JP7233313B2 - 計測支援装置および計測支援方法 - Google Patents

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Description

本発明は、計測支援装置および計測支援方法に関する。
発電プラントや化学プラント等の大規模構造物のメンテナンスや解体などの工事において、余計なコストをかけずに無駄なく工事を実施するためには、事前の対象構造物の状況把握が重要である。そのために3次元計測を活用して現場状況と設計図を比較する方法が用いられることがある。
しかし、3次元計測により取得された点群データはサイズが大きく、設計図との比較に時間がかかり、現場で計測結果を確認できないため、設計図と差のある箇所を重点的に計測するといった効率的な計測作業が困難であった。そのため、3次元計測データと設計図との比較処理を高速化する技術の開発が望まれていた。
特許文献1には、3次元計測データから貫通孔などの3次元モデルを効率的に生成する技術についての記載がある。
特開2018-10455号公報
特許文献1などに記載された技術では、複数個所からの3次元計測データを統合(レジストレーション)する作業が必要である。このレジストレーションには時間がかかる上、扱うデータ量も大きくなるため、計測現場での使用は難しく、計測現場で直ぐに計測結果を得ることができないという問題がある。
本発明は、計測データ量と解析計算量を削減することで、3次元計測データと設計図との比較処理を高速化することができる計測支援装置および計測支援方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、特定の空間についての3次元計測データを取得する計測データ取得部と、計測データ取得部が取得した3次元計測データから判断される空間、または特定の空間についての設計モデルから得られる空間を、複数の領域に分割する領域分割部と、領域分割部が分割した領域内に存在する3次元計測データの属性情報を用いて、当該領域内に存在する構造物の部材を推定する領域部材属性判定部と、領域部材属性判定部が推定した3次元計測データの領域部材属性と設計モデルの領域部材属性とを比較して、3次元計測データと設計モデルの位置合わせをする領域重畳部と、領域重畳部での位置合わせ結果を出力する出力部と、を備える計測支援装置としたものである。
本発明によれば、3次元計測データと設計データとの比較作業を、比較的少ないデータ量による高速な演算で行うことができ、例えば3次元計測作業を行いながら、その場で設計データと比較することが可能になる。したがって、工事現場の状況を確認する作業の効率化を図ることができ、工事コストの低減や工期遅延リスクの低減に寄与することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明の一実施の形態例に係るプラント計測支援装置の全体例を示す構成図である。 本発明の一実施の形態例に係るプラント計測支援装置のハードウェア構成例を示す構成図である。 本発明の一実施の形態例による処理の流れを示すフローチャートである。 本発明の一実施の形態例の計測対象空間の例を示す図である。 本発明の一実施の形態例の計測対象空間の例(点群を取得した状態)を示す図である。 本発明の一実施の形態例により取得した点群の例を示す図である。 本発明の一実施の形態例による計測空間の分割例を示す図である。 本発明の一実施の形態例による形状統計データの頻度例(躯体)を示す特性図である。 本発明の一実施の形態例による形状統計データの頻度例(配管)を示す特性図である。 本発明の一実施の形態例による色統計データの頻度例(躯体)を示す特性図である。 本発明の一実施の形態例による色統計データの頻度例(配管)を示す特性図である。 本発明の一実施の形態例による計測データ分割領域の部材属性判定例を示す図である。 本発明の一実施の形態例による計測データ分割領域ごとの部材属性データ例を示す図である。 本発明の一実施の形態例による設計モデル空間の例を示す図である。 本発明の一実施の形態例による設計モデル領域分割の例を示す図である。 本発明の一実施の形態例による設計モデル分割領域の部材属性判定結果の例を示す図である。 