JP7234469B2 - RNAアプタマー、複合分子、pH判定方法、標識化RNA及び標識化RNAの製造方法 - Google Patents

RNAアプタマー、複合分子、pH判定方法、標識化RNA及び標識化RNAの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、RNAアプタマー、複合分子、pH判定方法、標識化RNA及び標識化RNAの製造方法に関する。
特定のRNA、タンパク質等の位置を解析する手法の一つとして、RNAアプタマーを用いた標識方法が知られている。RNAアプタマーとは、有機低分子等の標的分子に対し、特異的に結合又は相互作用する性質を有するリボ核酸分子である。RNAアプタマーは、DNAからの転写により細胞内で合成することが可能であるため、RNAアプタマーを用いた標識方法は、細胞内の幅広い対象分子の標識に対し安定的な適用が期待できる。
RNAアプタマーを用いた標識方法の例として、発光誘導性のRNAアプタマーを用いた発光標識方法が挙げられる。発光誘導性のRNAアプタマーを用いた発光標識方法とは、単独では発光性が非常に低い発光プローブと、RNAアプタマーと、を相互作用させることにより、発光プローブの発光能を誘導させ、この発光を標識として利用する方法である。例えば、特許文献1には、BabySpinach配列を有する発光誘導性のRNAアプタマーと、有機低分子である発光プローブと、を用いた発光標識方法が開示されている。
米国特許出願公開第2015/0141282号明細書
しかしながら、従来の発光誘導性のRNAアプタマーを用いた発光標識方法は、十分なものではなかった。例えば、従来の発光誘導性のRNAアプタマーは、発光誘導性が低い傾向にあった。すなわち、発光誘導性のRNAアプタマーが発光プローブと相互作用したときに観測される、発光プローブの発光性が低い傾向にあった。そのため、従来の発光誘導性のRNAアプタマーを細胞内における発光標識として用いることは困難であった。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、発光プローブと相互作用したときに、RNAアプタマーが発光プローブと相互作用が可能な発光誘導性アプタマーの塩基配列のみを有するRNAアプタマーである場合に比べ、発光プローブの発光性を増強可能なRNAアプタマーを提供する。
上記課題を解決するための手段は、以下の態様を含む。
[1] 発光プローブと相互作用して発光能を誘導させる発光誘導性アプタマーの塩基配列と、
三重鎖を協働的に形成可能な三重鎖形成性塩基配列群と、
を含み、
前記三重鎖形成性塩基配列群は、前記発光誘導性アプタマーの片末端側に結合した8残基以上の連続するウリジンからなる第1の塩基配列と、他方末端側に結合した8残基以上の連続するアデノシンからなる第2の塩基配列及び8残基以上の連続するウリジンからなる第3の塩基配列と、を有し、
前記第1の塩基配列、前記第2の塩基配列及び前記第3の塩基配列が三重鎖を協働的に形成可能な、RNAアプタマー。
[2] 前記三重鎖形成性塩基配列群が、前記発光誘導性アプタマーの片末端側に結合した10残基以上の連続するウリジンからなる第1の塩基配列と、他方末端側に結合した10残基以上の連続するアデノシンからなる第2の塩基配列及び10残基以上の連続するウリジンからなる第3の塩基配列と、を有する、前記[1]に記載のRNAアプタマー。
[3] 前記三重鎖形成性塩基配列群が、前記第2の塩基配列と第3の塩基配列との間に、ループ配列を有する、前記[1]又は[2]に記載のRNAアプタマー。
[4] 前記発光誘導性アプタマーの塩基配列が、BabySpinach(配列番号1)、Spinach(配列番号2)、Mango(配列番号3)、Corn(配列番号4)及びBroccoli(配列番号5)からなる群より選択される1種以上を含む、前記[1]~[3]のいずれか1項に記載のRNAアプタマー。
[5] 前記発光誘導性アプタマーの塩基配列が、BabySpinach(配列番号1)を含む、前記[4]に記載のRNAアプタマー。
[6] 前記[1]~[5]のいずれか1項に記載のRNAアプタマーと、
前記RNAアプタマーと相互作用する発光プローブと、を含む複合分子。
[7] 前記[1]~[5]のいずれか1項に記載のRNAアプタマーと前記RNAアプタマーと相互作用する発光プローブと測定試料とを混合して測定混合物を調製する混合工程と、
前記発光プローブにおける励起波長の光を前記測定混合物に照射し前記発光プローブの発光を観測する発光観測工程と、
前記発光観測工程により観測された発光に基づき前記測定試料のpHを判定するpH判定工程と、
を含むpH判定方法。
[8] 対象RNAの塩基配列の少なくとも一方の末端に、前記[1]~[5]のいずれか1項に記載のRNAアプタマーの塩基配列が付加された標識化RNA。
[9] 対象RNAの塩基配列の少なくとも一方の末端に、前記[1]~[5]のいずれか1項に記載のRNAアプタマーの塩基配列が付加された標識化RNAを製造する標識化RNAの製造方法。
本発明によれば、発光プローブと相互作用したときに、RNAアプタマーが発光プローブと相互作用が可能な発光誘導性アプタマーの塩基配列のみを有するRNAアプタマーである場合に比べ、発光プローブの発光性を増強可能なRNAアプタマーが提供される。
