JP7231230B2 - 変異型aim - Google Patents
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Description
[1]以下の(1)から(5)のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、野生型ヒトAIMの活性を有する、変異型ヒトAIM
(1)配列番号:1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号168のシステインが別のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列、
(2)配列番号:1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号277のシステインが別のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列、
(3)配列番号:1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号168のシステインが別のアミノ酸に置換され、かつ配列番号:1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号277のシステインが別のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列、
(4)(1)から(3)のいずれか1つのアミノ酸配列と実質的に同一であって、かつ(1)から(3)のいずれか1つのアミノ酸配列に存在するシステインおよび該置換された別のアミノ酸は残されている、アミノ酸配列、
(5)(1)から(3)のいずれか1つのアミノ酸配列に存在するシステインおよび該置換された別のアミノ酸以外の箇所において、さらに1から数個のアミノ酸の欠失、付加、挿入または置換あるいはその組み合わせを含むアミノ酸配列;
[2]該別のアミノ酸が、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニンからなる群から選択されるアミノ酸である、[1]に記載の変異型ヒトAIM;
[3]該別のアミノ酸がセリンである、[1]に記載の変異型ヒトAIM;
[4]以下の(1)から(3)のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、野生型マウスAIMの活性を有する、変異型マウスAIM
(1)配列番号:2で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号168のシステインが別のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列、
(2)(1)のアミノ酸配列と実質的に同一であって、かつ(1)のアミノ酸配列に存在するシステインおよび該置換されたアミノ酸は残されている、アミノ酸配列、
(3)(1)のアミノ酸配列に存在するシステインおよび該置換された別のアミノ酸以外の箇所において、さらに1から数個のアミノ酸の欠失、付加、挿入または置換あるいはその組み合わせを含むアミノ酸配列;
[5]該別のアミノ酸が、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニンからなる群から選択されるアミノ酸である、[4]に記載の変異型マウスAIM;
[6]該別のアミノ酸がセリンである、[4]に記載の変異型マウスAIM;
[7]以下の(1)または(2)の塩基配列を含む、核酸
(1)[1]から[3]のいずれか1つに記載の変異型ヒトAIMをコードする塩基配列、
(2)[4]から[6]のいずれか1つに記載の変異型マウスAIMをコードする塩基配列;
[8][7]に記載の核酸を含む、発現ベクター;
[9][8]に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞;
[10][9]に記載の宿主細胞を培養することを含む、変異型ヒトAIMまたは変異型マウスAIMの製造方法;
[11]以下の(1)または(2)の変異型AIMを含む、医薬組成物
(1)[1]から[3]のいずれか1つに記載の変異型ヒトAIM、
(2)[4]から[6]のいずれか1つに記載の変異型マウスAIM;
などを提供する。
(1a)配列番号:1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号168のシステインが別のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列。
(2a)配列番号:1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号277のシステインが別のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列。
(3a)配列番号:1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号168のシステインが別のアミノ酸に置換され、かつ配列番号:1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号277のシステインが別のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列。
(4a)(1a)から(3a)のいずれか1つのアミノ酸配列と実質的に同一であって、かつ(1a)から(3a)のいずれか1つのアミノ酸配列に存在するシステインおよび該置換された別のアミノ酸は残されている、アミノ酸配列。