本発明の一実施の形態例による設計モデル分割領域の部材属性判定データの例を示す図である。 本発明の一実施の形態例による設計モデルと計測データの分割領域マッチング例を示す図である。 本発明の一実施の形態例による階層構造を持たせた領域属性の例を示す図である。 本発明の一実施の形態例による上位階層でのマッチング例を示す図である。 本発明の一実施の形態例による下位階層でのマッチング例を示す図である。 本発明の一実施の形態例による設計モデルと計測データの分割領域マッチングの計算例を説明する図である。 本発明の一実施の形態例による表示画面の例を示す図である。 本発明の一実施の形態例によるマッチング結果の詳細表示画面の例を示す図である。 本発明の一実施の形態例による位置合わせ結果の保存例を示す図である。
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する)を、添付図面を参照して説明する。
[全体構成]
図1は、本例に係るプラント計測支援装置100の全体構成例を示す機能ブロック図である。図1に示すように、プラント計測支援装置100は、3次元計測装置110、記憶装置120、計算装置130、および出力装置140から成る。
3次元計測装置110は、レーザスキャナ、デプスカメラ、ステレオカメラ等の装置の周囲の空間の距離を計測するものである。
記憶装置120は、メモリ、ハードディスクドライブ等の主記憶装置または補助記憶装置である。記憶装置120は、形状統計データ記憶部121、色統計データ記憶部122、および設計モデル領域部材属性情報記憶部123を備える。
計算装置130は、プログラムによりデータ処理を実行するコンピュータ装置などで構成される。計算装置130は、機能から見た処理部として、計測データ取得部131、領域分割部132、領域部材属性判定部133、領域重畳部134、および表示処理部135を有する。計算装置130の各処理部131~135が行う処理の詳細は後述する。
計算装置130の表示処理部135で作成された画像データは、表示を行うモニタなどで構成された出力装置140に供給され、表示される。
なお、出力装置140が表示機能を備えるのは一例であり、その他の出力処理を行うプリンタなどの装置としてもよい。あるいは、出力装置140として、外部のネットワークや他の機器にデータを出力する出力部を備えた装置としてもよい。
また、図1に示す構成では、記憶装置120と計算装置130と出力装置140は、それぞれ別の装置として構成した例を示すが、記憶装置120、計算装置130、出力装置140を一つの装置として構成してもよい。
[ハードウェア構成例]
図2は、図1に示す計算装置130などをコンピュータ装置で構成した場合のハードウェア構成例を示す。
図2に示すコンピュータ装置10は、バスにそれぞれ接続されたCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)11、ROM(Read Only Memory)12、およびRAM(Random Access Memory)13を備える。さらに、コンピュータ装置10は、不揮発性ストレージ14、ネットワークインタフェース15、入力装置16、および表示装置17を備える。
CPU11は、計算装置130が備える各処理部131~135を実現するソフトウェアのプログラムコードをROM12から読み出して実行する演算処理部である。
RAM13には、演算処理の途中に発生した変数やパラメータ等が一時的に書き込まれる。
入力装置16には、例えば、キーボード、マウスなどが用いられる。
表示装置17は、例えば、液晶ディスプレイモニタであり、この表示装置17によりコンピュータで実行される計算処理の結果が表示される。
不揮発性ストレージ14には、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などの大容量情報記憶媒体が用いられる。不揮発性ストレージ14には、計算装置130の処理機能を実行するプログラムが記録される。また、コンピュータ装置10が記憶装置120を兼ねる場合には、記憶装置120の形状統計情報データ部121、色統計データ記憶部122、および設計モデル領域部材属性データ記憶部123が、不揮発性ストレージ14上に構成される。
