JP7234469B2 - RNAアプタマー、複合分子、pH判定方法、標識化RNA及び標識化RNAの製造方法 - Google Patents
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Description
三重鎖を協働的に形成可能な三重鎖形成性塩基配列群と、
を含み、
前記三重鎖形成性塩基配列群は、前記発光誘導性アプタマーの片末端側に結合した8残基以上の連続するウリジンからなる第1の塩基配列と、他方末端側に結合した8残基以上の連続するアデノシンからなる第2の塩基配列及び8残基以上の連続するウリジンからなる第3の塩基配列と、を有し、
前記第1の塩基配列、前記第2の塩基配列及び前記第3の塩基配列が三重鎖を協働的に形成可能な、RNAアプタマー。
前記RNAアプタマーと相互作用する発光プローブと、を含む複合分子。
前記発光プローブにおける励起波長の光を前記測定混合物に照射し前記発光プローブの発光を観測する発光観測工程と、
前記発光観測工程により観測された発光に基づき前記測定試料のpHを判定するpH判定工程と、
を含むpH判定方法。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率は、特に断らない限り、当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
また、本開示に記載された具体的かつ詳細な内容の一部又は全てを利用せずとも本発明を実施可能であることは、当業者には明らかである。
本開示のRNAアプタマーは、発光プローブと相互作用して発光能を誘導させる発光誘導性アプタマーの塩基配列と、三重鎖を協働的に形成可能な三重鎖形成性塩基配列群と、を含む。本開示のRNAアプタマーにおける前記三重鎖形成性塩基配列群は、前記発光誘導性アプタマーの片末端側に結合した8残基以上の連続するウリジンからなる第1の塩基配列と、他方末端側に結合した8残基以上の連続するアデノシンからなる第2の塩基配列及び8残基以上の連続するウリジンからなる第3の塩基配列と、を有し、前記第1の塩基配列、前記第2の塩基配列及び前記第3の塩基配列が三重鎖を協働的に形成可能である。
本開示のRNAアプタマーは、その塩基配列に、三重結合を協働的に形成可能な三重結合形成性塩基配列群を含む。この三重結合形成性塩基配列群の存在により、本開示のRNAアプタマーは、複合分子を形成したときに、従来の三重結合形成性塩基配列群を有しないRNAアプタマーに比べ、発光プローブにおける励起エネルギーの損失が、より小さく抑えられる傾向にある。その結果、本開示のRNAアプタマーは、従来のRNAアプタマーに比べ、前記励起エネルギーが発光としてより放出され易く、即ち、発光プローブの発光性が増強されると考えられる。
本開示のRNAアプタマーは、発光プローブと相互作用して発光能を誘導させる発光誘導性アプタマーの塩基配列を含む。
・配列番号1:BabySpinach :GGUGAAGGACGGGUCCAGUAGUUCGCUACUGUUGAGUAGAGUGUGAGCUCC
・配列番号2:Spinach :AGACGCAACUGAAUGAAAUGGUGAAGGACGGGUCCAGGUGUGGCUGCUUCGGCAGUGCAGCUUGUUGAGUAGAGUGUGAGCUCCGUAACUAGUCGCGUCAC
・配列番号3:Mango :GGCACGUACCGAGGGAGUGGUGAGGAUGAGGCGAGUACGUGC
・配列番号4:Corn :GGCGCGAGGAAGGAGGUCUGAGGAGGUCACUGCGCC
・配列番号5:Broccoli :GAGACGGUCGGGUCCAGAUAUUCGUAUCUGUCGAGUAGAGUGUGGGCUCC
