる。
製造方法(1)-1及び(1)-2においては、保護膜形成工程後に分割工程を行うが、本実施形態に係る半導体チップの製造方法においては、保護膜形成工程を行わずに分割工程を行い、分割工程後に保護膜形成工程を行ってもよい(本実施形態を「製造方法(1)-3」と称することがある)。
図9は、このような半導体チップの製造方法の一実施形態を模式的に説明するための断面図である。
製造方法(1)-3の前記貼付工程及び改質層形成工程は、図9(a)~図9(b)に示すように、製造方法(1)-2の貼付工程及び改質層形成工程と同様の方法で(より具体的には、図8(a)~図8(b)に示すように)行うことができる。
製造方法(1)-3の改質層形成工程後は、前記分割工程に先立って、図9(c)に示すように、保護膜形成用フィルム13の第2面13bに、支持シート10を貼付する。
次いで、製造方法(1)-3の前記分割工程において、改質層91を形成した半導体ウエハ9を、保護膜形成用フィルム13とともに、保護膜形成用フィルム13の表面(すなわち、第1面13a又は第2面13b)方向にエキスパンドすることにより、保護膜形成用フィルム13を切断するとともに、改質層91の部位において半導体ウエハ9を分割し、図9(d)に示すように、複数個の半導体チップ9’を得る。このとき、保護膜形成用フィルム13は、半導体ウエハ9の分割箇所、換言すると、半導体チップ9’の周縁部、に沿った位置で切断(分割)される。この切断後の保護膜形成用フィルム13を符号130で示している。 分割工程では、図9(c)中の矢印Iで示す方向に、半導体ウエハ9及び保護膜形成用フィルム13をエキスパンド(拡張)することにより、この方向に力(すなわち引張力)が加えられた半導体ウエハ9及び保護膜形成用フィルム13が分割される。
以上により、目的とする半導体チップ9’が、保護膜形成用フィルム付き半導体チップとして得られる。
なお、図9では、改質層形成工程を行ってから、保護膜形成用フィルム13へ支持シート10を貼付する場合について示している。ただし、製造方法(1)-3においては、保護膜形成用フィルム13へ支持シート10を貼付してから、改質層形成工程を行ってもよい。
製造方法(1)-3においては、保護膜形成用フィルム13を用いていることにより、前記分割工程において、半導体ウエハ9を分割して半導体チップ9’としたときに、保護膜形成用フィルム13又は切断後の保護膜形成用フィルム130からの、半導体チップ9’の浮きを抑制できる。
製造方法(1)-3においては、前記分割工程後、支持シート10を介して保護膜形成用フィルム130にエネルギー線を照射することにより、図9(e)に示すように、半導体チップ9’に保護膜130’を形成すればよい。
図9(e)では、半導体チップ9’のピックアップ前に保護膜130’を形成する場合について示しているが、保護膜130’の形成は、半導体チップ9’のピックアップ後等の、分割工程後の任意のタイミングで行うことができる。
<<保護膜形成用フィルムを予め支持シートと一体化させた保護膜形成用複合シートを用いる場合の半導体チップの製造方法>>
次に、保護膜形成用フィルムを予め支持シートと一体化させて構成した保護膜形成用複合シートを用いた場合の、半導体チップの製造方法の一実施形態について、保護膜形成用複合シートが図2に示すものである場合を例に挙げて、説明する(本実施形態を「製造方法(2)-1」と称することがある)。
製造方法(2)-1の前記貼付工程においては、図10(a)に示すように、半導体ウエハ9の裏面9bに、保護膜形成用複合シート1A中の保護膜形成用フィルム13を貼付する。保護膜形成用複合シート1Aは、剥離フィルム15を取り除いて用いる。
製造方法(2)-1の貼付工程後は、前記保護膜形成工程において、半導体ウエハ9に貼付した後の保護膜形成用フィルム13にエネルギー線を照射することにより、図10(b)に示すように、半導体ウエハ9に保護膜13’を形成する。このとき、エネルギー線は、支持シート10を介して保護膜形成用フィルム13に照射する。
なお、ここでは、保護膜形成用フィルム13が保護膜13’となった後の保護膜形成用複合シートを、符号1A’で示している。これは、以降の図においても同様である。
製造方法(2)-1の貼付工程後は、前記改質層形成工程において、半導体ウエハ9の内部に設定された焦点に集束するように、保護膜13’ (換言すると保護膜形成用複合シート1A’)を介して、レーザー光を照射することにより、図10(c)に示すように、半導体ウエハ9の内部に改質層91を形成する。
次いで、製造方法(2)-1の前記分割工程において、改質層91を形成した半導体ウエハ9を、保護膜13’とともに、保護膜13’の表面(すなわち、第1面13a’又は第2面13b’)方向にエキスパンドすることにより、保護膜13’を切断するとともに、改質層91の部位において半導体ウエハ9を分割し、図10(d)に示すように、複数個の半導体チップ9’を得る。このとき、保護膜13’は、半導体ウエハ9の分割箇所、換言すると、半導体チップ9’の周縁部、に沿った位置で切断(分割)され、保護膜130’となる。 分割工程では、図10(c)中の矢印Iで示す方向に、半導体ウエハ9及び保護膜13’をエキスパンド(拡張)することにより、この方向に力(すなわち引張力)が加えられた半導体ウエハ9及び保護膜13’が分割される。
