以下、本発明の実施形態についての説明を分かり易くするため、まず、従来技術による計測方法について説明する。
図1~図3は、それぞれ、従来のMMSによる位置データの取得位置を示す模式図である。図1~3は、ある一時点における、MMS(図示せず)が搭載された車両1が存在する空間の水平図、鳥瞰図、及び垂直断面図を、それぞれ表している。
車両1の後部にはレーザーレーダー(図示せず)が搭載されている。MMSは、車両1が走行する道路Rの周囲をレーザーレーダーによって計測し、道路Rの周囲に存在する物体についての位置を示すデータ(以下、「位置データ」という。)を取得する。MMSは、車両1の進行方向に対して垂直となる面(以下、「横断面」という。)上の各方向(レーザーレーダーを中心とする360度の各方向)に対して計測を行う。
図1~図3には、レーザーレーダーによって取得される位置データの取得位置の集合である位置データ取得位置Paがそれぞれ示されている。図1に示すように、水平図においては、位置データ取得位置Paは、車両1の後部の位置(すなわち、レーザーレーダーの設置位置)から、車両1の進行方向に対して垂直となる方向に伸びる線上の位置になる。また、図2に示すように、鳥瞰図においては、位置データ取得位置Paは、車両1の後部の位置を中心とした円の円周上の位置になる。また、図3に示すように、垂直断面図においては、位置データ取得位置Paは、車両1の後部の位置から、車両1の進行方向に対して垂直となる方向に伸びる線上の位置になる。
図4~図6は、従来のMMSによる計測の一例を示す模式図である。図4~6は、道路Rの周囲を計測するMMSが搭載された車両1が走行した空間の水平図、鳥瞰図、及び垂直断面図を、それぞれ表している。
車両1は、一定速度で道路Rを走行する。これにより、車両1に搭載されたMMSは、道路Rの周囲に存在する物体についての位置データを一定間隔で取得することができる。例えば、図4~図6に示すように、車両1の進行方向に対して道路Rの左側には1本の樹木tが存在する。MMSは、樹木tの脇を通過する際に、樹木tについての位置データを取得する。
図4~図6には、車両1が道路Rを走行した場合における、全ての位置データ取得位置Paがそれぞれ示されている。図4に示すように、水平図においては、位置データ取得位置Paは、車両1の進行方向に対して垂直となる方向に伸びる線上であって、等間隔で並行して並ぶそれぞれの線上の位置になる。図4においては、このうち2本の線が樹木tと重なっている。また、図5に示すように、鳥瞰図においては、位置データ取得位置Paは、車両1の進行方向に向かって等間隔に並ぶ円のそれぞれの円周上の位置になる。また、図6に示すように、垂直断面図においては、位置データ取得位置Paは、車両1の進行方向に対して垂直となる方向に伸びる線上であって、等間隔で並行して並ぶそれぞれの線上の位置になる。図4と同様に、図6においては、このうち2本の線が樹木tと重なっている。
図7~図9は、図4~図6と同様に、従来のMMSによる計測の一例を示す模式図である。図7~9は、道路Rの周囲を計測するMMSが搭載された車両1が走行した空間の水平図、鳥瞰図、及び垂直断面図を、それぞれ表している。
車両1は、一定速度で道路Rを走行する。これにより、車両1に搭載されたMMSは、道路Rの周囲に存在する物体についての位置データを一定間隔で取得することができる。例えば、図7~図9に示すように、車両1の進行方向に対して道路Rの左側には1棟の建物bが存在する。MMSは、建物bの脇を通過する際に、建物bについての位置データを取得する。
図7~図9には、車両1が道路Rを走行した場合における、位置データ取得位置Paがそれぞれ示されている。図7を参照すると分かるように、道路Rに沿って建物bの脇を通過する車両1の位置から見て、建物bの左側の側面は、死角となり、位置データ取得位置Paは当該側面上には存在しない。したがって、車両1の位置から見て建物bの左側の側面は、計測不可領域である。また、図7を参照すると分かるように、道路Rに沿って建物bの脇を通過する車両1の位置から見て、建物bの右側の側面は、車両1の進行方向に対して垂直に近い面となるため、当該側面上には位置データ取得位置Paが存在する数が少ない(すなわち、計測密度が低い)。したがって、車両1の位置から見て建物bの右側の側面は、計測低精度領域である。なお、計測不可領域及び計測低精度領域については、後に更に詳しく説明する。
なお、これらの図において、位置データを取得する間隔(位置データ取得位置Paの間隔)は、誇張して表されている。実際には、後述する値のように、当該間隔は、数cmから数十cmとされる。また、実際のMMSでの計測における位置データの取得位置は、例えば図4~図9に示したような(すなわち、等間隔に並ぶ線の線上、及び、等間隔に並ぶ円の円周上のような)離散的な位置ではなく、連続的な位置になる。具体的には、実際のMMSでの計測における位置データの取得位置を水平図及び垂直断面図で表した場合、位置データの取得位置は、正弦波のような曲線の線上の位置になる。また、実際のMMSでの計測における位置データの取得位置を鳥瞰図で表した場合、位置データの取得位置は、車両1に搭載されたレーザーレーダーが通過した軌跡を中心軸とする螺旋状の線の線上の位置になる。
但し、以下の説明においては、説明を分かり易くするため、MMSでの計測における位置データ取得位置Paは、例えば図4~図9のように等間隔で計測が行われる場合のような、離散的な位置であるものとする。このように位置データ取得位置Paが離散的な位置であるものと見なしても構わない理由について、以下に簡単に説明する。
例えば、MMSによる計測時における車両1の走行速度が、50[km/時](≒13.9[m/秒])であるものとする。また、レーザーレーダーが1秒間に位置データを取得する個数が、30,000[個/秒]であるものとする。また、レーザーレーダーが回転する速さは、20[回転/秒]であるものとする(すなわち、0.05[秒/回転]である)。この場合、以下の(1)式によって計算されるように、車両1が進行方向(y軸方向)へ69.4[cm]進む毎に、レーザーレーダーは横断面(x-z平面)上で1回転することになる。
69.4[cm]≒13.9[m/秒]÷20[回転/秒] ・・・(1)
また、以下の(2)式によって計算されるように、レーザーレーダーが1回転する毎に、1,500個の位置データが取得されることになる。すなわち、レーザーレーダーが、0.24度(≒14分24秒)回転する毎に1個の位置データが取得される。
1,500[個]=30,000[個/秒]÷20[回転/秒] ・・・(2)
以上により、x-z平面の円周上に0.24度毎に存在する位置データ取得位置のそれぞれが、車両1の進行方向(y軸方向)に69.4[cm]の等間隔で存在することが分かる。以上のことから、位置データ取得位置Paは、車両1の進行方向(y軸方向)に対して等間隔に存在する離散的な位置であると見なすことができる。
なお、上記においては説明を簡単にするため、位置データ取得位置Paは、横断面(x-z平面)上の円の円周上の位置であるものとした。しかしながら、実際には、横断面(x-z平面)が計測対象物に当たる位置のそれぞれが位置データの取得位置になる。そのため、レーザーレーダーから位置データの取得位置までの距離は、それぞれの位置データ毎に異なる。
図10は、レーザーレーダーの位置から計測対象物までの距離と位置データ取得位置の間隔との関係を示す模式図である。レーザーレーダーの位置から近い位置に計測対象物が存在する場合、隣り合う2つの位置データ取得位置の間隔は、例えば図10に示すように、d1のような間隔になる。また、レーザーレーダーの位置から遠い位置に計測対象物が存在する場合、隣り合う2つの位置データ取得位置の間隔は、例えば図10に示すように、d2のような間隔になる。図10に示すように、レーザーレーダーの位置から計測対象物までの距離が長くなるほど、隣り合う2つの位置データ取得位置の間隔はより広くなる(すなわち、d1<d2である)。
以下に具体例を挙げる。例えば、レーザーレーダーから計測対象物までの距離が、5[m]であるものとする。この場合、横断面(x-z平面)上の円の円周上の隣り合う2つの位置データ取得位置の間隔の幅は、以下の(3)式に示すように、およそ1.05[cm]となる。
1.05[cm]≒5[m]×100×π÷1,500[個] ・・・(3)
また、例えば、レーザーレーダーから計測対象物までの距離が、500[m]であるものとする。この場合、横断面(x-z平面)上の円の円周上の隣り合う2つの位置データ取得位置の間隔の幅は、以下の(4)式に示すように、およそ104.67[cm]となる。
104.67[cm]≒500[m]×100×π÷1,500[個] ・・・(4)
上記の通り、レーザーレーダーの位置から計測対象物の位置までの距離が長くなるほど、横断面(x-z平面)上の円の円周上における隣り合う2つの位置データ取得位置の間隔はより広くなる。
図11は、従来のMMSによって計測可能な空間の大きさを示す模式図である。なお、ここでいう計測可能な空間の大きさとは、MMSによって確実に計測がなされる最小限の計測対象物の大きさを表すものである。すなわち、計測可能な空間の大きさよりも小さい計測対象物は、レーザーレーダーによって照射されるレーザー光が一度も当たらずに計測がなされないことがある。