発光能が維持されるとは、発光分光分析装置(Thermo Fisher Scientific社製、製品番号MIB#5250030)を用いて、所定濃度(例えば、3μmoL/L)の発光プローブの存在下で、測定される発光誘導性アプタマーの発光強度が、付加、置換又は欠失される元の塩基配列を有する発光誘導性アプタマーの発光強度と比べて、90%以上の発光強度を示すことをいう。なお、本測定において、前記付加、置換又は欠失させた塩基配列を有する発光誘導性アプタマーの濃度は、前記付加、置換又は欠失される元の塩基配列を有する発光誘導性アプタマーと同一であればよく、例えば、0.3μmoL/Lであってもよい。
発光プローブは、2種以上の発光誘導性アプタマーに対し、1種単独であっても、2種以上の併用であってもよい。例えば、発光誘導性アプタマーの塩基配列としてSpinach、BabySpinach及びBroccoliの3種の塩基配列を含み、且つ、発光プローブとしてDFHBIを用いる場合、DFHBIは、前記3種の塩基配列それぞれと相互作用し、発光能を誘導されてもよい。
本開示のRNAプローブは、三重鎖を協働的に形成可能な三重鎖形成性塩基配列群を塩基配列中に含む。
三重鎖形成性塩基配列群は、前記発光誘導性アプタマーの片末端側に結合した8残基以上の連続するウリジンからなる第1の塩基配列と、他方末端側に結合した8残基以上の連続するアデノシンからなる第2の塩基配列及び8残基以上の連続するウリジンからなる第3の塩基配列と、を有する。三重鎖形成性塩基配列群は、その他の塩基配列を含んでいてもよい。
第1の塩基配列における連続するウリジンの残基数は、製造上の観点から、100残基以下であることが好ましく、60残基以下であることがより好ましい。
第2の塩基配列における連続するアデノシンの残基数は、製造上の観点から、100残基以下であることが好ましく、60残基以下であることがより好ましい。
第3の塩基配列における連続するウリジンの残基数は、製造上の観点から、100残基以下であることが好ましく、60残基以下であることがより好ましい。
本開示のRNAアプタマーは、発光誘導性アプタマーの塩基配列と、三重鎖形成性塩基配列群と、を含むものであれば、RNAアプタマーの塩基配列は特に制限されず、発光誘導性アプタマー及び三重鎖形成性塩基配列群以外のその他の塩基配列(以下、単に「その他の塩基配列」とも称す)を含んでいてもよい。
本開示によれば、先述した本開示のRNAアプタマーと、前記RNAアプタマーと相互作用する発光プローブと、を含む複合分子が提供される。本開示の複合分子は、その他の分子を含んで構成されていてもよい。
本開示のpH判定方法は、本開示のRNAアプタマーを用いてpHを判定する方法であれば、特に制限されない。本開示のpH判定方法は、例えば、本開示のRNAアプタマーと前記RNAアプタマーと相互作用する発光プローブと測定試料とを混合して測定混合物を調製する混合工程と、前記発光プローブにおける励起波長の光を前記測定混合物に照射し前記発光プローブの発光を観測する発光観測工程と、前記発光観測工程により観測された発光に基づき前記測定試料のpHを判定するpH判定工程と、を含むことが好ましい。本開示のpH判定方法は、その他の工程を含んでいてもよい。
一方、RNAアプタマーを、塩基性環境下(例えば、pH10環境下)に置くと、第2の塩基配列におけるアデノシンのNH2基の水素原子が、脱プロトン化される傾向にある。そのため、RNAアプタマーは、塩基性環境下では、フーグスティーン型の水素結合を形成し難い。つまり、三重鎖の形成が維持できなくなる傾向にある。その結果、三重鎖を有しないRNAアプタマーが、塩基性環境下で発光プローブと相互作用し複合分子を形成しても、発光プローブの発光能は誘導されない傾向にある。つまり、弱酸性~中性の環境下における発光プローブの発光性に比べて、塩基性環境下における発光プローブの発光性は低下すると考えられる。
混合工程では、本開示のRNAアプタマーと前記RNAアプタマーと相互作用する発光プローブと測定試料とを混合して測定混合物を調製する。
測定試料が液体である場合、測定試料の未希釈液をそのまま使用してもよいし、測定試料を媒体に、懸濁、分散又は溶解した希釈液を使用してもよい。
測定試料が細胞等の固体である場合、検体を溶液媒体に懸濁、分散又は溶解した希釈液を液体検体として使用することが好ましい。溶液媒体としては、特に制限されず、例えば、水、緩衝液等が挙げられる。