ネットワークインタフェース15には、例えば、NIC(Network Interface Card)などが用いられる。ネットワークインタフェース15は、LAN(Local Area Network)、専用線などを介して外部と各種情報の送受信を行う。
なお、計算装置130などを図2に示すコンピュータ装置で構成するのは一例であり、コンピュータ以外のその他の演算処理装置で構成してもよい。例えば、計算装置130が行う機能の一部又は全部を、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェアによって実現してもよい。
[計算装置が実行する処理機能の流れ]
図3は、計算装置130が実行する計算処理の流れを示すフローチャートである。
まず、計測データ取得部131は、3次元計測装置110から、位置合わせの対象となる個所の計測データを読み込む(計測データ取得処理:ステップS1)。このとき、ユーザは、操作画面上での操作により対象データを選択する。なお、操作画面の具体例(図23)については後述する。
次に、ユーザは、対象とする計測データの計測場所を入力する(ステップS2)。ここでは、ユーザは、操作画面上で、建屋名、フロア名、エリア名の少なくとも一つを選択する。この計測データの計測場所の入力があると、計算装置130は、該当する個所の設計モデルを記憶装置120から読み出す。
そして、計算装置130は、領域分割部132、領域部材属性判定部133、および領域重畳部134での処理で、設計モデルと計測データの位置合わせを行う(ステップS3)。これは、例えばユーザによる操作画面上での実行ボタンの押下で開始される。
この位置合わせ処理が完了すると、位置合わせ処理の結果を示す画面の画像データが、表示処理部135で作成され、位置合わせ処理結果を示す画面が出力装置140に表示される(ステップS4)。この際、位置合わせ処理結果として、複数の位置合わせ候補が存在する場合には、複数の位置合わせ候補を、位置の類似度の大きい順に表示するようにしてもよい。
さらに、位置合わせ処理結果の表示により、位置合わせ結果を確認したユーザは、操作画面上での保存ボタンの押下を行い、位置合わせ処理の結果の保存を指示する。そして、記憶装置120に位置合わせ処理のデータを保存する(ステップS5)。位置合わせ候補が複数存在する場合には、ユーザの操作で選択された結果が記憶装置120に保存される。
次に、計算装置130の各処理部131~135で行われる処理の詳細について説明する。
[計測データ取得部での処理]
計測データ取得部101は、3次元計測装置110からデータを取得する。
ここでは、図4に計測対象の空間例(上面図)を示す。計測対象の空間には、躯体1と配管2と機器(ポンプ)3とが配置されている。また、図4の空間内の地点Sは、3次元計測装置110で計測を行う計測地点を示す。図4では、X軸(図中の水平方向)とY軸(図中の垂直方向)のみ示しているが、ここでの空間は3次元空間なので、X軸およびY軸と直交するZ軸方向も定義される。
3次元計測装置110から取得されたデータは、色付き点群データであり、例えば、計測データを区別するための計測IDや計測時刻、各点の空間座標値、RGBで表現された色で構成される。計測IDは1回の計測毎にユニークとなるIDとする。点群データのそれぞれの点には物体表面の色が着色されている。これは、レーザスキャナである3次元計測装置110に搭載されたカメラの撮影データと点群データをマッピングして作成されるものである。
図5は、3次元計測装置110としてレーザスキャナを使用した場合の点群データの一部を示す。図5に示す○印が点群データxである。この点群データxは、躯体1、配管2、機器3などの何らかの物体が存在する箇所を3次元計測したものである。
この点群データxは、物体の色の状態に応じて、色付きで分けられた点群データとされる。
なお、点群データは、図6に示すように、躯体1の箇所の状態(色)に対応した点群データx1と、配管2の箇所の状態(色)に対応した点群データx2と、機器3の箇所の状態(色)に対応した点群データx3とに分けて示される。
[領域分割部での処理]
領域分割部132は、計測データ取得部101で取得された3次元計測データが表現する空間全体を、複数の領域に分割する(領域分割処理)。