計測対象物がレーザーレーダーから近い位置に存在する場合には、横断面(x-z平面)上の円の円周上における隣り合う2つの位置データ取得位置の間隔は、隣り合う2つの横断面(x-z平面)の間隔に比べて相対的に狭くなる。したがって、図11に示すように、従来のMMSによって計測可能な空間は、車両1の進行方向に向かって相対的に長い直方体の空間sのようになる。
なお、実際には、空間sの横断面(x-z平面)上の面は、レーザーレーダーに近いほうの辺よりもレーザーレーダーから遠いほうの辺のほうがわずかに長い、台形に近い形状になる。
なお、レーザーレーダーの位置から見て、空間sの奥行き方向の辺の長さは、レーザーレーダーの分解能に応じて決まる。
図11に示すように、レーザーレーダーの位置から計測対象物の位置までの距離が同一であるならば、計測対象物が存在する位置の高さに関わらず、空間sの大きさは同一である。
このように、レーザーレーダーの位置から計測対象物の位置までの距離が短い場合には、位置データ取得位置の間隔は、円周方向と比較して、進行方向(y軸方向)のほうが相対的に長い。図11には、道路Rに沿って、車両1が左下から右上の方向へ走行し、その走行途中において、MMSによって取得された位置データの取得位置Paが、2つの楕円によって示されている。また、図11に示す2つの直方体(空間s)は、レーザーレーダーの位置から計測対象物の位置までの距離が同一であり、横断面(x-z平面)上における方向(レーザー光の照射方向)が互いに異なる、計測可能な空間である。
このように、レーザーレーダーの位置から計測対象物の位置までの距離が短い場合、空間sは、車両1の進行方向(y軸方向)に長く、横断面(x-z平面)上における方向については相対的に短い、小さな直方体のような形状になる。
ここで、直方体である空間sの各辺の長さは、上下前後の各方向(すなわち、y軸方向及びz軸方向)において、隣り合う位置データ取得位置の間隔に相当している。レーザーレーダーの位置から計測対象物の位置までの距離が短い場合、車両1の進行方向(y軸方向)の辺の長さに対して、レーザーレーダーによるレーザー光の照射方向(例えば、計測対象物がレーザーレーダーと同一の高さに存在する場合にはx軸方向)の辺、及び横断面(x-z平面)上の円の円周方向(例えば、計測対象物がレーザーレーダーと同一の高さに存在する場合にはz軸方向)の辺の長さは相対的に短い。また、その逆に、レーザーレーダーの位置から計測対象物の位置までの距離が長い場合、車両1の進行方向(y軸方向)の辺の長さに対して、レーザーレーダーによるレーザー光の照射方向の辺、及び横断面(x-z平面)上の円の円周方向の辺の長さは相対的に長い。
例えば上述した具体例の場合、空間sの、車両1の進行方向(y軸方向)の辺の長さは、69.4[cm]となる。また、空間sの、横断面(x-z平面)上の円の円周方向(例えば、計測対象物がレーザーレーダーと同一の高さに存在する場合にはz軸方向)の辺の長さは、1.05[cm]となる。また、レーザーレーダーの分解能が例えば5[cm]である場合、空間sの、レーザーレーダーによるレーザー光の照射方向(例えば、計測対象物がレーザーレーダーと同一の高さに存在する場合にはx軸方向)の辺の長さは、5[cm]である。したがって、空間sは、69.4[cm]×1.05[cm]×5[cm]の直方体の形状となる。
一方、図示していないが、レーザーレーダーから計測対象物までの距離が長い場合における空間sは、車両1の進行方向に相対的に短い直方体の形状になる。例えば上述した具体例の場合、空間sの、車両1の進行方向(y軸方向)の辺の長さは、69.4[cm]となる。また、空間sの、横断面(x-z平面)上の円の円周方向(例えば、計測対象物がレーザーレーダーと同一の高さに存在する場合にはz軸方向)の辺の長さは、104.67[cm]となる。また、レーザーレーダーの分解能が例えば100[cm]である場合、空間sの、レーザーレーダーによるレーザー光の照射方向(例えば、計測対象物がレーザーレーダーと同一の高さに存在する場合にはx軸方向)の辺の長さは、100[cm]である。したがって、空間sは、69.4[cm]×104.67[cm]×100[cm]の直方体の形状となる。
図12~図13は、計測対象物が樹木である場合における計測不感知領域を示す模式図である。図12~図13は、道路Rの周囲を計測するMMSが搭載された車両1が走行した空間に存在する樹木tの周辺の水平図及び垂直断面図をそれぞれ表している。
図12~図13に示すように、樹木tには、位置データを取得する対象となる多数の葉Lfが茂っている。また、図12~図13には、それぞれ、位置データ取得位置Paが示されている。図12~図13に示すように、樹木tにおいて、車両1の進行方向(y軸方向)の前方と後方には、計測不感知領域arが発生する。計測不感知領域arとは、MMSによる計測が困難な領域である。
計測不感知領域arが発生する理由としては、図12に示すように、葉Lfの表面の向きが、一般に、太陽光を摂取するため、樹木tの幹を背にして放射状に樹木tの外側の方向を向いているためである。これにより、樹木tにおいて、車両1の進行方向側(y軸方向)及びその逆方向側の位置に生えている葉Lfは、近傍を通過する車両1に対して側面を向けている。一般に、葉Lfの側面の長さ(すなわち、葉Lfの厚さ)は薄い(例えば、1[mm]未満)ことが多い。そして、一般に、MMSは、葉Lfの厚さよりも狭い間隔で位置データを取得することは困難である。
計測不感知領域arが発生する場合、MMSによって取得された位置データから得られる樹木tの形状は、実際の樹木tの形状と比べて、車両1の進行方向(y軸方向)に向かってより細い形状になる。このように、計測不感知領域arが発生する場合、MMSが、計測対象物の大きさを実際よりも小さく認識してしまう誤認識が発生する恐れがある。
図14~図19は、葉Lfの向きとレーザーレーダーによるレーザー光の照射方向との関係を示す模式図である。図14、図16、図17、及び図19において、実線の矢印及び点線の矢印は、レーザー光の照射を示している。実線の矢印と点線の矢印とは、位置データの取得タイミングの違いによって区別されている。すなわち、ある取得タイミングにおける位置データ取得位置Paへのそれぞれのレーザー光の照射が実線の矢印で表されている。一方、上記取得タイミングとは異なる取得タイミングにおける位置データ取得位置Paへのそれぞれのレーザー光の照射がそれぞれ点線の矢印で表されている。
また、図15及び図18において円の中にXが描かれているマークは、図14、図16、図17、及び図19における矢印に相当する。当該マークは、図面の手前方向から奥行き方向へレーザー光が照射されていることを示している。実線で描かれたマークと点線で描かれたマークとは、位置データの取得タイミングの違いによって区別されている。すなわち、ある取得タイミングにおける位置データ取得位置Paへのそれぞれのレーザー光の照射が、実線のマークで表されている。一方、上記取得タイミングとは異なる取得タイミングにおける位置データ取得位置Paへのそれぞれのレーザー光の照射が、それぞれ点線のマークで表されている。
図14~図16は、道路Rの周囲を計測するMMSが搭載された車両1が走行した空間に存在する樹木tにおいて、計測不感知領域arではない位置に生えている葉Lfの周辺の鳥瞰図、垂直断面図、及び水平図をそれぞれ表している。
図14~図16に示すように、計測不感知領域arではない位置に生えている葉Lfの表面は、y-z平面に対して平行に近い方向に向いている。すなわち、葉Lfの表面は、レーザーレーダーによるレーザー光の照射方向(x軸方向)に対して、垂直に近い方向を向いている。これにより、計測不感知領域arではない位置に生えている葉Lfは、レーザーレーダーから照射されたレーザー光が当たりやすい状態である。
一方、図17~図19は、道路Rの周囲を計測するMMSが搭載された車両1が走行した空間に存在する樹木tにおいて、計測不感知領域arに生えている葉Lfの周辺の鳥瞰図、垂直断面図、及び水平図をそれぞれ表している。
図17~図19に示すように、計測不感知領域arに生えている葉Lfの表面は、横断面(x-z平面)に対して平行に近い方向に向いている。すなわち、葉Lfの表面は、レーザーレーダーによるレーザー光の照射方向(x軸方向)に対して、平行に近い方向を向いている。これにより、計測不感知領域arに生えている葉Lfは、レーザーレーダーから照射されたレーザー光が当たり難い状態である。
また、レーザーレーダーによってレーザー光が照射される間隔が短い方向はz軸方向であるの対し、図18に示すように、葉Lfの長手方向もほぼz軸方向であるため、たとえ葉Lfが多少傾いていたとしても、レーザーレーダーから照射されたレーザー光は当たり難い状態であると言える。
このように、葉Lfの向きとレーザーレーダーによるレーザー光の照射方向との関係により、樹木tにおける、y軸方向の前方部分と後方部分(すなわち、樹木tにおける、車両1の進行方向側の部分とその逆方向側の部分)に、計測不感知領域arが発生する。計測不感知領域arが発生する理由としては、レーザーレーダーによるレーザー光の照射方向に、y軸方向(車両1の進行方向)の成分が含まれないためである。