発光観測工程では、前記発光プローブにおける励起波長の光を前記測定混合物に照射し前記発光プローブの発光を観測する。
発光分光分析装置を用いて発光を観測する場合、複合分子における発光プローブの発光は、例えば、Thermo Fisher Scientific社製のMIB#5250030を用いて、室温(25℃)、発光プローブの濃度3μmmoL/L、発光誘導性アプタマーの濃度0.3μmmoL/Lの条件で測定できる。
発光顕微鏡を用いて発光を観測する場合、発光プローブの発光は、例えば、Thermo Fisher Scientific社製のEVOS FL(登録商標)を用いて、室温(25℃)、発光プローブの濃度3μmmoL/L、発光誘導性アプタマーの濃度0.3μmmoL/Lの条件で測定できる。
pH判定工程では、前記発光観測工程により観測された発光に基づき前記測定試料のpHを判定する。
例えば、pH値が未知である測定試料を用いた場合、発光観測工程で観測された複合分子における発光プローブの発光強度が、pH7環境下の発光強度よりも低く、pH9環境下の発光強度よりも高い場合、pH値が未知の測定試料は、pHが7超え9未満であると判定してよい(図2参照)。
本開示の標識化RNAは、本開示のRNAアプタマーにより、対象となるRNA(以下、「対象RNA」とも称す)が標識化されたものであれば、特に制限されない。対象RNAは、特に制限されず、mRNA、miRNA等の適宜公知のRNAを適用できる。
本開示の標識化RNAの製造方法は、対象RNAを、本開示のRNAアプタマーを用いて標識化RNAを製造する手法であれば、特に制限されず、適宜公知の製造方法を適用してよい。標識化RNAの製造方法としては、例えば、発現ベクターを用いた形質転換により、細胞内にRNAアプタマーと対象RNAとが連結された標識化RNAを発現させる製造方法;RNAアプタマーと対象RNAの両方の配列を含むRNAを化学合成あるいは転写酵素を用いて合成する製造方法;細胞内にRNAアプタマーと対象RNAとを導入した後に酵素等により両者を結合する製造方法などが挙げられる。
下記に示すpH4~pH10のpH緩衝溶液をそれぞれ調製した。
(pH4緩衝溶液)
クエン酸三ナトリウム100mM、塩化マグネシウム5mM、塩化カルシウム125mMを含む水溶液を、水酸化ナトリウムを用いてpH4に調整し、これをpH4緩衝溶液とした。
水酸化ナトリウムを用いて前記水溶液をpH5に調整した以外は、pH4緩衝溶液と同様の操作により、pH5緩衝溶液を調製した。
水酸化ナトリウムを用いて前記水溶液をpH6に調整した以外は、pH4緩衝溶液と同様の操作により、pH6緩衝溶液を調製した。
HEPES40mM、塩化カリウム125mM及び塩化マグネシウム5mMを含む水溶液を、水酸化ナトリウム及び1M(mmoL/L)塩酸を用いてpH7に調整し、これをpH7緩衝溶液とした。
水酸化ナトリウム及び1M(mmoL/L)塩酸を用いて前記水溶液をpH8に調整した以外は、pH7緩衝溶液と同様の操作により、pH8緩衝溶液を調製した。
2-(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸(CHES)100mM、塩化ナトリウム30mM、塩化カリウム120mM、りん酸二水素ナトリウム1mM、塩化カルシウム1mM及びニゲリシンナトリウム塩10μMを含む水溶液を、水酸化ナトリウムを用いてpH9に調整し、これをpH9緩衝溶液とした。
水酸化ナトリウムを用いて前記水溶液をpH10に調整した以外は、pH9緩衝溶液と同様の操作により、pH10緩衝溶液を調製した。
りん酸二水素カリウム2mM、りん酸水素二ナトリウム8mM、塩化ナトリウム130mM、塩化カルシウム2.7mMを含む水溶液を、水酸化ナトリウムを用いてpH7に調整し、これをPBS-pH7緩衝溶液とした。
(1)RNAアプタマー1:発光誘導性アプタマーであるBabySpinachの塩基配列と、三重鎖を協働的に形成可能な三重鎖形成性塩基配列群と、を含むRNAアプタマー