(5a)(1a)から(3a)のいずれか1つのアミノ酸配列に存在するシステインおよび該置換された別のアミノ酸以外の箇所において、さらに1から数個のアミノ酸を欠失、付加、挿入または置換あるいはその組み合わせを含むアミノ酸配列。
また、本発明の変異型ヒトAIMは、好ましくは、以下の(1b)から(5b)のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
(1b)配列番号:1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号168のシステインがセリンに置換されたアミノ酸配列(配列番号:3)。
(2b)配列番号:1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号277のシステインがセリンに置換されたアミノ酸配列(配列番号:4)。
(3b)配列番号:1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号168のシステインがセリンに置換され、かつ配列番号:1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号277のシステインがセリンに置換されたアミノ酸配列(配列番号:5)。
(4b)(1b)から(3b)のいずれか1つのアミノ酸配列と実質的に同一であって、かつ(1b)から(3b)のいずれか1つのアミノ酸配列に存在するシステインおよび該置換されたセリンは残されている、アミノ酸配列。
(5b)(1b)から(3b)のいずれか1つのアミノ酸配列に存在するシステインおよび該置換されたセリン以外の箇所において、さらに1から数個のアミノ酸を欠失、付加、挿入または置換あるいはその組み合わせを含むアミノ酸配列。
(1a)配列番号:1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号168のシステインが別のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列。
(2a)配列番号:1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号277のシステインが別のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列。
(3a)配列番号:1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号168のシステインが別のアミノ酸に置換され、かつ配列番号:1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号277のシステインが別のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列。
(1b)配列番号:1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号168のシステインがセリンに置換されたアミノ酸配列(配列番号:3)。
(2b)配列番号:1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号277のシステインがセリンに置換されたアミノ酸配列(配列番号:4)。
(3b)配列番号:1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号168のシステインがセリンに置換され、かつ配列番号:1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号277のシステインがセリンに置換されたアミノ酸配列(配列番号:5)。
特に、(1b)配列番号:1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号168のシステインがセリンに置換されたアミノ酸配列(配列番号:3)を含む変異型ヒトAIMのマクロファージへのエンドサイトーシス活性は、後述する実施例の通り、野生型ヒトAIMの該活性より高く、AIMとしての機能がより優れていることが示唆される。
(4a)(1a)から(3a)のいずれか1つのアミノ酸配列と実質的に同一であって、かつ(1a)から(3a)のいずれか1つのアミノ酸配列に存在するシステインおよび該置換された別のアミノ酸は残されている、アミノ酸配列。
(5a)(1a)から(3a)のいずれか1つのアミノ酸配列に存在するシステインおよび該置換された別のアミノ酸以外の箇所において、さらに1から数個のアミノ酸の欠失、付加、挿入または置換あるいはその組み合わせを含むアミノ酸配列。
本発明の変異型ヒトAIMはまた、上記(1b)から(3b)のいずれかのアミノ酸配列に代わり、下記の(4b)または(5b)のアミノ酸配列を含んでよい。
(4b)(1b)から(3b)のいずれか1つのアミノ酸配列と実質的に同一であって、かつ(1b)から(3b)のいずれか1つのアミノ酸配列に存在するシステインおよび該置換されたセリンは残されている、アミノ酸配列。
(5b)(1b)から(3b)のいずれか1つのアミノ酸配列に存在するシステインおよび該置換されたセリン以外の箇所において、さらに1から数個のアミノ酸の欠失、付加、挿入または置換あるいはその組み合わせを含むアミノ酸配列。
(1c)配列番号:2で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号168のシステインが別のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列。
(2c)(1c)のアミノ酸配列と実質的に同一であって、かつ(1c)のアミノ酸配列に存在するシステインおよび該置換されたアミノ酸は残されている、アミノ酸配列。