(A)比較例1におけるRNAアプタマー2のNative-PAGEの図、(B)実施例1におけるRNAアプタマー1のNative-PAGEの図である。 実施例1における各pH環境下で観測された発光の最大発光波長の発光強度をプロットしたグラフである。 比較例1における各pH環境下で観測された発光の最大発光波長の発光強度をプロットしたグラフである。 実施例1における蛍光顕微鏡画像である。 比較例1における蛍光顕微鏡画像である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。以下の実施形態は例示的なものであって、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。また、本開示に係る技術的思想の範囲内において、当業者による様々な変更及び修正が可能である。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率は、特に断らない限り、当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
また、本開示に記載された具体的かつ詳細な内容の一部又は全てを利用せずとも本発明を実施可能であることは、当業者には明らかである。
≪RNAアプタマー≫
本開示のRNAアプタマーは、発光プローブと相互作用して発光能を誘導させる発光誘導性アプタマーの塩基配列と、三重鎖を協働的に形成可能な三重鎖形成性塩基配列群と、を含む。本開示のRNAアプタマーにおける前記三重鎖形成性塩基配列群は、前記発光誘導性アプタマーの片末端側に結合した8残基以上の連続するウリジンからなる第1の塩基配列と、他方末端側に結合した8残基以上の連続するアデノシンからなる第2の塩基配列及び8残基以上の連続するウリジンからなる第3の塩基配列と、を有し、前記第1の塩基配列、前記第2の塩基配列及び前記第3の塩基配列が三重鎖を協働的に形成可能である。
本開示のRNAアプタマーは、上記構成を有することにより、発光プローブと相互作用が可能な発光誘導性アプタマーの塩基配列のみを有するRNAアプタマー(以下、「従来のRNAアプタマー」とも称す。)に比べ、発光プローブと相互作用したときに、発光プローブの発光性が増強される。この要因としては必ずしも明らかではないが、以下の様に推察される。
発光プローブが、RNAアプタマーにおける発光誘導性アプタマーの塩基配列と相互作用すると、RNAアプタマーと発光プローブとを含む複合分子が形成される。前記複合分子における発光プローブは、発光プローブが単独で存在する場合に比べ、発光プローブの分子振動等による励起エネルギーの損失が抑制され易くなり、前記励起エネルギーが発光として放出され易くなる傾向にある。このRNAアプタマーと発光プローブとの相互作用により発光プローブが発光可能となる現象又は発光が強まる現象を、本開示では「発光能が誘導される」とも称す。
本開示のRNAアプタマーは、その塩基配列に、三重結合を協働的に形成可能な三重結合形成性塩基配列群を含む。この三重結合形成性塩基配列群の存在により、本開示のRNAアプタマーは、複合分子を形成したときに、従来の三重結合形成性塩基配列群を有しないRNAアプタマーに比べ、発光プローブにおける励起エネルギーの損失が、より小さく抑えられる傾向にある。その結果、本開示のRNAアプタマーは、従来のRNAアプタマーに比べ、前記励起エネルギーが発光としてより放出され易く、即ち、発光プローブの発光性が増強されると考えられる。
本開示の発光プローブにおける発光の起源は、蛍光発光、燐光発光及び遅延蛍光のいずれであってもよい。
[発光誘導性アプタマーの塩基配列]
本開示のRNAアプタマーは、発光プローブと相互作用して発光能を誘導させる発光誘導性アプタマーの塩基配列を含む。
発光誘導性アプタマーの塩基配列は、発光プローブと相互作用して発光能を誘導可能であれば、特に制限されず、適宜公知の発光誘導性アプタマーの塩基配列を含んだ塩基配列を設計してよい。
発光誘導性アプタマーの塩基配列としては、例えば、BabySpinach(配列番号1)、Spinach(配列番号2)、Mango(配列番号3)、Corn(配列番号4)及びBroccoli(配列番号5)からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。
本開示の一実施形態では、発光誘導性アプタマーの塩基配列は、BabySpinach(配列番号1)を含んでいてもよい。
上述した各発光誘導性アプタマーの塩基配列は、下記の通りである。
・配列番号1:BabySpinach :GGUGAAGGACGGGUCCAGUAGUUCGCUACUGUUGAGUAGAGUGUGAGCUCC
・配列番号2:Spinach :AGACGCAACUGAAUGAAAUGGUGAAGGACGGGUCCAGGUGUGGCUGCUUCGGCAGUGCAGCUUGUUGAGUAGAGUGUGAGCUCCGUAACUAGUCGCGUCAC
・配列番号3:Mango :GGCACGUACCGAGGGAGUGGUGAGGAUGAGGCGAGUACGUGC
・配列番号4:Corn :GGCGCGAGGAAGGAGGUCUGAGGAGGUCACUGCGCC
・配列番号5:Broccoli :GAGACGGUCGGGUCCAGAUAUUCGUAUCUGUCGAGUAGAGUGUGGGCUCC
発光誘導性アプタマーの塩基配列は、発光能を誘導する性質が維持される範囲内で、上述した配列番号1~配列番号5の塩基配列に対して、5個以内の残基(好ましくは3個以内の残基、より好ましくは1個以内の残基)を付加、置換又は欠失させた塩基配列であってもよい。
発光能が維持されるとは、発光分光分析装置(Thermo Fisher Scientific社製、製品番号MIB#5250030)を用いて、所定濃度(例えば、3μmoL/L)の発光プローブの存在下で、測定される発光誘導性アプタマーの発光強度が、付加、置換又は欠失される元の塩基配列を有する発光誘導性アプタマーの発光強度と比べて、90%以上の発光強度を示すことをいう。なお、本測定において、前記付加、置換又は欠失させた塩基配列を有する発光誘導性アプタマーの濃度は、前記付加、置換又は欠失される元の塩基配列を有する発光誘導性アプタマーと同一であればよく、例えば、0.3μmoL/Lであってもよい。