すなわち、樹木tにおける、y軸方向の前方部分と後方部分(すなわち、樹木tにおける、車両1の進行方向側の部分とその逆方向側の部分)に生えている葉Lfは、車両1の進行方向又はその逆の方向へ表面を向けていることが多い。したがって、樹木tにおける、y軸方向の前方部分と後方部分に生えている葉Lfは、車両1に対して側面を向けるように生えている。一方、レーザー光は、車両1の進行方向に対して垂直となる方向(すなわち、y軸方向の成分が含まれない方向)へ照射される。これにより、葉Lfの表面とレーザー光の照射方向とは、互いの位置関係が平行になるため、計測不感知領域arが発生する。
y軸方向の前方部分と後方部分に計測不感知領域arが発生することにより、MMSが、樹木tの幅を実際よりも細く認識してしまう誤認識が発生する可能性がある。
図20~図21は、計測対象物が建物である場合における計測不可領域及び計測低精度領域を示す模式図である。図20~図21は、道路Rの周囲を計測するMMSが搭載された車両1が走行した空間に存在する建物bの周辺の水平図及び垂直断面図をそれぞれ表している。
図20に示すように、レーザーレーダーから照射されたレーザー光の照射方向はx軸のマイナス方向である。そのため、図20~図21において建物bの左側の側面は、当該建物bの脇を通過する車両1の位置から見て死角となる位置になる。これにより、建物bの左側の側面に、計測不可領域ar†が生じる。
また、図20~図21において建物bの右側の側面は、建物bの車両1側(車両1の位置から見て手前側)の側面と比べて、レーザー光の照射方向とより平行に近い面になっている。これにより、建物bの右側の側面における位置データ取得位置Paの間隔d4は、建物bの車両1側(車両1の位置から見て手前側)の側面における位置データ取得位置Paの間隔d3に比べて、広くなる(d4>d3)。すなわち、建物bの右側の側面では、計測密度が低くなる。これにより、建物bの右側の側面に、計測低精度領域ar‡が生じる。
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図22~図24は、それぞれ、本発明の第1の実施形態に係るMMSによる位置データの取得位置を示す模式図である。本実施形態では、MMSが搭載された車両1が、道路Rを走行する。図22~図24は、車両1が走行中である一時点における、当該車両1が存在する空間の水平図、鳥瞰図、及び垂直断面図を、それぞれ表している。
車両1の後部にはレーザーレーダー(図示せず)が搭載されている。MMSは、車両1が走行する道路Rの周囲をレーザーレーダーによって計測し、道路Rの周囲に存在する物体についての位置データを取得する。
但し、本実施形態に係る車両1が上述した従来技術と異なる点は、とくに図22を参照すると分かるように、位置データ取得位置によって構成される面が、(車両1の進行方向に対して垂直となる面である)横断面に対して、車両1の左右方向(x軸方向)にそれぞれ傾きを持った2つの面となっていることである。以下、この傾きを持った面を、「計測面」という。MMSは、計測面上の各方向に対して計測を行い、位置データを取得する。
図22~図24では、車両1の進行方向(y軸方向)に対して後方右側を向いた計測面上の位置データの取得位置の集合である位置データ取得位置Pbが、点線によって示されている。また、図22~図24では、車両1の進行方向(y軸方向)に対して後方左側を向いた計測面上の位置データの取得位置の集合である位置データ取得位置Pcが、一点鎖線で示されている。
なお、本実施形態においては、車両1には、位置データ取得位置Pbに対して計測を行うレーザーレーダーと、位置データ取得位置Pcに対して計測を行うレーザーレーダーとが、それぞれ搭載されているものとする。また、その2つのレーザーレーダーは、車両1の屋根の上の後方の両角の位置にそれぞれ設置されているものとする。但し、このような構成に限られるものではなく、位置データ取得位置Pb及び位置データ取得位置Pcの双方に対して計測を行うことができる1台のレーザーレーダーが車両1に搭載されている構成であってもよい。
なお、上記のように、照射されるレーザー光の方向が互いに異なる2台のレーザーレーダーが、車両1の屋根の上の後方の両角の位置に設置されることが望ましい主な4つの理由について、以下に説明する。
複数の計測面上の位置データ取得位置を計測対象とする場合、最小の構成である2台のレーザーレーダーとした場合に最も装置コストを抑えることができる。第1の理由として、レーザーレーダーの設置台数を2台とする理由は、最も装置コストが抑えられるためである。
また、計測範囲をより広くするため、車両1に設置されたレーザーレーダーの位置から周囲を見渡した場合に、より広範囲な視野の確保が望まれる。そして、レーザーレーダーの設置位置が車両1の屋根の上の両角である場合に、車両1の本体によって視野が遮られる範囲が狭くなる。第2の理由として、レーザーレーダーの設置位置を車両1の屋根の上の両角とする理由は、広範囲な視野が確保されるためである。
また、一般に、車両1のエンジンルームは当該車両1の前部(運転席の位置よりも前方の位置)に設置されている場合が多い。このような車両1の形状を考慮した場合、レーザーレーダーの設置位置は、エンジンルームがあることによって視野が遮られる車両1の前方の位置よりも、エンジンルームがない後方の位置のほうが、より視野が遮られる範囲が狭くなると考えられる。第3の理由として、レーザーレーダーの設置位置を車両1の屋根の上の後方の位置とする理由は、広範囲な視野が確保されるためである。
また、車両1の位置を基準として、計測対象物において死角となる領域を狭くするためには、複数の計測面が、互いに平行な面ではなく、より大きな角度で交差することが望ましい。2つのレーザーレーダーを、車両1の屋根の上の後方の左右両角の位置とした場合、車両1の本体によって視野が遮られる範囲を狭くしつつ、2つの計測面をより大きな角度で交差させることができる。第4の理由として、レーザーレーダーの設置位置を車両1の屋根の上の後方の左右両角の位置とする理由は、広範囲な視野が確保されつつ、計測対象物において死角となる領域が狭くなるためである。
図25~図27は、本発明の第1の実施形態に係るMMSによる計測の一例を示す模式図である。図25~図27は、道路Rの周囲を計測するMMSが搭載された車両1が走行した空間の水平図、鳥瞰図、及び垂直断面図を、それぞれ表している。
車両1は、一定速度で道路Rを走行する。これにより、車両1に搭載されたMMSは、道路Rの周囲に存在する物体についての位置データを一定間隔で取得することができる。例えば、図25~図27に示すように、車両1の進行方向に対して道路Rの左側には1本の樹木tが存在する。MMSは、樹木tの脇を通過する際に、当該樹木tについての位置データを取得する。
図25~図27には、車両1が道路Rを走行した場合における、全ての位置データ取得位置Pbと全ての位置データ取得位置Pcと、がそれぞれ示されている。図25の水平図、及び図27の垂直断面図から分かるように、車両1の後方右側に設置されたレーザーレーダー(以下、「右側レーザーレーダー」という。)による計測対象である位置データ取得位置Pbによって構成される計測面と、車両1の後方左側に設置されたレーザーレーダー(以下、「左側レーザーレーダー」という。)による計測対象である位置データ取得位置Pcによって構成される計測面とが、それぞれ2つずつ樹木tと重なっている。
図28~図29は、計測対象物が樹木である場合における計測不感知領域を説明するための模式図である。図28~図29は、道路Rの周囲を計測するMMSが搭載された車両1が走行した空間に存在する樹木tの周辺の水平図及び垂直断面図をそれぞれ表している。
図28~図29に示すように、樹木tには、位置データを取得する対象となる多数の葉Lfが茂っている。また、図28~図29には、右側レーザーレーダーによる位置データ取得位置Pbと、左側レーザーレーダーによる位置データ取得位置Pcとが、それぞれ示されている。図28に示すように、樹木tの四方には、2つの計測不感知領域arRと、2つの計測不感知領域arLとが、それぞれ発生する。
計測不感知領域とは、上述したように、MMSによる計測が困難な領域である。計測不感知領域arRは、右側レーザーレーダーによる計測が困難な領域である。図示するように、計測不感知領域arRは、位置データ取得位置Pbからなる計測面と平行となる向きに発生する。また、計測不感知領域arLは、左側レーザーレーダーによる計測が困難な領域である。図示するように、計測不感知領域arLは、位置データ取得位置Pcからなる計測面と平行となる向きに発生する。なお、図が複雑にならないように、図29においては計測不感知領域の記載を省略している。
図28に示すように、4つの計測不感知領域が互いに重なる重複領域は発生しない。そのため、右側レーザーレーダーによる計測が困難な領域である計測不感知領域arRは、左側レーザーレーダーでは計測可能な領域である。一方、左側レーザーレーダーによる計測が困難な領域である計測不感知領域arLは、右側レーザーレーダーでは計測可能な領域である。