(3c)(1c)のアミノ酸配列に存在するシステインおよび該置換されたアミノ酸以外の箇所において、さらに1から数個のアミノ酸を欠失、付加、挿入または置換あるいはその組み合わせを含むアミノ酸配列。
また、本発明の変異型マウスAIMは、好ましくは、以下の(1d)から(3d)のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
(1d)配列番号:2で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号168のシステインがセリンに置換されたアミノ酸配列(配列番号:6)、
(2d)(1d)のアミノ酸配列と実質的に同一であって、かつ(1d)のアミノ酸配列に存在するシステインおよび該置換されたセリンは残されている、アミノ酸配列。
(3d)(1d)のアミノ酸配列に存在するシステインおよび該置換されたセリン以外の箇所において、さらに1から数個のアミノ酸を欠失、付加、挿入または置換あるいはその組み合わせを含むアミノ酸配列。
(2c)(1c)のアミノ酸配列と実質的に同一であって、かつ(1c)のアミノ酸配列に存在するシステインおよび該置換されたアミノ酸は残されている、アミノ酸配列。
(3c)(1c)のアミノ酸配列に存在するシステインおよび該置換されたアミノ酸以外の箇所において、さらに1から数個のアミノ酸を欠失、付加、挿入または置換あるいはその組み合わせを含むアミノ酸配列。
本発明の変異型マウスAIMはまた、上記(1d)のアミノ酸配列に代わり、下記の(2d)または(3d)のアミノ酸配列を含んでよい。
(2d)(1d)のアミノ酸配列と実質的に同一であって、かつ(1d)のアミノ酸配列に存在するシステインおよび該置換されたセリンは残されている、アミノ酸配列。
(3d)(1d)のアミノ酸配列に存在するシステインおよび該置換されたセリン以外の箇所において、さらに1から数個のアミノ酸を欠失、付加、挿入または置換あるいはその組み合わせを含むアミノ酸配列。
ペプチド合成法は、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれであってもよい。本発明の変異型AIMを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合し、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的とする変異型AIMを製造することができる。
ここで、縮合や保護基の脱離は、自体公知の方法、例えば、以下の(1)および(2)に記載された方法に従って行われる。
(1)M. BodanszkyおよびM. A. Ondetti, Peptide Synthesis, Interscience Publishers, New York (1966年)
(2)SchroederおよびLuebke, The Peptide, Academic Press, New York (1965年)
上記方法で得られる本発明の変異型AIMが遊離体である場合には、該遊離体を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に本発明の変異型AIMが塩として得られた場合には、該塩を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる。
本発明の変異型AIMをコードするDNAとしては、合成DNAなどが挙げられる。例えば、細胞もしくは組織より調製した全RNAもしくはmRNA画分を鋳型として用い、Reverse Transcriptase-PCR(以下、「RT-PCR法」と略称する)によって直接増幅した全長AIM cDNA(例えば、ヒトの場合、配列番号:9で表される塩基配列、マウスの場合、配列番号:10で表される塩基配列が挙げられる。)を、公知のキット、例えば、MutanTM-super Express Km(TAKARA BIO INC.)、MutanTM-K(TAKARA BIO INC.)等と変異導入するためのプライマーを用いて、ODA-LA PCR法、Gapped duplex法、Kunkel法等の自体公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って変換することによって取得することができる。あるいは、上記した全RNAもしくはmRNAの断片を適当なベクター中に挿入して調製されるcDNAライブラリーから、コロニーもしくはプラークハイブリダイゼーション法またはPCR法などにより、クローニングしたcDNAを、上記の方法に従って変換することによっても取得することができる。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。
ここで「実質的に同一な塩基配列」とは、元の塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を変化させないような変異(silent mutation)を有する塩基配列が挙げられる。
発現ベクターとしては、動物細胞発現プラスミド(例:pCAGGS, pSRα, pA1-11, pXT1, pRc/CMV, pRc/RSV, pcDNAI/Neo)が用いられる。
プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。
例えば、宿主が動物細胞である場合、β-アクチンプロモーター、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、MoMuLV(モロニーマウス白血病ウイルス)LTR、HSV-TK(単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)プロモーター、trcプロモーター、trc改変プロモーターなどが用いられる。