以上により、目的とする半導体チップ9’が、保護膜付き半導体チップとして得られる。
製造方法(2)-1においては、保護膜形成用フィルム13を用いていることにより、前記分割工程において、半導体ウエハ9を分割して半導体チップ9’としたときに、保護膜13’又は切断後の保護膜130’からの半導体チップ9’の浮きを抑制できる。
製造方法(2)-1においては、保護膜形成工程後に改質層形成工程を行うが、本実施形態に係る半導体チップの製造方法においては、改質層形成工程後に保護膜形成工程を行ってもよい(本実施形態を「製造方法(2)-2」と称することがある)。
図11は、このような半導体チップの製造方法の一実施形態を模式的に説明するための断面図である。
製造方法(2)-2では、製造方法(2)-1の場合と同様に、図11(a)に示すように、半導体ウエハ9の裏面9bに、保護膜形成用複合シート1A中の保護膜形成用フィルム13を貼付する。
製造方法(2)-2の貼付工程後は、前記改質層形成工程において、半導体ウエハ9の内部に設定された焦点に集束するように、保護膜形成用フィルム13(保護膜形成用複合シート1A)を介して、レーザー光を照射することにより、図11(b)に示すように、半導体ウエハ9の内部に改質層91を形成する。
また、製造方法(2)-2の貼付工程後は、前記保護膜形成工程において、半導体ウエハ9に貼付した後の保護膜形成用フィルム13にエネルギー線を照射することにより、図11(c)に示すように、半導体ウエハ9に保護膜13’を形成する。本工程を行うことにより、製造方法(2)-1の改質層形成工程終了後、すなわち、図10(c)と同じ状態の保護膜付き半導体ウエハが得られる。
以降は、図11(d)に示すように、製造方法(2)-1の場合と同様に(より具体的には、図10(d)に示すように)、前記分割工程を行うことにより、保護膜13’を切断するとともに、改質層91の部位において半導体ウエハ9を分割し、複数個の半導体チップ9’を得る。
以上により、目的とする半導体チップ9’が、保護膜付き半導体チップとして得られる。
製造方法(2)-2においても、保護膜形成用フィルム13を用いていることにより、前記分割工程において、半導体ウエハ9を分割して半導体チップ9’としたときに、保護膜13’又は切断後の保護膜130’からの半導体チップ9’の浮きを抑制できる。
製造方法(2)-1及び(2)-2においては、保護膜形成工程後に分割工程を行うが、本実施形態に係る半導体チップの製造方法においては、保護膜形成工程を行わずに分割工程を行い、分割工程後に保護膜形成工程を行ってもよい(本実施形態を「製造方法(2)-3」と称することがある)。
図12は、このような半導体チップの製造方法の一実施形態を模式的に説明するための断面図である。
製造方法(2)-3の前記貼付工程及び改質層形成工程は、図12(a)~図12(b)に示すように、製造方法(2)-2の貼付工程及び改質層形成工程と同様の方法で(より具体的には、図11(a)~図11(b)に示すように)行うことができる。
次いで、製造方法(2)-3の前記分割工程において、改質層91を形成した半導体ウエハ9を、保護膜形成用フィルム13とともに、保護膜形成用フィルム13の表面(すなわち、第1面13a又は第2面13b)方向にエキスパンドすることにより、保護膜形成用フィルム13を切断するとともに、改質層91の部位において半導体ウエハ9を分割し、図12(c)に示すように、複数個の半導体チップ9’を得る。このとき、保護膜形成用フィルム13は、半導体ウエハ9の分割箇所、換言すると、半導体チップ9’の周縁部、に沿った位置で切断(分割)される。 分割工程では、図12(b)中の矢印Iで示す方向に、半導体ウエハ9及び保護膜形成用フィルム13をエキスパンド(拡張)することにより、この方向に力(すなわち引張力)が加えられた半導体ウエハ9及び保護膜形成用フィルム13が分割される。
以上により、目的とする半導体チップ9’が、保護膜形成用フィルム付き半導体チップとして得られる。
製造方法(2)-3においては、保護膜形成用フィルム13を用いていることにより、前記分割工程において、半導体ウエハ9を分割して半導体チップ9’としたときに、保護膜形成用フィルム13又は切断後の保護膜形成用フィルム130からの半導体チップ9’の浮きを抑制できる。
製造方法(2)-3においては、前記分割工程後、保護膜形成用フィルム130にエネルギー線を照射することにより、図12(d)に示すように、半導体ウエハ9に保護膜130’を形成すればよい。
図12(d)では、半導体チップ9’のピックアップ前に保護膜130’を形成する場合について示しているが、保護膜130’の形成は、半導体チップ9’のピックアップ後等の、分割工程後の任意のタイミングで行うことができる。