発光誘導性アプタマーの塩基配列は、少なくとも1種の発光プローブの発光能を誘導させる塩基配列であればよく、複数種の発光プローブそれぞれの発光能を誘導させる塩基配列であってもよい。発光誘導性アプタマーの塩基配列が、前記複数種の発光プローブそれぞれの発光能を誘導させる塩基配列を含む場合、前記複数種の発光プローブそれぞれの発光能を誘導させる各塩基配列は、互いに重ならず、それぞれ異なる領域に位置する。
発光プローブは、発光誘導性アプタマーの種類に応じて、発光誘導性アプタマーと相互作用し発光能が誘導されることがわかっている公知の発光プローブを適用できる。発光プローブは、新規に設計された発光プローブであってもよい。
発光プローブは、1種の発光誘導性アプタマーに対し、1種単独であっても、2種以上の併用であってもよい。
発光プローブは、2種以上の発光誘導性アプタマーに対し、1種単独であっても、2種以上の併用であってもよい。例えば、発光誘導性アプタマーの塩基配列としてSpinach、BabySpinach及びBroccoliの3種の塩基配列を含み、且つ、発光プローブとしてDFHBIを用いる場合、DFHBIは、前記3種の塩基配列それぞれと相互作用し、発光能を誘導されてもよい。
発光誘導性アプタマーと発光プローブとの組み合わせの例を、表1に示すが、発光誘導性アプタマーと発光プローブとの組み合わせはこれに限定されない。なお、各発光誘導性アプタマーの配列番号は省略する。
Figure 0007234469000001
表1中、略称で記載した発光プローブの分子構造は下記の通りである。
Figure 0007234469000002
[三重鎖形成性塩基配列群]
本開示のRNAプローブは、三重鎖を協働的に形成可能な三重鎖形成性塩基配列群を塩基配列中に含む。
三重鎖形成性塩基配列群は、前記発光誘導性アプタマーの片末端側に結合した8残基以上の連続するウリジンからなる第1の塩基配列と、他方末端側に結合した8残基以上の連続するアデノシンからなる第2の塩基配列及び8残基以上の連続するウリジンからなる第3の塩基配列と、を有する。三重鎖形成性塩基配列群は、その他の塩基配列を含んでいてもよい。
以下、本開示において8残基以上の連続するウリジンからなる第1の塩基配列を、単に「第1の塩基配列」とも称す。8残基以上の連続するアデノシンからなる第2の塩基配列を、単に「第2の塩基配列」とも称す。8残基以上の連続するウリジンからなる第3の塩基配列を、単に「第3の塩基配列」とも称す。
第1の塩基配列における連続するウリジンの残基数は、8残基以上であり、三重鎖をより安定的に形成する観点から、9残基以上であることが好ましく、10残基以上であることがより好ましい。
第1の塩基配列における連続するウリジンの残基数は、製造上の観点から、100残基以下であることが好ましく、60残基以下であることがより好ましい。
第2の塩基配列における連続するアデノシンの残基数は、8残基以上であり、三重鎖をより安定的に形成する観点から、9残基以上であることが好ましく、10残基以上であることがより好ましい。
第2の塩基配列における連続するアデノシンの残基数は、製造上の観点から、100残基以下であることが好ましく、60残基以下であることがより好ましい。
第3の塩基配列における連続するウリジンの残基数は、8残基以上であり、三重鎖をより安定的に形成する観点から、9残基以上であることが好ましく、10残基以上であることがより好ましい。
第3の塩基配列における連続するウリジンの残基数は、製造上の観点から、100残基以下であることが好ましく、60残基以下であることがより好ましい。
第1の塩基配列、第2の塩基配列及び第3の塩基配列における連続するウリジン及び連続するアデノシンの残基数は、各々独立に8残基以上であれば、それぞれの残基数は制限されず、互いに同一の残基数であっても、各々独立に異なる残基数であってもよい。
第1の塩基配列、第2の塩基配列及び第3の塩基配列における連続するウリジン及び連続するアデノシンの各残基数は、三重鎖をより安定的に形成する観点から、互いに同一の残基数であることが好ましい。
三重鎖形成性塩基配列群は、前記発光誘導性アプタマーの片末端側に結合した10残基以上の連続するウリジンからなる第1の塩基配列と、他方末端側に結合した10残基以上の連続するアデノシンからなる第2の塩基配列及び10残基以上の連続するウリジンからなる第3の塩基配列と、を有することが好ましい。
三重鎖形成性塩基配列群が、10残基以上の連続するウリジンからなる第1の塩基配列と、10残基以上の連続するアデノシンからなる第2の塩基配列と、10残基以上の連続するウリジンからなる第3の塩基配列と、を有すると、三重鎖がより安定的に形成される傾向にある。その結果、三重鎖を有するRNAアプタマーが発光プローブと複合分子を形成したときに、発光プローブの分子振動等による励起エネルギーの損失が、より小さく抑えられ易く、発光プローブの発光性がより増強される傾向にある。
第2の塩基配列と第3の塩基配列との位置関係は、第2の塩基配列及び第3の塩基配列が第1の塩基配列を有する末端側とは他方の末端側に位置していれば、互いに制限されず、第2の塩基配列が第3の塩基配列よりも末端側に位置していても、第3の塩基配列が第2の塩基配列よりも末端側に位置していてもよい。
三重鎖形成性塩基配列群は、第2の塩基配列と、第3の塩基配列との間に、別の塩基配列、即ち、第2の塩基配列の連続するアデノシン配列と第3の塩基配列の連続するウリジン配列に含まれない塩基配列を含んでいてもよい。この様な別の塩基配列は、ループ配列を形成する。第2の塩基配列と第3の塩基配列との間におけるループ配列としては、例えば、「・・・AAAAAAAAGGGUUUUUUUU・・・」における「グアノシン(G)残基の様に、ウリジン及びアデノシンではない塩基からなる配列をいい、8個以内の残基(より好ましくは5個以内の残基)からなる配列であることが好ましい。