図7は、3次元計測データが表現する空間全体を複数の領域aに分割した例を示す。ここでは、直方体の形状の空間を点群空間内に敷き詰める。点群空間を「点群の中からX軸・Y軸・Z軸の各軸の最大および最小となる点を頂点に持つ直方体」と定義すると、点群空間の大きさを最小限とすることができ、計算の負荷を低減することができる。分割領域の大きさはユーザが指定するなどして決定される。また、八分木のようにサイズの異なる直方体領域を階層的に生成するようにしてもよい。
さらに、図7では直方体を敷き詰めた領域としたが、球体や円柱などのその他の形状のものを敷き詰めて、複数の領域に分割してもよい。
[領域部材属性判定部での処理]
領域部材属性判定部133は、領域分割部132で領域分割された各領域内に存在する部材を推定する(領域部材判定処理)。
領域部材属性判定部133は、部材を推定するために、点群データから得た形状統計データを使用する。この形状統計データは、あらかじめ一部の3次元計測データ(点群データ)を部材毎に分類し、部材毎の形状や色の特徴を統計データとして格納したものである。形状統計データは、記憶装置120の形状統計データ記憶部121に格納される。点群データから部材毎の形状や色の特徴を統計データとする処理は、計算装置130での計算で行ってもよいが、あらかじめユーザが目視などによって部材毎に分類してもよい。
形状統計データを得る際には、分類された点群の各点の曲率の大きさや、面法線ベクトルのXY平面からの向きの分布を集計する。この集計結果は正規分布のようなモデルで表現する方法や、ヒストグラムのように等級を定めて集計する方法がある。
図8および図9は、形状統計データの例を示す。
図8は、躯体1の箇所の各点の形状統計データである。図8(A)は、点群データから得た躯体1の表面の曲率と頻度の関係を示す。横軸は曲率、縦軸は頻度である。図8(B)は、点群データから得た躯体1の表面の向きと頻度の関係を示す。横軸は配管表面の向き、縦軸は頻度である。
図8(A)、(B)に示すように、躯体1の場合、曲率と向きのいずれについても、特定の箇所に集中していることが分かる。
図9は、配管2の箇所の各点の形状統計データである。図9(A)は、点群データから得た配管2の表面の曲率と頻度の関係を示す。横軸は曲率、縦軸は頻度である。図9(B)は、点群データから得た配管2の表面の向きと頻度の関係を示す。横軸は配管表面の向き、縦軸は頻度である。
図9(A)、(B)に示すように、配管2の場合、曲率は特定箇所に集中せず、向きについても、複数箇所で頻度が高くなる特有の特性を持つことが分かる。
領域部材属性判定部133は、図8に示す躯体1の形状統計データと、図9に配管2の形状統計データとから、各点が配置された領域に存在する物体(部材)が、躯体1か配管2かを判定する。ここでは、躯体1と配管2の例を示すが、機器3についても、これらとは異なる形状統計データが得られ、領域部材属性判定部133は、機器3についても判定することができる。
領域部材属性判定部133は、色統計データを使って、各領域に存在する部材を判定することもできる。
すなわち、分類された点群各点の色がRGBモデルであれば、Red(赤)、Green(緑)、Blue(青)の成分に分けて集計したり、HSVモデルに変換してHue(色相)、Saturation(彩度)、Value(明度)に分けて集計したりすることができる。
図10および図11は、色統計データの例を示す。
図10は、躯体1の箇所の各点の色統計データである。図10(A)は、Hue(色相)に対する頻度を示し、図10(B)は、Saturation(彩度)に対する頻度を示す。図10(C)は、Value(明度)に対する頻度を示している。
図11は、配管2の箇所の各点の色統計データである。図10(A)は、Hue(色相)に対する頻度を示し、図11(B)は、Saturation(彩度)に対する頻度を示す。図10(C)は、Value(明度)に対する頻度を示している。
図10と図11を比較すると分かるように、躯体1の箇所と配管2の箇所では、色統計データに明確な相違がある。したがって、領域部材属性判定部133は、色統計データを使って、各点の領域が躯体1か配管2かを判定することができる。