宿主細胞としては、本発明の変異型AIMの場合、動物細胞が好ましい。
動物細胞としては、例えば、COS-7, Vero, CHO, CHO(dhfr-), CHO-K1, CHO-S, L, AtT-20, GH3, FL, HEK293, NIH3T3, Balb3T3, FM3A, L929, SP2/0, P3U1, B16, P388などの細胞が用いられる。
動物細胞は、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール,263-267 (1995)(秀潤社発行)、Virology,52巻,456 (1973)に記載の方法に従って遺伝子を導入することができる。
宿主細胞が動物細胞である場合、培養に使用される培地としては、例えば、約5~約20%の胎児ウシ血清を含む最小必須培地(MEM),ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM),RPMI 1640培地,199培地などが用いられる。培地のpHは、好ましくは約6~約8である。培養は、通常約30~約40℃で、約15~約60時間行なわれる。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
以上のようにして、宿主細胞の細胞内または細胞外に本発明の変異型ヒトAIMを製造せしめることができる。
例えば、本発明の変異型AIMを宿主細胞の細胞質から抽出する場合、培養物から公知の方法で集めた宿主細胞を適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって宿主細胞を破壊した後、遠心分離やろ過により可溶性タンパク質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。該緩衝液は、尿素や塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤や、トリトンX-100TMなどの界面活性剤を含んでいてもよい。また、本発明の変異型AIMが細胞外に分泌される場合には、培養物から遠心分離またはろ過等により培養上清を分取するなどの方法が用いられる。
このようにして得られた可溶性画分、培養上清中に含まれる本発明の変異型AIMの単離精製は、自体公知の方法に従って行うことができる。このような方法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法;透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法;イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法;アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法;逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法;等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法;抗体を用いた方法などが用いられる。これらの方法は、適宜組み合わせることもできる。
野生型ヒトrAIMの調製は以下のように行った。すなわち、pCAGGS-human AIM発現ベクターをHEK293に導入することによって得られるヒトAIM安定発現株を5%FBS、Glutamax、ゲンタマイシン含有Dulbecco's Modified Eagle Medium(DMEM、Invitrogen)で3日間培養後、培養上清を回収した。回収した培養上清について、マウス抗ヒトAIMモノクローナル抗体(clone 7、自家作製)をHiTrap NHS-activated HP column (GE Healthcare Life Sciences)に固定化することによって得られる抗体カラムを用いてヒトrAIMを精製した。pH2.5の0.1 M glycine-HClで抗体カラムに結合したヒトrAIMを溶出させ、その後ただちに1M Tris-HCl pH 8.5によって中和を行い、ヒトrAIM溶出液を得た。溶出液中の緩衝液をAmicon Ultra filter concentrators (Millipore)を用いてDulbecco's Phosphate-Buffered Saline (DPBS)へ置換し、濃縮をおこなった。ヒトrAIM濃縮液をBcinchoninic acid (BCA) アッセイ(Pierce)を用いてタンパク質量の定量を行い、DPBSを用いて終濃度を2.0 mg/mLに調整した。上記のように精製および濃縮した野生型ヒトrAIMタンパク質 1 μg を非還元条件下においてポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で分子量の違いによって分離した後、Coomassie Brilliant Blue (CBB)染色を行い、野生型ヒトrAIMの検出を行った。
その結果、ヒトAIM安定発現株からヒトrAIMを精製し、高濃度溶液として調製した場合、ヒトrAIMは多量体を形成した(図1)。特に、分子量が大きい一部の多量体(多くのrAIMが重合した複合体:図1のレーンAにおける分子量の大きいバンドに該当する多量体rAIM、並びにスロットに残留している多量体rAIM)は析出してしまうことが懸念された。このことは、ヒトrAIMを精製し、治療薬剤として生体に投与する際、析出した多量体が微細な血管を閉塞し重大な事故につながりかねない危険性を示唆するものである。したがって、将来的なヒトrAIMの臨床的な応用の可能性を鑑みて、少なくとも分子量が大きい多量体を形成しない変異型ヒトAIMの創出が望まれた。