HiScribeTM High Yield RNA Synthesis Kit(New England Biolabs Japan社製)を用いて、下記の塩基配列を有するRNAアプタマー1が1μmoL/Lで含まれる水溶液を合成した。合成したRNAアプタマー1のポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果から、目的の長さを有するRNAアプタマー1が得られていることを確認した(図1B参照)。その後、得られたRNAアプタマー1を含む水溶液を、インキュベーターを用いて90℃10分間でアニーリングし、その後、室温(25℃)まで放冷することで、RNAアプタマー1をフォールディングさせ、これをRNAアプタマー1溶液とした。
上記配列番号6における塩基配列の内訳は以下の通りである。なお、5’末端の塩基配列「GGG」は、合成上の都合により設けられる塩基配列である。
発光誘導性アプタマーの塩基配列:「GGUGAAGGACGGGUCCAGUAGUUCGCUACUGUUGAGUAGAGUGUGAGCUCC(配列番号1)」
8残基以上の連続するウリジンからなる第1の塩基配列:「UUUUUUUUUU」
8残基以上の連続するアデノシンからなる第2の塩基配列:「AAAAAAAAAA」
8残基以上の連続するウリジンからなる第3の塩基配列:「UUUUUUUUUU」
RNAアプタマー1と同様の手法を用いて、下記の塩基配列を有するRNAアプタマー2が1μmoL/Lで含まれるRNAアプタマー2溶液を合成した。合成したRNAアプタマー2のポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果から、目的の長さを有するRNAアプタマー2が得られていることを確認した(図1A参照)。
上記配列番号7における塩基配列の内訳は以下の通りである。なお、5’末端の塩基配列「GGG」は、合成上の都合により設けられる塩基配列である。
発光誘導性アプタマーの塩基配列:「GGUGAAGGACGGGUCCAGUAGUUCGCUACUGUUGAGUAGAGUGUGAGCUCC(配列番号1)」
8残基以上の連続するウリジンからなる第1の塩基配列:なし
8残基以上の連続するアデノシンからなる第2の塩基配列:なし
8残基以上の連続するウリジンからなる第3の塩基配列:なし
(1)溶液系における複合分子の中の発光プローブの発光観測
RNAアプタマー1溶液と、発光プローブである3’5’-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンジリデンイミダゾリノン(DFHBI)とを、RNAアプタマー1の終濃度が終濃度300nmoL/L、発光プローブの終濃度が3μmoL/Lとなるように、0.2mLのpH7緩衝溶液に溶解させ、複合分子を含む溶液を調製した。この複合分子を含む溶液について、pH7環境下における室温(25℃)での発光スペクトルを、発光分光分析装置(Thermo Fisher Scientific社製、製品番号MIB#5250030)を用いて測定した。なお、励起波長は発光プローブであるDFHBIの励起波長488nm±5nmとし、509nm±5nmの発光を観測した。
次に、使用する緩衝溶液を、pH8緩衝溶液~pH10緩衝溶液とする仕様とした以外は、前記pH7環境下における発光観測と同様の操作により、pH8~10環境下における発光をそれぞれ観測した。図2に、各pH環境下において観測された発光の最大発光波長の発光強度をプロットしたグラフを示す。
(2-1)pH7環境下における発光観測