[その他の塩基配列]
本開示のRNAアプタマーは、発光誘導性アプタマーの塩基配列と、三重鎖形成性塩基配列群と、を含むものであれば、RNAアプタマーの塩基配列は特に制限されず、発光誘導性アプタマー及び三重鎖形成性塩基配列群以外のその他の塩基配列(以下、単に「その他の塩基配列」とも称す)を含んでいてもよい。
RNAアプタマーは、三重鎖形成性を阻害しない範囲で、その他の塩基配列として、5個以内の残基(好ましくは3個以内の残基)を、5’末端又は3’末端に、含んでいてもよい。例えば、RNAアプタマーは、製造上の観点から、3残基以内の連続するグアノシンからなる塩基配列を、5’末端に、有していてもよい。
RNAアプタマーは、発光誘導性アプタマーの塩基配列と、第1の塩基配列、第2の塩基配列又は第3の塩基配列それぞれとの間に、三重鎖形成性を阻害しない範囲で、5個以内の残基(好ましくは3個以内の残基)からなるその他の塩基配列を含んでいてもよい。
RNAアプタマーが複数の発光誘導性アプタマーの塩基配列を有する場合、RNAアプタマーは、各発光誘導性アプタマーの三次元構造をそれぞれ維持する観点から、その他の塩基配列を介して連結されていてもよく、前記その他の塩基配列はループ配列を形成することが好ましい。この場合、前記その他の塩基配列は、8個以内の残基であることが好ましく、3個以内の残基であることがより好ましい。
≪複合分子≫
本開示によれば、先述した本開示のRNAアプタマーと、前記RNAアプタマーと相互作用する発光プローブと、を含む複合分子が提供される。本開示の複合分子は、その他の分子を含んで構成されていてもよい。
RNAアプタマーと発光プローブとを含む複合分子は、例えば、後述するように、水溶液系におけるpHの判定、細胞中の対象RNAの標識化、及び、細胞中に含まれる対象RNAの局所的なpH変化を観測するための材料として用いることができる。
≪pH判定方法≫
本開示のpH判定方法は、本開示のRNAアプタマーを用いてpHを判定する方法であれば、特に制限されない。本開示のpH判定方法は、例えば、本開示のRNAアプタマーと前記RNAアプタマーと相互作用する発光プローブと測定試料とを混合して測定混合物を調製する混合工程と、前記発光プローブにおける励起波長の光を前記測定混合物に照射し前記発光プローブの発光を観測する発光観測工程と、前記発光観測工程により観測された発光に基づき前記測定試料のpHを判定するpH判定工程と、を含むことが好ましい。本開示のpH判定方法は、その他の工程を含んでいてもよい。
本開示のpH判定方法によれば、先述のRNAアプタマーと発光プローブとの相互作用による発光プローブの発光挙動の変化から、測定試料のpH判定ができる。この要因は必ずしも明らかではないが、以下の様に推察される。
本開示のRNAアプタマーは、弱酸性~中性の環境下(例えば、pH5~7環境下)では、第2の塩基配列におけるアデノシンのNH基の水素原子が、第1の塩基配列及び第3の塩基配列におけるウリジンそれぞれと、ワトソン-クリック型及びフーグスティーン型の水素結合を形成する。そのため、RNAアプタマーは、弱酸性~中性環境下では、三重鎖を形成する。三重鎖を有するRNAアプタマーが、弱酸性~中性の環境下で発光プローブと相互作用し複合分子を形成すると、先述の通り、発光プローブの発光能が誘導され、発光を示す。
一方、RNAアプタマーを、塩基性環境下(例えば、pH10環境下)に置くと、第2の塩基配列におけるアデノシンのNH基の水素原子が、脱プロトン化される傾向にある。そのため、RNAアプタマーは、塩基性環境下では、フーグスティーン型の水素結合を形成し難い。つまり、三重鎖の形成が維持できなくなる傾向にある。その結果、三重鎖を有しないRNAアプタマーが、塩基性環境下で発光プローブと相互作用し複合分子を形成しても、発光プローブの発光能は誘導されない傾向にある。つまり、弱酸性~中性の環境下における発光プローブの発光性に比べて、塩基性環境下における発光プローブの発光性は低下すると考えられる。
(混合工程)
混合工程では、本開示のRNAアプタマーと前記RNAアプタマーと相互作用する発光プローブと測定試料とを混合して測定混合物を調製する。
RNAアプタマーと発光プローブと試料とを混合する手法は、特に制限されない。前記混合する手法の一態様として、例えば、RNAアプタマー、発光プローブ、試料それぞれを、緩衝溶液等に予め溶解させ個別の溶液を調製してから、前記個別の溶液同士を混合し、測定混合物を調製してもよい。
pHを判定する試料が水溶液系である場合、例えば、複合分子を形成していない余剰な発光プローブに由来する発光を低く抑えpH判定をより容易にする観点から、RNAアプタマーを含む溶液と発光プローブを含む溶液とを予め混合し、複合分子を形成させてから、前記複合分子を測定試料と混合することが好ましい。
pHを判定する試料が細胞である場合、例えば、試料に効率的にRNAアプタマーを導入する観点から、発現ベクターにより細胞内にRNAアプタマーを発現させてから、細胞に対し、発光プローブを含む液体を添加することで、細胞内で複合分子を形成させ、測定混合物を調製してもよい。この場合、細胞内においても、複合分子を形成していない余剰な発光プローブに由来する発光を低く抑えpH判定をより容易にする観点から、前記測定混合物を、緩衝溶液等の溶液で洗浄することが好ましい。
RNAアプタマーと発光プローブと試料とを混合する際の温度及び混合時間は、特に制限されず、RNAアプタマー及び複合分子の三次元構造が崩れない範囲、並びに、細胞などの試料が壊れない範囲で、適宜設計してよい。
測定試料は、液体であってもよく、固体であってもよい。
測定試料が液体である場合、測定試料の未希釈液をそのまま使用してもよいし、測定試料を媒体に、懸濁、分散又は溶解した希釈液を使用してもよい。