野生型マウスrAIMの調製は以下のように行った。すなわち、pCAGGS-mouse AIM発現ベクターをHEK293に導入することによって得られるマウスAIM安定発現株を5%FBS、Glutamax、ゲンタマイシン含有DMEMで3日間培養後、培養上清を回収した。回収した培養上清について、ラット抗マウスAIMモノクローナル抗体(clone 36、自家作製)をHiTrap NHS-activated HP columnに固定化することによって得られる抗体カラムを用いてマウスrAIMを精製した。pH2.3の0.1 M glycine-HClで抗体カラムに結合したマウスrAIMを溶出させ、その後ただちに1 M Tris-HCl pH 8.5によって中和を行い、マウスrAIM溶出液を得た。溶出液中の緩衝液をAmicon Ultra filter concentratorsを用いてDPBSへ置換し、濃縮をおこなった。マウスrAIM濃縮液をBCA アッセイによってタンパク質量の定量を行い、DPBSを用いて終濃度を2.0 mg/mLに調整した。上記のように精製および濃縮した野生型マウスrAIMタンパク質 1 μg を非還元条件下においてSDS-PAGEで分子量の違いによって分離した後、CBB染色を行い、野生型マウスrAIMの検出を行った。
その結果、マウスrAIMは、ヒトrAIMのような多量体は形成せず、単量体と二量体のみ存在した(図2)。
野生型ヒトAIMは3つのSRCRドメイン(SRCR1、SRCR2、SRCR3)にそれぞれ8、9、9個のシステインを有する(図3)。また、未成熟なAIMはN末端にシグナルぺプチドが連結されており、細胞外に分泌される際に、該シグナルペプチドが切断され、成熟タンパク質に変換される。発明者らは、ヒトAIMに存在する上記のシステインによるジスルフィド結合が多量体化に関与している可能性を検証するため、ヒトAIMの立体構造を予測した。ヒトAIMの立体構造の予測は、3つのSRCRドメインよって表される部分構造と、3つのSRCRドメインとヒンジ(図3の下線部)を含む全体構造の2段階のモデリングによっておこなった。SRCRドメインごとのホモロジーモデリングには、Swiss-Model server(http://swissmodel.expasy.org/SWISS-MODEL)を用いた。ヒトAIMの3つのSRCRドメインに対して個別にBlastおよびHHBlitsによる配列相同性検索をおこなった結果、ヒトAIMが属するSRCRスーパーファミリーGroup Bに同様に属するヒトCD6(5a2e.1.A; PDB ID: 5A2E)が、すべてのSRCRドメインに対して30%以上の良好な配列相同性を示した。そこで、ヒトCD6を鋳型とし、Promod-II6により3つのSRCRドメインの立体構造をそれぞれ構築した。次にPrime version 4.2 (Schrodinger, LLC, New York, NY, 2015)を用いて、SRCRドメイン以外の配列(ヒンジ)を導入することでヒトAIMの全体構造を構築した。ヒトAIM全体の立体構造は、OPLS_2005を力場としたDesmondによる分子動力学計算(310 K, 20 ns)を用い、水分子(SPC)で満たした周期的箱型モデル内でヒトAIMの全体構造を平衡化して得た。また、ヒトAIMの各SRCRドメイン内の4つのジスルフィド結合は、ヒトCD6のSRCRドメインを鋳型として再現した。野生型ヒトAIMの立体構造予測の結果を図4に示す。野生型ヒトAIMの3つのSRCRドメイン内にそれぞれ8、9、9個存在するシステインのうちそれぞれ8個のシステインは各SRCRドメイン内でジスルフィド結合に用いられることが分かった。しかし、野生型ヒトAIM には、SRCR2ドメインおよびSRCR3ドメインに1つずつ孤立したシステイン(Solitary Cys)、即ち、配列番号:1で表される野生型ヒトAIMのアミノ酸番号168のシステインおよびアミノ酸番号277のシステインが存在することを発明者らは見出した。
また、同様の手法を用いて、発明者らはマウスAIMの立体構造を予測した。野生型マウスAIMの立体構造予測の結果を図5に示す。野生型マウスAIMの各SRCRドメイン内にはシステインがそれぞれ8、9、8個存在する(図6)。該システインのうちそれぞれ8個のシステインは各SRCRドメイン内でジスルフィド結合に用いられることが分かった。しかし、野生型マウスAIMには、SRCR2ドメインに孤立したシステイン(Solitary Cys)、即ち、配列番号:2で表される野生型マウスAIMのアミノ酸番号168のシステインが存在することを発明者らは見出した。
発明者らは、配列番号:1で表される野生型ヒトAIMのアミノ酸番号168のシステインおよびアミノ酸番号277のシステインが野生型ヒトrAIMの多量体化に関係している可能性を検証するため、上記のシステインを別のアミノ酸に置換した変異型ヒトrAIMを調製した。まず、野生型ヒトrAIMの機能を維持するために、置換に用いるアミノ酸を検討した。システインは親水性(水素結合形成可能)、電荷0、非芳香族であるから、類似アミノ酸としてセリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミンの4つを選んだ。分子形状と大きさの比較から、上記4つのアミノ酸のうち、セリンがシステインに最も近い構造および性質を持っているため、置換に用いるアミノ酸としてセリンを選択した。変異型ヒトrAIMの調製は以下のように行った。