領域部材属性判定部133は、形状統計データと色統計データの双方を使って判定することで、より高い精度で各領域に存在する部材を推定できるようになる。
すなわち、領域部材属性判定部133は、分割された領域毎に、その内部に存在する計測点群の形状分布と色分布を集計し、形状統計や色統計と比較して、一致度の最も高い部材を、当該領域内に存在する部材として推定する。
一致度は、Hue(色相)などの各分布における最頻値を比較して、それらの差の重み付け和で計算することができる。一致度の最も高い部材とその他の部材の一致度の差が事前に定める閾値より小さい場合は、領域部材属性判定部133は、当該する部材も領域内に存在するものと推定する。
図12は、領域部材属性判定部133で各領域の部材を判定した結果のイメージを、空間上に示した図である。ここでは、躯体1が存在すると推定された領域をC、配管2が存在すると推定された領域をP、機器3が存在すると推定された領域をEという部材属性で表現している。
図13は、実際のデータ構成の一例を示す。
図13に示すように、計測地点毎のデータを区別するための計測ID、計測時刻、各領域のID、領域の位置を示す領域座標、領域の大きさを示す領域サイズ、部材属性が判定結果として保持される。
領域座標と領域サイズは、それぞれの領域を再現できる形式とする。例えば領域形状が直方体の場合であれば、直方体の8個の頂点の中からX軸・Y軸・Z軸の各軸座標値が最小となる頂点の座標値を領域座標とし、X軸・Y軸・Z軸の辺の長さを領域サイズとすればよい。
また、領域形状が球の場合、球の中心座標値を領域座標とし、球の半径を領域サイズとすればよい。
部材属性は、少なくとも1つの部材名を保持し、一致度の計算時に複数の部材が存在すると推定された場合には複数の部材名を保持する。すなわち、図13に示すように、判定結果の記憶領域には、部材属性1、部材属性2、・・・と複数の部材名を保持するエリアを用意し、推定された複数の部材名を記憶する。以上の処理が領域部材属性判定処理である。
[設計モデル領域部材属性]
領域部材属性判定部133が各領域の部材を推定した後に、領域重畳部134が、設計モデルの領域部材属性と推定した部材とを重畳して比較する。ここで、設計モデル領域部材属性について説明する。
図14は、設計モデル領域部材属性の例を示す。
設計モデル領域部材属性は、図14に示すように、3次元CADなどで作成された構造物の設計モデル空間を用意する。この設計モデル空間には、設計モデルで示された躯体1、配管2、および機器3が配置されている。
この設計モデル空間は、領域分割部132での点群データの領域分割と同様に、領域分割する。
図15は、設計モデル空間を領域a11,a12,a13,・・・に分割した例を示す。領域分割する際の各領域の形状やサイズは、領域分割部132での点群データの領域分割と同じに設定する。
さらに、領域分割した各領域の内部に存在する部材を部材属性として表したデータを得る。すなわち、図16に示すように、各領域の内部に存在する部材(躯体C、配管P、機器E)を示すデータを得る。
実際には、各領域に存在する部材の部材属性データとして、図17に示すように、各領域が属する場所を表す建物名称、フロア名称、エリア名称、および、図13に示した点群データの領域部材属性と同様の領域ID、領域座標、領域サイズ、部材属性から成る。
領域内に存在する部材の判定については、一般的な設計モデルはオブジェクト形状と部材名の対応関係を有するため、それを用いて、領域とオブジェクト(部材)との3次元空間上での干渉チェックにより判定できる。干渉チェックは、一般的な3次元CADが有する機能を使用すれば実現可能である。1つの領域内に複数の部材が存在する場合は、干渉計算の結果得られる干渉部位の体積が大きい順に、少なくとも1つの部材名を領域部材属性として保持しておく。
[領域重畳部での処理]
領域重畳部134は、このようにして得た設計モデル領域部材属性と、領域部材属性判定部133により計算されたデータとを比較(マッチング)して、設計モデルと計測データとの位置合わせを行う(領域重畳処理)。