測定試料が細胞等の固体である場合、検体を溶液媒体に懸濁、分散又は溶解した希釈液を液体検体として使用することが好ましい。溶液媒体としては、特に制限されず、例えば、水、緩衝液等が挙げられる。
測定混合物に含まれるRNAアプタマーの濃度は、特に限定されず、pHを判定したい溶液の量及び種類に応じて適宜設定してよい。RNAアプタマーの濃度は、例えば、発光強度を定量的に観測する観点から、0.01μmoL/L以上10μmoL/L以下であることが好ましく、0.05μmoL/L以上5μmoL/L以下であることがより好ましく、0.1μmoL/L以上3μmoL/L以下であることがさらに好ましい。
測定混合物に含まれる発光プローブの濃度は、特に限定されず、pHを判定したい溶液の量及び種類に応じて適宜設定してよい。発光プローブの濃度は、例えば、発光強度を定量的に観測する観点から、0.1μmoL/L以上100μmoL/L以下であることが好ましく、0.5μmoL/L以上10μmoL/L以下であることがより好ましく、1μmoL/L以上5μmoL/L以下であることがさらに好ましい。
測定混合物に含まれるRNAアプタマーと発光プローブとの濃度比は、特に限定されず、適宜設定してよい。RNAアプタマーと発光プローブとの濃度比(RNAアプタマー/発光プローブ)は、例えば、RNAアプタマーと発光プローブとを含む複合分子を好適に形成させる観点から、1/100以上1/1以下であることが好ましく、1/70以上1/2以下であることがより好ましく、1/50以上1/5以下であることがさらに好ましい。
1種のRNAアプタマーに対して複数種の発光プローブを用いて複合分子を形成する場合、上記発光プローブの濃度は、複数種の発光プローブにおける濃度の総和を意味する。
複数種のRNAアプタマーを用いる場合、上記RNAアプタマーの濃度は、各RNAアプタマーそれぞれにおける濃度を意味する。
(発光観測工程)
発光観測工程では、前記発光プローブにおける励起波長の光を前記測定混合物に照射し前記発光プローブの発光を観測する。
発光プローブの発光の観測方法は、特に制限されず、目視による観測、発光分光分析装置による観測、発光顕微鏡による観測のいずれであってもよい。
発光分光分析装置を用いて発光を観測する場合、複合分子における発光プローブの発光は、例えば、Thermo Fisher Scientific社製のMIB#5250030を用いて、室温(25℃)、発光プローブの濃度3μmmoL/L、発光誘導性アプタマーの濃度0.3μmmoL/Lの条件で測定できる。
発光顕微鏡を用いて発光を観測する場合、発光プローブの発光は、例えば、Thermo Fisher Scientific社製のEVOS FL(登録商標)を用いて、室温(25℃)、発光プローブの濃度3μmmoL/L、発光誘導性アプタマーの濃度0.3μmmoL/Lの条件で測定できる。
(pH判定工程)
pH判定工程では、前記発光観測工程により観測された発光に基づき前記測定試料のpHを判定する。
測定試料のpH判定は、例えば、種々のpH値が既知である溶液を測定試料として用いて前記混合工程及び発光観測工程を行い、得られた各発光強度とpH値との相関表、グラフ等の情報を得て、前記情報をもとに、pH値が未知の測定試料についてpHを判定してもよい。
例えば、pH値が未知である測定試料を用いた場合、発光観測工程で観測された複合分子における発光プローブの発光強度が、pH7環境下の発光強度よりも低く、pH9環境下の発光強度よりも高い場合、pH値が未知の測定試料は、pHが7超え9未満であると判定してよい(図2参照)。
≪標識化RNA≫
本開示の標識化RNAは、本開示のRNAアプタマーにより、対象となるRNA(以下、「対象RNA」とも称す)が標識化されたものであれば、特に制限されない。対象RNAは、特に制限されず、mRNA、miRNA等の適宜公知のRNAを適用できる。
標識化RNAは、例えば、製造上の観点及びRNAアプタマーにおける三重鎖を効率的に形成させる観点から、対象RNAの塩基配列の少なくとも一方の末端に、先述した本開示のRNAアプタマーの塩基配列が付加されたRNAであることが好ましく、3’末端に前記RNAアプタマーの塩基配列が付加された標識化RNAであることがより好ましい。
標識化RNAは、例えば、RNAの細胞内におけるイメージング、前記RNAと相互作用した分子の同定などに用いることができる。
≪標識化RNAの製造方法≫
本開示の標識化RNAの製造方法は、対象RNAを、本開示のRNAアプタマーを用いて標識化RNAを製造する手法であれば、特に制限されず、適宜公知の製造方法を適用してよい。標識化RNAの製造方法としては、例えば、発現ベクターを用いた形質転換により、細胞内にRNAアプタマーと対象RNAとが連結された標識化RNAを発現させる製造方法;RNAアプタマーと対象RNAの両方の配列を含むRNAを化学合成あるいは転写酵素を用いて合成する製造方法;細胞内にRNAアプタマーと対象RNAとを導入した後に酵素等により両者を結合する製造方法などが挙げられる。
標識化RNAの製造方法は、例えば、製造上の観点及びRNAアプタマーにおける三重鎖を効率的に形成させる観点から、対象RNAの塩基配列の少なくとも一方の末端に、先述した本開示のRNAアプタマーの塩基配列が付加された標識化RNAを製造する製造方法であることが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。なお、特に断りがない限り「部」は「質量部」を意味する。
-pH緩衝溶液の調製-
下記に示すpH4~pH10のpH緩衝溶液をそれぞれ調製した。
(pH4緩衝溶液)
クエン酸三ナトリウム100mM、塩化マグネシウム5mM、塩化カルシウム125mMを含む水溶液を、水酸化ナトリウムを用いてpH4に調整し、これをpH4緩衝溶液とした。
(pH5緩衝溶液)