すなわち、配列番号:1で表される野生型ヒトAIMのアミノ酸番号168のシステインをコードするコドンTGCをTCCに置換することによって得られる、変異型ヒトAIM(以下、実施例4、6、7において「2CS」ともいう)(配列番号:3)、配列番号:1で表される野生型ヒトAIMのアミノ酸番号277のシステインをコードするコドンTGCをTCCに置換することによって得られる、変異型ヒトAIM(以下、「3CS」ともいう)(配列番号:4)、および前記の両方の置換を有する変異型ヒトAIM(以下、「2/3CS」ともいう)(配列番号:5)をそれぞれ発現する、pCAGGS-human AIM-2CS、pCAGGS-human AIM-3CS、およびpCAGGS-human AIM-2/3CS発現ベクターをそれぞれ作製した。次に、エレクトロポレーション法を用いて該発現ベクターをHEK293T細胞に導入し、3日間培養することによって一過性発現させた各変異型ヒトrAIMを培養上清から回収した。その後、実施例1と同様の方法で、抗体カラムを用いて各変異型ヒトrAIMの精製および濃縮を行った。精製および濃縮した野生型、2CS、3CS、2/3CSのヒトrAIMタンパク質、各100 ngを非還元条件下においてSDS-PAGEで分子量の違いによって分離した後、Oriole染色を行い、各ヒトrAIMタンパク質の検出を行った。
その結果、SRCR2ドメインおよびSRCR3ドメインにそれぞれ1つ存在する孤立したシステインをそれぞれセリンに置換することによって得られる2CSおよび3CSは、多量体を形成せず、野生型マウスAIMと同じく単量体と二量体のみを形成した(図7)。また、上記の孤立したシステインを共にセリンに置換することによって得られる2/3CSは、単量体のみを形成した(図7)。従って、野生型ヒトrAIMの多量体化は、配列番号:1で表される野生型ヒトAIMのアミノ酸番号168のシステインおよびアミノ酸番号277のシステインが原因であることが分かった。なお、培養上清から最終的な精製後rAIM(野生型ヒトrAIMにおける析出分は除く)の回収率は、野生型、2CS、3CS、2/3CSの順に、32、52、53、61%(3回の一過性発現および精製後の回収率の平均値)であり、回収率は変異型で上昇していた。
発明者らは、配列番号:2で表される野生型マウスAIMのアミノ酸番号168のシステインが野生型マウスrAIMの二量体化に関係している可能性を検証するため、実施例4と同様に、上記のシステインをセリンに置換した変異型マウスrAIMを調製した。変異型マウスrAIMの調製は以下のように行った。すなわち、配列番号:2で表される野生型マウスAIMのアミノ酸番号168のシステインをコードするコドンTGTをTCTに置換することによって得られる、変異型マウスAIM(以下、本実施例5、7において「2CS」ともいう)(配列番号:6)を発現するpCAGGS-mouse AIM-2CS発現ベクターを作製した。次に、エレクトロポレーション法を用いて該発現ベクターをHEK293T細胞に導入し、3日間培養することによって一過性発現させた変異型マウスrAIMを培養上清から回収した。その後、実施例2と同様の方法で、抗体カラムを用いて変異型マウスrAIMの精製および濃縮を行った。精製および濃縮した野生型、2CSのマウスrAIMタンパク質、各100 ng を非還元条件下においてSDS-PAGEで分子量の違いによって分離した後、Oriole染色を行い、各マウスrAIMタンパク質の検出をおこなった。
その結果、SRCR2ドメインに1つ存在する孤立したシステインをセリンに置換することによって得られる2CSは、単量体のみを形成し、二量体を形成しなかった(図8)。従って、野生型マウスrAIMの二量体化は、配列番号:2で表される野生型マウスAIMのアミノ酸番号168のシステインが原因であることが分かった。
AIMはマクロファージを始め、肝細胞、脂肪細胞等の種々の細胞に取り込まれ、それぞれの細胞に対して様々な作用を発動する。発明者らは、各変異型ヒトrAIM(2CS、3CS、および2/3C)が、変異により上記の細胞に取り込まれる機能を喪失したかどうか、マクロファージ細胞を用いて検証した。野生型および各変異型(2CS、3CS、および2/3C)のヒトrAIMについて、fluorescein-4-isothiocyanate (同仁化学研究所)を用いてFITC標識を行った。各ヒトrAIMの標識率は同程度であった。その後、各ヒトrAIMを20μg/mLの濃度で5%FBS含有DMEM中においてAIM欠損マウス腹腔より単離したF4/80陽性マクロファージと30分間共培養し、細胞によるヒトrAIMの取り込み反応を行った。細胞を回収し、洗浄後、flowcytometer (BD FACSCelesta)を用いてF4/80陽性マクロファージにおけるFITC平均蛍光強度を測定することにより、各rAIMの細胞内取り込みを解析した。
その結果、各変異型ヒトrAIMのマクロファージへの取り込みは、野生型ヒトrAIMに比べて減弱しなかった。従って、各変異型ヒトrAIMは機能的に減弱しなかったと考えられる。それどころか、興味深いことに、2CSはむしろ野生型AIMに比して、マクロファージによりよく取り込まれた(図9)。
IgMとJ鎖を強制発現させたHEK293T細胞と、野生型または変異型(2CS)のrAIMを強制発現させたHEK293T細胞とを24時間共培養し、その培養上清に含まれるタンパク質を非還元条件下においてSDS-PAGEによって分離した。次いで、メンブレンフィルターに分離したタンパク質を転写し、抗AIM(a-AIM)抗体または抗IgM(a-IgM)抗体を用いてrAIMとIgM 5量体が複合体を形成するか検証した(マウス (図10A)、ヒト(図10B))。その結果、マウス、ヒト、いずれも野生型rAIMはIgMに結合したが、2CSはIgMに結合しなかった。
Claims (11)