ここまでは、図1に示す保護膜形成用フィルム13、図2に示す支持シート10、及び図2に示す保護膜形成用複合シート1Aを用いた場合の、半導体チップの製造方法について説明したが、本発明の半導体チップの製造方法は、これらに限定されない。
例えば、保護膜形成用複合シートを用いる場合には、図3~図6に示す保護膜形成用複合シート1B~1Eや、さらに前記中間層を備えた保護膜形成用複合シート等の、図2に示す保護膜形成用複合シート1A以外のものを用いても、同様に半導体チップを製造できる。
また、支持シートは、先に説明したような、基材のみからなるものや、中間層が積層されてなるもの等の、図2に示す支持シート10以外のものを用いても、同様に半導体チップを製造できる。
このように、他の実施形態の保護膜形成用複合シートや支持シートを用いる場合には、これらシートの構造の相違に基づいて、上述の製造方法において、適宜、工程の追加、変更、削除等を行って、半導体チップを製造すればよい。
◇半導体装置の製造方法
上述の製造方法により、半導体チップを得た後は、この半導体チップを、分割後の保護膜が貼付された状態のまま(すなわち、保護膜付き半導体チップとして)、支持シートから引き離してピックアップする(図示略)。
以降は従来法と同様の方法で、得られた保護膜付き半導体チップの半導体チップを、基板の回路面にフリップチップ接続した後、半導体パッケージとする。そして、この半導体パッケージを用いて、目的とする半導体装置を作製すればよい(図示略)。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
<保護膜形成用組成物の製造原料>
保護膜形成用組成物の製造に用いた原料を以下に示す。
[エネルギー線硬化性成分(a2)]
(a2)-1:ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学工業社製「A-9300-1CL」、3官能紫外線硬化性化合物)
[エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)]
(b)-1:アクリル酸メチル(85質量部)及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル(以下、「HEA」と略記する)(15質量部)を共重合してなるアクリル系重合体(重量平均分子量300000、ガラス転移温度6℃)。
[光重合開始剤(c)]
(c)-1:2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン(BASF社製「Irgacure(登録商標)369」)
[充填材(d)]
(d)-1:シリカフィラー(溶融石英フィラー、平均粒子径8μm)
[カップリング剤]
(e)-1:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM-503」、シランカップリング剤)
[着色剤(g)]
(g)-1:フタロシアニン系青色色素(Pigment Blue 15:3)32質量部と、イソインドリノン系黄色色素(Pigment Yellow 139)18質量部と、アントラキノン系赤色色素(Pigment Red 177)50質量部とを混合し、前記3種の色素の合計量/スチレンアクリル樹脂量=1/3(質量比)となるように顔料化して得られた顔料。
[化合物(p)]
(p)-1:コハク酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)
[実施例1]
<保護膜形成用複合シートの製造>
(保護膜形成用組成物(IV-1)の製造)
エネルギー線硬化性成分(a2)-1、重合体(b)-1、光重合開始剤(c)-1、充填材(d)-1、カップリング剤(e)-1、着色剤(g)-1及び化合物(p)-1を、これらの含有量(固形分量、質量部)が表1に示す値となるようにメチルエチルケトンに溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、固形分濃度が50質量%である保護膜形成用組成物(IV-1)を調製した。なお、表1中の含有成分の欄の「-」との記載は、保護膜形成用組成物(IV-1)がその成分を含有していないことを意味する。
(粘着剤組成物(I-4)の製造)
アクリル系重合体(100質量部、固形分)、及びイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製「コロネートL」、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート三量体付加物)(5質量部、固形分)を含有し、さらに溶媒としてメチルエチルケトンを含有する、固形分濃度が30質量%の非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-4)を調製した。前記アクリル系重合体は、メタクリル酸-2-エチルヘキシル(80質量部)、及びHEA(20質量部)を共重合してなる、重量平均分子量が600000のものである。