図18は、領域重畳部134での比較(マッチング)状態を示す。領域重畳部134は、図18に示すように、計測データ空間を設計モデル空間に照合し、類似度を計算する。ここでの照合とは、分割された領域から成る計測データ空間を、分割された領域から成る設計モデル空間内の特定箇所に位置合わせを行い、重なった領域同士を比較することである。
位置合わせは、設計モデル空間のいずれかの端点から出発し、1領域分ずつ順次スライドさせていくことで、設計モデル空間全体にわたって行うことができる。また、図4に示す計測空間と、図14に示す設計モデル空間のように、計測データ空間の向きが設計モデル空間の向きと一致しているとは限らないため、座標系をZ軸回りに90°ずつ4回、旋回させて、順次、位置合わせ処理を行う。このため、90°、180°、270°360°の合計で4パターンでの位置合わせが行われることになる。
なお、位置合わせ処理の計算負荷を低減するため、設計モデル空間内にランダムに抽出した複数の位置に対して位置合わせの計算を行い、類似度の大きい位置の周辺を探索する方法を用いてもよい。
また、位置合わせ処理時には、図19に示すように、八分木のような上位階層と下位階層を持った階層的な領域分割および領域属性を保持することで、計算負荷を低減することも可能である。具体的には、まず図20に示すように、上位階層で総当たりの位置合わせを行い、類似度が高い位置(マッチング候補位置)を計算する。次に、図21に示すように、マッチング候補位置における下位階層での位置合わせを行って、正確な類似度を計算する。上位階層でのマッチング候補位置が複数ある場合は、それぞれ同様に類似度を計算し、それらの中から最も類似度が大きい位置を最終的な位置合わせ結果とする。
図22は、類似度の計算例を示す。
すなわち、図22に示すように、設計モデル空間(CAD空間)の躯体1(C)の領域に、「1」を当てはめ、それ以外の領域に「0」を当てはめる。また、計測空間についても、同様に躯体1(C)の領域に、「1」を当てはめ、それ以外の領域に「0」を当てはめる。図22では、「0」の領域は空欄で示している。
そして、設計モデル空間と計測空間の積をとって各領域の評価値を計算し、その和をとることで、位置合わせの計算を行うことができる。
配管2や機器3の領域にも同様に1や0といった数値を与える。これらの数値は部材毎にあらかじめ定めた異なる値にすることで、マッチングにおける部材毎の重みを与えることもできる。例えば、躯体領域を「3」、機器領域を「2」、配管領域を「1」とすることで、躯体領域の位置の一致を、機器や配管と比較して優先させることができる。
[位置合わせ結果の表示画面]
図23および図24は、領域重畳部134での位置合わせ結果に基づいて、表示処理部135が作成した表示画面200、300の例を示す。この表示画面200、300は、出力装置140に表示される。
図23に示すように、表示画面200は、計測データの選択箇所201と、計測場所の選択箇所202と、実行ボタン203と、位置合わせ結果表示箇所210とを備える。
計測データの選択箇所201と、計測場所の選択箇所202については、それぞれプルダウン形式などで複数の候補が表示され、ユーザ操作でいずれかの候補を選択した後、実行ボタン203の押下で、設計モデルと計測データの位置合わせ処理が開始される。
位置合わせ結果表示箇所210には、位置合わせ結果で一致した可能性が高い複数の候補が表示される。図23の例では、候補1の表示箇所211と、候補2の表示箇所212とが用意される。2つの表示箇所211、212には、類似度の大きい順に2つの候補が順に表示される。
また、位置合わせ結果表示箇所210は、詳細表示ボタン213と、保存ボタン214とを備える。詳細表示ボタン213がユーザにより押下されると、選択された候補についての詳細の表示画面に移る。保存ボタン214がユーザにより押下されると、選択された候補の位置合わせ結果が保存される。
図24は、位置合わせ結果を詳細に示す表示画面300の例を示す。
表示画面300は、計測データの表示領域301と、設計モデルの表示領域302とを並べて示している。それぞれの表示領域301、302では、領域部材属性判定部133よって計算された領域毎の部材属性が、計測データおよび設計モデルのそれぞれについて図形表示される。このように計測データと設計モデルを図形表示することで、分析の妥当性をユーザを判断することができる。具体的には、どの領域が相違するかが明確になり、修繕などで追加された部材や、撤去された部材などを確認できるようになる。