制限酵素NheIの認識配列(GCTAGC)と、下記に示すRNAアプタマー3の塩基配列と、制限酵素XbaIの認識配列(TCTAGA)と、を含み、両末端にATCからなる3残基を有するDNA断片(配列番号8:ATCGCTAGCGGAAAAAAAAAATTTTTTTTTTGGTGAAGGACGGGTCCAGTAGTTCGCTACTGTTGAGTAGAGTGTGAGCTCCTTTTTTTTTTTCTAGAATC)を設計し、合成した。前記DNA断片を、制限酵素NheI(Thermo Fisher Scientific社製)及び制限酵素XbaI(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて切断した。そして、前記切断されたDNA断片を、同様の制限酵素を用いて切断したpcDNATM3.1ベクター(Thermo Fisher Scientific社製)に挿入することで、ヒトサトメガロウイルス由来プロモーターの下流(3’末端側)にRNAアプタマー3の塩基配列を含む発現ベクター(以下、「pcDNA-RNAアプタマー3」と称す)を構築した。
RNAアプタマー3の塩基配列は、RNAアプタマー1における5’末端の塩基配列「GGG」を除いた塩基配列である。
その後、PBS-pH7緩衝溶液を用いて、RNAアプタマー3により形質転換されたHeLa細胞を洗浄した。そして、前記ヒト由来HeLa細胞を含むPBS-pH7緩衝溶液中に、終濃度が1.2μMとなるまでDFHBIを添加し、RNAアプタマー3と発光プローブとを含む複合分子を、細胞内で形成させた。その後、RNAアプタマー3と複合分子を形成していない余分なDFHBIを取り除くため、前記HeLa細胞を、pH7緩衝溶液を用いて洗浄し、室温で30分間静置した。
得られた前記ヒト由来HeLa細胞を、蛍光顕微鏡(Thermo Fisher Scientific社製のEVOS FL)を用いて観察し、前記ヒト由来HeLa細胞に含まれる複合分子における発光プローブの発光を観測した。なお、蛍光顕微鏡による発光観測では、励起波長を発光プローブの励起波長488nmとし、蛍光顕微鏡により発光を観測した。図4Aに光非照射時の蛍光顕微鏡画像を、図4Bに光励起時の蛍光顕微鏡画像を示す。
pH7緩衝溶液を、pH10緩衝溶液とする仕様とした以外は、上記(1)pH7環境下における発光観測と同様の操作により発光を観測した。図4Cに光非照射時の蛍光顕微鏡画像を、図4Dに光励起時の蛍光顕微鏡画像を示す。
(1)溶液系における複合分子の中の発光プローブの発光観測
前記RNAアプタマー1溶液の代わりに、RNAアプタマー2溶液を用いる仕様とした以外は、実施例1に示すpH7環境下~10環境下における発光観測と同様の手法により、発光をそれぞれ観測した。図3に、各pH環境下において観測された発光の最大発光波長の発光強度をプロットしたグラフを示す。
(2-1)pH7環境下における発光観測
制限酵素NheIの認識配列(GCTAGC)と、下記に示すRNAアプタマー4の塩基配列と、制限酵素XbaIの認識配列(TCTAGA)と、を含み、両末端にATCからなる3残基を有するDNA断片(配列番号9:ATCGCTAGCGGGGTGAAGGACGGGTCCAGTAGTTCGCTACTGTTGAGTAGAGTGTGAGCTCCTCTAGAATC)を設計し、合成した。前記DNA断片を、制限酵素NheI(Thermo Fisher Scientific社製)及び制限酵素XbaI(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて切断した。そして、前記切断されたDNA断片を、同様の制限酵素を用いて切断したpcDNATM3.1ベクター(Thermo Fisher Scientific社製)に挿入することで、ヒトサトメガロウイルス由来プロモーターの下流(3’末端側)にRNAアプタマー4の配列を含む発現ベクター(以下、「pcDNA-RNAアプタマー4」と称す)を構築した。
RNAアプタマー4の塩基配列は、RNAアプタマー2における5’末端の塩基配列「GGG」を除いた塩基配列である。
先述のpcDNA-RNAアプタマー3の代わりに、pcDNA-RNAアプタマー4を用いる仕様とした以外は、実施例1に示すpH10環境下における発光観測と同様の手法により、前記ヒト由来HeLa細胞中に発現したRNAアプタマー4と発光プローブとの複合分子における発光を観測した。図5Cに光非照射時の蛍光顕微鏡画像を、図5Dに光励起時の蛍光顕微鏡画像を示す。