このように、本実施形態によれば、右側レーザーレーダーによる計測と、左側レーザーレーダーによる計測とは、互いに補完しあうことになるため、全てのレーザーレーダーによって位置データの取得が困難である領域は存在しなくなる。これにより、MMSが、計測不感知領域の発生に起因して樹木tの幅を実際よりも細く認識してしまう誤認識が起こる可能性が、従来よりも大幅に低減される(あるいは、可能性が無くなる)。
図30~図32は、葉Lfの向きとレーザーレーダーによるレーザー光の照射方向との関係を示す模式図である。図30~図32において、点線の矢印及び一点鎖線の矢印は、レーザー光の照射を示している。実線の矢印と点線の矢印とは、レーザー光を照射したレーザーレーダーの違いによって区別されている。すなわち、右側レーザーレーダーから位置データ取得位置Pbへのそれぞれのレーザー光の照射が点線の矢印で表されている。一方、左側レーザーレーダーから位置データ取得位置Pcへのそれぞれのレーザー光の照射が一点鎖線の矢印で表されている。
図30~32に示す葉Lfの向きは、従来技術の説明において参照した図17~図19とそれぞれ同一である。とくに、図18と図31、及び、図19と図32とをそれぞれ比較すると、従来技術においては葉Lfに対してレーザー光が当たっていないが、本実施形態においては、互いに角度の異なる2つの計測面に沿ってレーザー光が照射されることにより、葉Lfに対してレーザー光が当たっていることが分かる。このように、従来はレーザーレーダーによって照射されたレーザー光が当たり難かった葉Lfの向きであっても、本実施形態によれば、レーザー光が葉Lfに当たるようになる。これによって、従来は取得できなかった葉Lfについての位置データの取得が可能になる。
以下、計測不感知領域におけるレーザー光の照射の状態について説明する。
図33~図35は、樹木tにおいて、計測不感知領域arLに生えている葉Lfの周辺の鳥瞰図、垂直断面図、及び水平図をそれぞれ表している。また、図36~図38は、樹木tにおいて、計測不感知領域arRに生えている葉Lfの周辺の鳥瞰図、垂直断面図、及び水平図をそれぞれ表している。
図33~図38において、点線の矢印及び一点鎖線の矢印は、レーザー光の照射を示している。実線の矢印と点線の矢印とは、レーザー光を照射したレーザーレーダーの違いによって区別されている。すなわち、右側レーザーレーダーから位置データ取得位置Pbへのそれぞれのレーザー光の照射が点線の矢印で表されている。一方、左側レーザーレーダーから位置データ取得位置Pcへのそれぞれのレーザー光の照射が一点鎖線の矢印で表されている。
とくに図35を参照すると分かるように、計測不感知領域arLに生えている葉Lfには、左側レーザーレーダーから照射されたレーザー光は当たらない。しかしながら、当該葉Lfには、3か所に、右側レーザーレーダーから照射されたレーザー光が当たっていることが分かる。
また、とくに図38を参照すると分かるように、計測不感知領域arRに生えている葉Lfには、右側レーザーレーダーから照射されたレーザー光は当たらない。しかしながら、当該葉Lfには、3か所に、左側レーザーレーダーから照射されたレーザー光が当たっていることが分かる。
このように、本実施形態によれば、葉Lfの向きが、例えば、図30~図32に示す向き、図33~図35に示す向き、及び、図36~図38に示す向き等、いずれの向きであっても、右側レーザーレーダーから照射されたレーザー光又は左側レーザーレーダーから照射されたレーザー光のうち少なくとも一方が葉Lfに当たることになる。これにより、本実施形態によれば、計測不感知領域を大幅に削減する(あるいは、生じないようにさせる)ことができる。
図39~図41は、図25~図27と同様に、本発明の第1の実施形態に係るMMSによる計測の一例を示す模式図である。図25~図27は、道路Rの周囲を計測するMMSが搭載された車両1が走行した空間の水平図、鳥瞰図、及び垂直断面図を、それぞれ表している。
車両1は、一定速度で道路Rを走行する。これにより、車両1に搭載されたMMSは、道路Rの周囲に存在する物体についての位置データを一定間隔で取得することができる。例えば、図39~図41に示すように、車両1の進行方向に対して道路Rの左側には1棟の建物bが存在する。MMSは、建物bの脇を通過する際に、当該建物bについての位置データを取得する。
とくに図39を参照すると分かるように、本実施形態によれば、位置データ取得位置Pbからなる計測面と位置データ取得位置Pcからなる計測面とが、(車両1の進行方向に対して垂直となる面である)横断面に対して、車両1の左右方向(x軸方向)にそれぞれ傾きを持った2つの面となっていることにより、従来、建物bの脇を通過する車両1の位置から見て死角となっていた当該建物bの左側の測面(上記、計測不可領域)に対しても、レーザー光が当たるようになる。これにより、従来よりも計測不可領域が狭くなることが分かる。
また、従来、車両1の左右方向(x軸方向)に対して平行に近い位置関係であることにより計測密度が低くなっていた当該建物bの右側の測面(上記、計測低精度領域)に対して、より垂直に近い角度で(すなわち、より高い計測密度で)レーザー光が当たるようになる。これにより、従来よりも計測低精度領域が狭くなることが分かる。
なお、本実施形態によれば、建物bの水平面(x-y平面)上の形状が矩形である場合であっても、道路Rに対する建物bの設置角度によっては、計測不可領域を無くすことが可能である。例えば、車両1の進行方向に対する、建物bの各側面の角度が45度に近い角度であり、かつ、2つの計測面の間の角度が45度より小さい角度(鋭角)である場合、建物bの4つの側面それぞれに対して、2つの計測面のうち少なくとも一方の計測面に対するレーザー光が当たることになる。
なお、本実施形態によれば、例えば、建物bの水平面(x-y平面)上の形状が菱形又は平行四辺形等であり、かつ、当該形状の長手方向が車両1の左右方向(x軸方向)に近い場合には、計測不可領域を無くすことができる可能性が更に高くなる。
図42~図43は、計測対象物が建物である場合における計測不可領域及び計測低精度領域を説明するための模式図である。図42~図43は、道路Rの周囲を計測するMMSが搭載された車両1が走行した空間に存在する建物bの周辺の水平図及び垂直断面図をそれぞれ表している。
図42~図43には、右側レーザーレーダーによる位置データ取得位置Pbと、左側レーザーレーダーによる位置データ取得位置Pcとが、それぞれ示されている。上述したように、従来技術によれば、建物bの左側の側面は計測不可領域ar†(図42を図20と比較して参照)となり、建物bの右側の側面は計測低精度領域ar‡(図42を図20と比較して参照)となる。
上述したように、計測不可領域ar†とは、例えばレーザーレーダーの位置から見て死角となりレーザー光が当たらないことによって、MMSによる計測が困難な領域である。また、計測低精度領域ar‡とは、例えば計測面と平行に近い位置関係であることによりレーザー光の当たる間隔が広くなる(計測密度が低くなる)ことによって、MMSによる計測の計測精度が低下する領域である。なお、図が複雑にならないように、図43においては従来技術を説明する図21に対応するが、計測不可領域ar†及び計測低精度領域ar‡の記載を省略している。
図42に示すように、本実施形態によれば、位置データ取得位置Pbからなる計測面と位置データ取得位置Pcからなる計測面とが、(車両1の進行方向に対して垂直となる面である)横断面に対して、車両1の左右方向(x軸方向)にそれぞれ傾きを持った2つの面となっていることにより、従来技術では、計測が困難であった計測不可領域ar†に対しても、レーザー光が当たるようになる。これにより、従来よりも計測不可領域が狭くなることが分かる。また、本実施形態によれば、従来技術では、計測密度が低いため計測精度が低下する領域であった計測低精度領域ar‡に対しても、より高い計測密度でレーザー光が当たるようになる。これにより、従来よりも計測低精度領域が狭くなることが分かる。
[MMSの機能構成]
以下、MMS10の構成について説明する。
図44は、本発明の第1の実施形態に係るMMS10の機能構成を示すブロック図である。MMS10(測定装置)は、例えば汎用コンピュータ等の情報処理装置によって構成される計測装置である。MMS10は、例えば上述した車両1等の移動体に搭載される。移動体は、移動経路(例えば、道路R)に沿って移動しながら、移動経路の周囲に存在する物体の位置を計測し、点群データを出力する。図44に示すように、MMS10は、計測部101と、記憶部102と、点群データ生成部103と、点群データ出力部104と、を含んで構成される。
計測部101は、例えばレーザーレーダー等の計測機器を含んで構成される。計測部101は、移動体の移動経路周辺の物体の位置を計測する。計測部101は、互いに異なる向きの複数の計測面を計測対象として物体の位置を計測する。計測部101は、計測結果を示す位置データを生成する。