この計測データの表示領域301と、設計モデルの表示領域302とを並べて表示する際には、両者で相違する箇所が明確になるように表示してもよい。すなわち、一致する領域と相違する領域とを、異なる表示形態(表示色の変更など)とすることで、ユーザに相違箇所を明確に告知できるようになる。
例えば、設計モデルにないが、計測データに配管が存在するとき、その配管が存在する箇所を、他の箇所とは異なる表示形態(異なる表示色など)とし、ユーザに相違を警告するようにしてもよい。
また、計測できでない領域が計測データの中に存在する場合にも、その計測できていない領域を、他の領域とは異なる表示形態(例えば低い輝度での表示)とし、ユーザに計測できていないことが分かるようにしてもよい。
さらに、本例のプラント計測支援装置100では、位置合わせの結果、それぞれの領域の対応関係を座標の一致により計算することができる。このため、計測データの一部の領域をマウスクリックなどで入力すると、設計モデルの領域の中で当該指定領域に対応する領域をハイライトすることもでき、両者の対応位置を明示することができる。逆に、設計モデルの一部領域をクリックして計測データの対応領域をハイライトすることもできる。
なお、表示画面300に、計測データの表示領域301と、設計モデルの表示領域302とを表示する際に、各分割領域で判定した部材毎に、表示色などの表示形態を変えて、色分けなどでどの部材があるのかが、ユーザに容易に判定できるようにしてもよい。図24の例では、分割領域ごとに、判定部材を示す記号の文字(C、E、P)を付加するようにしたので、より確実に各領域に存在する部材の属性が分かるようになる。図24では判定部材属性を示す記号の文字を表示するようにしたが、「躯体」、「配管」、「ポンプ」などの文字を直接画面上に配置してもよい。あるいは、判定部材属性を示す記号の代わりに、判定部材属性を示す何らかの図形を、それぞれの領域に配置してもよい。
図25は、図23の保存ボタン214が押下されたときに保存される位置合わせ結果の例を示す。
表示画面300などで候補を確認した後、ユーザが表示画面200の保存ボタン214を押すことで、いずれかの候補が最終結果として保存される。
ここでは、例えば図25(A)に示すように、計測データから設計モデルへの変換行列を行ったデータ401を保存する。データ401は、計測データを特定するためのユニークな計測IDに対して、位置合わせの結果として対応する設計モデルの建物名、フロア名、エリア名、および、変換行列を格納したものである。また、図25(B)に示すように、計測データの領域と設計モデルの領域との対応関係のデータ402が保存される。
なお、計測データと設計モデルが重なり合ったCADデータを出力して保存してもよい。
以上説明したように、本例のプラント計測支援装置100によると、大規模構造物の3D計測データと設計モデルとの比較作業を、少ない計算処理で簡単かつ迅速に行うことができる。したがって、例えば現場で3次元計測装置110により3D計測を行いながら、出力装置140で比較結果を直ちに確認でき、プラント計測作業の省力化に繋がり、日々の作業効率が向上する。
[変形例]
なお、本発明は、上述した実施の形態例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、上述した実施の形態例では躯体と配管と機器を区別する例を示したが、機器の種類などの詳細を区別するようにしてもよい。
また、図25のように解析結果として、計測データの表示領域301と、設計モデルの表示領域302とを並べて表示するのも一例であり、両者を重ねて1つの画面で表示して、相違箇所が色分けなどで分かるようにしてもよい。
また、図1などの構成図では、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものだけを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