水酸化ナトリウムを用いて前記水溶液をpH5に調整した以外は、pH4緩衝溶液と同様の操作により、pH5緩衝溶液を調製した。
(pH6緩衝溶液)
水酸化ナトリウムを用いて前記水溶液をpH6に調整した以外は、pH4緩衝溶液と同様の操作により、pH6緩衝溶液を調製した。
(pH7緩衝溶液)
HEPES40mM、塩化カリウム125mM及び塩化マグネシウム5mMを含む水溶液を、水酸化ナトリウム及び1M(mmoL/L)塩酸を用いてpH7に調整し、これをpH7緩衝溶液とした。
(pH8緩衝溶液)
水酸化ナトリウム及び1M(mmoL/L)塩酸を用いて前記水溶液をpH8に調整した以外は、pH7緩衝溶液と同様の操作により、pH8緩衝溶液を調製した。
(pH9緩衝溶液)
2-(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸(CHES)100mM、塩化ナトリウム30mM、塩化カリウム120mM、りん酸二水素ナトリウム1mM、塩化カルシウム1mM及びニゲリシンナトリウム塩10μMを含む水溶液を、水酸化ナトリウムを用いてpH9に調整し、これをpH9緩衝溶液とした。
(pH10緩衝溶液)
水酸化ナトリウムを用いて前記水溶液をpH10に調整した以外は、pH9緩衝溶液と同様の操作により、pH10緩衝溶液を調製した。
(PBS-pH7緩衝溶液)
りん酸二水素カリウム2mM、りん酸水素二ナトリウム8mM、塩化ナトリウム130mM、塩化カルシウム2.7mMを含む水溶液を、水酸化ナトリウムを用いてpH7に調整し、これをPBS-pH7緩衝溶液とした。
-RNAアプタマーの合成例-
(1)RNAアプタマー1:発光誘導性アプタマーであるBabySpinachの塩基配列と、三重鎖を協働的に形成可能な三重鎖形成性塩基配列群と、を含むRNAアプタマー
HiScribeTM High Yield RNA Synthesis Kit(New England Biolabs Japan社製)を用いて、下記の塩基配列を有するRNAアプタマー1が1μmoL/Lで含まれる水溶液を合成した。合成したRNAアプタマー1のポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果から、目的の長さを有するRNAアプタマー1が得られていることを確認した(図1B参照)。その後、得られたRNAアプタマー1を含む水溶液を、インキュベーターを用いて90℃10分間でアニーリングし、その後、室温(25℃)まで放冷することで、RNAアプタマー1をフォールディングさせ、これをRNAアプタマー1溶液とした。
・RNAアプタマー1の塩基配列:GGGAAAAAAAAAAUUUUUUUUUUGGUGAAGGACGGGUCCAGUAGUUCGCUACUGUUGAGUAGAGUGUGAGCUCCUUUUUUUUUU(配列番号6)。
上記配列番号6における塩基配列の内訳は以下の通りである。なお、5’末端の塩基配列「GGG」は、合成上の都合により設けられる塩基配列である。
発光誘導性アプタマーの塩基配列:「GGUGAAGGACGGGUCCAGUAGUUCGCUACUGUUGAGUAGAGUGUGAGCUCC(配列番号1)」
8残基以上の連続するウリジンからなる第1の塩基配列:「UUUUUUUUUU」
8残基以上の連続するアデノシンからなる第2の塩基配列:「AAAAAAAAAA」
8残基以上の連続するウリジンからなる第3の塩基配列:「UUUUUUUUUU」
(2)RNAアプタマー2:発光誘導性アプタマーであるBabySpinachの塩基配列を含み、三重鎖形成性塩基配列群を含まないRNAアプタマー。
RNAアプタマー1と同様の手法を用いて、下記の塩基配列を有するRNAアプタマー2が1μmoL/Lで含まれるRNAアプタマー2溶液を合成した。合成したRNAアプタマー2のポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果から、目的の長さを有するRNAアプタマー2が得られていることを確認した(図1A参照)。
・RNAアプタマー2の塩基配列:GGGGGUGAAGGACGGGUCCAGUAGUUCGCUACUGUUGAGUAGAGUGUGAGCUCC(配列番号7)。
上記配列番号7における塩基配列の内訳は以下の通りである。なお、5’末端の塩基配列「GGG」は、合成上の都合により設けられる塩基配列である。
発光誘導性アプタマーの塩基配列:「GGUGAAGGACGGGUCCAGUAGUUCGCUACUGUUGAGUAGAGUGUGAGCUCC(配列番号1)」
8残基以上の連続するウリジンからなる第1の塩基配列:なし
8残基以上の連続するアデノシンからなる第2の塩基配列:なし
8残基以上の連続するウリジンからなる第3の塩基配列:なし
[実施例1]
(1)溶液系における複合分子の中の発光プローブの発光観測
RNAアプタマー1溶液と、発光プローブである3’5’-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンジリデンイミダゾリノン(DFHBI)とを、RNAアプタマー1の終濃度が終濃度300nmoL/L、発光プローブの終濃度が3μmoL/Lとなるように、0.2mLのpH7緩衝溶液に溶解させ、複合分子を含む溶液を調製した。この複合分子を含む溶液について、pH7環境下における室温(25℃)での発光スペクトルを、発光分光分析装置(Thermo Fisher Scientific社製、製品番号MIB#5250030)を用いて測定した。なお、励起波長は発光プローブであるDFHBIの励起波長488nm±5nmとし、509nm±5nmの発光を観測した。
次に、使用する緩衝溶液を、pH8緩衝溶液~pH10緩衝溶液とする仕様とした以外は、前記pH7環境下における発光観測と同様の操作により、pH8~10環境下における発光をそれぞれ観測した。図2に、各pH環境下において観測された発光の最大発光波長の発光強度をプロットしたグラフを示す。