例えば、ここで生成される位置データには、計測部101が備える右側レーザーレーダー等によって得られた位置データと、計測部101が備える左側レーザーレーダー等によって得られた位置データとが含まれる。すなわち、例えば、計測部101は、移動体の進行方向に対して垂直となる面(横断面)に対し、移動体の進行方向に向かって左右方向にそれぞれ傾きを有する複数の計測面上にそれぞれ存在する位置データ取得位置(例えば、上述した、位置データ取得位置Pb及び位置データ取得位置Pc)について、位置の計測を行う。
計測部101は、生成された位置データを記憶部102に格納する。なお、計測部101は、(例えば、移動経路に沿った移動体の移動が終了し)計測対象範囲に対する全ての計測が完了した場合、計測が完了したことを示す情報を、点群データ生成部103へ出力するようにしてもよい。なお、計測部101は、MMS10の外部の装置に備えられている構成であってもよい。
記憶部102は、位置データの集合である点群データを記憶する。記憶部102は、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SDD(Solid State Drive)、RAM(Random Access Memory;読み書き可能なメモリ)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、レジスタ等の記憶媒体、又はこれらの記憶媒体の組み合わせによって実現される。なお、記憶部102は、MMS10の外部の装置に備えられている構成であってもよい。
点群データ生成部103は、例えば計測部101から出力された上記の計測が完了したことを示す情報等を取得することにより、計測部101による計測が完了したことを認識する。点群データ生成部103は、計測が完了したこと認識すると、記憶部102に格納された位置データを用いて、移動体の移動経路の周辺における物体についての点群データを生成する。点群データ生成部103は、生成された点群データを記憶部102に格納する。なお、点群データ生成部103は、点群データの生成が完了した場合、当該生成が完了したことを示す情報を、点群データ出力部104へ出力するようにしてもよい。
点群データ出力部104は、例えば点群データ生成部103から出力された上記の生成が完了したことを示す情報等を取得することにより、点群データの生成が完了したことを認識する。点群データ出力部104は、点群データの生成が完了したことを認識すると、記憶部102に記憶された点群データをMMS10の後段の処理を行う装置(例えば外部の装置等)へ出力する。
[MMSの動作]
以下、MMS10(測定装置)の動作の一例について説明する。
図45は、本発明の第1の実施形態に係るMMS10の動作を示すフローチャートである。
計測部101は、移動体の移動経路周辺の物体の位置を計測する。計測部101は、互いに異なる向きの複数の計測面を計測対象として物体の位置を計測する(ステップS101)。計測部101は、計測結果を示す位置データを生成する(ステップS102)。計測部101は、生成された位置データを記憶部102に格納する。計測部101は、計測対象範囲に対する全ての計測が完了するまで、上記の計測を継続する。
点群データ生成部103は、計測部101による計測対象範囲に対する全ての計測が完了した場合(ステップS103・Yes)、記憶部102に格納された位置データを用いて、移動体の移動経路の周辺における物体についての点群データを生成する(ステップS104)。点群データ生成部103は、生成された点群データを記憶部102に格納する。
点群データ出力部104は、点群データ生成部103による点群データの生成が完了すると、記憶部102に記憶された点群データをMMS10の後段の処理を行う装置(例えば外部の装置等)へ出力する(ステップS105)。以上で、図45のフローチャートが示すMMS10の動作が終了する。
なお、複数の計測面に対する計測によってそれぞれ得られた位置データが示す座標(例えば、右側レーザーレーダーによって得られた位置データが示す座標と左側レーザーレーダーによって得られた位置データが示す座標)が互いに近傍に位置する場合には、MMS10は、一方の位置データのみを残して他方の位置データを削除するようにしてもよい。その理由は、以下の通りである。
一般に、MMSは、一度に大量の位置データに対して処理を行うことが多い。複数(例えば2つ)の位置データが示す座標が互いに近傍に位置する場合に、MMS10が、一方の位置データを削除することにより、これら複数の位置データは、同一の情報であると見なされ、1つの位置データに纏められる。まず、第1の理由は、これら複数の位置データが1つの位置データに纏められることによって点群データのデータ量が削減され、MMS10における処理の負荷が軽減されるためである。
また、複数の計測面に対する計測によってそれぞれ得られた位置データによって生成される点群データには、近傍の座標に対して重複して取得された位置データと、複数の計測面のうちいずれか一つの計測面に対する計測のみによって得られた位置データと、が混在する。これにより、MMS10から出力された点群データを、例えば後段の処理を行う装置等が活用する場合において、不都合が生じる場合がある。例えば、一般に、点群データには体積に相当する情報が含まれていないために、計測対象の領域ごとに位置データを取得する密度についての重み付けをする処理が行われることがある。
しかしながら、上述したような、複数の位置データが示す座標が互いに近傍に存在する場合に一方の位置データを削除する処理が行われない場合、MMS10近傍の座標に対して重複して取得された位置データと、いずれか1つの計測面に対する計測のみによって得られた位置データとに対して、互いに異なる重み付けをするような処理を別途行わなければならなくなる。第2の理由は、このような位置データを取得する密度についての重み付けをする処理において、MMS10にかかる負荷が軽減されるためである。
なお、複数の座標が互いに近傍の位置であるか否かの判定は、例えば、レーザーレーダーの分解能の間隔未満であるか否かによってなされる。分解能の間隔とは、計測可能な空間の大きさである。すなわち、例えば、右側レーザーレーダーによる計測による位置データの取得位置(位置データ取得位置Pb)が含まれる計測可能な空間の中に、左側レーザーレーダーによる計測による位置データの取得位置(位置データ取得位置Pc)が含まれる場合に、2つの座標値が近似すると判定される。
なお、上述した処理が行われることによって座標が互いに近傍に位置する複数の位置データが1つの位置データに置き換えられることにより、後段の処理を行う装置は、MMS10から出力される点群データを、一般的な点群データとして活用することができる。
[計測部の構成]
以下、計測部101のハードウェア構成の一例について説明する。
図46~図47は、本発明の第1の実施形態に係る計測部101の構成を示す模式図である。
図46に示すように、レーザーレーダーLsを備える計測部101は、車両1の屋根の上に設置される。また、計測部101は、屋根の上の後部の左右両角に設置される。また、右側角部に設置された計測部101は、レーザーレーダーLs(右側レーザーレーダー)による計測対象である位置データ取得位置Pbからなる計測面が車両1の進行方向に対して垂直となる横断面に対して右方向に傾くような向きで、設置される。また、左側角部に設置された計測部101は、レーザーレーダーLs(左側レーザーレーダー)による計測対象である位置データ取得位置Pcからなる計測面が車両1の進行方向に対して垂直となる横断面に対して左方向に傾くような向きで、設置される。
図47は、本発明の第1の実施形態に係る計測部101が備えるレーザーレーダーLsの光学的な内部構造を示す図である。なお、右側レーザーレーダー及び左側レーザーレーダー共に、光学的な内部構造は同様である。図47に示すように、レーザーレーダーLsは、モータ201と、角度エンコーダ202と、投光器203と、反射ミラー204と、集光レンズ205と、受光器206と、ストップウォッチ207と、を含んで構成される。
モータ201(回転機構)は、計測部101による計測が行われる際に、図47に示す回転軸を中心に一定の速度で回転する。角度エンコーダ202は、一定間隔で起動信号(例えばパルス信号)を発生させる。角度エンコーダ202は、起動信号を投光器203及びストップウォッチ207へ出力する。投光器203及び反射ミラー204は、モータ201の回転と同期して回転するように構成される。投光器203は、角度エンコーダから出力された起動信号を取得した時点で、レーザー光を投光する。ストップウォッチ207は、投光器203から出力された起動信号を取得した時点で、計時を開始する。なお、投光器203が、角度エンコーダから出力された起動信号を取得した時点で、当該起動信号をストップウォッチ207へ出力するような構成であってもよい。
投光器203によって投光されたレーザー光は、計測対象物に反射し、反射光となってレーザーレーダーLsへ戻る。反射ミラー204は、反射光の進行方向を集光レンズ205の方向へ屈折させる。受光器206(受光部)は、集光レンズ205を介して、反射光を受光する。ストップウォッチ207は、受光器206によって反射光が受光された時点で、計時を停止する。