また、実施の形態例で説明した構成は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラムなどの情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、光ディスク等の記録媒体に置くことができる。
1…躯体、2…配管、3…機器、11…CPU(中央制御ユニット)、12…ROM、13…RAM、14…不揮発性ストレージ、15…ネットワークインタフェース、16…入力装置、17…表示装置、100…プラント計測支援装置、110…3次元計測装置、120…記憶装置、121…形状統計データ記憶部、122…色統計データ記憶部、123…設計モデル領域部材属性記憶部、130…計算装置、131…計測データ取得部、132…領域分割部、133…領域部材属性判定部、134…領域重畳部、135…表示処理部、140…出力装置、200,300…表示画面

Claims (11)

  1. 特定の空間についての3次元計測データを取得する計測データ取得部と、
    前記計測データ取得部が取得した3次元計測データから判断される空間、または前記特定の空間についての設計モデルから得られる空間を、複数の領域に分割する領域分割部と、
    前記領域分割部が分割した領域内に存在する前記3次元計測データの属性情報を用いて、当該領域内に存在する構造物の部材を推定する領域部材属性判定部と、
    前記領域部材属性判定部が推定した3次元計測データの領域部材属性と、前記設計モデルの領域部材属性とを比較して、3次元計測データと設計モデルの位置合わせをする領域重畳部と、
    前記領域重畳部での位置合わせ結果を出力する出力部と、を備える
    計測支援装置。
  2. 前記3次元計測データの属性情報は、計測した箇所の曲率と面法線ベクトルの向きの少なくともいずれか一方の統計的分布を示す形状統計情報である
    請求項1に記載の計測支援装置。
  3. 前記3次元計測データの属性情報は、計測した箇所の色の統計的分布を示す色統計情報である
    請求項1に記載の計測支援装置。
  4. 前記設計モデルの属性情報は、設計モデルに付与される部材名称と、分割された領域との干渉部分の体積とを用いる
    請求項1に記載の計測支援装置。
  5. 前記出力部は、前記領域重畳部での位置合わせ結果を示す画像データを出力するものであり、
    前記画像データは、前記領域部材属性判定部によって判定された属性によって、それぞれの領域の表示形態を異なるものとする
    請求項1に記載の計測支援装置。
  6. 判定された属性ごとに表示色を変えることで、前記画像データによってそれぞれの領域の表示形態を異なるようにした
    請求項5に記載の計測支援装置。
  7. 判定された属性ごとに重畳表示する文字または図形を変えることで、前記画像データによってそれぞれの領域の表示形態を異なるようにした
    請求項5に記載の計測支援装置。
  8. 前記画像データでは、計測データと設計モデルの位置合わせの結果で、一致する領域と相違する領域との表示形態を異なるようにした
    請求項5に記載の計測支援装置。
  9. 前記領域分割部が分割する領域は、直方体、円柱、球体のいずれかである
    請求項1に記載の計測支援装置。
  10. 直方体、円柱、または球体よりなる領域を、空間内に稠密に敷き詰める
    請求項9に記載の計測支援装置。
  11. 特定の空間についての3次元計測データを取得する計測データ取得処理と、
    前記計測データ取得処理により取得した3次元計測データから判断される空間、または前記特定の空間についての設計モデルから得られる空間を、複数の領域に分割する領域分割処理と、
    前記領域分割処理により分割した領域内に存在する前記3次元計測データの属性情報を用いて、当該領域内に存在する構造物の部材を推定する領域部材属性判定処理と、
    前記領域部材属性判定処理により推定した3次元計測データの領域部材属性と、前記設計モデルの領域部材属性とを比較して、3次元計測データと設計モデルの位置合わせをする領域重畳処理と、
    前記領域重畳処理による位置合わせ結果を出力する出力処理と、を含む
    計測支援方法。
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