- 以下の(1)から(5)のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、以下に示す活性群から選択される少なくとも1つの活性が野生型ヒトAIMと同等又はそれ以上である、変異型ヒ
トAIM
(1)配列番号:1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号168のシステインが別のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列、
(2)配列番号:1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号277のシステインが別のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列、
(3)配列番号:1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号168のシステインが別のアミノ酸に置換され、かつ配列番号:1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号277のシステインが別のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列、
(4)(1)から(3)のいずれか1つのアミノ酸配列と90%以上の同一性を有し、かつ(1)から(3)のいずれか1つのアミノ酸配列に存在するシステインおよび該置換された別のアミノ酸は残されている、アミノ酸配列、
(5)(1)から(3)のいずれか1つのアミノ酸配列に存在するシステインおよび該置換された別のアミノ酸以外の箇所において、さらに1から5個のアミノ酸の欠失、付加、挿入または置換あるいはその組み合わせを含むアミノ酸配列、
<活性群>
・マクロファージへのエンドサイトーシス活性、
・マクロファージのアポトーシス抑制活性、
・動脈硬化の維持/促進活性、
・脂肪細胞分化抑制活性、
・脂肪細胞の脂肪滴融解活性、
・脂肪細胞縮小活性、
・CD36結合活性、
・脂肪細胞へのエンドサイトーシス活性、
・FAS結合活性、
・FAS機能抑制活性、抗肥満活性、
・脂肪肝、NASH、肝硬変または肝がんの予防もしくは治療活性、及び、
・急性腎不全、慢性腎炎、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、糖尿病性腎症、腎硬化症、IgA腎症、高血圧性腎症、膠原病に伴う腎症もしくはIgM腎症の予防または治療活性。 - 該別のアミノ酸が、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニンからなる群から選択されるアミノ酸である、請求項1に記載の変異型ヒトAIM。
- 該別のアミノ酸がセリンである、請求項1に記載の変異型ヒトAIM。
- 以下の(1)から(3)のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、以下に示す活性群から選択される少なくとも1つの活性が野生型マウスAIMと同等又はそれ以上である、変異型マウスAIM
(1)配列番号:2で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号168のシステインが別のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列、
(2)(1)のアミノ酸配列と90%以上の同一性を有し、かつ(1)のアミノ酸配列に存在するシステインおよび該置換されたアミノ酸は残されている、アミノ酸配列、
(3)(1)のアミノ酸配列に存在するシステインおよび該置換された別のアミノ酸以外の箇所において、さらに1から5個のアミノ酸の欠失、付加、挿入または置換あるいはその組み合わせを含むアミノ酸配列、
<活性群>
・マクロファージへのエンドサイトーシス活性、
・マクロファージのアポトーシス抑制活性、
・動脈硬化の維持/促進活性、
・脂肪細胞分化抑制活性、
・脂肪細胞の脂肪滴融解活性、
・脂肪細胞縮小活性、
・CD36結合活性、
・脂肪細胞へのエンドサイトーシス活性、
・FAS結合活性、
・FAS機能抑制活性、抗肥満活性、
・脂肪肝、NASH、肝硬変または肝がんの予防もしくは治療活性、及び、
・急性腎不全、慢性腎炎、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、糖尿病性腎症、腎硬化症、IgA腎症、高血圧性腎症または膠原病に伴う腎症もしくはIgM腎症の予防または治療活性。 - 該別のアミノ酸が、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニンからなる群から選択されるアミノ酸である、請求項4に記載の変異型マウスAIM。
- 該別のアミノ酸がセリンである、請求項4に記載の変異型マウスAIM。
- 以下の(1)または(2)の塩基配列を含む、核酸
(1)請求項1から3のいずれか1項に記載の変異型ヒトAIMをコードする塩基配列、
(2)請求項4から6のいずれか1項に記載の変異型マウスAIMをコードする塩基配列。 - 請求項7に記載の核酸を含む、発現ベクター。
- 請求項8に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
- 請求項9に記載の宿主細胞を培養することを含む、変異型ヒトAIMまたは変異型マウスAIMの製造方法。
- 以下の(1)または(2)の変異型AIMを含む、医薬組成物
(1)請求項1から3のいずれか1項に記載の変異型ヒトAIM、
(2)請求項4から6のいずれか1項に記載の変異型マウスAIM。
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