(支持シートの製造)
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された剥離フィルム(リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)を用い、その前記剥離処理面に、上記で得られた粘着剤組成物(I-4)を塗工し、120℃で2分加熱乾燥させることにより、厚さ10μmの非エネルギー線硬化性の粘着剤層を形成した。
次いで、この粘着剤層の露出面に、基材としてポリプロピレン系フィルム(厚さ80μm)を貼り合せることにより、基材、粘着剤層及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなる支持シートを得た。
(保護膜形成用複合シートの製造)
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された剥離フィルム(第2剥離フィルム、リンテック社製「SP-PET382150」、厚さ38μm)を用い、その前記剥離処理面に、上記で得られた保護膜形成用組成物(IV-1)を塗工し、100℃で2分乾燥させることにより、厚さ25μmのエネルギー線硬化性の保護膜形成用フィルムを製造した。
さらに、得られた保護膜形成用フィルムの、第2剥離フィルムを備えていない側の露出面に、剥離フィルム(第1剥離フィルム、リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)の剥離処理面を貼り合わせることにより、保護膜形成用フィルムの一方の面に第1剥離フィルムを備え、他方の面に第2剥離フィルムを備えた積層フィルムを得た。
次いで、上記で得られた支持シートの粘着剤層から剥離フィルムを取り除いた。また、上記で得られた積層フィルムから第1剥離フィルムを取り除いた。そして、上記の剥離フィルムを取り除いて生じた粘着剤層の露出面と、上記の第1剥離フィルムを取り除いて生じた保護膜形成用フィルムの露出面と、を貼り合わせることにより、基材、粘着剤層、保護膜形成用フィルム及び第2剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなる保護膜形成用複合シートを作製した。
<保護膜形成用フィルムの評価>
(保護膜形成用フィルムとシリコンウエハとの間の粘着力)
上記で得られた積層フィルムから第1剥離フィルムを取り除き、これにより生じた保護膜形成用フィルムの露出面に、粘着テープ(リンテック社製「D-841」)を貼付した。そして、得られたものを25mm×140mmの大きさに裁断することにより、試験片を作製した。
次いで、得られた試験片の保護膜形成用フィルムから、第2剥離フィルムを取り除き、これにより生じた保護膜形成用フィルムの露出面を、6インチシリコンウエハ(厚さ300μm)の#2000研磨面に貼付して、30分静置した。
次いで、23℃の条件下で、精密万能試験機(島津製作所製「オートグラフAG-IS」)を用いて、前記シリコンウエハから保護膜形成用フィルム及び粘着テープの積層物を、保護膜形成用フィルム及びシリコンウエハの互いに接触していた面同士が180°の角度を為すように、剥離速度300mm/minで引き剥がす、いわゆる180°剥離を行った。そして、このときの剥離力(荷重、N/25mm)を測定して、この測定値を保護膜形成用フィルムとシリコンウエハとの間の粘着力として採用した。結果を表1に示す。
<保護膜の評価>
(半導体チップの浮きの抑制)
上記で得られた積層フィルムから第1剥離フィルムを取り除き、これにより生じた保護膜形成用フィルムの露出面を、8インチシリコンウエハ(厚さ300μm)の#2000研磨面に貼付した。
次いで、この保護膜形成用フィルムから第2剥離フィルムを取り除き、保護膜形成用フィルムを露出させた。また、上記で得られた支持シートの粘着剤層から剥離フィルムを取り除き、粘着剤層を露出させた。そして、粘着剤層の露出面を、保護膜形成用フィルムの露出面と貼り合わせるとともに、リングフレームに貼付することにより、基材、粘着剤層、保護膜形成用フィルム及びシリコンウエハがこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなる積層体を、リングフレームに固定して、30分静置した。
次いで、紫外線照射装置(リンテック社製「RAD2000m/8」)を用いて、照度195mW/cm2、光量170mJ/cm2の条件で、前記基材及び粘着剤層を介して保護膜形成用フィルムに紫外線を照射することで、保護膜形成用フィルムを硬化させ、保護膜とした。以降、これにより得られたもの、すなわち、前記積層体中の保護膜形成用フィルムが保護膜となったものを、「硬化後積層体」と称する。