これらの結果から、本開示のRNAアプタマーは、RNAアプタマーと相互作用する発光プローブの発光強度によって、測定試料中のpHを判定できることがわかった。
一方、図5B及び図5Dに示すように、比較例1のRNAアプタマーは、細胞内における発光プローブに由来する発光強度が低く、pHの変動にともなう発光強度の変化を検出することがより困難であった。
Claims (9)
- 発光プローブと相互作用して発光能を誘導させる発光誘導性アプタマーの塩基配列と、
三重鎖を協働的に形成可能な三重鎖形成性塩基配列群と、
を含み、
前記三重鎖形成性塩基配列群は、前記発光誘導性アプタマーの塩基配列の片末端側に直接又は5個以内の残基からなる塩基配列を介して結合した8残基以上100残基以下の連続するウリジンからなる第1の塩基配列と、他方末端側に結合した8残基以上100残基以下の連続するアデノシンからなる第2の塩基配列及び8残基以上100残基以下の連続するウリジンからなる第3の塩基配列と、を有し、
前記第2の塩基配列又は前記第3の塩基配列は前記発光誘導性アプタマーの塩基配列の末端に直接又は5個以内の残基からなる塩基配列を介して結合し、
前記第2の塩基配列と前記第3の塩基配列とは直接又は5個以内の残基からなる塩基配列を介して結合し、
前記発光誘導性アプタマーの塩基配列が、BabySpinach(配列番号1)、Spinach(配列番号2)、Mango(配列番号3)、Corn(配列番号4)及びBroccoli(配列番号5)からなる群より選択される1種以上を含み、
前記第1の塩基配列、前記第2の塩基配列及び前記第3の塩基配列が三重鎖を協働的に形成可能な、RNAアプタマー。 - 前記第1の塩基配列が10残基以上60残基以下の連続するウリジンからなり、前記第2の塩基配列が10残基以上60残基以下の連続するアデノシンからなり、前記第3の塩基配列が10残基以上60残基以下の連続するウリジンからなる、請求項1に記載のRNAアプタマー。
- 前記三重鎖形成性塩基配列群が、前記第2の塩基配列と第3の塩基配列との間に、ループ配列を有する、請求項1又は請求項2に記載のRNAアプタマー。
- 前記第1の塩基配列と第3の塩基配列がそれぞれ前記発光誘導性アプタマーの塩基配列の末端に直接又は5個以内の残基からなる塩基配列を介して結合している、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のRNAアプタマー。
- 前記発光誘導性アプタマーの塩基配列が、BabySpinach(配列番号1)を含む、請求項4に記載のRNAアプタマー。
- 請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のRNAアプタマーと、
前記RNAアプタマーと相互作用する発光プローブと、を含む複合分子。 - 請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のRNAアプタマーと前記RNAアプタマーと相互作用する発光プローブと測定試料とを混合して測定混合物を調製する混合工程と、
前記発光プローブにおける励起波長の光を前記測定混合物に照射し前記発光プローブの発光を観測する発光観測工程と、
前記発光観測工程により観測された発光に基づき前記測定試料のpHを判定するpH判定工程と、
を含むpH判定方法。 - 対象RNAの塩基配列の少なくとも一方の末端に、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のRNAアプタマーの塩基配列が付加された標識化RNA。
- 対象RNAの塩基配列の少なくとも一方の末端に、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のRNAアプタマーの塩基配列が付加された標識化RNAを製造する標識化RNAの製造方法。
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