(2)細胞内における複合分子中の発光プローブの発光観測
(2-1)pH7環境下における発光観測
制限酵素NheIの認識配列(GCTAGC)と、下記に示すRNAアプタマー3の塩基配列と、制限酵素XbaIの認識配列(TCTAGA)と、を含み、両末端にATCからなる3残基を有するDNA断片(配列番号8:ATCGCTAGCGGAAAAAAAAAATTTTTTTTTTGGTGAAGGACGGGTCCAGTAGTTCGCTACTGTTGAGTAGAGTGTGAGCTCCTTTTTTTTTTTCTAGAATC)を設計し、合成した。前記DNA断片を、制限酵素NheI(Thermo Fisher Scientific社製)及び制限酵素XbaI(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて切断した。そして、前記切断されたDNA断片を、同様の制限酵素を用いて切断したpcDNATM3.1ベクター(Thermo Fisher Scientific社製)に挿入することで、ヒトサトメガロウイルス由来プロモーターの下流(3’末端側)にRNAアプタマー3の塩基配列を含む発現ベクター(以下、「pcDNA-RNAアプタマー3」と称す)を構築した。
・RNAアプタマー3の塩基配列:AAAAAAAAAAUUUUUUUUUUGGUGAAGGACGGGUCCAGUAGUUCGCUACUGUUGAGUAGAGUGUGAGCUCCUUUUUUUUUU(配列番号10)。
RNAアプタマー3の塩基配列は、RNAアプタマー1における5’末端の塩基配列「GGG」を除いた塩基配列である。
ヒト由来HeLa細胞(凍結保存液)を37℃の温水を用いて温浴することで溶解し、ダルベッコ改変イーグル培地(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて、37℃、二酸化炭素濃度5%の条件下で24時間培養した。培養後の前記ヒト由来HeLa細胞に対し、前記pcDNA-RNAアプタマー3とLipofectamine (Thermo Fisher Scientific社製、製品番号11668027)とを混合して形質転換を行い、前記ヒト由来HeLa細胞中に、RNAアプタマー3を発現させた。
その後、PBS-pH7緩衝溶液を用いて、RNAアプタマー3により形質転換されたHeLa細胞を洗浄した。そして、前記ヒト由来HeLa細胞を含むPBS-pH7緩衝溶液中に、終濃度が1.2μMとなるまでDFHBIを添加し、RNAアプタマー3と発光プローブとを含む複合分子を、細胞内で形成させた。その後、RNAアプタマー3と複合分子を形成していない余分なDFHBIを取り除くため、前記HeLa細胞を、pH7緩衝溶液を用いて洗浄し、室温で30分間静置した。
得られた前記ヒト由来HeLa細胞を、蛍光顕微鏡(Thermo Fisher Scientific社製のEVOS FL)を用いて観察し、前記ヒト由来HeLa細胞に含まれる複合分子における発光プローブの発光を観測した。なお、蛍光顕微鏡による発光観測では、励起波長を発光プローブの励起波長488nmとし、蛍光顕微鏡により発光を観測した。図4Aに光非照射時の蛍光顕微鏡画像を、図4Bに光励起時の蛍光顕微鏡画像を示す。
(2-2)pH10環境下における発光観測
pH7緩衝溶液を、pH10緩衝溶液とする仕様とした以外は、上記(1)pH7環境下における発光観測と同様の操作により発光を観測した。図4Cに光非照射時の蛍光顕微鏡画像を、図4Dに光励起時の蛍光顕微鏡画像を示す。
[比較例1]
(1)溶液系における複合分子の中の発光プローブの発光観測
前記RNAアプタマー1溶液の代わりに、RNAアプタマー2溶液を用いる仕様とした以外は、実施例1に示すpH7環境下~10環境下における発光観測と同様の手法により、発光をそれぞれ観測した。図3に、各pH環境下において観測された発光の最大発光波長の発光強度をプロットしたグラフを示す。
(2)細胞内における複合分子中の発光プローブの発光観測
(2-1)pH7環境下における発光観測
制限酵素NheIの認識配列(GCTAGC)と、下記に示すRNAアプタマー4の塩基配列と、制限酵素XbaIの認識配列(TCTAGA)と、を含み、両末端にATCからなる3残基を有するDNA断片(配列番号9:ATCGCTAGCGGGGTGAAGGACGGGTCCAGTAGTTCGCTACTGTTGAGTAGAGTGTGAGCTCCTCTAGAATC)を設計し、合成した。前記DNA断片を、制限酵素NheI(Thermo Fisher Scientific社製)及び制限酵素XbaI(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて切断した。そして、前記切断されたDNA断片を、同様の制限酵素を用いて切断したpcDNATM3.1ベクター(Thermo Fisher Scientific社製)に挿入することで、ヒトサトメガロウイルス由来プロモーターの下流(3’末端側)にRNAアプタマー4の配列を含む発現ベクター(以下、「pcDNA-RNAアプタマー4」と称す)を構築した。
・RNAアプタマー4の塩基配列:GGUGAAGGACGGGUCCAGUAGUUCGCUACUGUUGAGUAGAGUGUGAGCUCC(配列番号11)。
RNAアプタマー4の塩基配列は、RNAアプタマー2における5’末端の塩基配列「GGG」を除いた塩基配列である。
そして、先述のpcDNA-RNAアプタマー3の代わりに、pcDNA-RNAアプタマー4を用いる仕様とした以外は、実施例1に示すpH7環境下における発光観測と同様の手法により、前記ヒト由来HeLa細胞中に発現したRNAアプタマー4と発光プローブとの複合分子における発光を観測した。図5Aに光非照射時の蛍光顕微鏡画像を、図5Bに光励起時の蛍光顕微鏡画像を示す。