計測部101は、角度エンコーダ202から出力された信号に基づいて、計測対象の方向を特定する。また、計測部101は、ストップウォッチによって計測された時間に基づいて、計測対象物までの距離を算出する。計測部101は、特定された方向と算出された距離とに基づいて、計測対象物の位置を示す位置データを生成する。
以上説明したように、本発明の第1の実施形態に係るMMS10は、車両1の進行方向に対して垂直となる面(横断面)に対し、当該車両1の左右方向に向かってそれぞれ傾きを有する複数の計測面上に存在する位置データ取得位置(例えば、上述した、位置データ取得位置Pb及び位置データ取得位置Pc)についての位置データを取得する。
MMS10は、上記のように得られる位置データを取得して解析することによって、従来は計測することができなかった計測不感知領域、及び計測不可領域についても計測を可能にする。また、MMS10は、上記のように得られる位置データを取得して解析することによって、従来は計測密度が低くなり計測精度が低下する計測低精度領域についても、より高い計測密度での計測を可能にする。これにより、本実施形態に係るMMS10は、計測が不可能な領域及び計測精度が低下する領域を削減することができる。
<第1の実施形態の変形例>
以下、本発明の第1の実施形態の変形例について、図面を参照しながら説明する。
上述した第1の実施形態に係るMMS10では、1つの計測面に対して1つの計測部101が備えられるものとしたが、複数の計測面を対象として計測を行うことができる1つの計測部(例えば、以下に示す計測部101-2)のみが備えられる構成であってもよい。
[計測部の構成]
以下、計測部101-2のハードウェア構成の一例について説明する。
図48~図49は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る計測部101-2の構成を示す模式図である。
計測部101-2は、例えば、車両1の屋根の上の後部中央の位置に設置される。図48に示すように、計測部101-2はレーザーレーダーLs2を備える。レーザーレーダーLs2は、位置データ取得位置Pb及び位置データ取得位置Pcの双方を計測対象として計測を行うことができる。上述したように、位置データ取得位置Pbからなる計測面と、位置データ取得位置Pcからなる計測面とは、車両1の進行方向に対して互いに異なる傾きを有する。
図49は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る計測部101-2が備えるレーザーレーダーLs2の光学的な内部構造を示す図である。図49に示すように、レーザーレーダーLs2は、モータ201と、角度エンコーダ202と、投光器203-1と、投光器203-2と、反射ミラー204-1と、反射ミラー204-2と、集光レンズ205-1と、集光レンズ205-2と、受光器206-1と、受光器206-2と、ストップウォッチ207-1と、ストップウォッチ207-2と、を含んで構成される。
すなわち、投光器、反射ミラー、集光レンズ、受光器、及びストップウォッチは、計測面ごとにそれぞれ備えられる。例えば、投光器203-1と、反射ミラー204-1と、集光レンズ205-1と、受光器206-1と、ストップウォッチ207-1とは、位置データ取得位置Pbに対する計測を行うための部材である。一方、例えば、投光器203-2と、反射ミラー204-2と、集光レンズ205-2と、受光器206-2と、ストップウォッチ207-2とは、位置データ取得位置Pcに対する計測を行うための部材である。
投光器203-1は、位置データ取得位置Pbに向けてレーザー光を投光する。反射ミラー204-1は、投光器203-1によって投光されたレーザー光に対する反射光の進行方向を、集光レンズ205-1の方向へ屈折させる。また、投光器203-2は、位置データ取得位置Pcに向けてレーザー光を投光する。反射ミラー204-2は、投光器203-2によって投光されたレーザー光に対する反射光の進行方向を、集光レンズ205-2の方向へ屈折させる。
なお、各部材のその他の機構については、上述した第1の実施形態に係るレーザーレーダーLsにおける各部材の機構と同様であるため、説明を省略する。
モータ201と角度エンコーダ202とは、位置データ取得位置Pbに対する計測及び位置データ取得位置Pcに対する計測の双方に対して用いられる、共通部材である。このように、モータ201と角度エンコーダ202とを共通部材とすることにより、位置データ取得位置Pbに対する計測と位置データ取得位置Pcに対する計測との間の計測誤差が小さくなる。
なお、ラップタイムを計る(途中計時する)ことができるストップウォッチが用いられる場合には、当該ストップウォッチも共通部材とすることができる。この場合、角度エンコーダ202とストップウォッチの双方が共通部材となることによって、2つの計測対象物に対する計測を1つの時間軸上で行うことが可能になるため、上記計測誤差がさらに小さくなる。
[レーザーレーダーの動作]
以下、レーザーレーダーLs2の動作の一例について説明する。
図50は、本発明の第1の実施形態の変形例に係るレーザーレーダーLs2の動作を示すフローチャートである。
角度エンコーダ202は、起動信号を一定間隔で発生させる(ステップS201)。複数の投光器(投光器203-1及び投光器203-2)は、起動信号に合わせてそれぞれ投光する(ステップS202)。各投光器による投光に対する反射光を、それぞれの受光器が受光する(ステップS203)。すなわち、受光器206-1は、投光器203-1によって投光されたレーザー光の反射光を、反射ミラー204-1及び集光レンズ205-1を介して受光する。また、受光器206-2は、投光器203-2によって投光されたレーザー光の反射光を、反射ミラー204-2及び集光レンズ205-2を介して受光する。
計測部101は、起動信号の発生時から各受光器におけるそれぞれの受光時までの所要時間を計測する(ステップS204)。すなわち、計測部101は、起動信号の発生時から受光器206-1における受光時までの所要時間をストップウォッチ207-1によって計測するとともに、起動信号の発生時から受光器206-2における受光時までの所要時間をストップウォッチ207-2によって計測する。
計測部101は、起動信号の発生時点における、それぞれの投光器(投光器203-1及び投光器203-2)による投光の方向(角度)を、角度エンコーダ202によって計測する(ステップS205)。計測部101は、投光方向(角度)と、所要時間と、自装置の位置及び向きとに基づいて、計測対象物の位置を特定する(ステップS206)。計測部101は、特定された計測対象物の位置を示す位置データを記憶部102に格納する(ステップS207)。
以上で、図50のフローチャートが示すレーザーレーダーLs2の動作が終了数する。なお、これ以降のMMS10の動作については、上述した第1の実施形態に係るMMS10の動作(図45のステップS103以降の動作)と同様である。
なお、上述した第1の実施形態の変形例では、第1の実施形態との比較を容易にするため、図48に示したように、2つの計測面の向きが、車両1の左右方向(x軸方向)に互いに異なる場合について説明した。しかしながら、この構成に限られるものではなく、例えば、2つの計測面の向きが、垂直方向(z軸方向)に互いに異なる構成(すなわち、例えば、2つの計測面がそれぞれ仰角と俯角とを有する構成)であってもよい。この場合、後述する第2の実施形態に係るMMSの実施効果と同様の実施効果を得ることができる。
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
上述した第1の実施形態及び第1の実施形態の変形例では、1つの計測部が、所定の1つ又は複数の計測面上の方向へレーザー光を投光することができる構成であった。すなわち、第1の実施形態では、図46に示したように、計測部101は、それぞれ所定の1つの計測面(位置データ取得位置Pbからなる計測面、又は位置データ取得位置Pcからなる計測面)のみを計測対象とする固定式の計測部であった。また、第1の実施形態の変形例では、図48に示したように、計測部101-2は、所定の2つの計測面(位置データ取得位置Pbからなる計測面、及び位置データ取得位置Pcからなる計測面)のみを計測対象とする固定式の計測部であった。
これに対し、以下に説明する第2の実施形態に係る計測部101-3は、レーザー光の投光方向を時間とともに変化させることができる、可動式の計測部である。
[計測部の構成]
以下、計測部101-3の構成の一例について説明する。
図51は、本発明の第2の実施形態の変形例に係る計測部101-3の構成を示す模式図である。
図51に示すように、計測部101-3は、レーザーレーダーLsを備える。なお、レーザーレーダーLsの光学的な内部機構については、図47に示した第1の実施形態に係るレーザーレーダーLsの内部構造と同様である。計測部101-3は、レーザーレーダーLsの向きを、仰俯角方向に変化させることができる。例えば、計測部101-3は、レーザーレーダーLsの向きを仰角方向に最も傾けた場合、位置データ取得位置Pd1からなる計測面を計測対象とすることができる。また、例えば、計測部101-3は、レーザーレーダーLsの向きを俯角方向に最も傾けた場合、位置データ取得位置Pd2からなる計測面を計測対象とすることができる。