次いで、保護膜を介してシリコンウエハにレーザー光を照射できるように、前記硬化後積層体及びリングフレームを、これらの位置を調節しながらレーザーソー(ディスコ社製「DFL7361」)に設置した。
次いで、 シリコンウエハの内部に設定された焦点に集束するように、支持シート及び保護膜を介して、波長が1342nmであるレーザー光を照射することにより、シリコンウエハの内部に改質層を形成した。
次いで、前記硬化後積層体及びリングフレームを、ダイセパレーター(ディスコ社製「DDS2300」)に設置して、0℃の条件下で、前記硬化後積層体を、前記保護膜の表面方向(表面に沿った方向)にエキスパンドすることにより、保護膜を切断するとともに、前記改質層の部位においてシリコンウエハを分割して、大きさが3mm×3mmの複数個のシリコンチップを得た。
次いで、得られたシリコンチップの保護膜上での分割状態を目視観察して、保護膜からの浮きが発生しているシリコンチップが全く存在しない場合には「A」と判定し、保護膜からの浮きが発生しているシリコンチップが1個以上存在している場合には「B」と判定した。結果を表1に示す。
(保護膜のせん断強度)
8インチシリコンウエハ(厚さ300μm)に代えて、6インチシリコンウエハ(厚さ300μm)を用いた点以外は、上記の「半導体チップの浮きの抑制」の評価時と同じ方法で、基材、粘着剤層、保護膜形成用フィルム及びシリコンウエハがこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなる積層体を、リングフレームに固定して、30分静置した。なお、保護膜形成用フィルムは、6インチシリコンウエハの#2000研磨面に貼付した。
次いで、紫外線照射装置(リンテック社製「RAD2000m/8」)を用いて、照度195mW/cm2、光量170mJ/cm2の条件で、前記基材及び粘着剤層を介して保護膜形成用フィルムに紫外線を照射することで、保護膜形成用フィルムを硬化させ、保護膜とし、保護膜付きシリコンウエハを得た。
次いで、ダイシングブレードを用いて、シリコンウエハを保護膜ごとダイシング(すなわち、保護膜付きシリコンウエハをダイシング)することにより個片化し、大きさが3mm×3mmの、保護膜を備えたシリコンチップ(すなわち保護膜付きシリコンチップ)を複数個得た。
次いで、万能型ボンドテスター(ノードソン・アドバンスト・テクノロジー社製「DAGE4000」)を用い、23℃の条件下で、シェアツールによって、200μm/sの速度で、保護膜付きシリコンチップのうちの保護膜のみに、保護膜の表面方向に力を加えた。そして、保護膜が破壊されるまでに加えられていた力の最大値を確認し、これをせん断強度(N/3mm□)として採用した。結果を表1に示す。
<保護膜形成用複合シートの製造、並びに保護膜形成用フィルム及び保護膜の評価>
[実施例2、比較例1]
保護膜形成用組成物(IV-1)の製造時における配合成分の量を表1に示すとおりとした点以外は、実施例1と同じ方法で、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、保護膜形成用フィルム及び保護膜を評価した。結果を表1に示す。
上記結果から明らかなように、実施例1~2では、保護膜付きシリコンウエハをエキスパンドすることにより、保護膜を切断するとともに、シリコンウエハを分割してシリコンチップとしたときに、保護膜からのシリコンチップの浮きが抑制されていた。実施例1~2では、保護膜形成用組成物(IV-1)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、化合物(p)の含有量の割合(すなわち、保護膜形成用フィルムにおける、保護膜形成用フィルムの総質量に対する、化合物(p)の含有量の割合)が、0.3~0.5質量%であった。また、実施例1~2では、保護膜形成用フィルムとシリコンウエハとの間の粘着力が3.8N/25mm以上(3.8~4.5N/25mm)と高かった。さらに、実施例1~2では、保護膜のせん断強度が11.3N/3mm□以上(11.3~11.4N/3mm□)と大きかった。このように、実施例1~2の保護膜形成用フィルム及び保護膜は、好ましい特性を有していた。
これに対して、比較例1では、保護膜からのシリコンチップの浮きが抑制されていなかった。比較例1では、保護膜形成用組成物において、化合物(p)が不使用であった(すなわち、保護膜形成用フィルムが化合物(p)を含有していなかった)。また、比較例1では、保護膜形成用フィルムとシリコンウエハとの間の粘着力が2.6N/25mmと、実施例1~2よりも低かった。さらに、比較例1では、保護膜のせん断強度が10.1N/3mm□と、実施例1~2よりも小さかった。このように、比較例1の保護膜形成用フィルム及び保護膜は、好ましい特性を有していなかった。
これら実施例及び比較例の結果から、シリコンチップの浮きの有無は、化合物(p)の使用の有無の影響を受けることが、明確に確認された。