(2-2)pH10環境下における発光観測
先述のpcDNA-RNAアプタマー3の代わりに、pcDNA-RNAアプタマー4を用いる仕様とした以外は、実施例1に示すpH10環境下における発光観測と同様の手法により、前記ヒト由来HeLa細胞中に発現したRNAアプタマー4と発光プローブとの複合分子における発光を観測した。図5Cに光非照射時の蛍光顕微鏡画像を、図5Dに光励起時の蛍光顕微鏡画像を示す。
図2及び図3に示すように、溶液系では、いずれのpH環境下においても、実施例1のRNAアプタマーは、比較例1のRNAアプタマーよりも、発光プローブの発光性をより強く増強することがわかった。
図2に示すように、溶液系の評価では、pHが塩基性環境下になるにともない、複合分子における発光プローブに由来する発光強度(以下、「発光プローブの発光強度」とも称す。)が低下する傾向にあった。さらに、図4B及び図4Dに示すように、細胞内の評価でも、溶液系の評価結果と同様に、pH7からpH10へと塩基性環境下になるにともない、発光プローブの発光強度は低下する傾向にあった。すなわち、実施例1のRNAアプタマーは、pHが塩基性環境下になるにともない、溶液系及び細胞内の両方において発光プローブの発光能を誘導しない傾向にあった。この要因としては、pHが塩基性環境下になるに伴い、(1)RNAアプタマーにおける三重鎖を形成するアデノシンのプロトンが脱プロトン化され三重鎖構造が維持できなくなったこと、(2)発光誘導性アプタマーの三次元構造が変化したこと、が考えられる。
これらの結果から、本開示のRNAアプタマーは、RNAアプタマーと相互作用する発光プローブの発光強度によって、測定試料中のpHを判定できることがわかった。
一方、図5B及び図5Dに示すように、比較例1のRNAアプタマーは、細胞内における発光プローブに由来する発光強度が低く、pHの変動にともなう発光強度の変化を検出することがより困難であった。

Claims (9)

  1. 発光プローブと相互作用して発光能を誘導させる発光誘導性アプタマーの塩基配列と、
    三重鎖を協働的に形成可能な三重鎖形成性塩基配列群と、
    を含み、
    前記三重鎖形成性塩基配列群は、前記発光誘導性アプタマーの塩基配列の片末端側に直接又は5個以内の残基からなる塩基配列を介して結合した8残基以上100残基以下の連続するウリジンからなる第1の塩基配列と、他方末端側に結合した8残基以上100残基以下の連続するアデノシンからなる第2の塩基配列及び8残基以上100残基以下の連続するウリジンからなる第3の塩基配列と、を有し、
    前記第2の塩基配列又は前記第3の塩基配列は前記発光誘導性アプタマーの塩基配列の末端に直接又は5個以内の残基からなる塩基配列を介して結合し、
    前記第2の塩基配列と前記第3の塩基配列とは直接又は5個以内の残基からなる塩基配列を介して結合し、
    前記発光誘導性アプタマーの塩基配列が、BabySpinach(配列番号1)、Spinach(配列番号2)、Mango(配列番号3)、Corn(配列番号4)及びBroccoli(配列番号5)からなる群より選択される1種以上を含み、
    前記第1の塩基配列、前記第2の塩基配列及び前記第3の塩基配列が三重鎖を協働的に形成可能な、RNAアプタマー。
  2. 前記第1の塩基配列が10残基以上60残基以下の連続するウリジンからなり、前記第2の塩基配列が10残基以上60残基以下の連続するアデノシンからなり、前記第3の塩基配列が10残基以上60残基以下の連続するウリジンからなる、請求項1に記載のRNAアプタマー。
  3. 前記三重鎖形成性塩基配列群が、前記第2の塩基配列と第3の塩基配列との間に、ループ配列を有する、請求項1又は請求項2に記載のRNAアプタマー。
  4. 前記第1の塩基配列と第3の塩基配列がそれぞれ前記発光誘導性アプタマーの塩基配列の末端に直接又は5個以内の残基からなる塩基配列を介して結合している、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のRNAアプタマー。
  5. 前記発光誘導性アプタマーの塩基配列が、BabySpinach(配列番号1)を含む、請求項4に記載のRNAアプタマー。
  6. 請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のRNAアプタマーと、
    前記RNAアプタマーと相互作用する発光プローブと、を含む複合分子。
  7. 請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のRNAアプタマーと前記RNAアプタマーと相互作用する発光プローブと測定試料とを混合して測定混合物を調製する混合工程と、
    前記発光プローブにおける励起波長の光を前記測定混合物に照射し前記発光プローブの発光を観測する発光観測工程と、
    前記発光観測工程により観測された発光に基づき前記測定試料のpHを判定するpH判定工程と、
    を含むpH判定方法。
  8. 対象RNAの塩基配列の少なくとも一方の末端に、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のRNAアプタマーの塩基配列が付加された標識化RNA。
  9. 対象RNAの塩基配列の少なくとも一方の末端に、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のRNAアプタマーの塩基配列が付加された標識化RNAを製造する標識化RNAの製造方法。
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