なお、計測部101-3は、任意の仰俯角を有する計測面を計測対象とすることができるが、以下、説明を簡単にするため、図51に示す位置データ取得位置Pd1からなる計測面及び位置データ取得位置Pd2からなる計測面の2つの面を計測対象にするものとする。計測部101-3は、計測を行う場合、レーザーレーダーLsの向きを、一定周期で仰俯角方向に往復させるように変化させる。これにより、計測部101-3は、位置データ取得位置Pd1に対する位置データと、位置データ取得位置Pd2に対する位置データとを、それぞれ一定間隔で取得することができる。
図52~図54は、それぞれ、本発明の第2の実施形態に係るMMSによる位置データの取得位置を示す模式図である。車両1は、所定の移動経路に沿って道路Rを走行する。図52~図54は、走行中の一時点における、MMSが搭載された車両1が存在する空間の水平図、鳥瞰図、及び垂直断面図を、それぞれ表している。
車両1の後部には、図51に示したレーザーレーダーLsを備える計測部101-3が搭載されている。なお、計測部101-3は、例えば車両1の屋根の上の後部中央の位置等に、車両1の進行方向の逆方向に向けて設置される。MMSは、車両1が走行する道路Rの周囲をレーザーレーダーLsによって計測し、道路Rの周囲に存在する物体についての位置データを取得する。
図52~図54では、レーザーレーダーLsの向きが仰角方向に最も傾けられた時点においてMMSによって取得される位置データの取得位置の集合である位置データ取得位置Pd1が、点線によって示されている。また、図52~図54では、レーザーレーダーLsの向きが俯角方向に最も傾けられた時点においてMMSによって取得される位置データの取得位置の集合である位置データ取得位置Pd2が、一点鎖線で示されている。
図54の垂直断面図から分かるように、位置データ取得位置Pd1によって構成される計測面は、車両1の進行方向に対して垂直となる横断面に対して、俯角を有している。一方、位置データ取得位置Pd2によって構成される計測面は、車両1の進行方向に対して垂直となる横断面に対して、仰角を有している。これにより、図54の垂直断面図から分かるように、位置データ取得位置Pd1からなる計測面と位置データ取得位置Pd2からなる計測面とは、互いに交差することになる。
図55~図57は、本発明の第2の実施形態に係るMMSによる計測の一例を示す模式図である。図55~図57は、道路Rの周囲を計測するMMSが搭載された車両1が走行した空間の水平図、鳥瞰図、及び垂直断面図を、それぞれ表している。
車両1は、一定速度で道路Rを走行する。これにより、車両1に搭載されたMMSは、道路Rの周囲に存在する物体について、位置データ取得位置Pd1及び位置データ取得位置Pd2に対する位置データを、それぞれ一定間隔で取得することができる。例えば、図55~図57に示すように、車両1の進行方向に対して道路Rの左側には1本の樹木tが存在する。MMSは、樹木tの脇を通過する際に、樹木tについての位置データを取得する。
図55~図57には、車両1が道路Rを走行する際に計測対象としている、全ての位置データ取得位置Pd1と全ての位置データ取得位置Pd2と、がそれぞれ示されている。図55の水平図、及び図57の垂直断面図から分かるように、位置データ取得位置Pd1によって構成される計測面と、位置データ取得位置Pd2によって構成される計測面とが、それぞれ2つずつ樹木tと重なっている。
図58~図59は、計測対象物が樹木である場合における計測不感知領域を説明するための模式図である。図58~図59は、道路Rの周囲を計測するMMSが搭載された車両1が走行した空間に存在する樹木tの周辺の水平図及び垂直断面図をそれぞれ表している。
図58~図59に示すように、樹木tには、位置データを取得する対象となる多数の葉Lfが茂っている。また、図58~図59には、車両1が道路Rを走行する際に計測対象としている、位置データ取得位置Pd1と位置データ取得位置Pd2とがそれぞれ示されている。図59に示すように、樹木tにおいて、車両1の進行方向側とその逆方向側(y軸方向の前方側と後方側)には、計測不感知領域が発生する。計測不感知領域とは、上述したように、MMSによる計測が困難な領域である。なお、図が複雑にならないように、図58においては計測不感知領域の記載を省略している。
図59に示すように、計測不感知領域ar1は、位置データ取得位置Pd1に対する位置データの取得時に発生する計測不感知領域である。一方、計測不感知領域ar2は、位置データ取得位置Pd2に対する位置データの取得時に発生する計測不感知領域である。計測不感知領域ar1と計測不感知領域ar2とは、樹木tにおいて、車両1の進行方向側とその逆方向側(y軸方向の前方側と後方側)にそれぞれ発生するため、2つずつ存在する。
また、図59に示すように、計測不感知領域ar1及び計測不感知領域ar2は、横断面に対してそれぞれ仰角及び俯角を有するため、互いに交差する。これにより、図59に示すように、樹木tにおいて、車両1の進行方向側とその逆方向側(y軸方向の前方側と後方側)にそれぞれ重複領域dが発生する。
計測不感知領域ar1のうち重複領域dではない範囲は、計測不感知領域ar2ではない領域である。したがって、当該領域は、位置データ取得位置Pd1からなる計測面を計測対象とする際には位置データの取得が困難な領域であるが、位置データ取得位置Pd2からなる計測面を計測対象とする際には位置データの取得が可能な領域である。一方、計測不感知領域ar2のうち重複領域dではない範囲は、計測不感知領域ar1ではない領域である。したがって、当該領域は、位置データ取得位置Pd2からなる計測面を計測対象とする際には位置データの取得が困難な領域であるが、位置データ取得位置Pd1からなる計測面を計測対象とする際には位置データの取得が可能な領域である。
このように、本実施形態によれば、位置データ取得位置Pd1に対する計測と、位置データ取得位置Pd2に対する計測とは、互いに補完しあうことになるため、いずれの計測においても位置データの取得が困難である領域は、重複領域dのみに限られる。車両1の進行方向に対して垂直となる面である横断面に対して、仰角を有する面及び俯角を有する面をそれぞれ計測面とすることによって、例えば図59に示すように、計測不感知領域が従来よりも大幅に削減される。これにより、MMSが、計測不感知領域の発生に起因して樹木tの幅を実際よりも細く認識してしまう誤認識が起こる可能性が、従来よりも大幅に低減される。
図60~図62は、葉Lfの向きとレーザーレーダーLsによるレーザー光の照射方向との関係を示す模式図である。図60~図62において、実線の矢印及び点線の矢印は、レーザー光の照射を示している。実線の矢印と点線の矢印とは、位置データの取得タイミングの違いによって区別されている。すなわち、ある取得タイミングにおける位置データ取得位置Pd1(又は、位置データ取得位置Pd2)へのそれぞれのレーザー光の照射が実線の矢印で表されている。一方、上記取得タイミングとは異なる取得タイミングにおける位置データ取得位置Pd1(又は、位置データ取得位置Pd2)へのそれぞれのレーザー光の照射がそれぞれ点線の矢印で表されている。
また、図61において円の中にXが描かれているマークは、図60及び図62における矢印に相当する。当該マークは、図面の手前方向から奥行き方向へレーザー光が照射されていることを示している。図61に示すように、当該マークには、図の左上から右下へ向かって2列に並ぶように配置されているマークと、図の右上から左下へ向かって2列に並ぶように配置されているマークとがある。図の右上から左下へ向かって並ぶように配置されているマークは、位置データ取得位置Pd1に対して照射されたレーザー光を示す。一方、図の左上から右下へ向かって並ぶように配置されているマークは、位置データ取得位置Pd2に対して照射されたレーザー光を示す。
実線で描かれたマークと点線で描かれたマークとは、位置データの取得タイミングの違いによって区別されている。すなわち、ある取得タイミングにおける位置データ取得位置Pd1(又は、位置データ取得位置Pd2)へのそれぞれのレーザー光の照射が実線のマークで表されている。一方、上記取得タイミングとは異なる取得タイミングにおける位置データ取得位置Pd1(又は、位置データ取得位置Pd2)へのそれぞれのレーザー光の照射がそれぞれ点線のマークで表されている。
図60~図62は、道路Rの周囲を計測するMMSが搭載された車両1が走行した空間に存在する樹木tに生えている葉Lfの周辺の鳥瞰図、垂直断面図、及び水平図をそれぞれ表している。なお、図60~図62に示す葉Lfの表面の向きは、図17~図19に示した葉Lfの表面の向きと同一である。
図17~図19においては、葉Lfは、レーザーレーダーから照射されたレーザー光が当たり難い状態であった。これに対し、本実施形態によれば、図60~図62に示すように、互いに異なる仰俯角を有する計測面(すなわち、位置データ取得位置Pd1からなる計測面、及び位置データ取得位置Pd1からなる計測面)についての計測が行われるため、従来はレーザーレーダーLsによって照射されたレーザー光が当たり難かった葉Lfの向きであっても、レーザー光が葉Lfに当たる可能性が高くなる。これによって、従来は取得できなかった葉Lfについての位置データの取得が可能になる。
なお、本実施形態によれば、葉Lfの表面の向きが図60~図62に示す向きである場合において、当該葉Lfの位置がレーザーレーダーLsの位置と高さが異なる場合、レーザー光が葉Lfに当たる可能性が高くなる。なぜならば、計測面が仰角又は俯角を有することによって、レーザー光の照射方向が、レーザーレーダーLsの位置の高さと異なる方向である場合には、当該レーザー光の照射方向に車両1の進行方向又はその逆方向(y軸方向の前方向又は後方向)の成分が含まれるようになるためである。
また、葉Lfの位置の高さとレーザーレーダーLsの位置の高さとの差が大きくなるほど、レーザー光の照射方向に含まれる、車両1の進行方向又はその逆方向(y軸方向の前方向又は後方向)の成分がより多く含まれるようになるため、レーザー光が葉Lfに当たる可能性がより高くなる。
例えば、レーザーレーダーLsを備える計測部101-3が車両1の屋根に搭載されている場合、MMSによって取得される位置データ取得位置Pd1又は位置データ取得位置Pd2は、車両1の進行方向(y軸方向)に対して垂直となる面である横断面(x-z平面)上ではなく、進行方向(y軸方向)へ仰角又は俯角を有する計測面上に位置する。これにより、車両位置の屋根の高さ(すなわち、レーザーレーダーLsの設置高さ)よりも高い位置に存在する計測対象物に対するレーザー光の照射方向は、車両1の進行方向の逆方向(y軸方向でマイナスの方向)の成分を含むようになる。一方、車両位置の屋根の高さよりも低い位置に存在する計測対象物に対するレーザー光の照射方向は、車両1の進行方向(y軸方向でプラスの方向)の成分を含むようになる。
具体的には、レーザーレーダーLsの位置と同じ高さの位置へ向かってレーザー光が照射される場合、レーザー光は、車両1の進行方向に対して垂直となる方向(X軸方向)へ照射される。これに対し、レーザーレーダーLsの位置よりも高い位置へ向かってレーザー光が照射される場合、レーザー光は、(計測面が仰角を有する場合)車両1の後方斜め上の方向へ照射される。また、レーザーレーダーLsの位置よりも低い位置へ向かってレーザー光が照射される場合、レーザー光は、(計測面が俯角を有する場合)車両1の前方斜め下の方向へ照射される。これにより、車両1に対して側面を向けるように生えている葉Lfであっても、葉Lfの位置とレーザーレーダーLsの位置との高さが異なる場合には、レーザー光は車両1の前方向又は後方向への成分を含む方向に向かって照射されるため、レーザー光が当たる可能性が高くなる。
図63~図65は、図55~図57と同様に、本発明の第2の実施形態に係るMMSによる計測の一例を示す模式図である。図63~図65は、道路Rの周囲を計測するMMSが搭載された車両1が走行した空間の水平図、鳥瞰図、及び垂直断面図を、それぞれ表している。
車両1は、一定速度で道路Rを走行する。これにより、車両1に搭載されたMMSは、道路Rの周囲に存在する物体について、位置データ取得位置Pd1及び位置データ取得位置Pd2に対する位置データを、それぞれ一定間隔で取得することができる。例えば、図63~図65に示すように、車両1の進行方向に対して道路Rの左側には1棟の建物dが存在する。MMSは、建物dの脇を通過する際に、建物dについての位置データを取得する。
図63~図65には、車両1が道路Rを走行する際に計測対象としている、全ての位置データ取得位置Pd1と全ての位置データ取得位置Pd2と、がそれぞれ示されている。図63の水平図、及び図65の垂直断面図から分かるように、位置データ取得位置Pd1によって構成される計測面と、位置データ取得位置Pd2によって構成される計測面とが、それぞれ2つずつ建物dと重なっている。
図66~図67は、計測対象物が建物である場合における計測不可領域及び計測低精度領域を説明するための模式図である。図66~図67は、道路Rの周囲を計測するMMSが搭載された車両1が走行した空間に存在する建物dの周辺の水平図及び垂直断面図をそれぞれ表している。
図66~図67には、車両1が道路Rを走行する際に計測対象としている、位置データ取得位置Pd1と位置データ取得位置Pd2とがそれぞれ示されている。図66に示すように、レーザーレーダーLsから照射されたレーザー光の照射方向はx軸のマイナス方向である。そのため、図20~図21に示したように、従来技術の場合には、建物bの左側の側面は、当該建物bの脇を通過する車両1の位置から見て死角となる位置になる。これにより、従来技術の場合には、建物bの左側の側面に、計測不可領域ar†が生じる。
また、建物bの右側の側面は、建物bの車両1側(車両1の位置から見て手前側)の側面と比べて、レーザー光の照射方向とより平行に近い面になっている。そのため、図20~図21に示したように、従来技術の場合には、建物bの右側の側面における位置データ取得位置Paの間隔d4は、建物bの車両1側(道路R側)の側面における位置データ取得位置Paの間隔d3に比べて、広くなる(d4>d3)。すなわち、建物bの右側の側面では、計測密度が低くなる。これにより、従来技術の場合には、建物bの右側の側面に、計測低精度領域ar‡が生じる。
これに対し、本実施形態では、上述したように、計測面が仰角又は俯角を有する。そのため、レーザーレーダーLsの位置の高さと異なる方向に対しては、レーザー光の照射方向に、車両1の進行方向又はその逆方向(y軸方向の前方向又は後方向)の成分が含まれるようになる。これにより、本実施形態によれば、図66~図67に示すように、従来技術における計測不可領域ar†に対しても、位置データ取得位置Pd1に対するレーザー光、及び位置データ取得位置Pd2に対するレーザー光が当たるようになる。このように、本実施形態によれば、従来、建物bの脇を通過する車両1の位置から見て死角となっていた当該建物bの左側の測面(上記、計測不可領域)に対しても、レーザー光が当たるようになるため、従来よりも計測不可領域が狭くなることが分かる。
なお、本実施形態によれば、建物bの水平面(x-y平面)上の形状が矩形である場合であっても、道路Rに対する建物bの設置角度によっては、計測不可領域を無くすことが可能である。例えば、車両1の進行方向に対する、建物bの各側面の角度が45度に近い角度であり、かつ、2つの計測面の仰俯角が大きい場合(すなわち、2つの計測面がx-y平面に近い場合)である。この場合、レーザー光の照射方向に車両1の進行方向(y軸方向)の成分がより多く含まれることになる。これにより、建物bの4つの側面それぞれに対して、2つの計測面に対するレーザー光が当たることになる。
なお、本実施形態によれば、例えば、建物bの水平面(x-y平面)上の形状が菱形又は平行四辺形等であり、かつ、当該形状の長手方向が車両1の左右方向(x軸方向)に近い場合には、計測不可領域を無くすことができる可能性が更に高くなる。
また、本実施形態によれば、レーザー光の照射方向に車両1の進行方向又はその逆方向(y軸方向の前方向又は後方向)の成分が含まれることにより、従来技術における計測低精度領域ar‡に対しても、位置データ取得位置Pd1に対するレーザー光、及び位置データ取得位置Pd2に対するレーザー光がより高い計測密度で当たるようになる。すなわち、本実施形態によれば、従来、車両1の左右方向(x軸方向)に対して平行に近い位置関係であることにより計測密度が低くなっていた当該建物bの右側の測面(上記、計測低精度領域)に対して、より垂直に近い角度でレーザー光が当たるようになる。さらには、本実施形態によれば、仰俯角を有する複数の計測面に対する計測が行われる。これにより、従来技術の場合と比べて計測密度がより高くなり、計測低精度領域が狭くなることが分かる。
なお、上述した第2の実施形態においては、計測部101-3は、仰俯角を有する2つの計測面に対して計測を行うものとした。但し、このような構成に限られるものではなく、例えば、計測部101-3が、車両1の進行方向に対して、左右方向にそれぞれ傾いた2つの計測面に対して計測を行う構成であってもよい。この場合、上述した第1の実施形態及び第1の実施形態の変形例に係るMMSによる実施効果と同様の実施効果を得ることができる。
なお、上述した各実施形態に係るレーザーレーダーは、MMSに内蔵されている構成であってもよいし、MMSの外部に設置されている構成であってもよい。
なお、上述した各実施形態におけるMMSは、移動体に搭載される装置ではなくても構わない。例えば、MMSは、室内に設置されており、移動体に備えられた計測機器(例えば、レーザーレーダー)によって計測された位置データを、無線通信によって取得したり、付け外しが容易な記憶媒体を介して取得したりする構成であってもよい。この場合、計測機器は、MMSの外部(すなわち、例えば車両1等の移動体)に設置される。
上述した各実施形態におけるMMSをコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。